Fuji Xerox Sustainability Report 2013...調達担当者による中国全取引先訪問を開始...

4
Fuji Xerox Sustainability Report 2013

Transcript of Fuji Xerox Sustainability Report 2013...調達担当者による中国全取引先訪問を開始...

Page 1: Fuji Xerox Sustainability Report 2013...調達担当者による中国全取引先訪問を開始 ~CSRはQCD※に直結する~ ハイライト2 富士ゼロックスの中国における調達部門を舞台に、サプライヤーと

Fuji Xerox Sustainability Report 2013

Page 2: Fuji Xerox Sustainability Report 2013...調達担当者による中国全取引先訪問を開始 ~CSRはQCD※に直結する~ ハイライト2 富士ゼロックスの中国における調達部門を舞台に、サプライヤーと

調達担当者による中国全取引先訪問を開始

~CSRはQCD※に直結する~

ハイライト 2

富士ゼロックスの中国における調達部門を舞台に、サプライヤーと

の共通価値創造の活動が始まった。2012年6月、これまでのCSR

セルフチェックリストと専門チームによる訪問確認に加え、調達担

当者全員がCSRの基礎教育を受け、10項目の共通確認事項を定め

て、CSR調達の最前線に立って中国で事業を営むすべての取引先

への訪問を開始した。個々の取引先が抱えるそれぞれの課題、調達

担当者の使命感。富士ゼロックスの新たな挑戦を報告する。

● CSR調達を開始した年.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .2007年

● 専門チームのチェック項目数.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 132項目

● 専門チームの月間訪問確認数.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 約2社

● 調達担当者による基礎訪問のチェック項目数.. . . . . . . . . . . . . . 10項目

● 調達担当者による月間訪問確認数.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .約17社

※.QCD:品質・価格・納期

(2012年7月~12月平均)

16Fuji Xerox Sustainability Report 2017Fuji Xerox Sustainability Report 2013

Page 3: Fuji Xerox Sustainability Report 2013...調達担当者による中国全取引先訪問を開始 ~CSRはQCD※に直結する~ ハイライト2 富士ゼロックスの中国における調達部門を舞台に、サプライヤーと

仕入先であるサプライヤーに対して、CSRのテーマを含む調達基準を提示し、その遵守を要請する活動を一般的に「CSR調達」という。これに対して富士ゼロックスでは、サプライヤーとの相互理解を深めて目的を共有し、共通価値を創造するという意味で、一連の活動を「サプライヤー・エンゲージメント」と呼んでいる。2007年、担当部門が活動計画を提案した際に社長の山本(当時は専務執行役員)が実施の条件としたのは「当社の都合による活動とはせず、サプライヤーとWin-Winの関係を考え続ける」ことであった。求めるQCD(品質・価格・納期)と安定供給や生産体制の柔軟な変更を両立するには、サプライヤーのパワーアップと協力が不可欠である。つまり、ともに強くなる共通価値を創造する活動でなければ当社にとっても意味がない。こうした考え方が活動の根底に流れている。

2007年、富士ゼロックスは東京を皮切りに、海外生産拠点である仁川(韓国)、上海(中国)、深圳(中国)でサプライヤー向け説明会を開催した。まず一次サプライヤーを対象にしたセルフチェックリストの回収・分析に加え、2008年から調達・人事・総務・法務・CSRの担当者で構成する4~5名の専門チームによる訪問確認(専門訪問)を通じた改善活動に着手した。専門チームは①相手の経営層に参加してもらう②セルフチェックリストの回答内容は現場に足を運んで確認する③対話を通じて改善に結びつけることでサプライヤーの利益にもなる点を納得してもらう、という基本方針を立てた。専門訪問の結果、見えてきた課題は二つある。一つは、この活動

を調達の日常の業務プロセスに組み込むことである。CSR調達が日々の調達活動と別のものととらえられると、セルフチェックの報告内容と実態との乖離の確認および改善が遅れてしまう。特に当社の全生産量の約9割を占める中国において実際そのような問題が確認された。相互の理解と信頼、実現可能な計画、成果の実感がなければ、共通価値の創造は困難だ。二つ目は、当社側の人的リソースの制約である。専門訪問では、短期間で確認できる事業所数に制限があり、全体をカバーするスピードに限界があった。

この二つの課題に対応するためにたどり着いたのが、調達担当者の戦力化だ。当初は専門チームの強化も検討したが、中央調達部長の松浦智之はこう考えた。「調達担当者は、サプライヤーに対する富士ゼロックスの“顔”としての責任がある。自分の担当業務を狭い範囲に限定するのではなく、QCDに加えCSRを含めた

広い視野で担当のサプライヤーや業界を俯瞰し、調達活動全体を適正な方向に牽引できなければならない。調達担当者は、サプライヤーの状況や問題点を誰よりも承知している。調達担当者を戦力化して、日常業務のなかで、サプライヤーとのパイプの深化、問題点の早期把握と社内報告の役割を果たしてもらえば良い方向に進むはずだ」こうして、調達担当者による全事業所の訪問確認(基礎訪問)の実施が決まった。中国における対象の全事業所の訪問を、専門チームが行うと10年以上かかるが、調達担当者であれば2年ですべてのサプライヤーを一巡できる計算だ。

調達担当者によるエンゲージメント強化と一口に言っても、専門チームと同様の132項目を一人ひとりの調達担当者が通常業務のなかで確認するのは事実上困難である。しかし、チェック事項が単純すぎると、実態と報告内容との乖離という課題に切り込めない懸念がある。どのような基準で調達担当者に活動してもらうか、中国の専門チームと日本の中央調達部が何度も議論を重ねた。その結果、CSRの視点をどこまで徹底できているのか、客観的な事実で判断できるチェックポイントとして10項目に絞り込んだ。この10項目を糸口に、訪問の際にできるだけ深く掘り下げて状況を把握してもらおうと考えたのである。そして調達担当者の役割は厳密な調査ではなく、現場で感じた異常や違和感を専門チームに伝達し、その後の専門チームによる改善につなげることとした。2012年6月、全調達担当者が上海・深圳に集合した。そこで、日

本の中央調達部と中国の専門チームが協力し、CSR調達の重要性、調達担当者による訪問確認に至った経緯と意義、調達担当

サプライヤー・エンゲージメントとは 全社をあげた取り組みへ~調達担当者の戦力化~

10項目に絞ったチェックポイント~「一事が万事」~

これまでの活動内容と課題

富士ゼロックス調達本部 中央調達部部長 松浦智之

<富士ゼロックスのCSR調達活動における改善の進め方>

CSR調達セルフチェックの実施(各サプライヤー)

改善計画立案

改善活動の実施 結果確認による課題の抽出

改善活動フォロー

個別相談対応、支援

当社から結果のフィードバック

専門チーム/調達担当者による訪問確認

17Fuji Xerox Sustainability Report 2013

Page 4: Fuji Xerox Sustainability Report 2013...調達担当者による中国全取引先訪問を開始 ~CSRはQCD※に直結する~ ハイライト2 富士ゼロックスの中国における調達部門を舞台に、サプライヤーと

者の役割など基礎教育を実施し、調達担当者による基礎訪問が始まった。

調達担当者による基礎訪問を開始すると、彼らの意識に良い影響が現れはじめた。求めるQCDを確保するには、経営者の姿勢、従業員の労働条件や安全配慮、正確な業務知識と適正な管理など、サプライヤーの経営に踏み込んで、一緒に改善を考える努力が必要という意識が生まれ、多くの調達担当者がCSRをQCDに直結する取り組みとして認識するようになった。調達業務の本質を追究することで、一人ひとりが大きく成長する機会を得たのだ。「訪問先の経営層はこちらの話をきちんと聞いてくれます。自分たちの仕事は、サプライヤーから安定的に質の良い商品を供給してもらうことです。そのためにはサプライヤーがどういう考え方で経営を行っているかを理解しておく必要があります。」富士ゼロックスチャイナプロキュアメントサービス調達担当者の廖必詳は、活動のメリットをこう話す。しかし、課題も明らかになった。チェッ

クポイントを単純化したため、調達担当者によっては潜在的な問題にたどり着けず、後になってトラブルが見つかるケースが散見されたのである。松浦は言う。「一朝一夕にいくとは考えていない。調達担当者によってバラツキがあるのであれば、なぜバラつきが生じるのか?.自分の行った基礎訪問にどんな課題があったのか?.『このサプライヤーはこうだ』と言えるようになるまで、調達担当者が自ら考え、専門チームと連携してもらう必要がある」また、サプライヤーのなかには、内

部の問題を明らかにすることで今後の取引に悪い影響が出ることを心配するところもある。この点は、調達担当者の経験やスキルを充実させて適切

なアドバイスをできるようにし、相乗の利益を生んだ改善事例を積み重ねることで、サプライヤーの信頼を得ることが必要である。

調達担当者による全取引先の基礎訪問は、まだ試行錯誤の段階にある。CSR調達では、当社の企業としての姿勢が問われる。富士ゼロック

ス深圳の取引先である富士工精密器材(深圳)有限公司の鍋田久寿董事長は語る。「富士ゼロックスの専門チームによる訪問確認は、他社のいわゆる『監査』とは位置づけが違い、ともに改善しようという.姿勢が伝わってきます。改善方法の的確なアドバイスなど、我々の競争力強化につながる提案は歓迎です。」専門チームのノウハウをいかに共有し、調達担当者と専門チームとの連携体制をどう強化するのか。従業員の総力を結集して取り組むことで、業務プロセスの本質的な改善や真のサプライヤー・エンゲージメントの実現が可能となる。サプライヤーとともにより本質的なCSR調達を目指す富士ゼ

ロックスの挑戦は続く。

ハイライト2 ▶ 調達担当者による中国全取引先訪問を開始~CSRはQCDに直結する~

<調達担当者による基礎訪問の確認10項目>

. 1.. ごみの管理:集積場がきれいである

. 2..トイレの清掃状況

. 3.. 意見箱の設置の有無

. 4.. 環境許認可(ISO14001):.取得証明書の有無

. 5.. 消火器(最低3ヵ所確認):.有効期限および動作確認

. 6.. 緊急避難経路図掲示の有無

. 7.. 避難通路.:.通行の妨げになる物が置かれていない

. 8.. 防具(耳栓、手袋、ゴーグル)着用の有無

. 9.. 取り扱う化学物質の「安全データシート」の提供の有無

.10. .寮の避難経路:通行の妨げになる物が置かれていない

富士ゼロックスチャイナプロキュアメントサービス第一采購部

鄭家慶

サプライヤーをより深く理解するには、確認項目の追加や、単純なチェック以外のやり方も考えるべきではないでしょうか。我々調達担当者が教育を受けCSRへの理解を深めて彼らに伝えていくとともに、取り組みが進んでいるサプライヤーへのインセンティブなど仕組みの構築が必要と考えます。

富士ゼロックス深圳CSR推進科 科長

劉美華

我々専門チームがカバーできるスピードや、訪問確認後の改善計画の進捗フォローに課題があったため、2013年からは、訪問後1年以内のフォローアップ訪問を必須とし、確実な改善を促しています。今後は調達担当者との連携体制や役割分担の見直し・強化を実施していきます。

富士ゼロックス調達本部 中央調達部調達企画チーム長成瀬勝彦

CSR調達が試行錯誤しつつも継続的な取り組みにより市民権を得て、国内外問わず全社的に認知されるようになったことには喜びと誇りを感じます。調達担当者のさらなる戦力化に関しても、同様に課題は多いと思いますが、中国サイドと協力しながら粘り強く取り組んでいきます。

基礎訪問の確認項目を自工場で実習する調達担当者たち

調達担当者の意識変化と課題活動の意義の再構成

18Fuji Xerox Sustainability Report 2013