桜田メッセージ - questory.co.jp · 2010. 12. 6. · Title: 桜田メッセージ Created...

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30 代の若年層に絞って新しい価値を提案 「顧客価値」の4回目です。「顧客価値」とは、“企業や店が提 供する商品やサービスなどに対して顧客が認め、支持する価値の こと ”です。前回は「驚き」について述べました。期待をはるかに超 えた「驚き」は、幸せな気持ちにしてくれる“ハッピーサプライズ”で す。そして、その「驚き」を生み出すキーワードは、“思いがけない○ ○○”です。 さて 4 回目のテーマは「目指すべき顧客」。独自性を顧客が支持 する価値に変換する時に、見逃してはならない視点が「目指すべき 顧客」です。こんな笑えないような話があります。あるご夫婦のところ に一本の電話がかかってきました。相手は保険会社、どうやら子供 の学資保険の売り込みです。しかし、このご夫婦にはお子さんがい なかったのです。 この例はかなり極端なすれ違いですが、A というグループは支 持しても、B というグループは反応を示さない価値があります。相手 を間違えると、せっかくの素晴らしい独自性が顧客価値に変換出 来ないのです。あなたの努力はむなしく空回りをし、場合によっては 反感を買うことさえあります。先のご夫婦のお気持ちを考えるとおわ かりになると思います。 第 2 回マーケティング大賞は“ 角ハイボール ” 日本マーケティング協会は5月に“ 第 2 回マーケティング大賞 ”を 発表しました。 “ 日本マーケティング大賞 ”は、厳しい経済環境の中で も、新しいマーケティングやコミュニケーションの手法、もしくはビジネス モデルの開発を積極的に促すことで、消費者の生活の向上と経済・ 社会の活性化に役立つ活動を奨励することを目的に設立されました。 今回大賞を受賞したのは、サントリー酒販株式会社の“ 角ハイボー ル ”。ハイボールと聞いて、懐かしいと感じるのはおそらく40 代以降の 方が大半だと思います。ハイボールは、昭和 30 年代に庶民の間で爆 発的人気を誇ったトリスバーの主力商品で、トリスウイスキーのハイ ボールは「トリハイ」 「Tハイ」とも呼ばれ親しまれました。 日本マーケティング協会は、“ 角ハイボール ”の受賞理由を次のよ うに述べています。“成熟市場において新しい価値を提案することで 市場の再活性化に成功。飲み方の提案から料理店とのタイアップま でトータルなマーケティング活動の秀抜さに加え、ウイスキー全体の売 上伸長に貢献し、マーケティングの可能性を示した好例として高い評 価を受けた。” TVCM 等でご覧になった方も多いと思いますが、強く記憶に残っ たのはタレントの小雪さんを起用したプロモーション活動です。プロ モーションの対象者を 30 代の若年層に絞り、クロスメディアを活用しま した。これにより、ハイボール=古臭い、飲みにくい、飲む場がないといっ た課題を一気に解決し、ウイスキー復活の起爆剤となったのです。 サントリーは“ 角ハイボール”を売り出すために、徹底的に30 代 を中心とした若年層のお酒の飲み方を調査したと言います。そこか ら浮かび上がってきたのは、“ アルコール度数の低いものを飲みた い、仲間とワイワイやりながら飲みたい、安くお酒を飲みたい、自分で ひと手間かけて自分好みで飲みたい、カロリーを抑えて飲みたい ” などの意見でした。 若年層にとって、ハイボールは未知の飲料であり、名称は知ってい ても作り方を知らない人が多かったのです。しかも、ウイスキーを炭酸 で割るという飲み方自体が斬新に感じられたのです。これらを踏まえ て、“角ハイボール”の新しい飲み方、飲む場所を、具体的に提案し たことが成功につながりました。 QUESTORY’S MESSAGE 顧客価値は「目指すべき顧客」です 対象者のシフトか独自性の再発見、再創造 これまでの年配者の飲み物というハイボールの価値を、若年層 を主力対象者とし、“ 角ハイボール ”はおしゃれでカッコイイ飲み 物という価値に変えたことが成功の要因です。結果として、サント リーだけでなく、ウイスキー全体が、アルコール離れや景気低迷の 逆風の中でも大きく売り上げを伸ばしました。いまでもその人気は 続いています。 あなたの独自性を支持してくれるのは誰ですか?その対象者は どんな価値を求めているのですか?あなたにはいままで店や商品、 サービスを支えてくれた大事な顧客がいます。多くの店や企業がこ の顧客に合わせた顧客価値を作り出そうとします。これは極めて自 然なことですが、現状の顧客ではあなたの独自性が活かされない ということもあります。 もし、あなたの目指すべき顧客があなたの独自性を支持しないと するならば、支持してくれる対象者にシフトするか、あるいは支持し てくれる独自性を新たに発見、創造することです。どちらの道を行く にしろ、独自性が顧客に受け入れられなければ、それは自己満足し かありません。ブランドとして花開くことは難しいと言えます。 顧客価値は対象者によって変わります ブランディング 4 つの法則:第 2 の法則「顧客価値」 QUESTORY’S MESSAGE vol.09

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Page 1: 桜田メッセージ - questory.co.jp · 2010. 12. 6. · Title: 桜田メッセージ Created Date: 12/6/2010 2:19:02 PM

30 代の若年層に絞って新しい価値を提案

 「顧客価値」の4回目です。「顧客価値」とは、“企業や店が提供する商品やサービスなどに対して顧客が認め、支持する価値のこと”です。前回は「驚き」について述べました。期待をはるかに超えた「驚き」は、幸せな気持ちにしてくれる“ハッピーサプライズ”です。そして、その「驚き」を生み出すキーワードは、“思いがけない○○○”です。 さて4回目のテーマは「目指すべき顧客」。独自性を顧客が支持する価値に変換する時に、見逃してはならない視点が「目指すべき顧客」です。こんな笑えないような話があります。あるご夫婦のところに一本の電話がかかってきました。相手は保険会社、どうやら子供の学資保険の売り込みです。しかし、このご夫婦にはお子さんがいなかったのです。 この例はかなり極端なすれ違いですが、A というグループは支持しても、Bというグループは反応を示さない価値があります。相手を間違えると、せっかくの素晴らしい独自性が顧客価値に変換出来ないのです。あなたの努力はむなしく空回りをし、場合によっては反感を買うことさえあります。先のご夫婦のお気持ちを考えるとおわかりになると思います。

第2回マーケティング大賞は“角ハイボール”

 日本マーケティング協会は5月に“第 2回マーケティング大賞”を発表しました。“日本マーケティング大賞”は、厳しい経済環境の中でも、新しいマーケティングやコミュニケーションの手法、もしくはビジネスモデルの開発を積極的に促すことで、消費者の生活の向上と経済・社会の活性化に役立つ活動を奨励することを目的に設立されました。 今回大賞を受賞したのは、サントリー酒販株式会社の“角ハイボール”。ハイボールと聞いて、懐かしいと感じるのはおそらく40代以降の方が大半だと思います。ハイボールは、昭和 30年代に庶民の間で爆発的人気を誇ったトリスバーの主力商品で、トリスウイスキーのハイボールは「トリハイ」「Tハイ」とも呼ばれ親しまれました。 日本マーケティング協会は、“角ハイボール”の受賞理由を次のように述べています。“ 成熟市場において新しい価値を提案することで市場の再活性化に成功。飲み方の提案から料理店とのタイアップまでトータルなマーケティング活動の秀抜さに加え、ウイスキー全体の売上伸長に貢献し、マーケティングの可能性を示した好例として高い評価を受けた。”

 TVCM 等でご覧になった方も多いと思いますが、強く記憶に残ったのはタレントの小雪さんを起用したプロモーション活動です。プロモーションの対象者を30代の若年層に絞り、クロスメディアを活用しました。これにより、ハイボール=古臭い、飲みにくい、飲む場がないといった課題を一気に解決し、ウイスキー復活の起爆剤となったのです。 サントリーは“角ハイボール”を売り出すために、徹底的に30 代を中心とした若年層のお酒の飲み方を調査したと言います。そこから浮かび上がってきたのは、“ アルコール度数の低いものを飲みたい、仲間とワイワイやりながら飲みたい、安くお酒を飲みたい、自分でひと手間かけて自分好みで飲みたい、カロリーを抑えて飲みたい ”などの意見でした。 若年層にとって、ハイボールは未知の飲料であり、名称は知っていても作り方を知らない人が多かったのです。しかも、ウイスキーを炭酸で割るという飲み方自体が斬新に感じられたのです。これらを踏まえて、“角ハイボール”の新しい飲み方、飲む場所を、具体的に提案したことが成功につながりました。

QUESTORY’S MESSAGE

顧客価値は「目指すべき顧客」です

対象者のシフトか独自性の再発見、再創造

 これまでの年配者の飲み物というハイボールの価値を、若年層を主力対象者とし、“ 角ハイボール ”はおしゃれでカッコイイ飲み物という価値に変えたことが成功の要因です。結果として、サントリーだけでなく、ウイスキー全体が、アルコール離れや景気低迷の逆風の中でも大きく売り上げを伸ばしました。いまでもその人気は続いています。 あなたの独自性を支持してくれるのは誰ですか?その対象者はどんな価値を求めているのですか?あなたにはいままで店や商品、サービスを支えてくれた大事な顧客がいます。多くの店や企業がこの顧客に合わせた顧客価値を作り出そうとします。これは極めて自然なことですが、現状の顧客ではあなたの独自性が活かされないということもあります。 もし、あなたの目指すべき顧客があなたの独自性を支持しないとするならば、支持してくれる対象者にシフトするか、あるいは支持してくれる独自性を新たに発見、創造することです。どちらの道を行くにしろ、独自性が顧客に受け入れられなければ、それは自己満足しかありません。ブランドとして花開くことは難しいと言えます。

顧客価値は対象者によって変わります

ブランディング4つの法則:第2の法則「顧客価値」

QUESTORY’S MESSAGE vol.09