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心理測定尺度集 VI 現実社会とかかわる〈集団・組織・適応〉 堀 洋道 監修 /松井 豊・宮本聡介 サイエンス社

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心理測定尺度集 VI現実社会とかかわる〈集団・組織・適応〉

堀 洋道 監修/松井 豊・宮本聡介 編

サイエンス社

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i監修のことば

監修のことば

 心理学や隣接科学の分野の研究では心理(測定)尺度と呼ばれるものが非常に多く使われて

いる。その意味で,研究の進歩に占める心理尺度の比重は大きい。心理尺度は個人の心理的傾

向(意識,感情,状態,態度,欲求,行動など)の程度を測定しようとして工夫された道具で

あり,言い換えれば,“ある心理的傾向について,それと関連する複数の項目から作られた一つ

の物差し(尺度)”である。たとえば,ある個人の共感性の程度は,それを測るのにふさわしい

項目群を用意し,その合計点によって示される。ただしその場合,測ろうとする心理傾向の内

容(概念)が明確であること,反応が安定していること(信頼性),測ろうとするものが測られ

ていること(妥当性)が満たされていることが望ましい。このような条件を満たした尺度を作

成するまでにはかなりの時間と労力が費やされることが多い。

 しかし,安易に作成された尺度も散見される。また,安易ではないが,研究者の目的や,着眼

点の違いによって,同様な概念であっても異なった尺度があったり,研究の進展によって,新

しい概念が提案されると新しい尺度が開発されている。このようにして,非常に多くの玉石混

淆の心理尺度が存在することになるのである。そこで,社会心理学を中心に関連分野において

使われている心理尺度を収集し,いくつかの基準で尺度を選定し,尺度集として世に問うこと

は有意義であると考えた。そして 1994年に『心理尺度ファイル』(垣内出版)を発刊した。

 本書は前書を発展させたものとして企画された。現在,前書の作業時点から 10年を経過し,

この間に多くの尺度が開発されたことと,各方面の要望を考慮して,社会心理学にとどまらず,

適応・臨床関係の尺度を大幅に増やし,執筆者もその領域の専門家に加わっていただいた。

 尺度の選択の手順であるが,まず各執筆者は担当領域について,第Ⅰ~Ⅲ巻は 1990年から

1999年まで(新たに加えた第Ⅳ巻は 2006年まで),今回の第Ⅴ,Ⅵ巻は 2000年から 2010年

までの期間に公刊された学会誌,学会発表論文集,紀要,単行本にあたり,心理尺度を扱って

いる論文を集めた。

 そして次のような選択採用の基準を設け検討した。その基準は(1)日本語の質問形式である

こと(翻訳も含む),(2)信頼性と妥当性の両方またはいずれか一方のチェックをしていること,

(3)尺度構成に使われた回答者が 50人以上であること(多いほど良い),(4)中学生以上を対

象にしていること(第Ⅳ巻では幼児,児童を主に対象としている),(5)現在および将来におい

て有用と判断されること,(6)市販されていないこと,であった。

 採用の候補となった尺度は作成者(著作者)の掲載許可を得るとともに,その後の展開や関

連研究について教えていただいた。さらに版権所有者に転載許可の手続きをとった。1990年以

前の尺度とあわせ検討した結果,最終的には約 300の心理尺度が採択されることとなった。量

が多いことや,利用者の便宜を考えて次のような 6巻仕立てとした。

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ii 監修のことば

 第 I巻 山本眞理子編 「人間の内面を探る〈自己・個人内過程〉」では自己概念,自己知識,

自己評価,自尊感情,自我同一性,自己開示・自己呈示など自己に関するもの,ジェンダー・

性役割,認知判断傾向,感情・気分に関するものが含まれる。最後の章に「心理尺度の使い

方」についての解説がある。

 第 II巻 吉田富二雄編 「人間と社会のつながりをとらえる〈対人関係・価値観〉」では他者

の認知・他者への好意,動機づけ・欲求,対人態度,対人関係,対人行動,社会的スキル,集

団・リーダーシップ,産業・職業ストレス,進路選択,価値観・社会的態度,ライフスタイル

などが含まれる。最後の章に「信頼性と妥当性」についての解説がある。

 第 III巻 松井 豊編 「心の健康をはかる〈適応・臨床〉」では,ストレス,適応とライフ

イベント,ソーシャル・サポート,抑うつ・不安,人格障害と問題行動,看護と心理,学校・

教育・学習などが含まれる。最後の章に「心理尺度の作成方法」についての解説がある。

 第 IV巻 櫻井茂男・松井 豊編 「子どもの発達を支える〈対人関係・適応〉」では,おもに

高校生以下の幼児・児童・生徒の心理を測定するため,自己,パーソナリティと感情,動機づ

けと学習,家族と友人,対人関係,無気力と不安,ストレス,適応,障害のある子どもと特別

支援教育などが含まれる。最後の章に「子どものこころを測定するために」という解説がある。

 なお,今回刊行された第Ⅴ,Ⅵ巻に掲載されているのは 2000年以降に公刊された尺度であ

る。第Ⅰ~Ⅳ巻に掲載した尺度は再掲されていない。

 第 V巻 吉田富二雄・宮本聡介編「個人から社会へ〈自己・対人関係・価値観〉」では,自

己・自我(自己概念,自尊感情・自己評価,自我同一性の形成),認知・感情・欲求(認知判断

傾向,感情,動機づけ・欲求),対人認知・対人態度(対人感情,共感性・他者意識(ゆるし),

愛着・依存),親密な対人関係(夫婦,親子,友人,恋愛),対人行動(援助,攻撃・怒り),

コミュニケーション(自己開示・自己呈示,コミュニケーション,インターネット・携帯電

話),社会的態度・ジェンダー(価値観・性)などが含まれる。

 第 VI巻 松井 豊・宮本聡介編「現実社会とかかわる〈集団・組織・適応〉」では,集団・

リーダーシップ,学校・学習・進路選択・学校と適応,産業・組織ストレス,ストレス・コー

ピング(外傷経験),ソーシャルサポートと社会的スキル,適応・ライフイベント(幸福,出

産に関わる意識・育児),不安・人格障害・問題行動,医療・看護・カウンセリングなどが含

まれる。

 本書の編集上の特徴を以下に述べよう。

(1) 尺度の紹介に際しては,尺度の内容だけでなく,①測定概念・対象,②作成過程,③信頼

性・妥当性,④尺度の特徴,⑤採点法,⑥出典論文・関連論文には必ずふれた。

(2)原則として各尺度の紹介の後に,作成者(著作者)の連絡先を示した。

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iii監修のことば

(3)読者が検索しやすいように,人名索引,事項索引を用意した。

(4)�「コラム」欄には伝統的な尺度を中心に,その他の尺度について簡単に紹介・解説し,広範

囲の情報を提供できるように心がけた。

 本書は心理学の研究者や学生のみならず教育関係者,医療・看護・介護関係者,カウンセラ

ー,マーケティング調査関係者,企業の人事担当者などの実務家も対象としている。ただし,

利用に際しては,次のようなことに留意願いたいと思う。営利目的で利用される場合は,作成

者(著作者)に是非許可を得てほしいし,非営利目的の場合でも,臨床尺度の利用に際しては,

背景にある概念や理論をよく承知したうえで使ってほしい。背景となる理論や概念は,各紹介

の後に一覧されている出典論文で確認してほしい。

 前著で尺度を紹介させていただいた研究者(作成者)から「論文も読まずに,問合せをして

くる読者がいて,対応に苦慮している」とのご指摘をいただいたことがある。掲載尺度を使用

される場合には,作成者にご迷惑のかからぬように,くれぐれも十分なご配慮をお願いしたい。

 また,尺度を使った結果は作成者に知らせていただくと良いのではないかと思う。このよう

な形で研究交流や情報交換がなされるのも意義のあることと考える。本書が研究の進展や社会

の現場でのリサーチや問題解決に,ささやかながらお役に立てば望外の喜びである。

 本書の完成は多くの方々の大きな尽力のお陰である。各巻の編集者は内容の充実のための他

の巻との調整,尺度の選択,執筆者との連絡などでご苦労をかけた。執筆者は中堅および新進

気鋭の研究者と大学院生で,執筆だけでなく尺度の収集・整理から作成者への連絡まで,手間

のかかる作業をもお願いした。作成者の先生方には掲載のお願いに対し快諾をいただき,その

うえ,こちらからの問合せにも丁寧にご教示いただいた。皆様のご協力に対し心から感謝する

次第である。

 本書が読者にとって有益であるよう最善の努力をしたつもりであるが,行き届かなかった点

も少なからずあるかと思う。これらの点に関しては読者の建設的なご意見と叱正をいただき今

後の改善を期したいと思う次第である。

 企画の段階から細かい編集作業まで筑波大学心理学系松井研究室が中心になって進めたが,

第Ⅳ巻に関しては同学櫻井研究室が加わった。また,第Ⅰ~Ⅲ巻では宇井美代子さん,第Ⅳ巻

では院生の植村みゆきさん,第Ⅴ,Ⅵ巻は落合萌子さん,倉住友恵さんの二人に編集幹事役と

して大変ご苦労をかけた。

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 最後になるが本書の企画に深い理解を示し,出版を快く引き受けていただき,完成まで励ま

していただいたサイエンス社と担当の清水匡太さんに感謝の意を表したい。

監修者 堀   洋 道  

監修のことば

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v

は じ め に

 本書は心理学の中でも現場の問題に深くかかわる領域に属する研究の中で開発された尺度を

多く収録している。

 「集団・リーダーシップ」(第 1章)では,主に小集団に類する社会的対象への心理的特徴

を測定する目的で開発された尺度が収録された。具体的には部活動等における主将のリーダー

シップを測定する尺度,大学のサークル集団のフォーマル性を測定する尺度,新入メンバーを

寛容に受け入れることがどの程度できるかを測定する尺度,グループの個々のメンバーが協同

作業をどのように認識しているのかを測定する尺度の 4尺度である。

 「学校・学習・進路選択」(第 2章)では,学校心理学的諸問題を明らかにする過程で開発さ

れた尺度を収録した。第 1節「学校」では生徒の教師に対する信頼度を測定する尺度,教員の

授業に対する取組みを評定する尺度の 2尺度を紹介する。第 2節「学習」では,学習過程にお

いて他者に助言を求めたり,質問したりすることで,自分の力では解けない課題の解決援助を

求める傾向を測定する「学業的援助要請尺度」,友人と行う学習活動の傾向を測定した「友人

との学習活動尺度」の 2尺度を紹介する。第 3節「進路選択」では高校への進学動機を,動機

の自律性に着目して測定することを試みた「自律的高校進学動機尺度」,進路選択にあたって,

やりたいことを「探したい」という内発的な動機から,周囲の影響によって「探さなければな

らない」という外発的な動機までのどの側面の意識が強いかを測定する「“やりたいこと探し”

の動機尺度」,進路決定の困難さの程度とその原因を明らかにすることを目的に作成された

「進路意思決定の困難さ尺度」の 3尺度を紹介する。第 4節「学校と適応」では,「不登校傾向

尺度」と「学校での不適応傾向尺度」の 2尺度を紹介する。

 「産業・組織ストレス」(第 3章)では,産業・組織心理学的側面から近年クローズアップ

されている諸問題の解決のために開発された尺度が取り上げられている。「サービス化した組

織における成員裁量の職務行動尺度」は,顧客との関係に関するスキルを測定する尺度である。

他には日本の組織に特有の組織市民行動を測定するために作成された「日本版組織市民行動尺

度」,飲食店の従業員を対象に,感情労働行動を測定するために開発された尺度,職場におい

て特定の他者に対する否定的な感情,消極的な態度をとる傾向を測定するために開発された尺

度,職場での迫害,いじめの経験を測定する尺度の計 6尺度を取り上げた。

 「ストレス・コーピング」(第 4章)では,主にストレスとそれへの対処(コーピング)に関

連した心理変数を測定する尺度を取り上げた。第 1節「ストレス」では,日常体験するストレ

ス反応のうち,心理的ストレス反応と身体的ストレス反応を同時に測定するために開発された

尺度を紹介する。第 2節「コーピング」では,ストレス状況における問題焦点型対処方略と思

考の制御困難性の関係を明らかにするために作成された「問題焦点型対処方略」,ストレス下

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vi は じ め に

での精神的回復力の大きさを測定する尺度の 2尺度を紹介する。極端に強いストレス経験は,

その影響が後々まで残ることが知られている。これを外傷経験という。第 3節では外傷経験に

焦点を当てた「死別対処尺度」「日本語版外傷後の成長尺度」の 2尺度を紹介する。

 「ソーシャルサポートと社会的スキル」(第 5章)は 3つの尺度の紹介と 1つのコラムからな

っている。第 1節「ソーシャルサポート」では,中高年者の精神的健康とそれへのソーシャル

サポートの状態を把握するために開発された尺度を紹介する。またソーシャル・キャピタル

(社会関係資本)の概念についてコラムで解説した。ソーシャルサポートと密接に関連する概

念として今後注目されるであろう。第 2節「社会的スキル」では社会的場面における自己制御

能力を測定する尺度,ライフスキル測定のために開発された尺度の 2尺度を紹介する。

 「適応・ライフイベント」(第 6章)では,健康心理学的諸問題に端を発した研究の途上で開

発された尺度が含まれている。第 1節「適応・幸福」では青年の適応感を測定するために開発

された尺度,心理的健康度を示す指標である主観的幸福感を測定する尺度の 2尺度を紹介する。

第 2節「出産に関わる意識・育児」では,妊婦がセルフケア行動を意図している程度を測定す

るために開発された尺度,母性愛という伝統的性役割感に基づいた母親役割を信じる傾向に着

目した尺度,育児によって感じる感情を測定するために開発された尺度,子どもの行動を親が

どのようにとらえているか,その認知傾向を測定する尺度の計 4尺度を紹介する。

 「不安・人格障害・問題行動」(第 7章)は,対人不安,抑うつ,人格障害と問題行動など,

臨床心理学的な問題と深くかかわった尺度を取り上げる。第 1節「対人不安」に関する領域は,

2000年以降だけでもかなりたくさんの尺度が開発されている。それだけ研究者の関心の高い

研究領域といえよう。その中で本節では「状況別対人不安尺度」を取り上げ紹介した。抑うつ

も対人不安同様,多くの研究・尺度開発が行われている。第 2節では特に近年の研究の特徴を

反映した「抑うつに耐える力尺度」を紹介する。第 3節「人格障害と問題行動」では「対人関

係における境界例心性尺度」「ボーダーライン・スケール」「自己関係づけ尺度」「日常的離人

尺度」「食行動尺度」の 5尺度を紹介する。なお,抑うつ傾向との関連を見た尺度としては,

第 V巻第 2章「認知判断傾向」節にも関連する尺度があるので参考にしていただきたい。

 「医療・看護・カウンセリング」(第 8章)は,文字通り医療現場に見られる心理学的問題と

深くかかわっている。第 1節「看護者・介護者の心理」では,看護環境でのストレッサーを測

定する尺度,介護・看護場面における感情労働から生じる労働感情を測定する尺度,患者との

死別によって生じる看護師の悲嘆感情を測定する尺度の 3尺度を紹介する。第 2節「カウンセ

リング」では学生相談機関に対するイメージを測定する尺度,教育現場でカウンセリング・マ

インドがどのように理解されているかを測定する尺度の 2尺度を紹介する。

 本書では,利用者の便を図り,尺度そのものに加えて,十分な背景情報の提供に努めた。す

なわち,各尺度について①測定概念・対象者,②作成過程,③信頼性・妥当性,④尺度の特徴,

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viiは じ め に

⑤採点法,⑥出典論文・関連論文,⑦作成者(著作者)の連絡先,などの情報を記載した。本

書をお読みになれば,尺度に関する十分な情報が得られると思うが,さらに詳しくは,出典論

文・関連論文をお読みいただきたい。ただし,作成者への問い合わせは,論文を読んでも分か

らない点のみに限っていただきたい。くれぐれも作成者にご迷惑のかからぬようにご配慮をお

願いしたい。

 また引用許可について説明したい。学術雑誌などに掲載された尺度は,作成者ご本人がその

著作権を持っている(厳密に言うと著作者人格権。出版権や著作財産権は掲載雑誌が有してい

る場合が多い)。このため,学術雑誌への投稿や学会での発表など,結果を公表することを目

的とした研究でこれらの尺度を使用する場合には,2つの考え方がある。

 第 1は,使用前に著作(権)者に引用許可をとるべきであるという考え方である。医学や看

護学の世界では,この立場をとる方が多く,心理学でもこうした立場をとる研究者が増えてい

る。アメリカで発表される尺度ではこうした考え方がとられることが多いため,海外の尺度を

邦訳して使用する際には,元の著作(権)者に邦訳権の設定許可を得る必要がある。

 第 2は,販売目的で作成された尺度ではなく,学会誌に公刊された尺度を学術目的で使用す

る場合には,著作(権)者に許可をとる必要はないという立場である。この立場は,学会誌に

掲載された研究手続きなどを非営利的目的で使用をする際には,開発者に使用許可をとること

はないという「学術成果の公開性」という考え方に立脚している。この立場にたてば,学術目

的で使用する際に事前許可を必要とする尺度は学術雑誌に全項目を公開すべきでないことにな

る。実際に販売目的で開発された尺度はこうした立場をとって,項目を学会誌に掲載していな

いことが多い。

 これらの中間的な立場として,尺度には著作権があるが,尺度内の個々の項目には著作権が

ないという考え方もある。

 いずれの立場が妥当であるかについては,本シリーズの監修者・編者間でも合意を得ていな

い。

 ただし,いずれの立場をとるにせよ,卒業論文のように結果の公表を予定していない研究で

尺度を引用する場合には,事前の引用許可は不要と考えられる。また,営利目的での使用時に

は,著作(権)者に許可を得る必要があるという点も共通している。出版物は学術図書であっ

ても,営利的引用と見なされるために,引用や転載にあたっては上記の関係者に,出版前に許

可を得る必要がある。今回は,著作者(尺度を作成された各研究者)に加えて,著作権者(雑

誌編集委員会や出版社,ただし紀要は除く)からも許諾を得ている。

 なお,Web上への尺度の掲載も引用や転載に該当するので,くれぐれも注意をお願いしたい。

 いまひとつ。尺度の回答選択肢について,同じ 5(あるいは 7)段階評定尺度においても,

「全く・やや・どちらかというと」など,段階の表現が尺度によって異なる場合がある。本書

では,尺度作成者の意向(原論文)を尊重して,そのまま採用している。同様に,信頼性や妥

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viii は じ め に

当性の記述についても,統一されていない。これも原論文を尊重する方針によるものであり,

ご理解を賜りたい。

 最後に,本書の編集は,多くの関係者の献身的努力に負うところが大きかった。関係者の皆

様に心から感謝する次第である。

第 VI巻編者 松 井   豊・宮 本 聡 介  

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ix目 次

目  次

監修のことば  堀 洋道 i

は じ め に  松井 豊・宮本聡介 v

1 集団・リーダーシップ 1    集団・リーダーシップ  大石千歳 2     主将のリーダーシップ尺度(吉村,2005) 5

     集団フォーマル性尺度(新井,2004) 9

     新入成員に対する寛容的反応尺度(植村,2001) 13

     協同作業認識尺度(長濱ら,2009) 16

2 学校・学習・進路選択 21    学  校  新井洋輔 22     生徒の教師に対する信頼感尺度(中井・庄司,2008) 25

     授業評定尺度(三島,2008) 30

    学  習  萩原俊彦 36     学業的援助要請尺度(野﨑,2003) 40

     友人との学習活動尺度(岡田,2008) 45

     コラム 教科別の学習方略尺度 50

    進 路 選 択  萩原俊彦 54     自律的高校進学動機尺度(永作・新井,2003) 58

     “やりたいこと探し”の動機尺度(萩原・櫻井,2008) 64

     進路意思決定の困難さ尺度(若松,2001) 69

     コラム フリーターに対する肯定的態度(安達,2007) 76

     コラム (学業と職業の)接続意識尺度(半澤・坂井,2005) 78

    学校と適応  渡部麻美 80     不登校傾向尺度(五十嵐・萩原,2004) 82

     学校での不適応傾向尺度(酒井ら,2002) 87

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x 目 次

3 産業・組織ストレス 91    産業・職業ストレス  髙橋尚也 92     サービス化した組織における成員裁量の職務行動尺度(吉原・古川,2007) 96

     日本版組織市民行動尺度(田中,2002,2004a) 100

     飲食店従業員の感情労働尺度(須賀・庄司,2007a) 106

     職場用対人苦手意識尺度(日向野・小口,2002a) 112

     職場の迫害尺度(田中,2008a) 117

     ワーク・ファミリー・コンフリクト対処行動尺度(加藤・金井,2006) 122

4 ストレス・コーピング 127    ス ト レ ス  佐藤広英 128     PublicHealthResearchFoundation ストレスチェックリスト・ショートフォーム

     (今津ら,2006) 130

    コーピング  佐藤広英 136     問題焦点型対処方略(杉浦,2002) 139

     精神的回復力尺度(小塩ら,2002) 145

    外 傷 経 験  畑中美穂 150     死別対処尺度(坂口・柏木・恒藤,2001) 152

     日本語版外傷後の成長尺度(宅,2010) 155

5 ソーシャルサポートと社会的スキル 161    ソーシャルサポート  髙橋尚也 162     日本語版ソーシャル・サポート尺度(岩佐ら,2007) 165

     コラム ソーシャル・キャピタル 170

    社会的スキル  渡部麻美 174     社会的自己制御尺度(原田・吉澤・吉田,2008) 176

     日常生活スキル尺度(大学生版)(島本・石井,2006) 183

6 適応・ライフイベント 191    適応・幸福  渡部麻美 192     青年用適応感尺度(大久保,2005) 194

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xi目 次

     主観的幸福感尺度(伊藤ら,2003) 199

    出産に関わる意識・育児  宇井美代子 204     妊婦のセルフケア行動意図尺度(眞鍋・瀬戸・上里,2001) 208

     「母性愛」信奉傾向尺度(江上,2007,2005) 214

     育児感情尺度(荒牧,2008) 219

     子どもの行動に対する認知尺度(中谷・中谷,2006) 225

     コラム 育児に関する尺度 232

7 不安・人格障害・問題行動 235    対 人 不 安  落合萌子 236     状況別対人不安尺度(毛利・丹野,2001) 243

     コラム ふれ合い恐怖的心性尺度(岡田,2002) 250

    抑 う つ  落合萌子 252     抑うつに耐える力尺度(近藤ら,2008) 256

    人格障害と問題行動  大石千歳・市村美帆 260     対人関係における境界例心性尺度(田村・井上,2005)  大石千歳 264

     ボーダーライン・スケール(町沢・佐藤,1990)  大石千歳 269

     自己関係づけ尺度(金子,2000)  市村美帆 274

     日常的離人尺度(舛田,2006)  市村美帆 279

     食行動尺度(加曽利,2008)  市村美帆 283

8 医療・看護・カウンセリング 287    看護者・介護者の心理  丹野宏昭 288     職場ストレッサー尺度(福田・井田,2005) 291

     感情労働尺度(荻野・瀧ヶ崎・稲木,2004) 296

     患者との死別後の看護婦の悲嘆尺度(山田・野島,2002) 301

    カウンセリング  太幡直也 306     学生相談機関イメージ尺度(伊藤,2006) 309

     カウンセリング・マインド認知尺度(野口・坂中,2007) 314

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xii 目 次

    人 名 索 引 321

    事 項 索 引 324

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集団・リーダーシップ

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この領域について

2 1 集団・リーダーシップ

 私たちは日常生活において,さまざまな集団の成員として生活している。一

般に集団というと,「仲良しグループ」や「サークル」などのように,お互い

が知り合いで,顔を突き合わせ,会話や共同作業をしながら関係を続けてい

くようなものをイメージする。社会心理学ではこれらの集団のことを「小集

団(small group)」とよぶ。しかしこれ以外に,心理学では国家,民族,宗教,

性別,社会階層,出身学校,職業なども,小集団と区別して「社会集団(social

group)」とよび,研究対象としている。本章では,上記の分類でいえば小集団

に関する研究の中から,いくつかの心理尺度を紹介する(社会集団に関する心

理尺度は,『心理測定尺度集Ⅱ』第 6 章を参照されたい)。

 小集団研究にはさまざまな観点があるが,重要な柱の一つとしてリーダー

シップ研究がある。リーダーシップ研究は『心理測定尺度集Ⅱ』第 6 章でも

とりあげているが,第Ⅵ巻では現実社会での応用という観点から,学校教育場

面における部活動の主将(キャプテン)のリーダーシップを測定する尺度をと

りあげる。学校教育において,部活動は生徒の人格形成に多大な役割を担って

きた。2008 年 3 月に文部科学省によって示された中学校の学習指導要領およ

び 2009 年 3 月に示された高等学校の学習指導要領では,部活動は「学習意

欲の向上や責任感,連帯感の涵養等に資するもの」として,明確に位置づけら

れることになった。部活動は従前から今日に至るまで,全国各地の中学校およ

び高校で広く一般的に行われてきたものであるが,その教育的効果を科学的に

測定する試みは,十分であったとはいえない。吉村(2005)の「主将のリ

ーダーシップ尺度」は,部活動の主将(キャプテン)のリーダーシップを測定する

もので,主に運動部活動をしている中学生・高校生・大学生などであるが,項

目の表現を企業組織に合った形にするなどの工夫により,企業などでの上司の

リーダーシップの測定にも応用できるであろう。

 学校教育や部活動に関連するものとして,さらに新井(2004)の「集団フ

ォーマル性尺度」をあげることができる。この尺度は,大学におけるサークル

集団を主な研究対象として,個々の小集団がもつフォーマル性を測定するもの

である。集団のフォーマル性とは,集団がどの程度構造化され,明確な規則や

目的をもち,役割分化がなされているかを示す概念である。フォーマルな集団

集団・リーダーシップ

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学校・学習・進路選択

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22

この領域について

2 学校・学習・進路選択

 学校を対象とした研究において開発されている尺度は,児童生徒を測定する

尺度,教員の実施する授業や教員自身を測定する尺度,組織・集団としての風

土や職員間の連携を測定する尺度など,多岐にわたる。

 本章で 1 つめに紹介する「生徒の教師に対する信頼感尺度」(中井・庄司,

2008)は,生徒の教師に対する信頼感を測定する尺度である。中井・庄司

(2006)によれば,対人的信頼を測定する研究は「他者一般に対する信頼感」

と「特定の他者に対する信頼」の 2 つに分類できる。後者のうち,教師―児

童生徒関係は,学校教育の基盤の一つとして生徒の学級適応などに影響する重

要な要因であるとともに,思春期における特定の他者との信頼関係という発達

的な観点からも肝要な要因と考えられる。

 なお,生徒を測定する尺度には他に,生徒の「学校生活スキル尺度」(飯田・

石隈,2002)などがある。測定項目が多数のため本章での項目掲載は割愛す

るが,下位尺度には「自己学習」「進路決定」「集団活動」「健康維持」「同輩と

のコミュニケーション」のスキルを含んでおり,学校生活において必要とされ

るスキルを網羅的に測定できる有用な尺度と考えられる。

 2 つめに紹介する「授業評定尺度」(三島,2008)は,教員の授業に対する

取組みを評定する,「小学校における授業の評定」を目的とした測定尺度であ

る。小・中・高等学校から大学にいたるまで授業改善の取組みがなされる昨今,

実施されている授業の評価は重要な過程と考えられるが,授業評定の項目は学

校や地方によってまちまちである。授業の諸側面を網羅的に評定するこの尺度

は,今後,授業評価の基準となりうる有用性の高い尺度と考えられる。

 他にも,教員を測定する尺度は,教師の自尊感情尺度や,教師のストレッサー

を検討する項目群が作成されている。教師の自尊感情については,「自尊感情

尺度」10 項目(山本・松井・山成,1982)の「自分」を「教師としての自分」

として,項目文の末尾を修正した「教師自尊感情尺度」(田村・石隈,2002)

が作成されている。教師のストレッサーについては,「教師用ストレッサー尺

度」(田中・杉江・勝倉,2003)や,「職務自体のストレッサー」「職場環境

のストレッサー」を測定する項目群(高木・田中,2003),「教師の職務葛藤」

を測定する項目群(高木・淵上・田中,2008)などが作成されている。

学  校

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36 2 学校・学習・進路選択

学  習 近年,「自ら学ぶ力」に対する注目が集まっている。日本の教育界では,

1980 年代ごろから「自己学習力」「自己教育力」を育成する必要性が指摘さ

れるようになったといわれており(伊藤・神藤,2003b),昨今では「生きる

力」として,自ら学ぶ力の育成が教育目標とされるようになっている。平成

20 年の中央教育審議会答申(文部科学省,2008)は,現代社会を「知識基盤

社会」と位置づけ,その激しい変化に対応していくためにも,国民一人一人が

学び続けることが必要である,としている。子どもにおいては,自ら学び,考

える「生きる力」として,大人においては,「自立した一人の人間として力強

く生きていくための総合的な力」として,生涯にわたって自ら学習を続けてい

けるようにすることが求められているのである。

 これに関連するものとして,教育心理学の分野で重要性が認められ,多くの

研究が積み重ねられてきたのが「自己調整学習(self‐regulated learning)」で

ある。自己調整学習において,学習者はメタ認知・動機づけ・行動の 3 側面

において,能動的に自己の学習過程に関わるとされる(伊藤,1997)。つまり,

自己調整学習を行う者は,自分がこれから行おうとする学習を成し遂げられる

と考えており(動機づけ側面),自分の学習方法について検討して,それを実

施した結果について評価を行い(メタ認知側面),学習上必要があれば他者の

力を借りたりして自分の学習環境を改善していく(行動側面)存在である。本

節では,この自己調整学習のうち,行動側面とメタ認知側面に着目して尺度を

紹介していくこととする。なお,動機づけ側面に関しては,「中学生用自己動

機づけ方略尺度」を作成して動機づけ,学業ストレスとの関連を検討した伊藤・

神藤(2003a)の研究がある。

 自己調整学習では,学習者は学習をより適切に行うために,さまざまな物理

的・社会的環境を整えていこうと行動する。そうした行動側面の一つとして,

学業的援助要請(academic help‐seeking)がある。学業的援助要請とは,学

習過程において,他者に助言を求めたり,質問したりすることで,自分の力

だけでは解けない課題の解決援助を求める行為のことである(野﨑,2003b)。

子どもが課題を解決するために他者の援助を求める行為については古くから検

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54 2 学校・学習・進路選択

 進路選択は,自己を見つめ直し,また,社会や労働についての知識を広めた

り深めたりする過程で,人格的に発達するきっかけとなるライフ・イベントで

ある(若松,2008)。一方で,進路を選ぶことは新たな環境に移行することで

もある。進学であれ就職であれ,こうした移行の機会は,時間的な制約が厳し

く,不本意な選択による挫折や社会的不利といった危機をも含んだライフ・イ

ベントであるといえる。このような,チャンスと危機をあわせもつ進路選択に

関連する尺度として,本節では職業選択と学校移行にかかわる尺度をとりあげ

ることとする。

 わが国はこれまで,青年が学校から仕事へとスムーズに移行することを支え

るシステムをもつ国として国際的に評価されてきた(OECD,2000)。しかし,

将来の職業に関する展望がもてず,職業を決定しない・できないという職業未

決定の問題が多くとりあげられていること(白井,2008)や,2000 年代に

入って以降,大卒就職者の就職後 3 年以内の離職率が 30% 台のままであるこ

と(厚生労働省,2008)などを鑑みれば,現在の青年は職業選択やその後の

適応に問題を抱えていると考えられる。

 もちろん,この背景には 1990 年代から行われてきた産業構造の変革や,そ

れに伴う雇用慣行の変化といった社会的要因があろう。一方で,問題の多くは

青年の職業選択に対する意識の変化にあるという見方も多い。そうした立場か

ら近年注目されてきたのが,当初,フリーターに特徴的にみられるとされた

「やりたいこと志向」(日本労働研究機構,2000)である。

 「やりたいこと志向」とは,好きなことや自分のやりたいことを仕事に結び

つけて考える傾向のことである(安達,2004)。心理学では,自己の適性や興

味を理解することが,適切な進路選択を行うにあたって重要な要素とされてき

た(たとえば Parsons,1909;Super,1957)。よって,「やりたいこと志向」

そのものが即,職業未決定につながるわけではない。しかし,就職活動で自己

分析を過度に行うことによって自己に焦点が向けられすぎ,かえって就職に踏

み出しづらくなるという心理があることも指摘されている(若松ら,2005)。

こうした心理は,「やりたいこと」と仕事を結びつけることにとらわれすぎて

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進 路 選 択

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80 2 学校・学習・進路選択

 近年の学校現場では,いじめや不登校,学級崩壊などのさまざまな学校適応

に関する問題が発生し,社会においても大きな問題として注目されている。児

童生徒の学校適応の問題は,教育心理学や臨床心理学において頻繁にとりあげ

られてきたトピックである。これまでに,生徒の適応・不適応の程度や適応に

影響を及ぼす要因などが,多くの研究者によって検討されてきた。

 近年とりあげられている適応状態を検討するための指標には,児童生徒自身

の主観的な適応感(不適応感),ストレッサーやストレス・コーピング,問題

行動や逸脱行動などがある。

 2000 年以降に開発された主観的な適応感を検討する尺度には,学校環境へ

の適応を測定する石津(2007),学校での友達関係や学業に対する積極性と

満足を測定する吉村(2007),学校生活への順応と学校生活の享受を区別し

て扱う岡田(2008)などがある。児童生徒の経験するストレッサーやストレ

ス・コーピングに焦点を当てた尺度には,高校生の日常生活におけるストレッ

サーを測定する三浦・川岡(2008)や学業ストレス・コーピングを測る佐藤

(2003),学校生活における悩み経験を測る山口・水野・石隈(2004)など

があげられる。問題行動や逸脱行動を検討する尺度には,問題行動兆候を扱

う寺田・田中・葛西(2008),不登校状態をとらえるために開発された山本

(2007),学校を欠席する理由や登校する理由を尋ねる本間(2000)などがある。

 ひとくちに不適応といっても,その様相は多岐にわたる。そのため適応して

いるかどうかということを明らかにするだけでなく,不適応状態にある一人ひ

とりの児童生徒が,どのような問題を抱えているのかをきめ細かく把握するこ

とが求められる。本節では,学校での適応状態を複数の側面から測定し,問題

行動の予防や個別の児童生徒への適切な介入方法の検討に役立つと考えられる

尺度を紹介する。

 酒井ら(2002)の尺度は,学校における不適応傾向を孤立傾向と反社会的

傾向から測定する尺度である。孤立傾向は学校で周囲となじめていないという

感覚や経験を表し,反社会的傾向は教師に対する反抗や授業を抜け出すといっ

た行動を表している。

 五十嵐・萩原(2004)の尺度は,さまざまな状態像を示す不登校傾向を測

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学校と適応

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産業・組織ストレス

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92 3 産業・組織ストレス

 日本では,1990 年代のバブル経済の崩壊以降,深刻な不景気の中で,産業

や働き方にさまざまな変化が現れている。角山(2009)は,産業・組織の変

化について,事業規模の縮小,組織再編,人員削減の波,終身雇用・年功賃金

の崩壊,成果主義の広がりと賃金格差,非正規社員の増加などをあげている。

また,こうした変化が,組織への忠誠心や職場の人間関係に大きな影響をおよ

ぼし,同僚との競争や解雇への不安など,職場でのストレスを増大させる要因

が増えていると概括している(角山,2009)。

 こうした社会環境の変化をふまえ,本章では,産業・職業ストレス領域の 6

つの尺度を紹介する。尺度の選定に際して,大きく次の 3 つの視点から整理

を行った。

 第 1 は,長期的な展望のみえにくい中で,個人が職務の推進や経営革新

に寄与するスキルをどのように獲得しているかという視点である。高石・古

川(2008)は,経営革新を促す従業員行動を体系化し,大きく 3 つに分類し

ている。第 1 は,企業の存続・維持に必要な行動で,決められたことを決め

られたとおりに処理する行動である。第 2 は,企業の発展を促す行動であり,

組織市民行動がその中核に含まれている。オーガン(1988)によれば,組織

市民行動とは,従業員が行う任意の行動のうち,彼らにとって正式な職務の必

要条件ではない行動で,それによって組織の効果的機能を促進する行動を意味

している。第 3 は,会社・組織の変革を促す行動であり,問題発見と解決行動,

重要情報収集行動,顧客優先行動,発案と提案行動などが含まれる。本章では,

高石・古川(2008)の分類のうち,第 2・第 3 の分類に着目する。企業内や

組織内においては,成果主義の導入や自己業績の重視によって,チームで協調

して職務を遂行するのが苦手な人が増加し,チームワークの重要性が再認識さ

れている(山口,2008)。こうしたチームワークの形成にとっても,職務上の

役割として明確に定められていない,組織を効果的に機能させる行動や組織の

変革に関わるスキルの獲得は,重要と考えられる。そこで,第 2 の分類に対

応する尺度として,企業や組織を良好な状態に保とうとするスキルである「日

本版組織市民行動尺度」(田中,2002,2004)を紹介する。第 3 の分類に対

応する尺度として,顧客との関係に関するスキルである「サービス化した組織

産業・職業ストレス

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ストレス・コーピング

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128

この領域について

4 ストレス・コーピング

「人間関係が煩わしい」「将来が不安である」など,多くの現代人がさまざま

なストレス(stress)に悩まされている。本来,ストレスとは,物質の内部に

生じる圧力という意味の物理学的用語であったが,その後,セリエ(Selye,H.)

によって「外界からのあらゆる要求に対する生体の非特異的な反応」として用

いられた。セリエは,物理的・化学的・心理的な刺激が生体に加えられるとき,

副腎皮質の肥大などの非特異的な反応が生じることを示し,その反応を汎適応

症候群(General Adaptation Syndrome;GAS)とよんだ。そして,GAS を

もたらすような外部刺激をストレッサー(stressor),ストレッサーによりも

たらされる生体の反応をストレス反応(stress response)とよんだ。たとえば,

人間関係の軋轢や将来への不安といったものがストレッサー,それらによって

生じる不安や抑鬱などの心理的反応や頭痛・胃痛などの身体的反応をストレス

反応という。日常的に用いられるストレスという言葉は,ストレッサーとスト

レス反応のいずれか(あるいは両方)をさすことが多い。

 近年,わが国において開発されているストレスを測定する尺度には,特定の

対象(看護学生など)の日常生活ストレッサーを測定するもの(宮崎,2003),

ストレス反応を測定するためのもの(今津ら,2006;鈴木ら,1997),警

察官などの二次受傷の症状を査定するためのもの(西・野島,2002;上田,

2006)などがある。なお,既刊の『心理測定尺度集Ⅲ』(松井編,2001)では,

2000 年以前に開発されたストレッサーを測定する尺度が紹介されている。

 ストレス反応を測定するための尺度のうち,鈴木ら(1997)の「心理的ス

トレス反応尺度(Stress Response Scale-18;SRS-18)」は,日常体験する

さまざまなストレッサーによって引き起こされるストレス反応のうち,「心理

的ストレス反応」に注目した尺度である。これまでの心理的反応に関する尺度

は,下位尺度が多く複雑なものが多かった。それに対してこの尺度は,18 項

目 3 下位尺度という簡便な構造をもっており,実験状況において繰返しスト

レス反応の測定を行う場合や多くの尺度と組み合わせて多面的な調査を実施

する際にも容易に使用可能である。また,今津ら(2006)の「Public Health

Research Foundation ストレスチェックリスト・ショートフォーム」は,心理

的ストレス反応と身体的ストレス反応を同時に測定することができる尺度であ

ス ト レ ス

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この領域について

136

コーピング

4 ストレス・コーピング

 コーピング(coping)は,「個人の資源を超える,あるいは負荷を与えると

評定された特定の外的・内的要請を処理するために行う(常に変化しうる)認

知的・行動的努力」と定義されている(Lazarus,1999)。より一般的には,

ストレスフルな状況を対処する方略とみなされる。ラザルスの定義にもとづく

コーピングの特徴は,コーピングを無意識的な防衛機制ではなく,意識的な努

力としてとらえ,また,安定した特性ではなく状況によって変動するプロセス

ととらえている点である。一方で,いかなる状況においても個人は特有のコー

ピングスタイルを用いることを仮定した,コーピングをパーソナリティ特性と

してとらえるアプローチもみられる。

 近年,わが国において開発されているコーピング関連の尺度には,次のよう

なものがある。まず,対人ストレッサーに対するコーピングを測定する尺度が

あげられる。対人ストレッサーとは,友人や職場などにおける人間関係が原因

で生じるストレッサーのことであり,日常生活で遭遇する頻度の多いストレッ

サーである。この対人ストレッサーに対するコーピングを測定する「対人スト

レスコーピング尺度」(加藤,2000)や,共感にもとづく対人ストレッサーに

対するコーピングを測定する「共感的コーピング尺度」(加藤,2002),失恋

に対するコーピングを測定する「失恋コーピング尺度」(加藤,2005)などが

作成されている。

 次に,コーピングの一側面を測定する尺度があげられる。コーピングは,焦

点によって,問題焦点型コーピング(問題を解決するための直接的な方略)と

情動焦点型コーピング(問題によって生起した情動を調整する方略)に分類す

ることができ,さらには,認知―行動,接近―回避などの基準によっても分類

することができる(Latack & Havlovic,1992)。たとえば,問題焦点型コー

ピングを測定する尺度(杉浦,2001,2002),情動焦点型コーピングを測定

する尺度(内田・山崎,2007)などが作成されている。さらに,レジリエン

ス(精神的回復力,resilience)に関する尺度があげられる。レジリエンスと

は,困難で脅威的な状況においてうまく適応する過程・能力・結果のことをさ

すが,どの部分に焦点をあてるかによって研究者間でとらえ方が異なる概念で

ある。2000 年以降,ストレスフルな状態から回復する能力・心理的特性とし

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150

 外傷経験(traumatic experience)とは,非常に強い心的な衝撃を与え,そ

の体験が過ぎ去った後も体験が記憶の中に残り,恐怖や苦痛などの精神的な影

響を与え続けるような経験のことである(金,2001)。具体的には,災害や事

故に遭遇したり,レイプや虐待といった暴力的行為の被害にあったり,戦闘に

関わったりといった,生命や身体が危険にさらされ,強い恐怖感や無力感に襲

われるような体験を指す。また,生命の危険を伴わない経験であっても,通常

の対処行動機制がうまくはたらかず,体験当時と同じような不快感や苦痛をも

たらし続けて,自身の人生を揺るがすようなつらい経験は,広義の外傷経験と

とらえられている。広義の外傷経験には,家族の死や大切な人との関係の崩壊

といった喪失体験なども含まれうる。

 本節では,外傷経験に関する尺度として,「死別対処尺度」(坂口・柏木・恒

藤,2001)と「日本語版外傷後の成長尺度」(宅,2010)を紹介する。死別

対処尺度は,配偶者など大切な人と死別した後に,どのような対処行動を行っ

ているかについて測定する尺度である。本尺度では,死別後の対処に関する従

来の研究において検討されてきた故人との思い出の抑圧や回避などの対処の他

に,今後の生活や人生に向き合うための対処にも焦点が当てられている。

 「日本語版外傷後の成長尺度」は,人生を揺るがすようなつらい体験の後に

経験された精神的な成長を測定する尺度である。外傷経験は,心身にさまざま

なストレス反応を引き起こす非常につらい体験であるが,危機とよばれうる困

難な出来事を対処しようともがき苦しむ中で,ポジティブな心理的変化がもた

らされることがある。このような外傷後の成長が生じうる側面として,「他者

との関係」「新たな可能性」「人間としての強さ」「精神性的変容」「人生に対す

る感謝」という 5 側面に着目し,それぞれの側面におけるポジティブな変化

を測定することができる。

 なお,外傷経験によって生じるストレス反応(外傷性ストレス反応)の測定

には,『心理測定尺度集Ⅲ』に掲載されている「改訂出来事インパクト尺度」

(飛鳥井,1999)が一般的に用いられている。

外 傷 経 験

4 ストレス・コーピング

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ソーシャルサポート

と社会的スキル

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この領域について

162 5 ソーシャルサポートと社会的スキル

 本節では,「ソーシャルサポート(social support)」に関連する尺度を紹介

する。

 ソーシャルサポートの定義や研究アプローチに関して,さまざまな見解があ

り多様性を有していることは,『心理測定尺度集Ⅲ』において福岡(2000)が

詳細に論じている。現在においては,特定の集団におけるソーシャルサポート

に注目した尺度研究が多数行われている。たとえば,「職場」におけるサポー

トに関しては,片受・庄司(2003)が製造メーカーの従業員を対象に,情緒・

情報・道具・娯楽の 4 種のサポート内容から構成される尺度を開発しており,

森・三浦(2006)も職場におけるサポート尺度を作成している。このほか,

初妊婦を対象とした,情報提供・社会的資源・直接的援助・承認・共感の 5

種のサポート内容から構成される尺度も作成されている(岩田・山内,2004)。

 本節では,代表性のあるサンプルを用いて作成され,比較的どの対象にも使

用しやすいと考えられる尺度として,岩佐ら(2007)の「日本語版ソーシャ

ル・サポート尺度」を紹介する。岩佐ら(2007)の尺度は,知覚されたサポー

トのアプローチに該当し,サポート源(サポートの送り手)を特定した上で,

回答者自らによって知覚されたサポートを測定することができる尺度である。

 また,1998 年に特定非営利活動法人法が施行され,ボランティア活動をは

じめとする市民が自発的に行う社会貢献に注目が集まっている。そうした中で,

ピア・サポートやセルフヘルプ集団(田尾,2007),これまで行政が担ってき

たことへの市民参加(髙橋,2007)など,地域社会やコミュニティにおける

サポートに関する研究に注目が集まっている。その一方で,平成 19 年版国民

生活白書によれば,近所に生活面で協力し合う人がいないと回答した者の割合

は 6 割を超え,挨拶程度以下の近所づきあいしかせず,地域活動にまったく

参加していない者の割合が 2 割であるとの調査結果も存在する。これらの結

果に示されているような「地域からの孤立傾向がある人々」は,地域やコミュ

ニティからは,さまざまなソーシャルサポートを受けにくい状況にあると考え

られる。

 浦・古谷(2008)は,地域の対人関係の豊かさが犯罪のリスクを低減させ

ることを示している。具体的には,各種社会調査の 2 次分析によって,一

ソーシャルサポート

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この領域について

174 5 ソーシャルサポートと社会的スキル

 社会的スキルは,対人場面において適切な反応をするために必要な能力や行

動をさす。社会的スキルを測定するために,対象者の年代に応じたたくさんの

尺度が開発され,使用されている(菊池,1988;庄司,1991 など)。近年では,

特定の状況や職業ごとにスキルを測定する尺度がみられるようになり(「中学

生の援助要請スキル」(本田・新井・石隈,2007),「看護師における患者との

コミュニケーションスキル」(上野,2005),「愛情表現スキル」(和田・稲垣・

金子,2007)など),社会的スキルの尺度が作成される領域は細分化するとと

もに,多様な場面に拡大しつつある。社会的スキルの概念自体も拡大しており,

他者と接する際の適切な対人行動だけでなく,認知過程や価値観なども含むよ

うになっている。

 本節では,狭義の社会的スキル尺度ではなく,個人の能力やスキルを幅広く

測定する尺度を紹介する。

 まず,社会的場面での自己制御を測定する原田・吉澤・吉田(2008)の

「社会的自己制御尺度」を紹介する。社会的自己制御は「社会的場面で,個人

の欲求や意思と現状認知との間でズレが起こった時に,内的基準・外的基準の

必要性に応じて自己を主張するもしくは抑制する能力」と定義されている(原

田・吉澤・吉田,2008)。社会的自己制御と社会的スキルは重なる部分はある

ものの,両者は厳密には異なる概念である。しかし,社会的自己制御は青年の

反社会的行動を予測する有効な概念であるため,本節では社会的場面での統制

能力を測定する尺度としてとりあげることとした。

 さらに,大学生の日常生活スキルを測定する島本・石井(2006)の「日常

生活スキル尺度(大学生版)」をとりあげる。島本・石井(2006)の尺度は,

近年教育現場で注目されるライフスキルを測定する尺度である。ライフスキル

とは,「日常生活で生じるさまざまな問題や要求に対して,建設的かつ効果的

に対処するために必要な能力」と定義されている(WHO,1997)。ライフス

キルを促進するトレーニング・プログラムも開発されており,喫煙や飲酒,薬

物乱用の防止,性教育を目的として,ライフスキル教育とよばれる教育活動が

積極的に行われている。ライフスキルには,狭義の社会的スキルに該当する

対人コミュニケーション・人間関係スキルに加え,問題解決・意思決定スキ

社会的スキル

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適応・ライフイベント

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192

この領域について

6 適応・ライフイベント

 個人の適応感や幸福感を測定するには,当人の内的判断にもとづく主観的な

適応感や幸福感を測定する方法や,適応状態を反映して発生する症状や行動

を測定する方法などが考えられる。近年開発された尺度のうち,当人の内的

判断にもとづく主観的な適応感や幸福感を測定する尺度としては,成人の心理

的 well-being を測定する西田(2000)や留学生の異文化適応を測定する植松

(2004)などがあげられる。適応状態を反映して発生する症状や行動を測定す

る方法としては,無気力感を測定する下坂(2001)や,ひきこもり行動を尋

ねる境ら(2004),「五月病」の有無を測定する鳴澤(2001)などがあげられる。

 本節では,汎用性が高く多様な局面で使用が可能であることを重視して,個

人の主観的な適応感や幸福感を直接的に測定する尺度として,大久保(2005)

と伊藤ら(2003)の尺度を紹介する。

 大久保(2005)の「青年用適応感尺度」は青年期の適応感を測定すること

を目的とした尺度である。青年期の適応感を扱う研究では,多くの場合青年の

対人関係や学業など,一般に青年にとって重要であると考えられる要因の集合

として適応感が測定されてきた。これに対して大久保(2005)は,適応感を

「個人が環境と適合していると意識していること」と定義し,適応感を所属す

る環境に合うか合わないかという個人の内的な基準にもとづいて測る尺度を作

成している。

 伊藤ら(2003)の「主観的幸福感尺度」は,心理的健康を表す測度として

の主観的幸福感を簡便に測定することのできる尺度である。主観的幸福感は,

個人の主観的判断を重視する QOL(Quality of Life)研究の中で扱われるよう

になった概念である(石井,1997)。伊藤ら(2003)の尺度は,自己の生活

に対する満足感である認知的側面とポジティブ感情とネガティブ感情の両面を

含む感情的側面から,主観的幸福感を測定する尺度である。幸福感を左右する

サポートなどの要因やストレス反応を除き,「結果としての健康感」をとらえ

るものである。

適応・幸福

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この領域について

204 6 適応・ライフイベント

出産に関わる意識・育児 女性にとって,妊娠や出産や育児は大きなライフイベントの一つである。妊

娠以降,胎児を宿すことなどによる内分泌環境の変化といった身体的な変化や,

母親として新たなアイデンティティを獲得するなどの心理的な変化を経験する。

この妊娠や出産や育児は喜びだけではなく,新たな体験に対する不安も喚起す

る。妊娠や出産時期や育児期を適応的に過ごすためのサポートのあり方を考え

ていく上では,妊婦や親の状況を適切に把握していく必要がある(岩田・森谷,

2005;眞鍋・瀬戸・上里,2001 など)。2000 年以降に発表された出産に関

わる意識や育児に関する尺度を概観すると,さまざまな観点から意識や認知や

行動の測定がなされており,これらの尺度を用いて,不適応を生じさせている

要因や,サポートのあり方が検討されている。

 妊婦の心理や行動を測定する尺度をみると,眞鍋ら(2001)が,妊婦にお

ける胎児の健康統制感を測定する「日本版 Fetal Health Locus of Control 測

定尺度」を作成している。また,眞鍋・瀬戸・上里(2001)は,妊婦のセル

フケア行動に関わる「妊婦のセルフケア行動意図尺度」と,「セルフケア行動

動機づけ評定尺度」とを作成している。「セルフケア行動動機づけ評定尺度」

については,短縮版も作成されている(眞鍋・瀬戸・上里,2004)。他にも,

父母を対象とする,妊娠によって生じた心理的変化を測定する尺度が,澤田

(2005)や福丸・小泉・中山(2004)によって作成されている。これらの尺

度のうち,本章では,眞鍋・瀬戸・上里(2001)による「妊婦のセルフケア

行動意図尺度」を紹介する。

 育児に関わる尺度は,さまざまな観点から作成されており,測定内容から

大きく次の 3 つに分類できる。第 1 は,子どもそのものや,子どもの育て方

や,子どもを育てる意義についての価値観や考え方を測定する尺度である。た

とえば,李(2001)が「子ども観尺度」を,金(2003)が「子育て観尺度」

を,それぞれ作成している。また,三重野・濱口(2005)は,母親が完璧な

子育てを目指している程度を測定する「子育て完全主義傾向尺度」を作成して

いる。ほかに,江上(2005)が,「社会文化的通念として存在する伝統的性役

割観にもとづいた母親役割を信じ,それに従って育児を実践する傾向」である

「『母性愛』信奉傾向尺度」を作成している。また,以上の尺度とは内容が若干

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不安・人格障害・問題行動

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236

この領域について

7 不安・人格障害・問題行動

は じ め に

 私たちは日常生活の多くの時間を,他者と接しながら過ごしている。たとえ

ば大学生ならば,あまり良く知らない相手と肩を並べて授業を受け,友人たち

と雑談しながら休み時間を過ごし,人でごったがえす食堂で昼食をとるであろ

う。時には大勢の学生たちの前で発表することや,質問をするために先生の研

究室を訪ねることもあるかもしれない。このような対人場面で,人は時に緊張

したり不安になったりといった「対人不安」を感じる。対人不安は心理学にお

いて,「現実の,あるいは想像上の対人場面において,他者からの評価に直面

したり,もしくはそれを予測したりすることから生じる不安状態」(Schlenker

& Leary,1982)や「他者が存在することによって引き起こされる否定的な感

情」(Buss,1980)などと定義される。

 対人不安は誰もが経験する不安であるが,その程度には個人差がある。対

人不安が強い個人は,さまざまな不適応を経験することが臨床知見や実証研

究から明らかにされている。たとえば,対人不安が高い人は対人関係がうま

くいかず(Erath et al.,2007),抑うつ傾向が高く,最終的に引きこもりや

自殺に至りやすい(渡部・松井,2008;DSM–IV–TR:American Psychiatric

Association,2000)。対人不安を主訴とする障害としては社会不安障害(so-

cial anxiety disorder;SAD)があげられるが,社会不安障害の一生涯の有病

率は 3 ~ 13% と報告されている(DSM–IV–TR:APA,2000)。加えて,障害

ではない一般的な人でも,対人不安によって上述したような不適応を経験して

いることがある。したがって,対人不安に関する尺度が開発され,対人不安に

関する研究が発展することは,多くの人に利益をもたらすと期待される。

対人不安に関係する用語とそれぞれの関係

 対人不安に関する日本の心理学的研究は,海外において関心が向けられるよ

り以前から行われてきた。日本の臨床心理学の領域では,対人不安が中核を

なす病を,「対人恐怖」として扱ってきた(笠原,2005;永井,1998)。「対

人恐怖」とは,人前で不安を抱きそれを苦悩する病であり,赤面恐怖や会食

恐怖等を含む。笠原(2005)によれば,研究初期には日本文化独特の病理で

対 人 不 安

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252

この領域について

7 不安・人格障害・問題行動

 人は誰でも,悲しくなったり,焦燥感を抱いたり,絶望したりする。このよ

うな感情を抑うつ感情という。この抑うつ感情に興味の低下や活動性の低下な

どが加わった状態がうつ状態,程度の軽いうつ状態が抑うつ傾向である(松本,

2005)。

 抑うつは,対人葛藤や死別などのネガティブなイベントの結果として発生す

る(西野・小林・北川,2009;池内・藤原,2009)。そして,重度になれば

生活への支障や自殺の危険を発生させる(渡部・松井,2008;DSM-IV-TR:

APA,2000)。一方で,ポジティブな過程の中で経験される抑うつへの注目

もみられる。近藤ら(2008)は,少年が非行から立ち直るためには,自身の

問題の直視や悔いなど,抑うつを伴う経験をする必要があると指摘している。

 抑うつに関係する尺度としては,2000 年以前には,抑うつの程度を測定す

る「ベック抑うつ尺度」(林,1988;林・瀧本,1991)や「ベック絶望感尺度」

(Tanaka et al.,1998)などが作成されている。また,抑うつに関係した認知

等を測定する「拡張版ホープレスネス尺度」(高比良,1998)や「不合理な信

念測定尺度短縮版」(森ら,1994),「日本語版キャロル抑うつ自己評価尺度」

(島ら,1985)なども作成されている。これらの尺度については,『心理測定

尺度集Ⅲ』で紹介されている。近年(2000 年以降)には,「抑うつに耐える

力尺度」(近藤ら,2008)や「K6」(古川ら,2003),「多次元抑うつ不安尺度」

(佐藤・安田・児玉,2001),「自殺親和状態尺度」(大塚ら,2001)などが

作成されている。

 「抑うつに耐える力尺度」(近藤ら,2008)は,自身の問題を直視し,受け

入れがたい情緒を適応的に処理していく力を測定する尺度である。

 「K6」(古川ら,2003)は,ケスラーら(2002)により作成された,抑う

つや不安の程度を測定する尺度の日本語版である。主に抑うつ性障害や不安障

害のスクリーニングのために開発された。スクリーニング尺度としては非常に

鋭敏である(古川ら,2003;川上ら,2005)。表現が簡易で回答しやすい点

や項目数が 6 項目と非常に少ない点も利点としてあげられる。K6 の 6 項目に

4 項目を加えた K10 も開発されているが,K6 のほうがさまざまな集団に一般

化が可能なスクリーニング尺度であることが指摘されている(古川ら,2003)。

抑 う つ

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260

 近年,人格障害の各特徴は,青年期心性の一つとしても注目されている。人

格障害の特徴を健常者である現代青年の特徴としてとらえることは,現代青年

を理解する上で新たな視点を提供することが可能となる(金子,2000)。ま

た,各人格障害の特徴について,健常者の特徴と精神障害者の特徴に連続性を

認める場合には,各人格障害を扱った研究にも新たな視点を提供することが可

能になると考えられる(金子,2000;舛田,2006)。以上をふまえ,本節では,

青年期心性として検討されたさまざまな人格障害に関連する特徴や,問題行動

に関する心理尺度についてとりあげる。

 はじめに,境界例(境界性人格障害)についてとりあげる。境界例について

は,青年期の対人関係に関する問題として注目され,検討が行われている。た

とえば,岡田(2007)が,大学生の友人関係の類型と適応との関連を検討す

る際に,境界例を対人関係に関する不適応の指標としている。また,古川・北

山(2004)は,境界例心性を「社会的・文化的に逸脱しない範囲ではあるも

のの,対人関係・自己像・感情の不安定および空虚感・著しい衝動性などの人

格的特徴」と定義し,現代青年の特徴としてとらえ,親の養育態度や家族の雰

囲気との関連を検討している。本節では,青年期を「一時的に境界例心性が活

発になる時期」ととらえ,作成された「対人関係における境界例心性尺度」(田村・

井上,2005)をとりあげる。さらに,境界例の心理尺度として,町沢・佐藤

(1990)が作成したコントら(1980)の「自己記述式ボーダーライン・スケー

ル日本語版」(「ボーダーライン・スケール」)についてもとりあげる。町沢・

佐藤(1990)は,本尺度を用いて,日本人の境界型人格障害の内的メカニズ

ムを検討している。本尺度は,境界型人格障害を測定する代表的な尺度として,

幅広く活用されている尺度である。

 また,本節では,人格障害や問題行動に関する心理尺度として,以下の 3

点についても,とりあげる。

 第 1 は,被害妄想的な思考を扱っている「自己関係づけ尺度」(金子,

2000)である。金子(1999)によれば,健常な大学生など,誰にでもみら

れる被害妄想的な傾向を「被害妄想的心性」ととらえることができる。被害妄

想的心性とは,「一般青年にみられる自己関連づけで,自己とは無関係かもし

人格障害と問題行動

7 不安・人格障害・問題行動

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医療・看護・カウンセリング

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この領域について

288 8 医療・看護・カウンセリング

 現代の日本において,看護職や介護職における離職率の高さが問題となって

いる。2007 年度の看護職の離職率は 12.6%(日本看護協会,2009),2007

年度の介護職の離職率は 18.7%(介護労働安定センター,2009)と報告され

ており,いずれの業種においても離職率を低下させるための対策が検討されて

いる。石橋(1979)は,看護師の業務の特徴として,①昼夜の交代勤務を必

要とする,②仕事の主たる対象が何らかの疾病や外傷のために苦痛を訴え介護

を求めている病者であり,常に優しく親切に接するための精神的努力を必要と

する,③激しい苦悶や出血の現場に立ち合い,死の瞬間に立ち合う機会も多く,

精神的なストレスが重い,④よく動きまわる仕事であり,身体的な負担が重い,

⑤作業者のミスが他者の生命や安全を脅かしうる危険な作業である,とまとめ

ている。石橋(1979)があげた看護師業務の特徴は,介護職の業務にもあて

はまる。看護職や介護職における心身の疲労やストレスは大きく,離職を促進

する重大な原因となっている。

 近年,看護職や介護職などの対人援助職におけるストレスと離職の関連につ

いて,バーンアウト(burnout)という概念によって説明する立場が増えてい

る。バーンアウトとは,それまで元気に働いていた人が,急に燃え尽きたよう

に意欲を失う症状である。バーンアウトはヒューマンサービスの職種において

とくに多くみられる症状であり,業務ストレスの積み重ねによって急速に症状

が生じて,離職や休職へとつながりうるという特徴をもつ(久保,2004)。バ

ーンアウトに関しては,『心理測定尺度集Ⅲ』においても紹介しているので,

そちらもあわせて参照されたい。

 本節では,看護職や介護職の離職やバーンアウトの原因となりうるストレッ

サーについて測定する尺度を紹介する。最初に紹介する尺度は,福田と井田

(2005)が作成した「職場ストレッサー尺度」である。この尺度は看護師の日

常業務におけるストレッサーについて,5 つの側面から測定することができる

尺度である。この尺度は「業務の多忙さ」「患者ケアに関する葛藤」「業務遂行

に伴う重責」といった石橋(1979)の指摘と対応している側面に加え,「上司・

同僚との葛藤」「看護に対する無力感」といった側面にいたるまで,看護師の

日常業務で発生しうるストレッサーを幅広くとらえることができる。

看護者・介護者の心理

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306 8 医療・看護・カウンセリング

 カウンセリングとは,さまざまな問題や課題を抱え,その解決を求めようと

する個人を援助する行為である。心理学においてはとくに治療的援助という意

味が強調されることが多く,心理療法と同義の意味で使われることもある。本

節では,治療的援助としてのカウンセリングに関する尺度を中心に紹介する。

 カウンセリングに関する尺度は,大別すると以下の 3 つに分類される。第 1

に,カウンセリングに対する意識に焦点をあてた尺度である。第 2 に,カウ

ンセリングの効果に焦点をあてた尺度である。第 3 に,カウンセリングの考

え方の認識に関する尺度である。

 カウンセリングに対する意識に焦点をあてた尺度については,カウンセリン

グ機関やカウンセラーへのイメージに着目した尺度と,カウンセリングを利用

することへの意識に着目した尺度がある。これらの尺度は,カウンセリング機

関への来談意思,被援助志向性(援助を求めようとする意識)との関連が検討

されることが多い。カウンセリング機関やカウンセラーへのイメージに着目し

た代表的な尺度として,本節で紹介する伊藤(2006)の「学生相談機関イメ

ージ尺度」があげられる。この尺度では,学生相談機関イメージとして,「有

益イメージ」「危機支援イメージ」「不利益イメージ」「不気味イメージ」の 4

因子が抽出されている。伊藤(2006)と類似した尺度として,宮崎・益田・

松原(2004)の学生相談室に対する意識,半田(2003)のカウンセラーに対

するイメージに関する尺度などがあげられる。一方,カウンセリングを利用す

ることへの意識に着目した尺度としては,フィッシャーとターナー(1970),

藤里・杉江・小玉(2007),木村・水野(2008),マーティンら(1997),

高野ら(2008)などがあげられる。いずれの尺度でも,カウンセリングを利

用することに対する否定的意識,肯定的意識などが主な因子として抽出されて

いる。

 次に,カウンセリングの効果に焦点をあてた尺度については,特徴的な尺度

として,来談者中心療法におけるクライエントの人格的変化に必要なカウンセ

ラーの態度条件(Rogers, 1957)の認知に着目した尺度があげられる。坂中

(2001)では,エンカウンター・グループにおける,ファシリテーター,他の

メンバー,自分自身の関係認知に関する尺度が作成された。そして,カウンセ

カウンセリング

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321

小塩真司  137, 145, 148

  カ  行角山 剛  92笠原俊彦  236, 237柏木惠子  205加曽利岳美  261, 283, 284片受 靖  162カッツ(Katz, D.)  100ガティ(Gati, I.)   55, 69加藤容子  94, 122, 124金井篤子  122金子一史  260, 261, 274, 278

北尾倫彦  30, 32キルマー(Kilmer, R.P.)  155金 娟鏡  204

久保真人  291, 292, 294クラーク(Clark, L.A.)  253グリーンハウス(Greenhaus, J.H.)  122グレイ - トフト(Gray-Toft, P.)   291, 292黒澤礼子  205

ケスラー(Kessler, R.C.)  252

コント(Conte, H.)  260, 269, 272近藤淳哉  252, 256, 259

  サ  行酒井 厚  80, 87, 90坂口幸弘  150, 152, 154坂中正義  306櫻井信也  309佐藤 徳  253佐藤 純  80

  ア  行安達智子  55, 76新井洋輔  2, 9, 12荒牧美佐子  205, 219, 224

五十嵐哲也   80, 82, 84石津憲一郎  80石野陽子  205石橋富和  288, 289伊田勝憲  78市田行信  172市原 学  38, 51伊藤崇達  36伊藤直樹  306, 309, 312伊藤裕子  192, 199, 203稲垣宏樹  168井上果子  268今津芳恵  128, 129, 130, 135岩佐 一  162, 165, 168

植村善太郎  3, 13, 14浦 光博  162

江上園子  204, 205, 214, 218

オーガン(Organ, D.W.)  92, 100大久保智生  192, 194, 198大島 尚  172大塚明子  253大津絵美子  261岡田 努  238, 239, 250, 261岡田有司  80岡田 涼  37, 45, 48岡本英生  259荻野佳代子  289, 296, 300小口孝司  114, 115

人 名 索 引

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322 人 名 索 引

永久ひさ子  205中村俊哉  261, 279鳴澤 實  192

西河正行  309西田裕紀子  192

野口 真  307, 314, 316野㟢秀正  37, 40, 44野島一彦  289, 301, 304

  ハ  行萩原公世  309萩原俊彦  55, 64, 68パットナム(Putnam, R.D.)  170, 171原井宏明  237原田知佳  174, 176, 182半澤礼之  56, 78

ヒギンズ(Higgins, E.T.)  78樋口匡貴  238日向野智子  93, 112, 116

フェニグスタイン(Fenigstein, A.)  274福井康之  239, 250福岡欣治  162福田広美  288, 291, 294福丸由佳  204古市裕一  82古川壽亮  252古川奈美子  260ブルックス(Brooks, D.K.Jr.)  183フロイト(Freud, S.)  301

ホックシールド(Hochschild, A.R.)  93, 106ポドサコフ(Podsakoff, P.M.)  100堀井俊章  239本多陽子  55本間友巳  80

澤田忠幸  204

塩崎尚美  205篠ヶ谷圭太  38島本好平  174, 175, 183, 189清水健司  239ジメット(Zimet, G.D.)  168下坂 剛  192庄司正実  110ジョンソン(Johnson, D.)  3, 16

須賀知美  93, 106, 110杉浦義典  137, 139, 142鈴木伸一  128住田正樹  219

セリエ(Selye, H.)  128

  タ  行高石光一  92高野 明  309宅 香菜子  150, 155, 158田中堅一郎  92, 93, 100, 104, 117, 120田中祐子  205田村和子  260, 264丹野義彦  261

ツァップ(Zapf, D.)  106, 296

テデスキ(Tedeschi, R.G.)  155寺田智礼  80

富田拓郎  301

  ナ  行中井大介  22, 25, 28永作 稔  56, 58, 62中谷奈美子  205, 225中谷素之  228長濱文与  3, 16, 20

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人 名 索 引 323

  ヤ  行山口豊一  80山口昌澄  78山田淳子  301

吉原克枝  93, 96, 98吉村 斉  2, 5, 6, 80

  ラ  行ライアン(Ryan, R.M.)   56, 58, 59, 64ラザルス(Lazarus, R.S.)  136

李 貞順  204リン(Lin, N.)  170

  ワ  行若松養亮  55, 69, 72

  英  字WHO  183, 199

  マ  行真木典子  232舛田亮太  261, 279, 282町沢静夫  260, 269松下姫歌  261眞鍋えみ子  204, 208, 213

三浦正江  80三重野祥子  204, 205三島知剛  22, 30, 34宮川公男  171

宗像恒次  117村山 航  37, 38, 50

毛利伊吹  238, 240, 243, 248森 慶輔  162森下葉子  232森田美弥子  309

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324

自己関係づけ尺度  260, 274自己調整学習  36死別対処尺度  150, 152社会集団  2社会的自己制御尺度  174, 176社会的スキル  174社会不安障害  237集団  2集団フォーマル性尺度  2, 9主観的幸福感尺度  192, 199授業評定尺度  22, 30主将のリーダーシップ尺度  2, 5出産に関わる意識  204状況別対人不安尺度  238, 240, 243小集団  2食行動尺度  262, 283職場ストレッサー尺度  288, 291職場の迫害尺度  93, 117職場用対人苦手意識尺度  93, 112, 113自律的高校進学動機尺度  56, 58人格障害と問題行動  260新入成員に対する寛容的反応尺度  3, 13進路意思決定の困難さ尺度  55, 69進路選択  54

ストレス  128

精神的回復力尺度  137, 145生徒の教師に対する信頼感尺度  22, 25青年用適応感尺度  192, 194

ソーシャル・キャピタル  163, 170ソーシャルサポート  162

  タ  行対人関係における境界例心性尺度  260, 264

  ア  行育児  204育児感情尺度  205, 219育児に関する尺度  232飲食店従業員の感情労働尺度  93, 106

  カ  行外傷経験  150カウンセリング  306カウンセリング・マインド認知尺度  307, 314学業的援助要請  36, 40学業的援助要請尺度  37, 40

(学業と意識の)接続意識尺度  56, 78学習  36学習方略  37学生相談機関イメージ尺度  306, 309学校  22学校移行  55学校での不適応傾向尺度  87学校と適応  80看護者・介護者の心理  288患者との死別後の看護婦の悲嘆尺度  289, 301感情労働尺度  289, 296

境界例  260教科別の学習方略尺度  50協同作業認識尺度  3, 16

幸福  192コーピング  136子どもの行動に対する認知尺度  225

  サ  行サービス化した組織における成員裁量の職務行動

尺度  92, 96産業・職業ストレス  92

事 項 索 引

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事 項 索 引 325

  マ  行問題焦点型対処方略  137, 139

  ヤ  行  “やりたいこと探し”の動機尺度  55, 64やりたいこと志向  54, 55

友人との学習活動尺度  37, 45

抑うつ  252抑うつに耐える力尺度  252, 253, 256

  ラ  行リーダーシップ  2

歴史の学習方略尺度  38, 50

  ワ  行ワーク・ファミリー・コンフリクト対処行動尺度

94, 122

  英  字Public Health Research Foundation ス ト レ ス

チェックリスト・ショートフォーム  128〜 130

対人恐怖  236対人苦手意識尺度  115対人不安  236

中学生用数学・国語の学習方略尺度  38, 51

適応  192

  ナ  行日常生活スキル尺度(大学生版)  174, 183日常的離人尺度  261, 279日本語版外傷後の成長尺度  150, 155日本語版ソーシャル・サポート尺度  162, 165日本版組織市民行動尺度  92, 100妊婦のセルフケア行動意図尺度  204, 208

  ハ  行バーンアウト  288

不登校傾向尺度  82フリーターに対する肯定的態度  55, 76ふれ合い恐怖的心性尺度  238, 250

ボーダーライン・スケール  260, 269「母性愛」信奉傾向尺度  204, 205, 214

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    堀ほり

  洋ひろ

道みち

1960年 東京教育大学教育学部卒業1966年 東京教育大学大学院教育学研究科    単位取得退学1989年 筑波大学心理学系教授2001年 大妻女子大学人間関係学部教授現 在 筑波大学・大妻女子大学名誉教授主要編著書

『創造性研究ハンドブック』(共著)(誠信書房,1968)『個人と社会理解のための心理学』(共編著)(小林出版,1979)

『新編 社会心理学 改訂版』(監修)(福村出版,2009)

監修者略歴

  目白大学人間学部客員研究員市いち

村むら

美み ほ

  玉川大学文学部准教授宇う い

井美み よ こ

代子

  筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程単位取得退学

落おち

合あい

萌もえ

子こ

  信州大学人文学部准教授佐さ

藤とう

広ひろ

英つね

  東京福祉大学心理学部講師新あら

井い

洋よう

輔すけ

  東京女子体育大学・同短期大学教授大おお

石いし

千ち

歳とせ

  立正大学心理学部准教授髙たか

橋はし

尚なお

也や

 愛知学院大学総合政策学部准教授太た

幡ばた

直なお

也や

  東北学院大学教養学部准教授萩はぎ

原わら

俊とし

彦ひこ

  東洋英和女学院大学人間科学部准教授渡わた

部なべ

麻あさ

美み

  東京福祉大学心理学部講師丹たん

野の

宏ひろ

昭あき

 名城大学人間学部准教授畑はた

中なか

美み

穂ほ

    宮みや

本もと

聡そう

介すけ

1990年 筑波大学第二学群人間学類卒業1996年 筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了現 在 明治学院大学心理学部教授    博士(心理学)主要編著書・訳書

『質問紙調査と心理測定尺度─計画から実施・解析まで』(共編)(サイエンス社,2014)

『新編 社会心理学 改訂版』(共編著)(福村出版,2009)

『単純接触効果研究の最前線』(共編著)(北大路書房,2008)

『安全・安心の心理学』(共著)(新曜社,2007)『心理学研究法入門』(共訳)(新曜社,2005)『社会心理学』(分担執筆)(朝倉書店,2005) ほか

    松まつ

井い

  豊ゆたか

 

1976年 東京教育大学教育学部卒業1982年 東京都立大学大学院人文科学研究科    博士課程単位取得退学現 在 筑波大学人間系教授    文学博士主要編著書

『対人心理学の視点』(編)(ブレーン出版,2002)『惨事ストレスへのケア』(編著)(ブレーン出版,2005)

『心理学論文の書き方――卒業論文や修士論文を書くために』(河出書房新社,2006)

『社会と人間関係の心理学』(共著)(岩波書店,2007)

編 者 略 歴

執筆者(50 音順)

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サイエンス社のホームページのご案内http://www.saiensu.co.jpご意見・ご要望は[email protected] まで.

*本書の内容の問い合わせに関しては,書名・担当執筆者名(目次を参照下さい),尺度名を明記の上,必ず電子メールか書面にて御連絡を頂けますようお願い致します。なお書籍を御購入されていない場合には対応致しかねますので御了承下さい。

心理測定尺度集 VI(電子版)――現実社会とかかわる〈集団・組織・適応〉――

2018 年 4 月 10 日 Ⓒ 初 版 発 行この電子書籍は 2011 年 3 月 25 日発行の同タイトルを底本としています。

監修者 堀   洋 道 発行者 森 平 敏 孝編 者 松 井   豊    宮 本 聡 介

発行所    株式会社 サイエンス社〒 151–0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷1丁目 3 番 25 号

〔営業〕 ☎(03)5474–8500(代) 振替 00170–7–2387〔編集〕 ☎(03)5474–8700(代)FAX ☎(03)5474–8900

組版 株式会社ディグ≪検印省略≫

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ISBN978–4–7819–9943–2