酪農教育ファームとは - maff.go.jp · 我を忘れること なのか 62...

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平成25年度「食育・教育ファームシンポジウム」配付資料 1 酪農教育ファームとは 酪農教育ファームとは 酪農を通して, 子どもの生きる力をはぐくむ 「心の教育」や「命の教育」,「食の教育」 を支援する。 「いのち」をふれ合う, 「いきる」をふれ合う キャッチフレーズ 37 酪農教育ファームとは 酪農教育ファームとは 知らない人が牧場に来ることで 病気に感染する 搾乳量が減る ストレスで体調を壊す 搾乳体験で乳房炎になる などの危険性 酪農家にはハイリスク 牧場:酪農を通して,生産活動を行う場所 38 それでも, それでも, なぜ教育ファームをするの? なぜ教育ファームをするの? まっとうな子どもに育って欲しい。 命の大切さを教えたい。 私の仕事を理解して欲しい。 酪農の必要性を知って欲しい。 消費拡大 生活の安定を図りたい とは なかなか口に出せない 39 酪農教育の良さ 酪農教育の良さ <作業> 清掃,餌やり,搾乳,バター作り,草刈り, 哺乳,ヨーグルト作り,牛追い 山羊の散歩 など <成果> 自己の変容 生き物のぬくもり,生産活動の大切さ, 生き物のセラピー効果,働く喜び 働く苦しさも,喜びも短期間で味わえる いのちの循環 40 酪農体験で育む心 酪農体験で育む心 広島大学大学院教授 広島大学大学院教授 角屋研究より 角屋研究より 相手の立場で考えることができるようになる 相手のあるものとして考え,その命を大 切にするようになる 相手とかかわることから,その関わりに関し 責任をもつようになる ペットではなく家畜 41 参加すれば 素晴らしいという 価値をデータで示さない と行政は動かない 価値分析を行おう 42

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平成25年度「食育・教育ファームシンポジウム」配付資料

1

酪農教育ファームとは酪農教育ファームとは

酪農を通して,

子どもの生きる力をはぐくむ

「心の教育」や「命の教育」,「食の教育」

を支援する。

「いのち」をふれ合う,「いきる」をふれ合う

キャッチフレーズ

37

酪農教育ファームとは酪農教育ファームとは

知らない人が牧場に来ることで

病気に感染する

搾乳量が減る

ストレスで体調を壊す

搾乳体験で乳房炎になる などの危険性

酪農家にはハイリスク

牧場:酪農を通して,生産活動を行う場所

38

それでも,それでも,なぜ教育ファームをするの?なぜ教育ファームをするの?

まっとうな子どもに育って欲しい。

命の大切さを教えたい。

私の仕事を理解して欲しい。

酪農の必要性を知って欲しい。

消費拡大 生活の安定を図りたいとは なかなか口に出せない

39

酪農教育の良さ酪農教育の良さ<作業>

清掃,餌やり,搾乳,バター作り,草刈り,

哺乳,ヨーグルト作り,牛追い

山羊の散歩 など

<成果>

自己の変容

生き物のぬくもり,生産活動の大切さ,

生き物のセラピー効果,働く喜び

働く苦しさも,喜びも短期間で味わえる

いのちの循環

40

酪農体験で育む心酪農体験で育む心広島大学大学院教授広島大学大学院教授 角屋研究より角屋研究より

• 相手の立場で考えることができるようになる

• 相手を命のあるものとして考え,その命を大切にするようになる

• 相手とかかわることから,その関わりに関して責任をもつようになる

ペットではなく家畜41

参加すれば素晴らしいという

価値をデータで示さないと行政は動かない

価値分析を行おう42

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酪農教育ファーム推進委員会酪農教育ファーム推進委員会専門委員会の分析から専門委員会の分析から

酪農体験の前後で,参加者の意識がどのように変容したかを探る。

平成16年度実施

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0 10 20 30 40 50 60 70

大切なもの

暖かさ・生きる楽しさ

生きるために必要

感謝

他者との関わり

食の安心

自然の恵み

共存共栄

次代へつなぐ

命をいただく

大変さ

酪農家の思いや願い

社会に役立つ

喜怒哀楽の存在

楽しさ・喜び

生き方への積極性

体験の前後での考え方の違い

体験後に,酪農家の大変さを実感

他者との関わりや,命をいただいていることをとらえている。

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酪農体験の

① どの活動が

② どんな効果があるか

ソニー科学教育研究会

熊本支部の研究より平成15年度~平成17年度

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一人の子どもに一人以上の先生が付き,全てを記録する あくびしたなども

どんな価値がありそうか話し合い,項目を決定する

エクセルを使い子どもの様子とその意味についてチェックしていく

体験毎に各項目のチェックの量(割合)を調べる

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思い通りにならないことの自覚

生き物に関する関心 環境 命の大切さ牛が生きていることの実感生き物を大切にする気持ち

酪農と自分との関わり・酪農家の生き様自分と食と酪農の関係

酪農家の牛に対する思い

自分の命が多くの命に支えられている

児童が見つけたこと児童が見つけたこと

47

自己の有用観を感じる体験(中学生)

0.05.010.015.020.025.030.035.040.045.050.0

餌レ

ャー

ブラッシングが有効

中学生

自己の有用感を育てる体験は

相手が喜ぶことを実感できる体験48

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他者意識を育てる体験(中学生)

0.05.010.015.020.025.030.035.040.045.050.0

小動物

の触

れ合

哺乳

ブラ

ッシ

ング

清掃

心音

搾乳

給餌

レク

ャー

人工授精

ブラッシングが有効

他者意識を育てる体験は中学生

大藪さんの言葉と重なって49

研究の成果研究の成果 見えてきたこと見えてきたこと

酪農体験は

命の大切さを実感をもってとらえる

生かされて生きていることを理解する

自己の有用感を感じる

他者意識を育てる

もの,人が関わり合って生きている

酪農家が教材 酪農家の生き様が重要

酪農家の言葉と重なって

受け身であった子どもが積極的になる

相手が喜ぶ

50

命,生きていることの実感命,生きていることの実感

感覚的な実感

聞いて分かる

考えて分かる理解を通した実感

触れて分かる

自然事象としてのとらえ

感覚的なとらえ

社会事象としてのとらえ

体験活動

調べる活動

関係付ける活動 管理される命

生きていることの実感あたたかく,生き生きした生命

自然と命の関係

命,食,農,職の関係

発達段階

実感,意味付けの深まりは,関係付ける情報の質,量によって変わるのではないか

51

フランスの教育ファームを見てフランスの教育ファームを見て

日本の教育ファーム充実のために何が必要なのか?

52

市営市営

リール市が運営のモデルファームリール市近郊の子どもたち,成人が訪問リール市の子どもは無料。以外は1人2.3ユーロリール市のほとんどの子どもが参加する

専門の指導者がいる

市が意図的に参加させる

53

年間を通しての訪問(総合的な学習の時間を90時間)目的 植物,動物,自然,人間の関係を理解させる

自然には人間は勝てないことを理解させる

内容 四季を通した飼育・栽培

方法 小さな農園を用意し,子どもたちに活用させる

子牛に名前を付けさせ,親しみをもたせる

フォーシーズンプログラム 教材が豊か

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平成25年度「食育・教育ファームシンポジウム」配付資料

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国立国立

1785年 ルイ16世が設立・王家の羊小屋

1993年 国立の新規就農者研修施設を併設教育ファーム活動が盛んになり,教育ファームの研究施設としての性格も(2名の国家公務員)

55

目的・内容

① 環境教育 ② 動物セラピー③ 農業理解 ④ 食品衛生

年間:8万人が訪問料金:最低2.8ユーロから13.7ユーロ(1日)近くの学校毎朝交代での子牛の世話(料金必要)

経営成立

国立国立

農業国:国民のコンセンサス 56

教育ファームのもつ価値の分析

教育ファーム活動の活性化の条件1教育ファーム活動の活性化の条件1

教育ファームを行うことの重要性の理解

農家 国民

農業体験が子どもの心を育てることの理解

体験には料金が必要であることのコンセンサス57

ブラッシング

教育ファーム活動の活性化の条件2教育ファーム活動の活性化の条件2

多様な形態による教育ファームの拡大☆ 農家の実態に応じて体験メニュー等を変える

農業を教えるのか

農業をとおして教えるのか

農家が大きなリスクを背負わない体験活動の開発

無理せず できることを できる範囲で

支援,研究組織の充実

58

私案私案フランスの教育ファームは料金が必要

補助金制度が充実しており,それを活用

酪農家の浄財 補助金の基金

訪問者の訪問用に教育ファームを行う酪農家の収入に

当面の料金問題の解決は可能?

先行投資

たとえば

59

願う願う 教育ファーム教育ファーム生きるために農家がやっていること考えていることを ありのままに示し

体験させること

農家の思い,工夫,喜び,悩み,苦しみ すべてを伝えること

理解し合える仲間を増やすこと60

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平成25年度「食育・教育ファームシンポジウム」配付資料

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最後に最後に

約20000戸の酪農家

教育ファームは約300戸

困難な現状

せめて応援団になってもらいたい

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セラピー効果は

対象の優しさ、かわいさ

夢中になって取り組むこと

我を忘れること なのか

62

食の大切さは

難儀・苦労して手に入ること

自然の恵みであることを知る

なのか

63

命、生きることの大切さは

酪農家の生きざま

動物の命を知ること

なのか

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○ ニワトリの子どもの命を奪った。今まで何も考えずに,卵焼きを食べていたが命を奪っていた。

○ これからはしっかりといただきますといいたい。

そして自分の命を大切にしたい。○ 野菜や肉などたくさんの命を

いただいていることが分かった。これからは残さずいただきたい。

65

○ ランドセルや肉は命を奪っていることを知った。

○ 毎日,命を奪っていることを知った。

○ 身近にあって,何も考えずに使っていたものが牛の命であることを知り心苦しかった。

○ 生きるために命をいただいている。だからせめて生きている間だけでも幸せに,大切に育ててあげたいという

言葉が心に残った。66

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平成25年度「食育・教育ファームシンポジウム」配付資料

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・ 私たちの命は他のものの命に支えられている

・ 子牛1頭でランドセルがひとつ。

・ 牛の最後のときは涙が出る

・ 本来は15年ほどの命が5年ほどしか生きられない・ 家族だと思って世話をしている

・ 牛の命は人間が握っている

・ 命を分けてもらっている

・ 牛乳は,もとは血液である

・ 雄牛の値段が,今,1万円しかしない

心に残った酪農家の言葉

67

乳搾りをして,「これが牛乳になるんだ」と実感できた。

子どもたちが口にするものと原料との距離が広がり全くつながらなくなっている。それが少しでもつながればいいなと感じた。

搾乳した乳が生あたたかくて,牛も自分たちも生きていることを強く実感した。

感想の中から68

牛さんはおとなしい動物で,みなさんがやってくると本当は困るのです。・ ストレスで病気になったり・ ストレスで乳量が減ったり・ 病気にかかる心配があったり

なのに,どうして酪農家はみなさんを受け入れるのでしょう。そのことを考えながら今日の体験をしましょう。

酪農体験学習会のとき私が語る大事にしている二つの言葉

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酪農家は,1日も休めないことが分かりましたね。

でも,そういう人がみなさんの周りにもいます。だれだか分かりますか。

お父さん,お母さんに感謝しないといけないね。辛くても休めないこと,それが人間にはあるのです。

酪農体験学習会のとき私が語る大事にしている二つの言葉

70

最後に最後に

子どものこころに いのちのたねを まきましょう

体験は酪農家の言葉とセットで教師と酪農家が手を取り合って

あくまでも 酪農家の応援団でしかありません 71