No.178 October · 2020. 9. 30. · 小学校147年間、中学校...

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はじめまして、こんにちは 特 集 新章 金田義務教育学校 新校舎が落成し、2学期から新たな学び舎での日々 が始まった「金田義務教育学校」。小・中学校教育を一 本化した新たな教育の形や新校舎の特徴に迫ります。 新校舎で始まった 2 学期。「金田 義務教育学校」では小・中学校が 1 つになり、前期・後期課程の児童 生徒が同じ教室で勉強をするこれ までにない光景が広がっています。 No.178 October 2020 10

Transcript of No.178 October · 2020. 9. 30. · 小学校147年間、中学校...

  • はじめまして、こんにちは

    特 集 新章 金田義務教育学校新校舎が落成し、2学期から新たな学び舎での日々が始まった「金田義務教育学校」。小・中学校教育を一本化した新たな教育の形や新校舎の特徴に迫ります。

    新校舎で始まった2学期。「金田義務教育学校」では小・中学校が1つになり、前期・後期課程の児童生徒が同じ教室で勉強をするこれまでにない光景が広がっています。

    No.178October

    2020

    10

  •  

    小学校147年間、中学校

    72年間の歴史に幕を閉じ、県

    内3校目となる義務教育学校と

    して、今年4月から開校した「金

    田義務教育学校」。新校舎の工事

    の遅れから、1学期は旧校舎で

    授業が行われ、令和2年8月31

    日から新校舎での義務教育課程

    がスタートしました。

     

    1~6年生を「前期課程」、7

    ~9年生を「後期課程」とし、区

    切りは今まで通りの「6年ー

    3年

    制」を採用。全校児童生徒657

    人、教職員60人以上が一つの

    校舎で学校生活を送ります。

     

    金田義務教育学校が設立され

    る時に、貫かれた一つの考え方が

    あります。それは「今までつない

    できたものをできる限り残して

    いく」ということ。校舎が変わっ

    ても校歌は学校名の変更のみで、

    旧中学校の校歌を生かすなど、

    旧小中学校の伝統が引き継がれ

    ています。

     

    義務教育学校の規模としては

    県内最大の「金田義務教育学校」。

    町全体のモデルとなる新たな教

    育の形で歩みが進められます。

    待望の新校舎が完成し、新しい学校へ生ま

    れ変わった「金田義務教育学校」。

    2学期から全校児童生徒が新たな空間での

    学校生活を迎えました。

    ここで県内最大規模かつ先駆的な学校教育の

    スタートラインをお伝えします。

    待望の新校舎

    誕生金田義務教育学校

    県内最大の「義務教育学校」

    伝統を受継ぎ新たな教育へ

    KCESKanadaCompulsoryEducationschool

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    はじめまして、こんにちは

    特 集 新章 金田義務教育学校

  • 教育の幅広げる

    新制度の可能性

    「改正学校教育法」で新たに誕

    生した学校種「義務教育学校」。

    小・中学校教育との違いや、義務

    教育学校が広げる可能性など、

    「金田義務教育学校」の根幹であ

    る新たな教育制度に迫ります。

    そもそも 義務教育学校 とは何か。

    ❷Compulsory Education School

    Pursuing a new way of school

    金田義務教育学校▶ DATA

    施設概要

    所在地▶福智町金田1283番地電話番号▶0947-22-9007敷地面積▶52145.57㎡校舎▶鉄筋コンクリート造3階建て体育館・プール▶鉄筋コンクリート造平屋建て延床面積▶15916.57㎡事業費総額▶53億円(予定)

    ↑旧小・中学校の校章を組み合わせて、桜が咲く学び舎でしっかりと学び、社会に羽ばたいてほしいという願いを込めてこの校章に決まりました。

    新しくきれいになった教室に「はいっ」という元気な声が響き渡る。

    見据え、全教職員が共通理解の上

    で教育ができるという点です。これ

    までの小学校6年間を「前期課程」、

    中学校3年間を「後期課程」と区分

    しながらも、学校や地域の実態に応

    じて、今までよりもさらに柔軟な教

    育活動を実施することができます。

     

    義務教育学校の持つ利点を生か

    し、国内では新たな独自教科を作

    成したり、「4年-

    5年制」や「4年

    -

    3年-

    2年制」など「6年-

    3年制」

    にとらわれない区切りの学校もあり

    ます。このように、柔軟な教育を

    行える「義務教育学校」が持つ可能

    性は幅広く、新たな環境に馴染↖

     

    これまでの「小学校、中学校」か

    ら「義務教育学校」と呼ばれる学校

    種で舵を切った金田義務教育学校。

    そもそも、義務教育学校とは、平成

    28年施行の「改正学校教育法」で設

    置可能となった新たな学校種で、小

    学校、中学校と並ぶ3つ目の学校形

    態を指します。全国では令和2年5

    月1日現在で126校、福岡県内で

    は4校が義務教育学校として開校

    しています。

     

    では、小・中学校と義務教育学校

    とは何が違うのでしょうか。その最

    大の相違点は、一人の校長のもと、

    一つの教職員集団が9年間を通して

    同じ「教育方針」と「教育目標」を↘

    めず不登校などの原因となる「中1

    ギャップ」の解消や「タテの関係」の

    強化、小・中学校の枠を超えた授業

    の実施が可能になります。また、校

    舎が同じ利点を生かした異学年交

    流も積極的に進めることができる

    ため、児童・生徒らの人間関係の広

    がりや上級生のリーダーシップの醸

    成と、その発揮が期待されています。

     

    このように、校長や教職員、教育

    方針など、さまざまなことが一本化

    し、9年間を「1つの義務教育」と

    して捉えることでより質の高い教育

    を目指す学校の在り方を導入した

    金田義務教育学校は今後、福智町

    の将来への可能性を秘めた教育モ

    デルとして時を刻んでいきます。

    国内で先駆的な義務教育学校

    新形態で柔軟な教育を目指す

    利点を生かした無限の可能性

    未来の町教育モデル本格始動

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    1年 2年 3年 4年 5年 6年 1年 2年 3年

    1年

    義務教育学校長●後期課程

    入学

    入学

    卒業

    卒業進  級

    2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年

    入学 卒業

    ● 前 期  課 程

    義務教育学校の場合

    小・中学校の場合

    小学校長

    ● 小・中学校と義務教育学校の教育制度のイメージ

    中学校長   

    Ask about your experiences

    宗像市立大島学園

    西島 潔 校長Profile

    平成28年、宗像市立城山中学校の教頭に就任。平成31年、宗像市立大島学園副校長を経て、令和2年から宗像市立大島学園校長に就任。教師生活28年、座右の銘は「幸せは、準備された心に訪れる」

    大島学園は平成18年度に宗像市で初の施設一体型の小中一貫教育校として開校後、平成30年4月に県内2番目となる義務教育学校「宗像市立大島学園」として誕生しました。義務教育学校にしたことで、教科担任制や異学年交流、地域と連携した授業など教育の幅が広がりました。例えば、運動会の応援指導などでは、異学年交流で子どもたちの人間関係の幅が広がります。また、地域と連携した行事は、地元のお年寄りのかたを招いての敬老会や家庭科の授業で制作したオリジナルの法被を着て参加する大島山笠など、人と関わる力や郷土愛などを育んでいます。小中学校制だとなかなか実現できない授業が、義務教育学校ではできる。1人の校長、1つの教育目標など一本化することで質の向上や高度な教育が実践できているのではないかと感じます。

    宗像市立大島学園の実例から義務教育学校の成果を学ぶ

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    はじめまして、こんにちは

    特 集 新章 金田義務教育学校

  • KCESKanadaCompulsoryEducationschool

    KCESKCESKan

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    Compulsory

    Education

    school学習習慣や社会性を身に着けることができ

    る学習環境や、様々な個性をも

    つ生徒に細やかなサポートができる環境を

    備えた「金田義務教育学校」。

    ここでは、その中でも新校舎の特色ある9つ

    の空間をご紹介します。

    新校舎の特色

    9のスペース1F

    2F

    3F  大きく3つの柱で設計された

    新校舎。生徒の安全と学習意欲、

    そして様々な人たちとの交流を

    深める新たな教育の形への緻密

    な設計が施されています。一つ目

    の柱が「安全安心な学校」。職員

    室を昇降口の隣に配置し、防犯に

    対応した設計がなされています。

    保健室は成長段階に配慮し前

    期・後期課程に1室ずつ設置。ま

    た、室内から屋外までがユニバー

    サルデザインとなっています。

    二つ目の柱が「地域に愛される学

    校」。学校を訪れた際に、各階に

    交流の場や展示エリアが配置さ

    れ児童生徒の活動を感じること

    ができます。三つ目の柱が「楽し

    く豊かな学びができる学校」。各

    専門教科を学ぶ特別教室や少人

    数教室を多数配置。他にも可動

    式間仕切りを用いた教室もあり、

    時代とニーズに対応できる設備

    となっています。このように「地

    域と共に成長し、安全で豊かな

    学校」をコンセプトに特色ある機

    能を多く兼ね備えています。

     

    そして現在、整備中のグラウ

    ンドは、200mと150mの

    トラックが2面取れる広さに整

    備されます。グラウンドは、2

    学期中に工事を完了し、授業で

    の活用を開始する予定です。

    地域と共に成長し、安全で

    豊かな学校をコンセプトに

    ◀舩川龍之介くん

    ◀下䑓雛依さん

    ◀原亜琉虎くん

    ◀丸山恋士くん

    ◀松﨑優斗くん

    大場希咲さん▶

    ◀辰嶋開くん

    大井真翔くん▶

    1234

    5

    6

    7

    8 9

    ▶原凛乃夢さん

    給食センター新たな機材の導入などで、作業効率がこれまで以上に良くなり、様 な々メニューの給食

    を作ることも可能となりました。他にも、2階から1階の調理場を見学できる設計で、施設見学などで使用できます。

    日当たりも良く、福智山が見えるプールは、深さ60㎝のプールと深さ100㎝の4

    コースある25mプールを完備。深さの違う2つのプールがあり、体の成長に合わせた授業ができます。

    1 後期課程の生徒が新校舎に入ったのは2学期初日が初めて。始業式後、校内を見学し、特別教室の場所や設備などを確認。2 オープンスペースで学習に励む姿も金田義務教育学校の新校舎ならではの風景。3 昼休みの後には、全校児童・生徒が手分けして広い校舎を隅々まで丁寧に掃除。

    教室各教室や少人数教室などは、木をベースとした、温かみがあり、落ち着いた空間

    となっています。また、各クラスの教室に1つモニターが設置され、2学期の始業式はリモートで行われました。

    プールホール

    中庭3か所ある中庭は、理科の授業や委員会活動の場として利用します。また、光を取り込みやすくし、学校を明るくする効果もあります。昼休みに開放し、交流の場としても今後活用する予定。

    図書室仕切りがなく開放感があり、校舎の中央にあることで、異学年との交流や児童生徒

    たちの居場所になる「知的交流拠点」としています。木を基調にした居心地の良さをベースに作られています。

    オープンスペース

    音楽室生徒一人ひとりに合唱や演奏の指導ができるよう階段状のステージを設置。隣に

    は個別レッスン室が完備され、3階から見渡す雄大な眺望の中、吹奏楽の練習をすることができます。

    体育館校舎の両脇に大体育館と小体育館の2つがあり、大体育館は全校児童・生徒が収

    容可能な広さがあります。他にも、大体育館には武道場も完備され、主に後期課程の授業などで利用します。

    2階と3階の中廊下にあるオープンスペースは、児童生徒同士の語らいや安らぎ、読書など憩いの場として利用したり、勉強などで教師へ相談や質問する学習の場としても活用されます。

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    校舎入り口から下駄箱を過ぎると3階まで吹き抜けの大ホールが広がります。地

    域のかたや異学年の交流の場として活用され、将来的には、昼休みなどを使っての吹奏楽部の演奏も計画中。

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    Representative Interview

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    後期課程▶生徒会長

    前期課程▶児童運営委員長

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    はじめまして、こんにちは

    特 集 新章 金田義務教育学校

    児童運営委員長(6年)

    生徒会長(9年)

    川か わ

    西に し

    彩さ ら

    紗さ

    さん

    野の

    寄よ り

    姫き

    星ら ら

    さん

    「後期課程の部活する姿がかっこいい」と感じました!

    「こんな9年生になりたい」と言われる見本を目指して

    校舎に入ってすぐのホールの広さに驚きました。後期課程の先輩方と廊下などですれ違うとき最初は緊張しましたが、優しく声をかけてくれます。放課後に部活をしている姿を見て、かっこいいと感じ憧れる存在です。

    とにかく広くてきれいな各々の教室や校舎を見て、新たな気持ちで受験にむけて頑張ろうと思いました。また、1~6年生から見られる目も増え、しっかりとお手本になり「こんな9年生になりたい」と言われるよう学校生活を送ります。

    児童運営委員長

    生徒会長

    児童・生徒の代表として学校づくりを担う2人に今後の学校生活について伺います。

    インタビュー 初代校長が示した

    学校づくりの指針

    新校舎で始まった「金田義務

    教育学校」の学校生活での

    数々の疑問。また、初代校長

    の柴田徹校長がどのような教

    育ビジョンを掲げ、学校づく

    りをするのかを伺いました。

    金田義務教育学校

    柴田 徹 校長Profile

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    2校から1校で 学校生活 にも変化が―。

    ただし、前期課程では5時間授業の日もあり、15時20分で下校する日もあります。

    平成27年、糸田町立糸田中学校の教頭に就任。平成30年、福智町教育委員会の主幹指導主事として2年間務める。令和2年、福智町立金田義務教育学校初代校長に就任。教師生活31年、座右の銘は「継続は力なり」。

    子どもたちの発達段階なども考慮し、体育会は別々で行います。また、他の学校行事は検討中です。

    制服は旧金田中の制服デザインのまま校章の部分を新しい校章へ変更。(8・9年生は従来のまま)

    休み時間・給食時間で授業時間差を調整しています。将来的には5・6年生も50分授業にする予定。

    これまで通り変更はなく、旧小学校の6年生と旧中学校の2年生の時期に修学旅行を実施します。

    また、今までどおり転居などによる転出入も可能です。ただし、6年生から7年生へ進級する際に「前期課程修了式」を執り行います。

    登下校の時間は異なるの?体育会はどうなるの?

    制服はどうなるの?

    授業時間はどうなるの?修学旅行は後期課程だけ?

    転出・転入学はできるの?入学・卒業式はどうなるの?

    学校生活の疑問

    &uestion

    nswer

    学校全体で登校時間は8時25分まで、下校時間は16時10分に統一しました。

    前期課程の体育会は秋季、後期課程の体育会は春季と別々で実施します。

    これまでどおり1~6年生は私服、7~9年生は旧金田中の制服です。

    今までどおり1~6年生は45分授業、7~9年生は50分授業のままです。

    6年生で「前期修学旅行」、8年生で「修学旅行」を行います。

    前期課程修了後、私立や県立中学校の受験もできます。

    学校へ入学する1年生の入学式、巣立つ9年生の卒業式のみになります。

    小中学校が一つとなり、登下校の時間や学校行事など学校生活にも変化がありました。ここではそんな学校生活の疑問についてQ&A方式でお答えしていきます。

     

    旧金田小学校の意思を継いで

    掲げた本校の教育目標「かしこく・

    なかよく・たくましい金田っ子の

    育成」には、平成18年に経産省が

    発表した「社会人基礎力」の要素

    が含まれています。「かしこく」に

    は考え抜く力、「なかよく」には

    チームで働く力、「たくましく」に

    は前に踏み出す力。人が社会で生

    きていく上で必要な要素を育む

    ための目標が込められています。

     

    教育目標を達成するため、義

    務教育学校での初年度は、「自分

    から勉強に向かう心を育てるこ

    と、みんながあいさつできるこ

    と、時間を守ること、掃除を一

    生懸命取り組むこと」の4目標

    を設定。社会で生きる力を育て

    るためにも、まずは教職員全員

    で児童生徒たちと真正面から接

    していきたいと考えています。

     

    子どもたちはたくさんの大人

    との出会いから刺激を受けて「社

    会人基礎力」を身に着けていく

    ため、保護者や地域との連携が

    必要不可欠だと感じています。

    保護者や地域の皆さまには、学

    校外の場所でも登下校時の見守

    りや声かけなど、様々な形で子

    どもたちの成長を応援していた

    だければと思います。

     

    歩み始めて約半年の金田義務

    教育学校ですが、ゆくゆくは地域

    や町民のかたに「この学校があっ

    てよかった」と言われるような学

    校づくりを目指しています。その

    ためにも、旧校の良き伝統を受

    け継ぎつつ「トライ&エラー」でこ

    の町の教育の根幹を担う学校の

    礎を築いていきたいと思います。

    家庭や地域と連携強化して

    教育の礎築く「学校づくり」

    9年間の教育活動を通して

    社会人基礎力の向上目指す

    9

    2010120102-320104-520106-720108-9