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1 エネルギー機能材料学特論 9回目 担当:西野信博 A3-012号室 [email protected] プラズマ実験装置NSTX(Princeton)

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エネルギー機能材料学特論 第9回目

担当:西野信博

A3-012号室

[email protected]

プラズマ実験装置NSTX(Princeton)

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授業の内容

• プラズマ生成法 その2

– 大別すると,電極,磁場を用いるかどうか?で分かれる。

• 電極を使用した方法

– 磁場なし

• アーク放電(常圧近辺)からグロー放電(低圧)

– 磁場有

• PIG放電(低圧)

• 電極を使用しない方法

– 磁場なし

• SWP放電, 低圧ICP放電(ともに低圧)

– 磁場有

• ECR放電,ヘリコン波(ともに低圧)

参考図は、主に以下より引用「プラズマ気相反応工学」内田老鶴圃「プラズマの生成と診断」コロナ社

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熱(平衡)プラズマの生成

• プラズマ中の構成粒子(電子,イオン,中性原子)の温度がほぼ等しく,熱的に平衡に近い状態であるプラズマを熱(平衡)プラズマと呼ぶ

• サハの式(後述)が成り立つ

• 実験(地球上)では,大気圧程度かそれ以上の圧力下で発生しやすい

• 応用例としては,プラズマの熱を利用するアーク溶接,化学反応も利用するプラズマ溶射などが知られている。

• これらのプラズマの生成法は,電極を用いた定常放電で,負極から放出する電子による放電形態であり,主に,圧力によって,アーク放電とグロー放電に分かれる

• アーク放電,グロー放電は第3回目でも簡単に説明したが、ここでは生成方法を補足説明する

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アーク放電(復習+α)

• 陰極表面の電流密度が高く,融点の高いタングステン,タンタル,炭素などを陰極に用い,常圧前後で放電する

• 主にイオンによる陰極への衝撃で,陰極表面が局所的に高温(~2000℃)に加熱され,熱電子放出が起こる放電持続機構

• アーク放電の特徴を図で説明すると

陰極降下の電圧は10V前後

熱平衡に近いプラズマ

電流密度は高い~106A/m2になることも!

j

陰極物質の分子を含む

再掲

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いろいろなアーク放電の写真

• 熱ピンチアーク

• テスラコイルによるアーク放電

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物理的考察

• 熱平衡に近い条件となるには,電子と母体のガスやイオンが同じ程度の温度になる必要がある。– 電子とイオンやガスとの衝突が頻繁に起こることが必要– 平均自由行程がプラズマのサイズより小さいことが必要

• 下に,圧力による円柱プラズマの温度分布の概念図を示す。– (a)では,圧力が低いため、電子の平均自由行程が長く、衝突間に電子が

十分加速され,高エネルギーとなる。熱平衡でないグロー放電– (c)では,圧力が高く、電子の平均自由行程が短い– 電子とイオン,ガスが同程度の温度となっている。

再掲

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熱ピンチアーク

• アーク放電で,周りを何らかの方法で冷やすと電流の通るパスが細くなるため,電流密度が大きくなる「ピンチ効果」

• この場合,電磁気学での「最小発熱の定理」(=発熱量を最小にする

ように電流が流れる),言い換えれば,「エントロピーの単位時間当たりの生成量を最小とする」がなりたち,アーク柱が高温になる。

• このため,空気中などでは高温の方が浮力が大きくなるので,アーチ上に湾曲する(アーク(arc)の語源)

• このようなピンチ効果が起こったアークを熱ピンチアークと呼ぶ

• 通常のアークは5-6千℃

• 熱ピンチアークは2-3万℃

• プラズマトーチ

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連続体の条件と熱平衡

• プラズマが連続体として扱う場合は、空間の各点におい局所熱平衡を仮定し、各点の性質が速度v(r、t)、密度n(r、t)、温度T(r,t)などの熱・流体力学量で表されると考えることである。

• 熱平衡条件下での粒子組成

• において、平衡状態では右から左への反応とその逆方向の反応が釣り合う(詳細釣り合い)。

• [A]をAの濃度を表す記法を用いると、

AB A B

TpKAB

BA , ここで、Kは平衡定数と呼ばれる

統計熱力学より

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サハ(Saha)の式

• Aがイオン、Bが電子としてABが原子とすると、

• この式をサハの式を言う。

• ここに、pi,pe,paなどはそれぞれの気体の分圧を表し、全圧力pは、p= pi+pe+pa である。

• Ui,Uaはそれぞれイオン、原子の内部分配関数、glをエネルギー準位Elの統計的重率とすると、

• で与えられ、温度のみの関数である。

kTE

hkTm

UU

ppp e

a

i

a

ei exp23

2/52/1

l

llj kTEgU /exp

ボルツマン因子

統計熱力学より

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大気でのSahaの式の例

• 右の図は、Sahaの式を使った

大気の解離・電離の状態を調べたものである。

• 2000-3000Kより解離の組成が目立ちはじめ、8000Kより電離の組成が目立ち始める。

イオン

原子

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低気圧プラズマ

• グロー放電による陽光柱プラズマ

– パッシェンの法則からわかるように、0.01~10torr程度(1torr=133.3Pa) の気圧範囲でグロー放電が容易に得られる

– 低圧プラズマの多くは、グロー放電をさし、陽光柱プラズマとも言われる

• 次に、陽光柱プラズマに関して前回より詳細を述べる。

– 電極を使用した定常プラズマでアーク放電より圧力が低い状況で放電させるもの

– 陽光柱の理論

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グロー放電の装置とグロー放電

• 最上段:装置図と放電の模式図

• カソード(陰極)とアノード(陽極)のそれぞれの付近で暗い部分がある

• 光っている部分が陽光柱で、装置の長さが変わると陽光柱の長さが変わるのみで,他の

部分は変わらない。

暗部

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陽光柱プラズマの密度分布

• 低圧陽光柱プラズマ内の電子及びイオンの消滅は、容器壁への拡散損失によるものが支配的である

• また、電子やイオンの生成は、中性原子、各種励起粒子と電子との衝突による

• 従って、定常状態ではそれらは釣り合う

• 円筒形容器の場合、軸方向と円周方向は均一とみなせるので、粒子分布は半径のみの関数で、密度方程式は、

• となる

2

2

1 0d N dND Gdr r dr

円筒座標での拡散方程式

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前式の意味

• Dは拡散係数、Nは粒子密度、rは管中心から径方向への距離、Gは粒子の正味の発生項である

• この式は、密度が拡散によって逃げていき、発生項によって生まれるという連続の方程式(円柱座標)となっている

• 従って、Nは任意の粒子の密度に適用できるが、電子密度Neに関しては、発生項を電子衝突電離によるものとして考えると、G=NeM

• ただし、Mは単位時間当たりの増倍率

• すると、前式は、Besselの微分方程式となり、その解は

J0は零時のBessel関数である。

0 0( ) (2.41 / )e eN r N J r R

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密度分布の形

• 従って、密度分布は図のような形になるはずだが、実際は空間での再結合などで、周辺部は密度が低くなるであろうから、J0よりは尖った形になる。

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電子温度分布

• 電子温度は、電子の像倍率Mに速度分布関数を代入することによって、以下に示すcpRの関数となる事が知られている。

• ここに、cは物質固有の定数、T[K]は電子温度、

• p[torr]は圧力、R[cm]は管半径、Vip[V]は電離電圧、

• kはボルツマン定数である。

27exp 1.16 10ip ipeV eVcpR

kT kT

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電子温度分布の形

• 前頁の式をグラフにすると右の図となる。

• cの値は、左の表に示している。

• TとcpRの関係は、相似則から一本の曲線となる。

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計算による圧力と温度の関係

• 今までの計算は、電子の発生が衝突電離のみと仮定した場合で、Schottkyの理論と呼ばれている。

• 実際は、各種励起、解離、再結合、累積電離など複雑な過程が同時に起こるため、解析解を求めるのは容易ではない。

• そこで、電子密度以外に使用できる数値解がIchikawa, Teiiらにより計算されている。

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現代陽光柱理論

• 図にネオンガス放電について計算した電子温度Teと圧力pの関係を示す

• 一般的には、圧力が上がれば、温度は下がるが、図を見ると電子密度が高い時は、10torr辺りから電子温度の上昇が見られる

圧力が高い陽光柱プラズマでは、分子イオンが支配的となる

そのため、電子と分子イオンの解離再結合反応による電子損失が大きく、

それを補うために電界が大きくなり、電子温度が上昇すると説明されている

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低圧高密度プラズマの要請

• 材料プロセス(ドライエッチング、薄膜生成など)の分野で1Pa以下での圧力で高密度プラズマを必要とする場合がある

圧力が低い方が、イオンなどの方向性制御がしやすい

圧力が低いと、中性粒子との衝突が減って高密度が得にくい

磁場を用いて電子・イオンの閉じ込めを良くし、高密度を得る解決策?

問題点

理由

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PIG放電 [代表的な放電の一つ]

• 封入母ガスが0.1Pa程度以下の低気圧になると、通常の直流放電では電子の衝突電離回数が減少し安定なプラズマ発生が困難となる。

• そこで、軸方向に静磁場を加わった円筒状真空容器内に陰極C、リング状陽極RA、リング状陰極RCを同軸的に配置し、外部電源により電圧を加えるPIG型プラズマ源が考案された。

磁場を用いている

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PIG型放電の機構

• 前項の電極配置では、陰極Cから放出された電子は、陽極RAに加速されるが、RC近傍の減速電界によって、跳ね返され、CとRCの間を何回も往復する。

• さらに、RA内壁近傍の半径方向の電場Erと静磁場B0とのEr×B0ドリフトにより、電子は回転運動をする。

• 最終的に、電子は径方向の拡散などにより、陽極RAや壁に到達する

• この結果、電子の放電空間内での滞在時間が増大し、走行距離が長くなるため、衝突電離に効果的に寄与することになる。

低気圧での高密度放電(~1019m-3)が可能となる。

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ECRプラズマ [代表的な放電の一つ]

• プラズマに外部磁場を加えると、プラズマの生成効率を向上させるが、さらに、電磁場を利用することが考えられる。

• 入射電磁場の周波数(ω)を印加磁場に対応する電子サイクロトロン周

波数近傍に選ぶと、波は結合方式によって、ホイスラー波、そのほかのモードでプラズマ中を伝播し、結果的にマイクロ波電力が電子を通じてプラズマに吸収される。

• 電子がエネルギーの担い手であるため、電子密度及び電子温度の高いプラズマが生成されることが特徴で、特に、低気圧ガスの場合に著しい。

• これを、ECRプラズマという

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概要

• 現在半導体プロセスで使用されているECRプラズマ源(周波数2.45GHz)の直径は電磁波の波長(約12cm)に比べて長いので、電磁波はプラズマ中を伝播する。

• 通常、磁界に平行にマイクロ波を入射し、共鳴点で電磁波パワーを吸収させてプラズマを生成する。

• マイクロ波は磁化プラズマ中を右回り偏波の電子サイクロトロン波(R波)として伝播し、共鳴点付近で電子サイクロトロン共鳴により強い減衰を受け、マイクロ波のエネルギーは効率よくプラズマに吸収される

• 共鳴の条件は、

• で、kとvはそれぞれ、電磁波の伝播ベクトルと電子の速度で、vは熱速度程度である。

ce k v

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装置

• ECRプラズマを生成する場合、通常、外部磁場に勾配を持たせる。

• プラズマには磁場の勾配に比例する力が働き、ω=ωce付近で生成さ

れたプラズマは磁場の弱い方向に駆動される。

• 従って、希望する位置に基板をおけば、CVDやエッチングに利用できる。

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大口径化への課題

• 前項の方式は、100mmまでの小半径では効果的であったが、大口径な均一プラズマを作ることは困難である。

• プラズマプロセスでは、上記以外のマイクロ波の供給方法として、1)磁化に垂直に入射する方式、2)キャビティ方式、3)スロットアンテナ方式、などが採用されている。

• 1)の方法は、分散関係からも達成密度に限界がある。

• そこで、近年考案されたのがスロットアンテナの改良である。

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マルチスロットによる大口径プラズマの生成

• Lisitanoらはマイクロ波放電によるプラズマ生成用アンテナとしてヘリカル形とスロット形の2種類のコイルを考案した(次ページに図)

• ヘリカル形コイルは核融合実験装置の予備電離として使用された

• スロット形リジターノコイルは、金属円筒に2mm程度の幅のスリットが入

った円筒状アンテナで、スリットの一端は定在波が立つように短絡されている

• スリットの長さは供給するマイクロ波の半波長に選ぶ

• スリット状に定在波がたち、コイルの円周に沿って電場の向きがそろう

• コイルの軸が磁力線方向と一致するようにして、共鳴磁場の位置におくとECRプラズマが生成される

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装置の例

• リジターノコイル、もしくは、マルチスロットアンテナの装置

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生成プラズマの性能

• 直径450mm、長さ1.7mの真空容器内に直径400mm、長さ75mm、スリット本数104本のリジターノコイルを設置し、2.45GHzのマイクロ波を供給して得られたプラズマの性能を示す

• 図からわかるように、直径400mmにわたってほぼ一様なプラズマが生成されている

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更なる発展

• リジターノコイルによるプラズマはコイルを大きくすることによって、大口径プラズマを生成できた。

• しかし、コイルの大型化は装置価格・運転費用の上昇、重量化を招く

• そこで、コイルの代わりに永久磁石を利用した、平面型スロットアンテナも開発されており、すでに300mm以上のプラズマを生成できている

• スロットアンテナ方式は、アンテナの配列や寸法を工夫することにより、大きいプラズマが作れるように思われるが、原理的には、共鳴層で生成されたプラズマを拡散させることになるため、密度が低下することと空間的に不均一になりやすい。

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発展へのヒント

• 均一性に関しては、入射マイクロ波のモードを工夫することによりある程度改善できる。

• しかしながら、1017m-3程度以上の高密度を維持しながら、大口径で、

かつ、均一なプラズマを実現するには、入射電磁波の周波数を下げる(波長を長くする)方法が最も簡単な方法であろう。

• 周波数が低いと相対的に導波管、真空容器の寸法が大きくなり、高価になる欠点があるが、共鳴層による吸収領域が長くなるため、電力注入がしやすくなる。

• 2.45GHzの代わりに、UHF帯に属する915MHzと500MHzの電源で励起したUHF帯ECRプラズマで、1017~1018m-3程度の電子密度で300mm程度の均一なプラズマが得られている。

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スーパーECR

• UHF帯を使用したECRをスーパーECRと呼んでいる。プラズマの一様性を決める機構に関しても、まだ、完全には解明されておらず、現在も研究中である。

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ヘリコン波によるプラズマ生成 [代表的な放電の一つ]

• 分散式から気体プラズマのホイスラー波と同じであり、電離層中プラズマに励起される右回り円偏波もヘリコン波の一種と考えられている

• オーストラリアのBoswellらがプ

ラズマプロセスやアルゴンイオンレーザー用の低圧高密度プラズマとして有用であることを示してから、一躍注目されるようになった。

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プラズマ生成の概要

• ヘリコン波によるプラズマ生成は完全には解明されていないが、アンテナ表面近くで誘起された電場の中で、磁場の一方向に加速された電子が、ちょうど下流に伝播するヘリコン波の位相速度程度のエネルギーになると、波動のポテンシャルに補足されて、振動しながら下流に運ばれる。

• すなわち、波に乗った状態で絶え間なくエネルギーを吸収増大させながら(Landau減衰)、衝突電離し高密度プラズマを生成する。

• 前項の装置はECRと良く似ている。但し、容器上端には、導波管の代わりにヘリコン波励起用アンテナがあり、高周波電源に接続する。

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特徴

• 周波数としては、マイクロ波レベルから通常の数MHzから数十MHzまでのものが用いられる。

• ECRのように特定の磁場強度による共鳴吸収を利用しないため、数十Gauss~数kGaussまでの広い磁場の範囲でプラズマ生成が可能。

• 従って、プラズマの生成効率がよく、低電力で高密度のプラズマを実現する。これまでの実験では、0.1~1Paの低圧力領域で、電子温度5-10eV、電子密度1017-1019m-3の高密度プラズマを得ている。

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プラズマパラメータの例

• 太陽電池製作用

– 2010 2015• 電子密度Ne 109-1010cm-3 1010-1011cm-3• 電子温度Te 3eV 2eV• 大きさ 1mx1mx8mm 2mx3mx8mm• DR* 2nm/s 20nm/s • 欠陥 1016 1015

• LSI用– 2010

• Ne 1011cm-3

• Te 3eV• Ti 100eV• 大きさ ウエハ直径300mm以上

*Deposition Rate

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レポート 1

• ヘリコンプラズマ、ECRプラズマなどの中から一つ挙げて、その放電形態について調べよ。