十二人の怒れる男 12 Angry Men (1957年・アメリカ) -...

小堺一機の 6 9 十二人の怒れる男 12 Angry Men (1957年・アメリカ) 監督:シドニー・ルメット 出演:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー他 KDDI102- 84603- - TEL0366780689FAX0366780306E-mail:[email protected] © KDDI2012稿第12巻 第6号 平成24年 2月1日発行 10 10 2012 23 本冊子は、auショップ等で回収された紙資源をベースにつくられた「 KDDI循環再生紙 」を使用しています。 Printed in Japan 使18 12 使2 96 12 12

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  • 小堺一機の

    69

    十二人の怒れる男 12 Angry Men (1957年・アメリカ)監督:シドニー・ルメット出演:ヘンリー・フォンダ、リー・J・コッブ、エド・ベグリー他

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    第12巻 第6号平成24年2月1日発行

    1010

    20122/3

    本冊子は、auショップ等で回収された紙資源をベースにつくられた「KDDI循環再生紙」を使用しています。Printed in Japan

    画と言えば、大がかり

    なロケをして、豪華な

    セットを作り、今ではCGま

    で駆使して作られるものです。

    それが映画の醍醐味でもある

    わけですが、今回ご紹介する

    作品は、最初から最後まで、

    ほとんどの場面がたった一つ

    の部屋の中で撮影されていま

    す。しかもその部屋の

    中には、これまた最初

    から最後までほとんど

    の出演者が勢ぞろい。まるで

    舞台劇のような映画で、日本

    でも蜷川幸雄さんの演出で舞

    台化されたり、三谷幸喜さん

    もこの作品をモデルにした舞

    台をつくられています。

    夏のある日のこと、18

    歳の少年による父親刺

    殺事件の裁判が行われ、12人

    の陪審員が集められます。少

    年は幼い頃に母親を亡くし、

    暴力的な父親に殴られて育ち、

    すさんだ毎日を送っていたと

    いいます。犯行に使われた飛

    び出しナイフと同じものを、

    少年が買っていたという証言

    も取れています。そして、事

    件現場はスラム街にある少年

    と父親が暮らしていたアパー

    トで、階下に住む老人が逃げ

    る少年を、さらに向かいのア

    パートに住む女性がまさに刺

    殺の瞬間を見たとして、証言

    台に立っています。

    人の陪審員は、それぞ

    れの名前も職業も知ら

    ない、その日会ったばかりの

    間柄。蒸し暑い陪審員室の中

    で、評決が始まります。これ

    だけの証拠があるならば、有

    罪は確実で、刑罰は死刑です。

    陪審員たちは、「今日はナイ

    ターに行く予定なんだ」「息

    子が父親を殺すなんて世も末

    だな」等々、雑談を交わしな

    がら、議論もそこそこに有罪

    か無罪かの投票を開始します。

    ところが、全員が有罪に投票

    するかと思いきや、たった一

    人の陪審員が無罪を主張。簡

    単に有罪と決めてしまうのは

    いかがなものかと、異議を唱

    えるのです。

    こから、陪審員たちの

    白熱の議論が繰り広げ

    られていくのですが、〝犯罪

    を憎む正義の陪審員vs真実

    を追求する正義の陪審員!〟

    という話でもないんです。裁

    判が主題の法廷映画というと、

    正義感あふれる熱き弁護士が

    主役だったりしますが、この

    作品は陪審員が主役。自分の

    意志とは無関係に選ばれた名

    も無き一市民ですから、そん

    なに立派な人たちばかりでは

    ありません。一人だけ異議を

    唱える彼も、〝少年を救いた

    い!〟なんて正義感にみな

    ぎっているわけではなく、状

    況証拠だけで簡単に有罪にし

    て大丈夫なのかと、疑問を投

    げかけているだけ。そこがま

    た、すごくリアルなんですね。

    々ながらも、本当に有

    罪なのかを議論し始

    める陪審員たち。そして再度

    の投票を行ってみると、無罪

    が2人に増えていて……。上

    映時間は96分と、非常に短い

    作品です。けれど、密度はハ

    ンパなものではなく、各々が

    人間性を剥き出しにして意見

    をぶつけ合うシーンが続いて

    いきます。登場人物も、私生

    活の鬱憤で公正な判断ができ

    ない男、他人の意見に左右さ

    れる軽薄な男、面倒くさがり

    で自己中心的な男、そして差

    別意識に凝り固まった男など、

    〝自分にもこんな部分がある

    かも〟と感じさせるキャラク

    ターばかりです。

    れと、ラストカットに

    も注目してほしいです

    ね。タイトルは〝12人〟だけど、

    おや? 

    と思うはず。なぜそ

    うなったかを考えてみるとい

    いかもしれません。そして、

    日本で映画化されたら、この

    男はあの俳優にやってほしい

    ……などと考えながら見ても

    楽しいですよ。

    渋そ

    12

    映真