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平成19年度海外輸出環境現地調査報告 イタリア編Ⅱ

千葉県農林水産部生産振興課園芸振興室 小竹寿子

1 目 的

県産植木の輸出は、大型の造形樹を中心に、富裕

層の増加とオリンピック開催に向けた緑化需要の多

い中国へ行われている。しかし、政治情勢やバブル

経済の変化により、安定的・継続的な輸出に不安が

あるため、新しい輸出相手としてEU圏(オランダ、

イタリア)を意識し始めている。 EUへの輸出は、2年ほど前から徐々に始まり、

H18年は約1億円の販売実績がある。 EUへは栽培地検査(1年間)を受け、線虫対策

をしっかり行ったものは土壌をつけたままで輸出で

きる。この方法は生産者にとって労力的に簡易なた

め、受け入れやすいのではないかと考えられる。。 そこで、EU 圏のBONSAI等の需要が伸びていることに期待して、イタリアのナー

セリーの実態と販売環境を調査し、継続的に輸出が行える条件と植木生産の方向を見極め

ることを目的とした。

2 植木等植物の輸出状況

表―1 盆栽苗木類等輸出証明実績 千葉県 千葉県産 盆 栽 苗木・穂木 合 計

2005年 2006年 2005年 2006年 2005年 2006年 イタリア 27 133 433 1,874 460 2,007

オランダ 54 0 180 204 234 204

EU諸国向け 4、680 5,500 11,532 15,802 16,212 21,302

中国 0 0 1000 173 1,000 173

香港 0 0 197 1,620 397 1,620

全国 イタリア 4,400 5,350 54,887 34,905 59,287 40,255

オランダ 7,679 4,670 645,263 368,343 652,942 374,013

中国 0 36 29,756 62,896 29,756 62,932

香港 0 0 28,727 7,077 28,727 7,077

調査期間 : 平成 19 月 3 日~11 月 10 日

派遣調査員 : 小竹寿子 千葉県農林水産部生産振興課 園芸振興室長

上西博之 株式会社フラワーオークションジャパン

営業本部 次長 商品企画開発担当

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植木類は木の樹齢や品質により価格が大きく異なるため、輸出本数だけでは国別輸出額の

比較はできないが傾向は把握できる。千葉県産は中国本土に輸入する場合も、香港を経由し

ていることが推測される。またEU諸国向けとイタリア向けの本数が確実に伸びている。

1,9431,455002,062ブラジル

3,0000000パラオ

3,4426,5071,1413,3341,511シンガポ-ル

4,0195,9946,9271,616201デンマ-ク

4,4635,5597,6463,1752,664クロアチア

5,225001,3838,376北朝鮮

5,57121,23328,18026,67537,571フランス

5,9786,2423832950オ-ストラリア

7,74813,25310,70313,9317,155カナダ

8,88812,25402,5910チェコ

12,01908,59125,15715,204スイス

29,1805,11001,0131,354ベトナム

34,99440,85230,72731,03523,701イギリス

38,51722,64016,84814,93537,169大韓民国

51,81920,40371,45419,72912,740台湾

56,518103,71681,74448,19249,267ベルギー

57,85669,60738,65540,73153,734ドイツ

60,57443,82020,90027,58619,423スペイン

62,64063,29473,815100,65178,636アメリカ

102,082114,573112,751118,571157,681オランダ

295,050212,410230,830190,047154,401イタリア

358,305110,98920,993111,563111,833香港

1,114,074512,236211,07796,41457,990中華人民共和国

2,0062,0052,0042,0032,002

鉢物、盆栽、植木類の統計 単位千円

3 イタリアの農業の概要

イタリアの農業は、零細な農業構造で耕種農業を中心とした営農が行われている。国土の

50%(約1,500万 ha で日本の約3倍)が農地で、その内50%が耕種作物、30%

が永年草地、残り20%が果樹園となっている。果樹園はオリーブとブドウのシェアーが高

い。 農業就業人口は減少を続けているが人口の4.8%を占め、約122万人と EU で 大と

なっている。 平均経営耕地面積は5.4ha と EU では小さい、さらに経営規模の格差が大きく、5ha未満層の農家が75%、50ha 以上層の農家が1.8%で、この大規模農家層で農用地全体

の1/3を占めている。 農産物の自給率は野菜・果物・米・ワイン等で自給を満たしているが、穀物・肉類・酪農

品は不足している。 地域的には、北部は大陸的気候に近く雨量も比較的多いために、水稲・小麦・酪農等が盛

んである。これに対し南部は地中海気候で、冬温暖で夏は涼しく雨量が少ないことから、硬

質小麦・オリーブ・柑橘類等の生産が盛んである。

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今回調査した、ピストイア地方は、イタリアの中央よりも北部にあり、標高300~40

0m、気候区分は Z8―9( 低気温 ―6.7 ~ ―12℃)ゾーンに位置し、冬は積雪

もある。四方を山に囲まれ夏の湿度が適度にある植木生産に適した土地である。

4 視察概要

(1) クリスピイ ボンサイ(CRESPI BONSAI) ① 特徴 ミラノ市内から車で約20分、静か

で歴史を感じるミラノ市郊外にのP

AREBIAGOという町にクリス

ピイ ボンサイのガーデンセンター

はある。 父親が日本の盆栽に魅せられて、

イタリアで も早くBONSAIを扱 うようになった。

初めて日本に訪れるようになって 30年になる。 盆栽に関する書籍、技術書、雑誌、盆栽に関す

るあらゆる資料が収集された半地下の書庫は圧巻

である。現在は引退している社長の父が、盆栽の

作り方や管理技術の普及に情熱を注ぎ、ついには

立派な盆栽博物館を開館させるまでに至ってしま

った。盆栽博物館には盆栽や鉢の名品、道具類、

古書など充実した内容で展示されている。奥には

100人は優に入階段状の広いホールが作られ、

そこではBONSAI教室が行われる。 写真はガーデンセンターの玄関である。一歩は

いると日本よりも日本を感じる空間に入 ることができる。 盆栽・造形樹、日本文化グッズ、盆栽関係の書

籍類・道具類・鉢、赤玉土など盆栽作りに必要な 物は本物志向で全て輸入している。

IFEXの千葉県ブースを訪れ、千葉県を視察 したことがきっかけでこの度の訪問となった。

② ナーセリー事業 日本や中国、韓国から輸入したBONSAIを EU圏、86箇所のガーデンセンターに販売してい

る。販売はイタリア中心である。 日本からの輸入品目は、イヌツゲ、キンメツゲ、 中国から輸入された小盆栽 €86 五葉松、黒松、カエデ、ドウダンツツジ、ツバキ、

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サザンカなどで、輸入会社を通して、福岡、徳島、名古屋、大阪、埼玉から輸入されている。

クリスピ ボンサイの稼ぎ頭

は、安価な中国産の盆栽である。 縦横20cm程度の小さな盆栽が、 輸入してからの少しの手入れで販 売されてゆく、店頭価格も100 ユーロ以下と安いため、若い盆栽 ファンにはちょうど良い価格なの だそうだ。

かわいい、手頃、人気物の理由 がわかるような気がした。

中国産盆栽の養成温室

5 EUの植木生産産地 ピストイア

トスカーナ州ピストイアはイタリア半島の北部、ミラノから250kmにあり、ミラ

ノとローマの調度真ん中にある。トスカーナ州はイタリア国内でも農業が盛んな土地で、

ワイン、オリーブ、小麦などを生産している。 ピストイアの人口は10万人、そのうち1万人は植木関係に従事している。植木の栽

培面積は5500haである。15km四方にナーセリーは2000社あり、3つの巨

大ナーセリーと販売力のあるナーセリーが4社ある。

トピックス 11月の第一日曜日はイタリ

アの人々にとって「特別な日」

なのだそうです。家族そろって

先祖の墓をお参りし、お墓を花

で飾利ます。そのときの花は菊

を用いるのが慣例なのですが、

寄せ植え、鉢植え、切り花様々

です。国が変わるとお墓の祭り

方も違います。

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(3) サンドロ ブルーチ (Sandra Bruschi)

経営面積190ha(内施設12ha、コンテナー

栽培地 58ha 露地栽培地 120ha)従事者60人

EU 圏、東ヨーロッパ、アフリカ、中東など

33ヶ国に輸出している。

整然と並べられたトピアリー、大規模な農

場であるが、その品質の良さと均一さにまず

驚かされた。

日本産のBONSAIは事務所前の一倍良

い場所に置かれ、高価格商品であることがす

ぐ理解できた。

日本産のBONSAIの仕入れは、イタリアの輸入業者が入れたものを写真で確認して仕

入れるため日本と直接の売買はない。イタリアに入っている物を買うため、ロスがなく、手

間も省けるという。購入割合は、キンメツゲ80%、キャラ10%、五葉松・黒松が少し。

中国・韓国産の造形樹は安いが取り扱ってい

ない。良い物を買いたいからこれからも取り

扱う気はないそうである。日本からの輸入量

は40フィートコンテナで5~6本程度

BONSAIが EU や中近東でこの2年間

良く売れ始めていることに驚いているという。

通常BONSAIは、1、2月に仕入れる

が、6月には完売してしまうという状況にあ

る。これからも広げてゆきたい。と語った。

販売先は主にガーデンセンターである。バイヤーは年に1回(1・2月、9月が多い)農

場を訪れ欲しい木に印を付けていく。あちこちにブルーのテープが付けられている、それが

売約済みの印である。

1~3月は10台/1日、11月はオフシーズンなので5台/1日程度の出荷をしている。

小さいサイズの木はトラック1台に約2,000本積載する。積載方法も巧みであった。

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(4) イノセンチ アンド マンゴニ (Innocenti & Mangoni)

植木屋さんのロビーとは思えないほどセンス

の良いデザインでまず驚かされた。

1953年祖父が植木生産を始めた 経営面

積250ha。従業員は100人、取引先は EU、

ロシア、レバノン、モロッコ中近東、ヨルダン

とモナコ王室とも取引しているという。3大ナ

ーセリーの一つである。

販売先はガーデンセンターがおおいが、ラン

ドスケープ用資材としての販売も多い。

生産におけるポリシーとして、エンドユーザーを意

識した商品生産を行っている。

BONSAIはカタログにも載せら、品目は

キンメツゲ、キャラ、松類、檜葉類で種類は少

ない。見本園にはサザンカがあった。

仕入れは日本にいる友人(イタリア人)が形

のきれいな商品を選び送ってくれるため、買い

付けには行ったことがないという。またミラノ

には日本からBONSAIを輸入している大き

な会社があるという情報を得た。

こんなに小さいBONSAIが欲しい

イノセンチ社長と村木通訳

現在直接輸入することも考えているので、私たちの訪問はタイムリーであったようだが、

日本にも売りたいという気持ちがある。

BONSAI でもっとも売れ筋のサイズは、1m程度の小さいサイズである。日本での希望購

入価格は(3,000~5,000円)で、ランドスケープ用よりもガーデンセンターでの販

売が伸びているため、個人でも買える手ごろな価格の物を売りたいと考えているという。

ロシアへの販売に興味があったので聞いたところ、現在ロシアは非常に難しいが将来性が

あるので続けている。ロシアにはナーセリーやガーデンセンターがないため、直接エンド ユ

ーザーに販売している。という。これだけでは良くわからないが、流通ルートがまだ整って

いないことが推測できる。

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(5) バンヌッチ(VANNUCCI PIANTE) イタリア 大のナーセリーで EU でもトップ10に入る。1938年にオリーブ、マグノ

リアの栽培でスタートし、今年は創立70周年、記念の年である。 経営面積は392ha、(コニファー184ha コンテナ栽培地163ha 施設栽培45

ha)、展示温室 5000㎡、他に下請け農場を抱えている。従業員は250人、

生産のコンセプトは、①規格通りに作

る ②幹はまっすぐに ③添え木は自然

素材を用いる。④ほ場の有効利用、植物

は植生を考慮して効率的に配置する。規

模が大きいため、品質管理に非常に気を

つけていることが感じられた。 説明されたとおり、ほ場管理はよく行

き届いており、揃い申し分がなかった。

大規模経営の圃場を回っての買い付けは大変である。ほ場を見る時間のない忙しいバイヤ

ーのために、5000㎡のショウルーム(ガラス温室)

を新築した。ここに3000種の見本品が置かれてい

る。見本園のあるナーセリーは EU に2社しかないと

誇らしげに説明していた。 取引のある国は38ヶ国、EU圏、東欧、ロシア、

アフリカ、中近東、オセアニアまで及んでいる。クラ

イアントは120箇所におよぶ。 BONSAIは2000年にはじめて大型のイヌツ

ゲを入れている。 ほ場にある造形樹も他社に比べ大型の物が多いよう

に感じた。日本からの輸入も多く、担当者2名を配置

している。キャラ、ツゲ、ツバキ、サザンカが主な輸

入品である。 出荷の 盛期である1~2月は40台/1日の搬送を行う。1台当たりの販売額は€20,

000~40,000(340~680万円)、トラックへの積載の為にフォークリフト15

0台、3000台のワゴンを備えている。トラックの積み込みは2人で4時間かかるという

ことであった。

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(6) ニッポン ボンサイ (NIPPON BONSAI) ミラノから北に30km、近くにコモ湖

があり、その周辺は世界的な有名人が別荘 を持つ高級保養地である。

オーナーは、埼玉県吉川で1年間住み込 みで盆栽の修行を行った経験があり、日本 語が堪能で、大変センスのよいおしゃれな 方である。 業務内容は①盆栽や造形樹の輸入・販売、 ②ショップ経営、③造園やインテリアの設 計 ④貸し鉢、そして始めたばかりの ⑤ ナーセリー経営、と多角的である。

現在15人の従業員で経営している。 ショップは5年前にオープンし、駐車場とショップを繋ぐように、日本庭園が造られて

いて、橋を渡って店内に入る。高級保養地を背後に持つという、裕福な客層に恵まれ、経

営も順調のようである。 ショップの奥は、BONSAI の販売展示

場で、樹種はイヌツゲ、キャラ、松とい

う定番に加え、ドウダンツツジ、カエデ、

ツバキ、サザンカ、盆栽は、松、ケヤキ、

しんぱく、ツツジ、実物と品目数も多か

った。 ここでも、椿類の歩留まりの悪さ、ド

ウダンツツジの品質低さ、コンテナへの

積み方についての注文があった。 樹木類やショップで扱う商品等の輸入

先は、日本以外に中国・韓国産の小型盆栽、スペイン・アメリカからは植物、インドネシア

の古民具等様々で、面白いショップを作り上げていた。 現在も日本へは年に1~2回買い付けのために来ている。取引先は研修先の安行を始めと

して、福岡、名古屋、大阪と広範囲である千葉産は埼玉を通じて購入しているようだ。 日本の植木事情に詳しく、関東・関西・九州と地域の人間性や商売の仕方もよく承知して

いる。現在はカエデ類に非常に興味を持ち、新品種の苗木を輸入し自ら栽培・育成し始めた

という圃場を案内してくれた。 カエデ類は耐寒性があり植生の範囲が広く、さらに葉は変化に富み、芽吹きから紅葉まで

何時の季節も楽しめるため、庭園用植木として優れている。世界的にも非常に人気があり有 望樹種である。

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(7) CEVA LOGISTIC Italia 輸送通関業者 世界中にネットしている欧州大手の輸送通関業者である。日本の総合物流会社でイタリア

に植物を運んでいる実績のある日進の紹介である。 現在当社が使用している港は7つである。ジェノア、ドリエステ、アンコーナ、リボルノ、

ラスベーチャ、ミラノ。ミラノは大きいが、現在中国からの荷が多く(靴屋・バッグ・衣類等)混雑している。フィレンツェ(ピストニア)にはリボルノかラスベーチャ港が良いだろう。 植木の輸入も行っていて、日本からは26日で到着し、勿論リーファーコンテナである。

通関は1日ですむ。しかし週末(土曜日は半日業務、日曜日は終日休業)は気をつけたほう

が良い。ということだが、輸入経験者からは 6 日位は見たほうが良いとのことであった。 CEVAはリーファー(低温)輸送を得意としている。途中の開閉はなく温度調節にも自信

があり、これまでに事故はなかった。 EU圏や東ヨーロッパには、海上輸送ではなく陸路で配送される。港から出た荷物は一度

ナーセリーに引き取られる。そこで、売買され配送となる。配送料は欧州地域で€2000

~4000、返し便などで運賃に差が生じる。

ピストイアは欧州で3本の指に入る植木面積を持ち、輸送力も高い地域である。

以上のような説明を受けた。

県産植木のイタリア植物検疫におけるキャンセルが、一度もないということから、イタリ

アの植物検疫の様子について聞いてみたが、EUの法律はEUどこでも同じなので格差はな

いが、多くの植木がイタリアを経過するのはサービスが良いからでしょうと、本音のところ

は聞けなかった。

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6 総括として

(1) 高い生産技術、 視察先をBONSAIに魅せられた2社と大規模ナーセリー3社に分けて考察する。 ① BONSAIを社名に持つ2社

盆栽(BONSAI)という名を社名に付けた2社は、似て非なる物ではあるが、

BONSAIの芸術性を高く認識し、その普及に努力しながら、BONSAIの底辺

の拡大に努力を惜しまないことは共通している。現在ミラノ市には50、イタリア全

土では3000のBONSAIクラブがあるという。 日本では盆栽は高齢者の楽しみと考えられがちであるが、イタリアでは若者に人気

の高い趣味なのだそうだ。いずれの会社もBONSAI教室を主宰し、時には講師を

日本から招いての講習会やコンテストを開催して、BONSAI教室やクラブ活動を

盛り上げている。

クリスピさんの教室(左:教壇に立つ偉大な父 右:机に座る現社長) この真摯な姿勢に、私たちも反省すべき点は多々ある。身近に楽しめる日本庭園や、

樹芸を作る楽しさやを少しも伝えてこなかったことに気づいた。売れないと嘆きなが

ら消費者を育ててこなかったことを反省したい。 両社共に毎年のように日本にきては、自分の目で選んだ物を輸入する。自分でBO

NSAIの管理ができる技術を身につけていることが強みである。 ショップやガーデンセンターには日本庭園が造られ、ここを訪れるイタリア人には

非日常を感じ、楽しい場所となっているに違いないと感じた。

(2) 高い技術、植木生産地ピストイアの大規模ナーセリー 植木生産に従事する者が人口の10%を占めるピストイアのナーセリーは、EU圏

でも屈指の植木産地である。またナーセリーは世界トップクラスの栽培技術を持って

いると考えられる。 高さ・幅がきっちりと揃えられて育つ植木類は、選別という作業の必要性は感じら

れない。端から買い付けてゆけばよいのである。普段生産者に向かい、計画生産・

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計画出荷などと、口をとがらせて言っているが、ここではあたり前ことでナーセリー

経営者としては当然のことのようである。 カタロクは図鑑のようだ、重さが苦痛になるほど品揃えがよい。VANNUCCI

は 3000 種も扱っている、木の形もトピアリーを初めとして、様々な造形技術を駆使

し、装飾性を高め楽しい植木がたくさんある。 この点は未だもって日本の生産者には見られない相違点である。

写真上:装飾性の高いトピアリーの数々 (3) グローバルなハブ機能 イタリアにはナポリ・ベネチアなどいくつか港があるが、日本からの荷はジェノア港を

使うことが多い。平日なら入港から1日で入国できるというが実情は6日位と考えたほう

が良いらしい。SEVA 社のアドバイスでは、リボルノまたはラスペーチャ港が良いという

ことであったが、港の決定は荷受人の意向に副うしかない。 バブ機能としての有能さは、ピストイアがヨーロパ(EU)において代表的な植木の生

産地であり、輸送能力が高いことが上げられる。 ピストイアには、地域として植木の展示会もあるらしいが、EUは元より東欧・中東諸

国からのバイヤーが年に一度(1・2月、9月が多い)訪れ、商品を実際に見て買い付け

ることである。いずれの会社も30を超す多くの国にトラックを走らせ輸出していること

に、ハブ機能の高さと将来性を感じ、この高い機能を我々が利用すべきであると考える。

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つまり、ピストイアの有能なハブ機能は、日本のBONSAIをピストイアのナーセリ

ーに売ることで、労せずに世界に広がることを意味する。

(4) 流通システムにおける装備等の充実

フォークリフトを何百台も持ち、大型のトレーラーでヨーロッパ大陸を駆け巡り、ロシア、

アラブ諸国、アフリカにまで達する強力な顧客確保と物流システムの構築は一朝一夕には作

ることは出来なし、また我々日本人は、これだけグローバルな感覚は持ち合わせていない。 荷の積み方、季節ごとの積荷対策、会社によ

り方法は異なるが、積載作業には経験豊かな職

人が携わり、技術は我々よりもはるかに勝って

いる。 ピストイア発のトラックが植木を満載し、ヨ

ーロッパ大陸を走っている様子を創造すると、

非常に頼もしい。 盛期、 大大手の会社の販売状況は、

40台/日、2 千本/1台、約350~700万円

/1台 という。

7 BONSAI

(1) BONSAI の価格 私たちは、BONSAIがいくらで売られて

いるかとても興味があり、高値が付けられてい

るとうれしいと感じるが、それは間違いではな

いかと思う。 ゴヨウマツ

€ 8790(140万円) →

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上左側のツゲは、€1250(約21万円)、右側のヒバ類は、€12,000(約200

万円)の値がついていた。ナーセリーにはこの価格から15~20%引きの価格でおろす。

ユーロ高もあり、感覚的に良い価格がついているように感じる 形については批評がましいことを言いたくなると思うが、それは控えたほうが良い。

100万円を越す大型の植木は、ランドスケープ用として、小型の木はガーデンセンター

家庭用として、需要を分けていたが、現在はガーデンセンター需要のほうが多い。 そうなると必然的に輸出のターゲットは決まってくる。 (2) 輸入BONSAIの問題点

① 植物について ア 高い椿類の枯死率 日本から直接輸入する2業者から、椿類の活着率が悪く、鉢に定植してから、落葉

が著しくなり、枝が枯れ始め半年くらいで 50%程が枯れる。という問題点が出された。 輸入業者の判断では、①輸送に問題があるのでは、②根が小さいのではないかとい う。私たちの観察によると、病気や害虫によるものでなく、生理的な問題から衰弱し ていくのではないかと判断した。

その原因は、イタリアで使われる土壌ではないかと考えられる。培養土はピートモ

ス主体でパーライトなど、非常に軽く水はけの良い培養土が用いられている。このこ

とから、日本で育てられていた土壌条件とかけ離れた物理性の培養土のため、根の成

長を阻害する要因が発生したり、元から根量が不足しているために、環境の変化に対

応できずに発生した障害のように感じたが、確信はない。

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イ キャラ キャラもコンテナに植えられてから一度痛む。これはキャラの根が弱いという特性

から発生すると考えられるが。現地では1年以上期間をかけて再生させている。 とにかく1ヶ月以上をかけて輸送されることから、また輸送中の障害など、多くの

検証が必要である。椿類やキャラは重要な輸出品目であり、海外での人気が高いこと

から早急に解決しなければならない課題である。 ② 買い付け方法について

ア 地方によって異なる、複雑な買い付けかた 現在行われている、外国から日本への注文方法は、①日本にきて直接木を選んで

注文する ②エージェントを通じて、写真を見て注文する。この2つの方法がとら

れている。日本の事情に詳しい業者でも、九州・関西・関東など地方によっての取

引方法や価格の付け方が異なることが理解できないと言っている。 地方の色、独自性は文化としては好ましいことではあるが、ビジネスとしてはシ

ステムを洗練させ世界共通なものにしたい。

イ 商品トラブル 日本に出かけて選んだ木と違う木が届いた。 このような事件は希であろうが、こんなことが起こっている。 この業者は、これ以後日本に行くことはせず、イタリア人の輸入業者が買い付け

たものから選んで買うことにしている。この方法が間違いはなく、ロスも出なくて

良い、という。 SANDORO と INNOCENTI 両社はこの方法をとり、日本から直接の輸入は行っ

ていない。あってはならないことである。

③ 輸送について 船便でイタリアまでは約一ヶ月、リーファーコンテナ(温度・湿度調節装置装備)

で5~6℃に設定され輸送される。港に着いた時点で、ツバキ類では落葉が目立ち、

ツゲでの落葉は2%程度発生する。また通関手続きで5~6日ほど放置されることも

荷痛みの原因となる。 EUへの輸入は11月から3月に限られていて、イタリアへは1月が多い。

植木の海上輸送は経験が浅く、椿やキャラなどの問題も表に出てきたばかりである。

植木の 適輸送条件は何も研究が進んでいない状況といえる。

(3) イタリアに向けた千葉県の戦略 ① EU 向け輸出の50%がピストイアに

イタリアでの情報であるが、日本からEUへ輸出される植物の40%は造形植木で、 輸入額は約2億円程度である。その内ピストイアの大手3社(INNOCENTI、VANNUCI 、FRANCHI)には約1億円(50%)、コンテナにして60台分が輸入されているという。 近年造形植木に対する引き合いは多く、ナーセリー自身も驚いていると話していた。

Page 15: 1 目 的 - maff.go.jp · 作り方や管理技術の普及に情熱を注ぎ、ついには 立派な盆栽博物館を開館させるまでに至ってしま った。盆栽博物館には盆栽や鉢の名品、道具類、

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「もっと取り扱いたいと考えている。」という言葉から、「千葉県では2~3年後には

小型植木の輸出は可能になる」と風呂敷を広げてみたところ、良い返事が返ってきた。 今ほしくても待てないという緊急事態ではなく、また底の浅い需要ではないことが

わかった。勿論私にも約束は果たせるという作戦があるから言ったことである。

② 「欲しい」と名指しされた植木 聞き取りではあるが、業者が欲しいと名を挙げた樹種をあげると次の様になった。 カイズカイブキのS字スタイル、キンメツゲツゲ、赤松・黒松、ツバキ類、カエデ類

ドウダンなどの玉物、サンゴカクモミジの小さい物など、種類は多くはない。つまり

今は海外におけるBONSAIの黎明期なのである。CRESPI BONSAI や NIPPON

BONSAI ように、日本人よりも盆栽に詳しいイタリア人がいて、質の良い商品やパフォ

ーマンスを行い啓蒙を図ってくれているが、一般にはオリエンタルの香り漂うBONS

AIに興味を持ちはじめ、日本ブームの中の消費が始まったばかりと言えなくもない。

私たちも「これは売れる」と有頂天になると、植木は永年作物だけに傷は大きくなる

かもしれない。 しかし私の願望であるが、日本と西洋を比較する例えに、西洋の「石の文化」、日本は

移り気の「紙の文化」という評判がある。BONSAI においても本質を見極めて、安定し

た波長で需要が続くことを期待している。 ③ 具体的な対策 ア 1本5000円の植木生産の振興 1~1.5m程度の小さくて細い造形樹の生産振興である。

本県の植木生産者は1本100万円、200万円と高額で取引される立派な植木

を、2代・3代と繋いで生産することに誇りを持っているため、小さい造形樹の生

産に切り替わることは出来るだろうか。と懸念している。 しかし、輸出に取り組むのであるなら、考え方を変え、「欲しい、売れ筋」といわ

れている小さな植木の生産を早々に開始すべきである。 またこのようなコンテナ植えの商品は、新しい切り口の植木生産なので国内の市

場にも出回っていないため、国内向け需要の創出が併せて期待できる。

イ なんでも BONSAI 作りへの挑戦 現在、イタリアにはキンメツゲ、キャラ、松が多く輸入されているが、他の樹種

による造形樹の開発は、輸入の継続性と需要をさらに伸ばすと考える。すでに日本

ではほとんど見ないカイズカイブキの BONSAI も見られることから、実物(柿、ピ

ラカンサス、姫りんごなど)なども加え、多種類(何でも)BONSAI 化を試みることで

ある。 中国や韓国から輸入される小型の BONSAI も指をくわえて見過ごすことはなく,

若者向け商品をどんどん開発し、海外・国内を問わず宣伝・販売を行い、需要を掘

り起こすことが、和物(風)ブームを定着させることになると思う。

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ウ 長期間輸送により発生するトラブルの早期解決 1ヶ月間もリーファーコンテナによる輸送が荷物(植木)に与えるストレス、それ

に起因する障害の原因究明と対策を早急に解決することが、椿やキャラの輸出拡大

につながる。 エ イタリアへの輸出は有望だが・・・? 生産者の意識改革

本県の生産者は、輸出に対する知識も経験も身についてきていると判断する。しか

し、中国との取引がほとんどだったため、経営者の姿勢として好ましくない面も出て

きた。 ① 昨年当りから、県産植木は植物検疫の簡単な香港を経由し、陸路で中国本土へ運

搬するというルートが多くなったため、検疫に対する緊張感が希薄になっている。 ② 高額な植木の販売に慣れてしまい、小さくて安い植木をコツコツ販売するという、

堅実な商売を望む生産者は少ない。 という傾向が見える。この当りが千葉県生産者の甘いところであり、経営者とし

て未熟なところである。 イタリアに向けの中小植木の計画生産が実現するだろうか。イタリアへの輸出は、

期待をこめて有望であると確信するのだが。