川柳大会入選句集 - plib.pref.aomori.lg.jp · 第十二回....

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第十二回

青森県近代文学館

川柳大会入選句集

青森県近代文学館

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第十二回

青森県近代文学館川柳大会

○日時

平成二十六年三月二日(日)

十二時三十分~五時

○会場

青森県立図書館 四階集会室

○宿題と選者(各題二句詠・共選)

「白」

髙橋

星湖

豊巻

つくし

「上」

坂本

勝子

草野 力丸

「ほろほろ」

赤平

くみこ

伊藤

良彦

「にじむ」

船水

外﨑

まさる

○席題一題(二句詠・共選)

「高木恭造の往診かばん」

内山

孤遊

櫛引

八千代

○主催

青森県近代文学館

席題「高木恭造の往診カバン」

(企画展示室「新収蔵資料展 高木恭造の世界」より)

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佳作

骨箱を染めようとする春の雪

野沢

省悟

昭和史の余白にちちの従軍記

福士

慕情

うっとりと豆腐は湯豆腐になった

野沢

省悟

十年日記白紙に戻るまで悔いる

滋野

さち

白茶けた父の上着に陽が当たる

鈴木

貴子

白無垢の母は黙って旅に出る

成田

チセ

遠い日の母の匂いは割烹着

浜町

闊歩

いないいないばー誰かが拾う僕の骨 内山

孤遊

告白に素直になれぬ錆びた釘

太田

湯豆腐の砦にそびえ立つ反旗

菊池 京

口下手な米がふっくら炊き上がる

まきこ

亡母を描く白いクレヨン一本で

則田

椿

白い骨性善説を裏付ける

濱山

哲也

まだ透明だった頃には羽があった

白戸

まつ子

ワタシだって白くなりたいパンの耳

髙橋

せい子

白鳥の子です認知をしてほしい

渡邊

こあき

思い切り四月のノートに描くさくら

岩崎

雪洲

白紙委任春がそこまで来てるのに

閑女

雪の白さも口の重さも知る津軽

松山

芳生

紋白蝶になって国境抜けた戦友

船水

真っ白の軍手の教えこの平和

新山

風太郎

白黒の狭間を泳ぐ手の微罪

太田

純白な紙だが実は再生紙

福士

慕情

張り替えた障子にアンパンマンが翔び

村田

けん一

白線を跨ぐと人になれません

三浦

ひとは

白あつめ少女は羽根を編んでいる

佐藤

寿見子

孤独死のカルテは白に戻れない

千島

鉄男

恥ずかしかったでっかい母の塩むすび

内山

孤遊

一滴の墨が甘えている余白

豊巻

つくし

秀句

薔薇を買う雪の白さに耐えかねて

八木田

幸子

冤罪のきれいに晴れる鰯雲

尾形

せいじ

しがらみをひとつ許して葱の白

三浦

蒼鬼

特選

余白を埋める為だけの千人針

千巖

宿題「白」

髙橋

星湖

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佳作

白いもの干して医院の昼下り

野呂

尚史

純白のナースが守るこの命

新山

風太郎

明日という白いページに架ける虹

齋藤

自分史の空白埋める雪の華

吉川

ひとし

人生の余白も妻に握られる

村田

けん一

白米がなかったんです芋おかゆ

中道

文子

原風景の中で輝く白き骨

佐藤

寿見子

ゆるキャラの中を覗けば白い闇

角田

古錐

遠い日の母の匂いは割烹着

浜町

闊歩

白鳥の子です認知をしてほしい

渡邊 こあき

南天の実にほんわかと綿帽子

片谷 あやめ

口下手な米がふっくら炊き上がる

まきこ

雪だるまユキをはらって人になる

三浦

敬光

手鏡の隅に咲かせるバラの白

髙橋

星湖

輪廻だろう白い卵が産めなくて

佐藤

雅秀

白足袋を履くと女は呼吸する

雄岳

告白をしてから僕は貝になる

白川

策尽きて見上げる空に白い月

野口

一滴

白いブラウス少女が少女だったころ

斉藤

綺羅

一つずつこだわり捨てて白くなる

齋藤

生き様の余白を埋める紙オムツ

千島

鉄男

まっ白な心くすぐる甘い罠

櫛引

八千代

薔薇を買う雪の白さに耐えかねて

八木田

幸子

空白をうめる尖筆走らせる

松尾

みずき

要介護白い時間を埋めてゆく

三浦

蒼鬼

お忘れですか白雪姫は黒い髪

髙瀨

霜石

純白な紙だが実は再生紙

福士

慕情

うっとりと豆腐は湯豆腐になった

野沢

省悟

自白してしまえと雪が降っている

むさし

孤独死のカルテは白に戻れない

千島

鉄男

秀句

染まるのを拒む頑固な白である

八木田

幸子

雪の白さも口の重さも知る津軽

松山

芳生

白いめし飽きずに食ってまだ元気

成田

チセ

特選

迷いなく子が発つ白い滑走路

工藤

青夏

宿題「白」

豊巻

つくし

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佳作

古民家の天井に住む昔話

むがしっこ

船水

見上げるといつもと違う鼻の穴

吉田

吹喜

俎板の上で計っている余命

閑女

頭上注意今夜は星が落ちてくる

赤平

くみこ

ひとつ上目指せば壁が伸しかかる

白川

友だちがまたひとり行く雲の上

髙瀨

霜石

群青の空に泣きツラ貼り付ける

むさし

天窓という窓があり生きている

野沢

省悟

ぼくはまだ戦闘機です以上です

むさし

どん底の味は知らない落し蓋

三浦 敬光

頂上は冷たい風の吹くところ

福士 慕情

上げ底の善人らしい下手な嘘

太田

星にキスしたいと想う深海魚

村田

けん一

上からの目線で見てるのはヒト科

香田

龍馬

がむしゃらに階段上る生き地獄

野呂

呑舟

妻と言う重石程好く効いている

八木田

幸子

火葬場の煙を連れる蒼い馬

佐藤

雅秀

上流へ着けぬわたしの蛇行ぐせ

成田

チセ

母の手にガッツポーズをのせてみる

渡辺

敏子

制服の上に夕陽を着て帰る

佐藤

ちあき

青空を跨いだあとの水溜り

齋藤

青空を切り取り心の穴塞ぐ

齋藤

疑えば目は上弦の月に似る

阿部

治幸

地べた這う上目づかいのぞうり虫

成田

我楽

草に寝て無限の天に抱く野望

豊巻

つくし

夕ざくら夜ざくらとなる春の月

今泉

敏雄

豆のつるまだまだ追っていくつもり

工藤

青夏

どん底で星を見上げる夜明け前

太田

観覧車空のかけらを持ち帰る

松尾

みずき

偽装した月を見上げている瓦礫

千島

鉄男

秀句

父の雲母の雲あり幸福論

今泉

敏雄

星の子へ届けと飛ばすシャボン玉

野口

一滴

一歩ずつ進めばいいさシャボン玉

熊谷

冬鼓

特選

頭上から介護の空を剝がせない

千島

鉄男

宿題「上」

坂本

勝子

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佳作

違う違うと上唇が病んでいる

内山

孤遊

群青の空に泣きツラ貼り付ける

むさし

禿鷹が格差社会の空を舞う

野沢

省悟

空想の上は恩師の空でした

三上

祈歩

最上の愛だと思う子の育ち

山野

茶花子

ハードルを上げてふっくら炊くご飯

佐藤

寿見子

がむしゃらに階段上る生き地獄

野呂

呑舟

上げた手を下ろすところが見つからぬ 渡邊

こあき

上書きが出来ない僕の履歴欄

稲見

則彦

上げ底の善人らしい下手な嘘

太田 久

俎坂の上で計っている余命

閑女

上昇気流に乗って逝ったあなた

松山

芳生

ひとつ上目指せば壁が伸しかかる

白川

地べた這う上目づかいのぞうり虫

成田

我楽

上気した貌が嘘だと言っている

新山

風太郎

気の毒な前葉頭の机上論

松山

芳生

制服の上に夕陽を着て帰る

佐藤

ちあき

どん底で星を見上げる夜明け前

太田

青空を切り取り心の穴塞ぐ

齋藤

上等な恋にしたてるカフェ・テラス

髙橋

星湖

上半身脱いで下半身へどうぞ

佐藤

俊一

風上に未来図をおく聖歌隊

佐藤

寿見子

わたくしの真上で生きる音がする

三浦

蒼鬼

雨雲の上に乱数表がある

香田

龍馬

星にキスしたいと想う深海魚

村田

けん一

吊革に手がとどかない蜆貝

小野

五郎

上向きに寝て天国の味がした

坂本

トシ

妻と言う重石程好く効いている

八木田

幸子

野地蔵の頸ク

を削ソ

ぐよな刃物月

千巖

豆のつるまだまだ追っていくつもり

工藤

青夏

秀句

どん底の味は知らない落し蓋

三浦

敬光

頭上から介護の空を剝がせない

千島

鉄男

ぼくはまだ戦闘機です以上です

むさし

特選

上澄に父の語録が浮いてくる

櫛引

八千代

宿題「上」

草野

力丸

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佳作

風穴をあけてほろほろとける過去

佐藤

寿見子

泣かれても青信号で押し通す

閑女

ミルフィーユくらいが僕の自尊心

伊藤

良彦

お静かにほろほろ鳴くと撃たれます

吉田

吹喜

切り捨てた尻尾夜な夜な泣きにくる

櫛引

八千代

合掌の手から零れる過去の罪

白川

持病再発生命線がまたきしむ

村井

規子

ほろほろとさせて男の骨を抜く

草野

力丸

告知され夢がほろほろ崩れゆく

白川

生きようとすればほろほろ骨の音

斉藤 綺羅

満月になろうと月が欠けてゆく

三浦 敬光

午前2時ほろほろ角が生えてきた

坂本

勝子

桃太郎老いてほろほろと歩く

野沢

省悟

自爆して命ほろほろ鳳仙花

成田

我楽

ほろほろとごめんなさいが通り過ぎ

三上

祈歩

寂しげに泣けばよかった干し大根

みつこ

行間をほろほろ母の文字で埋め

北嶋

萬里子

妻の名もいつか漏れ出す砂時計

佐藤

雅秀

ほろほろほろほろ寂しい貌を描く独り

内山

孤遊

ぎゅっと抱かれこんぺい糖やめました

白戸

まつ子

仮の世でゆっくり卵かけ御飯

小野

五郎

想い出は数字と共に貸金庫

伊藤

良彦

東北にがんセンターのない差別

髙瀬

霜石

ほろほろと葱間の葱になる車窓

菊池

ほろほろとほろほろほろとぼくのほね

太田

少年の窓にほろほろ届く物

佐藤

ちあき

ほろほろと二人で逝けぬ橋に立ち

成田

チセ

ほろほろほろ冬のホタルのお葬式

北嶋

萬里子

子が病んでほろほろ歩く母である

船水

焼き林檎ふっくら亡母を噛んでいる

千島

鉄男

秀句

たましいが花弁になっている困る

佐藤

俊一

成熟完了ほろほろ笑うボールペン

ひらく

つらいこといっぱいあったから食べる

髙瀨

霜石

特選

淡雪を溶かす小さな喪主の膝

千島

鉄男

宿題「ほろほろ」

赤平

くみこ

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佳作

仮の世でゆっくり卵かけ御飯

小野

五郎

洟水

はなみず

をたらした頃の恋だった

野沢

省悟

ストレスをほろほろ煮込むひとり鍋

斉藤

綺羅

ほろほろと散って喜劇のラブソング

古川

博子

旅立ちを見送る涙乾くまで

三浦

蒼鬼

ほろほろと散ってたまるかコップ酒

三浦

幸明

子が病んでほろほろ歩く母である

船水

ほろほろと湯豆腐くずす猫といる

松尾

みずき

死に場所を決めて枯れ葉の散る覚悟 佐藤

雅秀

ほろほろと溶ける定めの砂糖菓子

齋藤 紀

湯たんぽの優しさほどが調度いい

熊谷 冬鼓

ほろほろと焼き芋ほぐれウツほぐれ

千葉

かほる

コーヒータイム終わると落ちている鱗

岩崎

雪洲

ほろほろと飲めば明日の風となる

雄岳

お静かにほろほろ鳴くと撃たれます

吉田

吹喜

合掌の手から零れる過去の罪

白川

ほろほろとほろほろほろとぼくのほね

太田

車窓まだほろほろ未練映し出す

工藤

青夏

焼き林檎ふっくら亡母を噛んでいる

千島

鉄男

涙ほろほろあうんの風に任せましょ

まきこ

ジ・エンドの瓦礫ほろほろ泣く夜だ

八木田

幸子

告知され夢がほろほろ崩れゆく

白川

心地良い詐欺師の嘘に絆ホ

される

千巖

ほろほろと老いゆく母の骨粗鬆

村田

けん一

散る花を手に受けている微熱

角田

古錐

生きようとすればほろほろ骨の音

斉藤

綺羅

左脳ほろほろスマートフォンが動かない

雄岳

ほろほろとさせて男の骨を抜く

草野

力丸

切り捨てた尻尾夜な夜な泣きにくる

櫛引

八千代

散骨を決めかねている海の凪

太田

秀句

つらいこといっぱいあったから食べる

髙瀨

霜石

柩から舞台に移るエピローグ

松山

芳生

満月になろうと月が欠けてゆく

三浦

敬光

特選

淡雪を溶かす小さな喪主の膝

千島

鉄男

宿題「ほろほろ」

伊藤

良彦

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佳作

受かったよ短い電子文字にじむ

古山

和香子

酸欠の街に染みつく消費税

吉川

ひとし

母の色にじませながら娘が嫁ぐ

三浦

ひとは

道問えば油にじんだ指で指示

須藤しんのすけ

泣いてなどいないよ朝の非常灯

熊谷

冬鼓

あふれないように涙腺閉める春

伊藤

良彦

遺言を書くと読めないほど滲に

佐藤

雅秀

母の手紙淡くにじんだ星である

雄岳

襟首に男の嘘がにじみでる

櫛引

八千代

TPP父の野良着が乾かない

山口 啓賀

広辞苑手垢のにじむ初版本

北嶋 萬里子

汗にじむ古希のバンダナ新天地

齋藤

雨にじむ介護日誌の三行目

滋野

さち

湯豆腐の旨味になっていく二人

岩崎

雪洲

悔しさがじわりライバルの背が速い

工藤

青夏

実印を押すとじんわり真実味

村田

けん一

ペン先のインクぽとんと乱れ散る

鈴木

貴子

信念はまるで飛行機雲のよう

濱山

哲也

年金がにじむ牛蒡を笹掻きに

野沢

省悟

吊り皮ににじませている秘密保護法

渡辺

敏子

人柄がにじむカレーは中辛で

三浦

蒼鬼

負けん気を隠しきれない背が硬い

斉藤

綺羅

おっぱいがにじむ昭和の子守歌

坂本

勝子

涙目の視野でガラスの月割れる

角田

古錐

自然体でいよういようと夕焼ける

熊谷

冬鼓

薄墨の滲みは亡母の鳴咽だな

三浦

蒼鬼

団塊の世代傷口から夕日

須藤しんのすけ

還暦にセンターライン引いてから

白戸

まつ子

じんわりと疲れがにじむ朝の月

白川

ビードロの青で昨日を透かし見る

成田

我楽

秀句

雪解けの音が聴こえる亡母の櫛

千島

鉄男

やわらかな滲みちひろに包まれる

松尾

みずき

ローソクが揺れるあなたはそこにいる

髙瀨

霜石

特選

も一人のにじんだ僕は青かった

古川

博子

宿題「にじむ」

船水

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佳作

自然体でいよういようと夕焼ける

熊谷

冬鼓

おっぱいがにじむ昭和の子守唄

坂本

勝子

螺旋階段にじんだ過去が喋り出す

北嶋

萬里子

鏡より私らしい水溜り

三浦

敬光

レジェンドの涙繋げば数珠になる

八木田

幸子

血の滲む汗で掴んだ晴れ舞台

福士

慕情

酸欠の街に染みつく消費税

吉川

ひとし

血のにじむ苦労を綴る開墾碑

豊巻

つくし

道問えば油にじんだ指で指示

野呂

尚史

笑ってるママの絵にじむ子の心

船水 葉

血がにじむ傷つけたのは誰だろう

渡邊 こあき

TPP父の野良着乾かない

山口

啓賀

涙目の視野でガラスの月割れる

角田

古錐

にじんでもかすんでも触れたき胸あり

野沢

行子

哀愁がにじむ男の吹くラッパ

櫛引

八千代

普段着の女ひ

から匂うカスミ草

三浦

敬光

ボランティアみんな寡黙な人ばかり

濱山

哲也

母の色にじませながら娘が嫁ぐ

三浦

ひとは

雑兵どもの吐息がにじむ縄暖簾

内山

孤遊

天井のしみは先祖の汗なんだ

坂本

勝子

人間のエゴがにじんだ蜃気楼

草野

力丸

紅い灯の渗んだ街にだまされる

髙橋

窓みがく涙が枯れるまでみがく

まきこ

にじむのは雨のせいだよ泣いてない

まきこ

委任状柑橘類の匂だな

小野

五郎

あふれないように涙腺閉める春

伊藤

良彦

雪解けの音が聴こえる亡母の櫛

千島

鉄男

雨にじむ介護日誌の三行目

滋野

さち

許すのがむずかしいから字がにじむ

赤平

くみこ

死化粧母に女がにじみ出る

閑女

秀句

ひと言が意外と深手血がにじむ

奈良岡

時枝

一家団欒静止画像がにじみだす

髙瀨

霜石

実印を押すとじんわり真実味

村田

けん一

特選

肩書きが消えても渗むお人柄

太田

宿題「にじむ」

外﨑

まさる

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佳作

陽シ

コアダネェ村の病人診たかばん

豊巻

つくし

まんどろな月を閉じ込め古かばん

三浦

幸明

マルメロがこぼれはじめているカバン

草野

力丸

満州の風をはらんでやせカバン

渡邊

こあき

もう少し生きる余白を描きに行く

三浦

敬光

黒かばん津軽の苔が染みついて

治部

飴アメコ

もう無ナ

なってまた帰り道

村田

けん一

鬼太郎の父も往診するカバン

福士

慕情

花びらも涙も詰めてきた鞄

須藤しんのすけ

往診の鞄の中でやせる空

佐藤 ちあき

陽コあだね村の石コが入ってる

赤平

くみこ

マルメロの匂いがします革かばん

濱山

哲也

まんどろだ月をかばんサ詰めで吹フ

雪ギ

三浦

蒼鬼

すり減ったカバンも医師の貌をする

渡辺

敏子

カバンの蓋あけて異国の風とあう

櫛引

八千代

革のひびひとつひとつにある命

岩崎

雪洲

まるめろも泣いたか鞄濡れていた

三浦

ひとは

風よ風満州の風とび出した

松尾

みずき

ドラえもん隠れてないで出ておいで

佐藤

俊一

煮こごりをぷるると揺らす詩人の死

熊谷

冬鼓

鞄から洩れる戦後の燠である

千島

鉄男

往診セット情八割他二割

千葉

かほる

鞄の中のマルメロとお月さま

髙瀨

霜石

カバンの底に転がっている詩人の目

むさし

まるめろの匂いを詰めた古カバン

松山

芳生

カバンの底に陽こあだね村いつもある

白戸

まつ子

肋一本誰かにあげて来た帰り

佐藤

俊一

まんどろな月に照らされ黒くなる

坂本

清乃

まんどろな月を詰め込む黒カバン

みつこ

置き去りのかばんが語る満州哀歌

熊谷

冬鼓

秀句

カバンからぽぉぉと走り出る夜汽車

むさし

ため息と月光だけの鞄です

野沢

省悟

カルテには不条理な世が遺される

千島

鉄男

特選

往診カバンなもなも涙壼ですじゃ

髙瀨

霜石

席題「高木恭造の往診かばん」

内山

孤遊

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佳作

陽の当る村をつくった医師かばん

阿部

治幸

往診も詩でもかせいだ古カバン

成田

チセ

月の夜に詩人とび出す古カバン

角田

古錐

カルテには不条理な世が遺される

千島

鉄男

往診かばん一杯つまる詩の世界

野呂

呑舟

背負

い切れぬ業ゴ

がばんに詰める眼

マナグ

医者

千巖

マルメロの匂いがします革かばん

濱山

哲也

雪解けの水が流れてくる鞄

佐藤

ちあき

すり減ったカバンも医師の貌をする

渡辺 敏子

激流を泳ぎ渡ってきたカバン

まきこ

日し

こあだね処ど

も歩いた提げ鞄

有馬

洋子

まんどろだ月が照らしたアガベ医者

雄岳

まるめろの香りほのかな鞄開け

澤田

正司

雪道を往診カバンと行く馬ソリ

滋野

さち

カバンからぽぉぉと走り出る夜汽車

むさし

まるめろも泣いたか鞄濡れていた

三浦

ひとは

お大事に上がり框に黒カバン

稲見

則彦

レジェンドのメガネ下さい鍵の穴

成田

我楽

往診カバン開けるとぽっと津軽弁

岩崎

雪洲

往診でお家事情も汲むカバン

千葉

かほる

心音が聞こえてきます古カバン

渡邊

こあき

満州の風をはらんでやせカバン

渡邊

こあき

陽シ

コアダネェ村の病人診た鞄

豊巻

つくし

往診カバンなもなも涙壼ですじゃ

髙瀨

霜石

方言を詰め込んだまま眠ってる

白川

カバンあけると果てしない群青

小野

五郎

かしましいこともあったなぁ黒カバン

坂本

清乃

マルメロがこぼれはじめているカバン

草野

力丸

置き去りのかばんが語る満州哀歌

熊谷

冬鼓

まるめろ酒医師のかばんにしのばせる

阿部

治幸

秀句

陽シ

コあだね村サかばんで陽シ

コあでる

三浦

蒼鬼

鞄から洩れる戦後の燠である

千島

鉄男

津軽野の嘆きを聴いていたかばん

内山

孤遊

特選

まるめろとカバンが揺れる引き揚げ船

滋野

さち

席題「高木恭造の往診かばん」

櫛引

八千代

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講演

「わたしの川柳」 講

師・髙瀨霜石

講演開始前に、垂れ幕の演題「わたしの川柳」に手書き

で文字を加え、第一部「わたしの川柳さん」、第二部「わた

しの惚れた川柳人たち」に改編した髙瀨さん。

始まる十分前から「雑談」と称して話し始め、司会の工

藤青夏さんは「前座を自分でやってしまう珍しい講師」と

紹介。

御自分の号の由来、川柳の世界に入ったきっかけから川

柳の歴史へと、多くの川柳人の句を紹介しながら、巧みな

話術で聴衆をぐいぐいと引きつけ、幾度も起こる爆笑で一

時間があっという間に過ぎた楽しい講演でした。

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赤平 くみこ

野沢

省悟

野沢

行子

松山

芳生

船水

髙橋

星湖

坂本

勝子

豊巻

つくし

外﨑

まさる

濱山

哲也

伊藤

良彦

千島

鉄男

髙瀨

霜石

工藤

青夏

滋野

さち

三上

祈歩

新山

風太郎

野呂

尚史

斉藤

綺羅

草野

力丸

野口

一滴

八木田

幸子

中道

文子

髙橋

太田

坂本

トシ

稲見

則彦

福士

慕情

吉川

ひとし

閑女

坂本

清乃

まきこ

内村

ゆめ

森 雄岳

山口 啓賀

内山

孤遊

三浦

蒼鬼

三浦

ひとは

吉田

吹喜

鈴木

貴子

松尾

みずき

今泉

敏雄

北嶋

萬里子

齋藤

あや子

片谷

あやめ

古山

和香子

むさし

小野

五郎

佐藤

寿見子

櫛引

八千代

野呂

呑舟

有馬

洋子

澤田

正司

成田

チセ

白戸

まつ子

成田

我楽

白川

髙橋

せい子

三浦

敬光

尾形

せいじ

渡邊

こあき

熊谷

冬鼓

岩崎

雪洲

則田

椿

奈良岡

時枝

渡辺

敏子

治部

舞 山野 茶花子

古川 博子

佐藤

俊一

佐藤

ちあき

阿部

治幸

齋藤

三浦

幸明

ひらく

浜町

闊歩

千葉

かほる

長谷川

光昭

千巖

佐藤

雅秀

村田

けん一

みつこ

香田

龍馬

村井

規子

角田

古錐

菊池

須藤

しんのすけ

合計

八十七名

禁無断転載

発行日

平成二十六年三月八日

青森県立図書館

青森県近代文学館

〒030-

0184

青森市荒川字藤戸一一九の七

TEL

〇一七(七三九)二五七五

第十二回

青森県近代文学館

川柳大会入選句集

参加者(受付順)

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