PAFに対する治療:Systemac reviewPAFとは? ・発作性心房細動(PAF)...

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PAFに対する治療:Systema+c review 慈恵ICU勉強会 2015年11月10日 横田 泰佑

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PAFに対する治療:Systema+creview

慈恵ICU勉強会

2015年11月10日

横田 泰佑

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PAFとは?

・発作性心房細動(PAF)薬物療法、非薬物治療の有無にかかわらず、7日以内(多くは 48時間以内)に洞調律に復するものであり、心房細動の長い慢性経過からみると早期の病期に相当する。日本循環器病学会

・ICUで新規に発生したAF患者や、ERで初めてAFを指摘された患者は、その時点でPAFかChronicAF(慢性心房細動)かどうかは不明である。

→タイトルのPAF≒重症患者に新規に発生したAF

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重症患者のAFの分類

・ERにおけるAF・心外術後を除くICU患者のAF・心外術後を除くICU患者の上室性不整脈(AFを含む)・心外術後のICU患者のAF*上記以外のAF患者を非重症患者(病棟)とする

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文献の検索方法・2015年10月にPubMedを検索ERにおけるAF→[emergencydepartment]+[atrialfibrilla+on]ICU患者のAF→[atrialfibrilla+on]+[cri+calcare]ICU患者の上室性不整脈→[supraventriculararrhythmia]+[cri+calcare]心外術後ICU患者のAF→[cardiacsurgery]+[atrialfibrilla+on]その他→[AFの薬剤名]+[atrialfibrilla+on]上記に加えて、過去の勉強会の資料等を参考に文献を検索。

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目次

1.AFの一般論2.ICU患者のAF(心外術後を除く)3.ICU患者の上室性不整脈(心外術後を除く、AFを含む)4.心外術後のICU患者のAF5.AF全般に対する薬剤の有用性

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1.AFの一般論

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AFのメカニズム・発生原因心房の構造的異常、心房の電気生理学的異常、またはその組み合わせ。

自律神経系などの外因性の要因も、多くの場合で関与。 ・AFの病態生理は完全には理解されていない。JAMA2015;314:278-288

Circula+on2014;130:2071-104

自動能の亢進etc.

虚血、肥大etc.高血圧、肥満etc.

自律神経系活性化

炎症、酸化ストレス

レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系活性化

心房性頻拍リモデリング

遺伝子変異

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AcadEmergMed2012;19:1255-60

・カナダ、アメリカ、イギリス、オーストラリアの救急医療団体に、ERのAF(新規に発生したAFと再発したPAF)の治療についてメールで質問し、調査・回答率は、全体で40.5%・調査結果はカイ2乗検定で、分析

ERにおけるAFの治療

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*メトプロロールの注射薬は国内未承認。

レートコントロール

リズムコントロール

・結果

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JSEPTIC簡単アンケート第33弾:ICUにおける不整脈の管理(2014年1月実施)

回答者139名

日本のICU↓

β遮断薬、Ca拮抗薬以外は、少数派

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AFのガイドライン・レートコントロールClassⅠ:β遮断薬または非ジヒドロピチジン系Ca拮抗薬を用いる。緊急時は静脈内投与し、血行動態不安定な場合は電気的除細動を行う(B)。ClassⅡa:重症患者のレートコントロールにアミオダロンの静脈内投与を考慮してもよい(B)。・薬剤によるリズムコントロールClassⅠ:フレイカイニド(タンボコール、器質的疾患がない場合)、dofe+lide、プロパフェノン(プロノン、器質的疾患がない場合)、静注ibu+lideが第一選択(A)。ClassⅡa:アミオダロンの経口も可(A)。Circula+on2014;130:e199-e267*AFに対するアミオダロンは、日本では、経口薬が肥大型心筋症に伴う心房細動にのみ保険適応あり。

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一般論のまとめ

・病態生理は完全に解明されていない。・ERでは、レートコントロール目的でジルチアゼムとメトプロロール、リズムコントロール目的でプロカインアミドとアミオダロンが多く使用される。・日本のICUでは、AFに対して、レートコントロールで推奨されているβ遮断薬とCa拮抗薬が主に使用されている。

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2.ICU患者のAF(心外術後を除く)

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ICU患者のAFの一般論

・ ICU患者における新規に発生したAFを対象としたシステマチックレビュー(心外術後を除く)・病因とアウトカムに関する10研究、治療に関する5研究をまとめている。

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・危険因子         ・発生率   

外傷

感染

既往

臓器不全

敗血症性ショック46%

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術後AF(心外を除く)に対する予防的薬剤

AnnThoracSurg2014;98:1989-97

肺癌術後に関する10研究のシステマチックレビュー

*術式は開胸術またはVATS

(プラセボor投与なし)(肺全摘)

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・結果:アミオダロンが最も有効術後AF30.4%→9.6%に減少 (p<0.001)・副作用(低血圧と徐脈)は、アミオダロンとMgで少なかった。

ジゴキシン以外予防効果あり

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ICU患者のAFに対する治療

CritCareMed2008;36:1620-4

・ICU患者における新規に発生したAFのリズムコントロールに関する4つのRCTをまとめたシステマチックレビュー(心外術後を除く)・1966~2006年 ,n=893研究で血行動態不安定患者を除外・洞調律に戻るまでの観察時間:1~24時間

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・レートコントロールとして使用されるβ遮断薬とCa拮抗薬は、リズムコントロールとしても効果あり・Mgは、抗不整脈薬と同程度の効果あり

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ICU患者のAFの予後

・コホート研究・対象:2日以上ICUに入室した患者1770人(除外:心外術後と外傷患者)・方法:ICU入室してからの4日間を調査。プライマリーアウトカムは、AF(新規発生と再発)とnoAF患者の院内死亡率の比較。

CritCareMed2015;43:2104-11

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・結果AFvsnoAF:院内死亡率 30%vs17%(p<0.001)85%のAF患者に対して治療が行われた→治療群 vs非治療群 :院内死亡率 29%vs34%(p=0.557)

新規発生AF7% 再発AF6%

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ICU患者のAFのまとめ

・ICU患者で新規に発生するAFの発生率は5~20%程度。敗血症性ショックで高い。・敗血症やカテコラミンの使用などが危険因子。・肺癌術後の予防的薬剤はアミオダロンが最も有効と考えられる。・予後不良因子であるが、AFの治療を行うことで予後を改善できるかどうかは不明。

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3.ICU患者の上室性不整脈(心外術後を除く、AFを含む)

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ICU患者の上室性不整脈(SVA)の割合

・ヨーロッパの26のGeneralICUの1カ月で、24時間以上ICUに在室した患者,n=1341(76%が非術後患者)上室性不整脈:8%(113人) → AF:6.5%(87人)心室性不整脈:2%(30人)刺激伝導系異常:2%(30人)

AmJRespirCritCareMed2008;178:20-5

AFAFLPSVT

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ICUにおけるSVA

・敗血症性ショックと診断されて、ICUに入室した患者71人中30人(42%)にSVAが新規に発生した。Ann.IntensiveCare2015;527

・心外を除く胸部外科手術の術後のSVAでは、危険因子は年齢、心疾患の既往、肺切除の既往。HeartSurgForum2014;17:E308-12

・Mgは胸部外科手術の術後のSVAに対して、予防効果はなかった。BrJAnaesth2011;106:785-91

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ICU患者のSVAの予後

AnesthAnalg2007;104:880-6

・イスラエル ,GeneralICU,前向き観察研究・対象:術後患者と外傷患者を中心に、1年間のICU入室患者611人(除外:心外術後、最近胸部外科手術を受けた患者、胸部外傷)・9%(52人)が新規に30秒以上続くSVAを発生AF患者は6%(38人)

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・結果:NoSVAvsNewonsetSVAAPACHE IIスコア 16±8vs23±8 (P<0.05)入院死亡率 18%vs56%(P<0.05)4年後の死亡率 35%vs71%(P<0.05)

・NewonsetSVA52人中50人で治療が行われ、45人で治療効果はあった。

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IntensiveCareMed1994;20:42-4

・スペイン ,RCT・対象:SVAを伴い、かつ呼吸不全(急性呼吸不全or慢性呼吸不全の悪化)のためにICUに入室した患者 ,n=30(除外:SVAによる重症心不全患者)・方法フレカイニド(n=15)2mg/kgiv→ 1.5mg/kg/mindiv(1hour)ベラパミル(n=15)0.15mg/kgiv→ 0.005mg/kg/mindiv(1hour)・結果:フレカイニド vsベラパミル洞調律復帰率 80%vs33.3%(P<0.01)*フレカイニド投与群のうち11人で、ivにより洞調律になった

ICU患者のSVAに対する治療

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・RCT・対象:アデノシン投与後でもSVA継続する、心外を除く術後ICU患者 ,n=64・方法ジルチアゼム投与群(n=30)HR110/min以下まで20mgiv→ 10~20mg/hdivエスモロール投与群(n=34)HR110/min以下まで12.5~50mgiv→ 50~100μg/mindiv洞調律に戻るまでの観察時間は2時間・結果:ジルチアゼム vsエスモロール2時間後の洞調律復帰率 27.3%vs59.1%(P=0.067)

Anesthesiology1998;89:1052-9

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・日本の単施設のICU,2006~2011年,後ろ向きコホート研究・対象:HR120/min以上かつSVA(1時間以上)を発症した敗血症患者 ,n=61(除外:上室性頻拍の既往、入室時SVA)*ランジオロールは、日本でしか使用されていない。

WorldJCritCareMed2015;4:251-7

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・結果:ランジオロール vsコントロール24時間後のHR90±20vs109±18(P<0.05)24時間後の洞調律復帰率 69.7%vs36.4%(P<0.05)

HR145±14HR136±21

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ICU患者のSVAのまとめ

・ICU患者におけるAFを含むSVAは、AF単独と同様に敗血症や呼吸器疾患などが危険因子である。・予後不良因子であり、SVAの治療を行うことで予後を改善できるかどうかは不明。

・Ca拮抗薬より、Ic群抗不整脈薬とβ遮断薬の方が有効の可能性がある。日本で開発されたランジオロールも他のβ遮断薬と同じような効果があるかもしれない。

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4.心外術後のICU患者のAF

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心外術後のAFのメカニズム

JAmCollCardiol2008;51:793-801

・手術因子外科的心房傷害、心房虚血、肺静脈孔、静脈カニュレーション、急性のボリューム変化・術後因子ボリューム過多、低血圧、後負荷増加・トリガー因子心房性期外収縮、電解質不均衡、自律神経系の不均衡

・炎症・酸化ストレス

高血圧、肥満etc.

心房構造基質

心房電気生理学的基質

Postopera+veAtrialFibrilla+on

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心外術後のAFの一般論・発生率術後2~3日後をピークに起こる。僧帽弁の手術を受けた患者では30〜50%、バイパス手術は約30%である。心疾患で関連するのは、左室肥大、心不全、高血圧、心筋梗塞、心膜炎、心筋炎、先天性心疾患である。CardiovascTher2014;32:242-52

・危険因子高齢、sleepApnea、不整脈既往、うっ血性心不全、上・下大静脈カニュレーション、人工心肺長期化CritCareMed2015;43:1477-97

危険因子として指摘されていた肥満患者のオッズ比は1.12(95%CI:1.04-1.21;P=0.002)と、リスクは中等度だった。AnnThoracSurg2013;96.1104-16

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・スコットランド ,2001~2012年心臓手術を受けた49264人のデータを解析(除外:術前不整脈の既往)・POAFと、死亡率・合併症・ICU滞在日数・入院中コストなどの関連を調査・結果:19%(9255人)に新規にPOAFが発生。

心外術後AFの予後

AnnThoracSurg2014;98:527–33

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←死亡率,再入院率etc.POAFの方が全体で高いPOAFの死亡率の調整オッズ比2.04(P<0.001)

入院中のコスト9000ドル増加(P<0.001)

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心外術後のAFに対する予防的薬剤

・第一選択は、β遮断薬。アミオダロンは、β遮断薬が禁忌のときに使用。ソタロールは毒性の増加と関連。・適切な予防→POAFを約50%減少できる

CritCareMed2015;43:1477-97

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AnesthAnalg2015;121.861–7

・doubleblindRCTの結果を再解析・対象:心臓外科手術患者363人(除外:術前AF 精神疾患 腎不全 肝不全 etc.)・方法Mg50mg/kgiv→ Mg50mg/kg術中3時間持続静注(n=186)vsプラセボ(n=177)・結果:AF発生率 Mg42.5%vsプラセボ 37.9%(p=0.40)

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心外術後のAFに対する治療

・RCT・対象:心外術後患者,HR100/min以上のAF/AFL(5分以上),n=30・方法エスモロール:500μg/kg iv→ 25〜50μg/kg/mindivジルチアゼム:0.25mg/kgiv→反応不良 0.35mg/kgiv,5~15mg/hdiv

AmHeartJ2000;140:176-80

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エスモロール vsジルチアゼム6時間後の洞調律復帰率 67%vs13%(p=0.03)24時間後の洞調律復帰率 80%vs66%(有意差なし)レートコントロールと副作用:両群で有意差なし

(HR<90)

・結果

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・スイス ,心外術後ICU,DCの成功率を検討後ろ向き観察研究 ,2013~2014年・対象:新規に発生した心外術後AF患者(7日以内),n=72(除外:慢性心房細動と上室性頻拍)

心外術後のAFに対するカルディオバージョン

CritCareMed2015;43:2354-9

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・結果:71%がDC直後に洞調律→24時間後の洞調律維持は23%退院時:20%は薬剤介入なしに洞調律復帰      46%にアミオダロンが投与

・200Jのショックが85%に施行

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心外術後ICU患者のAFのまとめ

・心外術後のAFは、発生のメカニズムが一般的なものと異なり、発生率と死亡率も高い。・心外術後のAFの予防的薬剤で有効なのは、β遮断薬で、次にアミオダロン。・心外術後のAFは、予防的薬剤に関する研究が多く、治療薬は、β遮断薬とCa拮抗薬が有効と考えられるが、推奨するほどの情報はない。DCでは再発が多い。

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5.AF全般に対する薬剤の有用性

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抗不整脈薬のAFに対する作用機序

・Ic群抗不整脈薬:Naチャネル遮断作用を有し、房室伝導抑制と不応期を延長させる。副作用はリエントリーが大きくなり、Ic flutterになる。

日本循環器病学会不整脈薬物治療に関するガイドライン(2009年改訂版)

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抗不整脈薬のAFに対する作用機序・ β遮断薬:交感神経の緊張を減少させることにより、房室伝導速度が遅くなり、房室結節不応が増加する。JAMA2015;314:278-288

・アミオダロン:Kチャネル・Naチャネル・Caチャネル遮断作用を有し、交感神経ブロックとCaチャネルブロックで間接的に房室結節に作用する。

・Ca拮抗薬:洞結節・房室結節で主に働いているCaチャネルをブロックし、房室伝導抑制と同時に洞性徐脈をきたす。

・Mg:Ca拮抗薬の作用の弱いものである。心拍数を下げるが、Ca拮抗薬の副作用である房室ブロックや徐脈、低血圧をきたさない。Heart2007;93:1433–40

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Ic群抗不整脈薬

日本循環器病学会心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)

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・mul+center,doubleblindRCT・対象:7日以内発症の非重症患者のAF,n=75・方法ピルシカイニド(150mg単回経口投与)vsプラセボ洞調律に戻るまでの観察時間は90分・結果:ピルシカイニド vsプラセボ洞調律復帰率 45%vs8.6%(p<0.01)*ピルシカイニドは日本と韓国でしか使われていない。

ConversionofRecent-OnsetAtrialFibrilla5onbyaSingleOralDoseofPilsicainide(PilsicainideSuppressionTrialonAtrialFibrilla5on)

AmJCardiol1996;78:694-7

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・日本の単施設研究 ,2003~2007年・対象:ERで、DCを施行されたPAFかChronicAF患者 ,n=253洞調律に戻るまでの観察時間は3時間

JCardiol2009;53:35-42

・ランダムにピルシカイニドorシベンゾリン iv

*1stDCと2ndDCは同じエネルギー

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・結果:ピルシカイニド vsシベンゾリン洞調律復帰率 42%vs77%(p<0.01)・DC後のPAF→シベンゾリンの方がピルシカイニドより有効

洞調律に復帰した群は、AFの持続時間が短い

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・スペイン ,singleblindRCT・対象:ERで48時間以内に新規に発生したAF患者,n=150(除外:EF<35% うっ血性心不全 腎不全 etc.)・方法アミオダロンとフレカイニドとプロパフェノンを、それぞれ2mg/kgiv(8時間以内にAFが停止しない場合には1mg/kg追加)

AmJCardiol2000;86:950-953

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・結果:フレカイニド vsプロパフェノン vsアミオダロン8時間後の洞調律復帰率 82%vs68%vs42%(P<0.001)12時間後の洞調律復帰率 90%vs72%vs64%(P=0.008)*プロパフェノンは、国内では静注薬は未承認。

・副作用:3剤で有意差なし

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β遮断薬

・prospec+ve,openlabelRCT・対象:ERでHR100>かつ1時間以内に新規に発生したAForPAF,n=50(新規発生のAFは全体で60%程度)・方法ジルチアゼム投与群(n=26)0.25mg/kgiv後HR100>のときは0.35mg/kgiv追加 →HR90<5mg/h,HR90~12010mg/h,HR>12015mg/hdivエスモロール投与群(n=24)0.5mg/kgiv後HR100>のときは0.5mg/kgiv追加 →HR90<0.1mg/kg,HR90~1200.2mg/kg,HR>1200.3mg/kgdiv

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・結果

24時間後の洞調律復帰率 42%vs39%(P=1.0)24時間後のHR86±12vs91±14(P=0.3)平均累積投与量 131±89mgvs9627±1888mg・AFに対する治療に差はない。エスモロールの方が、コストがかかる可能性がある。

・ジルチアゼムvsエスモロール

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・RCT・対象:ERでAFまたはAFLを呈する患者・ジルチアゼムとメトプロロールのレートコントロール率(目標HR<100)を比較30分間、収縮期血圧と拡張期血圧と心拍数を調査・結果:ジルチアゼム vsメトプロロール5分後のレートコントロール率 50.0%vs10.7%(P<0.005)30分後のレートコントロール率 95.8%vs46.4%(P<0.0001)・2群間で低血圧(収縮期血圧<90mmHg)と徐脈(HR<60)に対する有意差はなかった。

JEmergMed2015;49:175-82

Dil5azemvs.MetoprololintheManagementofAtrialFibrilla5onorFluDerwithRapidVentricularRateintheEmergencyDepartment

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アミオダロン

Chest2009;135:849-59

・AFの治療薬に関するRCTとメタ解析をまとめたシステマチックレビュー・アミオダロンに関しては、7研究をまとめている(心外術後ICU1,ICU2,ER2,非重症患者1,不明1)

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・新規に発生したAFを対象とした研究で、アミオダロンは経口薬と静注薬ともに洞調律復帰率が高い・経口薬は肺合併症などの副作用が問題静注薬の副作用は、静脈炎・徐脈・低血圧

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Ca拮抗薬

・香港 ,openlabelRCT,2004~2006年・対象ERでHR>120かつ48時間以内に新規に発生したAF患者 ,n=150(除外:うっ血性心不全 ペースメーカー患者 植え込み型除細動器患者 etc.)・方法:ジルチアゼム・ジゴキシン・アミオダロンを静脈投与した群を1:1:1で割り付けプライマリーアウトカムは、24時間以内にHR<90に達すること

CritCareMed2009;37:2174-9

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・結果:ジルチアゼム vs アミオダロン vs ジゴキシン24時間後のレートコントロール率 90%vs74% vs 74%(p<0.0001)24時間後の洞調律復帰率 34%vs36%vs24%(p>0.05)

・ジルチアゼムは入院期間を短縮

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・doubleblind,crossover,RCT

・対象:HR120>かつ収縮期血圧100mmHg以上の非重症患者n=17(AF5,AFL10,AFとAFL2),除外:心不全  低血圧 etc.

・方法:ジルチアゼムかベラパミルをボーラス後、8時間持続静注

Pharmacotherapy1997;17:1238-45

・結果:ジルチアゼム vsベラパミル平均HR96±11vs97±9(有意差なし)・副作用:ベラパミルで3人低血圧

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・1995~2005年の9のRCTをまとめたメタ解析(ER3,ICU1,非重症患者2,不明3)         (方法)

Mg(マグネシウム)

AmJCardiol2007;99:1726-32

(観察時間)

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・Mgはレートコントロールとリズムコントロールの両方の治療で有効。死亡に関する報告はなし。 Mg投与

↓血清Mg濃度↑

↓ 洞調律に復帰、

というわけではない

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・1996~2006年10のRCT(ER3,ICU2,心外術後ICU1,非重症患者3,不明1)・対象:7日以内に新規にAFを発生した患者 ,n=515・MgSO4投与量:1.5~5g観察時間:1~24時間

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結果・レートコントロール(HR<100になる割合)Mg+ジゴキシン vsプラセボ 58.8%vs32.6(p<0.001)MgvsCa拮抗薬 orアミオダロン 21.4%vs58.5%(p<0.001)・リズムコントロールMg+ジゴキシンまたはibu+lidevsプラセボ 25.3%vs19.3%(p=0.61)MgvsCa拮抗薬 orアミオダロン 36.2%vs18.2%(p=0.17)・Mgの副作用(flushing,+ngling,dizziness)は17%の患者にみられた。

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JCritCare2015;30:1349-58

・結果低Mg血症(0.7mmol/L以下)

↓死亡リスク増加(オッズ比1.85,95%CI1.31-2.60;I2=0)・Mgの治療は、アウトカムと関連なし

1975~2014年のICUの研究

心外術後を除外

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ジゴキシン

・リバロキサバンとワーファリンを比較したRCTであるROCKET-AFでジゴキシンは多く使用されていた。そのデータをコックス比例ハザード回帰モデルを使用して解析。・対象:非重症のAF患者14171人(ChronicAF81%,PAF18%,新規に発生したAF1%)

Lancet2015;385:2363-70

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・結果37%(5239人)にジゴキシンは投与されていた。ジゴキシンが投与された群で、総死亡率、血管系疾患による死亡率および突然死の頻度が高かった。

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レートコントロール薬の比較

・目的:AFのレートコントロール薬が予後を改善するかどうか・対象:台湾の国民健康保険研究のデータベースを使用し、退院時にAFと診断された患者。ERやICU患者の割合は不明。・方法:β遮断薬かCa拮抗薬かジゴキシンが投与された群と未治療群を調査。臨床エンドポイントは、全死因の死亡率。

Circula+on2015;132:1604-12

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・結果追跡期間は4.9±3.7年、死亡率は32.7%(88263人)β遮断薬とCa拮抗薬:死亡率減少ジゴキシン:死亡率増加サブグループ解析やpropensitymatching後も結果は同じ

・ β遮断薬が最も死亡リスクを減少させる。

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薬剤のまとめ

・Ic群抗不整脈薬:ガイドラインの推奨通りフレカイニドとプロパフェノンの洞調律復帰率が高いが、副作用の問題がある。ピルシカイニドの洞調律復帰率は高くはなく、予防効果を含め有効性が高いかどうかは不明。 ・β遮断薬:メトプロロールよりエスモロールの方が洞調律復帰率も高く、レートコントロールに適する。・アミオダロン:洞調律復帰率が高く、レートコントロールでも使用できるが、副作用の問題がある。

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薬剤のまとめ

・Ca拮抗薬:ジルチアゼムとベラパミルでレートコントロールに差はないが、ジルチアゼムの方が洞調律復帰率が高く、低血圧も少ない。・Mg:レートコントロールとリズムコントロールの両方で使用できる。血清Mg濃度とリズムコントロールに関係はないが、低Mg血症のICU患者は、死亡リスクが上昇する。・ジゴキシン:AFに対して使用すると、予後不良の可能性がある。

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私見

・日本のICUでは、新規に発生したAFに対して、リズムコントロール目的で薬剤を投与することは少ないのかもしれない。しかし、AFの治療薬は、日本では未発売の薬剤や、静注薬が未発売の薬剤もあり、日本でしか使用されていない薬剤もある。さらに、アミオダロンも日本では保険適応の関係で使用に制限がある。そのため、一概に海外と比較することは難しいかもしれない。

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私見・レートコントロールに関しては、ジルチアゼムよりβ遮断薬の方が有効な可能性があるが、コストの問題は無視できない。・リズムコントロールに関しては、第一選択として使用する薬剤は決まっていない。しかし、低Mg血症のICU患者は、予後不良の可能性があり、ICUでAF+低Mg血症の患者をみたら、まずMg投与、というスタンスでもいいかもしれない。・心外術後以外にも、AFが発生しやすい手術での予防的薬剤に関する研究に期待したい。