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2012/6/16 発行 Vol. 8 筑波大学 医学医療系 この度昨年の東日本大震災から 1 年がたちま した。勿論、現在も復興の真只中の東北 3 県の 方々のご心痛とご苦労は現在も続いており、本当 に大変だと思いますが、我々筑波大学の毎日は以 前のように落ち着きを取り戻したようです。東北 3 県、特に福島県の方々のいつ終わるとも知れな いご苦労に深く心を寄せ、同じ日本人として我々 に何が出来るかを考えると共に、落ち着いた日々 の生活に感謝する心を持ちたいものです。人間と いう生き物がその様な大惨事を経験せずとも、平 時においても平凡な生活の大切さを常に実感で きればいいのですが、浅はかな存在である我々人 間はこの様な惨状を経験する事でしか平凡な毎 日がいかに大切であったのかを知ることが出来 ないようです。 平凡な毎日という言葉で思い起こされる事で すが、戦争という理不尽な絶対的力の無意味さと、 平凡な生活の中の日々の営みがいかに幸せなも のであるかを描くことでは第一人者である新藤 兼人監督が、2012 年 4 月に 100 歳の誕生日を迎 えられました。更にその後、最後の作品となった 一枚のはがきを残して 2012 年 5 月 29 日に逝去さ れた事は皆さんもご存じの事だと思います。この 一枚のはがきは、戦争末期に動員された中年兵が、 くじ引きで戦地を決定され、片や生き延びる・片 や戦死するという戦争の理不尽さと、生き残った 人間のやるせ無い無常な心と、それでも運命に抗 って生きて行こうとする力強さを描ききった秀 作であるとの事です。6 月に県南生涯学習センタ ーで上映会があるとの事で、私も妻と息子と一緒 に観に行こうと思っています。新藤兼人監督は、 理不尽さの最たる代表である戦争を題材にした 1

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2012/6/16 発行 Vol. 8

筑波大学 医学医療系

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この度昨年の東日本大震災から 1 年がたちま

した。勿論、現在も復興の真只中の東北 3 県の

方々のご心痛とご苦労は現在も続いており、本当

に大変だと思いますが、我々筑波大学の毎日は以

前のように落ち着きを取り戻したようです。東北

3県、特に福島県の方々のいつ終わるとも知れな

いご苦労に深く心を寄せ、同じ日本人として我々

に何が出来るかを考えると共に、落ち着いた日々

の生活に感謝する心を持ちたいものです。人間と

いう生き物がその様な大惨事を経験せずとも、平

時においても平凡な生活の大切さを常に実感で

きればいいのですが、浅はかな存在である我々人

間はこの様な惨状を経験する事でしか平凡な毎

日がいかに大切であったのかを知ることが出来

ないようです。

平凡な毎日という言葉で思い起こされる事で

すが、戦争という理不尽な絶対的力の無意味さと、

平凡な生活の中の日々の営みがいかに幸せなも

のであるかを描くことでは第一人者である新藤

兼人監督が、2012 年 4 月に 100 歳の誕生日を迎

えられました。更にその後、最後の作品となった

一枚のはがきを残して2012年5月29日に逝去さ

れた事は皆さんもご存じの事だと思います。この

一枚のはがきは、戦争末期に動員された中年兵が、

くじ引きで戦地を決定され、片や生き延びる・片

や戦死するという戦争の理不尽さと、生き残った

人間のやるせ無い無常な心と、それでも運命に抗

って生きて行こうとする力強さを描ききった秀

作であるとの事です。6月に県南生涯学習センタ

ーで上映会があるとの事で、私も妻と息子と一緒

に観に行こうと思っています。新藤兼人監督は、

理不尽さの最たる代表である戦争を題材にした

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映画を多く手掛けてお

り、すべの作品で共通

するテーマは巨大な力

に押しつぶされる一人

一人の運命のはかなさ

と、それでも必死に生

きて行こうとする人間

の素晴らしい底力を描

き切ることに長けてお

られるので、今から本

当に楽しみです。

その新藤監督の遺言ともいうべき言葉の中で、

100歳まで生きてきた人間として生きる目的を問

われたとき、「唯、心を込めた映画を作り上げる

ためだけに、生々しく生き抜きたい」と話されて

おられます。100歳にもならんとする超高齢の巨

匠が発した言葉にも拘らず、何と凄まじい力、且

つすがすがしい生き様が感じられる言葉でしょ

うか。映画という分野であり、一見医療とはかけ

離れているように見えますが、我々医師も新藤監

督を見習っていつまでも清々しい心を持ち続け

ながら、唯患者の為・医学の進歩の為に生き抜き

たいものです。

話は変わりますが、昨年 12 月山下達郎のライ

ブに行きました。山下達郎が私の親友である医科

歯科時代の同級生で現管工業健康管理センター

所長高山重光君の大親友であることから、彼の中

にあふれる音楽性や芸術性に共感し、幾度となく

ライブに行き私も大ファンとなりましたが、その

山下君が昨年のクリスマスコンサートで素晴ら

しい事を話していたので紹介します。「今を時め

く AKB48 は東京ドームのコンサートで埋め尽く

す3万人のファンに感動を与える事が出来る。自

分は東京ドームのコンサートで埋め尽くす 3 万

人のファンに感動を与える事は出来ないかもし

れないが、中野サンプラザに来てくれる3千人の

ファンに感動を届けるためだけに歌い続けたい」

と話していました。既に齢 60 に手がかかろうと

する山下君のその言葉を聞いて、自分の事をふと

考えました。医師として感動を与えられる数なん

て、山下君に遠く及ばないわけで、3千人に感動

を与えるなんて無理な話で、患者さんとその奥さ

ん、娘さんの3人に感動を与えるのがせいぜいで

す。しかし、感動の深さで言うと、亡くなりかけ

た患者さんの命が復活する事が、また寝たきりで

あった患者さんが再び家で生活できる事が、その

3人に、限りなく深い感動を与えることもできる

のではないでしょうか。更に、その家族の子孫ま

で未来永劫綿々と繋がっていく生命を考えると、

医師が成し得る感動も素晴らしいものではない

でしょうか。

我々医師は、究極の感動を全ての患者さんに与

えることが出来るという大変幸せな境遇に置か

れていると思うのです。新藤兼人監督の映画を引

き合いに出すまでもなく、人間にとって生きると

いう事の重大さは何物にも代え難い事です。その

お手伝いができるという事は我々医師にとって

幸せこのうえない事です。

大震災の翌年において、この命の尊さ・そして

平凡に生きていく人間の力強さ、更にはこれらの

事に関与していけるという我々医師としての仕

事の意味を強く感じている今日この頃です。

《就任の言葉》

●筑波大学循環器内科 土浦市地域臨床教育ステーション 講師 西 功 この度、青沼和隆教授をはじめ、筑波大学循

環器内科の諸先輩方、諸先生方のご高配により、

2012年4月より独立行政法人国立病院機構霞ヶ

浦医療センター内にある筑波大学附属病院土

浦市地域臨床教育ステーションに着任いたし

ました。

出身は茨城県牛久市で、平成 5年佐賀医科大

学医学部卒業後、筑波大学附属病院循環器内科

医局員として県内の関連病院

を中心に循環器診療に携わっ

て参りました。

心筋症、心不全、心臓リハ

ビリテーション(心リハ)領

域を主に研究をしています。

ここで簡単にですが、心リハ

について紹介させていただきます。急性心筋梗

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塞や不安定狭心症などのいわゆる急性冠症候群

患者において、超急性期治療は冠動脈インター

ベンションが最優先されます。しかし、急性期

以降は再発予防効果のある心リハが重要となり

ます。心リハに参加することにより、冠疾患患

者の死亡率が 20~26%低下することがわかって

おり、日本循環器学会や欧米の心臓病治療ガイ

ドラインでも、心リハに参加することが推奨さ

れています。

「(1)体力と自信の回復、(2)快適で質の高

い家庭生活や社会生活への復帰、(3)将来の再

発や再入院の防止」を目標として、心リハの適

応がある心血管疾患患者に対しては、急性期だ

けではなく、回復期・維持期においてもそれを

継続し行う必要性があります。しかしながら、

本邦では循環器専門医研修施設(526 施設)にお

ける急性心筋梗塞に対する緊急冠動脈インター

ベンション治療は 92%の施設で行われています

が、外来通院型心リハを施行している施設は 9%

に過ぎかったとの報告もあります。

人口10万人当たりの医師数が166.8人と全国ワ

ースト 2位の茨城県では心臓リハビリテーショ

ン指導士資格を有する循環器内科医師も非常に

少なく、外来通院型心リハを行なっている施設

数は土浦市を含む県南地域においても十分とは

いえません。

着任してまだ間もないのですが、積極的に心

リハに携わってくれる看護師がいることや今後

リハビリスタッフが増員される予定もあり、鈴

木祥司副院長の強力なバックアップのもとで、

早急に心リハ部門が立ち上がるとの期待が膨ら

んでおります。

今後とも、引き続き、皆様のご指導、ご鞭撻

の程よろしくお願い申し上げます。

●筑波大学循環器内科 講師 五十嵐 都

平成 24 年 4 月付で医学医療系、循環器内科

の講師に着任いたしました。

平成 9 年に筑波大学を卒業しレジデント過程

を筑波大学で修了し、その後は筑波メディカル

センター病院で循環器内科一般の診療に携わ

ってまいりました。その間も不整脈を専門に学

びたいと筑波大学の研究生としてアブレーシ

ョンに参加させて頂いておりましたが、さらに

不整脈についての知識や診療技術を得たいと

思い、青沼先生にお願いして大学院生として平

成 20 年に筑波大学に戻って参りました。大学

院の 4年間では、広い視野で不整脈を学ぶこと

ができた貴重な期間でした。スタッフの先生方

には様々な研究や論文、アブレーションをはじ

めとする臨床まで本当に多くのことをご指導

頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。今後は、

自分がこれまでスタッフの先生方にして頂い

たように、臨床・研究の両方で少しでも後輩の

みなさんの力になれるよう努力したいと思い

ますし、もちろん筑波大学循環器内科の一員と

して患者様のお役に立てるよう精いっぱい頑

張りたいと思います。今後とも、どうぞよろし

くお願いいたします。

●筑波大学循環器内科 病院講師 木村泰三 平成 23 年 12 月から大学病院 病院講師に着

任いたしました。平成 13 年に大学を卒業し、

初期研修終了後、筑波メディカルセンター、西

南医療センター、筑波大学附属病院で循環器内

科の多くの尊敬する先生たちにご指導いただ

いた後、動脈硬化や虚血性心疾患の基礎研究を

希望し、卒後 7 年目から大学院に進学いたしま

した。大学院在学中に 2 年間、山口大学第二内

科で基礎研究を学ぶ機会をいただき、主に腹部

大動脈瘤に関する基礎研究を行ってまいりま

した。今後も血管疾患、虚血性心疾患の基礎研

究を発展させ、筑波大学循

環器内科を基礎研究の分野

から盛り上げていきたいと

思っております。また、臨

床検査部の病院講師として

採用されており、血管エコ

ーや血管機能検査などの生

理機能検査も担当していますが、これをさらに

充実させ、茨城県地域医療に貢献していきたい

と考えております。今後とも皆様のご指導とご

鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

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《近況報告》

●日立製作所ひたちなか総合病院 小宅康之

日立製作所ひたちなか総合病院の小宅と申

します。私がこの病院に赴任したのが 2000 年 4

月でしたので、この 4 月で 12 年、干支でいう

とちょうど一回りしたところです。この間は当

院にとって大きな変革期であり、この時期にこ

こで仕事ができたことは私にとって大きな経

験になったと思っております。

2000 年に異動してきたときには、築 40 年の

古い建物であり、日立製作所水戸総合病院とい

う名称でした。旧国立水戸病院や日赤など似た

ような名前で間違う患者さんもいたようです。

名称は水戸総合病院でしたが、病院は水戸市で

はなくひたちなか市(勝田駅から歩いて 5 分と

便利な場所です)にあります。ひたちなか市は

人口が 16 万人ですが、市内に内科、特に循環

器の病院は他にあまりありませんので中核病

院としての機能が求められています。

これまで山内孝義先生とともに循環器内科

だけでなく内科を盛り上げてきたつもりであ

ります。2001 年には心臓カテーテルを立ち上げ

ました。当時、日立総合病院の田中喜美夫先生、

晴嵐荘病院の増岡健志先生、筑波大学の渡辺重

行先生をはじめ諸先生方には大変お世話にな

りました。その後、日本循環器学会循環器研修

施設、日本内科学会教育関連病院、日本内科学

会教育病院などの認定施設なども取得するこ

とができました。また、臨床研修病院として、

初期研修医が毎年コンスタントに入っていま

す。当院管理型の研修医のほか、筑波大学や東

京医科歯科大学からの研修医も増え、互いに切

磋琢磨しています。

2010 年 7 月には、念願であった新病院が旧病

院の隣の敷地にオープンし、病床数も 215 床か

ら 302 床に増床しました。循環器内科病棟も 36

床(ICU 4 床含む)となり、山内副院長のもと、

この 4月からは川村龍、林真由、臨床研修医(今

年は内科の研修医が 10 名程度います。)ととも

に、日夜、臨床・教育・研究(?)に励んでお

ります。また、心臓リハビリテーションも立ち

上げ確実に症例数を増やしております。

この時期に新築できたおかげで、昨年の大震

災の際にも免震の建屋は棚から物一つ落ちる

こともなくすみ、救急診療を続けることもでき

ました。ただ、ひたちなか市内は約 2週間にわ

たり断水したため、通常診療に戻るまではかな

りの日数を要しました。

2011 年 4 月には、筑波大学附属病院ひたちな

か社会連携教育研究センターが開設され、消化

器内科、呼吸器内科、膠原病内科の医師が増員

となりました。内科の充実により、地域の中核

病院としていっそう精進していく所存であり

ます。これからも皆様のご指導ご鞭撻のほどよ

ろしくお願い申し上げます。

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●日立製作所日立総合病院 樋口甚彦

スタッフ)悦喜豊、鈴木章弘、常岡秀和、樋口甚彦、山内理香子、佐藤陽子、安達亨、遠藤洋子

当院は県北地域の中核病院で医療圏は広く、

北は大子町や北茨城市、南は水戸市やひたちな

か市、西は常陸太田市や常陸大宮市、東は海(海

難事故)まで含まれます。救急車の受け入れも

多く、年間 5000 件前後で推移しています。

昨年 3 月 11 日の東日本大震災では、幸いに

も人的被害はありませんでしたが、老朽化した

病棟が使用不能となり、病床が 560 から 390 ま

で激減しました。医局も旧消化器病棟を改修し

て使用しています。私の机の前には酸素吸入口

とナースコールがありますので、酸素は 24 時

間吸い放題です。病床減少のなか、なんとかや

りくりして急性期から慢性期治療まで行って

いますが、全ての救急車や急患を受け入れるこ

とができず、地域の先生や近隣医療圏の先生方

にはご迷惑をおかけしています。当院で対応で

きなかった患者さんを、水戸、ひたちなか地域

で受け入れて頂いているとお聞きします。この

場をかりてお礼申し上げます。震災直後はいろ

いろな意味で、病院全体に「やってやろう」と

いう意気込みがありましたが、徐々に普段の生

活を取り戻すに従い、緊張の糸が切れたように

離職する職員(特に看護師)が目立つようにな

りました。これも震災の傷跡の一つなのかなと

思い知らされています。しかし、そんななか当

科には鈴木先生をはじめとして、心身ともに充

実した先生が多く、震災前よりもむしろパワー

アップしています。現在、チーム医療を第一に

体育会系のノリで毎日診療にあたっています。

さらに当科は女性医師が多く、他科に比べて華

やかなところも魅力的です。今後はこの魅力を

生かして、研修医をはじめ多くの先生方を勧誘

したいと思います。

本年秋には高度救命センターを開設する予

定で、現在、センターの建設を行っています。

救命センターの運営は容易ではありませんが、

センターができるに従い、何ともいえない高揚

感を感じています。これは皆さんがスカイツリ

ーをみるのと同じ感覚だろうと思います。ただ、

当院にはスカイツリーのような入場制限があ

りませんので、開設後に多くの患者さんが押し

かけてくるのはご勘弁いただきたいと思いま

す。また、本年 4月からは筑波大学との連携に

より、日立社会連携教育研究センターが開設さ

れました。立派な紙表札が医局の奥の奥に設置

され、当院と大学とが強い絆で結ばれたことが

アピールされています。今後、大学との間でま

すます人や情報の交流が盛んになると期待し

ています。若手の先生(いや、若くなくても結

構)で、救命医療や日立総合病院に興味のある

方はいつでも連絡お待ちしています。

最後になりますが、青沼先生をはじめ多くの

先生方に支えられて、我々は日々の診療に携わ

ることができております。今後も皆様に協力を

お願いすることが多々あると思いますが、その

際はどうかよろしくお願いいたします。

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● 茨城県立中央病院 安倍大輔

筑波大学 19 回生、平成 10 年卒業、平成 16

年より現在まで茨城県立中央病院に勤務して

おります安倍大輔です。肩で風を切って歩いた

(?)大学でのチーフレジデントを終え、今の

病院に赴任当初、県立病院のお役所体質・

activity の低さに驚き、何度もコメディカルと

喧嘩していました。土日に来た心筋梗塞の患者

の CPK を検査科に提出したところ、「>3000」

という何ともアバウトな結果が帰ってきたと

きは唖然としてしまいました。院長との最初の

面接のときは「うちはガンセンターだから救急

は無理に頑張らなくていいよ。」と言われ、外

来をやっていると「この病院は夜は診てくれな

いからねぇ。」と愚痴られること数知れず。そ

の後県の方針転換、院長の交代があり徐々に救

急病院へ変貌していきました。私自身、循環器

内科として「断らない病院・断らない診療科」

を目指して日々頑張ってはみましたがなかな

か成果がでず歯がゆい気持ちでいましたが、武

安先生が赴任されてから循環器内科はあっと

いう間に進化して行きました。

当院のいいところは何といっても診療科の

垣根が内科外科問わず低いことでしょう。さら

に筑波大系に留まらず自治医大系・東大系の医

師とも一緒に働きます。自治医大の研修医は何

故か皆モチベーションが異常に高く、指導のし

甲斐があります。まさか東大理Ⅲの人と一緒に

働き、指導することになろうとは思いませんで

した。

私ごとですが今の病院の勤務が長いことも

あり、4月から「医局長」なるポストをあてが

われてしまい、その重責を痛感しているところ

であります。また学生時代大嫌いであった長距

離走に何故か最近ハマっており、先日初めてか

すみがうらマラソン 10 マイルを走りきりまし

た。いずれフルマラソンに挑戦したいと思って

います。教室内にも何人かフルを走る方がいる

と 聞 い

て い ま

す の で

是 非 ご

一 緒 さ

せ て く

ださい。

青 沼

先 生 は

私が県南を出ていくのとちょうど入れ替わり

で筑波大学にいらっしゃいました。臨床に関し

て直接ご指導いただく機会はなかったにも関

わらず、臨床研究・学会発表に関して本当に親

身になってご指導くださいました。この場を借

りて御礼申し上げます。ここ数年は皆さんが大

変な思いでファイルメーカーと戦ってくださ

った結果まとまった「ICAS registry」を用い

日循も出させていただき、佐藤明先生にも多大

なご指導をいただきました。ICAS に関わったす

べての方に感謝申し上げます。そもそも研究に

興味が持てず日々冠動脈のトンネル工事に明

けくれていた自分が医学統計・エクセルシート

に向き合おうとしたのは、CVIT の専門医申請で

業績不足を指摘されたことがきっかけでした。

最初は業績をつくるため、半ば嫌々独学で統計

の勉強を始めたのですが、ちんぷんかんぷんで

全く進みませんでした。日循で演題が採択され

たことでさらに退路を断たれ、死にものぐるい

で本を探しました。だんだん理解できるように

なってくると、エクセルシートを弄るのが楽し

くなってきました。日循の勢いで佐藤先生にご

指導いただき現在は ICAS で ESC(ミュンヘン)・

AHA(ロサンゼルス)へ挑戦中です。

その大元となった CVIT の専門医は4月 18日

にようやく実技評価を受けることが出来、実は

緊張から解き放たれた勢いでこの文章を書い

ています。

昨年からは循環器外科が開設され、先日よう

やくロータブレーター・ICD/CRT の施設認定基

準を満たすことができました。「トンネル工事」

チームだけでなく、吉田健太郎先生率いる「電

気工事」チームも今後ますます non-stop で発

展していくものと思われます。その中の一員と

して皆に遅れをとらずにこれからも頑張って

いきたいと思っています。今後とも宜しくおね

がいいたします。

追記)丸田先生は私が結婚する前に痩せていた

ころに似ています。写真でわかりますか?

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《受賞》

●第 1回循環器臨床研究奨励賞(症例報告部門)筑波大学 医学医療系 講師 星 智也

受賞論文:Fatal Ostial Right Coronary Artery Coronary Stent Fracture and Perforation Induced

by Mechanical Stress Between the Sternum and Dilated Aortic Root.

Circulation 2011;123;1679-1682

●第 46 回日本成人病学会 優秀賞 茨城西南医療センター 平谷太吾

この度、2012 年 1 月 15 日の第 46 回日本成人病

学会で、優秀賞を受賞することが出来ました。演

題は「肺静脈隔離術を施行した心房細動患者にお

ける冠動脈疾患有病率に関する検討」です。筑波

大学は、青沼和隆教授を始め、不整脈治療の専門

医を数多く擁しており、心房細動に対する肺静脈

隔離術(PVI)の症例数は年間 200 例ほどに上りま

す。また PVI 施行前に、ほぼ全ての患者さまに冠

動脈造影を行っていることも特徴の一つです。今

回は、初回PVIを施行した心房細動患者において、

冠動脈疾患の有無およびその背景因子を検討し

ました。結果、初回 PVI 施行患者における冠動脈

疾患の有病率は 15%と比較的高く、合併する冠危

険因子が増加するほど、冠動脈疾患の有病率が高

率となるという結果でした。その中でも糖尿病、

高齢(65 歳以上)、高血圧の 3つが冠動脈疾患罹患

の独立規定因子となりました。

循環器内科としての経験もまだわずかな自分

にとっては、集計作業や統計など、初めての体験

が多く、戸惑いを感じ

ながらやっていまし

た。その中で、この度

日本成人病学会で発

表の機会があり、この

ような賞をいただけ

たことを大変嬉しく

思っております。今回

の受賞を励みに、今後

さらに集計数を増やし、さらに濃い研究が出来れ

ばと考えています。また日々の実臨床で患者さま

と接する中で、自分の興味ある分野を探求し、新

たな研究にも目を向けられればと思います。

最後になりましたが、今回の研究を始めるきっ

かけを下さった五十嵐都先生、黒木健志先生、お

よび集計作業から統計、発表に至るまでご指導い

ただきました佐藤明先生、星智也先生ほか、多く

の先生方に感謝の意を述べまして、報告を終えさ

せていただきます。

《入院患者数と検査数》

2008年 2009年 2010年 2011年

入院、転入数 839 965 1026 1028

心臓カテーテル検査(左心カテ) 338 350 356 358

心臓カテーテル検査(右心カテ) 40 75 97 74

経皮的カテーテル心筋焼却術 343 420 421 432

ペースメーカー移植術 45 48 67 58

埋込型除細動器移植術 46 44 66 55

両室ペーシング・除細動器移植術 30 28 30 43

心エコー 5382 6550 7198 7524

経食道エコー 344 456 549 663

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《大学院に入学して 人間総合科学研究科》

●渡部浩明(疾患制御医学専攻) 筑波大 26 回卒の渡部浩明です。筑波大学附属病院で 6年間の研修を行い、その

後、筑波記念病院、日立総合病院でお世話になりました。臨床医として働いてい

く中で、疾患に対する疑問や自分の専門としている虚血性心疾患に関して理解を

さらに深めたいと考え、今年度から大学院へ進学しました。ただ、臨床を第一に

やっていきたいという考えから、昼夜開講制の大学院へ入学させていただいてお

ります。大学院と臨床を並行して行っていくため、現在の職場であるメディカルセンター病院の先

生方や研究でお世話になっている先生方には多々ご迷惑をおかけすることもあると思います。両方

を両立し、できる限りの成果を上げることができるように頑張ろうと思いますので、今後ともどう

ぞよろしくお願い申し上げます。

●立花牧子(疾患制御医学専攻)

昨年度レジデントを修了し、4月より大学院に入学しました立花牧子と申します。

6 年間、様々な病院をローテーションさせて頂き、多くの先生方にご指導を頂くこ

とで、無事にレジデントを終えることができました。本当にありがとうございまし

た。

日々の循環器診療の中で特に不整脈疾患に興味を持ち、臨床のみではなく、基

礎・疫学等も含めて見識を深めたいと思い、大学院へ入学させて頂きました。現在

は、筑波記念病院に勤務しながら大学院での研究を開始したところです。まだまだ未熟で至らない

点も多いですが、充実した大学院生活を送れるよう基礎研究という新たな分野で研鑽を積み、アブ

レーションやペースメーカ手術などの臨床技術を向上させることを目標に努力していきたいと考

えております。今後ともご指導・ご鞭撻の程、よろしくお願い致します。

●會田 敏(疾患制御医学専攻) 2012 年 4 月より、筑波大学循環器内科でお世話になることになりました會田敏

と申します。出身は山形で、2008 年に東北大学を卒業後に関連病院にて初期研修

を 2年間と循環器内科として 2 年間の後期研修を修了しまして、今年で 5年目にな

ります。筑波大学ではレジデントとして循環器疾患一般について多くの経験を積ま

せて頂いておりますが、特に興味のある不整脈疾患の診断や治療についてより深く

学ばさせて頂きたいと考えております。

また私は本年度より大学院博士課程へ入学させて頂き、これから 4 年間はレジデントとして臨床

経験を積みながら、研究活動を進めていこうと考えております。未熟ものでご迷惑をかけることも

多々あるかと存じますが、一生懸命がんばりますので何卒ご指導宜しくお願い致します。

●渡邉雄介(疾患制御医学専攻)

はじめまして。平成 15 年卒の渡邊雄介と申します。学生時代はアイスホッケー

部に所属し、例のごとくギリギリの成績で卒業しました。救命救急を中心とした初

期研修を希望し、初期研修は東京災害医療センターで 2年間行いました。その時に

出会った AMI の PCI に感銘を受け、循環器内科の門をたたきました。その後は榊原

記念病院で 6 年半、インターベンションを中心とした臨床を行って参りました。榊

原記念病院で TAVI に出会いまた感銘を受けました。笑 その後、たまたま研究会

でお知り合いになった慶応大学の林田先生のつてをたどって、昨年 10 月よりフランスのパリにあ

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ります Institut Cardiovasculaire Paris Sud にクリニカルフェローとして TAVI の他、Structural

Heart Disease に対するインターベンション治療を勉強しています。留学に際して学術的な背景の

必要性を感じ、親友である田尻和子先生、成瀬代士久先生に相談したところ青沼教授をご紹介頂き、

大学院にお世話になることになりました次第です。大学では全くの新参者で、分からないことだら

けですが何卒よろしくお願い申し上げます。

●増田慶太(疾患制御医学専攻) 今年 4 月より、社会人大学院として筑波大学で勉強させていただくことになり

ました。大阪大学卒業後、聖路加国際病院で初期研修を行い、心臓血管研究所付

属病院を経た後、現在は聖路加に戻って循環器内科全般、中でも不整脈を専門に

診療しています。この 3 月でスタッフの大幅な入れ替えがあり、特に不整脈部門

は上司が退職してしまったため、私一人でやっていかなければならないという大

変な状況ではありますが、ピンチはチャンスと思い頑張っていきたいと考えてい

ます。

今まで臨床畑にずっといたため、大学院では study のつくり方など、研究をどのように行ってい

けばよいかを主に勉強していきたいと考えています。筑波大学ではカテーテルアブレーションやデ

バイス治療の症例も非常に多く、私自身もまだまだ未熟者であるため、電気生理についても同時に

勉強していくことができればと思っています。はじめの 1,2 年は主に聖路加が活動の中心になっ

てしまうため、皆さんと一緒に過ごす時間は少なくなってしまうかもしれませんが、時間のある時

を探して足しげく大学に通いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

●長山 医(疾患制御医学専攻)

本年度より大学院に入学しました長山 医(おさむ)と申します。都内の病院

に勤めながら昼夜開講制を利用して入学致しました。臨床面に関しては現在、心

臓リハビリテーションにも携わっています。心臓リハビリテーションは天皇陛下

の術後のプログラムに導入されるなど一般的には知られるようになりましたが、

まだまだ認知度が低い分野であります。普及に少しでも貢献できるようにと微力

ながら努力しています。

研究に関しては心臓を中心とした運動生理を研究してきました。以前から、研究の裾野が広げら

れるように違う視点からでも研究を考えられる能力を持ちたいと思っており、また不整脈治療にも

興味があることから入学を決めました。

未熟者でご迷惑を多々掛けると思いますが、ご指導の程宜しくお願い申し上げます。

《新レジデント挨拶》

●川辺正之

2012 年 4 月よりお世話になっている川辺正之と申します。出身大学は秋田大学

です。秋田大学での初期研修終了後、都立多摩総合医療センターで一般内科、循環

器内科の後期研修を行っておりました。急性期治療だけでなく、よりアカデミック

なことなどを勉強したいと考え今回筑波大学の門戸をたたかせていただきました。

今年で 7 年目となりますが一人前にできることはまだ何もなく、いずれ何か専門的

な分野を持ち精進していきたいと考えています。ご面倒を多々かけると思いますが

ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

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●佐藤希美

今年度より筑波大学循環器内科に入局させていただきました佐藤希美と申しま

す。2008 年筑波大学卒業で、初期研修を筑波大学附属病院で 2 年間行った後、東

京都立多摩総合医療センター(旧 都立府中病院)で 2年間勤務し、今年から茨城県

にもどってまいりました。現在医師としては 5 年目ですが、初期研修の後の 2年間

は、内科系・救急科のローテーション、離島勤務などが中心で、本格的に循環器内

科で仕事をするのは今年からになります。本年度は、附属病院で勤務をさせていただいております。

知識・技術ともにまだまだ未熟ですが、研鑽を積んでいきたいと考えております。よろしくお願い

いたします。

●會田 敏

《大学院に入学して》をご覧ください。

●本田洵也

お世話になっております。今年度より入局いたしました3年目の本田洵也と申し

ます。茨城県出身で、筑波大学を 2010 年に卒業したのち、筑波大学附属病院で初

期研修を行いました。学生時代から循環器の分野に興味を抱いておりましたが、実

際にローテートしてみて、治療により劇的に患者様が快方に向かう姿をみて大変や

りがいを感じ、また諸先生方にとても良くして頂いたことに感銘をうけ、入局を決

めました。

現在は 4 月より水戸協同病院で循環器内科医としての一歩を歩み始めました。右

も左も分からず、とまどうことは多々ありますが、渡辺重行先生、外山昌弘先生をはじめ多くの先

生方より懇切丁寧な御指導を賜り、充実した研修をさせて頂いております

今後色々とご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、少しでも皆様に貢献できるよう精進

していきますので、これからも御指導御鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

●丸田俊介

本年度より筑波大学循環器内科でお世話になることになりました 3 年目の丸田

俊介と申します。私は 2010 年に筑波大学を卒業し、筑波大学附属病院で 2 年間の

初期研修を行って参りました。学生時代より循環器内科医を志しておりましたが、

大学病院で先生方の熱心な指導に触れ、また研修中に長男が産まれるなどの縁もあ

り、今回入局を決めました。

この 4 月からは県立中央病院で研修させて頂いております。専門科の勉強は始まったばかりで、

至らない点が多く、スタッフの方々には迷惑をかけてばかりですが、丁寧にご指導して頂き、大変

充実した研修の日々を送っております。今もこれからも多くの先生方と出会う機会があると思いま

すが、できる限り多くのことを学び取っていければと日々精進しております。これからも、どうぞ

よろしくお願い申し上げます。

新棟オープンまであと 193 日

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《学会報告》

●第 76 回日本循環器学会学術集会に参加して 筑波大学医学医療系 講師 星 智也

2012年3月の日本循環器学会は福岡で開催さ

れました。1 年間の研究成果を発表する場とし

て筑波大学からは例年多数の演題が発表され

ていますが、今回も多数の演題が発表されまし

た。私自身は 2つの演題を発表する機会が与え

られました。

最初の演題は「PCI 治療後のβ遮断薬の長期

効果」についてであり、Featured Research

Session での発表でした。Featured Research

Session に採択されたのは今回が初めてであり、

会場では普段よりも緊張した雰囲気を感じま

した。2007 年から ICAS レジストリーの登録を

開始しており、これは PCI を施行した連続症例

の多施設データベースです。4000 例を超える症

例が登録され予後調査が継続されており、この

データを用いて解析を行いました。ICAS レジス

トリーからは例年 10 演題前後が発表されてお

りますが、論文として完成させる必要性を感じ

ております。

2 つ目は「血管内視鏡を用いた DES 留置後の

内膜反応」についての発表をさせていただきま

した。筑波大学では DES 留置後の慢性期内膜反

応を血管内視鏡を用いて評価を始めておりま

す。今回の解析では Promus/Xience stent は、

他の第一世代DESと比較して均一な新生内膜の

増殖を認

め、壁在血

栓も少な

いという

結果でし

た。Follow

up CAG の

みでは分

からない

血管内膜

を直接観

察するこ

との重要

性を改めて認識することができました。

また今回の学会では演題発表に加えてもう

一つ大きなイベントがありました。それは症例

報告論文の授賞式があったことです。受賞した

のは第1回循環器臨床研究奨励賞(最優秀賞)で

すが、前回のニュースレターVol. 7 にて報告さ

せていただきました。第 1回の賞を受賞させて

いただいたことを光栄に思います。この場を借

りてご指導いただいた先生方に心より御礼申

し上げます。この受賞に満足することなく、こ

れまで以上に精進を積み重ねていきたいと思

います。

●HRS2012 学会体験記 筑波大学大学院 博士課程 4年次 黒木健志

2012 年度米国不整脈学会は 2012 年 5 月 9 日

から 12 日までボストンで開催されました。今

回は、いつも海外の学会でご一緒させていただ

いている諸先輩方に加え、安達先生、立花先生

というこれからの筑波大の不整脈を担われる

若手の先生方も参加されて、海外においてもま

すます活気溢れる筑波大学の勢いを感じるこ

とができました。私自身も彼らとの対話の中で、

刺激されることが多々あり、モチベーションを

高めることができたように思います。

ボストンにはハーバード大学、マサチュセッ

ツ工科大学、マサチュセッツ総合病院等があり、

大変アカデミックな情緒漂う都市です。地下鉄

に乗っていると『治験患者求む!毎日ジュース

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一瓶飲んでいる方優遇します。』等の中吊り広

告をいたるところで見かけます。例年通り筑波

大学グループはろくに観光もせず、早朝から夜

遅くまで狂ったように演題を聞いておりまし

たが、その分やっと晴天となった最終日にハー

バード大学へお土産を買いに行った時の解放

感は格別でした。

ハートリズムでは Late breaking というセッ

ションで毎年最新の臨床研究が発表されます。

その中でICD移植術後に競技に復帰したアスリ

ート 372 人の予後を 3年弱追跡したという演題

がありました。競技中や練習中に 9%にショッ

ク作動を認めたものの、ショックに関連した死

亡、怪我などは 1 例も認めなかったそうです。

現行のガイドラインでは ICD 植込み患者の

active sports への従事を禁止しており、この

流れを受けて今後ガイドラインがどう変化し

ていくのか、また本スタディの長期予後の結果

はどうなるのか、気になるところです。

ちなみに私の演題は2題ともポスター発表だ

ったのですが、やはり海外のポスター発表のよ

いところは、ポスター制作のために調べた文献

の著者の先生なんかがふらっ現れたりして、ち

ょっとした情報交換というかコミュニケーシ

ョンの場ができたりするところかと思います。

これだけでも私のような若造には感激であり、

学会に来てよかったと実感する瞬間です。

『Good job! Th-th-thank you!』程度のおよ

そ会話ともつかない代物でも、自分にとっては

日米首脳会談です。やりきった気になってしま

うから不思議です。毎年の恒例行事のようにな

ってきましたが、来年こそは英語力をつけて国

際交流するぞ!と心に誓ったのでした(笑)。

最後なりますが、何が起こるかわからぬ海外

での不安と緊張の中、私を導いてくださった夛

田先生、関口先生、五十嵐先生、山崎先生、井

藤先生、それからお忙しい中でも一人一人のポ

スターを見に来て激励してくださった青沼先

生、本当に有難うございました。

●Heart Rhythm 2012からの報告 筑波大学大学院 博士課程4年次 山崎 浩

毎年 5 月の連休明けに開催されている Heart

Rhythm において、昨年に引き続きポスター発表

をする機会をいただいたので、5/8-12 に青沼教

授をはじめとする合計9名の先生方と一緒にボ

ストンを訪れた。

Heart Rhythm は、全世界から基礎および臨床

不整脈を専門とする先生が参加する大きな国

際学会である。昨年は西海岸のサンフランシス

コで開催され、会期期間中には天気に恵まれ抜

けるような青空が印象的であったが、今年東海

岸であるボストンで開催された会期期間中の

前半は曇空で雨が時折降るあいにくの天気で

あった。

今回の会期期間中で印象に残ったことは、技

術や治療の革新ではなく、除細動リードの不具

合に対する対応や合併症の対応などをテーマ

とする講演がいくつも行われていたことであ

る。特に、今後筑波大学も参加する国際共同多

施設研究であるRIATAリードの導線露出という

有害事象を扱った講演には立ち見が出るほど

多くの聴衆が集まり、関心の高さがうかがえた。

リードの不具合の発症には、リードの性質のみ

ならず、植込まれる患者背景や植込み手技とい

った 3つの要素が影響するために、どのような

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患者においてこの有害事象が発症するかは不

明であり、本質的な原因もいまだ不明であると

のことであった。筑波大学でも電気的な異常は

認められないものの導線露出が認められる症

例が見つかっており、今後の大学での対応を考

えていく上でも、大変参考になる講演であった。

5/11 には、カテコラミン感受性心室頻拍に対

してカテーテル心筋焼灼術が有効であった症

例のポスター発表を行った。すでに当教室から

は金城貴士先生が Circulation Arrhythmia &

Electrophysiology に論文化され症例報告をさ

れているが、本症例はそれに引き続く症例報告

であり、薬剤抵抗性の心室頻拍のトリガーとな

る心室性期外収縮を標的としたカテーテル心

筋焼灼術を行うことにより心室頻拍を抑制す

ることが可能であった稀な報告であった。約 1

時間の間にアジアやヨーロッパの複数の先生

から経過や治療方法に関して質問をいただく

なかで、新たに気づかされることもあり、大変

勉強となった。本症例のように稀な症例に対し

て、このような症例報告をきっかけに多くの施

設で同様に治療が行われるようになれば、新し

い治療法として将来的に確立される可能性も

あり、大学で経験した貴重な症例を発表させて

いただく機会がいただけたことは本当に貴重

な体験となった。

時差ぼけとあわただしい学会期間中に、ボス

トンという歴史ある街を多く見て歩くことが

できなかったのは残念ではあったが、いろいろ

な講演から多くの刺激を得ることができた大

変有意義な学会であった。このような学会への

参加の機会を与えてくださった青沼先生をは

じめとする多くの先生方にこの場を借りて御

礼を申し上げます。

●ACC 2012 に参加して 筑波大学大学院 博士課程 4年次 井藤葉子

2012 年 4月 24 日~27日までアメリカのシカ

ゴで開催された ACC 2012 に参加しました。

ACC はアメリカの循環器の虚血など臨床を中

心とした非常に規模の大きい学会でした。学会

では発表者と聴衆の間で盛んに質問やディス

カッションがやり取りされていてとても活気

がありました。私の発表はポスターセッション

でしたが、私もいくつか質問を受け、大変刺激

になりました。ただ、不整脈の演題が比較的少

なく、不整脈に関する新しい知見についての発

表があまり見受けられなかったのは少し残念

でした。

最終日は吉田健太郎先生のご厚意で、先生が

ご留学されていたミシガン大学の Cardio

Vascular Center の Morady 先生のラボを見学さ

せていただきました。Morady 先生ご自身がカテ

を握って PVI をされる症例を見学でき、大変感

動いたしました。

今回このような発表の機会を与えてくださ

り、ご指導くださいました青沼先生、またミシ

ガン大学をご案内くださり、Morady 先生のラボ

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を見学させていただく機会を作ってくださっ

た吉田先生に心から感謝しております。この場

を借りてお礼申し上げます。

《学位取得》

●筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科・博士(医学) 田尻和子 学位論文:Gene delivery of Socs1 inhibits inflammatory and pathogenic responses in

autoimmune myocarditis in mice 大学院入学と同時に独立行政法人 医薬基盤

研究所 霊長類医科学研究センターの協力研究

員となり、免疫制御ワクチン開発研究室に在籍

させて頂きました。そこでは自己免疫異常を基

盤とする拡張型心筋症のマウスモデルを用い

て新規の免疫抑制療法の開発に取り組み、学位

論文として発表する事が出来ました。しかしそ

の道程は大変困難であったため、青沼教授をは

じめ諸先輩方やラボの仲間の助け無しには成

し得なかったものと思っております。この場を

借りてお力をお貸し下さった皆様方に厚く御

礼申し上げます。今後は大学院時代に取得した

免疫学的手法を活用して、慢性炎症性疾患と位

置付けられる様々な循環器疾患(心不全、動脈

硬化、不整脈など)の病態解明や新規治療法の

開発に繋がる基礎研究を続けて行きたいと考

えております。また医薬基盤研究所で得た知識

や技術を少しでも当科に還元出来るよう後進

の指導にも努めて参りますので今後ともよろ

しくお願い申し上げます。

●筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科・博士(医学) 五十嵐 都 学位論文:Effect of Restoration of Sinus Rhythm by Extensive Antiarrhythmic Drugs in

Predicting Results of Catheter Ablation of Persistent Atrial Fibrillation

●筑波大学大学院修士課程人間総合科学研究科フロンティア医科学 腰塚瑠美 学位論文:左室駆出分画が保持された心不全モデルラットにおける左室壁収縮動態の検討

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《2012 科研費》

青沼和隆(酒井 俊)

・平成 24 年度科学研究費補助金「挑戦的萌芽」

心不全進展における慢性炎症の機序解明と新たな治療法の探索

渡辺重行

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

心磁図法による虚血性心疾患早期診断法の開発

本間 覚(酒井 俊)

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

心肥大から心不全発症における RAN ポメリラーゼの脱リン酸化調節による役割解明

瀬尾由広

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

心臓再同期療法適応診断におけるスペックルトラッキング法の有用性評価に関する試験

佐藤 明

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

世界初の高血圧性誘発モデルによる大動脈解離の分子病態解明と臨床病態マーカーの開発

酒井 俊

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

新規肥満モデルが血圧上昇をきたすメカニズムの解明と高血圧への予防・治療への応用

石津智子

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

左室駆出率を超える心不全指標としての左室長軸収縮率の臨床的意義の研究

村越伸行

・平成 24 年度科学研究費補助金「挑戦的萌芽」

難治性心疾患の新規原因遺伝子の網羅的探索

関口幸夫

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

東日本大震災が及ぼす致死性不整脈発現への影響

下條信威

・平成 24 年度科学研究費補助金「基盤 C一般」

顆粒球コロニー刺激因子の術前投与による致死的不整脈抑制の検討

許 東洙

・平成 24 年度科学研究費補助金「若手研究 B」

肥満による心房細動発症機序の解明

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《関連病院》 (2012/04月現在)

筑波大学附属病院 筑波メディカル 日立製作所日立総合病院

青沼和隆 センター病院 鈴木章弘

鰺坂隆一 野口祐一 悦喜 豊

宮内 卓 平沼ゆり 樋口甚彦

本間 覚 文蔵優子 佐藤陽子

久賀圭祐 仁科秀崇 常岡秀和

瀬尾由広 掛札雄基 安達 亨

夛田 浩 渡部浩明

佐藤 明 日立製作所ひたちなか総合病院

河野 了 筑波記念病院 山内孝義

酒井 俊 小関 迪 小宅康之

村越伸行 垣花昌明 川村 龍

関口幸夫 松田光生 林 真由

石津智子 飯田 要

下條信威 飯田啓治 水戸協同病院

五十嵐 都 榎本強志 渡辺重行

星 智也 井川昌幸 外山昌弘

許 東洙 成瀬代士久

野上佳恵 立花牧子 住吉クリニック病院

木村泰三 山口 巖

金城貴士 筑波学園病院 栗原 達

田尻和子 牛山和憲

長谷川智明 藤枝一司 水戸中央病院

川辺正之 坂本和彦

會田 敏 つくばセントラル病院

加藤 穣 田中千博 水戸医療センター

菅野昭憲 石山実樹

服部 愛 霞ヶ浦医療センター

平谷太吾 鈴木祥司 茨城県立中央病院

木全 啓 西 功 武安法之

崔 星河 安倍大輔

酒井俊介 総合守谷第一病院 美崎昌子

佐藤希美 斉藤 巧 吉田健太郎

川松直人 遠藤優枝 油井慶晃

本田洵也 吉田郁雄

丸田俊介 小島栄治 きぬ医師会病院

渡辺秀樹

茨城西南医療センター 龍ヶ崎済生会病院

前田裕史 石川公人 牛久愛和総合病院

小原健一 山本昌良 山崎 明

中西啓太 針村佳江

羽鳥光晴

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《編集後記》

今回も無事ニュースレター夏の号をお届けすることができました。いつもながら 1ページ目から溢れ

た“熱さ”が今の筑波大学循環器内科の空気を反映しているのではないでしょうか。今回で 8号となる

本誌ですが、号を重ねるにつれ頁数も増え、内容もますます充実して参りました。これもひとえに、お

忙しい中快く原稿をお寄せ下さいます先生方、有能な医局秘書の皆さまのおかげと感謝しております。

今後ともご協力をよろしくお願い申し上げます。今年も暑い夏が予想されております。体調を崩されま

せんよう節電はほどほどに、どうぞ皆様ご自愛下さい。(町野智子)

《発行・編集》

筑波大学 医学医療系 循環器内科

〒305-8575 茨城県つくば市天王台 1-1-1

TEL(医局) 029-853-3142, 3143

FAX(医局) 029-853-3143

e-mail(医局秘書) [email protected] [email protected]

循環器内科ホームページ

http://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/cardiology/index.html

循環器内科同門会ホームページ(氏名・パスワード必要)

http://tkbjyunnai.secret.jp/index.html

編集委員 石津智子 井藤葉子 町野 毅 町野智子 渥美安紀子 三好博子 額田真紀

◆次号に掲載希望の記事・写真(jpeg)は電子メールにて [email protected] までご送信下さい。

◆循環器内科ニュースレターの pdf 版は筑波循環器内科同門会のホームページで閲覧できます。

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