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Title 腎嚢胞内感染治療の検討 Author(s) 石塚, 榮一; 北島, 直登; 藤井, 浩; 岩騎, 晧 Citation 泌尿器科紀要 (1984), 30(5): 609-614 Issue Date 1984-05 URL http://hdl.handle.net/2433/118184 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversion publisher Kyoto University

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Title 腎嚢胞内感染治療の検討

Author(s) 石塚, 榮一; 北島, 直登; 藤井, 浩; 岩騎, 晧

Citation 泌尿器科紀要 (1984), 30(5): 609-614

Issue Date 1984-05

URL http://hdl.handle.net/2433/118184

Right

Type Departmental Bulletin Paper

Textversion publisher

Kyoto University

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609

泌尿紀要30巻5号

、1984年5月

腎嚢胞内感染治療 の検討

横浜赤十字病院泌尿器科(部 長:石 塚榮一)

石 塚 榮 一

北 島 直 登

藤 井 浩

岩 騎 晧

CLINICAL STUDY ON THE TREATMENT FOR

INFECTED RENAL CYST

Eiichi ISHIZUKA, Naoto KrrAjimA, Hiroshi Fujir and Akira IWASAKI

From the Department of Urology, Yokohama Red Cross Hospital

(Chief : E. Ishizuka)

A case of infected simple renal cyst and three cases of infected polycystic kidney have

been treated during the 6 years from July, 1976 to June, 1982. One of the 3 cases of

polycystic kidney, was operated. The other 2 cases were treated with antibiotics. The largest cyst in the present studies appeared to be more than 5 cm in diameter on the X-ray

films.

To define the limits to chemotherapy of the infected cyst, the relationship between the

effect of chemotherapy and the size of the cyst was evaluated from clinical prognosis.

From these results, it is strongly suggested that surgical treatment rather than chemo-

therapy is the best treatment for cysts which are more than 6 cm in diameter or in cases of

marked protrusion of the kidnay and significant deformation of renal calyces.

Key words: Renal cyst, Infection, Treatment

緒 言

腎嚢胞内感染は,抗 菌剤の嚢胞液へ の移行が少ない

ためト5),化学療法に よる治癒が困難 な疾患 であ る.症

例に よっては,化 学療法 よ り手術療法を選択する こと

が必要 である.

われわれは,嚢 胞内感染症 と診断 し,化 学療法や手

術療法をおこない治癒 した症例を集め,レ 線写真 と治

療結果 を比較 し,化 学療法 の限界について考察 した.

対 象 お よび 方 法

横浜赤十字病院において,1976年7月 ~1982年6月

までの6年 間に,腎 嚢胞内感 染症 と診断 した症例は4

例 であ る.こ れ ら4症 例に対 して,IVP,Nephroto一

mography,CT,腎 動脈造影 を施行 し,嚢 胞 の大 きさ

や腎影の突出や腎孟 腎杯 の変形について観察 した.こ

れ ら レ線所見 と治療結果 とを比較 した.

結 果

症例iは,49歳 の女子で左腎孟腎炎 で治療 を うけた

が,高 熱が続 くため紹介 され来院 した.左 腰部 の自発

痛や叩打痛は,軽 度に認め られた.尿 所見は異常な く,

起炎菌は不 明であ った.入 院 しCTMを1日4g使

用 した ところ,腰 痛の消失 とともにすみやかに解熱 し

た(Fig.1)。IVP(Fig.2)やNephrotomography

で左腎杯の変形は軽度に,腎 影の突 出は,ほ とんど認

め られ なか った.CTで 両腎や肝臓に嚢胞が 多数み ら

れ,左 腎の最大 の嚢胞は,直 径約5cmで あ つた.

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610 泌尿紀要30巻

症例2は,58歳 の女子で右 腎孟腎炎 で治療 を うけて

いたが,解 熱 しないため紹 介された.右 腰部の自発痛

と叩打痛 は,軽度に認め られたが,尿 所見は異常な く起

炎菌 も不明であった.入 院 しCTMを1日4g使 用

した ところ 解熱 した(Fig.3).IVPとNephroto-

mography(Fig.4)で,右 腎孟腎杯の変形は中等度

に,腎 影 の突 出はほとん ど認め られ なか った.CTで

両腎や肝臓に嚢胞がみ られた,右 腎の大きい嚢胞は,

直径約5,5cmで あ った.

症例3は,30歳 の女子 で左腎孟腎炎 の治療 を うけ解

熱 したが,顕 微鏡的血 尿が続 くため,紹 介され来院 し

た.自 覚症状は まった くな く,外 来で経過 を観察 して

5号1984年

いた と ころ,血 沈 の 上 昇 と と もに,疲 れや す くな り熱

発 した た め 入 院 した(Fig・5)・IVPやNeph「oto'

mographyで,左 腎 に 上 腎 杯 の 変 形 が 中 等 度 に,腎

影 の 上方 へ の突 出が 著 明に み られ た(Fig,6).腎 シ

ンチ で,こ の 部 分 にspaceoccupyinglesionが 認

め られ た.顕 微 鏡 的 血 尿 を 認 め,尿 の 細 菌 培 養 は 陰 性

で 腎 部 の 叩打 痛 もな か った.腎 動 脈 造 影 で血 管 の蛇

行 と新 生 が 認 め られ(Fig.7)・CTで 嚢 胞 で あ る こ と

を 確 認 した.嚢 胞 は 孤立 性 で直 径 は,5・5cmで あ っ

た.以 上 よ り嚢 胞 内 感 染 症 と して 加 療 した.SB-PC

とDKBに よ って,約6週 間 を要 した が,感 染 を 抑

え る こ とが で きた.そ の後,顕 微 鏡 的 血 尿 は 消 失 し,

Antibiotics

℃40

39

B.T.38

3T

36

Culture

(Urine)

Urinalysis

(WBC)

WBC(/旧m3)

B.S.R.(mm/hr.)

5 10(1981)

一CTM4 .Ogldaylv

⊂一) 〔一)

{一) 〔一} (一)

12200 8400 5TOO

1⑳ 94

Fig.1.M,Y.49Y.Female(症 例1)●

傷1

勿 ・一 客 μ

%翼妙

縫毫罐

声 ㌔Fig.2.IVP(左 腎 杯 の変 形 を認 め る)

15

4年 以上 を経過 して も,尿 所見や血 沈は正常で,元 気

に 日常生活を送 っている.

症例4は,41歳 女子 で他院 で嚢胞腎 と診断 されてい

た.発 熱を主 訴に来院 した.膿 尿でE.Coliが 認め ら

れたが,腰 部に自発痛 や叩打痛は まった く認めず,炎

症側は不明であ った.DIPで 両腎 の腎杯 の変形や腎

影 の突 出が著 明に認め られた(Fig.8).CTZとCB-

PCお よびDKBを 使用 し,体 温は37。C前 後 とな

り,尿 所見 も正常 とな り尿細菌培養 も陰性 となった.

しか し,左 胸膜炎を併発 し,熱 発 してきた.こ の時,

軽度の叩打痛 が左腎部にみ られたため,左 腎嚢 胞内感

染 と考え手術 をおこなった.左 腎 上極 の直 径約7cm

の嚢胞液は,膿 状 で あった.嚢 胞壁切除術を お こな

い,さ らに,周 囲の膿を もった多数の嚢胞をで きるだ

け切開排膿 し,手 術 を終 了 した.も っとも大 きな嚢胞

における内容液の一般細菌培養は陰性であ った.周 囲

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石塚 ・ほか:腎 嚢胞内感染 ・治療 611

Antibiotics

40

39

B.T.38

3T

36

Culture

(Urine)

Urinalysis

(WBC

WBC(/mm3)

B.S.R.(mm/hr.)

10 15 (1981)

CTM4.Og/dayiv

{一) {一}

(一} {一,

TSO9(stab12)

6300

(5tab5)

6300

136 65 TT 30

Fig.3,K.T.58Y.Female(症 例2)

'

艶、、.

「ぐ簿.彦 ・・

Fig.4. Nephrotomography(右 腎 孟

腎杯 の変 形 を 認 め る)

Antibiotics

40

3S

B.T.38

3T

36

Culture(Urine)(Bbod)

U「inalysis

WBC(/m3)

B.S,R.(mm/hr.)

%CEZ4.Og/dayiv

AMK400m!dayim

1%%(1979)

SB・PC1091dayiv一DKB200mg/dayIm

PPA

榊(一, {一,

(一, {一}

(野){一 ⊃ (一} {一) (一)

(階)〔十} {十 ⊃ 〔十, 〔一,

(臨8)S4eo

(欄 。)Toee eDeo

12311510868

Fig.5.S.M.30Y.Female(症 例3)

64

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612 泌尿紀要30巻5号1984年

鞍 驚 彩x

・./・ 〆 珍%

宅 瀞 ・え

ヨ ゲ

漁 藁 蓼 ,遡ぐ

,顯

4拶 ㌃

質'.。

轟ドゆ  

轡矛 袖

激轟

1'

弧,

Fig.6.Nephrotomography(左 腎 に 上 腎 杯 の変

形 と腎 影 の上 方 へ の突 出が 認 め られ る)

耀ア釦

拶 盛

Fig.7.腎 動 脈 撮 影

疹 ・

` .撒 擁ン∵ 夢

・漁 箋

髪ザ

穿直 劃Fig.8.DIP(両 側 の腎 孟 腎 杯 の 変 形 を 認 め る)

の膿 を も った 嚢 胞液 の細 菌 培 養 は お こな って い な い.

術 後,解 熱 し血 沈 も正 常 とな った(Fig.9).4年 以 上

経 過 し,BUNやGreatinineは,正 常 範 囲 内 に あ り,

血 圧 は い く分 高 め で あ るが,元 気 に 生活 して い る,

以 上 の4症 例 の 腎 孟 腎杯 や 腎 影 の 状態 と治療 方 法 を

ま とめ ると,TableIの ご と くに な る.

考 察

腎嚢胞 内感染症は,横 浜赤十字病 院に おいて,1976

年7月 ~1982年6月 までの6年 間に4例 み られ,こ の

間に おける当科入院患 者数1,269名 の約0.3%に 当る.

木症 は発熱が主たる症状 で,叩 打痛はほ とんどな く,

多数の嚢胞中,数 個だけ感染を起 していれば,診 断が

困難 な疾患 であ る.補 助手段 として,Gaシ ンチ6)や

腎動脈造影やCTが あ るが,穿 刺7)や 手術に よって

嚢胞 内に膿を証明す れば確実 である.自 験例4例 中嚢

胞腎 の2例 は,腎 孟腎炎の治療に よって,尿 所見は正

常 とな り,腎 部の叩打痛 もほ とん ど消失 したに もかか

わ らず高熱が続 き血 沈が高 いことな どか ら,嚢 胞内感

染症 と診断 した.し か し,確 証はない.他 の2症 例 の

うち,孤 立性腎嚢胞の1例 は,腎 動脈造影 とCTと か

ら,嚢 胞腎 の1例 は手術に よって,腎 嚢胞内感染症 と

診断 した.

治療 は嚢1泡の大小にかかわ らず,強 力 な化学療 法を

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石塚 ・ほか=腎 嚢胞 内感染 ・治療 613

An量ibiotics

℃39

38B.↑.

37

36

Culture(Urine)

(Blood)

Urinalysis(WBC)

WBC(/m醗3)

B.S.R.(mm/hr、)

1%20 10 20

i/v(1979)

CEZ4.09!daviり一SB・PC109/d6yiり

CTZegtdeyiv

C8曹PC209!do7iり

MK400rngtdeyim DKB200mg/deyim

一SM{1.Og!w⊃Im.PAS,INAH一PPA

Pleuritis OP

E.ColiE.Coli(一}

Ps,cepaciaCandida

{一} (一) (一}

(十り 〔十り (一} (一) (一) 〔什}(一)

26900 23000gseo 9300 6TOO

8104 140 loe 63

Fig.9.S.A.41Y.Female(症 例4)

TableI.4症 例 の比 較

症例。甕。。㌦ 鶉 課 瀦 鴬鵬 嚢鷺喜径治療

1(±)(±)120軽 度 ほとんどなし 約5.O化 学療法

2(±)(十)136中 等度 ほとんどなし 約5.5化 学療法

3(一)(一)123中 等度 著 明 約5.5化 学療法

4(一)(±)140著 明 著 明 約7保 存的手術

おこない,効 果 がなければ,腎 摘出術6・8・9)や嚢胞壁切

除術 と体外 ドレーナージIO・1「)や経皮 的穿刺術 とカニュ

ー レ留置7)な どの手術療法をお こな うこととなる.

化学療法は,宿 主の状態 と起炎菌 の薬剤に対す る感

受性 と,薬 剤 の嚢胞 内への移 行状態に,治 療効果 が左

右 され ることとなる.

自験例は,4例 とも嚢胞内の起炎菌は不 明で,嚢 胞

内の薬剤濃度 の検討をお こな っていない.そ こで,レ

線写真での腎影 の突出や,腎 孟 腎杯 の変形お よび嚢胞

の大 きさ と治療結果 との比較 をおこない,化 学療法 の

限界に ついて考察 してみた.

嚢胞腎の 嚢胞は,Nephronと 交 通 が あ り12・13),

GMやCEPRやTI-PCの 嚢胞液への 移行が 軽度

にみ られ るといわれている4).

自験例 の4例 中3例 は,嚢 胞腎で症例1と 症例2は,

レ線写真 で腎孟腎杯の変形や腎影の突出は軽度 で,最

大の嚢胞 の直径は,そ れ ぞれ,約5cmと5.5cmで

あった.嚢 胞内感染症 が うたがわれたが確証はない,

CTM投 与で比較的容易に解熱 している点か ら,大 き

な嚢胞へ の感染は,な か った とも考 えられ る.症 例4

は,治 療経過 と レ線写真で,腎 孟腎杯の変形や腎影 の

突出が著 明なことか ら,化 学療法の限界 と考 えて手術

をおこなった.最 大の嚢胞 の直径は約7cmで,嚢 胞

壁切除 をおこなった.周 囲に ある化膿 した嚢胞は,で

きるだけ切開 したが,感 染 した嚢胞は,ま だあった も

の と考えている,嚢 胞腎の嚢胞 内感染で,腎 摘 出術 を

お こな っている報告6)も あるが,自 験例では,手 術腎

に他に大 きな化膿 した嚢胞が なか ったため,腎 保存的

手術をおこなった.さ いわ いに も,そ の後 の化学療法

に よって根治 できた ことは,小 さい嚢胞の感染 であれ

ば,治 癒す ることを示 したものと考えている。

これ らの 嚢胞腎の3症 例 か ら,嚢 胞の直 径が5.5

cm以 下で,腎 影 の突 出や腎孟腎杯の変形が ない場合,

化学療法に よって治癒するが,嚢 胞 の直径が7cmも

あ り,腎影 の突 出や腎孟腎杯の変形が著 明であねば,化

学療法 よ り手術療法を選択す る必要 があるといえ よう.

孤立性腎嚢胞では,嚢 胞 とNephronと の交通が

な いため12・14),薬剤は嚢胞液へ移行 しに くいといわれ

ている1ny3・5).

杉村8)は,嚢 胞 の直径が4.5cmの 化膿性孤立性腎

嚢胞で,レ 線写真 で腎杯の変形を軽度に,腎 杯の突出

を中等度に認め,AB-PCを4日 間投 与 し平熱 とな っ

た症例を報告 している.

姉崎 ら9)は,腎 中央部にあ って腎実質に被われた化

膿 性孤立性 腎嚢胞に,CERとKMを 投与 して,12

日目頃 よ り37℃ 台の微熱 と軽度の側腹 部痛 とな り,

手術で約600mlの 膿状内容液 を吸引し,一 般細菌が

陰性であ った例を報告 してい る.

自験 例の症例3は,嚢 胞直径5.5cmで,腎 影 の突

出は著明で,腎 孟腎杯 の変形はほ とん どなか った.化

学療法で6週 間を要 したが治癒 した。 この治療経過か

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614 泌尿紀要30巻5号ig84年

ら手術療 法 と化学療法 の境界に位置する症例 と考え て

いる.

これ ら3症 例 は,孤 立性腎嚢胞に対す る化学療法が,

有効な治療法 であることを示す もの と考える.杉 村の

症例8)と 自験例 の嚢胞 の大 きさを比較す ると,前 老が

容易に化学療法に反応 した ことは,嚢 胞の大 きさも大

切 な要素で あ ることを 推定 させ る.嚢 胞 直径が5.5

cm位 までが,化 学療法 の限界 といえ よう.

いっぽ う,寺 沢 らlo)は,長 径5cmの 化膿性孤立性

腎嚢胞で,腎 杯の変形 は少 ないが,腎 影 の突 出が著 明

な症例に,CEZやDKBを 投与 したが,弛 張 熱や

腰背部痛が持続 し,3週 間 目に手術をおこない起炎菌

が不 明な症例を報告 している.

平野 らH)は,腎 影 の突出 と腎杯の変形が著 明にみ ら

れ た,直 径8cmと5.5cmの2個 の嚢 胞を もった

症例の嚢胞内感染症 を報告 している,こ の症例は,化

学療法に よ り一時的に軽快 したが,そ の後,再 燃 し嚢

胞切除 と体外 ドレーナージをお こない,2カ 所の嚢胞

か ら細菌を証 明 してい る.こ れ ら2症 例は,腎 影の突

出が著 明な 大 きな 嚢胞 であ り,嚢 胞直 径が5cm以

上に なると,手 術療法が 必要 とな ることを 示 してい

る、

自験例や報 告例を通 して,嚢 胞の種類に関係 な く,

嚢胞が小 さけれ ば化学療法は有効であるといえ よう.

嚢胞が大 きくな り直径が5.5cm位 に なると,嚢 胞の

大部分が腎外に突 出す ることが多 く,レ 線写真で も,

腎影の突 出が著 明とな り,腎 孟腎杯の変形を ともな う

よ うになる.こ のよ うな症例は,化 学療法に抵抗を示

す傾向が認め らカ,化 学療法 と手術療法の接点に位置

している といえ よう.し たが って,さ らに嚢胞の直径

が大 きい場合,す なわち,直 径が6cm以 上あれば,

化学療 法 よ り手術療法を選択す べきと考え る.

結 語

われわれは,4例 の嚢胞内感染症 を経験 した.こ れ

ら4症 例は,最 大の嚢胞直径が レ線 写真で5cm以 上

であ った.こ れ ら症例 の レ線写真 と治療結果 を比較検

討 し,嚢 胞直径が6cm以 上の もの,す なわ ち,腎 影

の突出や腎孟腎杯の変形が著明に認め られ る嚢胞 内感

染症は,化 学療法 よ り手術療法を 選択すべ きと 考え

た,

なお,木 楡文の要旨は,1982年10118日 に開催 された,第

18回日木赤十字社医学会総会において発表した.

文 献

1)宮 川征男 ・西沢 理 ・熊谷郁太郎 ・土 田正義:単

純 性 腎 嚢 腫 液 中 へ の 抗 生 物 質 の 移 行 に っ い て.臨

泌32:153~155,1978

2)MutherRSandBennettWM:Concentration

ofantibioticsinsimplerenalcysts・Jurol

124:596,1980

3)桐 山 ・夫 ・岡 部 達 士 郎 ・添 田 朝 樹 。岩 崎 卓 夫 ・吉

田 修:腎 の う胞 液 中Cefsulodinお よ びSCE-

1365濃 度.泌 尿 紀 要27:367~380,1981

4)MutherRSandBennettWM:Cyst舳id

antibioticconcentrationsinpolycysticki引

dncydisease:Differencesbetweenproximal

anddistalcysts.KidneyInternationa120:

519~522,1981

5)大 川 光 央 ・元 井 勇 ・岡 所 明 ・平 野 章 治 ・久 住

治 男=単 純 性 嚢 胞 液 中 へ のamikacinの 移 行 に

つ い て 一 特 にsubstrate-labcledfluorescent

immunoassay法 に よ る 検 討 一.泌 尿 紀i要28:

1349~1356,1982

6)WatersWB,HershmanHandKleinLA:

Managemcntofinfectedpolycystickidney.

Jurol122:383~385,1979

7)stabllsDPandJacksonRs:Management

ofaninfectedsimplerena里cystbypercuta-

neousaspiration・BritJRad47:290~292,

1974

8)杉 村 克 治:化 膿 性 孤 立 性 腎 嚢 胞 .臨 泌23:985~

988,1969

9)姉 崎 衛 。阿 部 礼 男=化 膿 性 孤 立 性 腎 嚢 胞 の1例.

臨 泌24:531~535,1970

10)寺 沢 明 夫 ・飯 島 崇 史 ・中 原 東illF.・ 武 田 淳 志 ・浜 崎

啓 介 ・三 輪 恕 昭 。折 田 薫 三 ・藤 田 幸 利:化 膿 性 孤

立 性 腎 嚢 胞 の1例.臨 泌33:389~392,1979

11)平 野 章 治 ・大 川 光 央 ・久 住 治 男:化 膿 性 単 純 性 腎

嚢 胞 の1例.泌 尿 紀 要28:1257~1262,1982

12)BrickerLNSandPattoncJF=Cysticdi-

seaseofthekidneys.AmJMed18:207~

219,1955

13)OsathanondhVandPotterEI.Develop-

mentofhumankidneyasshownbymicro-

dissection.ArchPath76:271~276,1963

14)斉 藤 博 ・岡 田 耕 市 ・加 藤 幹 雄:単 純 性 腎 嚢 胞 内

容 液 の 生 化 学 的 検 索,特 に そ の 発 生 病 理 に つ い て

の 考 察,臨 泌30=651~654,1976

(1983年11月1日 受 付)