SD0429...:Qu(Ds算定時) :壁負担分 ( i ) 人工照明と機械換気 ( ii )...

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1~5F▽ 6~9F▽ 10~13F▽ 14~17F▽ 100 330 450 1700 1400 1100 100 400 700 1000 2100 450 2100 450 2100 2100 120 2550 43550 100 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 2550 100 3800 3800 3800 1000 断面図 S=1/80 SD0429 街区を形作る高層化したボリュームを、PCaRC造の「重い骨格」とC LT造の「軽い板」でつくる。 敷地全体をコンクリートで基礎化した上に「重い骨格」を立ち上げ、 居室と外構を一体的に計画する。安定モーメントを増加させるため上 階ほど壁量や躯体寸法を小さくした躯体に体を添わせるように窓廻り の寸法を決め、隣接環境との距離感を調整した。 「重い骨格」のフレームにはCLTの「軽い板」をはめ込み、耐震壁と 床版をつくる。床版のCLTはそのまま天井仕上材となり、住人によっ て照明やカーテン、植物などが吊り下げられ、地上からの見上げの風 景と室内の風景をつなぐ面となる。 またPCaRC造とCLT造を併用することで、大幅な工期短縮と昨今の人 手不足の解消、そして躯体軽量化によるコスト削減を図る。躯体の一 部をCLT化することで躯体重量と保有水平耐力を2割減で満足させ、 狭小地で塔状比の大きな建物を建てる上で増大する躯体及び基礎に対 する転倒モーメントの影響を低減させている。これにより関東ローム 層を支持地盤としたベタ基礎の採用が可能となり、杭基礎を使用しな い大幅なコスト削減を実現する。 05 都市と身体をつなぐ「重い骨格」と「軽い板」 ( ii ) CLT造の「軽い板」 既存の「街区」に2つの新しいスケールを与えることで、都市を更新 する集合住宅の提案。 建蔽率を最小限に抑えボリュームを高層化することで地上に「大きな 空き地」をつくり、建物が密集する街区に穴をあける。 空き地を囲い込む背の高いボリュームには、136個の「小さな部屋」 が詰まっている。 部屋にはリビングルームやバスルームのような決まった用途は無く、 浴槽が置かれた部屋がベッドルームになれば、便器が置かれた部屋は オフィスに、キッチン台が置かれた部屋は料理教室になったりする。 様々な顔を持つ住人が主体的に機能を与える「小さな部屋」の群れは 建物に多彩な表情をつくりだし、「大きな空き地」は街区に光や風、 地域の人や物、虫や植物を呼び込み、固有の環境を育てはじめる。 こうしてひとつの街区を少しだけ他とは異なる環境に変えることで、 画一的に計画された街の一角に新しい密度を提案する。 近代の都市を、多様な暮らしを営むこれからの「私」たちのものへと 更新する起点として、一棟の集合住宅を考えた。 現在、人が集まることの意義が問い直されている。世界的な疫病の蔓 延により近代以降の都市や建築を作り上げてきた共用空間が機能不全 に陥る反面、私たちは孤立しつつも物事を共有し、これまで以上に多 様な暮らしを営みはじめている。もし、共用空間が標準化された働き 方や家族像を量産し続けてきたのであれば、これからの職住一体社会 にはフィジカルに人を集めるための共用空間ではなく、多様な「私」 が自律したまま集う、新しい集合のかたちが求められると考えた。 01 多様な「私」が自律したまま集う新しい集合のかたち 建築面積 94.05 ㎡ 建蔽率  28.38 % (<80%) 延床面積 1,323.40 ㎡ 容積率  399.28 % (<400%) 階数   地上17階建 最高高さ 43,550mm 階高   2,550mm 天井高  2,100mm 主体構造 PCaRC造 一部 CLT造 基礎   ベタ基礎 住戸数 31住戸 住戸バリエーション  4タイプ ・N1タイプ × 11住戸(1~4 ,11~12,15~17F) 専有部 28.66 ㎡ + バルコニー 2.69 ㎡ ・N2タイプ × 3住戸(5~6,9~10,13~14F) 専有部 57,32 ㎡ + バルコニー 5.38 ㎡ ・S1タイプ × 16住戸(2~17F) 専有部 49.56 ㎡ + バルコニー 2.69 ㎡ ・S2タイプ × 1住戸(1F) 専有部 43.38 ㎡ + バルコニー 2.69 ㎡ 街区の外形を維持したまま建蔽率を最小限に抑えることで地面を開放 し、建物が密集する街区に光と風を呼び込む。空き地に置かれた土に は時が経つにつれ草木が自生し、住人や近隣住民によって後発的に機 能が与えられていく。空き地は隣地建物と住戸の間に充分な距離を与 えるバッファーとしても機能し、隣地に面した大窓を成り立たせる。 都市に漂う気候や慣習のわずかな違いを局所的に掬いあげる「大きな 空き地」は、街区の環境を変えると同時に、室内の環境も開放する。 03 街区と室内の環境を変える「大きな空き地」 ( i ) 個を集団に所属させる職住分離社会 ( ii ) 多様な「私」が自律したまま集う 職住一体社会 社会 社会 ( iii ) RC造とした場合 ( iv ) PCaRC造+CLT造とした場合 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 2000 (階) 4000 6000 8000 10000 Q(kN) 12000 14000 16000 18000 保有時:指定最大層間変形角に達した[16F X1-Y2](53step) Ds算定時:指定最大層間変形角に達した[16F X1-Y2](58step) 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 2000 (階) 4000 6000 8000 10000 Q(kN) 保有時:指定最大層間変形角に達した[15F X1-Y2](35step) Ds算定 時:指定最大層間変形角に達した[15F X1-Y2](37step) ( i ) PCaRC造の「重い骨格」 ( i ) 容積率MAX, 建蔽率MAXのボリューム ( ii ) 容積率MAX, 建蔽率MINのボリューム 四方が外部に囲まれたひとつの住戸を6畳の「小さな部屋」に等分割 した。各部屋には決まった用途は無く、浴槽やキッチン台、便器など を1台ずつ家具のように置いた。上階ほど小さくなる躯体によって都 市との距離感や部屋同士の関係を調整し、東西面に設けた大窓から充 分な光と風を取り込む。住戸を集合住宅の一部として計画するのでは なく、独立した部屋を街区の一部として扱うことで、多様な「私」が 都市に直接棲みつくような在り方を目指した。 04 多様な「私」が都市に棲みつく「小さな部屋」 Quは大地震時における層の崩壊手前又は 仕上崩落手前の耐力を 、Qunは大地震時の 地震力を示す。 ●:Qu (保有水平耐力時) △:Qun ◇:Qu(Ds算定時)      :壁負担分 ( i ) 人工照明と機械換気 ( ii ) 自然採光と自然換気 断面図 S=1/40 近代の都市は車道と用途によって計画された街区の集合である。大規 模な再開発をするのではなく、集合住宅を建てることと既存の街区の 環境を変えることを一揃えにすることで、似たような街区が集まる都 市を、個々に固有の環境を持つ多様な街区の集合へと都市を更新する 起点となる1棟の集合住宅を計画した。 02 都市を更新する起点となる1棟の集合住宅 ( i ) 多様な街区が集う中世の 都市 小さな部屋 大きな空き地 ( ii ) 均質な街区が集う近代の都市 ( iii ) 街区に個性を与える集住 2750 2750 2750 2750 2750 2750 2750 2750 2750 24750 3800 3800 3800 3800 10-13階平面図 6-9階平面図 2-5階平面図 14-17階平面図 S=1/200 N1 (N2) N1 (N2) N1 (N2) N1 (N2) S1 S1 S1 S1 オフィス リビングルーム キッチンのあるトレーニングルーム 全面ベンチのエステサロン 浴槽のあるリビングスペース 小部屋の連続するギャラリー 動画配信をする料理研究家の住居 1日1組のプライベートヘアサロン デイトレーダーの住居 便器のあるライブラリー 小さな部屋 大きな空き地 出典:江戸図屏風左隻 出典:google maps 共用廊下 バルコニー 居室 部屋 大通り 空き地 配置図 兼 1階平面図 S=1/400 576 24750 2670 3800 150 3800 3800 410 576 24750 2670 2520 31000 12550 43550 道路斜線 隣地斜線 △隣地境界線 ▽道路境界線 東側立面図 S=1/400

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Page 1: SD0429...:Qu(Ds算定時) :壁負担分 ( i ) 人工照明と機械換気 ( ii ) 自然採光と自然換気 断面図 S=1/40 近代の都市は車道と用途によって計画された街区の集合である。大規

1~5F▽

6~9F▽

10~13F▽

14~17F▽

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断面図 S=1/80 SD0429

街区を形作る高層化したボリュームを、PCaRC造の「重い骨格」とCLT造の「軽い板」でつくる。敷地全体をコンクリートで基礎化した上に「重い骨格」を立ち上げ、居室と外構を一体的に計画する。安定モーメントを増加させるため上階ほど壁量や躯体寸法を小さくした躯体に体を添わせるように窓廻りの寸法を決め、隣接環境との距離感を調整した。「重い骨格」のフレームにはCLTの「軽い板」をはめ込み、耐震壁と床版をつくる。床版のCLTはそのまま天井仕上材となり、住人によって照明やカーテン、植物などが吊り下げられ、地上からの見上げの風景と室内の風景をつなぐ面となる。またPCaRC造とCLT造を併用することで、大幅な工期短縮と昨今の人手不足の解消、そして躯体軽量化によるコスト削減を図る。躯体の一部をCLT化することで躯体重量と保有水平耐力を2割減で満足させ、狭小地で塔状比の大きな建物を建てる上で増大する躯体及び基礎に対する転倒モーメントの影響を低減させている。これにより関東ローム層を支持地盤としたベタ基礎の採用が可能となり、杭基礎を使用しない大幅なコスト削減を実現する。

05 都市と身体をつなぐ「重い骨格」と「軽い板」

( ii ) CLT造の「軽い板」

既存の「街区」に2つの新しいスケールを与えることで、都市を更新する集合住宅の提案。

建蔽率を最小限に抑えボリュームを高層化することで地上に「大きな空き地」をつくり、建物が密集する街区に穴をあける。空き地を囲い込む背の高いボリュームには、136個の「小さな部屋」が詰まっている。部屋にはリビングルームやバスルームのような決まった用途は無く、浴槽が置かれた部屋がベッドルームになれば、便器が置かれた部屋はオフィスに、キッチン台が置かれた部屋は料理教室になったりする。

様々な顔を持つ住人が主体的に機能を与える「小さな部屋」の群れは建物に多彩な表情をつくりだし、「大きな空き地」は街区に光や風、地域の人や物、虫や植物を呼び込み、固有の環境を育てはじめる。

こうしてひとつの街区を少しだけ他とは異なる環境に変えることで、画一的に計画された街の一角に新しい密度を提案する。近代の都市を、多様な暮らしを営むこれからの「私」たちのものへと更新する起点として、一棟の集合住宅を考えた。

現在、人が集まることの意義が問い直されている。世界的な疫病の蔓延により近代以降の都市や建築を作り上げてきた共用空間が機能不全に陥る反面、私たちは孤立しつつも物事を共有し、これまで以上に多様な暮らしを営みはじめている。もし、共用空間が標準化された働き方や家族像を量産し続けてきたのであれば、これからの職住一体社会にはフィジカルに人を集めるための共用空間ではなく、多様な「私」が自律したまま集う、新しい集合のかたちが求められると考えた。

01 多様な「私」が自律したまま集う新しい集合のかたち

建築面積 94.05 ㎡建蔽率  28.38 % (<80%)延床面積 1,323.40 ㎡容積率  399.28 % (<400%)階数   地上17階建最高高さ 43,550mm階高   2,550mm天井高  2,100mm主体構造 PCaRC造 一部 CLT造基礎   ベタ基礎

住戸数 31住戸住戸バリエーション 4タイプ・N1タイプ × 11住戸(1~4,11~12,15~17F) 専有部 28.66 ㎡ + バルコニー 2.69 ㎡・N2タイプ × 3住戸(5~6,9~10,13~14F) 専有部 57,32 ㎡ + バルコニー 5.38 ㎡・S1タイプ × 16住戸(2~17F) 専有部 49.56 ㎡ + バルコニー 2.69 ㎡ ・S2タイプ × 1住戸(1F) 専有部 43.38 ㎡ + バルコニー 2.69 ㎡

街区の外形を維持したまま建蔽率を最小限に抑えることで地面を開放し、建物が密集する街区に光と風を呼び込む。空き地に置かれた土には時が経つにつれ草木が自生し、住人や近隣住民によって後発的に機能が与えられていく。空き地は隣地建物と住戸の間に充分な距離を与えるバッファーとしても機能し、隣地に面した大窓を成り立たせる。都市に漂う気候や慣習のわずかな違いを局所的に掬いあげる「大きな空き地」は、街区の環境を変えると同時に、室内の環境も開放する。

03 街区と室内の環境を変える「大きな空き地」

( i ) 個を集団に所属させる職住分離社会 ( ii ) 多様な「私」が自律したまま集う職住一体社会

私社会私 私

私私私

私私

職住住私 社会

職住 私職 住

私職 住私 職

住私職住私

職住私

職住私職

( iii ) RC造とした場合

( iv ) PCaRC造+CLT造とした場合

17161514131211109876543210 2000

(階)

4000 6000 8000 10000 Q(kN)12000 14000 16000 18000

保有時:指定最大層間変形角に達した[16F X1-Y2](53step)Ds算定時:指定最大層間変形角に達した[16F X1-Y2](58step)

17161514131211109876543210 2000

(階)

4000 6000 8000 10000 Q(kN)

保有時:指定最大層間変形角に達した[15F X1-Y2](35step)Ds算定時:指定最大層間変形角に達した[15F X1-Y2](37step)

( i ) PCaRC造の「重い骨格」

( i ) 容積率MAX, 建蔽率MAXのボリューム ( ii ) 容積率MAX, 建蔽率MINのボリューム

四方が外部に囲まれたひとつの住戸を6畳の「小さな部屋」に等分割した。各部屋には決まった用途は無く、浴槽やキッチン台、便器などを1台ずつ家具のように置いた。上階ほど小さくなる躯体によって都市との距離感や部屋同士の関係を調整し、東西面に設けた大窓から充分な光と風を取り込む。住戸を集合住宅の一部として計画するのではなく、独立した部屋を街区の一部として扱うことで、多様な「私」が都市に直接棲みつくような在り方を目指した。

04 多様な「私」が都市に棲みつく「小さな部屋」

※Quは大地震時における層の崩壊手前又は仕上崩落手前の耐力を、Qunは大地震時の地震力を示す。●:Qu (保有水平耐力時) △:Qun ◇:Qu(Ds算定時)     :壁負担分

( i ) 人工照明と機械換気 ( ii ) 自然採光と自然換気

断面図 S=1/40

近代の都市は車道と用途によって計画された街区の集合である。大規模な再開発をするのではなく、集合住宅を建てることと既存の街区の環境を変えることを一揃えにすることで、似たような街区が集まる都市を、個々に固有の環境を持つ多様な街区の集合へと都市を更新する起点となる1棟の集合住宅を計画した。

02 都市を更新する起点となる1棟の集合住宅

( i ) 多様な街区が集う中世の都市

小さな部屋

大きな空き地

( ii ) 均質な街区が集う近代の都市 ( iii ) 街区に個性を与える集住

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10-13階平面図6-9階平面図2-5階平面図 14-17階平面図 S=1/200

N1(N2)

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S1 S1 S1 S1

オフィスリビングルーム

キッチンのあるトレーニングルーム

全面ベンチのエステサロン

浴槽のあるリビングスペース

小部屋の連続するギャラリー

動画配信をする料理研究家の住居

1日1組のプライベートヘアサロン

デイトレーダーの住居

便器のあるライブラリー

小さな部屋大きな空き地

呼 吸 す る 街 区

出典:江戸図屏風左隻 出典:google maps

共用廊下

バルコニー

居室 部屋 大通り空き地

配置図 兼 1階平面図 S=1/400

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2670

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576 24750 2670

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道路斜線

隣地斜線

▽ △隣地境界線

▽道路境界線

東側立面図 S=1/400