No. 58 March, 2012tmiya/c-ml/DV_Backnumber...1 Quarterly e-mail newsletter for Ceramics Research...

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1 Quarterly e-mail newsletter for Ceramics Research Forum in Medicine, Biomimetics, and Biology THE DIVISION No. 58 March, 2012 Editor-in-Chief K. Teraoka, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST) Associate Editor T. Miyazaki, Kyushu Institute of Technology T. Kawai, Yamagata University Editorial Staffs J. Hamagami, Kurume National College of Technology M. Neo, Kyoto University T. Sawamura, NGK Spark Plug Co., Ltd. M. Ohgaki, SII Nano Technology Inc. S. Hayakawa, Okayama University C. Ohtsuki, Nagoya University K. Ioku, Tohoku University H. Takeuchi, HOYA Co. K. Ishikawa, Kyushu University N. Tomita, Kyoto University M. Kikuchi, NIMS H. Unuma, Yamagata University S. Nakamura, NIMS

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Quarterly e-mail newsletter for

Ceramics Research Forum in Medicine, Biomimetics, and Biology

THE DIVISION

No. 58 March, 2012

Editor-in-Chief K. Teraoka, National Institute of Advanced Industrial Science and

Technology (AIST)

Associate Editor T. Miyazaki, Kyushu Institute of Technology

T. Kawai, Yamagata University

Editorial Staffs J. Hamagami, Kurume National College of Technology

M. Neo, Kyoto University

T. Sawamura, NGK Spark Plug Co., Ltd. M. Ohgaki, SII Nano Technology Inc. S. Hayakawa, Okayama University C. Ohtsuki, Nagoya University K. Ioku, Tohoku University H. Takeuchi, HOYA Co. K. Ishikawa, Kyushu University N. Tomita, Kyoto University M. Kikuchi, NIMS H. Unuma, Yamagata University S. Nakamura, NIMS

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Contents

1. MESSAGE & OPINION ................................................................................................................................... 3

巻頭蚀

金属むオン固溶アパタむト・「惑わす材料」から「数倚くの可胜性を秘めた材料」ぞ束本 尚之

2. INFORMATION ON RESEARCH & DEVELOPMEMT ............................................................................ 16

留孊䜓隓蚘

暪井倪史氏むギリス・バヌミンガム倧孊 暪井 倪史・川井 貎裕 孊䌚参加蚘

The 11th Asian BioCeramics Symposium 蔵本 晃匡 第回日本バむオマテリアル孊䌚倧䌚 䞭村 梢

第 21 回無機リン化孊蚎論䌚 参加報告蚘 川井 貎裕

3. INTRODUCTION OF RECENT PAPERS ................................................................................................... 24

論文玹介

4. ANNOUNCEMENT ........................................................................................................................................ 25

行事案内

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1. MESSAGE & OPINION 巻頭蚀

金属むオン固溶アパタむト 「惑わす材料」から「数倚くの可胜性を秘めた材料」ぞ

産業技術総合研究所 束本 尚之

連絡先[email protected]

近幎囜際䌚議や囜内孊䌚に参加するず金属むオン固溶アパタむトに関する研究が増

加しおいるのを感じたすさらに金属むオン固溶アパタむトは私の博士課皋時代の

研究察象であった金属むオン固溶 β 型リン酞䞉カルシりムにも関連しおいるため個人

的に金属むオン固溶アパタむトの研究をリサヌチする良い機䌚ず思ったこずおよび線

集委員の方々に折角の機䌚を頂いたこずから本解説を執筆するこずを決意したした

もしかするず私のリサヌチ䞍足などで間違いや認識違いがあるかもしれたせんがその

郚分に関しおはご容赊いただければず思いたす

本解説は金属むオン固溶アパタむトの研究を行ったこずがない研究者に金属むオン固

溶アパタむトを玹介するもしくは研究のきっかけを提䟛する目的で蚘述したためア

パタむトの基瀎から蚘述しおいたす

1. 金属むオンを固溶するアパタむト

1.1 アパタむト

アパタむトずはM10 (ZO4)6Xの基本組成の結晶鉱物の総称であるこれたでの研究から衚 1 に瀺す各元玠が単独あるいは 2 皮類以䞊の組み合わせで MZO4X の䜍眮にそれぞれ固溶(眮換)するこずが明らかになっおいるアパタむトの䞭でハむドロキシ

アパタむト(HAp)はM=CaZ=PX=OHの Ca10(PO4)6(OH)2で衚わすこずができる

Table 1 アパタむトを構成する元玠(むオン)

M site

Na+, K+, Rb+, Cs+, Ca2+, Mg2+, Zn2+, Ba2+, Mn2+, Fe2+, Sn2+, Cd2+, Pb2+, Ra2+,

Fe3+, Eu3+, Al3+, Y3+, Bi3+, V3+, Tm3+, Sb3+ Ge4+, Ti4+

ZO4 site SO4

2-, CO32-, HPO4

2-, PO4

3-, AsO43-, VO4

3-, BO33-, CrO4

3- SiO4

4-, GeO44-, BO4

5-

X site OH-, F-, Cl-, Br-, I-, O2-, CO3

2-, H2O

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1.2 生䜓材料ずしおの金属むオン固溶アパタむト

金属むオン固溶HApが生䜓材料ずしお研究察象になったきっかけは 2぀の理由からであるず思いたす è¡š 2 に瀺すように生䜓骚䞭には Ca2+や PO4

3-むオン以倖にも骚の無機組成ずしお炭酞

(CO32-)ナトリりム(Na+)およびカリりム(K+)むオンなどが含有しおいるたた䞊蚘の

金属むオンの眮換(固溶)にずもない HAp 結晶構造䞭には空孔(欠陥)が存圚する合成HAp ず生䜓骚ずの倧きな違いはこれらの金属むオンの含有や結晶構造䞭の空孔(欠

陥)の有無でありこれらの圱響で合成 HAp は骚誘導胜を瀺さないのに察しお生䜓骚は骚誘導胜を有するだけでなく骚リモデリング等の生䜓反応を円滑に行っおいるず

考えられおいるすなわち金属むオンの固溶および欠陥構造を制埡するこずで生䜓

骚ず同等もしくはそれよりも優れた材料の䜜補が可胜であるこずが 1 ぀目の理由ずしお考えられたす

Table 2 人間の骚や歯に含たれる元玠の組成

Enamel Dentine Bone Ca (wt%) 37.6 40.3 36.6 P (wt%) 18.3 18.6 17.1

CO2 (wt%) 3.0 4.8 4.8 Na (wt%) 0.70 0.1 1.0 K (wt%) 0.05 0.07 0.07

Mg (wt%) 0.2 1.1 0.6 Sr (wt%) 0.03 0.04 0.05 Cl (wt%) 0.4 0.27 0.1 F (wt%) 0.01 0.07 0.1 Zn (ppm) 263 173 39 Ba (ppm) 125 129 Fe(ppm) 118 93 Al (ppm) 86 69 Ag (ppm) 0.6 2 Cr (ppm) 1 2 0.33 Co (ppm) 0.1 1 <0.025 Sb (ppm) 1 0.7 Mn (ppm) 0.6 0.6 0.17 Au (ppm) 0.1 0.07 Br (ppm) 34 114 Si (ppm) 500

Ca/P 1.59 1.67 1.65

2 ぀目の理由ずしおは骚ミネラル成分を含む生䜓元玠(生䜓必須元玠生䜓必須埮

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量元玠生䜓必須超埮量元玠)ず生䜓反応ずの関連性がさたざたな研究で明らかにされ

おいるためず考えられたす近幎では衚 2の歯や骚ように䜓の各郚䜍における ppmオヌダヌの生䜓元玠成分の分析が可胜ずなり生䜓必須埮量元玠や超埮量元玠ず生䜓反

応に関する研究成果に぀いおも生䜓反応に関する枬定方法および枬定機噚の粟床向

䞊ずずもに増加傟向にある衚 3 にそれらの研究で明らかになった各元玠の骚圢成などを䞭心ずした生䜓反応ぞの圱響を簡単にたずめた さらに近幎では生䜓内に存圚しないそしお高い毒性があるず認識されおいるリチ

りムむオン(Li+むオン)に぀いおも骚圢成を促進するずの報告もある 1)-3)たた同じ

く生䜓内には存圚しないネオゞムやガドリニりムむオン固溶HApの生䜓応甚を目的ずした論文も存圚する 4)

Table 3 生䜓必須元玠ず骚圢成における䜜甚

元玠 䜜甚 ナトリりム (Na) 骚代謝や再吞収プロセス现胞接着に関䞎 カリりム (K) • 生化孊反応においお倚くの機胜に関䞎

• 骚生成時のアパタむトの栞圢成に関䞎 マ グ ネ シ ã‚Š ム (Mg)

• 骚芜现胞や砎骚现胞を掻性化し骚成長(骚圢成)を促進 • HApの栞圢成や栞成長(再石灰化)を促進 • 骚匷床や骚密床の増加䜜甚→欠乏で骚粗鬆症のリスク増加

亜鉛 (Zn) • DNAや RNAの耇補タンパク質合成に関䞎する倚くの酵玠共同因子

• 砎骚现胞の分化を抑制するが骚芜现胞を掻性化 • 骚栌の圢成や発達に必芁な元玠 →欠乏するず骚密床が䜎䞋(骚粗鬆症のリスクが増加)

マンガン (Mn) • 骚リモデリングの調敎に圱響を䞎える • 欠乏するず有機マトリックスの合成䜎䞋 • 軟骚の骚圢成を抑制 • 骚粗鬆症患者の骚量枛少を予防するサプリメントずしお䜿甚

ストロンチりム (Sr)

• 砎骚现胞の掻性や分化を䜎䞋させ前骚芜现胞の耇補骚芜现胞の分化を促進→骚圢成促進

• 骚再吞収を抑制→骚粗鬆症の治療においお䜎濃床の服甚で効果

• 骚圢成サむトや骚密床の増加 フッ玠 (F) • 虫歯を予防

• 骚现胞の増殖や分化を促進 塩玠 (Cl) 骚再吞収プロセスにおいお砎骚现胞を掻性化させる酞性

環境䞋を 骚衚面に発珟 ケむ玠 (Si) • 骚生成に関䞎する代謝機構に䜜甚

• 骚现胞や結合现胞の発珟に関䞎する代謝プロセスに関䞎

• 欠乏により骚芜现胞の増殖や機胜が䜎䞋 →骚量枛少や骚粗鬆症などのリスクが増加

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䞊蚘の 1 ぀目の理由に加えおこの 2 ぀目の金属むオンの生䜓内での詳现な䜜甚機構

が明らかになっおいるこずが近幎の金属むオン固溶アパタむトの研究が盛んになっお

きた理由であるず思いたす

2. 金属むオン固溶アパタむトにおける金属むオンの固溶圢態

2.1 HApの結晶構造

アパタむトは Bravais栌子に基づく分類では六方晶系 P63/mに属したすが化孊量論

組成の HApは単斜晶系 P21/bであるしかし実際の生䜓骚䞭の HApには䞊蚘に瀺したように埮量の金属元玠や空孔(栌子欠陥)を含むため六方晶系に属するHAp の単䜍栌子は平行六面䜓でその皜は 120°の 2 ぀の平行な軞ずその軞に亀わる軞によっお構

成される結晶構造䞭の Ca2+むオンは異なる 2぀の䜍眮に存圚する䞀぀は columnar Ca [Ca(1)]ず呌ばれ9぀の酞玠原子に囲たれた倚面䜓を圢成し煙突のような構造をしおいお移動しやすいもう䞀぀はscrew Ca [Ca(2)]ず呌ばれ単䜍栌子の各頂点にカル

シりムが存圚する構造になっおいる6 個の PO43-むオンは䞭心のリンむオンずその呚

りの 4 個の酞玠から成る四面䜓を圢成したた c 軞䞊に䜍眮する 2 ぀の OH-むオンは

同じ平面内䞊で 3぀の Ca2+むオンに囲たれおいる

2.2 アパタむト構造䞭における金属むオンの固溶圢態

䟡数の異なる陜むオンたたは陰むオンが固溶した各皮金属むオン固溶HApの結晶構

造に぀いお生䜓材料ずしおの応甚が怜蚎されおいる金属むオンを䞭心に述べるた

たそれぞれの金属むオン固溶アパタむトの詳现に぀いおは各項目に瀺した文献や

䞭性子回折や X線回折などによる結晶構造解析を報告した論文などを参考にしおいた

だきたいず思いたす

(1) Caサむトぞの固溶

2.1に瀺したようにアパタむト構造には Ca(1)および Ca(2)サむトが存圚するがどちらに固溶するかは固溶する陜むオンのむオン半埄や電気陰性床に密接に関連する 5)

すなわち(Ca むオンよりも)むオン半埄および電気陰性床が倧きい陜むオンは Ca(2)

サむトに優先的に固溶する 5)たたむオン亀換反応ではむオン半埄が Ca2+むオンに

比べお小さい金属むオンは Ca(1)サむトに倧きなむオンは Ca(2)にそれぞれ分垃する傟向がある 6)

しかし同じ金属むオンでも優先しお固溶する Caサむトが違うこずが倚く芋受けられる䟋えば結晶構造の倉化にずもない倉化する結晶構造の単䜍栌子における栌子

定数に぀いお Zn2+むオン固溶 HApの堎合Diazらは Zn2+むオン固溶量の増加にずもな

い aおよび c軞の栌子定数ずもに枛少するず報告しおいるがMiyajiらは a軞が Zn2+

むオン固溶量 5mol%たで枛少埌それ以䞊の固溶量で増加しc 軞は固溶量の増加に

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ずもない枛少するこずを報告しおいる 7)-9)これらの違いに぀いお Li らは金属むオン

固溶 HApの合成方法や合成条件に䟝存するず報告しおいるが 9)それを実蚌した報告

はなくHApにおける陜むオンの固溶圢態や結晶構造を論文などで調査する堎合は枬定詊料の合成方法や合成条件同時固溶したむオン(CO3

2-や F-むオン)の有無や固溶

量などに泚意する必芁がある

a) 䞀䟡金属むオン (ナトリりムむオンカリりムむオン銀むオン)

Na+むオンは Ca(1)および Ca(2)サむトの䞡方に固溶するがNa+むオン固溶量が高

い堎合(90%以䞊)は Ca(2)に優先的に固溶する 10)たた䞀䟡金属むオンが固溶した

堎合には電荷補償(䟡数の異なるむオンが固溶した堎合に結晶構造䞭の電荷バラン

スを 0にするこず)の芳点から Caサむトに欠陥(空孔)が生成する 11)䞀方Ca2+むオ

ン(0.099 nm)に察しおむオン半埄の倧きい銀むオン(Ag+むオン0.128 nm)固溶の堎合は優先的に Ca(1)に固溶しそれにずもない栌子定数が盎線的に 5.5 atom%たで増加

するこずからその最倧固溶量は 5.5 atom%であるず考えられおいるさらに電荷補償の芳点から CaサむトぞのAg+むオンの固溶ではNa+やK+むオンが固溶した堎合

ず同様に空孔が生成する 12)

b) 二䟡金属むオン b)-1 ストロンチりムむオン

ストロンチりムむオン(Sr2+むオン)は HApの Ca2+むオンに察しお党眮換するすな

わち Ca10-xSrx(PO4)6(OH)2に察しお xは 0≩x≩10ずなる 13)たたSr2+むオン(0.12nm)は Ca2+むオンのむオン半埄よりも倧きいため Vegard’s law(栌子定数ず組成元玠の濃

床におおよその比䟋関係が成り立぀ずいう経隓則)にしたがい栌子定数は Sr2+むオン

固溶量の増加で aおよび c軞ずもに盎線的に増加しさらに Ca(2)サむトに優先的に固溶する 14)

b)-2 マグネシりムむオン亜鉛むオン Ca2+むオンよりもむオン半埄の小さいMg2+むオン(0.065nm)やZn2+むオン(0.075nm)

は Ca(2)サむトに優先的に固溶するが栌子定数は aおよび c軞ずもに枛少する 15)

䞀方でMg2+および CO32-むオンの同時固溶の堎合はCa(1)サむトにMg2+むオンが優

先的に固溶する 16)たたMg2+むオンは Sr2+むオンずは異なり最倧 30atom%たで

しかアパタむト構造を保持できずさらにこの堎合は過剰な Mg の䞍玔物ずしお非晶質盞などが生成しHAp構造に察しおは最倧 10atom%皋床しか固溶しない 15)䞀

方Zn2+むオンに぀いおも栌子定数は a および c 軞ずもに 10atom%たで枛少しそ

の最倧固溶量は 20atom%ず報告されおいる 17)

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b)-3 マンガンむオン

Mn2+むオン(0.090nm)に぀いおも Mg2+や Zn2+むオンず同様に Ca(2)サむトに固溶する 18)しかし FAp に Mn2+むオンが固溶した堎合はCa(1)サむトに 10atom%たで固溶する 19)たたMgや Znず異なりMnは遷移元玠であるこずからさたざたな䟡

数の状態で生䜓内や倩然に存圚しおいるPaluszkiewicz らは0.1–1.0wt%Mn2+むオ

ン固溶HAp粉末を 800oCで加熱した詊料は β-TCPなどに分解するこずはなくFT-IR枬定からMnO4

3-むオンの PO4サむトぞの固溶を提案しおいる 20)

c) 䞉䟡金属むオン [鉄(III)むオンむットリりムむオン] 鉄むオンは二䟡金属むオン(Fe2+むオン)の状態では Ca(2)サむトに優先的に固溶

するが䞉䟡金属むオンの Fe3+むオンは Ca(1)サむトに優先的に固溶する 21)たた

䞉䟡金属むオンの固溶では電荷補償の芳点から①OH-むオン⇔O2-むオンもしくは②

PO43-⇔HPO4

2-たたは H2PO4-むオンのように眮換が起こるず考えられるがWakamatsu

らは Fe3+むオン固溶アパタむトの堎合は前者でそれにずもない OHサむトに O2-ã‚€

オンが眮換したオキシアパタむト[Ca10(PO4)6O]ずなるこずを報告しおいる 22)さらに

Y3+むオンは HAp構造ぞ Fe3+むオンず同様の圢態で固溶する 23)しかし同じ䞉䟡金

属むオンでもツリりムむオン(Tm3+むオン)やアンチモンむオン(Sb3+むオン)は Ca(2)サむトに優先的に固溶する 24), 25)

d) 四䟡金属むオン (チタンむオン) Caサむトぞの Ti4+むオンの固溶は電荷補償の点から Ca2+ : Ti4+ = 2 : 1ずなるが

WakamuraらはHAp結晶構造内で二䟡金属むオンである[Ti(OH)2]2+および[TiHPO4]2+

の圢で存圚するため Ca2+:Ti4+ = 1:1ずなり最倧固溶量は 10mol%であるず報告しおいる 26).その䞀方で同じく眮換比 Ca2+:Ti4+ = 1:1ずした堎合単䜍栌子衚面の CaずTi が眮換しそれにずもない Ca サむトが空孔(Ca 欠損)ずなる考え方も報告されお

いる 27)

(2)リン酞サむトぞの固溶

a) 二䟡むオン (CO32-むオン)

CO32-むオンは HApの OHサむトず PO4サむトずの䞡者に固溶する䞡者を区別す

るために OH サむトに固溶する堎合を A-typePO4サむトに固溶する堎合を B-type

ずしおいるたたPO4 および OH サむトの䞡者に固溶した CO32-むオン固溶

HAp(CAp)を AB-typeずしおいる A-typeに぀いおは電荷補償の芳点から次のように眮換するず考えられおいる

Ca10(PO4)6(OH)2 + xCO2 → Ca10(PO4)6(OH)2-2x(CO3)x+ xH2O ぀たり2぀の OH-むオンず 1぀の CO3

2-むオンが眮換するため OHサむトには空孔

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が生成する 28)

䞀方B-typeに぀いおは次のように眮換する Ca10(PO4)6(OH)2+ xCO2 +xNa → Ca10-xNax(PO4)6-x(CO3)x(OH)2

PO4サむトぞ CO32-むオンが固溶した堎合は電荷補償の芳点から Ca サむトに空孔

が生成しお結晶構造が䞍安定になるためCAp を単盞で合成するのは困難になるしかし䞊蚘のように Na+むオンをカりンタヌむオンずしお Caサむトに固溶するこずで電荷バランスが保持されお結晶構造が安定化するため単盞のB-typeのCApが生

成する 29), 30) AB-typeに぀いおは電荷補償などを考慮するず以䞋のようになる 31)

10Ca2++(6−x)PO43−+2x CO3

2-+(2−x)OH-→Ca10[(PO4)6−x(CO3)x][(OH)2−x(CO3)x]

ホり玠アパタむト(BAp)でも PO4および OHサむトの䞡者で固溶が起こり以䞋のように衚せる 32)

Ca9.5+0.5x[(PO4)6-x(BO3)x][(BO2)1-xOx]

b) 䞉䟡むオン (バナゞン酞むオン) PO4サむトぞのバナゞン酞むオン(VO4

3-むオン)の固溶はPO43-ず VO4

3-むオンの䟡

数が同じこずから Ca10(VO4)x(PO4)6−x(OH)2ず瀺せるここで 0≩x≩6ずなるこずからPO4

3-むオンに察しお VO43-むオンは党眮換するたたVegard’s law にしたがい栌子

定数は aおよび c軞ずもに盎線的に増加する 33)

c) 四䟡むオン (ケむ酞むオン) ケむ酞むオン(SiO4

4-むオン)は PO4サむトに固溶するが電荷補償の芳点から OH

サむトでは OH-むオン→O2-むオンの眮換および空孔(欠陥)が生成するこずを Gomesらは䞭性子回折を䜿った結晶構造解析で明らかにしおいるたた圌らはHAp のPO4

3-むオンに察しお SiO44-むオンが最倧 18.3mol%固溶するこずも明らかにしおおり

そのずきの構造匏は Ca10(PO4)4.9(2)(SiO4)1.1(2)(OH)1.0(1)O0.66(7)ずしおいる 34)たたSiO44-は PO4

3-

に察しお最倧 5wt%固溶するこずも報告されおいる 35), 36)

(3) OHサむトぞの固溶

OHサむトぞは F-や塩玠むオン(Cl-むオン)が固溶しCa10(PO4)6(OH)2-x(F or Cl)xず瀺せ

るここで xは 0≩x≩2ずなるこずからF-や Cl-むオンは HApの OH-むオンに察しお

党眮換するしかし同じくハロゲンむオンである臭玠むオン(Br-むオン)やペり玠むオン(I-むオン)に぀いおはむオン半埄が倧きいため単独で HApに固溶できないしかし栞燃料再凊理におけるペり玠の固定に甚いられる Pb10(VO4)6I2のように Ca や PO4サむ

トにむオン半埄の倧きいむオンをそれぞれ固溶させるこずで結晶栌子が広がりこれ

らのむオンも OHサむトに固溶する 37)

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3. 金属むオン固溶アパタむトの合成方法

金属むオン固溶HApの合成方法は基本的にHApの合成方法ず同様であり(1)也匏法(2)湿匏法(3)氎熱法および(4)ゟルゲル法のいずれかで合成されるこずが倚い具䜓的にはHAp 合成に甚いる Ca 源および P 源に金属むオン源を添加するこずで金属むオン固

溶 HApが合成できるしかしHApの合成方法における混合方法加熱枩床pH,熟成時間などの合成条件が金属むオン固溶 HApの堎合では異なるこずが倚いため目的の金属むオンが固溶した HApの合成に関する論文などを参考にする必芁がある

たたHApを経由しお合成する方法ずしおはHApのむオン亀換胜を利甚した(5)むオン亀換法があるこの方法に぀いおは Zn2+Al3+La3+Fe3+むオンなどが固溶した HApの合成方法ずしお報告されおいる 26)たた固溶量などはむオン亀換の方法やむオン亀

換する金属むオン(陜むオン)の皮類に圱響を受ける それ以倖の合成方法ずしおはK2SO4や Na2SO4をフラックスずしお甚いた FApの合成やMg2+たたは Zn2+むオンを含んだ前駆䜓を SBF溶液䞭に浞挬埌埗られた沈殿物を熱凊

理しお Mg2+もしくは Zn2+むオン固溶 HApを合成した報告もある 38), 39)たたCO32-むオ

ンを含んだ非晶質リン酞カルシりムを䞀床調補しそれを 800oC 以䞋で熱凊理するこずで AB-typeの CApを合成した報告もある 40)さらに新しい加熱方法を甚いた合成法ず

しおは ACPをMicrowave加熱しお CApを合成した報告もある 41) 䞊蚘の合成方法を基瀎ずしお生䜓吞収性(溶解性)の制埡や材料蚭蚈の芳点から金属むオン固溶 HApのナノ粒子合成に関する論文が近幎倚く報告されおいる

4. 金属むオン固溶の確認方法

金属むオンがHAp結晶構造䞭に固溶したかを確認する枬定方法をその目的ずずもに䞋

蚘に瀺した (1) X線回折(XRD)

枬定目的①生成物の結晶盞の同定②䞍玔物の生成の確認③結晶構造での結晶面

の配向性 さらに枬定した X線回折図から栌子定数や結晶構造も特定できる a) 栌子定数の粟密化(算出)

枬定目的①金属むオン固溶の確認②栌子定数の倉化(傟向)③固溶限界の確定 b) 結晶構造解析(リヌトベルト法)

枬定目的①金属むオンの固溶する各サむト(CaPO4OH)の特定⇔固溶圢態の確定

②各原子䜍眮の確認結合間距離や角床などの確認

③結晶構造の倉化 (結晶構造゜フトを甚いお可芖化も可胜) これらに぀いおは䞭性子回折で埗られた回折図からも特定するこずができる䞭性

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子回折はX線回折に比べおH+やO2-むオンに぀いお信頌性の高い情報が埗られるため

OH基を有する HApやその固溶䜓の結晶構造解析に甚いる

(2) フヌリ゚倉換赀倖吞収枬定(FT-IR)

枬定目的①陰むオンの固溶の同定②陰むオンの含有量(吞収匷床を䜿甚しお怜量線法などで特定)

③䞍玔物生成の確認

FT-IRはおもに陰むオン固溶の特定に甚いられる枬定方法で特に CO32-むオンの

堎合は A-typeB-typeAB-typeを区別する重芁な分析である

(3) 誘導結合プラズマ(ICP)分析

枬定目的詊料䞭の各皮構成元玠の含有量の定量⇔固溶䜓の組成匏 ICP 分析では詊料に含たれる各元玠の含有量を定量するしかし通垞枬定詊料は

溶液であるこずから粉䜓詊料を䞀床溶媒に溶解させる必芁があるしたがっお䞍玔

物を構成する元玠も定量するこずになるため埗られた定量倀には泚意が必芁である

たた陜むオンず陰むオンを区別しお枬定する堎合は陜むオンの堎合は原子吞光分

析リンの枬定にはモリブデン青[塩化スズ(II)還元]の吞光光床法(JIS K 0102)なども甚いられるが近幎では枬定粟床の向䞊や簡䟿性などの点から ICP 分析結果を掲茉した論文が倚い

䞊蚘以倖の分析法ずしおは固溶した金属むオンの結合状態(䟡数)をメスバりアヌ分光法や電子スピン共鳎(EPR)分析で原子の電子状態や隣接原子の䜍眮を X線吞収埮现構造

(XAFS)分析で特定した報告もある

5. 金属むオン固溶の物性ぞの圱響

金属むオンが HApに固溶するこずにずもない結晶構造が倉化するためさたざたな特性が倉化するすべおを詳现に蚘述できないためここでは簡単にそれらの特性に぀い

お瀺す (1) 溶解性

金属むオン固溶により結晶構造䞭で空孔の生成や電子密床分垃の倉化が起こりそれ

にずもない溶解性が倉化する䟋えばMg2+, Zn2+, Al3+, V3+, Ti4+, CO32-および SiO4

4-むオンの

固溶で溶解性は増加しF-,および Cl-むオン固溶で枛少する 42), 43)金属むオン固溶 HApの溶解性に぀いおは総説が報告されおいたす 44) (2) 熱安定性(高枩安定性)

金属むオン固溶にずもない高枩でのHAp分解枩床(HApからCaOや TCPぞ分解する枩床)に圱響を䞎える䟋えばF-および Cl-むオン固溶 HAp の分解枩床は高枩偎にシフト

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するのに察しおMg2+, Zn2+および CO32-むオン固溶では䜎枩偎にシフトするたたCAp

の堎合は Na+むオンが同時固溶するこずで熱安定性が向䞊する 45)熱安定性に぀いおも

溶解性ず同様に詳现な総説が報告されおいたす 45) (3) 合成粒子の粒子圢や粒子ザむズ

金属むオン固溶は合成粒子(金属むオン固溶 HAp 粒子)の粒子圢や粒子サむズに圱響を䞎えるMg2+むオンを固溶(添加)した堎合粒子圢は䞍定圢になりやすくそのサむズは固溶量の増加にずもない枛少する 46)さらにMn2+むオン固溶(添加)で針状粒子が生成し

粒子サむズもMg2+むオン固溶ず同様に固溶量の増加にずもない枛少する 47) (4) HAp結晶化

原料粉末の混合物や金属むオン添加 HAp 前駆䜓を加熱しお金属むオン固溶 HAp を合

成する堎合金属むオン添加は HApの結晶化(枩床)に圱響を䞎える䟋えばMg2+, Zn2+, Al3+, V3+および Ti4+むオンの添加は HApの結晶化を阻害するこずが報告されおいる 42) (5) 衚面特性

金属むオン固溶にずもない結晶構造(特に結晶面)が倉化するこずで衚面特性が倉化する䟋えば Y3+むオン固溶の堎合は詊料衚面が負電荷になりやすい 48)たた衚面電荷が

倉化するこずにずもない衚面電荷の圱響を受けるタンパク質の吞着特性も倉化する (6) 生物孊的特性

金属むオンを HAp に固溶するこずで Ca2+や PO43-むオンずずもに金属むオンも溶出す

るこずから呚蟺现胞にさたざたな圱響を䞎える䟋えばMn2+むオン固溶 HApの堎合

はヒト骚芜现胞の分化や掻性をSr2+むオン固溶 HAp に぀いおも骚芜现胞の掻性分化や増殖をそれぞれ促進する 49)さらにMg2+や SiO4

4-むオン固溶 HApでも现胞掻性を促進する 15), 36)

䞊蚘以倖にも金属むオン固溶で機械的性質は倉化し䟋えば CAp は化孊量論組成のHAp に比べお機械的性質が向䞊する 49)さらに電気的特性の倉化ずしお Y3+むオンを

固溶するこずで導電性が向䞊するこずや光孊特性も倉化する 48)たた䞀般に金属む

オン固溶HApは固溶する金属むオンの特性を発珟する䟋えば抗菌性金属むオン(Ag+

Cu2+Zn2+むオンなど)を HAp に固溶させるこずで抗菌性を発珟し鉄むオン固溶 HApは磁性アパタむトずしおの臚床応甚が怜蚎されおいる 50), 16)たたEu3+むオン固溶 HAp

はその蛍光特性から生䜓センサヌや生䜓プロヌブの応甚が考えられおいる 51)

6. 金属むオン固溶䜓ず耇合材料の違い

金属むオン固溶 HApにおいお金属むオンの溶出による機胜発珟を考えた堎合金属むオンが固溶しなくおもその金属むオンを含有した材料ず HApずの耇合材料を䜜補する考え方もあるそれら耇合材料ず金属むオン固溶 HApずを比范した堎合の金属むオン固

溶 HApの利点ず欠点は以䞋のように考えられる (1) 利点

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①材料匷床

耇合材料の堎合は(生䜓内)溶解性の異なる材料を組み合わせるこずになるしたがっお焌成時の収瞮率の違いによる材料界面での剥離や生䜓内における溶解性の違

いから材料匷床が䜎䞋する危険性があるその䞀方金属むオン固溶 HApは単䞀の

材料であるこずからそれらの問題点を解決するための材料蚭蚈などを耇雑に考え

る必芁はない ②溶解性

生䜓内においおそれぞれの金属(むオン)には毒性を発珟せずにその機胜を最倧限発揮する適切な濃床が存圚するしかし耇合材料の堎合は金属むオンを溶出する

材料(金属材料など)の溶解性に䟝存するため金属むオン溶出量の制埡は困難である

その䞀方金属むオン固溶 HAp は固溶量合成方法や合成条件(粒子圢や粒子サむズ)を倉化させるこずで溶解性を制埡できる ③生䜓掻性

耇合材料においお金属を溶出する材料ずしお䞀般に金属材料が考えられるが金

属材料は䞀般的に生䜓䞍掻性材料である䞀方で金属むオン固溶 HAp自䜓の掻性は生䜓掻性材料である HAp に䟝存するため金属むオン固溶 HAp は固溶した金属む

オンを溶出する機胜を有する生䜓掻性材料ずなる (2) 欠点

HAp焌結䜓の匷床は䞀般的に前項に瀺したように金属むオン固溶で機械的匷床を制埡

できるが金属むオンによる機械的匷床の向䞊には限界があり金属材料/HAp金属むオンに比べるず機械的匷床は䞀般的に䜎いたたHApの高枩安定性を䜎䞋させる金属むオンも存圚するこずから金属むオン固溶で焌結䜓などの高枩焌成が困難ずなる堎合がある

7. 金属むオン固溶 HApの可胜性ず問題点

倚くの参考曞においおアパタむトの項目の初めには「アパタむトずはいろいろな元玠

ず眮換するため特性(晶癖)などが䞀定しないなどの理由から“惑わす”や“あざむく”を意味するギリシャ語に由来する」ず蚘述しおあるしかしこれたで述べおきたような

こずからアパタむトずは「いろいろな元玠(金属むオン)を固溶(眮換)するこずでその金

属むオンの機胜を付䞎および制埡するずずもにアパタむト自䜓の特性を向䞊させるこ

ずのできる可胜性を秘めた材料」であるず蚀える぀たりアパタむトは「惑わす材料」

から「数倚くの可胜性を秘めた材料」ぞず蚀い換えるこずができるず思いたすたた

今回の解説では生䜓材料を䞭心に述べたしたがHApは生䜓材料以倖にもそのむオン亀換胜から有害金属むオンのむオン亀換材料(むオン吞着剀)觊媒やセンサヌにも䜿甚されおいる珟圚は生䜓材料ず同様にこれらのような環境材料ずしおも金属むオン固溶 HAp

が数倚く報告されおいるため今埌の生䜓材料分野以倖の応甚も考えられる 䞀方で金属むオン固溶 HApに぀いおは課題も倚く論文ごずに固溶量合成方法合

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成条件や詊隓条件が異なるため単玔に同じ金属むオンでも論文間での比范が困難である

たたin vitro现胞詊隓や in vivo動物実隓に぀いおの報告はあるがそれ以䞊の実甚化に

向けたステップ䟋えばヒトぞの臚床応甚などを報告した論文は现胞詊隓などに比べお

極端に少ないたた金属むオンず生䜓反応ずの盞互䜜甚に぀いお完党には解明されお

おらず長期埋入による毒性や拒絶反応などを怜蚎した報告も少ないそれらの理由ず

しおは1人の研究者もしくは぀の研究グルヌプが金属むオン固溶 HApの合成から評䟡现胞詊隓や臚床応甚たでを前提ずした系統的な研究ができないこずや医工連携の䞍

足などが考えられるこれらの問題が䞀刻も早く解決し金属むオン固溶 HApが優れた生䜓材料ずしお臚床応甚されるこずを願いたい

近幎の金属むオン固溶 HApに関する研究速床は速く本解説では固溶圢態の䞀郚を陀き可胜な限り 2005幎以降の論文を参考にDIVISIONの解説蚘事ずしおは倚くの論文を匕甚し研究玹介も兌ねたため長文の解説ずなりたしたたた金属むオン固溶 HApの研

究では重芁であるが敬遠される傟向にある「固溶圢態」を他の項目に比べお倚く蚘述

したした最初にも述べたしたように本解説には私の勉匷䞍足や認識違いが倚くある

かず思いたすが金属むオン固溶 HApの研究理解を深めるもしくは研究を始めるきっか

けになっおくれればず願っおいたす Reference

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2. INFORMATION ON RESEARCH & DEVELOPMEMT

研究宀玹介 → 留孊䜓隓蚘

海倖での研究生掻は倚くの刺激的な経隓ずなり、研究者ずしおの胜力向䞊に倧きな糧ずなりたす。本号では、2011 幎に留孊された倧槻研究宀の暪井倪史さん名叀屋倧孊倧孊院工孊研究科の留孊䜓隓を、線集委員川井がむンタビュヌ圢匏で䌺いたした。

川井以降 Kこの床の留孊に぀いお抂略の説明をお願いしたす。 暪井以降 Y日本孊術振興䌚の組織的な若手研究者等海倖掟遣プログラムで、むギリスのバヌミンガム倧孊に2011幎5月22日から2011幎7月21日たで滞圚したした。滞圚䞭はArtemis Stamboulis 先生の指導の䞋で医甚セラミックスの基瀎研究に取り組みたした。 K2 ヶ月間の滞圚だったのですね。バヌミンガム倧孊に぀いおもう少し詳しく聞かせおもらえたすか Yバヌミンガムはむギリス第2の郜垂で、ロンドンから北西に 200km皋床離れた堎所にありたす。バヌミンガム倧孊は垂の䞭心地から南東に玄 4km の䜍眮にありたす。バヌミンガムの䞻芁駅New Street Stationから電車で 10分皋床で倧孊たで行くこずができ、毎日、電車で通孊しおいたした。倧孊の敷地はずおも広く、そこに各孊郚の建物が点圚しおいたす。倧孊の䞭倮にはシンボルの時蚈塔がありたした図1。 K欧颚独特の建物であるこずが写真から芋おずれたす。掟遣先の研究宀ではどのような研究がなされおいるのですか Y留孊先の Stamboulis 先生の研究宀ではガラス、結晶化ガラス、セラミックスや高分子を甚いた生䜓材料の基瀎研究ず開

発を行っおいたす。私が留孊しおいた時期はむギリスの倏䌑みにあたる期間であったため、孊郚孊生や修士課皋孊生は研究宀におらず、10 名皋床の博士課皋孊生が研究に取り組んでいたした。 K博士課皋孊生が 10 名ずいうのは倧所垯ですねでは、留孊䞭の研究テヌマを教えお䞋さい。 Y私が研究テヌマずしお遞んだ内容は、環境応答型骚修埩材料の創成です。これは前から珟圚の指導教授である倧槻䞻皎先生ず議論を続けおいたテヌマで、Stamboulis 先生の専門分野からの意芋を取り入れながら研究を進めれば、より独創的な材料蚭蚈ず開発が進められるず考え、今回の研究テヌマを蚭定したした。 K到着埌すぐに研究に着手できたしたか Y枡航埌、2 週目たでに研究に必芁な詊薬および実隓噚具を賌入したした。その埌、

図 1 バヌミンガム倧孊のキャンパスの写真。写真䞭倮はシンボルの時蚈塔。

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材料評䟡甚溶液の調補擬䌌䜓液SBF、材料の構造解析および反応性評䟡を進めたした。 Stamboulis 先生の研究宀は 2011 幎 5月䞭旬に新しい建物に匕っ越したばかりで、ずおもきれいな実隓宀でした。ただ装眮を搬入しおいないこずもあり、ずおも広々ずしおいお、実隓をするにはずおもよい環境でした図 2。

Kかなり広々ずした実隓宀ですね。珟地で具䜓的に行った実隓内容を、可胜な範囲で聞かせおもらえるでしょうか Y実隓をはじめるにあたり、たずは SBFを調補したした。SBF 調補甚の詊薬を予め甚意しおいただいおいたので、SBF の調補は順調に行えたした。枡航埌、25 週目は材料を SBF に浞挬し、材料ず溶液ずの反応挙動を調べたした。特に、SBF に酵玠を添加した際の材料の反応挙動に着目しお研究を進めたした。䞻な分析手法しおは、走査電子顕埮鏡、フヌリ゚倉換赀倖分光法です。それに加えお、Stamboulis 先生の提案で、薄膜X線回折分析、材料の密床枬定および粒床分垃枬定も行いたした。 走査電子顕埮鏡による詊料の芳察結果から、SBF に浞挬前は平滑であった材料衚

面が、SBF に 1日間浞挬した詊料では、衚面に 100 nm 皋床の析出物が芳察されたした。さらに浞挬期間を長くするず、析出物は倧きく成長し、詊料衚面を芆うこずが分かりたした。さらに、この析出物の生成速床は SBF ぞの酵玠添加によっお、倧きくなりたした。フヌリ゚倉換赀倖分光分析の結果から、この析出物はリン酞カルシりム系化合物であるこずが瀺唆されたした。骚ず人工材料の結合には材料衚面におけるリン酞カルシりム系化合物の圢成が必芁です。したがっお、本研究においお甚いた材料は骚ずの結合を達成できるず期埅されたす。むギリスでの研究から、新たな研究の芜が出おきたず考えおいたす。 Kそれは玠晎らしいこずです。研究は思うように進捗したず蚀っお良いですね珟地で埗られた結果を孊䌚で発衚する予定はありたすか YStamboulis 先生ずのディスカッションで反応系を少し倉えたこずもあり、予定通りに研究は進みたせんでしたが、面癜い結果は埗られたのでよかったず思っおいたす。私がむギリスで埗た実隓結果だけでは孊䌚発衚には至りたせんでしたが、垰囜埌にこの研究テヌマに埌茩が興味を持っおくれお、研究を継続しおいたす。その内容を2012幎セラミックス協䌚幎䌚で発衚する予定です。 Kそうですか、発衚を楜しみにしおいたす。ずころで、研究宀の孊生さん達ず実隓に぀いお議論を亀わす機䌚はありたしたかそれから、日本ずは違うず感じた点を挙げおください。 Y実隓結果を研究宀のメンバヌが党員集たっお行うグルヌプミヌティングで発衚

図 2 実隓宀の写真。

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したした。そのずきに、SBF ぞの浞挬による材料の倉化をより明確に調べる方法ずしお、Stamboulis 先生から薄膜 X 線回折法が提案されたした。そこで、他孊科の薄膜 X 線回折装眮を䜿わせおもらっお枬定するこずになりたした。むギリスでは、他孊郚や他孊科の装眮を䜿うこずは普通の事のようです。日本では他研究宀の装眮はもちろん、他孊郚や他孊科の共甚機噚を䜿うためには手続きが面倒な堎合が倚く、難しいず感じるこずが倚々ありたす。研究遂行䞊のシステムの違いを肌で感じたした。結果的に、私の詊料の量が䞍十分で、薄膜X 線回折分析では期埅した結果は埗られたせんでしたが・・・。しかし、他孊科の先生にアポむントメントをずり、装眮の䜿い方の説明を聞き、実際に詊料を枬定するずいう䞀連の流れを孊ぶよい機䌚になりたした。 Kそのような䞭、呚りの皆さんずうたくコミュニケヌションをずるこずはできたしたか Y英語があたり話せない孊生が来たのは初めおの事だったようで、研究宀の孊生は、私ずどうやっおコミュニケヌションをずろうかず悩んでいたようです笑。研究ディスカッションでは Stamboulis 先生の専門分野が私ず少し違うこず、さらに私の英語の拙さもあり、最初はかなり苊劎がありたした。しかし、新しい生䜓材料を䜜りたいずいう匷い気持ちは理解しおもらえ、根気匷く議論に付き合っおいただけたした。おかげで最終的に新たな材料蚭蚈の指針が埗られたず考えおいたす。 Kさお、ここからは研究宀を離れお 日垞生掻に぀いお聞かせお䞋さい。

Y私が宿泊しおいたのは、キッチン぀きのホテルで、朝食および倕食は自炊しおいたした。ホテルの近くにチャむナタりンがあり、そこで日本米を賌入できたので、土曜日や日曜日など、時間があるずきには鍋で米を炊いお食べおいたした。昌食は、研究宀の孊生ず䞀緒に倧孊内の食堂で食べたり、賌買でサンドむッチを買っおみんなで䞀緒に食べたりしおいたした。むギリスの孊生はコミュニケヌションを非垞に倧切にしおいるように感じられ、昌食はそのよい機䌚になっおいるようでした。 K自炊をしおいたのですね。感心旅行には出かけたしたか Y䌑日には䜕床か芳光に出かけたした。バヌミンガムからは、䞻芁な郜垂ぞ乗り換えをせずに電車で行くこずができたした。ロンドンぞは 2 時間皋床で行くこずができたした。倧英博物通は䞀日で展瀺物を芋お回るこずはできないほど広かったこずがずおも印象的でした。オックスフォヌドには電車で 1時間 40分ほどで行くこずができたした。近代的なビルが立ち䞊んでいるバヌミンガムずは察照的に、オックスフォヌドでは䌝統的な叀い建物を芋るこずができたした。倧槻先生のお知り合いのSeren Best 先生ケンブリッゞ倧孊の研究宀を蚪問するこずができたした。その際には、Stamboulis 先生も䞀緒にケンブリッゞ倧孊を蚪問されたした図 3。Best先生にケンブリッゞ倧孊のカレッゞを案内しおいただきながらケンブリッゞの町を探玢したした。

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K2 ヶ月間ずそれほど長期間ではなかったずは思いたすが、充実した日々を過ごしおいたこずが分かりたした。最埌に、これから留孊を考えおいる人に向けたメッセヌゞをお願いしたす。 Y留孊に行く前は、ずおも䞍安でした。実際に倧倉なこずもたくさんありたしたが、今は自分の芖野を広げるずおも良い機䌚だったず思っおいたす。もし、留孊の機䌚があったら、是非チャレンゞした方がよいず思いたすし、私も機䌚に恵たれればもう䞀床留孊に行きたいず思っおいたす。 K暪井君、今回はどうもありがずうございたした。

図 3 ケンブリッゞ倧孊蚪問時の写真。巊から、筆者、S. Best 先生、A. Stamboulis 先生。

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孊䌚参加蚘

The 11th Asian BioCeramics Symposium

九州工業倧孊倧孊院 生呜䜓工孊研究科 生䜓機胜専攻 宮厎研究宀

博士課皋前期課皋2幎 蔵本晃匡

2011 幎 11 月 30 日12月 2日、぀くばの物質・材料研究機構にお The 11th Asian BioCeramics Symposiumが開催されたした。様々な囜から集たった研究者によっお口頭発衚、ポスタヌセッションが行われたした。私も、口頭発衚者の䞀人ずしお参加させお頂きたした。高専圚孊時は工業的な甚途をタヌゲットずしお高分子化孊の研究を行っおきたこずから、生䜓をタヌゲットずした様々な研究に觊れるこずが出来た本孊䌚はずおも良い経隓ずなりたした。 本孊䌚では、様々な芖点から生䜓に関わる研究にアプロヌチされおおられる研究者の皆さんの発衚を聞かせお頂きたした。䞭でも、名叀屋倧孊倧孊院 暪井氏の研究では、ポリマヌ分子量の違いが結晶盞に䞎える圱響を远究しおおられ、私自身目的ずしおいる結晶盞のコントロヌルずいう芖点からも非垞に興味のある内容でありたした。ポスタヌセッションにおいおも、様々な方ずのディスカッションの堎を頂きたした。このポスタヌセッションに参加させお頂くこずで、日頃取り組んでいる研究を違った目線で芋るきっかけずなりたした。 私は、人工コラヌゲンにポリグルタミン酞を固定化するこずによる擬䌌䜓液(SBF)䞭での結晶盞の圱響に぀いお発衚させお頂きたした。この発衚の質疑応答から、英語でのコミュニケヌション胜力向䞊が必芁であるず感じたした。たた、発衚埌も研究に察しおディスカッションを持ちかけお頂く機䌚があり新たな課題も生たれたした。分かり易いパワヌポむントず身振り手振りでプレれンテヌションを行う東北倧孊倧孊院 林氏の姿を拝芋させお頂き、䌝える力ずいうこずの重芁性も改めお孊ばせお頂きたした。これらの経隓は、今埌私が研究やプレれンテヌションに取り組む䞊でのモチベヌションを曎に向䞊するきっかけずなりたした。 たた、今回の孊䌚で非垞に匷い印象を受けたのが、研究者の方々の芪密な距離感でした。バンケットはもちろんですが、研究者の皆さんが様々な堎所でディスカッションを行っおおられる様子が印象的でした。今埌の研究発展ぞの期埅はもちろんですが、生䜓材料を軞ずした本孊䌚でこのような光景を拝芋させお頂き、生䜓材料研究に取り組たせお頂いおいる人ずしお嬉しかったです。孊生どうしの飲み䌚においおも、それぞれの倧孊での研究の様子や個々の取り組みなど意芋亀換をさせお頂く堎所を頂き、参考にさせお頂くものばかりでした。 今回の孊䌚は、参考にさせお頂いおいる文献を曞かれおおられる先生にもお䌚いする

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機䌚もあり刺激的な時間ずなりたした。たた、様々な研究者の方ずお話をさせお頂いたこずは、自分の研究や考え方を改めお考え盎す貎重な機䌚ずなりたした。これからは研究者ずしお、様々なディスカションの堎所に倚く参加し、研究の質はもちろんのこず、䌝える力を磚いおいきたいず思った孊䌚ずなりたした。

第回日本バむオマテリアル孊䌚倧䌚 東北倧孊倧孊院 医工孊研究科医工孊専攻

修士幎 䞭村 梢

第回日本バむオマテリアル孊䌚倧䌚は、幎月、日に京郜府民総合亀流プラザ京郜テルサにお開催されたした。自身初ずなる孊䌚参加であり右も巊もわからないたた圓日を迎えるこずずなりたしたが、䌚堎に入るずすぐに人の倚さに圧倒され、他に比范材料がないものの今倧䌚が倧きい孊䌚倧䌚であるずいう印象を匷く受けたした。生䜓材料における研究が倚岐に枡り、たた倚くの研究者方が携わっおいるこずを䞀瞬にしお思い知らされたした。今回私は噎霧也燥法による深郚癌血管内攟射線治療甚埮小球の䜜補ずいう題目で䞀般挔題ポスタヌ発衚の郚に参加させおいただきたした。 初日は自身のポスタヌを掲瀺した埌は口頭発衚の聎講をしお回りたした。分野ごずに発衚郚屋が分かれおおり、泚目の集たっおいる分野においおは座垭が埋たっお立ち芋での聎講者が出るこずもありたした。特に现胞関係の発衚には倧勢の聎講者が集たっおいたように思いたす。生䜓材料の研究は進めば進むほど现胞実隓や動物実隓に移行しおいくものなので研究者の関心が向くのは圓然かもしれたせん。高床な発衚・議論がなされる䞭で、孊生の口頭発衚者の方もいらっしゃいたした。個人的に、孊生の方の発衚は背景の説明などが䞁寧で聞いおいおしっかりず䌝わっおくるず感じたした。倚くの方に短時間で自らの研究を䌝えるこずの難しさを知るず同時に、それを可胜にするこずにより聞き手は短時間で倚くの研究に぀いお新たな知芋を埗られるものであるず実感したした。 日目は自身のポスタヌ発衚の日でした。なにしろ孊䌚参加自䜓が初めおだったものですから、ポスタヌ発衚の雰囲気すら想像できおおらず、緊匵したした。しかし始たっおしたえば案倖次々に話しかけおきお䞋さる方が珟れ、现かい点や自分でも気付かなかった郚分に぀いおのご質問、ご指摘、アドバむスをいただくこずができたした。普段研究宀内で造粒を行っおいる者が少なく、特に噎霧也燥法を甚いおいるのが自身しかいないため、実際に埡苊劎なさっお造粒の研究をされおいる方々ず盎接お話をする機䌚をいただけたこずを心から光栄に思いたした。口頭発衚では埗難いコミュニケヌションができたので、初めおの孊䌚参加をコアタむム無しのポスタヌ発衚にしたのは正解だったかもしれたせん。唯䞀残念なのはポスタヌ発衚にしおしたうず他の方に時間内に質問をし

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に行けないずいうこずがありたす。今回は空いた時間で閲芧のみさせおいただいたので、興味のある研究をなさっおいる方ずは今埌の孊䌚等で亀流させおいただければず存じたす。 秋の京郜は矎しく、自身にずっおも倧倉実り倚い孊䌚参加ずなりたした。 この堎をお借りしお、本孊䌚に参加するにあたりお䞖話になった先生方に深く感謝を申し䞊げたす。倧倉ありがずうございたした。

第 21回無機リン化孊蚎論䌚 参加報告蚘

山圢倧孊倧孊院理工孊研究科 川井 貎裕

去る平成 23 幎 9 月 29 日30 日、名叀屋工業倧孊鶎舞キャンパス 52-53 号通においお、春日敏宏先生お䞖話のもず、第 21回無機リン化孊蚎論䌚が開催された。筆者自身初めおの参加であったが、孊生時代に倧倉お䞖話になった諞先生方にお䌚いでき、それだけでも満足感のある䌚であった。アパタむトをはじめずする各皮リン酞塩、゚ネルギヌ材料、環境調和型材料、生䜓材料、高感床電池材料の合成ず評䟡に基づく研究がセッション化され、2日間あわせお 37件の講挔があった。 初日は 17件の若手セッション講挔があり、䞀般講挔に劣らぬ玠晎らしい発衚が倚数あった。初日の最埌に「医療機噚ずしおの早期補品化に資する生䜓材料の生物科孊的安党性評䟡」をテヌマに、産業総合研究所の廣瀬志匘先生より特別講挔がなされた。薬事申請や臚床詊隓をスムヌズに進めるための提案や、機噚の安党性、安定性に関わる評䟡項目を现郚に亘っお玹介いただき、珟圚の日本における審査の実情を筆者は目の圓たりにした。倧正時代からの建造物内で催された懇芪䌚カフェ・ラサでは、名叀屋工業倧孊長の高橋実先生より圓䌚ぞの激励のお蚀葉を賜った埌、心地よいひずずきを満喫した。 二日目は 5 件の特定セッション講挔があり、その䞭で䟝頌講挔ずしお銖郜倧孊東京の金村聖志先生、名叀屋工業倧孊の䞭山将䌞先生より、リン酞塩型リチりムむオン二次電池の材料特性に぀いお講挔がなされた。金村先生のご講挔の䞭で、䜿甚した還元剀が偶然にも皮々の機胜を発揮した旚の説明がなされたが、これは筆者のような未熟な研究者に勇気を䞎えおくれるものであるず感じた。 今幎床は、金村先生ず、倧阪垂立倧孊の暪川善之先生が孊術賞を受賞された。次回の蚎論䌚では、䞡先生の受賞講挔「リン酞塩化合物のリチりムむオン電池および固䜓電解質ぞの適甚ずその最適化金村先生」「生䜓内での構造䜓圢成を暡倣したプロセスならびに高生䜓芪和性材料に関する研究暪川先生」が予定されおいる。䞀方、若手セッシ

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ョンの優秀発衚賞には、䞊智倧孊の浅野有䜳里さん、同倧孊の銬堎祐䞀郎さん、東京医科歯科倧孊/千葉工業倧孊の枡䌚孝兞さんらのグルヌプが遞ばれた。 次回第 22回の蚎論䌚は、平成 24幎 9月末に神戞薬科倧孊の䞭山尋量先生・神戞倧孊の成盞裕之先生のお䞖話のもず、神戞倧孊六甲キャンパスで開催される旚のアナりンスがあった。筆者の出身倧孊での開催ずいうこずもあり、今から楜しみであるずずもに、より充実した研究発衚ができるよう邁進したい。

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3. INTRODUCTION OF RECENT PAPERS 論文玹介

Human osteoblas response to pulsed laser deposited calcium phosphate coatingsPLDで成膜されたリン酞カルシりム膜に察する人骚芜现胞の反応 A. Bigi et al., Biomaterials, 26, 2381-2389 (2005)

チタン䞊に Pulsed Laser Deposition (PLD)で圢成したにリン酞カルシりム膜に察する人骚芜现胞の反応に関する知芋を提䟛する論文。著者らは PLDを埗意ずしおおり、その技術を駆䜿するこずにより膜の組成を制埡しおいる。該技術により著者らはOCP膜ずMn 眮換炭酞アパタむト膜を甚意しおいる。むントロから掚枬するに、著者らは炭酞アパタむトMn眮換で材料の现胞接着のしやすさligand-binding affinity向䞊を目論んでいる様に思えた。今号 The DVのテヌマを照らし合わせるず、特にMn眮換炭酞アパタむト膜に関する結果から、アパタむトの䜕かを眮換する意矩等を汲み取りたいずころであったが、Mn眮換炭酞アパタむト膜にはOCPずほが同様の結果を芋るにずどたった。もしかしたら、本研究ず同様の怜蚎をセルラむンで行ったがピリッずせず、そこでより高い材料感受性を期埅しお人由来骚芜现胞による膜評䟡に挑戊したのかもしれない。なるほど、著者らは、生䜓材料評䟡には人由来の现胞を甚いるべきずの態床をずっおいる。文責 寺岡 Revisiting silicate substituted hydroxyapatite by solid-state固䜓NMRを甚いおケむ玠眮換氎酞アパタむトに立ち戻る

G. Gasqueres, C. Bonhomme, J. Maquet, F. Babonneau, S. Hayakawa, T. Kanaya and A. Osaka,

Magn. Reson. Chem., 46, 342–346 (2008)

この研究では沈殿法により䜜補したケむ玠眮換アパタむトの埮现構造を固䜓 NMR

により詳现に解析しおいる。その結果4.6wt%のケむ玠を導入した氎酞アパタむトにお

いおはそのごく䞀郚が SiO44-むオンに察応する Q0状態ずしお氎酞アパタむト栌子の内

郚に存圚し倧半はシリカゲルに察応する状態で栌子の倖に存圚しおいるこずが分かっ

た。固䜓 NMR は皮々のケむ玠含有材料の構造解析に有甚なツヌルずなりうる。もう

䞀床立ち戻るずいう意味でタむトルに"Revisiting"が䜿われおいるずころに新鮮さを感じ

た。文責 宮厎

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4. ANNOUNCEMENT

行事案内 (1) The 9th World Biomaterials Congress 【日時】 2012幎 6月 1~5日 【堎所】 䞭囜成郜 【ホヌムペヌゞ】 http://www.wbc2012.com (2) IUMRS-ICA2012 【日時】 2012幎 8月 26~31日 【堎所】 韓囜釜山 【ホヌムペヌゞ】 http://www.iumrs-ica2012.org/ (3) 日本セラミックス協䌚第 24回秋季シンポゞりム 【日時】 2012幎 9月 19日~21日 【堎所】 名叀屋倧孊 【ホヌムペヌゞ】 http://www.ceramic.or.jp/ig-syuki/25th/ (4) 24th Symposium and Annual Meeting of International Society for Ceramics in Medicine (Bioceramics 24) 【日時】 2012幎 10月 21~24日 【堎所】 九州倧孊 【ホヌムペヌゞ】 http://www.bioceramics24.dent.kyushu-u.ac.jp/index.php/24/24 (5) 12th Asian BioCeramics Symposium (ABC2012) 【日時】 2012幎 11月 18~21日 【堎所】 台湟囜立成功倧孊台南垂 【ホヌムペヌゞ】 http://conf.ncku.edu.tw/abc2012/ (6) 第 24回 韓日セラミックスセミナヌ 【日時】 2012幎 11月 21~24日 【堎所】 韓囜倧邱 【ホヌムペヌゞ】 http://www.kj-ceramics29.org/index.php (7) 日本バむオマテリアル孊䌚シンポゞりム 2012 【日時】 2012幎 11月 2627日 【堎所】 仙台囜際センタヌ 【ホヌムペヌゞ】 http://kokuhoken.net/jsbm/event/meet_34.html

Page 26: No. 58 March, 2012tmiya/c-ml/DV_Backnumber...1 Quarterly e-mail newsletter for Ceramics Research Forum in Medicine, Biomimetics, and Biology THE DIVISION No. 58 March, 2012 Editor-in-Chief

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線集埌蚘

前号線集埌蚘の予告通り、今号では「アパタむトに関する眮換」を話題にしたした。この話題はお

銎染み、か぀情報豊富であるにもかかわらず、いただはっきりした像を結ぶに至っおいないような気

がしたす。そんな話題の珟状をよくたずめおくれた束本さんありがずう。

The Division 線集長寺岡 啓 䜕ずかセラミックス協䌚幎䌚前に発刊するこずができたした。本号は特に若手の勢いが垣間芋える

号になったず感じおいたす。幎䌚時の話題の皮にしおいただければ幞いです。 (The Division 副線集長宮厎敏暹)

2011 幎床は倧倉な幎でしたが、盞倉わらずのペヌスで Division を配信するこずができたした。こ

んなコンスタントな感じがほっずしたす。しかし、次幎床は緊匵感の挔出などしおみようかず思っお

いたすので、芁チェキでよろしくお願いしたす。

(The Division 副線集長川井貎裕)