ELECTRONIC COMPONENTS & DEVICES...第1部電気特性及び専門用語説明 1.1 静電容量値...

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技術資料 はじめに タンタルコンデンサは純粋なタンタルパウ ダーから造られます。酸化二オブコンデンサ は酸化二オブパウダーから造られます。代表 的な粒子の大きさは2μmから10μmです。 パウダーはペレットを造るためにタンタル ワイヤーの周りで高圧力をかけプレスされま す。 タンタルワイヤーはアノード素子をコン デンサの外部電極に接合するためのものです。 次にペレットを高温度(おおよそ1200 ~1800℃)で真空焼結して、パウダー中 の不純物を除去すると同時に機械的強度を持 たせます。 真空焼結でパウダーはスポンジのようにな り、すべての粒子が大きな格子の中に接合さ れます。この構造は機械的強度を有しながら、 ポーラスになっているため内部面積が大きく なっています。(図2をご参照ください。) この内部面積が大きければ大きいほど静電 容量値が大きくなります。そのため比較的粒 子が小さい高CVパウダーは低電圧、高容量品 に使われます。図1は代表的なパウダーを示 します。パウダーの粒子サイズはパウダーの CV値により大きく違ってきます。ある容量 値・定格電圧の製品を生産する際に、使用す るパウダーと焼結温度を変えることにより内 部表面積が決まります。 図3に示します220μF/6Vを例に取りますと、 ここで εo:空間の誘電率(8.855×10 -12 F/m) εr :誘電体の誘電率 =27F/m (タンタル) =41F/m (酸化二オブ) d:誘電体の膜厚(m) C:静電容量値(ファラッド F) A:表面積(m 2 上式より 220μF/6Vのコンデンサの表面積は346cm 2 でこのページの半分位の大きさです。 酸化被膜を作るための電気化学工程によっ て誘電体がタンタルまたは酸化二オブの全表 面に形成されます。これを行うためにペレッ トを弱酸性の燐酸溶液に浸けます。 誘電体の厚みはフォーミング工程(酸化被 膜形成工程)中に印加される電圧で決まりま す。最初は誘電体が正しい厚さになるまで電 流を一定にしておきます。(これは印加電圧 がフォーミング電圧に到達するまでという意 味です。)その後電圧が一定になるように切 り替えます。そうすると電流が“0”近くに減 少します。

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技術資料 はじめに

タンタルコンデンサは純粋なタンタルパウ

ダーから造られます。酸化二オブコンデンサ

は酸化二オブパウダーから造られます。代表

的な粒子の大きさは2μmから10μmです。

パウダーはペレットを造るためにタンタル

ワイヤーの周りで高圧力をかけプレスされま

す。

タンタルワイヤーはアノード素子をコン

デンサの外部電極に接合するためのものです。

次にペレットを高温度(おおよそ1200

~1800℃)で真空焼結して、パウダー中

の不純物を除去すると同時に機械的強度を持

たせます。

真空焼結でパウダーはスポンジのようにな

り、すべての粒子が大きな格子の中に接合さ

れます。この構造は機械的強度を有しながら、

ポーラスになっているため内部面積が大きく

なっています。(図2をご参照ください。)

この内部面積が大きければ大きいほど静電

容量値が大きくなります。そのため比較的粒

子が小さい高CVパウダーは低電圧、高容量品

に使われます。図1は代表的なパウダーを示

します。パウダーの粒子サイズはパウダーの

CV値により大きく違ってきます。ある容量

値・定格電圧の製品を生産する際に、使用す

るパウダーと焼結温度を変えることにより内

部表面積が決まります。

図3に示します220μF/6Vを例に取りますと、

ここで

εo:空間の誘電率(8.855×10-12 F/m)

εr :誘電体の誘電率

=27F/m (タンタル)

=41F/m (酸化二オブ)

d:誘電体の膜厚(m)

C:静電容量値(ファラッド F)

A:表面積(m2)

上式より

220μF/6Vのコンデンサの表面積は346cm2

でこのページの半分位の大きさです。

酸化被膜を作るための電気化学工程によっ

て誘電体がタンタルまたは酸化二オブの全表

面に形成されます。これを行うためにペレッ

トを弱酸性の燐酸溶液に浸けます。

誘電体の厚みはフォーミング工程(酸化被

膜形成工程)中に印加される電圧で決まりま

す。 初は誘電体が正しい厚さになるまで電

流を一定にしておきます。(これは印加電圧

がフォーミング電圧に到達するまでという意

味です。)その後電圧が一定になるように切

り替えます。そうすると電流が“0”近くに減

少します。

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以上の内容は以下の化学反応式で表せます。

陽極

タンタル

2Ta → 2Ta5+ + 10e-

2Ta5+ + 10OH- → Ta2O5 + 5H2O

酸化二オブ

2NbO → 2NbO3+ + 6e-

2NbO3+ + 6OH- → Nb2O5 + 3H2O

陰極

タンタル

10H2O - 10e → 5H2 + 10OH-

酸化二オブ

6H2O - 6e- → 3H2 + 6OH

-

タンタルまたは酸化二オブの表面に酸化物

が形成されますがそのことは同時にそれが金

属(またはNbO)内部に成長して行くことを意

味します。酸化物は2/3が金属(またはNbO)

の外部にそして1/3が金属の内部に形成され

ます。現在のパウダー技術でタンタルコン

デンサと酸化二オブコンデンサの 大定格電

圧に限界があるのはこのためです。(図3をご

参照ください。)誘電体は高電圧下で機能し

ます。220μF/6Vのコンデンサを例に取り考

えますと、

化成電圧 = 化成率×定格電圧

= 3.5×6

= 21V

タンタル:

5酸化タンタル(Ta2O5)誘電体は1.7×10-9 m/V

の比率で形成されますので

誘電体の厚み(d)= 21×1.7×10-9

= 0.036μm

電界強度 = 印加電圧/d

= 167KV/mm

酸化二オブ:

5酸化二オブ(Nb2O5)誘電体は2.4×10-9m/V

の比率で形成されるので

誘電体の厚み(d)= 21×2.4×10-9

= 0.050μm

電界強度 = 印加電圧/d

= 120KV/mm

となります。

次にカソード(陰極)側の生産工程に移り

ます。

これは硝酸マンガンから2酸化マンガンへ

変化する熱分解を利用します。ペレットを硝

酸塩の水溶液に浸漬した後、約250℃の炉に入

れ2酸化マンガン層を形成します。化学反応式

で次のように表せます。

Mn(NO3)2 → MnO2 + 2NO2

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図4に示しました通りペレットの内部と外

部の表面に厚い膜を作るため硝酸の濃度を変

えてこの工程を数回繰り返します。

その後ペレットは2酸化マンガンとの結合

をより強固にするためグラファイトと銀の中

に浸します。電気的な接続は陰極表面にカー

ボン層を形成することによって可能となりま

す。カーボンは陰極側端子電極との接合を促

進するために導電性材料でコーティングされ

ます。部品を完成するための 終アッセンブ

リーはそれぞれの製品仕様とみなさまのご要

望に合わせて行われます。

この製造技術はAVX社の表面実装タイプの

他、樹脂ディップタイプ・樹脂封止リードタ

イプ等全てのタンタルコンデン

サと酸化二オブコンデンサに生かされていま

す。

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■第1部電気特性及び専門用語説明

1.1 静電容量値

1.1.1 定格容量値(CR)

測定用ブリッジ回路を用い2.2Vの直流バイ

アスで非共振回路に0.5Vp-pの正弦波信号

120Hzを印加し、20℃での等価直列回路の容量

値として測定します。

1.1.2 静電容量許容差

これは定格容量値に対し許容される容量値

の範囲を示します。

1.1.3 静電容量値の温度依存性

タンタルコンデンサの容量値は温度と共に

変化します。その変化は定格電圧とコンデン

ササイズに影響されます。

1.1.4 静電容量値の周波数依存性

容量値は周波数が高くなるにつれて減少し

ます。100KHzから共振点まではコンデンサの

容量値は下がり続けます。(共振点は定格に

より異なりますが0.5~5MHzです。)共振周波

数以上ではインダクターとなります。

1.2 電圧

1.2.1 定格電圧(VR)

85℃で連続印加できる直流定格電圧を示し

ます。

1.2.2 温度軽減電圧(VC)

これはコンデンサに連続的に印加できる

大の電圧を示します。+85℃までは定格電圧

に等しく、それ以上では125℃で定格電圧VRの2/3の値まで直線的に減少します。

1.2.3 サ-ジ電圧(VS)

直列回路抵抗が33Ω(CECCでは1kΩ)以上

のときにコンデンサに瞬時に印加できる 大

電圧です。サージ電圧は1回30秒以内の印加で

1時間に10回まで印加可能です。周期的に充電、

放電が繰り返される回路には適用しないで下

さい。

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1.2.4 サ-ジの影響

タンタルコンデンサと酸化二オブコンデン

サは電圧と電流サージに対し限界があります。

この事は電解コンデンサでは一般的なことで

す。これは誘電体に高電圧がかかった状態で

コンデンサが動作するためです。例えば6Vの

タンタルコンデンサは定格電圧印加時には

167KV/mmの電界強度を受けます(酸化二オブ

は120KV/mm)。コンデンサの両電極間に印加

する電圧は上表に示したサージ電圧定格を越

えないようにしてください。

タンタルコンデンサと酸化二オブコンデン

サは二酸化マンガン層の特性による自己修復

機能を持っています。但し低インピーダンス

回路ではこれの効果が限られています。低

インピーダンス回路の場合電流サージの影響

を受け易くなります。

電圧ディレーティング(使用電圧/定格電

圧)を50%以下にすれば部品の信頼性が増加

します。(37ページの図33をご参照ください。)

AVX推奨ディレーティングは84ページの表に

示しています。

急激な充放電がおこる回路においては、1

Ω/Vの直列保護抵抗を組み入れることをお奨

めします。もしできなければ、タンタルコン

デンサの場合にはディレーティングを30%以

下としてください。酸化二オブコンデンサの

場合にはディレーティングを80%以下として

ください。

このような場合、必要となる定格電圧を得

るためにコンデンサを直列に配置することが

できます。例えば、22μF・25Vのコンデンサ

を2個直列に接続すれば11μF・50Vのコンデン

サ1個と同じことになります。

(注)回路のテスト(例:ICTテストやファン

クションテスト)を行う際に通常の実使用

状態では見られない高電圧や過渡電流が

コンデンサにかかることがあります。この

様な場合適切な保護抵抗を接続することに

よりコンデンサを保護することをお奨めし

ます。

1.2.5 逆電圧と無極性化

コンデンサにかかる逆電圧の許容できる

大値は以下の通りです。

25℃で1.0Vを 大とし定格電圧の10%まで

85℃で0.5Vを 大とし定格電圧の3%まで

125℃で0.1Vを 大とし温度軽減電圧の1%ま

これらはコンデンサの極性が正しく回路上

に配置されていることを前提としてます。こ

れらの値は短時間の逆電圧に対してのみ規定

しています。極性を逆にし逆電圧を連続して

印加しますと漏れ電流の劣化に繋がります。

逆電圧が連続して印加されるような状況下に

おいては二つの同じコンデンサを互いに逆向

きに(陰極同士を)接続してください。この

様に接続しますとそれぞれ元のコンデンサの

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1/2の容量値になりますが無極性コンデン

サとなります。また、容量値はパルス発生時

または 初の2~3サイクルで通常の容量値

に到達します。この逆電圧規定は低い逆電圧

が例外的にかかることに対して設定されてお

り連続的に印加するためには設定されており

ません。

1.2.6 重畳交流電圧(Vrms)-リップル電圧

コンデンサに印加できる 大の実効交流電

圧です。(直流電圧+重畳される交流電圧)

直流電圧値と重畳交流電圧の 大値の合計は

温度軽減電圧VCを越えてはなりません。

詳しくは第2部をご参照ください。

1.2.7 化成電圧(フォーミング電圧)

化成電圧とは誘電体を形成する時の電圧で

す。誘電体層の厚みは化成電圧に比例し、定

格電圧を決定する要素でもあります。

1.3 誘電損失(DF)とTanδ

1.3.1 DF(ディシペーションファクター)

DFとはパーセント表示されたTanδの

測定値です。

DFは測定用ブリッジ回路を用い2.2Vの直

流バイアスで0.5Vp-pの正弦波信号120Hzを印

加し、測定します。DFは温度と周波数に依

存します。

(注)表面実装部品についての 大許容D

F値を標準品種表に記してあります。その

値は実装後の限界値です。

1.3.2 Tanδ

Tanδはコンデンサのエネルギー損失の測

定値です。特定の周波数の正弦波における

コンデンサの電力損失を示しています。“損

失係数”“誘電損失”とも言います。

1.3.3 DFの周波数依存性

DFは周波数と共に増加します。タンタル

コンデンサと酸化二オブコンデンサのDFの周

波数依存性は次のグラフに示しています。

1.3.4 DFの温度依存性

タンタルコンデンサと酸化二オブコンデン

サのDFの温度特性カーブは下図の通りです。

DFの 大値については標準品種表をご参照く

ださい。

1.4 インピーダンス(Z)と直列等価抵抗

(ESR)

1.4.1 インピーダンス(Z)

特定周波数に於ける電流に対する電圧の比

ですが、次の3つの要因で決定されます:二酸

化マンガン層の抵抗/容量値/電極と端子の

インダクタンス。高周波ではリードのインダ

クタンスがインピーダンスに も影響を与え

ます。上の3つの要因の温度特性と周波数特性

がインピーダンス(Z)の特性を決めます。

インピーダンスは20℃、100KHzで測定され

ます。

1.4.2 直列等価抵抗(ESR)

抵抗ロスは全てのコンデンサで発生します。

これらはいくつかの異なったメカニズムに

よって構成されています。コンデンサの内部

抵抗、接続抵抗、誘電体内部の粘性、欠陥に

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よるバイパス電流等です。これらのロスの影

響全てを合わせたものがコンデンサのESRと

考えられます。ESRは周波数に依存します。ESR

は次の式で表せます。

ここで、f=周波数(Hz)、C=容量値(ファ

ラッド)です。ESRは20℃、100KHzで測定され

ます。ESRはインピーダンスに影響を与える1

つの要因で、高周波(100KHz以上)に於いて

はインピーダンスの支配的要素となります。

このようにESRとインピーダンスは殆ど同じ

ものと考えることができますがインピーダン

スは10KHz以下でESRよりも大きくなります。

1.4.3 インピーダンスとESRの周波数依存性

インピーダンスとESRは周波数が低くなる

と共に増加します。低周波に於いては他要因

(コンデンサのリアクタンス)の影響でイン

ピーダンスとESRは分岐します。1MHz以上

(コンデンサの共振点以上)ではコンデンサ

のインダクタンスの影響でインピーダンスは

再び増加に転じます。

1.4.4 インピーダンスとESRの温度依存性

100KHzではインピーダンスとESRは同じ挙

動を示します。以下に代表的な変化カーブを

示しますが、温度上昇と共に減少します。

1.5 直流漏れ電流

1.5.1 漏れ電流

漏れ電流は印加電圧、印加時間、コンデン

サの温度に依存しています。漏れ電流は20℃

で定格電圧を印加し測定します。測定回路に

はコンデンサに直列に1KΩの保護抵抗を接

続します。定格電圧印加後3分~5分経過時点

での漏れ電流は標準品種表の 大値以下に

なっています。即ちタンタルコンデンサの場

合0.01CVまたは0.5μA、酸化二オブコンデン

サの場合0.02CVまた1μAのいずれか大きい値

以下でなければなりません。長期間電圧印加

しなかった製品でもこのことは当てはまりま

す。

1.5.2 漏れ電流の温度依存性

漏れ電流はグラフの通り温度上昇と共に増

加します。85℃~125℃の温度範囲で使用する

場合には 大動作電圧を下記の式に基づいて

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軽減する必要があります。

Vmax=[1-(T-85)/125]×VR

ここでTは使用(動作)温度です。

1.5.3 漏れ電流の電圧依存性

漏れ電流はディレーティング電圧を印加し

た場合には定格電圧印加時に比較し定格電圧

VR以下の領域では急激に減少します。漏れ電

流についての電圧ディレーティング効果を下

記グラフに示します。このことはどんな回路

においても信頼性を数段向上させることにも

繋がります。詳しくは第3.1項をご参照くださ

い。

1.5.4 リップル電流

大許容リップル電流は周囲温度からの温

度上昇値がわかればパワー損失規格から算出

することができます。(第2部をご覧ください)

1.6 インダクタンス(ESL)

ESL は共振周波数の評価をするときに重要と

なります。ケースサイズごとの代表的な ESL

は下表に示しています。

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■第2部 AC動作性能、リップル電圧と

リップル電流

2.1 リップル定格

交流回路に使用しますと、交流成分(信号

波形、振幅、周波数による)及び直流漏れ電

流により熱が発生します。現実的には直流漏

れ電流よりも交流成分の方が重要です。コン

デンサ内部における電力損失値は下記の式に

より計算できます。

ここで、

I =rmsリップル電流(A)

R=等価直列抵抗(Ω)

E=rmsリップル電圧(V)

P=コンデンサの電力損失値

Z=インピーダンス(Ω)、周波数は使用周

波数

上式より 大許容リップル電圧(Emax)は

表1

この式に於けるPは 大許容電力損失で下

表“電力損失定格”に記載されています。

しかしながら以下に対する注意が必要です。

1. 印加される交流電圧のプラス側ピーク

値と直流バイアス電圧の和はコンデンサの

定格電圧を越えないこと。

2. 直流バイアス電圧と交流電圧のマイナ

ス側ピーク値の和が逆電圧規格を越えない

こと。

歴史的なリップル計算法

前述しましたリップル電圧値とリップル電

流値は開放空間でコンデンサそのものの温度

を周囲温度から10℃上昇させるのに必要な電

力損失を経験から割り出し、それを使って算

出していました。

これらの値は表1に示されています。上式1

から 大許容リップル電流を算出できます。

上式2から 大許容リップル電圧を算出でき

ます。しかしながら基板に実装されたタンタ

ルコンデンサの熱伝導性はそれがどの様に実

装されたかによって相当変わります。

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さまざまな振幅の正弦波と矩形波を流すよ

うに設計されたテスト装置を使い、コンデン

サボディーに見られる温度上昇を赤外線プ

ローブを使って測定します。赤外線プローブ

を使うことにより熱電対による熱損失を防ぐ

ことができました。

C、D、Eケースサイズの結果は以下の通

りです。(図17)

図17

これらのコンデンサはFR4の基板でヒート

シンクなしで測定されています。1KHz~1MHz

のさまざまな周波数で測定しています。

上図からお分かりの通りCケースのコン

デンサのPmaxの平均値は0.11Wでした。これ

は表2の数値と同一です。DケースのPmaxの平

均値は0.125Wでした。この値は表2の値より

0.025W低くなっています。EケースのPmax

の平均値につては0.200Wという結果になりま

したが、これは表1に記載されている0.165W

よりもかなり高くなっています。

コンデンサの代表的なESRの周波数特性は

図18の通りで周波数に依存します。そのため

コンデンサが放散するトータル電力も周波数

により変化します。このことは実効電流対温

度上昇のグラフ図19に表れています。リップ

ル電流によるコンデンサの表面温度上昇は

100KHzよりも1MHzの方が低くなります。

図18

図19

タンタルコンデンサがフィルター回路に使

用され、2Ap-pの200KHzの矩形波が流れる場合

を考えてみましょう。矩形波は無数の基本波

の奇数倍の高調正弦波が重なったものです。

数式で表しますと

ISquare = Ipk1sin (2πƒ) + Ipk2sin (6πƒ) + Ipk3sin (10πƒ) + Ipk4sin (14πƒ) +...

特殊な部品は

Dケース/68μF/6.3Vを例にとりますと、

ESRの代表値は次のようになります。

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このことからトータル電力損失は0.069Wと

なります。

“電力-温度上昇”グラフに示されたDケー

スの結果よりこの電力はコンデンサの表面温

度が5℃上昇していることが分かります。

2.2 「OxiCap」酸化二オブコンデンサのリッ

プル定格

酸化二オブパウダーはタンタルパウダーに比

べ2倍の比熱を持っているため、OxiCapの許容

電力損失がタンタルコンデンサの1.2倍と

なっています。

2.3 熱管理

交流電流が流れる回路ではコンデンサ内部

の発熱はリップル電流によって引き起こされ

る電力損失が原因しています。それはI2Rに等

しく、Iはその周波数に於ける電流実効値です。

そしてRは同一周波数のESRです。熱はコン

デンサの表面から伝わります。ここからどれ

位の効率で熱が伝導されるかは基板の熱管理

によって決まります。2.1項の電力損失定格は

開放空間に於けるものです。効率的な放熱板

あるいは強制空冷を行えば2.1項の値に近づ

けることができます。

特に熱管理をしていない高密度実装におい

ては周囲温度より10℃上昇させるために必要

な電力損失は実際にはもっと少ないエネル

ギーで済むかも知れません。この場合、実際

のコンデンサの温度は熱電対プローブか赤外

線スキャナーによって測定することをお奨め

します。そしてもし制限値をこえていればよ

り低いESRの製品あるいはより高い定格電

圧製品を選定する必要があるかも知れません。

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■第3部信頼性と故障率の計算

3.1 定常状態

タンタル誘電体と酸化二オブ誘電体は基本

的に経年劣化致しませんしある環境下におい

ては自己修復機能が働きます。

しかしながら、きわめてまれですが動作中

に偶発の故障が起こることがあります。タン

タルコンデンサと酸化二オブコンデンサの故

障率は時間の経過と共に減少します。そして

他の電解コンデンサや電子部品と同じように

増加することはありません。

タンタルコンデンサと酸化二オブコンデン

サの実使用時の信頼性は3つの要因によって

決まります。

それは次の式で求められます。

F = FV x FT x FR x FB

FVは電圧軽減補正係数です。(使用電圧/

定格電圧)

FTは温度補正係数です。

FRは直列回路抵抗補正係数です。

FBは基本故障率です。タンタルコンデンサ

標準品は1%/1000Hです。

基本故障率

標準のタンタルコンデンサと酸化二オブ

コンデンサは定格電圧印加、定格 高使用温

度、回路インピーダンスが0.1Ω/Vの時にレ

ベルM(1%/1000H)に適合します。これは

基本故障率として知られており、実使用時の

信頼性を算出する際に使用されます。使用条

件の違いによる影響について以下に述べます。

使用電圧と電圧ディレーティング

使用電圧よりも高い定格電圧値を持った

コンデンサを使用することにより実使用上の

信頼性を向上させることができます。この事

は電圧ディレーティングとして知られていま

す。下記図2aに、電圧ディレーティング(使

用電圧/定格電圧)と故障率の関係を示しま

す。グラフよりあらゆる使用電圧における補

正係数FVが得られます。

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使用温度

使用温度が定格 高使用温度よりも低い場

合は、下記グラフ(図3)に示します通り信頼

性が向上します。

このグラフからさまざまな使用温度におけ

る補正係数FTが求められます。

回路インピーダンス

タンタルコンデンサはサージからコンデン

サを保護するために電流を制限する必要があ

ります。この目的のために直列保護抵抗が推

奨されています。回路インピーダンスが低く、

特に温度が20℃以上の場合には故障率は高く

なります。誘導性のある低インピーダンス回

路はコンデンサに電圧サージを発生させる可

能性があります。また同様に非誘導性の低

インピーダンス回路は回路に電流サージを発

生させる可能性があります。これらはコン

デンサに部分的な発熱や故障を引き起こすこ

とがあります。これらを防止するために1Ω

/Voltの回路インピーダンスを推奨致します。

この推奨を実施できない場合には代わりに電

圧ディレーティングを行って下さい。(MIL

ハンドブック217Eをご参照ください。)表4

に直列抵抗について補正係数を示します。

0.1Ω/V以下の回路ではヒューズを入れる

ことを推奨します。

計算例

12Vの電源ラインを想定してみましょう。

ビデオ帯域の増幅回路近くでデカップリン

グ・コンデンサとして10μFが必要としましょ

う。この様な場合回路インピーダンスは基板

の電源の出力インピーダンスと回路抵抗から

構成されます。回路インピーダンスを2Ω、即

ち0.167Ω/Vとします。使用温度範囲を-25~

85℃とします。もし10μF/16Vを使用すると

しますと、

a) FT = 1.0 @85℃

b) FR = 0.85 @0.167Ω/V

c) FU = 0.08 @印加電圧/定格電圧= 75%

これらのことより

F = 1.0x0.85x0.08x1 = 0.068%/1000H

もしコンデンサを20V定格品に変更すれば

実使用状態での故障率は次のように改善され

ます。

FU = 0.018 印加電圧/定格電圧が60%時

F =1.0x0.85x0.018x1= 0.0153%/1000H

3.2 動的特性

第1.2.4項で述べましたように、タンタル

コンデンサと酸化二オブコンデンサのサージ

電圧とサージ電流に対する取り扱い能力には

限界があります。サージ電流はコンデンサの

故障の原因となります。定常状態に於ける信

頼性については単純な公式だけでは計算でき

ません。回路設計者は偶発故障の発生を低減

させるために軽減電圧と直列保護抵抗の2つ

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の要因を考慮する必要があります。下表はAVX

社において電圧ディレーティング無しでしか

も低直流抵抗という条件下で行われたテスト

結果をまとめたものです。テストはタンタル

コンデンサで行ないましたが、酸化二オブ

コンデンサでも同様な結果を得られます。

この実験結果から明らかなように電圧軽減

を取れば取るだけサージによる故障発生は少

なくなります。

但し、これらの結果は高加速サージ試験機

による結果であり、市場では低PPMレベルの故

障率と考えられます。

よく誤解されることですが、漏れ電流が大

きければサージスクリーニング時に故障が発

生し易いと考えられているようです。このこ

とは漏れ電流値によりランク分けされた47μ

F・10Vのチップタンタルコンデンサを使用し

た試験結果より正しくないことが証明されま

す。テスト結果については下表の通りです。

もう一度申し上げますが、これらの結果は高

加速サージ試験機による結果であり、市場で

は低 PPM レベルの故障率と考えられます。

酸化二オブコンデンサはタンタルコンデン

サに比べ耐サージ性がよいため 80%ディ

レーティングをお奨めします。AVX 製タンタ

ルコンデンサと酸化二オブコンデンサの推奨

ディレーティングは下表に示しています。

耐サージ能力を向上させるために回路上で

の電圧ディレーティングを大きく取りますと

その副次効果として定常状態での信頼性を改

善できるというメリットがあります。6.3V の

コンデンサが 5V ラインで使用される場合を

考えてみましょう。タンタルコンデンサの定

常状態での信頼性は次の3つの要因によって

決定されます。その要因とは温度、直列抵抗

そして電圧ディレーティングです。40℃で使

用され、0.1Ω/V の直列抵抗を持っていると

仮定しましょう。コンデンサの信頼性は以下

の通り計算できます。

もし、6.3V品の代わりに10V品が使用された

としますと変更となる要因は0.006となり、定

常状態での故障率は次の通りとなります。

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■第4部タンタルコンデンサの

使用ガイドライン

定常状態での信頼性を向上させるために以

下内容にご留意ください。

ハンダ付け条件及び基板への実装

ハンダ付けの温度と時間はより低温より短

時間が望まれます、噴流ハンダ付けの場合に

は230~250℃で3~5秒間が望ましい条件です。

ベーパーフェイズや赤外線リフローハンダ

付けについては下図に許容領域と危険領域を

示します。

推奨リフロー温度プロファイルのピーク温

度をご参照ください。コンデンサの内部温度

が220℃を越えないように温度カーブを設定

してあります。予備加熱条件は使用されるリ

フローシステムによって異なりますが、 大

でも150℃で10分間以内に設定されることを

お奨めします。リフロー直後に容量値、Tan

δ、漏れ電流、ESRが多少変動しますので、室

温で安定させてから電気測定を行ってくださ

い。TAJとTAZシリーズはリフローハンダと噴

流ハンダが可能なように設計されています。

更にTAZはハイブリッド基板組立のために導

電性エポキシや金ワイヤーボンディングが可

能なように金電極品を準備致しております。

国際規格であるCECC-00-802においてはAVX

社のタンタルコンデンサと酸化二オブコン

デンサはクラスA部品に該当します。

タンタルコンデンサは1回の赤外線(IR)

リフロー、1回の噴流ハンダあるいは1回の

ハンダ小手によるハンダ付けが基本になって

います。

もし過酷な実装方法でご使用されるのであ

れば弊社にご相談ください。

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推奨ハンダ付け条件

赤外線(IR)リフロー

噴流はんだ

鉛フリーリフロー

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■第5部機械的・熱的特性

5.1 耐加速度

98.1m/s2 (10g)

5.2 耐振動

10Hz~2000Hz, 0.75mm of 98.1 m/s2 (10g)

5.3 衝撃

台形パルス, 98.1m/s2 for 6ms.

5.4固着力

IEC384-3に準拠, mim 5N

5.5基板たわみ

基板たわみによってコンデンサに加わるス

トレスを端子電極が吸収します。

5.6ハンダ耐熱

厚み1.0mm以上の基板に実装後、260℃以下

のハンダ槽に10秒未満浸漬可。

5.7実装上の注意点

どの様な場合であっても基板への実装時に

上限温度( 大コンデンサ表面温度)を越え

ないようにご留意ください。このことはタン

タルコンデンサが特に熱放散の大きな部品の

近くに配置される場合に重要です。(例:真

空管やパワートランジスター)また、ワイヤー

を曲げる場合には曲げ力がコンデンサの樹脂

ケースを歪ませないようにご注意ください。

5.8実装場所

特に制限はありません。

■第6部エポキシ樹脂の難燃性

■第7部認定取得状況

5.9ハンダ付け時注意点

酸を含んだフラックスは使用しないでくだ

さい。

5.9.1推奨パッドパターン

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