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Title 任意の構成関係を有する材料の応力解析に関する研究

Author(s) 伊野, 拓一郎

Citation Nagasaki University (長崎大学), 博士(工学) (2016-03-18)

Issue Date 2016-03-18

URL http://hdl.handle.net/10069/36554

Right

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE

http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp

 

任意の構成関係を有する材料の応力解析に関する研究

2015年 12月

長崎大学大学院工学研究科

伊野 拓一郎

目次

主要記号 3

第 1章 緒言 5

1.1 研究背景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5

1.2 研究目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

1.3 論文の構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11

第 2章 体積力法による弾性解析 68)∼74) 14

2.1 序論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

2.2 弾性解析における基礎方程式 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

2.3 基本解 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

2.4 直線境界に体積力が分布するときの基本解 . . . . . . . . . . . . . . . 19

2.5 円弧境界に体積力が分布するときの基本解 . . . . . . . . . . . . . . . 23

2.6 剛体変位 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 34

2.7 円孔を有する有限板の問題 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 36

2.8 結言 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 41

第 3章 体積力法による傾斜機能材料の解析 74) 42

3.1 序論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42

3.2 介在物における力対埋め込みモデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42

3.3 解析理論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 47

3.4 結言 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 59

第 4章 体積力法による弾塑性解析 68) 60

4.1 序論 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 60

4.2 弾塑性問題における力対埋め込みモデル . . . . . . . . . . . . . . . . 60

4.3 領域の離散化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 64

4.4 計算の効率化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 70

4.5 内圧を受ける円孔を有する無限板の弾塑性解析 . . . . . . . . . . . . . 74

4.6 円孔を有する無限板および有限板の弾塑性解析 . . . . . . . . . . . . . 81

4.7 線形切欠き力学 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 84

4.8 結言 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 88

1

第 5章 結論 ·展開 89

付録 91

Goursat の複素応力関数 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 91

参考文献 94

謝辞 102

2

主要記号

各記号の下付き添字,i, j, k, l, m, n, o, p, ξ, η はテンソル記号のダミーインデッ

クスであり,x, y, z, r, θ などの成分を表す.

P : 注目点

Q : 着力点

Γ : 境界

ΩP : 塑性領域

ΩI : 介在物領域

σij : 応力

εij : ひずみ

εpij : 塑性ひずみ

dεpij : 塑性ひずみ増分

u, v : 変位

Sij : 偏差応力

Γij : 力対の大きさ

σ∞ : 無限遠方から作用する外力

σ0 : 有限板の縁に作用する外力

σij(P ) : 注目点 P の応力

dσij(P ) : 注目点 P の応力増分

σ∗ij(P,Qη) : 着力点 Qに η 方向の単位大きさの集中力が作用

した時に注目点 P に生じる応力

σ†ij(P,Qξη) : 着力点 Q に ξη 方向の単位大きさの集中力対が

作用した時に注目点 P に生じる応力

φη(Q) : 着力点 Qの η 方向の体積力の密度

Tij(Q) : 着力点 Qに作用する体積力対

dTij(Q) : 着力点 Qに作用する体積力対増分

Dijkl : 弾性定数テンソル

Cijkl : 弾性コンプライアンステンソル

Eijkl : 単位行列

3

z(= x+ iy) : 複素平面上での注目点の座標

z0(= ξ + iη) : 複素平面上での着力点の座標

Ω(z), ω(z) : Goursat の複素応力関数

F (= Fx + iFy) : 集中体積力の複素数表記

ρ(= ρx + iρy) : 体積力の密度の複素数表記

ν : Poisson 比

κ : Kolosov の定数

E : 縦弾性係数,Young 率

G : 横弾性係数

σY : 降伏応力

4

第 1章 緒言

1.1 研究背景

有限要素法をはじめとして,現在多くの離散化解析手法が開発されている.離散化

解析手法は大きく分けると、領域型と境界型に分けられる.領域型解法の代表例とし

て,有限要素法,有限体積法,有限差分法などがある.これらの解析手法の特徴とし

ては,領域全体を離散化し各離散化要素内を近似関数により近似して,支配微分方程

式を解く方法である.特に有限要素法は,1956 年に M.J.Turner らが梁の問題に用

いてから,さまざまな改良や発展が行われてきた.1) しかし,領域型解法には本質的

な問題として,領域全体を離散化するため節点番号や節点座標などの入力データを作

成する作業が必要となり計算コストを増大させている.一方,境界型解法は,境界条

件を基に積分方程式を作成し,境界の離散化解析により解を求めるため領域全体の離

散化が必要ないという特徴があり,必然的に領域型解法と比較して計算コストが抑え

られる.この境界型解析方法には,境界要素法や体積力法などがある.境界要素法は

Betti の相反定理に基づいて積分方程式を構成する.2) 一方,体積力法 3)∼26) は重ね

合わせの原理に基づいて積分方程式を構成する.つまり,基本的な応力場の重ね合わ

せにより解を得るため,直感的に解を得ることができ,また種々の直感的な工夫が導

入し易いため,高精度の解を得る事が出来る.

この方法は 1967年に西谷 弘信が開発した解法である.本章では,本質的な理解の

為に,体積力法の発表の 4年前に公開された,だ円孔列を有する無限板の引張りの研

究について注目する.27)∼28) この論文では,Fig.1に示すような円孔列を有する無限

板の問題を取り扱っている.この問題を西谷は,各円孔がそれぞれ,ある大きさの引

張を受ける問題に置き換えて解を得ている.つまり,この問題の境界条件は各円孔の

1点に生じる表面力を境界条件とし,各円孔に作用させる荷重を未知数としている.

5

Infinite Plate

Unknown

Reference Point

Fig.1 円孔列を有する無限板の引張り

この考え方は体積力法の考え方の基礎になっている.体積力法では,仮想境界を分

割し,適当な大きさの体積力を境界に分布させる事で自由境界を表現している.例え

ば,Fig.2に示すような円孔を有する無限板の問題の場合,円孔仮想境界を分割し,各

境界に体積力を分布させて,各境界の参照点の表面力が境界条件を満たすように仮想

境界に分布させる体積力の大きさを決定する.

Reference Point

UnknownInfinite Plate

Fig.2 円孔を有する無限板の引張り

どちらも,簡単な応力場を重ね合わせる事により目的の解を得ており,解を得るま

での過程が非常に直感的である.この問題以外にも,半円切欠きを有する丸棒の引張

りの問題 29) でも同様の考え方に基づいて数値解析を行っている.このような考え方

が体積力法の原点になったと,その後,西谷は述懐している.30)∼31)

ここまでは,体積力法における長所を紹介したが,次に,体積力法の短所について

述べる.体積力法に用いる基本解は弾性解であり,各注目点に生じる応力やひずみと

外力は比例関係にある事をうまく利用して目的の解を得ている.そのため,応力-ひ

ずみ関係が Hooke の法則のみに依らないような問題を体積力法は不得意としている.

この問題の具体的な解決方法としては,陳 玳珩らが用いた力対を局所的に分布させる

6

方法 43)∼46) がある.力対とは等しい大きさを持ち反対方向の集中力の対で,き裂問

題 47)∼48) を解く際などによく用いられてきた.この力対によって微小領域に外力と

は独立した荷重を作用させる事が可能になり,それにより生じるひずみを非弾性ひず

みとして取り扱う方法である.これにより取り扱う事が可能となる問題としては,以

下の問題が挙げられる.

• 弾塑性問題

• 熱応力問題

• 粘弾性問題

• 傾斜機能材料の問題

これらの問題は,物理的現象は全く異なるが非弾性ひずみの大きさを決定する構成式

が得られれば,陳らの方法により同じ方法で解を得ることができる.本研究ではこの

事に注目して,上記の問題のうち弾塑性問題と傾斜機能材料の問題に体積力法を適用

し,その高度化を行った.

7

1.2 研究目的

1.2.1 傾斜機能材料の問題

傾斜機能材料はセラミックから金属へと連続的に組成を変化させる事によって熱応

力を緩和させる事を目的として開発された材料である.開発当初の仕様用途として

は,宇宙往還機 (スペースプレーン)を想定していたが 49),現在では,核融合炉やエ

ンジンまた,切削工具 50) の材料として用いられている.作成方法としては,ガス 51)

や放電プラズマ 52) による焼結法や,遠心力を利用した方法 53) などがある.このよ

うに,さまざまな製造方法が提案されており,仕様用途に合わせて自由に材料の組成

設計を行うことが出来るため,傾斜機能材料の設計式を作成する事は不可能である.

そこで,対象の材料組成に合わせて数値解析を行うプログラムの開発が求められる.

先行研究を挙げると,八田 正俊らが介在物の問題として無限板中に一様な材料定数

の介在物がある問題を取り扱っている.54) 彼らは,介在物と母材の間に体積力を分

布させる事により解を得ているため,少ない方程式系で目的の解を得る事が出来る反

面,本研究で取り扱うような材料定数が空間座標の関数として変化するような材料に

関しては同様の解析方法を適用出来ない.そこで,介在物領域の材料定数と母材の材

料定数から力対の大きさを表す式を構成し,陳らの方法を適応させた.本式の検証の

為に,無限板中に円形の介在物がある問題を解くことで検証を行った.この検証の結

果,無限板中の材料定数が任意に変化するような問題についても体積力法を用いて応

力解析を行うことが可能になった.

1.2.2 弾塑性問題

応力集中部に弾性限度内の応力が生じる場合や,応力集中部に生じる塑性域が構造

物の寸法に対して小さい小規模降伏条件にあるときは,弾性解析により,比較的容易

にかつ高精度に現象を予測する事が出来る.そのため,機械構造物の設計を行う際

に,弾性解析を行い,応力集中部の弾性応力状態について検討する事はもちろん重要

であるが,応力集中部の応力が弾性限度を越えた状態についても,構造の強度を検討

する塑性設計を行う事も重要である.その為,弾塑性問題は古くから多くの研究がな

されている例えば,山田 嘉昭は日本における有限要素法の第一人者であり,特に非

線形問題に関しては多くの研究を行った.弾塑性問題に関しては剛性方程式を定式化

8

し有限要素法の拡張を行った.32)∼33) また,粘弾性問題についても有限要素法で取

り扱う事を可能とした.34) そしてこの方法を応用して,塑性領域を有する切欠き底

近傍の応力集中問題を松井が取り扱った.35) 有限要素法以外の解析的手法としては,

弾塑性破壊力学パラメータである Rice の J積分を用いる方法を久保司郎が研究をし

た.36)∼41) 実験的手法では,河田によって皮膜法による光弾塑性解析が提案された.42) 体積力法においては,陳らが力対の分布により非弾性ひずみを表現する前節の方

法を繰り返し行い,塑性ひずみを表現する.この点が傾斜機能材料の問題との大きく

異なる点である.傾斜機能材料の問題の場合,局所的に材料定数が異なる線形問題で

あるが,弾塑性問題の場合,塑性ひずみが荷重履歴に依存するため,応力-ひずみ関係

が非線形である.このことから,弾塑性問題は次に示すような特徴がある.

(i) 塑性領域が降伏条件によって決定される

(ii) 塑性ひずみの大きさが荷重履歴に依存する

体積力法では,この特徴を表現するにあたり,塑性領域と思われる領域を離散化し塑

性ひずみに相当する力対を内挿して解析を行う.そのため,解析対象の全領域を離散

化する必要がなく,力対が埋め込まれた弾性問題として解析を行う事が出来る.これ

らの長所を有する為,体積力法による弾塑性解析を研究する事は有意義である.そこ

で,陳らの示した弾塑性解析の手法と本研究で行った手法の相違点及び改善点を示す.

(i) 塑性ひずみ増分を Prandtl-Reuss の式により決定した.

(ii) 力対を内挿するための離散化を Delaunay 分割により行った.

(iii) 力対を決定する際の解法の効率化を行った.

この (i), (ii), (iii) は一見別々の課題のようであるが,密接に関係している.まず,

“(i) 塑性ひずみ増分を Prandtl-Reuss の式により決定した.”についてだが,陳らは

加工硬化指数 H ′ に基づいて,塑性マトリックス Sijkl を構成し応力増分から塑性ひ

ずみ増分を決定し弾塑性解析を行った 59)∼61).それに対して,本手法は塑性ひずみ

増分を塑性構成式と降伏条件に基づいて決定し解析を行った.この塑性構成式は,塑

性ひずみ増分が偏差応力と比例関係にあることを表しており,加工硬化指数に依らず

任意の弾塑性体について解析を行う事が出来る反面,降伏条件が非線形方程式である

ため非線形連立方程式により各要素の塑性ひずみの大きさを決定しなければならな

い.しかも,“(ii) 力対を内挿するための離散化を Delaunay 分割により行った.”に

示すように本研究では Delaunay 自動分割により予め入力データとして要素データを

用意する事無く多くの要素を生成する事が可能となったため,この非線形連立方程式

9

の規模は莫大となった.そこで,“(iii) 力対を決定する際の解法の効率化を行った.”

の研究に取り組んだ.非線形方程式は各要素の代表点の応力により構成されるため,

各要素に単位大きさの力対が内挿され,また,自由表面の境界条件を満たした各要素

の応力成分を予め計算した.この事により,非線形方程式を構成する代表点の応力を

線形和により構成する事が可能になった.また,この事を様々な形状の応力集中問題

について検証を行った.

10

1.3 論文の構成

本章では,体積力法の歴史および特徴また,本研究で取り扱う問題についての目的

について述べた.第 2 章では弾性解析について取り扱った. 本研究で取り扱う任意

の応力-ひずみ関係を有するような材料でも,すべて力対を埋め込んだ弾性解析に置き

換えて解析を行う為,弾性解析は本研究において非常に重要である.その為,他の章

に比べより詳細に述べた.第 3章については,力対の埋め込みによる方法を用いた傾

斜機能材料の問題の解法について述べた.第 4章では力対の埋め込みによる方法を繰

り返し用いた弾塑性問題の解法について述べた.第 5章は本研究を総括し今後の展開

について述べた.以下に各章各節の構成を箇条書きで示した.

1.3.1 第 1章

第 1節

• 体積力法の位置づけ• 体積力法が開発される前に考えだされた解析手法と体積力法の類似点の考察• 非線形問題の数値解析に関する取り組み

第 2節

• 傾斜機能材料を数値解析する事の目的と研究方針• 陳らが定義した弾塑性問題の解法を汎用化させる事の目的と研究方針

第 3節

• 論文の構成を記載

1.3.2 第 2章

第 1節

• 第 2章の要約

第 2節

• 体積力法で用いられる各記号について• 弾性解析の支配積分方程式

第 3節

11

• Kelvin の解について

• Goursat の複素応力関数について

第 4節

• 体積力の密度について• 座標変換を用いた任意直線境界に分布する体積力による応力場を表す複素応力関数

• 引張りを受ける正方形矩形板の弾性解析

第 5節

• 任意の円弧境界に分布する体積力による応力場を表す複素応力関数• 引張りを受ける円孔を有する無限板の解析• 内圧を受ける円孔を有する無限板の解析

第 6節

• 有限板の解析を行う際に生じる剛体変位の除去について

第 7節

• 引張りを受ける円孔を有する有限板の解析• 切欠きを有する帯板の 3点曲げの解析

第 8節

• 第 2章のまとめ

1.3.3 第 3章

第 1節

• 第 3章の要約

第 2節

• 介在物領域内部と介在物領域外部の支配積分方程式• 引張りを受ける円形介在物を有する無限板の解析• 引張りを受ける円形介在物と円孔を有する無限板の解析• 引張りを受ける円形介在物とき裂を有する無限板の解析

第 3節

• 第 3章のまとめ

12

1.3.4 第 4章

第 1節

• 第 4章の要約

第 2節

• 力対埋め込みモデルの概念について• 力対の定義および,集中力対の基本解• 弾塑性解析の支配積分方程式

第 3節

• Delaunay 分割を援用した塑性領域の離散化について

• 塑性領域の予測について

第 4節

• 塑性ひずみの大きさの効率的な決定方法について

第 5節

• Nadai の弾塑性解

• 内圧を受ける円孔を有する無限板の弾塑性解析

第 6節

• 線形切欠き力学について• 切欠きを有する帯板の 3点曲げ解析

第 7節

• 第 4節のまとめ

1.3.5 第 5章

• 本研究により得られた結論• 今後の本研究の展望

13

第 2章 体積力法による弾性解析 68)∼74)

2.1 序論

本章では,体積力法による弾性解析 3)∼4) の方法を紹介する.まずは, 弾性解析に

おける基礎積分方程式を示す.本論文では積分方程式を解く際に解がない場合を除い

て数値積分を用いず解析解を用いているので,直線や円境界の微小区間に体積力が一

様に分布した時の解を組み合わせて様々な問題を解いている.そこで,直線境界や円

境界に体積力が分布した時の基本解を示し,その基本解を用いて,厳密解がすでに得

られている問題を解いて解析精度や分割数による影響を議論する.

2.2 弾性解析における基礎方程式

体積力法は重ね合わせの原理に基づいた境界型の弾性応力解析法であるため,注目

点の応力は積分項を含む和で表される.例えば,Fig.3のような円孔を有する無限板

を引張る問題を考える.

Infinite Plate

ImaginalyBoundary

σ∞

σ∞

Γ

Q

P

σij(P )

Fig.3 引張を受ける円孔を有する無限板

14

この時,実際に円孔を有する無限板の解を用いるのではなく,円孔と同じ大きさの

仮想境界に体積力を分布させて解を得る.体積力法では,境界の単位長さに作用する

体積力の大きさを体積力の密度という.この密度関数を φη(Q)と表す.Qは着力点

を表し,円孔を有する無限板の問題では円境界上の点である.η は分布する体積力の

方向である.基本解としては集中力の解を用いる.集中力の解*1は σ∗ij(P,Qη)と表さ

れる.着力点 Qに η方向の集中力が作用した時に注目点 P に作用する ij 方向の応力

を意味している.そして,外部荷重を σ∞,注目点 P の ij 方向の応力を σij(P ),円

孔となるべき仮想境界を Γと定義する.この時,基礎方程式は次のようになる.

σij(P ) =

∫Γ

σ∗ij(P,Qη)φη(Q)dΓ + σ∞ (1)

本章で行った弾性解析はこの積分方程式に基づいて解析を行った.

*1 集中力の解の詳細については次節にて示す.

15

2.3 基本解

無限板の一点に集中力が作用する際に生じる応力場の解を Kelvin の解 3)∼4), 64)∼

78) という.Fig.4は注目点と着力点の関係及び,記号の意味を示している.

Infinite Plate

Reference Point

Source Point

x, ξ

y, η

z0 = ξ + iη

z = x+ iy

Fx

Fy

Fig.4 着力点と注目点の定義

Fx もしくは,Fy が着力点 z0 に作用した時の,注目点 z の変位 u, v および応力

σxx, σyy, τxy を以下に示す.

uFx(x, y) =1

2πG(κ+ 1)

[κ ln

1

r1+

A2

A2 +m2

]Fx (2)

vFx(x, y) =1

2πG(κ+ 1)

[Am

A2 +m2

]Fx (3)

σFxxx (x, y) =

A

2π(κ+ 1)y(A2 +m2)2[κ(A2 +m2) + (3A2 −m2)

]Fx (4)

σFxyy (x, y) =

−A

2π(κ+ 1)y(A2 +m2)2[κ(A2 +m2) + (−A2 − 5m2)

]Fx (5)

τFxxy (x, y) =

m

2π(κ+ 1)y(A2 +m2)2[κ(A2 +m2) + (3A2 −m2)

]Fx (6)

uFy (x, y) =1

2πG(κ+ 1)

[Am

A2 +m2

]Fy (7)

16

vFy (x, y) =1

2πG(κ+ 1)

[κ ln

1

r1+

m2

A2 +m2

]Fy (8)

σFyxx (x, y) =

−m

2π(κ+ 1)y(A2 +m2)2[κ(A2 +m2) + (−5A2 −m2)

]Fy (9)

σFyyy (x, y) =

m

2π(κ+ 1)y(A2 +m2)2[κ(A2 +m2) + (−A2 + 3m2)

]Fy (10)

τFyxy (x, y) =

A

2π(κ+ 1)y(A2 +m2)2[κ(A2 +m2) + (−A2 + 3m2)

]Fy (11)

上付き添字が Fx のものは着力点に Fx が作用した場合,Fy のものは着力点に Fy が

作用した場合をあらわしている.また,A, m, r1 は以下のように定義する.

A =ξ − x

y(12)

m =η − y

y(13)

r1 =√

(ξ − x)2 + (η − y)2 (14)

κは Kolosov の定数で,各応力状態により以下のように定義する.

κ =3− ν

1 + ν(平面応力状態) (15)

κ = 3− 4ν (平面ひずみ状態) (16)

ν はポアソン比である.

式 (2)∼ 式 (11) は各変位成分,各応力成分ごとに表しているが,二次元問題では,

Goursat の複素応力関数 64)∼78) *2を用いる事で取り扱う式が大幅に少なくなる.

Kelvin の解の Goursat の複素応力関数表示は以下のようになる.

Ω(z) = − F

2π(κ+ 1)ln(z − z0) (17)

ω(z) =κF

2π(κ+ 1)ln(z − z0) +

F

2π(κ+ 1)

z0z − z0

(18)

F は体積力の成分を複素数で表記したもので F = Fx + iFy のように定義する.複素

応力関数と各応力成分と変位成分は以下の関係式で示される.

σxx + σyy = 2

(dΩ

dz+

dz

)(19)

σyy − σxx + 2iσxy = 2

(zd2Ω

dz2+

dz

)(20)

*2 Goursat の複素応力関数は付録にて詳細を示す.

17

2G(u+ iv) = κΩ− zdΩ

dz− ω (21)

18

2.4 直線境界に体積力が分布するときの基本解

体積力法は境界型の数値解析法であるため,境界を離散化し解析を行う.その時,

各境界作用させる体積力の単位長さあたり大きさは一定もしくは重み関数の係数を一

定として解析を行う.この各区間の単位長さあたりの体積力の大きさを体積力の密度

ρという.本論文上では体積力の密度も複素変数として取り扱うため,x方向の体積

力の密度 ρx,y 方向の体積力の密度 ρy としたとき体積力の密度 ρは

ρ = ρx + iρy (22)

と表し,微小区間 dsに作用する体積力の大きさ F (= Fx + iFy)は

F = ρ ds (23)

となる.

本節では,直線境界を表現する際に用いる,直線境界に体積力が一様に分布した時

の解を示す.任意の直線境界を積分するよりも,x軸上に分布する体積力による応力

を計算し,応力の座標変換を行う方が計算が容易であるので Fig.5のようなローカル

座標系 (x′, ξ′-y′, η′ 座標)で積分 79) を行う.グローバル座標系 (x, ξ-y, η 座標)での

着力区間を [z01(= ξ1 + iη1) : z02(= ξ2 + iη2)],着力区間の長さの半長を 2a,着力区

間の中心を zc,グローバル座標系とローカル座標系のなす角度を θ とする.

Table.1 座標変換

Before coordinate

transformation

After coordinate

transformation

Reference point z z′ = (z − zc)e−iθ

Initial point of source section z01 z′01 = −a

End point of source section z02 z′02 = a

Body Force F F ′ = Fe−iθ

∫ a

−a

dΩ =

∫ a

−a

− F ′

2π(κ+ 1)ln(z′ − z′0)dξ

=

∫ a

−a

− F ′

2π(κ+ 1)ln (z′ − ξ′) dξ′

19

Infinite Plate

Global coordinate

Local coordinate

2a

a

z01

z02

θ

zcy, η

x, ξ

y′, η′x′, ξ′

z0(x, y) → z′0(x′, y′)

Fig.5 任意直線上に分布する体積力

=F ′

2π(κ+ 1)

(z′ − a) ln (z′ − a)− (z′ + a) ln (z′ + a) + 2a

(24)

d

dz′

∫ a

−a

dΩ =F ′

2π(κ+ 1)ln

(z′ − a

z′ + a

)(25)

d2

dz′2

∫ a

−a

dΩ =F ′

2π(κ+ 1)

2a

z′2 − a2(26)∫ a

−a

dω =

∫ a

−a

κF ′

2π(κ+ 1)ln(z′ − z′0)dξ

′ +

∫ a

−a

F ′

2π(κ+ 1)

z′0z′ − z′0

=

∫ a

−a

κF ′

2π(κ+ 1)ln (z′ − ξ′) dξ′ +

∫ a

−a

F ′

2π(κ+ 1)

ξ′

z′ − ξ′

= − κF ′

2π(κ+ 1)

(z′ − a) ln (z′ − a)− (z′ + a) ln (z′ + a) + 2a

− F ′

2π(κ+ 1)

z′ ln

(z′ − a

z′ + a

)+ 2a

(27)

d

dz

∫ a

−a

dω = − κF ′

2π(κ+ 1)ln

(z′ − a

z′ + a

)− F ′

2π(κ+ 1)

2az′

z′2 − a2+ ln

(z′ − a

z′ + a

)(28)

式 (25),(26),(28)を式 (19),(20)に代入し,角度 θ で応力の座標変換を行う事で,注

20

目点 z の応力を求める事が出来る.この事を利用して,Fig.6のような単純な正方形

板を引張る問題を体積力法によって解く.境界条件は,要素の中心の表面力で満たす

ように体積力の大きさを決定する.また,Poisson 比は 0として計算を行った.

Plane plate

parts

Reference point

(center of this plate)

Divided into

σ0

σ0

N

Fig.6 一様引張をうける正方形板

注目点は正方形板の中心とし y方向応力 σy は,当然,荷重 σ0 と等しくなければな

らない.そこで,σy/σ0 と分割数について,Fig.7に示す.Table.2は解析結果を数値

で示している.横軸を 1/N としており,横軸が 0の時の値に σy/σ0 が 1に限りなく

近づいているため,直線境界に体積力を分布させる事により正しく有限板を表してい

る事を示している.また,Table.2より,32分割 (1辺あたり 8分割)程度で,解析誤

差は 1%未満になる事が分かった.

21

0.975

0.980

0.985

0.990

0.995

1.000

1.005

1.010

1.015

1.020

1.025

0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250

Exact solution

σy/σ0

1/N

Fig.7 正方形板中央の y 方向応力と分割数 N

Table.2 正方形板中央の y 方向応力と分割数 N(Fig.7の参照)

N σy/σ0 N σy/σ0 N σy/σ0 N σy/σ0

4 0.976473 32 1.009765 240 1.002839 1600 1.000974

8 1.020028 36 1.009054 280 1.002598 2000 1.000859

12 1.017171 40 1.008461 320 1.002406 2400 1.000776

16 1.014933 80 1.005465 360 1.002250 2800 1.000712

20 1.013124 120 1.004270 400 1.002119 3200 1.000661

24 1.011728 160 1.003598 800 1.001434 3600 1.000619

28 1.010637 200 1.003156 1200 1.001143 4000 1.000583

22

2.5 円弧境界に体積力が分布するときの基本解

体積力法で切欠きなどを表現する際に,円境界にそって体積力を分布させる事によ

り表現する.前節では,要素内に分布する体積力は一定として解析を行ったが,問題

の特徴を取り入れた重み関数を取り入れる事で解析精度を向上させる事が出来る.こ

の重み関数を体積力法では基本密度関数 φi という.基本密度関数を用いる例として,

円孔を有する無限板の問題である.この問題の場合,体積力の分布が境界の投影長さ

に比例するという特徴がある.投影長さとは,Fig.8の dy, −dxに相当し,x方向の

体積力は dy に y 方向の体積力には −dxに対応する.

Infinity Plate

Projection length

a

σ∞

σ∞

−dx

dy

θ

Fig.8 一様引張りを受ける円孔を有する無限板

そこで,体積力と体積力の密度は次のように表される.

dFx = ρxdy (29)

dFy = ρy(−dx) (30)

23

また,dy, −dxはそれぞれ次のように表される.

x = a cos θ ⇒ dx = −a sin θdθ (31)

y = a sin θ ⇒ dy = a cos θdθ (32)

式 (29), (30)に式 (31), (32)を代入すると,

dFx = ρxa cos θdθ = aρxφxdθ (33)

dFy = ρya sin θdθ = aρyφydθ (34)

よって円孔を有する無限板の引張の問題の基本密度関数 φi が導かれた.この基本密

度関数を考慮した基本解を Goursa の複素応力関数表示で示す.体積力が分布する範

囲 lは,半径 r の境界上の角度 αから β までの範囲である.∫l

dΩ(z) =

∫l

− dF

2π(κ+ 1)ln (z − z0)

=

∫ β

α

−a(ρx cos θ + iρy sin θ)

2π(κ+ 1)ln(z − aeiθ)dθ

= −a(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[i

a

(z − aeiθ

) ln

(z − aeiθ

)− 1

]βα

−a(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[iln

(z − aeiθ

)eiθ

+ia

z

ln

(eiθ

z − aeiθ

)]β

α

(35)

d

dz

∫l

dΩ(z) = −a(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[i

aln

(z − aeiθ

)]βα

−a(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[i

zeiθ− ia

z2ln

(eiθ

z − aeiθ

)]βα

(36)

d2

dz2

∫l

dΩ(z) = −a(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[i

a(z − aeiθ)

]βα

−a(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[i

(a

z− 1

eiθ

)1

(z − aeiθ)2

+2ia

z3ln

∣∣∣∣ eiθ

z − aeiθ

∣∣∣∣+ 2ia

z2(z − aeiθ)

]βα

(37)∫l

dω(z) =

∫l

κdF

2π(κ+ 1)ln(z − z0) +

∫l

dF

2π(κ+ 1)

z0z − z0

=

∫ β

α

aκ(ρx cos θ − iρy sin θ)

2π(κ+ 1)ln(z − aeiθ)dθ

+

∫ β

α

a(ρx cos θ + iρy sin θ)

2π(κ+ 1)

ae−iθ

z − aeiθdθ

24

=aκ(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[i

a

(z − aeiθ

) ln

(z − aeiθ

)− 1

]βα

+aκ(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[iln

(z − aeiθ

)eiθ

+a

zln

(eiθ

z − aeiθ

)]β

α

+a(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[ia

zln

(z − aeiθ

eiθ

)]βα

+a(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[ia

2ze2iθ+

ia2

z2eiθ+

ia3

z3ln

(z − aeiθ

eiθ

)]βα

(38)

∂z

∫l

dω(z) =aκ(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[i

aln

(z − aeiθ

)]+

aκ(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[i

zeiθ− ia

z2ln

(eiθ

z − aeiθ

)]βα

+a(ρx + ρy)

4π(κ+ 1)

[a

iz2ln

(z − aeiθ

eiθ

)− a

iz(z − aeiθ)

]βα

+a(ρx − ρy)

4π(κ+ 1)

[a

2ie2iθz2+

2a2

ieiθz3+

3a3

iz4ln

(z − aeiθ

eiθ

)− a3

iz3(z − aeiθ)

]βα

(39)

この基本解を用いて円孔を有する無限板の引張り問題の解析を行った.解析条件は以

下の通りである.

Table.3 解析条件

Load (σ∞) 1.0

Poisson’s ratio (ν) 0.0

Number of division (N) 4

Radius of circular hole (a) 1.0

Reference point (z) (1.0, 0.0), (1.1, 0.0), (1.2, 0.0), · · · ,(2.0, 0.0)

(0.0, 1.0), (0.0, 1.1), (0.0, 1.2), · · · ,(0.0, 2.0)

解析結果の検討には G.Kirsh の解を参照した.80) 半径方向応力 σrr,周方向応力

σθθ,せん断応力 τrθ は以下の通りである.

σrr =σ∞

2

(1− a2

r2

)− σ∞

2

(1 +

3a4

r4− 4a2

r2

)cos 2θ (40)

σθθ =σ

2

(1 +

a2

r2

)+

σ∞

2

(1 +

3a4

r4

)cos 2θ (41)

25

τrθ = −σ∞

2

(1− 3a4

r4+

2a2

r2

)sin 2θ (42)

この解と解析結果の比較をしたものを Fig.9∼10 に示す.Fig.9 は,x 軸上の y 方向

応力を表しており,参照点での応力は厳密解と非常によく一致しており,有効数字 6

桁まで一致している.Fig.10は,y 軸上の x方向応力を表しており,Fig.9と同様に

厳密解と非常よく一致している.

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0

’s solutionG.Kirsh

Analytic solution

Infinite plate

x/a

σy/σ∞

σy

y

x

Fig.9 x軸上の y 方向応力 σy

26

-1.0

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0.0

0.2

1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0

’s solutionG.Kirsh

Analytic solution

Infinite plate

x

σx/σ∞

σx

y

y/a

Fig.10 y 軸上の x方向応力 σx

Table.4 x軸上の y 方向応力 (Fig.9を参照)

x/a Analytic solution G.Kirsh’s solution

1.0 2.999999 3.000000

1.1 2.437743 2.437743

1.2 2.070601 2.070602

1.3 1.821049 1.821050

1.4 1.645564 1.645564

1.5 1.518518 1.518519

1.6 1.424194 1.424194

1.7 1.352605 1.352606

1.8 1.297210 1.297211

1.9 1.253604 1.253605

2.0 1.218750 1.218750

27

Table.5 y 軸上の x方向応力 (Fig.10を参照)

y/a Analytic solution G.Kirsh’s solution

1.0 -1.000000 -1.000000

1.1 -0.611297 -0.611297

1.2 -0.376157 -0.376157

1.3 -0.229333 -0.229334

1.4 -0.135360 -0.135360

1.5 -0.074074 -0.074074

1.6 -0.033569 -0.033569

1.7 -0.006585 -0.006585

1.8 0.011431 0.011431

1.9 0.023403 0.023404

2.0 0.031250 0.031250

28

Externalload

Circularboundary

Distributingbody force

Externalload

Fig.11 円境界に作用させる体積力の分布

この時の自由境界を表現するために円境界に分布させる体積力の分布を Fig.11 に

示す.つまり,無限板中の仮想円境界の内側に Fig.11 と同じ大きさ同じ方向の体積

力を作用させることで,円境界外部に生じる応力は円弧がある場合と同じ応力を生じ

る.しかし,式 (35)∼(39)は基本密度関数を含んでいるため,遠方から引張を受ける

ような場合には有効であるが,それ以外の場合には用いる事ができない.そこで,基

本密度関数を含まない場合についても示す.この時,積分範囲等は式 (35)∼(39)の場

合と同じである.∫ldΩ(z)と

∫ldω(z)は積分の性質上解析解を得る事ができない.*3

*3 ∫ β

αln(z − z0)dθ =

∫ β

αln(z − aeiθ)dθ

29

しかし,式 (19)∼(21) より,応力を計算する際には Ω の1階微分,と2階微分そし

て,ω の1階微分しか必要がないため,積分と微分の順序を入れ替えて計算を行う.

変位を計算する場合には,解析解が存在しない項のみを数値積分を行う事により解決

する.∫l

dΩ(z) =

∫l

− dF

2πi(κ+ 1)ln (z − z0)

=

∫ β

α

−a(ρx + iρy)

2πi(κ+ 1)ln(z − aeiθ)dθ (43)

d

dz

∫l

dΩ(z) =

∫ β

α

−a(ρx + iρy)

2πi(κ+ 1)

1

z − aeiθdθ

=a(ρx + iρy)

2πi(κ+ 1)

1

z

ln

(z − aeiβ

z − aeiα

)− i(β − α)

(44)

d2

dz2

∫l

dΩ(z) =a(ρx + iρy)

2πi(κ+ 1)

1

z2

z

z − aeiβ− z

z − aeiα+

z(eiβ − eiα)

ei(β+α)

−2a ln

(z − aeiβ

z − aeiα

)+ 2ia(β − α)

(45)∫

l

dω(z) =

∫l

κdF

2πi(κ+ 1)ln(z − z0) +

∫l

dF

2πi(κ+ 1)

z0z − z0

=

∫ β

α

aκ(ρx − iρy)

2πi(κ+ 1)ln(z − aeiθ)dθ +

∫ β

α

a(ρx + iρy)

2πi(κ+ 1)

ae−iθ

z − aeiθdθ

=

∫ β

α

aκ(ρx − iρy)

2πi(κ+ 1)ln(z − aeiθ)dθ

+a(ρx + iρy)

2πi(κ+ 1)

a

iz3

[az

z − aeiθ− z

eiθ− 2a ln

(z − aeiθ

eiθ

)]βα

(46)

d

dz

∫l

dω(z) = −aκ(ρx − ρy)

2πi(κ+ 1)

1

z

ln

(z − aeiβ

z − aeiα

)− i(β − α)

− a2ρ

2πi(κ+ 1)z3

[a2z(eiβ − eiα)

(z − aeiβ)(z − aeiα)+

z(eiβ − eiα)

ei(β+α)

−2a ln

(z − reiβ

z − reiα

)+ 2ia(β − α)

](47)

t = eiθ とすると dt/dθ = ieiθ となり置換積分を行うと∫ β

αln(z − z0)dθ =

∫ eiβ

eiαln(z − at)

dt

it

=1

i

∫ eiβ

eiα

ln(z − at)

tdt

= ln(z − at) ln(−at

z) +

z − at

z+

(z − at)2

22z2+

(z − at)3

32z3· · ·

となり閉じた形の解析解は存在しない.

30

式 (43)∼(47)の基本解を用いる問題は多く考えられるが,最も容易に厳密解の比較が

出来る問題として,Fig.12のような内圧をうける円孔の問題がある.

Inner Pressure

Infinite Plate

σr(r), σθ(r), τrθ(r)

r

a

p

Fig.12 内圧を受ける円孔を有する無限板

この問題の厳密解は次の円筒問題の Airy の応力関数 80) を解く事で得られる.

σrr(r) = C1 +C2

r2(48)

σθθ(r) = C1 −C2

r2(49)

τrθ(r) = 0 (50)

この時,円孔半径は a,内圧は pであるため,円孔中心から r 離れた点の半径方向応

力 σr(r),は境界条件 (σr(a) = −p, σr(∞) = 0)から以下のようになる.

σrr(r) = −a2p

r2(51)

σθθ(r) =a2p

r2(52)

同様の問題を以下の解析条件に基づいて体積力法で解析をした.

31

Table.6 解析条件

    Poisson’s ratio (ν)    0.0

Number of division 4

Stress state    Plane stress  

応力境界値問題としてこの問題を解き,表面力を境界条件とした.その時の半径方

向応力 σr と周方向応力 σθ を Fig.13に示す.そして,Table 7 に解析結果と厳密解

の数値の比較を行った.

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

Numerical solution

Numerical solution

Exact solution

Exact solution

r/a

σr/p,σ

θ/p

σr

σθ

Fig.13 内圧を受ける円孔を有する無限板に生じる半径方向応力 σr と周方向応力 σθ

32

Table.7 内圧を受ける円孔を有する無限板に生じる半径方向応力 σr と周方向応

力 σθ(Fig.13の参照)

r σr/p (Numeri-

cal solution)

σr/p (Exact

solution)

σθ/p (Numeri-

cal solution)

σθ/p (Exact

solution)

1.0  -1.000000  -1.000000   1.000000   1.000000

1.1  -0.826446  -0.826446   0.826446   0.826446

1.2  -0.694444  -0.694444   0.694444   0.694444

1.3  -0.591716  -0.591716   0.591716   0.591716

1.4  -0.510204  -0.510204   0.510204   0.510204

1.5  -0.444444  -0.444444   0.444444   0.444444

1.6  -0.390625  -0.390625   0.390625   0.390625

1.7  -0.346020  -0.346021   0.346020   0.346021

1.8  -0.308642  -0.308642   0.308642   0.308642

1.9  -0.277008  -0.277008   0.277008   0.277008

2.0  -0.250000  -0.250000   0.250000   0.250000

2.1  -0.226757  -0.226757   0.226757   0.226757

2.2  -0.206611  -0.206612   0.206611   0.206612

2.3  -0.189035  -0.189036   0.189035   0.189036

2.4  -0.173611  -0.173611   0.173611   0.173611

2.5  -0.160000  -0.160000   0.160000   0.160000

2.6  -0.147929  -0.147929   0.147929   0.147929

2.7  -0.137174  -0.137174   0.137174   0.137174

2.8  -0.127551  -0.127551   0.127551   0.127551

2.9  -0.118906  -0.118906   0.118906   0.118906

3.0  -0.111111  -0.111111   0.111111   0.111111

この場合でも,厳密解と解析解は有効数字5桁まで一致している事が分かる.式

(43)∼(47)を用いて,内圧を受ける円孔を有する無限板の問題を解くことが出来る事

が示された.

33

2.6 剛体変位

本章では,有限板の問題についての取り扱いについて言及する.有限要素法におい

て,解析条件として,拘束条件を正しく設定する事は非常に重要である.正しい拘束

条件を指定していない場合,解析対象を正しく表現することができなくなり,場合に

よっては,剛体変位により連立方程式を解く事ができなくなる場合もある.この剛体

変位に関しては,有限板の問題を取り扱う場合のみ,体積力法でも問題となる.境界

条件として,変位を設定する場合は剛体変位を考慮しなくても良いが,応力や表面力

を境界条件として設定する場合は剛体変位を考慮しなくてはならない.つまり,内部

の応力状態が境界条件をみたしているなら,解析対象がどこに剛体移動していても問

題は無いからである.図示すると次のようになる.

Finiteplate Finite

plate

Finiteplate

Sameshape

Sameload

Same stress field

Fig.14 同一荷重を受ける同一形状の3つの有限板

3つの同一荷重を受ける同一形状の有限板は内部に生じている応力は同じである

が,応力境界条件だけでは剛体変形に関する条件を満たす事ができない.では,なぜ

無限板の問題の場合はこの剛体変位を考慮しなくていいのかというと,無限板には無

34

限遠方の変位が正則でなければならないという条件が含まれているからである.

そこで,本研究では有限板の問題を応力境界条件で解く場合について示す.応力境

界条件には,変位に関する条件がないため,以下の条件を追加する.

(i) 全境界に作用する体積力の釣り合い

(ii) 任意の1点を基準とした時の,全境界に作用する体積力により生じるモーメン

トの釣り合い

境界の分割数 n,i番目の境界の合力 F ix, F

iy, 任意の基準点から各境界の中心までの

距離のベクトルを li(lix, liy)とする時,条件式は以下のようになる.

n∑i=1

F ix = 0 (53)

n∑i=1

F iy = 0 (54)

n∑i=1

lixFiy − liyF

ix = 0 (55)

式 (53)∼(54)は条件 (i)に相当し,式 (55)は条件 (ii)に相当する.つまり,体積力の

密度を決定する為に解く行列式の大きさは ((総分割数)×2+3)となる.2.4節の正方

形板の問題についても上記の条件を用いて解いた.

35

2.7 円孔を有する有限板の問題

本節では,さらにこの条件式を用いて円境界の解と直線境界の解の両方を用いて

解く問題を取り扱う.まず,円孔を有する有限板の問題を取り扱う.解析モデルを

Fig.15に示す.

Square plate

Circular hole

Load

Load

a

b

b

s

t

σ∞

σ∞

Fig.15 円孔を有する引張りを受ける有限板

この時,s=2a, t=2a, b=4aとすると,円孔縁に生じる応力集中係数Kt は 6.38965)

となる.直線境界と円弧境界の基本解は式 (24)∼(28),式 (35)∼(39) を用いた.ま

た,Table.8の解析条件に基づいて解析を行った場合の解析結果を厳密解と境界の分

割数に注目して比較する.

36

Table.8 解析条件

     Poisson’s ratio(ν)         0.0   

Number of division of the square boundary (NS) 200, 400, 600

Number of division of the circular boundary (NC) 200, 400, 600

Fig.16は円弧切欠きの応力集中係数の解析誤差 εerr を縦軸とし,円弧境界の分割

数 NC を横軸とし,各線は各直線境界の分割数 NS における解析誤差 εerr を表して

いる.応力集中係数の解析誤差 εerr は以下のように定義する.

εerr =|Kn

t −Ket |

Ket

(56)

Knt ,Ke

t はそれぞれ数値解析による応力集中係数の値と応力集中係数の厳密解

(Ket=6.389)を表している.

Fig.16, Table.9 により,円弧縁の応力集中係数を計算しているにも関わらず,円

弧境界の分割数よりも正方形境界の分割数の方が解析精度に影響を与えている事を

示している.つまり,少ない分割数で,円弧境界周りの応力を計算するためには円

弧境界よりも正方形境界の分割数を増やす方が効率的であるという事を示している.

例を挙げると,正方形境界を 200 分割し円弧境界を 600 分割した場合,解析誤差は

3.569463[%]であるのに対して,正方形境界を 600分割し,円弧境界を 200分割した

場合は,解析誤差は 1.504821[%] である.どちらも,分割数の合計は 800 で,どち

らも未知数の数が等しいため解析時間は同じである.しかし,解析誤差は 2[%]も異

なる.

37

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

3.50

4.00

200 250 300 350 400 450 500 550 600

Rela

tiv

e e

rrorεerr[%

]

NC

Kt

NS = 200

NS = 400

NS = 600

Fig.16 正方形境界と円弧境界の分割数と解析精度の比較

Table.9 正方形境界と円弧境界の分割数と解析精度の比較 (Fig.16の参照)

    NS         NC         εerr[%]   

200 200 3.624980

200 400 3.583221

200 600 3.569463

400 200 2.073799

400 400 2.027907

400 600 2.013101

600 200 1.504821

600 400 1.457677

600 600 1.442464

同種の有限板と円孔を有する問題として,Fig.17のような,円弧切欠きを有する板

の三点曲げの問題を考える 66).

38

ρ

h

σM

F

2L

L

2W

t

dL

NCNV

NH

Fig.17 3点曲げ試験片の解析モデル

荷重点は解析モデルに示すように,微小幅 dLに分布する分布荷重に置き換えて解

析を行った.解析モデルの寸法は切欠き半径 ρを基準として以下の通りとする.

Table.10 3点曲げ解析モデルの寸法

    t        ρ       W         2ρ   

L 5ρ dL 0.1ρ

h 0.0, 0.1ρ, 0.2ρ, 0.3ρ, 0.4ρ, 0.5ρ, 0.6ρ, 0.7ρ, 0.8ρ, 0.9ρ, 1.0ρ

切欠き深さ hは Table.10に示すように 10通りの条件で解析を行った.この時,円

39

孔切欠き底の応力 σM を平滑板の切欠き底の応力 σ0M

*4 で除した商を計算した.解

析条件は Table.11に示す.

Table.11 3点曲げ試験片の解析条件

Poisson’s ratio 0.3

Number of division of the longitudinal (NH)    320  

Number of division of the latitudinal (NV ) 30

Number of division of the notch(NC) 40

本問題については,汎用有限要素法解析ソフト Solid Works 2012による解と比較

を行った.

0.8

1.0

1.2

1.4

1.6

1.8

2.0

2.2

2.4

2.6

2.8

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

:Notch Depth

FEM

BFM

Exact solution

σe

M/σ0

M

h

Fig.18 切欠きを有する板の三点曲げ問題の体積力法,有限要素法,厳密解における比較

*4 単純な梁の3点曲げの問題であるため,

σ0M =

3FL

4tW 2

40

Table.12 切欠きを有する板の三点曲げ問題の体積力法,有限要素法,厳密解にお

ける比較 (Fig.18の参照 )

σeM/σ0

M

Notch Depth(h)    FEM      BFM   Exact solution

0.0 0.86 0.9541 1.0000

0.1ρ 1.31 1.3638   ⧸  

0.2ρ 1.48 1.4988   ⧸  

0.3ρ 1.62 1.6578   ⧸  

0.4ρ 1.74 1.7668   ⧸  

0.5ρ 1.86 1.8778   ⧸  

0.6ρ 1.97 1.9964   ⧸  

0.7ρ 2.09 2.1014   ⧸  

0.8ρ 2.21 2.2361   ⧸  

0.9ρ 2.35 2.3448   ⧸  

1.0ρ 2.49 2.4789   ⧸  

Fig.18より,体積力法による弾性解は有限要素解および厳密解と非常によい相関性

を示す事が分かった.

2.8 結言

本章では以下の事が示された.

• 体積力法における弾性解析の方法が示された.

• 直線境界及び,円弧境界に分布する体積力による解析解が示された.

• 有限板の問題を取り扱う際に注意しなければならない剛体変位に関する取り扱

い方法が示された.

• 無限板の問題,有限板の問題で厳密解や有限要素法解などと体積力法による解

を比較したが非常によい精度解析できる事が示された.

• 円孔を有する有限板の問題を解析する際は円孔の分割数よるも有限板の分割数

を増やす方が効率的に高精度の解を得る事が出来る事が示された.

41

第 3章 体積力法による傾斜機能材料の解析 74)

3.1 序論

本章では,体積力法による傾斜機能材料の解析法について示す.体積力法では力

対の埋め込みに非弾性ひずみを表現する事を力対埋め込みモデル (Embedded Force

Doublet Model:EFD モデル) という.この方法を用いて,局所的に材料定数が異な

る傾斜機能材料の問題に応用した.本章では,介在物の材料定数と内挿する力対の大

きさを介在物の材料定数と母材の材料定数から得られる構成式を作成した.これによ

り,力対の埋め込みのみで局所的に材料定数が変化する問題を取り扱う事が可能と

なった.また,本研究では次に示す問題を解く事で,構成式を検証した.

• 縦弾性係数が 0の介在物を有する問題を解いて,円孔の解と比較する

• 縦弾性係数が一様な介在物の問題を解いて計算上の介在物の縦弾性係数を計算

する

• 縦弾性係数が1次関数で変化するような介在物の問題を解いて計算上の介在物

の縦弾性係数を計算する

最終的に,円形状の傾斜介在物が存在する無限板の引張問題を解いた.なお,本章に

おいて上付き添字がM のものを母材側の値とし,I のものを介在物側の値とする.

3.2 介在物における力対埋め込みモデル

陳らによって,き裂問題に用いられてきた力対を領域に分布させる事によって,局

所的に生じる非弾性ひずみを表現する方法が提案された.この非弾性ひずみを局所的

に材料定数が一様な板に内挿する事で,計算上材料定数が変化した時に生じるひずみ

と同じひずみの大きさを表現することが出来る.

42

Replaced byforce doublet

Magnitude offorce doblet

σ

ε

EI

EM

Fig.19 塑性ひずみと力対の大きさの関係

Fig.19は母材と介在物の応力-ひずみ線図を表す.母材と介在物の縦弾性係数は EI

および EM とする.体積力法を用いて介在物の問題を取り扱う時は,介在物に生じる

べきひずみが表現できるように母材に力対を分布させる事で解析を行う.そのため,

図中の太い矢印に相当するひずみを生じさせるような力対を母材中に分布させる事に

より介在物を表現する.例えば,無限板中に母材よりも縦弾性係数が低い介在物があ

るとすると Fig.20のようになる.

43

Inclusion zone

Transform

Additional force

Elastic body

Replace

Extract

Inclusion zone

Force doublet

Plastic zone

Insert

Fig.20 介在物を表現する力対分布への置き換え

この置き換えを箇条書きで示すと次のようになる.

(i) 介在物のある微小領域を取り出す.

(微小区画に生じていた応力があるため,その反作用力が介在物中に生じる)

(ii) 微小介在物を微小母材に置き換える

(縦弾性係数が母材の方が大きいため収縮する.)

(iii) 取り出した時の微小介在物と同形状になるように微小母材に力を負荷する.

(iv) 微小区画を介在物に戻す.

(元々作用していた応力は打ち消されるが、追加で負荷した力は残る.これに

より微小区画は介在物から力が作用した母材に置き換わる.)

(v) (i)∼(iv)を介在物全体に適応する.

このように,直感的に介在物を母材に置き換える事ができる.また,(iii)で負荷した

力は非常に小さい領域に作用するため,力の対である力対として考える事ができる.

ただし,力対はひずみと同時に応力も生じるため,力対の大きさの分だけ介在物の領

域では応力を引かなければならない.これが力対埋め込みモデルの基本原理である.

次に力対の大きさについて説明する.力対は微小距離 ε離れた同じ大きさで反対方

44

向を向く力 P の対である.もし2つの集中力の距離が限りなく 0 に近くなる,つま

り,くっついた場合,お互い等しい大きさを持っているため打ち消し合うことになる.

このような事がないように力対の大きさ Γを有限値として定義する.

Γ = ε× P (57)

各力対成分は Fig.21のように表される.

Γxx Γyy Γxy

ε

P P

P

P

P

P

P P

Fig.21 力対の各成分

次に,各力対成分の大きさ Γxx,Γyy,Γxy を用いて,集中力対が作用した時の

Goursat の複素応力関数 Ωd, ωd は以下のように定義される.

Ωd(z) =Γxx − Γyy + 2iΓxy

2π(κ+ 1)

1

z − z0(58)

ωd(z) =1− κ

2π(κ+ 1)

Γxx + Γyy

z − z0+

Γxx − Γyy + 2iΓxy

2π(κ+ 1))

z0(z − z0)2

(59)

この解は式 (17), (18)を z0 について微分する事によって導出される.そのため,微

小領域に一様に力対を内挿する時には,Green の定理 81) より微小領域の境界に沿っ

て分布する体積力に置き換える事が出来る.この事を直感的に考えると Fig.22 のよ

うに微小領域内部では隣り合う力対の集中力どうしが打ち消し合うことからも理解さ

れる.

Replace

Cancel

Fig.22 一様に分布する体積力対の置き換え

45

そのため,本研究では,微小領域に一様に力対を分布する事とする.すなわち,傾

斜機能材料の問題についても前章で示した解析解のみで解析する事が可能になる.

46

3.3 解析理論

本章では,介在物の材料定数と内挿する力対の大きさを決定する構成式を示す.外

力 σ∞ij を受ける無限板中のある領域 ΩI の材料定数が傾斜しているとする.その時,

介在物領域内の注目点 P の応力を σIij(P ) とする.介在物領域外の注目点 P の応力

を σMij (P )とする.また,この材料定数の傾斜を表現するために,介在物領域内 Q点

に埋め込む力対を Tij(Q)で表す.以上の各記号について Fig.23に示す.

Inclusion region

Force doublet

embedded at

σIij(P )

P

P

σMij (P )

Tij(Q)

Tij(Q)

Q

Q

σ∞

ij

σ∞

ij

ΩI

Fig.23 無限遠方から引張を受ける傾斜材料

次に,本問題の支配積分方程式を示す.

σMij (P ) = σ∞

ij (P ) +

∫ΩI

σ†ij(P,Qkl)Tkl(Q)dΩI(Q) (P /∈ ΩI) (60)

σIij(P ) = σ∞

ij (P ) +

∫ΩI

σ†ij(P,Qkl)Tkl(Q)dΩI(Q)− Tij(P ) (P ∈ ΩI) (61)

同様にひずみについても定義する.

εMij (P ) = εIij(P ) = ε∞ij (P ) +

∫ΩI

ε†ij(P,Qkl)Tkl(Q)dΩI(Q) (62)

εMij (P ) は介在物領域外のひずみ,εIij(P ) は介在物領域内のひずみ,ε∞ij (P ) は外力

σ∞ij により生じるひずみ,ε†ij(P,Qkl) は着力点 Q に単位大きさの力対 Tkl = 1 が作

用するときに注目点 P に生じる ij 成分のひずみを表す.次に介在物領域内の弾性定

数テンソルを DIijkl,弾性コンプライアンステンソルを CI

ijkl とする.同様に介在物

領域外の弾性定数テンソルを DMijkl,弾性コンプライアンステンソルを CM

ijkl とする.

47

その時,応力とひずみは次のように表される.

σIij(P ) = DI

ijkl(P )εIkl(P ) (63)

εIij(P ) = CIijkl(P )σI

kl(P ) (64)

σMij (P ) = DM

ijklεMkl (P ) (65)

εMij (P ) = CMijklσ

Mkl (P ) (66)

式 (62)の両辺の左側に母材の弾性コンプライアンステンソル DMijkl を掛けると

DMijkl(P )εIij(P ) = DM

ijklε∞ij (P ) +

∫ΩI

DMijklε

†ij(P,Qkl)Tkl(Q)dΩI(Q) (67)

= σ∞ij (P ) +

∫ΩI

σ†ij(P,Qkl)Tkl(Q)dΩI(Q) (68)

次に,式 (61)に式 (68)を代入すると

σij(P )−DMijklε

Iij(P ) = −Tij(P ) (69)

式 (69)に式 (64)を代入すると[Eijkl −DM

ijklCIklst(P )

]σst(P ) = −Tij(P ) (70)

ここで Eijkl は単位行列である.式 (70)を応力成分毎に書くと,

L(P )σxx(P ) +M(P )σyy(P ) = −Txx(P ) (71)

M(P )σxx(P ) + L(P )σyy(P ) = −Tyy(P ) (72)

N(P )τxy(P ) = −Txy(P ) (73)

L(P ) =

(1− EM (P )

EI(P )

1− νMνI(P )

1− νM2

)(74)

M(P ) =EM

EI(P )

(νI(P )− νM

1− νM2

)(75)

N(P ) =

(1− EM

EI(P )

1 + νI(P )

1 + νM

)(76)

式 (71)∼(73)により導かれる力対によって傾斜機能材料が表現される事を確かめる為

に,円孔を有する無限板の問題を考える.この問題を傾斜機能材料の問題の解法で解

くためには,介在物領域を円形とし,介在物領域内の縦弾性係数 EI を 0とする事に

より表される.解析条件を Table.13に示す.

48

Table.13 解析条件

Poisson’s ratio 0.0

Number of division (NT) 16, 64, 256,1024

また,分割数 NT の影響も同時に評価するために,次に示すような分割を行った.

NT=16 NT=64

NT=256 NT=1024

Fig.24 介在物領域内の要素分割

この時 x 軸上の y 方向応力を G.Kirsh の解と比較した.解析結果を Fig.25 と

Table.25に示す.

49

1.8

2.0

2.2

2.4

2.6

2.8

3.0

3.2

3.4

3.6

1.00 1.02 1.04 1.06 1.08 1.10 1.12 1.14 1.16 1.18 1.20

NT=256

NT=64

NT=16

NT=1024

exactsolution

x/r

σyy/σ

σ∞

2r

x

y

Fig.25 傾斜機能材料の解法の評価

50

Table.14 傾斜機能材料の解法の評価 (Fig.25の参照 )

x/r NT = 16 NT = 64 NT = 256 NT = 1024

1.01   3.5144935    3.2860015    3.0546820    2.9661130 

1.02 3.1590990 3.0540948 2.9155313 2.8746503

1.03 2.9488241 2.9102265 2.8218477 2.8043415

1.04 2.7980905 2.8024717 2.7465522 2.7421288

1.05 2.6800784 2.7145924 2.6812881 2.6843870

1.06 2.5828411 2.6393800 2.6224293 2.6297775

1.07 2.5000052 2.5730075 2.5681117 2.5777285

1.08 2.4277655 2.5132036 2.5172727 2.5279589

1.09 2.3636668 2.4585132 2.4692611 2.4803022

1.10 2.3060320 2.4079493 2.4236540 2.4346377

1.11 2.2536639 2.3608130 2.3801629 2.3908635

1.12 2.2056778 2.3165914 2.3385809 2.3488866

1.13 2.1614011 2.2748965 2.2987524 2.3086190

1.14 2.1203100 2.2354280 2.2605549 2.2699771

1.15 2.0819887 2.1979473 2.2238877 2.2328813

1.16 2.0461012 2.1622620 2.1886648 2.1972559

1.17 2.0123719 2.1282134 2.1548108 2.1630292

1.18 1.9805718 2.0956688 2.1222576 2.1301335

1.19 1.9505084 2.0645156 2.0909426 2.0985049

1.20 1.9220183 2.0346566 2.0608081 2.0681428

解析結果によると 16分割では解析誤差が大きいが,1024分割ではほぼ厳密解と一

致した.この事により,本解析手法により傾斜機能材料の解析が行う事ができたとみ

なせる.また,本章で示す解析では,1024分割を採用した.

次に,引張を受ける無限板に一様な材料定数の介在物がある時に,介在物中に生じ

る応力から介在物の縦弾性係数を計算し解析条件と一致しているか確かめた.解析条

件を次に示す.

51

Table.15 解析条件

Poisson’s ratio 0.0

Number of division (NT) 1024

Ratio of Young ’s modulus of 2.0

the inclusion region and the matrix region (EM/EI)

Ratio of Poisson’s ratio of 1.0

the inclusion region and the matrix region (νM/νI)

1.98

1.99

2.00

2.01

2.02

-1.0 0.5 0.0 0.5 1.0

simulated

x/R

EI/E

M

EMEI

2R

xexact(EI/EM = 2.0)

Fig.26 一様介在物を有する無限板の引張

Fig.26より,解析結果から導き出された縦弾性係数は入力条件を満たしている事が

分かった.但し,介在物境界付近で縦弾性係数が増加するのは,力対を埋め込まれた

領域と埋め込まれていない領域の間に特異点が生じ応力が増加し見かけ上縦弾性係数

が増加しているように見える.しかし,上昇分も最大で 2%程度となっており,本手

法が有効である事が示された.次に,介在物の内部で材料定数が変化するような傾斜

機能材料の問題についても正しく解く事ができているか介在物中の縦弾性係数を計算

する事により検証した.

52

Table.16 解析条件

Poisson’s ratio 0.0

Number of division (NT) 1024

Ratio of Young ’s modulus of x/R+

the inclusion region and the matrix region (EM/EI) 1.0

Ratio of Poisson’s ratio of 1.0

the inclusion region and the matrix region (νM/νI)

0

0.5

1.0

1.5

2.0

-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0

simulated

x/R

EI/E

M

EMEI

2R

x

exact(EI/EM = x/R+ 1.0)

Fig.27 縦弾性係数が右側になるほど高くなる介在物を有する無限板の引張

この場合についても正しく解析条件を表現している事が示された.ただ,計算上の

縦弾性係数が階段状になっているのは要素内に内挿する力対の大きさが一様になって

いるからであると考えられる.

次に,円形状の介在物があるときに生じる応力について解析を行った.解析条件は

Table.17 に示す.EM は母材の縦弾性係数である.解析モデルについては,Fig.28

に示すような円形介在物がある無限板の問題を考える.

53

Table.17 解析条件

CASE   CASE1    CASE2    CASE3    CASE4 

Centroid of the (0, -2)

inclusion region

Radius of the 1.0

inclusion region

Relation of

Young ’s modulus

of the inclusion 0 2 (x/r + 3)/2 (x/r + 2)2

and the other

(EI/EM )

Poisson’s 0.0

ratio(ν)

2

Infinite plate

σ∞

σ∞

r

EI

O

y

x

EM

Fig.28 円形介在物を有する無限板の引張り

この時,x軸上に生じる y 方向応力を Fig.33示す.

54

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

-4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

EI/EM = 0.0

EI/EM = 2.0

EI/EM = (x/r + 3)/2

EI/EM = (x/r + 2)2

x/r

σyy/σ

Fig.29 介在物が有する無限板を引張った時に生じる x軸上の y 方向応力

Fig.33 によると,材料定数が x 軸上で連続出ない場合は,応力も当然ながら連続

ではなくなる.また,縦弾性係数が高くなるとその分だけ,生じる応力も高くなるた

め,応力分布と介在物の縦弾性係数の分布が類似したものになることが分かった.

次からは,介在物と円孔がある場合に生じる干渉効果についても示す.解析条件は

Table.18に示す.Fig.30に解析モデルを示す.

55

Table.18 解析条件

CASE   CASE1    CASE2    CASE3    CASE4 

Centroid of the (0, -2)

inclusion region

Radius of the 1.0

inclusion region

Centroid of the (0, 2)

circular hole

Radius of the 1.0

circular hole

Relation of

Young ’s modulus

of the inclusion 0 2 (x/r + 3)/2 (x/r + 2)2

and the other

(EI/EM )

Poisson’s 0.0

ratio(ν)

Circularhole

22

Infinite plate

σ∞

σ∞

r r

EI

x

y

EM

O

Fig.30 円形介在物と円孔を有する無限板の引張り

56

Fig.31に x軸上の y 方向応力の分布を示す.

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

EI/EM = 0.0

EI/EM = 2.0

EI/EM = (x/r + 3)/2

EI/EM = (x/r + 2)2

x/r

σyy/σ

Fig.31 介在物が有する無限板を引張った時に生じる x軸上の y 方向応力

Fig.31によると,円孔の影響により介在物内部の応力は全体的に上昇するが,介在

物の中心より右側に特に応力の上昇が観られた.

次に,介在物とき裂の干渉問題についても取り扱った.解析条件は Table.18 に示

す.Fig.32に解析モデルを示す.

57

Table.19 解析条件

CASE   CASE1    CASE2    CASE3    CASE4 

Centroid of the (0, -2)

inclusion region

Radius of the 1.0

inclusion region

Centroid of the (0, 2)

crack

Radius of the 2.0

clack length

Relation of

Young ’s modulus

of the inclusion 0 2 (x/r + 3)/2 (x/r + 2)2

and the other

(EI/EM )

Poisson’s 0.0

ratio(ν)

22

Infinite plate

2

σ∞

σ∞

r

EI

x

y

EM

O

Fig.32 円形介在物とき裂を有する無限板の引張り

58

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

-4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0

EI/EM = 0.0

EI/EM = 2.0

EI/EM = (x/r + 3)/2

EI/EM = (x/r + 2)2

x/r

σyy/σ

Fig.33 介在物が有する無限板を引張った時に生じる x軸上の y 方向応力

3.4 結言

本章では以下の事が示された.

• 力対を用いた傾斜材料の問題の解法について示した.

• 介在物の材料定数と力対の大きさの関係について示した.

• 縦弾性係数が 0であるような介在物を有する無限板の引張問題の解析から,本

解析手法が有効で有ることを示した.

• 介在物の縦弾性係数が一定,一次関数,二次関数で変化するような問題の応力

について解析を行った.

• 介在物と円孔,介在物とき裂の問題を取り扱い,干渉による応力場の変化につ

いて示した.

59

第 4章 体積力法による弾塑性解析 68)

4.1 序論

本章では,体積力法による弾塑性解析の方法について示す.体積力法は,弾性解の

重ね合わせにより解を得るため,弾塑性解析でも同様に塑性ひずみと同様の現象を弾

性解の重ね合わせによって表現する.弾塑性解析では,塑性領域のような局所的に応

力-ひずみ関係がフックの法則で表す事ができない領域を力対と呼ばれる力の対で表

現する.この方法を力対埋め込みモデル (EFDモデル)という.この EFDモデルに

よる解析方法の効率化及び汎用化について研究 68) を行った.また,この解析方法を

用いて,西谷が提言した線形切欠き力学 69)∼73) に関する検証を行った.

4.2 弾塑性問題における力対埋め込みモデル

陳らによって,き裂問題に用いられてきた力対を分布させる事によって,局所的に

生じる永久ひずみを表現する方法が提案された.この,外部荷重の大きさに依存しな

いひずみを塑性ひずみとして取り扱う事で弾塑性解析を行う.この置換えのイメージ

を Fig.34に示す.

60

Plastic zone

Transform

Additional force

Elastic body

Replace

Extract

Plastic zone

Force doublet

Plastic zone

Insert

Fig.34 塑性ひずみ分布を力対分布への置き換え

置き換えの最終目的は,弾塑性体を塑性ひずみを表現しつつ弾性体に置き換える事

である.この前提の基づいて,置き換えの過程を箇条書きで示す.

(i) 塑性領域から塑性体の微小区画を取り出す.

(微小区画に生じていた応力があるため,その反作用力が弾塑性体に生じる)

(ii) 微小区画を弾性体に置き換える.

(塑性ひずみ分がなくなったため,収縮する.)

(iii) 取り出した時の塑性体の微小区画と同形状になるように力を負荷する.

(iv) 微小区画を弾塑性体に戻す.

(元々作用していた応力は打ち消されるが、追加で負荷した力は残る.これに

より微小区画は塑性体から力が作用した弾性体に置き換わる.)

(v) (i)∼(iv)を塑性領域全体に適応する.

このように,直感的な理解から塑性領域を弾性体に置き換える事ができる.また,(iii)

で負荷した力は非常に小さい領域に作用するため,力対として考える事ができ,これ

が弾塑性問題における力対埋め込みモデルの基本原理である.

61

次に,埋め込む力対の大きさの決定について説明する.弾完全塑性体を例に完全弾

性体と弾完全塑性体の応力-ひずみ関係の違いから説明する.弾完全塑性体とは,加工

硬化しない材料で塑性領域の相当応力が降伏降伏応力になるような材料である.

Elastic body

Elastic perfectplastic body

is proportional to Excess

Whole region isstill in elastic

state

1 2

3 4σσ

σσ

σYσY

σYσY

εε

εε

E

Γ

Γ

Γ

εeεe εp

εp

εp

Fig.35 塑性ひずみと力対の大きさの関係

Fig.35の 1 は縦弾性係数が E の完全弾性体と弾完全塑性体の応力-ひずみ関係を

示す. 2 は相当応力 σ が降伏応力 σY より低い時を示す.この時は,完全弾性体,

弾完全塑性体どちらも降伏していない.しかし, 3 のように,相当応力 σ が降伏応

力 σY 以上になると,完全弾性体と弾完全塑性体で応力状態が異なる.弾完全塑性体

では相当応力 σ が降伏応力 σY になる.しかし,ひずみの大きさは完全弾性体と弾完

全塑性体で等しくなる.そのため,局所的に生じる塑性ひずみと同じ大きさのひずみ

が生じるような力対を埋め込む事でひずみを表現するが,力対を埋め込んだ領域の内

部では 4 の力対により生じた応力が過剰に作用するため,力対の大きさの分だけ応

力を差し引く必要がある.この事を積分方程式で表すと次のようになる.

dσij(P ) + dTij(P )δ(P ∈ ΩP ) =

∫Γ

σ∗ij(P,Qη)dφη(Q)dΓ(Q)

+

∫ΩP

σ†ij(P,Qξη)dTξη(Q)dΩP (Q)

+ dσ∞ij (77)

dσij(P ) は注目点 P の荷重増分,dTij(P ) は注目点 P の力対増分,δ は Kronecker

62

の delta である.括弧の中が真であるときは 1 を表し,偽であるときは 0 を表す.

dφη(Q)は着力点 Qに作用する体積力の密度増分,σ†ij(P,Qξη)は着力点 Qに作用す

る単位大きさの集中力対 (Γξη = 1)による注目点 P の応力,dTξη(Q)は着力点 Qに

作用する力対増分,ΩP は塑性領域,dσ∞ij は外部荷重増分を表す.式 (77)を支配方

程式として弾塑性解析を行う.

63

4.3 領域の離散化

体積力法は境界型の解析法であるため,弾性解析では境界を離散化して解析を行う

が弾塑性解析ではさらに,塑性領域に力対を埋め込まなければならない事を前節で説

明した.本章では,この力対を埋め込む際に用いる離散化メッシュの生成について紹

介する.

離散化メッシュは塑性域に生成すれば良いため,解析対象全体を離散化する必要は

ないが塑性域全体を網羅しなければならない.もし,解析対象全体を離散化するとな

ると入力データが膨大となり,計算コストが増大する.一方,塑性域全体を網羅して

いない場合は,塑性ひずみが存在する部分に塑性ひずみを表現する事ができない為,

正しい塑性ひずみの大きさを表現することはできない.そのため,塑性領域を予測し

て,適切な大きさの離散化メッシュを生成しなければならない.そこで,本研究では,

Delaunay 分割アルゴリズムを援用した.Delaunay 分割アルゴリズムは節点データ

を基に要素データを生成するアルゴリズムで,以下に示すような長所を有する.

(a) 入力データの量が少ない

(b) 扁平した要素を作らない

(c) ユーザの意図が的確に導入可能

(d) モデルの全体あるいは部分修正が容易

(e) 利用しやすい

(f) 汎用性が高い

次に,Delaunay 分割の手順について説明する.

• ステップ 1(大三角形の定義)

まず,節点データを全て内包するような大三角形を考える.

64

Big triangle

Node

• ステップ 2(最初の節点の追加)

Delaunay 分割では,節点を1つずつ追加して分割を行う.最初の 1点は,そ

の 1点から大三角形の各頂点に線分を引き 3つの三角形に分割する.

Addition ofnew node

• ステップ 3(1つの外接円に内包する時)

さらに,もう 1点追加する.そして,分割した三角形の外接円を考えて,追加

した節点がどの三角形の外接円に含まれるかを考える.この外接円を形成する

三角形の各頂点に向けて線分を引いて三角形をさらに分割する.

65

• ステップ 4(2つの外接円に内包する時)

図に示すような節点を追加する場合は,2つの三角形の外接円に含まれる.そ

の際は,2つの三角形の共通辺を取り除いて,2つの三角形の各頂点に線分を

ひき要素分割を行う.

• ステップ 5(3つの外接円に内包する時)

3つの外接円に含まれる場合でも同様に,三角形群の共通辺を取り除いて各節

点に向けて線分を引いて分割を行う.

66

• ステップ 6(大三角形の除去)

最終的に,大三角形の 3 頂点を含む三角形を取り除く事で要素分割を完了さ

せる.

Created mesh

以上の手順を用いて要素分割を行う.つまり,追加する節点の座標を定義することで

任意の領域の分割が可能であり,三角形の内包の判定として外接円を用いているた

め,扁平した三角形を生成しにくいという性質があるという事が分割アルゴリズムか

らも分かる.

次に,塑性領域の推定について紹介する.一般的に塑性域形状を決定する方法とし

ては,降伏条件を用いるが,数ある降伏条件のうちMises の降伏条件は解析により求

まった各応力成分を代入するのみで判定する事が出来るため,数学的に利用しやすい

という長所がある.そこで,本研究ではMises の降伏条件を応用して塑性域形状を推

定する.今回提案する手法は以下の通りである.

67

(1) 解析領域全体を網羅するように適当に節点の候補点を決める.

Candidate

node

(2) 弾性解析により相当応力 σ を計算し,降伏応力 σY の 70%以上の点を節点と

して採用する.

σ > 0.7σY (78)

Forecastedplastic region

Node

σ > 0.7σY

(3) 節点群を用いて Delaunay 分割を行う.

68

(4) 要素の重心の相当応力を計算し,もう一度式 (78)を適応させて,要素の選定を

する.(この作業をする事により,Delaunay 分割では行う事ができない凹領域

の要素分割を可能にする.)

Remove

この 70%という数字は本研究をすすめる上で,過不足なく塑性域を予測する事がで

きたという経験則から導き出された数字である.そのため,き裂問題や扁平率*5 が 1

に近いだ円孔の問題を扱う場合は異なる値になることも考えられる.

*5 だ円の長径を a,短径を bとした時,扁平率 f は

f = 1−b

a

となる.

69

4.4 計算の効率化

塑性理論には全ひずみ理論とひずみ増分理論が有る.63) 全ひずみ理論では,“全塑

性ひずみ εpij の方向が偏差応力 Sij の方向に一致する”という事に基づいている.こ

の方法はひずみ径路を考慮していないため,簡単に計算を行う事が出来るが,ひずみ

径路が比例変形から大きく逸脱しているときは解析精度が落ちるという問題点があ

る.一方,ひずみ増分理論では,“塑性ひずみ増分 dεpij の方向は偏差応力 Sij の方向

に一致する”という事に基づいている.この理論では,塑性ひずみが荷重履歴に依存

するという現象を数学的に表現することができ,多くの実験により妥当性が確認され

ている.しかし,増分計算を行うため,計算時間が膨大になるという欠点がある.

それぞれ,塑性理論における塑性構成式を示す.

全ひずみ理論 

εpij = Sijλ (79)

ひずみ増分理論

dεpij = Sijdλ (80)

λ,dλ は正の比例定数である.この比例定数を決定する事により全ての塑性ひずみ

成分の大きさを決定する事が出来る.また,この塑性ひずみの大きさと力対の大きさ

は,Hooke の法則により定義された剛性弾性テンソル Dijkl を比例定数とする比例関

係にある.

平面ひずみ状態

dΓxx

dΓyy

dΓxy

=

2(1− ν)

1− 2νG

1− 2νG 0

1− 2νG

2(1− ν)

1− 2νG 0

0 0 G

dεpxx

dεpyy

dεpxy

(81)

平面応力状態 

dΓxx

dΓyy

dΓxy

=

2

1− νG

1− νG 0

1− νG

2

1− νG 0

0 0 G

dεpxx

dεpyy

dεpxy

(82)

70

そこで,本研究では効率的に未知比例定数 dλを解く方法を提案し,ひずみ増分理論

に基づく弾塑性解析を行った.

まず,計算時間が膨大になる原因を考えなければならない.ここで,取り上げる主

な原因として次の2つを考える.

(i) 降伏条件が単純な線形方程式ではない.

(ii) 力対を埋め込む要素の数が多い.

(i) については,Mises の降伏条件の場合,相当応力の計算式が非線形方程式であ

り,また,Tresca の降伏条件の場合も,主応力の大小関係を考えなければならない

ため,単純な線形連立方程式を解くだけでは塑性ひずみの大きさを決定する事はでき

ない.(ii)については,降伏開始直後であれば,降伏条件を満たした要素が少ないた

め塑性ひずみの決定も容易であるが,要素の数が膨大であればその分だけ,非線形連

立方程式を解かなければならないため,計算時間が膨大になる.この非線形連立方程

式は,降伏条件を満たした要素の数だけ非線形方程式が存在し,式の形状は降伏条件

に依存する.また,各非線形方程式は,各要素の代表点の応力成分で表される関数と

なっている.そのため,代表点の応力成分を簡単に求める事ができれば,非線形連立

方程式の構成が効率的になり,計算全体の効率化に結びつくと考えられる.

そこで,単位大きさの力対が各要素に内挿された時の解析対象における応力を計算

する事により,各要素に任意の大きさの力対増分が内挿された時の各要素の代表点の

応力が線形和で表される事に注目した.積分方程式で表すと,降伏条件を満たした要

素の数がm個あり,n番目の要素に ξη方向の単位力対が内挿された時の注目点 P の

応力増分を dσ(n)ij,ξη(P )とすると,式 (77)は次のように書き換える事が出来る.

dσij(P ) + dTij(P )δ(P ∈ ΩP ) =m∑

n=1

(n)ij,ξη(P )dT

(n)ξη

+ dσ∞

ij (83)

式 (83)のように書き換える事により,dTξη(P )のみから決定されるようになるため

容易に非線形連立方程式を構成する事が可能になった.

非線形方程式の解法については,二分法 67) を用いた.二分法は非線形方程式の解

を1つ含むような区間を決定し,その区間を陰関数化した非線形方程式に代入するこ

とにより範囲を狭めて解を特定する方法である.この方法は,予め非線形方程式の解

を含む範囲を特定する必要があるが,本解析で未知数となる比例定数 dλは正の定数

であるため,最小値は 0である.また,応力とひずみの比例定数であり,拘束塑性流

れの問題を考えた時,必然的に縦弾性係数の逆数と同程度の値をもつと仮定すること

71

が出来るため,最大値は 10/E とする.連立方程式は,ガウスザイデル法を用いた.

この2つの方法を組み合わせる事により,代入の繰り返しのみで解を得る事が可能に

なった.以上の解析フローを Fig.36に示す.

isdecided bybisectionmethod

Input analysisconditions

Start

Section 2

Elementsare

extractedin equivalent

stress ofcentroid

Search forelements

which satisfyyield criterion

>

Createelements byDelaunay

tessellation

= +

=

Calculate

Decision ofunknownvalue

= 0

< = + 1Yes

No

Renewed value

Convergencecondition

Maximum is

Minimum is

Convergencecondition is

Not satisfy

Satisfy

Yes

No

End

, , ,

, , ,Unknown value

Convergence condition

l

ll

lSij

dL

dL

L

dλ(1)dλ(2) dλ(m)

dλ(i)

dλ(1)′dλ(2)′ dλ(m)′

iii

i

10/E

0

1.0× 10−12

m

(dλ(1)− dλ(1)′ )2 + (dλ(2)

− dλ(2)′)2 + · · ·

· · ·+ (dλ(m)− dλ(m)′)2 < 10−12

72

m · · · Number of yielded criterion

Sij · · · Deviatoric stress component

dλ(n)′ · · · Positive constant of nth element

L, dL · · · Load and increment of load

Load

Loading step

Destination LoadL

dL

Fig.36 体積力法に基づく弾塑性解析のフローチャート

73

4.5 内圧を受ける円孔を有する無限板の弾塑性解析

本節では,塑性領域を三角形要素で離散化し,力対を埋め込んで数値解析を行う本

手法の解析精度について議論する.陳らは,Fig.12に示すような内圧 pを受ける円孔

を有する無限板の問題で証明を行った.

Plastic region

Infinite plate

rp

p

ri

Fig.37 内圧を受ける円孔を有する無限板

この問題は 1次元問題であるので,全ての応力成分やひずみ成分が円孔からの距離

r の関数で表される.まずは,弾完全塑性体の弾塑性境界半径 rp を導出する.

この問題は,Nadai により厳密解が得られており,弾塑性問題の解析精度を議論す

るのに適している.厳密解が得られる解析条件としては,材料が Tresca の降伏条件

に従うと仮定する.

σmax − σmin = σY (84)

ここで,σmax および,σmin は主応力の最大値と最小値である.また,内圧を受ける

問題であるため,σrr は必ず負となり,

σθθ > σzz > σrr (85)

の関係が弾性領域だけでなく,塑性領域でも成り立つと仮定する.すると,式 (84)

74

より

σθθ − σrr = σY (86)

となる.次に,半径方向の平衡方程式

dσrr

dr+

1

r(σrr − σθθ) + Fr = 0 (87)

から,塑性領域における応力 σprr(r), σ

pθθ(r)を計算する.本解析モデルでは物体力 Fr

はなく,かつ式 (86)が成り立つため,

dσrr

dr=

σY

r(88)

となる.この平衡方程式を内圧の境界条件 (r = ri で σrr = −p)より解くと,

σprr(r) = σY ln

∣∣∣∣ rri∣∣∣∣− p (89)

弾塑性境界 r = rp での応力は次のようになる.

σprr(rp) = σY ln

∣∣∣∣rpri∣∣∣∣− p (90)

σpθθ(rp) = σrr + σY (91)

次に,弾性境界では,円筒の Airy の応力関数,式 (51), (52)を適応できる.境界条

件として,式 (90) と無限遠方で σrr = 0 という条件から,弾性境界における応力

σerr(r), σ

eθθ(r)を導くと,

σerr(r) =

r2pr2

σY ln

∣∣∣∣rpri∣∣∣∣− p

(92)

σeθθ(r) = −

r2pr2

σY ln

∣∣∣∣rpri∣∣∣∣− p

(93)

よって,Tresca の降伏条件より

σeθθ(rp) − σe

rr(rp) = σY

p = σY

ln

∣∣∣∣rpri∣∣∣∣+ 1

2

(94)

の関係式を導くことが出来る.この厳密解と本研究の手法による解析解を比較する事

で解析の有効性を評価する.また,この問題は 1次元問題であるが,あえて 2次元的

に解くことで本解析手法が 2次元問題にも適応する事を確認する.それに伴い,円筒

形状も考慮しないため,極座標系ではなく直交座標で取り扱う.

75

式 (94)から,弾塑性境界半径と円孔半径の比 rp/ri が 1.05, 1.10, 1.15となるよう

な内圧が作用した時に解析結果も,1.05, 1.10, 1.15となるかを確認した.

Table.20 Condition of analysis

CASE CASE1 CASE2 CASE3

Ratio of plastic radius and radius of

circular hole (rp/ri) 1.05 1.10 1.15

Ratio of inner pressure

and yield stress(p/σY ) 0.55 0.60 0.64

Young ’s modulus(E[GPa]) 73.00

Poisson’s ratio(ν[-]) 0.33

Number of loading step 100

Stress state Plane Strain

Yield criterion Tresca yield criterion

Plasticity condition Incremental strain theory

Relation of stress and strain Elastic-perfect plastic body

以上の条件のもとで,塑性領域を弾塑性解析により求めた.

76

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

-1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

CASE 2 CASE 3

CASE 1

Elastic-plasticboundary byexact solution

:

Plastic region bynumerical solution :

Discretized elements :

x/ri

y/r i

ri p

Fig.38 数値解析から得られた塑性領域と厳密解の比較

図 38に見られる小さな三角形は Delaunay 分割により生成された要素である.内

部が灰色の要素が数値解析により得られた塑性域である.そして太線で示した領域は

厳密解である.これら3つの場合について弾塑性解析を行ったが,厳密解と非常に良

い相関性を示す事が分かった.

次に,塑性ひずみについて検討を行った.円筒問題の塑性ひずみの大きさは次の厳

密解が知られている 43)∼44).

εprr = −σY

E

[(rpr

)2

− 1

](95)

εpθθ =σY

E

[(rpr

)2

− 1

](96)

そのため,塑性ひずみに関しても,同様に厳密解と数値解を比較した.

77

-5.0e-04

-4.5e-04

-4.0e-04

-3.5e-04

-3.0e-04

-2.5e-04

-2.0e-04

-1.5e-04

-1.0e-04

-5.0e-05

0.0e+00

1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05

Exact solution

CASE1

Numerical solution

r/ri

εp rr

Fig.39 数値解析から得られた半径方向の塑性ひずみの大きさと厳密解の比較 (CASE1)

0.0e+00

5.0e-05

1.0e-04

1.5e-04

2.0e-04

2.5e-04

3.0e-04

3.5e-04

4.0e-04

4.5e-04

5.0e-04

1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05

Exact solution

CASE1

Numerical solution

r/ri

εp θθ

Fig.40 数値解析から得られた周方向の塑性ひずみの大きさと厳密解の比較 (CASE1)

78

-1.0e-03

-9.0e-04

-8.0e-04

-7.0e-04

-6.0e-04

-5.0e-04

-4.0e-04

-3.0e-04

-2.0e-04

-1.0e-04

0.0e+00

1.00 1.02 1.04 1.06 1.08 1.10

Exact solution

CASE2

Numerical solution

r/ri

εp rr

Fig.41 数値解析から得られた半径方向の塑性ひずみの大きさと厳密解の比較 (CASE2)

0.0e+00

1.0e-04

2.0e-04

3.0e-04

4.0e-04

5.0e-04

6.0e-04

7.0e-04

8.0e-04

9.0e-04

1.0e-03

1.00 1.02 1.04 1.06 1.08 1.10

Exact solution

CASE2

Numerical solution

r/ri

εp θθ

Fig.42 数値解析から得られた周方向の塑性ひずみの大きさと厳密解の比較 (CASE2)

79

-1.6e-03

-1.4e-03

-1.2e-03

-1.0e-03

-8.0e-04

-6.0e-04

-4.0e-04

-2.0e-04

0.0e+00

1.00 1.03 1.06 1.09 1.12 1.15

Exact solution

CASE3

Numerical solution

r/ri

εp rr

Fig.43 数値解析から得られた半径方向の塑性ひずみの大きさと厳密解の比較 (CASE3)

0.0e+00

2.0e-04

4.0e-04

6.0e-04

8.0e-04

1.0e-03

1.2e-03

1.4e-03

1.6e-03

1.00 1.03 1.06 1.09 1.12 1.15

Exact solution

CASE3

Numerical solution

r/ri

εp θθ

Fig.44 数値解析から得られた周方向の塑性ひずみの大きさと厳密解の比較 (CASE3)

80

4.6 線形切欠き力学

本節では,本研究で示した手法を用いて線形切欠き力学 69)∼73) の仮定を確かめた.

一般的に線形破壊力学に基づいて,き裂先端の応力場の厳しさは応力拡大係数で表さ

れるが,線形切欠き力学では,切欠き底の応力場の厳しさを切欠き底の弾性最大応力

と切欠き半径で表す.つまり,切欠き底の弾性最大応力と切欠き半径が等しければ切

欠き底に生じる物理現象は周囲の形状に依存しない事を意味している.物理的に等し

い現象である事を保証する仮定として,切欠き底の塑性領域と切欠き底に生じる塑性

ひずみの大きさが等しければ物理的に等しい現象であるとみなす.今回取り扱う問題

としては,切欠きを有する帯板の 3点曲げの問題を考える.解析モデルは Fig.17と

同じモデルとする.そして,切欠き底には降伏応力の 1.5倍の弾性最大応力が作用す

るものとする.また,切欠きを有する帯板の切欠き底での応力は Table.12 の体積力

法の値を参考とした.この時,試験片にかかる荷重の大きさを,切欠き深さが 0.1ρ

と ρ の場合で比較する.ここで,ρ は切欠き半径である.切欠き深さが 0.1ρ の時,

σeM/σ0

M の値が 1.3638であり,ρの時,σeM/σ0

M の値が 2.4789であるため,等しい

弾性最大応力を切欠き底に生じさせるためには,切欠き深さが 0.1ρ の試験片の方が

切欠き深さが ρの試験片より約 1.8倍の荷重が必要となる事が分かる.

本問題における解析条件を Table.22に示す.切欠き半径 ρ = 1とした.

Table.21 解析条件

Young ’s modulus(E) 73[GPa]

Poisson’s ratio 0.3[-]

Yield stress(σY ) 300[MPa]

Maximum elastic stress 1.5σY =450[MPa]

at notch root(σeM )

Notch depth(h) 0.1∼1.0(Increment=0.1)

Relation of stress and strain Elastic-perfect plastic body

解析モデルの各寸法を Fig.47に示す.

81

1.0

h

σM

F

10.0

5.0

4.0

1.0

0.1

NCNV

NH

Fig.45 3点曲げ試験片の各寸法

次に Table.23に境界の分割数について示す.

Table.22 3点曲げ試験片の境界の分割数

Number of division of the longitudinal (NH)    320  

Number of division of the latitudinal (NV ) 30

Number of division of the notch(NC) 40

これらの解析条件に基づいて塑性域形状を解析した結果を Fig.48に示す.

82

1.0

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

hh

Fig.46 切欠き底近傍の塑性域形状

試験片に作用する荷重は異なるにも関わらず,切欠き半径と切欠き底の弾性最大応

力が等しければほぼ等しい塑性域形状を示すことが分かった.しかし,切欠き深さが

浅い h = 0.1の時は,塑性領域が切欠き底だけでなく切欠きの外側にまで塑性域が分

布している事が分かる.

次に,切欠き底に生じるひずみについて解析結果を示す.

83

0.0

1.0

2.0

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0

:Notch Depth

Elastic plastic strain

Plastic strain

Elastic strain

ε[10−3St]

h

Fig.47 切欠き底に生じる全ひずみ,弾性ひずみ,塑性ひずみと切欠き深さの関係

切欠き底の弾性最大応力を全ての切欠き深さにおいて一定としているため,弾性ひ

ずみの大きさも同じく一定である.さらに,塑性ひずみも,すべての切欠き深さの場

合において同程度の値になっている.

以上の解析結果から,塑性ひずみに関しては切欠き深さと切欠き底の弾性最大応力

が等しい場合は同程度の値を示す事が確認されたが,塑性領域に関しては,切欠き深

さが切欠き半径の 10%程度になる場合は類似した形状にならない事が分かった.

84

4.7 結言

本章では以下の事が示された.

• 塑性ひずみを力対の置き換えによって表現する力対埋め込みモデルについて示

した.

• 離散化要素内に一様な力対を分布させる時には隣り合う力対の集中力によって

内部の力対が打ち消され,境界に分布する体積力に置き換える事が出来る事を

示した.

• デローニ分割による自動分割を援用して弾塑性解析を行う方法について示

した.

• 弾塑性解析の支配連立方程式を効率的に構成する方法について示した.

• 内圧を受ける円孔を有する無限板の問題の弾塑性厳密解と数値解析の結果を比

較し数値解析による方法が有効であることを示した.

• 切欠き半径と切欠き底の弾性最大応力が等しい時に切欠き底の厳しさは切欠き

深さに依存しない事が分った.但し,切欠き深さが切欠き半径の 10% 程度に

なる場合は塑性領域が切欠き外にまで拡がる事を示した.

85

第 5章 結論 ·展開

本研究では,力対を用いて構成方程式あるいは,応力-ひずみ関係が任意であるよう

な問題の応力解析プログラムを開発し数値解析の方法や結果について言及した.

まず,第 2章では,体積力法による弾性解析の方法について示した.特に,直線境

界と円弧境界の解析解はさまざまな問題に応用する事が可能であり,かつ数値積分を

使用しないので,プログラム開発も容易である.この解析解を用いて,平板の問題,

円孔を有する無限板の問題,内圧を受ける円孔を有する無限板の問題,円孔を有する

有限板の問題,切欠きを有する帯板の 3点曲げの問題を取り扱い,厳密解や FEMに

よる解と比較を行った.これら全ての問題で非常に精度良く解析を行う事ができる事

が示された.また,本研究では,2次元問題特有の剛体変位の除去の方法についても

示した.

力対を分布させる事により,非弾性ひずみを局所的に生じさせる方法を用いて傾斜

機能材料の数値解析手法を開発した.さらに,陳らの方法を深化させて本手法を繰り

返し用いることで弾塑性解析を効率的に扱う方法を検討した.

第 3章では,力対を内挿する方法により,傾斜機能材料の具体的な解析手法につい

て示した.本章では,縦弾性係数が異なる領域を含む問題を力対の分布により解く解

法を,応力-ひずみ線図および,イメージ図により示した.また,積分方程式により,

介在物の材料定数と母材の材料定数から内挿する力対の大きさを決定する構成式を導

き出した.この構成式により正しく材料定数が傾斜する介在物を表現できるか検証す

るため,縦弾性係数が一様に 0である円形介在物を円孔と見立てて Howlandの解と

比較した.これにより,介在物を 1024分割すると,厳密解とほぼ一致する事が示さ

れた.また,一様な縦弾性係数を持つ円形介在物および,場所ごとに材料定数が変化

するような円形介在物を有する無限板を引張る問題においても構成式の検証を行っ

た.この問題では,介在物中の応力を計算する事により,解析から導き出される縦弾

性係数が入力条件で示した介在物の材料定数を表現しているかという事を検証の判断

基準とした.その結果,場所ごとに材料定数が変化するような場合も,本手法が有効

である事が示された.最終的には,本手法を用いて,介在物内部の縦弾性係数が一定,

1次関数的,2次関数的に変化する場合においても,特別な処理をする事なくすべて

同じ方法で解析を行う事ができる事を示した.従って,本研究では複合材料の応力解

析の一般解法を確立したことになる.

第 4章では,力対埋め込みモデルを繰り返し適応することで弾塑性解析を行った.

86

弾塑性解析においては,力対により生じる非弾性ひずみを塑性ひずみとして塑性領域

に埋め込む事によって解析を行った.本手法を用いると予め塑性領域に相当する領域

に離散化メッシュを生成しなければならなかったが,Delaunay 分割を援用する事で

要素を用意する必要がなくなった.そのため,多くの要素を生成して弾塑性解析を行

う事が可能になったが,その分,計算時間が非常に膨大になるという問題が生じた.

そこで,各要素に単位大きさの力対が生じた時の応力を計算してデータベース化する

事により,埋め込む力対の大きさを決定する非線形連立方程式の構成が容易になった.

そして,この方法を用いて,内圧を受ける円孔を有する無限板の問題を取り扱う事で,

体積力法による 2次元弾塑性解析の精度について検証を行った.その結果,弾塑性境

界寸法及び,塑性ひずみにおいて厳密解と非常によい相関性を示すことが分かった.

また,線形切欠き力学が定義している切欠き底の厳しさについて,切欠きを有する

帯板の 3 点曲げ問題を解くことで検証を行った.その結果,体積力法による弾塑性

解析でも,線形切欠き力学による定義が正しい事が示された.しかし,切欠き深さが

非常に浅い場合は塑性領域が切欠きを離れて材料の内部にまで拡大していたため,切

欠き深さが浅い時には応力場の厳しさについてさらに検討が必要であると考えれら

れる.

今後の展望としては,近年,移動最小自乗法などのメッシュレス解析法が様々な分

野で応用されており,体積力法についてもこの手法を適応することで更に解法の汎用

化が可能になり様々な分野で体積力法が用いられる事が期待される.

87

付録

Goursat の複素応力関数 75)

本節では,Airy の応力関数と Goursat の複素応力関数の関係を示す.

複素変数 z = x+ iy の正則な複素関数 Φを次のように定義する.

Φ(z) = Φ1(x, y) + iΦ2(x, y) (1)

この正則な複素関数を基に,複素応力関数 Ω(z)を導く.Ω(z)と Φ(z)は

Ω(z) =1

4

∫Φ(z)dz (2)

の関係で表される.

まず,Airy の応力関数 80)ϕは必ず重調和関数でなければならない.*1そして,Airy

の応力関数の調和方程式を式 (1)の実部 Φ1(x, y)であるとする.

∆∆ϕ =∂4ϕ

∂x4+ 2

∂4ϕ

∂x2∂y2+

∂4ϕ

∂y4= 0 (3)

∆ϕ = Φ1(x, y) (4)

この時,式 (4)から Φ1(x, y)は ∆Φ1(x, y) = 0の調和関数であると言える.そして,

式 (1)は正則な複素関数であるため,Φ2(x, y)は Cauchy-Riemann の微分方程式 81)

より導かれる.∂Φ1

∂x=

∂Φ2

∂y,

∂Φ1

∂y= −∂Φ2

∂x(5)

式 (4)と式 (5)から導かれた Ω(z)の実部と虚部を以下のようにする.

Ω(z) = Ω1(x, y) + iΩ2(x, y) (6)

そして,Ω(z)は正則関数を積分したものなので,Ω1, Ω2 は共に正則である.よって

Cauchy-Riemann の微分方程式より

∂Ω1

∂x=

∂Ω2

∂y,

∂Ω1

∂y= −∂Ω2

∂x(7)

*1 Airy の応力関数を適合条件式に代入すると式 (3)のような重調和関数となる.

88

となる.次に,dΩ

dzを計算し,式 (7)を代入すると.

dz=

∂Ω1

∂x+ i

∂Ω2

∂x=

∂Ω1

i∂y+

i∂Ω2

i∂y=

1

4Φ =

1

4(Φ1 + iΦ2) (8)

式 (8)の実部と虚部に注目すると,Φ1 は次のように書く事ができる.

∆ϕ = Φ1(x, y) = 4∂Ω1

∂x= 4

∂Ω2

∂y(9)

∆ϕ− 4∂Ω1

∂x= 0

∆ϕ− 2∂Ω1

∂x− 2

∂Ω2

∂y= 0 (10)

式 (10)を二次の Laplacian ∆×ある関数の形に式変形を行うために次の微分を行う.

∆(xΩ1) =∂

∂x

(Ω1 + x

∂Ω1

∂x

)+

∂y

(x∂Ω1

∂y

)= 2

∂Ω1

∂x+ x∆Ω1

∆(yΩ2) =∂

∂y

(Ω2 + y

∂Ω2

∂y

)+

∂x

(y∂Ω2

∂x

)= 2

∂Ω2

∂y+ y∆Ω2

Ω1 と Ω2 はともに正則関数であるため,

∆(xΩ1) = 2∂Ω1

∂x∆(yΩ2) = 2

∂Ω2

∂y(11)

式 (11)を式 (10)に代入すると

∆(F − xΩ1 − yΩ2) = 0 (12)

よって,複素応力関数 Ωと Airy の応力関数との関係を示した.次にもうひとつの複

素応力関数 ω について示す.式 (12)は任意の調和関数 χ1(x, y)を用いて以下のよう

に書くことが出来る.

F = xΩ1 + yΩ2 + χ1 (13)

そしてこの任意の調和関数 χ1 を実部に持つような複素関数 χ(z)を定義する.

χ(z) = χ1(x, y) + iχ2(x, y) (14)

式 (13)の右辺を複素変数 z で表すと以下のようになる.

F =1

2

zΩ(z) + zΩ(z) + χ(z) + χ(z)

(15)

89

この関係式と Cauchy-Riemann の微分方程式により,χ(z)が求まる.そして,この

χ(z)ともうひとつの複素応力関数 ω(z)は

dz= ω (16)

の関係で表される.

90

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81) 藤原 毅夫 ; “ 工系数学講座 6 複素解析の技法 ”, 共立出版株式会社, (1999)

98

謝辞

まず,私が在籍した旧固体力学研究室の今井名誉教授,才本教授,本村助教,退官

された柳原シニアスタッフ,先輩,後輩すべての人々に感謝いたします.

特に,才本明秀教授には懇切丁寧に,研究指導をしていただき本論文を執筆するに至

りました事を心より感謝いたします.また,先生には研究だけでなく,タッチラグ

ビー,飲み会等々で,研究者としての生き方,考え方についてたくさんの事を教えて

いただきました.今後も先生に教えていただいた事全てを,生活に活かしていきたい

と思います.

三菱電機エンジニアリングの上野君には,傾斜機能材料の解析に関する研究におい

て,有益な情報を多く提供していただきました.深く感謝いたします.

石松隆和教授,小山敦弘准教授には論文執筆にあたり,多くの助言をいただきました.

深く感謝いたします.

後輩たちにお願いがあります.

研究室の活気をさらに盛り上げて,頂きたいと思います.研究室での生活は社会人に

なっても役に立つ事がたくさんあります.学部生,修士 1年生は先輩に甘えて,研究

はもちろん遊びにスポーツに思い切りやって下さい.修士 2年生は今まで先輩に甘え

てきた分後輩たちが,やっていることをフォローしつつ思い切り研究して下さい.そ

して,最後の学生生活を実り多いものにしてください.

最後に,常に支えてくれた両親,弟,そして妻に心より感謝いたします.

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