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1. はじめ者らは、SD490および785N/mm 2 級横補強の新な開発実験の機会を得た。2010版鉄筋コンクリート造計算規・同解1) 以下「RC規準」と略記するではSD490の鉄筋が適用範囲にめられ、RC柱・梁部材せん断設計では、損傷制御のための期設計が加た。 これらの点を踏ま、本研究では、SD490および785 N/mm 2 横補強を用いたRC柱について、終局耐力形性能、および短期許容耐力時のひびれ幅に着目し 実験を計画した。SD490を用いる合には、横補強筋 溶接閉鎖型として、曲・せん断性状を調べるための 験を計画し、曲降伏先行型の場合は、高軸力を受け 場合についても討する。また、785N/mm 2 を用 る場合には、高軸力をける場合のみに対象を絞り、 補強筋形式の違い溶接閉鎖型、135°フック付き閉鎖 型)による影響を明らかにする。 -1 試験体一覧 試験・研究 16 *1 ICHIOKA Yukako:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造物試験室 博士工学*2 TAGAWA Hiroyuki:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造物試験室 Ph.D. *3 ADACHI Masato:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造物試験室 博士工学*4 MASUO Kiyoshi:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 審議役 工学博士 岡有* 1 田川 浩* 2 足立 将人 * 3 、益尾  潔 * 4 m mm /m / N/ N/ 5 5 78 78 d 7 d7 nd d an 90 90 49 49 D4 D4 SD SD ng sin i Us U s U U mns Structural Performance of RC Colum S lP f f RC C l S r u t r a P e f m a n e o C C l m m s U s n D 4 9 n d 7 N / m m 2 2 ts nt me em rce or nf f ein i Re R r R R ea he h S S e R e n o r e m e t m m m m m m m m m mm mm mm m m m /m /m /m / / / / / N/ N/ N/ N/ N N N N 5N 5N 5N 5N 5 5 5 5 85 85 85 85 8 8 8 8 SD490および78 SD490および78 SD490および78 SD490および78 S S D D 4 9 0 0 7 7 8 8 5 5 N N / / m m m m m 2 2 2 2 2 2 2 補強 補強 補強 補強 横補 横補 横補 横補 級横 級横 級横 級横 性能 性能 性能 性能 造性 造性 造性 造性 用いたRC柱の構 たRC柱の構 用いたRC柱の構 用いたRC柱の構 R R C C

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1. はじめに筆者らは、SD490および785N/mm2級横補強筋の新たな開発実験の機会を得た。2010年版鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説1)(以下「RC規準」と略記する)では、SD490の鉄筋が適用範囲に含められ、RC柱・梁部材のせん断設計では、損傷制御のための短期設計が加えられた。これらの点を踏まえ、本研究では、SD490および785N/mm2級横補強筋を用いたRC柱について、終局耐力、

変形性能、および短期許容耐力時のひび割れ幅に着目した実験を計画した。SD490を用いる場合には、横補強筋を溶接閉鎖型として、曲げ・せん断性状を調べるための実験を計画し、曲げ降伏先行型の場合は、高軸力を受ける場合についても検討する。また、785N/mm2 級を用いる場合には、高軸力を受ける場合のみに対象を絞り、横補強筋形式の違い(溶接閉鎖型、135°フック付き閉鎖型)による影響を明らかにする。

表-1 試験体一覧

試験・研究

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*1 ICHIOKA Yukako:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造物試験室 博士(工学)*2 TAGAWA Hiroyuki:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造物試験室 Ph.D.*3 ADACHI Masato:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 構造物試験室 博士(工学)*4 MASUO Kiyoshi:財団法人 日本建築総合試験所 試験研究センター 構造部 審議役 工学博士

市岡有香子*1、田川 浩之*2、足立 将人*3、益尾  潔*4

mmm/m/N/N/5 57878d 7d 7nddan90 904949D4D4SDSDng gsiniUsUs UUmnsStructural Performance of RC ColumS l P f f RC C lS ru t ra Pe f man e o C C l mm s Us n D49 nd 7 N/mm22 tsntmeemrceforfnffeiniReRr RReahehSS e Re nfor eme t

mmmmmmmmmmmmmmmmmm/m/m/m/////N/N/N/N/NNNN5N5N5N5N5555858585858888SD490および78SD490および78SD490および78SD490および78SSDD4900おおおよよよびびび778855NN//mmmmm2222222 をををををををををををを筋筋筋筋筋筋筋筋筋筋筋筋強強強強強強強強強強強強補強補強補強補強補補補補補補補補横補横補横補横補横横横横横横横横級横級横級横級横級級級級級級級級級級級級級級級横横横補補補強強強筋筋筋をを能能能能能能能能能能能能性能性能性能性能性性性性性性性性造性造性造性造性造造造造造造造造造造造造構構構構構構構構用いたRC柱の構用 たRC柱の構用いたRC柱の構用いたRC柱の構用用用いいたたRRCC柱柱柱のの構構構造造造性性性能能能

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2. 2 実験方法加力は図-2に示すように、建研式加力装置を用いて試験体に逆対称変形を与え、目標所定部材角R=5、10、(15)、20、30、40、(50)、(60)×10-3rad.で2サイクルずつの正負繰返し載荷の後、正加力方向への単調載荷とした(( )内のRは試験体により省略した)。

2. 3 使用材料コンクリートと鉄筋の材料特性を表-2、表-3に示す。

3. 軸力比n=0.25のQ-R関係および破壊性状3. 1 中子筋の有無の影響軸力比n=0.25の試験体No.2-2とNo.2-3について、図-3にせん断力Q-部材角R関係を示す。これらの2試験体は、横補強筋比pw=1.01%が共通で、中子筋の有無のみが異

2. 実験計画2. 1 実験因子本実験は、横補強筋にSD490を使用し、せん断破壊型を想定したNo.1系列6体、SD490を使用し、曲げ降伏先行型を想定したNo.2系列6体、785N/mm2級を使用したNo.3系列6体の、計18体からなる。試験体一覧を表-1に、主な試験体の形状および寸法を図-1に示す。実験因子は、横補強筋の鋼種(SD490、785N/mm2級)、形式(溶接閉鎖型、135°フック付き閉鎖型)、間隔、中子筋の有無、コンクリートの目標圧縮強度Fc(30N/mm2、60N/mm2)、および軸力比n(0.25、0.5)である。柱断面寸法はB×D=350mm×350mmであり、全試験体共通とした。柱内法高さ比H/Dは、No.1系列ではH/D=3.0、No.2、No.3系列ではH/D=3.5とした。ここに、Hは柱内法高さ、B、Dは柱断面の幅およびせい、Nは柱軸力を示し、軸力比n=N/(FcBD)である。

図-1 主な試験体の形状および寸法

図-2 実験装置

表-2 コンクリートの材料特性

表-3 鉄筋の材料特性

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なる。すなわち、中子筋併用のNo.2-3で は横補強筋間隔がNo.2-2の2倍となる。図中には、最大耐力Qmax、限界部材角R80および主な発生現象を示した。R80はせん断力がQmaxの80%に低下した時の部材角実験値である。また、図-4に、SD490を使用し たNo.1-1 ~ 1-3(H/D=3.0)とNo.2-1 ~ 2-3(H/D=3.5)のQ-R関係正加力時包絡線の比較を示す。

各試験体の破壊形式を表-1中に示す。試験体No.1-1 ~ 1-3とNo.2-1はせん断破壊型、No.2-2、No.2-3は曲げ破壊型である。図-3より、No.2-2とNo.2-3では、最大耐力およびひび割れ等の発生時期はほぼ同じであった。最大耐力後の耐力低下は、中子筋併用のNo.2-3の方が緩やかであった。図-4より、横補強筋比が同じ場合、外周筋のみから中子筋併用とすると、H/D=3.0の試験体No.1-2とNo.1-3(ともにpw=0.8%)では最大耐力が増加した。H/D=3.5の試験体No.2-2とNo.2-3(ともにpw=1.0%)では、最大耐力はほぼ同じであったが、変形性能が向上した。

3. 2 横補強筋量の影響写真-1に、横補強筋が外周筋のみの試験体No.1-1とNo.1-2、およびNo.2-1とNo.2-2に

ついて、R=30×10-3rad.時またはR=40 ×10-3rad.時の損傷状況を示す。No.1-1(pw=0.4%)とNo.1-2(pw=0.8%)では、横補強筋量の増加に伴い、破壊性状が、部材全長に渡る斜めひび割れを生じる斜張力破壊型から、材端部1D(D:柱断面せい)程度の範囲にせん断ひび割れを生じるせん断破壊型に移行した。No.2-1(pw=0.5%)とNo.2-2(pw=1.0%)では、材端部せん断破壊型から、材端部上下縁のコンクリート圧壊が顕著な曲げ破壊型に移行した。図-4より、横補強筋量が増加すると、No.1-1とNo.1-2では最大耐力・変形性能ともに増加した。No.2-1とNo.2-2では最大耐力はほぼ同じであるが、変形性能が向上した。

写真-1 損傷状況の比較(Fc30、n=0.25)

図-3 Q-R関係の比較(外周筋のみ・中子筋併用)

図-4 Q-R関係包絡線の比較(Fc30、n=0.25)

図-5 Q-R関係包絡線の比較(n=0.5、785N/mm22級)

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り最大耐力が決定した。中子筋併用とした試験体No.3-2とNo.3-5では、中段筋沿いに付着割裂ひび割れが生じたが、R=20×10-3rad.の最大耐力時以降では材端部コンクリートの圧壊が顕著になり、曲げ圧縮破壊型となった。図-5に示すように、外周筋のみから中子筋併用とすると、Fc30、Fc60いずれの場合にも、最大耐力は1.1倍程度となり、変形性能が大きく向上した。

5. 終局耐力の検討5. 1 最大耐力実験値との比較終局せん断耐力について、技術基準解説書2)に示される荒川mean式による算定値と実験値を比較する。同算定式を以下に示す。

Qsu={0.068pt0.23(Fc+18)/[(M/Qd)+0.12]

√─√√+0.85 p  √√w・σwy+0.1σo}・b・j …………………(1)

ここに、1≦M/Qd≦3とする。M/Q:せん断スパン長、d:部材の有効せい、pt:引張鉄筋比(%)、Fc:コンクリートの圧縮強度(N/mm2)、pw:横補強筋比(=aw/(b・x)、aw:1組の横補強筋の断面積、x:横補強筋の間隔)、σwy:横補強筋の降伏強度(N/mm2)、b:部材幅、j:応力中心距離(=7d/8としてよい)、σo=N/bD:軸圧縮応力度(ただし、σoが0.4Fcを超える場合、0.4Fcとする)、N:軸力、D:部材せい式(1)によるせん断余裕度Qsu/Qfuを表-1中に、Qmax/Qfu-Qsu/Qfu関係を図-6に示す。Qmaxは最大耐力実験値、Qfuはe関数3)によるコンクリートの応力-ひずみ関係を

4. 軸力比n=0.5のQ-R関係および破壊性状4. 1 横補強筋形式の影響軸力比n=0.5で785N/mm2級横補強筋を用いたNo.3系列6試験体について、図-5にQ-R関係正加力時包絡線の比較を示す。中子筋併用の試験体では、Fc30、Fc60いずれの場合にも、溶接閉鎖型と135°フック付きの最大耐力は同程度であり、変形性能は135°フック付きの方が溶接閉鎖型よりも向上した。これは、写真-2に示すように、135°フック付きの場合、横補強筋で拘束された主筋の内法間隔が、溶接閉鎖型に比べて小さくなったことによると考えられる。

4. 2 横補強筋比pwの影響写真-3に、試験体No.3-1とNo.3-2、No.3-4とNo.3-5のR=10×10-3rad.時のひび割れ状況を示す。これらの試験体は、いずれも785N/mm2級横補強筋を用い、それぞれ横補強筋間隔が同じで中子筋の有無が異なる。すなわち、中子筋併用の場合の横補強筋比pwは、外周筋のみの場合の2倍となる。横補強筋が外周筋のみの試験体No.3-1とNo.3-4では、部材全長に渡る斜めひび割れが発生し、斜張力破壊によ

写真-2 横補強筋で拘束された主筋の内法間隔

写真-3 R=10×10-3rad.時のひび割れ状況(n=0.5、785N/mm2級)

図-6 Qmax/Qfu-Qsu/Qfu関係

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高強度横補強筋の場合、横補強筋量を増やすと、せん断耐力は図-8に示すように、トラス機構におけるコンクリート圧縮ストラットのσBで決定する。この場合、Qsuに対して、pw・σwy/Fcの上限を設ける必要があると考えられる。図-7(b)より、既往実験4)ではpw・σwy/σB≦0.3の範囲で、Qsuが安全側の評価となることを確認している。ここで、σwy=785(N/mm2)とすると、pw≦(1.0%)×

(Fc/27)となる。以上のことから、785N/mm2級横補強筋を用いた柱部材では、pwの適用範囲を以下とすることを推奨する。0.2%≦pw≦1.2% かつ pw≦(1.0%)×(Fc/27) ……(2)

6. 変形性能の評価6. 1 軸力比n≦0.35の場合図-9に、軸力比n≦0.35の場合の、限界部材角実験値

(Ru)testと荒川mean式によるせん断余裕度Qsu/Qfuの関係を示す。(Ru)testは、耐力が最大耐力の80%に低下した時の部材角実験値である。同図中には、(Ru)test下限式として、式(3)でαf=1.1または1.2とした場合を示す。αfは、式(4)に示すように、せん断耐力の割り増し係数を意味する。Ru=0.03(Qsu/Qfu)/αf ………………………………(3)f

Qsu≦αf・Qfu …………………………………………(4)

用いて平面保持仮定より算定した曲げ終局耐力である。計算に際し、Fcはコンクリートの実圧縮強度σBと読み替え、σwyは鉄筋の実降伏強度を用いた。図中には、文献4)に引用された785N/mm2級および1275N/mm2級横補強筋を用いた既往実験の結果も併せて示す。軸力比n=0.5の高軸力で、1275N/mm2級横補強筋を使用し、せん断破壊型(せん断余裕度0.8程度)となった試験体のみ、Qmax/QfuがQsu/Qfuより小さくなった。その他は、いずれの試験体についても、横補強筋の鋼種および形状に係わらず、Qsuは実験値に対して安全側に評価された。Qsu/Qfu≦1(せん断破壊型)の場合、安全率Qmax/Qsuは1.0 ~ 1.4程度であり、平均値は1.21となった。

5. 2 横補強筋量が安全率Qmax/Qsuに及ぼす影響図-7に、横補強筋にSD490、785N/mm2級および1275N/mm2級鉄筋を用い、軸力比n≦0.35で、Qsu/Qfu≦1(せん断破壊型)となる既往の柱試験体4)体体 について、Qmax/Qsu-pwおよびQmax/Qsu-pw・σwy/σB関係を示す。図-7(a)より、横補強筋にSD490、785N/mm2級、1275N/mm2級いずれを用いた場合にも、荒川mean式の適用範囲である0.2%≦pw≦1.2%の範囲で、Qmax/Qsu>1.0となった。Qmax/Qsuのばらつきは、鋼種によらず同程度であった。

図-7 Qmax/Qsuとpwまたはpw・σwy/σBの関係

図-8 圧縮ストラットでせん断耐力が決まるトラス機構

図-9 (Ru)test-Qsu/Qfu(荒川mean式)関係

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RC規準式ではpwの上限を1.2%とし、既往式ではpwの上限を0.8%としている。ここに、b:梁の幅、j:梁の応力中心距離(=7/8d、d:梁の有効せい)、fs:コンクリートの短期許容せん断応力度、wft:横補強筋の短期許容引張応力度、pw:横補強筋比(=aw/(b・x)、aw:1組の横補強筋の断面積、x:横補強筋間隔)、α:せん断スパン比M/Qdによる割増し係数以下に示すように、コンクリートの短期許容せん断応力度は、RC規準1)と同じとする。また、横補強筋の短期許容引張応力度wftは、SD490は490N/mm2、785N/mm2

級は既往式と同様590N/mm2とする。【コンクリート】 長期:1/30Fcかつ(0.46+1/100Fc)以下、        短期:長期の1.5倍【柱横補強筋】  長期:195N/mm2、        短期:SD490-490N/mm2、           785N/mm2級-590N/mm2

なお、短期許容せん断力の算定に際して、コンクリートの設計基準強度Fcは、材料強度試験より得られた実圧縮強度σBと読み替える。Qmax/Qfu-QAS1/Qfu関係を図-11に、Qmax/Qfu-QA1/Qfu

(QA2/Qfu)関係を図-12に示す。ここに、QAS1、QA1はRC規準式による損傷制御および安全性確保のための短期許容せん断力、QA2は既往式による短期許容せん断力を示す。Qfuはe関数3)によるコンクリートの応力-ひずみ関係を用いて平面保持仮定より算定した曲げ終局耐力である。図-11、図-12中には、文献4)に引用された785N/mm2

級および1275N/mm2級横補強筋を用いた既往実験の結果も示す。1275N/mm2級横補強筋の短期許容引張応力度wftは590N/mm2とした。各図中には、5章で前述した荒川mean式によるせん断余裕度Qsu/Qfu≦1(せん断破壊型)となる試験体について、安全率の平均値を示す。これらによると、RC規準式による損傷制御および安全性確保のためのQAS1、QA1は、最大耐力実験値に対して、安全率3.0程度あるいは2.9程度で評価される。また、既往式によるQA2は、安全率2.7程度で評価される。したがって、RC規準式による短期許容せん断力は、既往式よりも安全側の評価になると考えられる。

図-9より、横補強筋がSD490の場合はαf=1.1、785N/mm2級の場合はαf =1.2とすれば、Rf u≧3/100の変形性能を確保できる。ここでRu≧3/100は、靭性保証型指針5)に示された柱の終局部材角目安値(1/67)の2倍に相当する。

6. 2 軸力比n>0.35の場合軸力比n>0.35の場合、SD490横補強筋または785N/mm2

級横補強筋を用いた場合の、限界部材角実験値(Ru)testと横補強筋量pw・σwy/σBの関係を図-10に示す。同図中には、以下の(Ru)test下限式を示す。(Ru)cal=120pw・σwy/σB(×10-3) ………………(5)図-10より、外周筋のみの試験体はいずれも、(Ru)testが下限値(Ru)calとほぼ等しい。以上のことから、中子筋を併用し、かつ、横補強筋量がpw・σwy/σB≧0.25を満足すれば、n>0.35の場合でも(Ru)test≧3/100の変形性能を確保できると考えられる。

7. 短期許容せん断力の検討7. 1 最大耐力実験値との比較RC規準1)による、損傷制御のための短期許容せん断力QAS、および安全性確保のための許容せん断力QAは、式(6)、式(7)で算定される。同式では、pwo=0.002としている。本稿では、これらの算定値をRC規準式による値と呼ぶ。一方、785N/mm2級横補強筋を適用対象とした既往式6)

では、pwo=0.001として式(7)より短期許容せん断力を算定している。【損傷制御のための短期許容せん断力】QAS=b・j{(2/3)α・fsff +0.5wftff ・(pw - pwo)} ……………(6)

【安全性確保のための短期許容せん断力】QA=b・j{α・fsff +0.5wftff ・(pw - pwo)} ……………………(7)ただし、α=4/(M/Qd+1) かつ 1≦α≦2

図-10 (Ru)test-pw・σwy/σB関係

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断ひび割れおよび付着割裂ひび割れは発生しなかった。軸力比n=0.25の場合(横補強筋はいずれもSD490)、せん断ひび割れまたは付着割裂ひび割れ発生荷重は、せん断破壊型でQAS1の1.5倍以上、曲げ降伏先行型でQAS1の1.1倍以上であった。

8. まとめ1) SD490横補強筋を用いた実験では、軸力比n=0.25の場合、Fc30、Fc60ともに、同一横補強筋比であれば、外周筋のみより中子筋併用の方が、せん断破壊型試験体では最大耐力が、曲げ破壊型試験体では変形性能がそれぞれ大きかった。

2) 785N/mm2級横補強筋を用いた実験では、軸力比n=0.5の場合、Fc30、Fc60ともに、横補強筋形式のみが異なる(溶接閉鎖型、135°フック付き)試験体の最大耐力は同程度となり、135°フック付きの変形性能は溶接閉鎖型よりも向上した。これは、横補強筋で拘束された主筋の内法間隔が、135°フック付きの方が小さくなった影響と考えられる。

3) 785N/mm2級横補強筋を使用する際に、荒川mean式によりせん断終局耐力を求める場合は、コンクリート圧縮強度の影響を考慮し、pwの適用範囲を以下と

7. 2 せん断ひび割れ発生荷重実験値との比較表-4に、損傷制御のための短期許容せん断力QAS1、およびせん断ひび割れ・付着割裂ひび割れ発生荷重実験値を示す。いずれの試験体においても、ひび割れ発生荷重は、せん断ひび割れはQAS1の1.1倍以上、付着割裂ひび割れはQAS1の1.3倍以上となり、短期許容せん断力時にはせん

表-4 短期許容せん断力とひび割れ発生荷重実験値の比較

図-11 Qmax/Qfu-QAS1/Qfu関係(損傷制御のための短期許容せん断力について)

図-12 Qmax/Qfu-QA1/Qfu(QA2/Qfu)関係(安全性確保のための短期許容せん断力について)

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することが推奨される。   0.2%≦pw≦1.2% かつ pw≦(1.0%)×(Fc/27)4) 軸力比n≦0.35の場合、荒川mean式によるせん断終局耐力Qsuに対する割り増し係数αfを、SD490横補強筋ではαf=1.1、785N/mm2級横補強筋ではαf=1.2とすれば、靭性保証型指針5)による柱の終局部材角目安値(1/67)の2倍に相当する、(Ru)test≧3/100の変形性能を確保できる。

5) 軸力比n>0.35の場合、限界部材角Ruの下限値は(Ru)cal=120pw・σwy/σB(×10-3)で推定できる。中子筋を併用し、横補強筋量がpw・σwy/σB≧0.25を満足すれば、(Ru)test≧3/100の変形性能を確保できる。

6) RC規準1)による損傷制御および安全性確保のための短期許容せん断力QAS1およびQA1は、実験値に対して安全率3.0程度あるいは2.9程度の評価となった。

7) RC柱については、軸力比nが0.25程度の場合、RC規準1)による損傷制御のための短期許容せん断耐力QAS1時には、修復性を損なう恐れのあるせん断ひび割れおよび付着割裂ひび割れは発生しない。これらのひび割れ発生荷重実験値は、せん断破壊型でQAS1の1.5倍以上、曲げ降伏先行型でQAS1の1.1倍以上であった。

〔謝辞〕 本実験は、共英製鋼(株)が開発したSD490横補強筋および岸和田製鋼(株)が開発した785N/mm2級横補強筋に関する開発実験の一環として行ったものであり、ここに記して謝意を表する。

【参考文献】

1) 日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説,15条 梁・柱および柱梁接合部のせん断に対する算定,pp.150-198,2010

2) 日本建築防災協会,日本建築センター編集:2007年度版 建築物の構造関係技術基準解説書,6.4 鉄筋コンクリート造の耐震計算の方法,pp.336-374,2007

3) 日本建築学会:鉄筋コンクリート終局強度設計に関する資料,1. コンクリートの1軸応力状態における力学的性状,pp.1-4,1987

4) 益尾潔:曲げ降伏先行型鉄筋コンクリート柱の限界部材角の評価,日本建築学会構造系論文報告集,第447号,pp.119-128,1993.5

5) 日本建築学会:鉄筋コンクリート造建物の靱性保証型耐震設計指針・同解説,6章 柱および梁のせん断と付着に対する設計,pp.138-207,1997

6) 例えば,住友電気工業株式会社:スミフープ設計施工指針・同解説,2006

GBRC Vol.35 No.3 2010.7

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