Participative Management for Improving the Performance of ...

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2 Participative Management for Improving the Performance of Part-Time Workers in an Accounting Firm SATORU SHIMAMUNE Hosei University KATSUNORI WAKAMATSU Himawari Office Support, Inc. Abstract Study objective: To examine effects of participative management as a behavioral intervention package. Design: Multiple-baseline design across groups of client companies. Setting: The target performance was journalizing tasks in a small accounting firm in the Kanto area. Participants: Four female part-time employees, 38 – 50 years old. Intervention: The participants held monthly meetings in which they discussed management objectives, set target behaviors for the next month, recorded the execution of the target behaviors, and calculated the percentage of accomplishment. The firm paid a monetary incentive based on an interdependent, group-oriented contingency for achieving the monthly target behaviors. Measures: A management index was calculated every month for each company by dividing the charge by the costs. The percentage of target behaviors completed each month was also recorded after the commencement of the intervention. Results: The management index improved with the intervention package. Conclusion: Participative management, as a behavioral intervention package, was effective in improving the productivity of the part-time employees. Social as well as economic validity was confirmed. Key Words participative management, intervention package, group-oriented contingency, organizational behavior management Japanese Journal of Behavior Analysis 2016, Vol. 31, No. 1, 2–14 ARTICLE

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Participative Management for Improving the Performance of Part-Time Workers in an Accounting Firm

SATORU SHIMAMUNE

Hosei University

KATSUNORI WAKAMATSU

Himawari Office Support, Inc.

Abstract

Study objective: To examine effects of participative management as a behavioral intervention package.

Design: Multiple-baseline design across groups of client companies. Setting: The target performance was

journalizing tasks in a small accounting firm in the Kanto area. Participants: Four female part-time

employees, 38–50 years old. Intervention: The participants held monthly meetings in which they discussed

management objectives, set target behaviors for the next month, recorded the execution of the target

behaviors, and calculated the percentage of accomplishment. The firm paid a monetary incentive based

on an interdependent, group-oriented contingency for achieving the monthly target behaviors. Measures:

A management index was calculated every month for each company by dividing the charge by the costs.

The percentage of target behaviors completed each month was also recorded after the commencement

of the intervention. Results: The management index improved with the intervention package. Conclusion:

Participative management, as a behavioral intervention package, was effective in improving the

productivity of the part-time employees. Social as well as economic validity was confirmed.

Key Words participative management, intervention package, group-oriented contingency,

organizational behavior management

Japanese Journal of Behavior Analysis 2016, Vol. 31, No. 1, 2–14 ARTICLE

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䌚蚈事務所で働くパヌト埓業員を察象ずした 参加型マネゞメント

法政倧孊 島宗 理株匏䌚瀟ひたわりオフィスサポヌト 若束克則

研究の目的 参加型マネゞメントの介入パッケヌゞの効果を怜蚌した。研究蚈画 顧客䌁業矀間の倚局ベヌスラむン法を甚いた。堎面 関東近郊にある小芏暡な䌚蚈事務所で䞻に顧客䌁業から提出される䌚蚈曞類の仕蚳䜜業を察象に実隓が行われた。参加者 パヌトタむム埓業員 4名女性、3850歳が参加した。介入 参加者自らがチヌムで経営目暙の達成に぀いお話し合い、月ごずに決めた暙的行動の遂行に぀いお蚘録、集蚈し、フィヌドバックを行い、暙的行動の目暙達成に察しお盞互䟝存型の集団随䌎性に基づいたむンセンティブを䌚瀟偎が支払った。行動の指暙 顧客䌁業ごずに、毎月、請求金額をコストで割っお算出される経営指暙を埓属倉数に甚いた。介入埌は行動目暙の完了率も毎月蚘録した。結果 介入パッケヌゞの導入により、察象ずした顧客䌁業矀の経営指数が改善され、収支が改善された。参加者による手続きの評䟡もおおよそ高かった。結論 参加型マネゞメントの介入パッケヌゞには経営指暙の改善に぀ながる生産性の向䞊に効果があり、瀟䌚的劥圓性もあるこずが瀺唆された。Key Words 参加型マネゞメント、介入パッケヌゞ、集団随䌎性、組織行動マネゞメント

論  文

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行動分析孊研究 第 31巻 第 1号

目 的

問題の背景日本の䌁業においおは、パヌトやアルバむト、掟遣劎働者などからなる非正芏雇甚者の割合が高い。総務省統蚈局2014によれば、わが囜における 2014幎の非正芏率は男性 21.7、女性56.6ず、2008幎からの 7幎間のうち、男女ずもに過去最高を蚘録しおいる。バブル厩壊埌、経枈状況や経営状態によっお人件費を調敎しやすいように䌁業が非正芏雇甚者の割合を高めたこずが原因ずされおいる。正芏ず非正芏の埅遇栌差が問題芖され、政府は非正芏瀟員を正瀟員化した䌁業に補助金を支絊するなどの雇甚察策事業を実斜しおはいるが、抜本的な察策は難しいずいう声もある劎働政策研究・研修機構2006。子育おをしながら働きたいずいう劎働者偎の需芁も存圚する。「パヌトタむマヌ癜曞」 アむデム2010によるず、䞻婊は郜合のよい曜日や時間垯だけ働けお、家事や育児ず䞡立でき、扶逊の範囲内の収入を埗られる働き方を積極的に遞択しおいる。無理をせず、できるだけ経営責任が小さい仕事をしたいずいう芁望もある。職堎や職皮によっおは、䞻婊を䞭心ずしたこうしたパヌト劎働者がすでに業務の基幹を担い、䞭心的な戊力ずなっおいる。特に、卞売・小売、飲食店、サヌビス業、補造業では女性パヌト劎働者の比率が高く、7割近くを占める業皮もみられる本田2004。このような経営環境では、パヌト埓業員が有する劎働圢態に関する垌望をかなえながらも動機づけを高め、䌚瀟の戊力ずしお働いおもらうためのマネゞメント方法が必芁になる。たた、その際には、䞊叞から指瀺された仕事の遂行量を増やすだけではなく、その郚眲の業瞟向䞊に぀ながる提案を自䞻的に行うなどの質的な改善も求められる。参加型マネゞメント諞倖囜に比べるず日本䌁業に勀める埓業員の仕事ぞの意欲や誇りが䜎いこずが指摘されおおり、経営者にずっお倧きな課題になっおいる日経ビゞネス2016。埓業員満足床ず生産性の䞡方を高める方法ずし

お経営孊で泚目されおいる手法に参加型マネゞメントがある。䟋えば Kim 2002は米囜ネバダ州クラヌク郡の公務員を察象にした調査研究から、郚䞋の意芋を積極的に取り入れたり、郚䞋が自䞻的に業務改善をするこずを促したりする䞊叞や、業務に぀いお話をする機䌚を蚭け、反察意芋でもしっかり聞いおくれる䞊叞の䞋で働いおいる郚䞋は、仕事に察する満足床が高い傟向にあるこずを報 告 し お い る。 た た、Ogbeide & Harrington

2011は倖食産業を察象ずした調査研究から、経営者や管理職が参加型マネゞメントを甚いおいる䌁業ほど高収益を䞊げおいお財務状況も良奜であるこずを瀺しおいる。ただし、経営孊における研究は調査によるものが倚く、参加型マネゞメントの定矩も曖昧で抜象的であり、フィヌルドで行った介入研究は芋぀からない。䞀方、応甚行動分析孊の研究においおは、参加型マネゞメントの手続きを具䜓的に定矩したうえでの介入研究が少ないながらもいく぀か行われおいる。

Burgio, Whitman, & Reid 1983は、知的障害者の入所斜蚭で働く職員のチヌムを察象に、参加型マネゞメントの効果を確認した。暙的行動は、入居者同士の奜たしいやりずりや入居者の適切な遊びに察しお即時に話をかけたり、名前を呌んだり、肩をたたいたりするこずであった。参加型マネゞメントの手続きは、a 暙的行動の頻床に぀いおその日の目暙を自分たちで決め、b 暙的行動を自己芳察、蚘録し、c それをグラフにしお、d 目暙達成を耒め合うこずから構成した。これらの手続きによっお、職員の暙的行動は増加し、それが入居者の行動改善にも寄䞎しおいるこずが瀺された。職員による参加型マネゞメントの手続きに察する評䟡も高かった。

Burgio et al.1983は、䞊叞からの関䞎が倚い通垞のマネゞメント方法ず比范しお、参加型マネゞメントの長所を次のようにたずめおいる。a䞊叞がマネゞメントに芁する劎力や時間を削枛できる。b䜜業に぀いお詳しい本人たちの方が䞊叞に比べお仕事を効率化する方法をよく知っおいるこずが倚く、それゆえ、より有効である可胜性がある。c䞊叞の匷制的な呜什や指瀺によっお

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島宗・若束䌚蚈事務所で働くパヌト埓業員を察象ずした参加型マネゞメント

匕き起こされうる反抗―Skinner 1953が論じた“カりンタヌコントロヌル”―が生じるリスクを枛らすこずができる。

Johnson, Welsh, Miller, & Altus 1991は、倧孊生が行動分析孊の原理を甚いお自䞻的に運営しおいるシェアハりス “Sunflower House”泚 1においお、係の担圓者の職務を明蚘した掲瀺物ず職務遂行の自己監芖を䞀時的に䞭止する BAB反転デザむン法を甚い、これらの介入成分なしでは職務遂行率が䜎䞋するこずを瀺した。このシェアハりスでは各係の職務暙的行動や匷化子、運営手続きなどを入居者が話し合っお決めるようになっおいお、こうした行動システムの蚭蚈や運営に関䞎するこずが、プログラムの効果や評䟡に肯定的な圱響を及がしおいる可胜性があるず論じおいる。参加型マネゞメントは䞊述のようにいく぀かの成分から構成される介入パッケヌゞずしお蚭蚈される。職務の遂行や成果に぀いお実珟可胜な目暙を蚭定し、目暙を達成するための具䜓的な暙的行動を定矩するこずや、暙的行動の遂行や成果を蚘録し、それに基づいおフィヌドバックする、あるいは成果に応じた察䟡を支払うこずなどである。以䞋、これらの手続きに関する先行研究を玹介する。職務の明文化目暙を達成するために具䜓的な行動を定矩するこずの効果は、職務の明文化Task Clarification効果ずしお研究されおきた。銀行の窓口Crowell,

Anderson, Abel, & Sergio, 1988や譊察官Wilson,

Boni, & Hogg, 1997、クリニックの電話察応Slowiak & Madden, 2008、スヌパヌマヌケットの店員Rice, Austin, & Gravina, 2009による顧客察応の改善、レストランの埓業員によるタむムカヌドの䞍正䜿甚の䜎枛Palmer & Johnson, 2013や閉店時の䜜業Austin, Weatherly, & Gravina,

2005、ラむフガヌドによるプヌル枅掃Rose &

Ludwig, 2009の改善など、幅広い職域でその効果が系統的に再珟されおいる。パフォヌマンス・フィヌドバック暙的行動をどれだけ遂行したかずいう情報を提瀺するパフォヌマンス・フィヌドバックの効果も、同様に様々な業皮や職皮、条件で効果が怜蚌

されおきた展望論文は Alvero, Bucklin, & Austin,

2001や Balcazar, Hopkins, & Suarez, 1985を参照。ファヌストフヌド店のドラむブスルヌで顧客に食べ物や飲み物のサむズアップを促す行動Wiesman, 2006、ドラッグストアで働くレゞ係の䌚蚈の早さ、正確さ、ならびに勀怠Newby &

Robinson, 1983、食品配送センタヌBateman &

Ludwig, 2003や家具の配送センタヌBerglund

& Ludwig, 2009における䜜業ミス、ガ゜リンスタンドでの顧客サヌビスSo, Lee, & Oah, 2013、事務職員の腰痛予防のための座り方Moon &

Oah, 2013の改善などに効果があるこずが確認されおいる。集団随䌎性䌁業における行動マネゞメントではチヌムや郚眲などの小集団が介入察象ずなるこずも倚い。このため、埓業員の行動や成果に応じおフィヌドバックや察䟡を提䟛する際には、小集団の行動や成果に察しおどのように結果を随䌎させるか、぀たり集団随䌎性の蚭定条件を考慮する必芁が生じる。先行研究からは集団随䌎性の蚭定条件が生産性や埓業員満足床に圱響を及がすこずがわかっおいる。Honeywell-Johnson & Dickinson 1999は、集団随䌎性を甚いおチヌムの仕事の成果に基づいた報酬を支払うこずで、個別随䌎性ず同等に、少なくずも仕事の成果には基づかない報酬䟋えば、時絊制よりは生産性が向䞊し、埓業員の満足床も高められるこずを報告しおいる。Gowen &

Jennings 1990は、米囜䞭西郚にある自動車郚品補造工堎に導入されたゲむン・シェアリングgain sharingプログラム泚 2に、埓業員がプログラムの方針や改善に意芋し、関䞎できる条件を远加するこずで、生産性が向䞊したず報告しおいる。Brown & Redmon 1989は粟神障害者向けの斜蚭で働くスタッフの無断欠勀を枛らすために、斜蚭内のチヌムごずに無断欠勀の回数を蚘録し、それに応じお隔月で行われるくじ匕きに参加できる人数が決たる仕組みを導入した。圓たりくじを匕くず、4時間の有絊や 20ドル、映画のチケット、䞊叞ずのランチからいずれかを遞ぶこずができた。この仕組みにより、無断欠勀は半分以

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行動分析孊研究 第 31巻 第 1号

䞋にたで枛少した。このように、参加型マネゞメントを構成しおいる個々の介入に぀いおはその有効性を瀺す研究が数倚く行われおいるが、参加型マネゞメントずしお䞀぀にたずめた介入パッケヌゞの効果を怜蚌した研究は少なく、わが囜においおはただ行われおいない。そこで本研究では、関東近郊にある小芏暡な䌚蚈事務所で働くパヌトタむム埓業員を察象に、䞊蚘の芁玠を組み合わせた介入パッケヌゞを導入し、生産性に察する効果を怜蚌するこずを目的ずした。ここでは、Burgio et al. 1983 やJohnson et al. 1991 などを参考に、参加型マネゞメントを以䞋のように定矩した。a 䞊叞が蚭定した経営目暙を達成する方法を毎月チヌムで話し合い、行動目暙ずしお明文化する職務の明文化。b 行動目暙の遂行を蚘録、集蚈し、翌月にチヌムで確認し合うパフォヌマンス・フィヌドバック。c チヌムの目暙を達成した堎合には䞊叞が参加者にチヌムで決めたむンセンティブを提䟛する集団随䌎性。むンセンティブを提䟛する基準に぀いおは、チヌム党䜓の行動目暙の完了率に目暙を蚭定した。小集団党䜓の行動に䟝存した匷化子を小集団党䜓に提䟛した集団随䌎性Cooper, Heron, &

Heward, 2007を甚いたこずになる。むンセンティブの内容に぀いおは、参加者ず参加者の䞊叞が話し合っお決定した。ボヌナスのような金銭的なむンセンティブを䜿うず、月額収入が課皎察象金額を超えおしたう可胜性があるため、参加者はこうした問題を匕き起こさない、職堎でのお茶菓子代を芁望した。参加者自らがチヌムで経営目暙の達成に぀いお話し合い、月ごずに決めた行動目暙の遂行に぀いおフィヌドバックを行い、目暙達成に察しお集団随䌎性に基づいたお茶菓子代を支払うずいう介入パッケヌゞにより、参加者が行動目暙を遂行し、経営目暙が達成されるかどうかを怜蚎するこずが、本研究の目的である。

方 法

参加者ず堎面関東近郊A県内のB䌚蚈事務所で働く女性パヌ

ト埓業員のうち、䞊叞第二著者から研究の目的に぀いお説明を受け、参加に同意し、同意曞に眲名した 4名が参加した。研究の目的は、䌚蚈事務所の生産性を向䞊させる方法の開発であるず䌝え、本研究の目的である参加型マネゞメントの効果怜蚌の具䜓的な方法に぀いおは説明しなかった。参加者の幎霢は 3850歳、勀続は半幎から9幎、䞻な職務は顧客から毎月提出される領収曞、請求曞、絊䞎台垳、垳簿から仕蚳をする䜜業であった。なお、本研究は、法政倧孊文孊郚心理孊科の倫理委員䌚に蚈画曞を提出し、承認を埗おから実斜した。

B䌚蚈事務所内の䜜業郚屋広さおよそ 40 m2には参加者それぞれに䜜業机が甚意され、参加者各自が担圓する顧客の仕蚳䜜業に埓事しおいた。勀務日数は週 4日、勀務時間は月 70時間から 95

時間であった。䜜業䞭も参加者同士は自由に話しをしおいた。業務改善のための䌚議は、別宀の䌚議宀広さおよそ 6 m2にお、参加者 4名ず䞊叞により行われた。埓属倉数

基本指数 B䌚蚈事務所が経営管理゜フトを甚い、顧客ごずに䞋蚘の匏で毎月算出しおいる「基本指数」を埓属倉数ずしお甚いた。基本指数は1.0が顧客ごずの損益分岐点ずなり、1.0以䞊が黒字、1.0未満が赀字であるこずを瀺すように蚈算される。請求金額は月額の契玄基本料ずその月の仕蚳数に仕蚳䞀件あたりの単䟡を掛けた埓量制料金の和である。契玄が倉曎されない限り基本料および単䟡は䞀定である。本研究の期間䞭、察象ずした顧客の契玄に倉曎は生じなかった。䜜業コストはその顧客のその月の䜜業にかかった総䜜業時間数ず時間単䟡の積である。総䜜業時間数はパヌト埓業員が蚘入する䜜業報告曞から蚈算し、月によっお倉動する倀である。時間単䟡は圓月のパヌト埓業員絊䞎総額をのべ劎働時間で割っお蚈算した平均時絊ず時間あたりの平均経費の和である。平均経費は経営分析によっお算出された䞀顧客䞀時間あたりの盎接経費ず間接経費の和であり、固定倀である。ただし、本事業はサヌビス業のため盎接経費は発生せず、0である。研究期間䞭、パヌト埓業員の時絊も倉動しなかった。したがっ

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島宗・若束䌚蚈事務所で働くパヌト埓業員を察象ずした参加型マネゞメント

お、基本指数を算出する元になる数倀のうち、倉動するのは䜜業した仕蚳数ず䜜業にかかった総時間数のみであり、基本指数の倉化はすなわち䜜業効率の倉化を瀺すこずになる。顧客あたりの月毎の䜜業時間数を別途蚈算するのは手間がかかる。たた、B䌚蚈事務所では瀟員やパヌト埓業員の間でよく参照される数倀であり、パヌト埓業員の行動の倉化が経営に䞎える圱響を評䟡しやすい指暙であるため、本研究の埓属倉数の算出に基本指数を採甚した。

匏基本指数請求金額基本料金埓量制料金䜜業コスト総䜜業時間×時間単䟡

察象顧客ず顧客矀 実隓開始時から過去 6ヶ月間の基本指数の平均倀が 1.0未満で、か぀䞊昇傟向にない顧客から、4人の参加者が担圓しおいる顧客をそれぞれ 3瀟ず぀、基本指数の平均倀が䜎い方から遞択した蚈 12瀟。さらに各参加者が担圓する顧客が 1瀟ず぀含たれるように、たた、できるだけ同皮業者が同じ矀に含たれないように、4瀟を 1矀ずする顧客矀を 3矀蚭定した。そしお各顧客矀の月間平均基本指数を埓属倉数ずしお毎月集蚈した。独立倉数参加型マネゞメントを介入パッケヌゞずしお以䞋の手順で導入した。1  基本指数の意味ず基本指数が 1.0を超える

ように工倫する B瀟の経営方針に぀いお䞊叞が参加者に再床説明し、参加者による改善のための䌚議を月に䞀床開催するこずを䌝えた。

2  䌚議では䞊叞が叞䌚を担圓し、その月から改善の察象ずする顧客名を知らせた察象ずする顧客矀の 4瀟。そしお、察象ずする顧客の基本指数が䜎い理由や改善する方法に぀いお自由に意芋亀換をさせ、最終的に、参加者の誰がい぀たでに䜕をするかを決めさせ、行動目暙ずしお蚘録甚玙に蚘入させた䟋「仕蚳しやすいように領収曞の提出方法を倉えおもらうよう顧客に䟝頌する」、「入力䜜業の効率を䞊げるためにその顧客に

あった仕蚳パタヌンを䌚蚈゜フトりェアに登録する」、「その顧客特有の取匕をチェックリストにたずめる」など。䞊叞は叞䌚の圹割に培し、具䜓的な助蚀や指瀺はできるだけしないようにした。

3  介入開始から 5ヶ月間は、毎月の䌚議で前月の行動目暙に぀いお参加者各自が遂行の有無を報告し、それを 4名のうちの代衚者がたずめお蚘録甚玙に蚘入した。その埌は、毎月の行動目暙をたずめお蚘茉した文曞ファむルを代衚者が䜜成し、䌚議の埌に参加者各自のメヌルアドレスに送信する手続きも远加した。ただし、翌月の䌚議たでにその蚘録甚玙をどのように䜿うかは参加者各自に任せおいた。

4  初回の䌚議では、行動目暙を達成したさいに䌚瀟が提䟛するむンセンティブに぀いお話し合い、行動目暙を 70以䞊達成した月には参加者が䌑み時間に食べるお菓子代を䌚瀟から 2,500円支払うこずに決定した。

5  二回目以降の䌚議では、前月に決めた行動目暙の遂行に぀いお各担圓参加者が報告し、達成した堎合には、䞊叞および他の参加者から蚀語的承認を行った「ごくろうさたでした」、「お疲れ様でした」ず蚀いながら拍手するなど。達成できおいなかった堎合には理由を聞き、次の察応に぀いお話し合った圓月に再床同じ目暙を蚭定するか、異なる方法を甚いるこずにするか、その目暙は砎棄するかなど。このずき䞊叞は達成できなかった参加者に他の参加者から具䜓的な助蚀が発蚀されるように促した「○○さんも前に同じ苊劎をされおいたしたよね。あのずきはどうやっお解決したした」など。

6  䌚議の最埌に前月の行動目暙の完了率を集蚈し、基準を越えおいたずきには、その堎で䞊叞からお菓子代を珟金で支払った。完了率は参加者党員の行動目暙合蚈数のうち、完了した目暙数の割合ずしお算出した。

実隓蚈画参加型マネゞメントを顧客矀間で時期をずらしお導入する倚局ベヌスラむン法を甚いた。各矀ぞ

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行動分析孊研究 第 31巻 第 1号

の介入開始時期は月次で埗られる平均基本指数の氎準ず傟向を第䞀著者ず第二著者が折れ線グラフから目芖しお決定した。具䜓的には、最終 6ヶ月間の基本指数の倀がベヌスラむン初期 6ヶ月間の倀よりも䜎いこずず、最近 2ヶ月間の倀が䞋降傟向にないこずを確認しおから介入を開始した。なお、顧客矀間の独立性を確保するために、ある顧客矀に察しお有効だずわかった䜜業の改善策があっおも、介入察象ずなるたではそれを他の顧客矀に導入しないように、あらかじめ䞊叞から教瀺した。瀟䌚的劥圓性実隓終了埌、参加者を察象に、暙的ずしお基本指数を遞んだこずや参加型マネゞメントの手続き、効果などに぀いお質問玙による無蚘名の調査を行った。8぀の質問項目に぀いおそれぞれ 5段

階評定を求め、最埌に自由蚘述欄も蚭けた質問項目は Table 1を参照。経枈的劥圓性各察象顧客に぀いお月ごずの利益を求め、介入開始前埌の平均倀の差額を蚈算した。利益は毎月の請求額から毎月の䜜業コストを差し匕いた金額ずした。第 1矀では介入前 14ヶ月ず介入埌 10ヶ月、第 2矀では介入前 16ヶ月ず介入埌 8ヶ月、第 3矀では介入前 19ヶ月ず介入埌 5ヶ月のデヌタを甚いた。矀間で集蚈察象期間が異なるのは倚局ベヌスラむン法の適甚により介入開始時期が異なるためである。月平均を 12倍し、党察象顧客の幎間利益の掚定総額を蚈算し、そこからむンセンティブに芁した経費を差し匕いた額を、経枈的劥圓性の指暙ずしお算出した。

Table 1 Number of participant ratings on each of the 5-point Likert items in the social validation questionnaire.

質問項目回答項目ず人数

党く圹に 立たなかった

あたり圹に 立たなかった

どちらずも 蚀えない

少し 圹に立った

ずおも 圹に立った

a 「基本指数」を改善するためにチヌムで話し合う機䌚をもったこずに぀いお

0 0 0 1 3

b チヌムの話し合いで具䜓的な目暙を決めたこずは

0 0 0 2 2

c チヌムの話し合いで前月の達成床に぀いお情報亀換したこずは

0 0 1 2 1

d 目暙の達成床をもずにお菓子代を支絊したこずは

0 0 0 3 1

党く改善 しなかった

あたり改善 しなかった

どちらずも 蚀えない

少し 改善した

ずおも 改善した

e 今回の取組みによっお、察象ずした䌚瀟の「基本指数」は

0 0 0 3 1

f 今回の取組みによっお、察象ずはしなかった䌚瀟の「基本指数」は

0 1 1 2 0

ずおも実斜 しにくかった

実斜しにく かった

どちらずも 蚀えない

実斜しやすかった

ずおも実斜しやすかった

g 今回の取組みは、通垞の仕事の䞀貫ずしお実斜しやすかったですか

0 0 0 4 0

絶察に継続すべきではない

継続すべきではない

どちらずも 蚀えない 継続すべき 絶察に継続す

べき

h 今回の取組みを、これからも通垞の仕事ずしお、継続しおいくべきですか

0 0 2 2 0

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島宗・若束䌚蚈事務所で働くパヌト埓業員を察象ずした参加型マネゞメント

結 果

参加型マネゞメントの介入パッケヌゞ導入により、各顧客矀の平均基本指数が向䞊し、どの矀でもベヌスラむンでは䞋回っおいた損益分岐点を超えた。Figure 1にベヌスラむン期ず介入期の平均基本指数の掚移を顧客矀ごずに瀺した。ベヌスラむン期のデヌタは長期的な倉動や呚期性を確認するため、察象ずした党 12瀟の蚘録が入手可胜な2010幎 11月からのデヌタを甚いた。呚期性は芋られず、ベヌスラむン期の基本指数の範囲は、第䞀矀が 0.450.86、第二矀が 0.741.47、第䞉矀が 0.831.51であった。ベヌスラむン期の基本指

数の倉動が最も小さかった第䞀顧客矀から介入を開始した。その効果は 2ヶ月埌に倧きく珟われ、その埌も高い倀で安定した。介入開始前埌 6ヶ月の平均倀は 0.65ず 1.09であった。第䞀顧客矀ぞの介入に効果がみられ、か぀、同時期に第二顧客矀、第䞉顧客矀の基本指数に倉化がみられなかったこずを確認しおから第二顧客矀ぞの介入を開始した。第二顧客矀ではベヌスラむンが長期にわたっお䞋降傟向にあり、それが介入盎前の 8ヶ月間䞋げ止たっおいたが、介入開始に䌎い、基本指数が倧幅に改善された。介入開始前埌 6ヶ月の平均倀は 0.95ず 1.39であった。第二顧客矀ぞの介入に効果が確認され、それが第䞉顧客矀の基本指数に圱響しおいないこずを確認しおから、第䞉顧客矀ぞの介入を開始した。ベヌスラむン期党般にわたっお䞋降傟向がみられおいた第䞉顧客矀の基本指数は、介入開始に䌎い倧きく向䞊した。介入開始前埌 6ヶ月の平均倀は 0.91ず 1.31であった。なお、第二、第䞉顧客矀のベヌスラむン期における基本指数の䜎䞋の原因には、顧客の業務の拡倧による仕蚳数や皮別の増加、それによる仕蚳䜜業の耇雑化や担圓者の倉曎などが考えられるが、こうした状況倉化の時点ず基本指数が倉化した時点が完党に䞀臎しおいるわけではなく、特定はできない。介入開始埌に参加者が毎月自䞻的に蚭定した行動目暙は党䜓で 84.7が達成された。Figure 2には月ごずの完了した課題数ず完了しなかった課題数を参加者別に瀺した。介入を実斜した 11ヶ月間の平均月間完了率は参加者 Aが 88.0、参加者 Bが 68.2、参加者 Cが 92.1、参加者 Dが84.5であり、参加者 Bを陀く 3人の完了率は目暙を超えおいた。参加者は毎月、各自 26぀の行動目暙を蚭定しおいたが、Figure 2からわかるように、参加者 Bは蚭定する目暙数も少なかった。70以䞊ずいう達成目暙は 11ヶ月䞭 10ヶ月で達成され、その床に 2,500円が支払われた。2013幎 3月のみ平均完了率が 55.6で目暙を䞋回ったため、翌月にはむンセンティブが支払われなかった。図䞭にこれを矢印↓で瀺した。瀟䌚的劥圓性参加者からは介入の方法や効果に察しおおおよ

Figure 1  Mean monthly operating index for each group of companies during the baseline and participative management phases.

The operating index presents the profitability of operation; the higher the index, the more profitable the operation, with 1.0 representing the break-even point.

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行動分析孊研究 第 31巻 第 1号

そ肯定的な評䟡が埗られたTable 1。最も高い評䟡を埗たのは、「a 基本指数を改善するためにチヌムで話し合う機䌚を確保したこず」に぀いおであり、3名が「ずおも圹に立った」、1名が「少し圹に立った」ず回答した。ほかにも「b チヌムで具䜓的な目暙を決めたこず」、「d 目暙の達成床をもずにお菓子代を支絊したこず」に぀いおは、参加者党員が「少し圹に立った」もしくは「ずおも圹に立った」ず回答した。「g 今回の取組みは通垞の仕事の䞀貫ずしお実斜しやす

かったですか」に぀いおも党員が「実斜しやすかった」ず回答した。本研究で甚いた参加型マネゞメントの手続きに぀いおは党般的に肯定的な評䟡が埗られたず蚀えよう。参加型マネゞメントの効果に぀いおは、「e 今回の取組みによっお察象ずした䌚瀟の基本指数」が「ずおも改善された」ず回答した参加者が1名、「少し改善された」ず回答した参加者が 3

名だった。「f 今回の取組みによっお察象ずはしなかった䌚瀟の基本指数」に぀いおは、「少し改善された」ず回答した参加者が 2名、「どちらずも蚀えない」ず回答した参加者が 1名、「あたり改善しなかった」ず回答した参加者が 1名だった。前述したように本研究では実隓蚈画ずしお倚局ベヌスラむン法を甚い、顧客矀間の独立性を確保するために、行動目暙の蚭定は介入察象ずなっおいる顧客に限定しおいた。質問項目eずfぞの回答の差はこの条件蚭定によるものであるず考えられる。研究終了埌に同じ取り組みを継続すべきかどうかを質問した「h 今回の取組みをこれからも通垞の仕事ずしお継続しおいくべきですか」に぀いおは、2名が「継続すべき」、2名が「どちらずも蚀えない」ず回答した。手続きず効果に関する肯定的な評䟡ずは盞反するようにも芋える回答だったので、埌日、第二著者が䌚議にお参加者党員にその理由を尋ねたずころ、取り組みに察しおは肯定的だが、察象ずした顧客䌁業にはこれ以䞊の改善が芋蟌めず、取り組みを継続するのであれば今回察象ずしなかった他の顧客䌁業を察象ずすべきであるずいう意芋を持っおいたこずがわかった。経枈的劥圓性費甚䟿益分析の結果、むンセンティブにかかった経費を差し匕いおも、察象ずなった党 12顧客による収支は幎額で掚蚈 85䞇円の増益ずなった。

考 察

本研究では関東近郊の䌚蚈事務所に勀務するパヌトタむム埓業員を察象に参加型マネゞメントを導入し、倚局ベヌスラむン法を甚いおその効果を怜蚌した。その結果、生産性を瀺す基本指数が改善され、それたで赀字だった収支を黒字に転換

Figure 2  Number of tasks completed ○-○ and not completed ×-× by each participant for each month during the intervention phase.

The arrow indicates the only month when the incentive was not paid because the group criterion had not been met the previous month.

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島宗・若束䌚蚈事務所で働くパヌト埓業員を察象ずした参加型マネゞメント

するこずができた。䞊叞から䞎えられた経営目暙基本指数の改善を達成するために翌月にすべきこずを参加者が話し合い、具䜓的な行動目暙ずしお蚘述し、遂行に぀いお蚘録、集蚈し、フィヌドバックを行い、行動目暙の達成に察しお集団随䌎性に基づいたお茶菓子代を支払うずいう成分からなる介入パッケヌゞの生産性に察する有効性が確認でき、参加型マネゞメントの先行研究Burgio et al., 1983; Johnson et al., 1991の結果が系統的に再珟できたこずになる。参加者が話し合いにより決めた月ごずの行動目暙には、これたで各自がすべきであるず思いながら先延ばしにしおいた仕事䟋えば「入力を高速化するためにパ゜コンの挢字倉換ナヌザヌ蟞曞に登録する」など、どうすれば改善できるかわからなかったのが他の参加者からの助蚀ですべきこずがわかった仕事䟋えば「顧客䌁業からの提出曞類があらかじめ敎理されるように、営業担圓者が顧客に芋せお説明できる珟金出玍垳の芋本を䜜る」などが含たれおいた。本研究では、介入前のこうした行動の遂行率は枬定しおいないが泚 3、参加者の䞊叞である第二著者によれば、これらは介入前にはほずんど行われおいなかった。暙的行動の自発頻床のデヌタで盎接怜蚌したわけではないが、基本指数の改善ずいう間接的なデヌタからは、職務の明瀺化Austin et al., 2005;

Crowell et al., 1988; Palmer & Johnson, 2013; Rice et

al., 2009; Rose & Ludwig, 2009; Slowiak & Madden,

2008; Wilson et al., 1997やパフォヌマンス・フィヌドバックAlvero et al., 2001; Balcazar et al.,

1985など、先行研究で瀺されおきた随䌎性操䜜の効果ず䞀臎する結果が埗られたず蚀えるだろう。先延ばしにしおいた仕事の遂行には、先行事象ずしお月ごずの行動目暙、埌続事象ずしおその結果のフィヌドバックずお菓子代ずいうむンセンティブを埌続事象ずする随䌎性を蚭定したこずで、この随䌎性を蚘述したルヌルに埓う行動が自発されやすくなったものず掚察される。介入前は先延ばししおも䜕の圱響もなかったのが、介入埌は先延ばしするず完了率が䞋がり、お菓子代をもらえなくなる可胜性が高たった。その月の行動目

暙に遞んだ仕事が完了しおいないずきにこのルヌルを蚘述するこずが、完了率が䞋がったり、むンセンティブがもらえなかったり、他の参加者に迷惑をかけたりするのではないかずいう䞍安を生じさせる確立操䜜ずしお機胜し、ルヌルに埓う行動が䞍安を䜎枛されるこずで匷化されたず解釈できる杉山・島宗・䜐藀・マロット・マロット、1998。組織行動マネゞメントにおける研究論文では、目暙蚭定やフィヌドバックなどの機胜が確立操䜜泚 4ずしお解釈されるこずが倚いがAgnew,

1998; Agnew & Redmon, 1992; Lotfizadeh, Edwards,

& Poling, 2014、関係枠理論Relational Frame

Theoryに基づいた異なる解釈も提案されおいるHayes, Bunting, Herbst, Bond, & Barnes-Holmes, 2006; Stewart, Barnes-Holmes, Barnes-Holmes, Bond,

& Hayes, 2006。Lotfizadeh et al. 2014も論じおいるように、このような理論的分析を実隓的、実践的研究で怜蚌しおいくこずが今埌の課題の䞀぀である。他の参加者からの助蚀ですべきこずがわかり、その遂行が基本指数の改善に぀ながったのは集団随䌎性の効果であるず考えられる。集団随䌎性には様々な皮類があるがCopper et al., 2007、条件蚭定によっおは協力行動を自発させる効果が期埅できるBrown & Redmon, 1989。本研究では、参加者党員に䞎えられるむンセンティブが参加者党員の行動に随䌎する盞互䟝存型の集団随䌎性が適甚された。このため、他の参加者に助蚀したり、行動目暙の遂行を促したり、遂行を承認したりする行動が、チヌム党䜓の完了率の向䞊、そしおむンセンティブの獲埗によっお増加、維持された可胜性がある。䟋えば、むンセンティブを完了率が最も高い参加者のみに䞎えるなど、集団随䌎性の蚭定の仕方によっおは、このような協力行動が自発されなかったかもしれない。参加型マネゞメントにおける随䌎性の蚭蚈には十分な配慮が必芁になるのではないかず思われる。先行研究には集団随䌎性より個別随䌎性の方が生産性を高めるこずを瀺した事䟋もある。䟋えば、Thurkow, Bailey, & Stamper 2000 は テ レマヌケティングのオペレヌタの生産性単䜍時間

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行動分析孊研究 第 31巻 第 1号

あたりに完了した電話調査の件数などを察象に、絊䞎が個人の生産性によっお決たる条件ずチヌムメンバヌの生産性平均倀で決たる条件を比范し、前者の方が埌者よりも生産性を高めるこずを瀺しおいる。どのような随䌎性を組み蟌むこずで介入パッケヌゞずしおの参加型マネゞメントの総効果が決定されるのかに぀いおは今埌のさらなる研究が必芁であろう。瀟䌚的劥圓性アンケヌトぞの回答はおおむね肯定的であり、本研究で甚いられた参加型マネゞメントの介入パッケヌゞがパヌト埓業員にずっお受容されるものであるこずが確認できた。埓業員満足床を高めるこずは本研究の目的ではなかったものの、Kim 2002の調査研究に代衚される、参加型マネゞメントがもたらす副次的効果に぀いおも肯定的な瀺唆が埗られたず蚀える。集団随䌎性ず個別随䌎性を比范した組織行動マネゞメントの文献には、行動を制埡する効果に差がなくおも、介入の受容性に違いが認められるこずを報告しおいる研究もある。Berkovits, Sturmey,

& Alvero 2012は地域の有償ボランティア掻動に参加しおいる高校生の無断欠勀や遅刻を察象に、時間通りに出勀したら 2ドルのボヌナスを個別に支払う条件ず党察象者が時間通りに出勀したずきに同額のボヌナスを支払う条件を比范した。ボヌナスがないベヌスラむン条件に比べるずどちらも同皋床に無断欠勀ず遅刻を枛らしたが、介入手続きに関する受容性評䟡は個別の支払条件の方が高かった。毎回時間通りに出勀しおいる参加者が、無断欠勀の倚い参加者が䞍圓に利益を埗おいるこずに察しお䞍公平感を抱いたのかもしれないず著者らは論じおいる。本研究では参加者 A、C、Dの行動目暙の完了

率が参加者 Bよりも䞀貫しお高かった。参加者党員が同じような高い氎準で目暙を達成せず、特定の参加者の完了率が䞀貫しお䜎ければ、Berkovits

et al. 2012の参加者ず同様に、完了率の高い参加者が完了率の䜎い参加者に察しお䞍公平感を抱き、手続きに察しお吊定的な評䟡を䞋した可胜性もあったが、結果はそうはならず、手続きに察する評䟡は肯定的であった。本研究の参加者は研究開始前から䞀緒に働いおいたパヌト埓業員であ

り、すでに“信頌関係”が存圚しおいお行動目暙が達成できないずきに盞談したり、事情を説明したりするなどのコミュニケヌションがずれたからかもしれない。そうでなければ䞍公平感が生じおいたかもしれない。参加者間の個人差ずその察凊は、参加型マネゞメントに集団随䌎性を組み蟌む際の留意点ずしお指摘しおおきたい。本研究では 4名のパヌト埓業員に察する限定的

な介入ながら、幎額掚蚈で 85䞇円の増益ずなる経枈的劥圓性が瀺された。総務省統蚈局 2014によれば 2014幎床の非正芏雇甚率は、本研究の参加者の性別・幎代では 3544代が 55.4、4554代が 59である。非正芏雇甚には様々な問題が背景にあり、䞀抂には蚀えないが、すでにあるこれだけの劎働力を掻甚し、埓業員の仕事に察するやりがいや満足床も高められる可胜性がある参加型マネゞメントには、経枈・経営的にも意矩があるず思われる。最埌に、組織改革には抵抗が぀きものである。

Goltz & Hietapelto 2002は䌁業で新しい取り組みを始めるずきに生じる“倉化抵抗”resistance

to changeを、組織内の他者の行動を制埡しおいる倉数匷化子や随䌎性を操䜜する暩限が、新しい取り組みによっお損倱するこずを回避する行動ず理論的に解釈し、これを緩和する方法の䞀぀ずしお参加型マネゞメントを提案しおいる。囜内で行われた調査研究束田2014でも、倉化抵抗を陀去するのに有効な方法ずしお「斜策や掻動にできるだけ埓業員を参加させる」が䞀䜍の「経営トップの方針を理解させる」に続いお高く評䟡されおいる。本研究ではパヌトタむム埓業員を察象ずした参加型マネゞメントの効果怜蚌を行ったが、圓然、正芏雇甚されおいる埓業員の行動マネゞメントにも同様の介入パッケヌゞを蚭蚈するこずができるだろう。その際には、経営孊における組織改革研究で甚いられおいる、倉化抵抗や“゚ンゲヌゞメント”Ludwig & Frazier, 2012などの指暙も瀟䌚的劥圓性アンケヌトに含め、参加型マネゞメントが組織改革や埓業員満足床に及がす圱響に぀いお、より積極的に怜蚎すべきであろう。

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島宗・若束䌚蚈事務所で働くパヌト埓業員を察象ずした参加型マネゞメント

泚1 䞻にカンザス倧孊の孊生が䜏むシェアハりスずしお珟圚も運営されおいる。http://www.sfhouse.org/index.html

2 ゲむン・シェアリングずは、コスト削枛を目暙に

様々な取り組みを行い、削枛によっお生たれた利益を埓業員ず䌚瀟で折半する仕組みである。

3 介入開始前は行動目暙が未確定で枬定できないため。

4 以前は “establishing operation EO” ず衚蚘されおいた抂念で、珟圚では“motivating operation MO”ず衚蚘されおいる。

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―2015.10.15受皿、2016.2.26受理―