1 ブラジルの概要 - JBIC訳では、Federative Republic of Brazil、日本語訳では、ブラジル連邦共和国と記される。 図表 1-1 ブラジルの位置(モルワイデ図法
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C146-0368
TechnicalReport
ブラジル産エッセンシャルオイルCordia verbenaceaeのキャラクタリゼーションCharacterization of the volatile fraction of Brazilian essential oil, namely Cordia verbenaceae
Margita Utczás1、Giuseppe Micalizzi1、Luigi Mondello1, 2
Abstract:
ブラジル産の薬草Cordia verbenaceae L.のエッセンシャルオイルのキャラクタリゼーションをGC-MSを用いて行った。揮発化合物の同
定には、線形保持指標(LRI)付のFFNSC香料ライブラリを使用した。2種類の条件、つまり、MS類似度90%以上と±5 LRIでフィルタリン
グを行うことで、48の化合物が同定でき、迅速で信頼性の高いピーク同定作業が可能になった。
Keywords: GC-MS、FFNSC香料ライブラリ
1. はじめにエッセンシャルオイル(EO)は、植物から抽出される高価な原料である。EOは香りを有し、防腐性があることから、化粧品や食材に広く用いられている。また、ある種のEOでは、それが持つ薬効や抗菌効果が注目されている。昔から、植物は多くの薬としての役割を果たしてきたことはよく知られているが、ブラジルの伝統的な多くの薬もその一例である。特に、注目されているのが、Boraginaceae科のCordia族のある植物で多くの効能が報告されている。Cordia族には約250の種があり、それらは、主に中南米、インド、アジアやアフリカの熱帯または亜熱帯地域に高木または低木状に分布している。特に、普通 “erva baleeira”としてよく知られているCordia verbenaceae L.は、ブラジル、中米やアルゼンチンの海岸地方で見ることができる(Fig. 1)。この葉から抽出されたEOは酸化防止活性や薬理活性の面から重要で、抗菌のための植物療法や抗炎症剤、抗リューマチ剤、鎮痛剤、強壮剤、関節炎の治療に用いられている[1‒7]。葉から抽出されたEOの揮発成分には2種類のセスキテルペン、つまり、α-humuleneとtrans-caryophylleneが含まれているが、これらがCordia verbenaceae EOの抗炎有効成分であると報告されている[8]。Cordia verbenaceae L.から抽出されたEOについて、GC-MSやFFNSC(Flavour and Fragrances Natural and Synthetic Compounds)MSスペクトルライブラリのようなLRI情報を含むMSデータベースを用いて、組成やその相対量を明らかにする。電子衝撃イオン化法(EI)により作られるマススペクトルは、
フラグメンテーションが強く再現性も高いため、複雑な混合物の化合物同定に力を発揮する。主要なEO成分は、一般的にマススペクトルや文献データの比較から同定することができる。しかし、セスキテルペンのようなある種の化合物に関しては、マスのフラグメンテーションパターンが類似しているため、この方法はうまくいかないことがあり、個別成分の誤同定を引き起こす可能性がある。この場合、MSの類似度と合わせて線形保持指標(LRI)の情報を利用することで、ピーク同定における信頼度を高めることが可能になる[9]。
Fig. 1 Cordia verbenaceae
2. 実験
2-1. 試薬、材料、試料前処理Cordia verbenaceaeの葉のEOは、クレベンジャー装置を用いて水蒸気蒸留をし、抽出した。試料の希釈にはヘキサン(純度>97%)を用いた。LRIの計算用にC7‒C30飽和n-alkaneシリーズ(49451-U SUPELCO)を用いた。定量用に内部標準として100 mg/mLノナンを使用した。いずれの試料も異なった濃度で3回注入を行い、同定可能化合物数が最大になるようにした。
2-2. 装置・ ガスクロマトグラフ GC-2010・ ガスクロマトグラフ質量分析計 GCMS-QP2010 Ultra
1 Chromaleont S.r.l., Italy2 University of Messina, Italy 1
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2-3. メソッド
カラム : SLB-5ms 30 m×0.25 mm I.D.×0.25 µm df [極性的にはポリ(5% diphenyl/95% methylsiloxane)]に 仮想的に等価なsilphenylene)](Supelco、イタリア)GCオーブン : 50 ~ 280℃(5分)、3℃/分で昇温キャリアガス : He線形速度 : 30 cm/s(一定モード)注入 : スプリット 1:50注入口温度 : 280℃
MSパラメータ
MSイオン化モード : EIデータ収集周波数 : 33 Hz質量範囲 : m/z 45‒360イオン源温度 : 220℃インターフェイス温度 : 250℃
FIDパラメータ
FID温度 : 300℃水素流量 : 40 mL/min空気流量 : 400 mL/minメイクアップ(N2)流量 : 40 mL/min
2-4. ソフトウェアGCMSsolution Ver. 4.20GCsolution Ver. 2.43MSデータベース : FFNSC 3 香料ライブラリ
3. 結果と考察C. verbenaceae EOの組成について、定性分析をGC-MSで、(相対的な)定量分析をGC-FIDで行った。EO試料の揮発留分のGC-MSクロマトグラムをFig. 2に示す。参照データベースとして、FFNSCライブラリを主に用い、GCMSsolutionですべての積分ピークを自動同定した。この際、MSのスペクトル類似度 (90%)とLRIの許容値(±5 LRI単位)の2種類の設定でフィルタリングを行った。MSスペクトル類似度のみを適用した場合、90%以上という条件だけではFig. 3に示すようにターゲット分子に多くの候補がリストアップされることがあった。一方、LRIフィルタを追加すると候補数の数を減らすことができ、ほとんどの場合、候補化合物は1種類に絞れた(Fig. 4)。このツールを使用することで、迅速で信頼性の高いピーク同定が可能になる。 C. verbenaceae EO全体で48種の香料成分が見出された。その
うち、2本のピークはNIST11ライブラリを用いて同定された。つまり、Table 1に示すbergamotal とsantalal である。これらの化合物は単離し、特性を明らかにしてFFNSCライブラリに追加される予定である。このようにデータベースは絶えず更新されている。C. verbenaceaeオイルの主要成分はモノテルペンのα-pinene(35%)で、他にはα-santalene(15%)、trans-9-epi-caryophyllene(13%)やδ-cadinene(4%)などのセスキテルペンが見つかった。また、2~4%の重要な副成分としてcalarene、α-thujene、eucalyptol、caryophyllene oxideおよびα-humuleneが見つかった。この結果は、主要化合物がα-pinene(6‒16%)、β-phellandrene(3‒11%)、sabinene(16‒70%)、γ-elemene(6‒13%)、δ-elemene(3‒13%)、bicyclogermacrene(3‒11%)、β-caryophyllene(6‒25%)、γ-caryophyllene(5‒16%)、δ-cadinene(2‒9%)およびgermacrene B(3‒14%)とした他の文献データとの一致度は部分的だが、これは揮発留分構成の季節による変化や生物活性度の違いのためと考えられる[10、11]。
Table 1 Cordia verbenaceaeエッセンシャルオイルの同定化合物
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
化合物
Thujene
Pinene
Camphene
Thuja-2,4(10)-diene
Sabinene
Pinene
Myrcene
Cymene
Limonene
Eucalyptol
Terpinene
Sabinene hydrate
Sabinene hydrate
Pinocarveol
Verbenol
Pinocarvone
Terpinen-4-ol
Bornyl acetate
Cyclosativene
Copaene
Bourbonene
Sesquithujene
Elemene
Funebrene
Bergamotene
Santalene
Caryophyllene
Calarene
Sesquisabinene
Humulene
Caryophyllene
Germacrene D
Bergamotene
Selinene
Bicyclogermacrene
Muurolene
Bisabolene
Cubebol
Cadinene
Sesquiphellandrene
Bisabolene
Spathulenol
Caryophyllene oxide
Humulene epoxide II
Bergamotal
Santalol
Santalal
Santalol acetate
LRIFFNSC
927
933
954
953
972
979
991
1025
1028
1032
1058
1069
1099
1141
1145
1164
1184
1285
1367
1375
1382
1387
1390
1403
1416
1418
1424
1434
1455
1454
1464
1480
1483
1492
1497
1497
1508
1518
1518
1523
1528
1576
1587
1613
—
1676
1679
1778
LRIexp
925
934
951
954
972
978
989
1025
1030
1032
1059
1071
1102
1142
1147
1164
1182
1285
1370
1378
1384
1388
1391
1403
1415
1421
1422
1434
1455
1457
1464
1483
1485
1491
1498
1500
1509
1519
1521
1525
1528
1579
1585
1614
1673
1678
1682
1776
ΔLRI
2
−1
3
−1
0
1
2
0
−2
0
−1
−2
−3
−1
−2
0
2
0
−3
−3
−2
−1
−1
0
1
−3
2
0
0
−3
0
−3
−2
1
−1
−3
−1
−1
−3
−2
0
−3
2
−1
−2
−3
2
MS %
97
97
96
95
97
95
92
96
92
90
93
91
90
95
91
91
91
95
93
92
92
93
92
98
97
95
94
91
98
97
97
92
95
95
95
95
95
93
93
93
93
90
90
94
93
95
92
94
Area %
2.46
35.1
0.14
0.04
0.55
0.25
0.12
0.21
0.11
2.3
0.08
0.08
0.09
0.44
0.17
0.11
0.43
0.48
0.07
1.57
0.24
0.53
*
0.19
0.55
13.21
*
3.65
0.25
2.17
14.82
1.03
0.1
0.21
0.85
0.15
0.21
0.12
4.19
0.08
0.05
1.73
2.18
0.32
0.49
0.17
0.63
0.06
* 前のピークと共溶出
2
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Fig. 2 Cordia verbenaceaeエッセンシャルオイルのGC-MSクロマトグラム (ピーク同定の結果はTable 1に示す)
Fig. 3 GCMSsolutionのMS類似度のみの自動フィルタを用いて得られた同定化合物の候補
Fig. 4 GCMSsolutionのMS類似度とLRIフィルタの両方を用いて1つに絞り込まれた化合物の候補
3
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4. 結論Cordia verbenaceae L.の葉から抽出されたエッセンシャルオイルをGC-MSを用いて分析した。特定のクロマトグラフィー条件と3種類の異なった固定相で計算されたLRIを含む香料分野専用のMSデータベース(FFNSCライブラリ)を利用し、大部分の主要成分を高速かつ高信頼に決定できた。その際、90%以上のMS類似度に適合し、±5 LRI範囲を同時に満たすという条件を用いた。
参考文献
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初版発行:2016年 11月© Shimadzu Corporation, 2016