2014.1.31 救急部カンファレンス

糖尿病治療薬による 薬剤性低血糖

内科(糖尿病・代謝内分泌)

源本 真由、芝 真希

救急搬送された低血糖患者の臨床傾向

Haneda M, et al Nephrol Dial Transplant. 2009;24:338-41

救急搬送された約6000人の臨床研究(日本) 約1％に重症低血糖 による意識障害

60 %以上が 70歳以上の高齢者 CKD stage 3-5 SU剤内服

対象

2003年1月から2012年12月までの 10年間に糖尿病治療薬による薬剤性

低血糖で緊急入院となった62例

当院における薬剤性低血糖

患者背景

27%

39%

34%

腎機能

eGFR＜30

30≦eGFR＜60

60＜eGFR

19%

16% 65%

年齢

65歳未満 65-74歳

75歳以上

性別 男性 50 % 女性 50 %

病型 1型 7 % 2型 93 %

原因薬剤

SU or

SU＋OHA 62%

Insulin or

Insulin+ OHA 26%

その他 12%

※ OHA： oral hypoglycemic agent：経口血糖降下薬

HbA1c

0

5

10

15

20

＜5 5～5.9 6～6.9 7～7.9 8～8.9 9＜

全体平均HbA1c 6.6±1.3 %

HbA1c (%)

人数(

人)

気温と低血糖の関連

• 松山市の平均気温の中央値である15.8℃を基準に 高温群 (22人)、低温群(40人)に分類。

0

20

40

60

発生

件数

気温 高温群 低温群

Fisher’s exactly test (p=0.03)

シックディとの関連

説明変数 Odds比 95% CI p値 年齢 1.01 0.96-1.06 0.696 性別 0.58 0.18-1.87 0.362

腎機能 0.99 0.98-1.01 0.372 SU剤の使用 1.7 0.56-5.22 0.352

炎症反応(WBC or CRP)陽性

3.6 1.19-10.80 0.023

多重ロジスティック回帰分析

目的変数：低温群

• 気温の低い時期に多く、WBCもしくはCRPが高値の傾向。 感染症など、シックディと関連している可能性。

症状

• 低血糖→血糖 70 mg/dl未満と定義されることが多い。 (カウンターホルモンの放出が増加し始める)

血糖 55 mg/dl前後

血糖 50 mg/dl前後

血糖 30 mg/dl前後

交感神経症状 (発汗、動悸、振戦、悪心など)

中枢神経症状 (眠気、見当識障害、脱力、不安など多彩な精神症状)

大脳機能低下 (痙攣、意識消失、 一過性片麻痺など)

• 症状は多彩で、症状が出現する血糖も人それぞれ。 • 無自覚低血糖も多々ある。

治療

• ブドウ糖として、経口では5－10 g、静注では10－20g程度

• 歯肉に糖質を塗りつける • グルカゴンの筋注

到着までに・・・(主に家族に指導)

救外到着後

• 遷延性低血糖・再発のリスクを考え、経過観察・再発予防を。 (特に高齢者、肝腎機能低下がある場合、経口薬による場合など)

大切なのは

低血糖による後遺障害

(Whimer RA, et al JAMA. 2009;301(15):1565-1572.)

• 認知機能障害と重症低血糖に関連有り

(Hsu PF, et al Diabetes Care. 2013;36:894-900.)

低血糖は心血管疾患、総死亡と関連

粥状硬化プラークの不安定化 QT延長

冠動脈の虚血 などと関連

HbA1c

血糖値正常を目指す

6.0未満 7.0未満

合併症 予防

8.0未満

治療強化が困難

目標

血糖コントロールの指標

・高齢者 ・他に基礎疾患を有する ・低血糖などにより治療強化が難しい

経口薬の注意点

インクレチン関連薬とSU剤の併用

(Seino S. J Diabetes Invest. 2010;1:37-39.)

インクレチン関連薬は SU剤と併用することで、低血糖が増加する。

御清聴ありがとうございました