ドローンの多目的な活用に向けて

～山梨の美しい棚田を守ろう～

平成30年3月20日

（公財）山梨総合研究所 主任研究員 相川喜代弘

平成29年度環境ビジネス研究会 発表資料

視点

棚田の保全に向けたドローンの活用

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【相川ドローン撮影 南アルプス市 上市之瀬・下市之瀬の棚田 2018.2.11】

棚田とは

・棚田とは、山の斜面や谷間の傾斜地に階段状に作られた水田のことをいいます。

日本にある約250万㌶の水田のうち約22万㌶（8％)が棚田だといわれています。

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ＮＰＯ法人棚田ネットワークＨＰより

棚田の機能

・棚田には、人や環境にとって、さまざまに有益な「多面的な機能」があるといわれ

ます。

・代表的な機能として、「食糧生産」「保水」「洪水調整」「国土保全」「生態系保全」

「保健休養」などがあげられます。

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ＮＰＯ法人棚田ネットワークＨＰより

棚田の機能（食料生産）

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ＮＰＯ法人棚田ネットワークＨＰより

棚田の機能（水源かん養・保水）

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ＮＰＯ法人棚田ネットワークＨＰより

棚田の機能（洪水調整、国土保全）

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ＮＰＯ法人棚田ネットワークＨＰより

棚田の機能（生物多様性・生態系保全、保健休養）

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ＮＰＯ法人棚田ネットワークＨＰより

山梨の棚田の魅力

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・山梨には美しい棚田がある。

・山梨には歴史ある棚田がある。

・山梨には地域住民を繋ぐ棚田がある。

・山梨には交流を生む（都市と農村を結ぶ）棚田がある。

美しい棚田

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・南アルプス市中野地区（富士山の見える棚田）

写真家 青柳健二 氏 2013/05/10

富士山の見える棚田（４） 山梨県南アルプス市 富士山と甲府盆地を望む中野の棚田 ＨＰより

【中野の棚田】逆さ富士が見える棚田｜シティリビングWeb ＨＰより

歴史ある棚田

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・甲斐市亀沢地区

この地域の、御領、日影林、横田など一体を、通称「御領千枚田」群と言い、かつては3町歩(3ヘクタール)で1000枚余を超えていた。特に、箕笠に隠れるほどの小さい棚田が連なっていたことから、「笠隠れ田」とも呼ばれた。歴史は古く徳川幕府始めの天正11年、(1583年）に天沢寺(現在の睦沢地区亀沢)が、徳川家康より賜った「御朱印地」が始まり。 【NPO法人・敷島棚田等農耕文化保存協会ＨＰより】

地域住民を繋ぐ棚田

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・甲府市帯那地区帯那地域活性化推進協議会甲府市北部の千代田地区という中山間地域にあり、農林業を中心に営んでいる上帯那町・下帯那町2町の住民約200戸で構成されている協議会です。

中山間地域にあるため、農業者の高齢化や担い手不足、また度重なる鳥獣害により耕作放棄地が増加しているなか、耕作放棄地を再生利用しながら地域のPRを兼ねた地域活性化を図ろうということになり設立されたものです。

協議会の活動につきましては、耕作放棄地を再生利用した畑において「じゃがいも収穫祭」の開催や「菜の花作り」を行っており、農業と景観作りを通して地域の活性化や都市住民との交流活動を続けているところです。

具体的には、山梨県の耕作放棄地整備・景観保全事業を導入し、耕作放棄地から再生した農地を活用して、会員の家族が通う市内幼稚園の農業体験（じゃがいもの掘り取り）の受入れ（平成16年～）、農業機械メーカーの支援を受けての「菜の花プロジェクト」の取組(平成21年～）、(株)ファミリーマートとの「企業の農園づくりに関する協定」締結(平成23年5月)と社員等の農業体験活動の受入れ（平成23年～）などを行っています。

今後は、高付加価値の米作りや市民農園の開設などを行う計画で、耕作放棄地の再生利用・都市農村交流などを積極的に行い、地域の活性化を図っていくことを予定しています。

【帯那地域活性化推進協議会ＨＰより】

交流を生む棚田

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・富士川町平林地区

富士山大好き ～写真を最高！ ＨＰより

・平林区民全員で組織する「平林活性化組合」が行う棚田オーナー制度は、棚田の保全とともに、農家と都市住民、都市住民同士の交流の場を提供し、耕作を継続していこうとするものです。

交流を生む棚田

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・北杜市増富地区

えがおマルシェ ＨＰより

『都市と農山村が、お互いに元気になる社会』をめざし、CSR活動の一

環として三菱地所グループとえがおつなげてが取り組んでいる「空と土プロジェクト」。

自然体験や農作業等の交流を通じて、互いの課題を認識し、都市と農山村がともに支えあう持続可能な社会の実現にむけて、さまざまな活動を行っている。「空と土プロジェクト」で増富・御門地区の小さな棚田を４枚開墾。

棚田の課題

耕作放棄地の増加

人口流出による過疎化・高齢化に伴う担い手不足

平地に比べて低い生産性と資産価値

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棚田の可能性と対応の方向性

1. 棚田（風景）が持つ美しさ、癒し

2. 棚田米（食味）の良さ

棚田（含む地域）の魅力を理解してもらう

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ドローン活用の視点①（魅力ある棚田地域に向けて）

1. 棚田がもつ美しさ、癒し、楽しさを地域住民と国内外の観光客（消費者）に情報発信（ＰＲ）

ドローンによる地域おこしと情報発信（デジタルアーカイブによる住民参加に向けて）

ドローンＣＡＭＰ（操作研修会）の実施と観光誘客

ドローンの夜間飛行によるナイトアクティビティの開発とインバウンド誘客

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ドローンによる地域おこしと情報発信

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「日本一ドローンが飛ぶ町」を目指す四国徳島の山奥の町・那賀町での取り組み・「ドローンマップ」の作成： 空撮に最適なオススメ飛行スポットをまとめたドローンマップを作成。・「ドローンを使用した防災訓練」の実施：土砂災害が発生したという想定で訓練を実施。・「第3回国際ドローン展」（2017年4月19日(水)～2016年4月21日(金）、千葉県・幕張メッセ）に

ドローン推進室が出展。・建設業・林業事業者でのドローンの活用。・那珂高等学校（森林クリエイト科）でのドローン操作実習（10時間）。・小学校でのドローン組み立て講座の開催。

ドローンＣＡＭＰ（操作研修）の実施と観光誘客

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クラウドファンディング企画がスタート！ドローンと専用ゴーグルから景色を眺め、まるで自身が空を飛んでるかのような体験をできる上山空旅をお届けします。

岡山県美作市 ＮＰＯ法人英田上山棚田団

今回の一泊二日ドローンツアー企画をやってみて、ドローンを地域でどう活用していけばいいか？という部分を考えてみます。まずドローン単体で観光はできなくはないけど、限界があるなとやってて思います。例えばドローン操作してGogglesつけて空からの眺めが自由にみえます、それはそれで楽しいです･･･。けどこれ単体では限界があって、その他の地域が持つ何かと掛け合わせることは必須かなと。この日は同じ上山メンバーに協力してもらい、上山のお米からとれた酒粕鍋。上山棚田米や上山産しいたけなどなど上山食材の料理は好評。

日程：11月25日・26日（土・日）イベント参加費：大人（中学生以上）：11000円 （宿泊費含まず、送迎無料）子ども（小学生以下）：5500円 乳幼児：無料

■上山集楽内古民家２棟での民泊（簡易宿所の許可取得物件） 4000円/泊

ドローンの夜間飛行によるナイトアクティビティの開発とインバウンド誘客

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自然が多く、人家が少ない田舎でドローンの夜間飛行1.ドローンを活用した夜間飛行体験ツアー2.ドローンに搭載した赤外線カメラを用いた夜間の野生動物の探索ツアー

訪日外国人の不満が高いナイトライフへの活用、都市住民との交流における地域理解への活用地域資源（有害獣）の観光資源としての活用

ドローンの活用に向けて

ドローン活用に向けた国家戦略特区（地方創生特区）の認定

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・観光振興に向けたドローンの活用特区⇒夜間飛行における規制緩和の実現

ドローンの活用の視点②（魅力ある棚田地域に向けて）

2. 棚田米の生産性向上と付加価値米の販売強化への取り組み

ドローンを活用した農作業の省力化・効率化に向けた調査研究

赤外線センサーを搭載したドローンを活用したおいしい棚田米のみえる化に向けた調査研究

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ドローンを活用した農作業の省力化・効率化に向けた調査研究

ヤンマーアグリジャパンが開発している「可変施肥」（茨城県）

•ドローンに赤外線カメラを搭載し、ほ場を上空から撮影すると可視光では見えない土壌の状況が分かり、追肥がどの程度必要かどうかを判断することができる。そのデータに基づいて追肥することで、無駄な施肥をしなくて済む。

もぐら・ねずみ対策

•ドローンに赤外線カメラを搭載し、もぐらやねずみを上空から撮影し、駆除等に活用する。

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赤外線センサーを搭載したドローンを活用したおいしい棚田米のみえる化に向けた調査研究

棚田ブランド米「土佐天空の郷（さと）」での営農技術のみえる化（高知県本山町）

•各地区の水田に水位や水温を自動計測できる通信機能付きのセンサーを計１００台設置。一部は温・湿度や雨量、照度などを測る気象計も備え、蓄えたデータをインターネット経由で生産者が閲覧可。あらゆるものがネットにつながる「ＩｏＴ」の農業分野への応用。棚田は高低で栽培環境が異なり、水位などの管理も難しい。各所に設けた水田センサーのデータの活用で産地としての壁を乗り越え、低たんぱく質で粒が整った高品質米の生産拡大につなげる。ドローンを使って傾斜した棚田の見回りなど農作業の負担軽減や水回りなど、農作業の見える化を行い、ベテラン農家の知恵を新規就農者にも伝えやすくする。

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まとめ

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•ドローンをきっかけに、棚田（地域）の魅力が再認識されるとともに、子どもたちが棚田を訪れる機会が増え、棚田の持つ美しさ、棚田の楽しさ（生物多様性を含む）や癒し、棚田米のおいしさなどを感じ取ってもらえれば、きっと、棚田は守られると思います。

【その他】

「日本の棚田百選（※1）」には山梨の棚田は一つも選定されていません。また、県が指定する地域産業資源（※2）にも「棚田」は指定されていません。この対応を促すとともに、県民の方に対して棚田が持つ機能と価値についての理解を深めることが必要と考えます。※1 １９９９年７月農林水産省によって、日本全国の１１７市町村、１３４地区の棚田が「日本の棚田百選」に認定。

※2 地域経済の活性化および地域中小企業の振興のため、地域資源を活用した新商品・新役務の開発や販路開拓に意欲的に取り組む中小企業を支援するための「中小企業地域資源活用促進法」に位置づける地域産業資源（農林水産物、生産技術、観光資源）。