ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2...

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福岡県 ふくおか未来人財育成ビジョン Think globally,act locally 国際的な視野を持ち 地域で活躍する人財社会全体で育む 福岡県目指して

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福岡県

ふくおか未来人財育成ビジョン

Think globally,act locally 国際的な視野を持ち

地域で活躍する「人財」を

社会全体で育む

福岡県を目指して

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子どもたちは、遊び、学び、

失敗しながら成長していくもの

地域の未来を担う

「ふくおか未来人財」 の育成を社会全体で

すべての子どもたちは、かけがえのない存在です。

思いっきり遊び、学び、時には失敗もしながら成長していきます。

子どもたちがのびのびと安心して育つ環境を整えることは、私たち大人の責任でも

あります。

子どもたちは社会の宝、我々の未来そのものです。

資源が乏しい我が国においては、「人」こそが最も重要な資源でもあります。

急速に進むグローバル化。地方創生の機運の高まり。

これからの福岡県、そして日本の発展を考えると、“Think globally, act locally”、

国際的な視野を持ち、地域で活躍する「人財」の育成が必要です。

子どもたちに眠る無限の可能性を引き出したい。

地域の未来を担う子どもたちを社会全体で育てたい。

そんな思いで取りまとめたのが、この「ふくおか未来人財育成ビジョン」です。

このビジョンでは、子どもたちの「学力、体力、豊かな心」「社会にはばたく力」

「郷土と日本、そして世界を知る力」を育むために、我々が取り組むべき青少年育成

策の方向を示しています。

ビジョンの下、家庭、学校、地域、企業、行政がそれぞれの役割を果たしながら連

携協働し、社会全体で子どもたちを育んでいくことを期待しています。

最後に、大変熱心にご審議いただいた「これからの人材の新しい育成策策定のため

の有識者会議」委員の皆さま、教育委員会委員の皆さま、青少年育成団体の皆さまな

ど、ビジョン策定にご協力いただいたすべての皆さまに心から感謝申し上げます。

平成 27年 10月

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目次 1.青少年の意識と社会の状況 (1)高い「社会貢献への意識」 ・・・・・・・・・・・1 (2)低い自尊感情 ・・・・・・・・・・・3 (3)小中学校の学力、体力の状況 ・・・・・・・・・・・4 (4)「内向き志向」の若者 ・・・・・・・・・・・5 (5)人口減少と地域の担い手不足 ・・・・・・・・・・・6 (6)就職時期に県外転出する若者 ・・・・・・・・・・・7 (7)「地域の担い手としての自覚」が低い若者 ・・・・・・・・・・・7 (8)高まるグローバル人材の必要性 ・・・・・・・・・・・8 (9)まとめ ・・・・・・・・・・・9 2.青少年アンビシャス運動と教育力向上福岡県民運動の成果と課題 (1)青少年アンビシャス運動の成果と課題 ・・・・・・・・・・11 (2)教育力向上福岡県民運動の成果と課題 ・・・・・・・・・・11 3.「ふくおか未来人財」の必要性と求められる力 (1)「ふくおか未来人財」の必要性 ・・・・・・・・・・15 (2)「ふくおか未来人財」に求められる力 ・・・・・・・・・・15 4.「ふくおか未来人財」を育成するための施策の方向 (1)「学力、体力、豊かな心」の育成 ・・・・・・・・・・19 (2)「社会にはばたく力」の育成 ・・・・・・・・・・21 (3)「郷土と日本、そして世界を知る力」の育成 ・・・・・・・・・・23 (4)家庭、学校、地域、企業及び行政の連携協働 ・・・・・・・・・・24 先進事例 ・ しんぐう・こが・ふくつ・むなかたアンビネット協議会 ・・・・・・27 ・ 北九州市立大学学生による地域実践活動 ・・・・・・・・・・29 ・ 福岡女子大学 スリランカ Exploring“Development”プログラム ・・31 ・ アジア太平洋こども会議・イン福岡 ・・・・・・・・・・33

参考資料 〇参考事例

・鍛えよう!ほめよう!学校の教育力向上プロジェクト ・・・・・・37 ・学校運営協議会制度を生かした取組み ・・・・・・・・・・39 ・「ICTを活用した効果的な指導方法の在り方」の研究 ・・・・・41 ・乳幼児のコミュニケーション力を育む取組み ・・・・・・・・・・43 ・子ども社会を再生する取組み ・・・・・・・・・・45 ・夜須高原“遊・学キャンプ” ・・・・・・・・・・47 ・稲童神楽塾(神楽の里づくり推進協議会) ・・・・・・・・・・49 ・田川飛翔塾 ・・・・・・・・・・51 ・ちくご子どもキャンパス ・・・・・・・・・・53 〇「これからの人材の新しい育成策」策定のための有識者会議 ・・・55

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青少年の意識と

社会の状況

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1.青少年の意識と社会の状況

(1)高い「社会貢献への意識」

福岡県の「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」によると、「誰かのため

に何かをしてあげたいという気持ちがある」という子どもたちが小学6年生で

88.3%、中学2年生で85.0%、高校2年生で88.9%もいる。

(図1-1)

また、「社会のためになることを少しでもしなければという気持ちがある」と回

答している子どもたちの割合は、小学6年生で70.0%、中学2年生で68.1%、

高校2年生で74.6%である。(図1-2)

さらに、「今後、ボランティア活動に参加したいか」という質問では、「ぜひ参

加したい」「できれば参加したい」と回答している子どもたちの割合が小学6年生

で76.0%、中学2年生で64.6%、高校2年生で69.4%を占めている。

(図1-3)

これらの数値を見ると、福岡県の子どもたちの社会貢献への意識や社会的な活

動への参加意識は決して低くはない。むしろ高いと言えよう。

(図1-1)社会貢献への意識

88.385.0

88.9

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

小学6年生 中学2年生 高校2年生

(%)

【問い】 誰かのために何かをしてあげたいという気持ちがある

(資料)福岡県「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」(平成 23年度)

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(図1-2)社会貢献への意識

(図1-3)ボランティア活動の参加意向

17.88.5 13.3

58.2

56.156.1

0

20

40

60

80

小学6年生 中学2年生 高校2年生

できれば参加したい

ぜひ参加したい

(%)

64.6

76.0

69.4

【問い】 今後、ボランティア活動に参加したいと思いますか

【問い】 社会のためになることを少しでもしなければという気持ちがありますか

70.0 68.1

74.6

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

小学6年生 中学2年生 高校2年生

(%)

(資料)福岡県「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」(平成 23年度)

(資料)福岡県「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」(平成 23年度)

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(2)低い自尊感情

しかし、その一方、国立青少年教育振興機構の「高校生の生活と意識に関する

調査」を見ると、「自分はダメな人間だと思うことがあるか」との問いに対し、「と

てもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合は、日本の高校生では7割を

超え、残念ながら、米国、中国、韓国よりかなり高くなっている。また、自分は

人並みの能力があると自己評価している高校生の割合も55.7%で、4か国中最

も低い。(図2-1)

同様の傾向は、福岡県の子どもたちについても指摘できる。福岡県の「青少年

の健全育成に関する県民意識等調査」によると、「自分は何をやってもダメな人間

だという感じがある」と捉えている子どもたちは、小学6年生では40.1%であ

るが、高校2年生では60.4%にものぼる。(図2-2)

(図2-1)自尊感情が低い日本の高校生

(図2-2)自尊感情が低い若者(福岡県)

25.5 14.2 13.2

5.0

47.0

30.9 43.2

30.2

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

日本 米国 中国 韓国

まあそう思う

とてもそう思う

(%)

72.5

45.1

56.4

35.2

【問い】 自分はダメな人間だと思うことがある

7.214.1

19.2

32.9

37.1

41.2

0

20

40

60

80

小学6年生 中学2年生 高校2年生

ときどきある

よくある

(%)

40.1

51.2

60.4

【問い】 自分は何をやってもダメな人間だという感じがある

(資料)福岡県「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」(平成 23年度)

(資料)国立青少年教育振興機構「高校生の生活と意識に関する調査」(平成 27年度)

7.4

55.9

33.4

16.7

48.3

32.6

57.2

51.1

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

日本 米国 中国 韓国

まあそう思う

とてもそう思う

(%)

55.7

88.590.6

67.8

【問い】 私は人並みの能力がある

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(3)小中学校の学力、体力の状況

文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(小学6年生及び中学3年生対象)に

よると、福岡県の結果は、教科区分によっては、平均正答率が全国平均を上回っ

た年度もある。しかし、平成27年度については、小中学校ともに全教科区分で

全国平均を下回っている。ただし、小学校では、全ての教科区分で全国平均との

差が縮小傾向にある。他方、中学校では、全ての教科区分で拡大傾向が見られる。

(図3-1)

また、文部科学省の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(小学5年生及

び中学2年生対象)によると、福岡県の平成26年度の「体力」についての結果

は、小中学校男女全てにおいて、合計点の平均値が全国平均を下回っている。

(図3-2)

(図3-1)福岡県と全国の平均正答率の差の推移

(図3-2)福岡県と全国の体力合計点平均値の推移

53.2 53.7 53.4 53.5 53.5 53.6 54.2 54.2 54.4 54.1 53.9 53.9

45

47

49

51

53

55

57

59

H20 H21 H22 H24 H25 H26

小学校男子(点) 県平均値全国平均値

53.0 53.0 52.9 53.5 53.6 54.0 54.8 54.6 54.9 54.9 54.7 55.0

45

47

49

51

53

55

57

59

H20 H21 H22 H24 H25 H26

(点) 小学校女子 県平均値全国平均値

39.6 39.8 39.4 40.7 40.7 40.7 41.5 41.4 41.7

42.3 41.8 41.7

30

35

40

45

50

H20 H21 H22 H24 H25 H26

中学校男子(点) 県平均値全国平均値

45.5 45.4 44.9 47.1 46.6 46.9

48.4 47.9 48.1 48.7 48.4 48.7

30

35

40

45

50

55

H20 H21 H22 H24 H25 H26

中学校女子(点)県平均値全国平均値

-3.5

-3

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

H20 H21 H22 H24 H25 H26 H27

国語A 国語B 算数A 算数B

【小学校】

-3.5

-3

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

H20 H21 H22 H24 H25 H26 H27

国語A 国語B 数学A 数学B

【中学校】

(資料)文部科学省「全国学力・学習状況調査」

(資料)文部科学省「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」

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(4)「内向き志向」の若者

内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、「自分の考え

をはっきり相手に伝えることができる」と回答している日本の若者は、5割弱に

とどまり、調査対象となった7か国の中で最も低い。(図4-1)

また、福岡県の「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」によると、「将来

お子さんが海外に出て留学や仕事をすることに賛成ですか」という問いに対し、

7割強の保護者が肯定している。これに対し、子どもたちの方は、「将来、海外に

出て留学や仕事をしたいと思いますか」という問いに、「思う」と答えているのは

高校生でも32.1%に過ぎず、両者に大きなギャップがある。(図4-2)

なお、海外留学等に消極的な理由としては、「語学に自信がないから」が中高校

生では約6割と最も高い。

文部科学省の「若者の海外留学を取り巻く現状について」(平成26年4月)に

よると、経済成長著しい中国やインドでは、海外留学者数が大きく増加している

が、日本人の学生数は減少している。

なお、人口規模が日本の半分以下である韓国も、海外留学者数は日本を上回り、

その差は拡大傾向にある。

(図4-1)自分の考えをはっきり相手に伝えることができる青少年の割合

【問い】 自分の考えをはっきり相手に伝えることができる

(資料)内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成 25年度)

9.3

31.3 40.6

34.2 30.5 32.2

19.2

38.7

43.6

42.1 45.8

46.6 48.0

42.5

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

日本 韓国 アメリカ 英国 ドイツ フランス スウェーデン

どちらかといえばそう思う

そう思う

(%)

48.0

74.982.7 80.0 77.1 80.2

61.7

(資料)内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成 25年度)

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(図4-2)子どもが海外留学や海外で仕事をすることへの意向(保護者、子ども)

(5)人口減少と地域の担い手不足

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、福岡県の生産年齢人口(15

歳~64歳)は、2010年の325万人から2020年には291万人、さら

に2040年には237万人まで減少し、人口に占める割合は、2010年の

64%から54%と10ポイントも減少することが予測されている。(図5)

(図5)福岡県の将来人口推計

69 66 62 57 52 49 46

325 306 291 281 271 257 237

113 133 145

148 149

150 155

0

100

200

300

400

500

2010年 2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年

(万人)

65歳以上

15~64歳

0~14歳

507 505 497 486 472456 438

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成 25年 3月推計)」

74.5 74.0 72.2

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

小学6年生保護者 中学2年生保護者 高校2年生保護者

(%)

28.9 27.5 32.1

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

小学6年生 中学2年生 高校2年生

(%)

【子どもへの問い】

将来、海外に出て留学や仕事をしたいと

思いますか

【保護者への問い】

将来お子さんが海外に出て留学や仕事を

することに賛成ですか

(資料)福岡県「青少年の健全育成に関する県民意識等調査」(平成 23年度)

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(6)就職時期に県外転出する若者

総務省の「住民基本台帳移動報告」の福岡県における転入出状況を見ると、ほ

とんどの年代で県内への転入超過傾向になっている。特に、大学等への進学時期

である10代後半(15歳~19歳)では、転入超過幅が最も大きくなる。しか

し、就職時期に当たる20代前半(20歳~24歳)になると、女性は県内への

転入超過となる一方、男性は県外への転出超過になっている。(図6)

(図6)年齢別・男女別転入超過数(福岡県)

(7)「地域の担い手としての自覚」が低い若者

内閣府の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、「国や地域の

担い手として積極的に政策決定に参画したいか」という問いに対し、「そう思う」

「どちらかといえばそう思う」と回答している若者の割合は35.4%で、調査対

象となった7か国の中で最も低い。(図7)

(図7)地域の担い手としての自覚

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

2,000

(人)

(資料)総務省「平成 26年住民基本台帳移動報告」(移動の期間は、1月 1日~12月 31日)

7.7

18.6 22.1

16.9 22.1

15.3 14.3

27.7

35.3

38.3

36.4

40.8

39.0

31.7

0.0

20.0

40.0

60.0

日本 韓国 アメリカ 英国 ドイツ フランス スウェーデン

どちらかといえばそう思う

そう思う

(%)

35.4

53.9

60.4

53.3

62.9

54.3

46.0

【問い】 国や地域の担い手として積極的に政策決定に参画したいか

(資料)内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(平成 25年度)

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(8)高まるグローバル人材の必要性

日本の人口が減少局面にある中、経済産業省の「海外事業活動基本調査」によ

ると、日本企業の現地法人企業数は、アジアを中心に増加傾向にあり、企業の経

済活動のグローバル化が進んでいることがうかがえる。(図8-1)

また、経済産業省の「グローバル人材育成に関するアンケート調査」によれば、

日本企業が海外拠点を設置、運営するにあたっては、グローバル化を推進する国

内人材の確保、育成が74.1%と最も大きな課題となっている。(図8-2)

(図8-1)日本企業の海外進出

(図8-2)海外拠点の設置・運営にあたっての課題

2.3

5.7

42.2

40.7

26.6

15.6

27

74.1

9.9

0 20 40 60 80

無回答

その他

進出先国の法制度、マーケット等についての情報

グローバルでの制度や仕組みの共通化

グローバルでの経営理念・ビジョンの徹底

グローバル化に必要な資金の確保

グローバルに通用する製品・サービスの開発

グローバル化を推進する国内人材の確保・育成

特に課題はない

(%)

(資料)経済産業省「海外事業活動基本調査」

(資料)経済産業省「グローバル人材育成に関するアンケート調査」(平成 22年 3月)

アンケート回答企業:259社(上場企業 201社、非上場企業 58社)

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(9)まとめ

福岡県の調査によると、誰かのために役に立ちたい、社会のためになることを

したい、ボランティア活動に参加したいと考えている前向きな青少年は、決して

少なくない。

一方、自尊感情の低い青少年の割合がかなり高いこと、小中学校の学力、体力

が全国平均を下回っていることにも注目したい。

また、内閣府の調査によると、自分の考えをはっきり相手に伝えることのでき

る青少年の割合は、諸外国と比較して明らかに低い。福岡県の調査によると、保

護者では、子どもが海外留学や海外で仕事を持つことについて肯定的な回答をし

ている者が多い。これに対し、子どもたちでは語学力への自信の無さなどを理由

とした否定的な回答が多い。近年、若者の「内向き志向」が各方面から指摘され

ているが、福岡県も例外ではないことがうかがえる。

今、我が国は、人口減少、超高齢化という大きな課題に直面している。

地域においては、生産年齢人口の減少や若者の県外転出が進む中、地域の担い

手としての自覚が低い傾向にある若者を、どのように地域の発展の原動力として

育成していくかが大きな課題となっている。

企業においては、人口減少社会へ突入し、国内市場が縮小する中、海外市場へ

の進出が求められている。国内の事業活動においても、グローバル化とは無縁で

いられない状況にきている。そのためグローバル化を推進する国内人材の確保、

育成が大きな課題となっている。

このように人口構造や経済情勢が変化する中、青少年には、これらの環境の変

化に前向きにかつ力強く対応することができ、経済的にも社会的にも自立した、

自分らしい生き方のできる社会人となることが期待される。

そのためには、県民が一体となって青少年の自尊感情、学力、体力、コミュニ

ケーション能力などの向上を確実に図る必要がある。

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青少年アンビシャス運動と

教育力向上福岡県民運動の

成果と課題

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2.青少年アンビシャス運動と教育力向上福岡県民運動の成果と課題

(1)青少年アンビシャス運動の成果と課題

青少年アンビシャス運動は、家庭や地域の教育力の低下、学校におけるいじめ

や完全週5日制の実施など青少年を取り巻く環境の変化を踏まえ、「豊かな心、幅

広い視野、それぞれの志を持つたくましい青少年」の育成に取り組む県民運動と

して平成13年度に開始した。

運動開始以来、1,600を超える運動参加団体が多様な体験活動や年齢を超

えた交流などに取り組むとともに、運動で育った子どもたちが青年リーダーとし

て、運動参加団体やアンビシャス広場の活動を支えるという好循環が進むなど、

地域の大人が子どもを支える県民運動として定着が見られた。

また、運動の象徴的事業であるアンビシャス広場や運動参加団体による地域で

子どもを育てる取組みは、子どもの社会性、自主性を育み、大人の意識を変える

とともに、地域の大人同士、大人と子どもの関係が深まり、地域社会にとって好

ましい影響を与えているなどの成果が上がっている。

一方、グローバル化に対応できる青少年の育成に当たっては、アンビシャスの

翼事業など文化、歴史の異なる世界の青少年と切磋琢磨する事業を通じて、子ど

もたちが日本の歴史や文化を理解し、自分の考えを持つことの重要性が明らかに

なってきた。

今後、青少年アンビシャス運動を推進するに当たっては、アンビシャス広場を

はじめとする子どもの居場所づくりが進んでいない地域があること、地域で子ど

もを支える担い手が不足していることなどの課題を踏まえ、地域の大人たちが地

域ぐるみでたくましい青少年を育てていく県民運動の手法を引き続き活用しなが

ら、人材の育成を進めていくことが重要である。

(2)教育力向上福岡県民運動の成果と課題

教育力向上福岡県民運動は、子どもにかかわる県民一人一人の教育力を高める

とともに、学校、家庭、地域が主体的にそれぞれの教育力を高めながら、福岡が

目指す子ども「志をもって意欲的に学び、自律心と思いやりの心をもつ、たくま

しい子ども」を育成する県民運動として平成20年度に開始した。

運動開始以来、各地区において学校と家庭、地域が連携協力した学校行事や体

験活動、通学合宿等の取組みが徐々に広がり、子どもが抱える「学ぶ意欲の低下」

「自尊感情の低下」「規範意識の低下」「体力等の低下」の本質的な課題は一定程

度改善の傾向が見られた。

一方、行政の広報活動の不十分さ、「教育力向上」という分かりにくいネーミン

グなどから、県民運動について県民の認知度が上がらなかった。また、県民運動

の取組状況にも地区間での差があり、全県的に広まったとはいえず、学校や家庭、

地域を広く巻き込んだ運動とはならなかった。

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12

今後も、通学合宿など県民運動で成果を上げた取組みについては引き継いでい

くとともに、本県教育の最重要課題である学力や体力の向上をはじめ、学校、家

庭、地域の円滑な連携協働のための仕組みづくりなど、学校教育の振興に向けて

取り組んでいくことが必要である。

Page 18: ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2 (図1-2)社会貢献への意識 40 0.0 (図1-3)ボランティア活動の参加意向 17 【問い】.8

13

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「ふくおか未来人財」の

必要性と求められる力

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15

3.「ふくおか未来人財」の必要性と求められる力

(1)「ふくおか未来人財」の必要性

青少年が心身ともに健康で、高い自尊感情と豊かな人間性やチャレンジ精神を

持った社会人に成長していくことは、県民すべての願いである。また、社会は、

そうした青少年がこれからの福岡県、ひいては日本を築いていくことを期待して

いる。

福岡県は、西日本屈指の人口と経済力、そして潜在力を有している。また、成

長著しいアジア諸国に我が国で最も近く、経済や文化、環境など様々な分野で緊

密な交流の歴史を築いてきた。今後も、アジアの活力を取り込み、太平洋側では

ない、日本海側のアジアを向いた一大拠点としてその役割を果たしながら、アジ

アとともに発展していくことが求められている。

近年、超高齢社会、人口減少社会の到来、経済のグローバル化の進展などによ

り、社会の基本的な構造や生活様式が大きく変化している。このような状況の中

で、それぞれの人は、社会における自己の立場に応じた役割と責任を果たすこと

を通じて、自分らしい生き方を実現するとともに、多様な人々と共に経験したこ

とのない課題を解決しながら、将来に夢や希望の持てる活力ある社会を創造して

いくことが重要である。

今後、福岡県、そしてこの国がさらに発展していくためには、“Think globally,

act locally”すなわち、「国際的な視野を持って、地域で活躍をする」若者の育

成が急務である。

青少年は「社会の宝」であり、大人たちにはこの宝を未来に確実に届けていく

責任がある。

こうした思いを込め、「国際的な視野を持って、地域で活躍をする」若者を「ふ

くおか未来人財」と定義する。

(2)「ふくおか未来人財」に求められる力

「ふくおか未来人財」に求められる力としては、

① 学力、体力、豊かな心

② 社会にはばたく力

③ 郷土と日本、そして世界を知る力

の3つが必要である。

① 学力、体力、豊かな心

「国際的な視野を持って、地域で活躍をする」ための基礎として、基本的

な知識技能に加え、これらを活用する力を含む「学力」、学ぶ意欲や気力の充

実にも深くかかわる活動の源としての「体力」、豊かな情操や自尊感情、規範

Page 21: ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2 (図1-2)社会貢献への意識 40 0.0 (図1-3)ボランティア活動の参加意向 17 【問い】.8

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意識、心の回復力(レジリエンス)、生命の尊重、他者への思いやり、社会性、

公共の精神などの「豊かな心」、これら3つをバランスよく身に付けることが

必要である。

② 社会にはばたく力

地域社会や職場で活躍するためには、自ら考え、多様な価値観の人々と協

働し、課題を解決していく「社会にはばたく力」を身に付けることが必要で

ある。さらに、社会の仕組みや社会の中での自己の役割を理解し、その責任

を果たしながら、自立していく力を身に付けることが必要である。

③ 郷土と日本、そして世界を知る力

これからの時代を生きる青少年は、グローバル化の波が押し寄せている中、

「世界の中の日本」を十分に自覚し、活動していく必要がある。そのために

は、郷土や日本の歴史、文化、地理を深く学び、それらを背景とする考え方、

価値観等を十分に理解した上で、世界の歴史等を学び、海外との違いを理解

し、多様性を認め合いながら、様々な課題に柔軟に対応する力を身に付ける

ことが必要である。

Page 22: ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2 (図1-2)社会貢献への意識 40 0.0 (図1-3)ボランティア活動の参加意向 17 【問い】.8

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18

「ふくおか未来人財」を

育成するための施策の方向

Page 24: ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2 (図1-2)社会貢献への意識 40 0.0 (図1-3)ボランティア活動の参加意向 17 【問い】.8

19

4.「ふくおか未来人財」を育成するための施策の方向

「ふくおか未来人財」を育成するため、家庭、学校、地域、企業及び行政がそれ

ぞれの責任を果たし、連携協働しながら、以下の基本的な方針に基づき、取組みを

推進することが求められる。なお、特定の発達段階における取組みが必要なものに

ついては、概ね次の5つの段階の区分により整理する。

・乳幼児期( 0歳~ 6歳)

・学 童 期( 6歳~12歳)

・青年前期(12歳~15歳)

・青年中期(15歳~18歳)

・青年後期(18歳~22歳)

(1)「学力、体力、豊かな心」の育成

学力、体力、豊かな心は、いつの時代にも必要な普遍的、基礎的な資質、能力

である。「ふくおか未来人財」を育成するためには、これらをバランスよく育むこ

とが求められる。

○学力の向上

知識及び技能はもちろんのこと、これに加えて、自分で課題を見つけ、自ら

学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく課題を解決する資質、能力などを

含む確かな学力は、社会を生き抜くための基盤となる力である。

このため、特に学童期には、基礎的、基本的な知識及び技能を確実に習得さ

せる取組みの強化が求められる。さらに、福岡県が取り組んできた「鍛えて、

ほめて、子どもの可能性を伸ばす!」という学ぶ意欲等を高める指導法1やアク

ティブ・ラーニング2を活用した主体的で参画型の授業を推進することなどが求

められる。

また、学力向上に取り組む市町村、学校等への支援のほか、大学など地域の

教育資源を活用した放課後、土曜日等の補充学習の推進など様々な学力の向上

に向けた取組みを強化する必要がある。さらに、教員の指導力の向上や教員が

子どもたちの指導に専念できる学校の体制づくりが求められる。

○体力の向上

体力は、人間のあらゆる活動の源であり、子どもたちの健全な成長、発達を

1 【鍛えよう!ほめよう!学校の教育力向上プロジェクト】(P37 参照)

2 【アクティブ・ラーニング】

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、子どもたちの能動的な学習への参加を取り入

れた教授・学習法の総称。

Page 25: ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2 (図1-2)社会貢献への意識 40 0.0 (図1-3)ボランティア活動の参加意向 17 【問い】.8

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支え、より豊かで充実した生活を送る上でも極めて重要である。その向上を図

るには適切な睡眠やバランスのよい食事をとり、生活リズムを整えることが必

要である。

乳幼児期及び学童期においては、外遊びの時間を積極的に確保し、体を動か

す楽しさを味わいながら基礎的な体力を育むことが大切である。

また、オリンピック・パラリンピックに向けた機運の高まりを生かしながら、

運動やスポーツに対する理解や関心を高めるとともに、青年前期から青年中期

における運動部活動への加入を促す取組みなどにより、運動やスポーツをする

習慣を定着させることが求められる。その際、過度な勝利至上主義に陥ること

なく、生涯スポーツを見通したスポーツ活動の実践が重要である。

さらに、大学等と連携し、先進的なスポーツ医科学の知見を取り入れた取組

み、引退したトップアスリート等地域人材を活用した取組み、地域におけるス

ポーツに親しむ拠点づくりなどを推進するとともに、体力向上を下支えする環

境づくりや健康教育を充実させることが求められる。

○豊かな心の醸成

子どもたちの豊かな情操や自尊感情、規範意識、心の回復力(レジリエンス)、

生命の尊重、他者への思いやり、社会性、公共の精神などを育むことが重要で

ある。

豊かな心は、様々な背景を有する者が共に暮らし、支え合う共生社会を形成

していくための素地であり、異文化の理解や異なる価値観の受容など多様性の

理解にもつながっていくものである。

このため、道徳教育や人権教育などを推進するとともに、共生社会の素地を

作るインクルーシブ教育システム3の構築を進めることが大切である。また、命

を大切にする心を育む体験活動4や多様な芸術文化に触れる機会の充実が求め

られる。さらに、いじめ、不登校、中途退学、非行等の予防、解消に向けた総

合的な対策を強化することが必要である。

○学校、家庭、地域の連携協働

子どもたちの確かな学力の育成や学校が抱える複雑化、多様化した課題の解

決への支援のためにも、学校を中心とした多様なネットワークや連携協働体制

を整備することが必要である。このため、学校、家庭、地域がそれぞれの責任

を果たすとともに、連携を強化し、多様な地域資源を活用しながら、学校の教

3 【インクルーシブ教育システム】

障害のある児童生徒が、その年齢及び能力に応じ、可能な限り障害のない児童生徒と共に、その

特性を踏まえた十分な教育を受けることのできる仕組み。 4 【命を大切にする心を育む体験活動】

動物の飼育、乳幼児とのふれあい、お年寄りとの交流などの体験活動。

Page 26: ふくおか未来人財育成ビジョン - Fukuoka Prefecture...2 (図1-2)社会貢献への意識 40 0.0 (図1-3)ボランティア活動の参加意向 17 【問い】.8

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育活動に対する支援、学校運営への参画を促進するシステムづくり5や家庭教育

を支援する取組みが求められる。

○教育環境づくり

子どもたちの個性や能力を伸ばすためには、様々な教育ニーズに応じた環境

づくりが必要である。

このため、小中一貫教育など教育の多様化への対応や高等学校の学科、コー

スの充実、私立学校の特色を生かした教育活動への支援、特別な教育的支援を

必要とする児童生徒へのきめ細かな対応、ICTを活用した能動的な学習6や遠

隔授業の導入など、多様な教育活動を行うための教育環境の充実が求められる。

(2)「社会にはばたく力」の育成

「社会にはばたく力」を身に付けるためには、困難な課題に対し、まずは自分

の知識や経験を生かしながら、深く考え抜くことが重要である。さらに、異なる

価値観や個性を持つ人たちとの相互理解を深め、共感しながら、人間関係や協力

体制を形成して合意形成を図り、課題解決へと導く力を身に付けることが必要で

ある。

○コミュニケーション能力を高める

社会において、多様な価値観の人々と協働し、課題を解決していくためには、

人と直接会って、自分の考えを自分の言葉で表現したり、表情や言動から相手

の思いを理解するコミュニケーション能力が不可欠である。

それには、まず、人との関わりや触れ合い、話し合いなどを重視し、体験を

ふりかえり、言葉にすることで学びにつなげる「体験の言語化」を大人が意識

しながら、子どものコミュニケーション能力を高めていくことが求められる。

特に乳幼児期から学童期には、各家庭や乳幼児の保育や教育の場において、

大人が子どもの言葉を先取りせず、子どもが自分の考え、気持ちや要求を自分

の言葉で言える場を保障するとともに、子どもの呼びかけや質問に対して積極

的に応答することが求められる7。また、学校等においては、子どものコミュニ

ケーション能力を高めることができるよう教師の指導技術を向上させるととも

に、コミュニケーションを重視した双方向、発信型の授業などの積極的な導入

が期待される。

5 【学校運営協議会制度を生かした取組み】(P39 参照) 6 【「ICTを活用した効果的な指導方法の在り方」の研究】(P41 参照) 7 【乳幼児のコミュニケーション力を育む取組み】(P43 参照)

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○遊び体験、自発的、能動的な体験活動の充実

集団的な遊びは、体力を向上させることはもとより、集団における人間的な

関わりを通して、集団の一員としての責任感や協調性を身に付けるとともに、

自分の考えや思いを適切に表現し伝えたり、相手の言動を理解したりするコミ

ュニケーション能力の育成に欠かせないものである。また、新たな遊びの発見

やルールづくりなどを通じて創造性や協調性などを培うものでもある。こうし

た遊びの重要性を保護者、教師、地域の人々が再認識することが必要である。

特に学童期には、学校において、休み時間等を活用して外遊びを活性化する

方策を講ずるとともに、各地域においては、子どもが安全、安心に遊ぶことが

できる「遊びの拠点づくり」8を進めることが求められる。

また、自発的、能動的な体験活動は、子どもの自主性、心の回復力(レジリ

エンス)、チャレンジ精神、他者への思いやり等を養うことにつながるものであ

る。

したがって、自然体験、職場体験など子どもの体験活動を推進するに当たっ

ては、アンビシャス広場等の体験活動9から得られた成果を踏まえ、必要以上に

大人が事前に準備したり、活動内容を細かく指示することを避け、子どもにと

って受け身の「させられ体験」にならないようにすることが求められる10,11。

○多様で特色ある能力や個性を伸ばす

困難な課題を解決に導くためには、既存の発想にとらわれず、課題に対して

柔軟に向き合い、新しい解決方法を考えていくことが必要である。

このため、子どもたちが持つ多様で特色ある能力や個性を効果的に伸ばすこ

とができるよう、ICTやアクティブ・ラーニング等を活用した能動的な教育

や科学技術、スポーツ、芸術等における次代を担う人材を育成する取組み、起

業家的な精神と資質、能力を育む教育などの推進が求められる。

○キャリア教育の充実

地域において、社会人、職業人として生きていくためには、望ましい職業観、

勤労観や基礎的、汎用的な能力を身に付けるとともに、実践的で専門性の高い

8 【子ども社会を再生する取組み】(P45 参照)

9 【しんぐう・こが・ふくつ・むなかたアンビネット協議会】(P27 参照)

10 【夜須高原“遊・学キャンプ”】(P47 参照)

11 【子どもの体験活動の充実方策】

福岡県社会教育委員の会議では、子どもの体験活動を充実するための視点として「大人の関わ

り方の改善」等をあげ、その上にたって「いま、何に取り組まなければならないのか」をまとめ

た「社会教育委員の手引き~子どもの体験活動の充実方策について~」を作成。

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知識、技能を伸ばすことが必要である。

このため、小学校から大学に至るまで、各段階に応じて、企業と連携したイ

ンターンシップやジョブシャドウイング12などの職場体験の一層の充実が求め

られる。また、専門高校では、産学官が連携し、高度な技術、技能を持った若

者を育成するための取組みが期待される。

○課題解決型実践的育成プログラムの導入

社会にはばたく力は、多くの要素により構成されている。そして、その力は、

若者自身が実際に多様な価値観の人々と協働し、困難な場面にぶつかりながら

も自ら考え、主体性を発揮し、課題の解決に当たる過程を通じて育成されるも

のである。

このため、地域や海外の人々と協働し、地域コミュニティの活性化などの課

題解決に当たることによって、実践的に社会にはばたく力を身に付ける青年中

期及び青年後期向けプログラム13,14を開発、導入するとともに、こうしたプロ

グラムへの若者の参加を促進する仕組みづくりを行うことが求められる。

(3)「郷土と日本、そして世界を知る力」の育成

国際社会においては、子どもたちが郷土と日本の歴史、文化、伝統などに対す

る理解を深め、これらを大切に思う心を持つとともに、広い視野を持って異文化

を理解し、異なる習慣や文化を持った人々と共に生きていくための資質や能力を

身に付けることが必要である。

○郷土の魅力を学ぶ

地域で活躍する人材を育成するためには、子どもの頃から郷土への愛着や誇

りを育むことが大切である。そのためには、子どもたちが地域の行事や郷土の

歴史などを学び、体験し、学んだことを他者に紹介するような機会を積極的に

つくることが必要である15,16,17。

さらに、子どもの身近な地域には、農林水産業、工業、商業など多様な産業

がある。学校と企業等は、連携し、職場体験などを通じて、子どもたちが地域

12【ジョブシャドウイング】

子どもが、実際の事業所に訪れ、そこで働く従業員に「影」のように密着し、その

仕事内容や職場の様子を観察するキャリア教育の手法。 13【北九州市立大学学生による地域実践活動】(P29 参照)

14【福岡女子大学 スリランカ Exploring “Development”プログラム】(P31 参照)

15【稲童神楽塾(神楽の里づくり推進協議会)】(P49 参照)

16【田川飛翔塾】(P51 参照)

17【ちくご子どもキャンパス】(P53 参照)

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の産業に興味、関心を持つよう、積極的に仕組みづくりを進めることが求めら

れる。

○世界の多様性を理解する

グローバルな環境下においては、アジアに開かれた地域である本県の特色を

踏まえながら、郷土と日本の歴史(特に近現代史)、文化などを学び、自分の考

えを持った上で、多様な価値観、考え方等の違い(多様性)を理解する必要が

ある。

多様性を理解するためには、実体験を通した取組みが有効である。そのため、

年齢に応じて、地域においては、様々な国の子どもたちのホームステイの受入

れ18や地元大学留学生との交流を積極的に進めることが期待される。また、海

外の高校、大学への留学や国際大会への参加など世界の青少年と切磋琢磨して

いく取組みが求められる。

○外国語能力を身に付ける

経済や文化など様々な面で国際化が急速に進む中、異文化を理解し、異なる

習慣や文化を持った人々と協調していくためには、外国語能力、とりわけ実践

的な英語力を身に付けることが必要である。

このため、小・中・高等学校が発達段階に応じ、一貫した英語の授業を行う

とともに、学校内外でも英語を使って、実際にコミュニケーションを行う環境

づくりを進める必要がある。また、英語力を高めるための教員研修の充実、改

善が求められる。

さらに、日本で最もアジアに近い本県の地理的条件を踏まえ、近隣のアジア

諸国の言語など英語以外の外国語能力を身に付ける機会を広げていくことも重

要である。

(4)家庭、学校、地域、企業及び行政の連携協働

人材育成は、青少年自身の良さである「個性」や責任が伴う「自由」、さらに機

会の「平等」といった教育の基本理念を共有し、社会全体で取り組む必要がある。

学校は、人材育成の中心を担う機関であり、本県の子どもたちの学力、体力等の

状況を鑑みると、教員の指導力を中心としたさらなる教育力の向上が求められる。

一方、家庭や地域の教育力が低下しており、学校に対してしつけや基本的生活

習慣の習得など過剰な役割が求められることも多く、教員が授業に専念できない

状況を生み出す一因となっている。このため、学校だけが役割と責任を負うので

なく、これまで以上に家庭、学校、地域、企業及び行政がその責任を果たしなが

ら、それぞれが持つ教育資源を持ち寄り、連携協働していくことが重要である。

18【アジア太平洋こども会議・イン福岡】(P33 参照)

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○家庭に期待すること

青少年が健全な人格を形成し、「ふくおか未来人財」に求められる力を身に付

けていく上で、最も重要な役割を果たす場は家庭であり、しつけや基本的生活

習慣を習得させる家庭の育児力や教育力の向上が求められている。特に乳幼児

期においては、保護者による深い愛情と確かなしつけが大切である。

○学校に期待すること

学校には、子どもたちに必要な学力、体力、豊かな心をバランスよく確実に

身に付けさせることが求められている。このため、直接、子どもたちの指導に

当たる教員の指導力の向上に努めるなど学校の教育力をより一層向上させるこ

とが重要である。

さらに、学校には、保護者、地域住民の理解と協力を得ながら、家庭、地域

と一体となって子どもたちを育成していくことが求められる。そのためには、

まず、学校の教育理念、教育方針、教育活動等について、情報を広く発信する

ことが大切である。また、家庭や地域と連携協働した取組みをこれまで以上に

推進し、地域に開かれた、地域とともにある学校をつくっていくことが求めら

れる。

○地域に期待すること

地域は、「大人が変われば、子どもも変わる」「地域の子どもは、地域で育て

る」ということを再確認し、「ふくおか未来人財」を地域社会全体で育成してい

くという大きな夢と使命感をもって取り組むことが求められる。また、青少年

育成団体やNPOは、地域の人々と連携協働し、積極的にその役割を果たして

いくことが期待される。

○企業に期待すること

企業が持つ人材や技術等は地域の大切な教育資源である。企業には、それら

を活用し、できる限り「ふくおか未来人財」の育成に寄与することが求められ

る。また、男女を問わず、働きながら子育てや家庭生活を営み、地域活動やボ

ランティア活動等にも積極的に参加できるよう、精神的にも物理的にもゆとり

のある職場環境づくりを進めることが必要である。

○行政が取り組むべきこと

「ふくおか未来人財」を育成するための取組みについて、その必要性や意義

を広く県民に広報、啓発する。また、家庭、学校、地域、企業及び行政が連携

協働しながら実効ある取組みを推進するための条件整備等に取り組む。

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先進事例

グローバル人材や地域の担い手育成を目指す

県内各地域の先進事例をご紹介します。

それぞれの取組みには、青少年を温かく、時には厳しく

見守り指導する大人の姿があります。

「社会全体で、地域の未来を担う人を育てる」

そのためのヒントを発見していただければ幸いです。

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先進事例 ①

地域通貨を使った循環型社会を体験 しんぐう・こが・ふくつ・むなかた

アンビネット協議会

「しんぐう・こが・ふくつ・むなかたアンビネット協議会」は、新宮町、古賀市、福

津市、宗像市の6広場、7団体、2市町村で構成され、平成19年に発足しました。団

体同士の交流を深める場として、学習会、情報交換会、実践発表交流会を開催していま

す。また、体験活動として、子どもと遊べるレクリエーションや海・山での自然体験を

行っています。

特に、アンビネット協議会が毎年開催している「子どものまるごと体験フェスティバ

ル」と名付けられた仕事体験事業は、子どもたちが地域通貨を使って循環型社会を体験

する活動です。

このフェスティバルは、仮想の村であるアンビ村で行われます。アンビ村では、アン

ビ通貨(地域通貨)を使って、物やサービスのやり取りを行います。子どもたちはまず

ハローワークで仕事を探し、実際に仕事をすることで、給料としてこの村で使えるアン

ビ通貨を受け取ります。次に、子どもたちはアンビ通貨を使って、子どもたちが店員と

なっている店で買い物をしたり、ゴルフや輪投げなどで遊んだり、似顔絵を描いてもら

うなどサービスを受けたりします。通貨がなくなれば、またハローワークで仕事を探し、

▲ハローワークで仕事探し

▲お花屋さん ▲ゴルフを体験

▲ジューススタンド

▲輪投げ

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先進事例 ①

仕事をしてアンビ通貨を得ます。こうした地域通貨を使った循環型社会を体験すること

で、子どもたちは実際の社会の成り立ちを学ぶと同時に、様々な人とコミュニケーショ

ンを取り、豊かな体験活動ができるのです。

平成27年で8回目を迎えるアンビ村は、こうした子どもたちの学びを育むと同時に、

市町村を超えて多くの団体が参加することで、大人や学生スタッフが情報交換や相互交

流ができる場となっています。アンビネット協議会では、このフェスティバルを開催す

るために、年1回大人の体験学習会を開催しています。この会では、各団体がアンビ村

で子どもに体験させる仕事を持ち寄り、参加者で体験することで、どういった仕事内容

が子どもに適しているか検討します。体験活動や運営の情報交換が行われ、団体間を超

えて仲間ができ、ひいては団体の活性化につながります。

こうした体験活動を通じ、子どもたちが年齢の異なる人と交流することで、子どもに

とって地域は顔なじみの大人がたくさんいる居場所となります。子どもたちの自主的な

体験活動は、子どもが大人へと成長するうえで大切な「人と人とがつながる力」「社会を

作っていく力」を育てる最適な場所として機能しています。

▲商品を渡して、地域通貨を受け取る子ども。店員は

もちろん、商品を用意するのも子どもの仕事だ

▲平成24年のアンビ村では、イオンモール福津で

仕事体験をした

▲アンビ村には、多くの学生スタッフも参加する。学生の学ぶ場としても機能している

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先進事例 ②

学生たちのアイディアと情熱が、地域を元気に

北九州市立大学学生による地域実践活動

大正ロマン薫る街・門司港レトロ地区に隣

接する「栄町銀天街」。アーケードの一角で一

際目を引くのが、北九州市立大学の学生が運営

する「モノはうす」です。

ここは、高齢者の休憩スペースや授乳室も備える、商店街を訪れる人のためのコミュ

ニティスペース。「商店街にかつての賑わいを取り戻そう」と、学生たちが進める「門司

商店街活性化プロジェクト」の拠点でもあります。

ライブや、学生による中・高校生向け講座、郷土史家を招いての「門司港講座」、子ど

も向けイベント・・・。学生たちのアイディアが、たくさんの人々を呼び込みます。

そんな若者の柔軟な発想をまちづくりに活かすとともに、地域社会に貢献する人材を

育成しようと、北九州市立大学では平成21年に新しい学部「地域創生学群」を創設し

ました。その特徴は、学生が街の中に飛び込んでの現場実習。地域の人たちと日常を共

にしながら、そこから見えてくる課題の解決に取り組み、「シビックプライド」や「社会

で活躍できる力」を醸成します。

地域創生学群の就職決定率は100%。全国大手企業よりも地元大手・中堅企業志向

が強いのも大きな特徴です。

平成22年には、「地域創生学群」以外の学生にも地域貢献活動を広げようと、「地域

共生教育センター(通称421ラボ)」を設立。平成25年には、市内10の大学と地域

▲商店街の清掃活動を行う学生たち

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先進事例 ②

が連携し地域課題の解決に取り組む拠点「北九州まなびとESDステーション」を魚町

銀天街の中にオープンさせるなど、着実に取組みの輪を拡大しています。現在、北九州

市立大学では、農業を通じた農村部の活性化を目指す「猪倉農業関連プロジェクト」や、

放課後の学習支援ボランティアを行う「子どもの学び支援プロジェクト」など約60の

地域課題解決プロジェクトに、約1,000名の学生が参加し、活躍しています。

北九州市立大学のこうした取組みは、全国的にも高く評価され、日本経済新聞社の「大

学の地域貢献度ランキング」で、平成20年と平成23年の2度にわたって第1位を獲

得しました。

まちをキャンパスに、学生と地域が互いに深く関わりあい、共に学び教え合う。

そんな新しい「学び」のカタチが、地域に新しい風を吹き込んでいます。

▲小学校を訪問し子どもの勉強支援などを行う「子

どもの学び支援プロジェクト」

▲毎週末宿泊実習を行い、農産業やまちづくり活動などに参

加する「猪倉農業関連プロジェクト」

▼魚町銀天街の空きスペースに開設した「北九州まなびとESDステーション」。

学生と地域の人々がアイディアを出し合い、ともに学び合う

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31

先進事例 ③

自らの人生を切り拓く力を育む

福岡女子大学 スリランカ

Exploring "Development"プログラム

グローバル人材育成のため、さまざまな大学が

導入を進める海外体験プログラム。

欧米でのホームステイ等語学研修を中心とする

プログラムが多い中、異彩を放っているのが、福

岡女子大学が進める「スリランカ Exploring

"Development"プログラム」です。

その内容は、とにかくユニーク。多民族社会ス

リランカ各地を移動しながら、

①ムスリムコミュニティの小学校での学習補助

や、日本紹介イベントの企画運営

②紅茶プランテーションで働くタミル人コミュニティや、「森の民」先住民族ワニヤラ

アットゥ居住区を訪問し、スリランカの経済発展の影響や、彼らの抱える課題など

について対話

③シンハラ人コミュニティに入り、縫製工場や農村で村民とともに就労体験

④スリランカで働く20~30代日本人女性との意見交換

など、まさに異文化体験の連続です。

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先進事例 ③

渡航前の半期に渡る事前学習や、何不自由ない日本での暮らしと異なるスリランカで、

幾度も「壁」に突き当たる学生たち。しかし、そんな「できない自分自身」に正面から

向き合う中で、「一歩踏み出し、行動することの大切さ」を学び取り、たくましく成長し

ていきます。

帰国後には、「学んで終わりではなく、学んだことを還流させよう」と、報告会の開催

やSNSでの情報発信に加え、自分たちの周囲にある課題を解決するための行動にも挑

戦。例えば、学生寮のコミュニティ意識の希薄さを感じた学生は「ぶっちゃけトーク」

を企画、英語能力不足を痛感した学生は「English Day」(英語使用の日)の活性化に取

り組みました。

そんな学生たちの眼差しは、自分たちが普段生活している「地域」にも向かいます。

福津市の直売所「あんずの里」との連携による「八百屋女子大」や「香椎まちづくり」

など、彼女たちのアイディアと行動力が、地域に元気と活力を吹き込んでいます。

「行動することで、自分を変える」。福岡女子大学では、そんなたくましい未来の女性

リーダーが、着実に育ちつつあるようです。

(上)荷物をバックパックに詰め、スリランカに向かう学生たち

(左)住民たちとの共同作業を通じ、学生たちは「本当の豊か

さとは」「暮らしをより良く変えるための『開発』とは」と自問

し、学びを深めていく

(下)生産者の苦労や工夫、農産物の特色な

ども伝えながら、朝採りの野菜を販売

する「八百屋女子大」。ファンも多く、

開店1時間程度で売り切れることも

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先進事例 ④

“We are the BRIDGE”世界に広がる友情の絆

アジア太平洋こども会議・イン福岡

「子どもたちに、世界の多様な文化に触れるチャンスを与え、OMOIYARI(お

もいやり)の心を持った地球市民を育てたい」。

そんな思いで平成元年にスタートした「アジア太平洋こども会議」は、平成14年に

運営主体を福岡青年会議所からNPOアジア太平洋こども会議・イン福岡(現理事長 麻

生泰)へと移行。今では、企業・団体・県・市などたくさんの支援を巻き込み、福岡県

を代表する国際交流イベントとしてすっかり定着しました。

この「アジア太平洋こども会議」は、

①アジア太平洋各地域から7月に11歳の子ども達(「こども大使」)を福岡に招へい

し、ホームステイや学校訪問、交流キャンプなどを行う「招へい事業」、

②各国・地域の「こども大使」経験者の交流ネットワークを深め、社会奉仕や文化交

流、教育等さまざまな活動に取り組む「ブリッジ事業」、

③福岡の子どもたちを春と夏にアジア太平洋地域へ派遣し、異文化理解を深めてもら

う「派遣事業」、

④小学校4・5年生を対象に、日本や福岡の歴史・文化等を学び、国際社会に向かっ

て日本人として自分の言葉で語ることができる青少年の育成を目指す「育成事業」

の4つの事業で構成されています。

これまでに招へいした「こども大使」は実に約8,700人。アジア・太平洋地域に

送り出した福岡の子ども達も2,000人を超えています。

これほどの規模で長年にわたり開催されている青少年海外交流事業は全国でも例がな

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先進事例 ④

く、先進的な取組みとして注目されているところです。

そして、この活動は、着実に大きな実を結びつつあります。

「こども大使」経験者の中には、福岡を“第二の故郷”のように思い留学生として再

び訪れる人や、福岡で就職する人、母国で国会議員や政府職員になり日本との交流に係

る人も。

また、ベトナムの女優グエン・ラン・フォンさんのように、日本とベトナムの交流を

テーマとしたドラマに出演し、活躍している人も出ています。

福岡の子どもたちの中にも、ボランティアスタッフとして「アジア太平洋こども会議・

イン福岡」を支える人や、海外留学を志す人、就職して世界を舞台に活躍する人など、

たくさんの「地球市民」が育っているところです。

「アジア太平洋こども会議・イン福岡」のスローガンは、“We are the BRIDGE”。

その言葉のとおり、国境を越えて育まれた友情が、福岡と世界をつなぐ確かな“架け

橋”を築きつつあるようです。

▲県内の小学校を訪問する「スクールビジット」。小学校をあげて温かい

歓迎会も開催された

▲交流キャンプで友情を深める子ども達

▲アビスパ福岡の協力で実施された「ふれあ

いサッカー教室」

▲こども大使経験者(ピース大使)として福岡に再び訪れた子ども達

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参考資料

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37

参考事例 ①

自分たちで育てた作物を売ってスキーに行こう

鍛えよう! ほめよう!

学校の教育力向上プロジェクト

「自分たちで育てた作物を売ってスキーに行こう!」

柳川市立有明小学校では、4、5年生を対象に、困難な状況にも果敢にチャレンジし

ようとする心や「学ぶ意欲」の向上をめざし、自分たちで育てた作物を売って、その売

り上げでスキー体験を行うという取組みをPTAや地域のボランティアの支援を受けな

がら行っています。

この取組みは、育てた米や野菜の販売だけではなく、子どもたちが特産物等を地域企

業と直接交渉して仕入れ、朝市で販売するといった困難体験を設定しています。その困

難を必要最小限度の支援を受けつつ、子どもたち自身の力で克服していくように挑ませ

ます。そして、困難を克服した時に得られる本物の達成感を味わわせていくものです。

このようなやり方で学ぶ意欲等を喚起させるプロジェクトが「鍛えよう!ほめよう!学

校の教育力向上プロジェクト」なのです。

教師はじっくり待つことを大切にし、極力子どもたちに任せることで、チャレンジ精

神や学ぶ意欲等の高まりを期待しています。

実際、この取組みは、次のように進みました。

① 地域の方の支援を受けながら、自分たちが育てた作物を販売する活動

② 作物栽培・販売がうまくいかなかった際、子どもたちが発案し試行錯誤する活動

(以下、ア、イは平成25年度の例)。

ア 地域企業等と交渉し、作物等を販売するための手続きや交渉を行い、お菓子類、

海苔等を仕入れて朝市で販売する「有ジャガ・マーケット」や「有小キッズマ

ーケット」

イ 保護者や地域の方に、これまでの経緯や状況についてユーモアを交え、売れ残

大分県九重町でスキー体験を行う児童と教師たち

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参考事例 ①

った商品をアピールし販売する「有明小オープンスクール」

③ これまでの経験を通し、「為せば成る」ことや「困難にチャレンジし続ける意味、

価値」を実感するスキー体験教室

実際には、天候不良等のため、自分たちで育てた作物の出来はいま一つでした。作物

販売もうまくいかなかったため、これからどうするのかについて話し合いを重ねました。

結果、別の商品を仕入れ、朝市で「キッズマーケット」を開いて売ることで、売上げを

伸ばそうとしました。ところが、地域企業との電話交渉で失敗し、実社会の厳しさを体

験しました。しかし、そのことを反省材料として再び交渉し、商品の仕入れに成功する

こととなります。「キッズマーケット」の商品の販売では、商品のよさをいかに伝えるか、

買う人の気持ちになった商品の見せ方、陳列の仕方、価格の変更等について話し合いを

重ねました。このように、何度もの失敗と試行錯誤を重ねた結果、ついにスキー体験の

ための目標金額に到達することができ、スキー体験を行うことができたのです。

教師たちは、子どもの学びの限界を決めずに、リスクに向き合わせる姿勢を持つこと

を心掛けました。困難を乗り越えた子どもたちに、教師や保護者から称賛の声を届ける

こと、実際にスキー体験活動を実施することで本物の達成感を味わわせ、さらなる意欲

を喚起させることができました。

この取組みは、着実な成果を上げています。子どもの「自尊感情」「規範意識」「学ぶ

意欲」を測定する「福岡がめざす子ども」尺度調査から見た子どもの変容についてです

が、4年生の取組み前の調査では、特に女子の「規範意識」と「学ぶ意欲」が全県レベ

ルを下回っていました。しかし、取組み後の調査では、どの項目も全県平均を大幅に上

回ることとなったのです。

また、4、5年生の担任からは、取組みの途中から教科等の学習活動に臨む姿勢に変

化が生じたとの報告もなされています。例えば、各教科等の学習活動において自ら率先

して発言したり、グループ活動において自分たちで役割分担をしたりするようになった

こと、課題を解決する場面で多様な解決手段を用いて協働しながら、粘り強く解決する

姿が見られるようになったことなどです。これらの点からも、この取組みを通しての「学

ぶ意欲」の高まりは、本物であると言えそうです。

▲地域企業と電話交渉する児童たち

▲漁協の方との交渉に臨む児童たち

▲「有明小オープンスクール」で地域

の方に危機的な状況をアピール ▲朝市での「有明キッズマーケット」。商品の値段等を決め、

販売する児童たち

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参考事例 ②

【学校運営協議会のメンバー構成】

学校:校長、教頭、主幹教諭、教務担当

行政:公民館係長、学識経験者

家庭:PTA会長、PTA副会長、PTAの OB・OG会員

地域:校区コミュニティ会長、各協育委員会委員長

山田小 学校運営協議会

(連 動)

山田小 協育委員会

学び 心 体 安心

・学力向上 ・規範意識育成 ・体力向上 ・安全教育

・知識獲得 ・豊かな心育成 ・食育推進 ・環境充実

【各協育委員会の構成】(どの委員会も同様)

委員長:地域の方1名、委員会をコーディネートする

地域:PTA以外の地域の方2名

家庭:PTAから3名

学校:各委員会の内容に関係する校務分掌代表者3名

(連 動)

山田小 校務分掌

学び 心 体 安心

・授業改善 ・道徳教育 ・健康教育 ・生徒指導

・情報教育 ・人権学習 ・体育教育 ・安全教育

・研修等 ・児童会等 ・食育等 ・環境教育等

▲学校運営協議会、協育委員会、校務分掌の関係

地域の子どもは地域で育てる! 学校・家庭・地域の連携・協力

学校運営協議会制度を生かした取組み

学校運営協議会制度(コミュニティ・ス

クール)は、公立学校の運営に地域の声を

生かすために、保護者や地域住民などで構

成される「学校運営協議会」を学校ごとに

設け、その意見を学校運営に反映させる制

度です。

ここでは、「学校運営協議会」と「学校を

支援する地域組織(協育委員会)」と「学校

の校務分掌組織」の3つが連携・協力し、

子どもたちの教育を地域ぐるみで行うまで

に発展している岡垣町立山田小学校の事例

を紹介します。

山田小学校の校区では、「地域の子どもは

地域で育てる」を基本方針とし、学校運営

協議会、学校支援組織である協育委員会、

そして学校の組織である校務分掌と、三者

が一体化した組織の下で取組みを行ってい

ます。

協育委員会は、「学び、心、体、安心」の

4つの課題別委員会で構成され、学校の校

務分掌もそれにあわせています。

▲読書ボランティアによるブラックシアター(地域住民による教育支援活動)

▲学校運営協議会、協育委員会、校務分掌の関係

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参考事例 ②

○学びの協育委員会の取組み

学びの協育委員会は、学力向上や知識獲得を支援

する委員会です。

校務分掌の学びの教育推進部と連動し、授業で子

どもたちと「本物に出会わせる取組み」を中心に行

っています。また、地域の無償ボランティアによる、

習字・音楽指導、読み聞かせ、スポーツテストの補

助等の学習支援も行っています。

○心の協育委員会の取組み

心の協育委員会は、豊かな心の育成や規範意識の

向上を支援する委員会です。

校務分掌の心の教育推進部と連動し、地域住民が

見かけた山田っ子のすばらしい行動を、学校や校区

のストア等に設置したポストに投函してもらう「見

つけたよ こんな山田っ子」の取組みを中心に行っ

ています。また、「あいさつ運動」、「靴並べ活動」等

も行っています。

○体の協育委員会の取組み

体の協育委員会は、健康・体力の向上や食育を支

援する委員会です。

校務分掌の体の教育推進部と連動し、「地区にお

けるラジオ体操の奨励」や「歩いて登下校」、「弁当

の日」等の取組みを行っています。特に、ラジオ体

操の取組みについては、地区によっては、年間を通

して実施するまでになっています。

○安心の協育委員会の取組み

安心の協育委員会は、安全教育や安全な環境の充

実を支援する委員会です。

校務分掌の安心の教育推進部と連動し、「安心の

協育だより」や「登下校等の見守り活動」、「校区防

災マップ」「不審者対応避難訓練」等の取組みを行

っています。安心の協育だよりには、地域の危険箇

所等が記され、学校や地域の情報を共有することに

役立っています。

3つの組織の連動によって、教職員と協育委員会の委員、学校支援ボランティアの方々

との共通理解が図られ、充実した学校教育活動の計画・実施につながり、その結果、子

どもたちの学ぶ意欲が高まり、学力も上昇してきています。

▲コミュニティ・ティーチャーによる習字指導

▲学校・家庭・地域で取り組む「靴並べ活動」

▲健康のために奨励している「ラジオ体操」

▲危険箇所等を知らせる「校区防災マップ」

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参考事例 ③

ICTを活用したわかりやすい授業の実現と主体的学びを通して

「ICTを活用した効果的な指導方法

の在り方」の研究

1 はじめに

輝翔館中等教育学校では、ICTを活用したわかりやすい授業や生徒に情報活用能力

を身に付けさせるための授業モデルの確立及び、全ての教員がICTを活用した指導力

を身に付けるための教員研修モデルを確立するために、平成26年度より3年間の「福

岡県ICT活用教育研究事業」の指定を受け、様々な取組みを行っています。

全ての普通教室に電子黒板を設置し、いつでも活用できる環境を整えており、生徒の

興味・関心を高め、意欲的に学習に取組む授業をしています。また、タブレット型パソ

コンを導入し、個別学習や協働学習による主体的な学びの研究を始めました。

導入期はICT機器の安定稼働が課題でした。無線LAN環境でのタブレット接続を

安定させるため、電波の強度を測定し、アクセスポイントを増設することで、校内全て

の場所からアクセスが可能になりました。セキュリティ面では、無線化による不安を解

消するため、安心して利用できる技術を導入しました。また、ICT機器の準備時間短

縮を図るため、大型のタブレット収納ボックスや電子黒板用簡易スクリーンを導入し、

ICTを円滑に利用する環境を整備しました。

2 授業モデルの確立について

電子黒板やタブレットなどICTを活用したことで、教員も生徒も授業の質が向上し

たと感じています。

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参考事例 ③

<授業例>前期課程(中学生)国語

質問事項をタブレットに送信し、生徒そ

れぞれに自分の考えをまとめさせて、電子

データで提出させます。回答は電子黒板を

使って紹介し、意見を共有する時間を設け

ました。他者の意見を知り、考えを広げる

ことができました。

<授業例>後期課程(高校生)英語

電子黒板にフラッシュカードを表示さ

せて全員で単語練習を行っています。また

タブレットで英語スピーチを録画し、班内

で動画を見せ話し合わせました。自分たち

で改善点を見つけ出し、練習を繰り返すこ

とで課題を解決し英語スピーチについて

自信をつけることができました。 ※フラッシュカード・・・英単語や文字などを短時間、連続的

に見せて、反応速度を向上させる練習に用いるカード。

授業担当者はICT活用プランシート

という授業計画書を作成し、ICT活用の

目的を明確にした授業を実施しています。

作成したシートは教員間で共有し、効果的

な授業モデルとして活用します。

教室で行う授業では特に電子黒板の活

用頻度が高く、教員にも生徒にも「電子黒

板は説明で写真や動画が使われるので、学

習のポイントがわかりやすく効果が上が

る」と好評です。

今後も、授業での効果的な活用方法の研

究を進めて行きます。

3 職員研修モデルの確立について

教員のICT指導力の向上のため、計画

的に研修を実施しています。例えば、教科

別研修では作成したICT活用プランシ

ートの検討会や、相互授業参観の実施など、

教科の特性に応じた具体的なICT活用

方法と授業改善を目的に研修し教科指導

力の向上を図っています。

またICT支援員と連携して、ICT機器やソフトウェアの操作・活用方法の支援、

ICT活用の事例紹介、メンテナンスやトラブル発生時の対応マニュアルを作成し、職

員研修資料として活用しています。

▲国語の授業で自分の考えをタブレットに入力

▲電子黒板でみんなの意見や考えを共有

▲フラッシュカードを使った英単語の発音練習

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参考事例 ④

福岡市保育士会の実践

乳幼児のコミュニケーション力を育む取組み

子どもが受け身ではなく、能動的・主体的に学び、理由を示しながら自分の考えを述

べることができるためには、コミュニケーション力が不可欠です。福岡市保育士会の主

任保育士研究委員会では、乳幼児期から、ステップを踏んでコミュニケーション力をし

っかり育む取組みを進めています。

研究委員会が、平成26年7月に実施した調査では、大人による子どもの言語の「先

取り」に関して興味深い結果が出ています。

保育士の子どもへの対応について、「子どもがちゃんと言えない場合、『Aちゃんは、

~って言いたいのよね』などと代わりに言ってあげることがありますか」という質問に

対して、「よくある」「時々ある」を合わせて87%の保育士が「ある」と答えていてい

ます。(5歳児担当クラス)

また、保護者の子どもへの対応について、「子どもが『ママ、水』と言っただけで対応

してやることがあるか」という質問に対して、5歳児の保護者で「よくある」「時々ある」

を合わせると、44%が「ある」と答えています。

研究委員会では、発達段階に応じてコミュニケーション力を高める意義、コミュニケ

ーション力が低い現状やその理由を理解するとともに「乳幼児のコミュニケーション力」

を育むための実践方法について、市内各保育園、保育士に対して研修、周知等を行って

います。

研修等を通して、子どもたちが自分の体験、考え、気持ちなどを話す機会を設定する

ことや子どもの呼びかけや質問に対して、積極的に応答するなど、子どもの「話す力」、

「聞く力」につながる取組みの大切さを説明しています。

また、「保育士が心がけていくこと」の実践方法について提案するとともに、調査結果

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よくある 時々ある あまりない 全くない なんとも言えない

5歳児

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よくある 時々ある あまりない 全くない なんとも言えない

5歳児

4歳児

【保育士へのアンケート】

あなたは、子どもが伝えたいことを言葉でちゃと言えな

い場合、「Aちゃんは、~っていいたいのよね」などと代

わりに言ってあげることがありますか

【保護者へのアンケート】

あなたは子どもが「ママお水ちょうだい!」と言うような表

現ではなく、「ママ、お水」と言っただけで対応してやるこ

とがありますか

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参考事例 ④

も踏まえながら、保護者への啓発を図ってい

ます。

まだ実践途中の取組みではありますが、「園

児や保護者にも少しずつ変化が見られる。」と

実践している保育士たちも手ごたえを感じて

いるようです。

子どもたちがこれからの時代をたくましく、

自信をもって生きていくうえで、コミュニケ

ーション力の育成は重要な課題であります。

こうした取組みにより、コミュニケーショ

ン力を身に付けた「未来を担う子どもたち」

が巣立っていくことが期待されます。

〇話す力につながること ① 積極的に子どもたちに話しかけましょう ② 子どもたちが話しかけてきた時には、子どもたちの方を向き、しっかりと耳を傾け

て聞きましょう。共感したり、応答(繰り返し・承認など)したりしていきましょう。

③ 子どもたちが自分の体験、考え、気持ちなどを話す機会を積極的に設定しましょう。 ④ 問いかけに対して、「YES・NO」質問だけでなく、「なぜだろうか?」「どうし

てだと思う?」など理由や考えを問う質問や、「~はどうだった?」「どんなふうだった?」というような状況・様子・光景などを訊ねる質問を多くしましょう。

⑤ あまり「型」にこだわらず、必要に応じてどのように説明したらいいのか、話したらいいのか教えてあげましょう。

⑥ 会話の時の表情・ジェスチャー、発音、表現形式、使用語彙、話の内容など、子どもたちの伸びや良いところを積極的に誉めましょう。

〇聞く力につながること ① 子どもたちに何か説明する時は、長々話さず要点をわかりやすく話しましょう。 ② 「話を聞いてもらえた」という喜びの体験を子どもたちにたくさん経験させてくだ

さい。 ③ 子どもたちに何か伝えた時に、言いっぱなしにするのではなく「先生は、今何と言

ったかな?」や「どう思った?」などと、積極的に確認の質問をし、子ども達から言葉を引き出してください。

④ 子どもたちに話しかける時、声の大きさを考えてみてください。大きな声で話すのでなく、耳を澄まして聞く大きさが、聞く姿勢につながります。

⑤ きちんとした姿勢で話を聞くようにさせましょう。 ⑥ 姿勢が良かったり話の内容を理解して行動したりすることができた時には、しっか

り褒めましょう。

▲「コミュニケーションの大切さ」をキャッチフ

レーズも交え、ポスターで周知

を説明。

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参考事例 ⑤

国分アンビシャス広場の挑戦

子ども社会を再生する取組み

「国分アンビシャス広場」は、「和ごま」を使い、昔にはあった子ども社会の再生をし

ている広場です。大きい子から小さい子までが一緒に遊ぶ「遊び」として、「和ごま」を

使用しています。広場は毎週土曜日に行っていますが、時間より早めに集まってきて自

主的にコマで遊んでいます。広場がない日でも、子どもたちは自然に集まり、コマを回

して遊んでいるほど活気があります。

この広場の特徴は2点あります。①苦労すればするほど上達する「和ごま」の導入、

②リーダー的存在の子どもによる子ども社会の再生です。

「和ごま」は苦労しないと回らないものなので、導入した当初は子どもたちには不人

気でした。しかし、工夫して努力すれば、体力の差に関係なく回せるようになります。

そこで、コマを回せるようになったという達成感によって、少しずつコマを好きな子が

増えていき、ついには幼稚園児から小学校高学年の子どもがコマで遊ぶようになりまし

た。

友達がコマを回せるようになった。自分も回したい。そうした「競争心」が子どもた

ちをコマへと駆り立てます。そして、コマが回ったら報告したい、何分回せたと伝えた

い。その場所の一番強いものの承認を得たいという気持ちが生じます。子ども社会で必

要なことは、リーダー的存在の子どもがいることです。この承認を子ども同士でさせる

ために、国分アンビシャス広場では、「和ごまちびっこ指導員」の認定試験を行っていま

す。難しい試験に合格した子どもだけが「ちびっこ指導員」になれ、リーダーとなる指

導員が団体戦のメンバーを決めたり、各地域にコマの指導に行ったりします。コマの指

導員は子どもにとって魅力的なものなのです。

この「ちびっこ指導員」を導入する前は、広場ではリーダー的存在をつくるために、

子どもたちを集めた講座を行っていました。外国人による講座、工作教室、自然観察教

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参考事例 ⑤

室、お化け屋敷など子どもたちが楽しめる講座を開いていましたが、子ども社会の再生

にはつながりませんでした。これは、大人が提供しているものをただ子どもが受け身の

状態で遊んでいるだけだったからです。そこで、講座のほとんどをやめて子どもの受け

身状態を解消し、「ちびっこ指導員」を導入し、コマが回せない子どもはこの指導員から

回し方を教わるようにしました。子どもたちはコマが回せるようになると、子ども社会

に自然と入れるようになるのです。また、コマの認知度を上げ、子ども社会にコマを普

及させるために、福岡県和ごま競技普及協会が設立されました。毎年、太宰府天満宮で

和ごま競技大会が開催されています。こうして、試行錯誤を繰り返しながら、国分アン

ビシャス広場は子ども社会の再生に挑戦していきました。

子ども社会は、大人が何もしなくても子どもたちが自主的に集まり、自分の考えで遊

び、いろいろな問題も自分で解決する自立心を育む場です。努力しないと上手になれな

い、友達に勝てない「和ごま」と自立心を育む子ども社会は人間として必要な基礎力を

身に付けるのに役立っています。大人は場を設けるだけで何もしなくてよいのです。子

どもたちがその中で勝手に学習します。国分アンビシャス広場は、こうして子ども社会

の再生をした事例です。

▲子どもたちは自主的にアンビシャス広場に集まってくる ▲夢中になって競い合う子どもたち

▲コマが上手に回せるようになった子ども ▲工夫しながら自分のコマの調整をする子どもたち

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参考事例 ⑥

遊びの中から学ぶ姿勢を養う

夜須高原“遊・学キャンプ”

朝倉郡筑前町にある国立夜須高原青少年自然の家は、福岡県の中央に位置し、都市部

からアクセスしやすい場所にあります。四季を通じて様々な動物や植物、昆虫とふれあ

うことができ、フィールド活動を通して手軽に自然を楽しむことができます。

こうした豊かな自然環境に恵まれた夜須高原青少年自然の家が、平成13年から17

年にかけて実施した「夜須高原“遊学キャンプ”」は、「遊びの中から学ぶ姿勢を養って

ほしい」という思いから生まれた事業です。

この事業は、①遊びを中心としたグループ別体験活動の中で、「生きる力」(自ら課題

を見つけ、自ら考え、自ら問題を解決していく資質や能力)を育てる、②異年齢集団に

おける長期キャンプを通して、自然への感性、社会性を高めることを目的とし、小中学

校での「総合的な学習の時間」のモデル事業として始まりました。

キャンプは小学校5年生から中学校3年生までの48名を対象として、プレ、メイン、

ポストの年間3回シリーズで行われます。プレキャンプは1泊2日で夏休み前に実施し

ます。この2日間で参加する子ども同士やスタッフとの関係をつくり、野外活動に必要

な技術(刃物の使い方等)を学ぶことを目的としています。メインキャンプは夏休み中

に7泊8日で実施します。4グループに分かれ、グループ別体験活動をメインプログラ

ムとして、「生きる力」を育みます。ポストキャンプは秋に2泊3日で実施します。これ

までに学んだことを表現、発表することにより、参加した子どもたちに自信を持たせる

ことを目的としています。

キャンプを進行するにあたっては、何よりも「自分たちのやることは自分たちで決定

▲手作り流しそうめん。竹は自分たちで山から切り出した

▲スギ林の中で遊び場をつくった ▲自分たちで計画したプログラムをみんなの前で発表!

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参考事例 ⑥

したい!」という子どもの気持ちを尊重し、子どもたちが主体的に活動していくプロセ

ス〔(Ⅰ)自然に興味・関心をもつ → (Ⅱ)課題を見つける → (Ⅲ)課題を解決

する → (Ⅳ)発信する → (Ⅴ)ふり返る〕を重視します。

平成17年度のメインキャンプでは「森の遊び」「森の科学」「森の生活」「森の冒険」

の4つのグループに分かれて活動しました。

【1日目~2日目】

まずは、施設周辺のフィールド調査を行い、自然の中でどのような活動ができるかを

各グループで話し合い、テーマや活動プログラムを計画し、みんなの前で発表します。

【3日目~6日目】

グループごとにテーマに沿って活動します。例えば、「森の遊び」グループでは、「全

員が寝泊まりできるような秘密基地を作ろう」というテーマで活動しました。子どもた

ちには、できる限り自然にある物を材料とし、スタッフの手を借りずに自分たちの手で

秘密基地を作りたいという思いがあります。そこで子どもたちが材料として選んだのが

「竹」です。竹を選んだ理由は、「容易に加工ができる」「フィールドの中に豊富に生え

ている」「伐採しても1年で元に戻るので森に影響がない」という3点です。直径15c

m以上の孟宗竹を切り出し、ナタで加工しながら基地づくりに取り組みます。また、竹

はブランコ、流しソーメンの台、食器の材料としても利用します。

【7日目~8日目】

各グループのテーマに沿った活動をお互いに体験し、最終日はグループごとの活動を

発表します。

子どもたちはふり返り日記に、『私は自分から行動することや、自分からみんなに声を

かける積極性が出てきたところが成長したと思います。』『前はできないと決めつけてや

っていなかったことがありました。でも、あきらめなければできることに気づきました。』

などと記載していました。このキャンプを通して子どもたちに「生きる力」が育まれた

ようです。また、このキャンプでの経験はこれからの長い人生できっと役に立つことで

しょう。

▲竹をひもで編んで基地を作っている

▲発表会の様子

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参考事例 ⑦

地域の伝統と文化を、子ども達に伝えたい

稲童神楽塾(神楽の里づくり推進協議会)

「神楽の里」として名高い京築地域。祭りの季節ともな

れば、それぞれの里の神社に幟旗が掲げられ、笛や太鼓の

音が響き渡ります。

時代の流れとともに途絶えてしまう神楽も多い中、ここ

では30を超える個性的な神楽が、地域の人々の手によっ

て大切に守られてきました。

「稲童神楽塾」(行橋市)も、地域の伝統を次代に伝え

ようとする取組みの一つ。地域の子ども達が、毎週土曜日

に地元の公民館に集まり、大人たちから神楽の指導を受け

ています。

「みんなの息が合って、舞がきれいにそろう瞬間が好

き」と話すのは、神楽を始めて3年目という上野和音さ

ん(行橋市立仲津中学3年)。「大人になっても神楽を続

けたい。しっかり神楽を覚えて、将来は外国の人にも神

楽の魅力を伝えられたら」と目を輝かせます。

実は、後継者不足から一時期、中断せざるを得なかっ

たこともあった稲童神楽。でも、神楽の素晴らしさを知

る地域の人々が、「伝統の灯を消すわけにはいかない」と

始めたのがこの「稲童神楽塾」でした。

稲童絵神楽保存会会長の広門正勝さん(73歳)は、 真剣な表情の上野和音さん(左端)

「稲童神楽塾」のみなさん(後列右から3人目が広門正勝会長)

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参考事例 ⑦

「子ども達の覚えの速さには、いつも驚かされます」と目を細め、「子どもには、それぞ

れ個性がある。その子なりの持ち味を見出し、良いところを伸ばすよう心がけています」

と温かく見守ります。

神楽の魅力を次の世代に繋げようとする機運は、着実に高まりつつあります。県と京

築7市町で構成する「神楽の里づくり推進協議会」では、担い手対策にも力を入れてお

り、今では17団体の子ども神楽に約200人の子ども達が参加し、地域のイベントや

お祭りで活躍しています。

神楽を通じて郷土愛を育む京築地域。人々の温かいまなざしと情熱が、地域の未来を

担う子ども達をやさしく育んでいます。

(上)息の合った見事な舞を見せる子ども達

(右)繰り返し行う練習が本番での自信につながる

(左)動きを教える広門さん。指導に熱が入る

(下)迫力あふれる「鬼」の舞。神楽の「花形」だ

▲安浦神社で奉納される夜神楽

春と秋に神楽が奉納される稲童神社▼

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参考事例 ⑧

未来へはばたけ!未来の地域リーダー達

田川飛翔塾

「郷土に愛着と誇りを持つ、地域リーダーを育てたい」。

そんな思いで、「田川広域連携プロジェクト推進会議」(県

と田川地域の1市6町1村で構成)が平成24年に開始し

たのが、「田川飛翔塾」です。

塾生は、田川地域の中学2年生。企業経営者や大学の先

生など、各界著名人の実体験を交えた「講義」をはじめ、

地域の活性化について子どもたち自らが考える「グループ

ワーク」、地域の産業などを学ぶ「社会見学」などからなる、

合宿型のサマースクールです。

ユニークなのは、そのカリキュラム。地域ゆかりの企業

経営者から、トップならではのエピソード

を交えながら、その経営哲学やリーダーシ

ップについて学ぶ「ビジネス経済学」や、

郷土の自然・歴史・風土などの魅力を深く

掘り下げる「地域社会学」など、地域性豊

かな講座がならびます。

小川知事も毎年、この田川飛翔塾の講師

として参加。今年は、「将来を担う皆さんへ」

と題し、失敗を恐れずに挑戦し続けること

の大切さについて、塾生たちに熱く訴えま

した。

▲意見を出し合いながら考えをまとめていく「グループワーク」

塾生を激励する小川知事

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参考事例 ⑧

「いろんな方のお話を聴いて、新しいことに挑戦する勇気を学びました」と話すのは、

藤本あゆみさん(赤中学2年生)。「私も大人になったら、田川の魅力を積極的に発信し、

人がたくさん集まるような田川をつくりたい」と目を輝かせます。

学生ボランティアの中島美砂さん(福岡県立大学3年)は、「最初は意見も出なかった

子が、最後には議論を楽しむまでになっていく。そんな子ども達の変化にびっくりして

います」と、塾生たちを温かく見守っていました。

4泊5日と短期間ながら、たくさんの「気づき」と「友だち」を得て、たくましく成

長していく子ども達。

地域の人たちの思いを受け、未来のリーダーたちが着実に育っているようです。

(上)筑豊ラーメンを食べる塾生たち。おいしさに話もはずむ

(左)「グループワーク」の結果をわかりやすくプレゼン

(下)「まずは自分が行動を起こすことを実践したい」と力強く

宣言する卒塾生代表の樅山幸音さん

(上)運動を通じて塾生間の距離も縮まる

(右)地元味噌蔵の指導で、味噌作りにも挑戦

(下)真剣な表情の子ども達

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参考事例 ⑨

▲のうぎょう学部の長期プログラム「学ぼう、田んぼの1年間とお芋ほり」

田植えから稲刈り、稲わらを使ったしめ縄づくりまで体験できる1年間

の長期プログラム

自然豊かな筑後全体を「子どもの大学」に

ちくご子どもキャンパス

わが国有数の干潟を持つ「有明海」、九州一の大河「筑後川」、屏風のような山並みが

美しい「耳納連山」・・・。

そんな豊かな自然に恵まれた「筑後」全体を、「子どもの大学」に見立てようというユ

ニークな取組みが、「ちくご子どもキャンパス」です。

この事業は、平成17年に県と筑後地域12市町でつくる筑後田園都市推進評議会が

開始。今年で11年目を迎え、今までに延べ8,000人の子ども達が参加しています。

「かんきょう」「のうぎょ

う」「げいじゅつ」「よのなか」

「ものづくり」の5つの学部

があり、自然学習や農業体験、

演劇体験、科学教室、仕事体

験など、学校や家庭ではなか

なか経験できない、多様なプ

ログラムを用意しています。

「筑後の魅力を再発見で

きた」「一緒に活動をする中

で、たくさんの友だちができ

た」「学ぶことの楽しさを知

った」と評判を呼び、今では

筑後地域にとどまらず、福岡

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参考事例 ⑨

都市圏からもたくさんの子ども達が参加しています。

こうした活動を支えているのが、地域のNPO団体や地域づくり団体、地元の大学・

企業、地域住民の皆さん。地域の未来を担う子ども達の育成を、地域全体でサポートし

ています。

平成26年には、人づくりと地域活性化を目指す先進的な活動が評価され、一般社団

法人日本経営協会が主催する「第6回協働まちづくり表彰」において、最優秀賞のグラ

ンプリを受賞しました。

地域ぐるみで子ども達を育む筑後地域。子ども達の笑顔や笑い声が、地域にたくさん

の元気を吹き込んでいます。

▲よのなか学部「こどもお薬教室」 薬剤師さんになりきって処方

箋をもとにお菓子を使ったお薬を作る。使用する道具はすべて本

▼かんきょう学部「こ~ら川こども探検隊」

筑後川の支流の高良川を探検して、自然の豊かさや水の大切さを学ぶ。自然

観察した後は、自分の作品(図鑑やマップ等)にまとめて発表

▼のうぎょう学部「挑戦!おおにしそば

打ち体験!」

そば打ちを通じて食べ物に対する季

節感や感謝の気持ちをはぐくむ

▲ものづくり学部「藍染め体験で自分のハン

カチを作ろう」 自分でちぎった藍草の葉を

タタキ染めして、オリジナルハンカチを作る

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「これからの人材の新しい育成策」策定のための有識者会議

○ 設置要綱

(設置目的)

第1条 グローバル化など今後の社会情勢の変化も見据えた、新しい人材育成策を

策定するにあたり、専門的観点や幅広い見地から検討を行うため、「これからの人

材の新しい育成策」策定のための有識者会議(以下「有識者会議」という。)を設

置する。

(組織)

第2条 有識者会議は、別表に掲げる者をもって構成する。

2 有識者会議に委員長を置く。委員長は委員の互選により定める。

(任期)

第3条 委員の任期は平成28年3月31日までとする。

(会議)

第4条 委員長は、有識者会議を招集し、会議の議長となる。

2 委員長は、必要に応じて委員以外の者に出席を求め、意見を聴くことができる。

(事務局)

第5条 有識者会議の事務局は、新社会推進部青少年課、総務部私学学事振興局私学

振興課、教育庁教育企画部企画調整課で構成する。

(庶務)

第6条 有識者会議の庶務は、新社会推進部青少年課内において行う。

(補則)

第7条 この要綱で定めるもののほか、有識者会議の運営に必要な事項は、委員長が

別に定める。

附 則

この要綱は、平成27年7月13日から施行する。

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○委員名簿

氏 名 所属団体・役職名

遠矢とおや

隆 一 郎りゅういちろう

青年の会 会長(青年の翼OB・OG会)

中 島なかしま

幸男さちお

全国町村教育長会会長

芦屋町教育委員会教育長

橋 内はしうち

京 子きょうこ

つやざきアンビシャス広場委員長

青少年アンビシャス運動地域推進員

半田はんだ

眞ま

弓ゆみ

福岡県青少年育成県民会議 家庭部会長

松 岡まつおか

嘉 彦よしひこ

福岡県経営者協会 専務理事

松 田ま つ だ

美 幸み ゆ き

福岡県男女共同参画センターあすばる館長

眞ま

鍋なべ

和 博かずひろ

北九州市立大学地域創生学群長

地域共生教育センター長

本 松もとまつ

政せい

一 郎いちろう

福岡県PTA連合会 会長

〇横 山

よこやま

正 幸まさゆき

福岡県教育大学名誉教授

和栗わぐり

百もも

恵え

福岡女子大学国際文理学部准教授

〇委員長 (敬称略 50音順)

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ふくおか未来人財育成ビジョン 策定/平成 27 年 10 月

編集/福岡県

新社会推進部青少年課

総務部私学学事振興局私学振興課

教育庁教育企画部企画調整課

福岡県