「EIDAI Advance Plan 2023」 経営五ヵ年計画の柱 …...「EIDAI Advance Plan 2023」...

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E S G 経営五ヵ年計画 「EIDAI Advance Plan 2023」 策定と達成に向けて 台風被害で営業損失に 2018年度の住宅業界を振り返りますと、低水準で推移する住宅 ローン金利や各種住宅取得支援策の下支えにより、新設住宅着工戸 数は952千戸と底堅い動きになりました。 このような状況のなか当社グループでは、住宅分野での収益力強 化、非住宅分野の開拓・拡販の推進、海外事業の強化など各施策に 取り組みました。 しかしながら、2018年9月4日に近畿地方を直撃した台風21号に より、大阪府堺市にある大阪事業所が甚大な被害を受け、復旧に多 大な時間を要する事態となる一方、納期の遅延が発生し、一部製品 の受注を停止せざるを得なくなるなど、お客様に多大なご迷惑をお かけする結果となりました。こうしたことから2019年3月期の経営成 績は、売上高(連結)が58,246百万円(前年度比13.0%減)となりま した。また営業損失は1,609百万円(前年度は営業利益2,173百万 円)、経常損失が1,400百万円(前年度は経常利益2,407百万円)と なりました。また、被災に伴って特別損失を計上したため、親会社株 主に帰属する当期損失は3,434百万円(前年度は親会社株主に帰属 する当期利益1,264百万円)となりました。 2020年3月期には元の水準へ 当社では、二度とこのような事態を繰り返さないよう、被災後に生 産拠点の複数化などBCP(事業継続計画)を策定しました。現在は、 事業の継続能力を高めてゆくための活動であるBCM(事業継続マネ ジメント)に取り組んでいます。 なお、この出来事を風化させないようにするため、被災した9月4日 を「防災の日」とし、毎年この日に当社グループ全体で非常時のため の訓練を行うこととしました。 これらを踏まえたうえで、2020年3月期の経営成績を展望します と、2019年3月期における業績悪化は、台風による被災による影響 による一過性のものであって、2020年3月期は、住宅分野での収益 力強化、非住宅分野の開拓・拡販の推進、海外事業の強化などこれ まで取り組んできた各施策の成果から、2018年3月期における水準 まで回復するものと予想しています。 但し、2018年3月期を初年度とし2020年3月期を最終年度とする 「経営三ヵ年計画」は、台風の被害による影響を考慮した結果、抜本的 な見直しが必要との結論に至り、新たに2020年3月期を初年度とす る経営五ヵ年計画「EIDAI Advance Plan 2023」を策定しました。 経営五ヵ年計画の柱となる6つの基本方針と それに即した事業の拡大 経営五ヵ年計画 「EIDAI Advance Plan 2023」の 中で当社は、次の6つの基本方針を掲げました。 ①「お取引先様及びエンドユーザー様にご満足いただ ける製品品質とサービスの提供」 ②「住宅分野でのシェアアップと新設住宅着工戸数に 依存しない事業構造への転換」 ③「木質ボード事業の強化と拡大」 「生産性の向上とグループ全体での生産体制の最適化」 ⑤「物流及び情報システムの改革を推進」 ⑥「SDGsの取り組み」 計画では具体的な数値目標を設けました。収益力に 関する目標として売上高経常利益率を5%以上、資本 効率に関する目標としてROA(営業利益)を5%以上確 保するものとし、最終年度の2024年3月期に売上高 808億円、営業利益41億5,000万円、経常利益40億円 を目指しています。 中長期的に見て、わが国の住宅業界は人口減少や世 帯構成の変化といった構造的な問題があり、今後の事 業環境は、これまで以上に厳しさを増していくものと予 想され、こうした中での目標達成は、決して容易ではあ りません。しかし、当社には海外事業、木質ボード事業 など、厳しい中にあっても成長するための推進力がいく つもあり、これら6つの基本方針に沿った具体的な施 策を着実に行えば、必ず実現できると信じています。 但し、当社の目指す頂は、計画の目標とはまた別に あります。それは当社が社会に必要とされ、なおかつ当 社を支えてくださる皆様と共に生き、共に栄えることの できる企業となることです。国連の掲げる2030年まで の持続可能な開発目標「SDGs」への取り組みを計画 の中に盛り込んだのは、このような社会に貢献できる 企業になりたいという考えがあったからです。 2024年3月期の売上高目標は808億円 1984年3月入社 専務 総合企画本部長を経 て2019年4月現職に。 枝園 統博 代表取締役社長 計画の中に示した施策について、いくつか具体的な 事例をご紹介しますと、例えば②「住宅分野でのシェア アップと新設住宅着工戸数に依存しない事業構造へ の転換」では、当社の新ブランド「Skism(スキスム)」の 製品群を軸に、売上の拡大を見込んでいます。 このスキスムの製品群は、ビルダー・工務店様をはじ め、特約店様・販売店様についても、当社がご提案する 多彩な製品を自由に組み合わせていただけるメリット があり、お客様に対し住空間を提案していくにあたっ て、大きな武器になると当社では考えています。 さらに、伸びしろの大きい海外事業については、現地 での販売体制を確立させることにより、今後の成長が 見込まれるASEAN諸国で2024年3月期に年商30億 円を目指します。 ③「木質ボード事業の強化と拡大」では、日本ノボパン 工業株式会社との合弁事業がメインとなります。パー ティクルボードのトップシェアを競う同社とともに、新 たに立ち上げたENボード株式会社でパーティクル ボードを生産します。ENボード株式会社には月間 15,000トンの生産が可能な最新の連続プレスを導入し、 当社がこれまで得意としてきた化粧用や木工用以外 に、高品質の構造用、フローリング基材用を製品ライン ナップに加え、売上拡大と収益向上を図ります。 ⑥「SDGsの取り組み」は先ほど触れたように、当社 がお客様をはじめ全てのステークホルダーの皆様と共 存共栄を図り、社会に貢献する企業となるため、極め て重要なものと位置付けています。SDGsは事業活動 を通じて社会問題の解決につなげるという性格が強い ため、当社ではこれをESG(環境、社会、ガバナンス)と 関連付け、具体的な指標と目標数値を設定し、その達 成に努めていきたいと考えています。 スキスムブランドの浸透や木質ボード事業の強化を推進 経営計画・事業戦略 トップメッセージ 03 EIDAI REPORT 2019 EIDAI REPORT 2019 04

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経営計画・事業戦略

ESGの取り組み

企業情報

経営五ヵ年計画「EIDAI Advance Plan 2023」策定と達成に向けて

台風被害で営業損失に 2018年度の住宅業界を振り返りますと、低水準で推移する住宅

ローン金利や各種住宅取得支援策の下支えにより、新設住宅着工戸

数は952千戸と底堅い動きになりました。

 このような状況のなか当社グループでは、住宅分野での収益力強

化、非住宅分野の開拓・拡販の推進、海外事業の強化など各施策に

取り組みました。

 しかしながら、2018年9月4日に近畿地方を直撃した台風21号に

より、大阪府堺市にある大阪事業所が甚大な被害を受け、復旧に多

大な時間を要する事態となる一方、納期の遅延が発生し、一部製品

の受注を停止せざるを得なくなるなど、お客様に多大なご迷惑をお

かけする結果となりました。こうしたことから2019年3月期の経営成

績は、売上高(連結)が58,246百万円(前年度比13.0%減)となりま

した。また営業損失は1,609百万円(前年度は営業利益2,173百万

円)、経常損失が1,400百万円(前年度は経常利益2,407百万円)と

なりました。また、被災に伴って特別損失を計上したため、親会社株

主に帰属する当期損失は3,434百万円(前年度は親会社株主に帰属

する当期利益1,264百万円)となりました。

2020年3月期には元の水準へ 当社では、二度とこのような事態を繰り返さないよう、被災後に生

産拠点の複数化などBCP(事業継続計画)を策定しました。現在は、

事業の継続能力を高めてゆくための活動であるBCM(事業継続マネ

ジメント)に取り組んでいます。

 なお、この出来事を風化させないようにするため、被災した9月4日

を「防災の日」とし、毎年この日に当社グループ全体で非常時のため

の訓練を行うこととしました。

 これらを踏まえたうえで、2020年3月期の経営成績を展望します

と、2019年3月期における業績悪化は、台風による被災による影響

による一過性のものであって、2020年3月期は、住宅分野での収益

力強化、非住宅分野の開拓・拡販の推進、海外事業の強化などこれ

まで取り組んできた各施策の成果から、2018年3月期における水準

まで回復するものと予想しています。

 但し、2018年3月期を初年度とし2020年3月期を最終年度とする

「経営三ヵ年計画」は、台風の被害による影響を考慮した結果、抜本的

な見直しが必要との結論に至り、新たに2020年3月期を初年度とす

る経営五ヵ年計画「EIDAI Advance Plan 2023」を策定しました。

経営五ヵ年計画の柱となる6つの基本方針とそれに即した事業の拡大

 経営五ヵ年計画 「EIDAI Advance Plan 2023」の

中で当社は、次の6つの基本方針を掲げました。

①「お取引先様及びエンドユーザー様にご満足いただ

ける製品品質とサービスの提供」

②「住宅分野でのシェアアップと新設住宅着工戸数に

依存しない事業構造への転換」

③「木質ボード事業の強化と拡大」

④「生産性の向上とグループ全体での生産体制の最適化」

⑤「物流及び情報システムの改革を推進」

⑥「SDGsの取り組み」

 計画では具体的な数値目標を設けました。収益力に

関する目標として売上高経常利益率を5%以上、資本

効率に関する目標としてROA(営業利益)を5%以上確

保するものとし、最終年度の2024年3月期に売上高

808億円、営業利益41億5,000万円、経常利益40億円

を目指しています。

 中長期的に見て、わが国の住宅業界は人口減少や世

帯構成の変化といった構造的な問題があり、今後の事

業環境は、これまで以上に厳しさを増していくものと予

想され、こうした中での目標達成は、決して容易ではあ

りません。しかし、当社には海外事業、木質ボード事業

など、厳しい中にあっても成長するための推進力がいく

つもあり、これら6つの基本方針に沿った具体的な施

策を着実に行えば、必ず実現できると信じています。

 但し、当社の目指す頂は、計画の目標とはまた別に

あります。それは当社が社会に必要とされ、なおかつ当

社を支えてくださる皆様と共に生き、共に栄えることの

できる企業となることです。国連の掲げる2030年まで

の持続可能な開発目標「SDGs」への取り組みを計画

の中に盛り込んだのは、このような社会に貢献できる

企業になりたいという考えがあったからです。

2024年3月期の売上高目標は808億円

1984年3月入社 専務総合企画本部長を経て2019年4月現職に。枝園 統博

代表取締役社長

 計画の中に示した施策について、いくつか具体的な

事例をご紹介しますと、例えば②「住宅分野でのシェア

アップと新設住宅着工戸数に依存しない事業構造へ

の転換」では、当社の新ブランド「Skism(スキスム)」の

製品群を軸に、売上の拡大を見込んでいます。

 このスキスムの製品群は、ビルダー・工務店様をはじ

め、特約店様・販売店様についても、当社がご提案する

多彩な製品を自由に組み合わせていただけるメリット

があり、お客様に対し住空間を提案していくにあたっ

て、大きな武器になると当社では考えています。

 さらに、伸びしろの大きい海外事業については、現地

での販売体制を確立させることにより、今後の成長が

見込まれるASEAN諸国で2024年3月期に年商30億

円を目指します。

 ③「木質ボード事業の強化と拡大」では、日本ノボパン

工業株式会社との合弁事業がメインとなります。パー

ティクルボードのトップシェアを競う同社とともに、新

たに立ち上げたENボード株式会社でパーティクル

ボードを生産します。ENボード株式会社には月間

15,000トンの生産が可能な最新の連続プレスを導入し、

当社がこれまで得意としてきた化粧用や木工用以外

に、高品質の構造用、フローリング基材用を製品ライン

ナップに加え、売上拡大と収益向上を図ります。

 ⑥「SDGsの取り組み」は先ほど触れたように、当社

がお客様をはじめ全てのステークホルダーの皆様と共

存共栄を図り、社会に貢献する企業となるため、極め

て重要なものと位置付けています。SDGsは事業活動

を通じて社会問題の解決につなげるという性格が強い

ため、当社ではこれをESG(環境、社会、ガバナンス)と

関連付け、具体的な指標と目標数値を設定し、その達

成に努めていきたいと考えています。

スキスムブランドの浸透や木質ボード事業の強化を推進

経営計画・事業戦略

トップメッセージ

03 EIDAI REPORT 2019 EIDAI REPORT 2019 04