Jensen不等式を活用した解法

11
83 回北数教数学教育実践研究会 平成 24 12 1 日(土) アスティ 45 ビル 10 階セミナールーム t 0 1 2 3 1 2 3 4 5 大学入試問題分析 Jensen 不等式を活用した解法 凸不等式から得られるもの 松本睦郎(札幌北高等学校) 大学入試問題には、様々な特殊不等式を活用した問題が出題される。教科書、問題集に おいて、「相加平均・相乗平均」,「シュワルツの不等式」は、記載されている。 しかし、「Jensen の不等式」は、あまり活用されていない。 一見すると難問に見える大学入試問題が、「Jensen の不等式」を利用すると、簡単に解 法できるケースがある。今回は、「Jensen の不等式」を活用した例題をまとめた。 Episode1 凸不等式 関数 ݕൌ ሺݔは、 ݔ0において、 ᇱᇱ ݔሻ0を満たす。 ݔ 0, ݔ0において ݏ ݐൌ 1, ݏ 0, ݐ0 ݔݏ ݔݐݏ ݔݐ ݔProof ᇱᇱ ݔሻ0より ݕൌ ሺݔは、下に凸の曲線である。 「曲線 AB は、線分 AB よりも下に存在する。」(↓) B P A Q A൫ ݔ, ሺ ݔሻ൯, ܤ ݔ,ሺ ݔሻ൯とし、 Q൫ ݔݏ ݔݐ, ሺ ݔݏ ݔݐሻ൯, ൫ ݔݏ ݔݐݏ, ݔݐ ݔሻ൯ P は、線分 AB ݏ:ݐに内分する点である。上図より ݔݏ ݔݐݏ ݔݐ ݔQ.E.D.

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第83回北数教数学教育実践研究会 平成24年12月1日(土) アスティ 45 ビル 10 階セミナールーム

t

0 1 2 3

1

2

3

4

5

大学入試問題分析

Jensen 不等式を活用した解法

凸不等式から得られるもの

松本睦郎(札幌北高等学校)

大学入試問題には、様々な特殊不等式を活用した問題が出題される。教科書、問題集に

おいて、「相加平均・相乗平均」,「シュワルツの不等式」は、記載されている。

しかし、「Jensen の不等式」は、あまり活用されていない。

一見すると難問に見える大学入試問題が、「Jensen の不等式」を利用すると、簡単に解

法できるケースがある。今回は、「Jensen の不等式」を活用した例題をまとめた。

Episode1 凸不等式

関数 は、 0において、 0を満たす。

0, 0において 1, 0, 0

Proof

0より は、下に凸の曲線である。

「曲線 AB は、線分 AB よりも下に存在する。」(↓)

B

P

A

Q

A , , , とし、

Q , , ,

点 P は、線分 AB を : に内分する点である。上図より

Q.E.D.

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0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5

-4

-2

2

Episode2 相加平均・相乗平均

, , , は正の実数とする。このとき

3

を証明せよ。 信州大学 2010 後期

Proof

0 とおく。

上の異なる 3 点 , , , , , ,△PQR の重心 G とすると、

G3

,3

上の点

S3

,3

1

10

のグラフは、上に凸なので、

R

S

Q

G

P

3 3

13 3

3

Q.E.D.

第83回北数教数学教育実践研究会 平成24年12月1日(土) アスティ 45 ビル 10 階セミナールーム

Episode3 重み , , に関する , , の加重重心

平面上に 個の点 , , が存在し、

, 0

を満たす実数とする。

1

が成立するとき、

点 P を重み , , に関する , , の加重重心

Episode3 点の重心

平面上に 個の点 , , が存在し、

1

個の点 , , の重心

Episode5 Jensen の不等式

0において、 0

2, 0, 0, , 0とする。

1, 0, 0. , 0 のとき、

Proof

に関する数学的帰納法によって証明するのが一般的である。

2の時

0, 0, 1 前述の Episode1 凸不等式より

は成立する。

の時

1, 0 1,2,3, ,

が成立すると仮定する。

1の時

α 1, α 0, α 0, α 0, , α 0, α 0

とする時

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0 1 2 3

1

2

3

4

5

, とおくと、 1, 0, 0

, 1,2, ,

,

1

α x

1の時も成立する。

以上より、すべての自然数 について

1, 0, 0. , 0 のとき、

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0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.20.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

Example1

正の実数 , , に対して

A とB 2 の大小関係を調べよ。

東京工業大学 1999

[解答例]

とおく。

, 1

(ⅰ) 1の場合

0の時、 0となるので、 は、下に凸のグラフである。

点 , ,Y , , , 0 , , 0 とおく。

線分 PQ の中点 , 0 ,弧 AB 上の点 , ,線分 XY の中点L ,

右図より

Y

L

M

X

P R Q

2 2

21

2

2

B

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0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.20.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.20.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

(ⅱ) 1の場合 Y

L M

X

,

A B

(ⅲ)0 1の場合

1 0

は、上に凸のグラフ

Y

M

L

X

2 2

21

2

2

B

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0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0

-3.0

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

Example2

, , はα 0, 0, 0, を満たすものとする。

このとき、 の最大値を求めよ。

京都大学 1999 後期

[解答例]

, 0 のグラフについて 0より0

同様にして

0 , 0

10

, 0 のグラフは、上に凸のグラフである。

, , , , , とおく。

△ABC の重心 G の y 成分は、

3 3 3

3 3 3√32

B

G

A

C

3 3

3

√32

3√32

sinα sinβ sinγ√32

3√38

の時、等号成立。

第83回北数教数学教育実践研究会 平成24年12月1日(土) アスティ 45 ビル 10 階セミナールーム

0.0 0.5 1.0 1.5 2.00.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

Example3

正の実数 , , が、 1を満たしているとき、

√1 √1 √1 1

を示せ。

日本数学オリンピック 2005 年

[解答例]

0

とおく。

13

,29

0

0より。 は、上に凸のグラフである。

Jennsen の不等式より

1 2 0

1 2 0

1 2 0

とおくと、

√1 √1 √1 1 1 1

√1 √1 √1 √

√1 √1 √1 1

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=

a

0 2 4 6 8 100

2

4

6

8

10

Example4

を実数とする。また、関数 を 1の範囲において

1 1 。

(1)関数 が単調減少であるための の条件を求めよ。

(2)級数

が正の無限大に発散するような の条件を求めよ。

札幌医科大学 2012

解答例

(1)省略

のグラフは の変化に

より、様々なグラフになる。

(2) 0を示す。

1 1

1 1

11

11

11

11

1

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2 14

1 1

1 なので、

2 1 0

両辺を で割ると、

2 1 0

2 0

を実数なので、判別式<0

2 4 0

2 4

0 4

1 0 なので、

0

2 3

0より、 のグラフは、下に凸なので、Jensen の不等式

2 31

2 31

12 3

1

左辺 11

2 31

2 31

12 3

11

11

22

22

12

21

=2 1

21

51

2 12

51

15

1

(ⅰ) 0の時

2 12

51

15

15 2

21

51

(*)より は発散する。

は正の無限大に発散する。

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(ⅱ) 0の時

左辺2 1

25

11

51

5 15

15

と収束してしまう。

1 1 より

2 3

3 4 5 1 2 3 1

= 2 1 ∞

0の時

は発散する。

(ⅲ) 0の時

左辺2 1

25

11

51

2 5 2 15

1∞

は発散する。

(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)より、 0のとき

級数

は発散する。