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「対策書作成の技術」関連文書

2016年 12月 30日

外観検査流出防止の技術

外観検査流出防止の技術

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目次

はじめに ....................................................................................................................... 2

第一章 検査レベルの向上 ........................................................................................... 3

1.1 心得 .................................................................................................................. 3

1.2 検査のレベルアップ方法 .................................................................................. 3

1.2.1 ミスの発生する原因を追究し、改善する ................................................... 4

1.2.2 検査ミスの原因を調べる時に重要な事 ....................................................... 9

1.2.3 具体的な検査の方法(スキル)を身に付けさせる ................................... 10

第二章 疲労 .............................................................................................................. 16

2.1 休憩のタイミング ........................................................................................... 16

2.2 パワーナップ .................................................................................................. 17

2.3 生活習慣 ......................................................................................................... 17

2.4 目の疲れ ......................................................................................................... 18

2.5 年齢と疲労 ...................................................................................................... 18

第三章 検査環境など ................................................................................................ 19

3.1 検査室 ............................................................................................................. 19

3.2 検査器具 ......................................................................................................... 19

3.3 検査員毎のレベル管理 .................................................................................... 20

3.4 絶対流出させてはいけない不良 ........................................................................ 20

第四章 その他、重要な事 ......................................................................................... 22

4.1 製品の品質 ...................................................................................................... 22

4.2 経営者の理解 .................................................................................................. 23

4.3 改善をさせるには.......................................................................................... 24

最終章 まとめ ........................................................................................................... 25

【おまけ】 検査スピードを上げる方法 .................................................................... 26

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はじめに

「対策書作成の技術」(http://customer-claim.com)と言うサイトを公開して 2年以

上経過しましたが、一番多い問い合わせは「検査での流出を防ぐ方法を教えてほし

い」と言う内容です。

しかし、当サイトはあくまでも対策書の作成に焦点を当てたサイトである為、検査流

出を防止する詳細内容を新たなページとして追加する予定は無く、個別のお問い合わ

せに対しては、メールで返信する形で回答させて頂いておりました。

「対策書作成の技術」サイトの訪問者を見ると、深夜 1時とか 2時に訪問して頂く方

もおり、客先から強いプレッシャーが掛けられている事が垣間見えます。

また、「流出を防ぐ方法を教えて欲しい」とのいくつもの質問に対応させて頂いてい

るうちに、皆様のご苦労が自分の事の様に感じられ、「対策書と言う事後処理ではな

く外観検査で流出を防ぐ方法を共有しなければ。」と考える様になりました。

この様な考えが積もり積もってこの外観検査に関するレポートを作成するに至りまし

たが、このレポートはウェブサイト上へは公開いたしません。

(対策書とは異なりますし、新規サイトの立ち上げは費用が掛かる為。)

このレポートは、登録して頂いた方へ配布をする事に致しました。

同時にメルマガを発行し、新人から経験者までが検査や客先対応などで気を付ける点

を定期的に配信する事に致しました。

当レポートとメルマガが、少しでも皆様の日常業務のお役に立てれば幸いです。

対策書作成の技術 管理人より

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第一章 検査レベルの向上

1.1 心得

検査だけではありませんが、工程を管理する人が気を付けなければならない事は、頭

ごなしにダメと決めつけない事です。

検査員(作業者)がダメなのは、管理者のあなたが十分に説明していないからかもし

れませんし、適切な環境を整えていないからかもしれません。

ダメだと決めつけていた人でも、再度丁寧に理解させればできる様になる事は良くあ

ります。

もちろん検査員に原因がある場合もありますが、さじを投げてしまっては先に進む事

は出来ません。

特に流出が多くて客や上司に怒られていると、「うちの検査員はダメだ。」という考

えになってしまいます。

しかし、検査員はあなたが思う以上に真剣で、一生懸命頑張ります。

頑張る方法が違うので効果が出ないのです。

効果の出る頑張り方を指定して、結果自分が楽になる様に導くのはあなた自身のやり

方次第です。

1.2 検査のレベルアップ方法

検査のレベルを向上させるには、次の 2点を考えなければなりません。

・検査ミスの発生する原因を追究し、改善する

・具体的な検査の方法(スキル)を身に付けさせる

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第一章では、この 2つの方法に関して詳しく説明してゆきます。

1.2.1 ミスの発生する原因を追究し、改善する

流出内容に傾向は有るかの確認をしましょう。

例えば

・項目毎に検査漏れしやすい項目は有るか。

・検査員によって流出の多い人は居るか。

・検査時間によって流出の多い時間帯は有るか。

・品番によって流出の多い品番は有るか。

などです。

項目毎の検査漏れや検査員毎の検査漏れ、品番による検査漏れの傾向は、客先クレー

ムや外観検査後の出荷前検査(抜き取り検査等)の結果から把握できると思います。

外観検査後、出荷前の抜き取り検査を行っていないのであれば、外観検査員の検査が

適切かを把握する事ができませんので、抜き取り検査は行う様にしましょう。

人員の都合上どうしても抜き取り検査が出来ない場合は、半日でも一時間でも構いま

せん。

今日は検査員 Aさんと Bさんの抜き取り検査、明日は検査員 Cさんと Dさんの抜き

取り検査、というように順番にでもデータを取る様にしましょう。

検査時間に関してのデータが取れない場合には、昼過ぎと夕方だけでも検査漏れの状

況を把握するようにしましょう。

以下に、それぞれの傾向における可能性を書き出してみます。

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1.2.1.1 不良項目毎に漏れの傾向がある場合

不良項目で検査漏れの傾向があった場合、何故検査漏れが発生するのかを調べる必要

があります。

「対策書作成の技術」の流出原因のページでもリストに挙げましたが、不良の現象が

細か過ぎて検査器具が不適切だったり、光の反射で検出し辛かったり、検査項目から

抜けていたりする可能性があります。

流出原因ページ内の項目が全てではありませんが、参考にしてください。

(流出原因のページ:http://customer-claim.com/chap4_8/)

1.2.1.2 検査員は適正かの確認

検査員によって検査漏れの多い少ないがある場合、不良の多い人がどの様な検査をし

ているのかを調べる必要があります。

これに関しても、検査方法と身体的な問題の 2つに分けられます。

1.2.1.2.1 検査方法

特に検査は視線の移動だけで終わるので、どの様に視線を動かしているのか、その時

に何を考えているのかは、他人からはわかりません。

検査漏れの多い人の検査方法をじっくり観察する事と、実際にどのように検査をして

いるのか話を聞いてみましょう。

その際問い詰めるのではなく、フランクに話をする事が重要です。

指示と違った方法で検査をしていても、一回目は怒らない事。

正直に話してくれなくなります。

また、指示と異なる方法で検査をしている場合には、その理由も確認しましょう。

指示された方法を理解していないから独自の方法で検査をしていたのか、もしくは指

示の方法では非常に検査し辛い為、独自の方法で検査をしていたのか。

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その検査員が検査し辛いと感じているのであれば、他の検査員も同じく検査し辛いと

感じている筈です。

そうであれば、他の検査員もいずれ検査漏れすると考えて間違いありません。

1.2.1.2.2 身体的な問題

例えば、集中力の欠ける人は存在します。

そんな人に根性論で「集中しろ!」と言っても無理な話です。

その様な人は簡単な作業へ配置換えするようにしましょう。

悩み事があって集中できない人もいます。

人間だから仕方のない話で、「仕事中は余計な事考えるな!」と言っても頭の片隅に

残っていれば、「心ここに非ず。」な状態で検査している状態になります。

検査をしているのは人間だという事を忘れず、定期的に面談をして悩み事の相談に乗

ってあげたり、人間的な対応で何とか集中してもらう様にしましょう。

検査を行う前に 3分間程瞑想をする事も、集中力アップに効果が有ります。

身体的な問題としては、色盲の人もいるかもしれません。

東南アジアの人で色盲の人は結構多く、もし外人さんに検査を行わせているのであれ

ば、色盲検査も実施した方が良いでしょう。

(私が海外で働いていた時の検査員も、調べてみたら何人か色盲の人が居ました。)

日本人に対しても、念の為に検査してみましょう。

製品に対する知識不足もあるかもしれません。

検査に配属する前に研修を行いますが、配属後は忙しくて確認する暇もないかもしれ

ません。

また、わからない事を聞くと怒られると感じる人も多く、わからないまま続けている

人もいるでしょう。

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学校でやったような朝 5分程度の小テストを月に一回程度実施して、理解度は十分

か、忘れていないかを確認するようにしましょう。

不良の現象と名称を間違って覚えている人も結構いますので。

また、性格的に責任感の無さ過ぎる人も検査には向きません。

生産ラインで形が変わる様な加工であればミスが明確にわかりますが、外観検査は検

査員のミスが見た目で分かりません。

無責任な人は日頃の言動でわかりますので、休憩中などの会話などもよく聞いておき

ましょう。

管理者が嫌われていれば、嫌がらせにわざと不良を混入させているかもしれません

よ。

これらの内容は、現在の検査員に対して確認必要ですが、新規で雇う場合にも必要で

す。

1.2.1.3 時間による検査漏れの傾向

細かくデータを取る事が出来るのであれば、時間による傾向も確認します。

全体的に検査漏れの多い時間帯は何時頃か、その時間に何があるか。

時間で検査漏れの傾向があるとすれば、まず考える事が出来るのは疲労です。

疲労に関しては別の章で説明します。

疲労だけでなく、その時間帯には社外で騒がしくなり集中力が途切れる等の事がある

かもしれません。

可能であれば追跡してみましょう。

あと、無視できないのが「ポストランチディップ」です。

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ポストランチディップとは昼食後に眠くなる症状ですが、気持ちの問題ではありませ

ん。

人の生体リズムで昼食後(14時頃)に深部体温が若干下がる時間帯があり、その時間

に眠気を覚えます。

(深部体温を下げる為、体の末端部が放熱板の様にポカポカします。)

また、食事により血糖値が上がる事でオレキシンの働きが弱くなる事で、覚醒度が下

がり更に眠気を促進させます。

特に女性は家庭環境やホルモンバランスで睡眠時間が短くなったり、睡眠の質が悪く

なりがちです。

また、40歳を超えると加齢によっても睡眠の質が落ちますので、ポストランチディッ

プの影響を強く受けやすく、昼に耐え難い眠気に襲われる事もあります。

正しいリズムで生活していれば、このポストランチディップは 14時頃がピークになり

ますので、正しい生活をしている人程昼過ぎに眠気を訴える事でしょう。

それを根性論で、「眠気は我慢しろ」とか、「気持ちがたるんでいる証拠だ」とかで

片付けていませんか?

検査漏れを防ぐには、もっと理論的に考えるべきで、このポストランチディップにつ

いても真剣に対処すべき問題だと思います。

ちなみに、コーヒーを飲むと覚醒度が上がり眠気が覚めると言いますが、遺伝的に効

かない人もいます。

睡眠のメカニズムとして、アデノシンという睡眠物質がアデノシン受容体と結合する

事で、脳を覚醒させるドーパミンなどの神経伝達物質の放出を抑制します。

これが、コーヒーを飲む(カフェインを摂る)事で、カフェインがアデノシン受容体

と結合してしまい、ドーパミンなどの神経伝達物質の放出を抑制しなくなる為、脳が

覚醒するのです。

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しかし、日本人は遺伝的にアデノシン受容体の感受性が低い為、カフェインの効き目

が弱いのです。

(「カフェインが効かない理由と対処法」http://sproc.jp/?p=990の記事より)

一番効果が有るのは、20分程度の仮眠です。

14時頃に仮眠時間を確保する事で、ミスを防ぐだけでなく、午後の作業効率が上がる

データもありますので、真剣に考慮すべき内容です。

1.2.1.4 品番による検査漏れの傾向がある場合

何故か同じ品番や同じような形状の製品だけ頻繁に検査漏れを起こす場合もありま

す。

規格が他品番と異なるが検査員が理解できていなかったり、検査項目が他品番より多

かったり、判断の難しい項目が含まれていたり、検査し辛い形状だったり、様々な原

因が考えられます。

本来検査に時間の掛かる品番のはずが、他品番と同じスピードでの検査を無理強い

し、検査が雑になっているのかもしれません。

もしくは、該当品番は生産ラインでの不良発生率が高いので、外観検査で全ての不良

を検出し切れていないのかもしれません。

通常は検査標準に合わせて検査を行いますが、検査漏れの多い品番は原因を突き止

め、専用の検査標準にて専用の検査員で検査を行う様にしましょう。

1.2.2 検査ミスの原因を調べる時に重要な事

ここまで検査ミスの原因としてどの様な可能性があるかを記述しておりますが、一番

確実なのは悩んでいるあなた自身がミスの発生する要因を考えながら、実際に検査を

行う事です。

30分とかの短時間ではなく、検査員の気持ちを理解する為に、1日や 2日検査工程に

入り込みます。

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そして、検査にやり辛さはないか、要求するスピードで確実な検査が出来るか、検査

漏れを起こすとしたらどんな時かを考えながら検査を行います。

検査員は「良品」「不良品」を仕分けるのが仕事ですが、あなたが検査する時は「ミ

スの原因となる可能性を探す」事が目的です。

それを意識しながら検査を行えば、検査員では見えない「ミスし易いポイント」が見

つかるはずです。

また検査に慣れないあなたは、恐らく検査漏れを起こします。

その検査漏れの原因は、あなたが一番知っている筈ですし、他の検査員も同じミスを

する可能性があるポイントです。

実際にあなたが検査しているので、どの様にしたら防ぐ事が出来るかも思いつく事が

出来るでしょう。

面倒くさいかもしれませんが、本当に検査漏れを防ぎたいのであれば、これくらいは

やる様にしましょう。

1.2.3 具体的な検査の方法(スキル)を身に付けさせる

ここまでは原因があっての対策による改善ですが、そもそも検査員の検査スキル自体

も向上させる必要があります。

1.2.3.1 検査に適正な人

スキルの向上の前に、検査員の適正度を確認する必要があります。

検査に適した人は、次の条件を満たす人です。

・集中力があり、継続できる

・忍耐強い

・理解力、判断力がある

・目が健康

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加工の様に単調で、作業により形が変わるのであれば、回数をこなす事でスピードと

正確性は向上します。

しかし、検査は頭を使う仕事です。

慣れでスピードは上がりますが、正確性は知識と判断力が無ければ習得できません。

頭を使う事で正確性が上がるので、他の工程よりも優先的に優秀な人材を配置する様

にしましょう。

1.2.3.2 検査に必要なスキル

検査で必要なスキルは、検査スピードが速くて検査漏れが少なくなる事です。

それぞれの人のやり方で検査をさせるのではなく、一番早くて正確な人の方法を分析

し、そのやり方で徹底する事です。

(これがいわゆる検査標準となります。)

その検査標準の為に抑えておく項目を説明します。

・基本的知識がある事

・流す検査か止める検査かを明確にする

・見える範囲と判断できる範囲

・適切なスピード(検査のリズム)

・何か変だ!と感じさせるか、明確にさせるか

・判定をぶれさせない

以下にこの 6つを説明します。

■ 基本的知識がある事

難しく考える事はありませんが、製品について、不良の名称と現象について、良否判

定について、どのようにしたら検出し易いかなどの基本的情報です。

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知っていなければ検査できないと思いますが、知ったかぶったり、最初に分からない

点を明確にしておかなかった為、後々聞き辛くなっている人もいます。

研修時にしっかりと教え込む事に加え、定期的に知識の確認するようにしましょう。

あたなには当たり前の製品かもしれませんが、初めて見る人にとっては知らない事だ

らけです。

■ 流す検査か、止める検査か

流す検査とは、視線を一点に固定し製品を止める事無く動かして行う検査です。

もしくは、製品を固定して視線を止めずに移動させてゆく検査方法です。

後者の場合は視線が飛んでしまう事があり、飛ばしてしまった箇所に不良があると検

査漏れにつながります。

止める検査は、製品を小さなブロックに分け、視線を固定し製品をブロック毎に止め

ながら動かして行く方法です。

もしくは、製品は固定して視線をブロック毎に止めながら製品を検査します。

流す検査より時間が掛かりますが、視線の飛びが無い為検査漏れも少なくなります。

どちらが良いかと言うよりも、どちらが向いているかになりますので、実際に自身で

やってみたり、検査員の方にやってもらったりしながら、適切な方を選択しましょ

う。

(検査員は正確な方ではなく、自分のやり易い方、自分が今までやってきた方を選ぶ

事がありますので、管理者の見極めが必要です。)

この流す検査か止める検査かを明確に指定しなければ、検査員は自分のやり易い方法

で検査してしまいますので注意が必要です。

■ 見えるエリアと判断できるエリア

上の止める検査で製品をブロックに分けて、視線をブロック毎に移動させて検査を行

う方法の場合ですが、ブロックを大きくし過ぎるとブロック全体の検査をする事が出

来なくなります。

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視野に入るエリアは広いのですが、実際に認識して判断できるエリアは案外狭いもの

です。

ブロック分けを細かくすると検査の時間が掛かってしまいますが、確実に検査をする

のであればブロックを細かく(適切なサイズに)分けましょう。

■ 適切なスピード(検査のリズム)

上のブロックの説明でもありますが、納期に間に合わないとか検査員の絶対数が足り

ないからと言って、検査のスピードを上げさせると、当たり前ですが精度は落ちま

す。

流す検査では流すスピードが速くなりますので、視線が飛び易くなります。

止める検査では、一回で検査するブロックが広くなりますので、視野に入っているけ

れど検査できていない状態になります。

遅ければいいと言う訳ではありませんが、早過ぎては検査が雑になるだけですので、

適切なスピードを探し出し、適切なスピードで検査できるようにしましょう。

適切なスピードを身に付けさせるには、メトロノームを使うと良いでしょう。

リズムに合わせて視線を移動させ、そのリズム内で認識して判断させるようにしま

す。

何よりも一番大切なのは「適切な検査スピード(リズム)を探し出す事」なので、早

過ぎず遅過ぎないスピード(リズム)を見つけ出す事からまずは始めましょう。

■ 何か変だ!と感じさせるか、明確にさせるか

不良の検出方法ですが、不良項目が 1つしか無ければ、その不良をイメージさせなが

ら検査をさせればよいのです。

例えば、部品の欠品検査であれば、漠然と製品を眺めさせるのではなく、明確に欠品

のイメージを持ちながら製品を検査させます。

しかし、一つの製品で沢山の不良項目が存在する場合があります。

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その時は、個別の不良項目のイメージを持ちながら検査を行わせる事は難しいので、

製品を見て「何か変だ。」「何か良品と状態が違う。」と違いを気付かせる事ができ

なければなりません。

そして、その違う状態はどの様な症状であり、判定規格に対して規格内か規格外かを

判断します。

この様に「何か良品と違う。」と気付かせる事が出来る様になるには、とにかく沢山

の不良を見させる事が重要です。

また検査漏れし易い現象は、検査員にとっては「気付きにくい現象」である可能性も

あります。

気づきにくい現象に関しては、常に頭に入れて検査をする必要があります。

その為には、毎回休憩明けなどのタイミングでその不良を確認させてから検査を行わ

せる事も大切です。

その時に毎回同じ内容を確認させると慣れてしまい注意しなくなってしまうので、毎

回違う内容にするなど工夫する事も必要になります。

■ 判定をぶれさせない

欠品の様に有るか無いかを判断する検査であれば、判定がぶれる事はありません。

また、数値で明確になる規格も判定がぶれる事はありません。

困るのは見た目(外観)の色合い等を判定する項目です。

人間なのでどれだけ経験のある人でも、判定は変わります。

例えば赤色を判定する時に、薄い赤、濃い赤など色々な赤色が流れてくる場合には、

限度見本の判定基準に沿って良否判定する必要があります。

しかし、様々な赤色を見続けると、限度見本の赤色のイメージが分からなくなってき

ます。

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それこそ良品ばかり流れている所に異なる赤色が流れて来るのであれば、簡単に不良

と判断できます。

しかし、生産ラインでの品質がばらつき様々な赤色が存在すると、だんだんと自分の

頭の中にある限度見本の赤色が分からなくなってくるのです。

その様な自分の頭の中のニセ基準をしっかりとリセットさせる為に、検査員一人ずつ

に限度見本を配布して、わからなくなったらいつでも確認できる様にする必要があり

ます。

また、定期的に(1時間に 1回など)限度見本を確認させて、頭の中に限度見本の色

を刷り込ませる必要があります。

これは当たり前の事ですが、実際には同じ程度の現象をいくつも揃えるのは中々困難

です。

よって何部も限度見本を揃える事が難しくなり、数人で1部を共用する事になりがち

です。

この様な場合、間違った判定で検査を続ける人も出てくるかもしれませんので、限度

見本は人数分揃える様にしましょう。

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第二章 疲労

検査を続けて疲れるのは、体、目、脳です。

体の疲れは集中力の低下を招きますし、目の疲れは不良が見辛くなります。

そして何より重要なのが、脳の疲れです。

検査は目で認識し、脳で判断する作業です。

脳が働かなければ目に映った製品も、ただ「眺めているだけ」の状態になります。

この状態を避けるには、疲労を蓄積させない事が重要です。

2.1 休憩のタイミング

脳の疲れを予防(防止)する方法として一番重要なのは、疲れを感じる前に休憩する

事です。

私はドライブが好きで、知人と何十時間も運転して日本各地を回っていた事があるの

ですが、疲れてから運転を交代していたら、二人とも直ぐにバテてしまいました。

しかし、ある時「疲れていなくても 1時間半で運転交代」というルールを作ったら、

どれだけ運転しても全く疲れないのです。

この経験を検査員の疲労回復に応用し、疲れる前に休憩を挟むようにしました。

会社の休憩時間は 2時間毎ですが、外観検査だけはその間に 5分間だけ休憩をはさみ

ます。

即ち、1時間毎の休憩です。

この 5分間の休憩には、筋肉の凝りをほぐして血行を良くする為、体操を取り入れて

いました。

休憩時間の設定には、集中力の続く時間も考慮する必要があります。

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いくら細切れに休憩した方が良いと言っても、集中力が高まっている時に作業を止め

てしまってはいけません。

集中力が途切れ始めるくらいの時間帯に休憩を入れると良いでしょう。

どの様に判断するかと言えば、集中力が切れ始めると一点集中だった検査態度が、ム

ズムズ動き出したり、首を曲げて凝りをほぐしたり、ため息をつき始めたり、お喋り

が始まったりします。

午前と午後では集中力の途切れる時間も違うかもしれませんので、何日間か観察して

みましょう。

2.2 パワーナップ

先にもポストランチディップに関して記述しましたが、それを防ぐ為の 20分程度の仮

眠(パワーナップと言います)は、眠気を取るだけではなく疲労を取り除き効率を上

げる効果もありますので、是非前向きに検討しましょう。

パワーナップの姿勢は椅子に座ったままうつ伏せたり、背もたれにもたれたり、どの

様な姿勢でも構いません。

30分以上寝てしまうと深い眠りに入ってしまい、目覚めても脳が働かない状態になっ

てしまい逆効果なので、時間は 20分に留めておきましょう。

実施は 14時頃が適しているのですが、休憩との兼ね合いなどもあるでしょうから、昼

休憩を 20分延長して検査開始前に仮眠時間を設けても良いでしょう。

コーヒーで覚醒度合いが上がる人は仮眠が取れなくなってしまうので、コーヒーを飲

む時間も調整する必要があります。

(カフェインが作用するのは摂取後 30分程経過後です。)

2.3 生活習慣

強制は難しいかもしれませんが、生活習慣についても指導を行う必要があります。

特に睡眠時間は脳と体の疲れを取り、情緒を安定させる重要な休息時間です。

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睡眠前の喫煙や飲酒、スマホ使用など睡眠の質を落とす行為を避け、7時間は睡眠時

間を確保するように指導しましょう。

また、栄養の偏りは疲労回復にも影響しますし、睡眠の質にも影響します。

バランス良く 3食しっかり食べる食生活や、積極的に体を動かす様な休日の過ごし方

についても言及するようにしましょう。

2.4 目の疲れ

目薬は目の疲れを取るのに効果的です。

社内で使用する目的と限定するのであれば、会社で購入し配布しても大きな金銭的負

担にはならないのではないでしょうか?

2.5 年齢と疲労

年齢を重ねると、疲れやすくなりますし、疲労が残りやすくなります。

30代までは普通に生活していれば翌日には疲れもとれていた所、40代に入ると睡眠

時間を長くしたり、栄養剤を飲まなければ、疲れが取れなくなってきます。

40歳を超えると維持するにも努力が必要となり、何もしなければ衰える一方なので

す。

ちなみに疲労回復に重要な睡眠の質も、年齢を重ねる毎に落ちてゆきます。

若い頃は何となく眠ればぐっすり眠れて疲労も取れていましたが、40歳を超えると睡

眠の質を上げる生活習慣を心掛けなければならなくなります。

管理者の方が 40歳を超えていれば自覚があると思いますが、若ければ理解し辛い事か

もしれません。

自分基準で話をするのではなく、年齢によって体の状態は異なる事を頭に入れて管理

をする様にしましょう。

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第三章 検査環境など

検査の環境も重要です。

集中できる環境、邪魔が入らない環境、疲れにくい環境を整える必要があります。

3.1 検査室

理想を言えば、騒音、振動、他部署からの搬入など一切無く、適温で管理される集中

力の途切れない環境が理想です。

難しい場合には、耳栓を使用させて集中力を上げさせる手もあります。

騒音が入らない環境であれば、ボリュームを絞って集中力を高める音楽を流す事も効

果があります。

テーブルや検査器具の高さが合わないと、腰が曲がった状態で長時間検査をする場合

もあります。

無理な体勢での検査は疲労が早まるだけなので、各検査員に合った設定にしましょ

う。

3.2 検査器具

外観を目視検査する前提での話です。

器具は拡大鏡、ルーペ、顕微鏡、肉眼検査などあると思います。

倍率が大き過ぎると見辛い不良、小さ過ぎると見辛い不良、反射すると見辛い不良、

下地の色と同系色で見辛い不良、明るさ不足で見辛い不良など様々な現象がありま

す。

不良の項目によって器具を変える必要がある場合には、時間が掛かりますが器具を変

更して 2段階で検査する必要もあります。

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適切な項目を適切な器具で検査できているかは、見直せば何か発見があるかもしれま

せん。

3.3 検査員毎のレベル管理

検査員のレベルを把握する必要がある事はこれまでにも述べてきましたが、改善の見

られない検査員は管理者の隣で検査させる様な事もしてみましょう。

通常と異なる場所で検査させる事での懲罰的な処置と、管理者が目の届く範囲で検査

をさせる事での監視、わからない内容を直ぐに質問できる利便性などが目的です。

また、検査員自身どれだけ正確に検査が出来ているかを理解していないかもしれませ

ん。

正確に検査している人も、「私は検査ミスしていないだろうか?」と心配しながら検

査をしたり、逆にミスの多い人が「私は間違った検査はしていない。」と思っている

かもしれません。

管理者のフィードバック不足が問題です。

実施しているかもしれませんが、何らかの形で検査員毎の成績を一覧にして毎週掲示

する事で、自身の正確性を把握してもらう様にしましょう。

(学校での通信簿と同じです。)

3.4 絶対流出させてはいけない不良

絶対に流出させてはいけない不良は有ると思います。

完全に機能的な異常をきたす内容の不良です。

それに対して、検査規格書には掲載れていますがどうでもいい内容の不良項目もある

はずです。

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客先によって使い分けが必要と思いますが、受け入れ検査をやっていないような客先

に対しては、「絶対流出させてはいけない不良」と「どうでもいい不良」を同列に語

る必要はないと思います。

受け入れ検査をやっている客先は、受け入れ検査基準書に沿って検査をしますので、

どうでもいい不良ですらクレームしてきます。

受け入れ検査を行っていない客先は、客先の生産ラインで不良が確認された時のみク

レームが発行されます。

その様な場合には機能的な不良で見つかる場合が多い為、機能不良に集中して検査を

すれば良いのです。

これに関しては実施するしないは自身で判断して頂きたい内容ですが、当方では客先

によって検査レベルを変えていました。

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第四章 その他、重要な事

「その他」としましたが、重要な事に順序はありません。

重要な内容なので、飛ばさない様にしてください。

4.1 製品の品質

不良の 10%は検査漏れします。

例えば不良率 1%の製品があれば、0.1%は流出しているのです。

この場合、1万個投入していれば 100個不良であり、10個は検査漏れします。

生産ラインで発生する不良率は、大きく流出率に関わっているのです。

「それを防ぐのが検査の仕事」

と言われるかもしれませんが、実際にやってみるとわかりますが、不良だらけの製品

を検査する時は、検査漏れを注意するので時間も掛かりますし、注意しても検査漏れ

してしまいます。

この様な観点からも、客先への流出を防ぐ取り組みは全社で取り組む事柄です。

それこそ量産に入る前の段階で不良の出にくい材料や設計、作り易い設計、なるべく

仕様を緩和してもらう所から始まり、工程管理で不良の発生を防ぎ、不良が出た場合

は次工程へ流さない様に工程内で検査して識別し、限りなく良品だけを最終の外観検

査に渡す努力が必要です。

いわゆる ISO9001の概念そのものです。

品質保証システムの本質を理解して、書類作業としてではなく本来の目的通りに活用

できれば、有意義な仕組みです。

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工程検査員は外観検査員と同じレベルでなければ、間違って良品を不良品判定してし

まう事もありますので、外観検査員と同じ教育や管理が必要になります。

大変ではありますが、正攻法として流出を防止するのであれば、外観検査へ来る不良

の数自体を減らすようにしましょう。

(そもそも簡単に不良を減らす事が出来ないから外観検査に負担が掛かっている状態

になっているのだと思いますケド。)

4.2 経営者の理解

上の「4.1 製品の品質」の話と共通する所がありますが、経営者(及び部課長級)の

理解と姿勢が重要です。

「検査は利益を生み出さない」と単純に検査部署を費用削減のやり玉にあげ、不良が

多発しているにもかかわらず限りなく検査員を減らす経営者(や部課長)がいます。

そういう経営者(や部課長)に限って、検査部署に厳しく効率化を求めたり、クレー

ムの責任追及をします。

しかし、これは「検査は利益を生み出さない」の使い方を間違っています。

検査に掛かる人員や時間を最小限にする為には、検査部署に効率化のプレッシャーを

掛ける事ではなく、設計部署や生産部署をとことん追い込んで、極限まで歩留まりを

向上させる事が重要です。

この様な事を理解せず、どこかで覚えた「検査は利益を生み出さない」と言うフレー

ズを理解もせずに使用して、「お前の部署は利益を生まないんだから、なるべく少な

い人数でやれ」と言う暴言を吐く経営者(及び部課長)には、恐れる事無く「人が行

う検査は 100%ミスが発生する」「不良の 10%は見逃す」と言う原則を主張しましょ

う。

当然ですが、主張するのであれば外観検査部門自身も独自に何らかの効率化や改善活

動を行っていないと強く主張できません。

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忙しく辛いかもしれませんが、他部署の文句ばかりを言うのではなく、自らも何らか

の改善活動は行うようにしましょう。

4.3 改善をさせるには

「どれだけ発破をかけても全く品質が上がらない。」

この様な悩みがあれば、解決するには方法は一つしかありません。

コンサルタントを雇う事です。

自社の社員にどれだけ発破をかけても改善されないのであれば、社長をはじめとする

全管理職に能力が無いのです。

ムキになって否定しても、結果が出ていなければそれが現実です。認めましょう。

また、自分達の能力を上げて会社を良くする気持ちも無い企業文化なはずです。

日々の仕事をこなし、上司の小言を聞き流して毎日が過ぎてゆく。

こんな人たちの集まった会社が改善されるはずありません。

そのしわ寄せがどこに来るかと言えば、経営者と検査部門です。

経営者の能力が無くて会社の状態が悪いのですから、経営者は自業自得です。

ですが、検査部門はいい迷惑です。

この様な場合には、お金を払ってコンサルタントを雇い、お金を払った分の結果(意

識改革と品質改善)を求めるしかありません。

「お金を掛けずにできる方法はないか?」

と考えるかもしれませんが、ありません。

これまで頑張って改善しようとしても変わらなかったんですよね?

なら、これからも変わりません。

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最終章 まとめ

最後まで読んで頂きありがとうございました。

管理者は「これを守れば間違いない」と言う方法を設定し、検査員にその通りさせる

ことが仕事です。

しかし、特に検査は脳を使う作業なので、通常の加工の様に簡単にはいきません。

「これを守れば間違いない」と言う方法を探し出す事が非常に難しいのです。

はっきり言って、このレポート通りに行えば検査が完璧になり、流出がゼロになる事

はありません。

でも、間違いなく管理される方々の改善のきっかけにはなる内容です。

大切なのは、常に何が悪いか、どうすれば良くなるかを考え続ける事です。

このレポートの範囲を超えて、どこまでも検査精度向上を追求し、いつの日か検査漏

れゼロを達成できるようになる事をお祈りしています。

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【おまけ】 検査スピードを上げる方法

検査のスキルを身に付ける個所でも説明しましたが、検査スピードは速過ぎてはいけ

ません。

指定のリズムで指定のスピードで検査を行う事が重要です。

その状態でも、敢えてスピードを上げる方法は?と言われれば、不良を減らすか、不

良の判定をしない事しかありません。

検査スピードを落とす要因は、「判断に迷う事」と、「不良に対する処置」です。

なので、不良が減れば判断に迷う事もありませんし、不良品箱まで手を伸ばして入れ

る必要もありません。

不良を減らす事が無理なのであれば、不良を判断させない事です。

良品かな?不良かな?と考えたり、限度見本を確認したりしている時間がもったいな

い。

迷ったら直ちに「迷いました箱」に入れ、定期的に巡回する管理者が良否判断すれば

よいでしょう。

更に挙げれば、生産ラインで保証する項目を作る事です。

ロット単位で生産している時、生産工程でロットに付き 1個の製品を確認すれば、全

数間違いなく良品と言える項目があります。

この様な項目は生産ラインで品質を保証させ、外観検査では検査をしない。

すると検査項目が減るので、多少は検査スピードも上がります。

もしくは、簡単な内容であれば生産ラインで全数検査を行わせて保証させれば、外観

検査で検査をする必要が無くなります。

そうは言っても、やはり不良を減らす事が一番検査スピードアップにつながりますの

で、無駄金を無くす為にも歩留まり改善に取り組むようにしましょう。