July 2015 - yakusho.org林小学校(元第一錦林小学校)に入学した。...

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No. 21 July 2015 [巻頭] ・ご挨拶 寺尾 允男 1 [特別寄稿] ・「厄を転じて福となす」「逆転の発想」 藤多 哲朗 2 [薬学への期待] ・わからないはおもしろい 石橋 正己 5 ・Simple is best. 竹元万壽美 6 ・6年制薬学部における基礎薬学教育の充実を! 山田 清文 7 [薬学研究への道] ・薬剤安全性分野における性差薬学の研究 黒川 洵子 8 ・既成概念がくつがえるとき 藤  秀人 9 ・自分の歩んできた道から 中原  努 10 ・平成 27 年度助成金等募集要項 ・平成 26 年度助成金等受領者 ・賛助者芳名 ・スケッチ 「新緑の北の丸公園」 山崎 幹夫 ・編集後記

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No. 21July 2015

[巻頭]・ご挨拶 寺尾 允男   1

[特別寄稿]・「厄を転じて福となす」「逆転の発想」 藤多 哲朗   2

[薬学への期待]・わからないはおもしろい 石橋 正己   5

・Simpleisbest. 竹元万壽美   6

・6年制薬学部における基礎薬学教育の充実を! 山田 清文   7

[薬学研究への道]・薬剤安全性分野における性差薬学の研究 黒川 洵子   8

・既成概念がくつがえるとき 藤  秀人   9

・自分の歩んできた道から 中原  努   10

・平成 27 年度助成金等募集要項

・平成 26 年度助成金等受領者

・賛助者芳名

・スケッチ

「新緑の北の丸公園」 山崎 幹夫

・編集後記

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役 員 等 の 名 簿

平成27年7月1日現在

名誉会長 柴田 承二 日本学士院会員・東京大学名誉教授

野島 庄七 東京大学名誉教授

会 長 北川 勲 大阪大学名誉教授

参 与 相澤 登 (公財)持田記念医学薬学振興財団名誉理事

池川 信夫 東京工業大学名誉教授

理 事 長 寺尾 允男 (一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団会長

理 事 池浦 義典 武田薬品工業(株)医薬研究本部本部長室長

市川 和孝 日本製薬工業協会前理事長

海老塚 豊 東京大学名誉教授

北田 光一 (一社)日本病院薬剤師会会長 千葉大学名誉教授

佐藤 公道 京都大学名誉教授

関谷 剛男 (公財)佐々木研究所附属佐々木研究所所長

辻 勉 星薬科大学教授

平井 功一 第一三共(株)元顧問

増田 典之 アステラス製薬㈱研究本部研究統括部長

監 事 後藤佐多良 順天堂大学大学院客員教授

村瀬 清志 山之内製薬(株)元取締役

評 議 員 赤池 昭紀 名古屋大学大学院創薬科学研究科教授・京都大学大学院薬学研究科客員教授

石川征四郎 三共(株)元取締役

久保 陽德 明治薬科大学理事長

小林 利彦 東京大学薬友会会長

長友 孝文 新潟薬科大学名誉教授

林 正弘 高崎健康福祉大学薬学部教授・薬学部長

増保 安彦 東京理科大学薬学部嘱託教授

宮田 直樹 名古屋市立大学創薬基盤科学研究所特任教授

吉松賢太郎 エーザイ(株)シニアサイエンティフィックアドバイザー

ロドニー スティーブンス 大正製薬(株)医薬研究本部副本部長

事務局長 藤田 雅子 (公財)薬学研究奨励財団

注:役員等は全て非常勤

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昭和39年 東京大学大学院化学系研究科薬学専攻博士課程修了 薬学博士

東京大学薬学部助教授 国立衛生試験所部長(放射線化学部、機能生化学部、薬品部)

国立衛生試験所副所長 国立医薬品食品衛生研究所長を歴任

(財)日本公定書協会会長 (社)日本薬学会監事 厚労省薬事食品衛生審議会会長 内閣府食品安全委員会委員 歴任

現在、(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団(旧日本公定書協会)会長

巻 頭

皆様、お元気でお過ごしのことと思います。

本年5月、米国海洋大気庁(NOAA)は、世界の大気中のCO2の月平均値が今年3月に地球温

暖化の危険水準とされる400ppmを初めて超えたという調査結果を発表しています。事実、気温が

人間の体温より高いという、わが国では、かつてはほとんど経験したことがない事態が、最近で

は毎夏日常的に起こるようになりました。今後、このように異常に高い夏の気温は常態化してし

まうのでしょうか。本年も、これから暑い夏を迎えますが、皆様くれぐれもお体を大切になさっ

てください。

わが国は、科学の諸分野において優れた研究能力と高い技術力を持っています。しかしながら、

多くの基礎研究の成果を応用研究につなげ、新しいものを開発することが得意ではないといわれ

てきました。医薬品開発においても、このような指摘はあてはまると思います。原因の一つとし

て、基礎研究の成果を応用研究へ橋渡しする強力な機能が備わっていない点にあることが指摘さ

れています。国は本年4月、この点を克服するため医薬品等の研究開発を通じて医療の向上を目

的として日本医療研究開発機構(AMED)を設立しました。AMEDは、厚生労働省、文部科学省、

経済産業省が縦割り行政によりこれまで別々に計上してきた関連予算を一元化し、医薬品等の開

発をシ-ムレスに一貫して支援する役割を持つとされています。わが国の製薬産業の更なる飛躍

は、AMEDの成否に懸っているといっても過言ではないと思います。AMEDの活動にとって、医

薬品開発に従事する優れた人材の確保が必須となることは明らかであります。

薬学研究奨励財団の設立以来の使命は、薬学及び関連諸分野における研究を奨励振興し、わが

国の科学技術の発展に貢献することです。その為に、これまでに多くの若手研究者の研究を助成

し後押ししてまいりました。これからも、微力ながら視野の広い優れた若い研究者への研究助成

に力を注ぎ、わが国の薬学研究と医薬品産業の発展に尽くしていく所存であります。

皆様方のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

ご 挨 拶

公益財団法人 薬学研究奨励財団理事長 寺 尾 允 男

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特別寄稿

研究、教育職から身を引いて14年の歳月を

経た。振り返って見れば、薬学に職を得て幸

運であったと思う。多くの幸せに恵まれたが、

その最大は、多くの先生、先輩、後輩、友人、

共同研究者に恵まれこと、昆虫寄生菌・冬虫

夏草から免疫抑制活性を指標とする活性物質

探索研究が多発性硬化症治療薬開発の糸口に

なったことである。貴重な本誌の誌面をお借

りして、厄が転じて福となった経験を幼少時

代からの年寄りの思い出話であるが、少しで

も若い人達の関心を呼ぶことが出来れば有り

難い。

私は1931年(昭和6年)に京都市左京区岡

崎で生まれた。京都東山山麓の南禅寺、永観

堂に近く、幼稚園は永観堂幼稚園であった。

その帽子の記章は当然紅い紅葉であった。園

はお寺の域内にあり、裏山の多宝塔までよく

登った記憶がある。その下は琵琶湖疎水が南

禅寺から熊野若王子神社へトンネルで抜けて

いた。その先の水路は表に出て銀閣寺へとつ

ながり「哲学の道」となる。動物園、美術館、

旧財閥や山縣有朋の別邸(無隣庵)も近く良

い環境であった。生家は薬局で京大医学部に

も近いことから、研究中の医師がよく「藤多

さん、薬局をお借りするよ」と薬理学の荻生

規矩夫先生らが利用されたと聞いている。小

学校は平安神宮の通りを隔てて北側にある錦

林小学校(元第一錦林小学校)に入学した。

1949年(昭和24年)新制第一回京大医学部・

薬学科入学生、60人の中に3人の同一小学校

同級生がいたことには、驚いた。私は4学年

1学期後半から、京都―大阪の中間、大山崎

の京都よりの新神足村立神足小学校に移った。

この転校は、子供にとって大きな厄、試練で

あった。しかし、案外この小学校転校は、私

の人生にとって幸運であったかもしれない。

その一つは多くの課目の授業内容が既に錦

林小学校で学んだことの復習であったこと、

それによって第一学期の成績は錦林小で経験

したことの無い良い成績であった。その二は

田舎であるにも拘わらず、田畑はあっても京

都市内岡崎と比べると子供の遊べる空き地が

ない。その三は第二次世界大戦前年でもあり、

農家は忙しく、男子生徒は農業の手伝い、女

子生徒は家事手伝いに追われていた。お蔭で

遊ぶ相手が少なく、錦林小の劣等生であった

町の子が突如優等生に変化、成長した。環境

の変化が人を変える経験の第一歩であった。

小学生時代の創薬実習

実父弘は京都薬大の前身薬学校時代の卒業

資格と料理学の中等教員資格で薬剤師国家試

験を受験、苦労して薬剤師免状(大正11年

(1922年)、名簿登録番号:12369号)を得た。

1941年(昭和16年)第2次世界大戦が勃発、

父は丙種合格で有り難いことに徴兵は免れた。

彼は口にこそ出さなかったが、最初から、こ

の戦争は負ける、医薬品は不足する。食糧不

足になると予想したようである。それ故、50

から100坪ばかりの土地を借り開墾し、野菜、

豆類、芋類の栽培を家族に手伝わせた。食糧

難時代になると、農産物の盗難がおこる。そ

れを免れるために、糖類の製造実験を行った。

すなはち、キク科ヒマワリ属のキクイモ

Helianthus tuberosus を栽培、その塊茎は澱

粉ではなく果糖の高分子化合物、イヌリンを

含んでいる。それから果糖を得ようとした。

「厄を転じて福となす」「逆転の発想」

京都大学 名誉教授 藤 多 哲 朗

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全ての工程を小学生の私に手伝わせたのでは

ないが、今はキクイモを砕きイヌリンを水に

晒している。次は稀硫酸で加水分解だ。次い

で炭酸カルシウムで中和、硫酸カルシウムと

して沈殿させていると説明し、濾液を大きな

蒸発皿で濃縮した。この最後の濃縮過程はガ

スバーナーの火加減の番をさせられた覚えが

ある。苦労して出来たシロップの味は甘かっ

たが、匂いが強くて甘味に飢えていた子供に

も拒否された。お蔭で子供ながら化学実験の

面白さを実感した。

中学生時代の創薬実習

中学3年生の夏、1945年8月15日、敗戦の

日を迎えた。食糧、医薬品は不足し、栄養失

調が蔓延していた。ビタミン、タンパク質が

不足していた。父は親しい薬剤師仲間と共に

パン酵母を自己融解後乾燥させ栄養補給薬を

開発した。厚生省薬務課の認可も得て「エン

ザイマ(ENZYMA)」と名付け、関西、山陰

方面の日赤などの大病院へ持ち込み、評判が

良かったらしい。大阪吹田の淀川近くの小さ

な工場を使って製造していたが、自宅の薬局

の一部に乾燥機を置いて小さな家内工業的製

造もしていた。世の中が落ち着き始めると、

本業の薬局経営に戻った。このような環境で

育った筆者は、当然進学は薬学関係と迷いは

なかったし、微生物の面白さを上級学校受験

前に知った。

京大医学部薬学科生薬学教室で刈米達夫先

生から与えられたテーマは「延命草苦味成分

の研究」であった。1954年頃、分析機器の殆

ど無い時代で次いで木村康一先生、上尾庄次

郎先生に教えを受けた。私は博士課程の所定

の単位は修得(昭和33年)したが、所定期間

内に論文をまとめることが出来なかった。結

局、藤田栄一先生(京大化研)のご指導で論

文博士の学位を得たのは1965年であった。博

士課程修了後、約3年間、京都府立医科大

学・生化学・助手として給料を頂きながら、

延命草苦味成分、エンメイン、の研究をさせ

て頂いた。勿論、教室助手の務めを果たし

た?積もりである。外から見ると、藤多は京

大を離れ不利な立場にいると言われていたら

しいが、本人は結構幸せで、生化学を学び、

解糖系最後のキーポイントとなるピルビン酸

デヒドロゲナーゼの補酵素同士、ビタミンB1

とリポ酸をS-S 結合させた新アリナミン型

新薬を考え、主任教授・能勢善嗣先生に提案

した。先生曰く「残念でした。つい最近、そ

の発想の薬の生化学研究委嘱をある会社から

持ち込まれたところだ。でもその発想は素晴

らしい」と。

厄は重ければ重いほど大きな福をもたらし

てくれると、私は信じている。

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『新緑の北の丸公園』(P12 布張りキャンバス 油彩)

絵を描くようになってから、写生に適した場所を探しに住まいの近くを歩くことが多くなった。周辺には東大構内や上野公園など描きたい風景はいくらでもあるのに、それらをうまくキャンバスに写し取る技量がないのがもどかしい。ここでは、無理とは思いながらも九段の北の丸公園で描きとめた写生の1枚を油彩画に仕上げてみた。 この公園には都心とは思えぬ緑の深さと静けさがあって、私にとって好きな場所のひとつになっている。池の向こう側に立つ3本の樹の枝ぶりに気を取られて描いた。 山崎幹夫

<山崎幹夫先生 プロフィール> 昭和29年千葉大学薬学部卒業、35年東京大学大学院薬学博士課程修了、薬学博士。国立放射線医学研総合究所主任研究官、千葉大学教授、薬学部長を経て平成16年新潟薬科大学学長。厚労省中央薬事審議会委員、日本薬学会ファルマシア編集、広報、創薬セミナー委員会等の委員長、日本医薬品情報学会会長等を歴任。『薬と日本人』、『毒薬の誕生』、『毒の話』等、薬と毒に関する著書が多い。

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薬学への期待

平成9年度に第18回薬学研究奨励財団研究助成金

をいただいた。申請時の所属は北海道大学であった

が、助成が決定したのは千葉大学へ異動してからで

あった。研究室のスタート時で大変ありがたかった。

あれから18年が経過した。そのときの研究助成がど

のような研究タイトルであったかもちろんおぼえて

いない。調べてみたところ、「細胞情報伝達機構を

制御する天然新分子の探索と新しい生物資源の開

拓」というものだった。赤面してしまう。しかし当

時の気持ちがよく伝わってくる。タイトルの言葉は

大袈裟だけれども、そのタイトルが意味するところ

に従ってこの18年研究を進めてきたと思う。つまり、

変わってないということだ。この18年で世の中は大

きく変わった。世の中は変わったのに自分は変わっ

ていない。それでいいのだろうか。もちろんいいの

だと自分では思っている。

自分の専門は天然物の探索である。いわゆる「も

のとり」。ずっと同じことをやっている。しかし、

TLCを上げて発色試薬を吹きかけ加熱して次第にス

ポットが見えてくるときや、NMRを測定しFIDから

フーリエ変換してスペクトルがあらわれてくる瞬間

はとてもわくわくする。わくわくするが、ほとんど

の場合期待通りではない。TLCは激しくテーリング

するし、NMRは溶媒ピークだけだったり、そんな

ことが多い。でもたまにはワンスポットだったり、

きれいなスペクトルが得られたりする。きれいな

1H NMRスペクトルが得られると本当に感動する。

だけど喜んではいられない。たいていは既知化合物

だ。でもきれいなスペクトルを見るのは好きだ。

おもしろいことをやりたいと思う。学生の皆さん

にもそう言っている。おもしろいことをやろうよ。

そのおもしろいことの中身は人それぞれが感じるこ

とだが、実は私の感じるおもしろさはこの18年で少

し変わったかもしれない。以前はNMRを読んだり、

立体化学が決定できたりすることが本当におもしろ

かった。それは今も変わらない。それは今も変わら

ないが、それに加えて今は、化合物の作用がわかる

ととてもわくわくする。わかるといってもすべてが

わかるわけではない。一つでもいいのだ。一つの

「点」が明らかになり、もう一つの「点」が明らか

になる。それはおもしろい。「点」と「点」がつな

がればさらにおもしろいが、必ずしもつながるとは

限らない。しかしそれもまたおもしろい。わからな

いままになることもある。「わからないはおもしろ

い」。そう最近学生さんに言うようになった。わか

らないと思っていても、実はデータをすでに手にし

ていることもある。もっているデータを十分に読み

取ること、それも重要だ。例えば、一次元NMR。

実にたくさんの情報を含んでいる。ちゃんと読もう。

少し話がそれてしまった。

本コラムのタイトルは「薬学への期待」であるが、

それは薬学研究をこれからも続ける自分への期待で

ある。「シグナル経路を標的としたスクリーニング

を基盤とする包括的天然物化学」。これが最近よく

使っている私の研究タイトルである。タイトルも実

はあまり変わってないかもしれない。これからも

きっと変わらないだろう。バカボンパパではないが、

これでいいのだ。そう思えば肩の力が抜ける。のび

のびとおもしろいことをやりたい。わからないこと

を一つでもあきらかにしたい。それが自分への期待

である。

わからないはおもしろい

千葉大学大学院薬学研究院 教授 石 橋 正 己

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私は、1997年3月に「植物培養細胞による天然型

ポドフィロトキシン及びタキサン骨格構築法の開発

研究」という課題で研究助成を賜りました。心から

感謝申し上げます。贈呈式では私を研究者として育

てていただいた恩師(静岡県大阿知波一雄教授、東

野武雄教授、富田勲教授)にご列席いただき身に余

る光栄でした。

ブリティッシュコロンビア大学Kutney教授が静岡

県立大学に講演に来られた時のこと。Kutney教授が

「なぜ植物は複雑な骨格の天然物をいとも簡単に作

れるのだろう。人間が合成すれば何十ステップもか

かるのに」と。阿知波教授も大きくうなずき、植物

の魅力に話が弾みました。

私は1994年植物培養細胞(カルス)を用いた物質

変換を研究するためにKutney研に留学しました。と

ころがイチイカルスの抽出物の構造決定がテーマと

なりKutney教授に物質変換に関するテーマへの変更

を願い出ました。Kutney教授は「イチイカルスを酵

素源としタキソールを合成するのがこの研究の最終

テーマである。カルス中にどんな代謝物があるか調

べればタキソールの生合成ルートが導け最終的にタ

キソールを簡便に合成できる。」と叱られました。

二日間話し合った後、カルスを用いた酸化的閉環に

テーマを変更していただきました。研究を無事終え

帰国後、カルスを用いラセミのアルコールをキラル

アルコールに変換する脱ラセミ化反応、ジアステレ

オ選択的水酸化反応、脱ジアステレオマー化反応、

アトロプ選択的ビアリールカップリング反応など

次々開発しました。

次の仕事として私がテーマにしたのが、テアフラ

ビン(カテキン以上に機能性があるためマスメディ

アではスーパーカテキンと呼ばれているが、緑茶中

には含まれず紅茶中に0.3 ~ 0.5 %しか含有されて

いない紅茶の紅色主成分)。私は茶培養細胞を用い

原料となる緑茶カテキンをテアフラビンに完全変換

するドミノ型大量生産法に成功し特許化しました。

しかし茶培養細胞はホルモンを用いカルス化してい

ることからより安全性の高い生産法を目指した結果、

ホルモンの代わりに大量の水中で生の茶葉を破砕さ

せることによりテアフラビンの大量生産に成功し新

たに特許化しました。その後、2014年にマスメディ

アに公表されたSTAP細胞の作製原理は私が開発し

たホルモンフリーのカルス化の作成法に似ていると

思いました。NHK特集でSTAP細胞は植物のカルス

化原理から着想されたと放送されなるほどと思いま

した。

単純な系ほど実験系に疑義をとなえられることは

よくあります。「大量の水中で生の茶葉を破砕し

ゆっくりかき回すだけでテアフラビンが大量に生成

されるはずはない」と猛攻撃があり幾度か公開実験

を行い誰でも簡単にできることを証明しました。こ

れらは国際特許も含め国内では8件特許化されまし

た。静岡の茶畑にある茶葉と水だけで茶葉中の全て

のカテキン類をテアフラビンに僅か4時間で100%変

換できる素晴らしさ:Simple is best.

昨年、本学オープンキャンパスで「薬学的センス

『逆の発想』」を身につけよう」というタイトルで講

義しました。薬の分量を間違えないためにはどうす

るか?逆の発想を身につければ複雑な計算をするこ

となく単純に計算できる各種例を講義しました。最

近の学生は易しいことをさらに難しく複雑に考える

傾向にあります。逆に難しいことを単純に易しく考

えられるように、有機化学と医薬品化学を講義して

います。

Simple is best.

奥羽大学薬学部 教授 竹 元 万壽美

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大学院修士課程を修了した後、製薬企業の研究所

勤務(10年)、大学病院の薬剤師(5年)、同・助教

授(4年)、薬学部・教授(5年)を経て現職に就

いた。企業における医薬品の研究開発、病院薬剤師、

薬学部教員を経験した者として、また現職の医学部

教員として薬学基礎教育の重要性について私見を述

べたい。

名古屋大学に薬学部はないが、平成24年度に薬学

系大学院(創薬科学研究科)を開設した。設置申請

の前には区分制の博士課程だけでなく4年制薬学研

究科も創ろうという案があり、私も4年制課程の

WG委員を務めた。医学部を中心とするこのWGで

は、医学系研究科と連携してトランスレーショナ

ル・リサーチを推進できる薬学研究科を創ることを

目標とし、学内に化学合成から分析化学、薬理学、

薬物動態学、製剤学、毒性学、生物統計学など、創

薬に必要な基礎薬学の教育研究拠点を創るための議

論を重ねた。残念ながら社会的要因もあり4年制課

程の薬学研究科は実現しなかったが、医師・医学研

究者は薬学の基礎領域の研究力に期待しており、社

会的なニーズも高いと感じた。これは、医療従事者

の中で有機合成や分析化学、製剤学などの基礎を学

んでいるのは薬剤師のみであるという事実と少なか

らず関係があると思われる。個人的には、6年制薬

学部こそが薬剤師養成教育の中で十分に基礎薬学を

修得させ、そのうえで長期実務実習に学生を送り出

すべきと考える。そして、4年制大学院において創

薬研究を含む薬学研究を推進するのが理想である。

入学者のレベルの問題もあるが、昨今の薬剤師国家

試験では基礎薬学問題の足切りが話題になっている。

これでは将来、医療職の中で薬剤師としての専門性

を発揮することができなくなると懸念される。6年

制薬学部は薬学特有の基礎知識と応用力を有する薬

剤師を養成する責務があり、それこそが社会的要請

である。

医学部においても基礎医学研究者の減少が懸念さ

れているが、4年制の医科学部を創ろうという話を

聞いたことがない。研究は大学院レベルの話である。

どんなに医師不足が叫ばれても医学部新設には反対

の立場であり、医師の職能・職域が侵される懸念が

あれば、医学部、医学会は全面的に医師を支援する

体制である。医薬分業率は67%を超えたが、医療費

抑制が叫ばれる中、その費用対効果、形態、患者の

利便性などが議論されている。しかし、登録販売者

資格や薬のインターネット販売が導入された時と同

様、この問題に関する薬学部の関心は低く、薬学関

係者からのコメントをほとんど耳にしたことがない。

創薬への貢献は確かに薬学部に期待されているが、

薬学部の最も重要な責務は優れた薬剤師を養成する

ことであり、外向きには薬剤師職能と医薬分業の重

要性について公的立場で発信し、内向きにはその資

質向上のためにより教育的で指導的役割を果たすべ

きである。

6年制薬学部における基礎薬学教育の充実を!

名古屋大学医学部附属病院 教授・薬剤部長 山 田 清 文

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薬学研究への道

私は2010年に「性差医療に基づいたin silico心臓

毒性評価系の確立」という研究テーマで薬学研究奨

励財団から研究助成金をいただきました。基礎研究

で得られた結果を創薬分野で応用するための道筋を

真剣に考えて申請書を書いたので、採択されたとき

は非常に嬉しく同時に使命感が湧いてきたのを覚え

ています。

薬物反応において、年齢・性差・栄養などによる

個人差が影響することは古くから知られています。

薬物療法全般において、年齢による差は良く考慮さ

れており、成人と小児の用量は多くの場合で異なる

一方、最近まで、男女による差についてはあまり考

慮されてきませんでした。しかし、生殖器以外でも

体中の至る所で生理機能から病態反応に性差がある

ことが分かってきており、性差医学という分野が確

立しつつあります。特に、欧米のコレステロール低

下政策が男性の死亡率低下にのみ功を奏し、女性に

は影響しなかったことが契機となり、循環器領域を

中心に性差医学は大きく発展しました。日本でも

2000年初頭には女性専用外来が設立され、2004年に

は専門の研究会も立ち上がりました。実際、睡眠導

入剤ゾルピデム(日本名:マイスリ-)の有効成分量

は、FDAにより女性は男性の半分に設定されていま

す。人類は男と女で半分に分けられますので、性差

を考慮することは最も基本的な個別化医療とも言え

るのではないでしょうか。以前は、妊娠の可能性が

ある女性が薬剤の治験へ参加することは禁止されて

いましたたが、現在は半数に女性を含むことが推奨

されており、男女別の薬物療法の重要性が認識され

つつあります。

そのような流れの中で、私たちは、朝鮮人参に含

まれるサポニン類が心室筋の性ホルモン受容体を介

して心保護作用を発現すること及び核内受容体によ

る転写調節とは異なる非ゲノム作用が存在すること

を見出しました。この性ホルモン非ゲノムシグナル

を介して、生理的濃度のプロゲステロンとテストス

テロンによりQT間隔は短縮する傾向があり、思春

期以降に見られる心電図QT間隔の男女差や女性の

性周期による変動との関連が示唆されました。さら

に、薬剤性QT延長症候群の性差についても、少な

くとも部分的には説明できました。

薬剤性QT延長症候群は、まれに心臓突然死につ

ながる重篤な薬の副作用であることから、創薬安全

性試験での評価基準はとても厳しく設定されており、

新薬開発の道を阻んでいるとされています。 薬学

研究奨励財団よりご助成いただいた研究では、in

vitro心筋細胞で得られた性差に関する実験データを

心筋細胞のコンピューター(in silico)モデルに組

み込んで、不整脈発症の性差について解析しました。

心臓in silicoモデルは、過去の膨大な量の実験から

得られたデータを基盤として構築されており、我々

の実験から得られた情報はほんのごく一部分です。

ですから、モデルを利用したシミュレーションは、

これまでの積み重ねてきた科学的事実によって理解

可能な現象であるかどうかをバイアスなしに調べて

いることになります。幸いなことに、我々の心筋細

胞から得られた性差に関するin vitroデータは、臨床

で見られるQT間隔の男女の違いの程度の約7割ほど

を反映していました。このような定量的な議論は、

医薬品安全性など基準を制定する際に効力を発揮す

るのではないかと思います。さらに、臨床研究から

得ることは難しい毒性域の薬剤反応もin silisoでは

問題なく解析できるため、動物実験削減の社会的要

請とも相まって、今後in silicoの視点は創薬分野お

よび医療研究において重要となってくると思います。

私個人の研究としては、男女別の心臓モデルの開発

を通じて、不整脈発症における男女差を精確に予測

し、人々の健康に貢献したいという夢を実現させる

べく研究を続けているところです。

最後になりましたが、ご助成いただいた薬学研究

奨励財団様に厚く御礼申し上げます。

薬剤安全性分野における性差薬学の研究

東京医科歯科大学難治疾患研究所 准教授 黒 川 洵 子

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私は、平成17年度に「基礎研究を基盤とした抗ガ

ン剤併用療法の構築」というテーマにて薬学研究奨

励財団の研究助成金を賜りました。助成をいただき

ましたときは、私が研究者としてまだ駆け出しの時

期であり、本財団の助成金は、研究を展開していく

ために大きな後押しとなりました。心より感謝申し

上げます。

私の研究フィールドは、臨床薬理学や医療薬学と

いった領域になります。そのため、新薬創生といっ

た研究よりむしろ、医療現場における問題点を基礎

研究などに持ち帰り、よりよい治療法を考案すると

いった研究活動を主軸においています。医療現場で

は 、 根 拠 に 基 づ い た 医 療 ( evidence-based

medicine; EBM)が、全盛を極めています。経験則

に基づく医療から根拠に基づく医療への変遷は、当

然あるべき姿であると思います。しかし、これから

の医療では、このevidenceにがんじがらめにとらわ

れ既成概念化してしまい、「いくつもの臨床研究に

よってevidenceが確立しているから、この治療法に

ついて研究しても無駄だ。」などといった考えを持

たれる環境が生まれてくるかもしれません(肌感覚

としては、すでに生まれていると感じています。)。

私は、今あるevidenceが最上のものであるとは考え

ないようにしています。Evidenceは、いくつかの研

究の成果によって提示されるものであり、それは客

観性があるものであると思います。しかし、ある一

定の条件によって見出されたものであり、逆を返す

と検討されていなかった条件もあるかもしれません。

こういった背景を十分に理解した上で、今ある

evidenceを見つめることが必要であると私は思いま

す。本財団に助成いただいた研究は、まさにこの既

成概念を覆す研究成果を得た一つの研究テーマでし

た。

一般的に、がん化学療法は作用機序のことなる複

数の薬剤を使用し、治療効果の向上を目指します。

しかし、それぞれの抗がん剤には骨髄抑制などの副

作用があり、抗がん剤を併用することでそのリスク

は高まると考えられています。adriamycin(ADR)

とdocetaxel(DOC)併用も例に漏れず、高い効果

と同時に死亡例が多数出るほどの副作用が生じたこ

とから、その併用は禁忌とされています。しかし、

ここで得られたevidenceは、ほとんど同じ投薬方法

にて実施された複数の臨床研究からなるものであり、

薬物相互作用の観点から投薬順序・投薬間隔などの

詳細な条件検討はなされていませんでした。そこで、

我々は実験動物を対象に、薬学的視点より投薬方法

を再検討しました。その結果、ほぼ同時刻に投薬さ

れる既存の投薬方法と比較して、2剤の投薬間隔を

12時間あけ、投薬順序を考慮することで、抗腫瘍効

果を約2倍向上させ、副作用も有意に軽減できるこ

とを明らかにしました。また、興味深いことに、こ

の投薬方法では、ADR誘発心機能障害による毒性死

を顕著に予防できることも本研究で明らかになりま

した。したがって、禁忌とされた治療法が、投薬方

法を少し工夫するだけで、安全かつ効果的な治療法

に変えられることを示せたことになります。

本来、十分なevidenceが得られている治療法を再

検証するという行為は、愚かに思えるかもしれませ

ん。しかし、得られているevidenceが必ずしも真理

でないかもしれません。既成概念にとらわれず、

我々薬学の視点で医療をみつめ返すことで新たな発

見や発想が現れることを、私は本研究を通して感じ

ました。今後も、薬のポテンシャルをより向上でき

る治療法を探求し、医療現場における既成概念がく

つがえるような提案をできるように努力していきた

いと思います。

既成概念がくつがえるとき

富山大学大学院医学薬学研究部(薬学)教授 藤 秀 人

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私は、平成20年度に「VEGFによる黄体機能調節

機構解明と早産治療薬開発への応用」という研究課

題で助成金を賜りました。本研究課題では、妊娠中

期以降のマウスにおいてVEGF(血管内皮成長因

子)の作用を抑制すると早産が起こるという私達が

見出した現象の機序を詳細に解析し、1)マウスの

黄体細胞で産生されるVEGFが、妊娠の初期では、

血管の形成と成熟において、そして妊娠中期以降で

は、血流の維持において重要な役割を担うこと、

2)黄体血管におけるVEGF/VEGFR-2シグナルの

減弱が引き金となり、血栓形成を促進し血流障害を

生じることで、黄体で産生されたプロゲステロンの

循環への移行量減少、血漿中プロゲステロン濃度低

下、子宮筋収縮性亢進、分娩、という一連の反応が

起こること、従って、正常な黄体機能を維持するた

めには十分な黄体血流が必要であり、妊娠中期に黄

体の循環不全が生じると、妊娠の破綻、即ち、早産

に繋がることを明らかにしました。本研究成果は、

米国内分泌学会の学術誌Endocrinologyに掲載され、

掲載号の表紙を飾ることとなり、本研究課題で助成

金を得ることができたことと、合わせて大きな喜び

となり、自信ともなりました。

このように書きますと、私が生殖器・内分泌系薬

学の専門家であるかのように思われるかもしれませ

ん。しかし決してそうではなく、私の研究の中心は、

卒業研究生として中山貢一教授時代の静岡県立大学

薬学部薬理学教室に配属された時以来、一貫して血

管薬理学にあります。北里大学薬学部分子薬理学教

室(石井邦雄教授)に着任してからは、網膜血管を

主な研究対象としています。その間、米国への研究

留学の機会を得て、UCSFのDonald M. McDonald教

授のもとで、腫瘍血管の異常性におけるVEGFの役

割について、血管周囲環境の変化と関連付けながら

検討しました。この経験が、自分の研究の方向性に

大きく影響を及ぼしました。助成を受けた研究課題

においては、生殖器の解剖、妊娠期のホルモン変化

等についてあらためて勉強しながら、それらと血管

機能および血液循環とを関連付けながら実験を進め

ました。その研究成果は高く評価されましたし、そ

の研究の延長として、個体の発達遅延による網膜血

管形成パターン異常、未熟児網膜症に関する研究な

ど、自分にとって新たな研究領域へ踏み出すことが

できました。そして現在、網膜症や緑内障などの網

膜疾患の発症と進行に対して網膜血管の異常とそれ

に伴う血管周囲のグリア細胞・神経細胞の変化がい

かに関わっているかという問題について、グリア細

胞や神経細胞について勉強をしながら取り組んでい

ます。

私のこれまで歩んできた道を振り返ってみますと、

得意とする研究領域から、少しはみ出してみる(境

界領域との融合とでもいうのでしょうか)、そこに

新たな興味や研究テーマが生まれてくると実感させ

られます。諸先輩方には、「何を今さら・・」と言

われるかもしれません。ようやくそれに気付く年齢

になったのかもしれません。今現在輝いてみえる研

究分野や流行に振り回されるのではなく、先ずは自

分自身の研究領域をしっかりと確立して、そこを拠

点として他分野へ少しはみ出してみることよって、

自分自身の「薬学研究の道」が開かれるのではない

でしょうか。

自分の歩んできた道から

北里大学薬学部分子薬理学教室 准教授 中 原 努

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第36回(平成27年度)研究助成金等受領者募集

平成27年度は以下の要領で研究助成及び国際学術交流補助の募集を行います。

1 研究助成及び補助の対象

(1) 研究助成

薬学及び関連諸分野の優れた基礎並びに応用的研究に対し、次の各カテゴリーについて助成金を授与

します。

グループA: 1件100万円 10件

次の各分野の基礎的研究、すなわち化学系、物理系、生物系、医療系の各分野及びこ

れらの複合分野の研究から選考します。

グループB: 1件80万円以内 8件以上(総額640万円以内)

次の各分野及びこれらの複合分野の応用的研究(調査・統計研究を含む)から選考し

ます。

医療現場(薬剤部・薬局等)における研究、伝統医薬に関連した研究、衛生化学・環

境化学を指向した研究、医薬品・医療分野における分析を対象とした研究、社会薬

学・レギュラトリーサイエンス研究

(2) 国際学術交流補助

薬学及び関連諸分野の国際学術交流を奨励するために、補助金を授与します。

1)研究者の海外派遣補助金:1件30万円以内、2件以内

平成28年度に海外で開催される薬学及び関連諸分野の国際会議(学会・シンポジウム・ワーク

ショップ等)へ参加する研究者に参加登録料・旅費・滞在費等を補助します。

2)海外からの研究者招聘補助:平成27年度の募集は行いません。

3)国際会議の開催補助:平成27年度の募集は行いません。

2 応募方法: 所定の申請書に必要事項を記入のうえ,当財団宛に郵送してください。

(1) 研究助成金の申請には申請者の研究内容を熟知している方(指導教官・同一専門分野の研究者等)

による推薦書(申請用紙〔4〕・800字以内)を添付してください。

(2) 海外派遣補助金の申請の場合は、会議での発表予定論文等の要旨を添付してください。

3 応募受付期間: 平成27年8月3日(月)~ 平成27年10月13日(火)〈必着〉

4 選考方法: 選考委員会で選考のうえ、理事会の承認により決定します。

5 決定通知: 平成28年1月中旬

6 研究助成金及び国際学術交流補助金の贈呈式: 平成28年3月(予定)

7 応募の際の注意事項

(1) 同一年度に助成及び補助の各カテゴリーへの応募は重複して行うことはできません。

(2) これまでに当財団から研究助成金を受領された方の研究助成への応募はご遠慮ください。

(3) 海外派遣補助申請者が、同じ会議への参加について他の機関から補助金を受領することが決定した

場合には辞退していただきます。

(4) これまでに当財団から海外派遣補助金を受領された方の海外派遣補助への応募はご遠慮ください。

8 申請書の請求: 申請書は当財団ホームページ(下記)よりダウンロードできます。

詳しくは当財団ホームページをご覧ください。

事務局連絡先 〒150-0002 渋谷区渋谷2-12-15 日本薬学会長井記念館2F

公益財団法人 薬学研究奨励財団

TEL 03-3407-4047【水曜日を除く平日10:00~16:00】 FAX 03-3407-4162

E-mail:yakusho@joy.ocn.ne.jp

URL:http://yakusho.org/

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第35回(平成26年度)薬学研究奨励財団研究助成金(グループA・B)及び

国際学術交流補助金(海外招聘・国際会議開催)受領者

Ⅰ 研究助成金

1グループA(1件100万円、10件、総額1,000万円)

「光学活性なベンゾ縮合複素環の収束合成法の開発と創薬研究への応用」

(大阪大学大学院・薬学研究科・助教)井川 貴詞

「高分子抗癌剤の腫瘍移行性増大を意図した腫瘍内環境制御ナノ粒子の開発」

(熊本大学・薬学部・助教)異島 優

「光を用いた幹細胞の人工的操作法の開発と創薬研究への応用」

(京都大学・白眉センター/ウイルス研究所・特定准教授)今吉 格

「新規TGF-β活性化制御分子による線維化疾患治療戦略」

(北海道大学大学院・薬学研究院・准教授)今 重之

「グリア細胞によるグルタミン酸放出機構とその機能的意義の解明」

(東京大学大学院・薬学系研究科・特任助教)佐々木拓哉

「不均一系触媒によるアルコールの脱水素反応を基盤とした環境調和型反応の開発」

(岐阜薬科大学・助教)澤間 善成

「自己免疫疾患根治を可能とする逆標的化リポソームを用いた新規治療法の開発」

(静岡県立大学・薬学部・講師)清水 広介

「細胞運動における細胞膜のリン脂質組成変化の作用機構」

(京都大学大学院・薬学研究科・准教授)申 惠媛

「標的タンパク質分解誘導ペプチドの創製」

(国立医薬品食品衛生研究所・有機化学部第二室・室長)出水 庸介

「がん細胞の選択的可視化を目指した新規pH応答性蛍光ポリマープローブの開発」

(慶應義塾大学・薬学部・助教)蛭田 勇樹

(応募件数 128件)

2 グループB(1件40~80万円、10件、総額640万円)

「脂質異常症のバイオマーカー探索を目的とした各種中性脂質個別定量法の開発」

(滋賀医科大学医学部附属病院・薬剤部・特任助教)池田 義人

「神経―シュワン細胞相互作用に着目した抗がん剤誘発末梢神経障害の発生・難治化のメカニズム

解明と治療法に関する探索的研究」 (京都大学医学部附属病院・薬剤部・助教)今井 哲司

「スイッチOTC薬導入による医療用医薬品処方への影響と社会経済学的効用の評価」

(慶應義塾大学・薬学部・准教授)漆原 尚巳

「急性心不全(特に収縮保持性心不全)の発症における他臓器連関および薬物療法の検討」

(神戸市立医療センター中央市民病院・循環器内科副医長)北井 豪

「人工キメラレクチンを用いた病原性真菌細胞壁糖鎖の新規検出法の開発」

(東北薬科大学・准教授)佐々木雅人

「慢性腎不全患者におけるCYP3A活性低下の分子機序解明を目的とした遺伝的・生理的背景の調査」

(大分大学医学部附属病院・薬剤部・薬剤部長補佐)鈴木 陽介

「環境発がん物質ベンゾ[a]ピレンの尿中代謝物をバイオマーカーとする曝露評価法の開発」

(金沢大学・医薬保健研究域薬学系・准教授)鳥羽 陽

「免疫調節機能を有するアロマテラピー精油のin vitro評価系の開発と、これを用いた精油による

免疫調節メカニズムの検討」 (武蔵野大学・薬学研究所・講師)水野 大

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「高尿酸血症患者における薬力学的指標に基づくフェブキソスタット投与設計法の確立」

(浜松医科大学医学部附属病院・薬剤部・薬剤主任)見野 靖晃

「薬剤性腎障害の分子機構の解明と特異的尿中バイオマーカーの同定」

(九州大学病院・薬剤部・薬剤主任)矢野 貴久

(応募件数 48件)

Ⅱ 国際学術交流補助金

1 研究者の海外派遣補助金(1件30万円以内、2件以内)今年度応募者なし

2 海外からの研究者招聘補助金(1件40万円、2件、総額80万円)

「日本薬学会第135年会」 2015.3.25~28 神戸

(ミュンヘン大学 臨床神経免疫学研究所・主任研究員)川上 直人

【申請者 組織委員長 大阪大学大学院・薬学研究科・薬学部長 小林 資正】

「第19回シトクロムP450国際会議」 2015.6.12~15 東京

(アメリカ食品医薬品庁・医薬品評価研究センター・上級アドバイザー)Lei Zhang PhD.

【申請者 組織委員長 昭和薬科大学・教授 山崎 浩史】

(応募件数 4件)

3 国際会議の開催補助金(1件50万円、3件、総額150万円)

「第8回アジアシクロデキストリンカンファレンス/第32回シクロデキストリンシンポジウム合同会議」

2015.5.14~16 熊本 (組織委員長 熊本大学大学院・生命科学研究部・教授)有馬 英俊

「第14回あわじしま感染症・免疫フォーラム」 2015.9.8~11 淡路

(会長 東京大学・医科学研究所・教授)川口 寧

「第13回国際有機化学京都会議」 2015.11.9~13 京都

(組織委員長 京都大学大学院・工学研究科・教授)村上 正浩

(応募件数 3件)

贈呈式 理事長挨拶 第35回研究助成金等受領者の皆さん

平成27年3月25日 神戸

(写真提供 薬事日報社)

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平成26年度賛助者芳名 平成27年3月31日現在 (敬省略)

企 業 等(50音順)

㈱青粒

旭化成ファーマ㈱

アステラス製薬㈱

アストラゼネカ㈱

アスビオファーマ㈱

天藤製薬㈱

㈱医薬ジャーナル社

エーザイ㈱

大原薬品工業㈱

小野薬品工業㈱

科研製薬㈱

キッセイ薬品工業㈱

京都薬品工業㈱

杏林製薬㈱

協和発酵キリン㈱

㈱キリン堂

サノフィ㈱

三栄源エフ・エフ・アイ㈱

㈱三和化学研究所

塩野義製薬㈱

㈱じほう

㈱スズケン

ゼリア新薬工業㈱

千寿製薬㈱

全薬工業㈱中央研究所

第一三共㈱

大正製薬㈱

大日本住友製薬㈱

高砂香料工業㈱

武田薬品工業㈱

田辺三菱製薬㈱

中外製薬㈱

帝國製薬㈱

帝人ファーマ㈱

東邦薬品㈱

鳥居薬品㈱

㈱南江堂

日医工㈱

日産化学工業㈱

日本イーライリリー㈱

日本化薬㈱

日本全薬工業㈱

日本たばこ産業㈱

日本電子㈱

日本メジフィジックス㈱

日本薬科機器協会

ノバルティスファーマ㈱

バクスター㈱

㈱ヒサヤ大黒堂

㈱廣川書店

ファイザー㈱

富士フィルムRIファーマ㈱

扶桑薬品工業㈱

マルホ㈱

Meiji Seika ファルマ㈱

持田製薬㈱

㈱薬事日報社

㈱ヤクルト本社

リードケミカル㈱

学 協 会

(公社)日本薬学会

大 学(北から)

北海道医療大学

岩手医科大学

東北薬科大学

奥羽大学

いわき明星大学薬学部

新潟薬科大学

高崎健康福祉大学薬学部

東京大学薬学部

東京薬科大学

明治薬科大学

慶應義塾大学薬学部

昭和薬科大学

星薬科大学

日本大学薬学部

東京理科大学

昭和大学薬学部

北里大学

東邦大学薬学部

武蔵野大学薬学部

城西大学薬学部

城西国際大学薬学部

日本薬科大学

千葉科学大学薬学部

帝京平成大学

帝京大学薬学部

横浜薬科大学

北陸大学薬学部

愛知学院大学

金城学院大学

名城大学薬学部

立命館大学薬学部

京都薬科大学

同志社女子大学

大阪薬科大学

近畿大学薬学部

武庫川女子大学

神戸薬科大学

神戸学院大学

摂南大学

兵庫医療大学薬学部

就実大学

安田女子大学薬学部

福山大学薬学部

広島国際大学薬学部

徳島文理大学

松山大学薬学部

第一薬科大学

福岡大学

長崎国際大学

九州保健福祉大学

崇城大学

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個 人(50音順)

相見 則郎

赤井 周司

赤池 昭紀

浅野 真司

池上 四郎

池谷 裕二

池川 信夫

石川征四郎

石原 雄二

市川 和孝

伊藤 敬一

伊藤 文昭

内海 英雄

太田 茂

荻田 健

荻田喜代一

大和田智彦

奥 直人

笠原 忠

金岡 祐一

川㟢 敏祐

北 泰行

北川 勲

木村 栄一

久保 陽徳

粂 和彦

後藤佐多良

小林 利彦

小松かつ子

斉藤 和季

櫻井 宏明

佐治 英郎

佐藤 公道

柴崎 正勝

嶋田 一夫

須賀 哲弥

菅山 修二

杉原多公通

杉本 八郎

杉山 弘

杉山 雄一

高野 博之

高柳 輝夫

田中 裕

辻 勉

寺尾 允男

富岡 清

内藤 猛章

中山 仁

長友 孝文

中西 守

南原 利夫

西島 正弘

野村 靖幸

野本 明男

橋田 充

早川 和一

林 正弘

平岡 哲夫

平井 功一

福田 英臣

藤岡 弘道

藤多 哲朗

藤田 雅俊

藤本 克己

前仲 勝実

益子 高

宮田 直樹

村上 泰興

村瀬 清志

望月 正隆

山崎 達美

山田 清文

山田 静雄

山元 弘

横山 祐作

吉松賢太郎

渡辺 和夫

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[編集後記]

年度初めのご多忙の最中、ご執筆頂きました皆様に厚くお礼申し上げます。助成を受けられた

研究の原点、その後の発展、さらには将来への展望とそれぞれに含蓄のあるお話を興味深く読ま

せていただきました。読者の方々にも資するところが多いことと思います。

特別寄稿をお寄せ下さいました藤多哲朗先生には財政難の財団に格別のご配慮を賜り、感謝申

し上げております。薬学会の長老に若き日のご経験を語って頂く機会を得ましたことは、若手中

堅研究者の励みになることと考え、うれしく思います。私事ですが、先ごろパリで40年前の博士

研究員時代にお世話になったパストゥール研究所の先生の90歳誕生日記念シンポジウムが行われ

ました。文字通りご高齢の先生がかつての教え子や共同研究者の講演に最前列で熱心に耳を傾け

て的確な質問をされていたお姿に感銘を受け、現役引退後はかくありたい、と思ったものでした。

私は平成21年から財団の事業企画の一環として薬奨ニュースの編集を担当させていただきまし

たが、このたび任を退くことになりました。これまで快くご執筆をお引き受け下さいました先生

方に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

(2015年5月 後藤佐多良記)

表紙写真:夏の長良川夕景

金華山の岐阜城と沈みかける満月、川に浮かび鵜飼を

待つ踊り船、乗合船・・・昔のままで心癒される。

長良川河畔にて 村瀬清志 撮影

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(公財)薬学研究奨励財団

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-12-15

日本薬学会長井記念館2F

TEL 03-3407-4047 FAX 03-3407-4162 発 行 人 寺 尾 允 男

E-mail [email protected] 編集責任 後 藤 佐多良

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