3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu ·...

14
山梨大学教育学部附属中学校 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究

Transcript of 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu ·...

Page 1: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

参 考

山梨大学教育学部附属中学校

3 年生 男子生徒

平成28年度 卒業研究

Page 2: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

1

目次

目次・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第一章 はじめに(序論)

1-1 研究の動機と目的・・・・・・・・・・・・・・・・2

1-2 研究の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

1-3 研究前の仮説・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

第二章 本論

2-1 研究の柱Ⅰ

「まずは、甲府の街の現状把握から。」・・・・・・・・・3

2-2 研究の柱Ⅱ

「まちづくりってどうやるの?」「これからの時代、どんな

まちづくりが求められるの?」・・・・・・・・・・・・6

2-3 研究の柱Ⅲ

「では、活気ある甲府の街の構想を練っていきます。」・・・9

第三章 結論

「活気ある甲府の街の実現方法!」・・・・・・・・・・11

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

Page 3: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

2

第一章 はじめに(序論)

1-1 研究の動機と目的

① 研究の動機

「甲府物語」という写真集を見て、昔の甲府の中心街の繁華さに驚いた。小学校の先生

や祖母などからも、にぎやかだった頃の話を聞いた。しかし、西武が無くなり、オギノも

無くなり、映画館も無くなり、出来たココリもいまいち。現在は多くのシャッターが下り

る静かな街になってしまった。昔を知らない私でさえも、切ない気持ちになった。そし

て、とても身近な問題なのに、私たちが直視できていない現状があると感じた。このまま

では、さらに廃れて、数十年前の現実が、遠い昔の「夢物語」になってしまうことが危惧

されるため、打開策を見出だすべくこの研究を始めた。

② 研究の目的

甲府の街の活気を取り戻す具体策を見出だし、提案すること!

③ 私の立場

一甲府市民である。

1-2 研究の概要

甲府の現状を理解し、甲府の街に最適な提案をするため、私は次の3つの論点に絞って

研究を進めることにした。まず、研究の柱Ⅰにおいて、甲府の街の、活気があった頃と現

在を、資料やデータを集めたり、実際に甲府の街に出向いたりして分析し、現状とその問

題点を明らかにする。研究の柱Ⅱでは、まちづくりの考え方・進め方を学んだ上で、現代

社会の動向を掴み、これからの時代に適合したまちづくりの指針を示す。また、甲府の街

のまちづくりを考える上で参考になりそうな、全国の事例を検証する。そして、研究の柱

Ⅲでは、柱Ⅰで導き出した甲府の街の問題点と、柱Ⅱで学んだまちづくりと示した指針、

実例の検証に基づき、活気ある甲府の街の構想を進める。以上の研究から、活気ある甲府

の街を実現する方法を、結論で提案するものとする。

1-3 研究前の仮説(※7月6日時点)

現在の甲府の街に活気が感じられない原因は、

① 街自体に、古臭く廃れているイメージがあること。

② どこの何があるのかわかりにくく、街に来にくいこと。

③ 若い人や家族で楽しめる場所が少ないこと。

④ ショッピングモールなどに、PRやお得感で負けていること。

だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

を十分に活かす必要もあると思った。そこで、仮説として、打開策の方針を考えた。

1.既存のものを活用し、いつでも、誰でも、気軽に楽しめる場所にする。

2.みんなでつくる街にする。

3.PR活動を活発にする

Page 4: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

3

約50年前 岡島の前[2]

第二章 本論

2-1 研究の柱Ⅰ 「まずは、甲府の街の現状把握から。」

① 「甲府の街」の定義

この研究における「甲府の街」は、「甲府市中心市街地

[1](右の地図の中で、点線で囲まれた範囲)及びその周辺

地域」とする。甲府市中心市街地は、甲府城(舞鶴城)の城

下町として江戸時代の始めごろからの歴史を持ち、JR

甲府駅を中心に商業、業務、住まいなど様々な都市機能

が集まり、多くの人やもの、情報が行き交う場として、

文化や伝統を育み、県庁所在地として山梨県全体の発展

に大きな役割を果たしてきた地域である。「甲府の街」を

このように絞った理由は次の3つである。

1.甲府に存在する「街」すべてを取り扱うことは出来な

いこと。

2.甲府市中心市街地が、地理的にも歴史的にも、甲府

の中心である(であった?)こと。

3.私の地元であり、特に、昔と現在のギャップが激し

い地域(…研究の動機の発祥の地)であること。

全国の中小都市で、中心街の空洞化が発生している。

これらの問題を解決していくことは、今後の日本にとって非常に重要である。

② 最盛期と現在の比較Ⅰ 街並み

小学生の時、図書室でたまたま開いてみた『甲府物

語』という写真集の中には、現在の街並みからは想像

もできない程の繁華な街並みが広がっていた。最盛期

はたった 50 年ほど前、私たちの祖父母の世代が私た

ちくらいの頃の甲府だ。通りや店は現在と変わらない

ところも多いため、場所などは容易に想像できた。身

近に感じられるゆえに、現在との差が余計に明白だっ

た。私はいろいろな意味でショックを受けた。そし

て、甲府の街に興味を持った。

〈参考:甲府の街の変遷〉1945 年の甲府空襲のあと、再建が進み、現在の街並みの原型が

出来た。県庁や甲府市役所、岡島百貨店などが位置し、甲府の中心地だったため、郊外か

ら多くの人が訪れた。最盛期は 60 年代。土日は通りを横切れないほど大勢の人でにぎわ

っていた。90 年代以降は、自動車の普及や東京などへの交通網が発達したことで、中心街

の客足は減少。郊外に大型ショッピングセンターの開発が続いたことも、客の流出に追い

打ちをかけた。そして現在に至る。

Page 5: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

4

↑[4]↑ ↑1962 年のオリオン通り[3]

○オリオン通りの街並みの変化

○現在のオリオン通りについて時間帯ごとに視てみる。

◎考察

・〈62 年〉とても混雑している。求めているのは、この種の活気ではない。買い物の頻度が

現在よりも高かったのであろう。

・〈82 年〉景気が良い。活気ある楽しそうな商店街。理想的♪

・〈現在〉ちなみに、再開発のココリの中もあまり盛っていない…。無機質な印象。

・〈現在〉いつでも空いている。休日の昼は小規模なイベントが開かれていることもある。

・〈比較〉年々客足が減少し、この街を利用する必要性が低下している。

・〈比較〉施設(アーケード・ココリなど)が整い、ハード面はレベルアップ。

・〈比較〉62 年は人、現在は自転車が障害。

平日 昼 平日 夜 休日 昼 休日 夜

Page 6: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

5

③ 最盛期と現在の比較Ⅱ 数値データ

甲府の過去・現在(・将来)の

人口や商業についての数値デ

ータを比較、考察する。

[5][6][7]

◎考察

・〈人口〉人口総数は終戦から増加していき、1980~90 年代にピークを迎え、減少に転じて

現在に至る。将来、さらに減少に拍車がかかることが予測されている。

・〈人口構成〉人口に占める高齢者の割合が著しく増加中。少子高齢化が進んでいる。

・〈商業〉戦後著しく発展。バブルが最盛期。バブル崩壊後縮小に転じた。

④ より深い現状把握

街並みの変化や数値データから読み取れることには限界がある。私の主観が含まれてし

まうが、より深い現状把握のために、実際に街に出向いて考えてみた。

◎考察(気づいたこと)→街の特徴・問題点

・歩行者が少ない。 ・閉まっている店が多い。 ・アーケードやタイルが味気ない。

・自転車や自動車が近くを走っていて怖い。 ・雨の日、タイルが滑って怖い。

・自動車で来にくい。(駐車場が不便な上、有料でゆっくりしにくい。)

・公共交通機関でも移動しにくい。 ・どこにどんな施設があるのかわかりにくい。

・若い世代向けの施設が少ない。 ・街の魅力や文化を感じにくい。

・PRや競争に消極的で、お得感もない。

事業所数・従業者数昭和47年 平成3年 平成11年 平成26年

事業所数 12,251 15,678 14,013 11,772従業者数(人) 88,812 122,386 103,799 111,2341事業所当たりの従業者数(人) 7.25 7.81 7.41 9.45

総数年間商品販売額 (万円)昭和51年 平成3年 平成11年 平成26年

総数年間商品販売額 43,814,366 123,131,626 98,107,112 63,128,084

Page 7: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

6

研究の柱Ⅰ まとめ

甲府の街は、昔から、山梨県の中心として、山梨県全体の発展に大きな役割を果たしてき

た地域である。特に、戦後からバブルにかけては、とても賑わった。しかし現在は、人口減

少や人口構成の変化、そして景気や生活スタイルの変化に伴って、街は縮小してきている。

甲府の顔、山梨の顔として、何とかしなければならない。

甲府の街の問題点として、安全性、快適性、利便性、魅力不足、PR不足、街の構造のわ

かりにくさなどを挙げた。つまり、現状は、だれもが利用しやすい街、多くの人が利用した

いと思う街ではないのである。また、生活スタイルの変化により、街の利用頻度や利用目的

が変化したため、独自性を打ち出さなければ街も生き残れない。しかし、甲府市が取り組ん

でいる中心市街地活性化基本計画は、セオリー通りで独自性に欠けているように感じる。

甲府の街の活気を取り戻すために、研究の柱Ⅰから分かったことは、現状の問題点を改善

することや、既存の施設や観光施設を生かした他にはない工夫を凝らし、独自の魅力を高め

ることが重要だということである。

2-2 研究の柱Ⅱ 「まちづくりってどうやるの?」

「これからの時代、どんなまちづくりが求められるの?」

① 「まちづくり」「都市計画」とは?[8]

「まちづくり」に、これといった定義は存在しない。自分なりにまとめると、「地域社会

に存在する資源を基礎に、その地域で暮らす人々と行政が協力して行う、よりよい街・より

よい暮らしを実現するための一連の活動」である。街では、多くの人々が、それぞれに生活

や仕事をしているため、街の全ての人々が安全で快適な暮らしができるように、計画的なま

ちづくりをすることが大切だ。

「都市計画」とは、街が健全に発展するために、秩序ある整備をすることである。有効な

土地利用と様々な施設の整備、街の開発に関する様々な計画など、市民の意見や要望を取り

入れながら、また、その自治体の財政に応じながら進められる。

「まちづくり」は、「都市計画」を柱に進められる。まちづくりにおいて、都市計画は非

常に重要である。

② 都市計画(→まちづくり)の進め方[8]

土地利用の計画、街の施設の計画、街を開発する事業の計画などを、具体的に定めていく。

都市計画(→まちづくり)の基本的な流れを示す。

1.一体の街として、整備、開発、保全する区域を指定

…無秩序な市街化(ドーナツ化現象)を抑え、最有効な土地利用を図る。←街の発展や将来の

私たちためにとても重要。(→③現代社会の動向は?(5)ドーナツ化)

2.街の現状の調査と将来の予測

…人口の増減とそれに基づく財政状況、公共施設、商業施設、工業施設、住居施設の現状を

調査し、将来を見据えたまちづくりの具体的な計画を立てる。

3.基本方針の設定、課題の抽出

…現況調査と将来の予測に基づき、都市計画の方針と区域ごとの開発方針や課題を抽出。

Page 8: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

7

4.基本計画の作成

…土地利用の計画、街の施設の計画、街を開発する事業の計画など、細部にわたる具体的な

都市計画を、財政状況を踏まえながら作成。

5.街の整備プログラムの作成

…都市計画の実現や推進に向けての方策、体制、進行の管理、目標、住民参加の仕組みづく

りなどについて、具体的な計画を提示。

③ 現代社会の動向は? ~これからの時代に適合したまちづくりを目指して~[8] [9]

甲府の街の活気を取り戻すまちづくりのためには、現状の問題点を改善することに加え

て、これからの時代を見据えることも必要だと考えた。将来に大きな影響を及ぼすことが予

想される現代社会の動向を掴む。

(1)グローバル化

世界が一つになりつつある。弱肉強食の競争化時代を招くとも。

(2)情報化

情報の活用度が増し、価値が高まり、物やエネルギー以上に重要な資源となりつつある。

(3)少子高齢化

柱Ⅰ③で示した通り、甲府でも急速に進行していく。

(4)旧中心商店街空洞化

甲府に限ったことではない。その背景には、モータリゼーション、巨大ショッピングセン

ターの郊外進出などがある。この研究において重要なポイントであるため、要因を整理する。

1.ワンストップショッピング

共働き世帯が増え、まとめ買いの傾向が強まった日常の買い物は、多種多様な購入が可

能で、駐車場も無料で広い郊外のショッピングセンターが支持されるようになったこと。

2.構造改革が困難

道路幅を広げることや、広い駐車場の確保が困難で、車社会に対応しきれなかったこと。

また、土地や建物の権利関係が複雑なことが多く、街の抜本的な作り替えも困難なこと。

3.商法

店員が客に丁寧に説明し、精算もする昔ながらの商売のスタイルが煩わしいと感じる

人が増えたこと。

4.一国一城の主

店ごとに経営状況が異なり、それぞれに一国一城の主である店主が、街全体の活性化の

ためにまとまるのが困難であったこと。

5.後継者離れ

店の後継ぎ候補が、廃れていく街から離れていってしまっていること。

(5)ドーナツ化

街がむやみに広がり、ライフラインや交通機関の非効率化、学校、保育園、病院など生活

に必要な公共施設の不備、中心街の空洞化、環境の悪化など課題が山積。人口減少や少子高

齢化に逆行。高齢者、子供、障がい者といった交通弱者にとって、誠に不自由な社会である。

(6)バリアフリー化

豊かで活力のある社会を維持するためには、高齢者、障がい者、子育て中の人々なども、

Page 9: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

8

社会参画できる環境づくりが大切。そのために、バリアフリー(物の障壁、心の障壁のどち

らについても取り除くこと)が推進されている。

(7)協働

(市民)協働とは、行政と住民が力を合わせて、街の様々な課題を対等な立場で解決して

いくこと。これまでのまちづくりは、行政が多くの公共サービスを提供し、住民はサービス

を受ける側という形で進められてきた。しかし、今では地方分権が進み、街の課題や住民の

ニーズも多様化・複雑化しており、協働のまちづくりが求められてきている。

(8)持続可能な開発

今だけに限らず、将来の世代にわたって開発ができるような開発をするという考え方。こ

のような開発が行われる社会が持続可能な社会。将来の世代の幸福と現在の世代の幸福の

両立を目指そうということ。→(9)環境保全との関連性が高い。

(9)環境保全

近年、自然環境や景観の保全が叫ばれていることは言うまでもない。私たちに限らず、将

来の世代も健康で快適な生活を送るためには、良好な環境の維持が欠かせない。環境との兼

ね合いを考えた、暮らしを豊かにするために必要な施設や開発事業が大切である。

④ 現代社会の動向→まちづくりの指針Ⅰ[8] [9]

③で示した現代社会の動向について、「これからの時代に適合したまちづくり」という視

点から検討し、まちづくりの指針を示す。

(1) グローバル化

→チャンスと捉えて、外国人を積極的に受け入れる体制、また、外国人から見ても魅力的な

街を整備していく。

(2) 情報化

→情報を戦略的に活用し、PR活動を行っていく。

(3) 少子高齢化

→お年寄りにやさしいまちづくりを行っていく。

(4) 旧中心商店街空洞化

→行政、民間企業、街の住民が協力し合い、工夫して課題に取り組まなければならない。

(5) ドーナツ化

→対策として、コンパクトシティのまちづくり(徒歩や自転車などによる移動圏内に、商業

施設や行政機関を集中させて、様々な機能が高密に詰まった街にすること)を目指す。交

通弱者以外の人にとっても便利な街になる。渋滞の解消、環境保全、商店街の活性化、地

域社会の復活などにもつながる。

(6) バリアフリー化

→誰もが安心、安全、快適に生活できるように、まちづくりを進める。バリアフリーをさら

に拡大発展させたUD(ユニバーサルデザイン)により、ノーマライゼーション(全ての人

が区別されることなく、社会の中で普通の生活を送ること)を実現する。

(7) 協働

→行政と市民が協力してまちづくりを進めていくことができる仕組みを整える。まちづく

りの主体は街を利用する全ての人々である、という意識を定着させる。

Page 10: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

9

(8)持続可能な開発・(9)環境保全

→周辺環境に配慮し、自然破壊や地球温暖化の防止につながるまちづくりをしていく。

⑤ 全国のまちづくりの事例[9]

全国のまちづくりの事例を挙げる。研究の柱Ⅲ「では、活気ある甲府の街の構想を練って

いきます。」の参考にする。

〈失敗例〉

1.北海道夕張市…炭鉱業の衰退を受けて、行政が無計画にレジャー施設を建設。行政に任

せっぱなしのまちづくり。→財政破綻。

2.山梨県身延町…地域主体でショッピングセンター「COMA」を設立。街の規模に対し

てでかすぎた。→近隣への大型店舗進出に太刀打ちできず閉店。街の商業に大打撃。

教訓:将来を見据えた都市計画が必要。一つのものに頼りすぎてはいけない。行政と街の

人々の協力体制をしっかりと整えるべき。

〈成功例〉

1.香川県高松市…丸亀町商店街はまちづくり会社を設立し、各店舗と借地契約をし、大規

模に再開発。→商店街の活性化に成功。

2.岡山県岡山市…「電子町内会」を開設。→地域の問題を住民が協力し合って解決するな

ど、地域社会の活性化につながる。

教訓:協働のまちづくりや、社会情勢を踏まえた取り組みは有効。

研究の柱Ⅱ まとめ

社会の動向を多角的に捉え、将来の見通しを持った、的確なまちづくりを進めていくこと

が大切。また、社会も街も人々も常に変化しているため、最適な方法を検討し続けるべき。

2-3 研究の柱Ⅲ

「では、活気ある甲府の街の構想を練っていきます。」[8]

① 甲府の街の課題を整理

・移動のしにくさ ・構造のわかりにくさ ・魅力の少なさ ・PR不足 ・独自性の欠如

・全体的に縮小ムード ・街の抜本的な構造改革は困難

② まちづくりの指針を整理

→巨大ショッピングセンターに負けない。 →時代の要請(むしろチャンス)に応える。

→独自の魅力を打ち出す。 →行政と市民の協力体制をきちんと整備。

③ 活気ある甲府の街の構想

研究の柱Ⅰで導き出した甲府の街の問題点と、研究の柱Ⅱで学んだまちづくりと示した

指針に基づき、活気ある甲府の街の構想を進める。

A) 街のシンボルをつくる!

甲府の街の顔、甲府の顔、山梨の顔として、街のシンボルをつくる。

B) 地域の特色を活かして独自の魅力をつくり、大々的にPRする!

Page 11: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

10

他にない貴重な資源である、甲府の様々な遺跡・特産品・地場産業を十分に活かす。

C) いつでも誰でも行きたくなる、楽しい街にする!

現在の甲府の街には、若い世代やファミリー向けのスポットが少ない。老若男女問わず、

また、曜日、時間帯を問わず、楽しく過ごせる街にする。

D) みんなでつくる街にする!

協働のまちづくりを推進する仕組みづくりと、若い世代が進出しやすい環境づくりが、こ

れからの甲府の街にとって非常に重要である。

E) みんなにやさしい街にする!

時代の要請を好機と捉える。ノーマライゼーションの実現を目標とし、街を利用する全て

の人々(特に高齢者)にとって、使いやすく、過ごしやすい街にしていく。

F) 気軽に訪れやすい街にする!

公共交通機関が不便な上、自動車も止めにくい、現在の甲府の街は正直、訪れにくい。街

へのアクセスや、街の中での移動の仕方を再考し、改良していく。

G) 活気に加えて、温もりや安らぎもある街にする!

訪れた人々が、明るい気分になるような街にする。また、高齢者や子供などが気軽に休め

る場所をつくるなど、全ての人に対して配慮が行き届いた街にしていく。

H) 便利でお得な街にする!

中心商店街は、巨大ショッピングセンターに、利便性やお得感で負けている。街で一体と

なって、これらの向上に努める。さらに、巨大ショッピングセンターにはない、街ならで

はのお得な魅力をつくる。

I) 季節による表情の変化を味わえる街にする!

甲府には、四季折々に、美しい姿を見せてくれる豊かな自然や、多彩な祭りやイベントが

ある。それらが引き立つ環境づくりやPR活動を行っていく。

J) 誇りを持てる街にする!←※指針の核

独自の工夫を凝らしたまちづくりで、甲府の街の魅力が高まれば、多くの人々が街に誇り

を持つとともに、街が活気に満ちるだろう。この研究ではこれを指針の核とし考える。

研究の柱Ⅲ まとめ

研究の柱Ⅰで導き出した甲府の街の問題点と、研究の柱Ⅱで学んだまちづくりと示した

指針に基づき、「活気ある甲府の街の構想」を打ち出した。この構想を具現化する方法を、

第三章・結論で示す。

Page 12: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

11

第三章 結論

「活気ある甲府の街の実現方法!」[8]

最後に、第二章 研究の柱Ⅲで打ち出した「活気ある甲府の街の構想」に沿って、これま

での研究を基に私が考えた、甲府の街の活気を取り戻す方法を提案する。

1.甲府城(舞鶴城)の天守閣を復元!城を街のシンボルとして整備していく!…A・B・C

甲府城(舞鶴城)は、江戸城を除けば、東日本で最大規模の城だったそうだ。甲府の街の原

点であるが、私たちが想像する「城」のイメージとは違い、天守閣が現存していない。しか

しながら、築城されたときから残る貴重な歴史的遺産である石垣や、出土した鯱瓦、年代、

城主などから、相当立派な天守閣の存在と、その大きさや形が推理でき、ほぼ同じ姿の復元

は可能だと考えられているそうだ。右上の図[10]は、天守閣の復元イメージである。景観づ

くりとしても、街の人々や来訪者が甲府の歴史や文化に触れ、交流する拠点としても、天守

閣の復元を中心とした甲府城の整備は、街のシンボルになるはずだ。

2.身延線に乗り入れる鉄道 or LRT・BRT で、リニア駅と甲府の街を繋ぐ!…F・H

リニア中央新幹線開通は大きなチャンス。利用客を呼び込むために、リニア駅と甲府の街

の間を高速で定時運行する公共交通を整備する。身延線への乗り入れや、LRT(…環境にも

配慮された路面電車)、BRT(…専用道路を高速で定時運行するバス)などが考えられる。

3.パーク&ライドを推進!無料駐車場・レトボン増発・自転車レンタルサービス…E・H

「パーク&ライド」は、山梨のような車社会に適した移動の考え方。駅やバス停までは車

で行き、駐車させたら、公共交通に乗り継いで目的地に向かうというシステム。実現すれば、

街中の自動車通行量が減少し、安心・安全・快適で時間に確実な街の利用が可能になり、二

酸化炭素の排出量も削減できる。コンパクトシティの形成にもつながる。パーク&ライドを

推進するために、駅やバス停の近くに大規模な駐車場をつくり、街の利用者は料金無料とす

る。レトボン(土日に甲府の街を巡回している、レトロな外観の無料バス)を増発し平日にも

運行する。街中での移動手段として、「ライド」するものは公共交通に限らず、自転車もあ

りだと考える。自転車をレンタルできるサービスも提供する。

「活気ある甲府の街の構想」

A) 街のシンボルをつくる!

B) 地域の特色を活かした独自の魅力をつくり、大々的に

PRする!

C) いつでも誰でも行きたくなる、楽しい街にする!

D) みんなでつくる街にする!

E) みんなにやさしい街にする!

F) 気軽に訪れやすい街にする!

G) 活気に加えて、温もりや安らぎもある街にする!

H) 便利でお得な街にする!

I) 季節による表情の変化を味わえる街にする!

J) 誇りを持てる街にする!←※最終目標

Page 13: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

12

4.街路を安心・安全・快適に改造!自転車の受け入れ体制の整備!歩道芝生化!…D・E

街路について、自転車を利用する人々も、利用しない人々も、安心、安全、快適に過ごす

ために、街全体で、自転車レーンや自転車を止めておける場所の整備を進める。

さらに、歩行者の安心、安全、快適のために、交通量が多い通りの歩道を芝生にすること

を提案する。西洋には芝生化された街路がある。多くの利点がある。雨でも水たまりができ

にくい点、転んでもけがしにくい点、物理的にも心理的にも、自転車や車が張り出しにくい

点、暑くなりにくい点、景観が良くなる点など。維持管理を人々が協力して行っていくこと

で、そこでのコミュニケーションも持てる。街独自の魅力として、愛着も生まれる。

5.UD推進!年齢、国籍、障害の有無問わず、みんなにやさしい街!…E・G

UD(ユニバーサルデザイン)の7原則(①公平性②自由性③単純性④分かりやすさ⑤安全

性⑥省体力⑦スペースの確保)に沿って、年齢、国籍、障害の有無問わず、みんなにやさし

いまちづくりに取り組む。

〈具体案〉

・点字ブロックなど、障がい者のための施設の積極的整備

・ピクトグラム(絵文字)の案内表示 ・気軽に休める場所づくり ・ベビールームの整備

・多目的トイレの整備 ・喫煙所の整備 ・外国語が話せるガイドの常駐

・夏はクールシェアスポット、冬はウォームシェアスポットの設置

・物を預けたり、レンタルしたり、配達したりできるサービスの提供

・ペットを預けることができる施設の整備 ・ペットと共に楽しめる場所づくり

・買い物をサポートするサービスの提供 ・買い物代行サービスの提供

6.「協働のまちづくり」推進!若い世代のチャレンジを後押し!…D

甲府市にも「協働によるまちづくりに関する基本方針」があるが、より市民が街について

考え、まちづくりの主体であるという意識を持てるように、より積極的に取り組みたい。

甲府の街の将来にわたる発展のためには、若い世代が新たな事業にチャレンジしやすい

環境づくりも大切。空き店舗や古民家を売り場として提供するなど支援を行っていく。

7.街の魅力を掘り出し、積極的にPR!例えば、「宝石の街 甲府」…B・C

実は、甲府は宝石の研磨加工業が盛んな地域である。甲府駅南口には、「宝石の街 甲府」

と書かれたモニュメントもある。夜は宝石のような美しい夜景も見られる(関係ない?)。そ

こで(※続ける)、甲府城をライトアップし、街にイルミネーションを施し、夜景にさらに磨

きを掛けPRする。昼でも「宝石の街」感を醸し出すために、宝石のような装飾をあしらっ

た標識や街灯、噴水などをつくり、街並みの魅力を高める。宝石以外にも、B-1グランプ

リの甲州鳥もつ煮など、街の魅力の特産品や地場産業はたくさんある。「甲府ブランド」と

して、PRしたり、統一のロゴマークを考えて付けたりして、十分に活用していく。

8.情報戦略!突飛なPRで注目を集める!…B・C・D

甲州鳥もつ煮といえば、とりもっちゃんだが、くまモンなど、地域の魅力発信に一役買っ

ているご当地キャラクターを見習い、よりキャラの濃い、甲府の街のマスコットに育てる。

or 公募か、街で考え出すかで、とにかく強烈で類を見ないのを新たに作る。最近は、「おも

しろ地方自治体PR動画」たるものも流行している。これも作って人気に便乗する。TVC

Mやインターネットなどを活用して、どんどん街をPRする。

9.既存の施設や行事をリニューアル!味わいのあるまちづくり!…B・C・G・J

Page 14: 3 年生 男子生徒 平成28年度 卒業研究 - Kofu · だと考えた。甲府の街の活気を取り戻す、現実的な提案をするには、現在の街にあるもの

13

再開発ビルを建てるなど、街の抜本的に作り変えることは困難だ。現実的に、今、街にあ

るもので、魅力を引き立てる工夫を施す。

〈具体案〉

・アーケードの路面のタイルの張り替え(オリジナリティーのある美しいデザインに)

・シャッターアート(空き店舗や営業時間外の店舗のシャッターに、様々な映像を映し出す)

・映画館の復活(閉館したまま現存している映画館を何らかの形で活かす)

・駐車場を街に溶け込ませる。(ゲートや車止めに景観に配慮した工夫を)

・信玄公祭りなどの祭りや行事で、より多くの観光客を受け入れられる態勢を整備

(誰もが訪れやすく、楽しめるような工夫や環境づくり)

・四季折々の姿を楽しめる街並みづくり(自然を効果的に取り入れるなど)

10. 利便性やお得感で、巨大ショッピングセンターと渡り合う!…B・H

甲府の街を脅かす、巨大ショッピングセンターの強みは、何といっても利便性とお得感。

対等に渡り合うには、思い切った策を講じることも必要。

〈具体案〉

・ショッピングカートの共有化(街の中では自由にカートを使えるように)

・嬉しいカード(多くの店や施設で使える、高いポイント還元率、魅力的な優待)

・商店街でプレミアム付き商品券の発行(甲府の街を利用するきっかけに)

・福引きができるスタンプラリー(街を巡るきっかけに)

11. 防災・防犯対策も万全な街にする!…E

犯罪・災害への不安は大きい。街の秩序の維持と先進的な取り組みで、街の利用者を守る。

〈具体案〉

・防災設備の整備 ・避難訓練の実施 ・避難経路の表示 ・分別ゴミ箱の設置

・ごみ拾いイベントの開催 ・公共、民間施設にAED設置の推進 ・街の放送施設の整備

(…緊急時に、迅速かつ的確な音声案内が可能)(…普段はPR活動や連絡手段として活用)

12. 以上の取り組みを街を挙げて行っていく!…J⇒活気ある甲府の街を実現!

参考文献

[1]甲府市/甲府市中心市街地活性化基本計画 https://www.city.kofu.yamanashi.jp (2016)

[2]甲府市:甲府物語,甲府市(1990)

[3]石川博:昭和写真大全甲府 甲府市 保存版(2010)

[4]山本文香:山梨日日新聞,21 面,2016.9.28

[5]甲府市/人口 https://www.city.kofu.yamanashi.jp (2016)

[6]古屋亮:人口減少社会の現状とその可能性―甲府市を事例としてー,News Letter

Vol.203-2, pp.3, 2015

[7]山梨県統計データバンク https://www.pref.yamanashi.jp

[8]香坂文夫:よくわかるまちづくり読本ー知っておきたい基礎知識 88-,技報堂出版

2010

[9]新編 新しい社会 公民, 東京書籍(2016)&河西先生の授業

[10]やまなしお城10万人 ACTION http://oshiro-y.com