Fate/Happylife~刃タ下 ゼ心ろホ · Fate/Happylife~刃タ下 ゼ心ろホ~...

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Fate/Happylife~ ~

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Fate/Happylife~刃の下に心あり~

ブラックサレナ

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  【あらすじ】

 一昔、小説家になろう時代に書いていたものを再投稿します。物語は聖杯戦争が始ま

る前の冬木。遠坂凛にはある約束をした男の子が。

 聖杯戦争のシリアスなんて知らないっす、あるのは可愛い凛とそれで暮らすオリ主イ

チャイチャ物語。

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  目   次  

──────────

プロローグ 

1

──────

第壱話〝襲来衝突〞 

8

──────

第弐話〝衝撃和解〞 

22

──────

第参話〝理論正論〞 

37

──────

第肆話〝来訪衝撃〞 

52

─────

 第伍話〝適齢年齢〞 

67

──────

第碌話〝日常変化〞 

82

───────

第漆話〝休日平定 

96

──────

第捌話〝学生復帰〞 

110

──────

第玖話〝転入初日〞 

125

──────

第拾話〝物語鼓動〞 

141

─────

第拾壱話〝暗雲回路〞 

155

─────

第拾弐話〝旧敵斃共〞 

168

─────

第拾参話〝死屍累々〞 

181

─────

第拾肆話〝事件終了〞 

195

─────

第拾伍話〝日々暇暇〞 

206

─────

第拾碌話〝同僚執念〞 

218

─────

第拾漆話〝面倒即答〞 

230

─────

第拾捌話〝登校周辺〞 

242

─────

第拾玖話〝修羅茨道〞 

254

─────

第弐拾話〝平和未来〞 

266

────

第弐拾壱話〝開始直前〞 

277

────

第弐拾弐話〝英霊召喚〞 

285

────

第弐拾参話〝英霊協定〞 

294

────

第弐拾肆話〝学変異園〞 

301

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────

第弐拾伍話〝陣刹撃園〞 

309

────

第弐拾碌話〝道化犯人〞 

316

第弐拾漆話〝転位騎喚〞(前) 

324

第弐拾捌話〝転位騎喚〞(後) 

333

────

第弐拾玖話〝粗茶茶番〞 

342

─────

第参拾話〝順序順位〞 

351

────

第参拾壱話〝協和怪異〞 

360

────

第参拾弐話〝現実無地〞 

367

────

第参拾参話〞決意固執〞 

376

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プロローグ

  それは彼女と彼の出会いだった。

「今日から、転入してくることになった神崎(カンザキ)忍(シノブ)君です。みなさん

仲良くしてあげてくださいね」

 小学校の先生の言うことは大体が同じである。遠坂凛はそんな事を考えていた。転

入生の神崎忍もまた、同じことを考えていた。だが遠坂凛はもう一つ考えていた、この

時期になぜ?と

 遠坂(トオサカ)凛(リン)、彼女はもとは冬木市という日本の地方都市で暮らしてい

たが聖杯戦争が始まると敬愛している父の勧めもあり母と一緒に一時疎開していた。

 神崎忍、彼は父の仕事の関係上この地に下りたものである。彼の父の仕事は彼自身よ

くしらないが、元々はイギリスに住んでいた。容姿として黒髪のショートで根っからの

日本人という感じであろう。しかし彼はイギリスに住んでおり英語と日本語がペラペ

ラである。

 しかし二人とも同じ秘密があった、それは……魔術師の家系と言うことだ。

「それじゃあ、ちょうどいいわ。遠坂さんの隣が空いているから」

1

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「はい」

 先生の指示の元、忍は歩き出し、そして隣の少女に挨拶をする

「初めまして神崎忍です」

「ええ、初めまして遠坂凛よ、神崎君」

「うん、よろしくね遠坂さん」

 これが二人の最初の出会い。そして始まりなのだ

 『Fate/Happylife〜刃の下に心あり〜』

 「もう、ここまで来ちゃったね。君も私もさ。それで君はこれから、どこに行くのかな

?」

 まるでそれは最初から答えが決まっている質問のようだった。その女性は一つのト

ランクでどこでも行く破天荒な人だ。あの頃の少年(シノブ)の姿はなく、今はただこ

ちらの世界の事をしりそして生きている魔術師(シノブ)がいたのだから

「それこそ貴方はとうに知ってるはずだ。俺は、戻るよ、あなたがそう仕向けたに等しい

のに今さら何を言うんですか?」

「ふふ、面白い子。そう思えばそんな眼をしていた子、もう一人居たの思い出したわ。彼

2 プロローグ

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とは違う意味で面白い子だったわあなたも」

 女性は笑う。まるで自分の息子が巣立っていくような、そんな顔だ。忍はそんな姿を

横目に一度荷物を置き

「ありがとうございます、あなたにそんなことを言われるとは思いませんでしたよ師匠。

いえ、ミスブルー」

「その言い方はやめて頂戴、忍。けど、行くのはいいけど、彼女の方覚えているのかしら

?私にはわからない、いやこの場合は忘れちゃった感覚だからさ、恋って」

「覚えているかどうかじゃないんですよ、俺は行きたいだけなんですから」

「あら、当てられるわ。それじゃあ、さようならね忍。貴方との三年間、楽しかったわ。

今度は、そうね青年になったら会いましょうか?」

 彼女は手をさす出す、忍は握り締める

「面白いことを、それじゃあさようなら師匠」

「ええ、それじゃあね忍」

 そして師弟の関係がここ終止符を打たれた、忍は旅立った。結局彼女は思っていたこ

とをずっと言わなかった、彼にあってからずっと。そう彼こそがこの世界に弾かれすぎ

ている存在だと、彼女に弟子入り、いや突撃したのは三年前のことだ。彼は彼女の前に

それこそ何もないように現れ、そして普通に話しかけてきた「面白いね君」あのとき女

3

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性が言った最初の言葉を思い出しているのだろうか、女性は笑っていた。そしてそれか

ら彼はまるで魔法使いと言えるような集中力とそして素質をだして、そのまま女性を追

い抜かすほどの〝力〞を手に入れた。そして女性は一度も振り向かずに、呟いた

「聖杯が穢れてしまってるかもしれない。なんて、なんであの時言っちゃったんだろう」

 彼が変化したのはその頃だろうか。女性の魔術理論にさらに彼は父から譲り受けた

魔術刻印をうまく使う術を自ら編み出した。それが例え魔術師として異質としても。

「それもまた、起源による完結とされるのじゃ」

 まるで空からの声のように、女性は聞いたことのある声に振り向いた。すでに魔術師

の姿はなく、そこには魔法使いの一人がただ立っていた。

「あら、あなたがこんなところに来るなんて、どういう風の吹き回しかしら」

「運か、主はなぜ彼があのような存在と気付いても尚、この道を歩かせた」

「ふふ、そうねなぜかしら、強いて言うなら」

 女性は髪の毛を掻き揚げたそして行ってしまった魔術師の方角に向けてこう言った。

「…………彼は、人間だからかな?」

 ──────────

 空港と言う、密室には彼はなれていたのだろう。落ち着いてビジネスに座る、周りか

ら見れば奇妙だろう、齢十四歳のなりかけがビジネスクラスの席にいることに。しかし

4 プロローグ

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彼はそこにいながらも堂々としており、ある意味風格さえ出ていた。

「あの時と変わってないといいな……凛ちゃん」

 少年は呟くように言う。たったそれだけだが、しかしその言葉には重みが非常に感じ

られた。彼は昔とあまり変わらない髪形で色も変えず、しかし彼はある時から開花して

しまった魔眼のためメガネをつけている。もちろんこの魔眼は彼自身で切り替えのス

イッチがあるのだが、念のためらしい。それが唯一変わっているところ、彼はそれ以外

に付け入るものは首からぶら下がっている四つ葉のクローバーのペンダントだけであ

る。

 ──────────

 彼女は日本の学校で副会長を任されている

「だから言ったろうが遠坂。それではこちらの案が」

「柳洞君の言う事も分かるわ。だけどこちらのほうが先のほうがいいでしょう?ね、み

なさん」

 彼女は家訓である『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』のこと、学校ではそれはそ

れは優雅にそして気品に振舞っているが、しかし彼女の正体それは、簡単にいえば人を

おちょくり笑う、小悪魔だ。

「そうですよ、遠坂さんの言うとおりでもいいとおもいますよ会長」

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 現在、二月のすでに終わり。中学の生徒会も来年度の生徒のために準備と言うこと

で、色々と忙しい。そしてその生徒会のトップに立つのが柳洞一成、この冬木にある柳

洞寺の末っ子であり、非常に真面目である。苦手なのは女性と流行り物と色々と古風で

ある。

「……そうか、ならばそれで行こう。遠坂君、頼めるかい?」

 一成はそれこそ今は自分の思うとおりに行かずにいるので少し憤りを感じているだ

ろうが、しかしそれをひた隠すにしている。そしてその様子を見ている凛は非常に楽し

そうだ。

「そう、ありがとう柳洞君。それではこれはこっちにしましょうか」

 遠坂凛、彼女はこの学校では副会長の地位にいる。無論先の説明通り気品に満ちてお

り性格良し、ルックス良しであり簡単に言うと彼女はモテるのだ。しかし彼女は一度も

誰かと付き合おうとはしない。

「それではこれで会議は終わりでいいかしら?柳洞君」

「ああ、そうだな。それでは各委員に伝達を。それでは今回の会議は解散とする」

 会議が終わると一成はそれこそ、機嫌が悪いですオーラを放ちながら会議室をあとに

する。そして他の委員はというと

「どうでしょうか遠坂さん、このあとお茶でも」

6 プロローグ

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「いや、どうでしょう俺らと一緒に」

 などお誘いが多い。しかし

「申し訳ありません、みなさんのお誘いは嬉しいのですが」

 と、拒否をする。しかしそれでも優雅であるのはさすがだ。そしてその報告を受ける

と、全員が残念そうにしながら帰るのがいつものこの放課後の恒例でもあった。そして

一人会議室に残った凛は不意に外の夕日を見ながらいつも見に付けているものを出し

て抱きしめるように胸に置く

「もう、中学三年か……考えればすでに6年か。ドンだけ待たせれば気が済むのかしら

?ねえそうでしょう忍」

 彼女はこれが心の贅肉を通り越して心の税金と言うことは自覚している。だがこれ

は忘れる事も、そして忘れ去る事もできなかった。彼とのたった一年が大きすぎたから

であろう、そのあとの事も彼女にとっては大きかったのだろうがそれでも彼の存在のお

かげで今の自分が居るのだから。

「利子だけでも一生なんだから、覚悟して頂戴ね」

 彼女はそう言うと後片付けを始め、部屋の鍵を閉める。彼女がさっきまで持っていた

ペンダントは、首にかけなおす。そう四つ葉のクローバーのペンダントを。

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第壱話〝襲来衝突〞

   忍が空港を下りるとすぐに手続きに入る。それは移住の申請だ、すでにイギリスで彼

は国籍を持っているのだが日本の国籍も取得しており、まあもちろん教会と協会の協力

の上だが、そして彼はパスポートを出して淡々とこなす。

「それではこちらで手続きは終了となります。今後パスポートの更新などは、パスポー

トセンターでお願いします。それでは」

 受付の人が淡々と話す

「わかりました、ありがとうございます」

 彼女は忍の日本語を聴いて驚いた。てっきり日系の人だとおもっていた。なんせパ

スポートには完全にイギリスのものだったわけで、さらに彼のパスポートには一度しか

こっちの日本に訪れている形跡がないのだから。

「あら、日本語じょうずなのね」

「え、ええ。父も母もこっちの生まれなので」

 忍の父、神崎(カンザキ)審(シン)。彼は6年前にある仕事をしているときに死んで

8 第壱話〝襲来衝突〟

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いる、そう聞いている。忍自身、父の死体を確認するまで信じていなかった。そしてそ

こに初めて魔術のセカイに触れた。そしてそのとき助けてくれたおじさんもまたこの

日本にいるようだ。確か、忍は自分の記憶を探るように名前を思い出そうとする、そし

て文字が出てきた、衛宮……確かこうである。忍の父、審は魔術の血統の生まれではな

い、ならばなぜ彼は魔術刻印を持っているのか、それは母に原因があると思われている

が忍自身母のことを知らないのだ。父、審の遺品の中にあった写真は自分の赤ん坊のこ

ろの写真に三人が写っている写真が唯一の家族写真であるのだから、しょうがないのか

もしれない。審は魔術師であると同時に魔術師殺しと言う事も聞かされた、当時の忍に

は酷な話でもあったが、彼の師匠は止めなかった。それが真実である、彼の父の審判で

もあるのだから。

「さて、これで大体終わったかな。あとは冬木に行くだけか……まずは管理者に挨拶を

しないとな」

 そして忍は、ある目的地を目指して歩き出した。その目的地は……言峰教会。

 ──────────

「な、綺礼!?そんなこと一言も聞いてないわよ?」

 凛は家に帰ると、電話の呼び鈴が鳴っているのでそれをとる、相手は彼女の後見人に

して師でもあった人物。言峰綺礼だ、この男非常にネが悪いのか何かが可笑しくこの凛

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も自分の保護者でもある人間だが苦手である。

「わかったわよ、いけばいいんでしょ!なによ、そっちで待ってもらえばいいでしょう?

はっ?信用性がない、棺おけにでも入れとけバカ!!」

 凛は非常に焦っていた。急な来客なのだから、しかも相手は魔術師。一言言えば魔術

師が人の領地に入るのは二種類しかいない、それは相手の情報を盗もうとする奴、また

は殺して自分のものにするやつだ。だから凛は少し焦りながらもすぐに仕度をする、彼

女は宝石をポケットに入れて準備を完了とする。さて、ここからが波乱万丈だと誰もし

らないのである。

 ──────────

「と、言うことでね。申し訳ないがしばし待っていてほしい、ここの管理者も君と同じぐ

らいの年なのでね」

 綺礼は電話の返事を聞き、そして今回の来客にお茶をだしていた。こんな教会の中で

お茶を飲むと言うもの不思議な絵ではあるが、しかし誰もいないのだから少しはいいの

だろう。忍自身は無信心なので、気にしてはいないがこの神父もまた同じようにお茶を

飲んでいた。

「君はなぜ、冬木に?一応報告では、〝調査〞となっていたが教会にも、協会にも非常に

嫌われているようだね、君は」

10 第壱話〝襲来衝突〟

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「ええ、十二分に嫌われていますよ。あなただって私のようなものは嫌いでしょう?」

「いや、実に君は面白いと思っているだけだよ私は。さて、そろそろ来るであろう」

 綺礼はお茶を飲みほすと同時に席を立つ。

「そうだ、一言言うのを忘れていたが、どれ位この地に居るつもりだね?」

「管理者の返答次第ですが……そうですね、ざっと5年はこっちに居たいですね」

「……そうか」

「…………そう言うことです」

 忍と綺礼の間に何かが走ったような気配があるがしかしそれは二人だけの、感覚なの

だろう。そして綺礼は退場し、それと同時に教会の大きな扉は開く。そこには完全に警

戒をしているこの冬木の管理者が立っていた。

「初めまして、私この冬木の管理者であります……遠坂家当主、遠坂凛と申します」

 彼女の声は昔と変わらず、張りがありそしていてどこか優雅。忍は彼女が変わってい

ない事を声で感じ取れた。そして忍は向き直り、凛を正面から見る。今度は凛が驚いて

しまった、それもそうだろう、今までの時間この男性を忘れたことが無かった凛にとっ

ては。

「〝初めまして〞私、魔術協会より、いえこの場合は神崎家当主として、この地に訪れま

した。神崎忍です」

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「あ、え、う、嘘」

 彼女の反応に忍は嬉しさのあまり、それこそ口元が上がりそうになったが押し黙っ

た。彼女もまた自分と同じで覚えていたことに。

「ゴホン、それでは神崎さんとでも呼べばよろしいでしょうか?」

「はい」

 彼女はまるで仕切りなおすように咳払いをして、そして後ろで聞き耳を立てているだ

ろう神父のほうに目を向ける。そして彼女は何かを決めたように

「それではこのような場所では、我が家でお話を聞きます」

「……よろしいのですか?このような得体の知れないものを家に入れても?」

「ええ、大丈夫ですわ。それに、もしそのようなことがあれば…あなたの首が飛ぶだけの

話ですもの」

 小悪魔の笑い顔をみながら忍は、口癖をつい、言ってしまった

「………そう言うことです…か」

 ──────────

 綺礼は先ほどの少年について少し不思議な感覚に見舞われた。やはり彼もまたこの

地に来た理由はてっきり聖杯だと思っていたが、違う。そうあのものの眼は私が見てき

た中で一人だけ該当する目だった。そのナは

12 第壱話〝襲来衝突〟

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「衛宮切嗣か」

 懐かしい響きと共に、自分の中で消えかかっていたものが浮かんできた。それは何

か、知るものはこの神父のみであった。

 ──────────

 遠坂邸。それは冬木の奥にある古い洋館である。この冬木では第二位の霊脈があり、

そして人避けの結界が解かされており、お隣さんに、セールスマン、泥棒。さらには野

良猫一匹さえ近づけない場所。正面から魔術師が攻めても一年かけても無理だろうが、

しかしこれを破ったことがあるのが一人いた、それは魔術師殺しであった。

「Abzug Bedienung Mittelstand───」

 凛はそう言うと、何かが解放される。これは結界の解除呪文だ、彼女の魔術は全てド

イツ語行われる。そして

「Anfung Mittelstand」

 これで結界は元通りだ。忍はさっきまでも何か重たい空気がなくなり、少し楽になっ

たのは事実だ。そして

「それではこちらに」

 凛の誘導の元大きな談話室に通された。そして

「それでは少々お待ちください、現在使用人が居ないので」

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 使用人が居ない、ようはお客がきても持て成すのは自分自身であり、紅茶を入れるも

の自分なのだと言っているのと同義だ。

「お構いなく」

 忍はそういうと凛はあらそう、と言う顔でソファーに座る。二人とも無言で見詰め

合っていた。二人して本当に彼女であり、彼なのか分からないのだ。そして

「久しぶりだね、凛ちゃん?ってまだ呼んでもいいのかな」

 その沈黙を断ち切ったのは忍だった。しかし凛はその言葉を待っていたかのように、

いや実際はそう言うのがわかっていてこう言った。

「あら、あなたは誰かしらね?私は…このペンダントの少年とお話がしたのだけど」

 そのペンダント、それは遠坂凛、並びに神崎忍が肌みな離さず持っていた四葉のク

ローバーのペンダント。忍はその言葉、そして凛の首から出てきたペンダントを見なが

ら自分も首からかけていたペンダントを机に置く。そして二人して笑いあった

「久しぶりね忍。ずいぶんと男らしくなったじゃない?」

「そうだね凛ちゃん。そっちはますますかわいく、いや綺麗になったよ」

 握手をして、そして二人ともどこか懐かしく、だけど新しいそんな感覚だった。しか

し凛にはまだ警戒が解けることはできなかった、理由はそう彼もまた魔術師なのだ。神

崎、凛は忍がこの日本からはなれ、そしていろんなことがあった中で神崎について調べ

14 第壱話〝襲来衝突〟

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ていたのだ。そして出てきたのが魔術師殺しの新たなる家系、こうだったのだ。魔術師

殺し、魔術師において恐ろしいもの、それは魔法使いかそれか他の魔術師とされており、

そのせいか近代の文化をそこまで危機としていない。だからこそ、凛はまだ警戒を解い

ていないのだ。なぜ、この時期に忍が帰ってきたのか、そして目的は、なんなのかを。

「それで、忍。ここからは魔術師として会話をしましょうか?」

 凛の声が少し低くなる。忍はそれを察知したのか、さっきとは違い真剣な顔に変わ

る。そのときに凛は思ってしまった、彼は変わっていたと。昔ならば彼の真剣さには少

し熱のあるものは眼に宿っていたが、だけど現在凛の前に立っているのは魔術師なの

だ。

「そうだね、それでは……遠坂家当主、遠坂凛。なぜ、私がここに来たと問いたいのだろ

うが、私も魔術師。そう簡単に手の内を明かさないさ」

「あら、それはこちらの城にいるにもかかわらずなのかしら?」

「トロイの木馬を知らないのかな?」

 二人はさっきの和やかな雰囲気をそれこそ一瞬で消し飛ばした。そして忍はこう

言った

「なぜ、私があなたのところに来たのか?それは簡単だ、この冬木の管理者であるあなた

に挨拶にいくのは礼儀である。それはそうだろう?相手の敷地内を土足ではいるほど

15

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私は野蛮ではない」

「ならばなぜ、ここに入ったかも言えるわよね………どうなの忍」

 最後は凛の本音だ。ただ知りたいのだ、彼も変わっている、だけどまだ凛は信じてい

少年シノブ

魔術師

るのだ初恋の相手が、あの時私を助けてくれた

がこの

と同じであることを。

そしてそれは、ある意味残酷にも引き裂かれたのだった

「…………俺は、この地で行われている聖杯戦争を……いや聖杯を完全に破壊するため

に来た」

「……え……」

 凛にとっては絶望でしかなかった。遠坂の父、時臣そして母、葵はすでに他界してい

る。その理由のもっともは聖杯戦争であった。父はこの戦いで死に、母はその二次災害

のようなもので、一昨年なくなった。そして父の願いはこうだった、聖杯を手にし根源

に至る。根源、これは魔術師であれば誰もが目指す一つのゴールであり、それを超えた

ものが魔法使いと言われているものだ。しかし、彼は今なんといった、破壊するだ。父

の夢、そして家族が崩壊してでも父が欲しかった物、現在の自分の野望…それを目の前

の魔術師は破壊するといったのだ。無言で凛の腕は、上がり目の前にいる忍に魔術行使

をした。

「ガンド!!」

16 第壱話〝襲来衝突〟

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 凛の得意魔術の一つガンド、飛び道具としての利用は非常によく、ある意味弾丸より

も厄介だ。そして忍は、それをまるで効いていないかのように座っていた。

「凛ちゃん」

「忍……神崎忍。それが目的だと言うのなら、私は貴方を、排除します。もしそれがいや

なのでしたら、即刻この冬木から出て行きなさい!」

「凛ちゃん、話を」

「うるさい、うるさい!私がどんな気持ちで、この六年間過ごしてきたか知らないくせに

!私の家族がどうなったか、知らないくせに。なによ、折角、折角また会えたのに

…………忍のバカ!」

 凛はそのままガンドの乱れうちの如く乱射する。忍は今の凛では話ができないと思

い、そのまま退散することにした。しかし、実際はそんな冷静な判断をしている忍でさ

え、この遠坂邸を出る瞬間に眼から水が流れていたのだ。

 ──────────

 結局、忍を追い出して、そして部屋をメチャクチャにして凛は自分の部屋に戻ると号

泣していた。何もかもわからなくなってしまったのかもしれない、凛も忍も一年しか一

緒にいなかったがだけどそれでもこれから一緒にいけると信じていたのだ、それが遠坂

凛の唯一に残っている親愛だったのだ。父も死に母も死に、妹は〝行方しらず〞、そし

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て残るのは、それはたった一つのペンダント。彼が言ったのだ「凛ちゃんが一人になっ

たら、僕が貰ってあげるよ、お嫁さんに」バカみたいなプロポーズだけど、それでもよ

かった。魔術師として生まれた二人、それを知っていても、それでも。親にそれは魔術

師の行き方ではないといわれても、それでも。だが現実は違った、忍は自分の夢を壊し

にここに戻ってきたのだ。だが、凛にはそれでもそんな最低な忍から貰ったペンダント

を捨てることはできなかった、それは彼女は見ていたのだ。ガントを連射する中で、凛

が拒絶したさいに、いや何かいようとしていたのに凛が一方的にいい、そして遠坂邸を

出る瞬間に、忍は涙がでていたこと、泣いていたことに

「……なんでなの、忍」

 凛は腑に落ちていないのだ。彼の戻った理由、そしてあの涙。全て謎なのだ、そこで

凛は気付いたのだ、なにが優雅だ。今思えば六年もあっていないのに、それでも安心し

た自分はどこへ行ったのだと。夢を壊すといわれ、恐れをなして攻撃して、まるで私は

子供だ。

「忍」

 凛は呟く。まるで捨て猫がご主人様を求めるように。そして凛は電話をかけた。

 ──────────

 拒絶、それはあまりにも大きい事柄から大衆から理解されない事を示唆するなんてこ

18 第壱話〝襲来衝突〟

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とを昔の忍は思っていただろう。だがしかし彼はまさに今さっき拒絶されたのだ、しか

も六年間忘れていなかった女の子にだ。

「分かっていたつもりだったんだけどな」

 彼は公園のベンチに座りながら、さっきかったミルクティーを口にする。忍はここに

情報摂取

ショ

来る前それこそイギリスにいる間に聖杯戦争について色々と

をしてきていた

のだ。そしてだからこそこの冬木に戻った事も確かでもあった、だがそれよりも大きな

理由があった。忍の父が死んだ頃と聖杯戦争の終わりは同時期だ、ならば何かしらの関

係があることは見え見えだ。そして凛のことについてもだ「どんな思いで」彼女の言葉

が頭に響いていた。忍もまた親のいない、兄弟もいない孤独であった。だからこそ凛に

は冬木に行ったらすぐに会おうとも思っていたのだ、だが考えればそうだろう

「親父さんもこれで、か」

 凛の言葉を正しく捕らえるのならば、凛の家は間違いなく聖杯戦争によって変わった

のだろう。父とそして母、両方ともだろうか?もしかしたら兄弟だって、忍は自分が彼

女の夢を壊したのだろうと、思っていた。だが、それでも

「それでもね、凛ちゃん。俺は、壊すよ絶対」

 そう、もし凛が聖杯を獲得するために聖杯戦争に赴くと言うのならば忍は絶対に破壊

することを諦めない。いやそのために戻ってきたのだから……聖杯戦争、これはある魔

19

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術師の三家、アインツベルン家、マキリ家、そして遠坂家が集まり始まったものである。

一度目、二度目ともに失敗に終わったことで、アインツベルン家は少し焦り、そこであ

るものを投入した。そしてその結果、聖杯は『サルの手』のような願望機に変わってし

まった、忍はそれを聞いた時、師であった彼女にすら掴み掛かったと言う。だってそう

であろう?仮に自分の思い人が、またはその家族がそんなものを手に入れようと命をか

けるのならばそれを止めたいと思うのは

 〝知っている忍?けどね、魔術師にとってそれはどうでもいいのよ、たとえ聖杯がそ

うであったしても、魔術師にとっては自分が一番なの、ま、これは可能性の話なんだけ

どね。けどこの場合は魔術師と言うよりも人間ね。もしそれがない人間なんていたら、

それは人間の皮を被った化け物だけよ〞

 師匠の言葉。忍は今思えば納得できるところがある、だけど凛の顔をみるとそうでは

ない。彼女はまだ乙女であり、そして忍の恋したあの時と変わらないのだ。だかこそ、

止めたいのだ。どうあっても

「まあ、しょうがないか。さて、涙も引いたことだし次に行こう」

 忍は次の目的地に向かった、それは教会や霊脈の方だ。

「あいつにまた会うかもしれないのか」

 たった一度しか会っていない忍でさえあの神父は苦手の烙印をつけさせたのであっ

20 第壱話〝襲来衝突〟

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た。

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第弐話〝衝撃和解〞

   忍は結局、そのあと公園のベンチで座っていたのだ、理由は主に今の心情であの神父

と話すのはどこか本能として拒否した。時間がどれだけ経ったかなどは忍にはどうで

もよかった。現在もっているのはトランク一個、実際は他にもあるのだがそれは全部あ

る場所に預けていたのだが。

「さて、そろそろ行くかな」

 神父に会わずに次に向かった場所、それは円蔵山の山腹にある寺。霊脈でみれば間違

いなくここに最後はつうずるであろう場所。それの名は柳洞寺、彼は歩きながら、いや

このっ場合はこの冬木の地を確認しながらだ。橋に差し掛かったあたりでふと気付い

たことがある、それはさっきまでいた公園だ。なぜだろうか、公園を遠目から見れば見

るほど、違和感がある風景と忍はそのとき橋を渡りきるまで、思っていた。

「さてここからが本番かな」

 彼は夜にも差し掛かるこの時刻。そろそろ動き出してくると思っている人物、それは

遠坂凛だ。午前には日本につき、そして昼にはこの冬木に来ていた忍だが思うの他凛に

22 第弐話〝衝撃和解〟

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拒絶されたことが響き公園でボーっとしてしまっていたようだ。しかしもうすぐ昼は

終わり夜となる。これは魔術師としては魔術の行使するのに適した時間だ、理由は簡単

だ古来より魔術、神秘を世に漏洩しないこと、これが魔術師にとっては暗黙の了解であ

りルールである。だからこそ人目の付きにくい夜は行動がある。何せ、凛は忍に即刻退

場を命じている。管理者である彼女はここ冬木ではある意味魔術師とっては警察だ。

しかし彼は出ることをしない、どうせどこかで使い魔を放ち、忍を監視しているであろ

う。しかしそれでも彼は止まる事をしない、いや出来ない。

「さて、この階段を上れば、本殿だな。だが、これは凄いな」

 周りはすでに暗闇であり忍は柳洞時の下にある階段まですでに足を運んでいた。そ

して彼はメガネを外した。

「くっ……これはきついな、やはり」

 忍のメガネにはドが入っていない。しかしそれならばなぜ彼はメガネをしていたの

か、それは彼は魔眼を持っているからだ。魔眼それは本来情報を会得することを目的と

している眼球を相手に魔術をかけることに使うのが魔眼である。しかし彼のは違う、彼

の魔眼それは『直死の魔眼』だ。これは死を理解することができる脳があって初めて成

立する魔眼なのだが、この中学二年生の終りの忍がなぜ、これを使うことができるのか

は……説明する時があるのかもしれない。それはさておき、彼は魔眼を使いこの霊脈を

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みるがしかし、彼の脳が理解しなかったようで視ようとした瞬間に脳が拒否をしたよう

だ。

「やはり、ここは行ってみるのが一番か」

 メガネを掛けなおし忍は階段の一歩を踏み出した、しかしすぐに向き直る。そこには

紅いコート来た魔術師がこちらを見ていたからだ。忍はトランクを置く、やはり来た

か、忍の簡単な感想だ。自分がもし同じ立場ならば同じ事をするだろう、しかしこんな

短時間とは思っていなかったのは事実。

「お久しぶりね、神崎君?さっきのこともう忘れてしまったのかしら?」

 凛の声には棘しかない、まあそうだろう。自分の敷地でやりたい放題、観察したい放

題。

「いや、覚えているさ。だが管理者よ、私も言ったぞそれは無理だと。やることがあると

な」

「ええ、確かに協会に調べてもらった結果確かにあなたにはそのような申請があったそ

うよ。だけどなぜかしらね?あちらさんもあなたとは関わりたくないようで」

 忍は笑うように口元を上げる。そして二人はにらみ合う、凛は教会の人間でありそし

て協会とかかわりがあった、綺礼にすぐ連絡を入れ、そして忍の事を本格的に聞いた。

しかし彼とて何か知っているわけではない、しかしそれでも彼は、神崎という家は魔術

24 第弐話〝衝撃和解〟

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師に嫌われていることは教えてくれた。そう凛はカマをかけたに過ぎない、しかし聞い

ている限りは忍は協会に追い出された、または命令ではないようだ。二人は動かない、

そして次の瞬間凛は自分の指から宝石を出して攻撃を繰り出した、そして忍は燃えた

「宝石か。まあ同じようなものか」

 しかしこの声を聞いて凛はすぐに構えを変えて距離をとる。そして凛は驚く光景を

見た、それは先ほど魔術として使用した宝石を掴んでいる忍の姿だった。掴んだ宝石は

砂のように消えた。忍は懐から拳銃を取り出した、魔術礼装を施された拳銃、名は

ジャッカル。口径や弾などから考えれば人類が扱うには許容範囲を超えている代物、し

かし次の瞬間忍は引金を引くと同時に右腕が光り出した。魔術刻印、それは代々魔術の

家系で引き継がれる一種の魔術。忍の魔術刻印は、それは〝特殊な強化〞だ。それから

繰り出される弾丸はそのまま凛のコートのポケットを射抜く。そして落ちる宝石……

勝敗はすでに決していた、凛は覚悟を決めた。そうだろう、自分の攻撃方法は残りはガ

ンドのみ。だが彼にはそれが通じるかも微妙であり、そして魔術を使役するに必要とす

る宝石は道路に落ちている。拾い上げればそれが最後。しかし忍はそのまま拳銃をし

まう、そしてトランクを拾いそのまま階段をあがった。

「え……なんで」

 凛はそう呟いた。彼は一体なにがしたいのか?凛の頭の中にはそれだけが残った、自

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分を攻撃した相手に情けをかけた。なぜ?忍にとって凛はさっき拒絶した相手、それを

なぜ助ける。貸しでも作ったつもりなか、だがそれも今はわからない、だから彼女も

追った、彼、忍の本当の目的を。

 ──────────

 忍は階段を上りきるとあるものを手から離した、それは凛と同じ宝石だ。彼はこの階

段を足を強化してわたったのだ。そしてトランクを開けた、そこにはあるものがあった

……それは魔力計とでも言えばいいのだろうか、包囲磁石のようなもので。忍はそれを

設置する。そして

硬直フリーズ

「セット、

 忍が指を鳴らすと、そのまま一定の地域は一瞬白くなり、そして元に戻る。忍は結界

を張ったのだ、防音であり人避けの効果もある。

「ここ?だけど、まて、ここまでが渦?」

 柳洞時の境内の真ん中にいる忍。そして異変に気付く、それは不自然にもこの境内の

真ん中がまるで渦の中心のように霊脈を集めていたのだ。確かにそういった造りであ

るのなら別だ、しかしこれは間違いなく人為的に動かされていた。

「それで一体これはどういうことか、説明くれるわよね、忍」

 忍は声のほうなど見ないで、現在の作業に集中する。忍にとってはやはりということ

26 第弐話〝衝撃和解〟

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だ。凛がここに来ることはわかっていた、だからこそさっき、あれぐらいのことしかし

なかったのだ。

「いいよ、凛ちゃん。だけどそれなら僕の質問にも答えてほしいな、それならいいかな

?」

「いいわ、だけどこっちを向かないでね?」

 その言葉の意味は、もし何かすればそのまま首を吹き飛ばすと言うことだろう。先の

戦闘で忍のほうが戦闘なれしているのは雲泥の差だ。

「それじゃあ、凛ちゃんに質問です。聖杯戦争については知っているかな?」

「もちろんよ。聖杯戦争は七人の魔術師、そして七人のサーヴァントによる、聖杯争奪戦

のことよ。そしてその聖杯こそが何でも願いをかなえる奇跡のようは、いえ魔法のよう

はものよ」

「その通りだね、凛ちゃん。それじゃあ次の質問ね、創めたのは魔術協会の遠坂、マキリ、

アインツベルン。そして聖杯は現れたのかな、四回もした中で?」

「一回もないわ。忍とであってそしてあの〝殺人鬼〞と戦ったときが唯一、一番近かっ

たとあとで聞いたわ」

「そう。凛ちゃん、俺はさ……あのあと、この神崎家の当主になったんだ」

 凛は言葉を失った。当主と言うことはそれは先代が死んだ事を意味する。それは自

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分のお父さんと言うことだ。凛はさっき言った言葉を思い出す「何も知らないくせに」

違う、彼もまたその苦しみを知っていたのだ。忍は続ける

「それで、この神崎家についても教えてもらったんだ。まあ教えてくれた人ってのがそ

の第四次聖杯戦争の生き残りのひとなんだけどね。俺はその人を正義のおっちゃんっ

て呼んでいたんだけど、そのおっちゃんからこう言われたんだ。君は、どうしたい?っ

てさ、だから俺は父さんのようになりたいって言ったんだ。まあ父さんは魔術師として

の生活を嫌っていたのか、結構普通の一般人の生活と変わらなかった。けどね、それと

同時に魔術も磨いたんだ。あの頃とは比較にならなほどにね」

 あの頃とは、父が死ぬ前とは言う意味だ。凛とそっくりなのだ、彼女もまた父をなく

し母をなくしたことを糧に魔術を磨き、そして聖杯戦争の準備をしていた。

「そして、父さんの仕事にも……それは、殺しだったけどね」

 魔術師殺し、同属殺しとして魔術師の中でも嫌悪される存在。

「そんなことでね、まあ結局魔術師の師みたいな人にはある依頼で出会えたからよかっ

たけど、けどさ。そのときに面白いこと聞いたんだよ。ねえ、覚えている?俺がさこの

街から居なくなってさ、このペンダントあげたとき。『凛ちゃんが一人になったら、僕が

貰ってあげるよ、お嫁さんに』、今思えば魔術師らしくない言葉だけど、俺は好きだった。

だからこそ調べたんだ、聖杯について」

28 第弐話〝衝撃和解〟

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「聖杯について?」

「凛ちゃんの家のことは知っているよ。だからたぶん凛ちゃんが次の聖杯戦争に出る事

もね」

 そこで凛はハッとする。そうだ、忍ならば、いや魔術協会の本部があるイギリスにい

て私の情報を掴んでいないはずがない。今思えば考えられた、だったらなぜあのような

ことを。聖杯について?それがなんだと言うのだ

「それで、続けて」

「それじゃあ、質問。聖杯ってどんな形なのかな?」

「え」

「第三次聖杯戦争。それは初めて聖堂教会が仲介として入った初めての聖杯戦争、その

ときの記述にね、面白いものが入っているんだ」

「面白いもの」

「そう…………それは、反英霊の存在」

「反英霊の存在」

「聖杯はサーヴァントと呼ばれる英霊を呼び、そして戦うのは知っているよね凛ちゃん

も」

「もちろんよ」

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「なら、なんで〝反〞英霊なんて存在が生まれたのかな?考えてみれば聖杯は聖なる杯

なのにね。根源にいたるはずの奇跡、魔法。なのに変だと思わない凛ちゃん」

「忍、あなた」

「まあこれは全部、師匠の受け入りなんだけどね……聖杯がもし穢れていたとしたら、そ

してそれが第四次聖杯戦争の結末に結びついていたら?」

 凛はそこで一つ心当たりがあった。それは冬木中央公園だ、今は公園となっている、

しかし聖杯戦争が終わった場所である。しかもあの範囲全てが焼け野原、生き延びたの

も数名と聞いている。もし、そうだとしたら、だけど確証はどこにない。

「だからこそ、戻ってきたなんて言ったら、どうする凛ちゃん」

「……え」

 振り向くなといわれた忍がこちらを振り向き、そして真剣の眼で私を見ていた。先ほ

どのメガネをかけた顔でもない、魔術師の顔でもない、ここに居るのは神崎忍だ。

「好きな人が、ほしいと思ってるものが、もしかしたらそれこそ大惨事に繋がるかもしれ

ないもの、だったからそれを壊しにきた。それじゃあ理由にならないかな?」

 そこで凛は気付いた。こんなにも魔術師として心構えができていないのに、だけど魔

術行使は私よりもうまい。それも私のため、だけど改めて考えてみる、忍もそうだが凛

だってそうだ、たった一年同じ学校で学びそして秘密を明かしあい、そして命を救って

30 第弐話〝衝撃和解〟

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くれた恩人。たったそれけだ、何年も昔に、けど凛は忘れることなくこのペンダントを

大事に持ち、そして忍のことを思った。彼も変わらない、自分だってそうだと。

「あなたにはなにもないのに、確証すらないのに?」

「ペンダント、持っていてくれただろう?」

 ああ、そうか。凛は思ったのだ、そんなもしかして可能性とこのペンダントの可能性

は同じぐらい。だからこんなにも好かれていたそれだけこんなにも嬉しいのは、自分

だって同じくらいそうなのだと思った。だってそうだろう?彼がこの地に戻ってきて

そして自分を支えてくれると思って魔術を練習した。聖杯、父、母、それと同じぐらい

に目の前の少年はあったのだ。

「……バカ」

 忍はそれを聞くと、指を鳴らす。それと共鳴してかトランクの中にいっせいに入って

いく魔力計。そして凛は思わぬ行動にでた

「ねえ忍。答えてほしいわ、もしあなたは魔術師である現在を悔いたことあるかしら?」

「ないよ、だってそうじゃなきゃ凛ちゃんを「バカ」……凛ちゃん」

 忍の言葉の前にすでに凛は抱きついていた。彼女の唯一の親愛、これが完全に心の半

分を占めた瞬間でもあった。

「ごめんね、遅くなって。けどここまでこれたよ、聖杯戦争がいつ起こるかわからないか

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らこそ、早めにね。聖杯は聖杯戦争が始まらないと現れないって聞いたし」

 忍はそういうと凛を抱きしめた。凛はそのまま忍に委ねた、父の夢、魔術師としての

目標、根源に至る。だけどそれと同じ、いやそれ以上に自分に必要なものができてし

まった。これは一種の魅了の魔眼にも匹敵するだろう。

「ねえ、忍。私ね、決めた」

「なにを?」

「ついてきて、お願い」

 凛の言葉を聞くと、忍はそれに従いついていった。

 ──────────

「ふむ、こんな夜にまさか君から来るとは思わなかったぞ凛。一体どうしたというのだ

?」

「綺礼、質問するわ」

「ふむ、私でよければ」

「聖杯についてよ」

「聖杯?ああ、聖杯戦争のか。それがどうしたというのだ、まさか令呪でも出たのか?」

「いいえ、まだよ。けど質問に答えて聖杯は、聖杯戦争が始まらないと現界しないのよ

ね、古い記述でそう書いてあったわ」

32 第弐話〝衝撃和解〟

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「いかにも、その通りだ。聖杯戦争は始まれば〝おのず〞と現れる、それが聖杯だ。それ

がどうしたというのだ?」

「わかったわ、いいえ再確認よ、再確認。それよりも」

 そして凛は教会から出て行った。そして神父は笑うように、こういう

「そう、60年に一度とされてきたこの聖杯戦争。しかし、あのような結果で終わってい

るのなら、来るのは早いかもしれんな」

道芸師

 この笑みは、まるで

のような笑いだった。そして綺礼の手には、ホントならば

凛の家にあるはずの古い聖杯に関する古文書の一ページが、握りつぶされていたのだか

ら。

 ──────────

 凛の待機の元、忍は教会の外で待っていた。そして凛が走ってこっちにきた、そして

有無も言わさずにそのまま又もや遠坂邸に入れられた。その間、凛は忍になにも言わな

かったが家に入ると

「忍、私きめたわ!」

「なにを?」

「聖杯についてだけど、もう少し調べてみるわ。それで不審だと思った瞬間に壊します」

「え、だ、だって」

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 忍の混乱は当たり前だろう。さっきまで自分の夢を、それこそ自分で壊すなんていい

だすのだ、しかし凛はこう続いた

「だって私はここの管理者でもあるのよ、だからあんな大惨事を未然に防げるのならね、

それに……私の好きな人が言って言ることだもの、信じてみる価値はあるのよ」

 凛は真っ赤になりながらいう。そう魔術師としての彼女は忍だけが例外だった、それ

と同じく忍もそうだろう。魔術師と相対するのならば間違いなく忍は変わる、だが凛の

前は違う。それはこれまでの態度でわかるとおりだ。

「だけど」

「だけど?」

「根源に至ると言う魔術師の大本の目標は掴むわよ……覚悟しなさい、忍。聖杯を壊す

かもしれないんだから、それぐらいお願いね」

「ああ、もちろんだ」

 魔術師としての二人は、今、バカップルの二人の第一歩を踏み出し始めたのだ。凛は

そのまま忍にここに住むように勧めた。凛は少しでも一緒に居たいからということら

しい。

「けど、本当にいいの?」

 忍は聞く。それもそうだ、これではまるで今までのことが全部変わってしまうことに

34 第弐話〝衝撃和解〟

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なる。忍にとってはすばらしくいいことだが、しかし凛、いやこの場合は遠坂という魔

術師がこれでいいのだろうか?だが、意外にもこんな回答が帰ってきた

「どの道、聖杯戦争に参加するわけでしょ?それに、サーヴァントを倒さないと聖杯は出

ない、ならばそこで私が活躍すればいいだけどの話よ。それにまだ読み終わっていない

文献もあるんだから、それで聖杯についてわかればいいの」

「そう?」

 忍も食い下がらない

「ああ、もうわかったは忍、こっち向きなさい」

 凛の言葉に忍は凛のほうを向いた、その瞬間に自分の口の中に、人の舌がはいる、初

めての体験をした。忍はなにがなんだか、わからず、また凛はそれこそ押し倒すように

「り、凛ちゃん!?」

「もうね、私遠坂凛はあなたに夢中なの、わかる!?それとね、凛ちゃんは辞めて。今度か

らは凛、いいわね?」

「え、え?凛ちゃ「ちゃ?」……凛」

「……うん/////」

 凛は自分の名前を呼ばれてここまで嬉しくなることはないだろうと思い、そして

「それじゃあ、神崎忍。私と付き合ってくれますか?」

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「ああ、こちらこそ、よろしく。好きだよ凛」

「私も、大好きなんだからね忍」

 こうして、新しい魔術師のスタイルがここに誕生した。

 ※二人ともまだ中学二年生です。

36 第弐話〝衝撃和解〟

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第参話〝理論正論〞

  結局、凛と忍は元の鞘に戻ったような形だ。現在は談話室で暖を囲いながらこれまで

のことを二人で話していた。それこそ他愛もないことばかり、魔術協会関係もあるがそ

れよりもただの思い出のほうが多い。

「それで、忍。学校には行くのかしら?」

「学校?スクールってことか、だけど俺もうそんなのはとっくに」

「義務教育期間よまだ。まったくもしかして私から完全に追われてでもここに居座る気

だったの?」

「あはは」

 忍の考えはやはりどこか魔術師から離れている。凛も呆れながらもそんな彼が大好

きな彼女は嬉しくもあったようで

「すぐに手続きしましょうか。私と同じ学校でいいでしょう?イギリスに居たって言う

ぐらいだから英語は大丈夫でしょ」

「ああ、それは大丈夫だが。いいのか、そんなことまでしてもらって?」

「あら、未来の旦那様にそれぐらいするのが未来の妻ではないのかしら」

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 忍はここで初めて凛が変わっていたことに気付いた。変わらないところもあったが、

彼女は少し意地悪をするのが好きになっていたようだ。そんな微笑を忍が後日、紅い悪

魔の微笑みと言うのはまた、別の話。

「それで、俺のすむ場所は「ここに決まっているわよ」……決まっているのかよ。まあ俺

としてはありがたい限りなのだが、けどそれって結構怪しまれないか、あの神父に」

「もう忍も嫌悪感を抱いているのねあのエセ神父に。まあ大丈夫でしょう、監視って名

目にしておけば。それに…………もう離れたくないから、私。覚悟しなさい/////

/」

 忍はそのまま真っ赤、凛も真っ赤であった。しかし凛はもう一つ気付いていないこと

がある。それは世間体だが、まあ関係ないのかもしれないこの二人の間には。

「それじゃあちょっと待ってくれないか、知り合いのところに今後の荷物を置いてきて

しまったから。電話、どこにあるんだ」

 遠坂邸の電話は黒電話である。と、言うよりもこの遠坂邸は少し古いのだ、なにがと

いえば何もかもだ。談話室には暖炉、そして電気もあるがランプなど、色々とそうだが

確固たる象徴はテレビがないことだ。忍は、少しここを現代までも戻さないとと思いな

がら電話をかけた、そして出てきたのはメイドだった

「久しぶりですね、ええそちらにはもう?」

38 第参話〝理論正論〟

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 忍の電話を盗み見ているのはここの当主でないと信じたい。凛にとってはすでに忍

を疑ってはいなかった、ならばなぜ見ているのか。理由はただ単に知りたいからだろ

う、自分以外の日本の知り合いを

「お久しぶりですね、遠野家の当主様。ええその件についてはすでに、はい、それは先代

のことですので。そして荷物なのですが、はい。ありがとうございます……ええ、ええ。

それでは申し訳ありませんが」

 と、受話器をわきに置き、そして忍はそのまま凛に聞く。もちろん凛は受話器を置い

た瞬間に戻っていた。

「すまん、凛。ここの住所を教えてくれないか」

 忍の声に凛は答え、そしてまた、さっきのように忍を観察する

「はい、そう言う事ですので。え、今ですか、アハハ。それでは、はい。分かりました、

それでは失礼します」

 忍はそして受話器を置いた。凛もソファーに座りなおした。

「これで俺の荷物自体は日曜日にでも届くだろうし。そうなると、当分の間はこれでな

んとかなるだろう。それよりも、凛ちょっとコートを持ってきてくれるかい」

「え、あの」

 凛の赤いコート、忍が銃弾をあてて穴が空いてしまったものなのだが。それを忍はて

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にするとそのまま瞬間的に治したのだ。

「忍、それって」

「俺の魔術さ。まあこんなことに使うのはどうかと思うけどね、けどさすがにこれを他

の人にやらせるわけに行かないからさ。この弾丸で傷ついたんじゃね」

 忍はそう言いながら徐に弾丸を一つだす。形はそれこそ普通の弾丸の大きさ、しかし

これにも秘密がある。

「そう思えば私、ビックリしたわよ。私の宝石を掴むなんて、一体どういう荒業よ」

「え、そんなの凛の手から発せられた瞬間に俺の魔術で宝石を覆ったんだよ。こっちも

びっくりしたけど、凛ってもしかして属性を二つ持っているの?最初のガンドは水だっ

たけどさっきは火だったし」

 凛は忍の発言に、すぐに答えた

五大元素属性所持

レー

ジ・

「だって私、

だもの。それに遠坂の家の魔術は宝石、転換がおもな魔術

なのよってはぁ〜本当に忍の前だと平気で魔術のことも話しちゃうわ。これじゃあダ

メなのにね」

「まあ俺らだけならいいんじゃない?けどすごいな凛は、俺なんて風だけだよ」

「風?それって結構貴重なのよ。だけどそれだけじゃないみたいね、あなたの魔術って。

まあいいわ、それは後にして。それよりも私の工房に案内するわ」

40 第参話〝理論正論〟

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「いいのか?」

「これから、一緒にやっていくんだから当然でしょ。それに根源に至るまで、さらに聖杯

の真実を知るまでに色々と出来る事もしちゃうから、よろしくね」

 凛はそういい、今度は自分の部屋に案内したのだ。魔術工房、言葉としてもそして意

味としても適している、この言葉。魔術はある種学問であり、そしてそして魔術師は教

授でもあるのだ。そしてその工房を自ら見せると言うことはより信頼されていること

が大原則の下、そして忍はこう言った。

「まあ、宝石魔術はできるが「できるの、忍」うん、一応ね。魔力をそっちに溜めておく

貯蔵庫みたいに使っているのが主だし、それに俺の場合は戦闘となればこっちを使う

し。」

魔術礼装銃

ジャッ

 と、凛に見せるのは先ほど使用した拳銃だ。

の弾丸はすべて特別製であ

る。なんせただの弾丸ではなく、中心の芯には忍自身の魔術で磨き作られた宝石が入っ

ているのだから。

「なるほどね。ようは、忍は戦闘にもなれているわけだ……あれ、もしかして私ってすご

い上玉捕まえちゃったみたいね」

「ああ、その分俺もお前を手に入れられたからいいかな?」

 忍の素の言葉に凛が真っ赤になったのは言うまでもなく、凛はそれを隠すように工房

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の扉を開けた。そこには少し香水とは違う匂いがするが、しかしこれは魔術のにおいで

あろう。そしてビーカーの中にあるのは、なんだろうか?まったくもって未知の領域

だ、だがもう一つ未知なのが

「凛、片付けられないのかもしかして。この本のカズは少しは減らしたらどうだろうか

?」

「えっと、一応これでもね……ごめんなさい、すぐに。だけどこの文書、すべて聖杯戦争

にかかわるものなのよね」

 その本とは、この工房の床から天上に着くまでもあるものだが

「まて凛。そんなにあるものじゃないだろうが、ってこの本の表紙に書いてあるのは宝

石じゃないか!」

 忍は英語、日本語はもちろん、そしてドイツ語も会得していたのだ。だからこそこの

本も理解できたのだが。忍は凛を睨みながら凛の話を聞いた。

「ゴホン。えっと今、私は転換の宝石関係でしょ。それに八極拳でしょ、それとそれと魔

術理論の解析かな」

 凛の魔術とは正しく学者の研究と同じだ。魔術理論の解析、それは物理の研究に近

い。その分ちょっと命が関わる可能性が高いだけで。

「そうなんだ。俺は本当に戦闘続きだったかな〜死徒狩りとかね」

42 第参話〝理論正論〟

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「え、それって普通に依頼じゃないの。けど魔術協会からは」

「まあそれはそれだよ。こっちもお金は必要だからね、それに俺の弾丸には宝石が入っ

ているからね、その分お金がかかるんだよ。まあそれに普通に宝石は必要だろう、それ

は凛だってそうだろう」

「そうね……最近それを本当に思ったわ」

 凛は自嘲な笑いをしている。理由は最近まで雇っていた家政婦さんを金銭面的な理

由で解雇したばっかだからである。もちろん理由は宝石だ、彼女の魔法には大体の宝石

を使う。そのせいでもあり、また新しい魔術工具などを買っていたりするとお金がなく

なるのだ。

「それで、ここに案内されたのは分かったけど。ここでどうしたの?しかもトランクを

持った状態で」

「まあ、簡単なことよ銃を少し貸してくれないかしら?」

「うん?構わないけど、撃つなよ」

「なんで?」

魔術礼装銃

ジャッ

 凛のうっかりスキルが発動した。忍はこの

に説明をすることにした。

「えっと、これは俺のいや神崎家の魔術刻印あって始めて使える銃なんだよ。俺の魔術

刻印って特殊な強化の魔術なんだけど、それで銃を強化したないと弾丸も出せないし、

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それに俺の腕が吹き飛ぶ。この銃の威力や、反動を考えると人類では扱い不可だ」

「そ、そうなのね。それじゃあこれは無理かしらね」

 と、凛は奥から変な箱を出してきた。鍵穴は存在するのだがこれは一体なんだろうか

?形はマルであり、まるで意味がない。だが、忍は何かに気付いたのか、メガネを外し

た……確認するように見る。それを凛は不審に見ていた

「忍、一体どうしたの。メガネなんて離して、それって伊達なの?」

「あ、ああそうか。この眼について説明していなかったな。俺、魔眼持ちなんだよね「う

そ!?」……本当だよ、あ、だけどあれだ、普通のとはちょっと違うんだよな、こいつ」

「それってどういうこと?魔眼って普通私たちの魔術の一小節を行使するっていうの

じゃなくて?」

「うん、あれだ。えっと……天性的な奴のほう」

「それってもしかして」

 凛の言うとおり、俺の魔眼、いやこの場合は直死の魔眼についてなのだが、普通なら

ばさきの凛の説明どおりだが……視て判断する、正しく魔眼なのだ。しかもこの魔眼は

例によって奇跡の存在近い。写る線が死そのものだ、それをなぞればその対象が死とな

る、そんな代物。

許容スペック

「と、言うわけなんだけどね。もちろん、それと同じぐらい脳にも

が「…めなさい」

44 第参話〝理論正論〟

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……あ、あのう凛?「や……さい」……凛さ〜ん」

 忍の声に反応なく、凛はそのまま忍に抱きつき、こう言った

「使うのを即刻に辞めなさい!「だけどこれなら、もしかしたら」もし、それで忍の脳が

危険になったらどうするの!いい、やめなさい!脳が理解しないといけないのなら私が

教えるから、これが何かを。だからやめなさい!いい、それとその魔眼は使うのを極力

避けなさい。いいわね、便利とか思ったらダメよ。だから早くメガネをかけなさい」

 まるで子供だだっこだが、凛は忍のことを心配してのことだ。

「大丈夫だよ。この魔眼殺しのメガネは保険みたいなもので、一応俺自身でスイッチが

あるからそれを切らない限り魔眼の機能はないから。だから大丈夫だよ、凛。ごめんね

やっぱり先にこういうことを言うべきだったね、一応俺の魔術は教えていたけど、これ

はね」

「まったく。心配させないで、それじゃあ今日はこれぐらいにしましょう。どの道今日

は忍にこの部屋の紹介がしたかっただけだから。それにその銃を改良して私にって考

えたんだけど。それもいいわ、もうまずは忍の体の方が心配だから。それに夜も深い

し」

 そう言うと忍はメガネをかけなおし苦笑する。凛は今度は、忍の手を引きながら二階

に連れてきた。そして部屋は奥から六つ、その中で真ん中の部屋の左。

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「はい、今日からはここに住んでね忍」

 案内されたのは、客間なのだが。凛の言うことは、今日からここがあなたの部屋と言

うことだ。

「ちなみに向かい側が私の部屋だから。大丈夫よ、部屋は片付いているから」

 さっきのあの状態ではないようで忍は少し安心していた。忍はすでにコートを脱い

でおり、それをかける。トランクに入ってるものを広げる、入っているものはパスポー

ト、それとお金。さらにさっき調べていた魔力計、数日の着替えだ。

「本当に何も持ってきていなかったのね」

「まあホテルってことになるとね。逆に荷物が多いと邪魔だし。それよりも凛は明日か

ら学校でしょ。そろそろ寝ないと不味いんじゃ」

「なに、それは忍が襲いたいのかしら?」

「凛」

「はいはい、ごめんなさい。だけど、覚えていて忍。この〝本当の遠坂凛〞はあなたにし

か引き出せないんだからね♪」

 そう言うと、凛は投げキッスをして。そして

「それじゃあ今日はシャワーを浴びて寝るわ。忍も長旅なんだから寝なさいな、それ

じゃあお休み」

46 第参話〝理論正論〟

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 二人が、元鞘に戻り。そして一日が終わりを告げた、しかし忍はこの家に来てやはり

思ったのだ。凛を絶対に俺は守ると。それは彼の中で大きくなるのであった。

 ──────────

 凛はバスルームに入ると、今日のことを思い返す。正しく魔術師としては酷いもの

だ、他人な魔術師をあそこまで信じて部屋に招き、あまつさえ同じ屋根で暮らすのだ。

しかも父のいや家の夢を壊すかもしれないのに。

「♪〜♪」

 だが、それでも凛はもう忍を離すことを脳から削除してしまった。自分がここまで一

人に夢中になっていたとは気付いていなかった。だが、すでに遅いほどに気付いてた、

いや気付いてしまったのだ。

「このまま、今日は寝て。明日には忍の申請ね、そうすればあとはこっちでクラスを」

 一人考えながらこのあとの生活を計画している、凛であった。もちろん四葉のクロー

バーのペンダントを外さず、鏡に映るその姿に。凛はいつのまにか当たり前になってい

たこの体の一部。そしてそれを持ってキスをする、今度はくれた人にするぞっと言って

いるかのように。

 ──────────

 知らない天上とは、いつも同じでなれない天井のことだ。忍の視界にはその見慣れな

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いものが一杯眼に映った、今日朝だったのだ。

「そうか、とうとう俺は」

 冬木。遠坂邸である、この家に暮らしているのだと実感した。本当ならばもっと時間

がかかると思っていた。もしかしたら彼女が自分のことを忘れていることも考えてい

たからだ、しかし凛も覚えており、そして凛からの告白。

「結局男らしくないな、俺」

 情けない笑いをする忍。なので恩を返すことと、そして色々と考えるとき、忍がいつ

もしていることを、するためにしたに下りたのであった。

 ──────────

 凛は朝が弱い。理由は二つある、まずは魔術の鍛錬は夜の方が快適なので寝不足と言

うこと、そしてもう一つは低血圧であることだ。しかしそんな凛でも朝のこの光景は一

回で眼を覚ましてしまったのであった。

「ふわぁ〜、ニュウユウ、ニュウユウ」

 凛が呪文のように唱えているのは一応牛乳と言う単語のはずなのだが。凛はそんな

感じにキッチンを目指し、いつものように冷蔵庫から牛乳を取り出すはずだった。

「うん?どうかしたか?」

「うん、ニュウユウ」

48 第参話〝理論正論〟

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「ああ、牛乳な。ちょっと待ってろコップに入れてやるから」

「うん」

 凛はさも当たり前のように差し出された牛乳を飲み干す。そして凛は気付く、一体誰

がこのコップをようして、そして私に渡したのだろうか。そして、もう一度凛はその人

物に目線を向ける

「おはよう、凛。少し待っていろ、もう少しで朝食ができるから。ああ、それと勝手に冷

蔵庫のものは使わせてもらったぞ。それとこのエプロンもな」

 凛は未だに微動だにしない。と、言うよもりも未だに状況が分かっていないのが現状

だ。そして凛の第一声はこうなった。

「忍?料理できるのね」

 こんなことだ。現在凛の目の前には完璧までの英国式朝食が準備されている。紅茶

すらそれこそ非常にうまいであろう色と匂い。さらに食欲をそそるような、匂い。そん

なものが並んでいる中凛はそれしかいえなかったのだ。忍は凛の言葉に苦笑いをしな

がらも料理をすすめていた。

「凛、さきに座っていてくれないか。それか着替えてきてくれないか、学校だろう?」

 忍の言葉に、従い凛は部屋に行き制服に着替えると、そのまま下に戻り椅子に座った。

そして朝食の完成だ、しかし凛はてをつけていない、というか動いていない。忍はその

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動作に焦った

「もしかして、不味そうか?」

 忍の一言にもちろん全力で首をふる凛。そんなはずがない、一言言えば今すぐに食べ

たいぐらいだ、しかし

「なんというか、女としてのプライドがね。それよりも忍、あんた料理も出来たのね」

「まあこれでも野宿もしたことあるから。できる限り料理ができるときはしておかない

と、常識な味覚を失いそうでね。まあそれよりも食べて、食べて」

 忍の勧めで口にする凛、そして一言

「……おいしい……」

 忍はそれだけでも聞けば十分だと思い、自分もご飯を食べる。そして食事が中盤に入

りやっとしゃべり出した凛

「私って朝は食べない人だったのにな。これじゃあ毎日食べそうよ、そして太りそう

……それはいいとして、私は学校に行くから。忍はまずはそうね、この町に慣れなさい。

日曜日には、一緒にでかけましょう」

「ああ、そうだな。それよりも凛、ほっぺに」

 と、忍は苦笑してそのまま凛の頬についていたソースをとる。凛は顔を真っ赤にしな

がら、いつものように愛用の紅いコートをして

50 第参話〝理論正論〟

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「それじゃあ行ってきます忍。今日はちゃんとあなたの魔術の説明してもらうからね、

それじゃあ帰りは四時ぐらいになるから、一応お金はそのカード使ってくれた構わない

から。それじゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい」

 忍はそういい、見送る。ちなみにカードを使っていいといわれているが、自分もカー

ドを持っているのでこれは持っていくだけにしよう。どの道きょうの夕食の買い物を

しないといけないし。さて、それでは

「まずは会いに行かないとな。正義のおっちゃんに」

 忍は、遠坂邸を出て、そしてある目的地を定めた。それは凛の次に会っておきたかっ

た人。その人のやっと思い出した名前は衛宮切嗣。彼の恩人だ。

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第肆話〝来訪衝撃〞

   遠坂凛が今まで以上にご機嫌だ。そんな噂が学校中を包んでいる、どうも今朝から様

子が可笑しいらしいのだが、真相はさなかではない。問題は誰が機嫌を良くしたかだ、

学校のアイドルである彼女、それを機嫌よくさせるのは一つは友人、そしてもう一つが

恋人だ。友人という可能性もあるのだが、彼女にそこまで親しいものがいるかといえば

否だ。もちろん彼女は虐められているわけではない、ただ神聖視があるため、高みの花

状態だ。

「♪〜♪」

 現状、遠坂凛は昨日からの生活の激変。さらに自分の恋が成就したせいで浮かれきっ

ている。周りの目などいくわけがないのだ。

「今日の遠坂さんどうしたんでしょうか?」

「もしかして、何かいいことでも」

「だけどこの学校に親しい友人では?」

「私たちじゃ無理ですよ〜」

52 第肆話〝来訪衝撃〟

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「と、なると誰だ?」

 周りの声はこうだ。まあアイドルをここまで上機嫌にさせた相手とは気になるのが

心情だろう。そして

「お前ら、席につかないか」

 教師が入る。今日の学校は一体何回、遠坂が注意されるかは見ものだ。

 ──────────

 冬木市。それは聖杯戦争の地にして日本の地方都市。都市と言うだけあってそこに

は新都とも言われるビル群もある。忍は歩きながらも幼き頃の思い出を思い出してい

た。うつろにわかるのは背が低い頃の光景。そして

「ここだな」

 忍の目的地。それは衛宮邸、忍が父の死を知った場所でもあった。和風の家といった

感じのつくりをしているが、基は魔術師の拠点であったため忍は少し警戒をしていたが

しかしなにも無さそうなので銃はしまったままで大きな門の前についた。凄い佇まい

であるこの家に忍は一瞬入るのを躊躇ったがしかし、それは思いもよらない一声で変

わった

「あら、何かようかしら?」

 忍に声をかけてきたのは、見た目は二十代前半、もしくは十代にも見えなくはないほ

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どの女性だった。

「君?高校生じゃないわよね、中学生?なら、こんなところにいちゃダメでしょ、これで

もお姉さん教師なんだから」

 その人はそういうとそのまま忍に近づいた。

「あ、え、えっとすいません。ここに衛宮切嗣さんはいらっしゃいますか?」

「え」

 女性は不思議に思ったのだろうか。それこそ、目を丸くして忍のほうを凝視してい

た。彼女、名前は藤原大河。高校生のころ冬木の虎とも言われていた凄い人なのだが

……忍が知らないのはしょうがいだろう、なんせ今までは外国に居たわけでもある。し

かし彼女の反応は少し可笑しいと忍は思っていたのだ。

「そう、切嗣さんの。どうぞ、いらっしゃい今の家主は学校に行っているから。中で話を

聞きますので」

 女性はまるで自分の家のように忍を案内した。そして入るとすぐにお茶を入れ、忍に

話してくれた。すでに切嗣は他界しいてることを

「そうだったんですか」

「ええ、あ、そう思えば最初にそんな話をしちゃったわね。まずは自己紹介ね、私は藤村

大河って言うのあなたは?」

54 第肆話〝来訪衝撃〟

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「神崎……神崎忍っていいます」

「神崎……忍……君!?」

 大河は何かに驚いたように忍を見つめている。それはさっきと同じような眼、大河は

そのまますぐに忍にここで待っているようにといい、せかせかと廊下にでて何かを探し

にいったようだ。忍は何がなんだかわからずにいたが、しかし彼女がもし何か変な行動

を犯せばすぐに撃ちぬく準備はしていたのだ。切嗣さんが死んでいたとは思っていた

なかった、あのひとは正義のおっさんだ。それが、こうも簡単に。忍はあの時見えた

おっさんの顔が妙に父親に似ていたのを覚えていた。

「ごめんね、これこれ」

 大河は何か、大きな箱を持ってきたのだ。ダンボールの中に切嗣と書いてある大きな

箱だ。そしておもむろに大河がだしたのは大きな本が一冊、そして……一枚の手紙だっ

た。

「神崎忍君。切嗣さんのね遺品の中にこういう手紙があったの。神崎忍という人、もし

くは子が来た場合必ず、この箱を渡すことって、私とそれと士郎にね。ああ、士郎って

言うのは切嗣さんが拾った子で……ねぇ、もしかして君もそういう一人なの。士郎も切

嗣さんに助けてもらったの?それに桜ちゃんも、君もそう?」

「…そうですよ。俺はあの人に救われたんです」

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 忍にとって魔術のセカイを最初に教えてくれたのはあの人だった。今までの魔術の

世界は父親に守られていた世界だった。それを一気に変えてくれたのはこの人でも

あったのだ、忍はそのダンボール、そして手紙を持ち。

「遺影、ありますか」

 忍は最後にそういい、切嗣に礼を言うように祈り、そして衛宮邸をあとにしたので

あった。切嗣もまた、忍の父どうように魔術師殺しをしていたのをすでに忍の耳には聞

いていた。しかし彼女を見る限りそれほど酷い人でもなさそうだと思ったのが正直な

忍の気持ちだった。

「さて、結構歩いたし。あとは新都のほうは凛ちゃ……凛と一緒に歩けばいいだろうか

ら。さて、家に帰ったらまずはこのはこを開けないとな」

 大きなダンボールを持ちながらあるいている忍。前が見えず人にぶつかってしまう

のはある意味しょうがなかったのかもしれない。

「あいてっ!」

 忍のほうがだが

「ふむ、すまない。こちらも気をつけて……これは、神崎忍だったな。久しぶりと言うべ

きか」

 そこにはあの神父、言峰綺礼が立っていたのだ。

56 第肆話〝来訪衝撃〟

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「あ、これは言峰さん。失礼しました」

「ふむ、何構わないさ。しかし、そんな荷物は一体?それと遠坂凛とは話をつけたようだ

な。先ほどその遠坂凛より、君の入学手続きの資料との文章が協会より送られてきた。

ふむ、ちょうどよかったものだ。君の住所も聞いていなかったのでな、探すところだっ

たよ」

 彼の言葉に忍は苦笑いをしていた。なぜか、それは彼の言葉にまったく誠意が感じな

かったからだ。

「しかし、その状態では難しいか?いや、ここに置いておこう」

 そしてダンボールの箱の上に手紙を置いて、そのまま立ち去った。酷い大人の見本で

あろう。ちなみに忍の身長は平均の中学生の身長を少し小さい。それもあってかダン

ボールに手紙とは完全に悪意しかない。

「あの神父、やっぱり苦手だ」

 そう思いながら俺は凛の家に帰るのであった。そして大体もう少しで忍が到着する

であろう、時、後ろから声がした。

「忍〜」

 凛の声に忍は反応したかったが、しかしこの状態ではそれこそ振り向くことも難しそ

うだ。そして凛はこの状況をわかってくれたようで

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「あら、何これ?」

 まあ、誰もが思うだろうな。ダンボールの箱を持った少年。しかも上には封筒、これ

で凛の質問にも納得がいくと言うものだ

「説明するから。その前に家に入ろう凛」

「そうね/////」

 ちなみに凛は昨日から忍から名前で呼ばれることに、恥ずかしがっているのだが。今

朝はそれを隠すように退散してしまったし、昨日はそれどころではなかった感じで。実

際こんな風に自分が名前で呼ばれると凛はすぐに赤面してしまうのだ。

「ふぅ〜しかし、これは重かったな」

 忍はその荷物を、自分の部屋に運び込むとそのまま最初の封筒を開けた。ちなみに凛

も部屋に来ている。すでに制服から私服に替えてある。まずは神父からの手紙を忍は

手に取り、そしてあけた。

「何々、凛。この学校で大丈夫なのか?」

「ええ、そうよ。ここ、私の学校ね。すでに綺礼に頼んで制服もお願いしといたから。あ

とは来たもののサイズを確認するだけよ」

「確認って、寸法しないで大丈夫なのか?」

「あの神父、色々と凄いのよ……まあ、それは今度話すわ。それじゃあ、これで忍も晴れ

58 第肆話〝来訪衝撃〟

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て中学生ね。それと、そのダンボールは何?」

「これ?これは……まあなんて言うか、父さんの知人の遺産と言うか、遺言というか。そ

んなものだよ」

 凛は興味なさそうにうなずくと

「それじゃあ昨日は私の魔術のこと教えたんだから、忍のもいいわよね?」

「了解だ。それじゃあこの前と同じ工房にいくか」

 二人はそして昨日と同じところにやってくる。忍はすぐに銃を取り出して、机に置

く。

「それじゃあ、まずは俺の魔術についてだね。まあこの前も行ったけど俺の属性は風、そ

れと使用魔術は強化だね。それぐらいかな、出来るのは」

「質問、いいかしら。忍」

「どうぞ」

「それじゃあ……なぜ、魔術師として忌み嫌われている近代兵器(銃)を使っているのか

しら?魔術師としては邪道の邪道よ、それこそ」

「そうだね、これはまあ一番の原因は父さんにあるんだけどね。まあそれを抜かせば簡

単に俺はそれでもしないと生きていけない環境だったとでもいえばいいのかな。俺の

師匠は破天荒でね、たまに協会と教会に喧嘩を売っては、死徒狩りしててさ。基からあ

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まり筋力がなかったからさ、俺。それでこれを使っているんだ」

「さっき父さんって言っていたけど、それじゃあそれは」

「ああ、これは魔術師殺しに使うにはもっとも強いものだよ」

 その言葉に凛は少し考える、そしてなにか浮かんだのだろうか。頭を上げたさらに質

問をした。

「それじゃあ、昨日の私では撃てないってのは、どういうことかしら?」

「ああ、それだとその前に俺の血ついて説明しないとね。凛のいや遠坂の血は昨日聞い

たけど転換でしょ」

「ええ、そうよ。それで」

「それで、俺の場合は転換ではなく、強化なんだよね。だから魔術刻印もそれに準じるも

のなんだよね。まあこの強化は普通のものとは少しちがうけど」

「違うってどういう意味?」

「えっと、凛。強化の魔術についてはどれぐらい知っているの?」

「そんなの、それこそ系統の一種ってことぐらいかしら。自分の魔力を対象物に流し込

んで存在を高める。確か投影、変化と同じ系統のはずよね」

「エクセレント、そのとおりだよ凛。何かご褒美あげようか?」

 忍の言葉に、凛は一瞬口付けといいそうになったが、しかし凛やはりそう言うのは男

60 第肆話〝来訪衝撃〟

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性からだと思っており。いい留まり

「それもあとで、聞いてほしいわ。それよりも先に、それで、どういうこと?」

「う〜ん、そうだね。それじゃあ簡単な質問ね、強化の魔術で魔術行使をした、例えばガ

ンドとかって強化できる?」

「そんなのできるわけないでしょう。大体強化って言うのは存在を高めることなんだか

ら……もしかして忍」

「そう、俺の魔術、いや家の魔術はそれだ。強化が違うのだ、普通ならばそうなのだが例

えばこの前の魔術とかね、凛の宝石を腕で凌ぐなんて芸当はそこからなんだよ。それと

最初に凛に銃を貸した際に撃つなと言ったのは、この銃。腕が吹き飛ぶからね、人類が

あつかうと」

魔術礼装銃

ジャッ

、忍の父が作り出したもの。13mm拳銃であり、全長39cm、重量16

kg、装弾数は六発が限界の元々は対人間外のものだ。もちろん普通の弾丸も装填可能

が忍も父と同じく専用の弾丸だけを装填している。しかし違う点もある。忍の父の場

合の専用は弾丸に細かな法儀式済み水銀を入れてるが、忍の場合は芯に自分の魔力で満

たせた宝石を入れている。

「はぁ〜、そんなものを使っているって忍ドンだけ器用なのよ?それよりもその弾丸は

量産できるの?」

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「まあ一時間あれば三十発はできるよ。もちろん宝石もいるけどね、まあ魔術師以外の

プロジェクト

相手ならばこれでいいんだけどね。

弾倉マガジン

 忍は手を光らせると、瞬間的に

を手のひらに出現させた。

「忍それって、もしかして投影魔術」

「うん、一応俺の得意魔術の一種かな。投影ね、もちろんこんなのそれこそ十分もしない

うちに消えちゃうけどさ。けど、これなら普通に弾丸としてなら扱えるから」

 投影魔術、それは世界に存在しないものを一時的に現界させる魔術。そのせいか、本

物の三割程度しか効力がないや、またはすぐに消えてしまうもので、普通に存在するも

のを強化したほうが遥かに魔力としてはやさしいが、しかし忍のはそれでも十分だ。な

んせ撃ち出した弾丸にはもう意味がなくなるので、ある意味勝手に消えてくれる弾丸で

もあるのだから。

「初めて見たわ。やっぱり人の魔術をみるものためになるのねってもうこんな時間!?」

 凛の指摘どおり、時計を見ると時間としては六時を過ぎていた。二人ともそれほどに

話していたのか、微妙といいたいがしかし、事実時間は過ぎていたのだから仕方がない。

二人とも工房からでると、忍は凛に

「それじゃあ、俺は飯作るから。シャワーでも浴びてなよ」

「ええ、そうするわ。だけど忍本当にこの一日で慣れたのね」

62 第肆話〝来訪衝撃〟

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「まあまだ、凛を呼び捨てにするのは慣れていないけどね。それに部屋もだけどね、これ

でも平常心を装っているだけさ」

「あら、そう」

 忍は正直にいうが、この家主が正直に言うわけもなく。そのままシャワーに向かって

しまうのであった。忍は着ていた服装の腕をまくり、すぐに料理の準備をする。冷蔵庫

の中は今日買い物に行っていなかったため、あまりないが。それでも少しマシなものが

出来るだろう。なんせこの忍、どこかの師匠のせいでコウモリと蛙で料理ができた男で

もあるのだがら。

 ──────────

 凛はシャワーを浴びながら、今日のことを考える。彼の魔術は少しいびつでもある

が、間違いなく戦闘向きだと言うのが分かった。たぶんそういう風にしか習ってきてい

ないからであろう。まずは投影魔術だ、弾倉を出せるのだから他も可能だろう。次に強

化、これも違う使い道、下手をすれば自分の魔術と混ぜれば凄いものができそうだが。

「はぁ〜それにしても不味いわね」

 凛は彼と工房に居るさい、忍の横顔がどんどんかっこよく見えてきてしまい、大変な

状態であったのだ。もちろん魔術の説明を聞いていないわけではない、しかしそれでも

忍の魔術師の顔は今までにないほどの魅力だと凛は思っていた。

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「まあ、それよりも……これは本当にどうしようかしら」

 凛にとっては初めての恋愛でもあり、どうしていいのか分からないのだ。忍にキスと

いうか、手を繋いだりとか、触れたいといった感情は凄くあるようだ。しかしそれを実

装する勇気がないのだ。だから先の言葉なのだ。

「はぁ〜聖杯戦争前に、先にこれを片付けよう」

 シャワーを浴びながら遠坂凛の新たなる挑戦に挑むのであった。

 ──────────

 夕食も終わり、忍はシャワーを浴びていた。遠坂家はやはり洋風というか、風呂と言

うよりもバスルームといった方がいいだろう。そして忍はシャワーを浴び終えると、着

替える。変えの服はこれともう一着で終了なので、早く荷物が届かないと問題があだろ

う「凛、でたぞ」

「あ、そう」

 忍も凛も何も言わないがしかし、忍は凛の隣に座る。凛はそれが分かっているかのよ

うに先にソファーで席を開けるのであった。

 そして少しの沈黙の後。

「ねぇ、忍…………私たちって恋人どうしよね?お互い好き同士なんだから」

64 第肆話〝来訪衝撃〟

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「そ、そうだな。魔術師としても、そしてそれ以外としても俺はお前が居ないとダメのよ

うだ。はは、まだ中学生なのにな、俺ら」

 忍の言葉に凛はうれしくてつい、凛は抱きついてしまった。忍はそれに驚きながら

も、落ち着いて手を握った

「嬉しいことを平然と言うんじゃないわよ忍。まあ私の前では言っていいけど」

「それはありがたいけど、俺もこう言うのは凛の前だけだと思うぞ」

「ふふ、そう……ねえ「なあ」……何かしら、忍」

「いいのか、凛?」

「ええ、あなたからでいいわ」

「キスがしたい」

「ストレートすぎよ忍」

 しかし、その言葉に凛は体は違う行動をとった。すでに後ろに抱きついている凛は忍

の首のほうに自分の顔を向けてそして唇を突き出す。忍はそれに答えるようにキスを

した。

 ───────────

 あのあと、二人は無言のまま抱きしめあったり、まあイチャイチャしていたのは言う

までもなく、そのまま二人とも部屋に各自戻り、眠りについた。いや、正確には凛は眠

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りに着いただろう。

「さて……おっちゃん。俺に残した手紙、それは一体なんだ?」

 彼の手に握られているのは今日もらった、あの神父からの手紙ではない。ダンボール

の中に入っていた、手紙であった。ダンボールの中身はその手紙、そして書物だけだっ

た。

「……これは……」

 忍は驚愕する、それは最初に一文にあったからだ

 お願いだ……あれを今度こそ、〝破壊〞してくれ。

 これだった。

66 第肆話〝来訪衝撃〟

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 第伍話〝適齢年齢〞

   君がこの手紙を読んでいる頃には私は居ないだろう。まあこれは当然の結果でもあ

るんだけどね、しかし君もこの地に戻ってきたと言うことならば真実を知っておくべき

だと思う。君も気付いているかも知れないが、君の父、神崎審はある依頼のためあの時

この地に下りていたのだがその時と言うのが第四次聖杯戦争だ、彼は聖杯戦争には関

わっていない、正確に言えばマスターとしては参加していなかったと言うべきだ。

「父さんの依頼は戦争ではない?」

 文章はまだ続く。

 しかし、彼もこの地に居たというのなら何かしらに聖杯に関わっていたのかもしれな

い。だからこそ君にはこれを渡しておこう。あの書物は私とそして妻、助手が集めたも

のだ、これ自体、なにが書いてあるかは私もしらない所があるだろうが、これを贈る。だ

から、頼みがある

「頼み?あのおっちゃんが俺に?」

 最後の文脈にこう書いてあった。

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 ────君なら出来る。今度こそ〝大聖杯〞を破壊するんだ

 大聖杯?忍の頭のなかには意味の分からないことが書かれていた。聖杯が大がつく

と言うことは小もあるだろうと、模索していた。

「分からない、あとはこれだけか」

 ダンボールの中にある、書物。数としては七冊、これが全ての鍵となると思い忍は手

をかけて開く。そしてそこには

「……これは、アインツベルンの記録?」

 聖杯戦争についての説明、理念、そして目的が書いてあった。

「彼らは、魔法を取り戻すためにこれを出したのか?」

 彼は部屋の中にあった、机に書物を置いて読みふけることにした。

 ──────────

 朝とは、生きるもの誰しもが訪れるものである。凛もまた、今日ということを確認す

る。今日は土曜日である。学校も休みで普段ならば寝ているだろう時間、しかし忍が来

たおかげで規則正しい生活になっていた。

「ふわぁ〜、ねむい」

 凛が朝に弱い。そして起きるには牛乳を飲むのが恒例だ、そして彼に注がれるという

前とは違う得点があったはずだが、しかしそこに忍の姿はなかった。と、言うよりも料

68  第伍話〝適齢年齢〟

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理もなかったのだ。

「一日だけ?」

 凛は少し寂しいような、しかしこれのほうが自然だとも思っていた。しかし妙なこと

でもある、忍が自分よりも遅いことに対してだ。

「寝ているのかしら?なら」

 凛はすぐに上に向かい、部屋にあがる。理由がもしかして……寝顔をみたいとか、そ

んなふしだらじゃない事を「ふしだらじゃないわ!正当な行為よ」……地の文にツ込み

を入れるのは辞めてほしいものだ。そして凛は忍の部屋の前で息を整える、一応まだそ

れぐらいのつつしみはもっていたようだ。

「忍、おきてる?」

 凛は扉越しに言うが反応がない。凛は笑うとそのまま扉を開けて中に入る

「あれ?凛どうしたの?」

「うきゃっ!」

 寝ていると思っていた忍の声が急に聞こえてきたため、凛は驚いてしまった。いや、

正確には違う理由だろうが

「起きていたのね忍、おはよう」

「おはよう?……うわ、もうこんな時間か。すまないすぐに朝食を作るから、ちょっと

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待っていてくれ」

「あ、いいの。それよりも一体?それって何?」

「ああ、これな。あとで話すよ、着替えるからすまないが」

「分かったわ、それじゃあ先に待っているから」

 凛はそういうとそのまま下にいくのであった。忍は自分がこの書物に睡眠を使って

しまっているのは問題だった。しかし、忍の顔には少しすっきりしていたことがある

「これで師匠の言うことが分かってきた。穢れているね、まったくこれとあとは、凛の協

力か。まあその前に朝食だな」

 忍は下に降りる、そこには凄い光景があった。

「あら、忍。おはよう、さっきも言ったけどね、どう、似合う?」

 凛がエプロン姿で朝食を作っていた。メニューはパンに玉子焼き、さらに俺にはコー

ヒーであり凛は紅茶を入れていた。

「ふふ、あら私が料理できないなんて言ったかしら?これでも得意なのよ……中華」

「中華って。まあそれはそれであとで聞こう、それじゃあこれ運んでおくからな。早く

たべよう」

「そうね」

 忍は料理を運び、朝食が始まる。

70  第伍話〝適齢年齢〟

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「今日は遅いとおもっていたんだけど、まさか徹夜とはね。一体あの本、どうしたの?」

「うん?もちろん、あれが昨日運んでいたダンボールの中身だよ。それで今日は土曜だ

ろう?すまないが、工房の本貸してくれないか」

「聖杯戦争のこと?」

「そうだ、凛も一緒にな」

「いいけど、一体どうしたの?」

「ちょっとな、これであとはマキリさえ分かれば、いいんだけど。さすがにないだろう

し」

「って!その前に、今日は忍の日本で必要なものを買いに行かないとダメでしょう?」

「あ、そうだった。服と魔術は全て明日か、それだと歯ブラシとかな」

「そうよ。それにあと新都の説明もでしょ、一応ここの地理も私が今一度教えてあげる

から」

「すまないな」

「ここが戦場になるんですもの。それぐらい当然よ」

 二人はそんな風に話しながら朝食を楽しんでいた。

 朝食が終わると二人は出かける準備に入った。本についても帰ってからと凛はいい、

忍もそこまで焦ることではないと思い準備を始めた。

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「ふむ、これぐらいだな」

 忍の服装は黒いコートに、黒いジーンズと完全に黒尽くしである。しかしちゃんと装

飾として首にはペンダント、ブレスレッドをしている。ちなみに銃ももちろん持ち出し

ている

「忍、お待たせ」

 対する凛の服装は、赤いコートにスカート。二人並べば確かにお似合いなのかもしれ

ない、いや理想的な色合いといえるだろう。

「うん、綺麗だね凛」

「そっちもね、かっこいいわよ忍」

「と、いっても俺の場合はほぼ最初に会ったときと一緒だけどな」

「それじゃあ、ちゃんと言ってあげるわね。いつもかっこいいわよ忍は」

 忍は真っ赤にそまった凛の言葉に、微笑して

「ありがとう、チュッ」

 ほっぺにキスをする、凛は一瞬なにをされたのか分からなかったがすぐに理解して、

さらに紅くなりながらも

「そ、それじゃあエスコートよろしくね、忍/////」

 玄関前で手を差し出した凛、それを握る忍。二人とも恥ずかしがっているがそれでも

72  第伍話〝適齢年齢〟

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握った手は固かった。

「それにしても、あそこまで簡単にキスされるとはね〜忍、もしかして慣れている?」

「んなわけないだろう。これでも恥ずかしかったんだぞ、だけどそれよりもさっきの凛

は可愛かったからな。それで凛、どこに行くんだ新都って」

「まあ新都って言っても先の聖杯戦争で破壊されて修復された都市って感じかしら。駅

前とかビル郡とかかしら。それと冬木大橋かしら?」

「ああ、あの橋な。船が沈んである、へんなアートみたいになっているやつな。教会に行

く際に通ったでかい橋だよな」

「そう。まあ駅前には日用雑貨が一杯あるから」

「そうだな、それじゃあいくとするか」

 ちなみにこの二人、歩くと周りの人物が振り返っていることに気付いていない。二人

とも二人しか見ていないからだ、しかしこの二人世間で言うところの美男美女に相当す

る。それが二人手を繋ぎながら歩いていればそうもなるだろう。

「さて、ここね」

 凛の案内でついたのは駅前だ。

「左にデパートあるからそっち行きましょう」

「そうだな……あれも買いたいしな」

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「あれ?」

 忍の言葉に凛はなにかと思っていたが、エスカレーターに乗ると目的地に到着した

「げっ」

 凛が苦笑した、と言うか普通に拒否反応を見せた。

「凛、もしかして機械苦手?」

「う、うん。づどうもね」

「だからか」

 忍が買おうとしていたのはテレビだ。凛の家にはテレビもない、エアコンもないのだ

からしょうがない。

「つう訳でテレビを買うぞ」

「う、分かったわよ。けど、必要かしら?」

「買ってから文句なら聞いてやるよ。どの道、金は俺持ち出しな。と、言うよりもあそこ

の家には家電が少なすぎる」

 忍の意見に凛は少し恥ずかしかった。ようは自分は遅れていると思われてるのかも

しれないと思っているからだ。しかし忍はこう言った

魔術師

時計塔

「まあ

の家系だとな。そうなるのはわかるよ、

でも凄く俺って歪だったし。

まあ銃もあったし、家も家だったし」

74  第伍話〝適齢年齢〟

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「ねえそう思えば聞いていなかったわ。忍は魔術師殺しも受け継いでいるの?」

「うん?ああ、微妙だなその意見には」

「微妙?」

「そう、元人間の魔術師ならば殺したよ」

「元人間ってそれじゃあ」

「そう、封印指定とか、死徒とか、一応人間は殺さないよ、人に害をなさない限りね」

「ふう〜ん。ねえ今度私と少し組み手してみない?一応私も師匠というかなんていうか

であの綺礼に八極拳教わっていたから」

「いいけど。あまり近距離はな、それよりもさきにテレビだ、テレビ」

「そうね。だけどこれはそっちに任せるから」

 忍と凛はそのままテレビのコーナーに向かっていった。しかしここにまさか、凛のク

ラスの生徒達がいるとは、二人は気付いていなかった

「あれってまさか、遠坂さん?」

「ですわね、それではあのお隣の人は」

「見ないわね。けど・・・」

「「「かっこいい!」」」

 色めき立つ女子生徒たち、そしてもう片方の視点では

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「あれは」

「そんな馬鹿な!」

「神は死んだ!」

「「「俺らじゃ無理だ!」」」

 忍は知らないうちに有名人になっていたのは、言うまでもなかった

「それで忍?これでお仕舞いかしら」

「ああ、俺のは。あとは歯ブラシだろ、それにあと……今日の食事だ。凛の得意って言っ

ていた中華、頼むぞ」

「ええ、あなたのために腕を振るってあげるわよ」

 傍から見れば夫婦の会話に近い。しかしながら背が問題だろう、雰囲気ならば大人顔

負けなのだが、ルックスで中学生だと分かるだろう。

 ───────────

 教会では一人の神父が手続きをしていた。その書類は書いてあることは、簡単だ。聖

堂教会での調査だ。

「ふむ、あの少年。神崎忍についての考察……か」

 書類上では彼の同行をさぐれだが

「慎重をようすると書いてある。しかも期限はほぼ無限か…………これは、実に興味深

76  第伍話〝適齢年齢〟

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いな」

「ふん、雑種のたわごとだ」

 急なる声に綺礼は振り向く、しかしすぐに書類に眼を向けなおす。

「しかし、これは面白そうだな」

 綺礼はいつにもまして楽しそうな顔をしていたのは言うまでもない。

 ──────────

「ふむ、今日は結構買ったな」

「結構ね〜それだけで済むかしら今日の金額」

 凛は少し驚いていた、忍のカードは世に言うブラックだ。テレビを一括払いとは今の

凛には無理だろう。宝石を使う魔術、少し考え直す必要があるかもしれない。

「絶対にいや!」

「急にどうしたんだ、凛」

「え、あ、い、いやなんでもないわ。それよりもちゃんと握ってよね」

「はいはい」

 二人とも今日一日で随分と仲良くなったのだろう。その象徴として手の握り方が恋

人つなぎに変わっていたからだ。

 家につくと、そのまま工房に向かう二人。今度は魔術師としての二人だ

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「それじゃあまず、この書物と、それと凛の聖杯戦争に関する書物ってどれだ」

「これと、これね。片方は昔からのだけど、こっちはたぶん父様のだと思うわ。聖杯戦

争、特にここの霊脈については古い書物の方に書いてあるけど令呪や、サーヴァントに

ついてはこっちに書いてあるから。忍も分かるわよね、令呪にサーヴァント」

「ああ、こっちでだけどな。今までのはただ単に選ばれたものが聖杯を奪い合うものだ

と思っていたが、これを読む限りそれ以上だな。サーヴァント、それは生きた英雄って

ことか」

「そう、それを使い魔のように使役して最後まで残ったものに聖杯は与えられる。この

書物どおりならばね、だけど忍が指摘したとおり確かに可笑しい部分もあるのよね。そ

れでその分厚い書物のほうには?」

「アインツベルン、これについての詳細だな。なあ、遠坂の家系は元々、聖杯に何を願っ

たんだ?やはり根源の到達」

「もちろんね。魔術師にとってはある意味それがゴール、いえ一族のゴールですもの。

それが?」

「ここには、さらにアインツベルンの目的も書いてある。こいつらは聖杯を完成させて

第三魔法を取り戻すことらしいぞ」

「第三魔法」

78  第伍話〝適齢年齢〟

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 この世に存在する魔法は、第一から第五まであるといわれている。第一魔法はもっと

も古い魔法と言われているが謎が多い、第二も同じだ。第三魔法と言うのは魂の物質化

という事だ。第四魔法もまた第一と同じで詳細は不明。そして第五の魔法は忍の師匠

のことだ

「そう、魂の物質化による不老不死の完成なんだとさ。まあこの書物の書いてあること

だけどな。まあだけどこれは信頼できるよ」

「そう、私は忍を信じるから。それで、他には」

「ああ、それとこれにはもう一つ書いてあることがあった。それはこの聖杯戦争の歴史

だ」

「歴史?」

「ああ、第三次聖杯戦争からだが。このときから聖堂教会が介入し監視するようになっ

たんだ。そしてここに生まれた、この世の全ての悪だ」

「この世の全ての悪?」

「アンリマユ。それが聖杯を汚した〝張本人〞だ、まあこの世の全ての悪じゃあな」

「え?それじゃあ、忍の調査は本当に」

「ああ、これのこの文って読めるか凛?」

「ええ、一応英語は大丈夫ぐらいよ。一番はドイツ語なんだけどね」

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「そうか、ここだ。アインツベルンはどうしても、聖杯を完成させるべく本来は存在して

復讐者

アヴェンジャー

はならない〝サーヴァント〞を呼び出したのだ、とね。それがこれ

だ」

「アヴェンジャー……復讐者のクラス。だけど、なぜ完成しなかったの。この世の全て

の悪なんでしょ?普通に考えたなら誰にも負けないでしょ、古来から悪はずっと存在し

てきたのだから」

「そうだね。だけどここには四日しか保って居ないと書いてある、と言うことは偽者の

可能性があるんだ」

「偽者?」

「そう。例えば、犯人でもないひとを犯人としたて挙げる。そうすればその人は世間か

ら犯人とされてしまう場合があるだろう?」

「ええ、そうね。だけど、それじゃあ!」

 凛も気付いたのだろう。忍は読みながら気付いたが、切嗣も同じだったのだろう。全

員が同じ答えが導かれた

「そう、たぶんこれはそう言われてしまった人を呼び覚ましてしまったのだろうと俺は

思ってる」

「それじゃあただの人間を呼び出したの」

「そう。まあそんな風に言われると言うことはそれぐらいの力はあったのかもしれない

80  第伍話〝適齢年齢〟

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が、しかしそれだけだ。人間でしかなかったものには刻なんだろうさ。なんていったっ

て、サーヴァントは英雄を出すのだろう」

「そうね、だけどそれならなんで聖杯まで?偽者なんでしょ」

「人が偽者でも、理念がもし本物ならば?どうだろうか」

「……そう言うこと」

「そう言うことです。まあ、今読んで分かっているのはこれぐらいだけどね。それ以上

はまだ、だけど。それで、凛。君はどう思う?」

「もし、そうだとしたら本当に聖杯があんなことになるのなら私はこの冬木の管理者と

して、聖杯を破壊するわ」

「そうだな。だけど、まだ」

「分かっているわ。慎重にことは運ぶわ、これは私と忍だけのことでね」

「元からそのつもりだ」

 ここに来て、初めて二人は今後の聖杯についての方針をきめるのであった。

「だけど、忍……本当に私と同年代?」

「もちろんだ」

 確認する、二人はまだ14歳だ。

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第碌話〝日常変化〞

   そして忍と凛は、今後をきめてそして今度は凛の話しに変わった。

「それじゃあ次に明日のことね。明日にはテレビも来るわけでしょ、さらに忍の荷物も

届くわけでしょ。今の部屋じゃしょうがないというか殺風景だしね。それじゃあ忍、一

緒にお風呂にでも入る?」

「ふざけないの、まったく。それよりも凛、すこし失礼」

 忍は凛に近づくとそのまま、首に鼻を当てた。そして忍は匂いを嗅いだ、こう文章に

すると変態ちっくだがしかしながら忍は凛が近づくといつも思っていた事を、確信に変

えた

「ちょ、し、忍」

「あ、すまん。だけど凛、お前少し香水付けているのか?なんか、すこし匂いがあるが」

「ああ、それね。忍はそういう感じじゃないのかしら?私はすこし魔術行使をしている

せいか、ちょっとね体臭が」

 凛が恥ずかしそうに言う。まあ当たり前であろう好きな相手ににおいについては話

82 第碌話〝日常変化〟

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したくないだろう。しかし忍は首のところから匂いをかぐのを辞めない。変態だった

「そうか?まあ確かに魔術を行使するひとは独特のにおいと言うのはあるが、これは薬

品のにおいだな。今度、それも見せてくれ……あれを使えばたぶん凛の問題も解決でき

ると思うぞ」

 忍はそう言いながら宝石をだして、そのまま凛の首に当てた

「忍?」

「凛のはすこし、まだ魔術刻印が慣れていないからそうなるんだよ。まあ魔術回路に

よって変わるというものあるけどね。今の宝石ですこし循環はよくなっているはずだ

から、まあ、それでもちょっとしたことだけどね」

 凛は自分の体の匂いをかぎ始めた。そして驚いている

「可笑しいわね、と言うよりも凄いわね忍。これも魔術なのかしら?私としてはこれは

すごく興味深いのだけど」

「あはは、俺の属性の風で、ちょっとした匂いを消し飛ばしているんだよ。あれ、けどそ

れなら凛もできるとおもうけど」

 凛はうっかりだった。そして二人とも工房を出るとそのまま凛はシャワーを浴びに

行き、そして忍は今日かったものを置いていた。まずは歯ブラシ、そしてマグカップ。

凛のは猫であり、忍のはカラスである。

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「さて、こんなもんだろう。次はテレビの設置位置でも決めておくかな」

 と、忍がダイニングで周囲を見ていると、不思議なものを見つけた。それは時計だ、忍

ぶには違和感があった、それは自分の持っている時計とすこしと言うか凄くずれている

ことだ。なぜずれているのかはわからないが今日の出かけた際に忍の時計は駅前の時

計と一緒だったため忍が間違っているわけではない。

「あとで、凛にでも聞いてみよう」

「忍〜出たわよ」

 凛の声が聞こえたので、自分も服をそろえてそのままシャワー室に向かった。

 ───────────

 凛は忍がシャワーを浴びに行った後に今回の忍の魔術に驚いていた。実際、忍や凛の

魔術刻印は者により、体のあわせるため体臭がすこし変化してしまう。そのため凛は特

殊なシャンプーを使っていたり、こまめに香水を分けていた。しかし今日忍の魔術によ

る効果を試しに市販のシャンプーを使ったが、なんとなんともなかったのだ。

「凄い、才能ね。どちらがすごいのかしら」

 凛は自分は才能に恵まれていたと思っているが、忍とてそれは負けていないと思う。

発想の違いだろうが。彼にとっては簡単なことは自分にとっては難しいことと思う凛。

忍の魔術はやはりすこし歪でもあるが間違いなく、あの綺礼と同じぐらいだろう。

84 第碌話〝日常変化〟

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「そう思えば、今日は私の料理の番だったわね。さて頑張りますか」

 凛は力を入れるように腕まくりをした。そしてエプロンのかかっているところを見

るとすこし笑った。それは凛のエプロンである猫マークと、それの隣にある今日買った

忍のカラスエプロンがあったからだ。

「自分の事をカラスって言うのも面白いわね。けどなんていうか合っているのはどうし

てなのかしら?」

 凛はからすについての神話を知らないのだろう。カラスとは太陽の使いとも言われ

ている、大変優秀な鳥なのだと。

「ま、そんなこと気にしていないで。今日はちゃんと忍に女の子らしいところを見せる

わよ!それで……あとは、また抱きついていましょう。ええ、完璧ねこれが一番よ!」

 凛は昨日の抱きつきが気に入ったようで、寝るまでもずっとその感覚を抱いていたと

いうのは、乙女らしいといえるだろう。しかし

「それじゃあ、まずはこの豆板醤を」

 中華だからといっていきなり、フライパンに鷹の爪と豆板醤を入れるのは、どうだろ

うか。

 ───────────

 忍は風呂から上がると、すぐに匂いに気付いた。これは中華の匂いだろう、今日は凛

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が作ると言っていた事を忍は思い出していた。

「これは確かに本格的かもな」

 忍は着替え終わるとそのままダイニングに向かった。忍の目には現在、フライパンを

振るっている凛の姿があった。

「あ、忍。もう少しだからちょっと待っていてね」

 凛すばやく、火を調節しながら調味料を足していた。忍はなにか手伝おうとしたが、

しかしここは凛に全て任せることにした。藪蛇などしたくないからな、なにかあれば凛

が言うだろうと忍は思いそのままテーブルについた。

 そして時間はすこし過ぎると

「忍、お皿お願いできるかしら?って場所わかるわよね」

「ああ、昨日ですでに覚えたよ。だけどこの家にそういうのあるのか?」

「あるに決まっているでしょ。前までは家族で暮らしていた家なのよ、今日は炒飯と

マーボー豆腐だから。蓮華だけで大丈夫だと思うわ」

 忍はすばやく蓮華を二つ、そして皿を用意して凛の隣に皿をおく。凛はそのままフラ

イパンで皿の方に持っていこうとした瞬間に、うっかりスキルが発動しこけた……が、

しかしそこは忍、ギリギリのところで皿と凛をキャッチしていた。

「頼むから、すこしは気をつけてくれ。まったく」

86 第碌話〝日常変化〟

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 忍がヤレヤレと言いながらちゃんと凛の肩を抱いている。ちなみに凛は最初なんだ

かわからなかったが、しかし自分が抱きかかえられていることには気付いたらしく、

言った言葉は

「し、忍。まだ、私たち中学生」

「凛!」

「う、ちょっとした冗談よ。だけどありがとうね忍、けどさっきの距離からでよく間に

合ったわね」

「風ですこし脚力を上げたんだよ。ほら、凛立ちな」

「あはは、すこしこのままでも」

「すまない、この皿を維持するのに結構時間をかけているんだが……」

「あ、ああごめん!」

 忍は皿に盛られている炒飯を人差し指と薬指、そして小指だけで押させていたから、

確かにこれは難しい。尋常じゃないだろうな、指に対しての

「はぁ〜、さて凛座ってくれ」

「ごめんね忍」

「あはは、まあ凛はうっかりだからしょうがないよな。そう思えばあの時もそうだった

な、あの殺人鬼のあとのことお前、覚えているか」

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「覚えていないわけないでしょう……本当に。けどありがとう、本当に居てくれて」

「まさか、こんなことで言われるとは……それよりもはやくご飯たべようぜ」

「そうね」

 そして二人とも、中華に食べながら学校のことで話していた。ちなみに忍が料理を食

べる際に非常に顔を見ていたのは忍は気付いていない。

「制服も明日には届くから、そしたらちゃんと私が見立ててあげるから。それと綺礼に

も明日にでも言っとくからね私らのことをね」

「あの神父にか?」

「一応あれでも私の兄弟子なのよ。それに一応保護者でもあるしね、一応よ一応。それ

にそうじゃないと別々にすめとかいわれるわよたぶん。それに協会からも嫌われてい

るんでしょ忍は」

「面目ない」

 忍は辛いと思われているはずのマーボーを食べていた。と、言うよりも忍には普通に

おいしいと感じているようだった。この二人はすこしと言うか盛大に味覚の検査を

行ったほうがいいと思うのが世の中だろう。

 それから二人は、昨日と同じくイチャつきながらまったり時間を過ごしていた。忍の

筋力トレーニングが異常だと凛に言われている一幕もあった。

88 第碌話〝日常変化〟

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「それ、本当に一日の筋トレなの、忍」

「ああ、これぐらいしないとすぐに息切れしちゃうしな。それに筋力も付けておかない

と魔術で強化していると言っても完全に反動が消えるわけでもないしね。まあそのお

かげで魔術だけじゃなくて武力も上がったし。まあ、師匠がただでさえ破壊の天才だっ

たから」

「そう思えば、忍の師匠って誰なの?もしかして女?」

 凛の顔が怖くなった、どうしたものだろう。忍はそうだといえば確実に何か食らうこ

とは決まっていたが、しかしそこは忍。

「うん、そうだよ。と言うか凛も知っているんじゃないかな名前ぐらいは「へ、誰?」……

歩く第五魔法、破壊の使者、バカ、教会と協会でも制御不可、ミスブルー。こんなあだ

名があるけど?」

「それって……あ、蒼崎青子じゃないの!?」

「そうだよ、師匠ね」

「し、忍!?一体どういった経緯でそんなことになっているの!?いい、魔法使いなんてそう

簡単に会えるものでないし、しかも弟子にしてもらうなんてどういった経緯よ、話なさ

い、いいから、話なさい!」

「あはは、まあ話すと長いけど、えっとまあ簡単に言うと俺がまだ、あれは8、9歳の時

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かな?教会からの依頼でね、死徒狩りとその諸侯調査の際に出会ったのが始まりだった

かな。そのとき酷い言われかたしたけどね、それと蹴られた」

「蹴られたって一体、と言うよりも忍ってそのときにはそんな目だったの?」

「ああ、これは違うよ……まあこれは事故みたいな形での開花だって師匠も言っていた

から。まあそんなおかげで、俺は戦闘だけなら普通の魔術師よりも強くてねそのせい

で、ま父親と同じだと勘違いされているし、それでそんな依頼も来るようになったしっ

て感じかな」

「忍って本当に苦労してきたのね。私のよりも全然酷なことじゃないそれ。けどなるほ

どね、忍の魔術も年に合わずにそれほどってことはそう言うことだったの。魔法使いと

一緒だと、そうなるわ」

「まあ生き方はあの人に習ったけど魔術については軒並み我流だよ。なんせ師匠、破壊

に対しては天才だけど、それ以外はたぶん普通の人間以下だから」

「なんだろう、私の中での魔法使いのイメージがドンドン変わっていくわ」

「まあ、そんなもんさ。さて、そろそろ魔術の練習でもするか」

「あら、忍?こんなところで出来るのかしら、私は自室で血を抜くだけでいいのだけど。

忍は」

「俺はこれだな」

90 第碌話〝日常変化〟

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 忍はそう言うとポケットの中に入っていたサファイアを取り出して、そしてサファイ

アが光り出す。周りに風がちょっとづつ起きていく、忍は宝石の周りだけを精密に自分

の魔力で被っているのだ。彼の属性が風ならではの技である

「へぇ〜、凄いわね。普通、一つの対象にそんなことを精密にできるなんて。私には無理

ね」

「そうかな……凛ならできると思うよ、普通なら一つの属性をちゃんと5個の属性を使

い分けているから、できると思うよ。それにこれぐらいならたぶん他の方法で凛はして

いると思うよ」

「忍、普通魔術は何かに干渉してモノを起こすのよ、それを自分の意思で干渉させるなん

て普通は難しいの。まったく本当に魔術師としての自覚が足りないのだから」

魔術師

「しょうがないさ。父さんも俺を

の道に進めるきはなかったみたいだし、そのせ

いで俺は凛ちゃんとあった当時はただの便利な力と思っていたわけだし」

「そう思えばそうね。けど、あの時と同じでまったく変わらないのね。繊細の魔術には

適いそうもないわ」

「その分、こっちは理論が難しいと手が出せないけどね。それよりも凛の血を抜くのは

やっぱり、貯蔵?」

「ええ、そうよ。ただいつもそんなことをしているせいで財政が赤字でね、普通の鉱石

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じゃ魔力は堪りにくいし。いつもお馴染みのバイヤーさんに頼んでいるのだけどね、そ

う思えば忍のそういったものってどこで?」

「俺の場合はほぼ、どこからでもかな?この眼があるとね、ちょっとした鉱石もどれがい

いのかはすぐに分かるし」

「その魔眼が?」

「ああ、凛の言うとおり普通の鉱石の構成じゃ魔力は溜まりにくいけど、そういった特別

な鉱石は死も細いから、実物を見れば一発なんだよ」

「便利ね……けど、その魔眼は私のまえじゃあまり使わないでね」

「分かっているよ、それに一応これは隠してあるんだ、協会には。さすがに見つかってそ

く、封印指定なんて受けたら時計塔が吹き飛ぶ」

「あなたじゃなくて?」

「凛、魔術師は確かに無関心なところがるが、だが身内には非常にやさしいのだぞ。だか

らもし、俺がそんなことになったら師匠が吹き飛ばしに来る」

「……ねぇ、本当に師弟の関係なの、忍」

「もちろん」

「信じられないわ」

「なら、証明するのみだな!」

92 第碌話〝日常変化〟

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 忍はそのまま凛を抱きしめて……

 と、言うわけで時間が過ぎるのであった。

「それじゃあ忍、お休み」

「ああ、お休み」

 凛と忍は、時間を確認すると寝る判断をして、自分の部屋に戻るのであった。忍は部

屋に入ると昨日からの徹夜が後押しをしてそのまま寝てしまった。そして凛は今日、見

せてもらった忍の魔術鍛錬を真似ようとしていた。最初は、自分の血を抜いて貯蔵を終

えてそのまま寝てしまおうとしたが、しかし

「やっぱり、やってみたくなるわよね」

 凛は一つの宝石を取り出す、その周りに魔力を集中させたが、しかし瞬間にして、周

りが風が吹いた。忍は風が起きていたがしかしそれは宝石の周りだけだ。そう繊細と

はこういうことなんろう、どれほどの魔術回路の接続の仕方によって微々たる変化がこ

のセカイでどう変わるかを忍は熟知していたのだ。

「今度、忍に習いましょう。はぁ〜、明日はすこしは覚悟しておかないとね……綺礼にな

んて言われるかしら?まあそれもすこしは楽しみにしておけばいいわね、たぶんここで

挙式でもあげるか?なんて言われそうね……けど安くできるならそれもいいわね」

 凛はいい奥さんになるだろう、金銭面での。

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 ───────────

 いつも通りの食卓に、囲まれている家庭の一風景だ。現在、〝妹と兄〞が二人揃って

仲良く食器を洗っている。そしてテレビを見ながらおせんべいを食べているのはここ

の住人ではなく、近所のお姉さんだった

「士郎〜お姉ちゃんが退屈だぞ〜」

「藤ねえ、もう少し言葉を選んでくれ。それが教師になった人の言うことじゃないと思

うぞ。桜、すまんがこれをいつもの場所に戻しておいてくれるか」

 藤ねえと称される人物は先日、忍がこの家に訪れた際に丁重な扱いをしていたお姉さ

んと同一人物とは思いたくない。して皿を洗っているこの男子、年齢は中学二年生であ

るもうすぐ中学三年生になるここの家主。名前は衛宮士郎と言う。

「はい、士郎さん。ですがお姉さんも相変わらずですね、そう思えば昨日はきませんでし

たけど、どうかなさったのですか?」

 こちら、士郎の妹である衛宮桜である。ちなみに二人ともこの元家主である切嗣が連

れてきた孤児である、いや正確には士郎はそうなのだが、桜は違う切嗣の友人が預かっ

たくれといって消えてしまった人の子だったのだ。

「ああ、そうだそうだ。士郎、切嗣が言っていた子、来たのよ」

「何!?藤ねえなんでそれをすぐに俺に教えてくれなかったんだ、確か、神崎忍だったっけ

94 第碌話〝日常変化〟

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?」

「しょうがないでしょ!結構急なことだったしあのあとすぐに、学校から呼び出され

ちゃったし、それにちゃんと渡せたもん!」

 藤村大河、この家ではおねえさんなので藤ねえともお姉さんとも言われている。そし

てそんな年長者の言うことではないだろう。

「まあ、渡したのならいいけど。それでどんな人だったんだ?爺さんが最後に託した俺

らのお願いなんだろう?」

「う〜ん、なんて言うんだろ。すこし切嗣さんに居ていたかな?けど身長とか体格から

言えばたぶん士郎とか桜ちゃんと同い年ぐらいだと思うよ。けど、なんていうんだろう

な、眼がね?」

「冬木のトラでも」

「士郎、次にそれを言ったら道場だからね」

「嫌いなのか、あのあだ名。かっこいいとおもうけどな」

「士郎さんもそれぐらいにしてあげましょう。お姉さん、今日はどっちにしますか?み

かんとオレンジ?」

「オレンジ」

 これが衛宮家の日常である。

95

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第漆話〝休日平定

   さて、来る今日日曜日。忍の荷物が黒井猫運送から届いたのだが、引越しと同じぐら

いの量が届いたのだ。

「忍、これは一体どういうことかしら?」

「え、えっと一応。すぐにでも魔術研究が出来るぐらいの、研究資料とか?それとか、俺

の服とか、あとは……武器?」

 現状、凛の家の前にダンボールが山積みになっていた。忍はその中でも厳選して、最

初に自分の部屋に入れるのであった。しかしどう考えても部屋に入らないものがいく

つかあった。なので、それは全部地下室行きが凛によって閣議決定された。

「それにしてもこんなにいっぱい、よく引き取ってくれたわねその、なんだっけ?遠野さ

んだっけ?」

「ああ、俺の父さんとあっちの父さん。ようは先代同士がなんか結構関わっていたらし

くてね。それで今回に協力してもらったってわけだよ、まあ結構旧家らしいから家は広

かったし、大丈夫ですよなんて言っていたからね。だけど、さすがにこれは工房も必要

96 第漆話〝休日平定

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になりそうだな」

「……忍、そう思えばあなたって一体何を目指しているのかしら?魔術師なんだし、やっ

ぱり根源なの?」

「う〜ん、家での目標なんてなかったしな。まあ一応俺としては、存在の定義かな?ほ

ら、俺の魔術刻印自体がそれじゃないか。強化と言っても結構特殊だからさ、それを使

おうかなって思っているだけさ。だから今は強化の種類別でやっているよ、ちなみに一

番は宝石類ね」

「そうなの。ってそういうことじゃなくて、それだけとしてもこれは多すぎよ、他に服と

かでしょ、それでもこのはこは何?」

 凛の指差す方向はなんか、非常にデカイダンボールと、いうかなんというか、大きさ

は大体二畳ぐらい大きい箱だった。しかも鉄の箱

「なんだこれ?」

 忍ですら、分からなかったらしい。凛と忍は見合い笑ってしまった。

「どういうことよ忍」

「これは笑うしかないけど……本当にこれなんだ?」

 忍は目を細める、その瞬間切っているスイッチを入れて死の線を見るがそこには普通

の鉄箱だった。しかしそれだと逆に怖いのがある……忍の中に一人の割烹着を着たメ

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イドが注射を持って笑っているイメージ映像が流れたが、トラックが帰ったあとに来た

のは普通のバイク、と言うか配達屋だった。

「すいません、ここに神崎忍さんはいらっしゃいますか?」

 忍たちが丁度外に出ていたことで結界を外していたのがこうをそうしたようだ。そ

のまま忍は手紙を受け取ると、差出人のほうを見た

「なんと……普通に日本に来ていたのか?師匠」

 そこには蒼崎青子と書いてあったのだ。ある意味魔術師の手紙をそのまま配達させ

るとは盲点だろうが。

「まあ、兎に角開けてみましょう」

 凛の言葉に忍はどういして、そのまま手紙を見た。

 久しぶりだね、忍。まあなんかちょっと問題があって日本にいたんだよ。まったく砂

が鞄にかかるかかる、ってそんなのをあなたに言ってもしょうがないか。それよりもた

ぶん、と言うかどうせ荷物をどこかに預けて回収していると思ったから、と言うかその

近くに居たから、預けてきたんだ君のプレゼント。一回、君のあのセンスはたぶん中々

だったからね、だからこれをプレゼントね。ちなみにこの日本じゃ免許必要だから、

えっとあと二年後ぐらいには公道で走れるね。それじゃあまたどこかで、敵だったら容

赦しないからね

98 第漆話〝休日平定

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 以上が忍の師匠からの手紙だった。忍は凄く呆れていてそして凛は自分の思い描い

ていた魔法使いのイメージが崩壊したのは言うまでも無い。

「公道で走れるって、どういうこと?」

「兎に角開けてみよう。まああの師匠のことだからさすがに死ぬことはないと思うぞ。

それではご開帳」

 忍はその鉄箱を開けると、出てきたの……二輪車、通称バイクと呼ばれるものだ。忍

は師匠こと蒼崎青子とちょっとした依頼の際に逃げるためにそこにあったバイクに

のって激走したことがあった。たぶんそのことだろう。はいって合ったのは、非常に珍

しいヤマハ・VMAXだった。

「これ、バイクよね。しかも大型よね」

「そうだな……乗ったことはあるけど、あれは乗せてもらったに等しいのにさ。まさか

こんなものを送られてくるなんて、師匠は俺をなんだと思っていたんだろうか」

「まあこれはそれじゃあ、こっちの方に入れておきましょう。それよりもはやくこの山

を崩していきましょう。まずはこれでしょ」

 そしてでてくるのは服、服、服、銃だった。凛はすぐにそれをしまうと瞬間に結界を

戻した。

「ああ。それはこっちにくれるか、凛。全部普通の銃器だから普通に扱えば普通に凶器

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だからさ」

「まったく、こんなものまでもダンボールに入れないでよ。まったく日本は大丈夫かし

ら?それよりも服と銃器、あとこのダンボールに見せかけた木箱は何?」

「それは宝石だよ。あ、凛は使うなよ。俺の魔力で全部満ちているからな」

「はいはい、それぐらい分かっているわよ。それよりもこれはこれで全部入ったら、次は

綺礼のところにいくわよ」

 と、言って結局三時間もかかり、午後に行くこととなった。忍の持ち物をここに発表

しておこう。魔術の本……30ぐらい、銃火器……11個、服……大体40種、そして

ヤマハのVMAX。ちなみにこのバイクは使用するまでに年齢がかかるのでほぼ封印

されてしまった。

「ふむ、久しぶりだな凛、そして神崎忍よ。して、今日はどのような用件かな?まさか、

あの書類に不備でもあったかね?」

 綺礼が誰もいない教会にて宣告のように、言う。相変わらずこの声にはなにかをさか

なでるものがあるようで忍はすこし苦笑いをしていて、凛はなれたようにそれを無視し

て話をした。

「今日はちょっとした身内の話よ、身内の!」

「身内とは?まさか、そこにいる神崎忍と恋仲にでもなったのかね凛?」

100 第漆話〝休日平定

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 綺礼はそう言うが、ちなみに別にこの神父はこのことを知っていたわけではない。た

だ現状、凛と忍の間にはただならぬ関係であると言うのは完全に、一目瞭然の状態だっ

たのが問題だったのだろう。凛は完全に焦り出すし、忍は、やはり苦笑いで綺礼の対応

を苦手としていた。

「ふむ、そうか「何も言っていないわよ綺礼!」……そのような態度で何をいうかと思え

ば。しかしこれは保護者としては嬉しい限りだ。魔術師としてなのか、いつも人の上に

いるような君でもな……神崎忍。魔術師としてその選択はどういったこと方は聞かな

い、なんせここは教会でもあるのだいしな。しかし君の影響力も加味してのことだろう

な」

「ふん、もちろんだ」

 凛は一瞬驚いてしまった。今までの優しい忍ではなく、この前見せた魔術師の姿がそ

こにはあった。凛にとってはそれほどまでも気持ちと言うのをマジカに見えれてすこ

し紅くなっていたが、しかし綺礼の言葉に疑問が残った。彼は一介の魔術師だ、確かに

魔術師殺しでもある彼だが、そこではなかったのだ問題は

「ならば何も言うまい。しかし教会より、君の監視という名目も私には来ているのだよ

……心あたりは」

「あるが?」

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「ふむ、ならばいい。凛よ、私は彼の監視といわれているが、しかしここは君の地だ。ど

うする?」

「もちろんそんなの認めないわよ。もしそうならば綺礼、申し訳ないけど出て行ってく

れるかしら?」

「ふむ、そうか。ならばしょうがない、ここは辞めておこうではないか。期限も無期限で

あるしな。それよりも二人が恋仲になると言うのは喜ばしいのが事実だ、なるほどだか

ら学校と言うわけか凛もすこしは女性だったというべきか」

「綺礼、すこし黙らないとあんたに一発入れるわよ?」

「何、それで今日はその報告とでもいうのかね?」

「ええ、そうよ。一応あんたは私の兄弟子でもあるし保護者でもあるんだからね、それに

最初に言っておかないとあとで変な事を言われても癪なだけだし、そういうことよ」

「ふむ、随分と律儀な。しかしそうか了解だ、それではこれをやろう」

 綺礼はどこからだしたのか分からないが、そこにはアゾット剣が出てきた。それは

元々は凛の父が渡したものだった。

「これは凛、父である時臣氏のものだ。私も最後に分かれた際に渡されたがこれを君に

返しておこう」

「綺礼にして随分といいことしてくれるじゃない。それじゃあ貰っておくわ、それじゃ

102 第漆話〝休日平定

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あそう言うことだから、よろしく」

「ふむ、そうか。ならばこちらで式を挙げるか?挙げるのならば予約をしておくぞ」

「話が早いのよ、バカっ!忍、行くわよ」

 凛は綺礼の言葉に恥ずかしかったようでそのまま出て行ったがすこし笑っていたの

は忍しか知らない。そして忍もそれについていこうと行こうとすると、最後に

「そうだ、神崎忍……いや、この場合は遠坂忍か?まあそれはあとで私が独断と偏見でき

めてやろう。それよりも、もう一つ君には手紙が届いている渡しておこう」

「俺に?」

「忍〜早くしなさい」

「分かった、それじゃあこれは貰っていくぞ」

「ふむそれではな」

 二人は出て行き、その代わり綺礼の後ろから少年が現れた。

「あれ?さっきの人たち誰ですか?」

「む?今日はそちらなのだな」

「うん、ちょっと今日は外に出たかったからね。だけどずいぶんとおもしろい人だね彼」

「彼とは神崎忍のことかね」

 綺礼の言葉に少年はこうていするかのように首を縦に振った。彼の容姿は非常に子

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供のようで、しかしどこか大人のような雰囲気がある。金髪だからとかではない、彼が

その場に居るだけでそうなのだ。

「そうだよ、なんか凄く〝同じ〞感じがした」

「同じとは……お前が聞けばさぞ怒るだろうな」

「そうかのね。それじゃあ僕は外にいくよ」

 そして少年は教会を出て行ってしまった。綺礼もすこし時間を置き自分の部屋に戻

るのであった。

 ───────────

 あのあと、凛は綺礼の結婚の言葉が離れずにいてすこし隣にいる忍の顔を見ることが

できなかった。その様子に忍はどうかしたのだろうかと思っていて完全に分からない

状態でもあった。

「凛ちゃん?」

「結婚ね……結婚」

「凛〜、凛ちゃ〜ん……ダメだ、完全に意識が外にあるよ。けどちゃんと手は握っている

のは凄いと思うけど。このまま行くと家、通り過ぎちゃいそうなんだけど。まだ、俺の

部屋の荷物片付いていないのに」

「結婚、結婚……神崎凛?それとも遠坂忍?」

104 第漆話〝休日平定

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 忍はさっきから何を呟いているのか不明な凛を完全に保護しているような感じで

リードしていた。どちらがここの管理者か、今一度説いたほうが良さそうだ。

「士郎さん、今日は買い物お願いしますよ」

「分かっているよ、桜。だからそう俺を引っ張らないでくれ」

 忍たちの向かい側から来るのは自分達と同じくらいの少年、少女だった。お互いに知

らない人なのでそのまま通りすぎていくと思ったが、一瞬、そう一瞬忍は振り向いてし

まった

「っ!」

 少年と少女はそのまま歩くが、しかし忍には完全に気付いた……すぐにメガネを外し

魔眼を解放する。そして見るが、しかし二人ともなんともなかった……いや、正確に言

えば、逆だったと言うべきだろう。

「そ、そんなバカな」

 忍が感知したのは少女のほうだったが、少女のほうは魔眼を解放してみても普通の人

間のそれと同じだった、しかしもう片方の男子には……軒並みの点が無かったのだ。線

死テン

は見えるし、線だけならば人間と変わらない。しかし彼には

そのものがないのだ、忍

は不思議に思い、凛に聞こうとしたが

「ふふ、やっぱり花嫁修業は今からの方がいいわよね」

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 さっきと同じ状況であり、そして忍も対象がすでに消えてしまった事もあり、頭の片

隅においておくことにして凛と一緒に家に帰ることにしたのであった。

 ───────────

 結局あのあと凛は自分の家に帰るまであの調子でありそれをずっと支えていた忍は

間違いなく偉いと、言えるだろう。

「悪かったわね忍。まさか私も自分があそこまでこうなっちゃうとは思わなかったのよ

……ちょっとは反応がほしいのだけど」

「悪い悪い、ただかわいいと思ってな。それよりも俺はすこし部屋を整理するが手伝っ

てくれるか?」

「もちろんよ。それにまだ午前中よ、はやく終わらせて一緒にマッタリしましょうね」

「そうだな、午後になったらテレビも来るわけでだしな「ゲッ」諦めてすこしは電子機器

を扱えるようになれよ凛」

 二人は忍の部屋にいき、引越し作業にいそしんでいた。凛は忍の服のセンスが非常に

無いことに呆れていた

「忍……確かに黒の服装は忍にはよく合うと思うわ私も。だけどこれしか持っていない

の?全部黒尽くめよ」

「う〜ん、元からそういうのは全部隠密とかのための服だったからな。それに一応他に

106 第漆話〝休日平定

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も服はあるはずだけどな……確か紅いコートもあったと思うけどな父さんのが」

 忍の服装はよく言えばシンプルであり、悪く言えばおしゃれに興味の無い男である。

元から忍の生活上、普通の暮らしはできなかったのでしょうがない処置でもある。凛の

中で今度は服を買いにいく算段がたっていたが、しかし

「まあどの道さすがにこんな背で止まる訳無いから服あまり買わないかな。それよりも

宝石とか買ったほうがずっと建設てきだしな」

 凛もそれには思う節があった。

「それもそうね。だけどあまりにも黒が多すぎよまったく、普通の服装は今までのだけ

ね……まあしょうがないか。それじゃあ服は一通りこっちに入れておくから」

「ああ、すまないが頼む。俺はこっちを仕舞うから」

 忍が持ち出している銃火器だ。マシンガン、ハンドガン、さらには手榴弾まで様々だ。

いつか使うであろう、ことでもあるがしかし魔術師としては歪のしなものだ。そして次

のところには魔術理論の本だらけだ。全てがイギリス英語の諸本ばかりだ、もとよりこ

れは忍の実家から持ってきたものだが

「それじゃあこの本は今度また開くこともあるだろうから、こっちに入れて。あとはこ

プロジェクト

の銃火器は……

……魔術刻印発動」

 投影した鉄の箱に忍は魔術刻印を使い強化をした。その光景に凛は質問した

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「忍、一体なにしているのよそれ?」

「ああ、これ?これは、投影魔術で出した対象に俺の刻印の強化を使ってさらに存在を高

めて消さないようにしているんだ。宝石とじゃないから一応これでも10年は持つと

おもうよ」

「それはもう投影魔術の枠を超えていないかしら?」

「まあ俺の投影と刻印の相性がよかったってことで、それよりも凛そっちは終わったの

?」

「ええ、こっちは大体入ったわ。あとは何かしら?」

 忍は「あとは」などといいながら木のはこをあけた。そしてその中に入っているのは

ルビーなど各種の宝石だった。この宝石は凛の宝石と同じように魔術による転換で魔

力を溜めている貯蓄のような役割になっていた。

「こんなにたくさんも……私のよりもおおいんじゃないの?」

「それはいい証拠なんだよ凛。俺は転換が下手だからそんなに多くの魔力を一つの宝石

に入れられないんだ。まあそれに大体これは弾丸に変わるけどね」

 そういい、忍は一つの宝石を握り締めそして魔術を行使した。その結果、握られてい

た宝石は弾丸に変化していた。

「それじゃあ、これで終わりだからあとはテレビを待つよ凛」

108 第漆話〝休日平定

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「忍……なんでそんなに笑顔なのかしら?」

「もちろん、好きな女の子を困らせたいのは男の子のロマンだからだよ」

 忍……もしかしたら鬼畜なのかもしれないとこの時凛は思ってしまった。それが本

当だともこのときは知らずに。

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第捌話〝学生復帰〞

   今日という、朝を記念日にしたいと心のそこから思った遠坂凛が、買ったばかりのテ

レビのニュースを見ながらにやけていた。理由は一つしかないであろう。

「確かにあの神父の見立てはよかったみたいだな。まさかここまでのピッタシとは、だ

けどそ、その凛。見るのは一向に構わないが、だがなぜそこまで凝視しているのだ」

「気にしないで、ただの鑑賞だから。まあ綺礼は私に嫌がらせで服をプレゼントしてく

るから。しかも大体体にあっているしね「服?」ええ、そうよ。一応保護者だからとか

言って必ず私に送り込んでくるのよ、しかも私に似合いそうも無い奴をね」

「ふ〜ん、今度見せてくれよそういうの」

「し、忍が言うのならいいわ。だけど、分かっていると思うけど私、学校では別人に等し

いからどうしようかしら?」

「猫でも被っているのか?」

「優雅たれ。これがうちの家訓と、私はその教え通りにしているだけよ。も、もちろん忍

は別よ、あなたの前でそんなことしたくないしする必要もないと思っているから///

110 第捌話〝学生復帰〟

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//」

 朝から随分と糖分のおおい会話だ。まったく、人様(どくしゃ)を糖尿病にしたいの

だろうか。忍は笑いながら自分の姿になれていない、もとより学校など行ってなどいな

いがそこら辺の高校生よりも知識、英語などはあるので行く必要が無いと思っていた

が、まさかこんなことで学校に通うとは忍は思っていなかった。

「それじゃあ、俺は転入初日だし早く行った方がいいな。一応確認するが凛、学校ではど

う接すればいい?その言い方だと、さぞお姫様のようなのだろうから流石に気安くとは

いかないだろう?」

 凛はそこまで考えていなかった、忍との学生生活を楽しみにしていたのだから。しか

し忍の指摘通り凛は現状完璧超人の部類である。告白など男女とわずだ、そんなのにい

きなり彼氏とは問題だ。そして一瞬凛にはどこかの坊さんの息子の顔が出ていて怒ら

れる想像をしていた。

「そうね……一応同じクラスには成れるからそこから序々にと言うのがいいかしらね。

頑張ってみるわ。ちなみに私は副会長だから」

「部活は入っていないだろうしな。それじゃあ俺が夕飯を買えばいいか、それじゃあこ

れからが俺の新生活の始まりか。それじゃあそれに乾杯と」

 そして朝のコーヒーとミルクで乾杯をした。今日の朝食は凛の手作りだ、ちなみにこ

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のために三つの目覚ましが犠牲になったのは彼女の名誉のために伏せておこう。

「それじゃあ、私は今日は普通に行くから忍は先に行きなさい。ふふ、一緒の学校……あ

のとき以来ね」

「そうだな、俺らが初めての出会いか」

 二人はそんなことを言いながら、準備にかかった。そして忍は先に鞄をもち、メガネ

をかけなおす。玄関に行こうとすると凛が一緒についてきた。

「あれ凛?お前はまだあとだろう?」

「ええ、そうね……そ、その忍、一緒に行けるまではちょっと寂しいから」

「寂しいから?」

「キスがほしいかな……なんて」

 ここに小悪魔が光臨した。いや正確には紅い小悪魔だ、忍はそのかわいさに一瞬で破

れそんまま玄関で抱きしめ、そしてキスをした。

「かわいすぎるぞ凛!よし、今日からずっとしような……////すまん、取り乱した」

「ふふ、忍もやっぱり男の子ってことよ。大丈夫、忍ならば私全然構わないから。それよ

りもさっき言った今日からずっと、お願いね////……それじゃあいってらっしゃ

い、あとで会いましょう」

「ああ、行って来ます」

112 第捌話〝学生復帰〟

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 そして忍は先に家を出て学校へと向かった。そして遠坂邸では、玄関口で悶絶しなが

らペンダントと唇をなんどもなぞっている凛が居た。

「し、忍がせ、積極的に来てくれた!これは嬉しいことよ……やっぱり、いいわ。これか

ら学校なのよね、大丈夫普段どおりに、だけど忍には熱いまなざしを!うん、今日もペ

ンダントは綺麗」

 凛はキスのせいかテンションが可笑しくなっていた。この二人、今までの行動からは

思えないほどのプラトニックな関係だ。なんせ新婚のような事を朝からしている二人

なのだが、キス以上は未だにないのだから。年齢からすれば当然のはずなのだが、二人

の行動はそれを脱している感が強い。

「忍はそう思えば一般人に対しての態度なんて見たこと無いわね……私ほどなくともす

こしは隠していそうね。これはこれで楽しみね……けど、なんだろうさっき忍からのキ

スがこう、胸の奥から」

 結局、このあと凛は遅刻ギリギリに学校につくことになるのはこのとき、脳内花畑(ト

オサカリン)は知るよしもない。

 ───────────

 忍は学校と言うものをそれこそ、凛と出会ったあの学校以来でもあったのですこし楽

しみにしていた。歩きにもすこし浮かれてる様子がある。

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「しかし、やはり最初だから軽装にしてしまったがまあいいか」

 忍の言う軽装とは、宝石のことだ。さすがに銃を持ち出すわけにもいかないと思い、

銃は置いてきたのだ。休日は持ち歩いているものを大体おいてきている忍だが、もちろ

んペンダントは持っている。宝石は二つ、これが現在の忍のフルの装備だ。

「まあ、もしものことがあればこいつを使えばいいか」

 メガネをいじりながら学校を目指す忍。その際、同じ制服の生徒が前を歩いていた。

こんな時間とは随分と真面目の生徒だ。忍の最初の感想だ、自分は今日転入してくるか

ら朝がはやい、しかしそれと同じぐらい早い生徒もいないだろう。忍は何もないように

歩いている。そしてそれに気付いたのか振りむいた少年、その少年は忍とはちょっとタ

イプの違うめがねをしていた。

「うん?見ない顔だが、すまない君は一年せいの子か?」

 忍にとっては驚きだった。まさか話しかけてくるとは思わなかったからだ。して忍、

ここは魔術師らしく猫を被る

「あ、いえ。そ、その今日からここに」

「そうか、転入生か。それは随分と失礼なことをしてしまったな、俺は柳洞一成と言う、

学校では生徒会長をしているのだ。すまんな、見たことの顔だったので、それにこの時

間ではな」

114 第捌話〝学生復帰〟

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「あはは、そうなんですか。私は神崎忍と言います、今日から同じ学校に通うことになり

ました。ちなみに年はあなたと同じで中学二年生ですよ」

「ふむ、しかしこんな時期とは……あ、すまんなこんな個人な事を」

「いえ、家の関係でこっちに戻ってきたんですよ。それに久しぶりのこの街なのですこ

し歩いて行こうと思いましてね、転入早々遅刻なんて失礼ですしね」

「ふむ、その通りだ。して神崎、どうだろう一緒に登校でも、どの道職員室の道まではし

らないだろうからな」

「そ、そんないいんですか?生徒会長なのでしょう?」

「なにをいうかと思えば。別に生徒会長とて普通の生徒だ、転入生には案内ぐらいは当

然だ。それに生徒会の仕事などは朝はないのでな、皆は部活に勤しんでいるものをおお

いのでな」

 忍の率直な感想は、本当にこいつは中学生か?だったのだが、忍も十分にそれを言え

るだろう。二人はそのまま一緒に登校することとなった。

「して、神崎はこの町にくるまでは?」

「外国ぐらしですよ、イギリスに居ましたので」

「ほう、英国に。それでは英語などは完璧なのでは」

「ええ、それはそうですよ。あっちの生活の方がこちらの生活よりも長いのですから、ま

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あ日本の英語学習はどうなのだろうか知りませんが」

「ふむ、やはり本場とは違うものなのだろう。しかし英国のほうが長かったというには

随分と日本語が上手だな」

「ええ、それはまあ親の影響が強いですね」

「親か」

「はい。そう思えば気になっていたのですか柳洞とは、もしかしてあの柳洞寺の柳洞で

すか?」

「ふむ、知っているのか。あそこは俺の実家でな、将来はそこで坊主でもしようと思って

いる。む、そろそろ学校だな。この学校は校則はそこまで厳しくはないが、規律は守っ

てほしいものだ。生徒会としてはだがな」

「そんなものですか学校とは。ここですか?」

 忍のついた学校はグラウンド一つに体育館が別館となっているようなオーソドック

スなつくりの学校であった。ちなみに凛の説明だとご飯は給食制ではないので自前で

あり食堂ではパンなどが売られるらしいとのことだ。柳洞は場所の説明を大まかにし

ていた、それに忍はたまに質問する程度だった。

「と、言うわけだ。仕様特別室などは全て上になっている、次に三年生のクラスが立ち並

び下になるに連れて低学年だ。まあ君は今日からだからすこしだろうがな、一階には職

116 第捌話〝学生復帰〟

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員室と校長室など、まあ諸先生の部屋もある。それでは職員室に行こう」

「はい、お願いします。ですが公立にしては随分と施設が整っていますね」

「冬木にある公立の中学校はここと、そしてもう二つだけなのだからそれもそれだろう。

それにこちらはすこしだけ新都にも近いことだしな、新都の方には、もう行ったのかい

?」

「はい、行かせていただきましたよ」

「そうか、さてついたな。私が先に入ろうか?」

「いえ、これだけでも十分以上にお世話になりましたから。ありがとうございます柳洞

さん」

「なに、それでは同じクラスなったらよろしく頼むぞ」

「はい、こちらこそお願いします」

 そして柳洞は職員室前できびすを返した。忍が入ると先生が何人かいたので一番近

い人に忍は声をかけた

「すみません、今日から転入することになった神崎なのですが」

「あら、あなたが……それじゃあちょっと待っててね。学年主任と君の担任の先生を連

れてきてあげるから」

 忍の声をかけた先生はすぐに職員室の奥に行ってしまった。そして数分立つとさっ

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きの先生と、後ろに女性の先生二人が続いた。片方は非常にご年配でありこの人がたぶ

ん学年主任という人だろうと忍は思っていた。

「あら、随分とかわいらしい転入生ね、初めまして。私現在二年生の学年主任をしてる東

島です。そしてこちらが」

「初めまして、私今日からあなたの担任になります。二年D組の知得留(シエル)……

じゃなくて、白木杏といいます。よろしくね、まあと言ってももう二年生の終わりでも

あるからあまりよろしくともいえないだろうけどね」

 前から言うベテランさん。年齢から言えば40後半から50前半だろうか?しかし

先の担任の先生と言われた忍の前に立っている女性は確実に20代前半といえるだろ

う。

「はい、よろしくお願いします。神崎忍です」

「あら、イギリスからの帰国子女と聞いていたけど。日本語上手なのですね」

「はい、こちらの生まれですから」

 忍とそして担任の白木はそのまま雑談を交えながらも会話をしていた。そして職員

室を覗いていた生徒が居た。

 ──────────

 本日の二年D組はすこし慌しかった。理由は二つ存在する、まず一つは間違いなく転

118 第捌話〝学生復帰〟

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校生の話だ。

「なんでも今日、転入生が来るらしいよ」

「本当?けどなんでこんな時期に?」

「なんでもさっき、男子が言っていたのは帰国子女とからしいよ。しかも男だって」

「マジ、それ!それってイケメンかな?」

 女子達のほうではこう色めき立っていた。そして男子では

「男か……だけどどんな奴かね?」

「ここは生徒会長にでも聞いてみようぜ、おい柳洞って…あれ?あいつは、今日はなにも

ない日だろう?」

「知らねぇよ。あんなお堅い奴のことなんて」

「けど、この時期とかどういう親だよ……子供もかわいそうだよな」

 と、忍のことで持ちきりだった。やはり転校生と言うのは学校では噂の種でもあるら

しいが、それと同じぐらいの噂がもう一つできた。それはこの二年だけではなく一年も

含まれた完全に学校の噂となっていた。三年生はすでに受験などで自由登校のせいか

居ない。しかしもし三年生がいたのなら三年生も騒ぎになっていただろう。なんせ、そ

の噂はこの学校のアイドルである遠坂凛に彼氏ができたと言うものだ。

「けどよ、あれは本当になのか?」

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「転校生の件は職員室からの覗きで確証しているけどよ」

「まさか…遠坂さんに」

「けどよ、なんでも女子の何人かも見ていたらしいぞ。あの新都でのデパートに男子と

しかも手を繋いだ場面(シーン)」

「く、本当なのかな?」

「くそっ、転校生もきになるけど、それと同じぐらい気になるぜ」

 男子の反応、続いて女子の反応は

「それに遠坂さんね」

「ええ、私達は見たからね。あれは完全に恋人よね、彼氏さんは後姿しか見れなかったけ

ど、男子が言うには適わないらしいよ……」

「そんなに!?だって遠坂さんってサッカー部の先輩もふった人よ、それが付き合うよう

な男って」

「けど、そこまで背は高くなかったよね」

「何言っているのよあんた。普通今の男子は背が低い方が普通なのよ、大体は中学三年

生とかで一気に伸びる人は伸びるらしいよ」

「だけどあのときの遠坂さん、幸せそうだったな」

「「「「うっ」」」」

120 第捌話〝学生復帰〟

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 女子の間で目撃した人が言っているのは、後姿でも分かるぐらいのお似合いらしい。

これにより二年の凛のクラスではこの二つのことで持ちきりだった。一年でも数人た

まにこの階に来る、理由はもちろん遠坂凛なのだが…今日は彼女はまだ来ていない。そ

して扉が開いたので一斉に全員が見たが、しかし居た人物は柳洞一成であった。

「何事だ?」

 一斉に見られた一成にはよく分からなかった。ちなみに一成はさっきまで生徒会室

に行き放課後の準備をしていたのだ。そして一成は自分の席につくと、男子が近づいて

きた

「なあ、柳洞。お前さん、知っているか今日の転入生のこと」

「転入生?ああ、知っているぞ」

「まじかよ!?それで、どんな奴なんだ?」

「ふむ、どんな奴か……非常に礼儀正しそうだったな。どこかの女狐のように猫も被っ

て無さそうだったしな「あら、朝から随分な言い方ね。柳洞君?」ふむ、すこしは自覚

があったのか、遠坂君」

「あら、私は朝から随分とした言い方と言いたかったのだけど?それよりもおはよう」

「ふむ、おはよう」

「おはようございます遠坂さん」

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「おはようございます」

 噂の渦の片方が登場である。ちなみに彼女が今日このようなギリギリの登校の真相

は、上の文章に書いている。そして数分すると、女子は真相を聞こうと凛の元に行こう

とするがやはり、アイドル視されている凛。女子の間でもお姉さん的な凛に聞けるよう

な人間はいなかった。

「♪〜♪」

 凛は凛で自分の席につくとそのまま笑顔で読書に勤しんでいた。ちなみにその笑顔

は今まで見たことのないほどの笑顔だったのは言うまでもない。

「して、お前らはなぜ転入生のことを?」

「ああ、なんでもあいつらが職員室に行った時に見たらしいぜ。だけど男なんだろう?

礼儀正しいねぇ〜」

「ふむ、俺が思うにだ。しかし受け答えは間違いなく礼儀正しく〝気に障らない〞しゃ

べり方ではあったな」

 一成が凛の方を横目で見ながら強調しながら言っていたのにも関わらず笑顔で凛は

読書をしていた。そして周りからは、非常に聞きたい、といったそんなオーラが佇んで

いた。

 ──────────

122 第捌話〝学生復帰〟

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 白木と忍は、自分のクラスに向かっていた。二階で一番端にあるのが二年D組、ここ

には生徒会長と副会長が居ると言う非常に人から注目されているクラスでもあった。

「まあもし、何か分からないことがあったら会長の柳洞君か副会長の遠坂さんに頼って

ね。まあ男子だから柳洞君だと思うけどね。遠坂さんは高みの花のような存在なのよ

この学校では」

「へぇ〜そうなんですか」

 すでに廊下はチャイムが鳴っているので生徒は出ていない。そして白木はここで忍

に待つようにいい、さきに教室に入った。

「おはよう、みんな」

『おはようございます』

 扉越しに聴こえてくる声、そして白木は合図を送った

「今日はみなさんに新しい仲間がこのクラスに増えます。それでは入ってきてくださ

い」

 白木の言葉に忍は扉を開けて入る。瞬間クラスからはざわめきが入る

「うわっ、凄いイケメン!?」

「凄い、凄すぎるこれは」

「柳洞君の好きな私だけどこっちに写ろうかしら?」

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 女子の反応、そして男子の反応は

「か、勝てない」

「なんであんなのが」

「やっぱり神様はいない」

 ないている連中がいて、一成はすこし挨拶をしていた。そして凛は完全に仮面を被っ

て抑えていた、もし外れればそのまま抱きつきそうだったからだ

「初めまして、神崎忍と言います。こんな時期の転校ですが仲良くしてくれると嬉しい

です」

 拍手が起きて、そして白木はそのまま忍に席を指示出した。

「それじゃあちょうど、遠坂さんの隣が空いているわ」

 昔と同じ席。忍は笑いそうになったがそれを抑えて

「はい」

 静かに言う。そして歩き出し凛の隣につく

「神崎忍です」

「ええ、遠坂凛よ……神崎君」

「うん、よろしく遠坂さん」

 あの時と同じ、いや正確にはすこし違う形。これが忍と凛の学生生活の再会だった。

124 第捌話〝学生復帰〟

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第玖話〝転入初日〞

   やはり、転校初日と言うのは非常に忙しい。理由としては転校生としての宿命か、大

体の質問で固まる。どこから来たか、前はどんな学校なのか、そして

「彼女とかはいるの?」

 ある女子生徒からの質問に、忍は笑いながら、こう答えた

「ええ、お恥ずかしい話しながら。非常によい人とね」

 と軽く言う。そのいいかたは正に綺麗であり気品がある、凛はそんな忍を見ながらさ

らに優越感に浸っていた。自分と忍しかない関係というのは中学生ながらの乙女心を

ゆすぶっていた。しかし凛はおもしろくないのは事実。忍が彼女がいるといってもな

お、熱い、眼差しを辞めない数人の女子生徒がいたからだ。そんなとき凛にとっては少

し異常な事態がおきた、それは生徒会長である柳洞一成が忍に声をかけたことだ

「うむ、同じクラスになれたようだな神崎」

「ああ、柳洞さん。改めてよろしくお願いします」

「ああ、こちらこそだ。分からない事があれば俺にでも聞いてくれ……まあもしもだが

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緊急ならば隣でも頼るがいい」

 そこでなぜか柳洞は少し不機嫌そうな顔をしていたのはご愛嬌だ。して忍は現状か

らは貴公子のような存在になってしまっている。凛は隣で話を聞きながらもこれから

の忍の学校での接し方を考えていた。

「えっと神崎だよな……「はいそうですよ」お前ってさ、なにか部活とかしていたのか?

していなかったらどうだ、部活はいらねぇか?」

「ああ、てめぇ、ずりいぞ!」

「そうよ、神崎君!素人でも大丈夫な吹奏楽なんてどうかしら?」

「あ、え、え?」

 忍は困惑しだした。大勢のクラスメートから急な部活の誘いだ、この時期ではあるが

しかし、女子ならばこんなイケメンを逃すわけもなく、そして男子もこんなイケメンな

らば運動神経もいいと勝手に予想していたのだ。しかしこの勧誘は鶴の一声でやんだ

「みなさん、彼が困っていますわ。勧誘もいいですが、そろそろ授業ですよ」

 隣に座っていた凛だ。若干怒っている感のある声を自然と出してしまっている凛に

その場にいた全員は

「(まずい、遠坂さんの近くで騒ぎすぎた!)」

「(すぐに撤退だ)」

126 第玖話〝転入初日〟

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「(それに次の授業、あの国語だろ準備、準備)」

 退散していった。実の理由が忍を見ることが出来ないから、邪魔だとは一言も言えな

い凛だった。そして忍は少しだけ目を凛と合わせてありがとうと言っていた、凛はそれ

だけで十分だと言うように眼を閉じた。そして一時間目が始まった

 ───────────

 この学校は普通の公立とはすこし違うところがいくつかありその一つに給食制では

ないと言う点だろう。して忍は今日初めてこの学校を使うとなる、と言うことは場所が

どこにあるかは分からないのだ。そこで凛は親切と言うことで誘う予定だった、そうこ

れはあくまで予定だった。それを狂わせたのは

「ふむ、時に神崎よここの学食はしっているか?ここは給食制ではないゆえにな、食堂か

売店、それか持参となっている。俺は持参なのだが、神崎は?」

「さすがに今日はもって来ていませんね。お金はあるのでどうにか」

「ならば、俺が案内しようか?」

「いや、そこまでは「何、気にすることは無い生徒会長なのだしな」……そうですか?」

「うむ。それに見てみろ教室にはほとんど残っていないぞ、大体の奴らはここの売店や

学食が目当てなので。残っているのは俺とお前、それにそこに女狐と数人だ。まあ今日

は初日でもあるし、それにたぶん案内を出来るほどあそこは簡単なところではないから

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な。皆がお前を見捨てたわけではない」

 一成はそう言いながら、忍の返事をまったが忍もどこに拒否する原因があるだろう

か。返事はもちろん

「それじゃあお願いできるかな。さすがに初日で疲れていたのも事実だしさ、それじゃ

あ柳洞さんお願いします」

「ふむ、了承した」

 そして二人は出て行った。凛はなぜか先を越された劣等感に見舞われながらも、今度

からは自分もお弁当にすると心にきめていた。凛はいつも四時間目が終わると歩いて

売店に向かう、大体の生徒が道を開けてくれるからそのままパンを買って優雅に食べら

れるがしかし、今日は違った。隣に制服姿の忍が居たせいでそれをずっと隠れながら眺

めていたらいつの間にか授業がおわり、さらに忍も誘われいる状態だったというわけ

だ。

「遅かったか……」

 凛は、なくなくそのまま一人で廊下に出るのであった。いつもの通り生徒からの注目

の眼が彼女を包むが凛にはそれよりも忍なのだ。どれだけ仮面をつけようが、どれだけ

猫を被ろうが、殺気を隠しきれて居なかったのはここでは言うまい。

 ───────────

128 第玖話〝転入初日〟

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 一行の忍と一成なのだが、忍のエフェクトとして色んな生徒が振り向いている。忍の

容姿は確かに完成に近いがしかし少しまだ子供を残していると言うありえないほどの

イケメンなのだ。して隣に立つのはそれと引けをとらない顔の整った柳洞一成、彼が生

徒会長になった理由の一つでもある。

「しかし、随分となんか見られている感じがするのですが?」

「ふむ、俺と歩いているからかもしれないな。これでも生徒会長であるからな俺は、して

今日は学食か、それとも売店か?」

「そうですね、それじゃあ売店でパンでもニ三個見繕ってきますので、さきに席のほうを

お願いできますか?」

「うむ、了承した」

 そして二人は別々の行動に移った。忍は一人で単体での行動となったのだが、彼は若

干背が低い、そのせいで同じ二年生でも間違えて一年生と思ってしまうほどだ

「なに、だれあれ!?」

「なんでも今日転入してきた子らしいよ」

「一人、一人なら声でも」

「さっき生徒会長と一緒だったから一人じゃないよ、けど本当に凄いイケメン!」

「生徒会長と一緒ってさらにいいじゃない、誰か、誰か、声をかけてきてよ。そうすれば

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うまく行けば一緒に食事を」

 女子は黄色い声を静かに上げているが、男子はその声を聞いてすでに忍を敵対しだし

ていた。もとより柳洞一成も同じように自分のクラスとなったもの以外は大体が眼の

仇になっている状態のこの学校にさらにしのぶだ。一成の生徒会がなぜこれで維持で

きるのかは遠坂凛(アイドル)の影響が多い。そして逆も叱りだ。

「すいません、アンパンとチョココロネ、それとコーヒー牛乳ください」

「はいよ。合計で三百円ね……初めての子かい?見ないけど」

「え、あ、はい。今日からこの学校に来ました。はい、ちょうどここにおいておきますね」

 そして忍は立ち去った。その際道が出来ているのは言うまでもない、女子からは熱い

まなざしを、そして男子からは冷たい殺気を。

「うむ、随分と早かったな神崎。もう少し遅れるとおもったが、まあ何にせよいただこう

ではないか」

「そうですね柳洞さん、いただきます」

 二人は食事を始める、テーブル自体はすいているのに周りの人口密度は上がってい

た。一成自体あまり食堂を使わないから珍しいこともであった、いつもは生徒会で食べ

ていることが多かったからだ。

「して神崎よ……部活などには入るのか?あんなにも勧誘されていたが」

130 第玖話〝転入初日〟

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 話を切り出したのは一成のほうだった。忍はアンパンを平らげてすでにチョココロ

ネをパンの部分から食べようとしていた時だった。

「部活……か。柳洞さんは何かしているのですか?生徒会とは言っていましたが」

「ふむ、俺も入っていないのだ。生徒会だけで忙しくてな、まあ本当ならば忙しくないの

だが……あの女狐のせいでな。神崎も気をつけるんだぞ」

「気をつける?」

「ああ、お前の今の隣にいる遠坂だ」

「遠坂さんがどうかしたの?」

 忍にとってはあれは仮の姿なので何も責められても怒りはまったくないので普通に

聞いた、一成はここぞとばかりに話し始めた

「ああ、あやつによって生徒会が動かしにくのが現状だ。確かにあやつの言う事も一理

ある、いや時に俺よりもいい案がある。しかしどこか癪なのだ、この学校からはアイド

ル視されているが、絶対あれは猫を被っているに違いないと思っているのだ。だから今

のうちにお前には言っておきたいのだ」

「猫を被っているって」

 正にその通りだろうが、だが本当に一成を遊んでいる絵が一瞬できていた忍脳内。凛

の変わった点の一つであろう人を弄って遊ぶと言う点だ。忍自身はそれはないが、しか

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し凛のことだからそれこそ大変だろうと忍は悟っていた。

「神崎、お前はまだわからないさ。「けど、なんでそんなことを私に?」何、転入初日に

あったのもなにかの縁だと俺は思っているしな。それにどこかお前は俺に似ているよ

うな感じでな。なんと言うかな」

「それはありがたいな。だけど柳洞さん、そんなに言うのなら生徒会から除名も考えな

かったの?」

「考えては見たがしかし、それでは俺の負けではないか。そんなの俺が許せないのだ。

ふむ、神崎よ、お前はやはり何かちがうのな」

「そうですか?」

「ああ、少なくとも今までの学校においてここまで話していて楽なのは久しぶりだ。他

の生徒だとどこか、敵視されているようでな」

 それは自分のせいだと知らない一成であった。

「そうですね、さっきから色んな視線がこちらを見ているような気がしますし」

「それは神崎が転入生だからだろう?まあそれに俺も居ることだしな、あまり使わない

からなここには。生徒会長としてはやはり注目されてしまうさ」

 忍はチョコを零さないで、そして手を汚さず完食しコーヒー牛乳のパックもカラとし

た。一成の食事は坊主の食事と同じで少し物足りないのがいつもだ。

132 第玖話〝転入初日〟

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「さて、それではそろそろ戻るとしようか神崎」

「そうですね柳洞さん。「あ、あの!」……うん?」

 二人が立ち上がり教室に戻ろうとした際に後ろから声をかけられたのだ。忍かそれ

とも一成にようがあるのかは不明だが、しかしいるのは女子。忍はすぐに一成のほうだ

と思いどこうとしたら

「あ、そ、その」

 自分だったことに忍は驚いた。一成はすこしわらながらこの状況を見ていた、彼もや

はり中学生と言うことだろう。顔は凛のそれと似ていた

「え、えっと何かな?と、言うよりも初めましてかな」

「は、ハヒ!?初めましてです……そ、その転校生さんですよね?」

「うん?あ、ああそうだよそれであなたは」

「は、はい隣のクラスで新聞部の部長をしています、白木綾です。そ、そのインタビュー

よろしいでしょか?」

「白木?白木と言えば」

「ああ、彼女は俺らの担任の白木先生の妹さんだ。新聞部の活動はよく知っているぞ、神

崎、どうだここは協力しても」

「え、ええそれは別に構いませんが。それでは白木さん、よろしくお願いします。神崎忍

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です」

「は、はひ!?」

 ちなみにいつも彼女がこうなのではないことはこちらか説明させてもらおう。忍の

笑顔は凛を一瞬で発情させるほどの強さがある、一般人が食らえばそれこそ間違いなく

面を食らうというものだ。だから彼女はそれを耐えて部活動をした。ちなみにこの学

校の新聞部は意外にも有名で一成や凛など時の人を取材することもある本格派なのだ。

「そ、それでは……ゴホン、お名前をお願いします」

「神崎忍と言います。神崎は神様の神に長崎県の崎、忍は刃の下に心と書いて忍です」

「それでは次に好きな食べ物などはありますか?」

「そうですね、あまり好き嫌いはないようにしているのですが。やはり人の手で作られ

た手作りものがいいですね」

 忍がそういう理由は師匠のせいでの野宿が影響している。

「そうなんですか、いいですよね手料理。それでは次にいかせて貰います、ご趣味や、好

きな物などはありますか?」

「好きな物ですか……好きな物は大切な物ですかね。趣味は特にないので」

「大切な物ですか?」

「ええ、まあ。すいませんあまりここは深くは」

134 第玖話〝転入初日〟

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「あ、ああそうですねすいません!それは次に行きたいと思います。今回転校する前は

dこに居ましたか?」

「イギリスに居ました」

「い、イギリス!?それじゃあもしかして帰国子女って言うのは本当なんですか?」

「え、ええまあ。元々あちら育ちではあるので」

「ですが日本がお上手ですが、それははやり両親などの影響と言ってよろしいのでしょ

うか」

「ええ、両親の影響が大きいですね。両方ともに日本人ですので」

「そうなんですか、それでは次にこれは聞いておきたい人が大勢いたので、私も聞きたい

ので質問なのですが、部活動などには参加なさるおつもりなのですか?新聞部は中途半

端な時期でも大歓迎ですので」

「みなさんからお誘いがあるは大変ありがたいのですが、入る気はありませんね。私は

そこまで何か得意ということもありませんし、運動もそれほどですからね」

「そうなのですか……そうなると生徒会などはどうでしょうか、ねえ生徒会長殿。確か

生徒会には会長、そして役員の一人以上の推薦があれば入れるのでしょう」

「ふむ、確かにな。しかし神崎はまだ今日来たばかりだぞ、それこそまだ早いと言うもの

だ。しかし確かにこいつは良い人間だからな」

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「これは凄いコメントでした。それで神崎さんは?」

「う〜ん、保留と言うことで。それに柳洞さんの言うとおり今日、来たばかりですから。

確かにこんな時期ではありますけどね」

 二月の時期の転校はしょうがないものがある。忍はもとから部活に入る気がないか

らどうでもいいことでもあった。

「それでは最後にもう一つ。彼女さんはいらっしゃいますか?」

「ええ、居ますよ」

 新聞部の白木が眼がテンになるほど早い回答だった。一成は納得していた、こんなに

も誠実であり話し上手、または聞き上手で居ないわけがない。年と考えればはやいかも

しれないがしかし、それではそれほどに忍は完璧だったのだ。ものの何時間かしか会っ

ていない人間でも分かる、白木もそれは同じでこの数分の間の会話で間違いなく彼の丁

寧さが眼に見えたようだ。

「そうですか。ありがとうございます。それではこれを」

 新聞部の取材料はここの売店、または食堂の100円券だ。白木はそのまま一礼する

と消えた。ちなみに先ほどの会話は結構注目されており、忍の彼女あり宣言で少しだけ

男子の目が穏やかになったのは事実。しかしながら

「彼女あり?だから何よ」

136 第玖話〝転入初日〟

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「そうよ、あそこまでの完成形を逃せますかっての」

「どこに居るんだろう?もしかして外国ってことは遠距離……いけるかも」

 実際はこの学校の遠坂凛(アイドル)とはダレも思っていないだろう。忍は全ての質

問に答え、疲れたのか少し伸びをすると、立ち上がり

「それじゃあ帰りましょうか?」

「そうだな、しかし神崎。お前の受け答えは本当に綺麗だな、まだ慣れていないからと

いってそこまで肩を張らなくていいと思うが」

「こちらが素でもあるので。私としては」

 実際はそんなことなく、一成の方が素で綺麗であるが彼の被り方は貴公子そのものと

同じだ。

「そうか……やはり育った国よってか。何、それじゃあ帰るとしよう神崎」

 二人はそしてクラスに戻るのであった。

 ─────────

 このお昼休みは凛は優雅に読書をしながら売店でのサンドウィッチを食べていた。

しかし内心は不安とそして怒りで一杯だった。他人でいくという自分の言い出しが問

題だったと凛は現状後悔もしていた。これではいつ青春の学校生活ができるかわから

ない。そんな思いだった凛、しかし食堂から帰ってきた女子生徒の会話で少し道が出来

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た「ねえ、聞いたさっきの」

「うん、神崎君。まさかの彼女持ちなんだね」

「まああそこまで美系じゃね。けどそれだとイギリスでしょ、彼女さんは……いけるわ

ね」

「いけるわ」

「行かないわけがない」

 女子生徒との諦めの悪さ、よりも凛には忍がちゃんと自分のことをいっていたことに

嬉しさが一杯になったのだ。これは近いかもしれない……

「あ、あの遠坂さん!」

 凛は自分が呼ばれる声を聞いた。いつものことだろうと思い、そしてクラスメートも

いつものことだと思いもう、見る事もない。それは

「あ、あの今時間大丈夫でしょうか……」

 廊下ではたぶん下級生であろう男子生徒が立っていた。凛は

「あら、なにかしら?」

 丁重な扱い方でそのまま廊下に出た。

 ──────────

138 第玖話〝転入初日〟

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 忍と一成が教室に戻ろうとした際に、廊下で一人の男子生徒とそして凛がなにかを話

しているのが見えた。

「またか」

 一成は呆れながら呟いた。

「また?」

 忍は一成の言葉に質問した

「ああ、なにがいいのか。先も言っただろう神崎、遠坂凛だ。学校ではアイドル視されて

いるからなああ言った告白は多い。時には授業の休み時間などにもある、まあ関係のな

いことだがな」

「……そうですね」

 忍が初めて学校に来て一瞬不機嫌になった瞬間でもあった。自分の彼女が他の男か

ら告白されていい気分の彼氏も居ないだろう。少し時間が経つと男子生徒は帰って

いった、その肩から分かるようにふられたようだ。忍はそれよりも……少しこの関係を

相談だと思った、そして凛は、そんな忍と一成を見てすぐに引っ込んでしまった。凛か

ら見ればなぜか浮気のような感覚なのだろう。間違いなく愛しているからこそだろう、

自分は忍以外は興味が無いしかしキャラとしては丁重にしないといけないというジレ

ンマ。

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「これは」

 凛は呟くようにいい、そして

「夜にでも」

 忍は隣の凛に聴こえないようにいい。

「「相談だな」」

 二人とも考えることは一緒だった。

140 第玖話〝転入初日〟

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第拾話〝物語鼓動〞

   一日の学校が終わった。忍にとっては本当に久しぶりの学校だったので非常に有意

義であった。別に授業がではなく、空気が、であるが、忍はそのまま帰宅準備を整える。

この時期なので教科書は購入せず黒板でのみの授業をしていた忍だが、しかし聞かれる

質問にはすべて正解を言っていた。それによりさらに人気が出たのは言うまでもない。

忍の前に先に生徒会に行く準備をした一成が前に現れた

「それではさようなら柳洞さん」

「うむ、神崎も気をつけるのだぞ。初日にしては有意義そうで何よりだ」

 一成はそう言うと教室を出た。凛はと言うと先にすでに教室からでていってしまっ

ていた。やはり忍としては少し寂しい感があるが、しかし当然の事といえばそうなの

で、気にせずに忍も教室を出た。帰り際に意外にも声をかけられたのは彼なりの人気だ

ろう。校舎を出ると忍は一番最初にスーパーを目指す、今日の献立を考えながら。

 ───────────

 凛は今日ほど酷い日はなかったと思うであろうぐらい酷かった。忍がそばに居るの

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に一言も話せないとはもう、拷問だったようだ。しかし彼女はそんなことを顔には出さ

ずに現在生徒会の会議に出席していた。もちろん司会は忍と随分と仲のいい一成。

「それではこの案件を遠坂君お願いできるかな」

「ええ、分かったわ生徒会長」

「それでは続いて今日転入してきた神崎忍君の書類ですね。新聞部が今日アクションを

していましたが」

「それは俺も同伴だったから大丈夫だ。してその神崎がどうかしたのか?」

「はい、英語教師数人から本場の英語を生徒にと言うことで神崎忍による英会話のよう

なものをして見たいということです。それに昨年より居るジェフ先生と出身国が一緒

ですし、これはどうしましょうか」

「本場か……そう思えば遠坂さんも英語凄く上手ですよね」

 一人の生徒が言った、凛はすこし反応が遅れたが

「え、ええまあ。日常的とはいえませんがすこしは」

 この前ジェフ先生と会話しているところをどこかの生徒にでも見られたのだろう。

凛にとっては自分の英語がどこまで通じるかのテストでしかなかったのだが。時計塔

(ロンドン)はイギリスなのだから。

「話を戻そうぜ。けどよこの案件には本人の承諾が必要だろうが会長、親しいのか?」

142 第拾話〝物語鼓動〟

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 男子生徒がそういう。一成は少し考えながら

「ふむ、確かに今日初日の神崎ではあったが人当たりは良かったのでな。俺も気軽に話

せたが、しかし俺ばかりと言うものなんだ。お前らで誰か行って見ればいい、あやつの

丁寧さは凄いぞ」

 一成の賞賛の声を言っているときにこれはチャンスとハエエナの顔をした奴が居た

……凛だ。

「あら、なら私が行こうかしら「なに!?」……あら、会長さん。先ほど言ったでしょう?

誰か言ってみればと。ちょうど私は彼と隣の席な訳だしよくって?」

 ちなみにただ忍と話したいということではないと切に願いたいものである。

「く、た、確かにそうだが」

「いいんじゃないですか」

「そうですよ遠坂さんなら出来ると思います」

「神崎ってあの男だろう……いけるだろう」

 次々に賛成案がある、これが一成は退路が断たれた。一成は諦めるようにこう言った

「それではこの件での交渉は遠坂君に任せるということでいいか」

 会議は終わり、またも一成はストレスがたまるのであった。

 ───────────

143

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 忍は今日の買い物を済ませて商店街をあるいて、そのまま現在の住所遠坂邸に向かっ

ていた。ちょうど中腹と言ったところで違和感が忍を襲った……なにか凄い圧倒され

る何かに。しかし周りに何もない、あるのは軒並み住宅街。そして一人の少年が歩いて

いるだけだった、その少年は金髪で綺麗だった。忍は気にせずそのまま少年を通り過ぎ

て家を目指した。

「ふぅ〜ん、やっぱりあのお兄ちゃん……僕と一緒なんだ、おもしろいな。同じ匂いのす

る人なんて初めてだよ、ああ、もう一人居たなねぇエルキドゥ」

 少年がはそう言うと自分の家に帰る方角に向き直りそのまま帰っていった。

 ───────────

 忍は家に着くと最初に今日つかう食材だけをキッチンにだしておいた。そして魔術

の鍛錬に入る前に少し軽い運動をする。腕立て、腹筋、背筋、そして銃のチェックだ。自

分の部屋に入ると昨日の模様替えで完全に自分の部屋になって、銃が飾ってある

「ふむ、これなら大丈夫か。ワルサーPPK、一応少しはこれを」

 忍は新聞部の取材のさい、趣味がないと言っていたがもし忍の趣味と言えるものがあ

るとしたらこれだろう、魔術とそして銃や自分の武器の手入れだ。凛が帰ってくるまで

の時間は夕食の下準備は少し早いので自分のことをしている忍だが、現在銃を解体して

作り直していた。これも魔術の練習だった、投影の魔術で必要な解析をしていたのだ。

144 第拾話〝物語鼓動〟

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「ふむ、これぐらいならば随分と簡単になったな。だけどやっぱりこの魔術系統は魔力

の流れが悪いな。こんなものを支流にはやはり使えないか。よく俺、これでもったな」

 投影魔術と強化で死徒狩りをしていたものだと自分に賞賛していた忍だが、だが瞬間

あの破壊しか出来ない師匠が浮かんだので、手が止まってしまった

「もしかしてあれ、ただ単に俺をいじめていただけじゃ……ないよな」

 ───────────

「ヘクシッ!」

 女性はくしゃみをした、その瞬間間違えて今目の前の風景を吹き飛ばしそうになっ

た。

「なんか、寒いのかな?コート来ているのに……なんだろう?」

 女性は紅いコートを着て名前に似合わない紅い髪を靡かせてトランク一つの旅を続

けていた

 ───────────

 忍が一通りことを終えたときにドアが開く音がした、忍は迎えにいったら案の定の人

がそこにはいたのだ

「お帰り凛」

「ええ、ただいま忍……もう、いいわよね…忍〜」

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 凛がなにかを弾け飛ばしたかのように忍に抱きついた。すでに凛には臨界点が近

かったのだろう。頬など緩みきっているし、先ほどの30分前までの優等生はどこにき

えたのだろうか。

「あはは、まさか凛がこんな風になるとは」

 忍は凛を抱きしめながらもこの状況を冷静に考えていた。しかし凛はそんな余裕な

どなく、現在鼻息を荒らしながら忍の首にキスをしていた。

「凛、さすがにくすぐったい「ウルサイ」……凛、兎に角玄関ですることじゃ「忍、いや

?」

 ……」

 忍、撃沈。結局玄関の滞在時間三十分少々、その間忍が凛を襲わなかったのは二階級

特進ものだろう。そして凛は何かすっきりしたように部屋に向かい、バスルームへと進

路を変えたのである。忍はどうにか抑えられた本能にその余韻を残さないように料理

を作ることに一生懸命となっていた。

「く、凛……俺、もしかしたらお前を襲うかもしれないな。近いうちに」

 忍は料理をしながらも男の性に泣いていた

 ────────────

 凛はお肌に艶を増した状態でのお風呂なので非常に機嫌がよかった。学校でガマン

146 第拾話〝物語鼓動〟

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した分を発散させるとそれは非常に快楽になると一種のM体性になりつつある凛。

「けど、忍の匂いっていいかも」

 女の子の発する言葉ではないだろう。凛は先ほどから唇をなんども確認しながら気

合をいれなおした。今日はと、いうか今日の学校のあれではいつまで凛の理性が持つか

分からないので作戦会議をすることに頭の中で考えていた。そして

「今日ぐらいは…一緒に寝てもいいわよね。忍のことだし、万が一の事は……期待いま

しょ♪」

 悪魔が笑った。そのとき忍は一瞬なにか寒気がしたのは言うまでもない、忍の危機管

理能力は凄いとここに書いてこう。

 ───────────

 凛が済ませると次に忍が入った。すでに忍の料理は完成しておりあとは忍本人がす

ませれば食事だ。忍は下から日本人のように浴槽につかる習慣がないのでシャワーを

浴びたら終了する簡単なものだ。しかも体臭は自身の属性風のせいでないに等しい、忍

は出るとすぐに料理を暖めなおす。凛が手伝おうかと言っても、大丈夫といって終わり

……このやりとりは五回ほど行われた。

「それじゃあいただこうか凛」

「そうね、忍「いただきます」」

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 二人はそして食事に入る。凛は洋食では忍に勝てないと悟った。なので女のプライ

ドにかけて中華だけは頑張ろうとこころに決めながら忍の作ったパスタを食べていた。

「忍……ちょっと考えたのだけどいいかしら?」

「なんだ、凛?」

「今日の学校のことなんだけど、あれどうにかしないと私が持たないのだけど」

 凛はすでにプライドを捨てて、こう言ってのけた

「忍が目の前にいて、手の届くところに居て、なにもしないお互いに無関心。しかも会話

もない、顔を合わす事もない。私は無理……無理無理無理無理!」

 凛が完全にただをこねる子供にしかみえてない忍は、すこし笑う。その私にさらに凛

は不機嫌になった。

「何よ、忍だって私のこと気にならないの」

「気にならないわけ無いだろう。今日だって」

「今日だって?ってあれ、もしかして。気にしないでよ忍、私が愛しているのはあなただ

けだし。それにああ言うのは日常茶飯事だから気にしていたらきりがないわよ」

「限がなくても彼女が他の男に告白されるのを馬路かで見ていい思いをする彼氏はいな

いと思うぞ。今日の俺はそうだったからな、それでものは相談だ、凛」

「あら、ちょうど私もそう思っていなよ。今日の生徒会の会議でちょっとした案件が出

148 第拾話〝物語鼓動〟

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たの」

「それと何にかかわりがあるんだ?」

「忍、あなたが帰国子女ということで先生方も大いに使いたいらしいわ。今日の議題で

英会話の授業に忍をつかいたいというんがその英会話の先生であるジェフ先生からの

要請でね。生徒会としてもいいという判断なの。それで一応その相談するあいてが私

なのよ忍」

「ほうほう、それでそれで」

「それで、明日にでも私が声をかけるからあなたはそれに合わせて頂戴。まさかあんな

丁寧な物腰になるとは私も予想外だったわ。私の猫かぶりよりも酷いと思うわよ、なに

よ一人称が私って」

「しょうがないだろう俺だって切り替えが簡単に出来るほど人間できていないんだよ。

だからあの状態は完全に違う人と同期だろう?それで話しかけるのはいいがそれで他

は?」

「それともう一つ。あなたと協商すると言うことで合理的に一緒に食事が出来るの!こ

れはもう凄い最高なことよ!いい忍、これは何が何でもしないと私は明日、あなたを襲

います」

「普通そういうことを言うのは男なんだが」

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「あら、襲ってくれるの?いつでも私はいいけど?」

「悪かったと俺が。それじゃあ明日からはそんな形にしような「ああ、それと忍」……ま

だなにかあったか凛?もしかして料理に問題でも」

「いえ料理は最高よ。そういうことじゃなくて今日のまだ足りないのだけど?」

「何が?」

「もちろん忍と一緒にいる時間よ。今日はあなたと一緒に寝るから覚悟してね?」

 凛は笑顔でパスタを食べていた。対する忍は最初凛が何を言ったのか分からず脳が

スリーズしてしまった。すぐに復帰したものの、すぐに抗議の声を上げた

「い、一緒に寝るだ!?り、凛それは辞めておけ、と言うか辞めろ。何を考えているんだお

前は」

 いつも冷静は忍もさすがに好きな女の子から急に一緒に寝たいなど言われれば同様

もするだろう。対する凛はすでに賢者だった。

「いいじゃない。好きあっているのよ私たち、それに別になにか起こるわけじゃないの

に……それとも忍はそんなことを考えたのかしら?」

「…………」

 忍の沈黙、凛は勝ったと思っていたがしかしそれは思い上がりでしかなかったのだ。

「そうだ……凛、いいか俺も男だ。もし凛が一緒にベットにでも入ってみろそれこそ一

150 第拾話〝物語鼓動〟

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瞬で俺が食う。いいか凛、それでもいいのか、無理やりでもいいのか?男は獣だ、それ

は俺もその通りだと思う。だからこそ好きな女の前では普通でいたいのだ。だから辞

めてくれ凛」

「…あ、え?……う、うん」

 忍の言いたいことは凛をそういう意味でもある意味ちゃんと見ているが、だがそんな

形でそういう行為はしたくないと忍らしい考えだった。凛もその言葉に納得してし

まったようで。今日の作戦が失敗に終わると思っていたがしかし。

「けど……私はいつでもいいからね」

 凛は赤面しながら言う。その言葉を聞いた忍も真っ赤だ。二人して紅い魔術師と

なってしまった。そして、二人はそのあと一緒に色々していた。

「続いてのニュースです、昨日に起こった殺人に似た殺人がまたも起きたようです」

 テレビのニュースは昨日からの特集の続きだ。昨日、この冬木で殺人があったと言う

ニュース。今日はさらにもう一人の犠牲者が出たと言う話だ。

「殺人鬼か」

 忍は懐かしそうに言った。忍と凛がここまでの深い関係になることになった出来事

(トリガー)でもあった、それが冬木の第四次聖杯戦争にてのマスターによる無差別殺人

だ。しかも狙うのは全員が子供ということだ。

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「忍?」

「あ、ああ凛。何、殺人っていうとあの男のことを思い出してな」

 忍の言葉に凛も黙った、あの飄々としながらも何か壊れていた男の顔。未だに忘れる

ことは無いだろう。あの時忍が居なかったらそれこそ大変なことになっていたかもし

れない。そのあとに来た白い髪の人も覚えている。

「あの夜は本当に魔術としても夜だったものね。あの白い人はどこにいったのかしら

?」

 凛の言う白い人とは、白い髪でそして自分の魔術をたぶん使い魔であろう蟲に全て食

らわし助けてくれた人。そのとき忍も一緒に助けてもらいそのままお母さんの車で

帰ったのは虚ろに覚えている。あのときに忍に惚れたと思っている凛、そのためある意

味覚えも良かったようだ。

「まあ殺人なんてする奴のことなんざ考えてもしょうがないさ。それよりも凛、さっき

から俺の顔をほお擦りするのを辞めてくれないか。結構恥ずかしいのだが俺」

「い・や・だ」

「そういう事ですか」

 呆れているように見える忍だが、よく見ると凛の脇を完全に腕を回して掴んでいるの

も忍な訳で凛が少し動こうとしても無理な状態でもあった。

152 第拾話〝物語鼓動〟

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 ──────────

 ここは冬木にある洋館のうちの、遠坂邸以外のもう一つの洋館。近所からは薄気味悪

い洋館として有名でもあった。そこにはたった一人で暮らす少年が一人、それだけの情

報だった。

「あはは、アハハハハハやったやったぞ!」

 洋館の中からなにか乾いた笑いが聴こえてきた。その少年は古い書籍を片手に顔に

手を当てながら笑っていた

「これが、魔術!これこそが」

 少年の持っている本は僅かに光っていた。少年はやっと手に入れたものを抱きしめ

るように自分に対して笑っていた。

「そうだ、これでこれでいいんだよ。この僕が、そうこの僕こそが……間桐の後継者だ、

アハハハハハハ」

 少年が気付いていなかった。そんな奇跡な、主人公のように急に力を手に入れること

は出来ないことに。このセカイには何かを与えられた瞬間から何かを成し遂げなけれ

ばならないことが出来ることに。少年の心臓は、動いている……だが何か別物も一緒だ

魔術師

ター

「これで、これで僕は

だ!!」

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 少年は叫ぶ、念願の願いを成就するかのように。

 ──────────

154 第拾話〝物語鼓動〟

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第拾壱話〝暗雲回路〞

   翌朝、結局一緒に寝る事は許さなかったが一緒の部屋で寝ることにした凛と忍。ベッ

トと布団を引いて手を繋ぎながら寝たのだ。そして忍が起きると凛はまだ寝ていた、起

こさないように手を払おうとするが

「動かない」

 凛はまったく動かなかったのだ。手を握っている凛は女の子とは言えないほどの頑

丈さでどう考えても凛を起こさないといけないことになる。しかし凛は朝が弱いので

「おい、凛。凛さ〜ん、起きてください朝食とか、学校とか色々と遅れますよ起きてくれ

よ」

「う〜ん、ちょっと待って忍。もう少しだけもう少しだけ、もう少し、ぬくもりを」

 凛の頭の中はたぶん、溶けてなくなっているのかもしれない。忍はこのときだけは自

分の彼女を疑問視してしまった。

「起きろ、凛。起きたらキスをしてやろう」

 忍はこんなことではたぶん起きないだろうと思っての発言だった。しかしそれは予

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想斜め上の結果になってしまった。すばやく凛はベットから出ると、忍の手を繋いだま

ま忍の目の前に座り。

「して」

 忍、陥落。結局それで凛は全然前から完全に眼を覚ましていたのですぐに仕度にとり

かかった。今日は二人で朝食の役割を決めたのでいつも以上に早く終わったが、今日は

弁当にしたので少しいつもより時間がかかった。忍はコーヒーを飲みながら、今日のこ

とを確認した

「それじゃあ凛、今日はまずはお前から話しかけてくるでいいんだよな」

「ええ、それで大丈夫よ。それでなんとなくと食事に誘うからあなたもそれにね?」

「わかった。確かにお前の人気は凄いな、昨日一日だけでも十分に理解できるほどの人

気だったということをな。それで昼はお前が結構目立つからな、どこかいい場所ないの

か?さすがに会話をあれでするのは俺にもきついぞ」

「あら、そんなのすでに場所なんて確認済みよ」

「それは良好。それじゃあ今日もがんばって行きますかな」

 忍は鞄を持つ、そして玄関に向かうと一緒に凛もついていった。さながら夫婦の朝と

言える光景だろう。

「忍」

156 第拾壱話〝暗雲回路〟

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 凛は短く言うと何かを期待している眼で忍をみていた、俗に言う上目遣いというやつ

だ。凛は徐々に酷くなって言っているがしかし忍も悪い気はせずちゃんとキスをする。

二人も紅くなるを通り越して親愛の挨拶になってきている。

「それじゃあ先に」

「うん、それじゃああとでね」

 忍はそして学校にむかったのだ。凛もすぐに仕度に戻る。今日は忍と話が出来るの

で昨日の様なストレスが堪らないと思いながら、陽気に準備をしていた。

 ──────────

 ここは冬木、唯一の教会。冬木教会、または言峰教会と言われる場所である。してこ

この神父である言峰綺礼は朝のミサを済ませると、いつもなら自室に戻るのだが今回は

違った。朝早いと言うのに客人を待っていたので。そして扉が開く、朝の日差しがちょ

うどドアの隙間から漏れ出るように、そして開けた張本人は大きな棺おけのようなもの

を背負い、そしてシスターの格好をした女性だった。

「ふむ、聖堂教会より進言があったが、君が」

「はい、シエルです」

「ふむ、して今日はなにようかな?あの件については無期限との話ではあったのだが」

「あの話とは?」

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 シエルは綺礼の言葉を意外と見ていた。綺礼にしてみれば教会がこの地に下りる理

由など現在はそれしかないと思われていた。なんせ教会は聖杯戦争でさえ自分を監視

としてしかおかない機関だからだ。なのに、今回はその教会から重宝されている人をこ

ちらに連れてきたのだ。

「申し訳ない、こちらの話だったようだ。して今日はなにようか?」

「はい、昨日未明にかけて私埋葬機関からの通達指令です。冬木に起こっている事件に

ついてご存知でしょうか?」

「ああ、殺人だったかね。しかしそれは私も確認したが魔術の痕跡はなかったと思われ

るが?」

 綺礼の言葉にシエルは肯定した。冬木で起こっている連続殺人事件、証拠はなにも出

てこない、場所、時間もばらばらと言うよく分からない事件のことだ。

「はい、ですが……こんなものが」

 シエルはそう言うとあるものを綺礼に一つ手渡した。それはなにかの書類だろうか、

紙の束と一緒に写真が一枚。

「ほう、これは……しかしこれが事実ならば問題だな。なんせこんなことを君達が許し

たことになる、これは間違いなく君らのミスではないのか?」

「返す言葉ありません。だからこそ私なのでしょう、確実に成功させなければならいか

158 第拾壱話〝暗雲回路〟

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ら。こんなものがまだこの状態で続くとしたら問題です。早急に手を打ちたいのです

が」

 と、シエルがすぐにでも行動を起こそうとしたが、しかしそれを綺礼は静止した。理

由は一つ

「ふむ、たしかにそうだろうが。昨日の緊急な連絡が故まだ管理者には言っていない。

まさか君は管理者のあるこの土地を一瞬で襲撃して一瞬で帰るつもりかね?〝表〞で

は一応教会と協会は仲の良いことになっているのだが」

 冬木の管理者、遠坂凛のことだ。

「そうですね、それでは管理者のかたはどちらに?」

「まだ学生の身である管理者でな、今頃学校にでも行っているのだろう。調査はすでに

開始しても構わないだろうが、しかし説明は君の方から頼めるかい?」

「はい、分かりました。それでは今夜にでもすぐに。」

「了解した。時に君はこの地にもう一人、魔術師がいるのを知っているかね」

「魔術師?それは管理者が?」

「もちろん許可を出している、いや正確には許可など必要ないのかもしれないな。現在

その魔術師は管理者とともに住んでいる、二人は恋仲なのでね」

 この言峰、人のどうでもいい情報を渡しているが実際はシエルがどうせ恋人もいない

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悲しい女だとおもい、ただの嫌がらせで言っているにすぎない。本当に根が酷いほど黒

い。

「そ、そうなのですか……ちなみにここの管理者のお名前は」

「ふむ、遠坂凛だ。そして恋仲は……いや、辞めておこう。下手をすればそれは君の対象

かもしれないからな」

「……それはどういうことでしょうか?」

 シエルの対象、それは埋葬機関が担当するほどの相手と言うことだ。埋葬機関とはい

わば教会専属の殺し屋のようなものだ。大体は人あらざるもの、神秘を汚すものを抹消

するために動いてる集団だ。そしてそんな対象はいかなる場合も殺すことが許されて

いるのがまた埋葬機関なのだ。

「何……「言ってくれますか」…君らに聞かれてはいたしかない。神崎忍、この名前に覚

えたがあるだろう?」

 シエルが大きく眼を開けた。そしてすぐに顔を元に戻す、シエルにしては珍しいリア

クションであったのは間違いないが、しかし彼女は少し口を上げた。

「そうですか、〝彼〞がこの地に」

「そのいいぶりでは知り合いと見るが?」

「なるほど、言峰さんのさきほどの者が大体分かりましたよ。まったく私がちゃんと進

160 第拾壱話〝暗雲回路〟

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言しておいたと言うのに。そうですか、ですが彼が居るのなら好都合でもあるかもしれ

ませんね」

「ほう、君がそういうのかね彼は」

「ええ、彼はそれの一部とすでに戦闘経験がありますし、しかもそれを見事破壊していま

す。私一人で大丈夫かどうか不安でしたが、彼が居るのなら協力を願いましょう。もち

ろん大金で」

「そうか、それでは夜にでももう一度こちらに戻ってきてくれるかシスター」

「分かりました。それでは」

 シエルはそう言うとそのまま持っている棺おけなどをそのまま担いで教会を出て

行った。その後姿を見ながら綺礼は今回の資料をもう一度眼を通した。

「面白いものだ。まさかこのような形ですぐに君の戦闘を見れるとはな、埋葬機関すら

頷いたその力をね」

 ───────────

 忍は教室に入ると挨拶をされたりしたりと色々としていた、転校二日目にしては随分

と馴染んでいるようにも見える。そして一成も例外ではなく

「ふむ、おはよう神崎」

「おはようございます柳洞さん、今日はみなさん遅いのですね」

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 教室にはまだ10人ぐらいしか居なかったのだ。あと5分もしないうちに予鈴がな

ると言うのに。ちなみに十人の中に凛も含まれている。

「そうだな、なにまさかこれだけとは言わないだろう。して「ゴホン」……む」

 そこに入ってきたのは凛だ。

「柳洞君、よろしいかしら?」

 凛のいうことは昨日の会議で決まっていたので一成は泣く泣く離れて言ったのだ。

そして忍と凛は被りあいながら

「どうもおはよう神崎君、学校にはすこしは慣れてくれたかしら?」

「ええ、すこしですが。皆さんやさしいのですぐにでもなれそうですが。それでどうか

したのですか遠坂さん、急に私なんかに声をかけるなんて」

「いえ、少しお話がしたのだけど……そうね、ことも結構重要なの、だからどうかしら今

日はご一緒に食事でも?」

「ほう、それは驚きだな。わかりましたいいですよ」

 そして会話が終わる、しかし二人ともアイコンタクトで屋上ということを再確認し

あった。凛はこれでお昼まで持たせる努力を勤しむのであった。しかし、そんなことが

来ることはなかった、それは急なこの放送である。

「諸先生がた、至急職員室にお集まりください。二年D組、二年D組、柳洞一成君、柳洞

162 第拾壱話〝暗雲回路〟

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一成君至急職員室に」

 この放送だ。何かあったのだろうか、放送している先生の声もすこし焦っていた。生

徒はこの緊急の放送ですこし浮き足だっていた。一成はすぐに職員室に向かっていっ

た。忍と凛は少し回りにあわせながらも冷静にいた。そして予鈴のチャイムが鳴り響

いた、まだ忍の教室には空席が20以上あると言うのに。

 ───────────

 ここは大きな通学路として有名な道、新都にもつながっている大きな道なのだが。今

日の8時30過ぎに、それは突然置いてあったと目撃者は言った。そこには死体が四

体、転がっていたのだから。

「まじかよ」

「うわっ」

「バカ、みるなよ」

 ちょうど、この上に中学校がありこの時刻はもっとも生徒が通る。だからこそ不思議

なのだ。急に現れたという死体。警察の人がすぐに連絡が着てからすぐに場を立ち入

り禁止にした、その影響でほぼ生徒はストップされた。大きな道路な分ほかの道路がな

いのだ。その死体は全部が全部同じ殺され方ではなかった、一体目は小さい子供だろう

か、首がない。そして二体目はどう見ても男の人の体型をしているのに顔は女性、三体

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目はその逆、そして最後の四体目は、ところどころ肉がなくなっている、まるで誰かが

食べたように。

事件異

 まだ、凛と忍は知らない。この冬木で起きている

について

 ──────────

 放送から30分経過している状態でまだ10人たらずの教室にもう完全に生徒はな

にかあったのかと心配になってきていたのだ。そんなところに担任の白木そして生徒

会長の一成が帰ってきたのだ。

「みなさん、座ってください、座ってください」

 白木のもと生徒は指示にしたがい席に着く。そして先生は話しだした

「今日はこれでみなさんは帰ってもらいます」

「はい?」

 誰か生徒がそんな声をあげてしまった、それもだろう、急にきたら帰れなのだから。

「現在、みなさんの通ってきているだろう通学路、あのおおきな道路の道ね、あそこは完

全封鎖されています」

「それってどういうことですか?」

 女性生徒が手をあげて質問した。

「今から説明するわ。皆も知っているとおり最近ニュースで報道されている殺人鬼につ

164 第拾壱話〝暗雲回路〟

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いては知っているわね……今回、その事件に関わってるだろうものがあそこから見つか

りそのまま封鎖」

 先生の説明のあとにすぐに柳洞が補助に入る

「よって、下手をすればこの学校の近くに居る可能性もある。なので生徒の安全を考え

て全員をそのまま送迎バスで送ることにしたのだ。それか、必ず二人で帰ることだ。す

でに封鎖されてしまった向こう側の生徒には帰るように先生が付き添いで行っている。

なのでそのまま皆今日はすまないが解散だ。いいか、家からは出ないように」

 さすがに生徒の前で死体が発見されたなどは言いたくないのだろう。してそのまま

全員はそれぞれの帰宅に入るのであった。忍と凛は少しお互いに横目で確認しながら

帰りの仕度をした。

「それじゃあみんな、気をつけてね。送迎バスはすでに門の前よ、それと方向がない人に

はちゃんと二人以上で、もし居ない場合は先生に頼ることいいわかしら。それじゃあ、

それと明日の学校も分からないわ。一応お知らせはするから」

 そして生徒は全員でていった。忍と凛もすぐに帰る方向で行ったがすぐに向きを変

えて二人で合流した

「とんでもないことになったな」

「そうね、まさかこんなことになるなんて。まあ一度家に戻りましょう、少し気になるの

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よあの先生の言い方」

「凛もか、俺もだ。何かを言いまわしているように行ってる感じがあった。しかもてか

がりだけで封鎖などありえない……凛、すぐに帰るから急ぐぞ、起動」

 忍は持っている宝石を一つ取り出して、呪文を唱える。そして凛を抱きかかえる

「きゃっ!し、忍、急に何!?」

「捕まっていろ!」

 そして忍は人気のないところから、そのまま高速に移動し出す。自身の魔術属性であ

る風を放出させて加速させてそのまま遠坂邸の前につく。実際、これはある意味細工

だ。これで何かがこちらに気付けばそれは……魔術師ということだが、何もない

「はずれか」

「どうかしたの忍、そんなに焦ることでもないでしょう?下ろしてくれるかしら」

「ああ、すまない。少しな……もし殺人鬼がこちらの人間ならなにかしらのアクション

があると思ったのだが、外れちゃったみたいだな」

 忍の行動に凛は完全に歴然な差があることを知る。忍はこう言ったこともにも慣れ

ているのだ。だからこその行動、自分にはまだ分からなかったその行動の意味。玄関に

二人は入ると

「だけど急にどうしたのよ、確かに私も気になるとは言ったけどまさかこっちの話なん

166 第拾壱話〝暗雲回路〟

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て、それこそ綺礼から電話が」

 凛がそう言うとすぐに電話がなったのだ。凛はすぐに靴を脱ぎ捨てて電話を取る、や

はり相手はあの神父であった。すぐに凛は受話器を置くと忍にこう言った。

「忍、すぐに〝準備〞をしてくれるかしら?これからすぐに教会に行くわよ……忍の読

みがあたりそうね」

 準備のニュアンスが少し強いと言うことは、魔術師としての収集なのだとすぐに忍も

理解してすぐに着替える。まだ来て一週間もたたないうちにこんなことが起きるとは

忍には少し幸運が少ないのかもしれない。凛は宝石とそしてお気に入りの赤いコート

を、そして忍は自分の宝石に弾丸をマガジン一つ分、さらに銃の装備。もちろんコート

も着ている。

「それじゃあ行くわよ、忍」

「ああ、分かった」

 二人の魔術師はこれから起きる事件の最初の一歩を踏み出してしまった。

167

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第拾弐話〝旧敵斃共〞

  綺礼は学校が臨時休校と言うことをしり、すぐに凛に連絡をしたのだ。だがしかし問

題はもう片方のシエルだった。彼女はそれこそきままに詮索をしてしまったのだがこ

の神父、連絡を入れる気がないようですでに紅茶を飲んでいた。

「綺礼〜来たわよ!さあどう言う事か教えてくれましょうか、ええ?」

「そんなに怒ってどうしたので凛。まさか、恋仲の彼と家に居たいのは少女としては優

秀だが管理者としてはいかがなものかと「いいから早くしなさい」ふむ、そこにいる神

崎忍のように少しは警戒を持った方がいいと兄弟子としては忠告しておこう凛」

 綺礼はそう言うと立ち上がる。そして忍と凛の前にたった。忍がすでに凛の前に

立って居たのは言うまでもなく、そしてその状況に凛とそして綺礼ですら驚いていた。

綺礼はその魔術とそして八極拳の使いであるので並大抵の相手では間合いに入れない。

しかし忍はそんな相手に気付かせずに前に立っていたのだ。

「それで、どういった用件でしょうか……言峰綺礼さん?」

「ふむ、そうだったな。しかしこれは今回の来訪者(ゲスト)からの説明のほうがいいだ

ろう。まあすぐにとは言わないが戻ってくるだろうから、しばし待たれよ」

168 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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 そういうと綺礼はそのまま座りまた紅茶を飲み始める。しかしそんな時間はなかっ

た、すぐにシエルは戻ってきたのだ。理由は間違えて場所を聞き忘れていたのだ

「言峰殿、申し訳……あ」

「ふむ、これは丁度良かったようだ。凛、彼女が今回の来訪者だ」

 綺礼はそういうと自分は仕事を全うしたと言う具合でそのまま奥の部屋に消えて

行った。忍はすぐに銃を構える、その行動に驚いたのは凛だった。

「し、忍急に何をしているのよ!?」

 凛はそう言うがしかし忍の目はすでに目の前にいるシスターしか見ていない。凛の

盾になるように前に立ちながらもすぐにでも動き出す雰囲気がそれこそまじかの凛に

はダイレクトに伝わってきた。しかし目の前にいるシスターは両手を挙げてみせた

「まったく、そんなことをしなくてもいいのではありませんか……Mr,神崎?今回はど

ちらかといえば協力を願いたいのですよ、我々は」

「埋葬機関が協力、はっ!寝言は死んでから行ったらどうだ?」

「まったく……「忍!」……ほら、管理者からも怒られてますよ?」

 忍は後ろに居る凛を見ると、ため息をしてそして銃をしまった。そしてシエルと忍、

凛は教会の椅子に腰掛けた。

「それでは今回、この地に入らせていただきました聖堂教会、シエルと申します」

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「初めまして。私はこの冬木の魔術協会より管理者としての役割を与えられている遠坂

凛といいます。そしてこちらが」

「……説明する必要はないだろうシエル」

 凛は今でもこの態度に驚いている。忍は今までここまで嫌悪感に満ちた顔を見せた

ことがない。それこそあの再会の夜でも私にはやさしい眼差しでみていたと今なら分

かる。けど今の忍にはそんなものはない、何か相手が起こせば躊躇なく殺すと思う。凛

はこのとき忍にそう思っていた

「久しぶりにあってもやはりその態度ですか。まあいいでしょう、今回、私がこの地に

入った理由はあるものの討伐、ならびに排除です。もちろん、あなた方ではありません

のでご安心ください。彼には大きな借りがありますし」

「……それで、どのようなことでしょうか。私としても何か異変が起きているとは言い

がたいのですが。不自然なことは何もありませんでしたし」

 凛の言うとおり何か魔術らしいものは何も感じていないのだ。忍とてそれは同じ、あ

るとすれば

「お二人は、ここ最近でのこの地で殺人事件のような、いえもしくは神隠しのような現象

について知りませんか」

 忍と凛には心当たりがもちろんあった。そのためにこんな午前中なのに学校が休み

170 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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なのだ。してシエルも気付いた

「学生ですが、この時間にここに来れたもの。起きているのですね、その現象が」

 凛は正直に話すことにした

「はい、その通りです。今回も私たち通っている学校の近くでも殺人がありましたので

……ですが、そんなに近くなのに魔術的反応は」

「はい、それについては先に言峰氏よりも聞いております。しかしそれは当然です、それ

こそが今回の討伐対象の一番の特徴でもあるのですから」

「は、はぁ」

 凛はそんな感じだが、しかし忍はずっと睨んだままで、少し席を立ち、歩きながらシ

エルに質問した

「それで、天下の神秘の守護者にして魔術師殺し、埋葬機関でも重宝されているあなたが

このような極東の地に?」

「あなたならそれは理解できるのではありませんか、Mr,神崎……いえ、弾丸の使者と

言われた貴方なら。すでにそれだけの状況が揃っている、これで私。全て分かりました

ね」

「忍、どういうこと?」

 凛は不思議そうに忍に聞く、そして忍は重い口を開いた。

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「おい、シエル。お前については少しは話していいな?」

「はい、今回は完全に協力させてもらう側でもありますので、ですが〝あれ〞はダメです

よ」

「分かっている。それじゃあ凛、説明するよ。まずはそこにいるシスターは埋葬機関の

トップクラスの人間だ。わかるよな、埋葬機関」

「ええ、聞いたことはあるわ」

「そしてそのトップクラスが相手しないといけないほどの相手。しかも殺人、さらに人

が消えていきなり現れる……おい、質問に答えろ!聖堂教会、貴様、まさかあの欠片を

プロジェクト

捨ててなかったな。

!」

 急な動きにシエルそして凛すら動きが取れなかった。問題はシエルよりも忍だ、相手

は埋葬機関なのに彼の動きにまったく気付かず壁に完全に張り付いているシエル。凛

は忍の戦闘としての能力を少し見誤っていたと思った。シエルは突きつけられている

銃に対して冷静だった。

「Mr,神崎、落ち着いてください。それについてもご説明いたしますので、管理者もそ

れで「忍、やめてそんなの忍じゃない……」……」

「…分かった、すまないな、シスターシエル。それに凛もここは君の管理だ、俺は客でし

かないのに」

172 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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「いいの、別に。それよりもシエルさん、お願いします。何がこの冬木に来ているのです

か」

「お話いたします。まず最初にそれは二年前ほどに遡らないといけません。ある村にあ

る種族の人間が、魔術の研究中な大きな事件をしました。その魔術は世界により消され

ました、抑止力が働いたのです。しかしその抑止力は間違った発動になってしまいそこ

にいた全ての人間を対象にした、とんでもないものに変えてしまった。それが「リビン

グデット」その通りです、リンビングデット。理性がある屍です、聞いたことは」

「ありません」

 凛は自分の勉強不足にすこし恥ずかしそうに言うが、しかしそれを知ってかシエルが

援護をした

「いえ、それは当然です。なんせこの種の者は教会の上層部やまたはその当事者しか知

らない情報です。それではリビングデットとは真祖の吸血鬼、さらにその下の死徒、さ

らに下に死者ですが、リビングデットはどれにも当てはまらない吸血種なのです。抑止

力によって人としての〝肉〞を持っていかれ、その肉を求めて徘徊するものです。そし

て村の全員がそのリビングデットになった際、全員で共食いを始めたのです。そして最

後に残ったのが、本当の死屍者(リビングデット)と、今現在私達が総称しているもの

になりました」

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「待ってください、二年前ですよねその話は。と、言うことは逃がしたんですか?」

「いえ、教会、さらに魔術教会、何人かの編成で行いましたが、一回目は失敗し、そして

二回目に私、そして魔術教会からはMr,神崎が来ました。そして消滅に成功しました、

いや実際は完全な破壊ですが」

「だが、お前らはどこからかその欠片を回収しそして復活させただろ?」

 忍はそう言うと今度は冷静に凛の隣に座っていた。

「……お恥ずかしい話しながらその通りと言うべきでしょう。そして死屍者(リビング

デット)はこの地を目指してきた、理由は偶然、そしてもう一つはこの地の霊脈です。管

理者である貴方なら分かるでしょう、いえ聖杯戦争の舞台であるこの地なのですから当

然ですが」

「もちろんよ、それよりも偶然と言うのは」

「はい、確かに欠片を回収しそしてある場所に輸送されるはずでした。しかしまだ、欠片

は生きていたのです。その飛行機もろとも消息不明、こちらの世界では未発表の事件で

す。そして落ちた場所がここの西のあの海近く、正確に言えば流れてきた可能性があり

ます」

「なら、なぜそれを報告を」

「出来るわけ無いだろうな……貴様らは神秘は人の手に入れてはならないと提唱してい

174 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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るやつラだ。そんな奴等がまさかその死者を回収して実験しようとしたら逃がしたな

んていうバカみたいな話が出来るかよ。しかもこの地は管理者がいる、と言うことは魔

術協会が絡んでいる……これでいいか、シエル」

 忍はそれこそ本当に嫌味たっぷりで事実だけを突きつけていた。この嫌味は綺礼に

も引けをとらないだろう。

「忍、さっきから少し怖い……ちょっと失礼」

 凛は少し今までにない、忍の態度に恐怖からか忍の手を握っていた。ちなみにシエル

からは見えないようになっている。忍はそれを握り返しているのでそこまで怒りでは

ないようだが、しかし不機嫌ではあった。

「……その通りです。しかしそれを見過ごしことが出来なくなってきたのが現状という

ことです。間違いなく現在、この現象は死屍者(リビングデット)だと教会は見込んで

いるのです。ですので管理者である遠坂さんに許可を」

「……構いませんわ、すでに犠牲者は出ています。ですので今回は私たち〝も〞参加さ

せていただきます、もしこの条件が飲めない場合は分かりますね」

「ええ、それは重々に。それでいいかしら、Mr,神崎」

「俺に決定権はない、管理者がそういうのならそれでいいのだろう」

「あら、私は協力してくれるって聴いたのだけど?ねえ管理者の遠坂さん?」

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 シエルは笑っていた、そして凛も彼女の思案を理解して、そしてこう言ったのだ

「そうよ、もしかして忍は私が参加するのにしない気だったのかしら?」

 忍はそんな二人を睨みながら、あ、睨んだのはシエルだけだが

「凛、お前は分かっているのか……人外の戦闘は普通じゃないんだぞ、魔術師との戦闘も

少ない、いや正確にはない凛にはないだろう。そんな危ない事をこの俺がさせると思っ

ているのか?」

 その言葉に、シエルは驚きを感じていた。シエルと忍、この二人は面識はあるがそれ

こそ間違えた出会いをすれば敵としていただろう、しかしその前の面識から彼が他人を

気遣うことなどをしているのは稀な光景だった。シエルは綺礼が言っていた恋仲と言

うのも間違っていないと思った。

「し、忍」

「……Mr,神崎、随分と彼女には甘いようですが」

「当たり前だ。俺の好きな女だぞ。だれが好き好んで戦場に送るか?お前だってわかっ

ているだろう、あいつに魔術師はドクだと」

「忍、どういうこと?」

「凛、最初に説明があっただろう。ある魔術師の実験だったと、そして最後に残った

死屍者

リビングデット

が、その母体となる人格がその魔術師なんだ。だから問題だったのだ。あいつは

176 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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魔術で構築された概念ごと喰らうことをしたのだ」

「あなたは、やはりそれには気付いていたのですね」

「お前の〝あれ〞を使用する前からだ。凛、協力と言ってもただ黙認だけでいい、君が戦

う理由などない。そうだろう、シスターシエル」

「……確かにそうです」

 忍には分かっているのだ。どんなものでも人間とは弱く儚い刹那な存在ということ

を。シエルはすでにその枠を外れてしまっているせいで逆によく分かるのだ。忍はそ

んなことを凛を巻き込みたくなかった、しかし

「ふざけないで忍!これは私のいえ、遠坂の管理地で起きていることなの。それにもう

他人事じゃないでしょ。次の犠牲者がでたら、どうするの。忍、私を思ってくれるのは

うれしい、だけど私を甘く見ないで。これでも私は遠坂家当主なの」

 凛は隣にいる忍にそう言う、忍は少し考える。

「…………はぁ〜、わかった凛。だが、お前は俺が守る」

「忍」

「はぁ〜、私のいることを忘れているみたいですね、二人とも……まったくあの漆黒の弾

丸と言われた冷酷な魔術師はどこに行ったのでしょうかね?」

 シエルがこの二人だけの固有結界を破壊してくれたのは、読者にとっては吉であり凶

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でもあったであろう。して、凛はシエルに資料請求をした。シエルにとってはある意味

タナボタ状態でもあった。それは神崎忍という存在だ。彼は魔術師殺しであると同時

に人外殺しには非常に相性がいい。師匠が師匠だっただけ、破壊には強いと言うこと

だ。

「何を言うかと思えば。知らないのかシスターシエル、魔術師は身内には甘いのだと」

「ええ、今回のことで重々に分かりました。それでいい加減分かっていただいたのです

からさっきから私の後ろにいるアナタの使い魔を消してくださらないかしら?首を

狙っているのが非常に違和感なのですが」

 シエルの指摘どおり、影に隠れて真っ黒なカラスが散布した。忍の使い魔、凛はそれ

をあんな短時間に行った忍に尊敬の面、そして恐怖の面を感じさせた。魔力行使をいつ

行ったかがまったく感じられなかったからだ。

「俺は先に帰らせてもらう。すまないな凛……どうもこいつと一緒にいるとお前の前で

もダメのようだ、ごめんな」

「し、忍」

 そう言うと忍は教会を出て行ってしまった。凛はやはりと思い、今一番気になってい

る事をシエルに聞くのであった。

「忍……シエルさん、一体あなた方は何をしたのですか忍に?あんな忍、私は初めてで

178 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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す」

「……何をしたかですか……そうですね、確かに我々、教会の人間には彼はああいった態

度で接しているようですが、たぶんそれは教会だからではなく、埋葬機関だからなので

しょうね。間違いなく」

「埋葬機関」

「ふふ、そんなことよりも私は今のMr,神崎の態度にビックリしているのですよ」

「はい?」

 凛は聞き返してしまった、言っている意味が分からないからだ。シエルはそんな態度

に少し笑いそして

「彼があそこまで人のことを思うなんて」

 そんなことを言って彼女は自分が見てきた少年の話をした。

「遠坂さん、私がMr,とつけるのは尊敬の意を込めて読んでいるのです。それは先の事

件での活躍もですが、彼の考え方なのです」

「考え方」

「ええ、彼は自分を一番をと考え、次に親しい人とここまでは普通の人と同じ感性なんで

しょう。ですが次は問題なのです。それ以外はゴミと同じなのです」

「え」

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「さっきMr,神崎が言いました。魔術師は身内には甘いのだと、ですがそれを逆から言

えば他は一緒なのですよ、どんなに子供だろうが老人だろうが、悪人だろうが善人だろ

うがね。彼ほど明確にそんな線を引いている人は私は見たことがないのですよ。そし

てあなたはその線の内側にいる。初めてですよ、Mr,神崎が私がもし攻撃を仕掛けた

場合に自分よりもあなたの事を回避させるような配置で座っているのは」

「そうだったんですか」

「Mr,神崎の言うとおり確かにあなたには戦闘という戦闘の経験はないようですね。

ですからこれだけはいっておきたいと思います遠坂さん。彼にそこまで愛されたので

すからそれに応えてあげてください」

「もちろんですよ、シスターシエル」

「そう思えば私のこの格好でいうのも可笑しいですね、ですがお願いしますよ。彼のよ

うな人間はこっち側にも少ないんですから」

 そして二人は握手をした。しかしこのとき二人、そして忍すらこのあとの過酷な戦い

になるとは誰も予想しなかったのだ。

180 第拾弐話〝旧敵斃共〟

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第拾参話〝死屍累々〞

   忍と凛は帰っていった、調査は今日の夜からと言うことで夜の八時から集合場所は駅

前で一番高いビルの屋上となった。理由は人目につかないし、それに外がよく見えるた

めだ。しかし今現在、忍と凛の間には会話がない。忍が不機嫌だからだ、もちろん手は

繋いでいるのだが。

「……忍……」

 沈黙、忍はずっとこんな感じで凛の声に一度も答えないのだ。忍が何に対して不機嫌

かと言うと、凛の魔術や体術に対しての不安があるからだ。凛は間違いなく魔術は一級

品なことができるだろうが、しかしそれが戦闘に向いているかどうかも問題、さらに相

手は化け物、それを人間の体術ではどれだけ無力かは忍は良く知っていた。

「……しのぶ……」

 しかし、凛は凛でプライドもある。それに忍の態度も気になるものがあったのも事

実。現在凛はと隣で絶賛無視をしている忍を涙目で見ている。凛の精神は忍に無視さ

れることに100%中30%持っていかれる。現在、二回。あと一回のみだ。

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「し、しの、しのぶ」

 すでに半泣きだ。そして家についた、どうにか凛は泣かずに家までつけたが忍はそれ

でも凛のことを一度も見ようとせずそのまま部屋に入ってしまった。

「そんな」

 凛はそういうと崩れた。リビングにそれも盛大に……しかしそれは一瞬で回復した

「凛、来い」

 忍の言葉、それを聞いた瞬間に凛はさっきのテンションとは打って変わりすぐに立ち

上がり太陽よりも光っているであろう笑顔で、忍の部屋に向かうのであった。その速さ

は、魔術を使った忍と同じぐらいだろう。

 忍は部屋に入った凛に対していきなりこんなことを言った。

「凛、さっきはすまなかったとは言わない。それだけの判断をお前は下したからな」

「忍……そ、そのえ、えっと」

「魔術師として、そして管理者としては確かにさっきの教会とのコネも出来るからいい

ことだろう。ああ、それは俺も認めよう」

 忍は少し強い言い方をしている。凛でさえ黙るほどだ

「だが……あまり危険に自分から入ろうとするな、頼むから」

 凛はそのときの忍の顔を見た。それはまるで慈愛のような目だった、凛は忍の目を見

182 第拾参話〝死屍累々〟

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て悟った。忍だってそういった経験をしているのだ、戦場での過酷さ、そして醜さを。

凛はそれを知らないのにいきなり埋葬機関が相手をしなければならないような化け物

と打って出るのだ。

「俺はさ、確かに戦闘には長けている魔術をしている。だけどそれは戦闘である攻撃だ

けなんだ。自分を守るには最大は攻撃だ、だけどなそれは自分でしかない。他人を守る

術はそれほど素人。だから怖いんだ、お前がもしものことがあれば」

 忍は今にも泣きそうな顔だった。凛はそんな忍に抱きしめながら

「ごめんなさい。私、少し焦っていたのかもしれない……忍と同じステージに立とうと。

けどこの冬木の管理者としての行動もあるのよ…けど、ごめんなさい私少し軽率だった

のかもしれないわ。そ、その忍がそんなに私を心配してくれているなんて」

「当たり前だろう、俺はお前が好きなんだからさ」

「うん」

 凛は忍よりもまだ自分が子供だと思い知る。しかし無理をしても忍に負担をかけて

しまうのも今回でよく分かった、だから来たる聖杯戦争のために少しずつ、頑張ろうと

思うのであった。

 ───────────

 現在、午後7時55分。駅前にはまだ騒がしい、人が歩いていたり、座っていたりい

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ろんな人が居た。そんな人をまるで模型のように見ることの出来る場所に一人のシス

ターは背中に荷物を背負って町を見ていた。何も知らないと言うのは本当に幸せのこ

とだと言う事を、したの人を見ながらそう感じていた。

「果て無き欲望の向こうに、人は何を見るのでしょうか」

 独り言のようにシエルは言う。しかしそれに答えるように人の声が聞こえてきた

「人はそんなものを見る前に死ぬ。もしそれを視てしまったらそれは人ではない、何か

に変わるかな」

「時間は丁度ですよね、シスターシエル」

 忍と凛だ。二人の格好は午前中とあまり変わっていない、凛は赤いコートに身を包ん

でいるが、下の服装はちょっとした対魔力のある服だ。そして忍の服装は黒いコートに

さらに中は魔術礼装を済ませてある服。そして銃を所持している状態で、肩には使い魔

であるカラスをすでに出ていた。

「お二人とも、改めて今回の協力していただける事を感謝します。これは聖堂教会から

の言葉を思ってくださって構いません。それでは、移動を始めましょうか?」

 シエルの言葉に二人は頷く。そして全員空中をまるで飛んでいるかのような移動を

している。凛は忍にお姫様抱っこされながらだが

「して、シスターシエル。どうやって探す、こんな風に飛んでいてもしょうがないだろう

184 第拾参話〝死屍累々〟

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?あの時みたいに町を炎に包むわけにはいかないぞ」

「そうですね、使い魔からはなにもありませんし」

「こっちもだ。凛、お前の方は?」

「ダメね、こっちのほうも。だけど相手は魔力に反応するんじゃないの、忍。なら私たち

がなにかを行使すれば」

死屍者

リビングデット

「凛……

と言われても知性があるんだぞ。まあ理性がないから大丈夫なのだろう

が。いいか、これは危険かどうか分からないから触る、それは本能だけだ。だけど知性

があると言うことはある意味危険なものが少しは分かっているんだ、もちろん自分がや

られたときの事もな。そう考えると同じ手がすでに危険と言うことが相手は本能で分

かっていることになる。これじゃあ無理だ」

「む〜」

「ですが、遠坂さんの言うとおり、それ以外にあれのあぶり出しは出来ませんよ「もう一

つあるさ」……どういったものですか」

「簡単だ、エサを用意すればいいだけの話だろう?」

「えさ?Mr,神崎、先ほども説明したとおりそんなものには引っかかるわけがないので

すよ、しかもエサとはどんなものを」

「相手は死者だ、肉を用意しようじゃないか……前のように魔力をただばら撒いても

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寄ってこないのはすでに確認済み、さらに相手は随分と暗闇が好きのようだ。ならばこ

こならば必ずあそこに集中するさ。相手は本能で動く、これを逆手に取ればいい」

「言っている意味をもう少し分かりやすく教えてくれますか?」

「はぁ〜、凛。このバカに説明してやれ。この冬木の霊脈をな」

 俺の言葉に凛は理解した。そう、相手は肉とそして魔力を求めいるのだ、ならばこの

地には霊脈と言う普通ではありえないほどの魔力の流れが存在する。そしてその総本

山は

「柳洞寺のあそこね」

 忍が一番最初に訪れてそして行った調査の一つだ。そう、あの柳洞寺は霊脈が渦を巻

いているように少しおかしなつくりになっていた、それを逆に利用しようとしているの

が今の忍の考えだ。しかしそこにはもちろん人がいるのだ、それも柳洞寺は

「柳洞さんか……ちっ。シスターシエル、向かいますよ」

「分かりました、ですがそこは山の中腹ですよね……寺と言うのですから人も居ますね。

どうしたものでしょうか」

「そうよ忍。それにその対象がそこに来るかも分からないし。確かに埒が明かないのは

わかるけど」

 凛とシエルは忍の判断に反対のようだ。忍はその反応にしょうがないだろうといっ

186 第拾参話〝死屍累々〟

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た感じで、現在五里霧中でもあったのだった。しかしそれは転機が訪れるまいぶれでし

かなかったのだ。

『きゃぁぁぁぁぁぁ!』

 街に響く悲鳴。駅から少し離れている場所からだった。忍、凛、シエルが全員その方

向に魔力で強化した目で見た。ビジョンのように街を探る忍の目、そしてそこを突き止

めた

「行くぞ」

「え、もう?」

「相変わらずですね、鳥目のはずなのにカラスは」

 そして忍はそのまま先行する様にビルから飛び降りた。普通の人間ならば先に恐怖

が浮かぶだろうが彼、そして彼女には存在しないのだ。それが魔術師、神秘を手に入れ

た者たちの行動だ。

発動トリガー

「さすがにこの時間は目立つか。視覚操作……ニ、サン、ロク、

 忍はすかさず、落ちてくるところだけをピンポイントに魔術を行使して視界を魔術で

捻じ曲げたのだ。凛もシエルもその空間内に着地しそのまま普通に歩いてるように見

える。そして三人は走り出した。その悲鳴の方向に、場所は路地の裏。そして見つけた

のは

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「……そ、そんな」

 怯えたように言う凛。忍の影に少し隠れているようにも見える

「不味いな、シスターシエル」

 忍はそんな凛を守るように手を握り締めながら銃を構えている。そして前にいるシ

エルはこう言った

「ええ、これではすでにもうあれは完全に復活しているに近いですね。この現象はすで

にあの時と同じです」

 三人の目の前にあるものは、女性であったであろう死体が完全に焼けている肉の塊と

かしたものだったのだ。しかも魔術の形跡も今回は完全にある、死屍者(リビングデッ

ト)が完全に魔術を使えるまでに肉の再編が終わった証拠だった。これは時間を争うほ

どの問題となった。

「こっちです、こっちに」

 近くから聞こえてくるのは人のこえ。さらに周りからも人の気配がしていた。忍た

ちはすぐに人避けの結界を放ち、自分たちの存在を消した。

「ここからは逃げましょうか」

「そうですね、忍。行くわよ」

「分かった……」

188 第拾参話〝死屍累々〟

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 そして三人は場所を離れた。

「これではもう一刻もありませんね、Mr,神崎。あの村のようにはしたくありません

よ」

 シエルは焦っていた。そして凛もその言葉からこの現象が非常に不味いことぐらい

は把握出来ているようだった。しかし忍はずっと逃げてから黙ったままだった。そし

て「……優秀(エクセレント)!!すぐに向かうぞ」

 忍はそう言うとそのまま動き出そうとする。二人は意味が分からず、驚いていた

「Mr,神崎?どこに?」

「あいつのところに行くと言っているのだ。場所は簡単な場所だ、やはり俺の読みは当

たりのようだったぞ。柳洞寺ではなかったが、その上の山だ。あの山の上に居やがるぞ

あいつは」

「そんなどうやって?」

「話は移動しながらでも出来る。凛、俺の肩に」

 そして移動しながら忍はさっきからしていた事を説明した。

「俺の魔眼については知っているなシスターシエル」

「もちろんです」

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「俺の魔眼は元々は淨眼だったんだよ。だから見えないもの視ることの方が長けている

んだよ。あんな反転方法でなければ良い眼だと師匠も言っていたけど。まさかこんな

使い方のほうがあるとは。まずは霊脈で辿る本来あるべきオドを、しかしあいつは魔力

行使した際のオドの変化を俺に見せた。それを追えばあいつにたどり着ける。今現在、

あのやろうさっきの犠牲者の生命力を完全に自分とどうかしやがった」

「……Mr,神崎。私にそこまで言っていいのですか、私が埋葬機関の物ですよ?」

「気にするか、もし敵となるならそのときはお前を殺さず、生かさず、そして教会を壊し

てやるだけだ」

「そうね、なら私も共犯かも。シスターシエル、そういうことで」

「まったくあなた方は。まずはこちらを先決にします「来るぞ」んっ!」

 忍の声と同時に何かが放たれた。間違いないこれは凛と同じフィン、ガンドだ魔術で

あることに変わりない。そしてその方向から導き出される場所は

「すでに相手にはこちらが見えているとはね。ふざけてやがるな、おいシスター黒鍵投

げろ」

「この位置に移動方法では」

プロジェクト

「ちっ、凛。少し俺にしがみ付いていろ!

 忍は凛を支えるのを辞めて一瞬で手に持っている銃にマガジンを装てんする。その

190 第拾参話〝死屍累々〟

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速さからどれだけ使いなれているかは一目瞭然だ。

「正確さは命取りだ」

 忍の構えた銃から一瞬にして閃光が七つ、そしてその周りは明るくなった。そしてと

うとう対象の完全な姿が出てきた。

「ふ、さすがにあれは人間とはいえないな。だから山か、分かりやすい「ウガァァァァァ

!」バカみたいに咆哮しやがって。こちらの位置はまだ相手には気付かれていないから

安心しろ」

「もちろんです。しかし今の弾丸は?」

「閃光追尾弾だ、効果は6分が限界だがな。凛、大丈夫か」

「え、ええ大丈夫よ……忍」

「相変わらずですね、そんなマイナーなものを」

 皮肉のように言うシエルだが、彼女は賞賛しているのだ。戦闘においてこんなに使い

勝手のいい魔術はほかにはないだろう。して、忍はなぜこんな投影魔術が出来るかと言

うと、まずは実際に作り、そしてそれを一度でも同調し、解析をする。それをすること

で自分の脳のある一部に保管することが出来るように師匠から習ったのだ。これによ

り一度解析まで出来たものは簡単に投影することが出来るようになったのだ。

「あいては山の中でしかも早い。気をつけるとかじゃないな、これは一瞬が命取りだ。

191

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凛はすぐに魔術で体を強化してくれ」

「わ、わかった、忍!!」

 凛の声があがる。理由は相手の咆哮からの魔術攻撃だ。間違いなく相手は大気に存

在するオドを絞り、そして密集させて放っている。どこからともなくではなく、確実に

忍たちを狙っている。

発動トリガー

「そろそろ、空中はダメだな。重力調整……

 忍は凛を抱きかかえたまま、柳洞寺のほぼ30m先の山の中に落ちていった。シエル

もその隣ぐらいに落下した。そして完全に相手は動き出した、その動き出しは非常に早

い音だけでも凛は少し身震いするぐらいだ。

「く、来ます」

 シエルの言葉どおり、やつは現れた。しかも……その形は人のそっくりにまで回復を

していたのだ。

「オ前ラ?視タ事……アル?」

 忍とシエルは驚いていた。この化け物は肉片だったもの、しかしそれが生前の破壊さ

れる前の記憶を保持していたのだ。よく人は体が覚えていたと言う言葉を使うがそれ

と同じで実体験による記憶の構築とは……魔術よりその上の神秘に近い存在でもあっ

た。

192 第拾参話〝死屍累々〟

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「ふん!」

 最初にしかけたのはシエルからだ。シエルは一瞬で相手の間合いに入り黒鍵で相手

の足を切り裂く、しかしすぐに回復する。それこそ斬ったところからだ

「どけ、そんなものでこれがやられるかよ」

 忍はすぐにマガジンを入れ替える。今度は閃光弾ではなく鉄の弾丸だ、殺傷能力で言

えば人間を殺すには十分なほど。しかし死屍者(リビングデット)にはそれすらも意味

がない、体を貫通するが、すぐに穴は塞がれ傷すら残らない。

「痛イ?痛イ?……痛イ、イタイイタイイタイイタイイタイ!」

 シエルと忍の攻撃を〝痛覚〞と判断した化け物は攻撃に移り変わる。凛は瞬間的に

ガンドで相手を攻撃し援護をしようとしたが、しかしガンドは当たるどことかかき消さ

れていた。

「なんですって」

 凛は驚いている。シエルと忍がなぜすべて実体兵器を使うか、まずシエルは魔術を使

う事を拒むからでもあるが忍の場合は違う。死屍者(リビングデット)と一度対峙して

いるからこそ分かるのだ。あれは魔術師にとってドク……あの周りには対魔術の、いや

神秘が纏われている、死者からの復活という。キリストと同じ

「凛、属性を使え。魔術の呪いの類や形が明確でないものは消されるぞ、同調(チューニ

193

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ング)」

 忍は自分の持っている銃に対して魔術をかける。今から撃つ弾丸はただのものでは

ない、そうこれが忍の対魔術師として絶対の弾丸。

装填完了

セットアップ

、魔術回路、魔術刻印、平常……砕けろ」

 忍は一発の弾丸を弾倉にいれ、放った。その弾丸は収束の光に包まれそして相手を撃

ち抜く。その瞬間、初めてあの化け物は苦しみもだえた。

194 第拾参話〝死屍累々〟

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第拾肆話〝事件終了〞

   忍の弾丸は間違いなく相手を貫いた。今までとは違う反応に凛は驚いている、シエル

はそれに負けじと攻撃をしかける。しかし直ぐに相手は回復する、今忍の撃った弾丸は

起源弾だ。忍の起源はなんでも『排除』らしい、それは忍が一昔の魔眼を開眼してしまっ

た後になった起源らしいのだが、排除、この属性とそして彼の魔術であり存在の強化を

逆に排除に変えた。そう先ほどあの死屍者(リビングデット)の存在を排除しようとし

たのだ。しかしあれでもまだ〝一回〞なのだ。

「く、やっぱり前と同じか……肉片が元だと言うのに存在は一つじゃないのか」

 そう、この起源弾には人間一人の存在を消すことに長けているが他はめっぽうダメで

あり、魔術に対する対魔力もないので普通に魔術で対処された場合その魔術に負ける

が、しかし対人に対しては驚異に変わる。存在を排除ということはそれは世界から消す

ことと同じ、それは死を意味する。だからこそ彼は人外、特に元人間には強いのだ。し

かし今回は少し違った。

「ですがあれが効果的なのは事実ですよ、Mr,神崎。あの弾はあと?」

195

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「一発だ。それ以上は来年まで持ち越しだな、けど確実に消えそうに無いから無駄弾だ

けは避けたいな……凛、炎でどうにかここ一体を焼けるか?」

「もちろんだけど、忍。何かあるの?」

 忍はそれを聞くとそのまま笑った

「いや、無い。だがこのシスターが戦いやすくはなる、黒鍵なんてふるい代物を使う代行

者だ。まあ〝あれ〞を使えばもしかしたらいけるだろうがこのシスターはそれを嫌う

からな。ここはそれでいくぞいいなシスターシエル?」

「まったく。ですが分かりました。あれを抑えられますか?」

 現在すぐに再生を果たす敵、しかしこちらに攻撃をしてくることを今はやめている。

これならばいけるかもしれない。凛はすぐに自分の周りに魔方陣を張る、瞬間的に周り

を日で包み込んだのだ。それに死屍者(リビングデット)は驚き完全に動けなくなった

のだ。知性を持ってしまったために前の記憶の火があるのか、完全に檻の中のような状

態だ。忍は追撃で相手の顔を撃つ。そしてシエルは足、腕、肩と部位部位に攻撃を当て

ている。だが

「来ルナ!クルナァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

死屍者

リビングデット

の咆哮とともに発生される魔術。しかも今回は属性までも付与されている。相

手は凛の魔術をそのまま魔術理論事コピーし、忍と凛、シエルに向かった放ったのだ。

196 第拾肆話〝事件終了〟

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して三人とも回避行動にうつるのだが、魔術としては問題で凛の魔術は追尾だったの

だ。

「追尾よ気を付けて!」

 凛の一言に忍はすぐにマガジンを換装する。

プロジェクト

目標確認

ターゲットロック

……終われ」

 次の弾丸はある人物が開発した魔術完全吸収弾だ。もちろん投影のため制度も落ち

るが物質としての弾丸もあるので現在の魔術ならば消せると忍が判断した。ちなみに

忍がなぜあの魔眼を使わないのかというと、忍には理解できないのだ。人間一人の死を

理解するのは簡単だが死屍者(リビングデット)は一つの肉片でしかないのだ、それを

忍が脳で理解してしまったために死という概念がぼやけてしまい、忍の脳と眼球があれ

の死を拒絶してしまったのだ。

「く、こんな面倒なことが……凛、足!」

死屍者

リビングデット

 忍は早く気付いたのだ。凛のすぐそばに

が近づいていたことに。忍は宝石を

取り出すとそのまま足の周りに落とし魔術を行使した。忍の属性である風で魔術放出

で一気に距離を詰める。

「ま、待ってください!Mr,神崎!!それでは」

 シエルには見えていた。凛に襲い掛かる相手の攻撃を忍があのままいけば反撃では

197

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なく庇うことしかできないことを。

「きゃっ!」

 凛の一瞬の悲鳴。それと同時ぐらいに、前に入る忍。瞬間としてはコンマの世界で忍

は間に合い、そして

魔術解凍

フリーズトリガー

弾丸五月雨

マガジンレイン

!!」

死屍者

リビングデット

 忍は瞬間にして弾丸の雨を

に向けて放つ。凛もシエルもその光景に驚いてい

た。忍は自身の加速で宝石を使っているとばかり二人は思っていたが、しかし忍はさら

魔術礼装銃

ジャッ

に魔術を行使したのだった。彼の魔術は空間系の一瞬の技で存在しない

弾丸を空中から出すというものだが、これには簡単な細工がある。それは彼自身の投影

による魔術に風の属性を生かした簡単な組み合わせの魔術なのだ。弾丸は投影で座標

を確立させれば存在し、威力は風で回転を付けてればそのまま弾丸となる。しかし忍が

こんなことも出来るのに銃を持っているのかというと、この方法での魔術は自身の魔力

はもちろん、さらに脳のほうに強い酷使となるためあまり使用できないのだ。そのため

忍はいつも銃を持っていた。

「グガァァァァァァァァァァ!!」

死屍者

リビングデット

は悲鳴を上げる。そしてすぐに距離を置いた、しかし見る見るうちに回復して

いくのは前と変わっていない。シエルの黒鍵も意味がないに等しい、さらに凛の魔術は

198 第拾肆話〝事件終了〟

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相手を有利させるものに等しい。忍の起源弾ならば少しましになると言った状態で三

人は絶対絶命だった。

「さすがに持久戦になれば不利ですよMr,神崎?前のようには行きませんからね、山一

つを消すわけにも」

 シエルは最後の切り札として用意している武装があるが、しかしそれをもしあいつを

一つ残らず殺すとなると火力だけでいけば山の緑が消えるであろう。凛はこの状態の

初めての戦闘のせいかすでにアップアップの状態だ。忍はそんな凛をサポートしなが

ら戦っている、しかし彼の魔力も無限ではないのだ。幾ら弾丸を投影できるとはいえ無

限ではない。

「グガァァ、肉!肉!…………ガァァァァァァァァァ!」

死屍者

リビングデット

が一瞬、吠えるとそのまま動き出したのだ。そしてその動きにシエルと忍の二

人は活路を見出した。

「シスターシエル!」

「はい、すぐに。もうこれぐらいしかありませんが……当たりなさい!」

 忍は凛にある行動をいうとそのままはなれた。シエルの投げた黒鍵は無論死屍者(リ

ングデット)にあたる。足の腱に当たったようでそのまま崩れ落ちた、忍はさらに弾倉

(マガジン)を投影して、そのまま相手の顔を打ち落とす。先ほどの動きで二人は確信し

199

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ていたのだ。奴はまだ完全に復活していないと。

装填完了

セットアップ

…………属性弾、緑」

 今度の忍の弾丸は、自分の属性を乗せて打ち出す属性弾だ。これにより風をまとった

弾丸はそのまま死屍者(リビングデット)の胸を撃ち抜いた、そして変化が訪れたのだ

「あれは……回復が追い付いていない?」

死屍者

リビングデット

 シエルの言葉。そう

の回復となる、いや吸血種としての回復がもうできなくな

るほどに弱っているのだ。理由は間違いなく死者となってしまったと同時に肉の再編

死屍者

リビングデット

だろう。

は確実にこの冬木にて肉片から回復した。しかしそれすらも凌ぐほど

の追撃や、外傷を与えたため、本来必要な肉がなくなってきたのだ。まさしく死に体と

いった状態だ。

「いまだ、凛!」

 忍の指示のもと、さっきから凛は待っていたのだ。そう、凛は相手の周りそのまま魔

術を発生させた。もちろんただの魔術とはわけが違う。彼女の魔術刻印はフィンだ、

死屍者

リビングデット

には魔術を行使しても意味がないのは、確かだが、それは相手がそれに集中して

その法則を無効にするためで、一つの工程に対して一つの工程でしかかせすことがない

死屍者

リビングデット

のだ。そう、凛、自身の魔術とそして刻印の魔術を一気に起こせば今の

には当た

るのだ。

200 第拾肆話〝事件終了〟

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Neu

Acht

Sieben

Stil,sciest

─!

Beschiesen

影、

片、

ErscieSsung──

──!」

 宝石による、一瞬な蒸発技。そして屍は完全に顔を〝亡〞くしたのだ。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 凛にとっては一度きりの大勝負、自身の魔力もそこを尽きかけている状態。一瞬でも

気を抜けば倒れてしまいそうな凛。しかし凛は立っていた、自身の恋人と同じ目線でい

るために。

「シスターシエル!終わりにしてください」

「まったく、無茶を言いますね。ですが、了解しましょう!……これで、最後です!」

 シエルの投げた黒鍵は、まずは対象串刺する、そして火葬礼装による完全に肉体が燃

え始める。そしてシエルの投げた黒鍵はそれだけではなく、周りを囲うようにある三本

の黒鍵。土葬による、完全に消去だ。

「ふむ、これでおしまいだな」

弾倉マガジン

 忍はそういう。そして銃に入ってる

を散布させた。そしてコートの中にしまう。

凛のそばによる忍、すでに彼女は心も体も疲れ切っている

「お疲れさん、凛……よく頑張ったな。もう寝ていていい

「あはは、ごめんね忍……さすがに疲れちゃったみたい。忍」

201

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 凛は何か糸が切れたように倒れこみそうになったがそこは忍がちゃんと支えていた、

凛の頑張りに忍は満足していたが同時に、これからは凛にも少しはこう言ったことにも

慣れてもらおうと思った。それは魔術師として、そして愛するものを確実に守るための

術であると忍は考えたからである。

「お疲れ様でした、Mr,神崎……遠坂さんは」

「初陣だ、さすがに疲れているようだ。このまま俺が運べば問題はないだろう、それと報

告と謝礼は別途で送ればいい、今は安全な場所にこいつを運びたい」

 シエルはその言葉を聞いて笑ってしまった。いやこの場合は正確にはにやけてし

まったのほうが正しいだろう。

「気味が悪いぞ、シスター」

「あら、そうですか。すみません、いえただあなたが自分よりも他人の体を心配するのが

珍しかったので。あなたのお師匠さんでもあなたは自分を一番に考えていましたので」

「ふん、うるさい。こいつには今日は本当に無理をさせたからな……まったく貴様だけ

でもあれを使えば済んだことだろう?え、不死身殺しのあれを」

「そうなんですけどね……けど彼女に面識があるのはあなたと関わっておく中では重要

だと思いまして」

「相変わらず、お前らは醜いな。凛にはやはりこちらの世界はまだ早かったか「……しの

202 第拾肆話〝事件終了〟

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ぶ……」…ん……」

「寝言でも呼ばれるなんて幸せ者ですね、Mr,神崎。しかし今回の件は私も少し聞いて

みましょう。さすがにこの事態はまずいでしょうし、まさかこんな失態があり得るなん

て」

「もし、それが故意だったらなんてな」

「Mr,神崎。それは不謹慎ですよ」

「それはすまないな、シスターシエル。だがお前とてそうだろう?不死身(ふきんしん)

は……まったく、こんな極東にあんなものを持ってくるんじゃない。あの神父には関係

のない顔をしているが、俺らの監視をしていたようだしな」

「それは当然でしょう……助っ人としては「それだけか?」どういう意味でしょうか?」

「そのままだと受け取れ。それでは帰るとしよう、凛はこの通りすでに寝てしまってい

る。体が冷えてしまってはいけないからな」

「本当に彼女には優しいのですね」

「お前、それ何回目だ?」

「ふふ、なんでもありませんよ。それでは私は帰りますので…言峰神父には私のほうか

ら報告させてもらいますのでご安心してください」

「そうか、それじゃあその文章はあとで俺宛にでも送ってくれ。ちなみに「わかっていま

203

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す、それぐらい」ならいいが」

 ちなみにもしシエルが偽装して報告書を送り事実とは異なることを書いていた場合、

忍は永遠に教会を協力することがなくなるので、それはそれで教会にとっては不利にな

る。なんせ一番最初に依頼をしたのは協会ではなく教会なのだから。

「それではこれでお別れですね」

「俺はお前などに会いたくはないがな、二度と」

「そういうこと言っていると、会いに来ちゃいますよ」

「冬木の外ならばお前なんて、殺してやる」

「……そんなに教会はお嫌いですかMr,神崎?」

「嫌いだ、俺はあのことを許す気も断罪する気もない。ただお前らが消えてくれればい

い、存在があったとしても知らなければいい。それだけだ「う、うん」……失礼るする」

「はい」

 この二人が、会うことがあれば次は戦場。いや正確には忍もシエルも会えば味方あれ

敵であれ、どのみち戦場なのだと二人は思っている。だからこそ二人はお互いに会おう

とは思わないのだ。

「忍……離さないで」

 凛は忍の腕に抱かれながら寝言をいっている。忍はそんな寝言に、こう言った

204 第拾肆話〝事件終了〟

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「当たり前だ……お前は俺のものなんだからよ」

 その言葉はまるでどこにもいない、空に向かって、いや世界に誓ったようなそんな言

葉だった。

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 綺礼は今までの戦闘を使い魔を通してみていた、そして終わった後に

「ふむ、やはり似ているな」

 綺礼はまるで久しぶりの友人になったかのような笑みを浮かべながら、教会の自室を

後にした。

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第拾伍話〝日々暇暇〞

   翌日、忍は凛を運んだことによる戦闘とは違った疲労により完全に寝てしまってい

た。と、いうことは結局起きるのは凛が先になるというのは言うまでもないのだ。

「あれ、昨日は……そうかあのまま寝ちゃったんだ、それじゃあここは私の家ってわけ

ね。まあ昨日のままの服装だからわかるけど」

 凛は状況確認をするように部屋とそして身の回りを確認していった。最初に自分の

衣服が完全に昨日のままだったので間違いなくそのまま来たということ。しかしその

運んだであろう忍の姿はなかった。

「もう、一緒にねれば楽なのに」

 凛の独り言のようなつぶやきだが、部屋が目の前にあるのだからあまりそこまでの労

力は使わないだろうと、思うのだが。まあここは凛も乙女ということで皆様もご理解し

ていただこう。

「それじゃあ私の連絡いれますか……そうしないとね〜」

 凛は昨日はそのまま寝てしまった分を今日で追い抜かないといけないと思った。す

206 第拾伍話〝日々暇暇〟

Page 211: Fate/Happylife~刃タ下 ゼ心ろホ · Fate/Happylife~刃タ下 ゼ心ろホ~ なぽしうかむぞ

でに時間は9時という。学校からの連絡がないということは間違いなく今日は休校と

なっている。だがこの時間までも寝ているのは確実に昨日の戦闘がそれほどに精神を

使ったということだ。しかしそんな回復した脳みそに間違いなく疲労させる一本の電

話がかかったのだ。凛はすぐに受話器をとる、そしてげんなり顔に戻った。

「ふむ、昨日はご苦労であったな凛……ああ、そのまえに名乗らなければならないな、冬

木教会の言峰綺礼だが「そんなこと聞いてないわよ!!なんのようよまったく、朝から」

……朝からずいぶんな挨拶だな、凛。昨日のことなのだが?」

「昨日って、ああそうか。夜に終わったのよねあれは」

「ふむ、教会からのシスターの計らいで昨日の最終調査を今日に回してやっと言うのに」

「悪かったわね綺礼。それじゃあすぐにでも行きましょうか?」

「神崎忍のほうは?」

「忍?忍ならまださすがに起きていないわよ「だろうな」何よその含みのある言い方は

?」

「何、シスターの話では戦闘終了直後に倒れたと聞いてな。師としても兄弟子としても

情けないものだなと思ってな。まあそれはそれだ、神崎忍が起きたのならば来てくれ」

 そして電話は切れた。人の精神を逆なでするような言い方は相変わらずだが綺礼に

しては珍しくこの二人を心配して行った電話だとは凛は知らず、現状不機嫌のまま凛は

207

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起きるであろう忍のために下におりて、まずは顔を洗う作業から始めたのだ。

 ────────────

 目が覚めるとそこには……

「最近なれたなこの景色も」

 忍の第二の自宅となりつつある、遠坂邸。昨日は忍は凛を運び終えるとそのまま就寝

に入ってしまった。実際忍自身も凛に注意しながらあの死屍者(リビングデット)と

戦っていたので精神がすり減っていてもしょうがないということだ。

「それよりも凛はまさか寝ているのか?」

 忍は昨日、シエルの報告を現在確認するために使い魔を送った。そしてそのまま下に

降りた。忍にはまだ凛が起きていないと思っていたのだ。しかし目の前に広がったの

はそれ以上の光景だった。

「あら、起きたの忍?おはよう」

 猫のエプロンをして完全に目を覚ましている凛のその姿だった、しかも作ってあるの

はスクランブルエッグにコーヒーという洋風だった。

「凛、おはよう……起きていたのか?昨日の様子だとまだ寝ていると思っていたのだが

?」

「あら、それじゃあこの時刻でもいうかしら?」

208 第拾伍話〝日々暇暇〟

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 凛がさすテレビの時刻には完全に記されていた……10時27分と

「10時か……まさか時間まで寝てしまっているとは、俺もまだまだということだろう

か?だけど、すまないな凛も疲れているだろうに?」

「あら、そうでもないわ。それよりも忍ほうが大変だったのでしょう?綺礼の話じゃ私

を負ぶって帰ったって聞いているけど?」

「あ、ああそのまあな」

 忍としては凛をお姫様抱っこして昨日は帰ってしまったのでそこを思い出して少し

だけ恥ずかしくなったのは言うまでもない。

「ふふ、ありがとう忍」

 その言葉と同時に凛は笑顔を忍に見せるのであった。

「別に言われるようなことはしてないよ凛」

 凛は少し違和感があったので、すぐに忍の前にたった。すでに食事の準備は終わって

いるなので少しは大丈夫だ。そしてその行動に忍は不思議がった

「り、凛?どうかしたのか?」

 忍の言葉に確信と変えた。そう忍の口調がいつものやさしい感じが少しだけ魔術師

口調のままということだ。

「し、忍……私のこと嫌いになったの?」

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「な、何を言っているんだ凛」

「それよ」

「それとは?」

「さっきから忍の口調がいつもの私にだけ優しい口調がまるでいつものというか昨日と

同じで魔術師口調のままじゃない!?どういうことよ、忍!!」

 凛はあわてたように忍の襟元をつかんだ。そしてそんな凛を見て忍は笑ってしまっ

た、それも苦笑レベルではなく、結構な笑みという感じだ。

「し、忍」

 凛の不安がる声に忍は優しく包み込んだ。

「ごめんな、一応いつもの通りと思っているんだけどさ。魔術師って日常と、非日常と分

けないといけないからさ。その副作用なもので、戦闘、魔術に関するものになる口調と

か考え方が若干変わるんだよ。だけどさ、それでもお前は大切だからさ。それだけは変

わらないから」

 忍のその真剣さに凛は非常にうれしい気持ちとそしてシエルの言葉を思い出した。

「答えてあげてください」……凛はその言葉が今ならばさらに理解できた。凛は包んで

いるはずの忍に包まれていると思った。

「そう、ならごめんね忍。それと慣れるまで頑張るから」

210 第拾伍話〝日々暇暇〟

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「あ、ああ。俺もそれは頑張らないとな、俺の未熟だからこそのこれだからな……それよ

りも凛、朝食はいいのか?」

「あああああ」

 二人は、少し冷めてしまった朝食を温かく食べるのであった。

 ───────────

 時間は経ち現在11時前の時間。二人ともまったりとテレビを見ながら過ごしてい

た、やはり学校がないというと学生の身では暇の時間が多くなるのだろう。

「忍〜今日は何をしましょうか?」

 凛の一言にどうこたえようか考える忍。まあその前にこの二人の現状のまったりに

ついてを説明しよう。テレビを見ているのは先も説明したが、どう見ているかなのだが

……なぜ膝の上にのせているのだ忍、そしてその抱っこされている凛は凛で忍の手で遊

んでいる。爆発すればいいのに。

「そうだな、どうするか……そう思えば学校はどうなるんだろうな?」

「一応手紙が届いていおるらしいんでけど……私のところには来ていないわね、どうい

うことかしら?」

「まあ、凛の場合は高嶺の花だからな。まあ誰かが言わなくてもほかの誰かが言ってい

るだろうと思っていると思うぞ、どうする?柳洞寺に行ってみるか?」

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「私は行きたくはないけどね……「と、言っても」何かしら忍?」

「どのみちこの後あの神父のところに行って、そのあと管理者による観察もあるから一

緒か」

 忍の言葉に凛はすっかり忘れていたのだ、朝綺礼に呼ばれていたことを

「しまった!忍、すぐに行くわよ!」

 凛はすぐにそう言いそのまま忍の腕を掴み外に出た。忍は何がなんだか分からずに

いたのだが凛の態度を見ると、予想がついた

「凛、お前忘れていたな?俺が起きていないときにもしかしてあの神父から連絡があっ

たな」

「そうなよ!完全に忍と一緒に和んでいたら忘れちゃったのよ。ああ、もう!」

「まったく凛は。それじゃあ少しはスピードを上げたほうがいいか?」

「そうね、お願いできるかしら?」

 そしてすぐに一瞬で冬木教会の前についた、凛は驚愕していた。いったい何を行った

のかということだ。

「ふむ、急な魔力探知があったと思ったがまさか二人だったか。随分と面白い登場だ、

凛、それと神崎忍」

「うるさいわね綺礼!ちゃんと来たんだからいいでしょ、それよりも報告書、報告書」

212 第拾伍話〝日々暇暇〟

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「ふむ、それでは教会に入るがいい。あの書類は当事者である神崎忍も必要との事だっ

たからな。こちらとしては一応管理者に預ける前に確認が必要なのだ。と、いうわけで

中に入るがいい」

 そして二人は綺礼に連れられて教会の中にはいるのであった。それから少し待つこ

と五分。忍は綺礼が持ってきた封筒を魔眼を通じてみた。理由はまあないだろが呪い

の類などの可能性を考慮したのだ。勿論それは空撃ちに終わりただの魔術礼装の簡易

的な鍵のかかったものだった。

「ふむ、それではこちらをあけるとしよう。これが今回の報告書というものだ、あの代行

者からである」

 そこの文章にはまず最初に今回の協力してもらった凛、忍の名前。そして所属だった

が凛は間違いなく魔術協会の人間としての協力と出てきたが忍は、所属無(フリー)と

書いてあった。これは彼女なりの配慮ということだろう、そして文は今回の事件につい

ての報告だった。冬木の霊脈については少し書いてあるがこれは聖杯戦争を知ってい

るあちらとしてはそうでも重要とならないだろう。なんせ聖杯戦争はマイナーなもの

でしかないからな、四回開催して全部失敗となればそうなるだろう。最後の文は謝礼と

しての金額だった。そして終わる。

「ふむ、以上だが何か?」

213

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「いえ何もないわ。まあ報告書で嘘なんてあっちでは特に書けないでしょうから心配は

あまりしていないけど、忍は?」

「ああ、大丈夫だ」

「ふむ、それではこちらは君に渡すとしよう」

 そしてものを渡すと綺礼は奥に行ってしまった。忍と凛はそのまま柳洞寺を目指す

とした、霊脈の乱れはまだ感知されないがしかし、あの死屍者(リビングデット)の魔

術の影響がどこに出ているかわからないし、それに二人の学校はいつからというのもあ

る。

「忍はすぐにこの道、覚えているわね。私ですらたまにわからないのに」

「あ、ああ。一応凛に案内もしてくれたしそれに自分でも歩いたしな、地を生かせないと

戦争には勝てないからな」

「それは今までの経験からなのかしら?」

「いや、聖杯戦争がここで行われるからだ」

 二人は手をつなぎそんな話をしながら柳洞寺前についたところで二人とも学校モー

ドに入った。もちろん森の中ならば二人とも普通なのだが先に境内に入る。と、いうこ

とは必然的に一成に会いに行くことになるのだ。そして二人が境内に入ると一成はす

ぐに見つかった。

214 第拾伍話〝日々暇暇〟

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「む?これはこれは神崎ではないか…むっ遠坂もか、二人ともいったいどうしたの言う

のだ、それにどうして貴様と神崎が一緒なのだ!?」

「あら、私と神崎君が一緒にここに来てはいけない理由でもあるのかしら?」

「貴様!」

「柳洞さんも落ち着いてください。実は遠坂さんにはここを案内してもらったんです」

「む、神崎。そうであったか、しかし確かこちらには来たのではないのか?」

「そうなんですけど、まあ話も話なので。一応遠坂さんの家が私の家と近かったので」

「ふむ、してこの遠坂も一緒に来なければならなかった理由とは?」

「あのう、現在学校が休学ではないですか」

「うむ、そうだな。してそれが……あ、ああ。すまない、これは私の不注意だったな。連

絡だろう?」

「はい。まださすがに連絡先を交換しているのがいませんので。そのために遠坂さんに

聞いたのですがまた、彼女も不確実だったらしいので、こちらのほうに」

「うむ、それは完全にこちらのミスか。しかし遠坂、貴様がわかっていないのはどういう

ことだ?ああ、そう思えばお主もそして神崎もバスではなかったのだったな。それでは

しかたないか、それでは。学校についてだが、明後日の朝もしも花火が上がったのなら

ば学校があると思ってほしい。しかしもし上がらなかった場合はその日も休みという

215

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ことだ。この話はもともとバスに乗っている生徒はしっていることだ。まあほかにも

数人は歩いたようだが、なんともなければよいがのう」

「ありがとございます、柳洞さん」

「何、学校に行きたがるのはよいことだぞ神崎。それではな」

「あら、私にはお別れもないのかしら、柳洞君?」

「ふん、貴様にいう言葉なぞないわ!」

 忍はこの二人のやり取りを呆れながら、そのままおりていった。凛もその後ろを少し

遅れる形で降りて行った。二人は少し歩くといつもの通りの二人一緒に歩き出した。

「明後日までは、暇だな凛」

「そうね。魔術の鍛錬もしていればいいんだけど、それだけだとね〜忍、デートしない

?」

「いいぞ、それでどこにいくんだ?」

「そうね〜やっぱり新都かしら?けど見る物も結構買っているし、お金もかかる……忍

のことにかしては心の贅肉だろうが税金だろうがおしまないのになぁ〜」

「それはうれしいことだが、だけどそんなに無理することもんだろう?家でゆっくりい

るのもありだろう」

「そうだけど」

216 第拾伍話〝日々暇暇〟

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 凛はこの時これが本当の幸せだと、少しだけ感じていたのは隣で手を握ってくれてる

彼氏は知らない。

217

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第拾碌話〝同僚執念〞

   学校が再開するのは一成の言う通りとなった。結局あのあと事件は終わりを迎えた

らしいのが一成が学校から聞いた情報だった。忍はいつもの通りの朝を迎えている、い

や正確にはこの日本でのいつもなのだが。

「今日は先に出ていくからな凛」

「はいいってらっしゃい。それじゃあ今日からまたあの話よろしくね、忍?」

「あの話?」

「もう、忘れているし。あれよ、英語の先生のお話よお話。それがないと私と忍が会話で

きないじゃない。まったく」

 凛はそんな風に言っているが実際は凛にとっては一番の問題でもあることだったの

で実際は気が気でなく学校のことなど二の次というのは凛だけの心のなかだけにして

おこう。

「それはわるかったって、凛。そうだったな、それじゃあ行ってきます」

 そして凛と忍は朝のキスをして、でかけるのであった。忍は家を出るとそのまま通学

218 第拾碌話〝同僚執念〟

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路を歩く。その光景はいつものどおりの平穏さを表していた。そんな中忍はあること

にも気づいたのだ。これが平穏であり、そして表ということに。

「うむ、その姿は神崎ではないか?」

 忍の後ろから聞こえるのはいつも冷静な柳洞であった。

「ああ、柳洞さん。お久しぶりですね、おはようございます。連絡感謝します、本当に花

火を上げたんですね」

「うむ、まあこの冬木ならばそれぐらいも可能だろう。本当ならば俺も学校に行かなけ

ればならないのだが、先生からの指示では。このように今日も普通に登校なのだ」

「そうなのですか……私もまあ一緒なのですが。朝の学校というもの新鮮ですしね、そ

れにニュースで見ましたけどね」

「事件のことだな」

「はい」

 二人はそんな感じで通学をしていった。

 ──────────

 凛はいつもと同じように家をでた、いつかは必ず忍と一緒に出ることを夢見ながら。

していつもの通りの朝。それは何もない、しかし凛はある家の方向の前で止まった。そ

の目線の先にはある洋館があった。凛の洋館とは違うが、その洋館もまた人を近寄らせ

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ないオーラを放っていた。

「…………」

 凛はなにも言わずにいつもの通りの顔にもどる。その家においてしまい、そして消え

てしまったものをいつか必ず取り戻すことを願いながら。

 ──────────────

 学校というのはやはり噂というもので出来ているとかまわないほど噂が飛び交う。

中学生となれば一番多い噂の類はもちろん恋愛についてであろう。しかしこの学校に

はそれよりも大きな存在があった。それが遠坂凛という存在だ、結局事件のせいで生徒

たちはその間の推測も何も話せなかったが今はそれをまるで決壊したダムのように話

し始めている。それを忍は観察しながら読書をしていた。そしてそこに張本人のとう

じょうである。生徒は一瞬注目する。普通の人ならばそこで何かあったのだろうかと

心配するだろう、しかし凛としてみればいつものことなので、気にせずにすわる。違う

というのならば忍に話かけたことであろう。

「神崎さん、おはよう。あのこと覚えているかしら?」

「おはよう遠坂さん。あのこととは?」

「あら、ひどいわ。まあそうね確かに昨日までは外出も禁止だったから仕方ないけど、そ

の前の学校で約束したでしょう?今日のお昼にどうかしら?」

220 第拾碌話〝同僚執念〟

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「あ。ああそうだったね。ごめんごめん忘れていたよ、これは本当に申し訳ないことを。

それでは今日のお昼はご一緒ということで」

 この二人の会話を傍聞いているとまるで異世界のような言語に近い。しかし二人と

もそれと似合っているのもまたすごいことでもあった。転校生でありながら忍はすで

にクラスでも一目置かれていた。理由は凛とも負けないほどのそのオーラ、そして立ち

振る舞いだろう。何人かの女子はすでに目標(ターゲット)としているようにも思える。

「ええ、お願いするわ」

 それだけを言うと凛はそのまま席に座りなおす。ちなみにその時の凛の顔は非常に

うれしそうなことをひた隠しているのは言うまでもない。しかそれでけで終わるわけ

ではなかった。

「ここにいるのかい、転入生というのはさ?」

 そこに現れたのはどこかキザっぽい男子だった。女子は彼が入った瞬間にいやな顔

をするのが大半でさらに男子は男子で敵意をむけていた。

「うむ、お前は確か」

「ああ、そう思えばここは生徒会長もいるところだったね〜?すこ〜し、ばかり面白い話

を聞いてね。なんでも転校生が来たとか」

「うむ、その通りだ。あそこにいるだろう、眼鏡をかけている。名は「いいよ、そんなの。

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君」……失礼だな」

 一成がそんなことを愚痴を言うがそんなことは気にしないと言わない限りのそのま

ま忍の前にとまった。

「君か……初めまして。僕の名前は髪飾正太郎(カミカザリショウタロウ)、まあ覚えな

くていいや。それよりも、気になることを小耳にはさんだのだけど」

 その一言とともに忍の机に手を置く髪飾。その態度にはどう見ても敵意があった。

忍は一瞬だけ警戒をしたが、魔力の感じはないのだ。そのためいつもの通りの態度に戻

した、

「はあ、なんでしょうか?私になにか?」

「いや、いや。ふ〜んそういうしゃべり方か、面白いね。日本人だよね、まあ気にしない

けど。それよりも本題のほうに話そうかな!なんでも今日、君お昼におもしろいイベン

トがあるようだね」

 その言葉にはとげしかないが、だがそれ以上に問題の視線があった。それは周りだ。

陰口なんてものじゃない

「またかよ」

「今度は遠坂さんみたいね」

「わからないのかしらね?」

222 第拾碌話〝同僚執念〟

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 ところどころは男子も混ざっている。しかしそんなことを知ってか知らずか話を続

けた

「お昼とは?」

「とぼけないでくれないか?君はそこにいる非常に美しい女性、そう遠坂凛さんとお昼

を一緒に過ごすと聞いてね」

「はい。確かに約束はしましたがそれが何か」

「何、簡単な話さ。その席をこの僕に譲ってくれないか?なあ、その代わりと言ってはな

んだがこちらの友人を紹介しよう。君はなんでも転入してきたばかりという、あと一年

だけとはいえいい学生生活をおくりたいだろう?」

 まるで好意のいう髪飾だが、忍はその意見にないしんキレそうだったが、ここはス

イッチの切り替えの済んでいる忍。

「いえ、友人でしたら自分で探しましす。それに今日は遠坂さんのご厚意でのことだ、さ

すがにレディーの誘いを断ることもしたくし、それに失礼だろう」

「ちっ」

 一瞬の舌打ちで流れる緊迫のムード。髪飾は完全に怒っているがしかし忍はそれこ

そタンタンに紳士の対応だ。いつ拳が飛びあうかわから「この、生意気な」……すでに

とんだようだが。

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「いきなりとは……ちょっと驚いてしまいましたよ」

 拳を押させるということは、それは相手よりも数倍の力そして瞬発力を生かさなけれ

ば相手の拳を抑えることはできないのだ。と、いうことは忍は確実に髪飾よりも上をい

うことだ。

「何!?」

「お前、何をしている!」

 そこに一成の一括が入る。それもそうだろう、会って紹介するなりいきなり殴りか

かったのだから。まあそれよりもクラスの生徒の大半が驚いている理由は間違いなく

忍の動きだろうが。

「何ってどうみても僕が抑えられているじゃないか!」

 確かに見た目は忍が完全に押させているように見えるが、しかし

「あら、私にはあなたが殴りかかったのを、止めたようにみえたけど?」

 鶴の一声とはまさにこのことだろう。その声の発信源とは

「君か、遠坂君……だけどそれは間違いだよ、現状僕が「あら、そんな悲しそうな状態な

のによくそんなことがいえるわね」…君、失礼じゃないのかい?」

「失礼?それはあなたもでしょう?まったく私が隣にいるというのにお昼の約束をした

のは私のほう。ならば私に誘いをするのが普通じゃないかしら?まあもちろん、断るけ

224 第拾碌話〝同僚執念〟

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ど」

「君!」

 瞬間髪飾は今度は凛のほうに拳を向けようとしたが忍がそのまま腕を掴んだまま

だったので何もできなかった。

「お前もどけよ!転入生のくせに生意気なんだよ!」

「え、えっと?」

 忍はすでに何を言っているのか理解できていなかったが、しかしわかっていることも

ある、それは凛に危害を加えようとしたことだ。

「髪飾、俺も見ていたぞお前は今忍を殴ろうとしていたのはな。生徒会長として貴様に

いうとするか?」

 一成の言葉もあり、そのまま髪飾は忍を一回見て舌打ちすると消えた。瞬間に忍によ

くやったとか、かっこよかったとかの声がかかる。

「この場合は助かったというべきかしら柳洞君?」

「貴様のためではない遠坂。俺は忍のために行動しただけだ、まったくあのようなもの

が風紀委員の副委員長とは今度はそれを申請するか」

 二人はそんなことを言いながらも笑顔だった。そしてとうの忍は彼がまたなにかし

てくるだろうと思いながらもそのまま黙って授業をうけることにした。

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 ────────────

 そして時間がすぎてお昼となった、凛にとっては待っていた祝福な時間。そしてそれ

と同時に忍も動き出した。二人は一緒に動くというよりも屋上を目指しているものと

いった感じだった。そして屋上に出ると人は一人もいなかった、まあ二月のこんな冬空

に屋上に上がる人も少ないのはわかる。

「忍〜」

 凛はすぐに抱き着いてしまう。寒いので温かさもあるがそれよりも温もりというも

のがすごくあるだろう。そして今日は忍が作った弁当だ

「はぁ〜いったいあれはなんだったのだ?」

 忍の一言。あれで大体がわかる、それは髪飾の件だろう、凛はそれを聞くと不機嫌そ

うな顔をする

「あれは気にしないほうがいいわよ忍。あんな類、腐るほどいる物、まあまさかいきなり

忍に殴りかかるとは思わなったけどね。そう思えば大丈夫よね、いちおう私には掴んだ

ように見えたけど」

「ああ、それなら大丈夫だ。あんなパンチぐらいならば簡単に防げる、だがあれは完全

に、もしかして?」

 忍の言いたいことは凛に気があるかどうかのことだ。もちろん、凛は非常にいやな顔

226 第拾碌話〝同僚執念〟

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をしながらうなずいた

「そうなのよ、忍が来る前からちょくちょくね。けどあの髪飾はそれはそれはひどい噂

しかないわよ、まったく中学生なのになんでここまでひどいのか意味がわからないわ。」

「だからか、随分とクラスの雰囲気が変わったと思っていたかが。しかしそこまでいや

なやつなのか?一言いえばルックスはいいのだろう、それにあの拳は少しだけ嗜んでい

る感じがあったから、良い出ではないのか?」

「さすがは忍、私の彼氏。そうなのよ、問題はあいつの家が金持ちであるってところ。大

体の問題はお金で解決したちゃうしそれにこの前なんて柔道部の子を倒したとかで力

もある、まあ忍には全然聞かなかったようだけどね。まあそんなこともあるのが学校な

んだけどね」

「そうか…なんか厄介なやつを相手するみたいだな俺は」

「まあ忍ことだから大丈夫でしょうけど、もしなにかあったらすぐに言ってね。私と忍

の学校生活を邪魔するなら容赦なんてしないから」

「そうか、だけどそれはお前も一緒だからな凛。俺はお前だけは守るから」

「うん」

 そのあと二人は昼食を食べ終えるといな、凛が忍に抱き着くのがスタートのごとく凛

の甘えが始まった。ここ休日での忍から一緒にいるという行為が、この学校に来て話せ

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ないものに変化してしまったせいで、禁断衝動が起きていた。悪質な薬と同類のよう

だ。

「忍〜忍〜」

「り、凛まだ学校だから。つうか、抱き着くのはいいけど、だから頬ずりは、俺の理性が

!?」

 忍から言わせれば、今日の昼休みの精神はいつもの化物殺しよりも酷だったそうだ。

 ───────────

 それはとある中学生の行動だった。時間はお昼のじかんだが彼はいつも一人だ、たま

に誰かがいるがすぐに違うと思うとそのまま一人に代わる。

「あんな奴が!」

 廊下で一言一言、聞こえない程度に声を出している。そうしなければ抑えられないか

らだ。休み時間の際、転入してきた男になんと自分の長けていたことを二つもぬかされ

ている自分に腹が立っていたようだ。

「この僕が」

 髪飾正太郎はまさしく強かった。何に対してもだ、金もあるさらにルックスも、だか

らこそ学校のアイドルであった遠坂凛にもアプローチをした、しかしそれは一瞬蹴られ

たのだ。しかも言葉が「なぜ、あなたのようは人と、私が食事を一緒にしなければなら

228 第拾碌話〝同僚執念〟

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ないのかしら」だ。この言葉を聞き怒らない人はいないだろう。しかしそれでも怒りを

押さえたのは彼なりの理性だろう。そしてそのあてつけに柔道部の主将をボコボコに

した、問題になったが金の力で黙らせた。しかし今回のことはどうだろうが

「俺のパンチを」

 パンチの速さ、完全に顔面に入るとおもったその拳はむなしく相手の手の中に納まっ

ていたからだ。

「あいつめ……あいつめ!」

 歩きながらその男の顔を思い出すたびに怒りが膨れ上がるのが顔を通してよくわか

る。

「あんなひ弱そうなやつが、遠坂君と食事だ?ふざけてやがる」

 そして少年は逆恨みに近いことを、心の中で増大させながら自身の教室にはいるので

あった。

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第拾漆話〝面倒即答〞

   今日一日が終わるのは案外はやいものだ、人はそんなことをいうこともあるだろうが

忍の一日は長くなる。それは夜からだ、いや今回はまさかの放課後からということだっ

た「おい、ここに神崎忍ってやつがいるだろう」

 放課後の一番最初の言葉はそんなことばだった。発したのは少し、というか一昔の番

長風の男だ。その男、この冬木では若干有名な不良である。しかしそんな男がなぜ中学

校に来たかと、いうと

「ふん」

 その言葉はお昼に聞いた声だ。髪飾、それがなぜかその番長の後ろにいる。この構図

はまさしくトラの威を借る狐だ。

「お前、転校してまだ経ってないというのに、あの女と食事とはずいぶんといい目にあっ

ているようだな」

 ちなみにこの彼、遠坂のファンでもあった。もちろん遠坂には同時から忍のことが

230 第拾漆話〝面倒即答〟

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あったのでそれはそれは堂々と蹴った。その結果、さらに惚れ込んでいるのはまあ万象

と言えよう。してその結果、まさかの転校間もない生徒と食事をしたとなればそれはそ

れはいかりとなるだろう。髪飾はそれを好いように使ったようだ。

「あら、私が誰と食事しようが勝手でしょう?」

 遠坂がそういう。もちろんその通りなのだが

「ふん、俺は今この男と話ているんだよ、黙りな女が」

「な、何よ「遠坂さん」、神崎君?」

「私に話があるのでしょう、なら私と話せばいい。そういうことでしょう、え、えっと」

「風間だ」

「風間さん?」

「ふん、ずいぶんと礼儀正しいやつだな。あまり俺は好きじゃないなてめぇみたいなや

つ……あんな野郎から連絡なんて聞きたくはなかったけどな。お前、顔かせ」

「待て!そんなかとが許されるわけがないだろうが!貴様、今日と今日は、許さんぞ!」

 一成がそういい、風間に近づく。瞬間てきに風間は攻撃に入ろうとするが、忍の手が

それを阻んでいた。

「アハハ、さすがに殴るのはよくないと思いますよ?」

「て、てめぇ……俺の攻撃を」

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「か、神崎?」

「柳洞さんも、いつもよりもずいぶんと血の気がおおいですよ。あなたなら言葉でどう

にでもできると私は思います。それにこれは私のことのようですしね、まあ女性と食事

を共にしただけでこれだとさすがに分に合わないのは確かかもしれませんが」

 分が悪いというが、この学校で遠坂凛と食事というものぐらい高いものはない。

「ちっ、ずいぶんと力のほうにも優雅だな。本当にこいつがそうなのか?」

 番長の質問に、髪飾は

「も、もちろんに決まっているじゃないですか、か!さ、早く早くしないと」

 なにかありそうにも思える言葉だが、しかしこの状況、彼も引くわけにはいかない。

忍の手が完全に彼のこぶしを包んでいるが。

「ふむ、神崎と言ったな。校庭に行くぞ、このこぶしで話をさせろ」

「だからあなたがなぜそのようなことをするのかしら?もしかして私が貴方の告白を

断ったから、一緒に食事をした神崎君に嫉妬でもしたのかしら、随分と小さい男なのね

あなたは」

 凛はそういう毒づくが、風間は笑う

「確かに。あの髪飾の連絡を聞いた際はそう思った。だが……今は違う、こいつはおれ

の拳を今も抑えている。それにお前、本気じゃないな伝わるぞお前の拳からな」

232 第拾漆話〝面倒即答〟

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 忍は少し驚いている。この人はある意味本当に拳に生きれる人なのかもしれない。

師匠も昔そんな漫画を読んだとか言っていたが……実際にいるじゃないか……と、忍は

内心冷や汗をかきながら思っていた。

「そんなことが許されるか馬鹿者!神崎もこんなやつらを相手しなくてよい、今日は生

徒会に少しばかり用があるのではないか?」

 一成の言葉は本当だ。凛と忍はただイチャイチャしながら食事していただけだが、一

応表向きでは英語についての来年度の相談だ。だが

「そんなのウソだろう?転入して間もないのに生徒会にお呼ばれなんてさ、もう少しま

しなウソが言えないの、生徒会長さん?」

「貴様髪飾!」

 一成が怒るが、しかしそれよりも怒っているのが一人いた。

「まったく、〝遠坂〞も見る目がない。なぜこんな男と食事なんかを僕が誘ってあげた

というのに?」

 これが合図だ。そう悪魔の降臨だ、もうだれにも止められない……魔術師は残虐であ

り、同じ魔術師(シュゾク)であろうと自分の邪魔になれば消すのだ。しかしこれには

例外がある、それは〝身内〞には甘いのだ。

「少しいいかな?」

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 神崎忍が風間を吹き飛ばし、そして髪飾の目の前で笑顔を浮かべながら立っていた。

その声を聴いた全員が硬直した。それは風間が吹き飛ばされたからではない、確かに人

を一人簡単に片手で吹き飛ばしたのは驚きであろう、しかしそれよりも凄いことそれは

神崎忍という男の発せられた〝声の冷たさ〞だ。

「な、なんだよ!?」

 髪飾に至っては完全にビビッている。しかしこれは普通の人の反応であると思う、彼

の声はそれほどに低く冷たい、殺気をしらない人でも今の彼ならば人を殺しかねないと

いうほどだ。

「今、もしかして遠坂さんの悪口なんて言わなかったよね?」

 ここで、否定をすればよかった。そうここで髪飾が否定をしてくれればすぐに終わっ

たのだ。しかし

「ふん、お前が一緒だからさ。遠坂の目が悪いというのは君が一緒だからさ、そうお前が

いる遠坂なんて終わっているね!!」

 言い切った、そして風間が髪飾を殴ったのもそれと同時だ。

「あれ?てっきり私が殴られると思いましたが?」

「惚れた女の悪口を言われて何もしないのは男じゃない、ただそれだけだ。それよりも

お前……いや、なんでもない。そうか、なんでも違うようだったな話が。この男にはこ

234 第拾漆話〝面倒即答〟

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ちらも少し聞くとする、それでは失礼した」

 髪飾の顔面は風間の殴った後が現在まだ赤いがあれは青くなるものだろう。風間は

そのまま髪飾をつれて消えて行ってしまった。放課後といえど生徒も多い、しかし一成

がどうにか抑えたのはさすがとしか言いようがない。もちろん噂は止められなかった

が。

「なんとか、なったか。すまないな神崎よ、これならば俺が話を持ち込むべきだったな」

「いえ、柳洞さんは何も悪くありませんよ。それにあの風間って人もなんだが訳ありの

ようですし、それよりも遠坂さんも大丈夫でした?」

「え、ええだいじょうぶよ、それよりもシノ……神崎君、その手」

 凛の指摘を受けて忍は自分の手を見るとそこには、自分自身で握りしめすぎて出てい

た血が少しだけ床にこぼれていたのだ。それに気づく忍は、その手を隠し

「あれ?少しどこかでやってしまったのでしょうか?まあいいでしょう、これぐらいな

ら「だ、ダメ!」と、遠坂さん」

「あ、ご、ごめんさない。それよりもそういうのはちゃんと消毒したほうがいいわ、柳洞

君」

「わかっておる。神崎よ、今日の遠坂の話は後日で頼む。今日は帰ってくれ……さすが

にこれではな。すまないな神崎よ」

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「いえ、このようになるとは……遠坂さんの人気を再確認できたこともありますけどね」

 忍の言い方は少しだけいつもの気遣いとはかけるとげのある言い方だったが、それよ

りも凛にとっては忍のけがのほうが気になっていた。そしてそれを体がさきに行動と

して起こしてしまった。

「それじゃあ、柳洞君!私は神崎君を保健室に行かせて帰らせるから先に生徒会のほう

に」

「う、うむわかった」

 一成がそれしか言えないぐらいの勢いでそのまま保健室に連れて行かれた忍。ちな

みにこの学校の保健室の先生は放課後と同時に帰る。理由はなんでも保健室の先生は

無根らしく合コンをよくしている、そのせいですぐに帰りそれようの服装に変えるため

に早く帰るらしい。そのため今は二人きっりでもあった、そして瞬間的に

「────Das Schliesen(準備。). Vogelkafig,Echo

(防音、終了)」

 凛の魔術で防音が完了した瞬間、忍に抱きつく凛

「忍、大丈夫!?大丈夫よね!?」

「あ、ああ大丈夫だからすこしは落ち着いてくれ凛。ただ少し手を握りしめすぎただけ

だから」

236 第拾漆話〝面倒即答〟

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「そ、それでも」

 凛は保健室のベットに忍を座らせて自身もベットの上で抱きついてる。ここまで凛

が心配性だったとは忍は知らなかったが同時にうれしくもあったのでそのままにして

いる……こいつらは学校をなんだと思っているのか!

「……忍、ごめんなさいね」

 凛は抱きつくながらそういう。その顔は自分が悪い、そんなことを思っているような

顔だった。

「なんで凛が謝るんだよ、お前のせいじゃないさ」

「だけど!私と一緒に食事したから「じゃあもうしないか」そ、そんなのいやよ…だ、だ

けど忍がこうやって面倒事に巻き込まれるのはもっといや」

「あはは、大丈夫だよ凛。すこしこっち向いて」

 凛は涙目の顔を忍に向けるとそのまま口づけをされる。

「確かに、こんなことがずっと続くのはいやだけどさ。それでも俺も凛のこと好きだか

ら、大丈夫」

「忍……もう一回」

 ちなみにこのやり取り……合計十五回続くっておい、誰だよそんな報告をこっちにあ

げたのは!

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 ───────────

 今日の柳洞一成は少しだけ焦っていた。それは今回の放課後の件だ、神崎を危機にさ

らしたこともあるが、それと同じぐらいに問題なのはこのまま彼を危険視をしてしまう

場合だ。一成の兄は少し柔道を嗜んでいた。そのせいで少しぐらいならばその相手の

力を見ることぐらいはできる。そして今回の神崎のあれだ、全員は神崎の言葉のほうに

注目していたが一成は違った。それは風間を片手でそのまま吹き飛ばしたことだ。原

理としてはわかる、しかし人を一人飛ばすということは相当の力と手馴れが必要だ。そ

うするならば彼はそれこそ力もあるということになる。しかしいつも下手に出ている、

さらにこのままでは厄介ごと≒神崎になっても困る

「会長、会長!」

「う、うむすまない。少し考え事をしていてな、それでなんだ」

「あ、いえ。その今日は遠坂さんは?」

「何、しらないのってそうかあんたはクラスが違うから知らないのか。今日さ、ちょっと

お昼に髪飾と、そ、その転入生が少しあって、そのあと髪飾がね」

「また、あいつかよ」

「そういうことだ。すまないが今遠坂君は神崎を保健室に連れて行っている。それにわ

かっているだろう、今日はすでに保健の先生は帰っている。と、なれば彼は手にけがを

238 第拾漆話〝面倒即答〟

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してしまったのでな。少し遅れるだろうが。先にはじめていても大丈夫だろう」

「そ、そうですね……だけど大丈夫だったのかよ、転入生は」

「いや、それがよくわからないけどね」

「……始めるぞ」

 一成は息を整えていつもの通りの生徒会会議を始めるのであった。

 ───────────

 保健室にて、まったりとゆっくりとしていた忍と凛だが。

「そろそろ、もどるは忍」

「そうだな、さすがに20分が限界だろうから。それよりも凛も気をつけろ」

「え、なにを?」

「髪飾(あいつ)だ……たぶんあいつのことだからまだ君を狙う。下手をすればそれこそ

最低な方法でな。そのとき俺は彼を殺すかもしれない」

 笑顔だが忍の顔は本気だ、しかし凛にはそれほど思ってくれる忍のほうが頭の中に駆

け回り

「ありがとう忍。大丈夫、一応綺礼に頼んで護身術程度の八極拳習ったから。それにも

しものことがあれば、使うし」

 凛のポケットから出てきたのは宝石だ。

239

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「そこまでしなくても大丈夫だろう?」

「あら、私の初めては忍に決めているんだから……それとも今からでも「早く戻れ凛」

……はぁ〜い」

 凛はそして生徒会を目指して、忍は一息をつける。そして一言

「まったく、あいつはなんであそこまで耳年増になってしまったんだ?女のほうが精神

年齢は早くあがるというが、まさしくそうなのかもしれないが……本当に襲いそうに

なった、どっちなんだろうな?」

 忍はそういうとそのままけがをしてた手を見る。

「骨子の強化。精神の遮断、復元」

 強化の魔術の応用でけがをしているがましな動きができるように荒療治をした。忍

はそのまま保健室を出ると教室に向かう。荷物を置いて行ってしまったからだ。

「凛の場合は生徒会に行くからいいだろうけど、俺はもしかしてそのまま荷物を持って

行ってもよかたのではないか?」

 そんなことを思いながら荷物をとる。しかし忍は今度はため息をする、これは今日が

おわったからではない。明日からのクラスだ、柳洞や凛には変化がないだろうが、しか

しほかだ。スイッチの切り替えを間違えてあの風間という男を片手で吹き飛ばしてし

まったのだ、これは魔術を使ったわけではないからまだいいが、しかしこれではまるで

240 第拾漆話〝面倒即答〟

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化け物のような力だ。それが普通の中学生の感想だろうと考える忍

「明日から、いじめってやつがないことを祈ろう」

 すこし諦めながらも今日の夕食を考え出す、忍。

「そう思えば豆板醤が切れたったって言っていたな凛」

 忍はそして学校を出るのであった。つけられているとも知らずに。

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第拾捌話〝登校周辺〞

   朝になる、それはいつものことがあるだろう。しかし今回は忍にとってはすこし違う

点があった、それは

「すぅ〜すぅ〜すぅ〜」

 凛なのである、まあなぜこうなったかというと……その前に言っておきたいことは忍

は理性が勝ったとは言っておこう。そして話に戻るがなぜこうなったかというと凛は

ストレスとためて帰ってきたのだ。理由は今回の忍襲撃の件だ、一成としては生徒、そ

して友人である忍の安全を上にとり、今回の英語の件はちょうど三年生になるので持ち

越しとされた。それにより今後、また凛と話機会はなくなったということだ。普通なら

ば徐々に話すことがあると思っていた凛だが一成から釘をさされるように控えろと言

われた。これでストレスがたまるはずもなく、そのまま帰宅。そして忍にああだこおう

だ言い、そして忍に襲い掛かったのは凛としての品格を疑う。忍はそれを嬉しさ半分驚

き半分でどうにか抑えて妥協点としての一緒に寝るという凛の案に乗るしかなかった

のだ。

242 第拾捌話〝登校周辺〟

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「凛、起きろもう朝だ」

 そんな声をかけている忍。凛にとっては知ってか知らずか離れようとする腕にさら

に力を加えている。凛は非常に女の子の腕なのに、力は人一倍だったのはこの時忍に

とっては天国と地獄ということだった。

「い、いやっ……ダメ、だって忍?!私たち、まだ普通のもまだ……」

「……いったいなんていう夢を見ているんだよ凛。それよりも起こさないと、凛、起き

ろ。いい加減に起きないと遅刻するぞ」

 忍はどうにかして起こそうとしているが、しかし凛は朝は非常に弱い。そのため起き

ても

「ふわぁ〜おはよう忍。それから襲うならちゃんと服脱ぐから、お願いね♪」

「何をお願いされるんだよ!?」

「も、もちろん……もしかして脱がせるほうがいいの忍?」

「そういう意味じゃない!く、こうなったら強行手段だ。発動(トリガー)!」

 忍が魔術によって、腕を強化した。そして片腕で凛をそのまま運ぶとそのまま洗面所

までいく、そして顔を無理やり洗った。

「ふがっ……おはよう忍?」

「やっと普通に起きたか凛。おはよう、そして覚えているか?」

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「何かあったかしら?」

「いや、なんでもない。それよりも俺は朝食の準備をするからお前は先に着替えていて

くれ」

 凛はなぜ忍が朝から疲れえいるのかわかっていない。ちなみに抱きかかえられてい

たのは完全にわかっていなかった。

「朝に弱いのはあれはどいうことだ?昨日は早く寝たはずだよな俺ら」

 忍は凛の朝の酷さを考えながら朝の料理に手をつけることにした。

 ─────────

 顔を洗い終えてそのまま自室の部屋で着替えだす凛。実は少し前から頭は起きてい

たのだ、そのせいで現状顔が赤い。抱きかかえられて洗面台に行くところからだ、凛は

忍が結構強引ということが分かったのでこれからは

「さらに誘惑(アタック)していけば……お父様、私大人になるのもはやいと思います!」

 忍の精神を鋼鉄にするであろう意思を固く決めていたのだ。しかし凛とてすぐに着

替え終える理由は忍のエプロン姿を見るのもまた楽しみになっていたのだ。

「さて、今日も完璧ね……そう思えば」

 凛はここで思い出したのだ、今回なぜ忍が一緒に寝てもらえていたのかだ。それは昨

日の生徒会の会議により忍の英語の授業は持ち越しとなってしまったのだ。それで結

244 第拾捌話〝登校周辺〟

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果だが、しかしこれなら毎日でもいいと思っている凛がその場にはにやけていたのだ。

「ふふふ〜昨日の寝る時は最高だったわ。なんて言ったって眠りにつくまでもずっと

 忍のにおいよ。あれは最高ね、よく一緒に寝るというけどあれは確かに癖になりそう

だわ」

 随分とはしたない子である。まったく、誰がこんな教育をしたのだ。

 ────────────

 今日は、それほど手の込んだものは作れなかったと少しだけ後悔している忍。理由と

しては昨日の凛のこともあるし、さらに言えば先ほどの魔力を使ったせいで少しだけ疲

労感を感じていたからだ。忍自身の魔力量は一言いえば凛よりも数倍上である、しかし

それでも魔術回路のほうが細ければそれは意味を持たないのだ。忍の場合はちゃんと

太いパイプがあるのに、一瞬の場合は細いほうが開いてしまうのが多い。

「これもまだまだってことかな」

 忍は自身の心というのに関してはすこしはコントロールできると思っていたが、意外

にもそれは凛には聞かないようだ。

「忍、お待たせ!お皿運べば終わりかしら」

「ああ、だから俺も着替えてくるよ」

 忍は男であり、そして自身の髪型がそこまで長くないため大体五分もすれば終わるの

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である。ある種きにしていないと言っても過言ではない。

「いつも早いのね忍。けど、ちゃんとこっちもしめなきゃ」

 凛は忍のホックをしめる、それはまるで新婚さんのネクタイの下りと、まったく同じ

であった。

「すまないな。一応気を付けているつもりなんだけどな」

「そうよ、忍の学校でのキャラは完璧キャラ。まあ私もそれは一緒なんだけどね、それよ

りも今日は少しだけ遅くいかないかしら?」

「なぜだ?何かあるのか?」

「あ、う〜ん…えっと今日からまた忍とは話せないなぁ〜と、その思っただけよ」

 凛は自身が忍と学校ではそこまで仲良くないという設定で通しているのでまた不満

がたまる状態に戻る、ならば少しぐらい一緒にいる時間を長くしてもいいのではっと間

接的にかつ直接な言い方で忍を見る。しかし忍のほうは何を言っているといった感じ

だった

「は?いや、別に普通に話しかければいいだろう?」

 忍の普通の答えに凛が逆にびっくりしていた。

「し、忍!?だから、最初にも」

「いや、普通に保健室に付き合ってもらえているからそこで話すぐらいの中になったと

246 第拾捌話〝登校周辺〟

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かでいいんじゃないか。確かに今のような話し方はできないかもしれないけどさ、普通

に話せるんじゃないか、それでも」

「だけど忍……あのことだって」

 凛のあの事とは間違いなく昨日の事件だ。髪飾がどんなことをしてくるかはわから

ない、もしかしたら何もしてこないかもしれないが。凛にとってはもしそれを受けて忍

が学校のイメージを嫌なものに変わるのは阻止したいようだ。

「だから大丈夫だって、凛も少し心配症だぞ。まあ確かに柳洞君には何かいわれそうだ

けどな、お前ら仲良くないし」

「……大丈夫なのね」

「ああ、大丈夫だ。それよりも飯を食べよう、冷めちゃうよ」

「そうね……てれび、テレビ」

 凛はそういうとテレビもボタンを入れる。現状このテレビはニュースしか見ていな

い。なので聞こえてくる声はアナウンサーかお天気キャスターのどっちかだ

「それでは続いてのニュースです、……町で交通事故がありました。重体者人は一人、地

元の高校に通う両儀式さん、そこには友人と一緒にいたところに車が突然突っ込んでき

たらしいです。現在日本各所に広がる事故、これにより車やバイクと言った二輪車の免

許がさらに厳しくなる模様です」

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 そして忍は気になったことがあった……両儀。

「ふ〜ん、最近多いわね事故って忍?」

 凛の声にすら反応できないほど忍は考えていた。それは苗字の両儀だ。両儀、七夜、

浅神巫浄、この四つが日本有数の退魔の一族だ。その一つ、しかも両儀とはまた珍しい

名前だ。忍の職業柄その家のものと勘違いされることも多いのでそのためかあまりい

い思い出のないものだ。

「忍……何考えているの?」

「あ、ああすまないな。そのなんだ両儀ってのが少し珍しい苗字でな、それで少し引っか

かっただけだ。気にしないでくれ」

「そう、ならいいけど。そう思えばテレビの使い方は大体覚えたけど、どうやったら音量

変えられるのかしら?」

「…………」

 忍はそれはまだテレビの使い方のたぶんテの字も入っていないとそのとき忍は痛感

したのだ。

 して時間が過ぎて忍は先に遠坂邸を出る。もちろん玄関口でのキスはしている。こ

の二人はいったいどの方向で常識が欠落しているのかわからない。

「……珍しいですね、まさかこんな時間に会うとは」

248 第拾捌話〝登校周辺〟

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 忍はそういう。

「ああ、まさか俺もこのようなところでお前と会うとは思わなかったぞ」

 それは昨日、そう忍自身に喧嘩をふっかけて来てそして髪飾を一発ながったあの中学

での不良と名だたる風間だった。しかも今日はちゃんと制服を着ていたのだ

「こんな時間に私に何か用でしょうか風間さん?」

「ああ、今日は昨日のことについてのな……すこしいいか。まさかこんなに早く話がで

きるとはおもっていなかったが俺にもお前にもちょうど好いだろう、あの公園でいいだ

ろう?」

「ええ、かまいませんよ。どのみちこの時間で遅刻することはありませんから」

 そして忍は風間についていく形で公園に入る。普通の学生ならまずいついて行って

はいけないことをここに明記しておこう。

「それで話とは?」

「ああ、昨日はすまなかったことをしたと思ってな」

「………」

 忍は黙っていしまった。それは彼が不良と言われているはずなのにここまで礼儀正

しいとは思っていなかったからだ。風間もその忍の態度を不服そうにではなく普通に

いつもの通りという感じで受け流していた。

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「俺も礼儀ぐらいはある。昨日のことは俺の完全な勘違いだったようだ、ならば謝るの

が相当だろう」

「……これは失礼を。少し意外でしたので風間さん、不良と言われていますが」

「それは間違いじゃないから気にするな。それよりも昨日の話だな、俺が遠坂凛に告白

したのはしっているだろう?」

「え、ええ聞きましたから」

「だろうな。だから俺はあの野郎に最初その情報を、もらった時正直嫉妬した……が、あ

のあとあの野郎を問い詰めたが、変わらなかったからな……だから生徒会長に聞いたん

だ」

「柳洞さんにですか?」

「ああ、そうだ。そしたらなんでもお前の授業かなにかの参加のための交渉だって聞い

てな。それに遠坂凛が誰と仲良くなろうとそれは個人の勝手だろうにってあの会長に

説教された……それで俺もな、その通りと思っただけだ。まあその時むかついたが、だ

からなお前を殴ったのは完全な勘違いだったわけだ。俺は自分のことは自分で片を付

けるからな、だからこそむかついたら殴る、だがお前はそうじゃなかった……悪かった

な」

「いえ、分かっていただけたなら」

250 第拾捌話〝登校周辺〟

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「そうか……なら俺はサボるじゃあな、転入生」

「はい、風間さんも」

 そして二人は別れた。忍は少しだけ気分よく学校に迎えたのは秘密である。

「人間も捨てたもんじゃないってそう思えば師匠も言っていたけど、なんでそんなこと

言っていたのかな?やっぱり俺とかと同じ学生時代にすごく無害な人でもあっていた

のか」

 場所は変わってとある場所のとある人

「ハクチッ!……だれよ、私の噂なんて。まさか、また私の預金通帳から!?」

 翻弄している魔法使いのちょっとした合間を見てもあいました。

「あら、おはよう神崎君」

 まさかの声がかかった、忍が少し哀愁を感じている中そのこえはまるで朝の目覚まし

時計のように意識を強制的に目覚めさせる。なぜか、それはさっきまで忍と一緒にいて

そしていつもならばそれは次に声を聴くのは学校だからである。

「おはよう、遠坂さん。今日はずいぶんと早いようだけど、どうかしたのかい?」

「ええ、少し目覚まし時計を早めにセットしてしまいましてね。朝起きは三文の徳とも

いえますから。ですから今日は早めに家を出たというわけです。そしたらちょうど神

崎君、あなたの後ろ姿が見えたから声をかけたのよ」

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「……そうですか」

 完全に追いかけてきたのは見え見えなのだが、あえて忍はそこには触れないでいる。

「学校には慣れたようね。だけどこの前のこともあるから、もしかして不登校になって

しまったかと心配したわ」

「心配はありがたいですが、私もそこまで軟弱ではありませんよ」

 そして二人は一緒に登校するのであった。しかしそこにはもう一人の介入者が居た。

「ふむ、今日もこの時間に来たかおはよう神崎ってと、と、遠坂だと!?」

「あら、随分な挨拶ね生徒会長さん?神崎君に普通に挨拶できるのに、私にはまさか驚愕

が挨拶なのかしら?」

「おはようございます、柳洞さん」

 一成は自身の眼鏡をかけなおす。そして姿勢を正す、まるでもう一度やり直すよう

に。

「……ふん!ずいぶんと今日は早いようだな副会長。まったく、あのようなことがあっ

てからなのに、神崎が気にしていないからいいものを」

「柳洞さん、そういいながら風間さんには遠坂さんが誰と仲良くなろうと勝手とか言っ

ていたのではないのですか」

「あら、そうなの?」

252 第拾捌話〝登校周辺〟

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「か、神崎!?なぜ、そのことをしっている」

「……え、えっとさっきまでその風間さんと一緒にいたので」

 この言葉に隣の凛すらも驚いていた、そして凛、一成はこの瞬間に忍が非常に危ない

ことに気付いた。それは一般的な危機能力が結構かけていることだ。凛の場合はまだ

魔術師とわかっている分半減されるが、それでも一般としては問題があり一成にとって

は完全に危ないと認知されるのも時間の問題だったのだ。

「え、えっとどうかしました?学校行くんですよね」

 忍はそういうと歩き出す。二人はその後ろについていくという変な構図だった。

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第拾玖話〝修羅茨道〞

   さて、この学校では今、非常に面白いことになっている。それは髪飾が白い目で見ら

れている状態のことだ。元来、元強かったものが急激に弱くなっていくさまは、脚を亡

くした蛙のように面白い(これは作者の意見ではありません、一応参照までに)。して髪

飾は不機嫌でもあるのだ。現在状況もそうだが、それとこの前のことだ。

「あの野郎、あの風間に何よしたんだよ……ちっ、胸糞わりぃ」

 いつもの言葉づかいなどどこに消えたような感じな言い方で吐き捨てる髪飾。ちな

みに忍は今日も凛と共に食事をとっていた。と、言っても一成も一緒なので二人きりと

はいかないのだが、それでも彼には遠坂凛と同伴で食事というだけで十分なのである。

「なんで、あいつばかり」

 これが廊下で一人、非常に近寄りがたいオーラを出していた少年の今の現状。そして

場所は変わり教室である。

「まったく、そうならばそうとだな」

「あら、なんで神崎君がわざわざあなたにそんなことを伝えないといけないかしら?こ

254 第拾玖話〝修羅茨道〟

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れも個人情報よね?違ったかしら?」

 現在、神崎忍の家と、そして遠坂邸が近所という設定の話をしているのだ。凛から言

えば今後一緒に帰ろうが一緒に来ようが家が近いの一言で済ませることが出来るのだ。

「アハハ、確かに柳洞さんには言っておいてもよかったですね」

「そうね、彼も意外と頼りになるから。だけどこれでわかったかしら、今朝の状態を」

「ふん、言われなくてもその程度だと思っていた」

 この言葉に凛が一瞬、切れそうになったのは言うまでもない。実際は同棲(↑凛目線)

しているのだから。しかしそこはまだ優等生の仮面が保っただけの話だ。

「しかし、やはりあれからだろうか。それともそこの女豹のせいか随分と注目されるよ

うになったな神崎も」

「まあさすがに編入してすぐにあんなことになるとは私としても思っていませんでした

よ。ですが彼も意外と真面目は人でしたよ。日本での義で生きるという人でしょうか」

「神崎、そういうのは確かに美化していえばそうだろうが実際はルールも守れぬ者のこ

とでもあるのだからな」

「ま、神崎君はそれぐらいわかっていると思うけどね〜」

「ただの念だ遠坂。それよりも随分と草食なのだな神崎は、あまり食べるところを見な

いのだが」

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「ええ、まあもとからそこまで食べませんでしたし。それに昔は食べないこともありま

したので」

 忍にとって一日三食とは健康すぎることなのだが、凛との食事も少ないのだ。もちろ

ん料理としては一人前を二つなのだが、しかしこれはお昼、特にこの学校のころは少な

い。慣れるまでの問題だろうが。ちなみに凛はそれをすぐに思ってか自身の作る量を

少なくしている、いい奥さんになれるだろう。

「そうか、俺も家が家なのでな。少し味気ないものばかりと少し思っていたが、やはり生

活によるということか」

「まあ私の場合は結構特殊でもありましたので」

 忍の場合は師匠のせいでもっぱら食べられないし、さらに言えば食べるような心境と

も言えない幾千の修羅場を抜けているのだ。凛はそんな忍の言葉を理解し、そして一瞬

暗い顔をするが、それをも気づく忍は、一瞬笑顔で言う大丈夫と。

「して、神崎よ。髪飾から、またはほかのやつらから何か受けていないだろうな?さすが

に昨日のあれでは心配でな」

「朝も言いましたけど大丈夫ですよ。どちからと言えば皆さん近づいてきませんよ」

「あら、私と柳洞君が一緒に食事しているじゃない?それだけじゃあ不足かしら?」

 凛はわかりきった笑顔で聞いている

256 第拾玖話〝修羅茨道〟

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「そんなことはありませんよ。正直一人で食事ではいろいろと心もとないので、それに

誰かと食事をとるというのは非常にいいと思いますし」

「神崎は、言動が少し俺らと離れて大人びていないか?」

「柳洞君には誰も言われたくないでしょうね、それは」

「……遠坂、お前は俺に喧嘩を売っているんのか、よければ買うが?」

「あら、私はあなたを褒めたのだけど柳洞君。何か気にさらったかしら?」

 ちなみにこの食事会。一介の会話のように聞こえるがそれは作者の力不足なだけで

周りを説明すればそれこそ全員が全員、ドキドキしているのだ。なんせ学校での虎と龍

と言われるぐらい、遠坂(トラ)と柳洞(リュウ)は仲が悪い。理由は間違いなく生徒

会であるがそれ以上に両者ともに優秀すぎる同族嫌悪があるのだろうと周りは思って

いる。そのおかげで表立ったことがなかったのに、その間にいる神崎忍の度胸は凄まじ

いものと勘違いする者も出てきている。なんせ、さっき会話通り水面下の会話にかかわ

らずのんきに食事をしているのだから。

「……そう思えば神崎よ、少し話を変えるが、おぬし生徒会には興味がないか?」

「生徒会ですか?」

「あら、柳洞君。随分と面白い話ね。まさか、来てからまだ三日もたっていない編入生の

神崎君を生徒会に誘うなんて」

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 凛が捻くれたように言うが実際は棚ボタ状態だ。凛の計画の一緒に放課後を過ごす

方法の簡単な方法の一番が生徒会に入れるなのだから。

「そうか……だが、俺は間違ってはいないと思うぞ、この人選については」

 一成は胸をはっていった。

「あら、久しぶりにあなたと同意見だわ。私も彼ほど生徒会に入れて惜しくない人はい

ないと思うわ。なんせあんな無礼な人に対しても冷静に、だけど強く出れる人なんてわ

たしか、それか貴方ぐらいだものね、柳洞君?」

「……そうか?」

 なぜ、二人とも同じ目的のはずなのにこうも言い争っているのか忍にはわからなった

が、なぜか、それは簡単だ。目的ではなく結果が同じなだけど目的は違うということだ。

「まあ生徒会も悪くは「神崎!!」…え?」

 その声は突然教室に響き渡った。しかも女子生徒の悲鳴も聞こえる……髪飾だった。

廊下に立っている男は、制服はいつものようにきれいではなく、少し荒れている。そし

て一番の違いは持っているものがナイフだ。

「なんなんだよ、お前は……なんなんだよ!?」

 ナイフを持っている髪飾は少し正規ではなかった。何かに憑りつかれているように

目は虚ろで、まるで何かに憑りつかれているようなそんな目をしていた……あれは殺気

258 第拾玖話〝修羅茨道〟

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のある目だとすぐに忍は理解した。

「お、お主何をしておるか!?」

 一成ですら現在の状況がよくわかっていない。まわりなどすぐには理解していない、

そしてこのせいで一泊遅れるのだ、人の動きは。最初は髪飾の突撃だった、目標は完全

に遠坂だった、彼にとって見れば自分を振っておいて現在も笑顔で会話している彼女の

光景は不快でしかなかったのだから。

「うるさい、うるさい!なんだよ、なんだよ」

 すでに彼には正気ではなかった。そのままナイフを持って遠坂凛に突っ込む髪飾、そ

れはまるでパラパラ漫画のように過ぎて行った……遠坂凛は覚悟した、刺される場所で

死ぬかどうかだ、だから彼女はとっさに心臓ではないどこかを刺されるように体を動か

したのだ。だがそれは意味のないことだった。彼女には衝撃などない、あったのは神崎

忍(パートナー)の姿だった。

「くっ」

 ナイフは、忍の手を貫通していた。もちろん魔術で強化してあるので見た目よりかは

全然大丈夫だ。忍のそのさい、この前の傷も手だったなと少し思い出していたのは随分

とした余裕である。

「あ、あ」

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 髪飾は自身の行動とそして人を刺した感覚に見舞われていた。そしてその髪飾はそ

のまま崩れ落ちた。

「お、俺じゃない!俺じゃない」

「し、し、忍?」

 凛も平常ではいられていなかった。理由は忍の手に刺さっているナイフから滴る血、

この前の戦闘では何もけがなくそしてあの喧嘩でさえも軽いかすり傷だった。しかし

今回は完全に手を貫通しているのだ、その銀色の刃が

「だ、だれか!すぐに先生を!」

 一成の声、どよめくクラス。そして最初の悲鳴の騒ぎに気付いた先生がこっちに来て

いる。そんな中の唯一の異質、それは神崎忍……この一人だった。彼は刺されている

が、しかしすでに魔術で止血をしており、さらに言えば魔術とはわからないような血の

出し方をし、現在更なる追撃が髪飾からないかを冷静に見ているのだから。

「僕じゃない、僕じゃない、僕が悪いわけじゃ!」

 ──────────

「このたびの依頼はこれでよろしかったのですか?」

 男は飄々しながら、堅物そうな男にいう。彼は先ほどから学校の近くにいるのにもか

かわらず誰にも視線が合わされていない。まるで存在しないように、いや、正確には存

260 第拾玖話〝修羅茨道〟

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在を消すように世界に〝言った〞ように。

「ああ、これでいい。あいつの行動を少しでも見れればそれでいい、すべてを保管するの

が私の目的であり起源だ」

 堅物そうな男はそういう。

「ですが、こんな地方都市ねぇ〜。まあそれを言うならばあなたもか、あなたが何を期待

したのかは知りませんが、あなたの言葉にはまるで生がない。今回はいったい?」

「ふん、情報収集だ。あの眼使い手の起源を調べに来ただけのことだ」

「……ああ、そういうことですか、なるほど、なるほど。そう思えばあなたがあの事故を

したんですよね〜本当にもの好きな「貴様誰からそれを」おっとこれは失礼、私は仕事

柄、言葉を使うのでね」

「……言霊使いか」

「それでは今回はこれでよろしいでしょうか?」

「ああ、十分だ。やはりあの男では無理だったということだ」

「はて?」

 男は男の言葉に疑問を思った。しかしそれは彼の知るべきことではない、それは仕事

がらとかではなくただ、触れてはいけないりょういきだと言葉から読んだだけなのだ。

「それでは」

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 そして男は消える。残るのは堅物そうな男のみ

「すでにあのマンションは終わった。あとはコーネリウスか、蒼崎はすでに問題がいか

……いや、正確には。まあそれでもいいか、して帰るか」

 彼も消える。二人の会話はまるでなかったように消える。髪飾という青年は惑われ

やすかった、それがあだをなし、そして言葉でロジックを形成された暗示にはまり、そ

してナイフを手にした。簡単な細工であり、魔術ともばれないこと。しかしこの時アラ

ヤは知らない。そういった緻密さが仇となる日が来ることを。

 ───────────

 あのあと、髪飾はつかまり忍は救急車に運ばれた。そして凛はクラスメイトがいる中

忍のことを忍とよび、心配そうにしながらというか泣きながら一緒に救急車に乗って

いった。そして残ったクラスは現在すごく暗かったのだ。

「おい、聞いたかよ髪飾のやつ」

「聞いた聞いた、なんでも遠坂さんを刺そうとしたらしいぜ。自分がちょっとイケメン

だからってな」

「けど神崎君が止めたって、あれすごくなかった」

「あまりおもいだしたくないかな」

「けどさ、遠坂さんのあれって」

262 第拾玖話〝修羅茨道〟

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 クラスの話は現在これだけだ。職員会議に一成は参加している、理由は一番の目撃者

であるからだ。だからこそ真相というか本当のことが少し変な風に現在解釈されてい

るのだ。

「遠坂さんがなきながら神崎君の心配してたね、なんかあれってさ」

「だよね……そうだ、男子!あんたらさ、あのときのことおぼえている?」

「ああ、なにがだよ」

「この前の休日、遠坂さんに彼氏がいたってやつ」

「馬鹿野郎、あらは彼氏なんか……じゃ?」

 そこで男子は気付いた。遠坂のあんな姿を今まで見たことあるだろうか?一人の男

子生徒を完全に心配し自分がどんなキャラでさえもそんなお構いなし、泣いていた。こ

れではまるで

「ま、まさか」

「う、ウソだろ?」

「だけど神崎君てけっこうの美形よね」

「そうね、同い年の男子にはないなにかがあるよね」

「だが、まだ俺は!」

「俺もだ」

263

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「俺もだ!」

「うちのクラスは馬鹿ばっか。普通に考えてさっきの遠坂さんの行動みてそう思えるの

はある意味すごいわよ」

「ねぇ」

「ねぇ」

「はい、みんなせきについて〜」

 担任の声により生徒は全員注目する。もちろん理由は神崎忍がどうなったかだ

「実は、神崎君は……」

 ──────────

 白い景色というのは何も考えさせてくれない場所だと忍は認識していた。なぜそう

なったのかは知らないが、元からこうだったのかは本人すらしらない。しかし

「あまりやはり、ここには居たくないな」

 病院の一室でいうことではない。それも隣に彼女が居てずっと見られているという

のに

「しょうがないでしょ、忍が変な無茶するから。そ、その大丈夫なのよね」

「ああ、すでに止血もすんでいるし。医者に言わせれば運がよく傷が浅かったってこと

だ、だから今日は普通に帰るぞ」

264 第拾玖話〝修羅茨道〟

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「も、もちろんよ……だけど今日は私に全部やさらせてね。忍はリビングでのんびりと

していてくれればいいから、お風呂も私がちゃんと洗ってあげるし、トイレにだった「お

い凛それぐらい自分で」ダメ!」

 その大きな声は部屋中に広がった。

「り、凛?」

「ダメ、ダメ!今日は絶対になにもしないで……お願いだから、私を頼って頼ってよ」

「凛」

「忍、刺された時もずっとあいつのほう見ているの知っているわ……そして追撃に備え

ていたのも。おかしいの、あんで自分の手がそんな風になったのに先に相手を考えるの

よ、なんで」

「……凛だからかな?」

 その答えに凛は抱きしめていた

「なら、私も一緒。忍だから……今日だけは、いえ今日からはお願い、一人にしないで」

 何かのトラウマのような叫びにも似たつぶやき、凛の過去、そして忍の過去、互いが

互い何かが可笑しかったのだ。だからこそ……

265

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第弐拾話〝平和未来〞

  人の噂は七十五日というがそれは物のたとえであって、本質的意味は人が飽きるまで

ということらしい。と、いうわけで昨日の出来事がそう簡単に消えるわけではない。新

聞部の大きな見出し、それは『わが学校の姫遠坂凛、一人の騎士に守られる』これであっ

た。もちろんこれは物のたとえだが実際にその場にいた者には神崎忍という男が遠坂

凛をナイフから守ったのは紛れもない事実だ。そしてそのあとの遠坂凛の今までにな

いような行動、これでほぼ決まりだ。して、こんな風になっているせいでもあり、そし

て学校からの髪飾という問題もあり学校は少し浮いていた。

「……まったく」

 浮いていないのは、ある意味浮いてしまっているからとは誰かがうまいこともいった

ものだ。その一人は柳洞一成だ、彼は現在心配と、そして不安でいっぱいだった。まず

は心配のほうは忍の他ない。

「今日は二人ともまだ来てないわよね」

 誰がそういうがしかし忍の場合は誰もが当然だと思うだろう。なんせ手を貫通され

ているのだから。しかしここにさらに凛が居ないことが問題なのだ、してそんなことを

266 第弐拾話〝平和未来〟

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考える生徒が多くなったところで、真打の登場である。

「あら。皆さんどうかなさいましたか?」

 優雅にいつものどおりの遠坂凛の登場である。ここでならいつもクラスの全員があ

いさつなりなにかがあるはずなのだが、今回のここではそれはない。全員が全員彼女を

見ているだけだった。しかし一成は違った。

「神崎は大丈夫だったようだな」

「ええ、大丈夫そうよ。なんでも運が良かったらしいわ、血の止血もすぐだったようでね

血管がやられて少しは不自由な生活になるそうだえけど、明日にはこれるそうよ。よ

かったわね柳洞君?お友達が元気で」

「……それはそのままお前に返してやろう」

 この時だけクラス全員が一成を尊敬したであろう。なんせ今のクラス全員が聞きた

いことでもあるのだから。

「ええ、本当によかったわ。これで安心して今日は普通にいられるもの、まあ〝忍〞のこ

とだから大丈夫でしょうけど」

「…………は!?」

 今クラスの全員が遠坂凛に注目している。今回は彼女のことだけじゃない、神崎忍の

こと共々だ。

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「き、き、ききき貴様。今、神崎のことを忍と!?」

「あら、親しい間からなんだから当然そう呼ぶのが正当じゃないかしら、柳洞君?」

 ここで柳洞は完全に再起不能になった。して周りからもざわめきが起きたのはもう

すでに凛にとってもわかりきっているのだ。今回のことを踏まえ、もう凛は我慢するこ

とをやめたのだ。

「それでは失礼しますわ」

 いつもの通り丁重な言い方をして席につく凛の顔は、未来赤い悪魔と言われる片鱗

だったのは言うまでもない。

「みなさ〜ん、おはようございます」

 担任の登場であるがしかし、返すのは誰もいない。さっきのあのインパクトにおいて

現状から言えば全員がアップアップ状態であり誰も正気には戻っていない。先生がい

るのにさっきの凛の言葉を考えている生徒しかいないのだ。

「み、みんな〜」

 担任の情けない声によってHRは始まったのである。

 ───────────

 忍は昨日いた病院から退院していた。まあ片方の手に完全な穴が開いているのだか

らしょうがないといえばしょうがない。凛が昨日過保護以上の過保護のおかげで昨日

268 第弐拾話〝平和未来〟

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はほぼ動いていないのだ。そして今日はまあ通院するかどうかだったのだが、傷も深く

ないし安静にしていれば大丈夫であろうという医者の判断で結局すぐに退院となった

のである。

「凛のあれはすごいな」

 昨日の過保護はそれはそれは凄まじいものであったのは言うまでなく、たぶん凛のこ

とだから学校でもなんらかのアクションを出していると忍は思っていた(↑大正解)

「しかし、あれは」

 忍はそこで今回の事件?について少し考察する。髪飾という少年が今回凛を刺そう

としたのは事実だし、これは間違いないであろうという推測。だが忍の中には不信感の

それしかなかったのだ。若干中学生にしてあそこまで過激な行動に出れるものだろう

か、と。中学生で殺人、殺戮をするものは数多くいるがしかしそれは何かが理由で欠落

しているものである。しかし髪飾は忍が来るまでは普通の人間だったはず、なのに急な

あの行動。

「……まさかな」

 忍は何かを思いつつ、教会足を運んだのだ。今日はミサがあったようで教会から人が

ちらほらと出て行っている。

「ほお、ちゃんとした教会だったんだな、ここ」

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「……随分とした言う方ではないか、神崎忍」

 そして構えるように、いや正確には待っていたかのように外にいたここの神父。この

言峰綺礼。

「ああ、それはすまない。教会といえどただの飾りだと思っていたのでね、ここまでちゃ

んと教会をしているのは意外だったので」

「うむ、確かに教会においてもそこまでその中身は重要視しないこともあるしな、しかも

これは聖杯戦争の監督のためだ。して今日はどのような要件だ神崎忍よ」

「凛が同級生にさされそうになった……これを言えば貴方ならわかるな」

「ふむ、すでに確認済みだ。髪飾正太郎、この冬木でもなかなかな名家の出身であり性格

としては少し曲がっていたそうだ」

 性格についてはさすがに綺礼には言われたくないだろうと思う忍だった。

「そして昨日、彼が急な行動にでた。まあそれは幸いにも君によって防がれたわけだが、

それがどうかしたのか?まさか慰謝料でもほしいのか」

「いるかそんなもの。それよりも髪飾についてはそれだけか?」

「それはどういうことだ?」

「やつの精神状態を聞きたいと言っているんだ?」

「ん?それはどういう意味だ神崎?私が調べた中にはそんなことはなかったが、警察の

270 第弐拾話〝平和未来〟

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方も聴取ではそれぐらいだぞ」

「……そうか、ならいいか。いやすまない、気にしないでくれ、それじゃあな言峰」

「……ふむ、そうだ神崎言い忘れていたが。凛の代わりをしてもらったすまないな」

「当然のことだ」

 そして神崎は家に帰ることにした。して教会から帰る際にスーツの人にぶつかって

しまった。

「あ、すいません」

「いえ、こちらこそ」

 忍はその時一瞬、彼の言葉に翻弄されそうになった気がしたが、気のせいだろうと思

いそのまま通り過ぎたが

「なるほど私の暗示は軽くはねのけますか、さすがは彼が気になる存在ですね」

 スーツの男がそんなことをしゃべっていたことを忍は知らない。

 ───────────

 学校では現在髪飾のこととそして凛の彼氏について話が持ちきりだった。してその

両方の渦にいる遠坂なのだが彼女自身は平然な態度をとっていた。

「……マジかよ!あの神崎かよ」

「けどあいつってあの髪飾から遠坂さんを守ったんだろ?」

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「ナイフで襲ってくる相手によ、普通によ」

 これが男子の会話、そして女子の会話は

「うっそ、遠坂さんってあのサッカー部の先輩と付き合っているもんと思っていたのに」

「なに言っているのよそんなの前の前よ、しかも遠坂さんが振っていたし」

「え!?先輩を振ったの、さすがは遠坂さんだわ。けど神崎君って?」

「あ、そうかあんたは知らないのか、実は」

 と、女子では神崎の外見についての感想やらなんやらだ。凛としてみればうれしさと

そしてこれからの準備に頭を働かせていた。まずは自分のこのキャラを崩さずにと考

えたところで忍のキャラが非常に私のキャラと似合っているのに気付いた。

「問題ないじゃない」

「あのう……遠坂さん」

「あら、なにかしら?」

 凛がそんなことを考えているとそこにはクラスメートの女子からだった。

「そ、その神崎君と付き合っているって言ったけど、そ、そのどれぐらいなのかな、その

付き合って」

「ふふ、そうね……まだ一週間ぐらいかしら」

「あ、そうだよね神崎君は海外にいたわけだし「だけど」……え?」

272 第弐拾話〝平和未来〟

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「……ある意味小学生のころから待ったのだからそれを換算すれば十年ぐらいかしら

ね」

 その時の遠坂凛という女の顔は、それこそ艶美でありながらも堂々とした女性の顔を

していた。

「あ、そうなんだ……そうなん…だ」

 そしてクラスメートは引き下がっていく。これでさらに教室は騒がしくなる、しかも

完全に今度は神崎のことについてと焦点が変わる。

「まじかよ、しかも小学生のころってえ?」

「ありえん……だがあの遠坂さんならばそんなことがあっても」

「ねぇ、すごくロマンチックじゃない?」

「だよね、小学生の頃だって。普通それだったらほかの人でも好きになっていたりする

のに」

「しかも神崎君もそこは一緒だったってことでしょう」

「赤い糸って信じたくなったわ」

 そんな中、一人凛に接近する男子がいた。

「ふむ、その話聞かせてほしいものだな遠坂」

「あら、あなたがこんなことに興味がわくだなんて、もしかして明日は雪でもふらせてく

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れるのかしら、柳洞君?」

「神崎との関係について聞きたいのだが、俺は」

「あら、先ほどクラスの皆様に伝えたとおりですがそれだけでは説明不足でしたか柳洞

君?それとももしかして、あなたに文句を言われないといけないとでも」

「いや、そういうことではない。神崎のことだ、あいつはあいつなりの考えでお前と付き

合っているということぐらいな」

「一週間もしないうちに随分と私の忍ことをお知りになったのね」

「あいつは随分と人がいい印象あるからな。まあそこではない、先ほどすぐにでも退院

と言っていたが学校にトラウマが残らないといいと思ってな。今日にでも会いにでも

行こうと思ってな、大丈夫か遠坂」

「あら、本当に柳洞君は律儀ですのね。忍も喜ぶと思うわ、ありがとう。だけど彼は今日

病院で精密検査を受けているから、まあ明日には戻ってくるから大丈夫よ、それに私の

彼氏なんだからあれぐらい大丈夫よ」

「……ふむ、それもそうだなお前などと付き合えるなどいつものミーハーなやつらと

思っていたがあやつのことだ、随分と肝が据わっているようだ。これは失礼」

「……柳洞君って喧嘩を売るのが上手ですのね、買いますわよ?」

 また、教室がピリピリしだしたのだが、しかしやはりここでもこの環境で余裕の食事

274 第弐拾話〝平和未来〟

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をしていた神崎のことを尊敬する連中がふえたのは言うまでもない。

 ──────────

 結局家に帰ってもやることが魔術の研究だった忍。現在はこの前少し魔術加工をし

ていたワルサーPPKを解体して必要なパーツだけを投影できるようにしていた。

「やっぱり、慣れたのとは違う魔術だと通りが悪いか。もう少しぐらいは通しをよくし

プロジェクト

ないといけないな……

 銃とは案外簡単な設計をしているが、その使い込んでいる年月やその意図など様々は

要因をすべて投影するとなるとこれもこれで骨が折れる。忍は銃を一つパーツごとに

生み出して、そしてそれを組み立てて、次に投影するのは

プロジェクト

……さらに強化」

 投影の魔術系統の一つの強化。しかも忍の魔術刻印のほうだ、これをしないと投影し

たものがすぐに散布してしまうからだ。そして投影した代物とは

「……ナイフ一本投影するのはやはり慣れないな、これなら黒鍵のほうがつかいやすい

かもしれないな。ま、これはこれで使いやすいか」

 と、忍はナイフをふるう。その動きはすべてが無駄がないどこかの殺人貴と同じぐら

いだ、かれにとってはナイフはただの護身術なのだが

「起源弾の生成はさすがに一年越しだな……また血がいっぱい必要じゃないか、骨から

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生成させる場合もあるって聞くけどあれはまだ俺にはつらいな、もう少し身長ほしい

し」

 と、そこで忍は一つ思い出すことがあった、それは凛だ。凛は今日一人で学校に行っ

ているがまあ、話題の中心はいつものことだから大丈夫だろうが、髪飾は結局なんだっ

たのかと思う忍であったが

「なるようになるか……だけどさすがに学校に行ってまだ全然なのに結構な事件だな、

死屍者

リビングデット

あの

の事件もそうだけど。さすがは聖杯戦争の地か」

 そして忍は聖杯戦争に関する本をとりだす、今回の戦争で何を召喚するかも重要なこ

とだが何を媒体にするかがもんだいがったがそれは忍には簡単だった。

「ルーンが使えて、この魔眼……いるんだよな、一人」

 それはもちろん予想だけでほんとうは確証はない、だけどたぶん間違いなく償還され

るであろう、光の御子が。

「凛がそろそろ帰ってくるから下にでもいるかな」

 そして忍は下におりるのであった。

276 第弐拾話〝平和未来〟

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第弐拾壱話〝開始直前〞

 「もうここに来て一年か、お前には随分と世話をかけたな忍」

 生徒会長である彼はそう言い壇上の横で待機している。今日行われるのは卒業式で

ある、忍は生徒会にて補佐を受け持ち学園生活を楽しく過ごしていた。

「いえいえ、一成ほど私は手伝いは出来ませんでしたよ」

「何を言うかと思えば、おまえは十分に力となってくれたよ」

「あら、私にはねぎらいの言葉はないのかしら?」

「黙れ遠坂、忍が居なければお前など三年になる前に生徒会から切り離していたぞ」

「あらそれは酷いわ、それにそれだと忍も切り離すことになるわね?忍?」

「凛、あまり一成を苛めないでください。そろそろ式は始まります、もうあそこに立つこ

とはありませんから、最後はお願いしますよ一成」

「ふ、心得ている」

 そう今日、この三人は卒業しそして私立穂群原学園へと入学が決まっていたのだ。卒

業式が始まり生徒会長を務めた一成が答辞を読み進める。中学の卒業式のせいだろう

かそこまで泣くものはいなかったがいないわけでもない。そんな中で忍は髪飾の事件

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を思い出していた。あれ以降凛は忍との関係を隠すことを無くした、もちろん優等生と

いう仮面は両者ともにつけてだ。それでも凛はこの一年で飛躍的進化を遂げていた、そ

れは魔術師としての能力だけではない、女性としての一面である。料理は中華が出来る

ようにそして色気が異常に出るようになった。逆に忍は三年に上がり背が伸び始めた

そして眼鏡で隠していたイケメン要素が浮き彫りになり始め一成とならぶモテる男に

もなっていた。

「卒業式を終わりにします」

 教師の言葉で式は閉幕を迎えた、忍たちは新しい生徒会たちに別れを告げ自身のクラ

スに戻る。クラスでも同じであり意外にもこの三人はあっさり下校となっていた。

「ふむ、忍と出会えたこととこの女豹に当てた学校か……」

「最後まで余計よ柳洞君?」

「さいごまで二人とも変わりませんね……ですが一成、また会いましょう」

「そうだな……ではな忍、それと遠坂。また会おう、入学式で」

 そして一成は笑顔で二人に手を振った。凛はそれを確認するとすぐに忍の腕に抱き

ついた、実際すぐに抱きしめたかったようだがそれは家でするまでの待機となっていた

からだ。

「卒業おめでとう凛」「おめでとう忍」

278 第弐拾壱話〝開始直前〟

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家工房

 2人はそう言いながら自分たちの

へと足を向けるのであった。そしてその夜であ

る、運命の夜となった。

 ──────────

「士郎ちゃん、卒業おめでとう!」「おめでとうございます、士郎さん」

 衛宮家では衛宮家の長男である士郎が中学を卒業したことを祝い〝義妹〞である桜

とそして保護者であり教師として働いている藤村大河が盛大にパーティーを開いたの

である。

「ありがとう、桜に藤ねえ」

「士郎ちゃんもようやく高校生か、早いなぁ。それに士郎ちゃんの学校は私も言ってる

ところだしね、次は桜ちゃん、頑張ってね。まあ士郎ちゃんほど頭悪くないからあまり

心配してないけど」

「うふ、士郎さんだって悪いわけではありませんよおねえさん。ま、士郎さんはどうぞ主

賓ですから、なんでしたらたべさせてあげましょうか?」

「桜、からかわないでくれ。だけど今日の料理は一段と凄いな」

「そりゃそうでしょ。桜ちゃんの力作よ、師匠である士郎も抜かれる日がくるんじゃな

い」

「そうならないように頑張るさ。ではいただきます」

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 そしてこの家でもまた運命の日となるのであった。彼女の手にもあれが出てきてし

まったのだから。

 ────────

 準備は出来たようである、少年は一つの書物を元に、魔法陣ような紋章を地下で自分

の血で再現していた。

「この日、この場で……フハハハハ、フハハハハハハハ」

 少年は笑う、しかしなぜだろうか、彼の顔は半分が笑みでありそして半分が爆笑と笑

う加減が違う。

「汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、影の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る

者──」

 彼は唱える、そして彼の腕に光る紋章と共に……黒い影が出現するのであった。

 ─────────────

「高校生になって既に一年、貴様は相変わらず俺の邪魔ばかり!忍、お前のカノジョを抑

えておけ、摂関する!」

「一成、抑えろ」

「衛宮君の言う通りですよ一成、抑えてください。凛も、少しは」

「あら忍、私はただ新しい予算について会長殿に意見を言っているだけよ、会計として

280 第弐拾壱話〝開始直前〟

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ね。副会長である忍が言わないといけないのよ」

 現在生徒会室で二年生となった四人が話あっていた。生徒会長である柳洞一成、副会

長の神崎忍、会計の遠坂凛、そして雑用としている衛宮士郎。この四人、学園で非常に

有名な布陣でもあり中々に有名でもある。

「一成の案でも十分です。皆さんにもそれで賛成が出ているのでそれでよいと思います

が、衛宮君も申し訳ありませんね。そろそろ仕事が割り振られますので」

「いや、一成にしろ神崎にしろ忙しいんだから、しかないよ。俺は部活辞めて暇だからい

いさ」

「引退にしては早いと思いますけどね」

 衛宮士郎は弓道部に居たがとある理由から妹を残し自身はアルバイトを始めてし

まったので暇な日は本当に放課後空いているようだ。

「衛宮君の弓の腕は美綴さんから聞いていたけど、惜しい存在と言っていたけど」

 遠坂がそんなことを言う、その妖艶な笑顔で少しだけ士郎を惑わすが次の行動でそれ

は真顔に戻る。

「では会長殿、私と忍は帰らせてもらってよろしいかしら?」

 凛は忍の腕をとり、というか抱きついていた。忍も苦笑いをしながら一成にお願いを

したのだ。

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「申し訳ありません、本日は予定が入っているのでそろそろ帰らせていただきます。一

成、衛宮君もうしわけありませんがよろしくお願いします。予算については凛が提示し

た物と、こちらのこれで大丈夫だと思いますので」

「あ、ああそうか。今日は用事が入っていたのか、最近さらに冷え込んでいるからな忍よ

気を付けて帰るのだぞ」

「じゃあな、二人とも」

 そして忍と凛はコートを着て外にでた。季節は冬、名前通り冬木市も寒くなり夜にな

るのも早くなった季節。二人が行った後士郎たちが確認したそれは忍の渡した資料、そ

こには凛のいけんと一成の意見が両方入っている、完璧な感じのものがあったのだ

「ふむ……すまないがこれを先生に」

 一成はそれを見るとそのまま後輩に渡した。そして次に一成は士郎に壊れていたス

トーブの修理を頼んだ。そして生徒会は解散となり残ったのは二人となった。

「はぁ、すまないな衛宮よ」

「構わないよ。それよりも忍はすごいな。あんな状態でもちゃんと書いていたのか……

おれには出来ないな」

「衛宮も十分に凄いと俺は思うがな。すまないなストーブの修理などで時間を使わせて

しまって」

282 第弐拾壱話〝開始直前〟

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「いいよ、どうせ暇なわけだったのは本当だからさ。だけどあの二人が用事ねぇ……」

「なに、あいつらにも何かあるのだろう。最近忍は腕を怪我したようだしな」

「腕?」

「ああ、衛宮は見なかったのは?忍の腕に包帯が巻かれていてな、聞いたところ料理をし

ていた際にやけどしたそうだ」

「油とかか?危ないからな」

 2人はそんな風に忍のけがを考えていた。

  ─────────────

  2人は帰るとすぐに準備にとりかかる、二人には刻印が刻まれていた。そう令呪だ

……聖杯戦争に選ばれた魔導師のみがその刻印をもつことが出来るその呪い。二人と

もそれはしっかりを浮き出ていた。忍は包帯をときその令呪が光る、その輝きは異常な

ほどで心配した凛が綺礼に言ったほどだ。

「とうとう来たのね……この時が」

「ああ、今日だ…英霊召喚においてもっともいい日だ。凛、分かってるな」

「確証となってしまったのだからもう…決まっているわやるわよ忍」

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「もちろんだよ凛。聖杯の大聖杯の……破壊を」

  ここに刃の下に心ある少年と宝石を遣いし少女が、奇跡に楯突く話が始まる。

284 第弐拾壱話〝開始直前〟

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第弐拾弐話〝英霊召喚〞

  士郎は夜道綺麗な月をみていた。その月はいつもよりも綺麗に見えたからだろう、士

郎はストーブを修理終えて少しだけ待つ。それは今現在隣で歩いている桜の部活を待

つためだ。

「ごめんなさい士郎さん、いつも待たせてしまって」

「いや、これは俺が好きでやってることだしそれに最近ここもなんか物騒だって聞くか

らな。女の子一人を歩かせるわけにもいかないよ」

「ありがとうございます士郎さん。そうだ、今日のごはんは中華でしたよね」

「ああ、豆板醤が切れていたのが意外だったけど」

「うふふ、楽しみですね」

「そうだな」

 その二人はほのぼのとしていた。しかしその二人は気付いていないのだ後ろに一人

の青年が観ていたのを。

  ──────

285

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 「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。

 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せ

よ。」

 遠坂邸の地下にある物置場所に書いてある魔方陣が光りだす。彼女の呪文は完璧で

あり魔術回路を完全に安定していた。

閉じよ

閉じよ

閉じよ

閉じよ

閉じよ

。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる

刻を破却する」

 彼女の魔力が高まる最大限の時刻を今日の夜となっていた、それは彼女のパートナー

である忍も同じであった。そして彼女は彼が居ないが始めていた、彼が町の探索に行く

のは最近の冬木の事件のせいと思い先に初めてあたりを引き驚かせようとしていたの

だ。

Anfang

セッ

「────

─────」

「───告げる。」

「────告げる。」

 魔方陣の光が変わりだす今までの淡い青色の光から徐々に光が強くなっていく。

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従う

286 第弐拾弐話〝英霊召喚〟

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ならば応えよ。」

 魔方陣の色は更に変化した今までは違う赤色に。凛はそこでスカートがめくれてし

まうほどの波動を感じた、これは〝当たり〞だと

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

 そして告げた

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」

 ………

「あれ?」

 変化がなかった、凛は焦った。忍に内緒で行ったにもかかわらず何も起きないと言う

最高のボケを

「おかしいわ、さっきの感じは完璧に出来ていたはずなのに……失敗だなんて」

 凛はショックを受ける、そして忍が帰ってきたのだ

「凛、瞬間的に凄い魔力を感じたけど敵襲か?」

「あ、忍〜」

 地下の入り口にいた忍に抱きつく凛。忍は状況を確認してため息をついた

「凛、始めたね勝手に……しかも二時間も前に」

「二時間?」

287

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 凛は時刻を丁度にしていたはずだった、しかし忍は続ける

「凛、この家の時計は全部二時間進んでいるんだよ。最近はテレビの時間と俺の時計し

か見ていなかったから凛は知らなかったのかもしれないけど。というかこれはたぶん

君の父上の試練だと思って俺も何も言わなかったけど……凛……」

「う、え、えっと……」

「だけど魔力の反応はあったから間違いなく成功はしているはずなんだけど……召喚さ

れてないみたいだね。どういうことだろう」

 忍が疑問をもちながらも凛の手を取り

「仕方ないよ凛。少し考えようか、丁度時間としてはディナーだから」

「あ、うん・・・ごめん忍」

「はいはい、さてはてなんで出てこなかったんだ?」

 2人はそしてリビングに戻るのであったがその時だった。リビングから正しく向か

おうとした場所から最大の音が響いたのだ

「「は?」」

 2人して同じ感じだったがすぐに行動を移す、敵襲とは思えないが忍は銃を構えた。

そしてリビングはめちゃくちゃになっていたのだ。

「これは」「敵襲?」

288 第弐拾弐話〝英霊召喚〟

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「敵襲とはひどい良いようだな……君が、いや正確にはどっちだ?まさか君らがマス

ターか」

 その男は赤い服装をしていて白髪、ふてぶてしいほどの態度。しかしながらも忍は気

付いたのだ。彼こそが英霊だ、そう、英霊とは古来に生きていたとされる英雄の魂とそ

の身体を一時的に現界させるものである。更に凛は気付いたのだ……外れだと

「…私がマスターよ。貴方英霊ね」

「ふむ、君がか。随分と可愛らしいマスターか、だが本当に君がマスターなのか、どうも

ふがいないと言うか、こう言った召喚ということはまともな召喚ではなかったようだ。

マスターとしては二流ということか」

「……こ、この!」

 凛は徐に腕を出す、それは令呪のある場所だ。忍はため息をつきそして男は焦りだし

た、そう令呪とはこの聖杯戦争においてマスターである魔術師、そしてサーヴァントで

ある英霊を繋げるパス。そして絶大な力を持つ英霊を言う事を着させるべく制約とい

う意味でもある、しかし条件がありそれぐらいの力……三回しか使用出来ないのだ。

「ま、待て君。令呪はどれぐらい大事か分かっているのか!隣の君も止めるんだ!君な

らわかるはずだ、令呪の」

「ま、運のつきってね」

289

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「私の言う事を聞きなさい!」

 令呪が光そして令呪の一部分が消える。そのあとごはんよりも先にかたづけとなっ

たのは言うまでもない。そして掃除がいろいろと終わり、修復の魔術も凛が頑張り終

わった。現在ふてぶてしい態度を改めて椅子に座っているサーヴァント、そしてそれを

対面に不機嫌そうな凛、そしてエプロン姿の忍がいた。

「今日はパスタにしといた……俺の波長が合う時間はあと二時間後だから余裕だけど。

まあゆっくり食べよう。英霊はいらないよな」

「すまないな…それで先ほど掃除をしながら色々と確認をしていったが君たち、面白い

考えだな。まさか求めるべき聖杯を破壊するために参加するとは……ふむ、しかし君た

ちは分かっているのか?我々英霊が何を目的としてこの聖杯戦争に臨んでいるのか」

「ええ、分かっているわ肉体でしょ……だけど残念ね、もしそうだとしてもこっちの命に

は従ってもらうわ」

「……まったく君たちは規格外すぎるか。大体いきなり召喚して魔術師が二人もいてし

かも恋人とは、規格外と言うか馬鹿と言うか」

「……貴方、喧嘩売ってるならもう一個「凛、やめとけ」…はい」

「まったく、私もすごいマスターがついたようだ。改めて私は弓兵クラス、アーチャーと

呼んでくれ。ちなみにだが……記憶が欠如しているこれは多分だが君の召喚のせいだ

290 第弐拾弐話〝英霊召喚〟

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ろうな」

「真名が分からないか……凛、これは君も悪いからね、反省しておいて」

「はい、忍」

 忍に怒られるのが一番嫌いな凛は黙々とパスタを頬張るしかなかった。

「なるほど、改めてよろしく頼むぞマスター。そして君は」

「神崎忍だ、よろしく頼むアーチャー」

「そうだな、これからが本番だぞマスターそしてシノブ。それにマスター、先ほど言った

ことは訂正させてもらおう」

「訂正」

「令呪は私達英霊において可能な限り、またはその思いが大きいうえで魔法に近いもの

がある。特に瞬時のことには強い、しかしならが永続にちかい曖昧なものは弱いはず。

しかし今現在私はマスターの言葉に対して少なからず強制力を感じる。これも一種の

魔術師のスキルだろう」

「ふん、分かればいいのよ」

「凛、調子に乗らない。だけどアーチャーがここまで話を理解してくれて助かったよ」

「うん?ああ、聖杯の破壊についてか。私としてはそこまで現界に興味がないと言うの

が本当の所なのかもしれないな、記憶がないとはいえそこまで今の時代に縛られていな

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いようだ。」

 アーチャーはそういうと霊体となり消える。時間としては忍の魔力がもっともよい

時となった。

「では、始めるか。凛、なんでそんなに見ているんだ?」

「一応よ、一応」

 本当は普段から見ることがない忍のかっこいい姿を見たかっただけだが。

「……行くぞ、告げろ。素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバイン

オーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循

環せよ。」

 凛の時と同じように魔方陣が光る、それはすぐに赤く変わり凛よりも大きな魔力量と

なった。

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従う

ならば応えよ……」

「呪いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」

 忍の眼が直死の魔眼となった

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!」

「きゃっ」

292 第弐拾弐話〝英霊召喚〟

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 凛の小さな悲鳴と共にそれを舞い降りた。

 青い服に身を包みそれは髪までもが同じ色。装備としては少し軽めのようで鋼の部

分は少ない。しかし特徴として朱い槍を持っていた。

「この俺を呼んだのはお前か……マスター」

「そうだ……お前の呪い朱槍を望んだ……マスターだ!」

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第弐拾参話〝英霊協定〞

  英雄とは一握りのモノがつかみあげた奇跡と代償の結果である。故に英雄は人なら

んらずモノと課すか、生きて伝説となり消えるかのみである。故に聖杯戦争は奇跡の上

で成り立つ奇跡を作り出すものである。忍は自身のサーヴァントとなったランサーに

命令をだした、それは町の探索を命じたのだ。

「これで少しは分かることもあるだろう」

「まさか、忍が分かって英霊を召喚するだなんて。私は触媒がなかったから完全にラン

ダムになっていたけど……忍、あなたの触媒はまさか」

「ああ、この眼そのものが媒体だ……元来これもこういった類に近いからな。だけどま

さか本当に出てくるとは。だけどこれで二つサーヴァントは埋った」

「ええ、七人の内二人が揃ったわ。アーチャーとランサー、私たちはここから始まるの

ね」

「ああ、そうだな。聖杯の完成はどうやって行われるか問題だがあの神父が形が有るも

のとして今現在定義している以上まずはそれを確認するべきだ」

「うん、了解!それじゃあ忍……いいわよね、いいわよね」

294 第弐拾参話〝英霊協定〟

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 凛の顔が変わる、何かにいや正確には息が上がっている。それにはサーヴァントと

なったアーチャーも驚いていた

「ま、マスター一体どうしたのだ」

「…えっとアーチャー……俺とこいつが恋仲というのは」

「それはすぐにでもわかる話だ、だからなんだという、これは異常だぞ」

「いや、そうなんだけど。多分」

「さあ忍、私たちの性配戦争を始めましょうか!」

「魔力を高めるってことで禁欲させていたのだ……うん」

「私は霊体で外に居よう……シノブ、君が居てくれて私は心労が減りそうだ。ではな、二

人とも」

 アーチャーは上に上がりため息をついた。一人屋根の上で冬木の夜景を見る

「まったく、面白い時に召喚されてしまったようだ。マスター、そして…やはり変わらぬ

ということですか、貴方の眼はいつもああだった。そうだろう師匠」

 ───────────────────

「本日付けで聖堂教会より第五次聖杯戦争に参加させていただきます。ジャン・T・バー

ストと申します。貴方がこの土地の聖堂教会の人、言峰綺礼さんでお間違いないでしょ

うか?」

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鋼メイル

「いかにも。貴殿があの有名な

か、ようこそこの冬木に」

 教会は聖杯戦争の選定役としているが、今回は前の惨事があるせいでもあり聖堂教会

からもそもそも完成していない聖杯が本当に神秘なのかの調査をもう一人のマスター

とし派遣したのである。

「立ち話もなんです。それにどこに目があるか分かりませんからね」

「そうですか、ではこちらへ……それとその後ろに連れているのが」

「ええ、私のサーヴァントです」

 綺礼とジャン、そしてフードをしている人物が建物内にはいるのであった。

 ────────────

 その男たちの前には無残にも肉片とかした人だった何かが残っていた。男は部屋の

奥で座りそしてもがいていた

「これで彼是、8人目か……マスター魔力の方は」

「うるさい!全然足りるか、はやく僕にもっと多くの力を持ってこい、こんな下等は奴ら

じゃなくて」

「それでは私だけでも認知されてしまいます、既に何人のマスター、並びにサーヴァント

が出ているか分からない中ではさすがに」

「なら、学校とかそういう所にしろ。ああいう所ならば人なんてあふれかえっている、分

296 第弐拾参話〝英霊協定〟

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かってるなアサシン」

「マスターのままに」

 黒いフードをかぶっていた者はうっすらと消えた。男は何かの本を握りしめならが

呟いた

「この僕に逆らうものは、みんな……」

 直後男の口調、雰囲気そのすべてに変化が起きた。まるで仮面をかぶっていたピエロ

が舞台裏に戻りつかれたというように。

「まったく。しかし魔力の集め方はこれでいいだろう。いつ教会のモノとあの遠坂が動

くか分からない今は。しかし……聖杯の欠片を埋められずにそれを媒体とするとはワ

シも少しばかり無茶をしたものよ……しかしマキリの宿願此度で終わらせるがのう!」

「……はっ、くっそ。なんだ一瞬なにか。まあいい今はアサシンで力を溜めて一気に終

わらせてやる」

 ────────────

 聖杯戦争が開幕を迎えた朝にしては穏やかな朝をしていた。忍と凛が関係をもった

のは今の学園に入る前の日に盛大に凛が薬を盛ったにも関わらず自分で食べたのが原

因という最悪の初夜になりそうだったが忍が一撃で沈め説教となり、その次の日に初夜

となった。それから凛は更に甘える限度がなくなり人がいない時はそれこそずっと一

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緒にいる。そして寝るときが問題で、限度ないせいか風呂と寝室は一緒になってしまっ

た。簡単に言えば忍の部屋で過ごしているのだ。

「ふむ、始まったにも関わらず随分と穏やかだな。ランサー」

 居ないはずの場所からランサーが姿を出す。凛は半裸の状態だが毛布がかかってい

るので見えていない。というか、忍が見せたくないようだ

「ああ、おはようさんマスター。調べはしておいたぜ、それとよ一応俺たちはサーヴァン

トだけどよ…料理を作らせるのはどうかと思うぞ俺も同情した」

 ランサーが言う理由は、アーチャーだろう。忍は苦笑いをして

「俺に言うな。だが分かったあと数分したらこの姫さんが起きるからそれまではお前は

警備を、それとアーチャーに俺はコーヒー、凛は牛乳と言っておけ」

「了解したぜ、マスター。おい、弓兵オーダーだぞ」

 廊下に消えるランサーの声にこたえるようにアーチャーの声も聞こえた

「何、すでに今日は和食にしてしまったぞ!」

 そんな会話を聞きながら忍は凛を抱きよせて少しだけ睡眠をとるのであった。

 ──────────

「コーヒーと牛乳のオーダーだっての。てか、お前その前掛けどうしたんだよ」

 ランサーが下のキッチンを見るとアーチャーがエプロンをしていた。完全に朝食つ

298 第弐拾参話〝英霊協定〟

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くりに励んでいた。

「ふむ、おいてあったのでな。それよりも穏やかだな」

「朝食作ってるからな、サーヴァントとしてどうかと思うが……お前から見て俺のマス

ターをどうみる?俺はどうみてもあれは化物にしか見えないぜ」

「ふむ、確かに私のマスターは魔術師としての技量はあるが心がなっていないようには

見えるが……確かにシノブの態度には驚くことが多い、それにお前なら分かったのだろ

う」

「ああ、この館自体が要塞みたいになってるぜ。驚いて俺も冷や汗かいたぜ、だけどもう

一つ」

「シノブの眼か」

「お前でも分かったか。ま、俺も召喚された瞬間が一番驚いたけどなあれは俺らと同じ

ようなもんだよな」

「奇跡か、確かにな。だが今回の聖杯戦争のこの状況も奇跡のような気がするがねラン

サー。なぜ君は現界に興味がないといい協力している?」

「お前とて同じだろうが。まあ俺としては単純さ、あいつは面白そうだし。それによ俺

には別に第二の生に興味はないんだよ弓兵」

「ふ、私と同じか。改めてよろしく頼むぞランサー」

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「は、てめぇがあの二人を裏切らないかぎりなアーチャー。それよりもあいつら本当に

夜通しだけど、マスター大丈夫なのか?さっき起きていたが疲れていそうだな」

「男だからな、頑張ったんだろうな」

 ─────────────

 下に最初に降りたのは凛のほうであった。用意されていた牛乳を一気に飲みほしそ

して起きたようだ。

「忍はまだ寝ているわ。それでランサーどうだったかしら……問題は」

「とくにはというか、まあ会ったというかまあそれはマスターが起きてからでいいだろ

う。お前らあれだろう学生とかいうやつだろう、そこにいるアーチャーから色々と聞い

た」

「そう、ならいいわ。それとアーチャー、ご苦労さま」

「この程度のこと造作もない。では我々にようがあったら呼んでくれ」

「ま、嬢ちゃん後でマスターが再度起きたら呼んでくれ」

「え、ええ」

 ランサーたちはそして消えた。出来ている料理を見ながら凛は言った

「アーチャーじゃなくてあいつバトラーじゃないかしら……」

300 第弐拾参話〝英霊協定〟

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第弐拾肆話〝学変異園〞

  忍が再度起きると既に朝食の前で待つ凛がいた。

「おはよう凛、先に食べていて良かったのに」

「あら、忍は私と一緒に食べたくないのかしら?」

「ああ、ごめんごめん。それよりも凄いなこの料理は、どうみても俺たちじゃあ作れない

位うまくないか」

「そうよね。あいつアーチャーじゃなくてバトラーじゃないのかしら」

「さすがにアーチャーが可愛そうだと思うぞ凛。んじゃランサーの報告を受けるとする

か」

「そうね」

 2人が朝食を食べながらランサーが霊体から姿を現す。

「マスターおはようさん、んじゃ報告させてもらうぞ。まずだがマスターの読みは当た

りだったぜ、今ここで起きている誘拐事件は後ほど魔力の跡が残っていた。だけどどう

もきな臭いぜ、あれは」

「どういうことだ、ランサー」

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「考えてみろよマスター、俺らのようなサーヴァントを使うにも関わらずあった魔力の

形跡は一つだ」

「サーヴァントだけを向かわせている、ということではないのか?」

「確かにそうとも言えるが、なら相手のサーヴァントはよほど隠れるのが上手いってこ

とになるぜ。俺は堂々とその場に行けたが」

「魔力を隠すにうまく挙動を伏せれるか。確認だが魔術師のような奴は」

「俺から見えたのはゼロだ。ただあの上の教会か、あそこはきな臭い」

「ランサー、あそこは聖堂教会だ。あそこにいる言峰神父は聖杯の選定役を担っている。

たぶんだが実力はそれこそお前らを少しは相手できるというぐらいだろう。他は」

「他はねぇよ」

「御苦労さん、ランサー」

 忍はランサーの報告を受け凛と作戦会議に移行した

「凛、ランサーの言うとおりならば相手は相当のバカだ」

「バカ?随分と大きく出たわね忍、だけど相手は現在八人も誘拐しているのよ」

「だからだよ凛。相手は完璧に痕跡を残せないのにも関わらずその行動を続けている、

まるで焦っているみたいだ。サーヴァントを強化する上で必要な物はそれ相応の魔力

とそして人の魂だ」

302 第弐拾肆話〝学変異園〟

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「相手は魔力不足ってこと?」

「それ相応のサーヴァントを引いたならそうだろうけど、凛確認するけど他の元来、冬木

に住んでいる魔術師は公式には居ないんだよね」

「ええ、そうよ。いるのは綺礼と私だけ」

 忍は味噌汁を飲みほし御馳走様をした

「なら相手は魔力不足が濃厚のようだな……凛、時計が壊れているからいうけどあと1

5分で本来出る時間だからね」

「そ、それを先に行ってよ忍!」

 凛は慌てて準備をしだすのであった。忍は準備をする際に制服に改造したポケット

の中に拳銃を忍ばせるのであった。

 ──────────

 衛宮桜は本名とは言えない。彼女の本名は三度変わっている、本来の本名からある家

の本名へそして今現在の衛宮の性を名乗るようになった。桜はとある人物に救われた

故にそうなった。その人は拳銃と黒鍵を持ちおぞましい存在と共倒れした、桜の記憶に

はすでにそれは消されてしまった。しかし彼女の中で強く残っている記憶がある、それ

はおじさんの言葉である。

『いいかい桜ちゃん、もし士郎が命の危機となったら土蔵に行きなさい。君ならば出来

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るだろうね……奇跡を』

 桜にとって幼い記憶、しかしそれだけは忘れることが出来なかった。そんなことを思

い土蔵の前に立つ桜、今日も起こさなければならない……ガラクタを修理する士郎を

「士郎さん、起きてください」

「あ、ああ桜か……またやっちまったみたいだな。すまない」

「もう、士郎さんは何かに集中するといつもこうなんですから。朝食は出来ていますの

でシャワーを浴びてください」

「ああ、分かったよ桜」

 士郎は頭をかきながら家に戻る、その姿を桜は見ながらつぶやいた

「おじ様、この幸せが続けられるなら私は……」

 桜の言葉の意思が強固だということを、この後一週間後に目の当たりにすることとな

るのであった。

 ───────

 忍と凛が登校する際はなぜか周りは離れていた。それもそうだ、学園で一二を争う二

人がバカップルであると言うだけで十分に話題となっているのだ。ちなみに忍はク

ローバーのネックレスをそして同じ形であるが凛は自ら変化させて指輪にして嵌めて

いた。もちろん左の薬指である、凛曰く婚約指輪ということらしい。

304 第弐拾肆話〝学変異園〟

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「忍、今日の夕食はどうしましょうか?」

「そうですね、凛は作るのであればどれもおいしいのですが。そうですね久しぶりに私

がつくりましょうか?」

 ちなみに二人はバカップルであること以外はほぼ優等生を演じている、忍など優雅と

言う言葉が似合うほどの立ち振る舞いである。

「それはいいわね、では今日は忍にお願いしましょう」

 二人が歩いていると一人の弓道部部長が体当たりを忍かました。

「おはっようさん!」

 美綴綾子である。忍はそのタックルを華麗に躱しそのまま挨拶をする

「これは美綴さん、おはようございます。いつもと変わらず素晴らしい運動神経ですね」

「あらおはよう美綴さん。私の夫になにかご用でしょうか?(何朝から忍に触れようと

してるのよ!!)」

「おお、ご両人おはようさんっと。相変わらず神崎の運動神経には恐れいるぜ、それと遠

坂本心が見え見えだぞ」

「本心とはどういうことでしょうか美綴さん。それよりも今日は部活動の練習はないの

ですか?」

「んや。もう二年の終わりだからね私は引退を兼ねているから指導ってほうに移っち

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まったよ。衛宮もいやじゃあ桜だけだしな」

「衛宮君の妹さんでしたっけ?」

 凛と桜は面識があるのだが、どこか二人とも何か引っかかるようなところがあり凛は

その感覚が嫌いなので避けていた。故に凛は遠慮がちに言った

「ああ。まああいつは衛宮の妹ってよりも妻に近いけどな……」

「お二人、そろそろ急ぎましょう。本日はすこし遅れていますので」

 忍はそういい凛の腕を取る、美綴はやれやれと言わないばかり走り出す

「んじゃお二人さん、遅刻しないようにねぇ〜」

 綾子が手を振って走り出した。忍は時計を見るとそこまで早く行く必要もないよう

な時間だが綾子なりの気遣いであろうと思っていた。が、実際は違ったのであるそれは

すぐに訪れた

「うむ、おはよう忍…そして遠坂」

「おはようございます、一成」

「あらそしてなんかつけなくてもいいと思うけど、生徒会長殿?」

 一成であった。綾子は後ろで一成が見えたから早めに切り上げることにしたようだ。

ちなみにこの空間にいて無事なのは忍とそして士郎だけである。

「忍、それで例の予算昨日受理を受けて本格的に動けそうだ、それと衛宮がどうにかあの

306 第弐拾肆話〝学変異園〟

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ストーブを直してくれたよ。茶道部もこれで問題ないと言っていた」

「そうですか、では今日より一週間ほどは」

「そうだな生徒会は緊急集まり以外は特になしだ。だが最近冬木にある噂を知っている

か?」

「噂ですか、一成からそのような事を聞かれるとは思いませんでしたよ。どのようなも

のですか?」

「この冬木に殺人鬼が現れたというな。公式ではないが何人かのものが消え続けている

らしい。などという噂があるらしくてな」

「面白い噂ね柳洞君。だけどそんな噂をなぜ貴方のようなかたが?」

 凛は一瞬だけ忍を見る、忍も少しだけ合図を出す。それは忍が感づいたことがあるか

ら任せろと言う物だ。

「何、参拝客からそんなことを聞いたのでな。まったく、この冬木にもそんなものを広め

る奴がいるとは」

「そう言った情報は広がれば早いものですから。それよりもどういった方がそんなこと

を?学園では聞きませんが」

「うむ、俺もそれが気になったのだ。噂をしているのが大学生ぐらいの男二人でだな、噂

とは何か離れているような気がしていて覚えていたのだ。」

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「確かにそうですね、ですが噂ですからね。おっと、そろそろ行きますか私たちも」

 忍はそういい歩き出す、そして忍と凛は同時に顔を見合わせた。その行動に近くにい

た一成が疑問に思ったが二人の恋仲としての能力は魔法を使っているようなものがあ

ると言う認識故にスルーした。しかし二人は二人ともに冷や汗をかいていたのだ。

「一成、申し訳ありません。少々お先に」

「ん、あ、ああではな忍よ。遅刻はしないだろうが気を付けてな」

 一成は忍がトイレだと思ったのだろう。そのまま忍は学園内の人気のない場所に行

きすぐに眼鏡を外した。

「な……これは!?」

 そして忍は驚愕するのであった

308 第弐拾肆話〝学変異園〟

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第弐拾伍話〝陣刹撃園〞

  忍は学園の異変に気づき人のいない場所で魔眼を使う。そしたらどうだろうか、普段

ならば見えない死が見えていたのだ。巧妙に魔力を隠しながらも魔術の形跡である陣

が張られていたのだ。凛と忍は校門、すなわち学園が直視で確認できた時に異変に気付

いたのだ。ちなみにだが凛と忍は学園内で魔力を行使する魔術を極端に行わなかった。

忍が凛に叩き込んだ気配を消す訓練と同時に魔力を出さないと言う物だ。元来魔術師

は魔力を行使し魔術を発動した瞬間のみが魔力の気配を察知できるがそれでも凛は宝

石を常備しているがゆえに自分に近い魔力を少しだけ漏れてしまう。それを忍が抑え

るように教え込んだのだ。

「魔法陣が学園全体に広がっている視ていいのだろうけど……誰が。俺ら以外に魔力の

反応はなかったはずだ……この規模相当の」

 忍が思考を巡らせているが時間がなく仕方なく警戒心をいつもよりも強め教室に戻

るのであった。

「お、神崎じゃん。おはようっさん、今日遠坂と一緒に教室に入ってこないから喧嘩した

のかと思ったぜ」

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 そういうのは蒔寺楓だった。彼女はなぜかことあることに遠坂につっかかる、いわゆ

る仲良くなりたいけどどうしたらいいか分からない、かわいらしい子なのだ。

「おはようございます蒔寺さん。答えはノーですよ。私の方が用事がありまして凛には

先にいってもらって行ったまでです。それよりも蒔寺さんも良い人は見つけになりま

したか?」

「く、それを聞くか神崎」

「神崎の方が相変わらず口では上だな。おはよう神崎」

「はい、おはようございます氷室さん」

 忍は凛のほうを見ると三枝由紀香と談笑していた。しかし三枝の方は緊張している

ようではあった。この三人、蒔寺、氷室、三枝この三人は陸上部であり仲良し。さらに

言えば凛、忍に簡単にあいさつをする人たちでもあった。

「ちっ。お前も遠坂と同じように相変わらず悠々としやがって」

「それが神崎と遠坂嬢の魅力というものだ楓。神崎、へんな質問をするようで悪いが生

徒会長を見なかったか?」

「一成ですか?ならば朝お会いしましたがまだこちらに来ていないのですか」

「ふむ、そうか。まああいつもあいつで忙しいからな何部活のことがあったのだが……

副会長、予算は終わってしまったか?」

310 第弐拾伍話〝陣刹撃園〟

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「ええ既に先生の方にも回ってしまいましたが、何が問題でも?」

「少しな、こちらの発注ミスで頼むべきものを忘れていたのだ。後日正式に生徒会に依

頼することになるともうが」

「そうですかそれはこちらと会長で確認しましょう。凛、少々よろしいでしょうか?」

 忍は凛を呼ぶ、凛は嬉しそうにそれに応え由紀香に優しく別れを告げた。

「なにかしら忍、あらおはようございます蒔寺さん、氷室さん」

「さっき挨拶をしたよ私は」

「ふむ、おはよう遠坂嬢。で、すまないのだが」

 そして朝礼の時間と同時ぐらいに先生が入ってくるのであった。教師の名前は葛木

宗一郎、あまり表情が豊かではないが歴史の教師でありさらに現在生徒会の顧問も務め

ている。一成からの信頼も厚いが忍は警戒をしている、忍だけが気づいている。それは

彼もまた何かを壊すことに長けている人種ということに。

「皆、おはよう。連絡事項は特になしだ、それと生徒会長と副会長はこの後職員室に来る

ように」

 淡々と話す葛木。その後二人は職員室に向かいそして先生に言われた

「すまないが少し待っていてくれ、一成、神崎」

 葛木宗一郎は一成の実家、柳洞寺に借り暮らしをしているせいか一成と下の名前で呼

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ぶので一時期ある種の女子生徒で話題ともなった。

「いいぞ」

 二人はその声にこたえ職員室に入るとそこでは何人かの職員が渋い顔をしていたの

だ。校長ですらもその顔である

「どうかしたのですか?」

 一成がその空気に異常を感じ声をかける。そして重い空気の中校長は口を開いた

「……じつわだな、前に行われたクリスマス会を覚えているだろうか」

「え、ええそれはもう。私たちの企画でしたからね、予算は問題なく部活動の方からでし

たのでそこまで先生方にはお手を煩わせてはいないはずですが」

「そこの点は問題はない、ただ……卒業式に問題があるのだ」

「卒業式?」

 一成は分からなかったが、忍は感づいたようで

「なるほど、卒業式において豪華のモノがあると先輩方三年生は期待していると。もち

ろんこちらは予算がもう尽きるということですね。それを危惧していると」

「う……」

 校長が唸ってしまった。事実のようだ、忍はヤレヤレという感じで提案をあげた

「ではここで私が提案をさせていただきます。卒業式の予算は確かもとより学校のモノ

312 第弐拾伍話〝陣刹撃園〟

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でしたね……これはカンパしかないかと」

「カンパ?」

「はい、卒業生のためというお題目で一人10円を募集するのです。さすがに学園なの

ですから強制はできませんがこれぐらいならば、後は後輩たちでセルフで盛大なものに

してみましょうではありませんか」

「なるほど忍の意見、参考にしましょう」

「…すまないな、お金のことになると我々も痛いのだ」

 沈んでいた理由がお金とは世知辛い世の中である。一成と忍は生徒会の集まりが増

えたことを少しだけ気落ちしたが仕方ないと言う事で二人は教室に戻るのであった。

 ───────────────────────────

 士郎は教室に入るなりいつものように友人との会話を楽しんでいた。奥に座る生徒

にも声をかける

「慎二、おはようさん」

「あ、あ、ああ衛宮か……おはよう」

 そう答えるのは間桐慎二。間桐慎二は一言いえばクラスでは浮いている、虐められて

いるわけではなくどうも彼は静かに独りでいる事が多い。それによりクラスからもあ

まり挨拶もないし、だれも気にしないのだ。唯一衛宮だけがあいさつをする程度、それ

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は衛宮にとっては普通の好意であるが慎二にはその行為すらもウザいと思っているの

であった。

「衛宮殿〜」

 衛宮を呼ぶ声は後藤劾以、彼もまた衛宮の友人でありそしてちょくちょく口調が変わ

る影響を受けやすい生徒である。今回は時代劇のようだ

「衛宮殿、協力を願いたいのだが?」

「どうかしたのか後藤」

「宿題を手伝ってほしいのだ〜」

「……なんでさ」

 士郎はそして輪の中に入っていく。それを凝視している慎二の顔は何時もよりもな

ぜか明るかった。

 ──────────────

 凛と忍のお昼は二人で優雅に食事とは本日は行かなかった。二人は屋上にいくとそ

のまま今回の魔法陣についての会議となった。

「忍、どうだった?」

「魔法陣自体は全体を包んでいると言うことで間違いないと思う。だけど魔術師の感じ

はどこにも感じなかったが。魔術行使をしないで発動させるだなんて」

314 第弐拾伍話〝陣刹撃園〟

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『それが相手の固有能力ではないのか?』

 二人の話に入ってきたのは霊体のアーチャーだった。

「それは低いと思うぞ、それならばもう少し強いはずだ。俺が見る限り魔法陣自体は弱

いものだった」

『ふむ、ではなぜそれを破壊しない。ここまで大規模では被害は甚大だぞ、それともあえ

て発動させる気か?』

「忍、それはダメよここには大勢の「分かってるよ凛」ならいいけど」

「アーチャーも人が悪い、君ならばもっと優雅に出来るだろうけどな」

『過信はよくないぞシノブ。しかしなるほどそういう事ならば私も協力をしよう』

「…………忍、後で説明お願い」

 凛が涙目で忍をにらみながら弁当を食べ始めるのであった

「もちろん、ま今は大丈夫だろうからご飯食べようか」

「食べあいっこだからね、忍」

 二人はそんなことを言いながら平和な時間を過ごすのであった。

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第弐拾碌話〝道化犯人〞

  二日前から生徒会は卒業生におけるカンパの準備に追われていた。そんな中忍と凛

は警戒を進めていたのだ、理由は霊脈によるものだ。

「では、本日はこれぐらいでよろしいでしょうか生徒会長」

「ああ、では各位準備を頼む。それとこれは先輩方には極秘で進める、全員いいな。では

副会長、それと会計以外は解散だ」

 残った凛、忍、一成はその後の微調整を行い一成は先に帰って行った。学園に残って

いるのは後は部活をしている生徒だけと思われていた。

「結局まだ動きは無いのね」

「仕方ないさ、相手も慎重に動いているみたいだし。こちらも……凛」

「ええ、分かってるわ」

 忍の顔が変わる、それは魔術の発動を感じたからだ。それと同時だろうか甘いにおい

が立ち込めてきた。

「対魔力があれば大丈夫程度な魔術?」

 凛がそういいながら持っていた宝石を握りしめる、既にアーチャーが実体をとり警戒

316 第弐拾碌話〝道化犯人〟

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をしている。忍は逆探知をしてどこに術者がいるかをサーチを掛けた

「……見つけた」

 忍が静かに言うとそのままナイフを床に刺した。それと同時に魔法陣が消えた、何人

かの生徒は異変に気付いたようで少しだけ騒ぎ出していたがすぐになくなりそれは鎮

圧となった。

「まさか放課後に仕掛けるだなんて、人が多い午前中だと思っていたけど」

「相手もまだそこまでは出来ないみたいだ、凛。こいつが犯人のようだ」

 忍はそういうと使い魔の目と通した映像を浮かびだした、独りの男子生徒が走ってい

る。凛はそれを見ると誰だかすぐに分かった。間桐慎二、彼は三度ほど凛に告白をして

完膚なきまでに振った相手だった。

「間桐慎二……まさか彼が魔術師とは」

「どうする、あいつ素人のようだな……凛、少しだけ泳がせようとはもう思わない。あい

つの家に襲撃をかける準備だけしておいてくれないか?」

「大丈夫なの?忍、あまり早急なのは」

「マスター、シノブが気を付けているのはそこではない。あいては手段を選んでいる暇

ない三流だからこそ早急におえようとしているのだ。それに考えてみてくれ、すでにこ

こに二人にさらに一人マスターが見つかれば残りは半数強となる。ならばこそすぐに

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行動を起こしたいのだとシノブは考えているようだ」

 アーチャーの言葉に凛は目が点となってしまった。忍はそれに笑う

「凛はまだ経験が浅いからね、こういう思考は徐々に慣れて行ってほしいかな。アー

チャー分かってるなら次に行動を起こすことも分かってるよね」

「シノブ、確認するが……君は本当にマスターと同い年か?」

「当たり前だろ、なあ凛?」

「私も少しだけ心配になったけど、まずは一安心かしら。忍、今日から一緒に腕を組んで

帰るわよ、どうどうと!」

 凛の考えは今後は帰りをいつも一緒のほうがお互いの警護も出来る上にもし他のマ

スターに襲われても対処が簡単であるから。と、言うのが建前で実際は凛が手を組んで

帰りたいだけのようであった。

「まあ、それじゃあ帰るか凛」

「ええ、忍」

 2人は学外に出るのであった。そして来る最初の決戦に備えるのであった。

 ─────────────

「確認できたマスターは二人。これをどう見る、マスター?」

「まさか学園で反応が二種類。しかも片方は盛大にもう片方は普通の私なら判別出来な

318 第弐拾碌話〝道化犯人〟

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いか……今は動かないほうがいいと思う、キャスター」

「ほう、理由は?」

「単純に相手が片づけるだろう。こちらが出てきても相手は慣れている人間だったら困

る。それに院の資料では〝鴉〞がここに住み着いていると聞く。動くならばそれを確

認してからだ」

「そこまでマスターが気にすることか?私が言うのはなんだがマスターは稀代の術師

だ」

「気にしているのではない危惧しているのだ。もし鴉が関わっているならこの聖杯戦争

には勝者はいない、いるのは鴉が目的を達成した後の残りかすだけだ」

「ふむ、ではなぜあの神父に確認しなかったのだ?」

「彼は院ではなく教会所属だ、こちらの本体をばれても仕方がない。聖杯戦争に参加す

る表明をしただけでいい。必要なことはあと何人いるかだ?」

「後最低でも四人はいるのか。まったく面白い世界だ、ここまで科学が進歩するとは

……私が研究した物も結局は魔術と同じものか」

「そう悲観せずに、貴方のおかげで我々はいる」

「そう信じたいものだね、マスター」

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 慎二は焦っていた、自身が作り上げた魔方陣が一瞬にして消えたからである。間桐家

と言うのは古くからある魔術師の家柄であったがそれは時代が進むごとに消え、今現在

残っている慎二ですら真面な魔術を発動することが困難となっていた

「どういうこだよ、どういうことだよ」

 家にまっすぐ帰りついた慎二は物に当たっていた。家と言っても古くからある屋敷

という昔ならば怪しい洋館とも言えるものだ。そんなかで叫び物を投げても誰も止め

ない。なんせ彼の父も、そして母もこの家にはすべに居ない。いるのは彼が召喚した

サーヴァントのみだった。

「マスター落ち着いてはどうでしょうか?」

「うるさい、どういうことだ!僕が作りあげた魔方陣が消えたぞ。お前もなんで傍にい

なかったんだよ!」

「朝マスターの命により見ておりましたが町には魔術師がいるようです」

「く、そ、そう思えばそうだったな。いったいどこにいるんだ?」

「確認できたのはいるだけの事です。相手は私には気付いていないでしょうが、それで

も近づくことが出来ませんでした。私のアサシンの能力を使ったとしても」

「使えない!それよりもお前、明日は俺の傍を離れるな。それでもし不審な行動を起こ

す様な奴が居たらすぐにコロセ!」

320 第弐拾碌話〝道化犯人〟

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「よろしいのですか?」

「今日、学園に魔術師が居ることが分かったからなあそこなんてどうせつまらない場所

だ。好きにしていいに決まってる。そうだ、ぼくだからこそ」

「では、不審なものが確認次第」

「いいぞ、やっちまえ………」

 そういった慎二だが、なぜか静かになった。それにアサシンは不思議がったが少し経

つと慎二は変化した。

「まったく、自分の魔術が見つかって慌て追ってバレタな…」

「これは主。調べましたがやはり相手も相当の手馴れのようです、こちらに気付いたの

はサーヴァントの方でしたがね」

「聖杯戦争はそういう物じゃ。しかし、明日は不味いのう、主よ分かっているな」

「は、主の命ならばこの命尽きても」

「ふむ、ワシはまだこの体をやらなければならないことがある……遠坂の娘めか」

 ──────────────

 遠坂の屋敷に戻るまでそれはそれは珍獣という扱いが正しいであろうぐらい忍たち

は注目されていた。学園でのカップルとしては有名であったが露骨なべたべたは無

かったのだがそれが起きたからだろう。忍は気にせずそのまま屋敷についた、同時に屋

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敷に魔術を内側にかけそして普通にトラップとして機械をつけている。要塞としての

遠坂邸の完成である

「さて、凛。離れ「たくない」コートは脱ごうな。それとランサー、アーチャーすまない

が」

「ああ、今日は警戒を強めておくと同時にここから少し離れておくよマスター」

 ランサーはそういうと離れた。凛は今後のために宝石を常備するように少しだけ細

工した鞄とコートに入れた。

「明日仕掛けてくるって本当?」

「たぶんな、俺も今日からこれ持っていたけど。見ている感じあちらが何かしてこない

からな」

 忍は瞬間的に拳銃をだした。その大きさではどこに入っていたのかと言う。

「そうだったのね、だから抱きつくと少し硬かったのね。だけどあいつがね、古い文献に

も既にここの地方にはいないと踏んでいたのだけど」

「多分だけどアインツベルンは間違いなく既にいると踏んだ方がいい。こっちもあまり

大きなことは出来ないがしそれにちょっかいを出すのは得策ではない」

「そうね、そうでしょうね」

 ──────────

322 第弐拾碌話〝道化犯人〟

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 士郎は冷蔵庫の中できれた物を買い家に急いで帰っていた。その時前から人形のよ

うにかわいい女の子が歩いてきた。そして

「おにいちゃん、そろそろ召喚しないと死んじゃうよ?」

「え?」

 士郎がきいたその言葉を言った少女は既にいなくなっていた、まるで最初からいな

かったように。

「あれ?やべ、桜が待ってる」

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第弐拾漆話〝転位騎喚〞(前)

 「問おう、貴方がマスターか」「問います、貴方がマスターなのですね?」

 その夜、衛宮士郎並びに衛宮桜はマスターとなった。

 ───────────────

 普段通りの朝を迎えていた忍と凛。ただ最近ではアーチャーが紅茶を入れることで

朝食に対しての締めとなっていた。ランサーが慎二の家を違う場所から監視している

が異常はなかったようである。

「問題なしとは言い難いぜ。やっぱりあそこは黒だな、どうも地下からきな臭いものを

感じた。これは英霊としてだがな」

「英霊の感か、なるほどな。今日はすまないが」

「ああ、俺らはすぐに行ける距離にいる。アーチャーもそうするみたいだぜ」

「私の場合は狙撃できる場所にだがな。シノブ、マスターを頼むぞ」

「朝から重い話はこれぐらいしとくか。凛、宝石の準備は忘れずにね」

「わ、分かっているわよ忍」

「凛の場合はうっかりがあるからね」

324 第弐拾漆話〝転位騎喚〟(前)

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「う」

 凛の苦笑いに忍は微笑みながら朝を静かにそして気持ちを高め今日あるであろう勝

負に

 ────────────

 放課後、学園に生徒は残り少ない。なんせそういう風に凛が仕向けたからだ、忍はそ

れを屋上で確認すると相手はそれを認識した。

「魔術師がまさか、私を認識するとは……」

「黒尽くめのサーヴァント、アサシンだな。マスターの傍に居なくても大丈夫なのか?」

「命は絶対である、死ね」

魔術礼装銃

ジャッ

 アサシンの投げたナイフ、忍は拳銃をだす。

に装てんされているのは忍が

投影した弾丸。それをナイフに正確に当てるがそれはアサシン読み、気を遮断した。忍

が一瞬考えをリセットして、そして笑う

「モラッタ」

「そうだな」

「ン!?」

 アサシンが忍の後ろで一瞬で行き首に攻撃をするはずだったがそれは朱い槍が遮る。

アサシンに肩に傷が入る。

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「まあそういうことだぜ」

「キサマ、ランサーか」

「ふ、語るかよ」

 ランサーがアサシンの前に立つ、始まった聖杯戦争。

 ─────────────

「あちらは行動したようだな、凛」

「分かっているわアーチャー」

「対象は既にどこかに隠れているようだ、シノブの言う通り相手は素人と見える。マス

ターが出る必要なないだろうがシノブ曰く慣れておけと言う事だろう」

「随分と忍のこと分かってるみたいだけど」

「嫉妬しないでくれマスター。これでも君たちの相思相愛には尊敬しているのだぞ」

「……それならいいけど」

 凛は階段を降りる。そこには分厚い本を持った慎二が慌ただしく走っていた。それ

を見ると凛はため息をつく。あれが最初に戦うマスターとなるとはと

「あら、間桐君。随分と慌てているようね」

「あ、ああと、遠坂じゃないか?な、なんだあれから考えて僕と付き合うとでも「その本、

何か光っているけど?」あ、こ、これは……くそ!」

326 第弐拾漆話〝転位騎喚〟(前)

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 慎二がその本を開いた。みればわかるが魔導書のようであるが凛から見れば随分と

幼稚な物であった。凛はそこから動かずただそれを受けた。慎二はそれを見て安心し

たがしかし次の瞬間……

「この程度なのね」

「まったくだ」

 赤いコートを着た凛の前には赤い二刀流の剣士が居た。慎二は理解した彼女もまた

自分と同じく選ばれたものだと

「な、なるほど。君も選ばたモノということだったんだな、なあ遠坂どうだ、僕と組まな

いか?」

「それは冗談かしら?」

「冗談な物か、どうだ、僕と組めば簡単に聖杯なんて」

「冗談ね。私はあなたが嫌いなのよ?」

「そうか、なら死ねよ!」

 慎二は魔導書からだした衝撃波をもう一度出すとそのまま走り出した。しかしアー

チャーが出した弓に慎二の足が当たった。怪我程度というにはアーチャーの狙いが外

れたのだ

「い、痛い……く、あ、アサシン!アサシン!なんで来ないんだよ!?」

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「ほう、相手は軽く矢避けの加護がついているようだ」

「どうでもいいわよそんなの……いえ、ちょっとまって加護?」

「ふむ、あいつに対してか。それともあの持っている物か、既に相手は足を受けた。あま

り逃げられぬだろう」

「追うわよ」

「そうだな、敵は校庭でたようだが屋上ではすでに戦闘が始まっている」

「忍は?」

「君のその指輪はなんのためにあると思っている。見てみたまえ」

 アーチャーが行ったのは忍と凛のお揃いのモノで忍はペンダントで凛は変化させて

それを指輪にしていたのだが、実はこれには忍が細工しておりその魔力が流れ続ける、

イコール生命が尽きるまでそのリンクが途切れなくそして光る。もちろん意思がそっ

ちに集中すればのことだが。

「それもそうね」

「まったく。だが、まだ終わらなそうだな」

 ────────────

「くっそ、アサシンの癖に強い」

「……いや、マスター。サーヴァントと普通にやりあうマスターそうそういないと思う

328 第弐拾漆話〝転位騎喚〟(前)

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が」

「それは同意する。まったく化物なのでしょうかね!」

 アサシンが気を遮断しながらもそのナイフが四方向に忍に狙われているしかしこれ

はずっと同じようであり、単純にアサシンに攻撃が当たらないという問題で勝負が長引

いていたのだ。しかし校庭から大声が聞こえた。

「アサシン、アサシン!アサシン!」

 怯えているような声、慎二によるものだ。ランサーは苦笑いそして忍は行動を起こし

た。発

動トリガー

 忍は屋上から校庭に一直線に降りた、アサシンはそれを見て笑うがそれはランサーも

同じだった。アサシンの遮断能力には欠点と言える、それは攻撃の瞬間だけは隠しきれ

ない。しかも相手は空中にいる忍。逆に狙いが定まる

突き穿つ死翔の槍

イ・

「手向けと受け取れ、

!!」

 その一撃は最高峰の部隊を壊滅させるものであるが今回のランサーの技はそれをさ

らに魔力を抑えアサシンの腹部を貫き、そして校庭の真ん中でそれは串刺しとなった。

「ナニ!アガ……ガッ!?」

「元から、それを狙っているんだよ。うちのマスターは強いぜ」

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 忍はそれを見ると安心して足に自身の魔術刻印である存在の強化をして壊れないも

のとした。

「これでOKだ。さて初めましてだな間桐慎二」

「お、お前は」

 忍は銃を慎二に向けて発砲した。しかしそれはすべて弾かれた、正確には当たらな

かった。

「加護か…」

「へ、へたくそめ。あ、アサシンそんな所に刺さってないでさっさと……さ、刺さってる

!?」

「マスター、申し訳ない」

 忍は少し考え、そして弾丸を投影魔術のモノではない物に変えた。それは属性弾風

だ。自分自身の属性を弾丸に、その宝石に入れることで得られるモノ。一撃が思いが今

回は十分と考えた

「魔弾ならいけるか」

 発射された魔弾はナイフで弾かれた。アサシンのものだ、アサシンの片腕は包帯で隠

されたいた。普通の手が見えていたがそうではない彼の腕はそれ非常に長くそれを折

りたたんでいたのだ。故にアサシンが刺さりながらも慎二を守ったのだ。

330 第弐拾漆話〝転位騎喚〟(前)

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「まだ甘いな人間!」

「ち、無駄撃ちか」

「忍!」

 凛が学校から合流した。すでに夜になったしまったじこく、冬なこともあり暗くなる

のが早い。

「気を付けてくれ凛。相手も相手だ、隙を出せば殺される」

「分かってるわ。あれがアサシン」

 未だに刺さっている槍。抜くことが出来ずにいたアサシンだが、慎二はそれでもアサ

シンの傍に行こうとする。それをアーチャーの弓は当てたのだ。肩が狙いそして左肩

に直撃したのだ。

「ふむ、やはりそういうことか」

「どういうこと、アーチャー」

「彼の加護は彼自身を守っているわけではない。あの魔導書だあの魔導書が原因のよう

だ」

「なるほど。それじゃあ一撃だな、ランサーそのまま突き刺しておけよ」

「言われなくてもあれはそう簡単には抜けねぇよ。それに霊体化した瞬間にそこのアー

チャーが撃つんだら……終わったな」

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「く、くそま、まだだ。まだ」

 忍は無言に銃を出して放つ。今度は心臓ではない、心臓近くにある魔導書ではないそ

う頭の眉間に狙いを定めたのだ。

「終わりだ」

 その言葉で慎二の頭に一発の鉛玉が撃ちこまれたのだ。

332 第弐拾漆話〝転位騎喚〟(前)

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第弐拾捌話〝転位騎喚〞(後)

 「まったく……弱いのう」

「なんだと……お前、何者だ?」

 慎二の眉間に間違いなく忍の弾丸は当たったはずだった。しかし慎二は普通に立ち

上がった。しかも忍は警戒をさらに上げたのだ。

「ほう、此度の聖杯戦争には随分と因縁が多いのう。遠坂の娘に、貴様は……ククク、ガ

ハハハハそういうことか。そうなのか、いやぁ〜久しぶりじゃのう神崎のせがれ」

 忍は弾丸を更に増やし撃ちこんだ。しかしそれは蟲によって遮られた、凛と忍はそれ

に覚えたがったのだ

「この虫は」

「10年前……あの人が使った」

「知ってるようじゃが貴様らが知っている物とは違うと思うがの!アサシンよ」

 アサシンが霊体になった瞬間にアーチャーが一撃を慎二に撃ちこんだがしかしそれ

は防がれた。

「先ほどの童と同じでは困るぞ、弓兵」

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 そして校庭一帯が蟲に化けた。忍は凛を抱き上げて

発動トリガー

「え、忍?きゃっ!」

 宝石を使い重力を軽くした。校庭すべてが蟲に包まれたが忍の眼は消えた慎二にし

か向いていなかった。忍は屋上につくとランサーに確認をとった

「ランサー、相手をすぐに」

「無理言うなよ、マスター」

「まだあいつは何かする」

「それには同意するがシノブ、今はこれで終わりにした方がいい。相手の魔力を追うの

もいいが今は状況の整理が必要だ」

「そ、そうか」

「忍、落ち着いて。今は確認しないと、あいつは間桐慎二とは違う人間だった。そうよ

ね」

「間違いないだろうな、あのしゃべり方。どうも違う。それにシノブ、君はあれと対峙し

ているのか……神崎のせがれと言われていたようだが」

「父さんの知り合いってことだと思うけど。さすがに今は何とも言えない、ただ分かっ

魔術師

ター

ているのはあれは間桐慎二ではなく蟲を使うことが出来る一流の

ってことだけ

334 第弐拾捌話〝転位騎喚〟(後)

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だ。一瞬だが線を見たけど人間とは言えない形をしていた……あれは人間なのかどう

かすら危うい」

「アーチャーの矢も防いだしな。お前、弱く撃ちすぎじゃないか」

「ランサー、そうは言うが普通の人間ならば死んでいた。それにシノブの弾丸をまさか

防ぐとは思っていなかったからな」

「二人とも、それも後よ。どこに消えたのかしら……」

「それは分からない、ただあっちが学園に来たら関係なく殺すだけだ」

「忍……」

 忍の手を強く握りしめる凛、忍の顔は戦場をかける烏の眼そのものだったのだ。

 ────────────

 慎二だったものが少しばかり回復がおいつていなかった、それは慎二が受けた傷の回

復が予想以上のダメージだったからだ。

「まったく。しかしならがもこれであやつの意識は封じられた、ならば行くのは一つ

……返してもらおうかのう、ワシが定めた聖杯の器を」

 慎二だったものが向かった先は大きな日本式の家。札にはこう書いてあった『衛宮』

と。

 士郎は普通に夕食を終え、桜は今日は当番ではないのでリビングでくつろいでいたが

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その時玄関から音が聞こえた。士郎は不思議がり

「俺が観てくる」

「ふむ、相変わらず面倒な仕掛けをしているのう……」

 そこに立っていたのは足をけがした間桐慎二、士郎にはそうとしか見れなかった。

「お、おい慎二大丈夫「お主には興味ない」何を言って、グア、あ、アァァァァァ」

 次の瞬間自分自身が何が肩を貫かれたのが分かった。士郎は苦しみで声が出なかっ

た、しかしその異変に気付いた妹がいたのだ

「士郎さん、何か……あ、え、きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 響き渡る悲鳴、士郎は手だけで逃げろを示唆する。慎二はそのまま上がりそして士郎

の眼にははっきりと黒い影が見えたが、そのときその影が刺さったナイフを抜くと同時

に言った

「刺さりきれないカラダ?」

 士郎はそこで動けなくなった。桜は逃げると同時に庭に出る、相手はゆっくりと歩き

近づく。外に逃げようと思ったが一つ思い当たることがあった、それは士郎の怪我だ。

一瞬だが血が出ていたのは分かった。桜にとっては自分の命よりも大事なのは士郎な

のである、なので

「おじさん、力を貸してください!」

336 第弐拾捌話〝転位騎喚〟(後)

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 桜は逆に慎二にタックルをしたのだ。これには慎二も驚いた、すぐに蟲になればよ

かったが回復に専念していたせいかそれが遅れた、さらにアサシンは命を受けていたそ

れは〝彼女を確実に生きて確保しろ〞と。故に攻撃をためらった。それが差となり彼

女は玄関にいる士郎を抱き上げた。

 ────────────

 士郎が襲われる数分前。

 忍と凛は学園で少し休憩をしていた。さすがにすぐには動けるほどの精神はなかっ

たようだ。凛は廊下に出ていた血などを消していた。忍は使い魔を使い慎二の姿を

追っていたが、一つヒットした。しかしそこは忍にとっては行くべきではなかった場所

だった。

「衛宮邸か……面倒な」

「忍、どこにあいてがいるか分かったの?」

「向かっている場所はどこだかわかった……だが、面倒になりそうな場所だ」

「行くの?」

「行かなくてはならない理由があるからな……おじさんが残したものだ、恩は返す。い

くぞ、ランサー」

「へいへい」

337

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「凛は「一緒に行くわよ」ならアーチャーすまないが」

「場所はあっちだな。こちらも場所を確認した、狙いを定めておく」

「では行くぞ「じゃ、さっきと同じように」……凛……」

「抱っこ♪」

 ────────────

「あら、緊急事態のようですね」

 桜は奇跡を信じていなかった。それは遠い昔のないはずの記憶がそう言い続けてい

るから、しかしいま彼女は信じることが出来ると思った。自身の愛している人を引き

ずって絶望と希望に変えると思ってきた場所。それは家の蔵でありガラクタが多く

運命fate

あった、そんな場所で彼女は

にて召喚した。

「問います、貴方がマスターなのですね?」

「……面白い物じゃのう。まさかお主までもマスターの資格があったとは、いやあの家

系ならば当然か。アサシンよ、ここは一回引くぞ」

「御意」

 桜は目の前に現れた人らしき物が慎二とそしてアサシンと対峙していたが相手が消

えその顔は穏やかだった

「い、一体?そ、それよりも士郎さん!」

338 第弐拾捌話〝転位騎喚〟(後)

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 桜は抱えた士郎を見る、そこには傷が無い士郎だけが居たのだ。桜は土蔵を確認する

とそこには士郎の血、そして素足で走った結果血だらけの桜の血があったのだ。この土

蔵には衛宮切嗣の細工がされていた。それが聖杯戦争の英霊召喚の魔法陣でありそれ

は切嗣の保険でもあった。もしも将来、桜と士郎が選ばれた場合の最終手段として残し

ていたものだった。桜は切嗣の言葉を信じそして偶然の一致でサーヴァントを召喚し

たのだ、桜は状況を確認するためにその長身のサーヴァントに話しかけた、しかしまだ

魔法陣は光っていたのに桜は気づけなかった。

「貴方は」

「私はライダーです、マスター。これよりあなたの手足となり聖杯を目指す者としてよ

ろしくお願いします」

「聖杯?それは一体」

 桜が問いかけたときライダーは持っていた短剣に鎖がついた武器を玄関先に投げた。

そして桜は驚愕することになる。そこに居たのは学園のマドンナとそして拳銃を構え

副会長

だったのだから。

 ───────────

 魔力が探知できたのは忍にとっては大きな収穫だった。しかしそこに居たのは先ほ

ど忍たちが追いかけていたやつらではなく、衛宮桜だったのだ。

339

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「く、外しましたか」

 ライダーの短剣を拳銃ではじいた忍はすぐに桜の首を狙う、しかしライダーがそれを

妨げるように攻撃を放つ。

「まさか、あなたがマスターとはね、衛宮桜さん」

「と、遠坂先輩に、それに副会長さん」

「話は後だ、それに話すこともないわね……消えなさい「させるかぁぁ!」な、何!?」

 凛が驚愕したのは走ってくる士郎だ、まだ目が定かではないが妹が襲われていると言

うだけを見て突っ込んできたのが分かる。

「愚かだな」

 一発の発砲が士郎を襲う、ライダーは桜を守ることだけに集中していた。部外者まで

には目が行っていないし行動もしないが、桜の思いが一瞬走り防ごうとする。しかしそ

れは予想を外し。

「はぁ!」

 一人の剣士が忍の弾丸をきりそして、そのまま忍に切りかかろうとする。忍はそれを

見るとランサーを呼び払った。剣士は士郎を抱え桜の後ろに引かせる、凛もその一瞬の

動きについていけなかった。

 剣士は士郎に問いかける

340 第弐拾捌話〝転位騎喚〟(後)

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「問おう、貴方が私のマスターか」

 ここに衛宮姉妹対忍&凛の戦いが始まってしまった。

341

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第弐拾玖話〝粗茶茶番〞

 「粗茶ですが」

「ありがとう、衛宮さん」

 なぜ、こうなったのか?それは誰に聞いても分からないだろう、現在壊れた衛宮邸も

すっかり元通りに戻り居間で忍と凛、そして桜と士郎が対面してお茶を飲んでいたの

だ。しかもお互いコタツの中でみかんをつまみながら。

「……それじゃあ話してくれないか神崎……」

神崎忍

 士郎がそういう、目の前にいるのはいつも穏やかな笑顔の

ではなく素の忍なの

だから。

「まず、確認したいことがある衛宮。お前は魔術師か?」

 忍はそういいながらお茶を飲みほした。士郎は忍の眼をまっすぐみてこう言った

「魔術のことなら知っている。その程度だ」

魔術師

ター

「ふむ、ではそれは信じてやる。では次だ……お前は

でいいんだな」

「マスター?ってのはどういうことだ」

 忍は頭を抱え、それを心配そうに凛が支えられ

342 第弐拾玖話〝粗茶茶番〟

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「衛宮君!忍が困惑してるじゃないの、衛宮さん貴方も家事なんかやってないでこっち

に来なさい!それとそこのサーヴァント、霊体化しなさいよ。確かに信用はないでしょ

うけどさっきの戦闘でわからなかったのかしら?」

「い、いえ。あなた方の強さは理解していますが…どうも霊体化が出来ないようでして」

 騎士のサーヴァントが凛の剣幕に押されながら弁明した、忍は復活をして桜と士郎に

いった。

切嗣おっさん

「んじゃ、こういってやるお前らは

が魔術師だったのは知っているのか?」

「それなら」「それだったら」

「二人ともその程度ってわけか。それで今の戦闘技術……お前ら素人かよ、まあいい面

倒だ。凛、神父の所に連れて行こう」

 凛は驚いた顔をするがすぐに納得した。監視役である綺礼に話、この半人前たち保護

してもらう考えなのだ。事の数十分前に戦闘行なった四人だったが士郎があほのよう

な命令を出してサーヴァントを止めたのだ。それで忍が少し疑いを見つけそのまま話

し合いとなったのだ。甘い考えでもあったが士郎と桜はある意味助かったのだ。実際

は忍の魔術とそしてアーチャーが完全に脳をロックしていたのだから。

「ちょ、ちょっと待ってくれないか」

 士郎が言う、桜は心配そうに見ていた

343

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「なんだ?」

「確認だが本当にあの神崎なのか?というか遠坂もだが」

「どうみても俺は神崎忍だし、こっちは遠坂凛だろうが?」

「いやいやいや、なんだよさっきからみかんはあーんして食べさせてもらってるのがあ

の遠坂には見えないし、それに神崎だってその口調」

「こっちが素なんだよ、それと別に凛が甘えてくるのはいいだろう彼女なんだから」

「士郎さん、人の恋路に文句はダメですよ」

 なぜか士郎が攻められていた。士郎は一言

「なんでさ」

 と、言うしかなかったのだ。

 ──────────

「驚いたものだ、まさかお前のような餓鬼に私がここまで追い詰められるとは」

 綺礼は血だらけでいた、既に脚はあらぬ方向に曲がっていたが魔術でなんとか立って

いた。教会の地下にあるその部屋には何体かのなにかがおかれていた。

「主の様なものにワシは止められぬ、既に聖杯であるあれは降り立っているならば監視

役などちう面倒なものは消しておくのがいいだけの話。アサシン」

「ここに」

344 第弐拾玖話〝粗茶茶番〟

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「私がここまで追い詰められるとは……」

「では、消えてもらおう。お前にはあの呪いがそのまま集まっているはずだ、ならば10

年分は返してもらう。そうすれば更なる歪が完成するはずだ……」

前のマスター

 そしてアサシンは

の首を……

 ────────────

 ここは衛宮邸の居間の前の廊下である、そこに青、赤、紫、そして白と青のサーヴァ

ントが話し合っていた。

「こんな事例があるとは、驚きです」

「そうですねセイバー、まさか最初から手を組んでいる、正確には兄弟でマスターをして

いる所に当たるとは私はライダーです」

「これは丁寧に私はセイバーだ」

「なんつうかこれ、見た光景だな」

「デヴァブだからな、それで二人」

「ええ、分かっています……えっと「アーチャーだ」アーチャー、今現在マスター同士が

戦う気がないとならばこちらも何かすることはありません」

「そう祈るぜ、こっちは聖杯戦争なんてちっさいもんは相手にしてないんだからな」

「ランサー、すまないな二人とも」

345

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「いえ、私は大丈夫なのですが」

「ランサーそれはどういうことですか!聖杯戦争よりも大きいことですと、我々はその

ために呼ばれたのですよ!」

「……ライダーだったか」

「ええ、そちらはアーチャーでしたね。あなたのマスターはあちらの婦人のようですね」

「ああ、君の方も婦人のようだ。しかしなんだ、今後はどうなると思っている」

「刃をマジわせると言う事ならば多分ですがないと思います、それに力の差がありまし

たからね。確認ですがあっちの坊やは人間ですか?私と対等にわたる魔術師はそうそ

ういないと思いしましたが」

「それは私達も思っている所だ、それと……えぇい、二人ともいい加減にしないか!」

「ハヌ」「あぁ?」

 顔を引っ張り合っているランサーとセイバーであった。

「お前ら、戦うなということでなんでそうなる。まったく名だたる英雄がこれでは」

「うるせえ!てかアーチャー、お前だってこっち側だろうが俺らのマスターの考えは「ラ

ンサー」……分かったよ」

「アーチャー、少し質問したいいいだろうか?」

「なんだ、セイバー」

346 第弐拾玖話〝粗茶茶番〟

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「今回の聖杯戦争はどういうことなのだ、これは異常のようにしか見えない」

「随分と面白いことをいうな、今回のというのは。しかし確かにそうかもしれないなだ

が言えることは私達マスターは正義をめざしそしてそれを完遂させようと悪にもなろ

うとしていると言う事だ」

「そ、それはどういう」

「待たせたなお前ら」

 そこに忍が襖をあける。

「なんでランサーの頬が赤いんだ?まあいい、セイバーは霊体化ができないようだから、

士郎にどうにかしてもらうとして。これより教会に行く」

「了解だぜマスター」「了解したシノブ」

 忍の号令に二人のサーヴァントは霊体化しそしてランサーは忍を見て一言

「マスターとしては本当に敵にしたくないことが今分かりました」

「ライダー、行きましょう?」

「ええ、マスター」

「桜って読んでね〜」

「わかりましたサクラ」

 そして全員衛宮邸から聖堂教会へと足を運ぶのであった。

347

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 ──────────

「ふぅーん、面白いじゃない。お兄ちゃんに妹がいたことも、それにあの烏がいること

も」

「イリヤ、私がでようか?」

「そうね、お願い出来るかしら。それに私もお兄ちゃんにちゃんと会いたいしね、それと

バーサーカーも一緒にね」

 少女は笑いそして体中から令呪を輝かせた。

「楽しみだね、おにいちゃん」

 ──────────

 教会に向かう最中である、それは突然訪れた。一人の白い、本当に白い女性が大きな

斧を持って立っていたのだ。忍と凛、士郎、桜にセイバーが歩いている丁度前である。

「凛、離れろ!」

 忍が叫ぶと同時にその斧は忍の前へ飛んできたのであった。

「イリヤの命令……死んで」

「ランサー!」

「了解した」

「衛宮、遠坂の指示に従ってくれ」

348 第弐拾玖話〝粗茶茶番〟

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「わ、わかった」

 しかし、隣の桜は茫然としてしまった。怖がってしまったのだ、そのありえない光景

にひるんでしまったのだ。それを狙われるのは必然でもあったがライダーが彼女を抱

えた、そしてアーチャーが攻撃を遮った。

「何をしている!凛」

「分かってるわよアーチャー、衛宮君、それとライダーだっけ離さないでね。忍、作戦通

りに」

「……了解」

 凛は忍の指示通り場所を離れた、目的地は教会ということだけは変わらないが忍は見

えていたのだ。何者かがいることに、ランサーの槍と斧を持った女性が戦う最中忍は投

影をする。

「作戦失敗?」

「さてね、それでお前さんはどこのもんだ、ホムンクルス?」

「一回で見抜くなんて流石ね、異端の殺人鬼さん」

「……初めましてだな、アインツベルンの御令嬢……いや「ウガァァァアァァァァ!」ち、

ランサー」

「分かってるが、この嬢ちゃんは」

349

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「俺がやる」

 忍が攻撃を構えると同時に少女は叫ぶ

「辞めなさい、今私は彼とお話がしたいの」

 その言葉に大きな巨体であり大剣であろう岩の塊をもったバーサーカーそしてホム

ンクルスは静止した。ランサーは忍の前に立つ。

烏シノブ

「一応、話してみたかったの、初めまして神崎忍。いえ

と呼びましょうか、私の名前は

継承者

わすれもの

イリヤスフィール・アインツベルンよ。キリツグの

がどんなものか、なるほどね

……家族も後継者も作って居たってことなのね、最悪」

「お前がどういう存在かはこっちも理解している、だからこそ最初に言っとくが俺はお

前を殺す」

 「そう、だけどそれは無理よ。だって勝つのは私と私のバーサーカーなんだから!もう

話すこともないわね、行きなさいバーサーカー!」

「ウガァァァァァァァァァァァァァ」

「ランサー、時間を稼げ」

「了解だぜマスター」

 忍は二丁の銃をホムンクルスそしてイリヤに発射するのであった。

350 第弐拾玖話〝粗茶茶番〟

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第参拾話〝順序順位〞

 「ここまでくれば大丈夫ね」

 凛の先導で教会にやってきた四人、セイバーは雨合羽をかぶっていた。

「あ、あのうでは遠坂先輩はどうぞ行っていただいても「サクラ!」え!?」

 ライダーが一気に実体を手に持っていた鎖つき短剣を投げる、それは黒いナイフにあ

たりはじかれた。もしライダーが気づいていなければそのまま桜は刺されていただろ

う。

「……どういう事よ、アーチャー!」

「既にこちらも実体している、君はあの二人を守れ……来るぞ」

 アーチャーの言葉にサーヴァントの二人は頷き散開する、凛は士郎と桜の前に立ち魔

術刻印を大きく出している。

「と、遠坂これって」

「私達よりも先に誰かいるってことだけは確かね……」

 遠坂の中で綺礼の安否が問題となっていた。もし、ここで彼が殺されていたりでもし

たらそれこそ、彼らは格好の餌になる。しかも士郎が呼んだのはセイバーだ、それだけ

351

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でも十分に価値がある

「し、士郎さん」

「大丈夫だ、桜。桜は俺が守る」

Anfang

セッ

「かっこつけるのはいいけど離れないでね、

 凛は魔術を行使し結界に似た物を張る。教会から出てきたのはアサシンだけであっ

た、すでにマスターである慎二は消えていたのだ。アサシンは証拠隠滅のために居たと

ころ凛たちがきてしまったということだ。

「……分が悪いか」

 アサシンはそういいながらも回避に専念している。三人を相手にしているが回避だ

けではどのサーヴァントよりも強い。しかも相手はマスターを狙っているせいで少し

でも三人が隙を見せれば誰かがやられるのだ。

「ここで落させていただきます」

 ライダーの動きの速さはさすがともいえるほどだった

「ここが引き際か」

 アサシンはそういうと消えてしまった。アーチャーは少し疑問に思いながらもその

まま教会を見る。

「アーチャー、撤退だ」

352 第参拾話〝順序順位〟

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 その声は予想外に上から聞こえるのであった。

 ───────────────

 バーサーカーの攻撃を回避しながらも少しだけ当たるだけで大けがとなる相手。ラ

ンサーはすこいばかり冷や汗をかいていた。なんせ、心臓を二回も刺したはずなのに殺

していないのだから。忍はそれを見てランサーに継続的攻撃を指示している。忍はイ

リヤの連れたホムンクルスに対して善戦していた。

「こいつ強い……うっ」

 忍の弾丸が腕の関節に撃ちこまれたせいか相手の動きは鈍い。

「さすがね、だけどその程度で私が負けるはずがないのよ!バーサーカー!決めなさい、

そんな相手」

「ウガァァァァァッァ」

「ち、こっちが分が悪すぎる「下がれランサー」な、ま、マスター?!」

 ランサーの前に足を強化した忍が前に出た、イリヤはその行動にすぐ焦るがしかし自

分のサーヴァントを信じている。故に彼女は思った、ただの魔術師にあれは殺せない。

殺しきれないと。しかし次に起こったのはバーサーカーの腕が吹き飛びそして再生し

英雄

ヘラクレス

ない

の姿だったのだ。

「……嘘……」

353

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「イリヤ、ここは引く」

 ホムンクルスが彼女を抱える。バーサーカーは既に霊体化されていた、その動きの速

さに忍は迎撃できず、そしてランサーは今の光景を茫然と見るしかなかった。忍は投影

したナイフを慣れた手つきで持ち直しランサーを見る

「マスター、あんた……」

「……これであっちは当分動けな……く」

「ま、マスター!」

 忍は頭をおさえ投影したナイフは散布してしまった。ランサーが心配そうにかけよ

る。

「キャパ以上ってことか、ち」

 忍が苦しむ。理由は相手のサーヴァントの死を直視したからだ。忍自身の脳が死を

理解するのは動作もなかったがイリヤのサーヴァントの死がイレギュラー過ぎたのか

忍は予想以上にダメージを受けたのだ。

「マスター、ここは引くのがいいと思うぜ。そんな状態じゃあの嬢ちゃんに俺が殺され

ちまう」

「すまん、ランサー」

「いいってことよ、んじゃ飛ばすぜ」

354 第参拾話〝順序順位〟

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 ランサーは忍を抱えるとそのまま教会を目指した。

 ──────────────

 ランサーが抱えている忍の姿をみて凛は先ほどの空気をどこえやらでランサーにし

がみついた

「どういうことよ!そこの蒼タイツ!!忍、忍大丈夫、大丈夫!?アーチャー、すぐに帰るわ、

今すぐに」

「ま、マスターここにいる「そこの衛宮君はほっときなさい、そんなことよりも忍のほう

が忍が!」

 凛は忍の顔を見て心配でしかないようでありその様子に衛宮兄弟は完全に呆気にと

られていた。アーチャーは二人にわるように言う

「すまないな、私のマスターが」

「あ、あははは。まさか遠坂先輩がこうなるとは、カップルとは聞いてましたけど、これ

じゃあバカップルじゃ」

「桜、そういうことはいうな」

「り、凛」

「あ、忍!すぐに帰りましょう「それよりも教会を……」どうしたの?……まさか。アー

チャー今すぐに教会内を探して」

355

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「く、すまんな二人とも……」

「忍!他人よりも自分をまずは心配しなさい……まさか、使ったわけじゃないわよね」

「そ、それはその」

「後で搾り取る……アーチャー、中は」

「ふむ……引いた方が良さそうだ、人の気配は無し。言峰神父の姿もなかったが大量の

血だけがあった。襲撃があったようだがしかし、これでは保護も」

 ライダーとセイバーがマスターたちを見てアーチャーを見る。

「…セイバー、君はこの聖杯戦争をどうみる?」

「監視の相手もいなければもとより殺伐としていない戦い、気が抜けそうですがまずは

状況確認とそれと先ほどの話の本当の真意を」

「セイバー、君は」

「ライダーとも話した結果です、今回の戦争は異常です」

 セイバーの眼をアーチャーは苦笑いをし、そして凛は忍をなぜかだきしめているので

あった。

「……ランサー、すまないけど」

「安心しろ、すぐにお前と嬢ちゃんに任せる」

「そっちじゃない」

356 第参拾話〝順序順位〟

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 そして忍たちは衛宮家に戻るのであった。忍の脳に対するダメージは治まったよう

ではあるが凛は心配なのであろう、ずっとしがみついている。マスターはマスター同士

で居間に、そしてサーヴァントは庭にいた。

「ま、そういう事よ」

「……それは誠の事ですか」

 ライダーがその言葉に息をのんだ、聖杯の穢れ。それはサーヴァントの一つの夢の崩

壊でもあったのだ。

「ま、俺らのマスターが言ってるだけではあるけどな」

 ランサーが笑っている、しかしセイバーもライダーもその顔を見て確信した。ラン

サーは信じているのだ。更に言えばアーチャーもそれには笑っていた、ライダーとセイ

バーは頷いた。

「アーチャー、頼みがあります」

お人よし

「……ふむ、まったくなぜだろうな。今回の聖杯戦争は

ばかりのうようだ」

 変わって居間では士郎の目の前の状況を理解したくなかった。凛は忍の腕から離れ

ないし忍が士郎たちに話そうとすると「こら、忍」と、凛が口づけをしようと動きそれ

を忍が抑えるとその抑えた手、指を舐め始める。そんな攻防が彼是五回、さすがに桜で

すら憧れの先輩、遠坂凛の姿が壊れ去ったのだ。

357

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「凛、後で相手してあげるから「いやぁ〜」……はぁ、左手は対価だな。すまないな二人

とも、聖杯戦争ってのは大体理解してくれたな」

「あ、ああ大体は」

「ですが、質問いいでしょうか?」

 桜が手をあげて言う

「ここは学園じゃないから別に手をあげなくても、どうぞ衛宮……嬢」

「はい、先ほどの質問では本来聖杯戦争はサバイバルというか殺伐としているものなん

ですよね。マスターの殺し合いって」

「ああ、そうだ」

「なら、なんで神崎先輩はこうやって話しているのですか?……あの時神崎先輩は確実

に私達を殺せる技量を持っていると今でも思ってます。ならなんでそんな風に教えて

くれるんですか」

「そうだな、裏がないか疑うのは当然だ」

「桜、神崎はそういうやつじゃない。俺だって生徒会の手伝いで一年以上の付き合いが

ある、話し方は確かに違うがそれでもそんな奴じゃない」

「し、士郎さん」

「はぁ、なるほどな確かに衛宮嬢が心配する理由がよく分かるような気がするよ。おじ

358 第参拾話〝順序順位〟

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さんが二人を魔術師として育てなかったのは面白いけど連れてきてたのが両方とも魔

術を行使できるとはね……これは酷い運命だな」

「それで、こっちの質問を返していないけど」

「うん、ああ協力する理由か。まあ一つはマスターとして自覚がないやつらを相手して

られないってこと。それともう一つは……俺たちは聖杯が欲しいわけじゃないってこ

とさ」

「それってどういう」

「話は終わったようですね」

 セイバーが居間に入る。変わらず甲冑は装備したままだが、そして一礼してこう言っ

た。

「マスター、停戦協定を出すことを推薦します」

 士郎は驚きそして忍は笑みを浮かべ桜は驚きながらも納得をして、そして凛は

「ああ、おいしい……忍の指」

 指を一心不乱になめ続けていた。

359

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第参拾壱話〝協和怪異〞

  結果から言えば衛宮家と神崎家?は協定を結んだ、聖杯の破壊をまさかの条件をその

まかさのサーヴァントから出したからである。

「まさか、こうなるとはな……」

「神崎、それで俺たちは何を」

「……采は投げられた、ならばあとはつけるしかないか……魔術を、魔術師としての学習

かな……今回は戦闘メインだけどな。お前らも自分は自分で守れるようにしないとは、

それと衛宮は未熟すぎるみたいだしな」

「うぐ、いや、だけど」

「黙れ。妹の衛宮嬢はしっかりした回路持ち。お前さんは欠陥品、OK」

「うっす…それと俺は士郎でいいぞ神崎、いいにくいだろうしな。」

「そうか、それで一応こっちもこれは見せておくぞ」

 忍が出したのはカスタマイズされた銃だ。それを見ると二人ともさすがに笑顔が引

きつった。さっきまでこれで狙われていたのだから。

「ま、本来の魔術師では絶対に持たないであろう近代兵器だ。それでそこのセイバー

360 第参拾壱話〝協和怪異〟

Page 365: Fate/Happylife~刃タ下 ゼ心ろホ · Fate/Happylife~刃タ下 ゼ心ろホ~ なぽしうかむぞ

だっけ、俺をずっと見ているが何かあるのか?」

「い、いえ別に(キリツグにスタイルが似ているまさか?)」

 セイバーは忍を見て少し確信をした、彼は魔術師として生きてはいないと。

「それじゃあ停戦も決まったことだし、忍帰るわよ」

「いや、泊まってく」

「「泊まる!?」」

 凛と士郎が驚いた声をしてそして桜だけは既に布団の用意をしていた、ランサーは

笑っていてそしてアーチャーは呆れてそしてライダーは目が見えないようになってい

るが口元は笑顔だった。

「魔術師として微妙なこいつらと一緒に居ればもしかししたら早めにことが運べるかも

しれないしそれに……あの間桐慎二だった何者かが襲ってくるとも限らない、停戦を結

んだ次の日に死体だなんて笑えないぞ。既に衛宮嬢には頼んでいた、どうもこの家は広

いから離れを使わせてもらえるということを聞いた」

「さ、桜そんな急に」

「士郎さん、私たちの安全は確かにライダーたちがいます。ですがこうなってしまった

以上副会長さんや遠坂先輩にお世話になるしか今はありません」

「衛宮嬢のほうがずっと大人だな、凛いいな?」

361

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「忍と同じ部屋?」

「もちろんそうするように副会長に言われましたので、ただ…そ、その声は///」

「ならいいわ、ええ住めば都っていうしね」

「お、おい「なんだ士郎?問題でも?」いや、だけど藤ねえが」

「それならば安心していいと思うが……」

 忍の言葉通りどうにかなるのであった。

 ─────────────

 襲撃があってから三日が経った、士郎と桜の魔術師としての考えがまったくないこと

に凛は呆れながらも講師を続けていた。さらに士郎は忍とセイバーから鍛錬もしても

らっている。そんな状況を見ていたアーチャーが一言

「平和だな」

 と述べるのであった。ライダーは御遣いをしており桜が買いそびれた物を商店街で

探索していた。今ではサーヴァントも私服を着ているのである。ランサーは忍の命令

で警護をずっとしている。

「俺だけこんなことばっかかよ」

「お前だけとは言えないけどな」

 ある場所で忍はそんなことを言う。休日の今日は忍はランサーを霊体化させた状態

362 第参拾壱話〝協和怪異〟

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で町に繰り出していた。もちろん何かあるわけではない、既に間桐の家はもぬけの殻と

なっていたが忍では少し気がかりとなっていた。それは魔術関連のモノが何もなかっ

たからである、故にランサーを連れて間桐の屋敷の前に立っていた。

「この前とは違う調べ方をするか」

 忍の魔術刻印を光らせてそのまま腕を強化させた、そしてそのままドアを破ったの

だ。今まではドアを開くことを考えて行っていたのを破ることで新しい何かを出せる

とかんがえたのだ。

「おいおい、マスターいいのかよ?」

「既に結界を張ってあるし、それに既に一度侵入した場所だからな。心配はないと思う

が、まあ魔術的何かは今のところないな」

「まじかよ。だけどここは一回嬢ちゃんと見に来ただろう?なんで俺らだけで……なに

かあるのか」

「まあね、凛の前じゃあ眼が使えないからね」

「確かに使用したら次の日は歩くことさえも魔術を使用していたからな、まあそんなも

んでもちゃんといつでも戦闘できるってのは益荒男だな」

「ランサーから益荒男って言われるのはどうかと思うが……ん、ランサー」

「ああ、分かってる」

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 ランサーは消えて忍はすぐに持ってきている宝石を取り出す、忍が魔術を放つと同時

にそれは浮き彫りになってきている。それは古い魔術式の痕跡だった

「ランサー、そっちには」

「人の気配は無いみたいだが……なんだこれ。前来た時にはこんなもんがなかったんだ

よな、なんせ嬢ちゃんが散々さがしていたじゃないか?」

「そうだな、だがこれは……なんだ」

「見た感じはマスターの魔方陣に似ているようにしか見えないけどよ、そんでこれをど

うする?」

「解読したいところだが、消えかけているからな……視てみるか」

 忍が眼鏡を外しそして魔方陣の死を見る、既にボロボロの魔方陣のせいで死を見るこ

とは容易であったがしかしそのせいで逆に魔方陣を読み取ることが出来なかったのだ。

まるではそれは無理やり流した電流に対して耐えきれなかった電球のようであった。

「ランサー、地下はこの前のあの薄暗い部屋のみだったよな」

「そうだな、俺たちが確認できたのはそこまでだがなんだ気になるのか?」

「鉄板ネタだけどな。隠し部屋だと思う」

「いや、だからそれは嬢ちゃんが……」

「凛のうっかりだろうな、こんな簡単なことにきづかないだなんて」

364 第参拾壱話〝協和怪異〟

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 忍はそう言うと部屋にある一室の本棚の所を動かした、その瞬間大きな音共に地響き

が館の中を響いた。

「な、なんだ?」

「魔術じゃなくてカラクリってやつだな、これは。床の下をスライド式で地下室を変え

られるようになっていたんだ」

「あ?どういうことだ?」

 忍はランサーに拳銃を見せてリボルバーの所を開けた。

「つまりだ、今弾を入れている部分がこの前凛が見つけた場所で引き金を引くことで次

の弾に装填される。これが今の部屋ことだ」

「はぁ〜面白いことを考える奴が居るもんだな……そんで地下室が変化しているっぽい

な」

「これは……なんだ?」

「マスター俺が先に先行する、この匂いは腐ってる匂いだ」

 ランサーの腐っている匂いというのは単純に食べ物などの匂いではない、人の腐敗し

た匂いということだろう。ランサーはそのまま下に消えて行った。忍は宝石の弾を

ジャッカルに装填するとランサーを待った。

「マスター、当たりだ」

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 ランサーの言葉と共に忍は地下室に下った、そこには死に絶えている人の身体であっ

ただろうのもの。そして無数の蟲である、その形は異形であり忍も見たことのないモノ

だった。しかしわかることがあった

「間違いない、これがあの間桐慎二だったなにかの巣窟だ……ん、これは……」

 忍はその中に入り探索するなかで一つの肉片だったものが唯一吊るされているのが

気になったのだ。

「ランサーすまないが、その鎖を切ってくれ」

「了解だね、だけど気色悪いなここは」

 鎖を切られその肉片が地面に落ちる、忍はその肉片に面影を感じたのであった。しか

し忍がそれを思い出すことは出来なかった。

「マスター、これ以上いても意味ないと思うぞ。サンプルは回収したみたいだし」

「そうだな……確認しないといけないこともありそうだ」

 忍の手には紫いろの髪の毛であろうそれを持ちいろんなものをすべてビンに詰めそ

して外に出るのであった。

「マスターって戦闘派なのか、学者なのか分からないな」

「それが魔術師ってもんだよランサー、帰ろう…あの家に」

「了解した」

366 第参拾壱話〝協和怪異〟

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第参拾弐話〝現実無地〞

  忍が外出している間に凛は士郎と桜に講義をしていたのだが、途中で来訪者が現れる

のであった。

「お姉ちゃんがきたぞぉ!」

 大河である、一室を使った講義のためすぐに顔をだせたのは凛であり

「あ、藤村先生」

「あら遠坂さん、もしかしてお勉強中だったかしら」

「いえ、丁度休憩しようと思っていたところですので」

 衛宮家の家には居候者がこの数日で凄まじく増えた、しかしそれを知る大河は違和感

なく受け入れている。凛、ならびに忍の家にくるはずだったホームステイが両者の家が

工事のため難しくすべて衛宮邸で住むこととなっているのである。これが大河に仕組

まれた魔術の思い込みである。

「桜ちゃんは優秀だからいいけど、士郎。貴方は遠坂さんと神崎君にちゃんと成績が上

がるようにしてもらいなさいね、それとセイバーさん、これ運んでもらえないかしら?」

「タイガ、これは」

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「この前実家に届いたみかんなんだけど、余りそうだから台所へ」

「分かりました」

「人が増えるとこういうのが出来るからいいわね、そう思えばライダーさんは?」

「日本の本に興味があるみたいでして、今は上に居るようですよ」

 凛が丁寧に答える、部屋の中では口から煙が出てる桜とそして頭から煙が出てる士郎

が机につっぱねているのであった。

  〜◇〜

  忍が衛宮邸に帰るとそこにはみかんを食べているセイバーと読書をするライダー、そ

して講義が終わったのであろう疲れ切った士郎と桜が居間にいるのであった。

「平和だな」

「シノブ、私と同じことを言わないでくれないか」

 アーチャーが前掛けをして台所に出てきた。凛も台所で何かをしていたのでそのま

ま忍は士郎と桜の前に座る。

「二人ともどうだ、魔術に関して少しは理解できたか?」

「少しはというか」

368 第参拾弐話〝現実無地〟

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「あはは、遠坂先輩のはすごくためになるんですけど」

「あら二人ともこの程度で根をあげていては困るのだけど?それと忍、桜さんのほうは

問題なく魔術を行使できるみたい、ただ私に似ているのよね」

「変換ということか?」

「ええ、間違いなくね。貴方からもらったあの宝石で属性も見てみたのだけど……桜は

無だったわ」

無属性

ノン・アベレージ

!?衛宮嬢君は珍しい能力だと言う事を理解してくれ、まさか無属性とは」

「は、はい」

「衛宮君の方は火だったわ、それと魔力量に対してパスが細いのが難点かしら?ただな

ぜか強化に対しては強いのよね。なんでかしら?」

 凛はそう言いながらおやつであろうクッキーを作っていたのであった。忍の隣に座

るとそのまま一枚とり忍の口に凛は入れるのであった

「おいしくできたわ」

「うん、うまい。じゃなくて……先ほど俺は間桐邸に少し行ってきた」

 三人はその話を切り出す忍に注目し更にライダーとセイバーもそれに耳を傾けるの

であった。

「忍、この前行った際時何も「凛、魔術として見すぎたね」えっと?」

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「カラクリ仕込まれていて地下室がスライドするようになっていた。そんで少しばかり

は調査が出来たが蟲の巣窟ってことと……人を精気を餌にするようってことだけだ」

「そんな、それじゃあ」

 士郎はその言葉にあることを言おうとする、しかしそれを忍は睨みで静止させる

「士郎のいいたいことも分かる、だが今はまだ表立っての行動が出ていない。それに監

視役である綺礼も今では行方不明である中じゃあな」

「そうね、学園生活もあることですし、仕方ないのかもしれないわね」

「仕方ないって」

「士郎さん」

「士郎、最初に言っておくがこれは生きるか死ぬか、お前は俺の殺気を受けて思わなかっ

たのか?」

 忍の言葉に一瞬でサーヴァントたちが戦闘状態に変わる、凛ですらもその冷え切った

言葉に驚いている。

「シロウ、シノブのいいことも一理あると思ってください」

 セイバーがそう言いながら見えない剣を忍に構える

「だ、だけど」

「ふん、シノブやはり協定など辞めていいのではないか?」

370 第参拾弐話〝現実無地〟

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 そういうのは急に現れたアーチャーだった。

「見ての通り我々に利点はない、聖杯を壊すそれだけのことをするならばシノブだけで

も十分だと思うが?」

「アーチャー!少し静かにしなさい。衛宮君、貴方には最初に言っておくべきだったわ

ね魔術師と言うのは利己的で打算的でそして身内しかやさしくないのが本来の魔術師

なのよ」

 忍は殺気を隠すと同時に座る

「そう言うもんだ、士郎。さっきいった事を忘れないでほしい、ではないと守りたいもの

衛宮切嗣

おっ

すら守れないぞ……

が何を教えたのかを考えながら魔術師となるのかそれと

も魔術を知るモノになるのかを考え直した方がいい。今回の聖杯戦争はお前にとって

は経験でしかならないかもしれない、死ぬことを対価にしたな」

「士郎さんは!士郎さんは死にません!」

 忍の言葉に桜は反論する。その眼は少し誰かに似ていた

「そうだな、そのために俺らは協定を結んだんだからな。セイバーそろそろおさめてく

れないか、でないとそろそろうちランサーが痺れを切らすぞ」

「そうですね、失礼しましたシノブ。ですがシロウに剣を向ければ私が受けて立つこと

をお忘れなく」

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「それはこちらも同じだ「マスターそんでこれどうするんだよ」ああ、すまん荷物もた

せっぱなしだったなランサー」

「ほんとによ、離れでいいんだよな」

「ああ、頼む」

 忍の顔は凛だけに何かをみせそれを凛は理解し、そして優雅なおやつの時間となるの

であった。

  〜◇〜

  男性は一人現在拠点となっている喫茶店にいた、名はジャンという教会の人間であ

る。聖杯戦争に参加しているマスターであるのだが冬木の町になれるため静かに暮ら

していた。

「ふむ、騒がしかった時期もありましたが静かになりましたね」

 喫茶店で優雅にコーヒーを飲みほしそして外に出た。

「さて、まずは……城を見に行きますかね、そうでしょうキャスター?」

  〜◇〜

372 第参拾弐話〝現実無地〟

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  その夜既にパジャマに着替えている凛が忍のベットに寝転がりながら忍からの報告

を聞いた。

「それで、どうだったの?」

「人だったものばかりだ、ほとんどは肉片だった。唯一のヒントとなるのは蟲の死骸だ

けだな」

「ヒッ!」

 凛がその異形の形に少しだけ悲鳴を上げたが忍もその形にはあまりよくないと思い

すぐにしまう。そしてもう一つそれは人の髪の毛だった。

「忍、それは髪の毛?なんで髪の毛なんか」

「色を見てくれ」

「色?あまり黒よね、それが」

「良く見てみろ少し紫の色が入ってるだろ、近くに居るだろう同じ色が混じってる人が」

「まさか」

「そうだ、衛宮嬢が同じ色質だ。もちろんただの偶然だと思っていたが、よく考えてみた

んだがなぜあの間桐慎二が二人を襲ったのかだ」

「それって」

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「仮説だが衛宮嬢、並びに士郎には過去の記憶が曖昧な部分が多い。もしかしたら間桐

家に「そんなはずはないわ」……凛」

「間桐家に居るのはあの慎二と……第四次聖杯戦争の折りになくなった私の妹だけだも

の」

「妹?……あの部屋のか」

「ええ、父が間桐との友好関係として出したのが私の妹」

「名前は?」

「ごめんなさいそれは分からないの」

「分からない?」

「父さまが私にそれを封印してしまったの、それが規定だからって」

「魔術師家の規定対して出したのか、間桐家の魔術的回路は既に亡くなっていたに近

いってことか」

「たぶんね、だけどそれも10年前に終わってしまったわ」

「四次の際にか……なるほどではその娘のと偶々衛宮嬢の髪の毛が似ていたということ

か?」

「そうじゃないと、だって妹なのに間違えるわけないしそれに」

「そうだな、髪質を変えるほどの魔術を間桐が持っていたようには見えない。この蟲は

374 第参拾弐話〝現実無地〟

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研究として使うぐらいにしておくとしよう。明日からはまた学園だ、何もないと思うが

気を付けるぞ」

「そうね、それじゃあ寝ましょう?」

「一応布団も「し・の・ぶ?」甘えるのが得意になったなお前は」

 そして二人は眠りにつくのであった。

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第参拾参話〞決意固執〞

  平和に過ぎていく中、聖杯戦争はある転機が訪れるのであった。それは急な魔力の反

応で衛宮家にいる魔術師は焦ることになったのだ。学園での授業を終え桜は早々に家

を出た、サーヴァントであるライダーからすぐに帰るように言われてしまったからだ。

帰り道そこに士郎が合流した。

「士郎さん、急にどうしたのでしょうか?」

「分からない、だけど忍からすぐに帰るように連絡を入れたから多分そう言う事なんだ

と思う」

「鴉さんがまさか手紙を持ってくるなんて。しかもちゃんと誰も居ない場所で、やっぱ

りすごいですね魔術師って」

「そうだな」

 2人はそして家につくのであった。

  〜◇〜

 

376 第参拾参話〟決意固執〟

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 士郎たちが帰路につく五分前に既に忍と凛は衛宮邸についていた。士郎たちよりも

後に出たがそれを飛ぶように電柱をかけていく忍にそれにお姫様抱っこを所望した凛

であった。二人はつくとすぐに離れにある武装を整える。そして士郎たちが帰ってき

た。

「二人とも予想よりも早いな」

「……私達としては生徒会の仕事をしていたはずのお二人がいるほうが不思議なのです

が」

「忍、遠坂一体どうしたんだ」

「セイバー、君には感じただろう」

 忍がそう言うとセイバーは頷きそしてその方向を見る

「シノブ、貴方が言っているのは先ほど感じた巨大な魔力の事ですね。既にランサーを

向かわせているようですが」

「ああ、こっちとしてはそれを見られていたのが少しばかりというかさすがはセイバー

の称号を持つだけはあるって感じかな?」

「それで忍いったい何が起きているんだ?」

「士郎そう焦るな、ただ郊外のほう学園の先にあるあの森に魔力を感じた。それも強い

物だ。あれはバーサーカーなみだったからな、だから緊急だと思って呼び出したんだ。

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凛もそれは感じたようだが今の段階で全マスターが分かっていないとなるとこっちも

警戒を必要ってことで俺が動いた」

「シノブ、一ついいか?」

 アーチャーが実体を持って現れた

「この数日何も起きなかったが、そろそろ動き出すということを見越しているのか?」

「……なぜそう思う」

「今現在ここには七人中四人のマスターが居る。確かに若干名は使い物にならないかも

しれない。しかし数で言えば圧勝出来るはずだ、なぜそこまで」

「聖杯を求めていないからだアーチャー」

 忍の返事にアーチャーは笑い消えて行った。士郎と桜は分からないようであったが、

やっと理解しだしたのだ

「まさかあのアサシンのマスターが新しい行動を起こしたとでもいうのか?」

「そう見るのが普通だ。バーサーカーが、アインツベルンが、やられるわけではないだろ

うがそれでも不安はある」

 忍がそう言いそれを杞憂だと思いたい者たちだった。

  〜◇〜

378 第参拾参話〟決意固執〟

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  ランサーはマスターである忍の命令で魔力が感じた場所に行くのであった。そこは

現在いないはずの教会からだった。ランサーはそれを見てすぐに相手はアサシンだと

思った、しかしそこから出てきたのは巨体と、そして傷だらけのアサシンだった。

「この程度で私のバーサーカーに勝てるとでも思ったのかしら?」

「相変わらずお主の作品は脆いのう」

「え、何を言ってるの……バーサーカーそこの気持ち悪いマスターも一緒にやっちゃえ

!」

「ウォッォォォォォォォォォォ!!」

「ここまでですかね……私は」

「よくやった方じゃよ、では〝最後の令呪〞じゃ。あの小娘の心臓をワシに届けさせろ」

「御意」

 アサシンが消え一瞬でイリヤの後ろに立つ、しかしそのナイフの攻撃はイリヤには当

たらずバーサーカーの剛腕にあたるのであった。イリヤとてアサシンの対策ぐらいは

しっかりとしている上にバーサーカーと言えど目標を失うことがなかった。

「ほう、さすがは半神じゃなぁ。まったくバーサーカーで呼び出すとは惜しいことをす

る」

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 二人のマスターの戦いは激化していくのであった。それを遠目で見たいたランサー

であったが、それを更に遠く見る目が存在することにランサーも気付いていたはいな

かった。

  〜◇〜

  教会の協力者であった言峰が消えジャンは隠れていた。彼は元来研究家でありその

研究の対象は錬金術。故に彼が呼んだ英霊も錬金術師だった。

「マスター、バーサーカーとアサシン、更にランサーが確認できました」

「ご苦労さまキャスター。しかし急な魔力だったけど、やはり変化させた眼は素晴らし

いですね」

「錬金術師ならこれぐらいの奇跡は出来てください。私の固有能力を最大限生かしては

いますがね。しかし他のマスターは随分と慎重のようですね」

「本来サーヴァントが死んでしまった場合の仲介が今は居ないのですから仕方のないこ

とです、誰もが自分の命を大事にします。貴方が犯した禁忌はそれにはあてはまりませ

んがね」

「言いますねマスター。しかし私は所詮〝砂を金〞に変えられる、ただそれだけですよ」

380 第参拾参話〟決意固執〟

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  〜◇〜

  ランサーが衛宮邸に帰還して状況を説明した

「森であのバーサーカーとアサシンがやりあってる。その余波ってことで間違いなさそ

うだぜ」

「バーサーカーの魔力ってことか、さっきのは?」

「多分だけどそれが妥当だと思うぜマスター」

「ランサー、アサシンの方のマスターは」

 ライダーが聞く

「気色悪さってのは相変わらずだったけどよ。前よりも魔力が薄い印象だ。どうもあの

マスターは長く無そうだぜ。ちなみにバーサーカーの方の嬢ちゃんは健在でアサシン

が押されていた。って感じかな」

「なるほど、シロウこれは好機と考えます。「まてセイバー」なんですかアーチャー」

「君はまだ分かっていない……サーヴァントは全部で七体だ。まだ一人居ないというこ

とを君は分かっているのか」

「アーチャー、貴方も英雄ならばわかるでしょうに。好機は逃しては意味が無いのです

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よ。シロウやサクラ、それにあなたのマスターたちは聖杯を求めているわけでない。な

らば協力体制で一機に殲滅を」

「セイバー、君はイノシシかなにかか、もし敵が殲滅が得意としてみろ。こちらは的にな

るだけだ」

 アーチャーとセイバーの論争、これは意外に多くある。衛宮邸でのご飯の時では士郎

と争うアーチャーであるがまったくもって忍にとっては円滑なコミュニケーションを

とれない英雄同士だと思っていた。

「二人は置いておいて、今回は攻めない。それでいいか?」

 忍の答えに有無を言わせない感じであったが

「忍、一つ確認したい、他のマスターはこのあとどうなる?」

「うん、前に持っていた魔術師は身内には甘いがそれ以下は関係ない。教えなかったか」

「だけど、バーサーカーのマスターは「士郎、いい加減にしろ、これは学園のお助けじゃ

ないんだ」……」

「士郎さん」

 桜が心配そうに士郎を見つめている。士郎は忍の言う事も分かるようではあるがだ

が彼の心の中には人を救うという大きな前提があった。

「前にも言ったが士郎、お前のやろうとしている人助けはそれだけで誰かを危険にさら

382 第参拾参話〟決意固執〟

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す。聖杯戦争は戦争なんだ。誰これ構わず救えるほどお前には力が無い、そんな力があ

奇跡

スクウコト

る奴は……今ここにいる英霊だけだ。

を代償に世界と契約したモノがここにいる

者たちだ。お前は生きている、家族だっている……それをもう一度考え直せ」

 そう言うと忍は退室した。それにセイバーも何か言いたそうであったがそれを言う

前に忍は退室した。

「衛宮君、それに桜も。忍はね貴方たちには生きていてほしいからああいうの、それじゃ

あなきゃ魔術なんてものを教えたりこうやって協力はしないわ、それは最初の頃に分

かっていることでしょう。彼は優しいのだけどその表現が不器用なのよ、だけど考えた

方がいいとは思うわ。もしこのまま魔術に関わり続ける気ならばね」

「遠坂さん、それって」

「簡単な話よ、記憶ぐらい消せるのよ魔術師って。貴方は事故で巻き込まれたに過ぎな

い。本来ならば教会が保護するはずだった、だけど来襲者や言峰が居ない、だからこそ

強さを一時的に求めるに過ぎないのよ。それもちゃんと頭に入れておいてね」

 凛はそういうと退室した。

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