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研究レポート No.265 May 2006 自治体合併と地域ブランド施策 ―合併市町村の地域イメージに関する考察― 主任研究員 生田孝史 富士通総研(FRI)経済研究所

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研究レポート

No.265 May 2006

自治体合併と地域ブランド施策 ―合併市町村の地域イメージに関する考察―

主任研究員 生田孝史

富士通総研(FRI)経済研究所

自治体合併と地域ブランド施策 ―合併市町村の地域イメージに関する考察―

主任研究員 生田孝史

【要旨】

2006 年 3 月末に一段落した「平成の大合併」によって、地域ブランド構築の前提となる

地域の枠組みが変化している。中核都市への編入が中心のデンマークと比較して、日本の合

併パターンは様々であり、地域イメージ形成の難易度は自治体によって異なる。 富士通総研が 2006 年 1 月下旬~2 月上旬に実施した合併市町村に対するアンケート調査

は、回答率 73.5%と、関心の高さを反映するものであった。合併が地域イメージに影響を及

ぼすと考える自治体は全体の約 6 割であり、その多くが地域資源の充実を前向きに捉えてい

た。合併後間もない自治体が多いため、実際に地域イメージ施策を実施しているのは約 1/3であったが、地域イメージ施策を重視する自治体は多く、域外市場を対象とした施策の検討

意欲も高い。特に小規模自治体は、合併を機に名称を変更し、積極的に地域イメージ施策を

実施しようとする傾向が強いが、熱意と実力にギャップがあるケースも出てくる。 大規模合併でも地域全体を包含する共通気質を持つ浜松市や、共通の地域資源を持つ小規

模合併で競争力を増した和歌山県みなべ町は、恵まれた例である。実際には、他との差別化

や地域イメージの構築に苦慮している自治体は少なくない。合併によって地域資源や関係者

の多様性が増す中で、ネットワーク密度を高める地域ブランド施策が必要である。 地域ブランド構築が中長期的な地域競争力の向上につながるという議論が「平成の大合併」

には乏しかった。合併自治体によるネットワーク形成の視点に基づく地域資源の棚卸しと戦

略の絞込みに加えて、国・都道府県、研究機関、産業界、NPO 等の連携を通じた地域ブラ

ンド施策のノウハウ開発やネットワーク形成を支援する体制作りが望まれている。

【目次】 1 はじめに ................................................................................................................................ 1 2 自治体合併と地域イメージに関する基本状況 ..................................................................... 3

2.1 日本の自治体合併の特徴 .................................................................................................. 3 2.2 自治体合併と地域イメージとの関係 ................................................................................ 4

3 自治体合併と地域イメージに関するアンケート.................................................................. 6 3.1 アンケートの概要 ............................................................................................................. 6 3.2 地域イメージについて ...................................................................................................... 9 3.3 地域イメージ施策について............................................................................................. 15

4 合併自治体における地域ブランド施策のあり方................................................................ 22 4.1 アンケート結果からの考察............................................................................................. 22 4.2 事例からの考察 ............................................................................................................... 25 4.3 ネットワーク形成の視点からの考察 .............................................................................. 30 4.4 合併自治体の地域ブランド施策の推進に向けて............................................................ 32

参考資料1:アンケート調査票の質問項目............................................................................... 35 参考資料2:アンケート調査単純集計結果............................................................................... 37 参考文献 ...................................................................................................................................... 43

1 はじめに

地域ブランドとは、地域が持つ価値を人々の知識・感情に働きかけて地域イメージを普

及させ、ヒト・モノ・カネを誘引するものである。昨今、地域ブランド施策は、地域活性

化の切り札として、国内外で多くの自治体の関心を急速に集めている。 本研究の先行研究1では、まず、地域ブランド研究の歴史が浅いために理論的裏づけが

乏しいまま様々な施策が実施されている現状を把握し、地域ブランドの概念を整理した。

具体的には、図表 1 に示すように、地域ブランドとは、屋根(地域)と柱(地産品販売拡

大、観光・交流、投資促進・産業振興、人材・定住)のうち、屋根の部分、すなわち地域

自体がブランド化することで柱の部分に好影響を与え、 終的に地域の活性化につながる

ことを期待するものとして考えた2。さらに先行研究では、都道府県・政令指定都市の先

行事例から地域ブランド関連施策を類型化し、課題と解決策を提示した。特に、都道府県・

政令指定都市レベルの取り組みにおいては、対象範囲が広範となることで地域資源や関係

者が増加し、多様化するために、自治体だけでは地域ブランド関連施策のコントロールが

困難となるという本質的な課題を見ることができた。そして、この多様性の問題を解決す

るためには、より小さな行政単位による地域ブランド施策の実施、及び地域内に存在する

様々なネットワークを有効活用した地域ぐるみのネットワーク形成が望ましいという結論

を得ている。 このような検討を踏まえ、継続研究である本研究では、都道府県と比べて多様性の問題

を回避しやすいと考えられる市町村レベルの地域ブランド施策に注目することとした。

図表 1 地域ブランドの概念と施策

地域

地産品販売拡大

観光・交流

投資促進・産業振興

人材・定住

地域

地産品販売拡大

観光・交流

投資促進・産業振興

人材・定住

地域イメージ

個別ブランド

(出所)生田・湯川・濱崎(2006)

生田・湯川・濱崎(2006) 1

2 先行研究で言及したように、現状の地域ブランド施策は、屋根の部分のブランド化、柱の部分のブラン

ド化、柱のブランド化によって屋根のブランド化を目指す施策が存在している。

1

ところで、現在の市町村を取り巻く状況に目を転じると、「平成の大合併」と呼ばれる

市町村合併が急速に進行している。つまり、多くの自治体で、地域ブランドを構築する前

提となる地域の枠組み(行政区域)が変化しているということであり、当然のことながら

合併前と異なる地域ブランド施策を再構築する必要が生じている。また、合併によって地

域イメージが変わり、ブランド施策に影響を及ぼす可能性もある。そもそも合併自治体に

とっては、①新たな自治体のアイデンティティの確立、②合理的・効率的な経済活性化、

③住民の帰属意識の同一化、などの理由から、地域ブランド施策に対するニーズが潜在的

に高いものと考えられる。その一方で、合併による行政区域の拡大によって、先行研究で

指摘した多様性の問題が生じる恐れがあり、地域ブランド施策の策定が困難になったり、

施策の実効性が損なわれたりすることが懸念される。 このような問題意識の下、次章以下では、自治体合併が進行する中での市町村レベルの

地域ブランド施策のあり方を検討することとした。具体的には、わが国の自治体合併の特

徴と地域イメージとの関係について海外との比較を交えて整理した上で(2 章)、富士通総

研が実施した「自治体合併と地域イメージに関するアンケート調査」の結果を分析すると

ともに(3 章)、先行事例の調査からの考察を踏まえて合併自治体における地域ブランド施

策のあり方について(4 章)述べる。

2

2 自治体合併と地域イメージに関する基本状況

2.1 日本の自治体合併の特徴

いわゆる「平成の大合併」は、1999 年の地方分権一括法による市町村合併特例法の改正

の施行によって始まった。政府が市町村合併を促進した背景には、地方分権の推進、少子

高齢化の進展、広域的な行政需要の増大、行政改革の推進が挙げられており、基礎自治体

である市町村の行財政基盤を強化する必要があるとしている。市町村数は 1999 年 3 月末

の 3,232 から 2006 年 3 月末には 1,821 となり、7 年間で市町村数が 4 割以上減少した計

算である。また、この間、合併しなかった自治体は 1,239 であったことから、1999 年 3月末時点の市町村の 6 割以上が合併に関与したということになる。市町村の合併を促した

のは、「三位一体改革」による地方交付税の抑制と、合併自治体に対する財政支援措置とい

うアメとムチの政策である。特に、合併特例債による財政支援措置3は 2005 年 3 月末まで

に合併申請(2006 年 3 月末までに合併)することが条件であったため、合併を検討する

多くの自治体の背中を押すものとなった4。 わが国の自治体合併推進策を、2007 年から地方自治体の再編を実施するデンマークの取

り組みと比べると、顕著な違いがある(図表 2 参照)。

図表 2 日本とデンマークの地方自治体合併策の比較 日本 デンマーク

合併施策策定時期 1999 年 4 月

改正市町村合併特例法施行

2004 年 6 月

地方自治体再編骨子決定

合併時期 随時 2007 年 1 月に一斉

自治体数の変化 3,232(1999 年 3 月末)

→1,821(2006 年 3 月末)

271(2006 年 12 月末)

→ 98(2007 年 1 月 1 日)

促進策 財政措置

(特例債は 2005 年 3 月申請分まで)人口下限(3 万人)設定

合併相手との協議 自発的 自発的(2005 年 1 月まで)

合併形態 編入、新設合併など様々 中核都市への編入が主

備考 14 郡が 5 リージョンに集約

(出所)各種資料を基に富士通総研作成

3 合併後 10 ヵ年度内のまちづくりのための建設事業、及び合併市町村振興のための基金造成に対して、

合併特例債を充当できるものであり、元利償還金の 70%は普通交付税で措置できる。 4 1999 年施行の改正合併特例法は 2005 年 3 月までの時限立法であったため、2005 年 4 月から「市町村

合併の特例等に関する法律(合併新法)」が施行されたが、合併特例債による財政支援措置は廃止されて

いる。旧法からは、地方税の不均一課税、議員の在任特例、合併算定替の特例期間などの優遇措置が継

続しているもの、自治体にとって「アメ」の部分は縮小している。

3

デンマークにおいても、自治体改革の目的は日本と大差なく、地方自治の効率化とサー

ビス向上である。ただし、合併による地方自治体(日本の市町村に相当)の規模拡大と郡

(日本の県に相当)の権限縮小が、同時に、しかも全国で一斉に実施される。2007 年 1月 1 日から現在の 14 郡が5地域(リージョン)に再編され、271 の地方自治体の数は 98自治体(市)に減少する。郡からリージョンへの再編によって、従来の郡の所管業務は、

病院運営を除いて、市あるいは国に移管され、課税権も失う。新たな市が広範な住民サー

ビスを担当することになる5。日本で言えば、道州制と市町村合併を同時に行うようなも

のである。 デンマークの自治体改革のスピード感も特徴の一つである。2004 年1月に政府の特別委

員会から報告書が提出され、同年 6 月には地方自治体再編の骨子案が国会を通過し、2005年夏には関連法案が可決された。郡の再編は強制的であるが、地方自治体の再編(合併)

は、自発的な自治体間の協議によるものとされた。自治体合併を支援する財政措置はなく、

新しい市の人口規模の下限が原則3万人と設定されただけである6。自治体間の自発的な

合併協議の期限は 2005年 1月までであったが、大半の自治体が近隣との合併を果たした7。 ガイドラインのみを提示して急速な合併を促したデンマークとは異なり、7 年越しとな

る日本の合併支援施策は、合併特例債等による手厚い財政措置が特徴である。人口規模の

基準なしに、自主的な合併を促したため、小規模でも合併しない自治体がある一方で、財

政支援目当ての合併も少なくない。合併形式についてみても、デンマークの多くの自治体

が自発的に各地域の中核都市に編入される形で再編が進んだのに対し、日本では編入方式

と新設合併方式がある上に、合併協議中に破談になったり、離脱したりすることも少なく

なく、結果的に地理的に隣接していない自治体同士が合併してしまうケースもあった8。

国民性の違いの結果とも言えるが、財政措置を設けても十分に合併を促しきれていないわ

が国の施策は、デンマークと比べて非効率的であるといえよう。

2.2 自治体合併と地域イメージとの関係

自治体合併は行財政基盤の強化という観点から推進されてきたが、合併後の地域活性化

策を検討するにあたっては、地域イメージの確立がきわめて重要である。地域イメージの

観点から、合併パターンは 2 種類に大別できる。一方は、核となる自治体が周辺自治体を

吸収するパターンであり、他方は、核となる自治体を持たずに似通ったレベルの自治体が

5 2005 年 11 月の統一地方選挙によって選出された新たな自治体の議員が、2006 年末まで旧自治体の議

員と共存しながら、移行作業を進めている。 約半数の地方自治体が人口1万人以下であったため、多くの自治体が合併相手を探すこととなった。 6

7 政府による仲介が行われた例は数件であり、救済措置として3万人以下の自治体に義務付けられた近隣

自治体との行政協力の締結事例も、島嶼部と首都近郊の事例にとどまった。 8 例えば、2006 年 3 月末現在、北海道釧路市、同伊達市、同日高町、青森県五所川原市、外が浜町、同

中泊町、群馬県高崎市、同桐生市、神奈川県相模原市、静岡県静岡市、徳島県三好市が該当する。

4

合併するパターンである9, 10(図表 3 参照)。 当然のことながら、前者の場合、中核自治体が持つ既存のイメージを発展させる形で、

合併自治体のイメージ形成を図りやすいという利点がある。しかしながら、吸収される周

辺地域のアイデンティティをどのように保つかということには留意する必要がある。一方、

後者の場合、合併自治体のイメージ形成自体に労力を要することになる。核となる自治体

がなくても、共通のイメージを持つ自治体が合併する場合は、イメージ形成は比較的容易

であり、合併前と比べてイメージ強化につながることも期待できる。しかし異なるイメー

ジを持つ自治体同士が合併する場合、新たな共通イメージの創出は容易でなく、合併前よ

りもイメージをあいまいにし、ブランドとしての価値を弱めてしまう懸念がある。 前述のデンマークと日本の例で見れば、デンマークの場合、ほとんどの自治体合併が中

核都市への編入であるために新たな地域イメージ形成が比較的容易と考えられるのに対し

て、日本では様々な形態での合併が行われていることから、自治体によって、新たな地域

イメージ形成が容易なケースもあれば、逆に困難に直面するケースもあるものと考えられ

る。

図表 3 自治体合併のパターンと地域イメージ 中核自治体を持つ場合 中核自治体を持たない場合

合併パ

ターン

(例)

核となる自治体 A が周辺自治体 B, C, D,

E を吸収

自治体a, b, c, dの合併により、新たに自

治体 e を設置

利点 中核都市を軸にイメージ形成が容易 共通イメージを創出できれば、イメージ

強化に寄与

注意点 周辺地域のアイデンティティ保全 イメージが異なる自治体同士の合併で

は、イメージ形成が困難となる可能性

新自治体 e

自治体 b

自治体 a 自治体 c

自治体 d中核自治体 A

自治体 C

自治体 B 自治体 D

自治体 E

(出所)富士通総研作成 (注)合併パターンは、合併方式としての編入、新設合併とは関係ない

9 ここで言う「周辺自治体の吸収」、「同レベルの自治体同士による合併」は、合併方式としての編入、新

設合併をそれぞれ意味するわけではない。新設合併方式を採用していても、地域イメージの観点からは、

核となる自治体に周辺自治体が引き寄せられている例が少なくない。 10 ここで言う核となる自治体は、合併する自治体の中で も都市機能が充実し、規模の大きい自治体で

あることが一般的であるが、地域イメージの観点からは、規模が小さくても、他の自治体よりも知名度

が高く、合併後の自治体全体のイメージを包括できる強いイメージを持つ自治体であれば、ブランド戦

略の核となりうる。

5

3 自治体合併と地域イメージに関するアンケート

3.1 アンケートの概要

3.1.1 実施方法と回収結果

今回のアンケートは、地域ブランド施策において重視される地域イメージに注目し、合

併の影響と地域イメージ施策の状況を調べることを目的として実施したものである。アン

ケートは 2006 年 1 月下旬から 2 月上旬にかけて行われ、対象は 1999 年の合併特例法適

用以降 2005 年 12 月末までに合併した 408 市町村である。なお、「地域ブランド」という

用語は、地産品などの個別ブランドから地域全体のブランドまで使用者によって異なる意

味で用いられ、定義が確立・浸透していないため、アンケートにおいては、「地域イメージ」

という用語に限定し、地域全体のブランド化の考え方を代替させた11。設問は、自治体の

認知度、地域イメージの構成要素、合併の影響、地域イメージ施策の重要性、地域イメー

ジ施策の実施・検討状況、及びその課題等に関する内容とした(図表 4、参考資料 1 参照)。 アンケートは、対象 408 自治体のうち、事前に質問票の送付を了承した 397 自治体に対

して、原則、質問票を郵送し、FAXにて回答を依頼した(自治体の希望に応じて、一部、

電子メールでの送付・回収を行った)。2006 年 2 月 13 日時点12で 300 自治体から回答が

あり、対象自治体の 73.5%(発送数の 75.6%)という高い回答率を得た。この高い回答率

は、合併自治体の地域イメージ施策への関心の高さを反映したものと考えられる。

図表 4 アンケート対象と設問イメージ 対象 1999 年合併特例法適用以降 2005 年 12 月末日までに合併した 408 市町村

実施時期 2006 年 1 月下旬から 2 月上旬

【設問】

■地域イメージ

認知度、構成要素、合併の影響

■地域イメージ施策

重要性、実施・検討状況、課題

地域

地産品販売拡大

観光・交流

投資促進・産業振興

人材・定住

(出所)富士通総研作成

11 本アンケートにおいて回答を期待した地方公共団体内の組織は、合併と地域活性化施策について総合

的に判断できる企画部門や首長直轄の部署であったことから、「地域ブランド」の用語を使うことによっ

て、農林水産、商業観光などの部署が、個別事業の立場から回答することを回避する目的があった。 12 発送時に設定した回答期限は 2 月 6 日であったが、期限後も相当数の回答があったため、 後に回答

があった 13 日の分までを集計した。

6

3.1.2 回答自治体のプロフィール

アンケートに回答した 300 自治体に関する基本情報を整理すると以下のとおりである。 まず、合併時期を見ると、2003 年から増加し始め、2005 年に合併した自治体が 218 と

いうように全体の 7 割以上を占めている(図表 5 参照)13。合併特例法対象の期限切れに

向けて合併が急速に進んでいることを示しているが、アンケート回答内容を分析する際に

は、合併して間もない自治体が多いことを留意する必要がある。 合併方式には、新設合併方式と編入方式があるが、回答自治体の 8 割近く(235 自治体)

が新設合併方式であった14。また、合併後の自治体の名称については、新しい名称に変更

した自治体が 148、合併した旧自治体の既存の名称を引き続き使用した自治体が 152 とい

うように、名称変更自治体と既存名称自治体の比率はほぼ半々であった。なお、合併方式

と名称変更の関係について見ると、新設合併方式の約 6 割が名称変更しているのに対して、

編入方式の自治体の大半が既存名称(編入する側の自治体の名称)を使用している(図表 6参照)。

図表 5 回答自治体の合併時期

合併年 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

自治体数 1 0 4 1 13 63 218

構成比 0.3% 0% 1.3% 0.3% 4.3% 21.0% 72.7%

(出所)富士通総研作成 (注)合併を複数回行った自治体については 2005 年末現在の 終合併年を採用した。

図表 6 回答自治体の合併方式と合併後の名称 合併後の名称

名称変更 既存名称

計 名称変更率

新設合併 147 88 235 63% 合併方式

編入 1 64 65 2%

計 148 152 300 49%

(出所)富士通総研作成 (注)数値は自治体数。名称変更率は名称変更した自治体数を全体の自治体数で除した

もの。 13 アンケート対象全 408 自治体についても、同様の傾向であり、本アンケートにおいて合併時期による

回答率に極端な違いはなかった。2003 年以降の対象自治体の回答率を見ると それぞれ 2003 年が 59%、

2004 年が 78%、2005 年が 74%である(2002 年以前は 67%)。 14 ここでは、合併を複数回行った自治体について、一度でも新設合併を行った場合は、「新設合併」とし

て、名称変更が一度でもあれば、「名称変更」として分類している。

7

自治体の人口規模に応じて、人口 3 万人未満を小規模自治体、人口 3 万人以上 10 万人

未満を中規模自治体、人口 10 万人以上を大規模自治体と3つに分類すると15、回答自治体

の内訳は、小規模自治体が 81、中規模自治体が 144、大規模自治体が 75 となった。自治

体の規模と合併方式の関係について見ると、小規模自治体の 9 割以上が新設合併方式をと

っているのに対して、大規模自治体では、新設合併方式は5割を切り、編入方式の方が多

かった(図表 7 参照)。同様に、自治体の規模別に、合併後の名称変更の状況を見ると、

小規模自治体の 78%、中規模自治体の 56%が新たな名称に変更していたのに対して、大

規模自治体では、わずか 7%しか名称を変更していなかった(図表 8 参照)。

図表 7 回答自治体の人口規模区分と合併方式 合併方式

新設合併 編入

計 新設合併率

小規模 3 万人未満 78 3 81 96%

中規模3 万人以上

10 万人未満 123 21 144 85%

人口規模

区分

大規模 10 万人以上 34 41 75 45%

計 235 65 300 78%

(出所)富士通総研作成 (注)数値は自治体数。新設合併率は新設合併した自治体数を全体の自治体数で除した

もの。

図表 8 回答自治体の人口規模区分と合併後の名称 合併後の名称

名称変更 既存名称

計 名称変更率

小規模 3 万人未満 63 18 81 78%

中規模3 万人以上

10 万人未満 80 64 144 56%

人口規模

区分

大規模 10 万人以上 5 70 75 7%

計 148 152 300 49%

(出所)富士通総研作成 (注)数値は自治体数。名称変更率は名称変更した自治体数を全体の自治体数で除した

もの。 15 人口規模の区分については、人口 3 万人が合併特例で市制移行が可能な規模であること(2010 年 3 月

まで適用、本来は 5 万人が移行要件)から、人口 10 万人が地方交付税の交付についての標準団体の規模

であることから、それぞれ小規模、中規模、大規模自治体の境界と設定した。

8

このように、小規模自治体の方が新設合併方式をとる傾向があり、名称変更率が高いと

いうことは、これらの自治体では、核となる自治体を持たないことが多く、名称変更によ

って新たなイメージをアピールしようとする意欲が強いものと考えることができる。逆に、

大規模自治体については、近隣の小規模自治体を編入できるほどの核となる自治体があり、

その知名度が既に高いために、名称変更をする必要が乏しいと感じる自治体が多いという

ことであろう。もちろん、新設合併した規模の小さい自治体の中にも、少ないとはいえ既

存名称を用いている自治体もある。これらの自治体は新たな名称を採用しなくてもイメー

ジが確立していると認識している場合もあれば、地域イメージ施策を重視していないとい

う場合もありうる。 以下では、アンケート回答の集計結果16を、地域イメージに関するものと、地域イメー

ジ施策に関するものに大別し、それぞれ自治体の規模及び名称変更の有無という視点から

述べることとする。

3.2 地域イメージについて

3.2.1 認知度

図表 9 は、自治体がどの程度認知されているかについての設問に対する回答である。「近

隣都道府県である程度認知されている」という回答が も多く、全体の 39%を占めた。「全

国的にある程度認知されている」という回答が 24%、「全国的に広く認知されている」と

回答した自治体は1割に満たなかった。一方、「あまり認知されていない」と考える自治体

が全体の 26%に達しており、認知度の低さに悩む自治体が少なくないことを示した。 全国的な認知から近隣都道府県での認知まで、ある程度の認知があるという自治体の比

率を「認知度」(全体で 73%)とみなし、規模と名称変更の有無について比較したのが、

図表 10 である。全体的には、既存名称の自治体の方が名称変更自治体よりも認知度が高

いが、規模別に整理すると、規模が大きいほど認知度が高い傾向が見られた。また、規模

と名称変更の組み合わせで見ると、大規模・既存名称自治体が 97%と極めて高い認知度を

示し、中規模でも既存名称自治体の方が名称変更自治体よりも認知度が高かったが、小規

模自治体では、認知度が総じて低く、名称変更の有無による差異が見られなかった。逆に

言えば、中規模自治体では認知度が低い自治体が名称変更を図ったと考えられる一方で、

規模が小さくなると、そもそも地域の認知を図る手段と地域資源に限りがあることから、

基本的に認知度が低い自治体が多いものと考えられる。

アンケートの単純集計結果は、参考資料 2 参照。 16

9

図表 9 自治体の認知度に関する意識(n=300)

24%

26%

1%

39%

9%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

全国的に広く認知

全国的にある程度認知

近隣都道府県である程度認知

あまり認知されていない

わからない

(出所)富士通総研作成

図表 10 認知度と自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模 合計

名称変更 48% 68% ― 60%

既存名称 45% 86% 97% 86%

合計 47% 76% 96% 73%

(出所)富士通総研作成 (注)1.認知度は、図表 9 における「全国的に広く認知」「全国的にある程度認知」

「近隣都道府県である程度認知」の回答の比率の和。 2.大規模・名称変更の自治体は少数(5 自治体)であったために、本図表には

記載していない。 3.2.2 地域イメージの構成要素

図表 11 は、自治体の地域イメージがどのような要素から構成されているかについての

設問に対する回答(14 の選択肢から 大 3 つまでの複数回答)である。「自然」と回答し

た自治体が も多く、全体の 70%を占めた。続いて、「歴史・伝統」(51%)、「観光」(40%)、

農林水産業(39%)を挙げた自治体が多かった。これらの 4 要素は、地域イメージの構成

要素として重視されやすいと言える。一方、「住民気質」(2%)、「都市インフラ」(2%)、

「商業」(5%)などの回答率は低く、地域イメージの構成要素として重視する自治体が少

なかった。また、10%以上の回答があった構成要素は 9 つであった17。

17 これらの 9 つの構成要素について複数回答で一緒に回答されやすい組み合わせは、「自然」―「農林水

産業」、「自然」―「食材」、「農林水産業」―「食材」、「製造業」―「交通アクセス」、「住みやすさ」―

「交通アクセス」であった(単独の回答率よりも組み合わせ時の回答率が高かったもの。例えば、全回

当者数をN、要素 1 の回答者数をn 、要素 2 の回答者数をn1 2、要素 1 と回答し、かつ要素 2 と回答した

者の数をn とした場合、n /N<n /n )。 12 1 12 2

10

図表 11 自治体の地域イメージの構成要素(n=300)

70%

51%

39%

12%

15%

5%

40%

2%

18%

7%

11%

2%

15%

9%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%

自然

歴史・伝統

農林水産業

食材

製造業

商業

観光

都市インフラ

住みやすさ

文化・教育

交通アクセス

住民気質 

祭り・イベント

その他

(出所)富士通総研作成 (注)回答方式は選択肢から 大 3 つまで複数回答 地域イメージの構成要素について、自治体の規模と名称変更の有無によって分類した自

治体ごとに、イメージの構成要素の回答が多い順に(10%以上の回答があった構成要素ま

で)並べたものが、図表 12 である。どのグループにおいても、「自然」が も高い回答率

を得ているが、小規模自治体の方が「自然」イメージが他のイメージより突出して認識さ

れている。特に、小規模・名称変更自治体においては 90%が「自然」イメージを回答して

おり、2 位回答(「農林水産業」)との差が 38 ポイントもある。自治体規模が大きくなるほ

ど、名称変更の有無で見ると既存の名称を用いている自治体の方が、「自然」イメージの回

答率は低くなっており、2 位回答との差も小さくなっている。大規模・既存名称自治体で

は「自然」と「歴史・伝統」が同率で 1 位回答となっている。このように、小規模自治体

は突出した「自然」イメージのほか、「農林水産業」「歴史・伝統」「観光」くらいまでが比

較的回答率の高いイメージ構成要素となっており、発信できるイメージが限定的であると

いえる。一方、大規模・既存名称自治体では、あまり偏った回答がなく、自治体によって

多様なイメージの回答がされたといえる。特に、「祭・イベント」や「製造業」の回答率が

比較的高く、「農林水産業」の回答率が低く、都市型であることを示している。

11

図表 12 地域イメージと自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模 順

位 名称変更 既存名称 名称変更 既存名称 既存名称

1 自然 90% 自然 78% 自然 74% 自然 66% 自然 50%

2 農林水産業 52% 歴史・伝統 50% 歴史・伝統 49% 歴史・伝統 58% 歴史・伝統 50%

3 歴史・伝統 48% 観光 50% 農林水産業 44% 農林水産業 41% 観光 37%

4 観光 43% 農林水産業 39% 観光 41% 観光 38% 祭・イベント 27%

5 食材 17% 祭・イベント 17% 住みやすさ 21% 製造業 23% 製造業 26%

6 住みやすさ 14% 食材 11% 交通アクセス 14% 住みやすさ 22% 農林水産業 23%

7 交通アクセス 11% 祭・イベント 11% 祭・イベント 14% 住みやすさ 17%

8 食材 11% 交通アクセス 17%

9 商業 14%

10

食材 11%

(出所)富士通総研作成 (注)1.10%以上の回答率の構成要素のみを記載。 2.大規模・名称変更の自治体は少数(5 自治体)であったために、本図表には

記載していない。 3.2.3 合併による影響

図表 13 は、自治体合併による地域イメージへの影響についての設問に対する回答であ

る。「ある程度影響を及ぼしている」という自治体が も多く、全体の 48%を占めた。ま

た、「かなり影響を及ぼしている」という自治体は 13%であり、合併による地域イメージ

への影響を感じている自治体は全体の 6 割程度であった。その一方で、「あまり影響を及

ぼしていない」と回答した自治体が 31%、「影響はない」と回答した自治体が 5%あり、全

体の 1/3 強の自治体はそれほど合併による地域イメージへの影響を感じていなかった。 合併による地域イメージへの影響について、自治体の規模と名称変更の有無によって分

類した自治体ごとに見たものが図表 14 である。名称を変更した自治体については、小規

模自治体と中規模自治体で地域イメージへの影響への回答が同様の傾向であった。しかし、

既存名称の自治体では、「かなり影響」と「ある程度影響」の回答率の和が、大規模自治体

で 7 割を超えているのに対して、小規模自治体では 34%というように、大規模自治体の半

分に満たなかったことは興味深い。これは、小規模・既存名称自治体の多くは、ある程度

確立されたイメージを保持していると感じている、あるいは強い地域イメージを持たない

ために合併の影響を感じていないと考えられる。小規模・名称変更自治体と比べても、合

併の影響の認識は低い。逆に、大規模・既存名称の自治体の多くは、知名度が高いために、

合併によるイメージの変化を感じているといえよう。

12

図表 13 自治体合併による地域イメージへの影響(n=300)

13%

48%

31%

5%

3%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

かなり影響

ある程度影響

あまり影響ない

影響はない

わからない

(出所)富士通総研作成 図表 14 自治体合併による地域イメージへの影響と自治体規模・合併後の名称の関係

小規模 中規模 大規模

名称変更 既存名称 名称変更 既存名称 既存名称

かなり影響 16% 6% 14% 14% 11%

ある程度影響 43% 28% 44% 45% 60%

あまり影響ない 29% 39% 33% 38% 27%

影響はない 5% 22% 6% 3% 1%

わからない 8% 6% 3% 0% 0%

(出所)富士通総研作成 (注)大規模・名称変更の自治体は少数(5 自治体)であったために、本図表には記載

していない。 合併による地域イメージへの影響がある(「かなり影響」と「ある程度影響」)と回答し

た 183 自治体を対象に、どのような影響があったかという設問に対する回答をまとめたの

が図表 15 である。「従来にない新たなイメージができあがった」という自治体が も多く、

全体の 51%を占めた。続いて「地域イメージが明確になった」という自治体の比率も 27%であった。両方とも、合併による地域イメージへの影響をポジティブに捉える回答であり、

合併の影響を認識した自治体の 8 割弱が合併によって地域イメージにポジティブな影響が

あると考えているということになる18。特に、「従来にない新たなイメージ」の回答が多か

18 厳密には「従来にない新たなイメージ」の回答がすべてポジティブな影響と断定することはできない

(新たなイメージがネガティブなものである可能性もある)が、ここでは便宜的にポジティブとみなし

た。

13

ったことは、合併によって新たな地域資源が付加された、欠けていた地域資源を補うこと

ができたと認識している自治体が多いと考えられる。逆に、合併によって「地域イメージ

があいまいになった」という自治体の比率は 11%、「地域イメージの一部が喪失した」と

いう自治体はわずか 2%であり、合併の影響をネガティブに受け止めた自治体は少数派で

あったといえる19。

図表 15 自治体合併による地域イメージへの影響の内容(n=183)

27%

12%

52%

2%

2%

5%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60%

地域イメージが明確

地域イメージがあいまい

従来にない新たなイメージ

地域イメージの一部が喪失

わからない

その他

(出所)富士通総研作成 (注)図表 10 において「かなり影響」「ある程度影響」と回答した 183 自治体に対する

設問 この地域イメージへの影響の内容について、自治体の規模と名称変更の有無によって分

類した自治体ごとに見たものが図表 16 である。大規模自治体と比べて、小規模自治体と

中規模自治体は同様の傾向を示しており、7 割以上が影響をポジティブに捉えている。そ

の中では、中規模・名称変更自治体では「地域イメージがあいまいになった」という回答

が比較的多く、ネガティブな影響を回答する自治体の比率が 2 割を超えていた。一方、大

規模・既存名称自治体では、ポジティブな影響を感じている自治体が 9 割以上であった。

特に、「従来にない新たなイメージができあがった」という回答が 68%と他のグループよ

り 20 ポイント以上高かった。その分、「地域イメージが明確になった」という回答は低く

なったが、合併によって地域資源が豊かになったと感じている自治体が多いと考えられる。 このように、名称変更の有無の関係は明確ではないものの、自治体規模との関係におい

ては、大規模自治体の多くが、合併による地域イメージへの影響をポジティブに受け止め

19 今回のアンケートは自治体の企画担当が回答したケースが多いため、ポジティブな回答の傾向が強ま

った可能性はある。

14

ている一方で、小・中規模の自治体の一部にはネガティブな影響を感じているところがあ

るということが言えよう。さらに言えば、図表 14 で示したように、大規模(既存名称)

自治体は、他と比べて、そもそも合併による地域イメージへの影響を感じている回答の比

率が高く、それらの自治体の大半がその影響をポジティブに受け止めているということに

なる。

図表 16 地域イメージへの影響の内容と自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模

名称変更 名称変更 既存名称 既存名称

地域イメージが明確 32% 26% 32% 20%

地域イメージがあいまい 11% 19% 13% 2%

従来にない新たなイメージ 43% 45% 47% 68%

地域イメージの一部が喪失 5% 2% 3% 0%

わからない・その他 9% 8% 5% 10%

(出所)富士通総研作成 (注)図表 15 の回答対象自治体のうち、小規模・既存名称の自治体(6 自治体)と大

規模・名称変更の自治体(5 自治体)は少数であったために、本図表には記載し

ていない。

3.3 地域イメージ施策について

3.3.1 地域イメージ施策の重要性

図表 17 は、自治体がどの程度地域イメージ施策20を重視しているかについての設問に

対する回答である。「かなり重要である」という回答が 49%と も多く、「ある程度重要で

ある」という回答が 46%で続いており、両者を合わせると 95%になる。一方、「あまり重

要ではない」という回答はわずか 2%であり、「重要ではない」と回答した自治体はなかっ

た。このように、ほとんどの自治体が地域イメージ施策を重視していることがわかった。

また、自治体の規模あるいは合併後の名称変更の有無によっても地域イメージ施策の重視

度に大きな差異はみられず、どの分類においても、ほとんどの自治体が地域イメージ施策

を重視していた21。

20 本アンケートでは、地域イメージ施策の定義を行っていない。一般的に、地域イメージ施策は、地域

イメージの設定(キャッチフレーズ・ロゴデザインも含む)と、地域イメージの情報発信・プロモーシ

ョン(個別産品ブランド等との共同PRも含む)等の施策を意味する。 21 図表は割愛した。小規模・名称変更自治体が「かなり重要」54%「ある程度重要」41%、小規模・既

存名称自治体が「かなり重要」39%「ある程度重要」56%、中規模・名称変更自治体が「かなり重要」46%「ある程度重要」50%、中規模・既存名称自治体が「かなり重要」50%「ある程度重要」42%、大規模・

既存名称自治体が「かなり重要」51%「ある程度重要」44%、というように、多少の違いはあるが、「か

なり重要」と「ある程度重要」の回答の和は、92%~96%というように大差なかった。

15

図表 17 地域イメージ施策の重要性(n=300)

49%

46%

2%

0%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

かなり重要

ある程度重要

あまり重要ではない

重要ではない

(出所)富士通総研作成 (注)本図表に記していないが、無回答が 8 自治体(3%)あった。 地域イメージ施策を重視する(「かなり重要」と「ある程度重要」)と回答した 285 自治

体を対象に、その理由を尋ねた結果(複数回答)をまとめたものが図表 18 である。「観光・

交流が活発になるから」と回答した自治体が全体の 87%と も高く、「地域の産品の販売

拡大につながるから」が 68%と続き、「地域の知名度向上につながるから」46%、「投資促

進、産業誘致につながるから」44%、「他地域からの定住誘致につながるから」44%が同程

度の回答率であった。一方、「合併自治体に対する住民の求心力を高めることにつながるか

ら」と回答した自治体は 23%と も低い数値であった。このことから、地域イメージ施策

は、地域住民向けというよりも、域外市場向け、すなわち域外のヒト・モノ・カネを誘引

することを目的とする傾向が強く、特に「観光・交流」、「地産品販売拡大」を重視する自

治体が多いことがわかった。 また、地域イメージ施策を重視する理由について、自治体の規模と名称変更の有無によ

って整理したものが図表 19 である。どのグループにおいても、「観光・交流」の回答が

も多く、「地産品販売拡大」がそれに続くことと、「住民の求心力」の回答が低いというこ

とは変わらなかった。全体的には、「地産品販売拡大」の回答率は小規模自治体の方が高く、

「知名度向上」の回答率は大規模自治体の方が高いという傾向が見て取れる。また、小・

中規模自治体について見ると、名称変更自治体の方が既存名称自治体に比べて、「投資促

進・産業誘致」、「定住誘致」、「住民の求心力」の回答率が顕著に高いという興味深い結果

が現れた。これは、名称変更自治体の方が、新たなイメージ(名称)によって、広範な目

的の実現(特に産業や定住の誘致)を図る施策を展開しようという積極性を示しているも

のと考えられる。その一方で、既存名称を使用している(特に小規模)自治体は、従来の

イメージを生かし、「観光・交流」と「地産品販売拡大」中心の施策を実施しようとしてい

るようである。大規模(既存名称)自治体については、「観光・交流」が突出しているが、

16

他の理由は比較的拡散している。このグループは、他と比べて、都市機能を持ち、地域資

源が豊かであることから、自治体ごとに施策重視の理由も多様化しているといえる22。

図表 18 地域イメージ施策重視の理由(n=285)

68%

87%

44%

44%

23%

46%

1%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

地域の産品の販売拡大

観光・交流が活発

投資促進、産業誘致

他地域からの定住誘致

住民の求心力を高める

地域の知名度向上

その他

(出所)富士通総研作成 (注)1.図表 17 において「かなり重要」「ある程度重要」と回答した 285 自治体に

対する設問 2.回答方式は複数回答(回答数制限なし)

図表 19 地域イメージ施策重視の理由と自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模

名称変更 既存名称 名称変更 既存名称 既存名称

地産品販売拡大 73% 82% 68% 69% 63%

観光・交流 87% 94% 81% 93% 91%

投資促進・産業誘致 35% 12% 55% 36% 55%

定住誘致 48% 35% 47% 36% 43%

住民の求心力 22% 18% 25% 20% 24%

知名度向上 35% 41% 47% 51% 54%

(出所)富士通総研作成 (注)大規模・名称変更の自治体は少数(5 自治体)であったために、本図表には記載

していない。

22 中規模・名称変更自治体の施策重視理由の回答は、大規模・既存名称自治体のそれと比較的類似した

傾向となっている。名称変更によって、大規模自治体並みの施策目的となっているとも言える。

17

3.3.2 地域イメージ施策の実施状況

3.3.1 では自治体の地域イメージ施策の重視度について述べたが、ここでは、実際に自

治体が地域イメージ施策をどの程度実施しているのかどうかを調べた。図表 20 に示すと

おり、地域イメージ施策を「既に実施している」と回答した自治体は 33%、「検討中」の

回答も同様に 33%であり、実際に実施、検討している自治体は全体の 2/3 である。また、

「検討していないが、今後検討したい」と回答した自治体も 25%であり、これも含めると

全体の 9 割以上が地域イメージ施策を実施、検討している、あるいは検討意欲があるとい

うことになる。 3.3.1 に記した結果と比較すると、95%の自治体が地域イメージ施策を重視するという

回答をしていたのに対して、現状では 1/3 の自治体しか施策を実施していないとも言える。

この大きな要因は、3.1.2 に前述したように、アンケート回答自治体の約 7 割が、合併後

1年未満であり、施策実施までに十分な時間がなかったことである。自治体の合併時期の

違いから、施策実施状況を見ると、2004 年以前に合併した 82 自治体の施策実施率が 46%であるのに対して、2005 年以降に合併した 218 自治体の施策実施率は 28%であった23。

このことから、今後、地域イメージ施策を検討・実施する自治体が増加することは間違い

ない。

図表 20 地域イメージ施策の実施状況(n=300)

33%

33%

25%

5%

2%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

既に実施

検討中

今後検討したい

検討予定ない

わからない

(出所)富士通総研作成 (注)本図表に記していないが、無回答が 7 自治体(2%)あった。

23 詳述すると、2004 年以前に合併した 82 自治体の回答は「既に実施」46%、「検討中」30%、「今後検

討したい」16%、「検討予定なし」5%であり、2005 年以降に合併した 218 自治体の回答は「既に実施」

28%、「検討中」34%、「今後検討したい」28%、「検討予定なし」5%であった(その他、「わからない」

「無回答」が数%あった)。

18

地域イメージ施策の実施状況について、自治体の規模と名称変更の有無の違いによって

見たものが図表 21 である。特に、大規模(既存名称)自治体においては半数以上が既に

施策を実施しており、小・中規模自治体においても、名称変更自治体に比べて既存名称自

治体の方が、実際に実施している自治体の比率が高い。これは、名称変更した自治体の方

が、地域イメージ施策の策定に時間を要しているという現状を示しており、逆に言えば、

既存名称を使用している自治体の方が、地域イメージ施策の策定が容易であるとも言える。

とはいえ、「既に実施」から「検討中」「今後検討したい」までを含めた回答率を見ると、

名称変更自治体の値は、既存名称自治体と遜色がなく、地域イメージ施策の検討意欲は高

いということが見て取れる。

図表 21 地域イメージ施策の実施状況と自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模

名称変更 既存名称 名称変更 既存名称 既存名称

既に実施 24% 39% 16% 34% 56%

検討中 44% 28% 43% 22% 23%

今後検討したい 29% 11% 31% 31% 14%

検討予定なし 2% 11% 6% 5% 4%

わからない 0% 6% 0% 5% 3%

(出所)富士通総研作成 (注)1.大規模・名称変更の自治体は少数(5 自治体)であったために、本図表には

記載していない。 2.無回答(小規模・名称変更 2%、小規模・既存名称 6%、中規模・名称変更

4%、中規模・既存名称 3%)は本図表に記していない。 3.3.3 地域イメージ施策の課題

3.3.2 の地域イメージ施策の実施状況について、「既に実施」「検討中」「今後検討したい」

と回答した 273 自治体を対象に、地域イメージ施策に関する課題を尋ねた結果(複数回答)

をまとめたものが図表 22 である。「イメージの普及・PR」を課題として挙げた回答が

79%と も多く、以下、「地域ブランド商品開発」63%、「住民との連携」51%、「事業者・

商工会との連携」48%、「イメージの明確化」48%と続く。一方、「情報・ノウハウの蓄積」

24%や「自治体内の体制整備」29%が課題として挙げられる比率は低かった。 この地域イメージ施策の課題について、自治体の規模と名称変更の有無によって整理し

たものが図表 23 である。特徴としては、既存名称自治体の方が、名称変更自治体と比べ

て「イメージ普及・PR」の回答率が高い傾向にあるほか、「地域ブランド商品開発」や「事

業者・商工会との連携」も比較的高い。全体的には、規模が小さい自治体、及び既存名称

自治体よりは名称変更している自治体の方が、課題を挙げる率が低いようである。これは、

19

課題が少ないというよりも、検討が進んでいない自治体が多いことに加えて、大規模自治

体に比べて課題の抽出が遅れていると考えることもできる。その他の特徴としては、小規

模・名称変更自治体が他と比べて「住民との連携」を課題として回答する比率が高く、同

じ小規模の既存名称自治体の回答傾向とも大きく異なっている24。 図表 24 では、アンケート回答から実施状況と課題の関係を整理したものである。「イメ

ージの明確化」については、「今後検討したい」という段階の自治体の回答が も高く、施

策の検討が進むに連れて回答率が下がっており、どの段階でも高い回答率となっている「イ

メージの普及・PR」とは異なっている。また、「地域ブランド商品開発」と「事業者・商

工会との連携」は、特に実施段階の自治体の回答率が高く、施策実施の際に具体的課題と

して認識されることが多いものと考えられる。一方、「自治体内の体制整備」と「住民との

連携」については、検討段階の自治体において、回答率が高くなっている。このように、

実施・検討段階によって認識されやすい課題が異なっていることがわかる。

図表 22 地域イメージ施策の課題(n=273)

48%

79%

63%

29%

24%

48%

51%

3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

イメージの明確化

イメージの普及・PR

地域ブランド商品開発

自治体内の体制整備

情報・ノウハウの蓄積

事業者・商工会との連携

住民との連携

その他

(出所)富士通総研作成 (注)1.図表 20 において「既に実施」「検討中」「今後検討したい」と回答した 273

自治体に対する設問 2.回答方式は複数回答(回答数制限なし) 24 この要因は今後の研究課題であるが、例えば、小規模自治体の場合、事業者・商工会よりも住民との

意見調整に労力がかかりやすいことと、名称変更を行った際に住民内の合意形成を図るのに苦労した経

験がある自治体が少なくなかったことが想像できる。

20

図表 23 地域イメージ施策の課題と自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模

名称変更 既存名称 名称変更 既存名称 既存名称

イメージの明確化 43% 36% 51% 50% 49%

イメージの普及・PR 69% 93% 75% 88% 82%

地域ブランド商品開発 59% 71% 58% 63% 71%

自治体内の体制整備 28% 36% 35% 30% 22%

情報・ノウハウの蓄積 20% 21% 26% 20% 29%

事業者・商工会との連携 38% 43% 47% 57% 52%

住民との連携 64% 43% 47% 52% 46%

その他 0% 0% 3% 0% 6%

(出所)富士通総研作成 (注)大規模・名称変更の自治体は少数(5 自治体)であったために、本図表には記載

していない。

図表 24 地域イメージ施策の実施状況と課題の関係 既に実施 検討中 今後検討したい

イメージの明確化 41% 48% 53%

イメージの普及・PR 81% 76% 77%

地域ブランド商品開発 71% 55% 60%

自治体内の体制整備 26% 36% 25%

情報・ノウハウの蓄積 21% 25% 25%

事業者・商工会との連携 53% 48% 40%

住民との連携 48% 60% 43%

その他 5% 1% 1%

(出所)富士通総研作成

21

4 合併自治体における地域ブランド施策のあり方

4.1 アンケート結果からの考察

3 章で述べたアンケート結果を整理すると、合併自治体の地域イメージ及びその施策に

関する考え方について、以下のような特徴を見ることができる。 4.1.1 全体の傾向

全体の傾向としては、第一に、合併自治体の地域イメージ施策に対する高い関心が挙げ

られる。そもそも、今回のアンケートでは対象自治体の 73.5%から回答が得られたこと自

体、自治体の強い関心を示している。また、3.3.1 に述べたように、回答自治体の 95%が

地域イメージ施策を重視していたことから、ほとんどの合併自治体にとって地域イメージ

施策が重要施策として認識されていることがわかった。さらに、本アンケートでは、 終

設問の後に地域イメージ施策について日頃感じていることを自由に記入する欄を設けたが、

62 自治体(回答自治体の 21%)がコメントを記入しており、強い問題意識を持ちながら

も、様々な課題を抱えている様子が感じられた(参考資料 2 参照)。 合併が地域イメージに影響を及ぼすと考える自治体は全体の約 6 割と高く、しかも合併

の影響を認識している自治体の約 8 割が、従来にない新たなイメージへの変化、あるいは

イメージの明確化というようにポジティブな影響として捉えていた。すなわち、全体とし

ては合併自治体の約半数が、地域イメージにポジティブな影響があったと感じており、逆

にネガティブな影響を感じている自治体は全体の 1 割程度と少数であった(残りの約 4 割

の自治体は影響をあまり感じていない)。特に、ポジティブな影響の中でも、「新たなイメ

ージ」を挙げる回答が多く、合併によって地域資源が充実したことを前向きに評価する自

治体が多いということがいえる。 回答自治体の 7 割以上が合併後 1 年を経過していないこともあり、実際に地域イメージ

施策を実施している自治体は全体の 1/3 に過ぎなかった。しかし、検討中や検討意欲のあ

る回答を含めると 9 割の合併自治体が、地域イメージ施策の実施あるいは検討意欲を持っ

ており、今後、施策の実施に移行する自治体が増加することが予想される。また、地域イ

メージ施策は、地域住民向けより、域外市場(特に観光・交流、地産品販売拡大)向けが

中心に考えられていた。そして、地域イメージ施策の課題は、実施・検討の段階に応じて

認識に違いが出た。既に施策を実施している自治体からは、他と比べて、イメージの普及・

PR、地域ブランド商品開発、事業者・商工会との連携などが、具体的な課題として認識

されやすい傾向が見られた。 このように個々に課題を抱えながらも、全体の傾向としては、自治体合併を一つのチャ

ンスとして、前向きに地域イメージ施策を実施・検討しようとする自治体が大勢を占めて

いるということができる。

22

4.1.2 自治体規模・名称変更の有無との関係

図表 25 はアンケート結果を整理し直したものである。自治体規模の違いや名称変更の

有無によって、地域イメージ及びその施策に関して、それぞれ特徴があることがわかった。

図表 25 アンケート主要結果と自治体規模・合併後の名称の関係 小規模 中規模 大規模

名称変更 既存名称 名称変更 既存名称 既存名称

名称変更率 78% 56% 7%

地域イメージ

自治体の認知度 48% 45% 68% 86% 97%

自然 90% 78% 74% 66% 50%

歴史・伝統 48% 50% 49% 58% 50%

観光 43% 50% 41% 38% 37%

構成

要素

農林水産業 52% 39% 44% 41% 23%

合併による影響 59% 34% 58% 59% 71%

ポジティブな影響 75% ―― 71% 79% 88%

地域イメージ施策

重要性 95% 95% 96% 92% 95%

地産品販売 73% 82% 68% 69% 63%

観光・交流 87% 94% 81% 93% 91%

投資・産業 35% 12% 55% 36% 55%

施策

重視

理由

定住 48% 35% 47% 36% 43%

実施 24% 39% 16% 34% 56% 実施

状況 実施・検討・意欲 97% 78% 90% 87% 93%

イメージ普及・PR 69% 93% 75% 88% 82%

ブランド商品開発 59% 71% 58% 63% 71%

事業者商工会連携 38% 43% 47% 57% 52%

課題

64% 43% 47% 52% 46% 住民連携

(出所)富士通総研作成 (注)1.網掛けは回答率に応じて 0%~20% 20%~40% 40%~60% 60%~80% 80%~100%

2.自治体の認知度は、「全国的に広く認知」「全国的にある程度認知」「近隣都道

府県である程度認知」の回答率の和 3.合併による影響は、「かなり影響」「ある程度影響」の回答率の和 4.ポジティブな影響は、「地域イメージがあいまい」「従来にない新たなイメー

ジ」の回答率の和 5.地域イメージ施策の重要性は、「かなり重要」「ある程度重要」の回答率の和 6.地域イメージの構成要素、施策重視理由、課題については、複数回答の選択

肢から、回答率が比較的高い代表的な項目のみ標記

23

人口 10 万人以上の大規模自治体は、総じて認知度が高く、核となる自治体を持つこと

が多いことから、既存の名称を用いる自治体がほとんどである。従来からの強い地域イメ

ージを持つことが予想されるが、合併による影響を認識する自治体も も多く、しかもそ

のほとんどがポジティブな影響として捉えている。地域イメージ施策を重視する理由には、

観光・交流が突出する以外は、地産品販売拡大、投資促進・産業誘致、定住誘致などが幅

広く理由として挙げられており、地域イメージの構成要素として突出したものがない。こ

れは、自治体ごとに多様な地域資源を持っていることに起因するものと考えられる。地域

イメージ施策を既に実施している自治体も も多く、イメージ普及・PR、ブランド商品

開発など、認識する課題も具体的なものが多かった。 小・中規模自治体は、自治体によって認知度に違いが見られた。人口 3 万人以上 10 万

人未満の中規模自治体の方が、人口 3 万人未満の小規模自治体より認知度が高い傾向にあ

り、小規模自治体の多くは新たな名称に変更していた。中規模自治体では既存名称を用い

た自治体の認知度が高かったのに対して、小規模自治体には名称変更の有無に関わらず、

認知度が高い自治体が少なかった。地域イメージの構成要素は、中規模より小規模、既存

名称より名称変更した自治体のほうが、「自然」の回答率が高く、地域資源のバラエティに

乏しい。大規模自治体に比べると、合併による影響を認識する自治体はやや少なかった。

特に小規模・既存名称自治体は 1/3 程度しか影響を認識していない。影響を認識した自治

体の中には、ネガティブな影響を感じている自治体も見受けられた。 小・中規模自治体の地域イメージ施策は、名称変更の有無による違いが際立っていた。

すなわち、既存名称を用いている自治体は、観光・交流や地産品販売を中心に地域イメー

ジ施策を行おうとする傾向が強い。実際の実施状況も名称変更自治体より進んでおり、イ

メージ普及・PRやブランド商品開発など具体的な施策課題を挙げていた。一方、名称変

更自治体は、同規模の既存名称自治体に比べて、地産品販売、観光・交流だけでなく、投

資促進・産業誘致、定住誘致などを幅広く施策重視の理由として挙げる傾向があり、施策

の実施意欲は強いものの、実施段階に至っている自治体は少ない。このため、課題の認識

度合いも、小規模・名称変更自治体の住民連携を除けば、既存名称自治体より低めになっ

ている。 アンケート結果からは、特に、小規模自治体において、名称変更自治体と既存名称自治

体の間で、地域イメージ施策に対する大きな違いが現れた。名称を変更した自治体の方が、

合併による影響を受け止め、「欲張りに」多様な目的を持って地域イメージ施策を実施する

意欲が強い。しかし、現状では実施・検討は遅れており、地域イメージの構成要素も「自

然」に偏っており、実際に差別化できる地域資源を発掘できるかどうかが今後の大きな課

題になる。一方、小規模・既存名称自治体は、そもそも合併による影響を感じる自治体が

少なく、地域イメージ施策についても観光交流と地産品販売に絞って考えている自治体が

多い。施策の実施率も小規模・名称変更自治体より高いが、検討予定もない自治体も他よ

り多い。このように、既存の名称を用いているということもあり、積極的に地域イメージ

24

施策を展開しようするわけではないが、できることを着実に行おうという自治体が多いも

のと考えられる。 このように、既存名称自治体については、特に大規模自治体では、認知度と豊かな地域

資源を活かして地域イメージ施策を実施し、小規模自治体では、目的を絞り、身の丈にあ

った施策展開を目指している。一見、大規模自治体は恵まれているように思えるが、対象

範囲が広く地域資源が豊かなだけに、先行研究(生田・湯川・濱崎 2006)で指摘したよ

うに、多様性が地域イメージ施策(ブランド施策)の実効性を損ねる可能性について、留

意する必要がある。 これに対して、名称変更自治体は、合併を機に積極的な地域イメージ施策を実施しよう

としているが、特に小規模自治体では、地域資源が乏しい傾向があり、いわゆる「熱意」

と「実力」にギャップがあるケースも出てくるものと考えられる。このため、効果的に地

域イメージ施策を実施できる自治体もあれば、うまくいかない自治体もあるというように、

自治体によって明暗が出やすいものと考えられる。アンケートのコメントからも、「地域イ

メージがより明確になったため、さらに施策を展開したい」「同一のイメージを発信しやす

くなった」という前向きな評価がある一方で、「画期的なアイディアに欠ける」「地域イメ

ージとして決め手を欠く」など、課題に直面している自治体の姿もうかがわれた。

4.2 事例からの考察

ここでは、大規模自治体の例として静岡県浜松市、小規模自治体の例として和歌山県み

なべ町の事例を中心に、地域イメージあるいは地域ブランドを意識した合併自治体の具体

的な取り組みについて述べる。 4.2.1 浜松市

浜松市は、2005 年 7 月 1 日に静岡県西部の天竜川・浜名湖地域の 12 市町村が合併して

誕生した自治体である。合併は、旧浜松市への編入方式がとられ、市名は合併地域内の住

民を対象に公募した結果、「浜松市」が採用された。合併によって、人口は旧浜松市の約

58 万人から約 80 万人へと 4 割弱増加し、面積についても旧浜松市の約 6 倍の 1,511km2

となり、全国第 2 位の広大な市域25となった。静岡県の約 1/5 の面積を占める計算である。

旧浜松市は、工業都市のイメージが強かったが、合併によって天竜川流域や浜名湖などを

包含することとなり、自然・環境の要素も大きくなってきた。地理的・風土的に多様な地

域イメージを複合することになった浜松市では、合併が地域イメージに及ぼす影響は大き

いと言える。このような特徴から、「環境と共生するクラスター型都市」が新市の将来像に

掲げられ、豊かで美しい自然環境と市民主体の活発な経済、文化、社会活動が共生する都

市づくりを推進し、また都市内分権の実践によって、各地域の多様性が尊重されようとし

2006 年 3 月末現在。全国第 1 位は岐阜県高山市の 2,179 km25 2

25

ている。 現在、浜松市は 2007 年 4 月の政令指定都市移行を目指して、新たなまちづくりを進め

ている26。その重点政策として位置づけられている「浜松市シティプロモーション事業」27

は、地域ブランド施策とみなすことができる。合併によって豊かになった地域資源の魅力

や実力に比べて、浜松市の認知度が低いという認識を背景として、2005 年 7 月の合併以

降、シティプロモーション事業が開始された。2005 年度中にシティプロモーション戦略が

策定され、2006 年 4 月からは、企画部企画課にシティプロモーショングループが専従組

織として設置され、本格的に事業を推進することとなった。浜松市の場合、他の政令指定

都市と遜色のない都市イメージの認知、「浜松」という都市ブランドの確立を目指しており、

事業目的についても、交流人口の拡大と定住人口の拡大というように、「ヒト」を呼び寄せ

ることに明確に焦点を合わせていることが特徴的である。国内・国外のマーケットを問わ

ず、浜松を「知って・来てもらう」→「見て・感動してもらう」→ 「好きになって・住ん

でもらう」というステップを進めるようにプロモーションを図っている。 浜松市の特徴的な取り組みの一つが、浜松地域に共通な「やらまいか」精神(何事もと

にかくやってみる、積極的に取り組んでみるというチャレンジ精神を地域の言葉で表現し

たもの)をキーワードとした情報発信である。キャッチコピー「やらまいかスピリッツ!

創造都市・浜松から」や、「浜松市やらまいか大使」28、「浜松やらまいか交流会」29など、

様々な事業に「やらまいか」という言葉が用いられている。これは、前述のように地域資

源が多様であるために、住民気質しか共通となるキーワードがないことを示すものである

が、逆に言えば、他地域と差別化できる共通気質を持っているということである。つまり、

この共通の気質は、強みとして市外のマーケットにアピールできるとともに、広大な市域

に住む新住民の一体感を醸成する点でも貴重な資源であると考えることができよう。 浜松市のシティプロモーションの特徴として、ネットワーク形成を重視していることも

挙げられる。例えば、「浜松サポーターズクラブ」は浜松を口コミでPRする人を募集する

ものであり、会員のネットワークを利用した情報発信を意図している。民間事業者との連

携にも積極的であり、青年会議所、商工会議所との連携や、地域映画製作プロジェクトな

どが行われている。 30中でも、浜松商工会議所による浜松地域ブランド「やらまいか浜松」認定事業 は、大

変興味深い。この事業は、地域の特産品、優れた商品、優れた素材・技術などを活かし、

26 そもそも浜松市の場合、2002 年の「環浜名湖政令指定都市構想」が、合併協議のきっかけとなってい

る。政府の「市町村合併支援プラン」によって、大規模合併の場合、政令指定都市昇格の人口要件が 70万人に緩和されている。 27 浜松市シティプロモーション事業

(http://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/lifeindex/participation/civil/citypromotion/index.htm) 浜松市の魅力を発信する親善大使として、浜松市にゆかりのある著名人が就任(現在 20 人) 28

首都圏在住者を対象に、市政の主要事業やイベント、特色ある産業・観光・物産等をPRする会合 29

浜松商工会議所「やらまいか浜松ブランド事業」(http://yaramaika-h.jp/30 )

26

浜松らしい魅力ある地場産品等を、浜松地域ブランド品として認定し、広く全国に発信す

るものである。いわゆる個別ブランドの認定であるが、他地域の個別ブランド認定事業と

比べて、①ブランド認定品には、地産品だけでなく、商品、サービス、自然・景観まで幅

広く含まれていること31、②認定基準では「やらまいか精神」との関わりが重視され、あ

いまいであること32、が特徴である。さらに言えば、市と商工会議所の取り組みの方向性

が一致していることは重要な特徴である。「やらまいか」というキーワードを共通化してい

る点(図表 26 参照)に加えて、ブランド認定事業の目的が、通常の認定事業に見られる

ような認定品のマーケティング支援ではなく、誘客のツールとして浜松の魅力を知っても

らうこととしている点である。これは、市のシティプロモーション事業の主目的が、交流

人口と定住人口の拡大であることに合致しており、両事業による相乗効果によって、浜松

市のブランド力が強化されることが期待できる。

図表 26 浜松市のキャッチコピーと浜松商工会議所のブランドマーク

(A) 浜松市 (B) 浜松商工会議所

(資料)浜松市ホームページ、浜松商工会議所ホームページ

(注)浜松市のキャッチコピーのデザインは全 6 種類 4.2.2 和歌山県みなべ町

みなべ町は、2004 年 10 月 1 日に、和歌山県中部に位置する南部町と南部川村の 2 町村

が新設合併して誕生した人口約 1.5 万人の小規模自治体である (図表 27)。2 町村は、33

31 2006 年 2 月 15 日に発表された第一次ブランド認定では、158 の募集に対して 35 品が認定さ

れたが、この中には、農産品・食品もあれば、工業製品、体験ツアー、社会人大学まで含まれ、大変多

様である。 32 認定基準は、「独創性、技術革新又は挑戦があるか」ということが必要条件であり、その他、「浜松地

域の自然や文化・伝統の掘り起こし」、「浜松地域が連想される取り組みやエピソード」、「浜松ならでは

の存在、製法、技法、技術」のどれか1つを満たしていれば良いというもの。 みなべ町ホームページ(http://www.town.minabe.lg.jp/33 )

27

歴史的にも、南部川流域の南部郷として共有の文化を持ち、上流の農林業主体の南部川村

と下流の商業地である南部町とは、日常生活や経済活動面で密接な関係にあった。また、

両町村とも、ブランド品種の『南高梅』34生産による「梅の町」のイメージが強く、地域

イメージ強化が図れることが合併理由の一つとなっている。新町名も、両町村がイメージ

を共有できる「南部」をひらがな標記したものであり、従来の地名の浸透をも図るものと

なっている。みなべ町の場合、当初は広域合併の選択肢があった中で、2 町村の小規模合

併を選んだ経緯35があり、補完関係にある「似た者同士」の合併によって地域の特徴を強

化した「海山川の自然の中で人が輝く快適なまち」の形成を目指している。

図表 27 みなべ町の位置(和歌山県内) (資料)富士通総研作成 みなべ町の強みは、特色があって差別化が図りやすい地域資源を保有していることであ

る。梅の生産量は、合併によって全国シェア 25.6%(2000 年実績)となり、全国一の梅の

生産地である。しかも、生産量の約 7 割がトップブランドの南高梅である。また、山間部

では、これもトップブランドである紀州備長炭の生産が盛んであり、合併当時は生産量が

全国一であった36 , 37。このように競争力の強い農林産物を持つことから、生産農業所得、

及び人口一人当たり市町村民税の双方とも、和歌山県内で も高いレベルである。第一次

34 和歌山県の「南高梅」紹介サイト

(http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/000200/ren/web/ren8/ume.html) 35 南部町と南部川村は、2001 年 5 月から隣接する田辺市を中心とした 10 市町村の広域合併の研究会に

参加し、02 年 4 月に設置された任意合併協議会にも参加したが、同年 6 月に法定合併協議会への参加を

見合わせた。 36 その後、備長炭生産量全国一の座は、2005 年 5 月に誕生した同じ和歌山県の日高川町(川辺町、中津

村、美山村が合併)に明け渡した。 37 みなべ町が、備長炭をモチーフとしたゲーム・アニメキャラクター「びんちょうタン」のふるさとに

設定され、町にとって想定外のターゲット間で認知が広がるという現象があったらしい。みなべ町森林

組合(www.kishu-binchotan.jp/minabe)では同キャラクターをマスコットにしている。

28

。 38産業の就業者割合も4割以上と高く、典型的な農林水産業主体の豊かな町といえよう

みなべ町では、地域ブランドを強く意識した取り組みを行っているわけではないが、合

併をめぐる取り組み、及びまちづくりの方向は、地域ブランド施策として考えることがで

きる。地域ブランド施策の観点から見れば、みなべ町の取り組みの主要目的は、梅と炭を

柱とした域外に対する地産品の販売強化であり、合併は、主力産品の産地としての競争力

強化、情報発信力強化に寄与しているといえる。 和歌山県では、2006 年 2 月に 2010 年を目指した第二次の市町村合併推進構想を公表し、

県下 37 自治体中 30 自治体が合併推進対象となっている39。しかし、みなべ町は単独のま

まで扱われており、追加的な合併は当面期待されていない。小規模合併であっても、存在

感のある自治体、すなわちブランド力のある自治体として認められたものとみなすことが

できよう。 4.2.3 自治体の試行錯誤

前述した浜松市とみなべ町は、合併自治体の中でも恵まれた事例といえる。浜松市の場

合は、大規模で地域資源が多様な中、地域全体を包含できる「やらまいか」という共通の

気質を持っていたことによって、地域ブランドを創出しやすくなっていた。一方、みなべ

町の場合は、ブランド力のある共通の地域資源(南高梅)を持つ小規模合併によって、「梅

の町」としての地域イメージを強化することにつながっていた。 実際には、他と差別化できる地域資源を見出すことに苦慮している合併自治体も相当存

在しているものと考えられる。合併によって地域イメージが変化する中、試行錯誤しなが

ら地域イメージの形成・再構築を図っている自治体は少なくないであろう。 例えば、石川県中能登町は、2005 年 3 月 1 日に能登半島中央部に位置する3町の合併

によって誕生した人口約 2 万人の小規模自治体である40。旧町名は鳥屋町、鹿島町、鹿西

町であったが、合併によって新たに町名を「中能登」と変更したことによって、以前と比

べて自治体の所在地と(能登半島の一部であるという)地域イメージが認知されやすくな

ったという実感を得ている。中能登町の主要産業は、繊維産業と農業であるが、地理的に

は金沢通勤圏の 北限に位置し、隣接する都市(七尾市・羽咋市)のベッドタウンの性格

も併せ持っている。合併以前から(3 町とも)、少子化対策41など住環境整備の施策を積極

的に行っていることもあり、近隣からは住みやすい町として評価されており、人口減少率

38 近隣市町村と比べて財政的に豊かであることが、広域合併にメリットを感じなかった理由の一つとな

っている。 39 和歌山県市町村合併推進構想(概要)

(http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010600/gyousei/torikumi2/pdf/kosogaiyou.pdf) 中能登町ホームページ(http://www.town.nakanoto.ishikawa.jp40 )

41 例えば、中学生まで医療費無料、出産祝金(第1子:10 万円、第2子:20 万円、第3子:30 万円、

第4子:40 万円、第5子以上:50 万円)などの制度がある。

29

42も周辺自治体と比べて低い 。町内には大型商業施設もあり、伝統芸能や文化遺産にも恵

まれている。このように中能登町は、暮らしやすさや地域資源という点で特に問題を抱え

ているわけではない。しかし、他と差別化できる地域イメージの形成による地域活性化へ

の寄与という観点からすれば、十分なアピール力があるとは言い切れないのが現状である。

中能登町商工会は 2006 年 2 月に中能登町のブランド化を目指した産業振興ビジョン43を

提示し、町でも 2007 年度からの「中能登町総合計画」の策定を進めているところである。

本格的な取り組みはこれからとも言え、今後、商工会と町が連携しての取り組みが注目さ

れる。 中能登町の場合は、少なくとも合併前に比べて、地域イメージが明確化したケースであ

る。地域ブランドの確立のために、地域資源の棚卸しと施策目的の明確化を図り、具体的

施策にどのように落し込むかということが課題になっているのである。同様の状況に置か

れている自治体が多いと考えられる。 さらに、アンケート回答でも見られたように、合併によって地域イメージにネガティブ

な影響を受けたと感じている自治体も存在している。この場合は、他との差別化以前に、

自らの地域イメージをどのように定義するかという段階で試行錯誤を余儀なくされている

といえよう。このような自治体は、二つのケースに大別できる。一つは、合併して新たな

名称に変更したものの、旧自治体名の認知度が高かったために、合併後に地域イメージが

希薄になる、あるいは認知度が下がってしまうという場合である。もう一つは、旧自治体

の各々の地域イメージが強く、統一した地域イメージを作り出しにくいという場合である。

特に、後者の場合は、合併に際して、地域イメージあるいは地域ブランド形成という視点

からの議論が乏しかったともいえよう。いずれのケースにおいても、合併自治体の新たな

地域イメージを構築して認知を図るには、ある程度の時間を要することが予想され、地域

イメージ施策あるいは地域ブランド形成戦略の見直しが必要である。

4.3 ネットワーク形成の視点からの考察

先行研究(生田・湯川・濱崎 2006)において指摘したとおり、地域ブランドを構築す

るためにはネットワークの形成が重要である。ここでは、合併自治体の地域ブランド施策

をネットワーク形成の視点から考えてみたい。 図表 28 は、地域ブランド施策の役割について、自治体の多様性とネットワークの状態

という視点から整理したものであり、縦軸を(地域資源や関係者の)多様性、横軸をネッ

42 平成 17 年国勢調査(速報値)によれば、前回(平成 12 年)国勢調査からの人口増減率が、中能登町

に隣接する七尾市が-3.3%、羽咋市が-4.0%、志賀町が-6.3%であるのに対して、中能登町では-1.0%にとどまっていた。 43 「中能登町地域産業振興ビジョン」では、「中能登町」のブランド化を目指して、①食のブランド化・

プロモーション戦略、②中能登町デザイン化戦略、③人在・人材・人財プロモーション戦略、の3つの

戦略を設定している。

30

トワークの密度としている。一般的に、多様性が大きいより小さいほうが地域ブランドの

構築は容易であり、ネットワークの状態は疎であるより密であることが望ましい。自治体

合併は、基本的に多様性を増加させる方向に働くものである。そして、効果的な地域ブラ

ンド施策とは、ネットワーク密度を高める方向に働くはずである。

図表 28 ネットワーク形成の視点から見た地域ブランド施策の役割 (資料)富士通総研作成

44例えば、多様性が小さい自治体の場合、地域資源が乏しい 。このため、地域ブランド

施策は、限られた地域資源の中から他と差別化できるものを発掘し、特定の地域資源に関

して、事業者、自治体、市民・消費者(さらにはマスコミ等)をネットワーク化し、その

密度を高めることが中心となる。事例紹介したみなべ町の場合、競争力の高い「梅」とい

う共通の地域資源を既に持っており、合併によって、旧町村の「梅」に関するネットワー

クがさらに結びつくことによって、地域イメージが強化され、新町の地域ブランドの構築

に寄与しているものと考えられる。 多様性が大きい自治体の場合、地域資源は豊かであり、個々の地域資源に関するネット

ワークが存在していることもあるが、それらのネットワークが散在していることが少なく

44 市町村合併は多様性の増加につながる傾向にあるが、多様性が小さい自治体が必ずしも小規模自治体

を意味するわけではない。合併によってある程度規模が大きくなっても、似たもの同士の合併、あるい

は強力な地域イメージを持つ自治体を核とした合併であれば、多様性の問題は回避しやすい。

31

45ない 。この場合の地域ブランド施策は、第一に、散在している複数のネットワークを結

ぶネットワーク形成を図ることであろう。前述した浜松市の場合は、合併によって地域資

源が多様化し、関係者が増大する中で、「やらまいか」という共通キーワードで異なる地域

資源のネットワークを包括することができた例であると言える。 とはいえ、合併によって多様性が増した自治体には、複数のネットワークを包括したネ

ットワークを形成することが困難なところもある。このような場合、無理に地域イメージ

の統一を図るのではなく、個別の地域資源のネットワークを強化して、それぞれのブラン

ド力を高めるという施策への転換も検討すべきである46。その際、自治体内の特定地域・

コミュニティのイメージと強く結びついた地域資源であれば、より小さい地域単位のブラ

ンド化を図るという考えもできよう。

4.4 合併自治体の地域ブランド施策の推進に向けて

2006 年 3 月末に合併特例債の適用期限切れを迎え、「平成の大合併」は一段落した。

この間、市町村の 6 割以上が合併に参加し、国内地図は大きく変化した。このように多く

の市町村が行政区域を変えていく中、今回のアンケート調査からは、合併が地域イメージ

に与える影響を前向きに評価し、積極的に地域イメージ施策を実施しようと考える自治体

が多数を占めていることがわかった。とはいえ、現状では合併後間もない自治体が多いた

めに、地域イメージ施策の実施意欲は高いものの、具体的な施策を実施している自治体は

まだ少数である。今後、施策の検討から実施段階に移行するにつれ、様々な課題が現出す

ることが予想される。 本研究は、自治体合併によって行政区域内の多様性が増加することで、地域ブランド施

策の実効性が損なわれやすくなるのではないかという問題意識に基づいて検討を行った。

しかし、本研究において明らかになったことは、対象範囲(あるいは自治体規模)が小さ

いことが地域ブランド施策を容易にするわけではないということである。自治体規模に係

わらず、多くの場合、自治体合併は多様性(地域資源と関係者)の増加につながる。地域

資源が乏しかった自治体からすれば、自治体合併は地域資源を豊かにし、地域イメージを

アピールするチャンスが増えることを意味する。小規模な合併自治体は、合併前はさらに

小規模で、地域資源、人的資源に乏しく、財政面の制約もあったことから、合併を機に積

極的に様々な施策を実施したいという思いが強い。 問題は、他と差別化できる地域イメージの情報を発信できるかということであり、成功

すれば、ブランドとして地域が認知されることにつながる。自治体規模が小さい場合は、

そもそも地域資源が豊富でないことが多いため、合併の組み合わせによって、限られた地

45 前脚注と同様、多様性が大きい自治体は、必ずしも大規模自治体を意味しない。小規模自治体でも、

異なる地域資源を持つ自治体間の合併であれば、多様性は増し、コントロールしにくくなる。 46 図表 28 で見れば、左上の部分(多様性大・ネットワーク疎)から右下の部分(多様性小・ネットワ

ーク密)への移行を促す考え方になる。

32

域資源が有機的に結びつけば(ネットワーク密度が高まれば)、競争力を高めることができ

る。逆に地域資源が個々に独立したままで結びつきにくい(新たなネットワークが形成さ

れない)場合は、かえって、合併の効果が損なわれることが如実に現れやすい。アンケー

ト結果でも、小・中規模自治体の一部が、合併によって地域イメージにネガティブな影響

を感じており、これらの自治体が地域ブランドを構築するには時間を要するであろう。 一方、大規模な自治体が、あまり合併によるネガティブな影響を感じていないのは、元々

地域資源が豊富であり、個々にネットワークが存在していることが多いために、合併によ

る多様性増加の弊害を感じにくいとも言える。もちろん、このことは地域ブランド施策の

成功を保証するものではない。包括的な地域イメージの形成のためには、前述のように複

数のネットワークを結ぶネットワークを形成できるかどうかを検討する必要がある。 このように、地域ブランド施策を考える際には、その地域を代表するネットワーク密度

の高い地域資源を持つことができるかどうかということが重要である。特に合併自治体は、

地域資源が多様化し、関係者が増大する中で、地域イメージを形成し、地域ブランドの構

築を図っていかなければならない。 今回の調査では、地域ブランド施策の中でも、地域イメージに関する施策の部分を中心

に見てきた。もちろん、地域イメージの形成=地域ブランドの構築ではない。まず、その

自治体の施策目的に沿ったターゲット(対象)に対して、確立した地域イメージを発信し、

そのターゲットが認知し、具体的な行動を喚起することによって、初めてブランドとなる。

その意味では、地域のブランド化を意識した地域イメージ施策という観点から、どこまで

自治体が検討しているかということについて、さらなる研究が必要である。 自治体改革の中心議論は、道州制に移行している感があるが、合併自治体にとって、

新たな行政区域での施策の実効性が問われるのは、これからである。合併自治体による

地域ブランド構築の取り組みは、中長期的な地域競争力の向上につながり、結局は我が国

の構造改革を後押しすることに寄与するはずである。しかしながら、今回の「平成の大合

併」の過程においては、どのように地域の長期的な競争力を向上していくかという議論が

乏しかったのではないだろうか。実際には、財政状況の悪化を理由に、合併に踏み切っ

た市町村は少なくない。しかし、合併特例債が使えるからといって、従来の大規模開

発型の地域活性化施策を継続していけば、結局、将来の財政不安を招き、合併効果を

損ねることが懸念される。地域ブランドの重要性に対する認識がないまま、単なる規模

拡大、効率追及を目的に、競争力の劣る自治体の再合併を促すだけでは、多様性が拡大す

るだけで地域ブランド構築につながらず、根本的な解決にならない。 これまで述べてきたように、合併自治体の地域ブランド施策の推進を考える上で、

ネットワーク形成の視点は大変重要である。そして、具体的な施策検討にあたっては、

合併自治体自身による地域ブランド施策の主体的な検討とともに、そのような自治体

の取り組みを支援する体制の構築が重要となる。 まず、合併自治体自身が考えるべきことは、ブランド施策が地域活性化の手法として重

33

要であることを再認識することである。そして、合併によって多様化した地域資源の棚卸

しを行い、他地域との差別化が図れるかどうか、自らの地域らしさをアピールできるか、

地域の価値をどのようにして伝えていけるかについて検討を行ったうえで、 適な戦略を

絞り込むことが必要である。すなわち、地域資源の多様性が大きい場合、異なる地域資源

を包括できるコンセプトがあるかどうか、あるいは、競争力の高い地域資源を軸にアピー

ルする地域ブランドを特化していくかなどの戦略を決定していく必要があろう。 地域ブランド施策の有効性を高めるためには、自治体内部の実施体制の整備・確立を行

ったうえで、対象とする地域資源に関する関係者のネットワークの形成を図る必要がある。

特に、ブランドの価値を伝えるという観点からのネットワーク形成が重要である。具体的

には、①生産者-流通業者-販売業者-消費者間のコミュニケーションの活発化、②地域

住民やその地域に関連する人々のネットワーク化による情報発信機能の強化や地域サポー

ターの拡大のほか、③産業界、NPO、研究機関、マスコミ等を取り込んだネットワーク

を強化していくこと、状況によっては、他の自治体や都道府県など上位自治体との連

携を図ることが求められる。 国・都道府県等に期待される役割は、熱意と能力の間にギャップを抱える自治体を中心

に、地域ブランド構築の取り組みを支援することである。具体的な支援策としては、まず、

地域ブランド施策に関する研究開発や、ノウハウ・優良事例などの情報共有、及び自治体

への人的支援が挙げられる。さらに、単独ではネットワーク形成を図りにくい自治体に対

する支援として、国・都道府県(あるいは産官学が連携したプラットフォーム)による域

外への情報発信、自治体への域外事業者・研究機関、マスコミ等の紹介やマッチング支援、

自治体間の連携支援などが挙げられる。 合併自治体の地域振興の成否が、市町村合併の成果を左右するといっても過言ではない。

そして、その鍵を握るのが地域ブランド施策である。長期的な視点から、地域全体が付加

価値のあるブランドとして認知され、競争力を備えることができる施策を実施するために、

国・都道府県、市町村、研究機関、産業界、NPO 等の連携を通じたノウハウの開発や支

援体制作りが望まれる。

34

参考資料1:アンケート調査票の質問項目

問1 貴自治体はどの程度認知されているとお考えですか。1つに○をご記入ください。

① 全国的に広く認知されている ② 全国的にある程度認知されている ③ 近隣都道府県ではある程度認知されている ④ あまり認知されていない ⑤ わからない

問2 貴自治体の地域イメージはどのような要素から構成されているとお考えですか。当

てはまるもの上位3つまでに○をご記入ください。 ① 自然 ② 歴史・伝統 ③ 農林水産業 ④ 食材 ⑤ 製造業 ⑥ 商業 ⑦ 観光 ⑧ 都市インフラ ⑨ 住みやすさ ⑩ 文化・教育 ⑪ 交通アクセス ⑫ 住民気質 ⑬ 祭り・イベント

⑭ その他〔 〕

問3 自治体合併は地域イメージに影響を及ぼしていますか。1つに○をご記入ください。

① かなり影響を及ぼしている →問4へ ② ある程度影響を及ぼしている →問4へ ③ あまり影響を及ぼしていない →問5へ ④ 影響はない →問5へ ⑤ わからない →問5へ

問4 問3で①あるいは②と回答した自治体にお聞きします。合併によって地域イメージ

にどのような影響がありましたか。1つに○をご記入ください。 ① 地域イメージが明確になった ② 地域イメージがあいまいになった ③ 従来にない新たなイメージができあがった ④ 地域イメージの一部が喪失した ⑤ わからない ⑥ その他〔 〕

問5 貴自治体にとって地域イメージに関する施策はどの程度重要ですか。1つに○をご

記入ください。 ① かなり重要である →問6へ ② ある程度重要である →問6へ ③ あまり重要ではない →問7へ ④ 重要ではない →問7へ ⑤ わからない →問7へ

35

問6 問5で①あるいは②と回答した自治体にお聞きします。地域イメージに関する施策

を重視する理由は何ですか。当てはまるもの全てに○をご記入ください。 ① 地域の産品の販売拡大につながるから ② 観光・交流が活発になるから ③ 投資促進、産業誘致につながるから ④ 他地域からの定住誘致につながるから ⑤ 合併自治体に対する住民の求心力を高めることにつながるから ⑥ 地域の知名度向上につながるから ⑦ その他〔 〕

問7 地域イメージに関する施策の実施・検討状況をお聞きします。1つに○をご記入く

ださい。 ① 既に実施している →問8へ ② 検討中である →問8へ ③ 検討していないが、今後検討したい →問8へ ④ 検討していないし、予定もない →質問は終了です ⑤ わからない →質問は終了です

問8 問7で①、②、③のいずれかを回答した自治体にお聞きします。地域イメージに関

する施策の課題について、当てはまるもの全てに○をご記入ください。 ① イメージの明確化 ② イメージの普及・PR ③ 地域ブランド商品開発 ④ 自治体内の体制整備 ⑤ 情報・ノウハウの蓄積 ⑥ 事業者・商工会との連携 ⑦ 住民との連携 ⑧ その他〔 〕

最後に、地域イメージ施策について、日頃、感じられていることがあればご記入ください。

注)ここに掲載した調査票は、実際に使用した調査票から、表題、送付先、回答者連絡先

記入欄を省略したものである。

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参考資料2:アンケート調査単純集計結果

■ 回答率

アンケート対象数(A) 408

回答数(B) 300

回答率(A/B) 73.5%

問1 貴自治体はどの程度認知されているとお考えですか。<択一回答> ( n = 300)

28 9%①全国的に広く認知されている

73 24%②全国的にある程度認知されている

118 39%③近隣都道府県ではある程度認知されている

77 26%④あまり認知されていない

3 1%⑤わからない

1 0%無回答

問2 貴自治体の地域イメージはどのような要素から構成されているとお考えですか。 <複数回答-最大3つ->

( n = 300)

211 70%①自然

152 51%②歴史・伝統

117 39%③農林水産業

35 12%④食材

45 15%⑤製造業

15 5%⑥商業

121 40%⑦観光

6 2%⑧都市インフラ

54 18%⑨住みやすさ

21 7%⑩文化・教育

33 11%⑪交通アクセス

5 2%⑫住民気質

45 15%⑬祭り・イベント

26 9%⑭その他

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問3 自治体合併は地域イメージに影響を及ぼしていますか。<択一回答> ( n = 300)

39 13%①かなり影響を及ぼしている

143 48%②ある程度影響を及ぼしている

94 31%③あまり影響を及ぼしていない

15 5%④影響はない

8 3%⑤わからない

1 0%無回答

問4(問3 ① ② 回答者のみ)

合併によって地域イメージにどのような影響がありましたか。<択一回答> ( n = 183)

49 27%①地域イメージが明確になった

21 11%②地域イメージがあいまいになった

94 51%③従来にない新たなイメージができあがった

4 2%④地域イメージの一部が喪失した

4 2%⑤わからない

10 5%⑥その他

1 0%無回答

注)問3無回答者による問4の回答数 1 を含めたため、回答数が 183 になっている

問5 貴自治体にとって地域イメージに関する施策はどの程度重要ですか。<択一回答> ( n = 300)

146 49%①かなり重要である

139 46%②ある程度重要である

7 2%③あまり重要ではない

0 0%④重要ではない

0 0%⑤わからない

8 3%無回答

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問6(問5 ① ② 回答者のみ) 地域イメージに関する施策を重視する理由は何ですか。<複数回答>

( n = 285)

195 68%①地域の産品の販売拡大につながるから

249 87%②観光・交流が活発になるから

125 44%③投資促進、産業誘致につながるから

124 44%④他地域からの定住誘致につながるから

65 23%⑤合併自治体に対する住民の求心力を高めることにつながるから

132 46%⑥地域の知名度向上につながるから

4 1%⑦その他

問7 地域イメージに関する施策の実施・検討状況をお聞きします。<択一回答>

( n = 300)

98 33%①既に実施している

100 33%②検討中である

75 25%③検討していないが、今後検討したい

14 5%④検討していないし、予定もない

6 2%⑤わからない

7 2%無回答

問8(問7 ① ② ③ 回答者のみ)

地域イメージに関する施策の課題。<複数回答> ( n = 273)

130 48%①イメージの明確化

215 79%②イメージの普及・PR

172 63%③地域ブランド商品開発

80 29%④自治体内の体制整備

66 24%⑤情報・ノウハウの蓄積

131 48%⑥事業者・商工会との連携

140 51%⑦住民との連携

7 3%⑧その他

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1自由記入コメント(一部抜粋)

地域イメージ施策は、地方がその存在感を示し、その生き残りをかけた最後の手段であると思

う。行政はその施策の検討・遂行にあたっては、地域全体の一体感・共有化を図る必要があ

り、地に足のついた戦略が不可欠と考える。イメージ施策は、その現実的な個人の体験によっ

て、評価されるものであり、地域一丸となった長期的な草の根までの取り組み無しには成功は

ないものと考える。

都市圏全体の発展を目指すため、その核となる都市としての魅力を高めるための施策が重要

であると考えている。

マスメディアを通じ、地域イメージを大々的にアピールをし、認知度が上がれば将来的に優位

な施策を展開できるのではないかと感じられる。

地域間の競争が激しくなり、経済振興、定住促進など様々な立場から、地域イメージ施策は重

要であると思う。自治体が生き残るための課題解決の有効な手法であり、地域の付加価値を高

める。本市は特例市移行予定でありイメージアップにつなげたい。

地域イメージ向上のためには、合併前の旧市町のイメージから脱却し、合併後の新市の地域

イメージを新しい地域ブランドとして定着させていくことが必要だが、このためにはある程度の

時間がかかっていくものと思われる。

地域イメージ施策はとても大切であると考えており、プロジェクトチームを設置し、全庁的な取り

組みを開始したところである。

地域イメージが自治体合併により明確化してきたため、今後さらに観光施策等を展開させた

い。

地域活性化策の一つであるとは感じているが、市の政策としてどのポジションにおき、どれくら

いのウェイトをおくべきなのか非常に難しいと感じている。

いまだ全国的には旧町村名のほうが認知されており、いかに現在の市名を全国的に認知して

もらうか、PR できるものはあるが、うまく PR できていない。

当市は歴史文化、果樹生産、自然景観等に恵まれており、合併前の各市町村においても、そ

うした個性を地域イメージとして打ち出していた。合併によってそれぞれの個性が相乗効果を

生み出すような計画を立て実行していくことが重要と考える。

多くの自治体は、進行する少子高齢化の中で「生き残り」をかけた個性あるまちづくり施策の展

開が求められているが、地方にとって活力を高めるためには、”生活してみたい、生活しやす

いところ”を表現するイメージづくりであり、それをいかにアピールし、実践していくかが重要で

はないかと思う。

企業のブランド構築理論を応用したフレームが必要。イメージとアイデンティティのマッチング、

そのための理論が不可欠。

イメージの基となる地域事情を、住民、地域の行政が相互に理解できるような風土づくりに心

掛けたい。

地域イメージを図ることは、地域資源の再発見、またその地域に対する理解と愛着にもつなが

る。人々がその地域に赴き、定住するに大切な要因の一つであると感じる。

都市部と農山村地域の交流、連携。都市内分権による住民自治の拡充、自立がテーマ。

歴史、伝統というイメージと一方では交通アクセスの利便性があるというイメージがある場合、

二つの地域イメージは存立するのか。地域イメージがあいまい。

豊かな自然環境を背景に水と森、山村と田園を中山間地域の都市的機能と調和させた快適

な定住圏域の形成。人生全てのステージでの要求を満たすことのできる生活の充足度を自慢

できる地方都市。

回答者の自由記入コメントから抜粋し、自治体名が特定できる表現を修正したもの 1

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当地域の主要産業が観光業であることから、地域イメージに左右される影響は大きい。

地域イメージの明確化と積極的な PR により、本市の地域イメージを職員・市民が共有し市域

の活性化(観光・交流の活性化や産業誘致など)につなげていきたい。

合併を機に、地域のイメージアップと交流人口の増加による地域の活性化はどこの自治体で

も考えていることではあるが、その中を勝ち抜くための画期的なアイデアに欠ける。今までのよ

うに自治体主導ではなく、住民を巻き込んでやろうとするがノウハウがない。

地域イメージの定着は地域住民が感じることが第一であり、地域が活性化すれば、自然と町

外に発信されるのではないか。

合併旧市町ごとの地域イメージを大切にしながら新市の新たな地域イメージを現在施策中で

ある。総合計画で検討したい。

今日における小規模自治体においてはネームバリューという大きな資源(例:湯布院町、ニセ

コ町等)を持っている自治体には、自然と多くの人が集まってくる。何もない自治体ではそこに

住んでいる人が「住んで良かった」と思える町づくり、また訪れる人が「来て良かった」と思える

ような町づくりを行う必要がある。

行政区域が広くなると、地域イメージが希薄になる。本町の様に同一のイメージを PR できる合

併が情報発信を目的とするなら最良。

地域イメージ施策の構築については自治体と住民との協働が必要であり、また、財政的な裏

付けも必要と考えられる。従って、課題も多く、その課題解決が急務と考えている。

長い間で作り上げてきた地域イメージについて自治体の名前の変更によりなくなっていくことを

実感している。

合併して1年が経過したが、旧町において、各々の地域イメージが強く残っており、統一した地

域イメージを作り出すことが難しい。

一度とりついたイメージはなかなか払拭されないので合併による新町のイメージはとりわけ大

切にしたい。

新市は誕生して間もないこともあり、地域イメージとしては決め手を欠いている。当面する課題

の一つである。

地域イメージの明確化が重要であり課題と思われる。

町の活性化は定住人口の拡大である。町の大半は農村地域で高速道の沿線に準工業地域が

ある。企業誘致策をすすめ、通勤圏である農村地域でも新規に定住が拡大する施策を図り、

町全域の均衡ある発展を目ざしたい。

人口減少社会への移行が進む中で、今後のまちづくりは、本市の特徴である学術研究機能を

最大限に発揮していくとともに、豊かな自然や酒文化などを守り育みながら、住民にとって真に

住み良さを実感できるように進めていく必要があると考えている。そのためには、本市のこうし

た地域イメージを広く内外に発信していくことは重要な施策の一つであると考えている。

合併後に一つのイメージに統一する必要はないと思う。それぞれの地域が持つイメージを大切

にしながら、一体感を醸成する施策も必要ではと思う。

少子高齢化が進み、当市においても人口の減少が進行している。今後、UJI ターンに向けた取

り組みを、現在、検討中である。この地域の特色をどう表現し、PR していくかが、今後の課題であ

る。

一生懸命取り組んでいるつもりだが、受け取る側の評価がなかなか把握できない。効果が顕

われるまでは試行錯誤の連続。

地域イメージは、全国レベルでの固有性や継続的な取り組みが必要である一方、施策的には

効果測定の基準が不明瞭な面もあり、市民と共有できるイメージ戦略づくりに苦慮している。

当然のことではあるが、地域イメージの普及、強化には行政の力だけでは及ばず、住民、地域

産業あげての理解と協力が不可欠である。

町村合併により、旧町村のブランドが新町のイメージとして定着するまでにはかなりの時間と

手間が必要であるし、一番に住民のコンセンサスが必要であると痛感している。

41

分権型社会の到来に伴い、地方自治体の役割分担、使命が一層強まる中において、地方の

自主性、自立性をいかに発揮していくかが魅力或安置作りの要素の一つとなり、これによって

地域イメージが高まり、人や企業が集まり、産業の振興にもつながっていくのではないか。

市民一人一人が自らのまちを住み良くする意識が重要である。地元の人が楽しみ、集うことが

まず大切である(地元の人が足を運ばないところに観光客が来るはずがない)。

非も無く可も無く、中山間の農林業地域として、住民と一体となるものが乏しい。高齢化過疎の

進行に加え、高度情報化社会に対応できるインフラ整備が遅れているため住みやすいが魅力

の無い地域のイメージがある。又、少子化の進展に伴い教育文化の立ち遅れや地域の教育力

の減退が感じられる。

旧自治体のワクを越えての「融合」にまで至らず、新たな地域イメージを見出せていない現状

にある。

地域イメージを確立し、市民が自分たちの住むまちに誇りを持つことで、地域に愛着も湧き、地

域活動への参加意識も高まる。地域イメージの普及により「○○のまち」として認知されること

で、地域ブランドの商品価値も上がり、産業の活性に資する。

人口が右肩上がりだった状況にかげりが見えている。今後、JR 駅裏に宅地開発が完了する

が、魅力あるイメージを打ち出さなければ失敗しかねないという危機感が生まれ始めているの

を感じている。

地域イメージは、市民の生活満足度を高めるものだと思うので、よりよいイメージ作りに努めた

い。グリーン・ツーリズムを推進することにより、地域イメージを高めることができたので、さらに

努力していきたい。

2町合併により誕生した町だが、似たもの同士の町だったので、よりイメージは明確になったと

思う。位置的には恵まれながら、施策が効力を奏さなかったという現状、これから新しい町にと

って施策が重要であり、ブランドづくりの検討に入っている状況。

他地域にはない「○○らしさ」を磨き上げ、地域間競争に勝ち抜く自立した経済構造の実現の

ためには、地域イメージ施策は重要であり、地域イメージをどのような形で明確にしていくかが

課題と言える。

今回の合併は、周辺町の編入合併であり、また、従来から当市の地域イメージが強いため、

合併後は、合併町の地域イメージを融合させ、新市の地域イメージを確立させる必要がある。

自治体が確立を目指す地域イメージや住民が抱くイメージの差をどのようにうめるかが今後の

課題であると思う。

地域イメージが高まることは、行政にも市民にもその恩恵は多大であると考えるが、そのイメー

ジの高まりに実態が伴わない場合も生じる。地域のイメージアップのための施策の展開はその

効果を的確に分析し行う必要があると思う。

観光、農林水産、商業などなど全ての施策に地域イメージを考え取り組んでいるとは思うが、

地域イメージを先行させた取り組みはしていない。イメージより基となるものがしっかりしている

かだと思う。イメージ先行で誇張なら何もならない。

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参考文献

生田孝史・湯川抗・濱崎博 2006 「地域ブランド関連施策の現状と課題-都道府県・政令

指定都市の取り組み-」富士通総研『研究レポート』No.251 Jorgensen, John. 2005. “The New Map of Denmark”, Journal of NORDEREGIO, No.2,

June, Vol. 5, pp.4-6. KL. 2003. Local Government in Denmark, http://www.lgdk.dk Parkerson, Brenda and Saunders, John. 2005 "City branding: Can Goods and Services

Branding Models be Used to Brand Cities?" Place Branding, Vol.1, 3, pp.242-264.

独立行政法人労働政策研究・研修機構 2004 「 近の労働情報-デンマーク 2. 地方自治

体改革」http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_8/denmark_02.htm 佐々木信夫 2002 『市町村合併』筑摩書房 総務省自治行政局 2006 「市町村合併関係資料」http://www.soumu.go.jp/gappei 菅沼栄一郎 2005 『村が消えた-平成大合併とは何だったのか』祥伝社

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