NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特...

7
NORMA 特集 SPECIAL REPORT ……2 東日本大震災 被災地社協の取り組み 連載 社協運営におけるコンプライアンス(法令遵守)とリスクマネジメント(事故予防) ……10 社協運営におけるリスクマネジメントの実践(2) 連載 わたしたちからのメッセージ ~住み慣れた地域で暮らし続けるために~ ……7 全国老人給食協力会 「地域は一つの家族」福祉のある優しい我がまちづくりをめざして インフォメーション ……7 介護保険事業の適正な実施に向けて 発信 いきいきわかて ……12 高崎市社会福祉協議会(群馬県) 群馬地域福祉ヒューマンネットワーク! 社協情報 ノーマ NO.251 平成 2 年 10 月 2 日第 3 種郵便物認可 平成 23 年 11 月 1 日発行(毎月 1 日)No.251 社協活動最前線 ……8 箕面市社会福祉協議会(大阪府) 「自立」の概念を整理して共通言語化 障害のある人の自立をみんなで考える参考書 『いきいき生活ブック~自立生活のチェックポイント~』

Transcript of NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特...

Page 1: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

NORMA

特集 SPECIAL REPORT ……2

東日本大震災 被災地社協の取り組み

連載 社協運営におけるコンプライアンス(法令遵守)とリスクマネジメント(事故予防) ……10

社協運営におけるリスクマネジメントの実践(2)

連載 わたしたちからのメッセージ ~住み慣れた地域で暮らし続けるために~ ……7

全国老人給食協力会「地域は一つの家族」福祉のある優しい我がまちづくりをめざして

インフォメーション ……7

介護保険事業の適正な実施に向けて

発信 いきいきわかて ……12

高崎市社会福祉協議会(群馬県)群馬地域福祉ヒューマンネットワーク!

社協情報ノーマ NO.251

平成2年10月 2日第3種郵便物認可 平成23年 11月 1日発行(毎月1日)No.251

社協活動最前線 ……8

箕面市社会福祉協議会(大阪府)「自立」の概念を整理して共通言語化障害のある人の自立をみんなで考える参考書『いきいき生活ブック~自立生活のチェックポイント~』

Page 2: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

23 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251

東日本大震災 被災地社協の取り組み

~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告~

*1災害ボランティア活動支援プロジェクト会議:企業、NPO、社会福祉協議会、共同募金会等により構成されるネットワーク組織として、2005年に中央共同募金会に設置。災害支援に関わる調査・研究、人材育成や啓発活動を行い、災害時には多様な機関・組織、関係者などが協働・協力して被災者支援にあたっている。

 

本年3月11日に発災した東日本大震災

では、死者・行方不明者は約2万人、建

物全壊・半壊被害は2万4000戸を超

え、未曽有の規模の被害をもたらした。

社協においても、役職員にも死者・行方

不明者があり、あるいは事務所や事業所

の流出など、甚大な被害を受けた市町村

社協も多くあった。こうしたなか、被災

地社協では、災害ボランティセンターの

設置など被災者支援に取り組み、また岩

手・宮城・福島の各県社協では、社協に

おける被災者支援の取り組みや社協事業

復興の支援に取り組んできた。

 

本号では、付録冊子とあわせ、東日本

大震災における被災地社協の取り組みを

特集する。

①全国の社協で支えた被災地の

 ボランティア活動の取り組み

 

被災地の各県社協と市町村社協では、

発災直後より、災害ボランティアセン

ターの設置・運営をすすめ、避難所など

の被災者に対する支援活動(炊き出し、

住居の泥かきなど環境の整備、避難物資

の対応など)に取り組んだ。

 

特に、今回の震災では、被災地社協に

設置された災害ボランティアセンターの

状況が広く報道されるなど、被災地のボ

ランティア活動に対する社協の役割に対

する大きな期待を受けることとなった。

しかし、被災地社協そのものの人的・物

的被害も大きく、インフラの復旧もなか

なか整わないなかで、ボランティアを広

く呼びかける全国的な助けあい活動とし

ての体制をいかに整備するかということ

が当初の課題の一つであった。

 

このため今回の災害では、はじめて全

国規模でブロックを単位に社協職員派遣

の調整を行い被災地の災害ボランティア

の運営支援を行うこととなった。岩手県

には関東ブロックBと東海・北陸ブロッ

クが、宮城県・仙台市には近畿ブロック

と中・四国ブロックが、福島県には関東

ブロックAと九州ブロックが担当し、ブ

ロック幹事社協の調整のもと、社協職員

を派遣する体制を組まれ、8月末の終了

時までに全国すべての都道府県・指定都

市から延3万685人の社協職員が被災

地に派遣された。

 

こうした取り組みにより、被災3県に

おいては、最大時80か所の災害ボラン

ティアセンターが設置され、9月4日ま

でに約72万3000人のボランティアが

全国より被災地に訪れ、被災者や地域の

支援活動に取り組み、大きな成果をあげ

ることとなった。

②被災者への生活支援・地域再生の

 取り組みへ

 

現在、被災者の多くは、生活復旧に向

けての仮設住宅(借上や公営住宅などを

含む)等への入居が進み、仮設住宅にお

ける通院など外出支援、買い物支援をは

じめ、相談・情報提供などの個々のニー

ズに基づいた個別的な支援が求められ、

さらに孤立防止などを含めた新しいコ

壊滅的な災害から、

自立した生活再建に

向けての取り組み

岩手県社会福祉協議会

発災から3か月(6月11日)

までの経過概要

 

平成23年3月11日(金)午後2時46

分頃に発生した三陸沖を震源とする東

北地方太平洋沖地震により、岩手県沿

岸部を中心に地震と大津波による壊滅

的な被害を受け、多くの死者や行方不

明者が発生した。

 

岩手県社協では地震発生直後、県災

害ボランティアセンターを設置し、各

市町村社協の被害状況の調査を開始し

た。その結果、沿岸部の被害が甚大で

あることが判明したが、なかでも陸前

高田市、大槌町、野田村の各社協では

社協事務所が津波で流失し、書類、機

材等を失ったほか、陸前高田市と大槌

町では会長をはじめ幹部職員が死亡ま

たは行方不明となっていることを確認

した。

 

このような厳しい状況の中であった

が、6月11日までに沿岸部を中心に県

内22の市町村社協に災害ボランティア

センターを設置し、被災住民への支援

活動を展開してきた。

 

被災地の市町村社協では災害ボラン

ティアセンターへの対応のほか、生活

福祉資金緊急小口資金の特例貸付業務

も重なり、県社協職員だけでは十分な

支援が困難なことから、内陸部市町村

社協および北海道、青森県、秋田県の

社協からの応援と全社協を通じて関東

ブロックBおよび東海北陸ブロック社

協職員等の応援を受けた。

 

その後、県内のライフラインや交通

が徐々に回復し、復旧作業も進み、被

災後3か月の時点で県内外から延べ

10万人を超えるボランティアが参集し、

被災地復興のため種々の支援活動に従

事していただいた。

発災3か月以降現在(9月11日)

までの経過概要

 

ゴールデンウィーク後のボランティ

ア参加の減少が心配されていたが、当

県においてはボランティア参加者数の

落ち込みは少なく、平日でも1000

人、土・日曜日は2000人強の参加

が続いている。9月11日までの6か月

間では、延べ24万3103人の方にボ

ランティアに参加いただいた。

 

ボランティアのための宿泊施設が県

内各地に確保(受け入れ可能人数

5214人)されるとともに、被災地

のホテル等も営業を再開していること

もあって、ボランティア活動の便宜も

図られてきている。

 

6月28日から生活福祉資金の生活復

興支援資金の相談業務を開始し、7月

下旬から貸付けを開始しているが、今

までのところ、毎日申請があがってく

るような状況にはない。

 

県社協としては、特に被害の大きかっ

ミュニティづくりが重要になり、被災者

支援の取り組みは、新しいステージへ

入っている。

 

このため、本誌8月号で紹介したよう

に、被災者の個別ニーズを受け止め、支

援につなげる担い手として被災地社協で

は生活支援相談員等の配置を進めており、

500名以上の方が配置される見込みで

ある。さらに、仮設住宅の被災高齢者等

に対する介護事業などと一体になった支

援活動を行う高齢者等へのサポート拠点

を受託する社協も少なくない。また、災

害ボランティアセンターを復興支援ボラ

ンティアセンターなどに看板をかえ、買

い物や移動支援などの個別的な生活支援

やサロン活動などの仲間づくり・コミュ

ニティづくりへの取り組みにシフトして

いる。

 

被災地社協の状況は、一様ではないが、

生活支援相談員の活動や復興支援ボラン

ティアセンターの取り組みの核としなが

ら、被災者支援やコミュニティづくりの

取り組みをすすめるとともに、自社協の

事業所拠点の再建や社協組織運営の再興

を図っている。

③県社協における被災地社協支援

 こうした動きのなかで、岩手県・宮城

県・福島県の各県社協では、ブロック派

遣等による県外社協職員、災害ボラン

ティア活動支援プロジェクト会議(*

1)の支援や地元の各種団体・NPO団

体、県行政等との連携や調整のなかで、

被災地社協の復興やボランティアセン

ターの支援、生活福祉資金業務などへの

対応をすすめてきた。そして、現段階で

は、生活支援相談員の活動を支援するた

めの研修会の開催や情報提供活動などを

あわせて取り組み、被災地社協における

被災者支援の取り組みを支援している。

 

特に、津波被害において大きな人的・

物的被害を受けた社協や原発事故により

自治体ごとに避難をしている社協は、依

然として社協組織そのものが非常に厳し

い状況にあり、法人運営に対する支援に

ついても継続的に取り組むことが課題に

なっている。

 

なお、県外からの社協職員の派遣は、

8月末にブロック派遣は終了したが、そ

の後も被災地社協の要請を受け、個別調

整による派遣を行い、3県合わせて20か

所の被災地社協に延1358人の社協職

員が派遣されている。(9月末現在)

 

本特集では、被災地の岩手県社協、宮

城県社協、福島県社協から3月11日の災

害時以降の取り組みをレポートしていた

だいた。また、本誌付録「東日本大震災

被災地社協の取り組み―被災市町村社協

の現状と今後―」として被災地の3県社

協のご協力により、被災市町村社協の現

状や今後の取り組み課題などについてま

とめていただいた。被災者の支援は、長

期的な取り組みであり、今後とも社協

ネットワークを活かした支援に取り組む

ことが必要である。

た7市町村社協について、災害ボラン

ティアセンターの運営支援と併せて法

人組織そのものの再建が重要な支援課

題であることを明確にし、県社協内に

4つのワーキンググループを形成し、

継続して支援する体制を確立した。

ワーキンググループは、全社協および

災害ボランティア活動支援プロジェク

ト会議の助言を得て、定期的に進捗を

確認しつつ復興支援を継続している。

 

震災直後から被災地支援活動を展開

してきた自衛隊も7月26日をもって撤

収となり、被災地では自立した生活再

建への取り組みが始まっている。

 

これまでのボランティア活動は浸水

家屋の泥上げや片付けなどを中心に行わ

れてきたが、応急仮設住宅が8月11日ま

でに全戸完成して入居が進んでおり(8

月をもって、1世帯を除き避難所を退

所)、見守り活動等のきめ細かな支援活

動の必要性が大きくなってきている。

 

こうした中、復興に至る次のステージ

として、応急仮設住宅入居後の被災者へ

のきめ細かな支援活動を確保するため、

県社協において17人、被災地の社協にお

いても185人の生活支援相談員を配置

するため、採用に係る事務を取り進めて

いるところである。現時点で62%採用の

見通しが立っているが、10月中には

100%配置を目指している。

 

被災地の災害ボランティアセンター

支援に係るブロック社協職員の派遣は

8月末を区切りとし、8月末までに総

勢延べ1万2095人の支援を受けた。

9月からは必要な社協への個別対応と

なっていることから、これまで以上に

県内内陸部社協の支援を強化するとと

もに、県社協も生活支援相談員の配置

による人的体制の強化を背景に、主戦

級職員の長期派遣など支援の強化を

図っている。

 

市町村社協においてはボランティア・

ニーズの変化に合わせて、災害ボラン

ティアセンターの名称を変更する動き

(「復興支援ボランティアセンター」な

どへ)がある一方、家屋の泥出し作業

等が残っている市町村社協においては、

名称変更せず必要なボランティア活動

を継続中である。県社協としては、県

内に災害ボランティアセンターとして

の活動が継続されている間は、名称変

更せず必要な支援を行っていきたいと

考えている。

 

被災された方々への支援は、生活に

一定の見通しがつくまで、相当長期的

に継続していく必要があることから、

今後ともニーズの変化に対応し、可能

な範囲で他県、他団体の支援をいただ

きながら、県社協、各被災地社協とも

ども、引続きしっかりとした被災者支

援に取り組んでいきたいと考えている。

今後の見通しについて

 

震災後6か月が経過し、被災地も一定

の落ち着きが見られるようになっており、

ボランティアの受け入れ、社協運営にも

見通しが立ちつつあるが、ここに至るま

でには県内外からの応援職員の力が大き

かったものと感謝しているところである。

Page 3: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

45 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251

 

これまでに多くの方々のご支援により、

復興への歩みを進めているところであるが、

沿岸部社協の被災状況には差があり、自力

での復興の見通しが立ってきた社協がある

一方、人的被害の大きさ等からいましばら

くは支援を必要としている社協もある。

 

また、生活支援相談員の採用によりマン

パワー強化が図られつつあるものの、新規

採用職員の育成支援の観点で引き続き応援

を必要としているところも見られる。

 

現在、県内内陸部社協の支援体制の強

化や生活支援相談員の配置等を踏まえ、

全社協の協力もいただきながら、個別の

被災地社協が必要とする支援の要請を

行っているところであるが、今後とも、

長期的な視点に立ち可能な範囲において

ご支援、ご協力をお願いできればと考え

ている。

復旧から復興へ、

マネジメント機能を働かせ、

社協としての役割を担う

宮城県社会福祉協議会

 

宮城県は平均三十年に一度の間隔で

「宮城県沖地震」が起こっており、す

でに非常に高い確率で地震が発生する

ことが予想されていたため、通信網の

整備や災害ボランティセンターの運営

に向けた準備など様々な取り組みを進

めてきた。しかしながら、今回の東日

本大震災は我々の予想を遥かに超える

被害と、その後の復旧にも想定外の出

来事が数多く発生し、これまでの事例

や対応のあり方に対して多くの課題を

投げかけられたといえる。

発災から現在までの主な取り組み

 

発生直後、ライフラインの寸断によ

り情報入手が難しいなか、ラジオや携

帯電話のテレビから得られる情報によ

り、被害が広域かつ甚大であることが

想像できた。発災2日目から、まずは

被害の大きいであろう沿岸部の状況把

握とともに市町村社協職員の安否確認

に走ったが、沿岸部だけでも被害の

あった地域は14市町あり、地震被害の

大きかった内陸部まで含めると、県内

の状況を確認するまでに一週間を要し

ている。ライフラインが途絶するなか、

情報収集手段は自ら出向くことしかな

く、広域災害における県社協としての

情報収集のあり方の難しさを痛感した。

 

災害ボランティアによる被災者支援

の必要性も明らかであったことから、市

町村社協では災害ボランティアセンター

の立ち上げ準備が早々に議論されていっ

た。県社協としては沿岸部を中心に職員

内で情報を共有しながらそれぞれの力を

発揮してもらうことを目指し、現在は

「宮城県災害・被災地社協等復興支援ボ

ランティアセンター」と名称を改め、長

期的な視点に立ち運営を継続している。

 

また、7月からは、県社協で採用し

た「被災地社協復興支援員」を被災地

社協へ配置し、ダイレクトな情報把握

と情報提供、他機関とのつなぎ、人的

補完を目指しながら、県内被災地区を

4地域に分割しこれらの支援員をフォ

ローする役割としてブロック担当者を

配置して、支援を展開している。

今後の取り組みの方向性と課題

 

被災地では仮設住宅の建設、入居も

進み復旧から復興へステージが移ろう

としているなか、これまでの被災地の

事例からもわかるとおり、今後被災地

では被災者一人ひとりの抱える生活課

題に対する支援と、それらを地域で解

決していく支援の仕組みづくりが求めら

れる。汚泥処理や家屋の清掃のような

誰からでもわかる目に見えやすいニーズ

から、被災者が生活上抱える課題や、

個人が持つ不安に対する課題に変わっ

ていくなかで、より個別のかかわりが

求められる。各被災地社協では生活支

援相談員を配置し、日常的に被災者の

生活課題や声を把握する役割を目指し

て既に活動も始まっている。今後は、

この生活支援相談員を中心に被災され

た方々の変化や課題をタイムリーに察

知し、社協が目指す地域の支え合い活

動で解決に向けられるかが重要となる。

 

一方で、今回の災害は近年では例の

ない広域災害であり、仮設住宅の戸数

だけを見ても2万戸を超え、仮設住宅

団地数は400か所にのぼっている。

市町で雇用する生活支援相談員も含め

県内には450名を超える方々を配置

するが、被災地社協が配置する生活支

援相談員だけでは、これだけの数の被

災世帯を支援することは不可能といえ

る。既にこれまで支援に携わってきた

NPOやNGO等も被災者支援を継続

して行っていただいているが、仮設住

宅地帯には様々な支援者が入り乱れ、

地域によってはサロンなどのイベント

や訪問活動の重複が発生している。

の担当制を敷き、できる限り被災地の

現場で市町社協の傍らについて、ダイ

レクトな情報収集と提供、必要に応じ

た助言を行っていった。また、ガソリ

ン不足による流通の停滞、壊滅的被害

によっての物品購入ができない状態が

続いたため、県社協が物品や資機材を

確保し被災地社協へ提供をしてきた。

その後、各方面から寄せられた寄付金

を活用し、被災状況に合わせて市町村

社協の運営資金提供も行っている。

 

物品、資材の確保とともに災害ボラン

ティアセンターに必要な人材の確保も必

要となり、発災当初から、全国、海外か

らも支援の申し出が入る中それらの情報

を集約し、全社協や県内社協、災害ボラ

ンティア活動支援プロジェクト会議(以

下「支援P」という)などのご協力をい

ただきながら、被災地支援活動経験のあ

る支援者を被災地社協への派遣調整を進

めてきた。長期にわたり、近畿・中国・

四国ブロック社協(延べ1万300人)

や北海道・東北ブロック社協(延べ

440人)、県内内陸部社協(延べ

2112人)の継続的な人的支援、支援

Pによる運営支援者の派遣(延べ181

人)をいただいたことは、災害ボラン

ティアセンター運営におけるスタッフ確

保の課題に対し、大きく成果を示せたと

感じている。人的支援に限らず、物資、

情報の面でも効果があったといえるが、

特出すべきは、日頃より信頼関係を構築

している全国の社協や支援Pの支援は、

社協として目的を共有する仲間が支えて

くれることで、被災地社協にとって精神

的に大きな支えになったといえるのでは

ないだろうか。

 

被災地には個人ボランティアや団体が

直接被災地の災害ボランティアセンター

へ駆けつけ、特に5月のGW中には大勢

のボランティアにより受け入れやマッチ

ングに混乱も生じていた。これらの状況

から、過去の被災地で効果を発揮してい

るボランティアバスの募集を県災害ボラ

ンティアセンターとして行い、申し込み

と被災地とをマッチングする役割を担っ

た。ボランティアをする側がバスを用意

し人員を整え、指定された地域へ向かう

までをパッケージングすることから「ボ

ランティアバスパック」と称し、8月末

までで延べ2万2205人、777台の

バスを被災地の災害ボランティアセン

ターへマッチングしたことになった。そ

の結果、県内の災害ボランティアセン

ターには8月末現在で、延べ

37万7788人のボランティアの皆さん

が復旧・復興のための応援・支援に入り、

避難所の支援、仮設住宅への引越し、瓦

礫の撤去、泥出し等の活動を行っている。

 

これらの取り組みを後方から支援す

るため、県社協と宮城県、目的を同じ

くする各種組織と協働で「宮城県災害

ボランティアセンター」を3月下旬よ

り運営開始した。従来の地元広域活動

組織だけでなく、NPOやNGO、企業、

学生支援組織など県外の団体にも加

わっていただき、各団体が持つネット

ワークや組織性を活かして、センター

 

社協だけの被災者支援には限界があ

るなかで、いかにNPOやNGO、地

域包括支援センター等の行政機関、地

元ボランティア組織等と連携し、被災

者支援の全体像が描けるかが課題では

ないだろうか。具体的に情報を共有す

る場の設定を行い、課題を共有しそれ

に対しそれぞれの力を活かして対応で

きるか、さらには対応するにあたって

大切にしたい事項は何かを共有してい

くことが求められると思われる。これ

らの役割を行政とともに社協が復興支

援コーディネーターとして担いながら、

3年後、5年後に地域活動に展開して

いく姿を描かなくてはならない。いわ

ば、調整、マネジメント的機能を働か

せなくては、たくさんの生活課題を抱

えた方々への支援は実現できないと思

われる。

 

戦後、ひとつの災害でこれだけ多く

の方々が命を落としてしまった事実は

ない。大切な命や思い出をなくしてし

まい、計り知れない痛手を負ってし

まった方々に人と人との関わりを通し

てどう支援していけるのか……。私た

ちはこれ以上、命を失わないために、

痛手を負った方々が自ら将来を切り開

いていけるように、社協としての役割

をしっかりと担っていきたい。

地震、津波、原発、未曾有の

大災害における福島県社協

としての取り組み

福島県社会福祉協議会

 

平成23年3月11日(金)午後2時46

分頃に発生した『東日本大震災』によ

り、福島県は地震や津波によって壊滅

的な被害を受けただけではなく、原子

力災害やそれに伴う風評被害も重なり、

今なお、多くの県民が住み慣れた地域

を離れ、平常とは異なる環境での避難

生活を余儀なくされている。この未曾

有の大災害における福島県社協として

の取り組みを振り返ってみたい。

発災直後…

 

電話がつながりにくい、ガソリン・

水・食料の入手が難しい状況のなかで、

福島県社協では、直ちに県社協災害ボ

ランティアセンターを立ち上げ、各市

町村社協の被害状況、職員の安否確認

などを行い、翌日には被害の大きいと

思われる市町村を中心に現地調査を実

施した。その結果、速やかに県内の関

係団体で構成する「福島県災害ボラン

ティア連絡協議会」を開催し、同協議

会が作成した災害ボランティア受入指

針に基づき、3月14日に福島県災害ボ

ランティアセンター(以下、「県VC」

という。)を立ち上げた。

 

この間、東京電力福島第一原子力発

電所事故に伴い、「原子力緊急事態宣

言」「原子力災害対策特別措置法の規

定に基づく住民への避難指示」が発令

され、浜通り(太平洋沿岸の地域を総

称)を中心とした地域住民に避難指示

や屋内退避指示が出され、着の身着の

まま、多くの住民が避難することと

Page 4: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

67 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251

全国老人給食協力会事務局長

平野 覚治

連載 第6 回

 高齢化が進み、高齢者の一人暮らし世帯や高齢夫婦世帯が

増加しています。地域社会から孤立していく中で、「老老介護」や

「孤独死」等の深刻な問題が生じています。住み慣れた地域で

暮らしていくためには、介護保険サービスの充実とともに、

それらを補完する地域福祉サービスとの連携が必要です。

住民参加型食事サービス活動は、1980年代以降、「地域での

豊かな老後を主体的に実現しよう」と、多くの食事サービス

活動団体が生まれ、草の根で広がりました。その後1992年

「在宅高齢者等日常生活支援事業」のメニューの一つとして国

の施策に制度化され、在宅高齢者の生活を支える公的施策とし

て位置づけられました。個を単位とする単身家庭が多くなって

いる現在、住民が担う食事サービス活動(会食・配食)は、地

域の文化を継承するとともに、人と人を出会わせ、地域福祉活

動を担う人々を育むコミュニティ活動とも位置づけられます。

 全国老人給食協力会と2001年に友好協定を締結した南

オーストラリア州ミールズ・オン・ホイールズ協会(以下、

MOW(SA)協会)は、1953年に設立されて以来、市民が

主体的に配食サービスを実施し、南オーストラリア州の

約150人に1人が食事サービスボランティアであり、1日

5000食を100か所の拠点より提供し在宅福祉を担っています。

 このMOW(SA)協会の活動を支える主軸は65歳から75歳

の高齢ボランティアであり、彼らは、 日々の食事の用意がで

きない人を助ける活動としてだけではなく、 社会参加の場、

人間関係が広がる場、 そして何より自らが住むコミュニティ

に貢献する場として、男女の分け隔てなく活動しています。

またオーストラリアでは、活動資金や土地の提供など公的支

援の環境が整備されています。日本において活動の主軸は元

気高齢者となり、支援を必要とする方を地域で支える有望な

担い手として各地で活躍しています。

 社会福祉協議会においては、こうした住民参加aによる地

域福祉活動を推進するためにボランティアやNPO、また公

益法人などと連携しながら、フォーマル・サービスとイン

フォーマル・サービスがシームレスに行われる制度の構築と、

行政と連携しながら公的施設の活用による市民活動拠点の整

備の課題や経済的なサポートまで、今後の地域福祉を推進す

る中間支援団体としての役割が大きく期待されます。

「地域は一つの家族」福祉のある優しい我がまちづくりをめざして

「わたしたちからのメッセージ」〜住み慣れた地域で暮らし続けるために〜

介護保険事業の適正な実施に向けて 先般、ある社協が運営する福祉用具貸与事業所において、長年にわたり福祉用具の貸し出しを他業者に委託し、貸し出し業務の実態がないにもかかわらず、介護報酬を不正に請求していたとして、介護報酬の返還や貸与事業の 6 か月業務停止(事業者指定の効力の停止)などの処分を受けました。 近年の介護保険制度においては、適正な事業運営が強く求められています。特に、平成 21 年の法律改正では、例えば、指定取消になった場合には、連座制により、その法人と同一グループであり、密接な関係にある法人が運営する介護保険事業の指定や更新が拒否されることになるなど、不正受給等に対して非常に厳しい処分が課せられます。 介護保険事業を実施している各市区町村社協におかれましては、今一度、法令遵守の観点から事業運営の状況を確認していただき、適正な事業運営に努めることが重要です。

訂正とお詫び9 月号の特集(2 ページ 2 段目)にて誤りがありましたので、下記のとおり訂正しお詫び申しあげます。

誤 施設書類別 ⇒  正 施設種類別

Informationインフォメーション

なった。結果、中通り(東北新幹線沿

いの地域を総称)や会津地方にも多く

の避難所が設置され、福島県内59市町

村のうち30を超える市町村で災害ボラ

ンティアセンターが立ち上げられ、震

災および原発事故対応の両面にわたる

支援にあたった。

広報に力を注ぐ…

 

この頃の福島県に関する報道は、原発

事故に関するものばかりで、「福島の様子

がわからない」「福島はどうなっているの

か」といった声が、全国から寄せられて

いた。また、ゴールデンウィークを前に、

多くのボランティアが期待できたことか

ら、ブログのリニューアルや情報紙の発

行など、広報関係の充実・強化に努めた。

 

特に、情報紙の発行にあたっては、そ

の対象を限定せずに、福島県内外の被災

者や避難者、福島に駆けつけてくださる

ボランティアや支援者など、幅広い方を

想定して作成した。また、適切な時期に

タイミングよく情報提供するために毎週

発行とした。今、振り返ると時間に追わ

れる編集作業の連続だったが、日々、刻々

と変わる被災地、被災者の様子を新鮮な

うちにお届けしたいとの思いがあった。

4月26日、創刊号を発行すると、「福島か

ら避難している方に渡したいので送って

ほしい」という連絡が県外からもあり、

「紙媒体」としたことで高齢者や聴覚障が

い者など、多くの方に手渡しで届いてい

ることを実感することができた。こうし

た広報活動を通じて、「それでも、ここに

暮らし続けたい」「いつか、あの住み慣れ

た地域に戻りたい」という住民の思い、

そして、その思いを支えようとしている

市町村社協職員の姿などを感じ取ってい

ただけたものと思う。

先行きが不透明な中で…

 

被災地復旧・復興のため「被災者本

位」「関係機関との協働」「安全と健康」「風

評被害の払拭」の4点を目標に掲げた、

ⅰ)福島県災害ボランティアセンター短

期重点計画(4月29日〜5月12日)、ⅱ)

福島県災害ボランティアセンター活動計

中期ビジョン①(5月13日〜6月30

日)、ⅲ)福島県災害ボランティアセン

ター(生活復興ボランティアセンター)

活動計画 中期ビジョン②(7月1日〜

9月30日)、ⅳ)応急仮設住宅支援計画

の4計画を策定した。作成にあたっては、

県社協職員だけでなく、災害ボランティ

ア活動支援プロジェクト会議(支援P)

や全社協を通じて支援いただいた関東ブ

ロックA、九州ブロックの方々、地元の

NPO法人などにご協力いただき、貴重

なご意見をいただいた。

 

県社協として、その計画期間に、どん

な事業にどう取り組むべきかを整理する

ことができ、計画を立てることの意義、

重要性を改めて認識した。また、県社協

の姿勢やその考え方を計画やビジョンと

いう形で示すことで、市町村社協の事業

展開に役立てて欲しいとの願いもあった。

 生活復興への支援…

 

先に述べた中期ビジョン②および

応急仮設住宅支援計画において、一

時避難所および二次避難所(旅館や

ホテル)から応急仮設住宅等に被災

者が移動する時期は8月中旬を見込

んでいた。その時期に合わせ、新潟

中越沖地震での経験をもとに、生活

支援相談員の配置の予算化(財源は

生活福祉資金貸付事業の事務費が充

てられた。)がされ、167名(9月

30日現在の予定人数)が避難社協お

よび応急仮設住宅の設置先となった

市町村社協に配置されることとなっ

た。県社協にはこれら生活支援相談

員の指導や助言、各種企画等を行う

統括生活支援相談員が5名配置された。

 

住み慣れた地域を離れざるを得な

い被災者に寄り添い、日々の生活を送

るうえでの課題の把握や、新たな生活

の地でのコミュニティづくりに取り組

んでいる。

今後の避難社協への支援と

地域福祉活動の基盤づくり

 

役場機能の移転とともに社協機能

も移転することとなった避難社協は、

自らの社協運営とともに、県内に点在

する応急仮設住宅等に入居する住民の

支援に多くの課題を抱えている。その

ため、応急仮設住宅等の所在市町村社

協との連携を図るべく、7月6日に県

内市町村社協会長・事務局長を対象と

した復興会議を開催し、避難元社協の

取り組みの方向性や避難先社協の考え

ている支援等について情報交換会を開

催した。応急仮設住宅への入居が進み、

多方面から入居者への訪問活動が行わ

れている。これがかえって入居者の引

きこもりを引き起こす要因ともなって

いることから、これら問題への対応を

含め、県内の一部の地域では既に取り

組みが始まっている社協・行政等が連

携を図ることを目的とした会議等が情

報交換や活動調整の場として十分機能

し、混乱のない支援が展開されること

が望まれる。また、前述した関東ブロッ

クA、九州ブロックによる支援が8月

末をもって終了となったが、9月から

は引き続き県外社協の個別支援として

避難市町村社協支援が展開されており、

この間に社協運営や今後の地域福祉活

動の展開基盤を再構築し、避難社協と

して将来を見据えた取り組みを展開す

ることが期待されている。

Page 5: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

89 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251

『いきいき生活ブック~自立生活

のチェックポイント~』発行の

きっかけ

 

平成23年7月、箕面市社会福祉協議会

(以下、箕面市社協)が事務局となって

いる箕面市地域自立支援協議会(以下、

自立支援協議会)の編集で、障害者の自

立生活のサポートを目的とする『いき

いき生活ブック〜自立生活のチェック

ポイント〜』(以下、『いきいき生活ブッ

ク』)が発行された。

 

自立支援協議会は、平成18年に障害者

自立支援法で各自治体に設置が定めら

れた際に発足し、箕面市社協が箕面市か

ら委託を受けて運営する在宅ケアセン

ター内に事務局が設けられた。

 

在宅ケアセンターは障害者やひとり

親家庭などの在宅生活をサポートする

ために、単なるサービスのつぎはぎでは

なく、地域に根ざした取り組みを行なっ

ている。事務局設置については社協らし

い総合調整力を期待されて、箕面市から

依頼された経緯がある。

 

自立支援協議会の構成メンバーは、在

宅ケアセンターを含めて市内に4か所

ある相談支援事業所と箕面市の障害福

祉課の5機関からなり、会長は在宅ケア

センターを除いた3か所の事業所から

選出されている。

 『いきいき生活ブック』の企画自体は

箕面市社協によるもので、平成21年から

計画し、自立支援協議会での編集会議を

重ねた末、今年、発行にこぎつけた。

「自立」の概念を整理し

みんなの共通言語に

 

箕面市社協では、この数年来力を入

れて取り組んできたことの一つに「個

別支援と地域支援の融合」がある。

 

もともとコミュニティワークは地域

支援という社協の基礎をなす部分であ

るが、箕面市社協にはそれに加えて在

宅ケアセンター、地域包括支援セン

ター、居宅介護支援事業所など個別支

援を行なう舞台があり、個別のニーズ

を発掘する機会にも恵まれている。

 

ただ、個々のニーズに対応したサー

ビスが充足していても、地域のなかで

孤立しているなど、バランスを欠いた

状況も少なくなく、箕面市社協では、

地域で安心して生活できるような個別

支援と地域支援の融合の大切さを訴え、

積極的に課題に取り組んできた。

 

そんな状況のなか、今年3月まで在

宅ケアセンターの所長で自立支援協議

会の事務局担当であった高田浩行さん

(現、地域福祉課地域福祉担当)は、介

護保険制度の導入以降、盛んに使われ

始めた「自立」という言葉が、福祉の

現場で「これはあなたの自立を阻害す

る」「自立のためには就労が必要だ」な

ど、使われる場面によって概念がまち

まちで、言葉だけがひとり歩きしてい

るように感じていたという。

 

そこで、「障害のある人の自立」とは

何かについて自立支援協議会のなかで

その定義を整理し、みんなの共通言語

にできないかと考え、当事者や家族、

支援者が「自立」についてどんなふう

に考えて、どんなことに気をつければ

いいのかを一緒に話し合う際の参考書

となるよう、『いきいき生活ブック』が

制作されることになった。

『いきいき生活ブック~自立生活

のチェックポイント~』の内容

 『いきいき生活ブック』は、A4

判、65頁。健康に関すること、生計

に関すること、社会参加に関するこ

となど、自立についての大切な項目

や実際の事例、項目ごとに必要な制

度やサービスが紹介されており、病

院や服薬など自分の情報を書き込み

ながらチェックできるチェックシー

ト方式になっている。

箕面市社会福祉協議会

社協活動最前線

社協データ【地域の状況】(平成23年8月31日現在) 人口/ 130,516人 世帯数/ 56,068世帯 高齢化率/ 20.8%

【社協の概要】 職員設置数 総数 313名(正規職員 62名) 理事  15名(会長1名、常務理事1名) 監事   2名、評議員39名

【主な事業 】<自主事業>●ボランティアセンター運営●ふれあいホームサービス事業●心配ごと相談事業●日常生活自立支援事業●資金貸付事業 他<介護保険事業、自立支援事業>●居宅介護支援事業●訪問介護事業●通所介護事業●介護老人保健施設●相談支援事業●移動支援事業 他<委託事業>●在宅ケアセンター●地域包括支援センター●学童保育事業●ファミリーサポートセンター 他

「自立」の概念を整理して共通言語化。

障害のある人の自立をみんなで考える参考書

『いきいき生活ブック~自立生活のチェック

ポイント~』

 社協の強みは総合力。自立の概念を共有化し、個別支援と地域支援の融合をめざして自立サポート冊子を制作した、箕面市社会福祉協議会の取り組みを取材した。

 箕面市は大阪府の北部に位置し、市境は池田市、豊中市、吹田市、豊能郡豊能町、兵庫県川西市と隣接する。総面積は47.84㎢。大阪市のベッドタウンとして発展し、市の南部を中心に閑静な住宅地が広がる。  中部から北部の山間地には、奈良時代に創建され紅葉の名所としても知られる勝尾寺や、明治の森箕面国定公園内の箕面滝があり、観光地となっている。

数は多くないが、希望があれば当事者用と

して渡すこともある。また、箕面市社協で

データを保管しているので、必要なページ

をプリントして配ることも可能だ。

 

実際に、発達障害のある子どもがい

る家庭へのかかわりで、母親にも軽度

の知的障害があることがわかり、『いき

いき生活ブック』を使ってまずは母子

の生活リズムを見直した。 

 

就労を希望する母親も苦手なこと

を整理した結果、障害者の作業所の

喫茶店でボランティアを経験した後、

障害者雇用支援センターをとおして、

学校の給食室での仕事が決まった事

例もある。

個別支援と地域支援の

融合をめざして

 

ケースワーカーでもコミュニティワー

カーでも、個人がていねいにかかわれる

人数はどうしても限られる。現在、在宅

ケアセンターにはケースワーカーが4名

いるが、地域支援が必要な際には箕面市

社協の地域福祉課に5人いるコミュニ

ティワーカーと連携する。

 「連携する際に重要なのはお互いの価

値観の均質化です。その価値観でキー

になるのが自立で、そこにこだわりま

した。チームケアの総合力こそ社協の

強みですし、個別支援と地域支援の融

合をめざして積極的に取り組むことが

大事です。『いきいき生活ブック』の発

行もその一つ。社協の価値観が問われ

る今、社協の活動を形にする意義はと

ても大きい」と高田さんは語っている。

 「自立生活に向かって」の項目には、

自立に対する姿勢について次のように

書かれている。

 「(前略)…どうすれば自分の思い描く

生活ができるのか、そのための目標を立

てること、そのために行動する姿勢が大

切です。…(中略)…自立は、なかなか

一人でできるものではありません。自分

でできること、できにくいことを明らか

にする、できにくいことは人の協力を得

たり、制度を利用する。そのような応援

や協力を受けることも自立の一歩では

ないでしょうか。」(一部抜粋)

 「一人暮らしができることが自立では

ないのです。条件を満たさないといけな

いとハードルを高くするのではなく、家

族と同居でもグループホームや施設で

暮らしていても、できること、できにく

いことを理解し、その人の生活や障害特

性に合わせた自立というものがあるの

です」と高田さんはいう。

 

事例では、成功例だけを載せるのでは

なく失敗例も掲載した。また、実際にそ

の人らしい自立生活を送っている当事

者を写真入りで紹介するなど、身近に感

じてもらえるような工夫もした。

発行後の効果

 

今回の『いきいき生活ブック』は三障害

にあわせて作られている。障害によっては

もう少し深く掘り下げて掲載すべき内容も

あり、今後、第二弾、第三弾として障害ご

とに分けて編集する構想もある。

 冊子は、当事者と一緒に紙面を見ながら

話をしてもらえるよう、各関係機関に一冊

ずつ無料で配布し利用してもらっている。

限られた補助金の範囲内での印刷のため部

相談対応のなかで冊子を利用している様子

冊子『いきいき生活ブック〜自立生活のチェックポイント』

冊子のなかにある自立生活への事例紹介

箕面市

Page 6: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

1011 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251

 

前号では、デイサービスでの訴訟事例を

取りあげましたが、今回は訪問介護におけ

る利用者事故の訴訟例から、現場での安全

確保に何が求められるかを考えてみます。

 

体幹機能障害のため常時、身体・生活の

介助を要する少年が、食事介助を受けてい

るときに食物を誤嚥したことが原因で窒息

死し、その家族が、民間の介護会社に対し

損害賠償を求めた事例があります。裁判所

は、食事介助を担当していたホームヘルパー

の過失を認めて介護会社とホームヘルパー

個人に損害賠償を命じました。判決では、

この事故の事実関係を前提とした場合、誤

嚥について「ホームヘルパーの養成におけ

る医学知識の受講時間に照らしても、医師

はもちろん看護師と同程度の注意義務を認

めること」はできないとしつつ、ホームヘ

ルパーは、異常事態の原因を自ら判断でき

なかったとしても、早期に会社等に連絡を

とるべきであったのにそれを怠ったとして

過失を認めています。この事業者の場合、

新人教育マニュアルにおいて報告・連絡・

相談の重要性や事故処理方針について記し

ていましたが、現実に発生した事故の場合

に十分機能しなかったことになります。

 

事故報告やヒヤリハット報告を例にして、前

号では、リスクマネジメントに取り組むための

手法を取りあげましたが、事故防止のために真

に有効に機能するには、手法が職員により正し

く実践されるだけでなく、組織として活用され

る仕組みができていることが必要になります。

 

リスクマネジメントの取り組みの多くは、個々

の職員が研修会等で得た知識を基にして、現場

において工夫しながら進めているものが多く、

施設や事業所等が組織全体として方針を立てな

がら、効果を検証しつつ展開するといった本来

の意味でのリスクの組織的な「マネジメント」、

すなわち運営管理のレベルには到達していない

のが実情です。

 

組織全体でリスクマネジメントに取り組

むにあたっては、リスクマネジメント委員

会を設置することが有効です。リスクマネ

ジメント委員会の役割は、介護事故防止の

ために発見されたリスクを分析の上、リス

クの防止策・対策を決定し、組織全体で対

策を徹底することにあります。また、委員

会では事故防止や安全確保について、特定

の部門単位で取り組みを行うのではなく、

全組織でリスクマネジメントについての情

報や取り組みを共有します。

 

特に委員会の運営においては、介護事故防

止の活動や取り組みの評価を実施すること、

具体的には、転倒事故を課題として特定した

のであれば転倒事故の発生件数をまとめるだ

けではなく、減らすために何ができるかを具

体的に検討し、実践に移していくことが求め

られます。ある対策を立てて実行してみても

相変わらず転倒事故が減らないということで

あれば、更なる対策を実行していくことを

キーにして、リスクマネジメント委員会を回

していくことも重要な視点です。

リスクマネジメントとは何か

リスクマネジメントとは何か

リスクマネジメントとは何か

連載

社協運営におけるコンプライアンス(法令遵守)とリスクマネジメント(事故予防)

第5回

社協運営におけるリスクマネジメントの実践(2)株式会社 インターリスク総研コンサルティング第一部 部長 佐藤 彰俊

訪問介護における利用者事故の訴訟例

組織として実践するリスクマネジメント

リスクマネジメント委員会

 

リスクマネジメントの取り組みを組織内に

展開していくにあたり、研修は欠かすことが

できません。福祉・介護分野の事故防止は、

リスクマネジメントマニュアルの中で完結す

るのではなく、研修で学び、日々の全業務の

中で定着されていくことに意味があります。

 

リスクマネジメントの研修というと、どう

しても事故事例の紹介や事故防止の方策、事

故発生時の対応策の検討などが多くなる傾向

にあります。しかし、ケアやサービス技術の

向上を図る研修において、こうすれば利用者

の安全性が確保され、事故防止にもつながる

というポイントを加えることで、日々の業務

の中に安全性が実質的に組み込まれ、リスク

マネジメントの定着に活かされる点もあると

考えられます。

 

業務手順書の整備とリスクマネジメントの

結びつきには、違和感があるかもしれません。

しかし、福祉・介護分野のサービスは、利用

者の生活全般を支えており、24時間365日

切れ目なく提供され、複数の職員、多様な職

種によってサービスが担われています。この

場合の業務手順書の整備、業務の標準化とは、

大量効率的に画一的なサービスを行うための

マニュアル化ではありません。どの職員が担

当しても利用者が安心できる質の高いサービ

スを提供することを目的とした標準化です。

個別のケースごとに必要となる留意事項は、

標準的な手順を基本としたうえで、個別のケ

アに反映させるのが基本です。

 

なぜ事故やヒヤリハットが起こったのか、

介護事故の要因を分析するにあたり、業務の

標準的な手順が決まっていれば、定められた

手順に沿っていたかどうかが分析の出発点に

なります。標準的な手順を怠ったために事故

が起こりそうになったのであれば、手順の遵

守の徹底を図ること、あるいは標準的な手順

が存在しても、日常業務の中で手順通りに行

うのが困難なために逸脱してしまうのであれ

ば、実行可能な手順に見直しを行うこと、こ

のような取り組みが安全な業務の確立につな

がります。

 

個々の利用者に対して提供したケアの内容

を正しく確実に記録することは、発生した介

護事故の事実の検証のみならず、事故予防の

面でも貴重なエビデンスとなります。しかし、

そのためには、職場内だけで理解が可能な申

し送り程度の記録ではなく、第三者が読んで

事実を把握できる内容が必要です。

 

介護事故で事業者の責任が訴訟で争われ、

施設から出された記録の事故発生時刻にぶれ

があって、裁判所の側でも判断がつきかねて

いる事例があります。また、利用者の状態像

を示す医学用語で、職場の中では慣習的に医

学用語とは異なる意味で使用していたと施設

側が説明しているものもあります。あいまい

な用語が使われていたり、あるいは職場内だ

けで通用する用語が使われていたりして、第

三者が読んでも事実がわからない、さらには

逆な意味にとられかねないような場合、リス

クマネジメントの観点からだけではなく、利

用者の生命や身体に直結したケアやサービス

を提供する事業者の記録として重大な欠点を

有することとなります。

 

福祉・介護分野における利用者についての

記録の方法論は、医療分野などに比べると、

まだまだ未成熟な状態であり、研修のあり方

などについても課題があります。単に漫然と

日記のような記録をとるのではなく、まず、

記録の目的が明確に職員に理解されること、

そして職場内において同僚や上司が第三者の

目で記録の正確性を確認する取り組みが行わ

れることでも、十分に質の向上が図られると

考えられます。

 

サービスの提供にあたり、生活におけるリス

クの有無や程度を個別の利用者ごとに把握し、

利用者や家族に正しく伝え、円滑なコミュニ

ケーションや家族とのパートナーシップによっ

て信頼関係を構築することも、リスクマネジメ

ントの実務において大きな意味を持ちます。

 

例えば、転倒事故の場合で、実は以前か

ら転倒のリスクがあったと事故後に情報が

開示されても、家族にとっては唐突感があ

り、受け止めるにも違和感があるでしょう。

利用者の状態像に変化があり、利用者のリ

スクが高まった場合に、ケアやサービスの

内容、あるいは本人の生活環境が多少変わっ

ても、やはり事故を防ぐことを何よりも重

視してほしいとの要望が出る可能性は十分

にあると考えられます。リスクに関する情

報も、家族と十分な共有が図られ、同じ認

識にあることが大切です。

 

利用者・家族とのコミュニケーションの向上

は、個人の適性やスキルの問題ではなく、利用

者の安全性確保の観点から組織として行う取り

組みであると捉えられなくてはなりません。

連載 社協運営におけるコンプライアンス(法令厳守)とリスクマネジメント(事故予防)

記録の作成・活用

利用者・家族とのコミュニケーション

研修

業務手順書の整備

編集後記

編集後記

 「マネジメント」という日本語をよく耳にするようになりました。「ケアマネジメント」は、私が最初に意識した「マネジメント」を使った言葉です。介護の現場では提出しなければならない書類が多く、要介護者の方と向き合う時間よりも、書類に向かう時間の方が多くなりがちと、専門職の方々の嘆きを聞いたことがあります。 前回、今回と、「リスクマネジメント」の連載のなかで、介護の事例を取りあげながらの解説があり、福祉・介護の現場と本当の意味での「マネジメント」が、まだまだかけ離れているのだと感じました。 社会の在り方の変化に伴い、現在進行形で「マネジメント力」が必要とされています。チーム一丸となって学びあい、それぞれの専門職としての能力を発揮していきましょう!(小)

2011 年 10-11 月号平成 23 年 11 月 1 日発行編集/全国社会福祉協議会   地域福祉部発行所/地域福祉推進委員会東京都千代田区霞が関 3-3-2TEL 03-3581-4655FAX 03-3581-7858

発行人/村上哲雄編集人/野崎吉康定価/ 210 円

(本体価格 200 円)デザイン/キッズプランニング印刷/毎日ビジネスサポート

Page 7: NORMA...3 …2011 NORMA OCTOBER-NOVEMBER NO.251 2東日本大震災 特 被災地社協の取り組み ~岩手県社協・宮城県社協・福島県社協からの報告 ...

社 協

情 報

ノー

マ 2

01

1 

10 ・11月NORMA 

NO

.25

1

発行人 

村上哲雄 

編集人 

野崎吉康

〒100ー8980 

東京都千代田区霞が関3ー3ー2

新霞が関ビル 

全国社会福祉協議会地域福祉推進委員会

電話 

03ー3581ー4655(地域福祉部)定価210円(本体200円)

 群馬地域福祉ヒューマンネットワーク(略称GCHN)では、偶数月の第2火曜日の夜間に勉強会を行っています。私は副会長と事務局長を兼任していますが、これは社協の事業ではなく、自主的な活動として携わっています。 前身は、高崎地域福祉研究会という高崎市社協職員有志と市内に勤務する大学教員を中心とした団体でしたが、平成18年にこの活動を県域に広げていくために新しい団体として立ち上げました。 漠然としたネットワークではなく、「人と人が繋がってネットワークを作っていくんだ!」という会員の強い思いから、群馬地域福祉ヒューマンネットワークと名づけました。社協・行政・大学・福祉施設・NPO法人・病院・建築事務所に勤務する人や、議員・障害当事者・民生委員・サロン運営者・ボランティア・学生・一般県民など幅広い人が参加しています。参加者は毎回20人程度ですが、口コミで広がり新しい参加者はどんどん増えています。 会員や身近な関係者が講師となり、毎回テーマを決めて説明や報告をしていただいた後に、参加者から質問を受けて意見交換をします。これまで32回開催し、共同募金、小規模多機能、民生委員活動、地域包括支援センター、生活福祉資金、日常生活自立支援事業、ボランティア、災害などをテーマとしてきました。たくさんの方に社協事業やわかりづらい制度などを知ってもらい、意見をもらっています。 定例勉強会の他には、平成20年に会員の力を結集し、日本地域福祉学会関東甲信越静ブロックの研究集会も開催しました。

毎回参加してくださる、障害福祉サービス事業所すまいる柴崎事業所 所長の櫻井俊輔さんにお話を伺いました。

伊 藤:ずばり、GCHNの魅力はなんですか?櫻 井:�今風のテーマを投げかけてくれること。あとは、職種も年

齢もバラバラの人が集まってくるのがおもしろいですね。伊 藤:�GCHNで何か得られるものはありますか?櫻 井:�毎回、良い刺激をもらっています。伊 藤:�今後の運営に何か希望はありますか?櫻 井:�時間をもっと長くしてほしいです。あと、年一回は講演

会など大きなイベントをしてほしい。当事者がもっと参加できるようにもしてほしいです。

参加者へのインタビュー

 職種や業種別の勉強会は各地で実施していると思いますが、GCHNのような地域福祉がテーマではあるものの横の繋がりを大切にした勉強会はあまりないと思います。今は県域で行っていますが、もっと小さな地域で同様の取り組みを普及していければよいと思います。

高崎市社会福祉協議会(群馬県)

地域福祉係 伊藤 岳央発 信 いきいきわかて

すまいる柴崎事業所 所長の櫻井俊輔さん

群馬地域福祉ヒューマンネットワーク!

群馬地域福祉ヒューマンネットワーク定例勉強会

日本地域福祉学会�関東甲信越静ブロックの研究集会

人と人とを繋ぐ、職種を超えた勉強会

今後の課題と展望