新興国アップデート - EY Japan ·...

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新興国アップデート April 2017 Issue 9 Contents 1. 新興国トピックス 2016年の世界の石油・ガス取引の概要 P.2 2017年の中南米における保険の見通し P.6 2017年のアジア太平洋地域における保険の見通し P.8 2. 地域別ニュースレター シンガポール P .9 タイ P .17 マレーシア P .18 ベトナム P .19 カンボジア P .26 フィリピン P .28 ミャンマー P .37 インド P .41 トルコ P .49 ブラジル P .62 Contacts P .67 新興国アップデートは、EYのニュースレター やアラートなどの一部を抜粋し、加筆、編集 したもの、または公的機関等で公表されてい る情報のサマリーです。詳細情報や曖昧な 箇所については、それぞれの原文をご参照 ください。原文リンクの内容については各国 担当者にお問い合わせください。

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新興国アップデート

April 2017 Issue 9

Contents

1. 新興国トピックス

► 2016年の世界の石油・ガス取引の概要 P.2

► 2017年の中南米における保険の見通し P.6

► 2017年のアジア太平洋地域における保険の見通し P.8

2. 地域別ニュースレター

► シンガポール P.9

► タイ P.17

► マレーシア P.18

► ベトナム P.19

► カンボジア P.26

► フィリピン P.28

► ミャンマー P.37

► インド P.41

► トルコ P.49

► ブラジル P.62

Contacts P.67

新興国アップデートは、EYのニュースレター

やアラートなどの一部を抜粋し、加筆、編集

したもの、または公的機関等で公表されてい

る情報のサマリーです。詳細情報や曖昧な

箇所については、それぞれの原文をご参照

ください。原文リンクの内容については各国

担当者にお問い合わせください。

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

米国 ロシア カナダ 世界のその他地域

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Q1 Q2 Q3 Q4

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2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

アフリカ アジア カナダ ヨーロッパ 旧ソ連 インド 中東 オセアニア その他アメリカ 米国 取引量

上流取引の総額は

前年比14%減1,024

取引総額に占める上流比率は前年比11%減

33%

1,300上流取引量合計は

前年比31%減

2016年の取引全体は、シェルとBGを除き、2015年に比べ改善しました。第4四半期の顕著な増加がこれに寄与し、市場参入への自信が回復しつつある兆候が示されました。

原油・ガスの埋蔵量が豊富なパーミアン盆地の取引量が過去最高になるなど、米国がこの動きを先導し、北米の同業界では2015年の上流分野の取引が430億米ドルだったのに対し760億米ドル以上となりました。ロシアでも大規模な活動が見られ、北米以外の上位3位までの規模の取引が同国によって占めら

れました。他の多くの地域では、買い手と売り手が業界に打撃を与える価格ショックに直面して価格の合意に到達することが難しく、2016年の取引は依然

として低調でした。すべての国・地域に共通する幾つかの要因が、業界の資本配分の決定やその結果生じる取引に影響しました。

2016年の世界の石油・ガス取引の概要

1. 新興国トピックス

石油・ガスの上流取引(地域別および世界全体の報告取引額)

出典:デリック・ペトロリアム・サービシズのデータに基づきEY分析

2016年の四半期別上流取引額

出典:デリック・ペトロリアム・サービシズのデータに基づきEY分析

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買い手 売り手

4,145

3,1072,620 2,500

75

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-2,100-1,520 -18

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BP スタトイル トタル エクソンモービル

エニ シェル シェブロン

広がる経済的な苦境

2016年には、原油・ガス価格の下落や、場合によっては過剰レバレッジによって産油・産ガス国及び関連する業界に広範な経済的問題が発生しました。1バレル当たり30米ドルを割り込んだ年初の原油価格の悪影響を免れたものはなく、2016年の大半の時期に見られた長引く価格低迷やボラティリティを歓迎する

関係者は、恐らく一部のヘッジファンドと消費者を除けばほとんどいませんでした。

2016年の原油・ガス価格の低迷の規模と深刻さは、多くの関係者を行動へと駆り

立て、破壊的な企業変革や既存取引の見直しを引き起こしました。上流企業の具体的な対応は個々の状況で異なるものの、ほとんどが、資本保全や資本調達取引のほか、資産、中核・非中核部門、さらには企業の売却など数々の対策を講じました。

最も大きな影響を受けた事例として、2016年初頭におけるカナディアン・オイル・サンズに対する45億米ドルのサンコア・エナジーの敵対的買収と北米の560億米ドルを上回る法的破産手続きの申請が挙げられます。この2例は初動で迅速に対処したため、現在では情勢が改善したと思われます。

ポートフォリオの最適化

2016年には、資本基盤が最も強固な企業でさえ、「グロースからバリュー」への

移行が進行中であることを認識するに至りました。有力企業は、新たな資本配分の現実を反映させるために、積極的にポートフォリオの再調整に集中的に取り組み始め、買い手と売り手にとってまたとない取引機会が生み出されました。年間を通して、資源開発のための資本を上回る資産を保有する運営会社は、中核業務を支援するためにこの「隠された(trapped)」資本の解放に動きました。シェルは、2015年にBGグループを820億米ドルで買収した後、2016年に300億米ドルの資産売却プログラムを発表しましたが、これは、大手

企業が実施しつつある、ポートフォリオ最適化を目的とする取引の拡大と規模を示す典型例と言えます。

石油メジャーが、豊富な機会を活用するためにM&A市場に戻ってきました。最も活発だったBP、それに次ぐスタトイルは、買い手と売り手の両方の立場でポートフォリオを最適化しました。BPは、自社株式の発行を通じた支払いによりADCO鉱区の石油利権に対する10%の権利を取得するという独創的な取引を行い

ました。エクソンモービルはインター・オイルの買収によりパプアニューギニアにおける地位を固めました。シェルは、BG買収後に発表した資産処分プログラムを継続し、エニもエジプトにおける探鉱に成功し、その一部を収益化しました。

メジャーの上流活動(百万米ドル)

出典:デリック・ペトロリアム・サービシズのデータに基づきEY分析

1. 新興国トピックス l 2016年の世界の石油・ガス取引の概要

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

NOCの進化

NOC(国営石油会社)の活動は、2015年に急減した後、再び活発化し、数社のNOCが市場に戻ってきました。最も活発だったロスネフチは、買い手と売り手の

両方として数件の取引に参加しました。ペトロブラスは、売却目標を達成するために資産をトタルとスタトイルに売却しました。この目標は今後引き上げられる公算が大きいと思われます。インドのNOCであるONGCとオイル・インディアも活発に活動しましたが、中国の三大NOCは依然として動きがないことが目立ちます。

ビジネスモデルの進化がNOCの行動に影響を与えています。例えば、サウジアラムコのIPO計画の発表、ペトロブラスが直面する経営および政治的課題、

そしてメキシコの継続的なライセンス・ラウンドは、より集中的な資本配分アプローチへの移行を反映するものです。

Private Equity(以下「PE」)・投資会社の活動の拡大

2016年には、PE・投資会社による上流資産の取得が大幅に増加しました。

これらの資本基盤が強固な買い手は、従来の買い手が資本に比較的制約がある時期に、機会が豊富な市場にアクセスできました。最大の金融取引は、グレンコアとカタール投資庁が109億米ドルでロスネフチの持分の19.5%を取得したことでした。

米国では、PEの取引額が2倍以上増加しましたが、数件の大型取引が5億米ドルを超えていたことから、取引件数は微増にとどまりました。

取引額(百万米ドル) 取引件数

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取引額 取引件数

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

NOCによる上流資産の取得活動

出典:デリック・ペトロリアム・サービシズのデータに基づきEY分析

PE・投資会社による買収

出典:デリック・ペトロリアム・サービシズのデータに基づきEY分析

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2017年の見通し

上流分野にとって2017年はチャンスの年になるでしょう。業界は回復力と適応力があり、需給バランスに対する市場規律の影響は想定通りです。

2016年の石油・ガスに関する経済問題は、比較的コストの高い地域(南米、

アフリカ、中東の一部、アジア)では影響を及ぼし続けると見られるものの、2017年の取引は活発化すると予想されます。より明るく安定的なコモディティ

価格の見通し、損益分岐点や費用構造の改善によってもたらされる業界のキャッシュフローの改善、石油・ガスセクターへの投資の回復、バリュエーションに対する整合性改善の見通しを受けて、業界のプレイヤーは戦略的イニシアティブを加速させると見られます。

企業は、防御的な「生き残り」戦術から、マーケットリーダーや勝者となるための行動へと方向転換するでしょう。規律あるプレイヤーは、資本配分プロセス全体を通じて確実に価値が創出されるように、ポートフォリオ最適化を加速させると思われます。イランが市場を開放し、いくつかのNOCのリザーブ・リプレースメント・

レシオが上流分野の設備投資を大幅削減するために圧力を受けている状況にあって、他のNOCの活動が活発化すると予想されます。さらに2017年には、中国のプレイヤーが市場に戻ってくる可能性があります。

取引が活発化するにつれ、「取引の卓越性(transaction excellence)」が

鍵となります。取引の卓越性は、取引プロセスにおけるトップクラスの計画、組成、執行の実務を採用することによって達成されます。取引のプライオリティに対する的確な理解や、合理的で適切な取引、投資リスクに応じた適切な資本構成の探究、さらに厳格な重点化と規律をもった取引の実行に至るまで、取引の卓越性では、慎重で徹底的かつ真摯に取引前後の価値を追求することが必要になります。

2017年に予想される主要な取引テーマには以下のものがあります。

• 新たな取引やリファイナンスによる、2016年の石油・ガス価格下落に伴う経済問題の解消

• ポートフォリオ最適化プログラムを加速する一環として、買収対象となる質の高いプロジェクトや資産の拡大

• 特に北米でのPE資本の影響力とプレゼンスを拡大することによって、傾向を

利用して、短期的な株価変動による利益ではなく、より確実な投資利益の拡大を図る豊富な資金へのアクセスと長期的な価値創出を重視する

• プロジェクトや資本リスクの分散を求める関係者による、ジョイント・ベンチャーなどを通じた独創的な取引構造の台頭

大方にとって、2016年は経験した中で最悪の年として記憶に残るでしょうが、2017年は改善に向かうという判断が広がっています。進行中の再編や再ポジ

ショニングにおいて取引が決定的に重要な役割を果たすと思われます。業界がより明るい未来を探し求めるなか、豊富な機会が浮上し、勝者が出現するでしょう。

原文はこちらよりご覧ください。http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/EY-global-oil-and-gas-

transactions-review-2016/$FILE/EY-global-oil-and-gas-transactions-

review-2016.pdf

1. 新興国トピックス l 2016年の世界の石油・ガス取引の概要

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

2017年の中南米における保険の見通し

2017年は、市場の変化のとき

過去3年にわたる中南米の著しい景気低迷にもかかわらず、同地域の保険会社は

収益性を維持し、今後の成長が見込まれます。従来、このセクターの成功は、高金利、可処分所得の増加、市場浸透の拡大と結び付いていました。経済状態や保険商品の需要は地域内で大きく異なるものの、個人保険と企業保険の両分野にとって未開拓市場であることは共通しています。

同地域で保険市場のほぼ半分を占めるブラジルでは、過去3年に及ぶ経済的低迷からの脱却が予想されます。可処分所得の増加に伴い、消費者による自動車や住宅への付保、生命保険や医療保険商品への投資が増大し、保険市場が拡大すると見られます。他方、一部の国では新規インフラやエネルギープロジェクトが企業向け商品の需要を下支えすると思われます。しかし、保険の成長は経済や

財政の実績に連動しているため、トランプ政権の下で貿易政策や財政政策が変化した場合、最終的に個人保険や企業保険に悪影響を与える可能性があります。

こうした状況を背景に、保険会社は効率性の向上、テクノロジーに精通した顧客の誘引やマーケットリーチの拡大のためにデジタル改革を加速させると見られます。規制改革は地域により異なるペースで進み、自己資本充実度やサイバーリスク、インシュアテック(InsurTech)に関する新たな保険の法令遵守のアジェンダを設定するでしょう。多くの保険会社は、報告や統制要件の厳格化を予想してすでに自社のERMシステムの改善に動いています。

2017年に外部要因が中南米の保険市場に与える影響

(1 = 影響度小、10 = 影響度大)

9 経済 今後、中南米は景気回復が見込まれ、保険料収入の伸びは先進国を上回るでしょう。しかし、トランプ新政権が貿易協定の破棄に動いた

場合、メキシコをはじめとする輸出依存国に大きな影響が及ぶ可能性があります。

8 技術 今では大部分の人が携帯電話を使うようになっているため、デジタル技術が顧客への働きかけの手段としてますます重要性を増すでしょう。保険会社も、技術によって自社のプロセスや商品、ビジネスモデルを見直すと思われます。インシュアテックが未開拓市場に対するソリューションをもたらす可能性があります。

7 顧客の期待 無保険者が多い地域で成功するには、効率性やイノベーション、顧客教育が極めて重要になります。進化する顧客のニーズを満たすには、デジタルアクセス、大衆市場とマイクロインシュアランス、ハイブリッド型販売経路、新たなビジネスモデルが鍵になるでしょう。

7 規制 メキシコ、ブラジルからチリ、コロンビアに至る多くの国では、リスクベース資本規制は依然として進化の途上にあります。デジタルアクセスが拡大し、脅威が増大する状況にあって、データ機密性やサイバーセキュリティの規制が今後一層広がると見られます。

7 人材 保険会社は、デジタルイニシアティブを実現するために、データサイエンティスト、サイバーリスクの専門家などのデジタルプロフェッショナルを引き付ける必要があります。しかし、訓練された技術プロフェッショナルの不足により人材ギャップが拡大しており、社外のサポートにも目を向ける必要がありそうです。

6 競争・M&A 経済状態の改善や資本要件の厳格化を受けて、地域を超えたグローバルなM&Aや提携が活発化し、統合の拡大をもたらすと見ら

れます。インシュアテックやマイクロインシュアランス商品の拡大により、価格競争が激化すると思われます。

5 サイバーリスク 保険会社は、ウェアラブルデバイス、テレマティクス、クラウドプラットフォームなどのデジタル技術に依存するにつれ、サイバーリスクに

対する脆弱性が高まると見られます。他方、民間保険会社にとっては、サイバーリスク保険ビジネスが活発化するでしょう。

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2017年の戦略ロードマップ

中南米の保険市場では破壊的創造が続くことが予想され、企業は2017年に戦略計画を見直すことが求められるでしょう。今後5~10年、人口動態的や経済的・

技術的傾向が絡み合って、中南米の保険セクターの変革を促すと思われます。そうした変化に今から備えることが将来の成功にとって必要不可欠です。

1. 顧客重視の水準を上げる。

2. 新たな規制に注意を怠らない。

3. サイバーセキュリティを企業のアジェンダの上位に位置付ける。

4. パフォーマンス向上のために最新技術を利用する。

5. 人材の採用、開発・維持に向けた戦略を練り直す。

原文はこちらよりご覧ください。http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/ey-2017-latin-american-

insurance-outlook/$FILE/ey-2017-latin-american-insurance-outlook.pdf

1. 新興国トピックス l 2017年の中南米における保険の見通し

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

2017年のアジア太平洋地域における保険の見通し

2017年は変化が持続する年

経済、技術、顧客、規制などの諸要因によって、地域の競争が変化するなか、2017年の

アジア太平洋地域の保険市場は移行期が続くと思われます。堅調な成長と所得水準の上昇を受けて、引き続き保険商品の需要が伸び、イノベーションが拡大するでしょう。デジタル技術の進歩やミレニアル世代の台頭に伴い、画期的な保険商品やデジタル対応のビジネスモデルに対する顧客の期待が高まりつつあります。

他方、アジア太平洋市場で資本要件が厳格化され、共通報告基準が採用され、顧客保護やサイバーセキュリティに関する規制が導入されるのに伴い、規制環境が引き続き変化すると思われます。多くの保険会社にとって、2017年は変革が継続すると

ともに、中核事業や販売経路の戦略的見直しの年になるでしょう。この地域では、今後も堅調な経済成長が予想されるものの、米国のトランプ政権の動きによっては、中国とその貿易相手国は、市場の混乱を来たす事態に見舞われる可能性があります。

2017年の戦略的優先事項

2017年には経済や規制、市場の変化が絡み合って作用することから、アジアの保険

会社は戦略的な対応策を策定し直すことになるでしょう。急速に変化するデジタル環境の中では機敏性が鍵を握ります。このことは、これまで変化が遅かった業界に課題を突きつけます。しかし今日、保険業界が生き延び、業界の内外から掛けられている前例のない圧力を乗り越えるには、組織の変革が不可欠となります。

1. 顧客中心主義の戦略をとる。

2. デジタルイノベーションを通じて業績を改善する。

3. 将来の事業戦略を見直す。

4. 広範な規制の変化に備える。

原文はこちらよりご覧ください。http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/ey-2017-asia-pacific-insurance-

outlook/$FILE/ey-2017-asia-pacific-insurance-outlook.pdf

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シンガポール 2017年度予算案News Alert ~一丸となって前進~

2. 地域別ニュースレター

ヘン・スウィーキート財務相は2017年2月20日、2017年4月1日から2018年3月31日までの2017会計年度予算案を国会に提出しました。

シンガポールの2016年の経済成長率は2%でした。2017年については、通商産業省は1~3%の経済成長率を見込んでいます。

2017年度予算案では、経済の成熟に伴い、未来に向けてシンガポールの位置

付けを見直すことが焦点になっています。世界が急速に変化し、予測が不可能な状況にあって、2017年度予算案では、国内企業や労働者の能力を強化し、実業

界内に深い連携を築き上げることによって、未来に向けて整備することを目的としています。その一方で、質の高い生活環境を維持し、今後数年間に福祉に手厚い共生社会を築くことにも配慮しています。また同予算案では、環境汚染や悪化する気候変動の状況に対処するために、シンガポールがグローバル経済において自身の役割を果たす必要性も示されています。

短期的な企業支援だけでなく、国内企業と労働者を強化することによって、急速に変化する世界情勢に対抗・即応できる力をつけることを目的とする多くの税制改正が発表されました。

企業に対する短期的支援の提供

1. 法人税還付の強化および延長:2017賦課年度には、法人税還付の上限額が2万シンガポール・ドルから2万5,000シンガポール・ドルに引き上げられる一方、還付率は納税額の50%に据え置かれます。また、法人税還付は2018賦課年度までさらに1年延長されますが、還付率は納税額の20%に引き下げられ、上限額は1万シンガポール・ドルとなります。

2. 外国人労働者税(foreign worker levy)の引上げの延期:水産・加工業に

ついては、依然として脆弱な状況を考慮して、すでに発表されていた同税の引き上げがさらに1年延期されます。

金融セクターの競争力強化

3. 金融機関が提供する仕組み商品に係る個人以外の非居住者への支払いに対する源泉徴収税(withholding tax)免除の延長:当該支払いに対する同税免除の適用期間は2017年3月31日をもって終了する予定でしたが、2021年3月31日まで延長されます。この制度の他の条件はすべて据え置かれます。

4. プロジェクト・インフラ・ファイナンス(以下「PIF」)に対する税制優遇制度の延長:現在、PIFに対する税制優遇制度のパッケージとして、(a)適格プロジェクト債券から生じる適格所得の免税、(b)適格インフラプロジェクトまたはシンガ

ポール取引所に上場する認定企業から受領した資産から生じる適格所得の免税、および(c)認定インフラ・トラスティー・マネジャーまたはファンド運用会社が稼得する適格所得に対する10%の軽減税率が提供されていますが、2017年3月31日に終了する予定が変更され、2022年12月31日まで

延長されます。この制度の他の条件はすべて据え置かれます。適格インフラプロジェクトまたは資産を取引所上場または上場予定の適格企業に譲渡する取引に対する現行の印紙税免除は延長されず、2017年3月31日に終了します。 さらに詳細な情報については、シンガポール通貨庁(MonetaryAuthority of Singapore)が2017年5月までに公表することになっています。

2. 地域別ニュースレター l シンガポール

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

シンガポールの税制の簡素化と合理化

5. 知的財産(以下「IP」)の利用を促進するIP制度の導入:研究開発によって生じるIPの利用を促進するため、 IP開発インセンティブ ( IP DevelopmentIncentive)と呼ばれる新たな税源浸食と利益移転(以下「BEPS」)適合のIP制度に基づいて、IP関連所得に優遇措置が適用されます。2017年7月1日以降に承認される新たな優遇措置案件については、IP関連所得がパイオニアサービスまたは統括本部(Headquarters)インセンティブおよび開発・拡張インセンティブ(Development and Expansion Incentive、サービスまたは

統括本部に関するもの)の適用対象から除外されます。現行インセンティブ受益者の当該所得には、2021年6月30日まで引き続き現行優遇措置が適用されます。同制度は2017年7月1日から発効し、シンガポール経済開発庁(Economic Development Board、以下「EDB」 )が所轄官庁となります。さらに詳細な情報については、同庁が2017年5月までに公表することになっています。

6. 金融財務センター(Finance and Treasury Centre、以下「FTC」)制度の改善:認定FTCのコンプライアンスの負担を軽減するため、認定FTCの特定取引に係る適格取引先の規定が簡素化されます。この改正は、2017年2月21日

以降に承認される優遇措置の新規案件または更新案件に適用されます。さらに詳細な情報については、EDBが2017年5月までに公表することになっています。

7. グローバル・トレーダー・プログラム(Global Trader Programme)の強化:

シンガポールにおける貿易活動の円滑化、促進と簡素化のために、次のように同プログラムを強化します。

a. 適格取引先との間で遂行される適格取引に関する要件が廃止されます。その結果、認定グローバル貿易企業は、いかなる取引先であれ、適格取引から稼得する所得について軽減税率の適用を受けられます。

b. 認定グローバル貿易企業は、シンガポール国内で消費するために、またはシンガポール国内で航空機や船舶に燃料を供給するためにコモディティを購入する取引から稼得する現物取引の所得について軽減税率の適用を受けられます。

c. 認定グローバル貿易企業は、シンガポールにおける貯蔵、または物理的な改変、追加もしくは改良(精製、調合、処理もしくは小口割り〈bulk-breaking〉を含む)によってコモディティに価値を付加する、シンガポール

国内で実施された活動に起因する現物取引の所得について軽減税率の適用を受けられます。

d. 同プログラムの適用を受けるための実質要件が強化されます。

a.からc.までの強化措置は、認定グローバル貿易企業が適格取引によって2017年2月21日以降に稼得する適格所得に適用されます。またd.は、2017年2月21日

以降に承認される優遇措置の新規案件または更新案件に適用されます。さらに詳細な情報については、シンガポール国際企業庁(IEシンガポール)が2017年5月までに公表することになっています。

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8. コンピュータ寄付に係る損金算入制度の廃止:企業がシンガポールの公的機関または所定の教育、研究もしくはその他の機関にコンピュータを寄付した場合、寄付金額の250%を損金算入できる現行制度の目的が達成されたとして、2017年2月20日以降廃止されます。

9. 省エネルギー設備・技術に対する加速償却控除(Accelerated DepreciationAllowance for Energy Efficient Equipment and Technology)制度の廃止:エネルギー効率の向上に向けたインセンティブを整理するため、1996年に導入された同制度を廃止し、2018年1月1日以降に設置される設備には適用されません。

10. メディア・デジタル・エンターテインメント(以下「MDE」)のコンテンツの知財権の取得に係る加速減価償却控除(Writing-Down Allowance、以下「WDA」)

制度の満了:この制度はもはや合目的性が失われたと評価されたことから、税制を簡素化するため、2018賦課年度の基準期間の最終日(すなわち、2017会計年度末日)以降取得されるMDEコンテンツの知財権については、MDEコンテンツに係る加速WDA制度を利用できなくなります。さらに、MDE企業

またはパートナーシップは、適格知財権の取得のために発生した資本支出について(2年に代えて)5、10または15年のいずれかの減価償却期間にわたるWDAを請求することを選択できます。

11.国際仲裁に関する税制優遇措置(international arbitration tax incentive)

の満了:現在、国際仲裁に関連する法務サービスの提供から稼得される適格な所得の増分については、同措置に基づき、認定法律実務に適用される50%の減税が認められていますが、2017年6月30日の満了をもって打ち切られます。

12.認定建築プロジェクト(Approved Building Project)制度の満了:現在、最長3年にわたり開発中の土地について不動産税(property tax)免除を提供する(他の条件の充足が必要)同制度が、2017年3月31日の満了をもって打ち切られます。

その他の税制改正

13.研究開発プロジェクトに関する費用分担契約(Cost Sharing Agreements)に

基づく支払いに係るセーフ・ハーバー・ルールの導入:コンプライアンスを容易にするため、納税者は、一部カテゴリーの支出(例えば、会計上の減価償却やストックオプション費用)の損金算入が認められないことがある一般的な損金算入規則の適用を受ける代わりに、適格な研究開発プロジェクトで発生する費用分担契約に基づく支払額の75%の損金算入を請求することを選択できます。この改正は2017年2月21日以降に行われる同契約の支払いに適用されます。さらに詳細な情報については、シンガポール内国歳入庁(以下「IRAS」)が2017年5月までに公表することになっています。

14.取消不能使用権(indefeasible rights of use)契約に基づくWHT免除措置の延長:同契約に基づく国際通信海底ケーブル容量に係る支払いに対するWHT免除措置は、2018年2月27日に満了となる予定ですが、デジタル経済を拡大し、

データフローの主要ハブとして機能しているシンガポールの地位を維持するという同国政府の目的に鑑み、2023年12月31日までこれを延長します。

15.航空機リーススキーム(Aircraft Leasing Scheme)の延長と改善:航空機

リース産業の成長を引き続き促進するために、同スキームを延長するとともに次のように改善します。

2. 地域別ニュースレター l シンガポール

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

a. 同スキームを2022年12月31日まで延長します。

b. 認定航空機リース会社の適格付随活動の範囲を改訂して、賃借会社による航空機または航空機用エンジン購入時の資金融資から生じる付随的な所得も対象にします。

c. 航空機または航空機エンジンのリースおよび適格付随活動から生じる所得に対する軽減税率を、5%と10%から一律8%に簡素化します。

b.の強化は、インセンティブ受益者全員について2017年2月21日以降に稼得した所得に適用されます。c.の改善は、2017年4月1日以降に承認される優遇措置の

新規案件または更新案件に適用されます。さらに、航空機または航空機用エンジン購入の資金提供目的で2017年3月31日以前に締結される適格ローンに対する適格な支払いに対しては、WHT免除制度が自動的に適用されますが(他の条件の充足が必要)、この措置が、2022年12月31日以前に締結される適格ローンに対する適格な支払いに延長されます。さらに詳細な情報については、EDBが2017年5月までに公表することになっています。

16.総合投資控除(Integrated Investment Allowance)制度の延長と改善:

同制度は、認定プロジェクトのために外国企業に設置した適格生産設備について負担した固定資本支出に関して、適格企業に追加的な控除を認めるものであり、2017年2月28日で満了する予定でしたが、これを2022年12月31日まで延長します。さらに、当該外国企業が適格生産設備を使用して認定

プロジェクトに基づいて主に適格企業のために製品を製造する場合も適用対象となります。この適格要件の拡大は、2017年2月21日以降に承認されたプロジェクトのための適格生産設備について負担する支出に適用されます。

17.デジタル経済:シンガポール政府は、物品・サービス税(以下「GST」)登録を行った国内企業とGST登録を行っていない外国企業との間で公平な競争条件を確保するために、デジタル取引や国境を越える取引に関してGST制度を調整することを検討中であると発表しました。

個人に関する税制改正

18. 個人所得税の還付:2017賦課年度について、居住者である個人納税者全員に対して、個人所得納税額の20%(上限:500シンガポール・ドル)が還付されます。

19. GSTの旅行者払戻制度(Tourist Refund Scheme、以下「TRS」)の廃止:クルーズターミナルから国際クルーズで出国する旅行者については、2017年7月1日以後の購入に関するGST TRSが廃止されます。対象となる旅行者は、2017年6月30日までの購入についての払戻請求を2017年8月31日までに行わなければなりません。クルーズターミナルの電子TRS設備は2017年9月1日以降撤去されます。さらに詳細な情報については、 IRASが2017年4月までに公表することになっています。

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環境に関する税制改正

20. ディーゼル税の見直し:ディーゼルオイルの使用削減を促すためにディーゼル税(Diesel Duty)が導入されます。自動車用ディーゼル、工業用ディーゼル、バイオディーゼル燃料のディーゼル成分に対する1リットル当たり0.10シンガポール・ドルを課税する税法が2017年2月20日から発効します。

年間特別税(ディーゼル自動車に対して課税)も見直されます。同税の導入を円滑に進めるために、一定の相殺措置(例えば、道路税の払戻し)が講じられます。

21.炭素税の導入:政府は、2019年から温室効果ガスの排出に対する炭素税の課税実施を目指しています。温室効果ガスの排出量1トン当たり10~20

シンガポール・ドルと予想される税率が、原則として電力の使用者ではなく、例えば発電所や他の大規模な直接排出者といった上流段階で課税されます。最終的な炭素税と厳密な実施方式は、市中協議を行い、さらに検討した後に決定されます。

Japan Tax Alert 2017年2月3日

シンガポール税務当局、2017年移転価格ガイドラインを発表

エグゼクティブサマリー

2017年1月12日、IRASは、「移転価格ガイドラインの改訂版(以下「2017年移転価格ガイドライン」)を公表しました。当該2017年移転価格ガイドラインの主な

特徴は、独立企業間原則やリスク重視に関する追加ガイダンス、移転価格文書に含める追加情報の要件、相互協議手続き(以下「MAP」および事前確認〈以下「APA」〉)制度の改定、関連者間の金銭貸借取引に係る指針スプレッドつまり「セーフハーバー」の導入などになります。

2017年移転価格ガイドラインは、OECDのBEPSプロジェクトにおけるミニマムスタンダードに盛り込まれた行動計画5、13及び14に関して詳細に示しています。なお、2016年6月、シンガポールはBEPSのミニマムスタンダードの導入に関する見解を示しています。

本タックス・アラートでは、2017年移転価格ガイドラインで導入された主な変更点や特徴を解説します。

詳細な解説

独立企業間原則と機能分析

IRASは、BEPS行動計画8~10に準拠する利益を生み出す実質的な経済活動が

行われ、価値が創造される場所において、利益に対して課税されるべきであると明確に述べており、独立企業間原則の遵守を改めて表明しています。

独立企業間原則の適用については、IRASは、機能分析におけるリスク要因に

関してさらに明確化しており、リスクの引受けとリスクの負担管理能力との区別が一段と強調されています。そのため、リスクを引き受け、そのリスクを管理している納税者は、通常の事業活動の1つのみを行っている納税者と比較して、より大きな利益を獲得する権利があるとしています。

IRASは、リスクの管理とリスク引受けに係る財務上の負担能力の解釈に関して、ガイドラインで例示して説明しています。

2. 地域別ニュースレター l シンガポール

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

移転価格文書の追加情報要件

シンガポールとOECDの移転価格文書に係るアプローチには依然として乖離(かいり)がありますが、IRASは、シンガポールの移転価格文書を、OECDのマスターファイル及びローカルファイルに係る要件と整合させようとしています。

国別報告書(以下「CbCR」)

IRASは、納税者がシンガポール多国籍企業(以下「MNE」)の最終親会社である場合には、移転価格文書に加えて、CbCRの提出が義務付けられる可能性があることを明示しています。CbCR要件に係る詳細は、CbCR e-Tax Guideをご参照ください*1。

移転価格文書に含める追加情報

以下の情報及び書類がリストに追加されています。

• 国別の所得配分に関するグループの既存のユニラテラル (一国)APA及びその他の税務裁定

• IRASが当事者でない既存のAPA及びその他の税務裁定の写し

• 納税者が行った価格調整や比較可能性調整の正当な理由に関する文書

移転価格文書作成の免除

移転価格文書作成の免除に以下の項目が追加されました(これらに限定されません)。

• 関連者間の金銭貸借取引に対するスプレッドの適用(下記参照)

• 100万シンガポール・ドル (70万米ドル)を上回らない保証に係る収入及び費用

さらに、移転価格文書作成の免除を判断するための関連者間の取引価額基準、つまり関連者間取引の各カテゴリーの取引価額基準値に関して、完全なパススルーコストは関連者間取引のカテゴリーごとの価額の総計に含められるべきであると明確化されています。

APA制度及びMAP制度

ユニラテラルAPA制度の変更

BEPS行動計画5に従い、以下の税務管轄区域との間でIRASによるユニラテラルAPA情報*2の自動的交換が行われます。

• 納税者が行う取引であり、その取引がユニラテラルAPAの対象取引になっている場合、その取引相手となるすべての国外関連者が居住する税務管轄区域

• 納税者の最終親会社及び直近の親会社が居住する税務管轄区域

自動的情報交換は、租税条約または情報交換文書が締結されているなど、一定の条件を満たすことが条件となっています。

以下の期間に公表されたユニラテラルAPAについては、2017年12月までにユニラテラルAPAに係る情報交換が行われます。

• 2012年1月1日以降に公表され、2015年1月1日時点で有効なユニラテラルAPA

• 2015年1月1日から2017年3月31日までに公表されるユニラテラルAPA

2017年4月1日以降に公表されるユニラテラルAPAについては、合意日から3カ月以内に情報交換が行われます。

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APA制度のロールバック(遡及適用)期間の明確化

APAまたはマルチラテラル(多国間)APA、バイラテラル(二国間)について、APAの遡及年数は、IRASの裁量により個別に決定されます。

MAP及びAPAのガイダンスに関するその他の変更

納税者が外国税務当局による移転価格調査の結果を一方的に受け入れることを選択する場合には、当該移転価格調査から生じる二重課税を排除するためのIRASと当該外国税務当局との間の公平な交渉が困難になる可能性があります。

さらに、シンガポールの審判所や裁判所の命令に基づいて法的または司法上の手続きを通じて問題が解決された場合、IRASがシンガポールの審判所や裁判所の決定と異なる移転価格調整を行う可能性は低いと言えます。

IRASは、納税者から提出された申請書類の受領後24カ月以内に、MAP申請を処理することを目標としています。

従って、納税者は、各々の居住国の国内税法に基づいて二重課税やその他の問題を解決するためのさまざまな救済方法を利用できますが、遡及的または将来的な税調整など、現時点での決定が過去や将来に及ぼす影響を慎重に考慮する必要があります。

関連者間の金銭貸借取引に対して指針とするスプレッドの導入

IRASは、2017年1月1日以降に行われる関連者間の金銭貸借取引に対して指針とするスプレッドの適用を導入しています。

指針とするスプレッドを適用できる1,500万シンガポール・ドル (約1,060百万米

ドル)未満の関連者間の金銭貸借取引については、納税者は移転価格文書を作成する必要がありません。また、指針とするスプレッドを適用できる取引に関しては、移転価格文書作成の可否を判断する際に、関連者取引の合計金額から除外することができます。

指針とするスプレッド*3は、1,500万シンガポール・ドル未満の関連者間の金銭貸借取引にのみ当該金銭貸借取引が行われる時点までの期間においては、250ベーシスポイント(2.50%)の指針スプレッドを適用することができます。

しかし、固定金利及び変動金利のスプレッドに適用する基準指標(例えば、SIBOR〈シンガポール銀行間取引金利〉またはLIBOR〈ロンドン銀行間取引金利〉)に関しては、納税者が決める必要があります。

固定金利の金銭貸借取引の場合、IRASは、適切なスワップレートを基準指標として、

適用することがあります。シンガポール・ドル建ての固定金利の金銭貸借取引の場合には、シンガポール国債の利回りを基準指標として適用することも考えられます。

影響

2017年移転価格ガイドラインは、即時発効となります。

納税者は、追加情報要件や新たなリスク重視に関する指針と合致する移転価格同時文書の管理・保持を行うことを含め、移転価格のガイダンスを引き続き遵守し、シンガポールにおける移転価格の枠組みに関し、今後の変更点を注視する必要があります。

2. 地域別ニュースレター l シンガポール

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

* 1: IRASは2016年10月10日、国際的に事業展開をし、年間連結売上高が11億2,500万

シンガポール・ドル(約7億9,500万米ドル)を超える、シンガポールを税務上の居住国とするMNEを

対象に、CbCRに係るガイドライン(e-Tax Guide)を公表しました。その後、IRASは、2016年12月

19日に、2016年度については当該MNEによるCbCRの自主提出を受け入れる旨を発表して

います。CbCRの自主提出に関するさらに詳細な情報は2017年3月末までに公表されると予想

されています。2016年10月27日付、Japan tax alert「シンガポールが2017年国別報告書に係

るガイドライン(e-Tax Guide)を公表」をご参考までにご覧ください。

*2: IRASは、2017年移転価格ガイドラインのパラグラフ8.13に記載された条件に基づき、情報交換が

行われるとしていますが、自動的な情報交換を可能にするわけではありません。この条件により、

情報交換を促すことになるかもしれませんが、強制的で自発的な情報交換の条件を満たすもの

ではありません。自動的な情報交換を可能にするために、IRASが、CbCRの自動的交換のための

多国間権限のある当局合意に類似した多国間協定を締結するかどうかは現時点では明らかに

なっていません。なお、シンガポールは、現時点では同合意にも参加はしていません。

*3: 指針とするスプレッドは、IRASのホームページで公表され、毎年始めに更新されます。

本ニュースレターは、EY税理士法人ウェブサイトでもご覧いただけけます。https://www.eytax.jp/tax-library/newsletters/japan-tax-alert-20170203-2.html

EYグローバル・タックス・アラートは、オンライン・pdfで以下のサイトから入手可能です。www.ey.com/taxalerts

EYグローバル・タックス・アラート・ライブラリー

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新会計基準TFRS for SMEs の適用開始が1年延期される

2016年11月25日、タイ会計職業連盟(FAP)は、中小企業向けタイ財務報告基準(TFRS for SME)の適用開始時期を、当初予定していた2017年1月1日から1年延期し、2018年1月1日以降に開始される会計期間につき適用すると発表しました。

これに続き、同連盟は「従業員給付」の複雑でないNPAE(non-complex non-publicly accountable entities、以下「複雑でないNPAE」)に対する適用を免除から2019年適用開始に変更し、「超インフレ」の複雑なNPAE (complex non-publicly accountable entities、以下「複雑な「NPAE」)に対する適用を2019年適用開始から、2018年適用開始に変更しました。

しかし、その他の適用開始時期及び免除規定のある項目については、適用開始時期に変更はありません。複雑なNPAE及び複雑でないNPAEに係る適用開始時期及び免除規定は、以下のように要約されます。

複雑なNPAEは子会社、関連会社もしくはジョイントベンチャーであるか、または子会社、関連会社もしくはジョイントベンチャーに対する投資持分を有するNPAEであり、複雑でないNPAEは複雑なNPAE以外のNPAEです。

タイ アカウンティング・アップデート 2016年12月

章 項目

適用開始時期/免除規定

複雑なNPAE

複雑でないNPAE

7 キャッシュフロー計算書 2019 2019

9 連結及び個別財務諸表 2019 免除

11 基礎的金融商品 2022 免除

12 その他の金融商品に関する事項 2022 免除

14 関連会社に対する投資 2019 免除

15 ジョイントベンチャーに対する投資 2019 免除

20リース

20.1 TERIC 4 と近似している部分について 2019 免除

22 負債及び資本 2022 免除

23 収益

23.2 不動産の販売収益の移転時の認識 2019 2019

23.3 TERIC 13 と近似している部分について 2019 免除

26 株式報酬 2018 免除

27 資産の減損 2018 免除

28 従業員給付 2019 2019

29 法人所得税 2019 免除

30 外貨換算 2022 免除

31 超インフレ 2018 免除

33 関連当事者についての開示 2019 免除

34 専門的活動

34.1 生物資産 2019 免除

34.2 サービス委譲 2019 2019

34.3 鉱物資源の探査及び評価 2019 2019

2. 地域別ニュースレター l タイ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

マレーシア マレーシア 税務アップデート 2017年3月より

1. Finance Act 2017の公布

2017年1月16日に、Finance Act 2017が公布され、2017年度予算案で公表された税制改正案が正式に成立しました。このFinance act 2017は、追加の修正があるものの税制改正案であるFinance bill 2016の内容をおおむね原案通りに反映しています。一部の重要な改正案は、Finance Actが運用される2017年1月17日以降に適用されることになります。

2. 2017年税務申告プログラムの公表

マレーシア国税局(以下「 IRB」)は「Filing programme for Income TaxReturn Forms (ITRF) in the year 2017」と題する2017年度の税務申告プログラムをウェブサイトに公開しました。この2017年税務申告プログラムは大まかには2016年度のものと同じです。提出の猶予期間が与えられている

場合には、その猶予期間内に提出された申告書は期限内に提出されたものと見なされます。もし猶予期間内に申告書が提出されなかった場合には、その当初の提出期限がペナルティ算出の基準日となります。

3. 「Criteria on incomplete tax return form (ITRF) which isunacceptable」を公表

IRB は 「 Criteria on incomplete tax return form ( ITRF ) which isunacceptable」を公表しました。 IRBはこのルールに該当し”incomplete”

(不完全)と判定された税務申告はその後のプロセスに進まず、その旨の通知が発出されることを述べています。このような場合、税務申告書提出の遅れとして、所得税法112(3)に基づくペナルティが科されることになります。

4. 税額控除の使用に関する取扱い及び見積税額に関するIRBによる見解

マレーシア税理士協会はIRBに対し文書で税額控除の使用に関する取扱い及び見積税額に関するIRBの見解を求め、それぞれの取扱いについてIRBより解答を得ました。

5. 個人所得税における居住者ステータスに関する改正PR No.6/2011

2017年1月23日、Public Ruling(PR)No.6/2011のパラグラフ6.2.3(iii)で規定されている「居住者ステータス」について改正が行われました。この改正はマレーシアの居住者であっても旅行等を理由とするマレーシアからの出国は14日以内であれば認められていますが、この出国には母国への一時帰国も含まれる、と明確にしたものです。

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タックスアップデート 2017年1月ベトナム

輸出加工区(Export Processing Zones:EPZs)に所在する輸出加工企業(Export Processing Enterprises〈以下「EPE」〉)への輸送サービス提供に対する付加価値税(Value Added Tax、以下「VAT」)の取扱いに関する2017年1月16日付オフィシャルレター第610/BTC-CST号(OL610)

財務省はOL 610を公表し、同区内に所在するEPEへの輸送サービス提供(従業員送迎を除く)に対するVATにかかわるガイダンスを提供しています。このOLによれば、こうしたサービスは、VAT税率0%課税対象となる輸出サービスと見なされます。

税率0%の適用を受けるためには、EPEとのサービスの契約書、輸送サービスにかかわる支払証明書及びその他の法定の書類が必要となります。

企業形態の変更が生じた場合における税務上の固定資産の再評価に関する2017年1月9日付オフィシャルレター第74/TCT-CS号(OL 74)

税務総局は、企業形態の変更が生じた場合における税務上の固定資産の再評価に関するOL 74を公表しました。このOLによれば、外部評価機関により発行された

固定資産の評価証明書に基づきすでに法人税申告を実施済みの企業は、その後、社内で実施された再評価によって資産評価額が変更されたとしても法人税申告書の修正は認められません。

このOLによれば、出資、企業再編等を目的とする場合、企業には、自己評価に

よる資産の再評価が認められますが、外部評価に基づきすでに作成済みの法人税申告書の修正は認められません。

輸出品の生産に使用される原材料に対する輸入関税の免除及び還付に関する2017年1月6日付オフィシャルレター第114/TCHQ-TXNK号(OL 114)

OL 114によれば、自社で生産設備を有さず、第三者に生産活動を委託する

企業や、事業所を有するものの、工場・建物の法的所有者であることを証明できない企業は、輸出品の生産に使用される輸入原材料に対する輸入関税の免除・還付を受けることができません。

貸付金利の支払受領時におけるVATインボイスの発行に関する2017年1月5日付オフィシャルレター第37/TCT-CS号(OL 37)

OL 37によれば、企業は20万ベトナム・ドン以上の貸付金利債権について、VATインボイスを発行しなければなりません。

金利の額が20万ベトナム・ドン未満の場合、企業は、受領期日の終業時にVATインボイスを発行することが認められます。VATインボイスには、債務者の名称、

貸付金の元本額、該当期間内の金利支払額など、貸付金の情報を掲載した一覧表を証跡として添付する必要があります。

2. 地域別ニュースレター l ベトナム

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

タックスアップデート 2017年2月

ベトナムでの銀行取引で発生する送金手数料に対する外国契約者税(以下「FCT」)に関する2017年2月9日付オフィシャルレター第695/NHNN-PC号(OL 695)及び2017年1月17日付オフィシャルレター第209/TCT-DNL号(OL 209)

OL 695において、ベトナム中央銀行(SBV)は、海外の銀行が収受する送金手数料に

ついて、海外の当事者との研修サービス、電気通信の共有、郵便サービスと類似する性質から、FCTの課税対象外とする税務総局の見解に同意しています。このOLでは、3種類の海外向け資金送金手数料について特に言及しています。

• OUR手数料:ベトナム国内の送金者が、ベトナム及び海外で生ずる送金手数料をすべて負担する場合

• SHARE手数料:ベトナム国内の送金者がベトナム国内で生ずる送金手数料を

負担し、海外の受領者が海外の銀行における残余の銀行手数料を負担する場合

• BEN手数料:ベトナムの送金者は一切手数料を負担せず、海外の受領者が支払いの受領時にすべての送金手数料を負担する場合

これらの手数料はいずれもFCTの課税対象外であることが明確化されています。

輸出業者に対し、輸入品(国内で購買される輸入品を含む)に関する仕入VATの還付申請を禁ずる2017年2月7日付オフィシャルレター第379/TCT-CS号(OL 379)

税務総局はOL 379を公表し、国内で購買される輸入品であっても、輸出業者には輸入品に関するVATの還付が適用されないことを明確化しています。

地域税務当局によってVAT還付申請額が削減またはVAT還付書類が拒絶されるリスクを軽減するため、輸出業者は、税務当局へのVAT還付申請書類の提出前に、輸入品の一覧を精査する必要があります。

分割払・延払契約時における支払証明書に関連するVATの調整に関する2017年1月3日付オフィシャルレター第06/TCT-CS号(OL 06)

このOLでは、分割払い・延払契約に基づき物品またはサービスを購入した企業は、VATの申告及び仕入VATの控除可否について、以下の点に注意を払う必要があるとされています。

• 物品購入時、供給者が発行するインボイスに基づく、仕入VATの控除の申告・請求が認められます。

• 企業が支払期日までに支払いを行っていない場合:VAT申告書の修正を行う必要はありません。

• 実際に支払いが行われたが銀行の支払証明書がない場合:支払いを行った期間の仕入VAT申告額を減額しなければなりません。

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2016年7月または2016年第3四半期の課税期間より前に12カ月間連続で仕入VATの残高を有する企業へのVATの還付に関する2017年2月6日付オフィシャルレター第373/TCT-KK号(OL 373)

法律第106/2016/QH13号に基づき、12カ月連続で仕入VATの残高を有する企業のVAT還付は2016年7月1日より申請適用外となります。ただし、税務総局が公表したOL 373では、2016年7月または2016年第3四半期の課税期間より前に負担した仕入VATの残高がある場合においては、上記に該当する企業はVAT還付書類の提出が認められるかという懸念の明確化が図られています。

このOLには、以下のコメントが記載されています。

• 企業は、2016年6月または第2四半期の課税期間に関するVAT申告書において、VAT還付申請額を申告する必要があり、その後の期間においては仕入VATの残高をVAT納付額と相殺することはできない。

• 税務当局は、VAT制度に基づき、リスクが高いと分類される申請書類については、還付前に検査を実施するものとする。

輸送費補助に対するVATの取扱いに関する2017年1月17日付オフィシャルレター第208/TCT-DNL号(OL 208)

OL 208 によれば、代理店が、事業者からの支援として、条件付きでVAT課税対象である輸送費の補助を受け取った場合、代理店はVATインボイスを発行し、売上VATを申告する必要があります。

本件に関する地域税務当局の見解はさまざまです。このため、上記補助金と類似する取引を多く行っている企業は、法人税上の損金扱いや仕入れVATの控除が否認されるリスクを軽減するため、VATの取扱いに関して地域税務当局に相談し、(必要に応じ)代理店にVATインボイスの発行を求めることが推奨されます。

ROの登録免許税に関する2017年1月24日付オフィシャルレター第 1200/BTC-TCT号 ( OL 1200 ) 及 び 2016年 11月 7日付オフィシャルレター第15865/ BTC-CST号(OL 15865)

財務省はOL 15865 を公表し、この中で、事業活動を行わないROは登録免許税の課税対象外であるとしています。

その後、財務省はさらに明確なガイダンスを記載したOL 1200を公表し、ROの

事業活動が免許対象事業の範囲内(市場調査、リエゾン、本社の販売推進活動など)である場合、ROは登録免許税の課税対象外であるとしています。

上記の規定に沿って事業活動を行うROは登録免許税の納税義務を負わないと考えられます。

従業員個人のクレジットカードで支払われた物品及びサービスの購入にかかわるVAT及び法人税の取扱いに関する2016年11月25日付オフィシャルレター第5465/TCT-KK号(OL 5465)

OL 5465によれば、企業の事業活動にかかわる物品及びサービスへの支払いで

あって、従業員個人のクレジットカードで支払われたものについては、以下の書類が存在する場合、法人税上の損金及び控除可能な仕入VATとして取り扱われます。

2. 地域別ニュースレター l ベトナム

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

1. 支払方法や、従業員に支払いの権限を付与する決定が記載された企業の方針

2. 物品及びサービスの事業上の利用目的を証する十分な証跡(企業名と納税者番号が記載されたインボイスが必要)

3. 従業員による供給者への支払い及びその後の払戻しを承認する旨を記載した企業名義の書面

4. 従業員の個人口座から供給者への送金を証する支払証書、及び地域税務当局に登録された企業の口座から従業員の口座に対する送金の証跡

さらに、要請に応じ、権限を付与された従業員の銀行口座の一覧を税務当局に提出できるようにしておく必要があります。

移転価格アラート 2017年3月

ベトナムの新しい移転価格税制

2017年2月24日において、ベトナム政府は関連会社間取引の存在する企業の租税管理に関するDecree20を公布しました。当Decreeは2017年3月1日より適用となります。

当Decreeにより、下記のようなさまざまな新しい概念が導入されています。

• 「実質優先」の原則

• 3層構造の移転価格文書

• グループ間のサービス料、利息、無形固定資産取引、固定資産の購入、日常的な機能に対する利益配分についての具体的なガイダンス

当Decreeでは比較・ベンチマーク分析に関するガイダンス、新しい年次の移転価格開示フォーム、及び移転価格に関する義務の遵守に関する免除について規程しています。

本アラートではこれらの重要な改正について説明し、納税者の義務とビジネスへの影響について、考えられる影響 をコメントいたします。

関連者との関係及び関連者取引

当Decreeにおいては移転価格に関する規定の対象となる関連者取引について、

より詳細なタイプの取引をカバーしています。特に関連者間のグループシナジー、シェアード・サービス・センター、コストシェアリング等、共通の資源の利用について規定しています。

以前は、移転価格に関する規定の対象となる関連者に該当するかどうかの判定において指標となる基準値は、直接または間接的に20%の持分を保有しているかどうかでした。当Decreeにおいて、当基準値は25%まで引き上げられています。

さらに、複数の企業が資本及び直接の管理を通じて個人の支配下にある場合には、当該複数の企業は関連者とされます。

また以前は、50%以上の原材料を購入している仕入先もしくは50%以上販売

している販売先についても関連者として判定されていました。この割合についてのこの規定は削除されましたが、企業が他の当事者に実質的に支配されている

もしくは管理されている場合の一般概念については、依然として規定されており、その当事者は移転価格に関する規定を受けるものとされています。

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3層構造の移転価格文書と年次の移転価格開示

当Decreeにおいて、OECDの税源浸食と利益移転(Base Erosion and ProfitShifting、以下「BEPS」)の行動13に基づき、下記の3層構造の移転価格文書が規定されています。

1. グループ事業に関する情報 (グローバル・マスター・ファイル)

2. ローカル移転価格文書 (ローカルファイル)

3. 国別報告書 (以下「CbCR」)

当Decreeにおいて、納税者は移転価格文書を年次の法人税申告書の提出前に作成するよう定められています。法人税申告書は年度末より90日以内に提出

する義務があるため、当該規定は実際にかなり時間的に厳しい内容となっています。さらに、納税者は税務調査の際、要求されてから15営業日以内に移転価格文書を税務当局に提出する必要があります。これは現在の30営業日の規定よりも短縮

されており、税務当局の通知を受け取る前に移転価格文書を整備しておくことの必要性を強調する規定となっています。

改訂された移転価格フォームでは、定額支払いや恒久的施設(PE)に対して割り

当てられた収益・費用及び独立企業間価格に関する詳細な情報等、さらに追加で情報が要求されています。

CbCR

CbCRの内容としては、国際的なグループが事業活動を行っている管轄ごとの、

グループの主要な財務・税務指標(売上げ、利益、未払税額、従業員数、資本金及び有形資産の額等)が含まれています。

もし海外の最終的な親会社がその居住国においてCbCRを提出・保管する義務がある場合には、ベトナムの納税者はCbCRを提出する必要があります。また、ベトナムに最終的な親会社が存在する場合でかつ、連結売上高が18兆ベトナム・ドン以上となる場合も、当該CbCRを提出する必要があります。

移転価格に関する免除規定

当Decreeにおいて、移転価格文書の作成及び年次の移転価格開示について、

一定の免除規定を設けています。特に、下記の場合において、納税者は移転価格文書の作成が免除されます。

• 売上高が500億ベトナム・ドン以下であり、かつ関連者との取引が500億ベトナム・ドン以下である場合。しかし、移転価格文書の作成免除が、もし独立企業間価格で取引していることを証明できなかった場合に、移転価格

課税されないということを示すのか、移転価格に対する税務調査が行われないということなのかが不明確となっています。

• 納税者の事業内容が単純かつ売上高が2,000億ベトナム・ドン以下でかつ、卸売業の場合にはEBIT(支払金利前税引前利益)÷売上高が5%以上、製造業の場合には10%以上、加工業の場合には15%以上である場合。

• 事前確認制度の合意書(Advance Pricing Agreement)を締結しており、同合意書に関する年次報告書を提出している場合。

• さらに、以下の条件を満たす場合、納税者は年次の移転価格開示フォームの一部について作成が免除されます。

• ベトナムで法人税の納税義務がある関連者との取引のみであり、かつ納税者と関連者が同一の法人税率を適用しており、優遇税率を適用していない場合。

2. 地域別ニュースレター l ベトナム

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

実質優先の原則

当Decreeにおいて、税務当局の移転価格管理における独立企業間価格の原則に伴って適用される、実質優先の原則が導入されました。

関連者間の役務提供及び支払利息の損金算入

当Decreeにより詳細なベネフィット分析及びグループ間のサービス支払いに

関する損金算入要件が規定されました。グループ間のサービス費用が損金算入となるためには、以下の条件を満たす必要があります。

• 提供されたサービスは納税者の事業運営に当たり、直接的に有益である。

• 類似した環境下にある独立した他の企業であっても、同様のサービスに対して対価を支払うであろう場合のみ、当該サービスは「提供された」と判定される。

• サービスフィーは独立企業間価格でなくてはならず、移転価格や割当の方針はグループ内で一貫していなければならない。納税者はサービスの受領について関連するサポーティング資料を提供しなくてはならない。

当Decreeにおいて、1事業年度において損金算入可能な関連者への支払利息はEBITDAの20%を超えない範囲とされています。

移転価格算定方法の適用

当Decreeでは移転価格算定方法の適用について下記の通りガイダンスが公表されています。

• 固定資産の購入における独立企業間価格の決定に関しては、独立価格比準法(CUP法)の採用と、サポーティング資料を用意することが求められています。

• 原価基準法と利益比準法(以下「CPM」)の適用に当たり、直接費用と総費用は異なる方法として区別されています。

• CPMの適用に当たり、単純な機能を有しており、付加価値が低い取引を実施

していて、かつ戦略的意思決定をする裁量のない納税者については損失を計上できません。

• ベンチマーク分析と移転価格調整。

• Decreeは比較分析及び移転価格調整について、下記の通り詳細なガイダンスを提供しています。

• より拡大した比較分析が必要となるような特別なケースを除き、比較財務データはテスト対象となる企業と同一の会計期間でなくてはなりません。

• ユニークな特徴を持つ無形資産の比較分析が提供されています。

• 重要な調整については地域に特有の優位性を考慮しなくてはなりません。

• 比較対象とテスト対象の取引・企業の差異が大きく、これらの差異を理論付ける情報がない場合には、四分位範囲の中央値を使うことが要求されています。

• 納税者は、国の予算に対して税収が減少するという結果にならないようにするという前提の下、ベトナムでの法人税を決定するため、選択された移転価格算定方法、独立企業間価格に基づいて移転価格調整を行います。

当修正については、所得の上方修正は認められますが、下方修正は認められないということを示しています。

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影響及びEYによる推奨事項

新しいルールにより、ベトナムの移転価格システムはより包括で、OECDのガイドラインとBEPSの推奨事項にさらに沿ったものとなりました。これにより、移転価格

管理と、租税回避と所得移転の防止に関する法律上の基盤がさらに強化されています。

新たに導入された3層構造の移転価格文書により、ベトナムの税務当局は外資

企業の移転価格実務の合理性についてさらに評価することになります。しかし、この要求事項により、ベトナムを拠点とする子会社はより重い管理負担を強いられることになります。

政府が移転価格規制を強化し、資源を集中し、移転価格特有の税務調査を行うことを考慮すると、ベトナムは納税者に対し、積極的な移転価格に関する執行環境となっているといえます。

この変更に対応し、効果的に計画し、移転価格開示を行っていくため、国際的な企業は新Decreeを注意深くレビューし、どのように事業に影響してくるか、ベトナムでの

要求事項は何かということを評価する必要があります。もし移転価格が貴社の事業の注目すべき領域とまだなっていない場合には、今後適切に注意を払うことが必要不可欠と なります。

貴社が新しい変更に対処していくことをサポートするため、移転価格の対応状況についてレビューが可能ですので、ご相談ください。

今後は?

ベトナムでの通例通り、法令の解釈についてDecreeよりもさらに詳細なガイダンスや指示を提供する、Circularが提供される予定です。今年中にはDecree20について解説するCircularが発出される見込みです。

2. 地域別ニュースレター l ベトナム

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

自主的な修正申告に対する罰則免除(自主的な修正申告に対する罰則免除に関する2017年1月19日付租税総局告示

第1219号)

歳入徴収を強化するため租税総局(GDT)は、適切な会計記録をつけていない

納税者に、3年以上の税務申告について必要な修正を行ない、修正申告を提出

することを促しています。

2017年4月1日より前に自主的に修正申告をすれば、加算税や延滞税などの

罰則が免除されます。ただし、租税総局による税務調査または更正処分を受けて

いる納税者にはこの特赦措置が適用されない点にご留意ください。

新たな給与税率の運用(新たな給与税率の運用に関する2016年12月27日付経済財政省・租税総局

通達第017号)

2017年1月の月次税務申告(MTR)から、すべての納税者は、月次税務申告書を

作成する際は以下の累進的な給与税率を適用する必要があります。なお、以下の

税率は居住者である従業員に適用されます。

新たな給与税率に加え、カンボジア政府は、未成年の扶養子女及び専業主婦・

主夫の配偶者について認められている所得控除を一人当たり7万5,000カンボジア・

リエルから15万カンボジア・リエルに引き上げました。この所得控除は、給与税上の

従業員の課税給与所得を計算するときに所得控除として使用できます。

月次税務申告の提出期限の変更(月次税務申告の提出期限の変更に関する2016年12月23日付経済財政省・

租税総局省令第1539号及び2017年1月16日付租税総局告示第931号)

経済財政省(MEF)が公布した本省令(Prakas)の下では、利益税の前払い、給与税、

源泉徴収税、付加価値税、特定商品・サービス税、宿泊税、及び街路照明税を

含め、月次税務申告書の提出期限が翌月の15日から20日に変更されました。

租税総局はまた、この新しい期限は各税金の納付にも適用される旨を明確にして

います。新たな期限は2016年12月分の月次税務申告から適用されます。

翌月20日までの提出及び納税を怠ったときは、租税法規の運用を損なったと見なされ、

カンボジア税法第128条、第133条、及び第136条に従って罰則が科せられます。

カンボジア 税務ニュースレター 2017年1月カンボジア

月額給与(カンボジアリエル) 税率

0 ~ 1,000,000 0%

1,000,001 ~ 1,500,000 5%

1,500,001 ~ 8,500,000 10%

8,500,001 ~ 12,500,000 15%

12,500,001以上 20%

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関係する利息その他のコストを含む貸倒引当金で税制上損金算入できる費用として認められた金額のうち、当該銀行またはMFIが回収した額は、当該貸出しや利息を回収した年の課税所得として利益税の計算において加算する必要があります。

過年度もしくは本省令の承認日前の期間について引当金を自主的に修正する銀行又はMFIは、係る修正に伴う加算税及び延滞税が免除されます。

他方、本省令に定められている規定または銀行及び金融セクターの関連規定に従わない銀行又はMFIは、違反した会計年度については引当金の計上が認められなくなります。

納税者のコンプライアンス状況の分類(納税者のコンプライアンス状況の分類に関する2016年12月23日付経済財政省省令第1536号)

カンボジアにおける税務上のコンプライアンスを強化するため経済財政省は、納税者が税務上のコンプライアンスに関する状況を自己査定できるように設計された以下の基準及び採点法を導入しました。

さらに本省令は12の基準を定めており、各基準に1点もしくは2点が付与され、最高得点は20点になります。コンプライアンス状況に基づく各区分の概要は下表の通りです。

*:TCCの有効期限は2年で、租税総局により再評価される場合があります。

貸出区分

税制上損金算入できる引当金

銀行及び金融機関 マイクロファイナンス事業者

正常先貸出し(Standard loan)

認められない 認められない

要注意先貸出し(Special mention loan)

認められない 認められない

破綻懸念先貸出し(Sub-standard loan)

総貸出額の20% 認められない

実質破綻先貸出し(Doubtful loan)

総貸出額の50% 総貸出額の30%

破綻先貸出し(Loss loan)

総貸出額の100% 総貸出額の100%

納税者区分 得点 税務コンプライアンス証明証(TCC)*

ゴールド 16 ~ 20 納税者に自動的に発行される。

シルバー 11 ~ 15 納税者の要請があれば発行される。

ブロンズ 1 ~ 10 納税者の要請があれば発行される。

国内銀行による貸倒引当金の運用(国内銀行による貸倒引当金の運用に関する2016年12月23日付経済財政省令第1535号)

経済財政省は2016年12月23日、銀行及び金融機関並びにマイクロファイナンス事業者(MFI)による貸出について、利益税(TOP)を算定する際の損金算入可否に関する区分を示しました。

2. 地域別ニュースレター l カンボジア

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

フィリピン フィリピン税務当局が配当・利子・ロイヤリティーに係る租税条約の届出に関する新たなルールを発表

エグゼクティブサマリー

2017年3月28日、フィリピン内国歳入庁(以下「BIR」)は、フィリピンの税務上の

居住者(法人を含む。以下「居住者等」)が、配当・利子・ロイヤリティーを非居住者や外国法人(以下「非居住者等」)に対して支払う場合に課される最終源泉税につき、租税条約に基づく減免の恩恵を受けるための手続き(Tax Treaty ReliefApplication、以下「TTRA」)を簡素化する新ルール(Revenue MemorandumOrder No.8-2017、以下「新ルール」)を発表しました。

この新ルールの発表により、フィリピン居住者等が非居住者等に対して支払う配当・利子・ロイヤリティーに関しては、既存のRMO No.72-2010で規定している

煩雑かつ不透明で税務コストのかさむ手続きの代わりに、新ルールにより導入されたForm(Certificate of Residence For Tax Treaty Relief、以下「CORTT」)を

提出することで自動的に租税条約上の減免措置が適用されることとなりました。その後のBIRの調査により租税条約の恩恵の適用可否につき検証されることとなりますが、各TTRAにつき、非常に長期間BIRからの個別ルーリングを待たなければならなかった状況を考えると、納税者にとっては朗報と言えるでしょう。

新ルールは17年6月26日付で適用されます。

本タックスアラートでは、新ルールの規定内容を概説します。

背景

既存のTTRA手続きは、受益者である非居住者が定款等のさまざまな書類を準備し、

その書類の公証やフィリピン領事館での認証手続きを経る必要があり、また、申請後も長期にわたりBIRと交渉しない限り、BIRからの個別ルーリングを得られなかったため、日系企業の間でも長らく問題視されてきました。

一方、BIRにとってもTTRA申請書類の審査が負担となっていたことから、申請書類・手続きの簡素化のために2016年6月23日に前BIR長官のキム・へナレスよりBIR通達RMO No.27-2016が発行され、非居住者等に支払う配当・利子・

ロイヤリティーに課される最終源泉税につき、租税条約上の減免措置を受けるためのBIRへの申請手続き(TTRA)が基本的に不要となりました。

しかし、2016年7月の新政権発足と同時にRMO No.27-2016が一時差止め

となって以来、本件に関する進展が見られず産業界からは不満の声が上がっていましたが、ようやく17年3月28日にこの差止め通達の改訂版である新ルール発表の運びとなりました。

新ルールの主な内容

(1)新ルールの特長

従前のTTRAの手続きに比べ、甚大な事務負担を要していた添付資料の作成が不要となり、また、CORTT提出後のBIRからの個別ルーリングの取得が不要となりました。ただし、CORTTを提出することですべての手続きが終了するのではなく、日本と同様にその後の通常のBIR調査でコンプライアンスチェックやPost Reporting Validationを通じて、租税条約適用の可否に関しての検証が行われることとなります。

(2)対象となる所得

配当・利子・ロイヤリティーのみとなります。その他の所得の支払い(技術支援料等)は通常通りTTRAの手続きが必要となるので留意が必要です。

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(3)新Form

新たにBIRより発表されたCORTTの提出が必要となります。(配当・利子・ロイヤリティーに係る既存のForm0901の代替として利用されます)なお、CORTTの下段には配当等の受領者が条約相手国の居住者であることを権限の

ある税務当局が証明するいわゆる居住者証明の箇所が設けられており、その箇所に配当等の受領者の居住地国である税務当局から居住者証明を入手する必要があります。新ルールでは、条約相手国で定められている様式に従った居住者証明の提出も認めておりますが、日本の場合、条約相手国により様式が定められている場合には、その様式を使用することとされてますので、CORTTに居住者証明を受けることになると思われます。

2. 地域別ニュースレター l フィリピン

詳細は以下の国税庁HP をご参照ください。https://www.nta.go.jp/taxanswer/osirase/9210.htm

(4)CORTTの提出先

• 租税条約の恩恵を受ける非居住者等:配当・利子・ロイヤリティーを支払う者(以下「配当等を支払う者」)

• 配当等を支払う者:BIRのInternational Tax Affairs Division(ITAD)およびRevenue District Office(RDO)No.39(*)従前のTTRAの手続きと異なり非居住者等の納税者番号の発行等を扱うRDO No.39にも提出が必要となります。

(5)提出期限

• 租税条約の恩恵を受ける非居住者等:

関連する所得の最初の支払日(もしくは支払者が未払計上等を行った日)の前日までにCORTTを支払者に対し提出する必要があります。

• 配当等を支払う者:最終源泉税支払後30日以内に非居住者等から受領したCORTTをITADおよびRDO No.39の双方に提出する必要があります。

(6)提出の頻度等

• 配当:原則、一度提出したCORTTは居住者証明発行日から2年間有効です。ただし、条約相手国が発行した居住者証明の有効期間が2年以上の場合にはその期間有効となります。

なお、有効期間の間に他の配当を行う場合には、その配当に係る最終源泉税納付後30日以内に配当に関する情報を記載したCORTTを別途提出する必要があります。

• 利子・ロイヤリティー:Loan Agreement等の契約書ごとにCORTTの提出が必要となります。なお、

利払い等が一定期間内に均一に行われず、異なるタイミングや異なる金額を支払うような取決めになっている場合(いわゆるStaggered Payment)には、利子・ロイヤリティーに係る最終源泉税納付後30日以内に当該利払い等に関する情報を記載したCORTTを別途提出する必要があります。

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

(7)新ルールの効力発生日

BIR長官の署名日から90日後(2017年6月26日)

(8)租税条約の恩恵の適用を受けられない場合

以下に掲げる事由が生じた場合には、租税条約の恩恵が受けられないとされています。

• 租税条約で定める要件を充足していない場合

• 月次最終源泉税申告書(Form 1601-F)もしくは従業員給与源泉および最終源泉税に係る年次申告書(Form1604-CF)が配当等を支払う者によって申告されておらず、かつ未納の源泉税がある場合

• CORTTの記載内容と月次最終源泉税申告書の記載内容とに不一致が見つかった場合

経過規定

新ルールが適用される17年6月26日前にBIRに提出されるTTRA(すでに提出

されたものを含む)のうち、配当・利子・ロイヤリティーに関するものは、租税条約上の軽減税率が適用されます。ただし、コンプライアンスチェックは行われます。

現行の取扱いへの影響

新ルールの内容と矛盾するRMO No.72-2010およびその他BIR通達等の規定は無効と見なされるか、適宜修正されることとなります。

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2017年度 投資優先計画 より

新しい投資優先計画(以下「IPP」)は、「機会の拡大と普及」をテーマに掲げ、経済

成長をより広い階層に行き渡らせたいという当政権の切なる願いが反映されたものとなっています。当政権では、政府の包括的国家産業戦略の実施を強化しつつ、投資委員会(BOI)への登録要件を満たすセクターの範囲に大きな修正を加えました。

投資優先分野

投資優先事業

1. 農産物加工を含むあらゆる適格の製造業

工業製品の製造ならびに農産物および水産物(ハラルおよびコーシャー食品*1

を含む)の(a)加工食品の生産において材料として使用される半製品・中間品または(b)最終消費者向けの加工食品もしくは消費財への加工が対象に含まれます。

また、部品および構成部品を含むプレハブ住宅部品ならびに機械および装置の製造も対象に含まれます。

近代化プロジェクトを除き、マニラ首都圏外のプロジェクトのみ登録の要件を満たすことができます。

2. 農業、漁業および林業

農産物、水産物および林産物の商業生産・栽培が対象に含まれます。

また、種苗の生産および苗床・ふ化場の設置、ならびに乾燥、コールドチェーン保管、急速冷凍、ばら積貨物の取扱いおよび保管用の施設、収穫、耕耘、

および噴霧・散布、食品包装工場、流通センター、低開発地域の製氷工場、AAA(トリプルエー)クラスの食肉解体所、AAAクラスの食鶏解体所などの支援サービスおよびインフラも対象に含まれます。

近代化プロジェクトを除き、マニラ首都圏外のプロジェクトのみ登録の要件を満たすことができます。近代化プロジェクトに含まれるのは農業支援サービスおよびインフラに関するプロジェクトのみです。

プロジェクトの登録資格の基準を満たしている必要があり、この基準は投資委員会が実施ガイドラインにおいて定義し、明確化することになっています。

3. 戦略的サービス*2

a. ICの設計集積回路(IC)の設計に必要なあらゆるロジックおよび回路設計技法が対象に含まれます。

b. 創造産業・ナレッジベースのサービス国内市場向けの情報技術・ビジネスプロセス管理(IT-BPM)サービス(コンタクト

センター、データ解析など)、ならびにアニメーション、ソフトウェア開発、ゲーム開発、医療情報管理システムおよびエンジニアリング設計などのオリジナルコンテンツを伴うこれらのサービスが対象に含まれます。デジタルまたは技術系ベンチャー企業または事業も対象に含まれます。

c. 航空機の保守、修理および点検あらゆる種類の航空機の保守、修理および点検が対象に含まれます。

2. 地域別ニュースレター l フィリピン

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

d. 代替エネルギー車の充電・燃料補給ステーションLPG駆動車を除く代替エネルギー車用の充電・燃料補給ステーションの設置が対象に含まれます。

e. 産業廃棄物処理生産工程で出た有毒・危険廃棄物(THW)の処理施設の設置が対象に含まれます。

f. 通信

固定及びモバイル・ブロードバンド*3・サービス用の接続設備の設置が対象に含まれます。新規参入者のみ登録の要件を満たすことができます。

g. 最先端のエンジニアリング、調達および建設

工場およびインフラのエンジニアリング設計、調達および建設が対象に含まれます。

4. 麻薬患者更正センターを含む医療サービス*4

一般病院および専門病院ならびに麻薬患者更正センターを含むその他の医療・保健施設の設置および運営が対象に含まれます。

5. 大規模集合住宅

200万フィリピン・ペソを上限価格とする低コスト住戸の開発が対象に含まれます。

都市部の賃貸用低コスト住宅プロジェクトも対象に含まれます。

都市部の賃貸用低コスト住宅を除き、マニラ首都圏外のプロジェクトのみ登録の要件を満たすことができます。

6. 地方公共団体の官民連携(LGU-PPP)を含む公共インフラおよび物流

空港、海港、(航空・陸上・海上)輸送、LNG貯蔵・再ガス化施設、石油・ガスのパイプライン・プロジェクト、バルク水処理および供給、研修施設、試験所、および国内産業開発区等(ただし、これらに限定されません)、国の経済の発展および繁栄に不可欠な物理的インフラの設置および運営が対象に含まれます。

地方公共団体(LGU)が開始または実施、あるいはその両方を行ったものを含むPPPプロジェクトも対象に含まれます。

7. イノベーションの原動力となる活動

研究開発(以下「R&D」)活動、臨床試験(治験を含む)の実施、卓越した研究拠点(COE)、イノベーションセンター、ビジネス・インキュベーション・

ハブ、およびものづくり施設(ファブラボ)・共同作業スペースの設置が対象に含まれます。

新技術・科学技術省(DOST)または政府の支援によるR&Dによる製品の商品化も対象に含まれ、そのような技術および製品として、以下が挙げられます(ただし、これらに限定されません)。

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• 農業バイオ・テクノロジー・ツール

• 災害軽減・防止のための機械設備またはソフトウェア

• 農業の生産性向上のための機械設備またはソフトウェア

• 天然資源保護のための機械化手段

• ポータブルデバイス技術

• 病気の発生を防止する機械設備またはソフトウェア

• 遠隔監視装置またはシステム

• 遠隔測定の専門サービス

• 地場産業の水準を引き上げる機械設備またはソフトウェア

• 光通信学およびナノテクノロジー

• 自然健康製品

8. 包括的ビジネス(IB)モデル

自社のバリューチェーンの一部である零細小企業(MSE)に事業機会を提供するアグリビジネスおよび観光セクターの大中規模企業(MLE)の事業活動が対象に含まれます。

同プロジェクトはパイオニアステータスの資格が認められる場合があります。

9. 環境または気候変動関連プロジェクト

利用することによってエネルギー、天然資源もしくは原料のいずれかの効率的利用に大きくつながり、汚染を縮小・防止し、または温室効果ガスの排出が削減される製品の製造・組立ておよびエネルギー効率関連施設の設置が対象に含まれます。

国際基準に基づく船舶のグリーンリサイクル、および民間の資源回収施設の設置も対象に含まれます。

10.エネルギー

従来型燃料(石炭、ディーゼル、舶用燃料〈重油〉、天然ガスおよび地熱)、廃熱およびその他の廃棄物燃料を利用した発電プロジェクト、ならびに電池電力貯蔵システムの設置が対象に含まれます。

11.輸出事業

1. 輸出製品の生産および製造

2. サービスの輸出*5

3. 輸出業者の支援事業

2. 地域別ニュースレター l フィリピン

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

12.特別法

インセンティブ供与の目的上、IPPに含めることが義務付けられている以下の事業が対象に含まれます。

1. 産業向け植林(大統領宣言705号)

2. 採鉱、鉱業(共和国法7942号)(ただし供与されるインセンティブは資本財に関するものに限られる)

3. 書籍・教科書の出版または印刷(共和国法8047号)

4. 石油製品の精製、備蓄、マーケティングおよび搬送(共和国法8479号)

5. 身体障害者のリハビリ、能力開発および自立支援(共和国法7277号)

6. 再生可能エネルギー(共和国法9513号)

7. 観光業(共和国法9593号)

ミンダナオ・イスラム教自治区(以下「ARMM」)リスト

2017~19年度ARMMリストに含まれるのは次の優先投資分野です。

1. 輸出事業

1. 輸出業者およびサービス輸出業者

2. 輸出に必要なサービスを提供する事業

2. 農業、アグリビジネス、水産養殖および漁業

1. 農業およびアグリビジネス

あらゆる種類の農業生産、農場経営、プランテーション、農業者による加工または製造が対象に含まれます。ただし、ARMMを本拠地としている場合に限ります。サイロ貯蔵施設および乾燥施設など、ARMMを本拠地とする、またはARMMの農業製品もしくは農場経営者にかかわるバリューチェーン、付加

価値事業、物流およびサプライチェーンを対象とするアグリビジネス事業も含まれます。

2. 水産養殖および漁業

海産物産業、内水面資源、海藻、漁業、養魚地その他アワビ養殖場、エビ養殖場またはカニ養殖場など海水、内水面および半塩水の養殖場、これらの海水および内水面の資源のふ化場の設置または養魚の飼育もしくは加工が対象に含まれます。

3. 基幹産業

抗生物質など医薬品の製造、伝統薬または薬用ハーブおよびバイオプロスペクティング(生物資源調査)などの関連事業、繊維または衣料品、給水および水処理、製氷工場または冷凍設備、伝統的な船舶の製造、有機・非有機肥料の生産、鉄鋼業、石油化学産業、造船、船舶解体、船舶の修理・点検などあらゆる種類の重工業、工業用の浚渫(しゅんせつ)および埋立て、セメント生産およびコンクリート骨材が対象に含まれます。

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4. 公的インフラおよびサービス

鉄道、橋梁(りょう)、有料道路、航空・陸上・海上輸送、およびそれら等を支援するコンクリートの製造プラント、洪水調整および砂礫(されき)を浚渫(しゅんせつ)する治水支援事業、インターネット接続のための衛星リンクと地上・海底ケーブル接続の両方の国際ゲートウェイ施設の建設および運営を含む通信などの戦略的インフラプロジェクトが対象に含まれます。ただし、これらがARMMを本拠地とし、ARMMの営業許可を保有し、あるいはARMM地域(相互接続性を高めるとともに、地域または国の統合を支援するため、ARMMまでの往復区間を含みます)をサービスの対象としている場合に限ります。

5. 産業サービス用の設備・施設

試験所および品質管理施設、人材育成・デモンストレーションセンター、職業教育・専門技能サービス・施設、コールセンターおよびビジネス・プロセス・アウトソーシングなどの情報技術関連企業、工具・金型工場およびこれに類する施設、鋳造および金属加工、什器・備品、セラミックおよびタイル製造、石油化学コンビナートおよび工業ガスを含む工業集積地または工業団地が対象に含まれます。

6. エンジニアリング産業

エンジニアリング製品、エレクトロニクスおよび電気通信製品、新技術(3D印刷

など)を使用したプレハブ構造材または現地調達した資材を含む建設資材の製造が対象に含まれます。

7. 物流

物流、サプライチェーンおよび物流ネットワーク産業、海運、運搬およびトラック

輸送、貨物輸送業者および運送業者、ばら積貨物船、倉庫業および倉庫、保管ならびにARMMを主な本拠地とするその他の物流施設(ARMMの港、空港を利用しているか、ARMMの特別経済区付近に位置する積替拠点およびサービスを含む)が対象に含まれます。また、ARMMはより幅広い港湾産業に関連する企業を誘致する必要があるため、ARMMの港湾産業および関連産業ならびに埠頭(ふとう)での積卸作業(arrastre)および港湾荷役業務などの付帯サービスも想定されています。

8. 東アセアン成長地域(BIMP-EAGA)関連投資企業

貿易および投資にBIMP-EAGAの枠組みを利用し、BIMP-EAGA(ブルネイ、

マレーシアのサバ州およびサラワク州、インドネシアのマルク州、スラウェシ州、カリマンタン州およびパプア〈旧イリアンジャヤ〉州、フィリピンのミンダナオ州、パラワン州)に所在、あるいは営業拠点を有する企業が対象に含まれます。これらの企業は、ARMM内で従来から越境貿易や昔からのバーター取引等の経済活動に従事していました。これらの活動は、公式な統計には表れず、インフォーマルセクターの一部を構成していましたが、これらのインフォーマルセクターを正式なものとすることを促進するものとします。

9. 観光産業

観光関連の施設およびアトラクションの設置、観光関連サービス、ARMM観光客の

ニーズを満たすホテルおよびレストラン、ハラルベースの観光産業、観光客の宿泊施設、観光客の輸送施設および保健または医療施設およびその他の公共施設を含むリタイアメントビレッジ(高齢者居住コミュニティ)の開発が対象に含まれます。

2. 地域別ニュースレター l フィリピン

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

10. 保健および教育サービス・施設

ARMMは、人間開発指数に示されるように保健および教育に関する一部の指標が

国内で最も低くなっています。そのため、私立の病院、診療所、ウェルネスセンター、初等教育、中等教育、高等教育機関(単科大学、総合大学および職業専門学校)の設置ならびに教師養成センターなどの付帯サービスもしくは支援サービスなどの保健・教育セクターへの投資者に対してインセンティブを与える必要があります。

11. ハラル産業

2004~10年度中期フィリピン開発計画(MTPDP)では、ARMMをハラル産業の

生産加工基地とすることが構想されていました。国内唯一のイスラム地域であるARMMは、ハラル消費者の大多数がこの地域にいることからハラル産業に比較

優位性を持っています。必要なハラル認証を取得している、あるいはイスラム法(シャリア)の原則の下で営業しているあらゆるハラル関連業企業が対象に含まれるものとします。ハラルとは、イスラム法上許容される製品およびサービスをいいます。

12. 銀行、非銀行系の金融機関および機構

従来の銀行ならびに金融、小規模金融および組合金融の他に、ARMMが国内で最も銀行口座保有率が低い地域で自治区設立法の規定(共和国法9054号第IX条第7項)に従った金融包括性の必要があることから、イスラムの銀行および金融ならびにイスラムの小規模金融および質屋業が含まれます。海外の

フィリピン人労働者の送金に対応するための送金センターも含まれます。このためのガイドラインを地域投資委員会(RBOI)が関連するステーク

ホルダーや金融アクセスおよび金融包括性プログラムや活動に従事する機関と協議の上で公表する場合があります。

13. エネルギー

ARMMの世帯電化率は、全国が74%であるのに比べ、わずか34%と国内で最も低い惨憺(さんたん)たる状況であることを踏まえ、ARMMにおけるエネルギー分野

への投資を増やす必要があります。発電および配電などの川上・川下産業におけるエネルギー投資が対象に含まれます。オフグリッドおよび小規模発電グループ(SPUG)分野が電力の取り残された市場であるため、これらの分野への

投資およびインセンティブの供与が最優先されるものとします。エネルギーのみならず付帯サービスも対象に含まれ、ARMMという環境においては、人為的な

要因および自然災害要因による変電所と送電塔および配電塔の障害により停電が頻発していることから、これらの施設の建設も含まれます。

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*1: コーシャー食品:ユダヤ教で定める食べ物に関する規定に従った食品

*2: プロジェクトの登録資格の基準を満たしている必要があり、この基準は投資委員会が実施ガイ

ドラインにおいて定義し、明確化することになっています。

*3: モバイルブロードバンド:無線アクセスでの移動体通信で移動しながらブロードバンドインター

ネットに接続する方法

*4: 保健省(DOH)に承認された所在地のポジティブリストに載っていることが条件となります。

*5: マニラ首都圏を拠点とすることとなるコンタクトセンターおよび非音声業務処理事業は、2020

年までには行政命令第226号(別名1987年オムニバス投資法およびその後の改正)に基づく

投資委員会のインセンティブを利用できる資格がなくなります。

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2017年ミャンマー連邦税法が公表され、同年4月1日から施行されました。2016年

連邦税法からの変更点を中心に改正税法の概要を説明します。特別物品税および商業税に関して大きな改正がありました。

特別物品税

輸入および国内で製造される以下の物品に関しての税率が変更となっています。

• たばこ 1本につき、1ミャンマー・チャットの増税

• 葉巻、パイプタバコ 60%から80%に増税

• ビールを除くアルコール類 大幅に増税(ビールは60%に据置き)

• 木材(丸太) 20%から5%に減税

• 翡翠(ひすい)原石 20%から15%に減税

• その他宝石の原石 20%から10%に減税

• 自動車(ピックアップを除く) 排気量1,800cc以上の自動車に対し一律25%から排気量に応じた税率を設定

輸出物品に関しては、以下の通り変更されています。

• 木材(丸太) 50%から10%に減税

• 翡翠原石 20%から15%に減税

• その他宝石の原石 20%から10%に減税

商業税

納税義務の免除に関する基準額が引き上げられています。

1会計年度における売上高が2,000万チャットとされていたのが、5,000万ミャンマー・チャットとなり、それ以下の売上高の場合、商業税が免除されます。

上記に加え、新法の下では、“De minimis(僅少〈きんしょう〉な)”基準額が関税局に

よって設定され、その金額以下の物品については新たに免税となることが明記されました。しかし、基準額については言及されておらず、今後の関税局からの通知を待つことになりそうです。

商業税は87の区分の物品および29の区分のサービスについて免税となりますが、新たにこの免税リストに加えられたものとして、「豆乳」、「仮通関制度ないし関税払戻制度の下で輸入された物品」、「宝くじ」、「機械化された農業」があります。

一方で、「石けんの原材料」、「魚・エビを使った水産加工品」、「商業目的以外の住居賃貸」、「人材紹介業」については、免税リストから外れており課税対象物品(サービス)とされました。

ミャンマー 2017年 ミャンマー連邦税法 概要

2. 地域別ニュースレター l ミャンマー

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

2016年10月に成立したミャンマーにおける新しい外国投資規制である新投資法のポイントについて解説します。

新投資法成立の経緯

近年、右肩上がりに外国直接投資(以下「FDI」)が増加し、世界でも有数の高い経済成長を実現しているミャンマー(図1参照)ですが、15年の総選挙を受け成立した新政権の下、本格的に国内投資環境を整備すべく、16年10月に既存の外国投資法と内国投資法を統合する形で、Myanmar Investment Law(新投資法)が施行されました。これにより投資に関するルールを一本化し、これまで複雑だったミャンマーの投資規制を明瞭かつ合理的なものに一新することが期待されています。

投資法の概要

新投資法は外資、内資を問わず、また既存、新規を問わず、ミャンマー国内のすべての投資に対して適用されます(新投資法第4条)。ここで、外資・内資の違いは、依然

として外資規制が存在するため重要となります。外資の定義は会社法に従うものとされており、現在こちらも改正議論中の新会社法の下では、外国からの出資割合を35%とすることで検討されています。現行会社法では、1株でも外国からの出資が

あれば外資規制が適用されています。しかし、新会社法および新投資法では、マイノリティーの出資であればミャンマー内国企業と見なされるため外資規制の対象外となる可能性があり、これは投資形態の選択肢が大きく増えることを意味します。

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2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度

(9カ月累計)

(%)(百万米ドル)

ミャンマーへのFDI(百万米ドル) 経済成長率(%)

ミャンマー投資法概要

図1 ミャンマーのFDIと経済成長率推移

出典:IMF Word Economic Outook Database, Oct 2016 ミャンマー投資企業管理局(DICA)

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新投資法ではミャンマー投資委員会(以下「MIC」)の役割も変わりました。旧外国投資法では、規制事業についてはMICの許可を得なければならず、さらに免税措置や土地の長期リースといった投資インセンティブもMIC許可に付帯して自動的に付与されていました。新投資法では、MIC許可は一部の事業に限定され(同36条、37条)、税務恩典や土地長期リース権の取得は、規制事業以外のすべての事業に対して別途承認( Endorsement )を得ることで認められます(同 37条)。投資インセンティブの付与と規制対象事業の認可手続きを分離した点が、大きな改正ポイントです。

投資規制

新投資法上の規制事業は、次の通り示されています。

1. MIC許可が必要な事業(同36条)

国家戦略上重要な事業、資本集約的な事業、環境や地域社会に大きな影響を及ぼす事業、など一部の重要な分野に限定されています。

2. 禁止事業(同41条)国家や公衆全般に悪影響を与える事業が列挙されています。

3. 制限事業(同42条)

政府のみ実施可能な事業、外資が行うことを禁止する事業、内資および外資の合弁企業のみ許可される事業、関連省庁の許可を必要とする事業が列挙されています。

このうち、特に日系企業に関心が高いと考えられ、従前は禁止あるいは合弁企業にのみ認められてきた小売業、卸売業、不動産業に関して規制緩和される見込みです。(ドラフトの通達に基づく)

• 小売業ミニマーケットおよびコンビニエンスストアについては外資は禁止。店舗面積が1万平方フィートを超える小売については内資との合弁により外資も参加可能。

• 卸売業規制はなく、外資での参加は可能。

• 不動産開発業住居用建物およびコンドミニアムの開発、販売、賃貸に関しては内資との

合弁により外資も参加可能。その他の不動産開発、例えばショッピングモール、ホテル等については外資単独による実施が認可される。

4. 連邦議会の承認が必要な事業(同46条)国家および国民の安全、経済、環境、国家利益に重大な影響を及ぼす事業とされています。

2. 地域別ニュースレター l ミャンマー

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

投資インセンティブ

1. 不動産の長期リース権従来は、MIC許可を得た企業にのみ与えられていた権利ですが、新投資法の下では新たに規定された承認手続きを行うことで、全ての企業に認められます。

また、土地だけでなく建物についても承認を受けることで、長期リースが認められるようになっています。

2. 税務上の恩典措置前記1.と同様に、承認手続きが必要とされます。法人所得税の免税期間は地域の開発に応じて3、5、7年となります(従来はMIC許可の下で一律5年間)。具体的な業種については、今後、施行細則ないしMIC通達でまた、税務恩典が受けられるのは、MICが指定する業種に限られます(同75条)が、明らかにされる予定です。

新投資法ならびに執筆時点で第3次ドラフトとなっている投資法施行細則については、DICAウェブサイト(www.dica.gov.mm/en)で入手できます。

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インド JBS フラッシュニュース 2017年2月号

1. 【税務】GAARの明確化を発表

2. 【税務】POEM判定の最終ガイドラインを発表

3. 【税務】SCN、裁判(Adjudication)及び徴収(Recovery)に関する通知を発表

4. 【投資】M-SIPS改正を閣議決定

5. 【税務】物品の海上輸送、農村の銀行口座、旅行会社、アグリゲーターに関するサービスの通達を発表

本年度予算案は、その発表方法において三つの改革が行われました。すなわち、従来の慣行から脱却し、2月1日に発表、鉄道予算と一般予算の統合、そして、計画支出、非計画

支出の分類をなくし、セクターや省庁へ、全体的な観点から割当を行ったことです。一方、予算案における税務の提案は概して、例年ほどのボリュームはなかったといえるでしょう。むしろ、予算案前にいくつかの重要なアップデートが行われました。本稿はその動向を取り上げます。

2. 地域別ニュースレター l インド

1. インド税務当局は一般的租税回避防止規定(以下「GAAR」)の明確化を発表

インド所得税法は、GAARの形式で規定を含んでいます。これは、否認される租税回避行為(impermissible tax avoidance arrangements)を扱う広範な権限を税務当局に付与するものです。所得税法上のGAARの規定は、2017~18年度からの施行となります。GAAR規定はガイダンスに従って適用されることになっており、規定される条件に準拠する必要があります。

ステークホルダーや業界団体はGAAR規定の運用の明確化を要求し、直接税中央委員会(以下「CBDT」)は2016年6月にワーキンググループを設置しました。

2017年1月27日に、その要求に従って、CBDTは通達を発出し、Q&Aの形式で16の明確化を行いました。そして、同日付でその明確化を要約したプレスリリースを公表しました。

通達の主要な明確化は以下の通りです。

a. GAARは、特定租税回避防止規定(SAAR)と共存できる。租税条約における特典制限条項テストで十分に租税回避に対処できていない場合、GAAR規定も適用可

b. 同一の事実や状況が続く場合、GAARを異なる年度に適用する際に、一貫性の原則を遵守する

c. 事前裁定制度の当局(AAR)が事前裁定で行為が許容し得るものと見なした場合、あるいは行為を是認する際に、裁判所や会社法審判所(NCLT)が租税回避事項を適切に調査した場合、GAARは適用不可

d. 行為における全ての納税者にわたって対応的調整を行うことは、GAARの抑止を妨げることになるので、これを認めない

通達はまた、GAAR規定はそれに値する事案のみに適用するよう、GAARが行使される前に、十分な手続き上の保護条項を設けるべき(承認パネルで厳しく精査

する等)と述べています。通達ではその他、転換社債、無償新株等への祖父条項の範囲の取扱いについて明確化しています。

プレスリリースは、また政府が税務規則に確実性と明確化を提供すると述べており、GAAR運用に関してステークホルダーの疑念についてさらなる明確化が追って提供されるでしょう。

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

2. CBDTは企業の居住性判定のための実質的管理地(以下「POEM」)判定の最終のガイドラインを発表

2017年1月24日付2017年通達6号による、インドでの外国企業のPOEM判定の最終ガイドラインをリリースするとともに、CBDTは同日付で最終ガイドラインの公表をアナウンスするプレスリリースを発表しました。

このアップデートはプレスリリースの主要なポイントを取り上げています。

休眠会社(ペーパーカンパニー)をターゲットとする意図

• ガイドラインはインド国外での能動的事業(以下「ABOI」)を行っているかの判定を規定し、POEMの判定に当たり、インド国外でABOIに従事している外国企業を除外している

• プレスリリースはPOEMの意図はペーパーカンパニーや実際の支配や管理は

インドで行われていながら、インド国外で所得を保持するために設立された企業をターゲットにしていることを明確化している

インドにPE(恒久施設)があるというだけでPOEMになるわけではない

• プレスリリースでは、ガイドラインは、ただインドにPEがあるというだけで、

あるいは、インドとビジネスコネクションがあるということのみをもって外国企業を対象とすることや、グローバル所得に課税することを意図しているわけではないと強調している

小規模企業を除外

プレスリリースでは、ガイドラインは年間の売上総額・総収入が5億インド・ルピー以下の企業には適用しないと規定しています。

ガイドラインはPOEMのテストは「形式より実質重視」の一つであり、各事案の

事実や状況を年次で考慮して決定されることを強調しています。ガイドラインはPOEMは主に企業がインド国外でABOIを行っているかに基づいて決定されることを規定しています。ABOIは以下の規準で評価される必要があります。

i. 納税者の受動的所得はない、かつ

ii. インド国外の資産規準、従業員数、給料・賃金

ABOIテストを満たす企業であっても、もし取締役会の大半がインド国外で

行われている場合で、事実上の意思決定機関が取締役会である場合には、POEMはインド国外にあると見なされます。

ABOIに従事していない企業について、ガイドラインは2段階のテストを規定しています。

a. 主要なマネジメントや商業上の決定を行う人の特定

b. これらの決定が事実上、行われる場所の決定

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/GAAR_Jan/$FILE/GAAR_Jan.pdf

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この点について、ガイドラインはまた、取締役会議の場所、本店の場所、誰が

シニアマネジメントを構成するか等、関連の要素を規定しています。また、決定の実行の場所やルーチンの日常的な決定が行われる場所は、POEMの判定に関係ありません。さらに、POEMは、一面だけを見て決定されることはありませんが、POEMが判定される年度における期間にわたって、行われる活動を考慮してPOEMは決定されます。ガイドラインはまた取締役会による意思決定への参加が電話やビデオ会議、あるいは書面決議の形式で行われる場合におけるPOEMの

判定を取り扱っています。それはまた、株主による決定の影響も取り扱っており、株主間協定と、企業の機関を制限する決定との間の相違点を指摘しています。

行政上の保護措置として、ガイドラインは2段階の承認を要求しています。POEM調査を開始する前に、税務担当官は、所得税局第一長官または長官から事前許可と3人の税務担当高官の許可を得なければなりません。外国企業の居住性を決定する前に、納税者にヒアリングの機会を与えなければなりません。

ガイドラインはまた、POEM判定における処理原則の適用性を例示するため、五つの事例を規定しています。事例の詳細は附属文書Aに記載されています。

附属文書Bでは、参照しやすくするために、ドラフトのガイドラインと比べて通達で変更された点を一覧にしています。

3. 財務省中央物品税関税局(以下「CBEC」)はShow cause notice(以下「CN」)、裁判(Adjudication)及び徴収(Recovery)に関する通知を発表

本稿は2017年1月19日付でNo.96/1/2017 – CX.1により、CBECからドラフトの形式で発表された基本通達の内容を要約したものです。これはSCN、裁判、徴収を取り扱っています。

基本通達は既存の物品税の85の通達を統合することを目的としています。

当該事項に関する関連の法律及び法定の規定は、過去に発出されたすべての関連の通達を含み、すでに関連のない通達を廃止することによって、一つにまとめられます。

二つの附属文書も当該通達に添付されています。

• 附属文書Iは、基本通達によって廃止されることになる82の通達のリストを規定しています。

• 附属文書IIは、当該事項に関して網羅的な指示を含むので、引き続き有効な三つの通達のリストを規定しています。

基本通達ドラフトは四つの部分に分かれます。

• Part IはSCN関連の問題を取り扱っています。

• Part IIは、裁判の手続きに関連する問題を取り扱っています。

• Part IIIは、手続きの終了と税金の徴収を取り扱っています。

• Part IVは各種問題を取り扱っています。

委員会は、2017年2月15日までに当該ドラフト通達に関して企業や当局の担当官のフィードバックを求めています。

2. 地域別ニュースレター l インド

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/POEM_Alert_24/$FILE/POEM_Alert_24.pdf

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既存の物品税通達の基本通達への統合は、税務当局にとっても納税者にとっても、SCN、裁判、徴収に関連する問題について、ワン・ストップ・ソリューションを提供することになるでしょう。

基本通達は上記事項に関して、クイック・レファレンス・ガイドとして有用であり、各種通達や指示書を分析するのに費やしていた多くの時間を節約することになるでしょう。

4. Modified Special Incentive Package Scheme(以下「M-SIPS」)_改正を閣議決定

本稿は、閣議承認したM-SIPS改正点を要約したものです。

通信・技術省は2012年6月に電子システム設計・製造(ESDM)セクターへの投資を促進するためM-SIPSを導入しました。

主な改正点は以下の通りです。

• スキーム下における申請受理のタイムラインは2018年12月31日か、インセンティブのコミットメントが100億インド・ルピーに達した時点のどちらか早い方

• 新規承認については、スキーム下におけるインセンティブはプロジェクト承認日から享受可能

• インセンティブはプロジェクト承認日から5年以内に行なわれた投資について可能

• 承認は通常、完全な申請を提出してから120日以内に適格な申請に与えられる

• スキーム下でインセンティブを受けるユニットは、少なくとも3年間、商業生産をしなければならない

政府の適格な申請を処理するための特定のタイムラインや承認プロセスを導入する動きは、民間投資を早め、タイムリーに特典を得られるようになり、産業界を後押しすることになるでしょう。

申請者がすでに申請書を提出済みであるものの承認待ちのケースに関するインセンティブの発効日について、より明確化が求められます。このようなケースで、承認日からインセンティブを利用可能にする動きは、ベネフィットを切り詰める効果を持つため、投資者に不利益に働くことになってしまいます。

産業界は、M-SIPS政策変更の正確な影響を理解するために、改正点を実施する公式通達を待つ必要があります。

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/MC_SCN/$FILE/MC_SCN.pdf

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/Alert_SIPS/$FILE/Alert_SIPS.pdf

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5. 財務省は、物品の海上輸送、農村の銀行口座、旅行会社、アグリゲーターに関するサービスの通達を発表

本稿は、各種サービスについて、多くの免除、リバースチャージでの支払い、

そして減額を認めていたこれまでのサービス税規則や通達を改正するために、財務省が発表した四つの通達を要約したものです。

通知された主要な変更は以下の通りです。

• 非課税地域に所在する者が非課税地域に所在する者に提供する場合、物品の海上輸送に関するサービス税免除の廃止。当該サービスはインド

国外の場所からインドの通関のための税関まで物品の海上輸送に関する。船舶担当者にサービス税の納税義務が課せられた。

• 農村部の銀行口座に関連して、ビジネスファシリテーターが提供するサービスや銀行相当のサービスの免除の範囲の拡大。

• 特別な場合、賃貸サービスに関連して、アグリゲーターは顧客をホテル、ゲストハウス等につなげる人を含まない。

• 40%の新減額率が一定の条件の下、旅行会社に適用された。

コメント2017~18年度予算案のアジェンダは、インドを変革し( transform)、活性化(energize)、クリーン(clean)にすることであり、頭文字をとって、TECインディアと

打ち出されました。高額紙幣廃止後の痛みを経て、本年は歴史的な税制改革であるGST導入を間近に控えています。企業にとっても大きく変革し、活性化を図り、大きな

利益を得ていく好機到来です。私たちも、皆様のお役に立てるよう、研さんし、変革を続けてまいります。

JBS フラッシュニュース 2017年3月号

1. 【税務】3月4日、CGST及びIGST法案で合意

2. 【税務】2月18日、州への税収補償法案で合意

3. 【税務】BEPSに関する最近のOECD改正事項

4. 【税務】年間売上高・総収入額5億インド・ルピー以下の企業はPOEM判定から除外

後期予算国会が本年3月9日から始まります。それに先立ち、3月4日の物品サービス税(以下「GST」)審議会の会合でCentral GST(以下「CGST」)とIntegrated GST(以下「IGST」)法案が合意されたので、国会へ上程される見込みです。続いて、3月16日の会合で、State GST(以下「SGST)と連邦直轄領GST(以下「UTGST」)法案が合意されると、

物品、サービスごとの税率区分の決定も開始される予定です。本稿ではこの他、国際税務のアップデートを取り上げます。

2. 地域別ニュースレター l インド

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/SRT_Notifications_of_2017/$FILE/SRT_Notifications_of_2017.pdf

1. 3月4日、GST審議会はCGST及びIGST法案で合意

GST審議会は、2017年3月4日に行われた第11回会合で、法的に入念に精査されたCGST法とIGST法の最終法案に合意しました。SGSTとUTGSTの二つの法案は法務レビューを受けた後、2017年3月16日に予定されているGST審議会の次回の会合で合意される見込みです。

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

プレスリリースによれば、審議会が最終合意した法案では、5%の税率が適用される年間500万インド・ルピー以下の売上高のレストランに複合スキーム(Composition scheme)が及ぶとしています。

GST法の基本税率の上限は従来の28%(14% CGST + 14% SGST) から、40%(20% CGST + 20% SGST) へ引き上げられました。しかし、実効税率は昨年合意された5%、12%、18%および28%に据え置かれるものと見込まれます。

外枠引上げの提案は審議会が将来、国会の承認を求めずに28%を超えてGST税率を引き上げることができるようにするためです。最終法案に盛り込まれた他の変更は、法案が公表された後に周知されます。

政府はCGSTとIGST法案を2017年3月9日から始まる後期予算国会に上程する計画です。SGST法は各州議会で議決される必要があります。

SGSTとUTGST法はGST審議会でいったん承認されると、GSTの当局者は5%、12%、18%および28%の4段階の基本税率に物品およびサービスを分類することを開始します。

GST審議会での二つの法案が承認されたことを受けて、政府は2017年7月1日のGST導入へ向けて大きく前進したことを示しました。

2. 2月18日、GST審議会は州への税収補償法案で合意

GSTは目下のところ2017年7月1日導入が予定されています。2017年2月18日に開催された第10回GST審議会において、GST導入に伴い収入減が生じる州を補償するための法案に合意しました。

しかし、その他三つの法案(CGST法、SGST法、IGST法)に関しては、2017年3月4日、5日に開催予定の次回GST審議会で、最終審議および承認が見込まれています。

財務大臣は、各基本税率への物品・サービスの分類を承認することがGST審議会の重要な役割の一つとして求められると述べています。

CGST法およびIGST法がGST審議会で承認されれば、2017年3月9日から

開催される後期予算国会で議会に提示される可能性が高いものと考えられます。CGST法、IGST法および補償法案が議会を通過するのとは別に、SGST法は各州議会の承認が必要となります。

予算国会での法案通過は政府にとって2017年7月1日GST導入を死守するために極めて重要です。次回GST審議会でのGST法案の最終化は産業界に確実性をもたらし、ビジネスプロセスを確定する上で有用となることでしょう。

各種物品・サービスに対する適用税率の早期明確化は、GSTの観点からビジネスを適応させていく上で必須の要素です。

政府は産業界にGST導入を働きかける広範なプログラムを2017年4月1日から展開予定です。

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/GST_Council_clears/$FILE/GST_Council_clears.pdf

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2. 地域別ニュースレター l インド

3. BEPSに関する最近のOECD改正事項

2016年12月に開始されたピアレビュー及びモニタリングプロセスの一環として、OECDはBEPS行動14(紛争解決メカニズムの有効性向上)の実施に関する情報を収集しているとの声明を2017年1月30日に発表しました。特に、

オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク及びスウェーデンに関して、2月27日までに電子アンケートを通じて、納税者から意見を求めています。

2017年2月1日、OECDはBEPS行動5(有害な税制慣行への対応)や行動13(国別報告書)に関するピアレビュー文書を公表しました。

ピアレビューの目的は、ミニマムスタンダードとして合意されたBEPS行動の

効果的な実施を確保するものです。ピアレビュー文書はミニマムスタンダードに関する評価規準やピアレビュープロセスの評価方法から成る合意された委任事項(調査事項)を含みます。

詳細は以下のリンクをご覧ください。

http://www.ey.com/Publication/vwLUAssets/BEPS_13_February_2017/$FILE/BEPS_13_February_2017.pdf

4. 年間売上高・総収入額5億インド・ルピー以下の企業はPOEM判定から除外

インド所得税法における外国法人の居住性判定のテストは2015年に改訂され、POEMの考え方が導入されました。

これに続き、CBDTは2017年1月24日に通達6号を発出し、外国法人のインドにおけるPOEM判定のガイドラインを公表しました。

ガイドラインとともに、プレスリリースも同日付で公表しました。プレスリリースでは、ガイドラインは年間売上高・総収入額5億インド・ルピー以下の企業には適用しないことも明記されました。

しかし、プレスリリースで小規模企業に対しては免除がうたわれたものの、その執行面に関しては税法上も通達上も明確にはされていませんでした。

このため、CBDTは2017年2月23日に通達8号を発出し、年間売上高もしくは総収入額5億インド・ルピー以下の企業については、所得税法上、居住性判定テストとしてのPOEMは適用しないことを明確化しました。

コメント2016年10~12月のGDP成長率は市場の予想を上回り、3四半期連続で7%

台を維持しました。高額紙幣無効化による混乱は予測よりも早く終息へと向かいつつあるといえるかもしれません。しかし、間もなくやってくるGST導入による混乱は、比較的長く続くことが懸念されています。混乱から早く抜け出し、GST導入による恩恵にあずかるために、GST動向を注視し続け、準備を怠らないことが肝要です。私たちも引き続き、GSTアップデートを提供してまいります。

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

JBS フラッシュニュース 2017年3月号 GST速報

3月16日、GST審議会はSGST及びUTGST最終法案で合意

GST審議会は、2017年3月16日に行なわれた第12回会合で、SGST(州GST)法とUTGSTの最終法案を合意しました。

他の三つのGST法(CGST、IGST、税収補償法案)はこれまでのGST審議会で合意されています。

報道によれば、高級車や炭酸飲料の租税(Cess)は上限15%とされました。「Sin goods」 に対する租税の上限はさらに高くなりました(パンマサラには135%、タバコ1,000本当たり290%あるいは4,170インド・ルピー)。石炭及び亜炭に対する税(環境税)はトン当たり400インド・ルピーの上限がつくことになります。

しかし、これらの物品に対する現行の実効間接税率と同等の低い税率で租税が課されることになるでしょう。

審議会はまた特別経済区(SEZ)へ供給される物品やサービスにはゼロ税率が適用されるという提案に合意しました。

混合、評価、仕入税額控除や経過措置に関する最初のドラフト規則は、納税、登記、申告、還付に係る修正規則とともに、2017年3月31日に予定されている次回の会合で取り上げられる予定です。

委員会は、その後、承認された5%、12%、18%及び28%の税率区分に物品及びサービスの分類作業に入ります。

政府はCGST、IGST、及びUTGST法案を閣議決定後、後期予算国会会期中に上程する予定です。SGST法案はそれぞれの州議会で取り上げられます。

GST審議会で5法案全て承認されたことから、本年7月1日のGST導入予定がいよいよ現実的になってきました。

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トルコ Tax Agenda January 2017 より

関税取引の検査における五つの主要論点

「事後検査(post-release control)」の範囲内に含まれる税関監査が多くの企業の「通関アジェンダ」に含まれていると想定しても間違っていないでしょう。多くの企業が、特に今年後半、「事後検査」の対象とされていると見受けられます。

それらの監査で注意が向けられる論点として以下のものがあります。

• ロイヤルティの支払い

• 貨物の課税価格に含まれない売り手への支払い

• 輸入付加価値税の課税標準

• 再輸出加工制度の適用

• 無関税の輸入の関税取引

副次的に加工された金属スクラップに課される環境貢献基金

現在、再輸出加工手続きに従ってトルコに輸入された物品を加工した結果として

金属スクラップが発生し、それを副産物として売却することが意図されている場合、税関は当該金属スクラップについて環境貢献基金(environment contributionfund)を徴収しています。

しかし、EYの見解では、再輸出加工手続きに従ってトルコに輸入された物品に対する加工および労働の産物である金属スクラップが、2013年1月1日以後、IPAC(再輸出加工許可)保有者によって副産物として売却された場合、それらの

製品について環境貢献基金の支払義務を課すべきではありません。その理由は、環境法の観点からすればこれは輸入業務ではなく、それらの製品は検査の対象とならないからです。

EYは、支払われるべきではないのに支払われた環境貢献基金は、関税法の還付規定に照らして還付が可能であると判断します。

旅客が持ち運ぶ見本またはサンプルの申告

税関総局(Customs General Directorate)は、旅客が企業のために持ち運ぶ見本またはサンプルを税関当局に申告する際の疑問を解決するために、2016年12月5日付通達(Circular Letter)第2016/19号を発布しました。それに

よれば、上記物品について直接的な代表権限を付与された企業の従業員または通関業者は、その企業名義で登録されるように口頭申告を行い、その物品を無関税で輸入することが可能です。

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

例外的価値の実務

輸入に当たっては、物品の課税価格に基づいて輸入税が算定されます。原則として、物品の課税価格はほとんどの場合、その販売価格に基づいて決定されます。販売価格とは、トルコへ輸出するために販売された物品について輸入業者が実際に支払った価格または支払うべき価格をいいます。

税関当局が、申告された課税価格または輸入税額に不足を発見した場合、不足税額に加え、加算税としてその3倍相当額が徴収されます。申告者が、税関当局の通知前にその不足額を申告した場合、問題の加算税は15%の税率で課税されます(すなわち、不足税額の45%の徴収)。従って、関税の正確な算定および科されるおそれの

ある処罰的制裁の回避という点で、課税価格の正確かつ適時の決定が重要となります。

「例外的価値の実務(exceptional value practice)」は、ペナルティを科されることなく輸入日以後に価格を是正することを可能にする簡易手続きです。この実務に

関する主な問題点は、例外的価値の申請過程で当局に提出する契約に係る印紙税(もしあれば)を確実に計算すること、および財源使用税(以下、「RUSF」)の控除を回避するために輸入代金を適時に支払うことです。

EUおよびトルコにおける認可事業者の実務

今日の急成長する世界での、技術進歩に伴い、サプライチェーンに対する期待が高まっています。こうした状況を受けて、世界中の国々がすべてグローバル貿易の拡大に努めています。世界の貿易を促進するために数多くの会議が開催され、グローバル貿易の発展に向けたアイデアが議論されています。

こうした目的に向けて、トルコにおける貿易を促進し、信頼できる迅速な取引を企業に提供するために、シングル・ウィンドウ・システム(Single-Window System)、電子通関実務(Electronic Customs Practices)、共通税関貨物通過制度(Common Transit Regime、NCST)、統一関税法典(Modernize CustomsCode)などの他、認可事業者(Authorized Economic Operator、以下「AEO」)の適用が導入されてきました。

AEOの申請に対しては、世界の国々でさまざまな名称および手続きが適用されています。世界のすべての国々の税関当局は、税関が実施する取引を

一部の特定の税関当局が実施することを認め、関税法令およびその他すべての関連法令の枠組み内で一定の利便性を提供しています。それらはすべて透明性が高く、正確かつ公平で、説明責任を伴うものです。また現在のところ、税関当局が、高リスクの企業をより頻繁に点検する可能性があります。トルコのAEOとEUのAEOの間には、一定の条件上の差異がみられます。その主な理由は、AEOには三つの異なる資格区分があるためです。

資格の種類が異なれば、受けられる優遇措置も異なります。認可事業者の資格

保有者が要件や追加的な条件を充足すれば、その資格に伴う優遇措置や責任が追加され得ることが示されています。

AEOの3種類の資格要件およびその各々に関連する規定は次表の通りです。

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すべての条件を比較すると、トルコの法令における四つの定義的条件(適切なコンプライアンスの記録、十分な管理システムの整備、健全な財務状況)がEUの法典と類似していることが明らかとなります。トルコでは3年間、活動の条件が探求されてきたのに対し、関連する関税地域内における設立という条件が設定されたという事実を除けば、EUの関税法令ではそうした条件は探求されていません。このことが、欧州の法令とトルコの法令の適用条件における差異の一つです。

また、AEO資格に伴う優遇措置は次表の通りです。

利点 AEOC AOES

税関手続きを容易にする簡素化 ✔ X

物理および文書ベースの検査の軽減• セキュリティおよび安全性に関連• その他の関税法令に関連

✔ ✔

物理的検査対象に選定された場合の事前通知(セキュリティおよび安全性に関連)

X ✔

税関の検査対象に選定された場合の事前通知(その他の関税法令に関連)

✔ X

検査対象に選定された場合の優先的取扱い ✔ ✔

税関の検査実行について特定の場所を要請する可能性 ✔ ✔

間接的利点

(セキュリティが強固で安全なビジネスパートナーとしての評価、税関その他の政府当局との関係改善、盗難や紛失の減少、船積みの遅延の減少、計画性の向上、顧客サービスの改善、カスタマーロイヤルティの向上、サプライヤーの検査費用の低減、および協力関係の強化など)

✔ ✔

第三国との相互認証 X ✔

条件および基準 AEOC*1 AOES*2

AEOCとAEOS (AEOF)

対応するUCC

(欧州連合関税法典)の条項

事業者 ✔ ✔ ✔ 第5条(5)項

EUの関税地域内における設立 ✔ ✔ ✔ 第5条(31)項

適切なコンプライアンスの記録 ✔ ✔ ✔ 第39条(A)項

十分な管理システムの整備 ✔ ✔ ✔ 第39条(B)項

健全な財務状況 ✔ ✔ ✔ 第39条(C)項

能力または専門資格に関する証明済みの実務基準

✔ × ✔ 第39条(D)項

適切なセキュリティおよび安全上の措置

× ✔ ✔ 第39条(E)項

*1: AEOCとは、“AEO for Customs Simplification”(簡易な通関手続きを享受できる

事業者)を指す。*2: AOESとは、AEOSであるべきであり “AEO for Security and Safety”、つまり

セキュリティやセーフティに係る促進措置の対象とされる事業者を指す。

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

トルコで導入されたAEO資格で、追加的な要求をしなくても適用される利点には下記のものがあります。

• 不完全申告: 必要書類の全てが揃っていなくても輸入手続きを行うことができ、後日残りの書類を提出することで申告完了とすることができる

• 部分的保証(margin)の適用: 一時輸入等において、輸入業者に担保が求められる場合、全ての税金相当額の代わりに輸入に係る税金の10%相当額の担保提供が認められる

• グリーンラインの適用(輸入のオンサイト通関手続き)

• 文書検査が実施される場合の優先的チェック

• 物理的審査が実施される場合の優先的検査

• 必須情報の少ない簡易申告(summary declaration)による容易化

• 簡易報告書(summary statement)に対する税関の検査の減少

• 国境通過の優先権

※要求が必要な利点は、副々保証〈Tertiary Guarantee)の適用、認定輸出業者の権限、A.TR〈EU・トルコ〉証明書、EUR-MED〈EU・地中海諸国〉証明書および

自己宛請求書による申告、輸出地における通関手続き、輸入時における通関手続き、認定荷主の権限、認定購入者の権限など

特にオンサイト通関手続きを認められた企業にとっては、将来的な相互認証協定(Mutual Recognition Agreement)およびEUその他のAEO制度実施国との貿易が大きな利点となります。相互認証協定が締結されていれば、ある国でAEO資格を

有する企業は、協定を締結した別の国でも同一の資格保有者として取り扱われます。その結果、税関間に実質的なビジネス上の連携やサプライチェーンのセキュリティが生じ、基準がグローバル化されます。さらに、それらの協定は、グローバルなサプライチェーンにセキュリティをもたらすとともに、信頼できる商業上重要な世界的ブランド企業となることを目指す、AEO資格を有する企業に統一性の利点を提供します。世界貿易機関(WTO)が2016年5月にAEOプロセスの詳細かつ簡明な要約としてまとめたAEO要覧(AEO Compendium)によれば、セルビアと

カザフスタンに加え、トルコと韓国の間でも相互認証協定に向けた交渉が進行中であるとされています。

トルコ輸出業者協会(Turkish Exporters Assembly)が公表した2016年度輸入報告書によれば、韓国からの輸入量は2015年度の世界ランキングで7位となっています。上位10位までを見ると、4カ国の輸入相手国が欧州諸国です。上位10カ国全体に占める比率で言えば、EUからの輸入は37%となっています。また、トルコの外国貿易量の約40%がEU諸国を相手国とするものです。韓国との間で始まった相互認証協定のプロセスは、今後AEOを取得する企業にとって関税の点で大きな優位性をもたらします。信頼性の高いトルコ企業が世界的にブランド認知され、

貿易量を拡大することが見込まれます。こうした状況を受けて、トルコの外国貿易量が増大し、それと同時に国際的なサプライチェーンが世界でより信頼されるようになり、活動を迅速化するでしょう。

二次加工品の輸入に対する財源使用税(Reserve UtilizationSupport Fund:RUSF)

輸出加工制度の重要部分を構成する二次加工品は、実際の加工品とは別に、

同制度の下で実行された加工活動の結果として取得された製品と定義されます。2015年4月10日付官報に公示された閣僚会議命令(Council of MinistersDecision)第2015/7511号およびRUSFに関する最新の規則では、引受条件付信用状(acceptance credit)、繰延信用状(deferred letter of credit)および

キャッシュ・アゲンスト・グッズの支払方法によって決済される貨物の輸入についてはRUSFの税率が0%になると定められています。

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他方、命令第2015/7511号に基づくRUSF税率0%の適用を受けられない二次

加工品が、輸出加工制度に基づいてなされた生産の結果として企業の棚卸資産に加えられ、かつ輸入原材料について支払われる代金の海外送金が、二次加工品の売却日以降に完了したことが発見された場合、売却された当該製品(すなわち、二次加工品)に対してRUSFが課税される可能性があります(支払条件が「無償 〈Free of Charge〉 」 と申告された場合でも ) 。しかし 、こ うしたアプローチは輸出加工制度および RUSFの目的と相容れないことは明らかです。

輸入おける数量の差異に関する規定

貨物の数量不足または超過は、事前申告書(summary declaration)の提出中に輸送業者によって引き起こされることがある一方、輸入業者による貨物の受領中

または受領後に発生することもあります。事前申告の段階で発生する差異については輸送業者が責任を負うのに対し、申告段階で発生する数量の差異については荷主が責任を負います。事前申告の場合は関税法典第35/B条に基づき、また申告の場合は同第63条および第73条に基づき、刑法の規定に抵触することなく、修正を行うことが可能です。

事前申告における数量の差異に対して適用される加算税は関税法典第237条に

定められています。その規定によれば、事前申告と比較して不足があった場合、不足分に対する関税と同額の加算税が適用されます。また、超過が発生し、その超過が説明されない場合は、その貨物が処分され、その貨物のCIF(運賃・保険料込み条件)の価額と同額の加算税が適用されると定められています。不一致が発生した場合に適用される刑事手続きについては関税法典第234条に規定があります。それによれば、5%を超える税務上の差異については、既存の関税に加えて、発生した差異に対して3倍の税率で罰金が科せられるとされています。

規定により他の貨物の申告を引き起こさない場合、輸入プロセスの完了後に、当該貨物の数量が申告した数量を超えることが明らかとなったときは、同法第234/3条の規定に従い、「自己申告」が適用され、差異に対して税額の45%相当のペナルティおよび延滞利息が課されます。

「異なる貨物の申告」を引き起こす数量の差異については、すなわち、超過した貨物のHSコードに基づく区分に差異が生じる場合については、関税法令に明確な規定が存在しないものの、関税法典第234/3条に基づいて申告される可能性があると思われます。異なる貨物の申告は「新規の輸入」取引と見なされるため、

輸入税の納付、通商政策上の措置の履行、他の制度によって取得すべき許認可の取得を要求されます。

輸入における監督およびVATの観点によるその評価

輸入における監督とは、国内製造業者に対する悪影響およびトルコへの物品の

輸入にかかわる過少納税を防止するために、トルコへの一定の物品の輸入について最低単価を決定することを指します。

輸入される物品の単価の価額が輸入コミュニケ(Imports Communique)における

監督実務によって決定された価額を下回る場合、当該物品の輸入業者は経済省(Ministry of Economy、MoE)から監督証明書(Supervision Certificate)を取得するか、当該物品を輸入するために関連物品に関する上記コミュニケにおいて決定された価額に達するように付加税を納付しなければなりません。

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

この点に関し、上記監督が原因で、輸入時の仕入VATと国内販売時の売上VATとの間に必ず差異が発生します。すなわち、輸入時の仕入VATが国内販売時の売上VATを上回る場合があり、輸入業者にとって大幅な繰延VATの状況が生じる

ことがあります。このように、輸入における監督は、国内製造業者を保護するために適用される有益な実務であるにもかかわらず、輸入業者にとって重大な繰延VATの状況を引き起こすため、VATの原則と両立しません。

トルコおよび世界の輸出規制

基本的に三つの国際協定に基づいて輸出規制が必要となります。その三つとは、国際的な禁輸の決定、国際条約および多国間輸出規制制度です。武器、武装具および戦略的優先順位の高い軍民両用品の規制は多国間輸出規制制度によって定められています。トルコもEUや米国と共にそれらの輸出規制制度の締約国ですが、それらの制度の主要目的は軍民両用品の規制にあります。

EUの輸出規制制度は理事会規則(EC)第428/2009号によって規定されています。

この規則は、すべての輸出規制リストを一つのリストに統合・集約したものであり、定期的に毎年改正されます。また米国は、武器輸出管理法(Arms Export Control Act、AECA)および国際武器取引規則(International Traffic in Arms Regulations、ITAR)によって輸出規制制度を規定しており、輸出規制制度の変化に応じて毎年輸出規制リストを更新しています。

トルコに目を向けると、輸出規制は複数の法令によって規定されており、個々の

リスト項目に関する取決めを知るためには、関連法令をよく調べる必要があります。さらに、EUや米国で実施されているような法令の改正は国内法令では行われていません。従って、EU、米国およびトルコは上記輸出規制制度の締約国であるものの、輸出規制リストおよび国内法令の適用の点で互いに異なっています。

自由貿易区を仕出地または仕向地とする輸送サービスに係るVAT免税

法律第6761号第5条に従い、2016年11月24日付で第17/4-ı条の「自由貿易

区内で提供されるサービス」という文言の後に「および輸出のために自由貿易区を仕出地または仕向地として提供される輸送サービス」という文言が追加されました。

この文言の追加により、自由貿易区内で提供されるサービスに関するVAT免税を定めた条項の適用範囲が拡大され、輸出のために自由貿易区を仕出地または仕向地として提供される輸送サービスもVAT免税の対象となりました。

第17/4-ı条によるVAT免税は部分的であることから、同条の適用対象となる輸送サービスに従事する納税者は、当該輸送サービスについて負担した仕入VATの控除または還付を受けることができません。

この新規定を考慮に入れた場合、自由貿易区が仕出地または仕向地となる輸送サービスに対するVATの適用は次のようになります。

• トルコ国内の地点から自由貿易区に発送される貨物の輸送については、発行された請求書に基づくVATの計算は行われません。

• 自由貿易区からトルコ国内の地点に発送される輸入品について提供される輸送サービスは、VAT免税の適用対象外です。

• 自由貿易区から輸出港、空港またはトルコ国内の別の自由貿易区への貨物輸送は、それが輸出の対象となる場合、VAT免税が適用されます。

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認可事業者資格の準備期間中に発生する諸問題

この記事のテーマは、質問表への記入に関する「よくある質問」および企業が詳細に検討する必要のある項目です。下記は企業が対処が難しいと感じるトピックであり、以下でその要約を示します。

• 商業勘定および金融勘定の追跡可能性とは何か

• 文書化プロセス

• 内部統制および内部監査のメカニズム

商業勘定および金融勘定の追跡可能性

商業勘定および金融勘定の追跡可能性に関して、企業は基本的に、サプライチェーンプロセス中に作成されたすべての文書と税関申告書様式を容易に見つけ、関連付けられることを要求されます。

商業勘定および金融勘定の追跡可能性に加えて、物品の移動に関する支払いを詳細に記録すべきであり、為替手形などの外国貿易に関連する文書と他のすべてのプロセスを直接関連付けることのできるシステムを整備しなければなりません。その結果、物品の移動と金銭の移動の関連性を容易に追跡できるようになります。

文書化

AEO企業にとって、関税業務、文書の状況および利用可能性に関する監査、

ならびに情報セキュリティに関する要件の充足のために文書を保存することが重要な側面となっています。

このことに関連して、保管の順序、物理的状況、保管システム、そのシステムの適用、および手続きに関するスタッフ全員への周知徹底を含む、あらゆる種類の詳細情報を質問表に記載すべきです。その目的は、文書管理に対する体系的

アプローチを取り、必要な場合、いかなる文書も容易に見いだせるようにすることにあります。

内部統制および内部監査のメカニズム

内部統制とは、経営陣およびスタッフ全員が会社の目標の達成に関して妥当な

水準の確信を得るために実施するプロセスをいいます。内部統制のメカニズムは主に業務の統制に関連しています。すなわち、内部統制のメカニズムは、既存の業務の中で自己統制を確保する比較のメカニズムといえます。内部統制と内部監査は混同されがちですが、別々の用語です。内部監査は、一般的に言って、特定の担当者が会社の業績や業務を独立に観察および検討することを指します。内部監査の目的は、事業運営に関して経営陣に保証し、助言を行うことにあります。

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

結論および推奨

質問表への記入に当たり、それらの質問の目的は何か、およびどのようなことが期待されているかなど、頻繁に提起される疑問をこれまで取り上げてきました。

企業が示す回答は、企業が認可事業者資格の付与に必要な基準を充足しているか否かに関して審査されます。従って、企業は、その工場、倉庫等、運営を行うために使用しているすべての施設においてAEO資格を得るための準備を整え、詳細な回答を行わなければなりません。この点に関し、EYは企業に対し、質問表に記入する

ために適切な数のスタッフで構成するプロジェクトチームを設置することを強く推奨します。

関税およびVAT関連の法令の観点から見たロイヤルティおよびライセンスに係る納税の評価

関税および付加価値税関連の法令の観点が多岐にわたることから、輸入品のロイヤルティおよびライセンス料に関連するVATをどこに納付することが想定され

ているかに関してさまざまなアプローチが存在しています。こうした状況はロイヤルティに対する二重課税の原因となります。

輸入品のロイヤルティやライセンス料は物品の課税価格に上乗せしなければなりません。ただし、課税される料金が評価対象の輸入品と関連しており、かつ評価対象の物品が販売条件とされていることが上乗せの条件となります。それらの納付をどこでどのように行うべきかという問題が企業にとって極めて重要です。

最近、税関当局および税務当局によって、VATの納付はいずれか一つの当局のみに行えばよいと明確化されました。特に、税関当局に納付すべきVATの相殺に関連する税務当局のアプローチは、対象となるコストへの課税という点で、最も

低コストで最も実用的な実務を示しています。しかし、過少納税や不正に起因するペナルティを科されないようにするために、会社自身の取引に関するルーリング(tax ruling)を請求して受け取ることが、納税者にとって有益であるとEYは考えます。

認可事業者の準備中に発生する安全性およびセキュリティの問題

認可事業者資格を取得しようとする企業は、関係者の安全を確保するために、通関手続促進規則(Customs Procedures Facilitation Regulation)に定められた要件に従い、証明書に基づく活動で使用する施設に関連する物理セキュリティ対策を講じなければなりません。EYの記事では、同規則付録における11番目から18番目までの指標の質問に回答するときに考慮に入れるべき問題を取り上げました。

記事では、安全性およびセキュリティに関して回答が困難な質問の目的、ならびにそれらの質問への回答に期待される事柄について説明すると同時に、一般的な誤りも浮き彫りにしました。

その記事で用いた事例は指針を示すことのみを目的としたものです。質問に対する回答は、個々の企業の特性、規模および取引量に応じて変わる可能性があります。全体として、すべての調達プロセスの事後点検を確実に実施するための手続きが存在し、その手続きが適切かつ体系的に機能していることが期待されています。製品の安全とセキュリティが確保されていることが、資格保有者となるために最も重要な基準の一つです。回答は、企業が認可事業者資格を取得する能力を

有することを示す指標となります。従って、期待に応え、すべての施設をカバーするために詳細に回答すべきです。さらに、回答する際、申請と関連する文書化された実務手続きに触れるとともに、可能な場合は回答を補強するために具体例を示すべきです。

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トルコ関税法典草案における主なトピック

欧州共同体関税法典(Community Customs Code、CCC)から欧州連合関税法典(以下「UCC」)への移行は、EUの「2020年戦略(2020 Strategy)」の枠組み

内で税関および国際貿易に対してなされた直近の改革の一つとして際立っています。UCCの採用に伴い、通関手続きの電子申請の導入やEU加盟国の制度の完全な統合の実現が視野に入っています。さらに、基準要件を充足する企業は

一定の認可(認可事業者資格など)に対する権利を付与されます。保証の適用対象の定義を拡大するための改正案は、すべての通関手続きの円滑化と標準化を実現するものです。

近頃起草された関税法(Customs Law)では、EU関税法に準拠した関税同盟に基づく継続的な「統一化(harmonization)」プロセスの一環として、そうした最近の

改革が既存のトルコ関税法に盛り込まれています。これを基にした関税法の主要な改正の一つが、商業勘定を容易に追跡できる信頼できる企業に付与される特定の権利や認可に関する規定です。通関手続きという点について見ると、その改革により通関プロセスを簡素化し、標準化することが目標とされています。さらに、市場での売却および再輸出の手続きを除く、保管や加工といった他の手続きが「特別手続き」と題した新セクションの下に分類されています。それらの新規則に基づく通関手続きの導入を見据えた最近の改革は、実務の大幅な変更を引き起こしてはいません。しかし、法律の文章の簡素化は実際に成功を収めたということができます。一方、納付すべき関税を担保する保証がその定義と適用対象の点で拡大されました。最後に、新たな関税法では、通関プロセスに関する問題を解決し、企業が法令に従って講じる意識的な措置を促進するために、一定の刑事的制裁が重視されていることが注目されます。

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

実務情報 2017年新税率

所得税

所得税計算表--2017年(給与)

所得区分 税率

TRL13,000以下の場合:税率により計算 15%

TRL30,000の場合:TRL13,000については税額TRL1,950、TRL13,000超~TRL30,000については税率により計算 20%

TRL110,000の場合:TRL30,000については税額TRL5,350、TRL30,000超~TRL110,000については税率により計算 27%

TRL110,000を上回る場合: TRL110,000については税額TRL26,950、TRL110,000超の部分は税率により計算 35%

所得税計算表--2017年(その他所得)

所得区分 税率

TRL13,000以下の場合:税率により計算 15%

TRL30,000の場合:TRL13,000については税額TRL1,950、TRL13,000超~TRL30,000については税率により計算 20%

TRL70,000の場合:TRL30,000については税額TRL5,350、TRL30,000超~TRL70,000については税率により計算 27%

TRL70,000を上回る場合:TRL70,0000については税額TRL16,150、TRL70,0000超の部分は税率により計算 35%

所得税の課税対象外(VATを除く)となる食事手当の日額(TRL)

年 金額(TRL)

2015 13,00

2016 13,70

2017 14,00

障害手当(2017年)

障害度 金額(TRL)

障害度1級の場合 900

障害度2級の場合 470

障害度3級の場合 210

最低生活手当--TRL(2017年)

配偶者の地位子どもの数

なし 1 2 3 4 5名以上

被雇用 133.31 153.31 173.31 199.97 213.30 226.63

無職 159.98 179.97 199.97 226.63 226.63 226.63

家賃所得の免除

当該所得を得た年 金額(TRL)

2015 3,600

2016 3,800

2017 3,900

キャピタルゲインの免除(証券を除く)

キャピタルゲインを得た年 金額(TRL)

2015 10,600

2016 11,000

2017 11,000

一時所得の免除

キャピタルゲインを得た年 金額(TRL)

2015 23,000

2016 24,000

2017 24,000

所得税が免除される解雇手当の上限

期間 金額(TRL)

01.07.2016 - 31.12.2016 4,297.21

01.01.2017 - 30.06.2017 4,426.16

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租税手続法(Tax Procedures Law、TPL)及び法律第6183号

延滞税及び延滞利息(月次)

期間 税率(%)

21.04.2006 - 18.11.2009 2.50

19.11.2009 - 18.10.2010 1.95

19.10.2010以降 1.40

繰延利息(年次)

期間 税率(%)

28.04.2006 - 20.11.2009 24

21.11.2009 - 20.10.2010 19

21.10.2010以降 12

再評価レート

年 税率(%)

2014 10.11

2015 5.58

2016 3.83

インボイスの発行限度

年 金額(TRL)

2015 880

2016 900

2017 900

減価償却限度

年 金額(TRL)

2015 880

2016 900

2017 900

再割引及び前払い取引に適用される割引率及び利子率

再割引取引の場合 8.75 %

前払い取引の場合 9.75 %

TPLに基づく再割引取引の場合 9.75 %

注:以上のレートは、2016年12月31日時点で実施されている取引に適用

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

印紙税

印紙税の上限額(文書ごと)

年 金額(TRL)

2015 1,702,138.00

2016 1,797,117.30

2017 1,865,946.80

印紙税率及び税額(2017年)

印紙税課税対象文書 税率/金額

契約 9.48 per thousand

給与(前払いを含む) 7.59 per thousand

賃貸借契約 1.89 per thousand

貸借対照表 TRL 39.70

損益計算書 TRL 19.10

年次所得税申告書 TRL 51.40

法人税申告書 TRL 68.60

付加価値税及び源泉徴収税申告書 TRL 33.90

社会保障機関宛て保険料申告書 TRL 25.30

免除(2017年)

養子及び配偶者を含む各直系卑属の相続割合に対して TRL 176,600

直系卑属が存在しない場合の配偶者の相続割合に対して TRL 353,417

対価を伴わずに行われた譲渡に対して TRL 4,068

金銭及び財産を目的とする競技及び富くじで得た賞金・賞品 TRL 4,068

税額計算表(2017年)

課税標準額の区分税率

相続による譲渡 相続による譲渡

TRL210,000まで:税率により計算 1 % 10 %

TRL210,000超~TRL500,000まで:税率により計算 3 % 15 %

TRL500,000超~TRL1,110,000まで:税率により計算 5 % 20 %

TRL1,110,000超~TRL2,000,000まで:税率により計算 7 % 25 %

TRL3,820,000を超える課税標準:税率により計算 10 % 30 %

相続税及び贈与税

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最低賃金及び社会保障

最低賃金及び源泉徴収額

支払額/源泉徴収額2017年1月1日~

2017年12月31日(TRL)

最低賃金の総額 1,777.50

社会保険料の被用者負担(14%) 248.85

失業保険料の被用者負担(1%) 17.78

所得税課税標準額 1,510.87

所得税算定額(15%) 226.63

最低生活手当(独身)(-) 133.31

源泉徴収所得税額 93.32

印紙税(1,000当たり7.59) 13.49

源泉徴収額の総額 373.44

最低賃金の純額 1,404.06

年間最低賃金の総額

年 金額(TRL)

2015 14,850

2016 19,764

2017 21,330

社会保険料の基準となる月額所得の上限と下限

期間 下限(TRL) 上限(TRL)

01.01.2017-31.12.2017 1,777.50 13,331.40

2. 地域別ニュースレター l トルコ

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

ブラジル EY Brazil Japan Business Services News Letter 2017年3月21日 より

TOPIC 01. PIS/COFINS課税標準に関する特別上告に関する連邦最高裁判所(以下「STF」)の最終判決について(RE nº 574.706)

2017年3月15日、STFで、PIS/COFINSの課税標準にICMS税を含めるべきかどうかという特別上告 (RE nº 574.706) に関する最終判決が下されました。

過半数の最高裁判事は、ICMSは法人の売上高を構成するものではなく、従って、当該部分はPIS/COFINSを負担すべきでないとの見解を示しました。これは、PIS/COFINSのうちICMSに対応する金額は、単なる経理処理の便宜で計上されて

いるにすぎず、理論的には納税者の資産(財産)とはいえず、結果として売上高に含まれるべきものではないとの見解に由来しています。

当該判決による適用関係について、現時点では、何らの公式見解が示されていません。国税庁側も、STFの口頭弁論によって、上記課税関係は当該案件にのみ

適用するよう求めているのみであり、その他一切の見解を示していません。今後は、これを明らかにする見解が出されるものと予想されます。

従って、本件に関しては、ICMSはPIS/COFINSの課税標準を構成しない旨、判示

されただけであり、その効果・適用関係については、国税庁や関連法令の今後の動向に留意する必要があります。

TOPIC 02. 税収減に伴うサンパウロ市税務調査強化について

サンパウロ市税当局(Secretaria Municipal da Fazenda da Cidade de São Paulo)では、近時の税収減に伴い、3月中にも主要市税*(ISS、IPTU及びITBI)に関する税務調査を強化する予定である旨を公表しました。

特にISSに関しては、あるべき税額の徴収ができていないとし、税務調査の「網」を強化すべく、BI(Business Intelligence)と呼ばれるツールを使い、各企業への税務調査を強化することとしています。

さらに、他の措置として、建設会社や不動産会社、金融機関などのISS高額納税者に対して、特別な徴税システムを構築することを示唆しています。市税局長官に

よれば、「このシステムは、納税者の監視及び役務提供に関する調査に資する上、納税されたか否かをより明らかにするだろう」としています。

税務調査の強化は、役務提供者にとって負担となるISSに重点が置かれており、

各企業にとっては、これに対応するため電子申告書の作成段階から確証の整備等、入念、かつ適切な準備が必要となるといえます。

*:サンパウロ主要市税

• ISS=サービス税(Impost sobre Serviços de qualquer Natureza)

• IPTU=都市部建物及び土地利用者税( Imposto Predial e TerrirorialUrbano)

• ITBI=生存者間不動産譲渡税(Imposto sobre Transmissão de Bens eImóveis Intervivos)

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EY Brazil Japan Business Services News Letter 2017年4月5日 より

TOPIC 01.連邦税関連規定の統合訓令の発表 (IN RFB nº1.700)

2017年3月16日、官報で、国税庁訓令RFB IN nº 1.700が公表されました。当該訓令は、法人税等(IRPJ及びCSLL)や社会統合負担金(PIS/COFINS)に関する基本的な税務処理の規定をはじめ、2015年から適用されている法令 Lei nº12.973/2014の初度適用規定なども含めた、これまで発行されていた各種法令・訓令を統合することを目的としています。

当該訓令は、317条及び9の添付書類から構成されており、実質利益法による

税務申告書上の加減算処理項目やその取扱いなど(減価償却計算や時価評価に伴う会計と税務の差異が生じた項目などについての処理)について多岐にわたり記載されています。

この訓令により税務処理が明らかになった点がいくつかあるものの、大きな税務処理の変更はないと理解されています。今後の税務処理に当たってまず参照すべき基本訓令となるといえます。

TOPIC 02. 新たな法人形態EIRELIの公表(DREI Instrução Normativa nº38)

登記情報統合管理部門(DREI)は、ブラジル企業・外資企業を問わず、EIRELI(Empresa Individual de Responsabilidade Limitada)の採用を認める訓令Instrução Normativa(IN) nº38を発行しました。この訓令は2017年5月2日以降適用開始となります。

これにより、今後、各法人は商業登記所におけるEIRELIの登録が認められ、特に国外投資家にとっては、新たな法人設立の選択肢が増えることとなります。

EIRELIの特徴は以下の通りです。

• 有限責任形態であり、持分所有者は無限責任は負わない。

• ホールディングス形態となり、他社への持分所有が容認される。

• 最低資本金は、現行当該国の最低賃金の100倍で足り、当該資本金は、会社設立時に振り込まれていなければならない。

• 持分所有者(社員)が一人になることが許容される。

• 有限会社によるそれぞれの法令が準用される。

• 取締役および監査役の設置が可能。

• 企業再編・結合(会社吸収分割、新設分割、合併、減資など) も可能。

現在の法人形態(例えばLimitada)からEIRELIへの変更も可能であるため、今後の会社運営の効率性を勘案し、EIRELIへの変更可能性について検討することも有用と考えられます。

2. 地域別ニュースレター l ブラジル

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

TOPIC 03. 外貨規定および税務に関する特別制度(RERCT)規定の変更

2017年3月31日、ブラジル国税庁(RFB)により法令Lei nº13.428/17が官報に公示され、RERCT制度に変更*が加えられました。

この新たなRERCT申請期限は当該訓令の公表日から起算して120日間(2017年7月31日まで)となっています。

この措置は、ブラジル国内居住者に対して与えられる一種の「恩赦法令」であり、以前の制度を利用していない者に向けて出されたものと考えられます。

今回の主な変更点は以下の通りです。

• 2016年6月30日時点でブラジル国内居住者、かつ登録漏れがあった者が対象(前回RERCTは2014年12月31日が対象日)

• 申告脱漏額に対する罰金は35%(為替変動の影響を受け、前回30%より増加)

当該RECRT申請に当たってのリスク分析や罰金額の試算等に当たっては、ケース・バイ・ケースの慎重な対応が求められます。当法人専門家までご相談ください。

*:【改正前RERCT概要】(2016年4月5日付けNews Letter参照、日本語版のみ)

訓令IN1,627/2016により規定された、「外貨規定および税務に関する特別制度(RERCT; Regulamentação do programa de Regularização Cambial e Tributária)」。

過去にブラジル国外資産(財産および権利)の国税庁/中央銀行への申告漏れがあった場合、DERCAT(Declaração de Regularização Cambial e Tributária)と呼ばれる申告書を利用して、自主的にRFBへの修正申告を行うことができる(ただし、2014年12月31日時点で居住者であった者が対象)。

この修正申告を行った場合には、申告脱漏があった金額に対して15%の罰金+申告漏れによる罰金15%(合計30%)の支払義務が課されるものの、その他の

法的義務は免除される(ただし、中央銀行への申告漏れがあった場合は、金額基準等により追加罰金の可能性あり)。

当該制度利用に当たっては、上記合計30%の罰金を所定期日(2016年10月31日)までに一括払いする必要があった。

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EY Brazil Japan Business Services News Letter 2017年4月7日 より

TOPIC 01. eSocialの新たなレイアウトの公表(Resolução nº7/2017)

Resolução nº7/2017が公表され、eSocial(人事関連情報登録システム)の新たなレイアウトVersion 2.2.01が公表されました。

当該レイアウトは、すでにeSocialのサイト(http://www.esocial.gov.br/Leiautes.aspx)で

アクセス可能となっています。この変更は、各項目(入力必須項目/該当する場合にのみ記載する項目)の内訳やその他いくつかの項目の摘要に関する修正が主なものとなっています。新たに加わった項目などはなく、これまで本番環境に向け準備されてきた内容が否定されるものではありません。

eSocialの導入開始時期は、年間売上高によって異なり、早い会社で2018年1月から、もしくは2018年7月からとなっております。2017年7月よりテスト環境が整備され、本番用のファイルの試験的な伝送ができるようになるといわれています。

TOPIC 02. EFD Reinfの適用開始に伴う諸規定の公表(Instrução Normativa RFB nº1.701/2017)

国税庁訓令 Instrução Normativa RFB nº1.701/2017が公表され、正式に2018年1月以降順次EFD Reinfの適用が開始される旨発表されました(eSocial同様、前年度売上高7,800万ブラジル・レアル未満の会社は2018年7月より開始)。また当該訓令の中で、レイアウトVersion 1.0も公表されています。

EFD ReinfはeSocial に付随したSPEDの最新プログラムモジュールです。eSocial

内では入力が求められない情報(サービス会社がサービス提供した際に生じる源泉所得税や社会保障などの情報)をこちらに登録する必要があります。

また、このモジュールは、現在の源泉徴収所得税申告(Declaração do Impostode Renda Retido、DIRF)の代わりに運用されるもので、サービス提供関連の課税伝票(Nota Fiscal)に記載されるすべての税金情報がここで統合報告されることとなります。

TOPIC 03. 総収益に係る社会保険負担制度(Desoneração da folha de pagamentos)の廃止について(Medida Provisória 774/2017)

2017年3月30日に暫定法令MP 774/2017 が公表され、総収益に係る社会保険負担制度(Desoneração da folha de pagamentos*)が、運送会社やインフラ

関連工事企業などの特定業種を除き、ほとんどの業種において今後の適用ができないこととなりました。これにより、ほぼすべての業種でINSSの算定は、2017年7月度(2017年8月支払分)より従来の従業員給与に基づいた計算方式に戻ること

となりますので、関係各企業にとっては予算策定、損益計算などに重要な影響を及ぼすと考えられます。

この従来の従業員給与に基づく計算方式による場合には、実際の資金流出額だけでなく、休暇および13カ月給与(2015年度の該当分を含む)に係る引当分についても考慮しなければならない点に留意が必要です。

*:「総収益に係る社会保険負担制度(desoneração da folha de pagamentos)」は、INSSの計算手法として、従来の従業員給与に20%(基礎率)を乗じた形では

なく、総収益に業種別所定の料率を乗じたもので計算することが容認される制度で、各企業はいずれかの計算方式を選択適用しています。

2. 地域別ニュースレター l ブラジル

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新興国アップデート l April 2017 Issue 9

TOPIC 04. 労働者派遣法の改正について(Lei 13.429/2017)

法令Lei 13.429/2017が公表され、役務提供の下請けに関する規定が変更され、連邦労働高等裁判所の判決331で禁じられた「コアとなる業務(本業)の外注」が

認められることとなりました。また、一般的な外注サービスにあたっての期間労働やその条件等についても大きな規制変更が行なわれました。

主要業務の外注が許容されるようになったことは大きな変更点ですが、当該外注により削減されるコスト面のみではなく、この外注に当たっては全ての観点からの影響を検討する必要があります。特に、コンプライアンス遵守を図りながら、効果的かつ効率的に適切な措置を取るべく、この規制変更の影響を慎重に検討する必要があると考えられます。

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香港重富 由香(Yuka Shigetomi) +852 2629 3907 [email protected]

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中南米デスク 中岡 秀二郎(Hidejiro Nakaoka) 070 3815 6429 [email protected]

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