REDD+対象地域社会と実施制度 －インドネシア中央カリマンタンにおけるKFCPの事例－

Local Communities and Institutions in the Implementation of REDD+ :

A Case Study of KFCP in Central Kalimantan, Indonesia

京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科

山中 潤

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研究背景と目的 研究背景

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REDD+とは？ ◆Reduction of Emission from Deforestation and Forest Degradation and the Role of Conservation, Sustainable Management of Forests, and Enhancement of Forest Carbon Stocks in Developing Countries ◆途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減並びに森林保全、 持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強

途上国において行われる森林減少・劣化の抑制などによる温室効果ガス排出の削減或いは炭素蓄積量の増加などの活動に対して、経済的なインセンティブを付与する仕組み。

しかし

REDD+実施においては、森林管理が中央集権・上意下達的になり、

地域住民の森林に対する権利や責任が失われることが懸念されている （Peskett et al. 2008, CBD 2011, 百村 2010, 井上 2011, 原田2011）。

地域住民に考慮したREDD+の設計・実施が必要

研究背景Ⅰ

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研究課題

中央カリマンタンの泥炭地で実施されたKFCP(Kalimantan Forest Climate Partnership)では、2村間で住民の対応と結果に違いがみられた。 ・M村：住民間対立が発生し、活動は中断 ・ K 村：ほぼ全住民が賛成・参加し、活動規模が最大 ↓

何故このような違いが現れたのか？ 村内構造（社会、経済、政治、自然環境）か、実施制度か、あるいは両方が2村間で どのように異なっており、それらがどうKFCPに対する住民の対応や結果に影響したのか？

⇒地域住民に良い結果をもたらし、REDD+を成功させる実施制度は何なのか？

中央カリマンタン・KFCPとは？

中央カリマンタン州：インドネシアの泥炭地の約15% （CKPP 2008）

⇒泥炭湿地林は、他のどの陸上生態系より最も多くの炭素を蓄積 （嶋村 2012）

南部では1996年からメガライスプロジェクトが実施された。

しかし排水され乾燥した泥炭地は燃えやすく、現在では荒廃した 泥炭地が放置されている（Medrilzam et al 2013）。

泥炭湿地林からの排出削減・森林のリハビリテーションを目指す

KFCP

KFCP実施村

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M村 紛争→活動中断

K村 活動規模最大

ブロックＥ

ブロックA

KFCP実施村の分布 (KFCP 2009)

カプアス川

メガライスプロジェクト跡地のカプアス川沿いの9村で実施

• ブロック E（伐採・未伐採） 76,000ha., 約3,000人が居住

• ブロック A （荒廃・劣化） 44,400ha., 約6,000人が居住

実施された活動

水路の堰き止め、植林、

生業支援など

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2村間では村内構造に違いがあった。 M村：大きな古い村で、町に近く、格差が大きい K村：小さな新しい村で、町から遠く、格差は小さい

↓

村内の社会関係に影響を与えていた。 M村：社会関係の悪化 e.g.) 行政の腐敗

K村：平等・協調的な関係 e.g.) 行政担当者に若年層

↓

KFCPの実施体制や質にも影響を及ぼした。 M村：閉じた実施 e.g.) TP・TPK＝既存の役職者、限定的な参加、住民の意見を却下

K村：開かれた実施

e.g.) TP・TPK＝女性や役職未経験者、ほぼ全員参加、住民の意見を受容

結果：M村とK村の比較まとめ

村内の貧富が拡大しつつあるM村に対して、K村では住民が有する平等で協調的な関係が、KFCPなどの資源管理に不可欠な集合的行為や意思決定を促した可能性が示唆された。

村落協定 支払い方法 は共通 セーフガード

異なる 村落実態

異なる実施・住民の対応・結果をもたらした

各村落の実態に即した柔軟な実施制度では無かったと考察された。

村内構造

実施制度

• GIS を使って泥炭湿地林の森林面積や農地面積の 推移を分析し、住民の生業とKFCP の活動の関係を 考察

↓

• 地域社会におけるREDD+実施上の課題を検討する。

• KFCPの泥炭地修復に対するインパクトを計測する。

今後の課題 －GISの利用－

• 井上真. 2011. 「温暖化防止対策としての森林保全：REDD+制度設計の課題」森林環境研究会編『森林環境2011 国際森林年 森の明日を考える12章』 朝日新聞出版, 78-87.

• 嶋村鉄也. 2012.「熱帯泥炭湿地の概観」川井秀一・水野広祐・藤田素子 （編著）『講座 生存基盤論第４巻 熱帯バイオマス社会の再生―インドネシアの泥炭湿地から―』京都大学学術出版会, 103-127.

• 原田一宏. 2010. 「生物多様性保全から気候変動緩和へ―REDDが保護地域に与える影響に関する考察―」『林業経済』 62(10) :2-17.

• 百村帝彦. 2010. 「REDD実施が村落に果たす役割と課題―カンボジアの事例より」市川昌広, 内藤大輔, 生方史数編『熱帯アジアの人々と森林管理制度―現場からのガバナンス論 』人文書院, 208-221.

• Kalimantan Forests and Climate Partnership(KFCP). 2009. Design Document. Australia-Indonesia Partnership.

• Konsorsium Central Kalimantan Peatlands Project (CKPP). 2008. Tanya & Jawab Seputar Gambut di Asia Tenggara, Khususnya di Indonesia.

• Medrilzam, M., Dargusch, P., Herbohn, J., and Smith, C. 2013. The socio-ecological drivers of forest degradation in part of the tropical peatlands of Central Kalimantan, Indonesia. Forestry, 87(2), 335-345

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引用文献