MALDI イメージングの質とスピードが改良された ... - Waters ......HDMS は Waters...

2
1. 新しい MALDI SYNAPT G2-Si レーザーのフォーカスされたレーザービームプロファイル 要約 レーザープロファイルが改良された新しい レーザーが MALDI SYNAPT ® G2-Si HDMS™ シス テムに装備されました。その結果、イメージ ングの質が強化され、サブ 50 マイクロメート ルのピクセルサイズにおいて感度が向上しま した。装置のコントロールの最適化を行うこ とによって、レーザーの繰り返し周波数の高 速化とも相まって、データの取得も高速化さ れました。 背景 窒素レーザーよりも速い繰り返し周波数を提供 できるダイオード励起 Nd:YAG レーザーのよう な固体レーザーの使用は MALDI イメージング のアプリケーションの発展において重要になっ ています。MALDI SYNAPT G2-Si 2.5 kHz 高速な繰り返し周波数のレーザーによって、分 析のスピードを加速することができます。レー ザーの寿命も長くなっており、通常数十億 ショットが可能です。 イメージングの空間分解能にとっては、オー バーサンプリングすることで部分的には克服 可能ですが、レーザーのフォーカスした直径 が限界となります。MALDI SYNAPT G2-Si 改良されたレーザーのビームプロファイルに よって、厳密なフォーカスが可能になりました。 新しいレーザーによって MALDI SYNAPT G2-S i HDMS 組織切片の分析を高速化し、高空間分解能によって データの質を高めることで、 MALDI イメージングの可能性を向上させました。 ソリューション MALDI SYNAPT G2-Si HDMS 質量分析計は新しいレーザーを導入することで 以下の点が改善しました。 レーザーの繰り返し周波数の高速化と、分析スピードの高速化 100 Hz から 2.5 kHz までの可変レーザー繰り返し周波数 シャープでより円形になった低離心率のビームプロファイル 高い空間分解能による MALDI イメージングのデータの質の向上 レーザーの発信とサンプルステージの移動の同期を改善することにより データ取得時間を短縮 MALDI イメージングの質とスピードが改良された MALDI SYNAPT G2-S i HDMS

Transcript of MALDI イメージングの質とスピードが改良された ... - Waters ......HDMS は Waters...

  • 図 1. 新しい MALDI SYNAPT G2-Si レーザーのフォーカスされたレーザービームプロファイル

    要約

    レーザープロファイルが改良された新しい

    レーザーが MALDI SYNAPT ® G2-Si HDMS™ シス

    テムに装備されました。その結果、イメージ

    ングの質が強化され、サブ 50マイクロメート

    ルのピクセルサイズにおいて感度が向上しま

    した。装置のコントロールの最適化を行うこ

    とによって、レーザーの繰り返し周波数の高

    速化とも相まって、データの取得も高速化さ

    れました。

    背景

    窒素レーザーよりも速い繰り返し周波数を提供

    できるダイオード励起 Nd:YAGレーザーのよう

    な固体レーザーの使用は MALDIイメージング

    のアプリケーションの発展において重要になっ

    ています。MALDI SYNAPT G2-Si は 2.5 kHz の

    高速な繰り返し周波数のレーザーによって、分

    析のスピードを加速することができます。レー

    ザーの寿命も長くなっており、通常数十億

    ショットが可能です。

    イメージングの空間分解能にとっては、オー

    バーサンプリングすることで部分的には克服

    可能ですが、レーザーのフォーカスした直径

    が限界となります。MALDI SYNAPT G2-Si の

    改良されたレーザーのビームプロファイルに

    よって、厳密なフォーカスが可能になりました。

    新しいレーザーによって MALDI SYNAPT G2-Si HDMSは

    組織切片の分析を高速化し、高空間分解能によって

    データの質を高めることで、

    MALDIイメージングの可能性を向上させました。

    ソリューション

    MALDI SYNAPT G2-Si HDMS 質量分析計は新しいレーザーを導入することで

    以下の点が改善しました。

    ■ レーザーの繰り返し周波数の高速化と、分析スピードの高速化

    ■ 100 Hzから 2.5 kHzまでの可変レーザー繰り返し周波数

    ■ シャープでより円形になった低離心率のビームプロファイル

    ■ 高い空間分解能による MALDI イメージングのデータの質の向上

    ■ レーザーの発信とサンプルステージの移動の同期を改善することにより

    データ取得時間を短縮

    MALDIイメージングの質とスピードが改良されたMALDI SYNAPT G2-Si HDMS

  • 日本ウォーターズ株式会社 www.waters.com東京本社 140-0001 東京都品川区北品川1-3-12 第 5小池ビル TEL 03-3471-7191 FAX 03-3471-7118大阪支社 532-0011 大阪市淀川区西中島5-14-10 サムティ新大阪フロントビル11F TEL 06-6304-8888 FAX 06-6300-1734ショールーム 東京 大阪テクニカルセンター  東京 大阪 名古屋 福岡 札幌 富山

    Waters、SYNAPT および The Science of What’s Possible は Waters Corporationの登録商標です。 HDMS は Waters Corporationの商標です。その他すべての登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。

    ©2014 Waters Corporation. Printed in Japan.  2014年4月 720004791JA PDF

    図1はMALDI SYNAPT G2-Si HDMSで導入されたレー

    ザーのフォーカスプロファイルを示しています。

    離心率が低く、より円形に近くなっています。レー

    ザーの半値幅(FWHM)はおよそ 30マイクロメート

    ルで、以前のレーザーよりも小さくなっています。

    イオン化の領域に影響を与えるレーザーフルエン

    スは内蔵の可変減光フィルターによって制御され

    ます。

    ラット全身の組織切片を用いて以前のレーザーと

    新しいレーザーで得られるデータの質を比較する

    MALDI イメージング測定を行いました。比較には

    同じサンプルで同じ前処理を行い、同じ質量分析

    計を用いました。

    両方のレーザーでレーザーフォーカスの直径を可

    能な限り最小化し、サンプルターゲットプレート

    を 15、20、50マイクロメートルのピクセルサイズ

    (ピッチ)で動くようにプログラムしました。図 2に

    それぞれの測定の積算したスペクトルを示しました。

    すべての測定でバックグラウンドノイズが明確に減

    少し、MALDI SYNAPT G2-Si レーザーにおいて、特

    に 15マイクロメートルと 20マイクロメートルの

    ピクセルサイズで、脂質のピーク強度が高くなりま

    した。

    図 3はラット小脳の解剖学的領域に非常に特異的

    に分布する 3種類の脂質の重ね合わせになります。

    赤で示した脂質は小脳の灰白質に、青で示した脂

    質は白質に、緑で示した脂質は軟膜に局在してい

    ます。白質層と軟膜層は断面積で 100 - 200マイク

    ロメートル以下にも関わらず、両者を区別するこ

    とができています。 まとめ

    MALDI イメージングの高空間分解能測定において、MALDI SYNAPT G2-Si HDMSはより高速に低いノイズでデータを取得することが可能になりました。これは

    レーザーのフォーカスとパルスの同期を改善することによって実現されました。

    図 2. 15、20、50マイクロメートルのピクセルサイズで行った MALDI イメージング測定で得られた積算したスペクトルの質の比較。全体として、バックグラウンドノイズが低くなり、特にサブ50マイクロメートルの空間分解能において、MALDI SYNAPT G2-Si レーザーを用いると脂質のピーク強度が高くなっています。

    図 3. ラット小脳の部位を非常に明確に区別する 3種類の脂質の重ね合わせ。m/z 713.5の脂質は灰白質に、m/z 560.3の脂質は軟膜に、m/z 526.6の脂質は白質に局在しています。