IPSJ/ITSCJ - No. 87 · 2014. 7. 30. · プログラム言語Rubyの標準化 SC 22専門委員会...

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No. 87 2010 年 9 月 標準活動トピックス: プログラム言語 Ruby の標準化 ....................................................... 2 吉田 秀逸(独立行政法人 情報処理推進機構) 2010 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール .............................................. 4 最近の国際会議から: JTC 1/WG 6(Corporate Governance of IT)会議報告 ........................................... 5 平野 芳行 JTC 1 SWG on Directives 会議報告 ........................................................... 5 木戸 彰夫(日本アイ・ビー・エム(株)) JTC 1 SWG on Planning 会議報告 ............................................................. 6 鈴木 俊宏(日本オラクル(株)) SC 7(Software and systems engineering)総会報告 ........................................... 7 山本 喜一(慶應義塾大学) SC 31(Automatic Identification and Data Capture Techniques)総会報告 ...................... 9 小橋 一夫(一般社団法人 IT セキュリティセンター) SC 32(Data Management and Interchange)総会報告 ..........................................10 鈴木 健司(東京国際大学) SC 34(Document Description and Processing Languages)総会報告 ............................12 小町 祐史(大阪工業大学) SC 38(Distributed Application Platforms and Services (DAPS))総会報告 ....................14 鈴木 俊宏(日本オラクル(株)) 解説: ISO/IEC JTC 1/SC 7/WG 26 の概要 ............................................... 15 西 康晴(電気通信大学) 第 25 回規格総会の報告 ............................................................... 17 2010 年度 標準化功績賞および貢献賞の表彰 ............................................. 18 国際規格開発賞の表彰 ................................................................ 20 声のページ: 標準化活動について ........................................................................21 矢ヶ崎 陽一(ソニー(株)) 国際標準化活動における 2 つの役割 ..........................................................21 山崎 哲(工学院大学) 編集後記 ............................................................................ 22

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Page 1: IPSJ/ITSCJ - No. 87 · 2014. 7. 30. · プログラム言語Rubyの標準化 SC 22専門委員会 委員 吉田 秀逸(独立行政法人 情報処理推進機構) 1. はじめに

No. 87 2010 年 9 月

目 次 標準活動トピックス:

プログラム言語 Ruby の標準化 ....................................................... 2 吉田 秀逸(独立行政法人 情報処理推進機構)

2010 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール .............................................. 4

最近の国際会議から:

JTC 1/WG 6(Corporate Governance of IT)会議報告 ...........................................5 平野 芳行

JTC 1 SWG on Directives 会議報告 ...........................................................5 木戸 彰夫(日本アイ・ビー・エム(株))

JTC 1 SWG on Planning 会議報告 .............................................................6 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

SC 7(Software and systems engineering)総会報告 ...........................................7 山本 喜一(慶應義塾大学)

SC 31(Automatic Identification and Data Capture Techniques)総会報告 ......................9 小橋 一夫(一般社団法人 IT セキュリティセンター)

SC 32(Data Management and Interchange)総会報告 ..........................................10 鈴木 健司(東京国際大学)

SC 34(Document Description and Processing Languages)総会報告 ............................12 小町 祐史(大阪工業大学)

SC 38(Distributed Application Platforms and Services (DAPS))総会報告 ....................14 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

解説: ISO/IEC JTC 1/SC 7/WG 26 の概要 ............................................... 15 西 康晴(電気通信大学)

第 25 回規格総会の報告 ............................................................... 17

2010 年度 標準化功績賞および貢献賞の表彰 ............................................. 18

国際規格開発賞の表彰 ................................................................ 20

声のページ:

標準化活動について........................................................................21 矢ヶ崎 陽一(ソニー(株))

国際標準化活動における 2つの役割 ..........................................................21 山崎 哲(工学院大学)

編集後記 ............................................................................ 22

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<標準活動トピックス> プログラム言語 Ruby の標準化

SC 22 専門委員会

委員 吉田 秀逸(独立行政法人 情報処理推進機構)

1. はじめに

プログラム言語 Ruby は,1993 年ごろから,日本の

まつもとゆきひろ氏を中心に,コミュニティを主体に

開発されてきたオブジェクト指向スクリプト言語で

あり,その処理系はオープンソースソフトウェアとし

て流通している.

プログラム言語には,FORTRAN,COBOL など欧米の

技術者,機関,国などが開発を始め,国際的に認知さ

れている言語は多数あるが,日本発のものは無く,

Ruby が初めて国際的に広く認知された.

Ruby は,オブジェクト指向言語としての豊富な機

能と,スクリプト言語としての簡便さとを併せ持ち,

高機能なアプリケーションを簡潔なコードで記述で

きる等の特長を持つ.この特長から,生産性の高いプ

ログラム開発が可能であるとの評価が高く,Twitter

など,国際的に有名な数多くのアプリケーションやネ

ットワークシステムの開発に用いられている.

このように,日本の内外を問わず多くの分野で利用

されている Ruby 言語であるが,国内的に,あるいは

国際的に承認された規格は存在していない.

国内のみならず国際的な市場において Ruby の適用

が広がり出した 2000 年代後半から,市場における混

乱を最小限にとどめ,政府機関等公的機関,又は一般

ユーザに対して,より一層の利用促進を図るためには,

Ruby 言語仕様の規格化が必要であると考えられるよ

うになった.

一方,規格化は技術仕様を一時的に固定するもので

あり,世界レベルで多数の開発者が共同で自由に,仕

様を改善したり,機能を拡張したりできるオープンソ

ースソフトウェアとしてのダイナミックなイノベー

ションが止まるのでは,と不安を持つ Ruby 開発者,

コミュニティ関係者もいた.

こうした環境下で,2008 年から,(独立行政法人)

情報処理推進機構(IPA)を主体に,Ruby 言語の標準

化(国内規格化,及び,国際規格化)を進めてきた結

果,この度,規格化される目処が立った.ここでは,

Ruby 言語の規格化に向けた,標準仕様書の作成,国

内規格化,及び,国際規格化に向けた活動について説

明したい.

2. 標準仕様書の作成

2.1 Ruby 標準化検討 WG(ワーキンググループ)

Ruby 言語の処理系は,オープンソースソフトウェ

アとして開発,流通しており,市場には,複数の処理

系が存在しているが,Ruby 言語自体を規定した標準

仕様書は存在していない.

そこで,2008 年 11 月に,IPA は,Ruby 言語の標準

仕様の整理,標準仕様書作成,標準仕様書をベースに

した国内,及び国際規格化を目的に,IPA 内に Ruby

標準化検討 WG を発足させた.

この WG は,国内規格化の活動における J IS 原案作

成団体となるため,プログラム言語の規格化に造詣の

深い ISO/IEC JTC 1/SC 22 専門委員会の元国内委員長

の中田育男筑波大学名誉教授を委員長に,委員には,

まつもとゆきひろ氏を含む Ruby 言語処理系開発者か

ら 4 名,Ruby 利用企業から 4 名,学識経験者他の中

立委員 4名のバランスを取った構成となっている.

2.2 標準仕様書の作成

中田委員長監修のもと,Ruby標準化検討WGは,Ruby

言語処理系の開発企業など,外部からの協力も得て,

次の方針のもとに,標準仕様書の執筆を進めた結果,

2009年11月に約300ページの英語版の標準仕様書(ド

ラフト)が完成した.

・ 最も利用されている既存処理系をベースに言語

仕様を成文化:市場に存在する様々な処理系の

うち,最も広く利用されている Ruby 処理系バー

ジョン 1.8 をもとに仕様の成文化を実施した.

ただし,現在開発が進められている Ruby 処理系

バージョン 1.9 で変更される可能性がある部分

については規定しない等,将来の進化を妨げな

いように配慮した.

・ 記述範囲は言語の中核及び必須ライブラリに限

定:既存の Ruby 言語処理系は,数多くの機能を

含んでいるが,標準仕様の成文化では Ruby 言語

の中核,及び,基本的なプログラムの記述に必

要な機能又は広く利用されているライブラリ機

能だけを記述した.

・ 英語での執筆:海外の Ruby 開発者,コミュニテ

ィ関係者の意見も反映するべく英語で執筆した.

Ruby 言語は,開発者の利便性を高めることを最大

の目的として設計されており,言語仕様自体の簡潔さ,

及び,処理系実装の簡便さより,アプリケーション開

発における開発効率及び直感的な動作記述が優先さ

れている.

したがって標準仕様書は,Ruby 言語の構文規則及

び意味規則を曖昧性なく規定するために,若干,複雑

なものとなっており,その作成は,極めて困難であっ

たことを記しておきたい.

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2.3 標準仕様は Ruby コミュニティからのコメントを

収集,反映した上で完成

Ruby 言語は世界規模のコミュニティによって開発

されており,この標準仕様書が国際的に広く受け入れ

られるためには,Rubyコミュニティによるレビュー,

意見反映が必須であると考えたRuby標準化検討WGは,

2009 年 12 月から 2010 年 1 月にかけ,標準仕様書(ド

ラフト)を全世界の Ruby コミュニティに対して公開,

広くコメントを募集した.

この活動は,日本のみならず,全世界の Ruby コミ

ュニティから,快く受け入れられ,100 件を超えるコ

メントが寄せられ,その半数は海外からのものであっ

た.技術的な拡張,不明点などのコメントに加え,仕

様記述の厳密性についてのコメントも多数寄せられ

(コメント全体の約 70%),コミュニティの標準化に

対する関心の高さを窺い知ることができた.

また,標準仕様書(ドラフト)を英語で公開したこ

とについて感謝する声が寄せられ,コミュニティによ

るレビューによって標準仕様書の完成度を向上させ

られただけでなく,Ruby の規格化について,コミュ

ニティの理解を深め,規格化によりイノベーションが

停まるのでは?といった不安を解消する上でも意義

のある活動となった.Ruby コミュニティの開発メー

リングリストにおける議論で標準仕様書(ドラフト)

の記述が引用されるなど,開発コミュニティへの影響

も出始めている.

コミュニティからのコメントを反映して,2010 年 2

月に英語版の標準仕様書が完成した.

3. 国際規格化に向けた活動(ISO/IEC JTC 1/SC 22

への働きかけ)

日本の SC 22 専門委員会の了承の下,2008 年,2009

年の二度にわたり,ISO/IEC JTC 1/SC 22 総会におい

て,IPA における標準仕様書作成など,Ruby 言語の国

際規格化に向けた活動状況,将来計画などを,以下の

ように紹介しており,本年 9月の総会においても進捗

状況を報告予定である.

3.1 2008 年 9 月:ミラノ(イタリア)の SC 22 総会に

て国際規格化に向けた意向を紹介

Ruby 言語の国際規格化を目指した活動を,日本に

おいて,IPA が計画していることの紹介を行った.

国際規格化までの期間が短い Fast Track 提案を考

えていることを説明し,SC 22 に対して WG 設立の依

頼はせず,将来の日本からの国際規格化の提案に対す

る協力を各国へ依頼し,各国の委員,及び,リエゾン

の代表から好意的なコメントが寄せられた.

3.2 2009 年 9 月:デルフト(オランダ)の SC 22 総会

にて国際規格化に向けた作業進捗を説明

日本においては,2010 年末を目標に Ruby 言語仕様

の国内規格(JIS)化を実現し,この JIS を Fast Track

手続きにより JTC 1 に国際規格案として提案し,2011

年までに国際規格としての投票にかける計画を持ち,

この作業が具体的に進んでいることなど,以下を説明

した.

IPA が主催する Ruby 標準化検討 WGは 2008 年 11 月

に発足し,2009 年末までに英語版の標準仕様書(ドラ

フト)を完成させるべく活動していることを報告し,

2010 年の早い時期に SC 22 のメンバに対して,この

標準仕様書(ドラフト)を国際規格化提案の事前情報

として配布する予定等,規格化に向けた具体的な活動

の進捗状況他を説明した.

これら具体的な活動の報告はSC 22の各国代表に極

めて好意的に受けとめられ,『IPA に対して,2010 年

3 月ころに Ruby の国際規格化を議論する会合を開く

ように』とする決議が採択された.

3.3 2010 年 2 月:SC 22 メンバに対して英語版の Ruby

言語標準仕様書を事前配布

2010 年 2月に完成した Rubyコミュニティからのコ

メントを反映した英語版の Ruby 標準仕様書を,SC 22

の各国代表に対して,2011 年に予定している JTC 1

に対する国際規格化に向けた Fast Track 提案の事前

情報提供として,配布した.

なお,この仕様書に対して日本の SC 22 専門委員会

の石畑委員長から,Ruby 標準仕様書の品質を向上さ

せるための約 250 件に上るコメントが寄せられた.

3.4 2010 年 4 月:ニューヨーク(米)にて Ruby 標準仕

様の説明会

2009 年 9月の SC 22 総会での,IPA に対する『Ruby

の国際規格化を議論する会合を開くように』とした決

議に対応して,2010 年 4 月に,ニューヨークにて,

Ruby 言語の標準仕様書,JIS 原案の作成状況,今後の

計画等につき,説明会を開催した.

説明会に参加した SC 22の Jaeschke議長から『Ruby

の国際標準化について,日本は 2008 年,2009 年と過

去 2回の SC 22総会で意向,計画,進捗状況を紹介し,

今年,事前情報提供という形で Ruby 標準仕様書を各

国に配布したことは,意向だけでなく,規格化に向け

た具体的作業の進展という点で,各国に好意的に受け

とめられている』との発言があった.Ruby 言語の国

際規格化に重要な役割を果たす SC 22 議長から,我々

の活動に賛同の意思表示を得られたことは,将来の国

際規格化の投票に好影響をもたらすと考えられる.

なお,この説明会には,米国 Ruby コミュニティの

メンバも参加しており,コミュニティ関係者に,国際

規格の重要性に対する理解が深まり,今後,国際規格

化への関わり合いを深めていこうという意識が高ま

った等の副次的効果もあった.コミュニティを主体と

した Ruby の開発,利用が,今後は,より国際規格を

意識したものとなっていくことが期待できる.

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4. 国内規格化に向けた活動

JIS 原案作成団体である Ruby 標準化検討 WG は,英

語版の標準仕様書が完成した 2010 年 2 月から,Ruby

言語の JIS 原案作成を始め,英語版の標準仕様書を日

本語に翻訳,JIS 原案としての表現の修正,体裁を整

え,2010 年 4 月末に JIS 原案の原稿を完成させた.

この原稿に対して,2010 年 5 月から日本規格協会

の規格調整委員による 2 回の事前レビューが行われ,

1 回目のレビューでは 273 件,2 回目は 199 件に上る

コメントが寄せられた.これら全 472 件のコメントに

ついて JIS 原案作成団体(Ruby 標準化検討 WG)にて検

討し,必要な修正を原稿に施し,2010 年 8 月に,JIS

原案として完成した.

現在,2010 年度末までに JIS として制定されるこ

とを目指して,JIS化の手続きを実施中である.なお,

日本の SC 22 専門委員会に対しても,標準仕様書の作

成状況,JIS 化の進捗状況などを,定期的に報告し,

種々助言を受けながら作業を進めている.

5. 今後の予定

5.1 国際規格化に向け,JTC 1 に対する Fast Track

提案

JIS 原案の元となった英語版の標準仕様書に,JIS

化時の変更を反映し,Ruby 言語の国際規格案として

完成させ,JIS 制定後,直ちに,JTC 1 に対して,Fast

Track 提案することを目指している.

その後は,JTC 1 として 5ヶ月の DIS 投票にかけら

れ,DIS 投票時に寄せられたコメントに対する検討会

議の開催,会議結果に基づく規格案の修正,JTC 1 へ

の FDIS としての再提出,2ヵ月の FDIS 投票を経て最

終的に国際規格として承認されることになる.

5.2 国内規格,国際規格のメンテナンス

世界規模のコミュニティによって開発されている

Ruby 言語は,今現在も発展途上にあり,絶え間なく

機能追加が行われており,それらの新機能や,今回の

標準仕様に含め得なかった機能などを,規格に反映

(追加,修正)していくことは必須である.

Ruby の標準化検討 WG は,Ruby の国際規格化後も,

JIS 及び,国際規格の改正などのメンテナンス活動を

継続していく予定である.

6. おわりに

Ruby 言語は,全世界の多数の開発者(コミュニテ

ィ)の協力の下に開発が進められている言語であり,

その処理系はオープンソースソフトウェアとして,ソ

ースコードが公開されている.規格化は,オープンソ

ースソフトウェアの自由なイノベーションを阻害す

るのでは?というコミュニティの抱く不安を解消す

るために,早急に国際規格化を実現し,その後も,JIS

及び国際規格をコミュニティの開発する自由なイノ

ベーションと同期して改正していくことが重要と考

えている.

プログラミング言語の国際規格には,FORTRAN,

COBOL など欧米の機関,国が開発主体となったものが

多数あるが日本発のものは無く,この度,初めて日本

生まれの Ruby 言語が国際規格化される目処が立った.

これまでの関係者の多大な支援に深く感謝したい.

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<2010 年 9 月以降 国際会議開催スケジュール>

JTC 1 2010-11-08/13 Belfast,UK

JTC 1/WG 6

2010-09-15/17 Johannesburg,ZA

SWG-Directives

2010-09-08/10 New York,US

SC 2 2011-04-15 Helsinki,Finland

SC 6 2010-10-01 London,UK

SC 7 2011-05-22/27 Paris,France

SC 17 2010-10-06/08 高松,日本

SC 22 2010-09-13/15 Ottawa,Canada

SC 23 2010-12-03 Winterthur,Switzerland

SC 24 2011 South Dakota,US

SC 25 2010-10-22 Seattle,WA,US

SC 27 2010-10-10/11 Berlin,Germany

SC 28 2011-06 杭州,中国

SC 29 2011-07-23 Torino,Italy

SC 31 2011-05-26/27 Vienna,Austria

SC 32 2011-05-16,20 Hawaii,US

SC 34 2010-09-06/10 東京,日本

SC 35 2011-02-21/25 Bellevue/Seattle,US

SC 36 2010-09-06,12 State Collage, PA,US

SC 37 2011-07-11/12 東京,日本

SC 38 2010-09-27/10-01 New York,NY,US

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<最近の国際会議から>

■ JTC 1/WG 6(Corporate Governance of IT/IT コ

ーポレートガバナンス)会議報告

JTC 1/WG 6 小委員会

主査 平野 芳行(日本電気(株))

1. 開催場所: ヘルシンキ(フィンランド)

2. 開催日時: 2010-05-03/05

3. 参加国数/出席者数: 11 カ国,3団体/23 名

主査(J.Graham,豪),幹事(A.Mckey,豪),豪(3),

英(1),韓(1),SWE(2),スペイン(1),US(1),シンガ

ポール(1),ZA(2),NL(1),フィンランド(5),日(1:

平野芳行),ISACA(1),itSMF(1),SC27

4. 結果

(1) ISO/IEC 38500( Corporate governance of IT(以

下 CGIT と略す)の改訂

CDの期限を9ヶ月延長するRecommendationをJTC 1

へ出す.また,元 SC 7 の案件のために付いていた表

題 の サ ブ タ イ ト ル 「 Software and systems

engineering」を削除すること,プロジェクト番号

29151 を 38500 に変更する Recommendation(38500 の

改訂に一本化)を提出する.今回の審議に基づく WD

案が 5月末に提出され,WG 6 内での informal comment

を反映して 6月 10 日に 1stWD を提出するとのこと.

3 ヶ月のコメント期間を経て,9 月の会議で議論す

るとのことになった.

(2) ISO/IEC29184( CGIT- Implementation Guide)

今回のコメントに基づいたWDを 6月15日に再提出

することになった.(今回不参加)

(3) NP20015 (CGIT - Framework & Model)

提案されたモデルが ISO/IEC38500 と異なっていた

ため,日本を含めた数カ国から整合性の不備を指摘さ

れた.結果として,モデルの作成方針を決め,

ISO/IEC38500 と調和したモデルに見直すことが了承

された.

(4) 新しい Study Group の設立の Recommendation

日本は反対したが,JTC 1 の下に IT Governance の

認証(Certification)の可能性を探る SG の設立を

Recommendation として次回の JTC 1 に提出すること

になった.(日本は,設置提案の投票で棄権)

(5) 27014 ( Information security governance

framework)

SC 27 からは 27014 の審議状況について報告があっ

た.

5. まとめ

今回から,規格自身に対するコメントの審議が開始

され,グループが 2つに分けられた.今回はモデルの

議論の方に参加したが,標準を作成する会議というよ

りも技術コンファレンスに近いものであった.既にあ

る標準との整合性を含めた議論が行われた結果,その

点で方向性の見直しが行われよかった.

6. 今後の開催予定

2010-09-15/17 ヨハネスブルグ(南ア)

2011-03/04 韓国

■ JTC 1/SWG on Directives 会議報告

規格役員 木戸 彰夫(日本アイ・ビー・エム(株))

1. 開催場所: ジュネーブ(スイス)

2. 開催期間: 2010-06-08/09

3. 参加国数/出席者数: 7 カ国,2 団体/23 名

議長(Karen Higginbottom),セクレタリ(Sally

Seitz),JTC 1 セクレタリ(Lisa Rajchel),ITTF ISO

CS,ITTF IEC CS,ISO/IEC JDMT,加(3),仏(5),独

(3),英(2),米(3),韓(3),日(2: 鈴木俊宏[日本オ

ラクル],木戸彰夫),Ecma(1)

4. 概要

前回の SWG on Directives 会議からの継続で,JTC

1 Standing Document(独立文書,以下 JTC 1 SD 文書

と略す)に対する JTC 1 投票のコメント処理が行われ

た.JTC 1 投票で既に承認されている文書のコメント

処理であるので,大きなプロセスの変更や,新しい改

善案の審議は行わずに,エディトリアルな修正及び

JTC 1 SD の記述上の間違いについて審議を行い,全

ての SD のテキストの確定を行った.IEC SMB におい

て JTC 1 Supplement は承認されたという報告がなさ

れ,ISO TMB でも問題なく承認されるであろうとの議

長の見解が述べられた.よって,ここ数年間続けられ

ていた,JTC 1 Directives のプロセスを ISO/IEC

Directives に整合させ,JTC 1 独自プロセスを JTC 1

SD に記述するという作業は終了したことになる.SWG

on Directives は引き続き JTC 1 Supplement と JTC 1

SD の改善作業を継続することになる.継続作業は,

各国からの寄書を元に Issue List が作成され,そこ

に記載された案件を審議していく.次回の SWG on

Directives 会議から JTC 1 Supplement と JTC 1 SD

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に記載されたプロセスの改善審議を開始するため,寄

書を求める勧告(Recommendation)が今回の会議で採

択された.寄書の

提出期限は 8月 16 日である.

5. 主な結果

(1) 日本から提案した幾つかのコメントは,既に処理

済みのものを含めて,そのほとんどが受け入れられた.

(2) Fast Track 又は JTC 1 PAS プロセスで作成され

た国際規格のメンテナンスに関して,JTC 1 が行う旨

が定められているが,そのことは必ずしも JTC 1 及び

その下部委員会が実質的な作業を行うことを意味し

てはいないことが明記された.メンテナンスの方法は

JTC 1 と原規格の提案団体との間で協議の上合意され,

国際規格の改訂は,再び Fast Track 又は JTC 1 PAS

プロセスを活用して行うこともできることが明らか

にされた.

(3) JTC 1 Supplement と JTC 1 SD の将来の改訂に関

する議論として,以前から SWG on Directives で議論

があった Fast Track に JTC 1 PAS の Explanatory

Reportと同等のものを導入しようという提案に対し,

ドイツから Fast Track 及び JTC 1 PAS 共通の

Explanatory Report と,それに類似した NP の提案フ

ォームの寄書が提出され,審議が開始された.しかし

ながら,質問数の少ない ISO 及び IEC の NP フォーム

と質問数の多いドイツ提案の間で議論が錯綜し,継続

審議となった.

(4) 今後のスケジュールは,本年 9 月に US で次回の

会議を開催し,それ以降年 2回の会議を行う予定を立

てた.

6. まとめ

今回の会議において JTC 1 Supplement 及び JTC 1

SD は一応完成したことになるが,日本が主張してき

た Fast Track と JTC 1 PAS プロセスの整合について

は,Fast Track に関する規定が ISO/IEC Directives

と JTC 1 Supplement に比較的短い文章の規定として

書かれているのに対し,JTC 1 PAS に対する規定は JTC

1 SD で詳細に書かれていることにより,プロセス規

定の文章上ではまだ整合性がとれていない.また,

Fast Track に関しては ISO/IEC Directives に整合さ

せるという作業の結果,いままでの JTC 1 Directives

に規定されていたプロセスとは異なってしまった部

分があるので注意が必要となる.また,今回完成した

JTC 1 Supplement と JTC 1 SD は,現行の ISO/IEC

Directives に対応するものであるが,ISO/IEC

Directivesは毎年1月1日に改訂版が出されるので,

その改訂版に対応する JTC 1 Supplement を作成・発

行するのには ISO/IEC Directives の変更内容が分か

ってから 1 年近くの時間が必要となることが予測さ

れるので,将来,ISO/IEC Directives と JTC 1

Supplement との間でのシンクロナイゼーションが問

題となる可能性がある(2011 年 1 月に発行される

ISO/IEC Directives に関しては,JTC 1 Supplement

に関する微細な記述の追加が行われるだけの模様で

あるので,この問題はないと思われる).今後は,再

びJTC 1のプロセスの改善作業に取り掛かることにな

るが,既存の JTC 1 の審議プロセス及び今回の改訂に

より発生した問題を明らかにし,プロセスの改善につ

なげるために,各 SC 及び国内対応委員会が抱えてい

る JTC 1 審議プロセスに関する問題とその改善案を,

積極的にディレクティブス SWG 小委員会に御提案い

ただきたい.

■ JTC 1 SWG on Planning 会議報告

規格役員 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

1. 開催場所: ジュネーブ(スイス)

2. 開催期間: 2010-06-10/11

3. 参加国数/出席者数: 6 カ国,1 団体/18 名

議長(Michael Breidthardt,独),JTC 1 議長(Karen

Higginbottom/初日),加(2),仏(1),独(2),英(3),

米(3),韓(3),日(1:鈴木俊宏),SC37 議長

4. 議事内容【要旨】

IEC オフィスで JTC 1 SWG on Planning の会議が 2

日間にわたって開催された.今回の会議の目的は,昨

年のテルアビブ総会以降 6 回開催された電話会議の

総括と,今年の JTC 1 総会報告のための準備,ならび

に来年に向けての活動を検討することであった.

(1) Green of ICT

エネルギー効率に関し電力消費および測定方法に

関係する標準について,JTC 1 各 SC がどのような活

動を行っているかを調査することになった.

(2) Web Collaboration and Social Networking

本タスクのリーダとして米から Chris Messina

(Google)の推薦があり了承された.今後 Chris

Messina からポジションペーパーが提出され,それを

ベースに検討を行うことになった.

(3) 新技術領域

先日実施された”Environmental Scan”の結果の検

討を行った.各国の報告結果から,今後重要となる新

技 術 領 域 と し て , Mobile Application , Cloud

Computing,Flash Memory が候補となった.Cloud

Computing については,既に SC 38 が設立され活動が

始まったため,今後 Mobile Application について検

討を加えることになった.突然,韓国から AR

(Augmented Reality)と 3DTV について候補に上げた

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いとの要求があり,検討の結果,まずは当該領域が

SWG-Planning 参加各国にとって重要か否かを確認す

ることになった.

(4) JTC 1 Business Planning Process and Long Term

Business Plan

”Environmental Scan”に対し各国から意見の集ま

りが悪い理由について検討が行われ,参加各国は JTC

1 に対し新技術標準開発の要望が無いのではないか,

SC 毎に新技術を検討する SG を立ち上げるなど SC 独

自に新技術を取り込もうとしている,など様々な意見

が出された.本問題は,根が深いだけに,次回総会に

て各国の意見を求めることなった.Technology Watch

は次回の総会も開催の予定が無いため,JTC 1

Business Planning Process から文言を出来るだけ削

除することになった.

(5) 次回 JTC 1 総会に向けて

JTC 1 総会に向けてこれから何度か電話会議を行い,

9 月を目処に作業を集約することになった.また,

SWG-Planning 報告枠を延長,もしくは別枠で,簡単

な技術解説(Mobile Application が有力)を行える

よう JTC 1 Secretariat に対し働きかけることになっ

た.

5. 今後の開催予定

未定

■ SC 7(Software and systems engineering/ソフ

トウェア技術)総会報告

SC 7 専門委員会

委員長 山本 喜一(慶應義塾大学)

1. 開催場所: 新潟(日)

2. 開催期間: 2010-05-23/28

3. 参加国数/出席者数: 29 カ国/232 名

① Pメンバ(27カ国/192名): 豪(9),ベルギー(2),

伯(3),加(10),コートジボアール(1),中(4),チェ

コ(1),デンマーク(3),西(3),フィンランド(7),仏

(4),独(4),インド(10),アイルランド(1),伊(3),

日(74),韓(13),ルクセンブルグ(1),メキシコ(5),

蘭(5),ニュージーランド(1),ポーランド(1),南ア

(4),スウェーデン(3),タイ(6),英(18),米(15)

② O メンバ(2 か国/2 名): エストニア(1),香港

(1)

③リエゾン(15 組織/33 名,内 19 名は各国代表を兼

ねる)

④日本からの参加者詳細:山本(HOD,AG,SWG1,WG2,

WG21,WG22),小川(AG, WG10,WG20, WG42,SGW5),

東(AG,WG6),加藤(AG,WG23),伏見(AG, WG24),木

下(AG, WG7),薮田(WG4, WG26),岸,野田(WG4),高

橋 (光),竹田,西山(WG6, WG10),込山(WG2, WG6),

山田(WG6,WG7),江崎,古山,山室,三毛,菊池,中

山,坂本,谷津(WG6),村上,大島,室谷,室中(WG7,

LCPHAG),橋本,高井,小山,森下,武部,佐野,小

堀,松下(直)(WG7),岡崎(靖)(WG10, WG20),福

地,松下(誠),新谷,板橋(WG10),篠木(WG4, WG19,

WG26),塩谷(WG4, WG19, WG23, WG24) ,田中,宮崎,

梶原(WG19),松本,白坂,向山,鷲崎(WG20),高橋 (快),

田村,安田,片岡,手島,浜端, 篠田,島田(WG21),

宮澤(WG7, WG21),岡崎(毅)(WG22, WG23),平野(WG25,

WG1A),吉田,小山,八木(WG25),内藤,原田,力(WG1A),

増田,松尾谷,秋山,高橋 (寿),湯本,西,吉澤,

山浦(WG26),福住(JWG1)

4. 議事内容

4.1 Advisory Group 会合

23 日(日)10:00~16:30 と 27 日(木)18:00~20:00

に開催され,日本からは山本喜一,小川清(名古屋市

技研),WG 6 コンビーナとして東基衞(早大),WG 23

コンビーナとして加藤重信(コンサルタント),リエ

ゾンとして伏見諭,木下佳樹(産総研)が出席した.

23 日の会合では,総会の議事予定を確認し,議長が

作成したAction Listに基づいて決定すべき事項の洗

出しと WG への割当てを行った.27 日の会議では,翌

日の総会に提出する決議案の審議を行い,今回の WG

の期間中に多数のStudy Groupを新たに発足すること

が決まった.

4.2 総会

24 日(月)9:30~11:30,及び 28 日(金)13:30

~16:40 に開催された.Closing Plenary では各 WG の

コンビーナから今回の会議での審議経過報告が行わ

れ,その後決議案の審議を行った.例年通り事前の

AG において議案審議が尽くされていたため,総会自

体は円滑に推移し,約 100 件の議決案をほぼ全会一致

で決議した.

なお,決議をまとめる Drafting Committee のメン

バには,日本意見の反映の正確性を期して高井利憲

(産総研)が参加した.

以下に主要な決議を示す.

(1) プロジェクトエディタ

新たに任命された日本からのエディタとプロジェ

クトを次に示す.

① 松下誠(阪大)をISO/IEC 33021のエディタに追加.

② 小川清(名古屋市工研)を ISO/IEC 33012/33014 の

エディタに追加.

③ 向山博(IPA)をProject 29154のエディタに追加.

(2) リエゾン

① 加藤重信:ISO TC176/SC2 及び SC 3

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② 木下佳樹:IEC TC65/SC65A

③ 小川清:ISO TC22/SC3/WG16 及び JTC 1/SC 22

④ 伏見諭(数理研):JTC 1/SC 27

(3) eCommittee の利用

SC 7 の文書配布を ISO eCommittee に移行するため

SC 7 の委員を ISO Global Directory に追加する手続

きをとる.

(4) SC 7 用語 DB の利用

SC 7 の用語 DB が Web サイト(www.computer.org/

sevocab)に完成したので,プロジェクトエディタは

ここで定義されている用語を参照すること.

(5) Work Items

31 件を次のステージに進める.

(6) NP

次の通り 17 件の NP をつくる.

・ User requirement specification

・ Evaluation Report

・ Software asset management -- Embedded

Software Tag

・ TR -- Guide on the relationship between

ISO/IEC 20000-1 and best practice advice

・ IT Audit

・ Body of Knowledge for Process Assessment

・ Architecture Evaluation

・ TR -- Framework for Product Quality

Achievement

・ The development of an Application management

standard (based on content of NEN 3434)

・ Software engineering -- Capabilities of

software testing tools

・ Systems and software engineering -- Systems

and software Quality Requirements and

Evaluation (SQuaRE) -- Evaluation guides for

developers, acquires, evaluators

・ IT enables services/BPO (ITES/BPO) standards

既存規格の改訂は次の 5件である.

・ ISO/IEC 15909-1,ISO 15414 及び ISO 19793

(WG19)

・ ISO/IEC 29110-4-1(WG24)

・ ISO/IEC 20000-1(WG 25)

(7) Study Group

次の 6件の Study Group を新設又は継続する.

① システム統合(System Integration)に関する

Study Group の報告を受け,スコープと成果物を明確

に定義して NP を提案できるようにする.

② クラウドコンピューティングのための IT 統制

(IT governance for cloud computing)を 1 年間延長

する.

③ サービス指向アーキテクチャ(Service oriented

architecture)を 1 年間延長する.鈴木俊宏(日本オ

ラクル)が参加する.

④ ソフトウェア技術検定案の調査及び新規格の定義

(To investigate software engineering

certification schemes and to define the scope of

new standards)を 1 年間延長する.鷲崎弘宜(早大)

がコチェアを務める.

⑤ 日本から提案した,組込みシステム領域における

新たな規格の可能性調査 (To investigate the

possibility of new standards in the area of

embedded systems)を 1 年間延長する.山本喜一が議

長,黒川利明(CSK)が参加する.

⑥ プロセスの実現,評価,改善及び対応付けを目的

とするプロセス記述の識別,必要性の確認及び推奨例

を示すガイダンス(Process description)を再編成す

る.室中健司(富士通)が参加する.

(8) Ad Hoc Group

Ad Hoc Group IT Service management mapping を 1

年間延長する.日本からは加藤重信がメンバとして参

加する.

(9) Management

① WG 22 は,ISO/IEC 24756 が出版され,作業が終了

したので解散する.同時に,DB を維持管理するため

のSWG(Systems and Software Engineering Vocabulary

Validation)を設立し,Validation Team を組織する.

岡崎毅久(日本 IBM)が参加する.

② SWG 1(BPG)のメンバの再任で山本喜一が参加する.

③ SWG 5 のメンバの再任で小川清が参加する.

④ LCPHAG(Life Cycle Process Harmonization

Advisory Group)を 2014年 5月までの期限で延長する.

村上憲稔(富士通)が参加する.

5. 今後の開催予定

2011-05-22/27 パリ(仏)

2012-05-19/24 済州島(韓)

6. その他

(1) 前回のハイデラバード会議は 29 カ国 193 名の参

加者であったが,今回 O メンバ国 2 カ国を含めて 29

カ国 218 名,リエゾンメンバを含めると合計 232 名の

参加者となり,SC 7 の 23 回の総会で最多の参加者を

記録することができた.国内からの参加者は 74 名で,

これも過去最多を記録した.会場の朱鷺メッセは,無

線 LAN の設備も整い,国内委員のご協力により各 WG

にプロジェクタを配置し,ファイルサーバも準備した

のでほとんど紙を使わない効率的な会議ができた.会

場,設備,運営に関して各国から大変感謝された.こ

の場を借りて規格調査会をはじめ援助をいただいた

関係各位及び会議の運営に現場でご協力いただいた

国内委員各位に感謝致したい.特に,電中研の高橋光

裕氏は,新潟総会担当幹事として規格調査会の長澤有

由子氏とともにほぼ 1 年間にわたり様々な業務を手

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際よく処理していただいた.

(2) 特に大きな問題もなく無事に会議を終了できた.

また,オランダから提案されていた Fast Track の

ISO/IEC 26500 Application Management --

Requirements for Application Management について

は,BRM を開催し山本,加藤,村上,佐野,松下(直),

平野が参加し,日本の主張通り NP からきちんとやり

直すことになるなど,日本が懸案としていた事項はほ

とんどすべて受け入れられた.

■ SC 31 ( Automatic Identification and Data

Capture Techniques/自動認識およびデータ取得技

術)総会報告

SC 31 専門委員会

小橋 一夫(一般社団法人 IT セキュリティセンター)

1. 開催場所: 北京(中)

2. 開催日時: 2010-05-28

3. 参加国数/出席者数: 15 カ国+リエゾン/46 名

議長(Chuck Biss,米),セクレタリ(Raymond

Delnicki,米),オーストリア(1),ベルギー(2),加

(1),中(11),仏(1),露(2),独(1),アイルランド(1),

蘭(2),韓(3),スウェーデン(1),米(7),英(1),豪

(2),日(4:柴田彰[HoD,デンソーウェーブ],吉岡稔

弘[AI総研],木暮[JEITA:事務局],小橋一夫),GS1(3),

TC122(1)

4. 概要

午前8時30分と昨年より30分遅い開会であったが,

1日で,議長報告,各 WG 報告,各国の活動状況報告,

ビジネスプラン,リエゾン報告などが行われ,最後に

Resolution をまとめて早々に終わるといった事務的

な会議進行であった.しかしながら,Resolution 案

の作成に,昼食時間を利用し 2時間もの時間をかける

といった一面もあり,課題が多いにもかかわらず全体

会議で審議を十分に尽くさないという状況を反映し

ている.会議は,米国系ホテルの会議室であったこと

もあり,北京で会議を開催しているといった感じはま

ったくなかった.中国からの参加者が 10 名を超える

数にのぼり,会議場の入口では,中国が新たに開発し

た 2 次元シンボル(Han Xin code)の展示が行われ,

SC 31 分野の技術に力を入れている状況は覗えたが,

日本の参加者からみると中国の新コードは QR コード

(日本発)のまがいものに見えてしまう.

(1) 議長及び事務局の報告から

・ これまで,HOD 会議は半日であったが,来年は今

後の SC 31 検討のため終日とする.

・ SC 31 会議への参加状況は,相変わらず Pメンバ

の半数といった実態で,大きな課題である.

・ ISO Focus+(http://www.iso.org/iso/iso-

focus-plus_index/iso-focusplus_2010/iso-fo

cusplus_2010-04.htm)の 4 月号は RFID の特集

号で,SC 31 会議参加者が投稿した多くの記事も

掲載されている.ぜひ一読してほしい.

(2) WG 活動報告,各国報告等から

・ WG 1 における次の規格化対象として,ホログラ

ムシンボルが重要な候補である.

・ WG 2 の重点規格である ISO/IEC 15459(ユニー

ク識別子)シリーズは,全てのパートについて

改定が進行中である.

・ WG 4 は Secretary が交代になる.(後任:Jan

Rietveld)

・ WG 5 では,RTLS(Real Time Locating System)

の周波数帯として UWB(Ultra Wide Band)が用

いられようとしているが,グローバルに共通な

運用となっていない状況を懸念し,SC 31 として

ITU-R に改善の提起を求める要請が出された.

・ WG 6 では IEEE との間の PSDO に基づいて規格化

が図られている.Fast-Track で 5 件,共同開発 1

件が進行中である.

・ JTC 1 Directives が変更になるので,それに伴

う SC 活動への影響について,特別に時間が取ら

れ説明が行われた.

・ NB 報告で,日本から UHF 帯の RFID 利用に関する

Regulatory の変更について紹介した.

・ WG 4参加委員の意向を受けたものと思われるが,

オーストリアから,WG 4(RFID)の開発作業の

ため,SG(サブグループ)を設けて作業を推進

したが,細分化の弊害が出ているとの指摘があ

り,再編の検討を開始することとした.

・ ITU-T からの,SCM(Supply Chain Management)

における UII(ユニークアイテム識別子)の活用

に関する質問に応えるため,WG 2 から提案され

た Ad hoc グループを構築し,回答を検討するこ

ととした.

5. 今後の会議開催予定

2011-05-26/27 ウイーン

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■ SC 32(Data Management and Interchange/デー

タ管理と交換)総会報告

SC 32 専門委員会

委員長 鈴木 健司(東京国際大学)

1. 開催場所: 昆明(中)

2. 開催期間: 2010-05-24/28

3. 参加国数/出席者数: 7 か国/41 名

議長(Bruce Bargmeyer,米),セクレタリ(Timothy

Schoechle,米),加(2),中(10),独(1),韓(4),英

(3),米(8),日本(11: 鈴木健司[HoD],遠城秀和[NTT

データ],堀内 一[東京国際大],大林正晴[管理工学

研究所],岡部雅夫[東京電力],安達辰巳[NEC],土田

正士[日立],鈴木俊宏[日本オラクル],芝野耕司[東

京外国語大,WG4 コンビーナ],梶野智行[ビーコン IT],

小寺孝[日立])

4. 主な結果

今回の総会では,議長とセクレタリの運営にかかわ

る次の問題があった.

(1)日本から提案している WG 4 における Part 7

History に対する JTC 1 Directives で禁止されてい

るフェアでない対応

カナダが SQL/MM Part 7 History の開発の進め方や

仕様にカナダコメントが反映されないことに対する

不満を寄書として Opening Plenary に提出した.しか

し,この寄書自体と,議長及びセクレタリの処理に次

の問題があった.

① Part 7 History は,4 月 30 日まで FCD2 投票期

間であり,投票期間中の SC から投票に関連するコメ

ントなどの公式な配布が JTC 1 Directives で禁止さ

れているにもかかわらず,投票期間中の 4 月 16 日に

この寄書がセクレタリによって各国に配布された.

② Opening Plenary でこの寄書を処理するために,

議長がアドホック会議を開催した.このアドホック会

議で日本は,(i)WG 4 は,投票コメントに対し,編集

会議で議論し解決するというSC 32でとられてきてい

る通常の手続で運用していて何も問題がないこと,

(ii)セクレタリが投票期間中に,各国の投票に影響を

与えるような寄書を配布したのはフェアでないこと

を主張したが,まったくとりあわなかった.アドホッ

ク会議では,Directives の確認に終始し,不毛な時

間が費やされた.

③ Closing Plenary では,アドホック会議結果につ

いて議長から何も報告が行われなかった.ちなみに,

Opening Plenary では他にも複数のアドホック(ISO

Committee-Internal Balloting(CIB) や ISO TC

eCommittee tool の利用を含む eServices の利用につ

いて,クラウド対応について)が組織されたが有耶無

耶になっている.以上の状況において,カナダは FCD2

投票で詳細なコメントをしており,何故,Opening

Plenaryに寄書を提出したのか意図が理解できないこ

と,議長・セクレタリの対応が不可解であったことで

ある.なお,カナダはコメントの主張が反映されない

ことに対する不満を述べているが,この大きな原因に,

カナダのメンバ(Baba Piprani, MetaGlobal)が同時

に開催されている WG 2/WG 3 を掛け持ちし,カナダコ

メントを議論するとき,不在であることが多く,議論

に参加する十分な時間を割いていないことがある.予

算節約のための同一人物が同時開催の会議の「掛け持

ち」参加に関する何らかの規制が必要と思われる.

(2) WG 1 の NWI 審議の不透明さ

Closing Plenary で,韓国から提案された NWI 提案

ドキュメントが事前に配布されず,しかも,各国の

position も問わずに審議が強行された.このことを

指摘すると,急遽,セクレタリが日本に対し提案ドキ

ュメント紙を回覧した.これらの処理に対して他国か

らは何も意見が出されず,しかも,何故,議長が強い

サポートを進めたのか不可解であった.

(3)その他

ISO ポータルへの移行を促す日本提案の寄書を

late paper という扱いにし,取り上げなかった.

以上の会議状況から,次のように SC 32 の正常な運

営に大きな問題が生じているといわざるを得ない.

・ 議長,セクレタリによる Directives に沿ってい

ないバイアスされた運営.さらに,議長は各国

の position を問わずに議事を強行し,それに対

し各国からも意見が出ないこと

・ 今回からオーストラリアが不参加となり,アク

ティブな参加国は,日本・中国・韓国・米国・

カナダ・英国の 6カ国と,それにドイツであり,

参加国が減少していること

・ 経験がある参加者の減少及び高齢化で,議論が

活発でないこと

・ WG 1 及び WG 2 のプロジェクト分割が無秩序に肥

大化していること

5. 各 WG の特記事項

(1)WG 1(Open-edi)関連

WG 1 は,国内組織を廃止し,SC 32 専門委員会で対

応しているが,投票コメントの解決及び情報収集のた

めエキスパートを派遣した.

① FCD 15944-8 (Business Operational View -- Part

8: Identification of privacy protection

requirements as external constraints on business

transactions の FCD 投票結果は,賛成 4,コメント付

反対 3(日,加,英),棄権 1 であった.日本からの

コメントは,Directives 違反,SC 27/WG 5 との整合

性がとれていない,Project Editor Note が多くクオ

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リティが低いということを指摘した.SC 27/WG 5 と

の整合性については,作成中の仕様を参照する必要が

ないという原則を理由に却下され,FDIS に進めるこ

とになった.

② CD 15944-10 (Business operational view -- Part

10: Coded domains)の CD 投票結果は,賛成 4,コメ

ント付賛成 1(日),コメント付反対 1(加),棄権 3

であった.日本からのコメントは合意され,FCD に進

めることになった.

③ トレーサビリティに関するプロジェクト”

Business operational view - Part 9: Open-edi

traceability framework”は進展がない.

④ 韓 国 か ら 新 た な プ ロ ジ ェ ク ト ” Open-edi

Interchange method between International and

country based e-business Registries &

Repositories”が提案された.

⑤ CD 投票 2件,FCD 投票 1件,FDIS 投票 2件,プロ

ジェクト分割 1件が承認された.

(2) WG 2(Metadata)関連

① 日本が推進する ROR (Registry Of Registries)に

ついては,手続き的な部分を MDR Part 6(ISO/IEC

11179-6 Metadata Registries (MDR) -- Part 6:

Registration Ed 3)に折り込むこととし,日本担当

の MFI Part 6(ISO/IEC19763 Part-6 )には,レジ

ストリ自身を記述する情報を「レジストリ・サマリ」

として,登録させることでレジストリ間の連携を規定

するものとすることになった.

② MFI(Metamodel Framework for Interoperability)

Part 2 Core (ISO/IEC 19763-2 MFI Core model and

basic mapping)及び Part 4 Model mapping(ISO/IEC

19763-4 MFI Structured model registering)に関し

ては,各 Part に共通の基本的な部分を Part 10

( ISO/IEC 19763-10 MFI Core model and basic

mapping),より先進的な部分を Part 11 (ISO/IEC

19763-11 MFI Structured model registering)とし

て再構成し,プロジェクトを分割することになった.

これらの Part のエディタを日本が担当することにな

った.

③ Study Group Meeting on Ontology-Metamodeling

and Semantic Interoperability in Cloud Era が

8/26-8/27(武漢/中国)にて開催されることが突然

SC 32 Plenary に提案され,日本は懸念を示したが,

開催が決定された.

④ FCD 投票 1 件,FDIS 投票 7 件,プロジェクト分割

4 件,Study Period 4 件が承認された.なお,FDIS

投票については,シドニー会議時に決議されていたと

はいえ,WG 2 での決議(1件)と SC 32 での決議(7件)

が大幅に異なっていた.

(3) WG 3(Database Languages)関連

① データベース言語 SQL の次期 SQL-2011 である

Part 1 (SQL/Framework),Part 2 (SQL/Foundation),

Part 4 (SQL/PSM(Persistent Stored Modules)),Part

11 (SQL/Schemata),Part 14 (SQL/XML)は,FCD 投票

中である.今回の会議では,非公式に各国から入力さ

れた 100 件の FCD コメントについて審議のみを実施

し,改めて FCD 編集会議で採否を決定することにな

った.

② XQuery (XML Query Language) 正規表現に関する

TR (SQL Technical Reports ‐ Part 1: XQuery

Regular Expression Support in SQL)について審議さ

れ,コメントがすべて解消されたので,DTR 投票に進

めることになった.

③ FDIS 投票 5 件,DTR 投票 1 件,プロジェクト分割

7件が承認された.

(4) WG 4(SQL Multimedia & Application Packages)

関連

① ISO/IEC CD 13249-3 Part 3: Spatial 第 4 版の

FCD 投票結果は,賛成 6(日本を含む),コメント付賛

成 1,コメント付反対 1,棄権 1 であった.コメント

のすべてが解決され,FDIS に進めることになった.

② 日本から提案された ISO/IEC FCD 13249-7 Part 7:

History の FCD2 投票結果は,賛成 3,コメント付賛成

1(日),コメント付反対 3,棄権 2 であった.日本,

カナダ,英国,米国,ISO から 72 件のコメントがあ

り,47 件を解決し,継続編集会議で解決することに

なった.編集会議ですべてのコメントが解決された後,

FCD2の修正版に対し,各国に FCD2の voting position

を問うことになった.

③ 韓 国 か ら 提 案 さ れ た SQL Multimedia and

Application Packages ‐ Part 8: MRA は,タイトル

を正式に MDR(Metadata Registry)から Metadata

Registry Access (MRA)に変更することが決定された.

WD の進展がないため,次回の中間会議で CD 化の判断

をすることになった.

④ CD 投票 1件,FDIS 投票 1件,プロジェクト分割 1

件が承認された.

5. 今後の開催予定

2011-05-16,20 ハワイ(米)

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■ SC 34(Document Description and Processing

Languages/文書の記述と処理の言語)総会報告

SC 34 専門委員会

委員長 小町 祐史(大阪工業大学)

1. 開催場所: シスタ(スウェーデン)

2. 開催期間: 2010-03-26

3. 参加国数/出席者数: 15 カ国,2団体/37 名

議長(S. Oh,韓),セクレタリ (木村敏子,日),ブ

ラジル(3),加(1),中(6),チェコ(1),デンマーク(1),

フィンランド(2),仏(1),独(2),日(3: 小町祐史[HoD],

村田真[国際大学],鈴木俊哉[広島大]),韓(3),蘭(1),

ノルウェイ(1),スウェーデン(1),英(3),米(1),

Ecma(4),OASIS(1)

4. 特記事項

4.1 プレナリでの決議事項

次に示す内容を審議し,決議(SC34 N1409)した.そ

れに関連する議論の概要を 4.2 示す.

(1) JTC 1 テルアビブ会議の決議 3(規格で規定され

たスキーマまたは類似の技術資源の利用に関する

ITTF 許諾通知)への回答

決議 3を,SC34 N1395 の WG1 入力文書と共に,SC34

のメンバ国に配布して,3ヶ月の間に両文書に関する

コメントを求めることをセクレタリアートに指示す

る.提出されたメンバ国のコメントは,SC34 セクレ

タリアートによってマージされて JTC1 に送付され,

さらに ITTF に送付されて検討される.

(2) 19757-11(DSDL, スキーマ関連)のプロジェクト

の進捗

現在作業中の19757-11のCDテキストをエディタが

提出したら,直ちに CD 処理を開始することをセクレ

タリアートに指示する.

(3) W3C へのリエゾン文書

次のリエゾン文書を W3C に送付することをセクレ

タリアートに指示する.

"XHTML の RELAX NG モジュール化"のエディタ原案

を更新して Note とし,SC 34 のリエゾン委員によっ

て詳細が提供される些細なバグ修正を反映すること

を,SC 34 は要求する.

(4) 文書パッケージ化に関する新業務項目提案

SC34 N1396 の"文書パッケージ化"に関する新業務

項目提案を 3ヶ月投票のために SC 34メンバ国に配布

することをセクレタリアートに指示する.

(5) ISO/IEC 9541(フォント情報交換)の第 2 版

現在作業中の 9541-1, -2, -3 の第 2 版の FCD テキ

ストをエディタが提出したら,直ちに FCD 処理を開始

することをセクレタリアートに指示する.

(6) ISO/IEC 24754-2(文書レンダリングシステムに対

するフォーマット指定)のプロジェクトの進捗

現在作業中の 24754-2 の CD テキストをエディタが

提出したら,直ちに CD 処理を開始することをセクレ

タリアートに指示する.

(7) SC 2 へのリエゾン文書

リエゾン文書 SC34 N1402 を SC 2 に送付することを

セクレタリアートに指示する.

(8) ISO/IEC 13250-3(トピックマップ, XML 構文)の

改訂のためのプロジェクト細分割

SC34 N1332 に従って ISO/IEC 13250-3 の改訂のた

めにプロジェクト細分割を行う.現在作業中の

13250-3 の CD テキストをエディタが提出したら,直

ちに CD 処理を開始することをセクレタリアートに指

示する.

(9) ISO/IEC 19756(トピックマップ制約言語)のプロ

ジェクトの進捗

現在作業中の19756のFDISテキストをエディタが提

出したら,FDIS 投票のためにそのテキストを直ちに

ITTF に送付することをセクレタリアートに指示する.

(10) ISO/IEC 29500-4(OOXML, 過渡的な移行機能)の

Amd.2 のためのプロジェクト細分割

SC34 N1393 に従って ISO/IEC 29500-4 の Amd.2 開

発のためにプロジェクト細分割を行う.現在作業中の

FPDAM テキストをエディタが提出したら,直ちに

FPDAM処理を開始することをセクレタリアートに指示

する.

(11) OOXML および ODF の拡張に関連する CJK 課題の

ワークショップ

CJKエキスパートが OOXMLおよび ODFの拡張に関連

する CJK 課題の非公式ワークショップを 2010 年 5 月

に韓国のソウルで開催することを認める.CJK 課題を

もつ SC 34 エキスパートは,このワークショップに参

加することが望ましい.その報告は WG 4 および WG 6

の次回会議に提示される.詳細については,SC 34 の

Web サイトを参照されたい.

(12) ISO/IEC 26300(ODF v1.0)の Amd.1 のためのプ

ロジェクト細分割

SC34 N1404 に従って ISO/IEC 26300 の Amd.1 開発

のためにプロジェクト細分割を行う.現在作業中の

FPDAM テキストをエディタが提出したら,直ちに

FPDAM処理を開始することをセクレタリアートに指示

する.この Amd.は,OASIS による ODF1.1 の公式な提

出(SC34 N1374)に基づき,エディタが準備した文書

(SC34 N1375)の Amd.編集方針に従って作成される.

(13) WG 6 コンビーナの指名

WG 6 コンビーナとして Francis CAVE を指名する.

(14) ISO/IEC DIS 14297(UOML パート 1 version 1.0)

の投票結果対処会議

OASIS から推薦された Ningsheng Kiu をエディタと

して指名する.必要に応じて,2010 年 9 月に開催さ

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れる SC 34 会議に合わせて,投票結果対処会議の開催

を計画する.

(15) 開発目標日程の承認

次に示す開発目標日程を承認/確認する. WG Project No. CD PDAM

PDTR

FCD/DIS

FPDAM/DA

M DTR

FDIS FDAM

1 TR 9573-11/Amd.1 - 2010-12 -

1 19757-1 (TR) 2011-12 2012-12 -

1 19757-2/Amd.1 2011-04 2011-09 2012-01

1 19757-4/Amd.1 2011-04 2011-09 2013-02

1 19757-3 2010-04 2011-06 2012-03

1 19757-5 - - 2009-04

1 19757-11 2010-04 2011-04 2012-04

2 9541-1 2010-12 2011-09 2012-03

2 9541-2 2010-12 2011-09 2012-03

2 9541-3 2010-12 2011-09 2012-03

2 9541-4/Amd.1 2010-09 2011-03 2011-09

2 24754-2 - 2010-09 2011-03

3 13250-1 (TR) 2010-10 N/A 2011-10

3 13250-3 2010-04 2010-09 2010-12

3 13250-5 - 2010-04 2010-12

3 13250-6 - - 2010-04

3 13250-7 2011-10 2012-10 2013-03

3 18048 - 2010-10 2011-06

3 19756 - - 2010-04

3 TR 29111 2010-10 2011-03 -

4 29500-2/Amd.1 - 2010-10 2011-07

4 29500-4/Amd.2 - 2010-08 2011-02

5 TR 29166 2010-11 2011-06 -

6 26300/Amd. 1 - 2010-06 2010-12

(16) プロジェクトエディタの指名

次のプロジェクトエディタを指名する.

・ 29500-4/Amd. 2: Mr. Gareth HORTON,Mr. Chris RAE

・ 26300/Amd. 1: Dr. Patrick DURUSAU

(17) リエゾン委員の指名

次のリエゾン委員を指名/確認する.

内部:

・ IEC/TC 100/TA 10: Dr. Yushi KOMACHI

・ ISO/TC 46: Dr. Sam Gyun OH

・ JTC 1/SC 22: Mr. Rex JAESCHKE

・ JTC 1/SC 29: Dr. Yushi KOMACHI

・ JTC 1/IT Vocabulary MT: Dr. Patrick DURUSAU

・ ISO/IEC RA 10036: Mr. Keisuke KAMIMURA

外部:

・ ECMA: Dr. Makoto MURATA,Mr. Rex JAESCHKE (TC45)

・ OASIS: Dr. Patrick DURUSAU (ODF TC),Mr. Doug

MAHUGH (OIC TC)

・ XML Guild: Mr. Jirka KOSEK

・ W3C: Mr. Mohamed ZERGAOUI

4.2 その他の議論

(1) WG 1 関連

WG 1 は,ZIP を国際規格にするため,NP 提出する

ことにしたが,ZIP 自体を規定するだけでなく,ZIP

ファイルを XML 文書によって表現する変換も規定す

る予定である.

(2) WG 2 関連

a) ISO/IEC 10036(フォント関連識別子の登録手続き)

登録機関(RA)報告

RA サーバの

http://glyphsv.ipc.hiroshima-u.ac.jp/

への移転を行った.現行の http://10036ra.org/は少

なくとも 3年間は継続する.登録費用を条件付きで無

料化することも検討している.

b) フォント参照の拡張

情報処理学会の試行標準原案"フォントリソース参

照方式"の概要が報告され,今後国際提案される可能

性があることが示された.

c) UOML (非構造化操作マーク付け言語)

OASIS UOML-X TC のメンバから,UOML のパート 2, 3

についての現状報告があり,国際規格案として提出す

るか否かについては未定であることが報告された.

d) ISO/IEC 24754(文書レンダリングシステムを指定

する最小要件)

エディタが提出したパート 2(文書レンダリングシス

テムに対するフォーマット指定)の CD テキスト案をレ

ビューし,修正テキスト WG2 N385 を作成して,それを

CD投票にかけることにした.エディタのKen Holmanは,

今回の会議の後,SC 34 の活動から離れるが,24754-2

の作業だけについては継続することを確認した.

(3) WG 4 関連

a) OOXML の欠陥報告

約 60 の欠陥報告の処理を終了した. 必要な変更は,

Cor.または Amd.によって対処する.

b) ISO 8601 のセル値

既存の実装がISO 8601による日付からserial date

への誤った変換を行わないために,適合性クラス

Transitional において ISO 8601 によるセル値を禁止

する ISO/IEC 29500-4/Amd.2 が必要である.

c) OOXML 拡張

基本版面にもとづくページ設計,文字レパートリの

チェック,MS Office 2010 による拡張の 3 提案が日

本 か ら WG 4 に 提 出 さ れ た . 拡 張 案 に は ,

NVDL(Namespace-based Validation Dispatching

Language)スクリプトおよびRELAX NGスキーマが含ま

れている.OOXML を拡張する新マルチパート規格のた

めの NP を日本が提出することが期待されている.

(4) WG 6 関連

ODF のメンテナンスのために設立された WG 6 は,

はじめての対面会議を行った.これまでの OASIS ODF

TC には,SC 34 に対する消極的姿勢が目立ったが,今

回の WG 6 での議論に対して OASIS ODF TC から 3名の

参加者があり,SC 34 からの要請に積極的に応じる姿

勢が見られた.

ODF 1.0は ISO/IEC 26300として制定されているが,

広く使われている状態ではなく,アクセシビリティの

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機構も提供していない.ODF 1.1 は広く使われていて,

アクセシビリティの機構を提供しているが,まだ国際

規格にはなっていない.そこで,ODF 1.1 を ISO/IEC

26300 の Amd.1 とすることにした.

5. 今後の開催予定

2010-09-06/10 東京

2011-03-28/04-01 プラハ(チェコ)

■ SC 38(Distributed Application Platforms and

Services (DAPS)/分散アプリケーションプラットフ

ォームおよびサービス)総会報告

SC 38 専門委員会

委員長 鈴木 俊宏(日本オラクル(株))

1. 開催場所: 北京(中)

2. 開催期間: 2010-05-10/11

3. 参加国数/出席者数: 11カ国,4団体/初日60 名

程度,二日目以降 30 名程度

議長(Don Deutsch,米),セクレタリ(Marisa Peacock,

米),JTC 1 議長(Karen Higginbottom),英(1),加(2),

フィンランド(2),仏(3),中(初日 40 超),独(2),ア

イルランド(2),韓(6),スウェーデン(2),米(7),日

(2:楠正憲[マイクロソフト],鈴木俊宏),SC 7 議長,

SC 32 セクレタリ,OASIS,The Open Group

4. 議事内容【要旨】

第 1 回 目 の SC 38(Distributed Application

Platforms and Services)Plenary 会議が北京(中)で 2

日間にわたって開催された.今回の会議の目的は,ス

コープの確認,各 WG/SG の Convenor の承認,各 WG/SG

の ToR の承認,今後の SC 38 活動や運営(リエゾン承

認含む)について検討することであった.

会議は 3日間行われ,開催初日には中国側の参加者

が 40 名を超え中国人に囲まれた会議となったが,2

日目からは参加者も減り人数的にも正常となった.決

議された概要は以下の通り.

(1) SC 38 WG/SG Convenor,Secretariat

以下の通り承認された.

・ Jeff Mischkinsky(米)- Convenor, WG 1 on Web

Services

・ Yuan Yuan(中)- Convenor, WG 2 on Service

Oriented Architecture (SOA)

・ Seungyun Lee(韓)- Convenor, SG on Cloud

Computing

・ Zhou Ping(中)- Secretary, SG on Cloud

Computing (SGCC)

(2) SC 38 WG/SG ToR

テルアビブ総会では ToR のドラフト版が承認され

たため,今回の会議で正式な ToR を決める必要があっ

た.会議では幾つかの修正が加えられ,SC 38 として

承認された.修正版は次回の JTC 1 総会での審議事

項となる.修正された ToR は”ISO/IEC JTC 1/SC 38 N

0049”参照のこと.主な議論は以下の通り.

① WG 1 on Web Services: Web Services や SOA 標

準のインベントリ・データベースの今後の管理/運営

について方針が議論されたが,明確な方針が見出せず,

次回の会議で議論することとなった.日本は SC 38 の

前身である Web Services Study Group (WSSG)の時代

からインベントリ・データベースのデータ提供国だっ

た経緯があり,議論の行方次第によってはこれからも

データを提供するか否かなど,今後の作業に影響を及

ぼす.

② WG 2 on SOA: 中国が SOA 実装に関して IS を開発

することが出来るように ToR の修正を求めたが,日本

を含め業界標準との整合性など懸念を示す NB が多く,

却下された.また,NWIP の議論((3)参照のこと)が行

われた.

③ SG on Cloud Computing: 韓国から SGCC 報告書の

アウトラインが提示されたが,各国(特に欧州)から

様々なコメントが寄せられ,次回の会議で再度議論す

ることとなった.日本からも Cloud Computing のサー

ビスレベル(セキュリティ,プライバシ含む)につい

ての懸念と重要性を指摘した.

(3) NWIP on General Technical Principles of

Services Oriented Architecture (SOA)

米国(Service Oriented の概念)と中国(SOA アーキ

テクチャ)から個別に NP 提案があり,一つにまとめ,

単一の NWIP として Letter Ballot に供されることと

なった.総会期間中,新 NWIP 文書を作成するための

Ad Hoc 会合が組織され,日,米,中,韓,仏,アイ

ルランドなどが参加した.Ad Hoc 会合では各国が想

定している SOA のスコープが微妙に異なり白熱した

議論となった.

(4) SC 38 リエゾン

JTC 1 内リエゾンとして,SG on EEDC (Energy

Efficiency of Data center),JTC 1 WG7,SC 6,SC 7,

SC 32 が承認された.外部リエゾンとしては OASIS が

承認された.日本では SG on EEDC リエゾンとして鈴

木俊宏が任命された.

(5) 次回以降の会議日程

2010-09-27/10-01 ニューヨーク(米)

2011-03or2011-04 未定

2011-09 韓国

会議開催地は,原則として,米国圏,欧州圏,アジ

ア圏の 3 地域を順番に回すことが確認された.また,

WG/SG 中間会議を 2011 年 1 月に開催(開催地未定)

する可能性があることが決議に盛り込まれた.

Page 15: IPSJ/ITSCJ - No. 87 · 2014. 7. 30. · プログラム言語Rubyの標準化 SC 22専門委員会 委員 吉田 秀逸(独立行政法人 情報処理推進機構) 1. はじめに

<解説: ISO/IEC JTC 1/SC 7/WG 26 の概要>

SC 7/WG 26 小委員会

主査 西 康晴(電気通信大学)

1. はじめに

私たちの身の回りにはソフトウェアがあふれ,生活

やビジネスに欠かせなくなってきた.その一方で複雑

化し大規模化したソフトウェアの不具合の報道は絶

えない.それに伴いソフトウェアの品質確保が重要な

問題になってきている.

ソフトウェアの品質確保にとって重要な技術の一

つが,ソフトウェアテストである.ソフトウェアテス

トとは,開発時に作り込まれたバグや不具合を検出す

る活動であり,顧客や市場から要求された品質を製品

視点で保証する活動である.バグや不具合を見つけた

り動作確認を行ったりするためにソフトウェアを実

行する最小単位をテストケースと呼ぶ.どのようなテ

ストケースが必要かを考える活動を,ソフトウェアテ

ストの設計と呼ぶ.

ソフトウェアテストによくある誤解が,要求仕様の

確認だから簡単だろう,とか,とにかく動かしてみれ

ばよい,などというものである.しかし現在の複雑で

大規模なソフトウェアシステムにおいては,要求仕様

を詳細かつ完全に記述することは不可能なため,要求

仕様を超えた複雑なテスト設計が必要である.またテ

ストケース 10 万件を超える大規模なテスト設計が必

要となる.そのためソフトウェアテストには,高度な

技術やプロセスが欠かせない.

2. SC 7/WG 26 の概要

親委員会である SC 7 専門委員会は,ソフトウェア

技術(Software and System Engineering)に関する

標準化を対象としている.その中の WG 26 小委員会で

は,ソフトウェアテストに関する標準化を取り扱って

いる.WG 26 は 2007 年に設立され,日本は 2009 年秋

にペルーのリマにおける会合から参画した.

WG 26 では現在,ISO/IEC 29119(Software Testing)

という規格文書について審議している.ISO/IEC

29119 は現在のところ 4 部構成であり,Part 1 は

Concepts and Definitions,Part 2 は Test Process,

Part 3 は Test Documentation,Part 4 は Test

Techniques となっている.2010 年 8 月時点で,Part 1

~3が CD案登録のための回付段階に進んでおり,Part

4 は WD の作成段階である.

3. ISO/IEC 29119 の特徴

現在の ISO/IEC 29119 の中心は,Part 2(以下

29119-2と呼ぶ)で定められるテストプロセスである.

これには,現時点で以下の特徴がある.

(1) 組織テストポリシーへのトレーサビリティ

29119-2 のテストプロセスは,大きく分けて組織テ

ストプロセス(Organizational Test Process),テス

ト管理プロセス(Test Management Processes),動的

/ 静 的 テ ス ト プ ロ セ ス ( Dynamic/Static Test

Processes)の 3つの階層を持つ(図 1).組織テスト

プロセスでは,組織全体として定めたテストポリシー

(Organizational Test Policy)およびテスト戦略

(Organizational Test Strategy)を定める.テスト

管理プロセスでは,それに従ってテスト計画(Test

Plan)を立案し,動的/静的テストプロセスの監視・

制御やテスト完了を行う.動的/静的テストプロセス

では,動的テストの設計,動的テスト環境の準備,動

的テストの実行,実行結果の報告,ないし静的テスト

の準備,静的テストの実施,フォローアップを行う.

特徴的なのは,組織テストポリシーから個々のテス

ト実行結果までのトレーサビリティが確保される点

である.これによって 29119-2 を採用する組織では,

意図の不明なテストを無為に実施するというような,

実際のテスト現場でしばしば起こっている問題が発

生しにくくなることを期待できる.逆に,組織全体と

してテストポリシーやテスト戦略をきちんと継続的

に策定する必要が生ずる.

(2) テストレベルを特定しない

一般にソフトウェアテストは,単体テスト,結合テ

スト,システムテストのようなテストレベルごとに行

う.テストレベルごとにテスト技術やテスト対象,役

割分担が異なるからである.しかしテストレベルの区

分はどの組織でも一意に決まるものではないため,テ

ストレベルごとに異なるテストプロセスを国際規格

として定めることは容易ではない.

そこで 29119-2 では,テストレベルごとの相違点を

吸収できる程度にテストプロセスを抽象化すること

によって,この問題を回避している.したがって

29119-2 を採用する組織は,単体テストでも結合テス

トでもシステムテストでも,そして組織で独自に定め

たテストレベルに対しても,同じ構造のテストプロセ

スを構築することが可能になる.逆に,テストレベル

ごとの相違点と共通点をきちんと理解し抽象化でき

る技術力が必要となる.

(3) リスクベースドテスト

ソフトウェアテストは通常,ソフトウェア開発プロ

セスの終盤に行われる.そのため前工程の遅延の影響

によって開始が遅れた場合でも,終了が遅れるこ

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図1 ISO/IEC 29119 Part 2 のテストプロセスの階層

とは出荷遅延に直結するので許されない.したがって

テストを行う領域の検討,テスト技術の選択,テスト

ケースの量や実行順序の決定などが非常に重要とな

る.

この問題に対処する技術をリスクベースドテスト

と呼ぶ.リスクベースドテストとは,プロジェクトを

遅延させたりコストオーバーさせたりするなどのプ

ロジェクトリスクや,出荷後に顧客に不利益を被らせ

るなどのプロダクトリスクを最小化するようにテス

トを行う技術の総称である.リスクが大きい場合は,

テストを行う領域を狭めたり,より高度なテスト技術

を用いたり,テストケースの量を減らしたり,より重

要なテストを先に実行したりする.

29119-2 では,テスト計画を立案する際にリスクベ

ースドテストの考え方を採用している.これによって,

時間が無いため無作為にテストを打ち切るというよ

うな,実際のテスト現場でしばしば起こっている問題

が発生しにくくなることを期待できる.逆に,リスク

マネジメントとテストを協調的に行う必要が生ずる.

(4) 静的テスト

一般にソフトウェアテストとレビューとは,同種の

作業であるという立場もあるし,異なる作業だという

立場もある.両者ともに不具合を検出するという点で

は前者であるし,不具合を検出する際に実行可能なソ

フトウェアが必要であるかどうかという点では後者

である.前者の場合,レビューは静的テストと呼ばれ,

レビュー以外のテストを動的テストと呼ぶ.ここでレ

ビューとは,インスペクション,ウォークスルーなど

不具合検出時に実行可能ソフトウェアを必要としな

い技術の総称である.

29119-2 では,前者の立場に従ってレビューを静的

テストと捉え,動的テストと協調したテストマネジメ

ントを行う.これによって,レビューと(動的)テス

トとがバラバラに実施され総合的な効果が不明であ

るというような,実際の開発・テスト現場でしばしば

起こっている問題が発生しにくくなることを期待で

きる.逆に,レビューとテストとを総合的に捉える必

要が生ずる.

4. おわりに

ISO/IEC 29119 は,国際規格としてはまだ策定途上

であるため大きな変更が行われる可能性がある.しか

しながらソフトウェアおよびその品質の重要性を鑑

みると,ISO/IEC JTC 1/SC 7/WG 26 が対象とするソ

フトウェアテストの国際規格は極めて意義が大きく,

産業界および学会に強い影響を及ぼし我が国の国力

を左右する可能性もある.日本の産業界が平素実施し

ているソフトウェアテストと異なるプロセスや技術

が標準となった場合,日本製のソフトウェアの品質が

海外で認められなかったり,余分な作業を強いられる

ようになってしまいかねないからだ.したがってこの

分野に対して,引き続き積極的に我が国も標準化に尽

力し,リードしていく必要があると考えられる.

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第 25 回規格総会の報告

情報規格調査会 規格役員会

第 25 回規格総会が 2010 年 7 月 12 日に開催され,

2009 年度の決算,2010 年度の予算,2010 年度の重点

活動項目を承認し,当調査会の規格役員および 2・4・

5号委員を改選した.また,2009 年度活動報告と,標

準化功績賞及び標準化貢献賞の表彰国際規格開発賞

受賞者の紹介が行われた.2009 年度の活動報告に関

しては NEWS LETTER NO. 86 別冊を,2009 年度の表彰

に関しては情報規格調査会 Web ページのトピックス

にある表彰に関する記事を,参照されたい.

1. 2009 年度決算

2009 年度決算での収入は 171,525 千円でほぼ予算

どおり,支出は 239,382 千円で結果として 67,857 千

円の赤字となった.ただしこの赤字の主たる原因は

80,000 千円の基金の積み増しによるものであり,こ

の基金の積み増しを除くと実質 12,143 千円黒字とな

り,2009 年度の情報規格調査会の収支は概ね健全な

ものであったと言える.なお,黒字となった主たる理

由は,新型インフルエンザの流行により,予定されて

いた国際会議が中止となったり,出張が取り止められ

たりしたことにより,出張関係の支出が減少したこと

による.

2. 2010 年度予算

2010 年度の予算としては,収入は 26 口分 18,200

千円の賛助会費の減少,35,000 千円の国際会議派遣

基金の取り崩しを含む総額 48,000 千円の基金の取り

崩しを計画し,188,150 千円の予算を立てた.この国

際会議派遣基金の取り崩しは,長引く世界的な不況を

考慮し,日本の国際標準化への貢献をできるだけ維持

する目的で,従来原則として中立委員に限定して行っ

てきた国際会議派遣費の補助を 2010 年度に限り中立

委員以外にも適用するための予算を確保するための

ものである.また,支出としては大幅な国際会議派遣

費の増額,事務局責任者の雇用のための費用等を盛り

込み,総額 199,688 千円の支出とし,単年度収支では

11,538 千円の赤字予算とした.

3. 2010 年度の活動重点事項

2010 年度の活動重点事項として,2009 年度に引き

続き下記の項目を設定した.

(1) 国際標準化活動中心メンバとしての貢献

・ 今のポジションを活用して JTC 1 の国際標準化

に貢献するともに,議長,幹事国,コンビーナ,

プロジェクトエディタの機会があれば引受ける.

・ 新しいワークエリアに積極的に貢献する.

・ 日本提案による国際標準化を推進する.

・ 国際会議の日本での開催を積極的に進める.

(2) 健全な情報規格調査会の運営の維持

・ 厳しい経済状況の中,運営の更なる効率化を目

指す.

・ 国際標準化活動への参加・貢献の割合をできる

限り維持する.

・ 規格賛助員の国際活動への積極的参加を促し,

より多くの貢献を行えるようにすることを目指

す.

(3) 規程類の見直し

・ 情報処理学会の一般社団法人化に対応し,学会

規定と情報規格調査会の規定の整合性の向上を

目指す.

・ 情報規格調査会の規定の見直しを行い,規定の

分かりやすさ,透明性の向上を目指す.

(4) 賛助員活動の充実

・ 規格賛助会員に向けて話題となっている技術や

今後の新しい分野に関してセミナーを企画する.

4. 役員の改選

2010 年度から 2013 年度まで下記の者が委員長,副

委員長及び規格役員に就任した.(敬称略)

委員長 大蒔 和仁 (東洋大学)

副委員長 伊藤 智 ((独)産業技術研究所)

規格役員 落合 真一 (三菱電機(株))

木戸 彰夫 (日本アイ・ビー・エム(株))

楠 正憲 (マイクロソフト(株))

櫻井 義人 ((株)日立製作所)

鈴木 俊宏 (日本オラクル(株))

関口 正裕 (富士通(株))

高橋 克己 (日本電信電話(株))

平山 浩司 ((株)東芝)

また,退任した前委員長石崎俊氏は,情報規格調査会

顧問に就任した.

5. 情報規格調査会 2号,4 号, 5 号委員の改選

筧捷彦委員,小林龍生委員,成田博和委員,山本泰

委員がご本人の意思により 2号委員を退任された.退

任された委員の方々には,その長年のご貢献に対し感

謝の意を表したい.また,4 号委員では住田孝之(経

済産業省)が吉本豊委員に,5号委員では加藤泰久(日

本電信電話(株))が今中秀郎に交代することになった.

その他の委員の方々に関しては再選が決まり引き続

き委員としてご活躍いただくことになった.結果,2

号,4号,5号委員の総数は,それぞれ 26 名,10 名,

8名となった.

以上,第 25 回規格総会は滞りなく終了した.

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写真 小林氏

<2010 年度 標準化功績賞および貢献賞の表彰>

標準化功績賞は,長年にわたり情報規格調査会委員および所属委員会委員として,多大な功績があった方々

の中から選ばれます.また,標準化貢献賞は,最近の数年間において,所属委員会委員として,顕著な貢献の

あった方々の中から選ばれます.

なお,本学会情報規格調査会規程により,2010 年度は 2010 年 7 月 12 日に開催された第 25 回規格総会で,受

賞者に表彰状および副賞として賞牌または賞金が授与されました.

標準化功績賞

小林 龍生 氏(独立行政法人情報処理推進機構)

小林氏は,1996 年から情報規格調査会の活動に参加して以来,SC 2 専門委員会を

はじめとする符号化文字集合に関する委員会の活動で活躍され,国際会議にも頻繁か

つ継続的に参加し,国内の委員会で委員長・主査・幹事の要職を歴任することに加え,

2004 年からは JTC 1/SC 2 の国際議長を務められました.国際議長としては,UNESCO

などとの協調による少数民族の固有の言語や文字などへの対応を通じ,いわゆるデジ

タルデバイド問題への取組みという面でも大きな貢献をされました.

近澤 武 氏(独立行政法人情報処理推進機構/三菱電機株式会社)

近澤氏は,1994 年から現在までの 16 年の長きにわたり,SC 27 専門委員会委員な

らびに SC 27/WG 2 小委員会幹事を務められ,情報セキュリティ技術の標準化活動に

貢献されてきました.さらに 2001 年からブロック暗号やハッシュ関数などのプロジ

ェクトエディタ,2006 年よりセクレタリを務められ,日本発の技術を含む国際規格

開発・推進に多大な貢献をされてきました.また,広報委員会の委員として情報規格

調査会の広報活動にも寄与されてきました.

平野 芳行 氏(日本電気株式会社)

平野氏は,2001 年から 9 年の長きにわたり規格役員を務められ,総務担当として

規格総会,運営委員会の運営にも尽力されました.また,技術委員会 JTC 1/WG 6(IT

コーポレートガバナンス)および SC 7(ソフトウエア技術)SC 27(セキュリティ技

術)専門委員会などで中心的に活動をされ,特に JTC 1 の専門業務用指針を議論する

SWG-Directives に設立当初から参加し,ISO/IEC との整合にも深く関与し,国内の対

応委員会であるディレクティブズ小委員会を立ち上げ,幹事を務められました.

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標準化貢献賞

佐藤 和弘 氏(日本電信電話(株))

佐藤氏は,2001 年から SC 25 専門委員会幹事,SC 25

/WG 4小委員会幹事,2009年から同委員会主査として,

現在まで 9 年の長きにわたり運営スタイルの大きく

異なる SC 25 全体と WG 4 における国内審議を取りま

とめ,日本から提案したレスポンシブリンク装置間イ

ンタフェースとして国内から世界まで広く利用され

ているファイバーチャネルや SCSI などの標準化に尽

力貢献されてきました.特に WG 4 における米国との

協力関係の開拓など日本の影響力保持に重要な役割

を果たしてきました.

佐藤 慶浩 氏(日本ヒューレット・パッカード(株))

佐藤氏は,2001 年から 2009 年まで SC 27/WG 1 お

よび WG 4 小委員会委員,ならびに SC 27/WG 5 小委員

会主査として情報技術の標準化活動に尽力されまし

た.特に WG 5 の新設の際その方向付けについて国際

コンビーナとよく連携してリードし,Privacy

management system 等のプロジェクト計画について我

が国の意向を国際標準化会議に反映しました.

高田 智和 氏(国立国語研究所)

高田氏は,汎用電子情報交換環境整備プログラムに

おいて文字整理グリフ開発文字符号標準化の全分野

において活躍されました.中でも情報規格調査会が中

心となった国際標準への提案では,提案資料作成,国

際会議への参加,IVD への登録作業にあたって大きな

貢献をされました.

松原 友夫 氏

松原氏は,1980 年から SC 7 専門委員会に委員とし

て参加され,2010 年 4 月まで 30 年を超える長きにわ

たり SC 7 の国内外における活動に多大な貢献をなさ

れました.1995 年度に標準化貢献賞を既に受賞され

ておられますが,その後も変わらずSC 7専門委員会,

WG 9,および WG 10 小委員会の委員として案件の審議

をはじめとする活動に参加され,広範な知識に基づい

た適切な助言をいただきました.

松本 吉弘 氏(財団法人京都高度技術研究所)

松本氏は,2000 年 5 月から SC 7/WG 7 小委員会に

委員として参加され,WG 20 小委員会の設立とともに

主査に就任され,ISO/IEC 19579: 2005 SWEBOK(Soft

Ware Body Of Knowledge)の国際規格化に大きな貢献

を さ れ ま し た . そ の 後 さ ら に ISO/IEC 24733

Certificate of software engineering professionals

Comparison framework の審議において主査として指

導的立場から貢献されるとともに,8年にわたり主査

として WG を積極的に運営されてきました.

宮島 義昭 氏(住友電気工業(株))

宮島氏は,2000 年から現在まで 10 年の長きにわた

り SC 25/WG 3 小委員会主査,委員,および SC 25 専

門委員会の委員として SC 25/WG 3 国際会議に出席し,

ISO/IEC 11801:構内配線規格をはじめとして数多く

のデータ通信向け汎用構内配線システムの標準化に

多大な貢献をされました.

矢ケ崎 陽一 氏(ソニー(株))

矢ケ崎氏は,1990 年から現在までの 20 年の長きに

わたり SC 29/WG 11/Video 小委員会,および MPEG-4

小委員会の委員として,MPEG-2 Video,MPEG-4 Visual,

MPEG-4 AVC などきわめて広く普及している規格の要

素技術の提案者として標準化策定に貢献されました.

特に MPEG-4 Video Studio Profile では,Project

Editorを務め標準化を主導されました.さらにSC 29/

WG 11/MPEG-4 小委員会,および Video 小委員会の幹

事,SC 29 専門委員会の幹事として投票や委員会の取

りまとめにご尽力頂きました.

山崎 哲 氏(工学院大学)

山崎氏は,2002年から現在までSC 27/WG 1の委員,

および主査として情報技術の標準化活動に尽力され

ました.特に情報セキュリティマネジメントシステム

の中でも重要な ISO/IEC 27001(Requirements),お

よび 27000(Overview and Vocabulary)の国内リー

ダとして日本から積極的に提案を行い,他国との調整

に精力的にかかわり,国際規格策定に多く寄与されま

した.さらに2006年10月から2010年2月までISO/IEC

27003(Implementation guidance)のエディタを務め,

原案作成や多くの国からのコメント等の調整を実施

し,当国際規格の完成に貢献されました.

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山田 朝彦 氏(東芝ソリューション(株))

山田氏は,2008年4月から2010年3月までSC 37/WG

2小委員会の主査としてバイオメトリックテクニカル

インタフェース分野における国内調整,および国際標

準への展開にリーダシップをとり,国際での日本の地

位向上のための働きかけ,および責任ある立場で委員

会の適正運営に貢献されました.特に WG 2 における

主要規格である BioAPI および CBEFF 関連規格にセキ

ュリティ機能(暗号機能および ACBio 生成機能)を実

現する国際標準の開発,およびプロジェクトエディタ

として関与し多大な貢献をされました.

渡部 秀一 氏(シャープ(株))

渡部氏は,1999 年よりマルチメディアコンテンツ

検索等に利用される内容記述メタデータのデータ形

式・枠組みに係る規格 MPEG-7(ISO/IEC 15938)の標

準化に関し,国際会合に参加して技術提案をされるな

ど多大な貢献を続けてこられましたまた.SC 29/WG

11/MPEG-7小委員会,およびSystems小委員会,MPEG-7

SG の主査を務められ,MPEG-7 はもとより関連する

MPEG-A(ISO/IEC 23000),MPEG-B(ISO/IEC 23001)

規格の投票に際し,国内コメントの取りまとめに尽力

されました.

<国際規格開発賞の表彰>

国際規格開発賞は,当会に所属する Project Editor または Project Co-Editor の貢献に対して授与されるも

のです.受賞者は表彰委員会で審議決定し,受賞対象の規格が発行された後に授与されます.

2010 年 6 月の受賞者

宮地 充子

(北陸先端科学技術大学

院大学)

ISO/IEC 15946-5

Security techniques -- Cryptographic techniques based on elliptic curves

-- Part 5: Elliptic curve generation (SC27,2009-12-15 発行)

大網 亮磨

(日本電気(株))

ISO/IEC TR 15938-8:2002/Amd.5:2010

Multimedia content description interface -- Part 8: Extraction and use of

MPEG-7 descriptions -- AMENDMENT 5: Extraction and matching of image

signature tools (SC29,2010-03-15 発行)

大網 亮磨

(日本電気(株))

ISO/IEC 15938-6:2003/Amd.3:2010

Multimedia content description interface -- Part 6: Reference software --

AMENDMENT 3: Reference software for image signature tools

(SC29,2010-05-01 発行)

志水 信哉

(日本電信電話(株))

ISO/IEC 14496-4:2004/Amd.38:2010

Coding of audio-visual objects -- Part 4: Conformance testing -- AMENDMENT

38: Conformance testing for Multiview Video Coding

(SC29,2010-05-01 発行)

鈴木 輝彦

(ソニー(株))

ISO/IEC 13818-2:2000/Amd.3:2010

Generic coding of moving pictures and associated audio information: Video

-- AMENDMENT 3: New level for 1080@50p/60p (SC29,2010-05-01 発行)

原田 登

(日本電信電話(株))

ISO/IEC 23000-6:2009/Amd.1:2010

Multimedia application format (MPEG-A) -- Part 6: Professional archival

application format -- AMENDMENT 1: Conformance and reference software for

professional archival application format (SC29,2010-05-01 発行)

2010 年 7 月の受賞者

武富 理恵

((株)リコー)

ISO/IEC 29133:2010

Automatic identification and data capture techniques -- Quality test

specification for rewritable hybrid media data carriers

(SC31,2010-05-04 発行)

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<声のページ>

標準化活動について

矢ヶ崎 陽一(ソニー(株))

このたび SC 29/WG 11(MPEG)における活動に対し

て,標準化貢献賞という栄誉ある賞をいただきました.

これまで活動を支えていただきました Video 小委員

会,SC 29 専門委員会の皆様はもとより,多くのサポ

ートをして頂いた事務局の皆様に心より感謝してお

ります.

SC 29/WG 11(MPEG)の標準化活動に参加して,20

年以上になりますが,振り返ると,標準化活動のフレ

ームワークは,参加する方々の知を集積するために,

大変よくできたフレームワークであると,つくづく思

います.

標準化がスタートし,ある程度の参加者が集まると,

検討された内容が蓄積されます.その知の蓄積が進み,

公開されると,より多くの人々が興味を持ち,標準化

活動に参加します.すると,さらに多くの方々の検討

内容が蓄積され,より大きな成果となって,公開され

ます.このような Positive スパイラルが始まると,

後は大きな流れとなって,標準化が完了します.また,

標準化活動に参加した方々が,所属の組織で,さまざ

まな製品化やサービスの実現に努めることで,広く世

の中に普及していきます.

一方,標準化活動に参加する方々のモチベーション

はいくつかあると思いますが,企業に所属する方々は,

企業から特許 Royalty の獲得を期待されていると思

います.この特許 Royalty については,賛否が分かれ

るところと思いますが,特許制度によって,開発した

技術を広く公開できること,および,特許 Royalty に

よって,よりよい技術を開発したいというモチベーシ

ョンが強化されていると思います.この特許制度と標

準化活動が,うまくかみ合うことで,SC 29/WG 11

(MPEG)の標準は,MPEG-1 から始まり,MPEG-2/4/AVC

と継続して発展し,広く一般に普及することができた

と思います.

その一方,最近の標準化では,Royalty Free の議

論が行われています.また,標準化に限らず,世の中

では,Royalty Free と近い考え方の,Open Source が

普及している分野も見られます.このような Royalty

Free や Open Source の流れは,現状の標準化活動に,

どのような影響を与えるのか?これまでとは異なる

技術普及のシステムとして定着するのか?などに興

味があり,この流れを注視しながら,今後も標準化活

動に参画していきたいと考えております.

国際標準化活動における 2つの役割

山崎 哲(工学院大学)

現在,私は SC 27/WG 1 の主査として,標準化活動

に従事しています.この SC 27/WG 1 は,情報セキュ

リティマネジメントシステム(以降 ISMS と云う)の

国際標準化を担っている組織で,現在,20 近くのプ

ロジェクトに取り組んでおり,非常に忙しいワーキン

ググループの一つではないかと思っております.私は,

2002 年の活動開始以来,この WG 1 一筋で活動してお

ります.この取組みの中で,当初は,ISMS にとって

重要な規格である ISO/IEC 27001(Requirements)及

び 27000(Overview and Vocabulary)の国内リーダ

として,日本から積極的に提案を行い,他国との審議

を通して,日本からの要求を反映してきました.また,

2006 年からは,ISO/IEC 27003(ISMS Implementation

Guidance)のプロジェクトエディタを務め,今度は,

国際の舞台において,国際標準の原案の作成や,多く

の国からのコメント等の調整を行い,審議のための会

議をリードして,当規格の完成に取り組んできました.

この 2つの経験を通して,国際標準化活動への日本

の参画にあたり,大きく分けて,2つの役割が必要で

はないかと考えるようになりました.

第一の役割は,日本の代表として,国際標準に日本

のユーザの要求を反映することです.現在,ISMS 認

証の取得ユーザは,全世界で 6,500 になっていますが,

そのうち日本は約 3,500 で,実に全体の 5割を超える

位置を占めています.従って,日本の場合は,規格を

作る際に連続性を念頭に置き,規格が変わったら,ユ

ーザにどういうインパクトがあるかということを常

に考えなければならないのです.ところが,認証数で

いうと一桁というような国でも国際会議では各国が

平等に 1 つの投票権を得ているわけで,日本が例え

3,500 というユーザ数で大きな位置を占めていても,

投票において重視せよという理由には使えません.従

って,日本のユーザへの影響・利益を主張するために

は,常日頃,他の国々と情報交換して日本の国,及び

日本の主張が理解できる国をできるだけ多くしてお

くことが必要になってくるのです.

第二の役割としては,国際標準化活動で重要な役割

を果たすプロジェクトエディタを輩出することです.

プロジェクトエディタは,国際標準の原案を作成し,

各国からのコメントを取りまとめ,各国の代表が出席

する編集会議を招集し,会議の審議をリードし意見を

調整し,決定事項(Resolutions)に基づいて原案を

改訂し,改訂版を作成して,審議を繰り返すのです.

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このプロジェクトエディタの役割を果たすためには,

国籍,人種,言語,文化などが異なる人々をいかにま

とめて,一つの国際標準を完成させるという目標に向

けて力を出していけるかということが問われていま

す.このようにプロジェクトエディタは,直接国際標

準のテキストの内容に重要な役割を果たすことから,

ISMS を構築した多くの経験を保有している日本は,

このようなプロジェクトエディタを多く送り出すこ

とを世界から求められているのではないかと考えて

います.こうすることにより,ひいては,日本のユー

ザの要求・利益を満足させることになるのではないか

と考えます.

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<編集後記>

国際標準化のアプローチはさまざまである.

今号の<標準活動トピックス>で紹介されている

プログラム言語 Ruby は,国内標準化(JIS 制定)後

に,Fast Track 提案することを目指している.この

手順は,情報分野では我が国では初めての試みである

という.ただし,国際標準化会合の場で,事前の予告

や日本国内での作業状況の説明を行ったり,国際コミ

ュニティの支援を得たりするなどの根回しも進めら

れている.既に内外の多くの分野で利用されている

Ruby 言語ならではのアプローチと言える.

一方,近距離無線通信プロトコル(NFCIP-1)は,ま

ず,開発元企業から Ecma に提案されてその標準とな

った後,Ecma からの Fast Track 提案により国際標準

となった.JIS 化作業は国際標準規格が出版されてか

ら開始され,まもなく制定される見込みという.この

ように地域標準化機関による標準化作業の特性を考

慮したアプローチも重要であり,このケースは,標準

化の迅速性を重視したものであろう.

これら Fast Track 手続きよる国際標準化に対し,

今号の<解説>で紹介されている ISO/IEC 29119

(Software Testing)規格は,各国の専門家が議論を積

み重ねて,作り上げられようとしている.ポイントは,

このプロセスにおいて,いかに我が国からの提案を盛

り込ませるかということである.このような作成過程

から,一般に,時間はかかるが,多方面の知見と経験

が反映され,完成度は比較的高くなると考えられる.

このようにさまざまな戦術を駆使して国際標準化

活動に取り組んでおられる関係者の尽力に敬意を表

したい.(HY 記)

発 行 人

一般社団法人 情 報 処 理 学 会

情報規格調査会

広報委員会

〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8

機械振興会館 308-3

Tel: 03-3431-2808 Fax: 03-3431-6493

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