運動が脳に及ぼす影響kasuga/activity/...運動をして脳の準備を整えてから,新しいこと...
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運動が脳に及ぼす影響
H23.2.9
M1
窪田 泰三
脳を最高の状態に保つには 体を動かさなければならない!!!
【運動をするとなぜ気分が良くなるのか】
• ストレスが解消される
• 筋肉の緊張が和らぐ
• 脳内物質のエンドルフィンが増える
ストレスがかかった時に分泌され,鎮痛効果のある物質である.
「脳内麻薬」とも呼ばれ,モルヒネと同じ効果である,多幸感や恍惚感が得られる.
運動することで,心臓から脳へ血液が盛んに送り出され,脳が良い状態になる.
運動をして脳の準備を整えてから,新しいことを覚えようとすれば,脳に入ってくる刺激がニューロンの結合を強めるとうことが報告されている. つまり・・・
さらに,新しい情報によってできた脳の回路と同
じ情報の電気信号が何度も通ることで,さらに結合は強くなる.
運動は,きわめて重要な神経化学物質や成長因子に劇的な影響を及ぼすことがいえる.
新しい情報を電気信号に変換し,その情報を取り入れるために神経細胞どうしを新しく結びつけること
学習
運動は,学習に細胞のレベルから直接的に影響する.
■新しい情報を記録し分析する脳の機能を高め る.
■すでに結合している負のニューロンの結合を 壊す.
【運動が学習に及ぼす3つの効果】
2.新しい情報を記録する細胞レベルでの基盤
として神経細胞どうしの結びつきを準備し,
促進する.
1.気持ちが良くなる,頭がすっきりする,注意力
が高まる,やる気が出る.
3.脳内の物質のバランスを保つ.
【脳内で重要な役割をする神経伝達物質】
脳内の電気信号送信の約80%を担う2種の神経伝達物質
には,グルタミン酸とガンマアミノ酪酸(GABA)がある.
グルタミン酸 ガンマアミノ酪酸(GABA)
・ニューロンの活動を活発にする・これまで結合したことのないニューロンどうしの結合を促進
・グルタミン酸の働きを抑制する
脳の信号操作と全ての活動を調整する物質
ドーパミン ノルアドレナリン セロトニン
・ニューロンに命じてグルタミン酸を作らせる・ニューロンが効率よく情報伝達できるようにする・余計な電気信号がシナプスに伝わらないようにする・神経化学物質全体のバランス調整
【ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニン】
セ ロ ト ニ ン
ドーパミン ノルアドレナリン
統合失調症 うつ病
パーキンソン病
脳由来神経細胞因子(BDNF)
新たなニューロンを作るための重要な要素であり,脳細胞の増加には不可欠な神経系の蛋白質である.ニューロンに新しい枝を伸ばさせたり,脳のネットワークを構築する働きがある.
脳の血流量が増加し,シナプスの近くにある貯蔵庫からBDNFが放出されることが明らかになっている.
さらに,BDNFだけでなくIGF-1(インスリン様成長
因子),VEGF(血管内皮成長因子),およびFGF-2
(繊維芽細胞成長因子)といったホルモンが脳内
に召集され,BDNFと協力して学習を活性化させる.
IGF-1
VEGF
FGF-2
・グルコースを脳へ運ぶ・ニューロンを活性化・神経伝達物質を作らせる
・脳関門をこじあけ,他の物質を脳内に送り込む・脳内で毛細血管を作る(ニューロンの繋がりを強める)
・ニューロンの新生・ニューロンの長期増強
・ニューロンの機能を向上させ,成長を促し,強化する・IGF-1の摂取量を増やす
BDNF
【脳を育てるための適切な運動】
脳を育てるのに最適な運動の量や方法は明らかになっていない.
ウォーキング(低強度) ジョギング(中強度) ランニング(高強度)
・VGEF,FGF-2を生成し,たくさんの毛細血管を作る・ニューロンの結合を強める・新しいニューロンを作る・BDNFの増加
・BDNFの増加・加齢に伴う脳の減少を逆行・脳内物質の濃度を調整するヒト成長ホルモンが分泌される・神経伝達物質の生産量を増やす(特にIGF-1)
・セロトニン,ノルアドレナリン,ドーパミンが生成される
効果
55~65% 65~75% 75~90%最大心拍数エネルギー 脂肪 脂肪,およびグルコース グリコーゲン
【運動と脳に関する先行研究】
■回し車で運動したマウスの脳内で,ニューロンの成長,結合の強化に関わるBDNFが増加した.
■運動前より運動後の方が,20%早く単語を覚えることができた.また,遺伝子変異のためBDNFが作れない人は学習障害の可能性が高い.
■アメリカのネパーヴィル学区で0時限目に体育
の授業を設けた.0時限目の体育授業に出席した者は,成績が17%伸び,そうでない者は10%の向上に留まった.
■カリフォルニア州教育局の研究によると,スポーツテスト6項目を行い,全てのスポーツテス
トに合格した者の学力テストの点数は非常に高い値を示した.
まとめ
私たちの行動や思考などは全て脳が取り仕切っている.脳を最高の状態にするには,脳内の神経伝達物質や成長因子のバランスが保たれていることが重要であり,運動はこうした物質や因子に大きな影響を与える.
ストレスによって,病気やうつ病になる人が多い現代だからこそ,運動と脳科学をつなげて考える必要がある.