STAR-CCM+の流体騒音解析の...

STAR-CCM+の流体騒音解析の概要と事例紹介

株式会社CD-adapco

1. 流体騒音解析のニーズ

2. 音響の基礎と音源の種類

3. 解析の一般的な流れ

4. STAR-CCM+の特徴

5. キャビティ定常解析

6. キャビティ非定常解析

7. 騒音解析の注意点

8. 事例紹介

9. まとめ・今後の展開

プレゼンテーションの概要

© CD-adapco 20131

音圧の低下・緩和によって製品価値を高める（使用条件や快音性を向上）

1. 流体騒音解析のニーズ

© CD-adapco 20132

Q2.指標となる代表的な解析結果には何が必要か？

A2.音圧や音放射コンター（音源の大きさと位置の確定）や周波数特性のSPLグラフ（ピーク周波数を特定）

Q1.音を低減する為にはどうすれば良いか？

A1.解析物体表面の圧力変動や空間内の渦（乱流）発生メカニズムを特定

STAR-CCM+が大活躍！

音圧レベル(SPL)：うるさいか、うるさく無いかを判断する指標（60dB程が人との会話で、100dBが車道）

ファン、ダクト、サイドミラーやジェット音等が代表的な騒音問題となります

人間の聴覚に合う騒音として、音響学的に「A特性」と言う単語があります

• 騒音計による測定に使用され、人間の聴覚を考慮した周波数重み付け特性です。

• JISで「普通騒音形」に定められている

• STAR-CCM+で音圧を表示する際に選択可能

ref

rms

P

PdBSPL 10log20)( は圧力変動の二乗平均平方根rmsP

PaPref

5100.2 は基準値 (世界共通)

2. 音響の基礎

© CD-adapco 20133

一般的な音源のタイプ• 単極音源

流体の湧き出し・吸い込みが半周期ごとに行われる事で、音波が球面状に放出される音源。点音源とも呼ばれています。代表的なものとして、排気管の騒音が挙げられます。

• 二重極音源（Curleモデル）

音響出力が等しく、位相が反転している２つの点音源が隣接している音源。お互いの音源が干渉する事により、８の字型の音圧分布となります。代表的なものとして、翼などの渦放出が挙げられます。

• 四重極音源（Proudmanモデル）

流体運動の乱れそのものから発生する騒音。二重極音源が直交して隣接した状態であるため、音圧分布は４方向に分かれたクローバー型となります。代表的なものとして、ジェット流の乱れが挙げられます

• M<0.3の場合は四重極子影響が低く、二重極子が支配的

2. 音源の種類

© CD-adapco 20134

3. 解析の一般的な流れ

1. 形状作成、もしくは読み込み、修正

2. メッシュ生成

3. 定常計算（騒音源の特徴:dB）

4. メッシュの妥当性を確認（メッシュ再作成）

5. 非定常計算(周波数特徴:SPL)

© CD-adapco 20135

定常計算で定量的な比較が可能（広帯域）

4. STAR-CCM+の特徴

© CD-adapco 20136

解析物体表面（Curle:2重極子音源）と空間内（Proudman:4重極子音源）の音圧値を可視化して複数の形状の中から最適なモデルが選択出来ます

解析可能な周波数範囲や非定常解析に対してのメッシュ妥当性も検証

非定常計算で周波数特性の音響結果を出力

フーリエ変換で観測点での圧力値から周波数SPL変動グラフを作成

直接解法（解析領域内）とFfowcs Williams Hawkings (FWH)伝播（解析領域外の遠方場）を併用した音圧・音放射コンターの作成

RANSモデルからの乱流時間・長さスケールと解析物体壁面のせん断応力を利用して音源表面圧力の時刻歴2乗平均微分係数を算出して音圧を表示（固体表面）。

単位面積あたりの音響出力は、dBと𝑊/𝑚2 の次元で表されます。

STAR-CCM+のデフォルトは• 基準音響パワー：1e-12 W/m2

• 密度（遠距離場）：1.225 kg/m3

• 音速（遠距離場）：340.0 m/s

© CD-adapco 20137

5. キャビティ定常計算:Curleモデル（2重極子=表面音源）

局所的な音圧を体積単位での等方性乱流（RANSモデルからの乱流速度と長さ）を利用して算出

等方性乱流の単位体積あたりの局所Proudman音響出力(単位:[𝑊/𝑚3])

• 𝜌0は非近接場の密度

• 𝑈は乱流速度

• 𝐿は乱流長さスケール

• 𝑇は乱流時間スケール

• 𝑎0は非近接場の音速

3 5

0 5

0

c

U UAP

L a 、ここで

LU

T 、 0.629c

© CD-adapco 20138

5.キャビティ定常計算:Proudmanモデル（4重極子=空間音源）

3つのキャビティ形状を作成：奥行き寸法は全ケース0.025m

Realizable K-E乱流モデル、分離型流れで3000イタレーションを実施

境界条件として自由流れ（M=0.3）を流入出と天井に設定

© CD-adapco 20139

5.キャビティ定常計算:形状と解析条件

ケース1:200万トリム



0.02m 0.02m

0.08m0.04m

0.04m

0.08m

キャビティ形状の違いが表面音圧値で観測可能：2重極子の影響

ケース2ではキャビティ前方部分の音圧値が極端に低くなる傾向が見える

全体的にはケース1の形状が高い音圧値を保持している

© CD-adapco 201310

5.キャビティ定常計算:表面のCurle音圧コンター

ケース1

ケース3

ケース2

流れ方向流れ方向

流れ方向

空間内での音圧値が観測可能：4重極子の影響

ケース2ではキャビティ後方部分の音圧値が高くなる傾向が見える（キャビティからの渦の衝突）

ケース3ではキャビティの深さが長さ方向の影響を緩和している傾向が見える

© CD-adapco 201311

5.キャビティ定常計算:奥行き中心断面のProudman音圧コンター

ケース1

ケース3

ケース2

流れ方向

流れ方向

流れ方向

どの周波数までの音源を高精度で非定常解析を行えるかの指標

今回はキャビティ内の音源に対して8KHzまで精度は保てる様に作成（レジェンドを調整）

© CD-adapco 201312

5.キャビティ定常計算:メッシュの妥当性（Mesh Frequency Cutoff）

Mesh Frequency Cutoffコンター

流れ方向

キャビティ周辺のセルサイズの妥当性を乱流スケールを利用したフィールド関数で可視化

一つのセルに対して最低でも二つの渦がキャビティ内では捉えられるメッシュになっています

キャビティ表面に対してWall Y+を可視化

Wall Y+が1に近いので、DESやLES計算にも対応可能なメッシュとなります

© CD-adapco 201313

5.キャビティ定常計算:メッシュの妥当性（乱流スケールとWall Y+）

ε

kC=l

3/24/32

1/3

V

l • 以下のユーザーフィールド関数で判別pow(0.09,0.75)*(pow($TurbulentKineticEnergy,1.5)/$TurbulentDissipationRate)/pow($Volume,(1/3))

Wall Y+ コンター乱流スケールコンター

流れ方向流れ方向

LES

• 高精度ですが、メッシュの解像度が最も求められます（計算負担が高い）

DES（キャビティ事例に使用）• LESとRANSの組み合わせ（境界近辺はRANS、その他の領域はLES）

RANS

• メッシュの解像度がLESの様に細かくなくても良いが、精度がかなり落ちる

© CD-adapco 201314

6.キャビティ非定常計算:直接伝播と適した乱流モデル

直接伝播では解析領域内すべてに対して圧縮性ナビエストークス方程式を解き、得られた圧力をフーリエ変換して、音圧値やコンター図等を可視化します（音の反射や回折影響等を含んだ解析結果）

FWHは流れ近傍場（解析物体表面の圧力2重極子影響と乱流エネルギーが拡散する際に生じる4重極子影響）からの音放射を中間・遠方場で捉える為の手法です。

騒音はサーフェスから伝播します

• 不透過性サーフェス

- 通常は壁面を使用

• 透過性サーフェス

- 通常はインターフェースを使用

騒音がレシーバーに伝播します

• データを収集するマイクロフォンの位置で定義します。基本的には解析領域外

© CD-adapco 201315

6.キャビティ非定常計算:FWH伝播モデル

キャビティ中心点（奥行き=0.0125m）から上空に0.015mと0.45mの点は直接伝播、解析領域外の1mの点ではFWH伝播を使用

全てのSPLはA特性の音圧を表示しています

© CD-adapco 201316

6.キャビティ非定常計算:観測点の配置

Point 1:0.015m

Point 3:1m

Point 2:0.45m

観測点の位置

ピーク周波数はそれぞれケース1,2,3で2670Hz, 1360Hz, 1420Hzで発生

音圧値もPoint1では最大130dBですが、Point2では120dB程に減衰：

距離減衰の理論式=20log(r2/r1)=20log(0.45m/0.15m)=9.5dB

© CD-adapco 201317

6.キャビティ非定常計算:直接解法のSPL（POINT 1& 2）

Point 1のSPL Point 2のSPL

赤線:ケース1

青線:ケース2

緑線:ケース3

FWH伝播でのピーク周波数は直接伝播と若干のズレがあります（反射影響が無い）

1mの遠方場では80dB以下の音圧が観測されます

ケース３の音伝播が全体的に強く観測出来ます

© CD-adapco 201318

6.キャビティ非定常計算:FWH伝播のSPL（POINT 3）

Point 3のSPL:全体と拡大図

赤線:ケース1

青線:ケース2

緑線:ケース3

Rossiter Mode Formulaに基づくとケース1は2750Hz、ケース2と3は1375Hz付近でピークが発生するので、計算結果とそれほど大差は無い

全ケースでキャビティ前方付近の主流速は約110m/s

© CD-adapco 201319

6.キャビティ非定常計算:理論式との比較

Hzm

sm

l

UHzF 2750

04.0

/110)( ケース１の

Hzm

sm

l

UHzF 1375

08.0

/110)(32 のとケース

D

L

流れ速度:U∞音波

フィードバック

ケース2のキャビティ内で集中的な騒音レベルが発生している

ケース2と3のピーク周波数に近い為、ケース1に比べて遠方への音伝播が強く観測される（特に前方方向への音放射）

© CD-adapco 201320

6.キャビティ非定常計算:直接解法のdBコンター（1420Hz）

ケース3の音圧ケース2の音圧ケース1の音圧

ケース1ではキャビティ後方への音伝播が強く観測出来る

1420Hz同様に高騒音領域がケース2のキャビティ内で発生（形状がより強い渦の乱れを発生）

© CD-adapco 201321

6.キャビティ非定常計算:直接解法のdBコンター（2670Hz）

ケース3の音圧ケース2の音圧ケース1の音圧

瞬間的な音放射コンターも可視化可能（赤が+音波で、青が-音波）

ケース2と3の形状の方がフィードバック音による影響が強く観測される

© CD-adapco 201322

6.キャビティ非定常計算:直接解法の音放射コンター

0.25秒での音放射：ケース1, 2, 3

0.5秒での音放射：ケース1, 2, 3

捕えたい周波数により、メッシュサイズが変わります: メッシュサイズ=Δ < λ/20

λ=a/F (λ = 波長、a = 音速、F = 求めたい最大周波数）

2000Hzまでの周波数を捕えたい場合、音速を340 m/sとすると波長は340/2000=0.17 m となり、メッシュサイズは=0.17/20=0.0085mとする必要がある

タイムステップの決め方 Δt< 1/（15 x f）、f = 周波数

2000Hzまで捉えたい時は、1/（15 x 2000） = 3.33 e-5 s 以下のΔtを推奨

回転体の時は１度回転する時にかかる時間をタイムステップとします。

一般的に使用する物理モデル DES/LES乱流モデル（陰解法非定常解析：2次精度の離散化）

理想気体と分離型流れ（圧縮性が高いケースやマッハ数が0.3以上の場合は連成型も考慮）

無反射境界（自由流れ）、内部イタレーションは最低５回

© CD-adapco 201323

7. 騒音解析の注意点

© CD-adapco 201324

8. 事例紹介:ダクトやランディングギアからの放射音

ダクトは出口正面や側面付近の観測点でのSPL比較を実行（AIAA2012-2068）

¼ランディングギアモデル周辺の音放射（AIAA 2012-2236）

© CD-adapco 201325

8. 事例紹介:外部流体騒音から内部領域への音透過

500HzのdBコンター

1000HzのdBコンター

車のサイドミラー周辺の音圧コンターを可視化（AIAA201202205, 2206 & SAE2013-01-0640）

低周波数領域の方が車のサイドウィンドウにかかる音圧が高い

非常に効率的な流体騒音予測

特に定常計算で騒音源の比較が可能（複数のモデルから最適な形状を選択）

直接法とFWHの併用解析（近傍・遠方場の音圧解析が可能）

今後の展開：流体・振動騒音解析機能の開発

航空機キャビン内の騒音

サイドミラーから車内への音透過

吸音効果の解析

© CD-adapco 201327

9. まとめ・今後の展開

© CD-adapco 201328

お問い合わせ先

株式会社CD-adapco

横浜オフィス

Tel: 045-475-3285 Fax: 045-475-3295

横浜市港北区新横浜2-3-12 新横浜スクエアビル 16F

大阪オフィス

Tel: 06-4807-7840 Fax: 06-4807-7845

大阪市淀川区宮原1-6-1 新大阪ブリックビル 9F

E-mail

[email protected]

Your CAE Partner for Success

www.cd-adapco.com/ja

STAR-CCM+の流体騒音解析の...

Documents

Transcript of STAR-CCM+の流体騒音解析の...