Taro-18 2学術 アンギオ部会RIS・学術 第28回アンギオ部会...

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学術 第28回アンギオ部会 RIS・PACS・レポートの運用経験 県西部浜松医療センター 放射線技術科 江口 幸民 はじめに 当院では2000年2月一般撮影のデジタル化にあ わせ画像サーバを導入しオーダリングシステムよ り画像参照可能としました。1ヶ月間はオリジナ ル画像、それ以降は1/10圧縮画像として、接続モ ダリティーは、一般撮影・CT・MRI・TV・Angio・ ECHO・内視鏡とほとんどのモダリティーの画像を 保存してきました。 本年1月、一年後に電子カルテ運用移行を前提 としたオーダリングシステムの更新を行いまし た。それに伴いRIS・PACS・レポートシステムの 更新および物流システムの新規導入を行いまし た。まだすべてのシステムが本来の運用を開始し ていませんがその概要について報告いたします。 以下、アンギオ部会長より依頼いただいた項目 に沿って進めていきます。 1.システムの概要 今回導入したシステムは次のようになります。 HIS :NEC MegaOakHR PACS :富士フイルムメディカル SYNAPSE レポート:富士フイルムメディカル Fレポート RIS :ケアストリームヘルス(旧コダック) RIS-J SPD :(株)サンシステム HISについてはNECのOrder2000からの更新です が、他のシステムは新規メーカーでのシステム更 新となりました。 1-1.PACSシステム PACS(SYNAPS)は導入される時期や施設により ハードの構成は変わるかと思いますが、当院では データは可逆圧縮で5年間保存可能な容量を想定 してシステムの導入を行いました。今後各種モダ リティーの更新状況によってはデータ量の急激な 増加も考えられますが、記憶媒体そのものの単価 は年々安くなる傾向ですので、容量不足になった 場合はその時点で追加を考え、初期導入の容量と しては12TBとしました。(図1) 図1 SYNAPSE構成 なおPACSについては画像参照期間をより長くす るため2007年8月より画像保像を開始しました。 現在15%程度の記憶容量を使用していますが、こ れにはCTの過去8年分MRIの3年分の移行データ (それぞれのモダリティー専用サーバから移行) も含まれています。 サーバに求められる基本として24時間止まらな いシステムが求められます。フィルムレスを実現 するためにも必須条件でしょう。使用者が障害を 感じない対策が基本構成として重要です(図2) 本システムは導入後運用上のトラブルは発生した いません。 図2 SYNAPSE 障害対策

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学術 第28回アンギオ部会

RIS・PACS・レポートの運用経験

県西部浜松医療センター 放射線技術科 江口 幸民

はじめに

当院では2000年2月一般撮影のデジタル化にあ

わせ画像サーバを導入しオーダリングシステムよ

り画像参照可能としました。1ヶ月間はオリジナ

ル画像、それ以降は1/10圧縮画像として、接続モ

ダリティーは、一般撮影・CT・MRI・TV・Angio・

ECHO・内視鏡とほとんどのモダリティーの画像を

保存してきました。

本年1月、一年後に電子カルテ運用移行を前提

としたオーダリングシステムの更新を行いまし

た。それに伴いRIS・PACS・レポートシステムの

更新および物流システムの新規導入を行いまし

た。まだすべてのシステムが本来の運用を開始し

ていませんがその概要について報告いたします。

以下、アンギオ部会長より依頼いただいた項目

に沿って進めていきます。

1.システムの概要

今回導入したシステムは次のようになります。

HIS :NEC MegaOakHR

PACS :富士フイルムメディカル SYNAPSE

レポート:富士フイルムメディカル Fレポート

RIS :ケアストリームヘルス(旧コダック)

RIS-J

SPD :(株)サンシステム

HISについてはNECのOrder2000からの更新です

が、他のシステムは新規メーカーでのシステム更

新となりました。

1-1.PACSシステム

PACS(SYNAPS)は導入される時期や施設により

ハードの構成は変わるかと思いますが、当院では

データは可逆圧縮で5年間保存可能な容量を想定

してシステムの導入を行いました。今後各種モダ

リティーの更新状況によってはデータ量の急激な

増加も考えられますが、記憶媒体そのものの単価

は年々安くなる傾向ですので、容量不足になった

場合はその時点で追加を考え、初期導入の容量と

しては12TBとしました。(図1)

図1 SYNAPSE構成

なおPACSについては画像参照期間をより長くす

るため2007年8月より画像保像を開始しました。

現在15%程度の記憶容量を使用していますが、こ

れにはCTの過去8年分MRIの3年分の移行データ

(それぞれのモダリティー専用サーバから移行)

も含まれています。

サーバに求められる基本として24時間止まらな

いシステムが求められます。フィルムレスを実現

するためにも必須条件でしょう。使用者が障害を

感じない対策が基本構成として重要です(図2)

本システムは導入後運用上のトラブルは発生した

いません。

図2 SYNAPSE 障害対策

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1-2.RISシステム

RISはWeb方式のためクライアント端末へのソフ

トウェアインストールは基本的にはほとんどな

く、このシステムの設定更新などはIEの再起動で

完了します。

PACSと同様に障害時にも対応可能となってお

り、24時間運用に耐えうる構成となっています。

導入後のシステムトラブルもなく安定した稼働状

況となっています。

以下にサーバの構成(図3)と障害時対応を示

します(図4)

図3 RIS-J装置構成

図4 RIS-Jの障害対策

今回のRIS・PACSの導入については、放射線技

術科でのサーバ類を設置する環境が確保できない

ため、すでに電子カルテシステムサーバ類が設置

されている情報化推進室へ設置することになりま

した。

サーバ類の管理は障害時はもちろん日々の管理

が必要な事項もあり担当者には結構負担をかけて

いると思います。サーバ類の設置を手放すことに

より装置管理は放射線技師の手を離れることにな

りました。サーバ室には管理された空調設備はも

ちろんCVCFが備えてありサーバ個々にUPSの設置

は不要となっています、また選任のスタッフが管

理することで適切な対応が可能となりました。

図5 サーバ室

2.放射線科内のワークフロー

放射線技術科でのRISを中心としたオーダと患

者さんの流れを説明します。

今回の導入では患者さんの確認つまり間違い防

止にIDの認証を行うことを基本としました。IDを

バーコード化しリーダーで読込照合を行います。

そのほか受付時間、検査待ち順の明示、その他ポ

ータブル業務の改善、照射録の電子化などによる

伝票類を記述する行為を極力減らし業務改善を図

りました。

2-1.時間内の運用フロー(図6)

図6 時間内運用フロー

①外来又は病棟でのオーダがHISで作成されると

検査指示票が出力され患者さんに渡されます。

この時点でRISへはオーダが登録されます。

②患者さんは指示票を持って放射線受付へ来ま

す。外来患者さんは指示票のIDバーコード、入

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院患者さんはリストバンドのIDバーコードを読

み込みます。

③RIS上に放射線オーダがすべて表示されるので

検査状況や患者さんの状態を考慮し検査するオ

ーダの受付をします。受付完了をすると受付票

が発行され患者さんはこれを持って該当の検査

待合いへ行きます。受付完了と同時に検査室の

RISからは検査依頼票が印刷されRIS検査待ちリ

ストに表示されます。検査依頼票には患者属性

の他IDとオーダ番号がバーコード表示され、撮

影部位・目的が印字されています、これらは、

RIS上でも確認可能です。

④技師は検査を行うリストを選択してIDの入力待

ち状態とします、患者さんを検査室へ呼び入れ

外来患者さんは受付票のIDバーコード、入院患

者さんはリストバンドのIDバーコードを読み込

み認証が完了すると検査可能となります。

⑤撮影が完了すると実施入力を行い会計送信しま

す。RIS上でオーダを完了にするとフィルムを

入れる袋に貼る属性を印字したシールと検査部

位とフィルムサイズ・枚数を印字したシールを

出力します。

⑥撮影部位、フィルムの過不足等確認後検査完了

2-2.時間外の運用フロー(図7)

図7 時間外運用フロー

①外来又は病棟でオーダを入力したら日当直者へ

電話連絡し検査が実施可能か確認をします。(検

査指示票の出力)

②日当直者は検査が現在可能かあるいはしばらく

待っていただくかの返事をし検査依頼票を印刷

します。

③検査時は外来患者の場合は検査指示票のIDバー

コード、入院患者の場合はリストバンドのIDバ

ーコードにより照合をします。

④以降のフローは時間内と同じとなります。

いずれもオーダ番号と患者IDの照合を行わなけ

れば検査が開始できない仕組みとなっています。

そのため検査室のすべてのRISには無線バーコー

ドリーーダーが装備されています。(図8)

図8 RISとバーコードリーダー

また病棟撮影用のポータブル装置(一般病棟用

と救命センター用)には無線LANに対応したタブ

レット型RISを搭載して患者IDの照合を行い撮影

室と同じ環境で検査を行うことを可能にしてま

す。(図9)

図9 ポータブル用タブレット型RIS

タブレット型RISを搭載していないポータブル

装置を使用する場合はPDA(図10)を使用し同様

にID照合を行います。

2-3.情報用液晶モニタの設置

待合い室には患者さんへの検査待ち状況のお知

らせ(図11上段)技師操作室には各撮影室の検査

待ち情報を表示しています(図11下段)

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図10 ポータブル用PDA

図11 情報用液晶モニタ

3.フィルムレス運用の有無

3-1.画像データのフロー

PACS更新以前のデータフローは、CT,MRI,一般

撮影はそれぞれ専用の画像サーバを持っていて、

画像データを参照画像用サーバと2カ所に保存し

ていました。(図12)またレポートシステムはCT,

MRIそれぞれの装置購入時に導入したシステムで

レポートは印刷出力のみでHIS・RISとの連携もあ

りませんでした。

図12 従来の画像データフロー

図13 新画像データフロー

PACS更新後はすべてのモダリティーから直接画

像データが送られ2重保存はなくなりました。(図

13)またレポートシステムはRISより検査完了デ

ータ、依頼情報を受け取り作成されたレポートは

印刷の他PACSに保存され画像データと同じように

オーダリング端末から参照可能となりました。

3-2.フィルムレス運用

6月2日からCT・MRIのフィルムレス運用を開

始しました。フィルムレスを開始するに当たって

院内のオーダリングPCへ画像用モニタを追加し2

画面構成としました。またCTには検像用の装置を

追加しPACSへ送信する前に確認を行い手動でPACS

へ送信を行うフローに変更しました。(図14)

図14 フィルムレス運用フロー

4.RIS・PACS・レポートを選定した理由

いずれの選定も装置のデモ、アンケート集計を

中心に行い専門委員会において決定しました。ま

た対象機種を導入している施設への見学も実施し

稼働状況を参考にしました。

4-1.HIS選定

旧装置からのデータ移行が問題なくできるかが

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重要なポイントであり、それに伴う費用もどの程

度必要かが問題であった。

4-2.PACS・レポートシステム

画像ビューワーの操作性、デザインなど総合的

な完成度が判断基準。画像の表示速度も重要なポ

イントの一つとなった、院内の旧オーダリングシ

ステムに各社のビューワーソフトをインストール

し実際の運用速度を計測した。

レポートシステムはPACSと同一メーカを基本と

考え、実際に使用する画像診断科医師の意見を重

視した。

4-3.RIS選定

操作性、安定性など総合的な完成度、当院に導

入されている各種モダリティーとの接続実績がポ

イント。

4-4.物流システム

物流システムの選定には関与していなかったた

め詳細はわかりませんが、基本的な選定方法は変

わらない。

5.SPDの運用の有無

Supply Processinng&Distribution 院内の物品

の情報と管理業務ですが、在庫定数の調査から始

まり2次元バーコードを使用した管理がスタート

しました。7月からHIS・RISを利用した管理を開始

するため現在関係部署間での調整を行っています。

6.地域連携

病診連携、病病連携に伴う画像データをどのよ

うに扱うかの検討を始めました。

紹介された患者さんの画像データはフィルムは

コピー保存デジタルデータは各診療科が保存して

いますが「PACSへ保存出来ないか」との意見も多

図15 地域連携

く検討を開始しました。

また他院へ紹介の場合、データをフィルムある

いはデジタルデータのどちらにするか紹介先によ

って選択が難しく、IHJなどの標準化の進捗状況

が気になるところです。(図15)

7.問題点、課題

今回のHIS・RIS導入ではHL7,JJ1017コードを導

入し、各検査種毎に作業を分担してJJコードやマ

スターの作成を行いました。今後マスタの変更な

どが随時発生することが予想されますが、これら

のマスタ類を管理して行くのは重要な事ですが非

常に大変です。

先の県学術大会で当院の杉村が、MicroSoft

Accessを用いたデータ管理ソフト発表しましたが

今後はこれを用いて一元管理していく予定です。

まだ運用開始半年ですので、すべての機能が稼

働しておりません。どの時点をもって完全稼働と

いうのか難しい問題ではあります。7月よりの物

流システムの運用開始。2009年1月5日より電子

カルテ運用開始とまだ難関が残っています。これ

らの問題を一つ一つ解決していく事が目下の課題

です。

まとめ

2008年1月より運用を始めたHIS・RIS・PACSお

よび物流システムの概要を報告しました。

情報関連のシステムは常に新たな項目が発生

し、完成というゴールはないものと考え、常に改

良改造を意識した運用が必要と考えます。

それには放射線技師も積極的に総合的なシステ

ム構築に参画し連携を深めていく必要がありま

す。それが結果的に放射線科内の部門システムの

使いやすさにつながってくる物と考えます。

理想を言えば、放射線技師も専属の人員として

構成メンバーへ加わる事が出来れば良いのです

が、なかなかそのような環境はどの施設も難しい

のが現状でしょう。

特にRISは病院組織の中で使用している人員は

非常に少ない割合ですが、重要なシステムである

ことは間違いなく、常にその重要性をアピールす

る必要があります。