静脈系LCA実施手引書...TR 14049 インベントリ事例 00/03 00/12 TR 14047...

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静脈系 LCA 実施手引書 平成 19 年 3 月 社団法人 産業環境管理協会

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静脈系 LCA実施手引書

平成 19 年 3 月

社団法人 産業環境管理協会

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<目 次>

第1章 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・4

第2章 積み上げ手法を用いた分析 ・・・・・・・・・・・・・・6

1. 背景と目的 ・・・・・・・・・・・・・・6

2. 静脈系 LCA 実施の目的と手順 ・・・・・・・・・・・・・・7

3. データ収集 ・・・・・・・・・・・・・26

4. インベントリデータ構築 ・・・・・・・・・・・・・28

5. LCI 分析 ・・・・・・・・・・・・・34

6. 環境影響評価 ・・・・・・・・・・・・・52

7. 解釈 ・・・・・・・・・・・・・54

8. 分析結果の開示 ・・・・・・・・・・・・・58

9. インベントリデータの開示 ・・・・・・・・・・・・・58

10. まとめ ・・・・・・・・・・・・・58

第3章 積み上げ手法を用いた分析 ・・・・・・・・・・・・・65

1. 産業連関表に沿った投入・産出構造の整理と分析モデル ・・・・・・・・・65 2. エアコンの LCA を例とした WIO による LCA 手法(WIO-LCA)の解説 ・・・・・70 3. 今後の課題 ・・・・・・・・・・・・・80

4. 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・80

第4章 Appendix ・・・・・・・・・・・・・82

Appendix 1 参考資料 ・・・・・・・・・・・・・82

Appendix 2 使用済自動車ケーススタディ ・・・・・・・・・・・・・91

Appendix 3 使用済 PET ボトル(閉ループリサイクル)ケーススタディ ・・・・100

Appendix 4 使用済 PET ボトル(開ループリサイクル)ケーススタディ ・・・・105

Appendix 5 使用済家電ケーススタディ ・・・・・・・・・・・・111

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第 1章 はじめに

本手引書は、平成 15年度から 17年度の3年間の NEDO委託事業にて開発した LCA手法を産業界等で広く利用いただくために作成したものであり、手引書全体は以下の3つで

構成される。 (1)製品 LCA実施手引書 (2)静脈系 LCA実施手引書 (3)LCA手法による地域施策評価の実務 上記の手引書は対象とする製品・サービスにより異なると想定されるので、読者は適切

な手引書を参照いただきたい。なお、目的によっては、図 1.1.1のように手引書は相互に活用すべき場合も想定されるので、必要に応じて種々の手引書をご覧いただきたい。本手引

書は、そのうちの「静脈系 LCA実施手引書」である。 製品 LCA実施手引書では、LCA手法の適用の基本である主に製品を通じて利便を享受するときを対象として、ライフサイクルにわたる環境影響を評価する手法である LCAを実施する手法を総括すると共に、ケーススタディを示した。 静脈系 LCA実施手引書では、特にライフサイクルの最終に位置づけられる廃棄・リサイクル段階」に着目して、リサイクル、利ユースなどの評価手法を総括し、ケーススタディを

示した。 LCA 手法による地域施策評価の実務では、県などの自治体単位の事業を実施する場合に想定される LCA手法をケーススタディとして取りまとめた。 なお、LCA の実施に当たって本手引書で不明な点がある場合には、図 1.1.2 に示した国際規格である ISO14040シリーズを参照されたい。

図 1.1.1 本手引書の位置づけ

素材製造

組立

使用

廃棄・リサイクル

廃プラスチック使用済家電

使用済自動車

<製品>

<静脈>

<地域事業>1.産業政策

・インフラ整備2.エネルギー政策

・バイオエネルギー3.廃棄物政策

・処理リサイクル

プロセスシステム社会全体

参照

参照

ライフサイクル

民生/機器

(自販機)(住宅)(ICT)

製品 社会

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発行 JISISO 14040 LCA-原則及び枠組み 06/07 07/予定ISO 14044 要求事項及び指針 06/07 07/予定TR 14049 インベントリ事例 00/03 00/12TR 14047 ライフサイクル影響評価事例 03/10 07/予定

TS 14048 データ記述書式 02/04 04/10

ライフサイクルアセスメント規格(ISO 14040シリーズ)

図 1.1.2 ライフサイクルアセスメントの国際規格

また、ぞれぞれの手引書には具体的な事例(ケーススタディ)として、対象とした製品

や使用済み製品システムの LCA報告書の事例が添付されている。これから、具体的な製品の LCAを実施する方々の参考にされるために、ご覧いただきたい。 ISO/JIS Q 14040シリーズでは LCAに関する規格が定められており、基本的な手順・考え方が整理されている。しかし LCAを実施するにはその手順・考え方をより実践的に解釈し、展開していくことが求められる。そこで、本手引書では原則として既存の規格と整合

性を保った上で、特に静脈系機能を含む製品システムの評価に焦点を当て、LCA を実施する上での指針を提供することを目的にして作成した。 本手引書は積み上げ手法を用いたものと、廃棄物産業連関分析手法を用いたものより構

成される。積み上げ手法を用いたものでは、リサイクル・リユースを主とする静脈系機能

を含む LCA を、積み上げ法による ライフサイクルインベントリ(LCI) 分析を行い、ライフサイクルインパクト評価(LCIA)を行うまでの手順・留意点を示した。廃棄物産業連関分析手法を用いたものでは、使用済家電処理を対象に、廃棄物産業連表の分析手法を示

した。

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第 2章 積み上げ手法を用いた分析

1.背景と目的

ライフサイクルアセスメント (LCA) は製品やサービスの環境影響をその生涯にわたって評価する手法である。そのため基本的な LCAの評価範囲は動脈系、静脈系にわたる。 一方、近年エコタウンと呼ばれる静脈系産業の育成をめざした産業都市づくりがおこな

われており、使用済製品を再資源化することによってわが国の資源消費量を低減しようと

いう意図をもった試みがなされている。再資源化等が資源消費量低減にどのくらいの効果

があるかを定量的に把握するには、静脈系に視点を置いた LCAを実施することが、より効率的である。しかし現時点では評価のための汎用的な手法が整理されていないため、評価

手法を静脈系 LCA実施手引書として整備することを目的とした。本手引き書では本来の機能を果たした後の使用済品を対象として、リサイクル・リユースによって使用済品に新た

に追加した機能、もしくは不適切な環境影響が発現しないように処理する機能を静脈系機

能と呼ぶ。そして静脈系の機能を含む LCAを本手引書では静脈系 LCAと呼ぶ。 本手引書の各項目と LCA実施手順との関係を図 2.1.1に示す。

図 2.1.1 静脈系 LCA実施手引書の対象項目と ISO14040の枠組みの関係

環境影響評価・基本的な考え方・・・・・・・・・・・49・埋立の評価・・・・・・・・・・・・・・ 49

応用・製品開発、改善・戦略的規格・公的政策立案・市場開発etc.

分析結果の開示・・・・・・・・・・・55インベントリデータの開示・・・・55参考書籍・・・・・・・・・・・・・・・・・56本手引書で用いた用語・・・・・ 57

静脈系LCA実施手引書で対象とした範囲

目的と調査範囲の設定・静脈系LCAの考え方・・・・・・・・4

機能の設定・・・・・・・・・・・・・・・20

システム境界の設定・・・・・・・ 31

目的の設定・・・・・・・・・・・・・・・ 5

インベントリ分析・データ収集・・・・・・・・・・・・23

カットオフルール設定・・ 24

単位プロセス設定・・・・・ 25 マルチインプットの場合・・・26

輸送データ・・・・・・・・・・・・・28

代替システムの設定・・・・・・31

バックグラウンドデータ・・ 27

データの推計・・・・・・・・・・30

閉ループリサイクル・・・・・・32

データの集約・・・・・・・・38

開ループリサイクル・・・・・・34データの単位プロセスへの関連づけ・・・・・・・・・・・・35

重要な項目の特定・・51

完全性検討・・・・・・・・51

感度点検・・・・・・・・・・52

整合性点検・・・・・・・・54

結果の解釈

システム境界の再確認・31

ISO枠組み

手順

手引書項目

付加的手順

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2.静脈系 LCA 実施の目的と手順

静脈系においては、動脈系と異なり、使用済品のリユース・リサイクルプロセスを中心に

評価する。リユース・リサイクルプロセスはそれに伴うエネルギー投入量が増加する反面リ

ユース・リサイクル材使用による原材料使用量や廃棄処理量の低減といった要因があり、製

品システム全体で環境負荷の増減が生じる。環境負荷の増減を LCAにより定量的に把握する場合、考えられる目的は着目する対象の違いによって分類することができる。 ここでは、「静脈系機能に着目した LCA」及び「静脈系機能を含む製品システムの LCA」に分けて考え、その手順を以下に示す。 2.1 静脈系機能に着目した LCA ある製品システムから回収した再生材を、他の製品システムの原料にする場合、リサイ

クル・リユースといった静脈系機能そのものの持つ効果を評価したい場合がある。ここで、

静脈系機能は、使用済品の中間処理(回収、前処理など)、再生処理、適正処理の各プロセスにより、あるいはこれらが結合した一連の技術の導入によって達成される。 このとき、静脈系機能を有する製品・システムと静脈系機能のない製品システムとを比較

することにより、‘評価したい静脈系機能’の持つ効果を評価することができる。 2.2 静脈系機能を含む製品システムの LCA 冷蔵庫や自動車などを対象とする、いわゆる一般的な製品の LCAを実施するときその製品システムが静脈系機能を含む場合を評価したい場合がある。即ち、静脈系機能以外のそ

の他の機能に着目した評価を行う、つまり、その製品システムが、外部で生産された再生

材を原料として利用したり、逆に再生材を外部に提供している場合である。このとき、LCAの基本では再生材の提供元・提供先をもシステム境界に含めて評価するが、一方で再生材

の提供元、提供先のそれぞれの環境負荷を評価する場合がある。

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<目的の分類> 表 2.2.1に静脈系 LCA実施の際に、およそ考えられる目的を分類して示す。ここで単位プロセスとは LCAを実施する際にデータを収集するための最小部分、技術とはある機能を得るための一連のプロセスの連鎖、システムとは複数の技術の組み合わさったものとして

考えた。

表 2.2.1 静脈系 LCAの実施者の視点に立脚した目的の分類 目的の概要 結果例

目的① 静脈系単位プロセ

スの評価

静脈系単位プロセスの評価とは、静

脈系における各単位プロセスの環境

負荷を評価することである。このと

き、各単位プロセスにおける環境負荷

の大小を評価する場合と、環境負荷と

同時に回収した再生材の効果等も含

めてその効率を評価する場合がある。

使用済製品を処理する一連のプロセスにおけ

る環境負荷の大小を評価した。その結果、選別工

程におけるCO2排出量が大きいことがわかった。

評価結果例

目的②

静脈系技術の評価 a

静脈系技術の評価 b

(動脈系の違い)

リユースやリサイクルに関連する

各種技術の環境負荷を評価すること

である。基準とした技術が適用されて

いる状態と、評価対象となる静脈系技

術を適用させた状態との環境負荷の

差を評価する。

再生材がいく通りかの他の製品シ

ステムの原料として利用できる場合、

各製品システムの再生材提供先の違

いによる環境負荷変化を評価するこ

とによって、最も効果が大きくなる提

供先を評価する。

基準技術を適用した状態に、それぞれ技術 Aと B を適用することによる効果を評価した。その結果、技術 Aを導入すれば効果 Aが、技術 Bを導入すれば効果 B が期待されることがわかっ

た。

評価結果例

例えば、廃 PETボトルから再生材としてペレットが得られるとき、これを製品システム A(例えば衣服)の原料にする場合と、製品システム B(例えばたまごパック)の原料にする場合とで、再生材活用の効果の差が明らかになる。

0 20 40 60 80 100 120

製品システムB

製品システムA

基準システム

環境負荷

効果

効果

評価結果例

0 5 10 15 20 25

再生処理工程

埋立工程

選別工程

環境負荷

0 20 40 60

技術B

技術A

基準技術

環境負荷

効果B

効果A

た L

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- 9 -

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

廃棄

削減

効果

再生

処理

素材

製造

使用

廃棄

環境

負荷

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

素材

製造

使用

廃棄

再生

処理

素材

削減

効果環境

負荷

目的③ 静脈系システムの

評価

複数の静脈系技術の組み合わせによ

る環境負荷変化の相乗効果を評価す

る。場合によっては社会システム全体

を評価対象にすることも考えられる。

ここでいう相乗効果とは、例えば静脈

系技術 A を導入して期待される効果と、静脈系技術 Bを導入して期待される効果が明らかであっても、両技術を

同時に導入するとその効果は単純な

和にならないことを意味する。

基準としたシステムに、技術 Aと技術 Bを同時に導入した。すると、静脈系技術の評価で得た

結果(効果 A と効果 B)よりも、多くの環境負荷削減効果が期待されることがわかった。

評価結果例

目的④ 静脈系の処理が社

会システムの環境

負荷に及ぼす影響

の評価

静脈系技術の改善や静脈系に係わ

る法規制等が製品に適用された場合

に、社会全体の製品のストック、フロ

ーの時間的変化を考慮することによ

る環境負荷の低減に及ぼす効果を評

価する。

例えばエアコンの場合家電リサイクル法による冷媒回収効果が温暖化効果低減に大きく寄与

することがわかる。

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015

従来技術

法適用

温暖

化へ

の影

評価結果例

目的⑤ 再生材を利用した

製品システムの評

価 目的⑥ 再生材を提供した

製品システムの評

他の製品システムで生産される再

生材を利用したり、逆に他の製品シス

テムに再生材を提供する場合がある。

それら再生材の利用(提供)の効果の

全体像を把握する。 また、特定の製品システムのみにお

ける再生材提供の効果を評価する。

目的⑤:製品の原料として他の製品システムの

廃棄物であったものを逆有償で入手し、利用し

た。新たに再生処理工程が必要であったが、廃棄

処理工程が削減されたと考えられるため、その効

果を製品システムから控除して評価した。 目的⑥:製品の使用後に一部の素材を回収し、

外部に販売した。販売後の素材の利用先は不明で

あるが、同量の天然素材製造が節約されたと仮定

し、それに要する環境負荷を控除して評価した。

評価結果例(左:目的⑤、右:目的⑥) このようにシステム拡大をし、その効果を全量

自システム内に“割付け”することもできる。し

かし、その他の考え方もあるため、それらを後述

する。

0 40 80 120

新システム(技術A+B)

基準システム

効果A+効果B+α

環境負荷

た L

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目的⑦ 易分解性が製品シ

ステムに及ぼす影

響の評価

製品システムの動脈系において、部

品汎用化設計、素材を統一した設計等

がなされたとき、静脈系システムに対

する影響を評価する。

易分解性の設計がなされたことにより、破砕・

選別工程で発生する環境負荷が低減されること

がわかる。また、動脈系での資源量低減、組み立

て・加工エネルギーの低減による環境負荷低減効

果大。

0 20 40 60 80 100 120

新システム

基準システム

動脈系

手分解

破砕

分別

環境負荷 評価結果例

静脈系機能を含む

製品システムのLCA

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<解説> ① 静脈系単位プロセスの評価 静脈系単位プロセスの評価とは、静脈系を構成する各単位プロセスの環境負荷の大小を

評価することにより、環境負荷の改善を必要とする重要なプロセスを抽出することが目的

である。 図 2.2.1に静脈系単位プロセス評価のシステム境界の一例を示す。この例では、中間処理

a、適正処理 a、再生処理 a、再生処理 bといった各単位プロセスの環境負荷を分析する。 結果の一例を図 2.2.2に示す。この場合、再生処理 bにおける環境負荷が一番大きく、次に中間処理 a が大きいことがわかる。この場合、再生処理 b による素材製造 b の削減効果への寄与が大きい場合は、これを再生処理 bの効果とし評価に含めることも考えられる。

図 2.2.1 静脈系単位プロセスの評価におけるシステム境界の一例

図 2.2.2 静脈系単位プロセス 次に、上記目的に沿って評価したものを、実例として以下に示す。

環境負荷

適正処理a

再生処理a

中間処理a

再生処理b

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

静脈系単位プロセス評価

システム境界

再生処理b再生処理a

システム境界

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

静脈系単位プロセス評価

システム境界

再生処理b再生処理a

システム境界

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図 2.2.3 は PETボトル製品システム(PETボトル 1 kg)から使用済み PETボトルを回収(回収率 61%)し、フレーク化してペレットを再生(収率 80%)する製品システムにおいて、静脈系単位プロセス(焼却、回収、フレーク化及びペレット化)各々の環境負荷の

一例として CO2 排出量を評価したものである。直接 CO2を発生する焼却プロセスでの CO2 排出量が最も大きいが、これを低減するには、回収プロセスでの回収率を向上し焼却され

る使用済み PETボトルの量を減らすことが重要であることがわかる。

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

ペレット化

フレーク化

回収

焼却

CO2 排出量 (g-CO2)

図 2.2.3 静脈系単位プロセスの環境負荷評価の実例

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② 静脈系技術の評価 a)リユース・リサイクル効果の比較 静脈系技術の評価とは、リユースやリサイクルのために導入されたプロセスを含む技術

を評価することである。基準とした技術を導入しているシステムの状態から、評価対象の

何らかの静脈系技術を適用させた状態のシステムとの環境負荷の差を評価することを目的

とする。 図 2.2.4に静脈系技術評価のシステム境界の一例を示す。製品システム Aの境界を製品システム B まで拡大したシステム境界を考える。この拡大したシステム境界のもとで、再生処理を導入しない技術(適正処理技術)から、再生処理を導入した技術(再生処理技術)を差し引くと共通プロセス部分が差し引かれ、静脈系技術評価のシステム境界は図の鎖線で示

すことができる。ここでは、再生材によって節約される素材製造 b を評価対象に含めている。 結果の一例を図 2.2.5に示す。適正処理技術においては中間処理 aの環境負荷が少ないが、

素材製造 b の環境負荷が追加されている。一方、再生処理技術では中間処理 a の環境負荷が多く、また再生処理の環境負荷が新たに発生しているが、素材製造 bが削減されるため、総量では環境負荷が小さくなることがわかる。後述のケーススタディでは、PET ボトルを焼却処理する技術を基準とし、使用後にポリエステル繊維へマテリアルリサイクルする技

術の効果を検討した。

図 2.2.4 静脈系技術の評価におけるシステム境界と評価範囲

図 2.2.5 静脈系技術の評価における結果の一例 環境負荷

適正処理技術

再生処理技術

適正処理a

再生処理

素材製造b

中間処理a

環境負荷

適正処理技術

再生処理技術

適正処理a

再生処理

素材製造b

中間処理a

基本フロー

基本フロー

基本フロー

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b

静脈系技術評価システム境界

システム境界

適正処理技術

基本フロー

基本フロー

基本フロー

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b

静脈系技術評価システム境界

システム境界

適正処理技術

基本フロー

基本フロー

基本フロー

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b

静脈系技術評価システム境界

再生処理

システム境界

再生処理技術

基本フロー

基本フロー

基本フロー

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b

静脈系技術評価システム境界

再生処理

システム境界

再生処理技術

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次に実例を示す。図 2.2.6 は、図 2.2.4上段の再生処理技術で示す PETボトル製品システム(ボトル 1kg)から使用済み PETボトルを回収し、再生材を衣服の原料として用いる場合のリサイクル効果を、図 2.2.4下段の適正処理技術(リサイクル無し)と比較したものである(製品システムの詳細はケーススタディ を参照)。リサイクルのない場合、使用済み PETボトルの焼却と衣服の原料製造での環境負荷が計上される。リサイクルのある場合はこれらに再生材の回収に伴うプロセスでの環境負荷が加わり、いずれの場合も図 2.2.4の一点鎖線で囲んだシステム境界での評価がなされる。その結果、リサイクルの効果が、1,447 g-CO2 と評価される。

図 2.2.6 静脈系技術(リサイクル)の評価

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排

出量

[g] ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

1,447g

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b) 再生材用途による比較 静脈系技術の評価における再生材の用途による比較とは、ある製品システムからいくつ

かの形態の異なる再生材が回収可能であり、これらの再生材を原材料として利用できる他

の複数の製品システムがある場合にどのルートに流すのが最もリユース・リサイクル効果

が大きくなるかを評価する。いわば、静脈系技術の評価が動脈系の違いにどう依存するか

を知ることを目的とする。 図 2.2.7に再生材用途に着目した静脈系技術評価のシステム境界の一例を示す。再生処理によって再生材 a、再生材 b、再生材 c が製造可能であるとする。再生材 a、b、c、・・・ は製品システム A、B、C、・・・ の原料として利用できるものとして、破線で示すシステム境界内で環境負荷を評価する。 すべて再生材 a として回収し製品システムAのみで利用する場合と、すべて再生材 b として回収し製品システム Bのみで利用する場合、及び再生材 aと再生材 bをある比率で回収してそれぞれ製品システム A及び製品システム Bの原料として利用する場合があり、その際のリユース・リサイクルの効果を一点鎖線で示すシステム境界A/Bで評価する。同様に、再生材 c、・・・、製品システム C、・・・ についてもシステム境界 A/C, B/C, C/D, ・・・ 等で評価する。 図 2.2.7 再生材用途に着目した静脈系技術評価におけるシステム境界

~~

素材製造 製品組立 (使用) 中間処理 適正処理 基本フロー基本フロー

再生処理 b 再生処理 c再生処理 a

素材製造b 製品組立b (使用b) 適正処理b 基本フロー基本フロー

素材製造c 製品組立c (使用c) 適正処理c 基本フロー基本フロー

再生材 a 再生材 b 再生材 c

素材製造a 製品組立a (使用a) 適正処理a 基本フロー基本フロー 中間処理a

中間処理c

中間処理b~

システム境界

静脈系技術評価システム境界 A/B

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

~~

素材製造 製品組立 (使用) 中間処理 適正処理 基本フロー基本フロー

再生処理 b 再生処理 c再生処理 a

素材製造b 製品組立b (使用b) 適正処理b 基本フロー基本フロー

素材製造c 製品組立c (使用c) 適正処理c 基本フロー基本フロー

再生材 a 再生材 b 再生材 c

素材製造a 製品組立a (使用a) 適正処理a 基本フロー基本フロー 中間処理a

中間処理c

中間処理b~

システム境界

静脈系技術評価システム境界 A/B

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

・・・

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図 2.2.8 に評価結果の例を示す。この例示では再生材の供給先が、再生材 a を製品システム Aにのみ供給する場合、再生材 bを製品システム Bにのみ供給する場合、再生材 a及び再生材 bを回収しそれぞれ製品システム A及び Bに供給する場合の3通りについて、それぞれ製品システム A と製品システム B のシステム境界 A/B での環境負荷の合計を示す。図示のように、各場合で環境負荷の大きさが異なることがわかる。 図 2.2.8 再生材用途に着目した静脈系技術評価結果の一例

同様にして、再生材 c,d, ・・・ についても、製品システム C, D, ・・・ の原料として供給する場合のシステム境界 A/C, B/C, ・・・ 等での環境負荷の違いを評価することができる。

再生処理 a 素材製造a 製品組立a ~適正処理a

素材製造b 製品組立b ~適正処理b

素材製造a 製品組立a ~適正処理a

再生処理 b 素材製造b 製品組立b ~適正処理b

再生処理a 製品組立a ~適正処理a

再生処理 b 製品組立b ~適正処理b素材製造b

製品システム A

製品システム B

製品システムA + B

環境負荷

素材製造a

再生材の供給先

再生処理 a 素材製造a 製品組立a ~適正処理a

素材製造b 製品組立b ~適正処理b

素材製造a 製品組立a ~適正処理a

再生処理 b 素材製造b 製品組立b ~適正処理b

再生処理a 製品組立a ~適正処理a

再生処理 b 製品組立b ~適正処理b素材製造b

製品システム A

製品システム B

製品システムA + B

環境負荷

素材製造a

再生材の供給先

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③ 静脈系システムの評価 静脈系システムの評価とは、複数の静脈系技術の組み合わせによる相乗効果を考慮して

評価することである。例えば、静脈系技術 A を導入して期待される効果と、静脈系技術 Bを導入して期待される効果が明らかであっても、両技術を同時に導入するとその効果は単

純な和以上になることが期待される場合を評価することを目的とする。 図 2.2.9に静脈系システム評価のシステム境界の一例を示す。この例では、再生処理 aを有する静脈系技術に再生処理bを組み合わせた新システムを示す。静脈系システム評価の

システム境界は図の鎖線で示す範囲にとる。この境界内で相乗効果を考慮したシステム全

体を評価する。 結果の一例を図 2.2.10に示す。例えば再生処理 aの導入によって、再生処理 bの効率がそれ単独の場合より向上するなど、単純に両技術の環境負荷を足し合わせただけではない

ことがわかる。

図 2.2.9 静脈系システムの評価におけるシステム境界と評価範囲

図 2.2.10 静脈系システムの評価における結果の一例

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

静脈系システムの評価

再生処理b再生処理a

システム境界

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

静脈系システムの評価

再生処理b再生処理a

システム境界

環境負荷

現システム

新システム

適正処理a再生処理b

中間処理a

素材製造b

再生処理a

環境負荷

現システム

新システム

適正処理a再生処理b

中間処理a

素材製造b

再生処理a

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④ 静脈系処理環境の変化が社会システムの環境負荷へ及ぼす効果の評価 静脈系処理環境の変化が社会システムの環境負荷へ及ぼす効果の評価とは、ある製品に

静脈系処理に係わる技術的改善があったり、静脈系関連法(家電リサイクル法など)が施

行されたときに、改善あるいは法施行がおこなわれる以前の年と以降の年で、ある期間(例えば 1年間)の社会全体の環境負荷がどのように変化するかを明らかにし、過去・将来の環境負荷を評価することを目的とする。 図 2.2.11にシステム境界の一例を示す。期間 1の処理 aから期間 2の処理 bになること

で環境負荷が低減されているが(図 2.2.12)、その要因は静脈系技術改善、マテリアルフロー減少、環境適合設計の進展、社会インフラの整備等、様々な要因が考えられる。これよ

り、製品のストック、生産量を考慮した社会システムの環境負荷を評価することができる。

図 2.2.11 静脈系の時系列的な環境の変化のある場合のシステム境界

図 2.2.12 社会システムの環境負荷評価の概念

製造a (使用a) 処理a

基本フロー

製造b (使用b) 処理b

(製造c) (使用c) 処理c

(製造d) (使用d) 処理d

製造a’

再生材製造b’

再生材

システム境界

システム境界

基本フロー

基本フロー

基本フロー

時間の流れ

期間1 期間2

製造a (使用a) 処理a

基本フロー

製造b (使用b) 処理b

(製造c) (使用c) 処理c

(製造d) (使用d) 処理d

製造a’

再生材製造b’

再生材

システム境界

システム境界

基本フロー

基本フロー

基本フロー

時間の流れ

期間1 期間2

環境負荷

処理a

(使用b)

処理b

(製造c)

(使用c)

(製造d)

製造a’製造b’

期間1 期間2

環境負荷

処理a

(使用b)

処理b

(製造c)

(使用c)

(製造d)

製造a’製造b’

期間1 期間2

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図 2.2.13 に評価結果の一例として、エアコンによる社会システムへの環境負荷の経年変化を示す。2001年の家電リサイクル法施行により、処理プロセスでの冷媒回収の効果が環境負荷の低下に寄与していることがわかる。

図 2.2.13 静脈系技術の変化が環境負荷に及ぼす効果

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

1990

1995

2000

2005

2010

地球

温暖

化へ

の影

響[kt-CO

2 equiv./year]

中間処理R-410AR-22アルミニウム銅PSPP鉄シナリオ2シナリオ1

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⑤⑥ 再生材を利用/提供した製品システムの評価 ある製品が、他の製品システムに再生材を提供したり、逆に他の製品システムで生産さ

れる再生材を利用する場合、それら再生材の利用(提供)の効果を評価することであり、

再生材を提供する製品システムと再生材を利用する製品システム全体の評価、あるいは再

生材を提供した製品システムのみ、再生材を利用した製品システムのみの評価を行うこと

を目的とする。 図 2.2.14 にシステム境界の一例を示す。再生材を提供する製品システムと再生材を利用する製品システム全体の環境負荷の増減を把握するには、図の破線で示すように両方の製

品システム(両方の機能)を含むようにシステム境界を拡大することにより評価すること

ができる。 一方、それぞれの製品システムのみの評価を行いたい場合は、図 2.2.14 の二重線で示すシステム境界でそれぞれの製品システムを評価することになる。その場合、再生処理工程

の導入による環境負荷の増減をいずれかの製品システム(機能)に割付ける。図 4.4.17 の例では、上流側は再生材を生産した時点で環境負荷をゼロとし、一方で下流側は再生材が

環境負荷ゼロで入手したとしている。しかし上流側と下流側での環境負荷割付けの考え方

はこれ以外にも様々な手法があるため、後述の「割付け」の節で述べる。

図 2.2.14 再生材を利用(提供)した製品システム全体の評価における評価範囲の例

次に PET ボトル製品システムから使用済み PET ボトルからペレットを回収して、衣服製造用の原料として使用する場合の実例を示す。

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システムの評価

再生処理b再生処理a

再生材を提供した製品システムの評価

製品・システム境界

<上流側>

<下流側>

部品製造b

部品製造a素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システムの評価

再生処理b再生処理a

再生材を提供した製品システムの評価

製品・システム境界

<上流側>

<下流側>

部品製造b

部品製造a

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図 2.2.15(a) は PETボトル 1kg 使用時の CO2 排出量を示し、再生材を提供する製品システムである。 (b) は原材料の一部として上記の再生材を利用して製造した衣服 0.57kg使用時の CO2 排出量を示す。この場合、回収、フレーク化、ペレット化に伴う CO2 排出量は、すべて再生材を提供する側に割付けている。このように、割付けを行うことによって

提供側製品システムと利用側製品システムの CO2排出量を別個に評価することができる。

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

CO2 排

出量

[g] 焼却

ペレット化

フレーク化

回収

ボトル成型

ボトル用素材製造

(a) PETボトル 1kg 使用時の CO2 排出量(再生材を提供する製品システム)

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

CO2排

出量

[g] 焼却

流通

染色・縫製

ポリエステル繊維製造

衣服素材製造

(b) 衣服 0.57kg 使用時の CO2 排出量(再生材を利用する製品システム)

図 2.2.15 使用済み PETボトルからの再生材を提供/利用する製造システムの CO2 排出量

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⑦ 易分解性設計が関係する静脈系の評価 易分解性設計が関係する静脈系の評価とは、分解し易い設計が行われた部品や、材料を

統一した部品の使用が、リユース・リサイクル時の環境負荷の低減に及ぼす影響を評価する

ことを目的とする。 図 2.2.16 にシステム境界の一例を示す。システム境界を破線で示すように拡大し、評価するシステム境界を一点鎖線で示すようにとる。図 2.2.17 に結果の一例を示す。この例では、新システムでは、材質の統一による素材製造 a での CO2排出、易分解性確保のために

必要な素材厚みの増加や追加部分による部品製造 a、及び製品組立 a での CO2排出量が増

加するが、中間処理 a において分解が容易であることによって、リユースされる物量が増える。その効果は、図 4.4.20に示すように、中間処理 a、再生処理、適正処理 a、素材製造b、製品組立 b のすべての静脈系プロセスでの CO2排出量の低減に及ぶことがわかる。

図 2.2.16 易分解性設計材料が関係する静脈系評価におけるシステム境界の一例

図 2.2.17 易分解性設計が関係する静脈系の評価

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

易分解設計システム評価のシステム境界

再生処理

システム境界

部品製造b

リユース

洗浄処理

部品製造a素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

易分解設計システム評価のシステム境界

再生処理

システム境界

部品製造b

リユース

洗浄処理

部品製造a

現システム

新システム

環境負荷

適正処理a再生処理 素材製造b中間処理a 製品組立b部品製造b部品製造a

製品組立a

洗浄処理

部品組立a

製品組立a

素材製造a

素材製造a

現システム

新システム

環境負荷

適正処理a再生処理 素材製造b中間処理a 製品組立b部品製造b部品製造a

製品組立a

洗浄処理

部品組立a

製品組立a

素材製造a

素材製造a

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2.3 機能の設定 LCA では対象とする製品システムを定義する。その際、製品システムとは「製品システムだけではなくサービスシステムを含む場合がある」(JIS Q 14040)。動脈系の場合、製品を生産する、使用するという機能を評価する場合が多いが、静脈系では①廃棄物の適正処

理を機能として評価する場合と、②何らかの再生材を生産するという機能を評価する場合

がある。また場合によっては、③双方が混合した形もある。そのため、複数の製品システ

ムを評価する場合はそれぞれの機能を統一させる必要がある。 図 2.2.18 に示すように、互いに異なる機能を持った製品システム1と2は環境負荷をそのまま比較することはできない。LCA では複数の製品システムを評価する場合はそれぞれの機能を揃え、いわゆる幸せ一定の法則を満たさなければならない。

図 2.2.18 機能の異なる製品システム 機能を揃える手法として、①共通機能を基準化する手法 と ②全機能を基準化する手

法がある。以下に、その詳細について述べる。

機能A 機能B 機能C

機能D

製品システム1

製品システム2

機能A 機能B

比較不可

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①共通機能を基準化 LCAにおいて着目する機能を、機能 Aと Bとする。図 2.2.19 のように、それぞれの製品システムで「過剰に」存在する機能と同等の機能を提供する等価な代替製品システムを

設定し、機能としての同一性を確保する。Avoided impact法とも呼ばれる手法である。

図 2.2.19 共通機能を基準化 <例:共通機能を基準化> 図 2.2.20 において、製品システム1は使用済プラスチックを破砕し、埋め立てる。製品システム2は使用済プラスチックを固形燃料として石炭ボイラーで燃料として利用し蒸気

を発生する。そこで、双方ともに共通する「使用済プラスチックを適正処理すること(“埋立て”あるいは”RDF化”)」を基準の機能として定義する。 製品システム2には “ボイラーによる蒸気発生” が「過剰に」存在するので、製品システム2が提供している蒸気と同量の蒸気を発生させるのに、石炭を採掘し燃焼させて蒸

気を発生する代替製品システムを想定し製品システム2から差し引く。RDF の使用によって「節約」されているであろう石炭の量が算定され、その燃焼に伴う環境負荷を製品シス

テム2から控除する。これによって、両製品システムの環境負荷が同一機能のもとで評価

される。 尚、後述するが等価な代替システムとしては、この例ではボイラーで発生する蒸気量・

物理的な性状が等しければ、現状に則して複数のものからの選択が可能であるが、評価結

果には差が生じるので、選択した代替システムを明記しておく必要がある。

図 2.2.20 共通機能を基準化(例)

機能A 機能B 機能C

機能D

製品システム1

製品システム2

機能A 機能B

比較可

機能D

機能C

使用済み廃プラ 破砕 埋立て

製品システム 1

使用済み廃プラ RDF 化ボイラによる

蒸気発生

製品システム 2

-ボイラによる

蒸気発生 石炭

代替製品システム

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②全機能を基準化 対象とする製品システム1と2のそれぞれが持つ機能を全て含めた形で評価する。図

2.2.21 のように、不足している機能を提供する製品システムを含めることで、機能としての同一性を確保する。Basket法とも呼ばれる手法である。

図 2.2.21 全機能を基準化 <例:全機能を基準化> 図 2.2.22 において、製品システム1は使用済プラスチックを破砕し、埋め立てる。製品システム2は使用済プラスチックを固形燃料として石炭ボイラーで燃料として利用し蒸気

を発生する。そこで、存在する全ての機能である「使用済プラスチックを適正処理するこ

と、蒸気の発生」を基準の機能として定義する。 製品・システム1には “ボイラーによる蒸気発生” が「不足」しているので、製品シス

テム2が提供している蒸気と同量・同性状の蒸気を発生させるのに、石炭を採掘し燃焼さ

せて蒸気を発生する等価な代替製品システムを想定し、製品システム1に付加する。「追加」

されるであろう石炭の量が算定され、その燃焼に伴う環境負荷を製品・システム1に加算す

る。これによって、両製品・システムの環境負荷が同一機能のもとで評価される。

図 2.2.22 全機能を基準化(例) 機能の設定の違いと評価結果の関係については、「リサイクルの評価―開ループリサイク

ル」にて具体的な計算結果を用いて詳述する。

機能A 機能B 機能C

機能D

製品システム1

製品システム2

機能A 機能B

比較可

機能D+

+ 機能C

使用済み廃プラ RDF 化 ボイラによる

蒸気発生

製品システム 2

+使用済み廃プラ 破砕 埋立て

製品システム 1

ボイラによる

蒸気発生 石炭

代替製品システム

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3.データ収集

3.1 データ有効範囲の確認 データ収集方法は基本的に動脈系における手法と変わりはない。静脈系において特に注

意すべき点について下記に述べる。 静脈系においては使用済み製品が入力物質であるため、組成にばらつきがある。また、

処理方法も処理業者によって差異がある。そのため、入力物質や投入エネルギーが均一で

ないことが多い。そのため、収集したデータの位置づけ(代表性)を明確にし、データが

利用目的に合致しているかを確認しなければならない。それには、第三者が確認できるよ

う、データ取得の時間的範囲(例:2000年度平均、5月平均等)、技術的範囲(例:ストーカー炉 50t/日、流動床炉 30t/日等)、地理的範囲(例:日本国内平均、関西地方等)を明記しておくことが望ましい。スクラップ中の金属の含有量などは、時間的、地理的、技術的

範囲の違いによって差を生じる例である。 3.2 中間製品の品質情報 鉄スクラップ、アルミニウムスクラップ、銅スクラップにはそれぞれ JIS 規格や業界による独自規格が用いられている。回収素材がどの品質に該当するかで、再生材の用途(次

工程)が制限されることがあるため、具体的な品位についても調査することが望ましい。

また、同じ用途に用いられるとしても、インベントリが変化することも考えられる。プロ

セスデータが品質に左右される場合は、何らかの関数でデータ整理することも考えられる。 <品質に応じた関数でデータ整理する例> 使用済電線の解体プロセスを調査したところ、図 2.3.1に示すデータが取得できた。しかし、このままでは使用済電線の成分が変化すると直接利用できないデータとなる。そこで

成分ごとに回収率を算定し、図 2.3.2に示す関数として再構築し、汎用性を確保した。

図 2.3.1 使用済電線のプロセスデータ(実測)

図 2.3.2 使用済電線のプロセスデータ(関数化後)

1.0 kg 銅スクラップ 0.67 kg

銅 0.67 kg PVC破砕物 0.04 kg

PVC 0.065 kg PE破砕物 0.04 kg

架橋PE 0.065 kg アルミニウムスクラップ 0.13 kg

アルミ 0.13 kg

テープ類 0.070 kg 廃棄物 0.12 kg

0.0075 kWh

0.0017 L

0.0017 L工業用水

解体・選別

使用済電線

成分

電力

軽油

1.0 kg 銅スクラップ a kg

銅 a kg PVC破砕物 0.615×b kg

PVC b kg PE破砕物 0.616×c kg

架橋PE c kg アルミニウムスクラップ d kg

アルミ d kg

テープ類 e kg 廃棄物 残重量 kg

0.0075 kWh

0.0017 L

0.0017 L

使用済電線

解体・選別

成分

電力

軽油

工業用水

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3.3 カットオフルール インベントリデータを構築するに際して、対象製品に対する構成重量比で僅かなもの(例

えば 1%未満)の入出力データをカットオフすることが経験上よく実施される。静脈系の評価においても効率的にLCAを実施するためにカットオフルールを設定することは重要であるが、重量構成比でわずかであっても他の物質よりもはるかにエネルギー集約度が高い場

合があり、このようなときはエネルギー消費量に着目して重量によるカットオフを補う必

要がある。また、微量の有害物質等の影響が無視できず重大な環境影響を与える可能性の

ある場合は、微量であってもカットオフの対象から外さなければならない。このように、

カットオフでは、その評価の妥当性に常に注意を払わなければならない。これは、動脈系

において貴金属の消費が微量でも資源枯渇の影響領域へは無視できないインパクトをもた

らすのと同様である。 <カットオフルールの例>

一般廃棄物焼却後の焼却灰には鉛、カドミウム、砒素などの有害物質が含まれるが、そ

の含有率は通常 1%未満であるため、単純に重量で 1%未満の成分をカットオフしたデータだと焼却灰を「安全な」廃棄物だと誤解する恐れがある。そのため資源枯渇や人間健康、

生態毒性に対して特に影響が懸念される物質のデータは基準フローに対する重量比が 0.1%未満でない限りカットオフしない。また、それ以下であっても特にその物質が含まれるこ

とによって処理コストが高くなるものがあれば、それも調査対象に含む。

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4.インベントリデータ構築

4.1 プロセスにおけるエネルギー消費等 対象工程のみでエネルギー消費量等を把握していれば、LCI データ取得は容易である。しかし複数の工程で一括してエネルギー消費量等を管理しており、各工程の実測値が収集

困難な場合は何らかのデータ加工が要求される。たとえば、各機器の定格消費エネルギー

と稼働率から配分する手法などがある。 4.2 単位プロセスの設定範囲 データ収集する最小単位を単位プロセスと呼ぶ。この単位プロセスの大きさは LCAの目的によって、またはデータ収集上の制約によって変化するため、そのデータの前提条件等

を明記することが求められる。 <単位プロセスの設定範囲の違いによるデータへの影響例> ある家電製品を再資源化するプロセスを調査した。単位プロセスを再資源化プラント全

体とした場合(図 2.4.1)と、プロセスを細分化した場合(図 2.4.2)ではデータが異なる。プラント全体でデータを整理すると、実際には洗浄剤を一切利用していない鉄・非鉄スク

ラップにも洗浄剤を利用したとされてしまう。一方、プロセスを細分化すると前述の洗剤

の問題は解決されるが、プロセスの後半側が計算上はダスト処理に要する環境負荷を背負

うことになってしまう。

図 2.4.1 単位プロセスを再資源化プラント全体とした場合

解体

洗浄

破砕 磁力選別 渦電流選別

使用済家電

再生部品 500kg鉄スクラップ 600kg非鉄スクラップ 200kgダスト 200kg

洗浄剤 10kg電力 120kWh

再生材原単位

再生部品

電力 0.09 kWh/kg

洗浄剤 0.01 kg/kg

ダスト排出 0.15 kg/kg

電力 0.09 kWh/kg

洗浄剤 0.01 kg/kg

ダスト排出 0.15 kg/kg

電力 0.09 kWh/kg

洗浄剤 0.01 kg/kg

ダスト排出 0.15 kg/kg

再生部品

鉄スクラップ

非鉄スクラップ

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図 2.4.2 単位プロセスを細分化した場合 4.3 マルチインプットの扱い 一つのプロセスから複数の製品(機能)が生産される場合にはアロケーション(配分)

の問題が発生するが、それと同様に複数の製品(機能)を一つのプロセスが生産している

(満たしている)場合にも同様の問題が発生する。このようなマルチインプットのプロセ

スは、基準フローが増減した際の差分をインベントリとして整理することで解決できる。

しかし、プロセスにおける他の入出力物質に対して基準フローが微小な場合、その増減が

実際のインベントリとして収集できないことがある。そのため物理的関係より入出力を推

算したり、類似の実験結果から推測する手法が採ることが必要になる場合がある。 <フロン分解の例>

ロータリーキルン炉でフロン分解した例を図 2.4.3に示す。フロンは一般廃棄物に対して0.05wt%で投入している。フロン分解は吸熱反応であるため単独での燃焼には助燃材が必要であるが、本プロセスにおけるコークスが全量フロン分解のために消費されたか一般廃棄

物の処理のために消費されたか不明である。また排出ガス成分中のフロンは未分解のもの

だと解釈できるが、塩化水素等は一般廃棄物焼却時のみでも発生する。 そのためフロン分解時のインベントリを構築するには図 2.4.3のデータだけでは不十分である。しかしこのようなデータしか取得できない場合は、フロン分解に要する熱エネルギーを算出してコーク

ス消費量を配分するなど、何らかのモデルを設定して評価する。

図 2.4.3 マルチインプットの例(ロータリーキルン炉におけるフロン分解)

ロータリーキルン炉一般廃棄物 2700kg

フロン 1.43kg

コークス 163kg

フロン 0.3ppb

塩化水素 75mg/N-m3

弗化水素 0.8mg/N-m3

一酸化炭素 4ppm

窒素酸化物 150ppm

[排出ガス成分]

解体

洗浄

破砕 磁力選別 渦電流選別

使用済家電

再生部品 500kg

鉄スクラップ 600kg

非鉄スクラップ 200kg

ダスト 200kg

洗浄剤 10kg電力 50kWh

電力 10kWh 電力 20kWh 電力 30kWh

電力 10kWh

再生材原単位

電力 0.11 kWh/kg

洗浄剤 0.02 kg/kg

鉄スクラップ 電力 0.04 kWh/kg

電力 0.22 kWh/kg

ダスト排出 1.00 kg/kg

再生部品

非鉄スクラップ

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4.4 バックグラウンドデータ利用方法 バックグラウンドデータ利用方法 データはLCA実施者がフォアグラウンドデータとして独自に取得するのが原則であるが、一般的なプロセスデータが必要であり、かつ十分であれば、既存のバックグラウンドデー

タを利用することができる。ただしバックグラウンドデータは一般的なデータとされつつ

も、様々な前提条件のもと構築されているため、直接バックグラウンドデータだけで比較・

判断してはならないだけでなく、使用時にはその特徴を把握しなければならない。表 2.4.1にデータの種類をまとめた。

表 2.4.1 バックグラウンドデータの種類 複数施設の平均データ バックグラウンドデータとしてはより一般的なデータとして

利用できる。 特定施設のデータ 代表性は低いが、当該技術の処理量の大半を占めている場合、

平均データでは異なる成分のものを処理・生産している場合、

技術分布がなく他施設でも同じデータだと類推できる場合は、

十分な代表性を有しているとも言える。 理論値から計算データ 成分変化の影響を推算するなど、汎用データとして利便性が高

いが、現実との整合性には注意を払わなければならない。 国内外に様々なバックグラウンドデータがある。それらの一般的な解説は製品 LCA実施手引書で記載されているため詳細は割愛し、ここでは特に静脈系のバックグラウンドデー

タについて述べる。 1) LCA日本フォーラムデータベース(JLCA-DB)1) JLCA-DBの「参考データ」には静脈系プロセスのデータが格納されている。また文献データも含まれているため、不足デー

タを調査できる。これらは主に LCAプロジェクトにて収集されたものをプロセス別にわかりやすく整理したものである。 2) 各種プロジェクト報告書 様々な公的資金のもと、研究機関が実施・発行している報告

書にバックグラウンドデータもしくはその参考となるデータが

含まれていることがある。代表的な機関として(独)新エネル

ギー・産業技術総合開発機構(NEDO)2)がある。NEDO では過去に実施した報告書がインターネットから無料でダウンロー

ドできる。報告書には第1期、第2期 LCAプロジェクトだけでなく、様々な研究開発事業においても LCA的な検討を行った報告書が含まれているため、関連データを入手できる。また国立

環境研究所では産業連関表による環境負荷原単位をインターネットでデータ公開している3)。 その他、経済産業省が実施し、一般公開している「繊維製品(衣料品)の LCA調査報告書」4)など、様々なインベントリデータが入手可能である。

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3) LCAソフトウェア付属データ 市販の LCAソフトウェアは素材製造のプロセスを中心とした、いわゆる動脈系プロセスがほとんどである。しかし一部のソフトウェアには静脈系データも含まれているため、そ

の妥当性を確認しつつ利用することも可能である。例えば、

JEMAI-LCA Proでは下水処理等のデータが格納されている。 また特定の分野の評価に特化したソフトを利用することも

考えられる。例えば都市ごみ処理システムを評価するソフト

ウェア 5)では、収集・中間処理等のデータがプロセス別に整理

されているため、そこから必要なプロセスのデータを抜粋し

て利用することも、場合によっては可能である。 4) 工業会等による調査データ 関連工業会によって静脈系プロセスのデータが整備・公開されている場合がある。例え

ばプラスチック処理促進協会は各種プラスチックの再資源化等 6)、塩ビ工業・環境協会は塩

ビ管等の材料リサイクル等 7)、PETボトル協議会は PETボトルの材料リサイクル、ケミカルリサイクル等 8)、古紙再生促進センターは古紙の回収・輸送等のデータ 9)を報告書で公開

している。またアルミ再生地金については日本アルミニウム協会がホームページでデータ10)を公開している。 5) 学会等で発表されたデータ 大学・企業・その他研究機関等によって多くの LCAに関する研究が実施されており、またインベントリデータも構築されている。特に日本 LCA学会では研究発表会要旨をインターネットで公開しているため、データだけでなく手法論も含めて有用である。国内では先

述の日本 LCA 学会の学会誌だけでなく、廃棄物学会、日本エネルギー学会、化学工学会、エネルギー・資源学会、環境科学会、環境経済・政策学会等で LCA が取り扱われている。また隔年で開催されるエコバランス国際会議でも様々な事例が発表されているため、その

要旨集も参考になる。 4.5 輸送データ収集分析方法 1)一般的な分析方法 トラック輸送等のインベントリデータは平均速度、積載率、トラック種別にデータベー

スに整備されている。また、実際の燃費情報が入手できればより精度の高いデータが利用

できる。 <例:輸送原単位[t・km]の利用法> 2トン積み小型トラックで80kgの製品を輸送する。平均速度32.5km/h、走行距離200km、積載率 50%であった。文献より CO2排出原単位は 83.9g/t・kmを得た。CO2排出量は下記

のようにして算出することができる。

CO2 [ ]g ⋅ × ×排出源単位[g-CO2/(t km)] 走行距離[km] 輸送重量[t]排出量 =

積載率[%]

200 0.08

2,685

⋅ × ×83.9[g-CO2/(t km)] [km] [t]=

50[%]

= [g-CO2]

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2)グリッドシティモデル 特定の拠点間輸送や、実測値が入手できる場合はこのように評価できるが、静脈系で解

析の難しい輸送プロセスとして各家庭からの一般廃棄物や資源の回収がある。簡易的に処

理拠点と市街中心地域の距離を設定して評価する手法もあるが、回収プロセスの環境負荷

寄与率が大きい場合はより精度の高い解析が求められる。 そこで、回収プロセス評価手法の一つとしてグリッドシティモデルによる解析がある。

例えば Ishikawa11)によるグリッドシティモデル(図 2.4.4)では回収地域を格子状に区切り、幾何学的に回収プロセスを解析する。その結果、下式によって回収物当たりの平均走行距

離を算出することができる。

図 2.4.4 グリッドシティモデル 式中、 X:回収物当たり走行距離[m/kg] A:2次拠点当たりの収集面積[m2] D:2次拠点当たりの収集車の年間走行距離[m/year] f:年間収集回数[回/year] N:2次拠点当たりの回収ステーション総数[stations] q:回収車平均積載量[kg] W:2次拠点当たりの廃棄物の年間総排出量[kg/year] である。 *ここで 2 次拠点とはリサイクルセンターや焼却施設等の搬送先を指し、回収ステーションとは家庭ごみの排出場所(場合によっては各戸)である。また Ishikawa は地域特性を補正する係数を示しているが、

2D f q N AXW W q

⎛ ⎞⋅ ⋅= = + ⋅⎜ ⎟⎜ ⎟

⎝ ⎠

二次拠点

A

A積載量:q

回収ステーション

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上式はそれを省略し、変形したものである。 本グリッドシティモデルは様々な改良が加えられている。例えば東京市町村自治調査会12)は 2 次拠点が郊外にあるケースや、交通に大きな影響を与える河川・線路等があるケースについて改良グリッドシティモデルを示している。 4.5 データ推計方法 実測データの取得が困難な場合、排出物質量は物理的特性から推計する手法がよく採ら

れる。 また機器メーカーのカタログ値を用いた推計、統計資料を用いた推計、類似プロセスからの推計が可能である。 <物理的特性(化学式)からの推計例> プラスチック(PP:ポリプロピレン)を焼却処理した場合の排出物を算出したい。PPの分子式は[-CH2-CH(CH3)-]nであるため、完全燃焼すると CO2と H2Oになる。実際は微量の COや、サーマル NOx、添加材の影響等もあるだろうが、全て Cと Hからの構成物だと仮定し、PP焼却時の CO2排出量を推計する。 <カタログ値からの推計例> 発泡スチロール減容機(溶融・ブロック化)のカタログから、時間あたりの処理能力と

消費電力を計算した。ただし、厳密には機器の余熱が必要であろうし、原料である発泡ス

チロールの品質(発泡倍率等)によっても変化することが予想されるため、計算後に感度

分析にてその影響を検討する。

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5.LCI 分析

LCI 分析は、LCA の枠組みの中でも最も重要な部分である。LCI 分析では、分析対象とする製品システムをモデル化し単位プロセスごとに、収集したデータをもとに製品シス

テムの入力及び出力を定量化するための計算を行う。そのため、機能単位に応じたシステ

ム境界の設定を行わなければならない。静脈系 LCAでは、異なる 2つの製品システム間で再生材のリサイクルにともなう環境負荷の増減を比較することが主目的であり、そのため

両者の機能単位を同一に揃えるための代替システムの選定が重要である。 5.1 システム境界の設定 LCIを実施する対象製品・システムが決まったならば、対象製品システムの機能単位を設定し、それに応じてLCI 分析を実施するためのシステム境界を設定する。システム境界は、製品・システムの基本フローに基づいて、その境界を横切って物量、エネルギー、廃棄物等

が入・出力する境界と定義される。 静脈系の LCI 分析においては、LCA実施の目的に応じてシステム境界の設定が異なる。

例えば、静脈系技術のみの評価を行う際は、使用済品が排出されるところをシステム境界

の入口とし再生材が排出されるところを出口とする場合、あるいは再生材によって他の製

品システムの原料が削減(代替されることによって)されるところまでを含めた境界とす

る場合がある。また、静脈系を含む製品システムの評価を行う際は、再生材を利用する側

の製品システムと提供する側を合わせたシステム全体をシステム境界とする場合や、再生

材の出口をシステム境界として設定する場合あるいは再生材の入口をシステム境界として

設定する場合がある。 5.2 システム間の比較と代替システムの設定 静脈系 LCAでは再生処理プロセスに基づくシステムでの環境負荷の増減を、他の再生処理プロセスを有するシステム、あるいは再生処理のないシステムと比較するのが主な目的

である。 このように異なるシステム間での比較を行う場合、両システムの機能単位を同一にしな

ければならない。そのためには、例えば代替システムを設定しこれを取り込むようなシス

テム拡大をおこなう。 このとき、拡大したシステム境界において、両システムの機能単位は同一であっても代

替システムを何に設定するかによって LCI 分析の結果が左右されることがある。従って、設定にあたっては、①実際に代替している製品システムを特定し、フォアグラウンドデー

タとして把握することが必要となる。ただし、再生材を市場に流通させる場合のように特

定のプロセスに限定できないときは、②一般的な当該製品に相当する製品システムをバッ

クグラウンドデータから設定することも可能である。バックグラウンドデータを用いるに

は、そのバックグラウンドデータが十分な代表性を確保しているかをチェックしなければ

ならない。 <フォアグラウンドデータとしての代替システム設定例> 生産ロス品を自家発電用の石炭ボイラーに投入し熱回収している。そこで、フォアグラ

ウンドデータとして石炭が節約される量と、それに伴って増減する排出物質量を把握する。 <バックグラウンドデータとしての代替システム設定例>

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生産ロス品は外部の産業廃棄物処理業者に売却している。業者は生産ロス品を再加工し、

再生原料として販売している。そこで生産ロス品を再生原料にまで加工するシステムはフ

ォアグラウンドデータとして取得したが、再生原料と同等の原料製造に相当するシステム

を設定し、代替システムとする。 <代替システムの設定が結果に影響を及ぼす例> ごみ発電の LCA をする際に、代替される電力を「火力発電による電力」とするか、「国内の平均的な電力」とするかによって結果は異なる。「国内の平均的な電力」は原子力発電

や水力発電を含めた加重平均となるからである。

5.3 リサイクルの評価 使用済み製品から再生材が回収されリサイクルが行われる場合、再生処理プロセス及び

再生材の利用先がすべて元のシステム境界内に含まれるような「閉ループリサイクル」、再

生材の利用先が他の製品システムの原料としてシステム境界外に出て行くような「開ルー

プリサイクル」が考えられる。そのいずれかによって取り扱いが相違する。 (1) 閉ループリサイクル 閉ループリサイクルとは、ある製品システムにおいて、使用済み製品が再生原料として

リサイクルされ、同一の製品システムの製造原料として使用される場合を言う。

<PET ボトル閉ループリサイクルの例>

図 2.5.1 使用済み PET ボトルを閉ループリサイクルする製品システム

図 2.5.1 は、閉ループリサイクルの例として、使用済み PETボトルから回収したフレー

資源採取 精製PET樹脂

製造輸送 ボトル成型

洗浄 回収

(充填)

ベール化フレーク化

(使用)

解重合

焼却

β:収率

α:回収率

再生PET樹脂

695g-CO2 906g-CO2

894g-CO2

1,325kg-CO2

輸送

61%

93%

焼却

94g-CO2

総使用重量:1.00kg-PET相当

(輸送)

輸送

112g-CO2

基準フロー:α=0.61kg原単位:2,174kg-CO2/kg-PET相当

基準フロー: (1-αβ)= 0.43kg-PET

原単位:1,612g-CO2/kg-PET基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET基準フロー:(1-α)=0.39kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:α(1-β)=0.04kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:αβ=0.57kg-PET

原単位:196g-CO2/kg-PET

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ク状の PET 樹脂を解重合により再生 PET 樹脂とし、これを元の PET ボトルの原料として再利用するシステムを示す。 図中の原単位は基準フローに対して相対値で表した CO2排出量である。雲形吹き出し中

の数値は、原単位と基準フローの積で計算された CO2排出量である。計算上は、使用済み

PETボトルからの回収率が α 、解重合プロセスからの再生 PET樹脂の収率が β、PETボトル利用量(機能単位)を 1 kg とすると、新規に製造しなければならない PET樹脂量は (1 – αβ) kg となる。これは、図 2.5.2のマテリアルフローを見るとわかりやすい。例えば、1kgの PETボトルを定常的に利用するには、未回収部分と再生工程におけるロスと同量を新規樹脂で補充する必要がある。これが、0.43kgである。

図 2.5.2 PETボトル 1kg利用時のマテリアルフロー 図 2.5.2の例では、回収率 α = 61%、 解重合プロセスから再生 PET樹脂の収率 β = 93% とすると、PETボトル 1.00 kgに相当する機能を提供させるには 0.43kgの新規 PET樹脂の補充が必要だといえる。システム全体の CO2 排出量は 4,026 g-CO2 となる。 一方、図 2.5.3は、リサイクルがない場合のシステムを示す。この場合、使用済みの PETボトルはすべて焼却される。PET ボトル 1.00 kg に相当する機能を提供するためには、PET樹脂新材 1.00 kg を供給する。このとき、システム全体の CO2 排出量は 4,810 g-CO2 となる。 これより、PET ボトル 1.00 kg に相当する機能を提供する場合、リサイクルの効果は CO2 排出量にして 784 g-CO2 である。図 2.5.4に比較結果をグラフにまとめた。

図 2.5.3 リサイクルがない場合の製品システム

回収:0.61kg 未回収・焼却:0.39kg

再生PET:0.57kg

PET利用:1.00kg

ロス・焼却:0.04kg

再生PET:0.57kg 新規PET製造:0.43kg

PETボトル

利用

使用済PETボトル回収

再生PET製

造(解重合)

PETボトル

成型

資源採取 精製PET樹脂

製造輸送 ボトル成型 (充填) (使用)

焼却1,612kg-CO2 906g-CO2

2,292g-CO2

(輸送)

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET基準フロー:1.00kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:1,612g-CO2/kg-PET

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図 2.5.4 PETボトルの閉ループリサイクルの評価結果

(2) 開ループリサイクル

開ループリサイクルでは再生材が対象製品システム外で利用される。そのため原料採取

や素材製造といった段階での環境負荷を、対象製品システムが全て“背負う”べきか、そ

れとも一部は再生材を利用する他の製品システムにも負担させるべきか、その割付け基準

も含めて下記のように様々な手法が提案されている。 (a) クローズドループ化 リサイクル評価手法で最も簡単な方法である。再生材が実際には他の製品システムの素材として自システムの外に出て行くのであるが、これを、システム外には出て行かずに自

システムの上流に戻ると仮定し、その分だけ自システムへの新材の供給量が減らせるとす

ることで開ループシステムを閉ループシステム化する方法である。この場合、新財の製造

プロセスと再生材回収プロセスに大きな差異がないこと、新材と再生材の固有の特性が類

似であることが必要である。 <アルミダイカスト製品の例> 図 2.5.5のシステムで生産されるアルミダイカスト製品(重量 200g)の CO2排出量を計

算する。原料であるアルミスクラップは市場から調達している。また使用後に製品はアル

ミスクラップとして市場に供給される。そこで、仮想的に回収率 100%で閉ループリサイクルをしていると考える。すると、当製品の CO2排出量は 94gと計算される。

図 2.5.5 アルミダイカストの閉ループ化

再生地金製造

ダイカスト

(使用)

回収

スクラップ市場(プール)

アルミスクラップ

アルミスクラップ

27g-CO2

62g-CO2

5g-CO2

0

1

2

3

4

5

6

閉ループ 未リサイクル

CO2排

出量

[kg-

CO2]

再生品輸送

ロス焼却

解重合

未回収焼却

ボトル成型

樹脂製造

784g

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(b) システム拡大 この評価方法はシステム拡大によって、クローズド化するものである。実施対象とする

LCA の目的が、第2節で定義した①静脈系システムの評価、②静脈系技術の評価であるならば、システム境界の拡大を行うことにより割付けを回避することができる。このとき、

機能の設定のところで述べたごとく再生材の基準フローに関連する他の代替製品システム

を足し合わせていく手法(Basket法)、及び再生材使用に伴う他の製品システムの環境負荷変化分を差し引く手法(Avoided impact法)がある。

<PET ボトル開ループリサイクルの例:システム全体を評価>

PET ボトルと衣服の製造システムの場合について、リサイクルの有無の効果を具体的数値により求めて見よう。

図 2.5.6 PET ボトル再生ペレットより衣服を製造する製品システム 図 2.5.6 は使用済み PET ボトルからペレットを再生し、これを衣服製造の原料にリサイクルする製品システムを示す。この例では、再生材を使用する代替システムとして石

油素材から衣服を製造する機能を持つ製品システムを追加してシステム拡大を行ったもの

である。システム拡大によってクローズド化することができ、この拡大システムによって

リサイクルの有無での評価を行うことができる。拡大された製品システムでは、機能単位

は動脈系も含めて「PET ボトル 1kg による飲料保持機能を提供し、かつ 0.54kg の衣服を提供すること」となる。 本事例では、使用済み PETボトルの回収率 61%、フレーク状の PET樹脂からのペレット収率 80% と設定している。 一方、図 2.5.7 はリサイクルなしで PETボトルによる飲料サービスと衣服の製造を行うシステムを示す。

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET

906g-CO21,416g-CO2

基準フロー:0.61kg-PET原単位:312g-CO2/kg-PET

191g-CO21,173g-CO2

基準フロー:0.51kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

131g-CO2

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:267g-CO2/kg-PET

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,840g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

合計:15,283g-CO2

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図 2.5.7 PET ボトルと衣服を石油原料のみから製造する製品システム リサイクルプロセスの有無の効果を見るに、まずシステム全体で評価を行う。すると図

4.4.37全体では15,283g-CO2、図4.4.38全体では16,731g-CO2となり、その差は1,447g-CO2

と計算される。 <PET ボトル開ループリサイクルの例:変化のあるプロセスのみ評価>

図 2.5.6および図 2.5.7をよくみると、同じ数値になっているプロセスがいくつかある。そこで、リサイクルの有無によって変化のあるプロセスのみを評価対象にし、計算を実施

してみる。図 2.5.8にリサイクルをした場合、図 2.5.9にしない場合を示した。 図 2.5.8 PET ボトル再生ペレットより衣服を製造するシステム(変化プロセスのみ抜粋)

資源採掘 石油精製

焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET

2,292g-CO2

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

1,144g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,840g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

1,416g-CO2

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

906g-CO2

合計:16,731g-CO2

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

1,173g-CO2

基準フロー:0.51kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:267g-CO2/kg-PET

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

131g-CO2

基準フロー:0.61kg-PET原単位:312g-CO2/kg-PET

191g-CO2

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- 40 -

図 2.5.9 PET ボトルと衣服を石油原料から製造するシステム(変化プロセスのみ抜粋)

すると、リサイクルする場合は 1,989g-CO2、しない場合は 3,436g-CO2となり、その差

は 1,447g-CO2と計算された。 <PET ボトル開ループリサイクルの例:拡大プロセスの変化分のみ評価>

リサイクルの有無によって変化するプロセスのみを評価対象にするという基本的な考え

方は前述の事例と同様である。しかし、再生樹脂を提供された側のプロセスに対しては、

その変化分のみを評価する。図 2.5.10にリサイクルした場合、図 2.5.11にしない場合を示した。 その結果、リサイクルする場合は 845g-CO2、しない場合は 2,292g-CO2となり、その差

は 1,447g-CO2と計算された。 図 2.5.10 再生ペレットより衣服を製造するシステム(プロセスの変化分のみを評価)

資源採掘 石油精製

焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

2,292g-CO2

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

1,144g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

1,173g-CO2

基準フロー:0.51kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

131g-CO2

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:267g-CO2/kg-PET

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

-691g-CO2

基準フロー変化:-0.49kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PETシステム境界①

システム境界②

基準フロー:0.61kg-PET原単位:312g-CO2/kg-PET

191g-CO2

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- 41 -

図 2.5.11 製品を石油原料から製造するシステム(プロセスの変化分のみ評価) <PET ボトル開ループリサイクルの例:まとめ>

このように、3つの計算手法を示したが、リサイクルの効果はいずれも 1,447g-CO2と計

算された。しかし、図 2.5.12~図 2.5.14 に示すように結果をグラフで表示すると見た目の印象が異なる。図 2.5.12 ではシステム全体に対するリサイクルの効果を把握するのに適していると言えるが、逆にリサイクルの効果が見えにくくなる。それに対し図 2.5.13, 図2.5.14 は変化分がより明確になり、どのプロセスが改善に寄与したのかがよくわかる。また図 2.5.13 は上流側、下流側に関係なくその効果を把握するため、リサイクル技術の効果を表示するのに適していると言える。一方、図 2.5.14 は上流側の視点から評価しているため、場合によっては不確実性の伴う下流側の影響(再生材提供の効果)を明確に区別して

表示するという点で優れている。また、これらの図から明らかなように、リサイクルの効

果を前提となるシステム境界を示すことなく改善率(割合)で表示することは誤解を生む

可能性が高いため、推奨しない。

資源採掘 石油精製

焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

2,292g-CO2

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

0g-CO2

基準フロー変化:0.00kg-PET

原単位:1,612g-CO2/kg-PET

システム境界②

システム境界①

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図 2.5.12 システム全体の評価結果

図 2.5.13 変化プロセスのみの評価結果

図 2.5.14 拡大プロセスの変化のみの評価結果

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排

出量

[g]

焼却(ブラウス)

流通

製織・染色・縫製

繊維製造

ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

ボトル成型

ボトル用素材製造

1,447g

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排

出量

[g] ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

1,447g

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排出

量[g] ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

1,447g

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以上のようなシステム境界の拡大は、以下に示すようにパターン化ができる。図 2.5.15 に示すように、製品システム Aから回収された再生材が製品システム Bの原料として提供されている。

図 2.5.15 再生材を提供/利用する製品システムのシステム境界 この場合に、いずれか一方の製品システムの環境負荷を評価するには、以下のようにシ

ステム境界を拡大して評価する。 図 2.5.16は、再生材を提供した製品システム Aについて評価する場合である。システム境界 A(システム境界 A1、システム境界 A2及び再生処理より成る)の境界を、再生材を利

用した製品システム Bのシステム境界 B1(素材製造)を含むように拡大する。システム境

界Aに係わる入出力(再生に回った分だけ減少したシステム境界A2の環境負荷の低減量と、

再生処理での環境負荷の増加量)からシステム境界 B1に係わる入出力変化量を差し引いた

値を、製品システム Aの環境負荷とする。機能単位は“製品システム Aの機能”である。

図 2.5.16 システム境界拡大(再生材を提供する製品システム) 図 2.5.17 は、再生材を利用する製品システム Bについて評価する場合である。システム境界 B(システム境界 B1、システム境界 B2及び再生処理より成る)の境界を、再生材を提供

した製品システム Aのシステム境界 A2(適正処理 a)を含むように拡大する。システム境界 Bに係わる入出力(再生材と同等の素材が減少したとしたシステム境界 B1の環境負荷の

低減量と、再生処理での環境負荷の増加量)からシステム境界 A2に係わる入出力変化量を

差し引いた値を、製品システム Bの環境負荷とする。機能単位は“製品システム Bの機能”である。

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システム B

再生材を提供した製品システム A

システム境界A1システム境界A2

システム境界B1 システム境界B2

再生処理

拡大したシステム境界

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システム B

再生材を提供した製品システム A

システム境界A1システム境界A2

システム境界B1 システム境界B2

再生処理

拡大したシステム境界

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システム B

再生材を提供した製品システム A

システム境界A1システム境界A2

システム境界B1 システム境界B2

再生処理

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システム B

再生材を提供した製品システム A

システム境界A1システム境界A2

システム境界B1 システム境界B2

再生処理

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図 2.5.17 システム境界拡大(再生材を利用する製品システム) この場合、素材製造 b の減少、適正処理 a の減少の伴う環境負荷の削減量はすでに製品システム A で評価されているため、重複計算になることに留意する必要がある。具体例を以下の項で述べる。 (c) 割付け(assignment) 対象とする製品システムが、他の製品システムに再生材を提供する製品・システム、逆に

他の製品システムで生産される再生材を利用する製品・システムをそれぞれに評価したい

場合がある。この場合、再生処理があるときとないときの比較を行いたいときは、基本的

には上述のシステム拡大によって対応することができる。しかし、将来(もしくは過去)

のシステムを適切に評価できない場合、あるいはシステムの拡大によって意図する機能以

外が含まれることが好ましくない場合は、再生材の環境負荷を提供側と使用側に何らかの

手法で割付けする必要が生じる。

1) 割付けの必要性 PET ボトルの開ループリサイクルの事例を用いて、その必要性について考える。具体的には、PETボトル 1kgの利用、そして衣服 0.54kgの利用による CO2排出量をそれぞれ算

出したい。まず PETボトル利用によるものとして、PETボトルの原料製造から焼却、ペレット化、そしてペレット提供による PET樹脂節約分を評価した(図 2.5.18)。

図 2.5.18 PETボトル 1kg使用による CO2排出量の試算

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システム B

再生材を提供した製品システム A

システム境界A1システム境界A2

システム境界B1 システム境界B2

再生処理

拡大したシステム境界

素材製造a 製品組立a (使用a) 中間処理a 適正処理a 基本フロー基本フロー

素材製造b 製品組立b (使用b) 中間処理b 適正処理b 基本フロー基本フロー

再生材を利用した製品システム B

再生材を提供した製品システム A

システム境界A1システム境界A2

システム境界B1 システム境界B2

再生処理

拡大したシステム境界

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

131g-CO2

41g-CO2-691g-CO2

合計:3,167g-CO2

1,416g-CO2 1,173g-CO2

906g-CO2

191g-CO2

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次に、衣服使用による CO2排出量を計算するために、衣服原料製造から衣服焼却、ペレ

ット化、回収、フレーク化、そして PETボトル燃焼回避分を評価した(図 2.5.19)。

図 2.5.19 衣服 0.57kg使用による CO2排出量の試算 それぞれの CO2 排出量は妥当に計算されたとも言えるが、両製品・システムからの CO2

排出量は合計 13,837gとなる。これは、リサイクルした場合のシステム全体(図 2.5.6で算定:15,283g)よりも 1,447g 少ない。つまり、リサイクル効果を重複計算している。そのためシステム全体の合計値と整合性をとるにはリサイクル等の効果を何らかの基準を用い

て割付けしなければならない。(ただし、このような評価範囲で計算する考え方も“間違い”

というわけではない。後述する 100/0, 0/100の割付けがこれに該当する。) 2) 割付けが必要な具体例 <再生材を提供した製品システムの評価の例> あるパソコン1台の環境負荷を評価するため、製造、使用、廃棄段階のプロセスデータ

を取得した。また使用後に回収される電子基盤を非鉄精錬所でリサイクルするプロセスデ

ータも取得できたが、その工程で生産される金、銅等の地金は他の製品製造の原料となる。

他の製品製造をシステム境界に含めることも可能であるが、そうすると機能単位が「パソ

コン1台の使用および金○g、銅○g の製造」となってしまう。そのため、電子基板を非鉄精錬所に投入する前の段階でシステム境界外とするか、それとも非鉄精錬所のデータも考

慮し、節約されたであろう資源類の評価を組み入れるか議論がある。 <再生材を使用した製品システムの評価の例> 上記と同様、パソコンの評価事例にて、例えばパーツに再生樹脂を用いたことによるパ

ソコン1台に対する寄与を評価したいとする。再生樹脂は他の製品で使用済品となった後、

再生プロセスを経たものである。再生プロセスのデータを入手したとしても、さらにその

上流側である他の製品製造、使用等はパソコンにとっては無関係のプロセスとも言える。

しかし、再生樹脂を提供するため、もしかしたら上流側製品の回収・選別工程にて特殊な

操作を実施しているかもしれない。そのため、再生樹脂使用時において上流側のシステム

境界を含めるべきか、どうかについては様々な議論がある。

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

131g-CO2

41g-CO2

453g-CO22,182g-CO2

6,840g-CO2

99g-CO2

1,852g-CO2

-1,118g-CO2

合計:10,670g-CO2

191g-CO2

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他の例として、図 2.5.20 に示すように古紙を原料に用いたティッシュペーパーの評価を行いたい場合、古紙のライフサイクルを遡ると、すでに紙として機能を提供していたこと

がわかる。そのため、ティッシュペーパーだけの機能評価を行おうとしてもこの中に紙と

しての機能が入ってきてしまう。バージン紙とティッシュを含めた機能を評価するのであ

ればシステム境界を拡大すればよいが、ティッシュペーパーのみの機能を評価するには古

紙利用に伴う環境負荷変化分(回収・ベール化の環境負荷、古紙廃棄の環境負荷低減、素

材の低減)をどのように扱うか様々な手法がある。

図 2.5.20 古紙より製造するティシュペーパーの環境負荷の評価 <時間的にシステム境界の拡大が困難な例> 鉄鋼製品のシステムを例にとる。図 2.5.21 は鉄鋼製品システムを示し、使用済み製品から鉄スクラップが再生されるフローを示している。 しかし、鉄鋼製品が製造されてから鉄スクラップになるまでには、建築物や船舶のよう

に何十年も時間的なギャップが存在することがある。このような場合、将来(過去)のイ

ンベントリを別途収集することが望ましいが、現実的には困難なことが多いため、何らか

のシナリオを設定してシステムを評価することになる。具体的には、現在と同等のインベ

ントリと仮定するシナリオや、将来の技術発展を見越したシナリオ、そもそもカットオフ

してシステム境界外にするシナリオなどが考えられる。

図 2.5.21 鉄鋼製品のフロー

素材製造 紙製造 使用 廃棄

素材製造ティシュペーパー

製造使用 廃棄

回収・ベール化

素材製造 紙製造 使用 廃棄

素材製造ティシュペーパー

製造使用 廃棄

回収・ベール化

鉄鉱石採取 高炉 (使用) 解体・選別 廃棄

電炉 (使用) 解体・選別 廃棄

鉄スクラップ

・高炉鋼としてのシステム境界:開ループリサイクル

・電炉鋼としてのシステム境界:閉ループリサイクル

・鉄鋼製品のシステム境界:閉ループリサイクル

鉄鉱石採取 高炉 (使用) 解体・選別 廃棄

電炉 (使用) 解体・選別 廃棄

鉄スクラップ

・高炉鋼としてのシステム境界:開ループリサイクル

・電炉鋼としてのシステム境界:閉ループリサイクル

・鉄鋼製品のシステム境界:閉ループリサイクル

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3) 割付けの方法 割付け手法に絶対的に正しい手法はないため、LCA 実施者は各割付け手法の特徴を把握し、評価時には用いた割付け手法を明示することが必要である。そこで以下に手法を数

例挙げる。 ① 提供側、利用側のいずれかに (100/0)、(0/100) で割付ける方法1 これは、再生段階の環境負荷のすべてを提供側製品システムあるいは利用側製品システ

ムのいずれかに割付けるものである。例えば図 2.5.18に示した PETボトルの事例では、本来のシステム全体の効果を 100/0 で割付けている。なお、スクラップ類を原料に用いているバックグラウンドデータでは、スクラップ使用量を明記してある場合があるものの、そ

のスクラップ製造に要する環境負荷を評価範囲に含めていないことに留意しておく必要が

ある。 *特徴 計算が最も容易であり、また第三者もその割付け基準を理解しやすい。リサイクル等の

評価を主目的にしていない LCA では、このように単純に評価することが効率的であろう。しかし、もう一方のシステムの評価結果と合算する必要があるときには、リサイクル等の

効果を重複計算していないか、注意する必要がある。 <スウェーデン EPDの例> スウェーデンのタイプⅢ環境ラベルである EPD13)では、下記のように定めている。その

ため ISO14041 で例示されているシステム拡張によるアロケーション回避といった手順は採らない。 ・再生材を使用した場合 再生材製造は前の製品システムの一部だと考え、環境負荷はゼロで入力されたと考える。 ・再生材を提供した場合 再生材は次の製品システムの一部になったと考え、環境負荷はゼロとして評価する。 *特徴 再生材を製造する上流側、再生材を提供する下流側の影響を受けないため、対象製品シ

ステムのみの環境負荷を明確に把握することができる。しかし、再生材を外部に提供する

ために余分な環境負荷を出している場合でも、その貢献を数値としては評価されない。 <エコリーフの例> エコリーフ環境ラベル 14)では、直接影響分と間接影響分に分けて記述する(図 2.5.22)。 ・再生材を使用した場合

直接影響分:再生材の製造負荷(使用済製品を回収、破砕、選別、再生する等の各工

程を経て、再生材を生産するまでの環境負荷) 間接影響分:再生材が再生利用されなかった場合の廃棄工程の環境負荷

1 環境負荷をどちらに割り付けるかは、経済的基準を用いているケースが見受けられる。例えば一般的に逆有償で取引されているものであれば、「上流側製品システムの廃棄処理を削減した」と評価することがあ

る。有償であれば、それは自製品システムが購入しなくても他で有効利用されると考え、廃棄物処理削減

まで考慮しないことが多い。

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・再生材を提供した場合 間接影響分:「他製品が削減できる廃棄処分負荷」の控除分、「再生材の製造負荷」の

加算分、「他製品が削減できる素材や部品の製造負荷」の控除分。

図 2.5.22 エコリーフ環境ラベルにおけるリサイクル・リユース時の環境負荷計上方法 *特徴 再生材を提供した場合は一次資源を提供した効果、逆に再生材を用いた場合は廃棄物処

理を回避した効果を間接影響として評価される。これらは先述の EPDでは評価されないため、例えば処理困難な廃棄物を再生材として利用する効果も評価される。ただし上流側か

ら再生材(スクラップ等)を低環境負荷で入手する一方、下流側へ環境負荷の高い材(一

次地金等)を提供したとすると、大きな負の環境負荷(環境改善効果)があると計算され

る。データを読み取る側が正しく直接・間接影響の考え方を理解するとは限らないため、

結果の表示方法には注意を要する。 ② 提供側と利用側に (50/50) で割付ける方法 これは、①の中間の考え方で、素材製造、廃棄処理、再生段階等の環境負荷を提供側製

品システムと利用側製品システムに等分に配分するものである。 ③ 物理量により割付ける方法 再生段階の環境負荷を、再生段階に流入する使用済み製品の質量と、再生段階を出て行く再生材の質量との比で割付ける方法である。例えば、再生段階に 100 流入して再生材が 80 出て行く場合、提供側と利用側に 5:4 に割付ける。この考え方は、再生材にならなかった部分は提供側の適正処理の一部とするものである。 ④ 経済価値により割付ける方法 ④-1 使用済み製品を購入・再生材を販売する場合 再生段階の環境負荷を、使用済み製品の購入価格と、再生材の販売価格の比によって割

付けする方法である。例えば、使用済み製品の購入価格 80 に対して再生材の販売価格が 100 であったとすると、再生処理に伴う環境負荷を提供側と利用側に 4:5 に割付ける。この考え方は、再生材として価値分に見合う環境負荷を利用側の一部とするものである。 また、再生材の付加価値が 100 – 80 = 20 であるので、再生処理に伴う環境負荷を提供側と利用側に 4:1 に割付ける方法もある。この考え方は、再生材として付加価値が上昇し

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た分に見合う環境負荷を利用側が負担するものである。 ④-2 使用済み製品を逆有償で引き取り・再生材を販売する場合 使用済み製品を逆有償 80 で引き取った(-80で購入した)のに対して、再生材の販売価格が 100 であったとすると、再生処理に伴う環境負荷を提供側と利用側に 4:5 で割付ける。 また、付加価値が 100 – (-80) =180 であるので、提供側と利用側に 4:9 に割付ける考え方もある。 ⑤ その他の割付け法 その他種々の割付け方法が提案されており、付録として手引書末尾に示してある。いずれの方法によるにしても、動脈系 LCA における配分(allocation)と同様、報告書の中に明示することが求められる。

次に割付けの違いによる環境負荷評価の違いを、ふたたび再生 PET樹脂から衣服を製造する製品システムで具体的に見てみよう。

図 2.5.23 ペレット化を衣服製造システムに割付けた場合 (11,461 g-CO2) 図 2.5.24 ペレット化を PRTボトル製品システムに割付けた場合 (11,420 g-CO2)

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

(PET使用1kgを基準、60%再生ポリエステル使用衣服)

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,834g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

(PET使用1kgを基準、60%再生ポリエステル使用衣服)

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,834g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

(PET使用1kgを基準、60%再生ポリエステル使用衣服)

PET樹脂製造

PET樹脂製造

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,834g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

(PET使用1kgを基準、60%再生ポリエステル使用衣服)

PET樹脂製造

PET樹脂製造

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,834g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

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図 2.5.25 ペレット化及び PETボトル製品システムの焼却環境負荷低減を 衣服製品システムに割付けた場合 (10,336 g-CO2)

図 2.5.23 はペレット化処理の環境負荷を衣服製造システム(ペレットの利用側)に割付けた場合で、システムの環境負荷は 11,460 g-CO2 となる。図 2.5.24はペレットが環境負荷ゼロで入ってきたとした場合で、システムの環境負荷は 11,420 kg-CO2となる。さらに、

図 2.5.25 は PET ボトル製品システムにおける焼却環境負荷の削減量(4.5kg-CO2)まで衣服製造システムに割付けた場合で、システムの環境負荷は 10,336 kg-CO2 となる。 5.4 スクラップの扱い 鉄スクラップは高品位な鉄と同等に評価すれば過剰評価になるが、要求される強度さえ

満たせばよい、例えば建材用途であっても、鉄鉱石と同等として評価するのは過小評価で

ある。また、鉄スクラップといっても様々な品質の鉄スクラップがある。 スクラップ中の不純物は精錬工程である程度を除去可能であるが、例えば鉄鋼製品にと

っての銅のように分離困難な元素がある。銅が微量であれば鉄鋼製品の機能に影響を与え

ないが、リサイクルを繰り返すことで銅が蓄積され、機能に支障をきたすことが懸念され

ている。本手引書の評価では、このような分離困難な元素混入による長期的な影響までは

考慮していない。それらの評価方法の確立は今後の課題である。 5.5 非線形を含む場合 線形性を前提に用いた基準フローあたりの変化分のみを評価することで十分なのか、そ

れとも原単位の変化を組み込んだ評価が必要なのかを判断しなければならない。これは動

脈系においても同様の課題がある。つまり、多くのインベントリデータは例えば 1kg 当たりの入出力といったように原単位として構築されており、これと使用量との積で環境負荷

を算出するため線形性を前提にしている。しかし、量産に伴う効率の向上等があり、マク

ロに見れば線形性は成り立たない。既存のシステムを評価するなど、大きな変化を伴わな

い場合は通常のLCAと同様に線形性の前提条件の下で計算しても大きな間違いはないであろうが、重大な変化がある場合は成り立たない。 <例1> 従来は埋立処理されていた自社で生産するプラスチック(年 3 万トン)を完全にマテリ

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

(PET使用1kgを基準、60%再生ポリエステル使用衣服)

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,834g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

-1,125g-CO2

基準フロー:-0.49kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

(PET使用1kgを基準、60%再生ポリエステル使用衣服)

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,834g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

-1,125g-CO2

基準フロー:-0.49kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

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アルリサイクルした場合の評価を実施する。→マテリアルリサイクル時の環境負荷発生量

と、削減される素材製造、廃棄物処理の環境負荷を評価する。 <例2> 日本国内で排出されるプラスチックを全量リサイクルした場合の効果について仮想的に

考察する。→例1の環境負荷変化だけでなく、例えば一般廃棄物として焼却されていたプ

ラスチックが減少し、ごみ焼却施設で新たに助燃材が必要となるケースもあるため、その

影響も考慮する。 5.6 産業連関表を用いた分析 産業連関表は、一定期間(通常は 1年間)の財やサービスの取引を金額ベースでまとめたものである。これらを応用し、環境負荷を算定する手法が開発されてきたが、さらに静脈

部門の分析を強化したものとして廃棄物産業連関表(WIO)がある。廃棄物産業連関表については次章で解説するため、ここでは解説を割愛する。

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6.環境影響評価

LCI の結果に基づいて環境影響評価を行う。環境影響評価は製品・システムの潜在的な環境影響の大きさ、及び重要度を理解し、評価することを目的とする。即ち、インベントリ

データを特定の環境影響と関連付けてそれらの影響を理解することである。

特定の潜在的環境影響と関連付けるため、インベントリデータをそれぞれの影響領域

(impact category)に振り分けること(分類化:CO2 ならば地球温暖化など)、インベントリデータをモデル化することにより影響領域指標(impact category indicator)を計算すること(特性化:CH4 の CO2ならば GWP を計算)、さらに、影響領域内エンドポイント(地球温暖化ならば森林生産、農作物生産、熱ストレス等)を考え、影響領域指標との関連性

を明らかにする。以上が環境影響評価手法の概要である。実際には、LCA 実施者が自然科学、社会科学について深い知識を有しなくとも、環境影響評価手法には現在、第 1 期 LCAプロジェクトで開発された LIMEをはじめ、EPS法や Eco-indicator 99法があり、これを用いることによってインベントリデータより環境影響を評価することができる。手法によ

っては必要となるインベントリ項目が異なるため適用する影響評価手法を念頭においてイ

ンベントリ収集しなければならない。

その一例として、廃棄物の埋立について考えて見よう。 廃棄物に関しては、JIS Q14040 では、製品システムの境界からの出力であって処分されるものと定義されているが、静脈系では、廃棄物を処理したあと埋立あるいは焼却後の灰

の埋立をおこなって最終処分するまでをシステム境界とする。以下埋立の環境影響評価を

おこなう際の留意点について述べる。

< 埋立の評価> 最終処分段階における環境影響は①埋立作業に使用される機器の運用に伴う環境負荷、

②埋め立てた廃棄物から排出される環境負荷、③最終処分を行うために空間を占有するこ

とによる環境負荷(自然環境の一部を占有することにより失われる環境資源)が重要な項

目として挙げられる 15)。 ③についてはLIMEにおいて環境影響のモデル化が行われているため、詳細は省略する。①および②については原則としてインベントリを把握し、各影響領域において評価される

べきであろう。特に①は通常のプロセスと同様であるため、既にバックグラウンドデータ

が整備されている。 また②においても埋立物に含まれる有機物は分解され、CO2や CH4が発生する。その量

はインベントリとして(例えば地球温暖化という影響領域で)把握しなければならない。

しかし実際は CH4排出量を埋立処分場で測定することは困難であり、また時間的に何年先

まで把握すべきかという議論が残る。そのため例えば下記のようにモデルを設定し、イン

ベントリを把握する試みが実施されている。

(a) 自然無害化モデル 埋立廃棄物が経年変化で自然に無害化されるまでをモデル化し、その間に環境中に放出

する物質をインベントリとして把握・評価する。例えば簡易的には有機物中の炭素分の何%が CO2になり、また何%が CH4になるかをモデル化する手法がある。この数値は埋立処分

場が嫌気性か好気性かで変化するため、前提条件を設定してモデル化する必要がある。例

えば環境省のモデル 16)では、食物くず、紙くず又は繊維くず、木くずに対して下式を用い

て計算する。

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排出量(kg-CH4)=生物分解可能廃棄物埋立量(乾燥重量)[t]×排出係数[kg-CH4/t] ここで、生物分解可能廃棄物埋立量は乾燥重量が必要である。乾燥重量は固形分割合か

ら実測値を用いるが、それが入手できない場合は表 2.6.1の数値を用いる。また表 2.6.1に示すように CH4のみの排出係数を示している。これは CO2をカーボンニュートラルと考え

ているからである。

表 2.6.1 固形分割合と排出係数 廃棄物の種類 固形分割合 排出係数

食物くず 75% 142kg-CH4/t 紙くず又は繊維くず 78% 140kg-CH4/t

木くず 54% 140kg-CH4/t また ecoinventでは埋立後から 100年間の排出と 100年後から 6万年後の排出を分けて算出するモデルを用いている 17)。ちなみに 6 万年後までとした理由は、次の氷河期がきてスイスが氷に覆われると予測されるのが 6万年後だからである。

(b) 潜在的影響評価モデル 本モデルは廃棄物が発生させるであろう環境負荷を強制的に無害化するプロセスを適用

させ、それによって発生する環境負荷を評価する。第 1期 LCAプロジェクトにて溶融飛灰から Pb, Znなどの重金属を湿式法で抽出して金属精錬所等に送り込み元素として安定化させる方法が提案された。

(c) 廃棄物発生量に基づく評価 廃棄物発生量を影響領域として設定したり、もしくは他の影響領域に適用できるよう特

性化係数を設定したりするインパクトモデルがある。例えば JEPIXでは廃棄物排出量を用いて 2010 年度目標値と 1999 年実績値の比から統合化係数を作成している。一方、LIMEも同様に廃棄物発生量に対して統合化係数、被害係数を作成しているが、これは埋立処分

場建設による土地利用改変の影響だけを含めているため、廃棄物そのものから発生するガ

スや浸出水等の環境負荷は前述のようなモデルを設定し、別途インベントリとして把握・

評価する必要がある。 いずれの手法によっても、対象システムによっては当該プロセスが結果に著しい影響を

及ぼすことがあるため、感度分析を行い確認することが望ましい。

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7.解釈

ライフサイクル解釈は LCA または LCI 調査の知見に基づいて結果を分析し、結論を導き、限界を説明し、提言をおこなうことを目的とする。その構成要素は、LCI段階及び LCIA段階の結果より重要な項目を特定すること、完全性、感度、整合性を考慮した評価をおこ

なうこと、及び結論、提言、報告をおこなうことである。 7.1 重要な項目の特定 ここでの目的は、重要な項目を特定するために、調査目的及び調査範囲で設定したとこ

ろに従い LCI 及び LCIA の結果を体系化してまとめること(ISO 14043)である。これによって、LCA の結論を導くことができる。体系化の方法としては、様々な方法があるが、そのひとつとして個々のライフサイクル段階に分ける方法がある。例えば、材料の生産、製

品の製造、使用、リサイクル、廃棄物処理の各段階に分けこれらを「列」に、電力、CO2 などの入出力項目を「行」に入れた表にまとめる方法である。さらに、入出力項目ごとに、

各段階の入出力値を百分率で表し ”寄与度分析” をおこなう。寄与度分析により ”重要度分析” を行い、重要な寄与を調査する。これらの体系化はまた、配分方式、カットオフ、インパクトカテゴリ等々といった前提条件及び手法とのかかわりを含む。例えば、配分方式が

質量による配分か経済価値による配分かの違い、あるいはインパクトカテゴリを何に取る

かによって体系化された数値が変化し重要な項目が変わることがあり得る。 静脈系の特徴として、リサイクル段階で再生材回収効果の評価などでは、往々にして負

の環境負荷が発生することがある。それら負の効果も結果に影響を及ぼすため着目しなけ

ればならない。このとき、結果の表示方法として正の環境負荷と負の環境負荷を足し合わ

せてしまうと、重要な項目を見落とす恐れがあるため、ライフサイクル段階ごとに別々に

表示して体系化することが望ましい。表 2.7.1は PETボトル 1kg を飲料容器として使用し、リサイクル材を衣服(0.57kg)製造用の原料として使用する開ループリサイクルの例での環境負荷を示す。回収材が衣服製造用の代替原料となるまでをシステム境界としており、

その節約分に相当する負の環境負荷が発生している例である。

表 2.7.1 PETボトル 1kg 使用時の環境負荷 (g-CO2)

原料製造 加工 流通・使用 回収 フレーク化 焼却

1 kgペレット化

再資源化

原料製造

191 131 1,173

衣服製造

PETボトル使用

1,416 906

41

-691

7.2 評価 7.2.1 完全性検討 解釈をおこなう上で不足プロセス、不足データがないかを確認する。不足データがある

場合はそれが LCA の目的及び調査範囲を満たすのに必要かどうかを検討しなくてはならない。例えば、静脈系では回収物を海外へ輸出しているケースでは、それらのデータが不

足することがある。バーゼル条約があるため、例外を除き輸出されるものは廃棄物ではな

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いため、積出港からの環境負荷をカットオフするという考え方も成り立つし、また逆に、

国内処理技術と同等と考えてインベントリを積算することも場合によっては妥当であろう。

このように、データの不足があっても LCAの目的及び調査範囲に照らして不要と思われるときはその理由を記し、逆に重要な項目を決定するのに必要と考えられる場合はインベン

トリを見直すことによって解釈に利用できることを確認しておくことが完全性検討を行う

趣旨である。 7.2.2 感度点検 感度点検では、LCA 結果から結論を導く前にその数値の妥当性について、前提条件、手法、データの変動が結果に及ぼす影響の面から検討する。前提条件、手法、データの例と

しては、配分基準、カットオフ基準、インパクト指標、データ品質等がありこれらに対し

て感度分析をおこなうのが有効である。感度分析には、① 限界分析、②確率分析、③What-if分析等がある。これらの結果はデータ精度を向上すべき点を明らかにするだけでなく、環

境負荷低減に重要な点も明らかにするため、報告書には前提条件、手法、データの変動に

よる結果の変動の程度をグラフあるいは表等で示すとわかりやすい。 ① 限界分析 限界分析では、各変数を微小量(例えば 10%) 変化させた時の LCAを再計算し、LCA結果全体に対する変化率を計算する。そして感度の大きな順にデータを並べると、重要な

データが明らかになるため、データ精度の見直しが必要かどうか検討できる。また十分な

精度が得られているならば、環境負荷の改善/悪化に重要な変数を明確にできる。 ② 確率分析 変数はそれぞれ変動する幅、確率が異なる。そこで確率分析ではそれら変数がとりうる

値を確率密度分布で表し、結果に与える影響を分析する。モンテカルロ法を用いた分析が

代表的である。一律に各要素に変化を与える限界分析よりも明確に重要な変数を特定する

ことができるが、一般的なバックグラウンドデータは標準偏差等の情報が不足しているた

め、LCA実施者がそれら情報を収集しなければならない。 ③ What-if分析 What-if分析では LCA実施者が基準としてモデル化した数値に対し、変数の他の値における結果を算出する。どのような数値を変数に与えるかは任意性が高いが、簡易に変数が

とりうる幅を考慮した分析が可能である。例えば当該変数の最大値/最小値を与えると、その変数に起因する環境負荷低減/増加のポテンシャルを把握することができる。

感度分析の例を、PETボトルの閉ループリサイクルについて次ページ以降に示す。

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0

1

2

3

4

5

6

40% 60% 80% 100%

解重合プロセス収率

CO

2排出

量[kg-

CO

2]

再生品輸送

ロス焼却

解重合

未回収焼却

樹脂製造

ボトル成型

ボトル成型

樹脂製造

未回収焼却

解重合

ロス焼却

本シナリオで用いた収率

<PETボトル閉ループリサイクルの感度分析> 計算に用いた各工程の CO2排出原単位、回収率、解重合プロセスの収率を変数とし、そ

れらの感度分析を実施した。まず限界分析として各変数を一定割合(ここでは 10%)変化させることによる全体への影響率を算定した。次にモンテカルロ法を用いて確率分析を実

施した。しかしモンテカルロ法による分析に必要な確率密度分布の情報が不足しているた

め、ここでは±10%の一様分布と仮定して実施した。その結果(図 2.7.1)、解重合プロセスの収率が最も感度が高く、次に解重合工程の原単位となった。一方、ベール化工程の感度

は低かった。またモンテカルロ法においても簡易的な確率密度分布を与えたため、各要素

を一定割合変化させる限界分析とほぼ同様の分析結果となった。

図 2.7.1 感度分析結果(限界分析・確率分析)

次に、What-if 分析を実施した。最も重要な変数である収率変化の影響を把握するため、

40%から 100%まで変化させた場合について計算した(図 2.7.2)。その結果、仮に収率が 40%になるとシステム全体での CO2排出量は 5.2kg になる。これは当初計算した 4.0kg より 3割も多いだけでなく、リサイクルしないケース(4.8kg)よりも多い。一方、基準とした収率(93%)を最大(100%)にすると、0.1kg の削減効果があると計算される。そのため収率は十分な精度をもってデータ収集することが重要である。また、仮に十分な精度がある

ならば、収率向上による CO2削減ポテンシャルは 0.1kgであるといえよう。

図 2.7.2 解重合プロセス収率の感度分析

0% 10% 20% 30% 40% 50%

ベール化工程

輸送(原料→成型)

燃焼(工程ロス)

再生PET輸送工程

PETボトル回収工程

PET製造工程

PETボトル回収率

燃焼(未回収品)

PETボトル成型工程

解重合工程

解重合収率

寄与率

限界分析

確率分析

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7.2.3 整合性点検 静脈系 LCA では、異なる製品・システムが再生プロセスによって結合されている場合を取り扱うことが多い。その場合、データの出典、データの精度、データを取得した技術、

時間、地理的な差に基づくデータの差など動脈系においても考慮しなければいけない一般

的な整合性点検項目に加え、静脈系では例えば、再生プロセスを導入した製品・システムと

導入しない製品・システム間で比較を行うことが考えられ、その際に異なる製品・システム

の間で使用するデータ品質に差がないか、システム境界は一貫しているか、あるいはシス

テム境界外で利用した再生材の環境負荷割付けを、素材間で異なっていないか等を点検す

る。もしこれらに差異がある場合には、そのいくつかは設定した目的及び調査範囲に照ら

して許容できる場合もあるし、重要な相違がある場合は、結論を出し提言を行う前にデー

タを見直したり、割付け手法を同じに修正する必要がある。

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8.分析結果の開示

8.1 ISO要求事項 ISO/JIS Q 14040sに則るのであれば、規格に定められた事項を開示することが前提となる。しかし、規格に適合するよう開示内容を整えている事例は少ない。ISO に則らなければ LCA 結果を開示できないわけではないが、より説得力のある LCA の活用をするには、透明性、再現性を高めるために ISO要求事項、推奨事項の開示が望まれる。 9.インベントリデータの開示

9.1 秘密情報の扱い LCI データからは生産工程等における重要なノウハウや、場合によっては原価を推測することもできる。しかし、そもそも LCIデータの開示目的は LCAを実施すためのバックグラウンドデータ提供であるため、その目的を損なわない範囲でデータの加工をする。 9.2 データ提供の方法 バックグラウンドデータとしてインベントリデータを公開する際にはデータ有効範囲を

明示することが LCA実施者にとって有効である。例えば、入力物質の品質、禁忌品の有無、ゼロデータと未測定データの違い、サブシステムの範囲、最大年間処理可能量などである。 10. まとめ

本手引書において、リユース・リサイクルを含む静脈系技術の LCA及び LCIAを実施する際の指針となる汎用的な評価手法を提示した。しかし、LCA は目的オリエンテッドな手法とも言われるように、目的に応じた調査範囲、手法を選択する必要がある。本手引書で

示した手法・考え方を基本として、LCA の実施目的に応じて効率的に実施し、かつ読み手に誤解のないよう適用した手法・データが公開されることが望まれる。

引用文献 1) LCA 日 本 フ ォ ー ラ ム 「 JLCA-LCA デ ー タ ベ ー ス 」 2004 年 第 4 版

http://www.jemai.or.jp/lcaforum/ 2) (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO):http://www.nedo.go.jp/ 3) (独)国立環境研究所:産業連関表による環境負荷原単位データブック

-http://www-cger.nies.go.jp/publication/D031/index.html 4) 経済産業省「繊維製品(衣料品)のLCA調査報告書」,

http://www.meti.go.jp/report/data/g40218aj.html 5) 松藤敏彦:都市ごみ処理システムの分析・計画・評価-マテリアルフロー・LCA評価

プログラム,技報堂出版(2005) 6) 例えば、プラスチック廃棄物の処理・処分に関する LCA調査研究報告書、プラスチ

ック処理促進協会(2001) 7) 例えば、塩化ビニル樹脂製品のリサイクル・処理処分の LCI調査報告書,塩ビ工業・

環境協会(2001) 8) PETボトルのインベントリ分析報告書, PETボトル協議会, (2005) 9) 紙のリサイクルに係る環境負荷データの収集およびライフサイクルアセスメントに

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係る調査報告書,古紙再生促進センター(2005) 10) 日本アルミニウム協会ホームページ<http://www.aluminum.or.jp/>平成 17年 12月

11日閲覧 11) M.Ishikawa, “A Logistics Model for post-Consumer Waste Recycling” J.Pack.Sci.

Technol., Vol.5 No.2(1996) 12) 東京市町村自治調査会:LCA とコストからみる市町村廃棄物処理の現状~廃棄・リ

サイクルシステムの改善に向けて~(2003) 13) Swedish Environmental Council, PSR Guide, version 3.(2005) 14) 産業環境管理協会「エコリーフのリサイクル・リユース時の製品環境負荷の計上方法」

(2004) 15) 和田安彦、三浦浩之、中野加都子「LCAにおけるリサイクルと廃棄物処理・処分の評

価手法とその適用」土木学会論文集 II 巻、539/II-35号、P.155-165(1996) 16) 環境省「平成14年度 温室効果ガス排出量算定方法検討会」,

http://www.env.go.jp/earth/ondanka/santeiho/kento/h1408/index.html, (2006-3-13閲覧)

17) Gabor Doka and Roland Hischier, “Waste Treatment and Assessment of Long-Term Emissions”, Int. J. LCA, 10(1), 77-84(2005)

<参考書籍> ○ LCAの実務(監修:稲葉敦)2005年 本書は、1998年発行の「LCA実務入門」を全面的に見直し、LCAシリーズ:「( I )LCA入門」、「( II )LCAの実務」の 2分冊のうち、シリーズ( II )「LCAの実務」として発行されている。産業技術総合研究所・企業の研究者・実務者が執筆しており、企

業における LCA実践例が豊富にある。 ○ ライフサイクル環境影響評価手法:LIME―LCA,環境会計,環境効率のための評価手法・データベース(編著:伊坪徳宏、稲葉敦)

LCAプロジェクトの成果である、産業技術総合研究所LCA研究センターが中心となって開発した LIME(Life-cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)(日本版被害算定型影響評価手法)手法論の詳細解説書である。静脈系部分の扱いを含めて環

境影響評価手法を知るために有用である。 ○ 都市ごみ処理システムの分析・計画・評価 マテリアルフロー・LCA評価プログラム(松藤敏彦)

廃棄物分野に LCAを応用し、Integrated Waste Management(総合的廃棄物処理)の考え方、必要性について概説している。また付属の LCA評価プログラムでは廃棄物処理、再資源化にかかる各種プロセスのデータも含まれており、有用である。

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- 60 -

<静脈系 LCA 実施の流れ>

手順 頁 説明 1.LCAの目的と調査範囲の設定 p.5 LCA を実施する目的と調査範囲を明確化す

る。 (1)目的の設定 p.5 LCAの実施目的を設定する。 (2)システム境界の設定 p.8 目的に応じたシステム境界を設定する。(詳

細な考え方は p.31から記述) (3)機能の設定 p.20 システム境界内で得られる機能を定義する。

必要に応じ、システム境界を再設定する。 2.インベントリ分析 p.23 システム境界に対する環境負荷物質の入出

力データを積算する。原則としてフォアグラ

ウンドデータを取得し、不足箇所をバックグ

ラウンドデータで補完する。 (1)カットオフルール設定 p.24 LCA の目的に応じた必要データの品質を決

める。 (2)単位プロセス設定 p.25 通常はデータの取得できる最小単位を単位

プロセスとするが、必要に応じて細分化を行

う。 ・マルチインプットの扱い p.26 評価対象外の入出力が外乱要因としてある

プロセスのデータを整理する。 (3)バックグラウンドデータ p.27 一般的なデータとして各種データベースに

あるバックグラウンドデータを活用する。 (4)データの推計 p.30 不足データを推計値で補完する。 (5)システム境界の再確認 p.31 当初設定したシステム境界を見直す。特に再

生材の他システムとの入出力の扱いを整理

する。 ・代替システムの設定 p.31 再生材と同等の製品システムを設定する。 ・閉ループリサイクル p.32 製品システムを拡張し、全体を評価する。 ・開ループリサイクル p.34 製品システムを複数に分離し、一部を評価す

る。 (6)データの単位プロセスへの関連づけ

p.35 システム内の基準フローに応じて環境負荷

を計算する。 (7)データの集約 p.38 システム全体の環境負荷を積算する。 3.環境影響評価 ・基本的な考え方 p.49 インベントリ結果によって考えられる環境

への(潜在的)影響を評価する。 ・埋立の評価 p.49 最終処分となる埋立廃棄物を評価する。 4.結果の解釈 結果を適切に解釈するために、導かれる結論

の妥当性を確認する。 (1)重要な項目の特定 p.51 環境影響の大きいプロセスや、リサイクルの

効果を把握する。 (2)完全性検討 p.51 評価プロセスの網羅性を確認する。 (3)感度点検 p.52 利用データの変動が結果に及ぼす影響を確

認する。 (4)整合性点検 p.54 利用データに一貫性があるかを確認する。 5. その他 ・分析結果の開示 p.55 情報開示の基本ルールに則り、結果を示す。

・インベントリデータの開示 p.55 誤解がないようデータを開示する。

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<本手引書で用いた静脈系 LCA 用語集>

用語

手引書

参照

ページ

解説

静脈系 p.1~ 製品システムにおいて、使用済品の中間処理*、再生処理*、

適正処理*に係わる単位プロセスあるいは技術の総称。(* 後

出)

リサイクル p.1~

使用済品から再生資源を回収し、その製品システムあるいは

他の製品システムの原料として再利用すること。自製品システ

ムの原料とする閉ループリサイクル、他の製品システムの原料

とする開ループリサイクルがある。

リユース p.1~ 循環資源を製品としてそのまま使用すること(修理を行って

使用することを含む)あるいは、循環資源の全部又は一部を部

品その他製品の一部として使用すること (循環型社会形成推

進基本法第2条5)。

本手引書では、使用済品を元の製品として再利用する、また

は分解等のプロセスを経て元の製品の部品として再利用する

(これを再生部品という)ことを言う。例えば分解のし易い設

計が行われた製品のリユースなど。

リデュース 省資源化や長寿命化といった取り組みを通じて製品の製造、

流通、使用に係る資源利用効率を高め、廃棄物とならざるを得

ない形での資源の利用を極力少なくすることをいう(循環経済

ビジョン:経産省 地球環境部会)。

静脈系機能 p.2~ 使用済品にリユース品あるいは再生資源としての新たな機

能を持たせる機能、あるいは使用済品を新たな環境負荷が生じ

ないように適正に処理する機能。

廃棄物産業連関

分析

p.2~ 分別・破砕、焼却、埋立の廃棄物処理部門を加えた廃棄物産

業連関表を用いる分析法。リサイクルの効果の計算が積み上げ

法より広範である点に特徴。

製品システム p.2~ 1つまたはそれ以上の定義された機能を果たす、物質的及び

エネルギー的に結合された単位プロセスの集合体(JIS Q14040)。 静脈系 LCA では、単位プロセスが再生材のような中間製品

によって結合された集合体を含む。 再資源化 p.3~ 再生処理プロセスにより、使用済品のうち有用なものの全部

または一部を、再生資源または再生部品として利用することが

できる状態にすること。

再生資源 使用済品または副産物のうち有用なものであって、原材料と

して利用することができるもの、またはその可能性のあるもの

をいう(資源有効利用促進法第 2条 4)。

再生部品 使用済み物品等のうち有用なものであって、部品その他製品

の一部として利用することができるものまたはその可能性の

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あるものをいう(資源有効利用促進法第 2条 5)。

システム境界 p.4~ LCI分析の対象とする製品システムの境界をいう。ある製品システムと環境の境界、あるいはある製品システムと他の製品

システムの境界等 (JIS Q14040)。 静脈系 LCAでは、再生プロセスで結合された2つの製品システムの間で、システム境界の拡大がなされる。

再生材 p.5~ 再資源化によって再生資源あるいは再生部品として回収さ

れた材をいう。

静脈系

単位プロセス

p.5,

p.8

静脈系を構成する単位プロセスであり、使用済品を再資源化

するための中間処理、再生処理、適正処理などを行う各プロセ

スをいう。

静脈系技術

p.5,

p.10

静脈系単位プロセスが物質・エネルギーのフローにより連結

したもの、これによって静脈系機能を実現することのできる技

術をいう。

静脈系システム p.6,

p.14

2つ以上の静脈系技術が組み合わさったものをいう。例え

ば、使用済ペットボトルから繊維を回収する静脈系技術と、ペ

ットボトルを燃焼して蒸気を回収する静脈系技術の組合せな

ど。

割付け p.6~ 静脈系 LCAにおいて定義した概念であり、2つの異なる製品システムが再生材回収プロセスで結合されているとき、再生

材回収に伴う環境負荷の増減を、定めた方法で両製品システム

に振り分けること。

中間処理 p.8~ 発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程の中

途において産業廃棄物を処分すること(廃棄物処理法 第12

条3)。

本手引書では、上記に加え使用済品を、再生処理に回る部分

を多くするため、あるいは再生処理を行い易くするために行う

処理。例えば、選別、分解、破砕など。

再生処理 p.8 中間処理に含められることが多いが、本手引書では特に、上

記の中間処理から排出される物品から、自製品システムや他製

品システムの原材料として利用可能な材料を再生することを

いう。

適正処理 p.8 廃棄物として発生するものについて、減量化を図るとともに、

処理に伴う環境負荷物質の排出の極小化を図ること(循環経済

ビジョン:経産省 地球環境部会)。

本手引書では、リユースや再生処理に回らなかった使用済品

を、そこから新たな環境負荷が生じないように最終処理するこ

とを言う。例えば埋立が相当するが、静脈 LCA で評価する場合はその際の灰処理、水処理の部分も含める。

機能の基準化 p.20 ~

p.22

異なる製品システム間の環境負荷を比較する場合、双方の機

能単位が同一になるようにシステム拡大を行い、相手の製品シ

ステムにない機能を付加したり、余分にある機能を控除するこ

とによって両製品システム間の機能単位を同じくする操作。

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代替システム p.21~

異なる2つの製品システムの環境負荷を比較する場合、シス

テム拡大により両製品システムの機能を同一にするために加

える(あるいは控除する)等価な代替システム。(‘機能の設定’

の項参照)

Avoided impact 法

p.21,

p.35

異なる2つの製品システムを比較する際の機能の基準化方

法のひとつ。

静脈系 LCAでは、ある製品システム A(再生プロセスを含む)からの再生材を他の製品システム Bの原材料として使用する場合、製品システム A の環境負荷増減量から製品システムBの原材料製造量の削減に伴う環境負荷の低減量を‘控除’する方法。機能単位は、「製品システム Aの機能」として評価される。

Basket 法 p.22,

p.35

異なる2つの製品システムを比較する際の機能の基準化方

法のひとつ。

静脈系 LCAでは、ある製品システム A(再生プロセスを含む)からの再生材を他の製品システム Bの原材料として使用する場合、製品システム A の環境負荷増減量に製品システム Bの原材料製造(再生材利用により低減されている)に伴う環境

負荷を‘付加’する方法。機能単位は、「製品システム Aの機能+製品システム Bの原材料製造機能」として評価される。

基準フロー p.24~ ある製品システムにおいて、選定した機能単位で表される機

能を満たすのに必要な与えられた製品システム内のプロセス

からの出力の定量的尺度 (JIS Q14040)。 静脈系 LCA では、例えば、使用済ペットボトルを処理する

という機能の場合、処理する使用済ペットボトル 1kg を基準

フローにとるなど。

LCI分析 p.31 ライフサイクルインベントリ分析。対象とする製品システム

に対するライフサイクル全体を通しての入力・出力のまとめ並

びに定量化する計算をおこなうこと(JIS Q 14040)。 静脈系 LCA では、再生プロセスで結合された2つ以上の異

なる製品プロセスでの、入力・出力の定量化を含む。

基本フロー P.31 調査対象のシステムに入る物質又はエネルギーで事前に人

為的な変化を加えずに環境から取り込まれたもの、及びシステ

ムから出る物質及びエネルギーで、事後に人為的な変化を加え

ずに環境へ排出されるものをいう (JIS Q14040)。 静脈系 LCA では例えば、製品素材製造用の資源の形でシス

テムに入るもの、適正処理のあとに例えば被害のない排水とし

てシステムを出るものなど。

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機能単位 p.31~ 製品システムが提供する機能を定量的に表したもの。これに

よって、製品システムへの入力・出力データを機能単位当りで

表す基準を与える (JIS Q14040)。 静脈系では、例えば、飲料 10,000ml を提供したペットボト

ルの処分など。特に静脈系 LCA では、リサイクルの効果を評価するのにシステム境界の拡大が行われることが多く、再生材

の利用先の製品システムまでの機能を含めた機能単位とする

場合が多い。

回収率 p.32~ 使用済品のうち、焼却・埋立に回らないで再資源化されるも

のの割合。

収率 p.33~ 再資源化に回ったもののうち、再生資源として利用可能にな

ったものの割合。

解説の項で、引用の記載のない部分は静脈系 LCAを実施するうえで理解し易いように、本手引書のために解説したものである。このような用語は業界によって意味が異なることも

多いため、詳細な定義は下記参考文献をご覧頂きたい。

・ NEDO 委託/産業環境管理協会「環境用語に関する標準化調査研究成果報告書」(2005)

・ NEDO 委託/産業環境管理協会「環境 JIS・環境用語標準化調査研究成果報告書」(2006)

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第 3章 廃棄物産業連関を用いた分析 1. 産業連関表に沿った投入・産出構造の整理と分析モデル 廃棄物産業連関(waste input-output, WIO)による LCA手法(WIO-LCA)について述

べる(Nakamura, 1999; 中村 , 2000; Nakamura and Kondo, 2002)。産業連関分析(input-output analysis, IOA)の LCA への応用は,広く知られるところである(森口, 2006)。その特徴としては,一国経済をシステム境界としており境界が広くかつ明確であること,金額フローを表す産業連関表データを用いること,などを挙げることができる。基

礎データとして産業連関表を用いることが重要な特徴であるが,分析モデルの数学的側面

については,行列代数を用いたプロセス法(マトリックス法)と酷似している(Heijungs and Suh, 2002)。WIOの特徴は,従来の IOAでは考慮が困難であった廃棄過程の分析を容易にしたことにある(布施・鹿島・八木田, 2006; 高瀬・近藤・鷲津, 2006)。最近の EUにおける EIPROプロジェクト(Tucker等,2005)は,製品の消費による(ライフサイクルにおける)廃棄物処理サービスの投入を考慮しているが,WIO とは異なる方法であり,廃棄物等のフローは明示的に考慮されていない。 上述のように,IOA とマトリックス法のモデルの数学的側面が酷似していることから,伝統的な IOAと対比しながらWIO-LCAについて述べるためには,むしろ,IOAよりもマトリックス法に近いかたちの方が,その本質が分かりやすいと考えられる。以下では,産

業部門数がたかだか 5程度の仮想例(機能単位を,エアコン 1台の T年間使用とする)を用いて,WIO-LCAのために投入・産出構造を整理する方法と,数学的な分析モデルとの対応について述べる。

1.1 廃棄物と廃棄物処理が 1対 1対応している場合 まず,廃棄物と廃棄物処理を含む最も簡単な場合として,使用済エアコンのみが唯一の

廃棄物であり,その唯一の処分方法が埋立であるとしよう。表 3.1.1は,この場合に対応した 4部門についての投入係数行列 Aの例示である。

表 3.1.1 廃棄物と処理が 1対 1対応している場合の投入係数

製品(kg) 電力(kWh) 素材(kg) 埋立(kg)製品(kg) 0 0 0 0電力(kWh) a 21+b 21T 0 a 23 a 24

素材(kg) a 31 a 32 0 0埋立(kg) 1 0 0 0

表 3.1.1の右端の 2列は,1kgの使用済製品を埋立するのに a24 kWhの電力を投入し,

1kgの素材を製造するのに a23 kWhの電力を投入することをあらわす。同様にして,1kWhの電力を発電するのに素材を a32 kg 投入する。各種の投入量は正値で計上され,表 4.4.5には無いが副産物の生産があれば生産量は負値で計上される。従来のプロセス法(マトリ

ックス法)では投入量が負値,生産量が正値で計上されるから,表 3.1.1の投入係数行列では符号が逆になっている。また,生産物のうち副産物が負値で計上されるのに対して,各

部門の主生産物の生産量が計上されていない点についても,マトリックス法と異なること

に注意していただきたい。第 1列(部門 1)には,製品の製造,使用,廃棄の各段階が含まれる。ただし,エアコン(部門 1 の製品)が T 年間使用された後に廃棄,埋立されるものとし,使用段階での年あたり電力使用量を b21 kWh,製造段階での製品 1台(1kg)あたり

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の電力投入を a21 kWhとしている。第 1列(部門 1)における 41 1a = は,製品 1台(1kg)

の廃棄段階で使用済製品が「排出」されることをあらわすと同時に,この排出に伴って 1kg分の(使用済製品の)埋立を要する(埋立サービスが「投入」される)ことをあらわす。

この場合,廃棄物と廃棄物処理(埋立)とのあいだに 1 対 1 の対応関係があるため,従来の産業連関分析の枠組みをそのまま用いることができる。実際,これが Leontief-Duchinにおいて用いられている方法である(Leontief, 1970; Duchin, 1990)。 第 j 部門の活動 1 単位あたりの環境負荷(CO2等)発生原単位行列(この場合,部門 1の活動には使用も含まれる)rjを並べた行ベクトルを R とすれば,部門 1 の製品 1 台のライフサイクルを通じた全システムにおける生産活動 x及び負荷 eは以下で与えられる:

1 1( ) , ( )x I A f e R I A f− −= − = −

ここで,Iは単位行列であり,fは機能単位をあらわす最終需要ベクトル, 10 ,00

f⎛ ⎞⎜ ⎟= ⎜ ⎟⎜ ⎟⎝ ⎠

である。なお,上の計算式を要素ごとに書き下すと,

( )

11

21 21 23 242

3 31 32

41

21 21 23 24

31 32

211 2 3 4

0 0 0 01 0 0 0 100 1 0 0 0

0 0 1 0 0 0 00 0 0 1 01 0 0 0

1 0 0 0 1( ) 1 0 ,1 0 0

01 0 0 11 0 0 0

(

xa b T a ax

x a ax

a b T a aa a

ae r r r r

⎛ ⎞⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟+⎜ ⎟ ⎜ ⎟= −⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟⎝ ⎠ ⎝ ⎠⎝ ⎠⎝ ⎠ ⎝ ⎠⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎜ ⎟− + − − ⎜ ⎟= ⎜ ⎟ ⎜ ⎟− − ⎜ ⎟⎜ ⎟− ⎝ ⎠⎝ ⎠

− +=

1

21 23 24

31 32

1) 1 0 ,1 0 0

01 0 0 1

b T a aa a

−⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎜ ⎟− − ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟− − ⎜ ⎟⎜ ⎟− ⎝ ⎠⎝ ⎠

となる。なお,上の式で逆転される括弧内の表現,

21 21 23 24

31 32

1 0 0 0( ) 1 ,1 0

1 0 0 1

a b T a aa a

⎛ ⎞⎜ ⎟− + − −⎜ ⎟− −⎜ ⎟−⎝ ⎠

は表 3.1.1の要素を負値にして対角要素に 1を加えた物である。これは,プロセス法(マトリックス法)において,入力を負値,出力を正値としてプロセスを表したものと同じであ

る。 1.2 固定された割合でのリサイクルがなされる場合 次に,使用済製品が全量埋立されるのではなく,その一部,例えば 30%(300g)が素材としてリサイクルされる場合を考える(表 3.1.2)。回収素材は再び製品に投入されるから,これは閉鎖系リサイクルである。リサイクルによって製品製造における素材投入量を削減

できることを,素材投入 a31 kgからリサイクル分 0.3kgを差し引くことで表している。こ

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の表記法は,従来,産業連関表における副産物表記方法として用いられてきた「マイナス

投入方式」,または LCAにおける「副産物控除法」に他ならない。 表 3.1.2 リサイクルされる割合が固定的な閉鎖系リサイクルの場合の投入係数

製品(kg) 電力(kWh) 素材(kg) 埋立(kg)製品(kg) 0 0 0 0電力(kWh) a 21+b 21T+c 21 0 a 23 a 24

素材(kg) a 31−0.3 a 32 0 0埋立(kg) 0.7 0 0 0

製品部門が廃棄物処理の一部(使用済製品の再利用可能部分と残渣などの再利用不可能

部分への分離)をも行っていることが暗黙の内に仮定されている。このために必要な電力

c21 kWhが計上されている。この様な対応が可能なのは,使用済製品以外に廃棄物が存在しないと仮定しているためである。他部門の生産工程で発生する廃棄物(汚泥,廃酸,廃ア

ルカリなど)をも考慮した場合,この種の対処は複雑になり困難である。 閉鎖系リサイクルは加工屑などについて成立している事例も多いが,使用済製品につい

ては一般的とは言えない。より一般的な開放系リサイクルの場合を表 3.1.3に示す。表 3.1.2では 1つに統合されていた 2つの素材(素材 1と素材 2)が,表 3.1.3では異なる素材,異なるプロセスとして分割されている。回収素材は素材 2 としてリサイクル可能であるが,機能単位(エアコン 1 台の T 年間使用)を構成する当該製品には投入されないため,マイナス投入方式により計上されるリサイクル分(0.3kg)は素材 2の行に計上されている。リサイクルされる部分が大きく,かつ製品の生産規模が素材 2 のそれに比べて大きい場合,素材 2 の生産量が計算上負値になる可能性がある。これが「マイナス投入方式」の問題点である。これに対し,閉鎖系リサイクルでは製品組成が一定である限り素材投入が負値を

取ることはあり得ない。生産量が負値をとることは現実には無いので,これはその規模で

のリサイクルが不可能なこと,すなわち与えられた機能単位の下ではそのリサイクルを可

能にするだけの素材 2 に対する需要が存在しないことを意味する。実際,いまの場合,機能単位の下で素材 2 に対する需要は一切生じないので(素材 2 は機能単位に含まれず,製品にも投入されない),開放系リサイクルは実現できない。

表 3.1.3 リサイクルされる割合が固定的な開放系リサイクルの場合の投入係数

製品(kg) 電力(kWh) 素材1(kg) 素材2(kg) 埋立(kg)製品(kg) 0 0 0 0 0電力(kWh) a 21+b 21T+c 21 0 a 23(1) a 23(2) a 24

素材1(kg) a 31 a 32 0 0 0素材2(kg) −0.3 0 0 0 0埋立(kg) 0.7 0 0 0 0

1.3 問題点の整理 上で考慮した場合は方法論として以下のように整理される: 1. 廃棄物処理と廃棄物については一対一対応 2. リサイクルについてはマイナス投入 3. リサイクルに必要な解体処理などは使用段階と同様に製造工程と統合 これらに対応する問題点として,以下を挙げることができる。

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1. 処理と廃棄物の一対一対応:現実には多様な廃棄物に対し多様な廃棄物処理が存在し,単純な一対一対応は存在しない

2. マイナス投入:供給される回収素材に等しいだけの需要が常にあることを仮定している。他業種を巻き込んだ開放系リサイクルでは,回収量を吸収する生産量が存在する

保証は無く,計算上,一部の部門において生産量が負値を取る可能性がある(マイナ

ス投入方式の問題点)。言い換えれば,機能単位との整合についての検討が必要である。

すなわち,想定した機能単位の下でリサイクルを可能にするに十分な他業種の生産活

動が保証されない。現実には十分なリサイクル需要が存在しない場合,回収物は廃棄

物として処理される。上の表記法における問題の本質はマイナス投入表記そのもので

はなく,この点(リサイクルされない場合は廃棄物として処理される)を考慮してい

ない点にある。 3. 製造工程への統合:製品製造工程に使用段階のみならず破砕・分別・回収工程をも統合するので記述が複雑になる。現実には使用済製品以外の廃棄物が他部門から発生す

る(電力からの石炭灰,素材からの汚泥・鉱滓など)。したがって,この図式に,これ

ら多様な廃棄物の処理・リサイクルを包含するのは極めて煩雑である。 LCA において,代替される素材生産に関わる負荷を差し引くことでリサイクル効果を表すことがある。これも「マイナス投入方式」に他ならない。閉鎖系リサイクル以外の場合,

機能単位との整合性に関する考慮が必要である。とくに,リサイクルを可能にする生産活

動が新たな環境負荷を伴う場合,単純なマイナス投入方式の利用はこれを除外してしまう。 1.4 2種類の廃棄物と廃棄物処理がある場合のWIO表記 問題点 1に対する単純且つ明解な対応は廃棄物と廃棄物処理を別途計上することである。これは WIO の考え方に他ならない。表 3.1.4 に WIO 形式による例を示す。埋立の他に廃棄物分解過程が独立した部門として計上され,廃棄物も廃棄製品,回収資源,残渣の 3 種

類に区別されている。分解過程は電力 25 21a c= kWhを投入して 1単位の廃棄製品を g25 kg

の回収資源と g35 kgの処理残渣に分解する。ここで,揮発等の無い限り回収物重量の和は

製品重量(1kg)に等しい。すなわち, 25 35 1g g+ = である。

回収素材のリサイクルはその素材部門への投入係数 23g− で表される(発生や回収を正値

で,投入・リサイクルを負値で計上する)。素材生産工程で回収素材がどの程度投入される

かは原単位 23g と素材の生産量に依って決まり,表 3.1.2 や表 3.1.3 などのように先験的に

決まっていない。これが回収素材=リサイクル量とした上記の問題点 2への対応である。 表 3.1.4は各部門の投入・排出原単位を並べたものであるから,ライフサイクルインベン

トリから容易に整備することができる。しかし,行に廃棄物が計上されている一方で,列

に廃棄物処理が計上され,行と列が未対応であるから,このままでは行列の逆転による連

立方程式の解を得ることはできない。すなわち,問題点 3 として指摘した廃棄物と廃棄物処理の 1 対 1 対応を前提していないのである。これを前提する代わりに WIO で用いるのが,廃棄物と廃棄物処理の一般的対応関係を表す配分行列である。配分行列の例を表 3.1.5に示す。これを用いて正方化した投入係数行列を表 4.4.10 に示す。すなわち,表 3.1.5 の配分行列を Sとし,表 3.1.4下段の廃棄物排出係数行列を Gとすると,

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( ) ( )23 25 3523 25

35

1 0 0 0 0 0 0 00 1 1 0 0 01 0 0 1 0 0 0 00 0 0 0g g gSG g g

g

⎛ ⎞ − +⎜ ⎟= − =⎜ ⎟⎝ ⎠

として求められる 2行 5列の行列は,表 4.4.10の投入係数行列の下端 2行に一致する。

表 3.1.4 2種類の廃棄物と廃棄物処理がある場合のWIO表記 製品(kg) 電力(kWh) 素材(kg) 埋立(kg) 破砕・分解(kg)

製品(kg) 0 0 0 0 0電力(kWh) a 21+b 21T 0 a 23 a 24 c 21

素材(kg) a 31 a 32 0 0 0使用済製品(kg) 1 0 0 0 0回収素材(kg) 0 0 − g 23 0 g 25

処理残渣(kg) 0 0 0 0 g 35

表 3.1.5 配分行列の例 使用済製品(kg) 回収素材(kg) 処理残渣(kg)

埋立(kg) 0 1 1破砕・分解(kg) 1 0 0

表 3.1.6 2種類の廃棄物と廃棄物処理がある場合の正方化された投入係数

製品(kg) 電力(kWh) 素材(kg) 埋立(kg) 破砕・分解(kg)製品(kg) 0 0 0 0 0電力(kWh) a 21+b 21T 0 a 23 a 24 c 21

素材(kg) a 31 a 32 0 0 0埋立(kg) 0 0 − g 23 0 g 25+g 35

破砕・分解(kg) 1 0 0 0 0 表 3.1.4で 3財・5業種から構成される投入係数行列を Aとすると,環境負荷を求める計算式は,以下で与えられる:

( ) ( )

( )

1

1

21 21 23 24 25

1 2 3 4 5 31 32

23 25 35

1 0 0 0 0 1( ) 1 0

1 0 0 ,000 0 1 ( )01 0 0 0 1

a vAe R R I fSG

a b T a a ar r r r r a a

g g g

⎛ ⎞= −⎜ ⎟⎝ ⎠

⎛ ⎞ ⎛ ⎞⎜ ⎟− + − − − ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎜ ⎟= − −⎜ ⎟ ⎜ ⎟− + ⎜ ⎟⎜ ⎟ ⎝ ⎠⎝ ⎠

使用済製品以外の廃棄物や多様な廃棄物処理・リサイクル技術を考慮した複雑(現実的)

な場合でも,計算に用いる式はこれとまったく同じものである。積み上げ法によるリサイ

クルの設定が市販 LCAソフトにおいてもかなり煩雑な設定を必要とする(そこでも廃棄物の処理・リサイクルへの配分という考え方が使われている)のに対し,WIO を用いた計算式は単純である。とくに,機能単位の下でのリサイクル可能性・リサイクルされない場合

の回収物や残渣の処理をシステム全体の収支の中で自動的に計算することが出来るので,

それらについて個別に整合性を検討しながら設定する必要がない。

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2. エアコンの LCAを例としたWIOによる LCA手法(WIO-LCA)の解説 エアコンを例として WIO-LCA の方法を解説する。なお,結果の解釈に際しては,本プ

ロジェクトで収集されたデータの利用を優先したため,事例研究として必ずしも適切でな

い点も含まれていることに留意されたい。基礎的なデータベースとして平成 12 年(2000年)廃棄物産業連関表を用いる。

2.1 機能単位とシステム境界 エアコン(冷房能力 2.5kW)を 10年間使用する。使用期間は製品寿命に等しいとし,使

用後は適切に処理または再資源化されるものとする。 産業連関表で把握されるわが国の経済システム全体をシステム境界とする。したがって,

直接間接に誘発される生産には国内のものと海外のものとがあるが,海外での生産による

環境負荷排出は計算に含まれない。国内での生産による環境負荷排出を評価対象とする。 2.2 システムを把握するためのフロー図と計算のための整理 システムを把握するためのフロー図は,プロセス間の依存関係が分かるように描かれる。

それに対して,プロセス間の依存関係を把握した上でインベントリを整理すると,その後

の計算仮定では,以下のように,入力・出力を通じた依存関係に関する情報は必ずしも利

用されない。

製造

エアコン1台

使用

10年×1107kWh/年

処理

使用済エアコン1台

製造

エアコン1台

製造

エアコン1台

使用

10年×1107kWh/年

使用

10年×1107kWh/年

処理

使用済エアコン1台

処理

使用済エアコン1台

計算のための整理(その1): LCAのために必要な情報を残しつつ,プロセスを分割して考えることができる(プロセスの順序は結果に影響を与えない)。各プロセスに起因する

環境負荷の総計を事後的に求める。すなわち,3つのプロセスに関する原単位に,各プロセスの稼動水準を乗じることで環境負荷を求め,その総計を求める。

製造

エアコン1台

使用

10年×1107kWh/年

処理

使用済エアコン1台

+ +製造

エアコン1台

製造

エアコン1台

使用

10年×1107kWh/年

使用

10年×1107kWh/年

処理

使用済エアコン1台

処理

使用済エアコン1台

+ + 計算のための整理(その2): 各プロセスを合算した 1プロセスを考えることができる。

すなわち,3つのプロセスに関する原単位の加重和として 1つのプロセスを作成し,その稼動水準を乗じることで環境負荷を求める。

製造使用処理

エアコン1台10年×1107kWh/年使用済エアコン1台

製造使用処理

エアコン1台10年×1107kWh/年使用済エアコン1台

前節でも既に述べたとおりWIO-LCAでは,その2の方法を採用する。この方法により,

他の産業連関分析の手法との共通性が高いために,統一的な扱いが可能となり,結果とし

て,統合的な分析が容易になる。

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2.3 各段階の設定 ■製造段階 産業連関表 基本分類「3212-01 民生用エアコンディショナ」に割当てる。 • 製造段階およびそれよりも上流への波及は,産業連関分析の方法により考慮される • 使用段階(電力投入)および廃棄・処理段階(エアコン 1 台廃棄)も「民生用エアコンディショナ」部門に統合(前節,計算のための整理(その2)を採用している)

■製造から使用までの輸送等 製造者による工場出荷から家庭までのあいだの輸送等を,産業連関表付帯表「運輸マー

ジン・商業マージン」(表 3.2.1)に基づいて次のように考慮する。 • 行「3212-01 民生用エアコンディショナ」 • 列「9121-00 家計消費支出」 標準的な産業連関モデルでは,商業・運輸マージンを除く生産者価格評価取引額のデー

タを用いる。マージンを含む製品単価を,製品自体とマージンに按分する。

表 3.2.1 「民生用エアコンディショナ」の製品と商業・運輸マージン

産業連関表データ 製品単価百万円/年 構成比(%) 円/台

購入者価格 1,310,389 100.000 198,250

生産者価格 711,120 54.268 107,586卸売 162,050 12.367 24,517小売 428,781 32.722 64,871鉄道貨物輸送 45 0.003 7道路貨物輸送 7,121 0.543 1,077沿海・内水面輸送 58 0.004 9港湾運送 282 0.022 43航空輸送 29 0.002 4貨物運送取扱 252 0.019 38倉庫 651 0.050 98

資料:平成 12年産業連関表 ■使用段階 「省エネ性能カタログ」に基づいて,以下のように設定する。 • エアコン 冷房能力 2.5kW(7~10畳)の平均値 • 電力のみ • 希望小売価格 198,250円/台,期間消費電力量 1,107kWh/年/台

■機能単位に対応する最終需要ベクトル 最終需要ベクトルの要素のうち,「3212-01民生用エアコンディショナ」を 107,586円と

する。この値は(生産者価格評価の)エアコン 1 台分に相当する。また,表 4.4.11 に沿って商業・運輸マージンの値を設定する。前節でのべた「計算のための整理(その2)」を採

用しているため,最終需要ベクトルのその他の要素はゼロとする。 ■廃棄・処理1(エアコンの解体) 原則として本プロジェクトで収集されたデータを用いる。 • エアコン解体(本プロジェクト収集データ(NEDO, 2005))

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完全手解体型 ライン解体風力選別型 シュレッダー利用型 「エアコン解体」をエアコンの解体と資源回収を行う1つの処理部門として扱う。3

つの代替技術の投入産出構造は,それぞれ列ベクトルとして表現できる。評価計算プ

ログラムの中で,これらの3つの列を取り替えながら計算することで,それぞれの評

価を行う。3つの代替技術の相違は,エネルギー投入量,および手解体工程・破砕工

程のそれぞれから回収されるスクラップ等の割合である。 エネルギー投入のうち,電力は「5111-00 事業用電力」に物量(kWh)インベントリデータをそのまま割当てる。軽油および A重油はともに「2111-01石油製品」に金額換算して割当てる。単価は産業連関表 部門別品目別国内生産額表から得られる(軽油 68,268円/kL,A重油 24,556円/kL)。

• フロン破壊(JLCA-LCAデータ) #582「回収フロン(高度、混合)輸送」2tトラックによる輸送 #559「フロン破壊処理」プラズマ分解法 「エアコン解体」部門に統合する。

■廃棄・処理2(回収物の資源化・処分) 原則として本プロジェクトで収集されたデータを用いる。 • プラスチック資源化(本プロジェクト収集データ):産廃廃プラスチック類に割当

コークス炉化学原料化:前処理(粒状化)+コークス炉 ▫ 主製品:コークス,COG,タール,粗軽油 ▫ エネルギー(電力,BFG),石炭を投入

高炉原料化 ▫ 主製品:高炉還元粒(回収プラ 1kgあたりコークス 0.95kgを代替) ▫ エネルギー(自家発,灯油,軽油),工業用水を投入

主製品(コークス,コークス代替物など)をマイナス投入であらわし,「銑鉄」部門

に統合する。平成 12年産業連関表から得られる「銑鉄」の年間生産額 1.26兆円に対して,近年におけるプラスチックのケミカルリサイクル量 30 万トンを資源化するものとする。 コークスなどの主製品すべて,およびエネルギーとして投入される BFG は「石炭製品」部門に対応する。列部門は 1部門「石炭製品」だけだが,行基本分類では「コークス」と「その他の石炭製品」に分かれているので,この情報に基づいて列部門も

同様に分割する。詳細は後述する。 • 鉄スクラップ資源化:産廃鉄屑に割当

手解体工程から回収された鉄屑は「粗鋼(転炉)」,破砕工程から回収された鉄屑は「粗鋼(電気炉)」に投入されるとする。ただし,これらの部門の代替技術は作

成しない • 銅スクラップ資源化:産廃銅屑に割当

主として「伸銅品」に投入される。ただし,この部門の代替技術は作成しない • アルミスクラップ資源化:産廃アルミ屑に割当

主として「アルミニウム(含再生)」「アルミ圧延製品」に投入される。ただし,これらの部門の代替技術は作成しない

• 非鉄・鉄などの混合物:該当する廃棄物種「非鉄・鉄混合物」を新設 非鉄・鉄などの混合物を銅鉱石等(「金属鉱物」部門の生産物)の代替物として投

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入する「銅」部門に投入されるとする 銅鉱石と「非鉄・鉄などの混合物」(銅品位 6%)として,等しい銅含有量で代替する

エアコンから回収される全量を「銅」部門が投入するものとする 2.4 LCIの結果 「エアコン解体」の代替的技術が3種類,「銑鉄」(プラスチック資源化を含む)の代替

的技術が2種類,これらの組み合わせで3×2=6通りについて,各産業・処理部門の活

動量,各廃棄物の発生量・資源化量,LCCO2,最終処分場消費量などを求めた。また,エアコンを解体せずに埋立(プラスチック回収が無いので高炉原料化,コークス炉化学原料

化のいずれも行わない。冷媒フロンの回収・分解は行う)についても同様に評価を行った。 • LCCO2で比較すると,使用済エアコンの解体処理に関しては,完全手解体型,シュレッダー利用型,ライン解体風力選別型の順に排出量が小さい(図 3.2.1)。回収プラスチックの資源化方法に関しては,高炉原料化よりもコークス炉化学原料化の方が排出量

が少ない。ただし,図示していないが使用段階が支配的であるために,いずれも差は

わずかである。6通りの解体およびプラスチック資源化の組み合わせの中で,ライン

解体風力選別型と高炉原料化の組合せが LCCO2が最も多いが,埋立はこれとほぼ同水準である。

• エアコンのライフサイクルにより誘発される最終処分場消費は,解体せずに埋立を行う場合が最も多く,解体とプラスチック資源化方法の組合せ6通りについては,ほと

んど差が無い(図 3.2.2)。 • 金属屑(鉄,銅,アルミ)とプラスチックについては,計算の上では,エアコンからの回収量を上回る量が資源化されている。したがって,経済システムの中でエアコン

から回収された屑等が優先的に資源化されているとすれば,エアコンからの回収物は

すべて資源化されたことになる。この点については後で詳述する。 • 解体せずに埋立を行う場合と比較して,エアコンを解体して資源を回収した場合は「061101金属鉱物」に対する需要量が約 9%減少する。また,「071101 石炭」に対する需要量は,埋立と高炉原料化とはほぼ同じだが,コークス炉化学原料化の場合は約

3.3%減少する。これら 2 部門の国産率(国内需要に占める国産品の割合)を見ると,「061101金属鉱物」は約 1.5%,「071101 石炭」は約 2.1%であり,輸入への依存度が高い。したがって,システム境界に含まれないために上記の計算結果に反映されない

海外での二酸化炭素排出量についても,埋立よりも解体・資源回収の方が優れており,

また,高炉原料化よりもコークス炉化学原料化の方が優れていることが示唆される。 • 埋立と比較して,解体とコークス炉化学原料化の場合は「212101 コークス」「212101その他の石炭製品」の生産額も大きく減少する。ただし,これら部門の国産率は約 94%以上であるから,これら部門の生産額減少による国内における環境負荷の削減は,上

記の計算結果に既にほとんど反映されていると言える。 以上のように,集計された環境負荷(LCCO2と最終処分場消費)だけでなく,関連する産業部門の生産量・需要量の減少などをも評価することができる。

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0

1.066

1.068

1.070

1.072

1.074

1.076

LCCO2排

出量

(炭

素トン)

埋立手解体高炉

ライン高炉

シュレ高炉

手解体コ炉

ラインコ炉

シュレコ炉

図 3.2.1 処理方法別の LCCO2排出量

注:横軸は使用済エアコンの処理方法とエアコンから回収されたプラスチックの資源化方法

をあらわす。「埋立」は埋立(冷媒フロンの回収・分解は行う)。「手解体」「ライン」「シュ

レ」はそれぞれ完全手解体型,ライン解体風力選別型,シュレッダー利用型をあらわす。「高

炉」「コ炉」はそれぞれ高炉原料化,コークス炉化学原料化をあらわす。

0

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

最終

処分

場消

費量

(立

米)

埋立手解体高炉

ライン高炉

シュレ高炉

手解体コ炉

ラインコ炉

シュレコ炉

図 3.2.2 処理方法別の最終処分場消費量

注:横軸は使用済エアコンの処理方法とエアコンから回収されたプラスチックの資源化方

法をあらわす。図 3.2.1の注を参照のこと。

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2.5 計算の上で負値となる生産額・排出量の扱い

WIO では,廃棄物の排出量から投入量(資源化量)を引いた残余として廃棄物の処理対象量が決定される。したがって,廃棄物処理部門による処理量をマイナス投入方式で扱っ

ていないため,モデル演算の中で,処理すべき廃棄物が不足するという非現実的な計算結

果が生じないという利点がある。しかし,副産物の発生(コークス炉化学原料化は「銑鉄」

部門による副産物(コークス,コークス炉ガス,タールなど)の発生として扱っている),

および廃棄物等の資源化(「粗鋼(電炉)」部門による鉄屑投入,「伸銅品」部門による銅屑

投入など)の扱いでは,マイナス投入方式を採用している。そのため,現実には起こり得

ないことだが,計算の上では一部の部門についての生産額が負値となったり,廃棄物純排

出量(排出量から投入量を引いた差であり,処理対象量に相当する)が負値となったりす

ることがある。以下では,WIO-LCAにおいてこのような結果を扱う方法を,具体例に沿って述べる。 ■財・サービス生産部門の生産額が負値となる場合 上で結果を要約した評価計算においては,すべての場合について生産額が負値となる産

業部門は無かった。しかし,製鉄プロセスから発生するスラグが資源化されている現況を

反映して「銑鉄」部門は「砕石」「化学肥料」などを副産物として生産する(これらの投入

係数は負値である)。したがって,評価対象の機能単位によっては「砕石」「化学肥料」な

どの生産額が負値となることがある。このような結果は,副産物としての生産量も含めた

総生産量よりも需要量が少ないことに対応する。ただし,このような超過供給はあくまで

も評価対象の機能単位の下での需要量を前提としているから,現実には利用される「砕石」

「化学肥料」など生産の削減に貢献したことになる。したがって,これに対応する環境負

荷量は控除されるべき(副産物控除法が適用されるべき)である。 環境負荷排出量は,各産業部門の単位生産あたり排出量(直接排出係数)と生産量の積

の合計として求められる。計算の上で生産額が負値となり副産物控除法の適用を要する場

合は,この計算式に従って,特別な扱いをしなくとも適切に控除される。 ■廃棄物の純排出量が負値となる場合など エアコンの解体によって金属スクラップ等を回収し,それらがシステムの中で利用され

ない場合には,回収物をバージン材と同等と見なし,バージン材の生産を行った場合に排

出されるだけの環境負荷を控除する,という副産物控除法が広く用いられている。他方,

WIO においては,システムの中で利用されない廃棄物は廃棄物処理部門によって受け入れられる。副産物控除法とWIOにおける廃棄物の取扱は,環境負荷の積算においてまったく逆の方向に働くものであると言える。経済システム全体を分析対象とする場合(例えば,

機能単位をあらわす最終需要ベクトルが,実際に観察された産業連関表の最終需要ベクト

ルである場合など)には,WIO における取扱の方が適切である。すなわち,利用されずに残ったものが廃棄物処理の対象となる。他方,本節で分析対象としている家電製品 1 台のライフサイクルの場合には,回収され,システムの中で利用されずに残ったものが直ちに

廃棄物処理の対象となるとは限らない。ここでは,副産物控除法を採用する。この副産物

控除法を採用する場合は,以下で述べるように,純排出量が負値の廃棄物だけでなく,正

値の廃棄物にも注意を払う必要がある。 エアコンの解体と金属スクラップの資源化を組み合わせた場合,銅屑およびアルミ屑に

ついては資源化量(リサイクル量)が排出量を上回り,計算の上では純排出量が負値とな

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る。他方,鉄屑とプラスチックは純排出量が正値となる2。WIOにおいては,排出・回収量のうち再資源化されない残余が廃棄物処理部門によって処理されるから,廃棄物等を再資

源化する部門は,廃棄物処理サービスを副産物として生産していると見なされる。配分行

列により,鉄屑・銅屑・アルミ屑は再資源化されない場合には埋立されるものと設定され

ており,プラスチックは再資源化されない場合には焼却されるものと設定されている。以

上をまとめると,表 3.2.2のようになる。 表 3.2.2 エアコンから回収された資源(廃棄物等)の純排出量と副産物控除

鉄屑 銅屑アルミ屑

廃プラスチック

純排出量の符号 正 負 負 正資源化されない場合の処理 埋立 埋立 埋立 焼却埋立による負荷の評価 過大 過少 過少焼却による負荷の評価 過大バージン材生産による負荷の評価 過大 過少 過少 過大

WIO の結果に副産物控除法を適用して補正する方法を示す。鉄屑,銅屑,アルミ屑はそれぞれ同重量のバージン材「261101銑鉄」「271101銅」「271103アルミニウム(含再生)」と同等と見なす。廃プラスチック類は重量比 1.25 倍の「212101 コークス」と同等とみなす。副産物控除法適用前後の環境負荷(CO2)排出量をそれぞれ e0, e1とすると,次の計算

式により e1が求められる:

( )

( ) ( )( )

1 0 landfill Fe Fe

landfill Cu Cu landfill Al Al

incineration coke plastic1.25

e e R R wR R w R R wR R w

= − +− + − +− + ×

ただし,Rは環境負荷(CO2)の直接排出係数,wは廃棄物純排出量であり,添字 Fe, Cu, Al, landfill, incineration, plastic, cokeはそれぞれ鉄(鉄屑),銅(銅屑),アルミニウム(アルミ屑),埋立,焼却,廃プラスチック類,コークスをあらわす。右辺第 1行第 2項は,鉄屑が「余っていた」(純排出量が正値であった)ために,それが埋立されることによる環境負

荷が e0に計上されていたこと,および「261101銑鉄」を代替することによる環境負荷低減効果が e0に計上されていなかったことを調整する式である。右辺第 2 行は,純排出量が負値であったために不適切に埋立削減効果が e0に計上されていたこと,および銅・アルミニ

ウムに対する需要に応えるために銅屑・アルミ屑と同等品を必要とすることによる環境負

荷が e0に計上されていなかったことを調整する式である。環境負荷が過小評価されていた

ことから,適切に負荷量を上乗せする必要があるが,純排出量 wCu, wAl, が負値であるため,引き算をすることで環境負荷量を上乗せすることができる。右辺第 3 行は,第 1 行第 2項と同様であるが,回収されたプラスチック 1に対してコークス 1.25を代替することが考慮されている。LCCO2および最終処分場消費について,ここで述べた副産物控除法を適用した結果は図 3.2.3および図 3.2.4の通りである。

2 金属屑の,解体・破砕による回収歩留まりが低い場合には,純排出量が負値となりやすい傾向がある。鉄屑の主たる需要先である「粗鋼(電気炉)」よりも,エアコンの生産は「粗鋼(転炉)」の生産を誘発す

る傾向があるから,鉄屑の純排出量が正値であるのに対して,銅屑・アルミ屑の純排出量が負値であると

の結果は興味深い。

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0

1.066

1.068

1.070

1.072

1.074

1.076

LCCO2排

出量

(炭

素トン)

埋立手解体高炉

ライン高炉

シュレ高炉

手解体コ炉

ラインコ炉

シュレコ炉

図 3.2.3 回収資源について副産物控除法を適用した場合の

処理方法別の LCCO2排出量 注:横軸は使用済エアコンの処理方法とエアコンから回収されたプラスチックの資源化方法 をあらわす。図 3.2.1の注を参照のこと。

0

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

最終

処分

場消

費量

(立

米)

埋立手解体高炉

ライン高炉

シュレ高炉

手解体コ炉

ラインコ炉

シュレコ炉

図 3.2.4 回収資源について副産物控除法を適用した場合の

処理方法別の最終処分場消費量 注:横軸は使用済エアコンの処理方法とエアコンから回収されたプラスチックの資源化方法

をあらわす。図 3.2.1の注を参照のこと。

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■「背景」の廃棄物について再資源化率を標準値に揃える方法 廃棄物の純排出量は現実には負値とはなり得ないが,上で述べたように,製品 1 台のライフサイクルを評価する場合などは,廃棄物純排出量は正値でも負値でも,それぞれに意

味がある。したがって,廃棄物純排出量の符号によって分類することが絶対的な基準では

ないとも言える。例えばエアコンのライフサイクルについては,使用段階での電力投入が

誘発する石炭火力発電所から発生する石炭灰が多く排出される。しかし,現実には石炭灰

の多くがフライアッシュセメントの原料として再資源化されているにもかかわらず,機能

単位(2.5kW型エアコン 1台を 10年間使用)の下ではセメントに対する十分な需要量がほとんど生じないために,WIO モデルを単純に適用すると,廃棄物処理対象物となり埋立されるという計算が行われる。ここでの主たる興味は,エアコンのライフサイクルの評価す

ることであり,直接間接に誘発される石炭灰が経済システム全体として再資源化可能か否

かを評価することではないので,WIO モデルを単純に適用するよりは,上述のような副産物控除法を併せて適用する必要がある。 ここで,次のように計算される 2種類の再資源化率を考慮する。

0 0 0 ,r w w r w w⊕ ⊕= =

0r は WIO モデルを単純に適用した結果として得られる廃棄物の投入量 0w の排出量 0w⊕に

占める割合である。r は基礎データベースである平成 12年廃棄物産業連関表における日本

経済全体としての廃棄物投入量w の排出量w⊕に占める割合である。以下では,前者を

WIO モデルにより算出された再資源化率,後者を標準的な再資源化率と呼ぶ。上述の石炭

灰を含む産業廃棄物「燃え殻」「ばいじん」については,標準的な再資源化率 r がそれぞれ

約 33%, 57%であるのに対して,機能単位(2.5kW型エアコン 1台を 10年間使用)の下で

のWIOモデルにより算出された再資源化率 0r はそれぞれ 0.5%, 3.0%に過ぎない。このよう

な廃棄物に対しては,次式で求められる量が過剰に処理されたものと見なし,この量に対

応する環境負荷量を控除する。

( ) ( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( )0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

0 0 0 0 0 0

1 1r w r w w r w w rw r r ww w w rw rw w

⊕ ⊕ ⊕ ⊕ ⊕ ⊕ ⊕

⊕ ⊕ ⊕ ⊕

− − − = − − − = −= − − − = −

ただし,バージン材と同等と見なした控除(燃え殻やばいじんの発生が粘土や骨材の生産

を減少させたとの計算)は行わない。 エアコンの解体によって回収される金属スクラップ(鉄・銅・アルミ)およびプラスチ

ックについては,回収分は全量が再資源化されるものとし,間接的に誘発される排出量に

対して,上の標準的再資源化率を用いた控除を適用し,加えてバージン材と同等と見なし

た控除も行う。結果は図 3.2.5および図 3.2.6の通りである。

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0

1.066

1.068

1.070

1.072

1.074

1.076

LCCO2排

出量

(炭

素トン)

埋立手解体高炉

ライン高炉

シュレ高炉

手解体コ炉

ラインコ炉

シュレコ炉

図 3.2.5 標準的再資源化率を用いた控除を適用した場合の

処理方法別の LCCO2排出量 注:横軸は使用済エアコンの処理方法とエアコンから回収されたプラスチックの資源化方法を

あらわす。図 3.2.1の注を参照のこと。

0

0.06

0.08

0.10

0.12

0.14

0.16

最終

処分

場消

費量

(立

米)

埋立手解体高炉

ライン高炉

シュレ高炉

手解体コ炉

ラインコ炉

シュレコ炉

図 3.2.6 標準的再資源化率を用いた控除を適用した場合の

処理方法別の最終処分場消費量 注:横軸は使用済エアコンの処理方法とエアコンから回収されたプラスチックの資源化方法を

あらわす。図 3.2.1の注を参照のこと。

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2.6 列部門「石炭製品」の2部門「コークス」と「その他の石炭製品」への分割 上述のように,列部門は「石炭製品」1 部門しかないが,行部門は「コークス」「その他

の石炭製品」の 2 部門である。回収されたプラスチックの再資源化技術を評価する場合,とくにコークスは重要な生産物であるから,少なくともこれをその他の石炭製品と統合し

て 1つの部門として扱うのは好ましくない。 JEMAI-LCA Pro 標準データセット「コークス」を物量ベースの投入係数推計の基礎資料として利用した。入力項目は,重油,原料炭,オイルコークス,電力,BFGである。 • 産業連関表の部門別品目別国内生産額表から得られる単価で金額換算すると,「コークス」部門の投入係数が大きく,行和条件から「その他の石炭製品」部門の各種投入が

負値になってしまう • とくに原料炭については,一般炭などと単価が大きく異なるため,貿易統計に基づいて単価を設定し直したところ問題は回避された。しかし,電力など,その他の入力項

目については問題が残ったままである。 より詳細な資料収集に基づいて部門を分割することが望ましいが,簡便法として,「コーク

ス」「その他の石炭製品」の金額ベースの投入係数を共通として計算した。 3. 今後の課題 上で見たように,機能単位の設定次第では現実における平均的リサイクル率が実現でき

ず,事後的に副産物控除法などを適用する必要性が生じる。これは現実のリサイクルが他

業種を含む開放系の中で実現していることから当然のことである。特に,我が国における

リサイクルは,素材産業を中核として進展してきている部分が大きく,現実の産業構造に

よって規定されるマテリアルフローと整合をとりつつ,効率的な産業間連携の可能性を模

索して行かなくてはならない。従って,従来型の機能単位を外から与える設定にのみとど

まらず,産業間連携に関する複数の選択肢の中から最適な組み合わせを求めて行く試みが

必要であろう(近藤・中村, 2004)。 4. 参考資料 ■文献について 伝統的な産業連関分析と廃棄物産業連関分析についての方法論に関する初学者向けの文

献としては,中村(2000)がある。同書は汎用スプレッドシート Excel による計算方法も詳細に解説している。データベースとしての産業連関表については,総務省(2004)だけでなく,コンパクトに纏められた宮沢(2002)も定評がある。廃棄物産業連関表に関する解説は,中村(2000)および近藤(2005)に詳しい。 ■産業連関表データについて 我が国の産業連関表は西暦の下一桁が 0 または 5 の年に作成・公表されている。多数の省庁の連携によって作成されているが,纏まった情報は総務省統計局のウェブサイトから

入手することができる(http://www.stat.go.jp/)。同サイトでは,産業部門数が 100程度の産業部門分類(統合中分類)について,産業連関表データが公開されている。最も詳細な

産業部門分類(産業部門数が 400 程度,基本分類)の表は財団法人全国統計協会連合会(http://www.nafsa.or.jp/)および財団法人経済産業調査会(http://www.chosakai.or.jp/)により有料で提供されている。

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参考文献 • Nakamura S (1999) Input-Output Analysis of Waste Cycles, First International

Symposium on Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturing, Proceedings, IEEE Computer Society, Los Alamitos, pp. 475—480

• 中村愼一郎(2000)「廃棄物処理と再資源化の産業連関分析」『廃棄物学会論文誌』11(2), 84—93

• Nakamura S, Kondo Y (2002) “Input-Output Analysis of Waste Management,” Journal of Industrial Ecology 6(1), 39—64

• 森口祐一(2006)「LCA, IOA, MFAの相互連関と相乗効果」『日本 LCA学会誌』2(1), 3—7

• Heijungs R, Suh S (2002) The Computational Structure of Life Cycle Assessment. Dordrecht: Kluwer Academic Publishers

• 布施正暁,鹿島茂,八木田浩史(2006)「自動車リサイクルの産業連関分析」『日本 LCA学会誌』2(1), 65—72

• 高瀬浩二,近藤康之,鷲津明由(2006)「廃棄物産業連関モデルによる消費行動の分析:所得と生活時間を考慮した環境負荷の計測」『日本 LCA学会誌』2(1), 48—55

• Tukker A, Huppes G, Guinee J, Heijungs R, de Koning A, van Oers L, Suh S, Geerken T, Van Holderbeke M, Jansen B, Nielsen P (2005) Environmental impact of products (EIPRO): Analysis of the life cycle environmental impacts related to the total final consumption of the EU25. European Science and Technology Observatory. Available at http://europa.eu.int/comm/environment/ipp/pdf/eipro_draft_report2.pdf(2006年 3月閲覧)

• Leontief W (1970) “Environmental Repercussions and the Economic Structure: An Input-Output Approach,” Review of Economics and Statistics 52(3), 262—271

• Duchin F (1990) “The Conversion of Biological Materials and Wastes to Useful Products,” Structural Change and Economic Dynamics 1(2), 243—261

• (財)省エネルギーセンター「省エネ性能カタログ」家庭用 2002 年冬,http://www.eccj.or.jp/catalog/

• (NEDO)新エネルギー・産業技術総合開発機構(2005)「二酸化炭素固定化・有効利用技術等対策事業/製品等ライフサイクル二酸化炭素排出評価実証等技術開発/製品等に

係る LCA及び静脈系に係る LCAの研究開発」成果報告書 • (社)産業環境管理協会「JEMAI-LCA Pro手引きと解説」 • 近藤康之,中村愼一郎(2004)「廃棄物産業連関分析(WIO)と廃棄物管理最適化」『電気学会論文誌 C(電子・情報・システム部門誌)』124-C(10), 2187—2194

• 中村愼一郎(2000)『Excelで学ぶ産業連関分析』エコノミスト社 • 総務省(2004)『平成 12年(2000年)産業連関表 総合解説編』全国統計協会連合会 • 宮沢健一(2002)『産業連関分析入門』第 7版,日経文庫経済学入門シリーズ,日本経済新聞社

• 近藤康之(2005)「廃棄物産業連関分析と LCA」『日本エネルギー学会誌』84(12), 1026—1031

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第 4章 Appendix Appendix 1 参考資料 <静脈系文献調査>

今回の調査で抽出された年度別の静脈系のLCA文献は以下の通りである。JSTPLUSは、収録

時期が文献によってかなり時間差があり、年度別の傾向は不明である。

第6回エコバランスでの発表が多い。

・ 2001年 : 2件

・ 2002年 :13件

・ 2003年 :18件

・ 2004年 : 9件

・ 2005年 : 3件

・ 第6回エコバランスOral Session :14件

・ 第6回エコバランスPoster Session:10件

合計:69件

今回は静脈系として、「リサイクル」、「廃棄物処理」、「水処理」の3アクティビティを中心に該当

する文献を抽出したが、それぞれ該当する件数は以下の通りである。

・リサイクル :33件

・廃棄物処理:39件

・水処理 :15件

尚 重複してカウントしたものも多いので、総計は87件と文献総数の69件を超えている。特にリサイ

クルと廃棄物処理の両者で重複するものが17件もあった。

リサイクルの33件のうちで、プラスチック廃棄物のリサイクルに関するものが11件と最も多く、次

いで廃PETボトル関連が8件であった。これ以外では、包装容器関連と一般廃棄物が3件、廃家電

製品が2件であった。使用済み自動車、バイオマス発電、古紙、廃タイヤ、高炉スラッグ、廃タイヤ、

水銀、廃CFRPなどのリサイクルがそれぞれ1件あった。

廃棄物処理の41件のうちで、一般廃棄物(主に都市の廃棄物)が9件と最も多く、次いで廃プラ

スチック関連が8件、生ゴミ(食品廃棄物含む)が6件であった。畜産系廃棄物、ガス熔融炉の紹介、

建設廃棄物、使用済み自動車、産業連関表関連が2件であった。汚泥処理、廃タイヤ、RDF、バイ

オマス発電、家計消費、行政施策、廃CFRP、銀等が各1件あった。

水処理の15件のうちで、下水処理が7件と最も多く、次いで一般廃水(生活用水)関連が4件、

水処理技術が3件、し尿処理と糞尿処理が1件であった。

LCAのステップに関しては、インベントリ関連が61件と多く、インパクトに関するものは19件で、

その中で統合化まで進んだものは7件であった。

またマテリアルフローに関係するものが5件含まれていた。

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静脈系LCA文献調査抄録(JSTPLUS:2003~2005年度分、第6回エコバランス国際会議)

報告書 静脈系の種類  LCAのステップ ①インベントリ関連 ②インパクト関連

タイトル 著者 所属 出典 発行 調査範囲 調査対象 リサイ 廃棄物 水 ①インベ ②インパ 項目 評価 評価に含めた 利用した 概要

年 クル 処理 処理 ントリ クト プロセス カテゴリ 統合手法プラスチック廃棄物の処理・処分に関するLCA調査研究報告書

プラスチック処理促進協会

プラスチック廃棄物の処理・処分に関するLCA調査研究報告書 平成13年P.129P (2001)

2001 プラスチック廃棄物の処理・処分のLCA

マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル(RDF製造、セメント原燃料化、ガス化)、ケミカルリサイクル(油化、高炉原料化、塩ビ高炉原料化、DMT再生化)

○ ○ ○ CO2,SOx、NOx LCA的手法を用いて廃プラスチックのリサイクルシステムに関する環境影響評価を試みた。対象とした廃プラスチック処理・処分システムは,マテリアルリサイクル(MR),サーマルリサイクル(TR),ケミカルリサイクル(CR )で,これらのリサイクルシステムに対する基本シナリオは埋立てと焼却に置いた。

水処理施設のLCA 鶴巻峰夫 八千代エンジニヤリング

日本水環境学会セミナーVOL. 42nd; PAGE. 36-55; (2001)

2001 下水道終末処理施設のLCA

水処理施設、汚泥集約処理施設

○ ○ ○ ○ エネルギー、水消費,CO2,SOx,NOx,埋立廃棄物、COD,T-N,T-P,BOD

特性化 地球温暖化、酸性化、富栄養化、エネルギー消費、水資源消費、汚染物質の大気圏排出、汚染物質の水圏排出、汚染物質の土壌圏排出

現状での水環境分野におけるLCA適用の事例として、下水終末処理施設の水処理施設と汚泥集約処理施設についてインベントリー分析の事例を紹介し、次いでその設備での消化ガスを利用したガスタービン発電によるエネルギー回収方法の評価をおこなった。

ゼロエミッション型集合住宅におけるLCA的評価

中沢克仁片山恵一沼田雅史西本直矢

坂村博康, 安井至

科学技術振興事業団東海大積水化学工業積水インテグレーテッドリサーチ東大 生産技研

環境科学会年会一般講演・シンポジウム・プログラムVOL. 2002; P. 246-247;(2002)

2002 集合住宅のLCA

ゼロエミッション型住宅、従来型集合住宅

○ ○ エネルギー、CO2、SOx、NOx、固形廃棄物

家庭系一般廃棄物の再資源化・有効利用を目的とし、ゼロエミッションを導入した集合住宅における廃棄物処理システムを検討し、LCA評価をおこなった。ゼロエミッション型集合住宅はCO2排出量と固形物排出量が極めて少なくなる。またこの手法では再生材と燃料源が製造されることから、この効果を織り込むと更に環境負荷は減少する。

プラスチック包装材のリサイクルシナリオのエコ効率分析(プラスチック処理促進協会S)

EGGELS P G,ANSEMS A M M,VAN DER VEN B L,DE GROOT J L B

Assoc. PlasticsManufactures inEurope (APME)TNO Inst. IndustrialTechnol.

プラスチック包装材のリサイクルシナリオのエコ効率分析 平成14年P.112P; (2002)

2002 プラスチック包装材のリサイクル法によるエコ効率の分析

廃プラスチックス包装材(一般ゴミ,産業輸送用)の各種リサイクル方法と埋立

○ ○ ○ ○ コスト 統合化 鉱物資源消費、化石資源消費、地球温暖化、オゾン層破壊、人体毒性、水生生態毒性、光化学オゾン生成、酸性化、富栄養化、最終廃棄物、特定危険廃棄物、累積エネルギー必要量

廃プラスチックスの再資源化策を検討する場合に、技術的な側面に加えて環境・経済効率(エコ効率)の分析手法について検討した結果を取り纏めた。対象とするのは、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル、埋立である。その結果、リサイクル率の上昇に伴い、シナリオ後とにコストや環境影響評価結果に変化が見られた。また環境影響評価の結果は、主にリサイクル製品やエネルギー回収により代替される一次製品の種類による。

下水処理の効率化・高度化を目的とした微生物の活用に関する調査(先導的技術開発プロジェクト) 下水道システムにおけるLCAの適用及び原単位算出手法に関する調査

中沢均, 遠田和行 下水道事業団 日本下水道事業団技術開発部報VOL. 2002; P. 65-74;(2002)

2002 下水道システムにおけるLCAの適用

管路改築、水処理施設の高度処理化

○ ○ CO2,エネルギー 下水処理施設のユニットプロセスを対象に効率的にLCAを適用してユニットプロセス改善の検討を行うために,ベンチマーキング手法の適用の考え方と課題をまとめた。またLCA適用の有効性が期待される下水道の改築及び施設のグレードアップを対象にLCA(LCCO2,LCE)適用のケーススタデイを行なった。

ガス化溶融炉「サーモセレクト」による産業廃棄物処理のLCI解析

村上みさを, 行本正雄

川崎製鉄 日本エネルギー学会大会講演要旨集創立80周年記念大会;P.330-331; (2002)

2002 ガス化溶融炉による産業廃棄物のLCI解析

サーモガス化、サーモ発電、焼却、焼却発電、埋立

○ ○ CO2,エネルギー ジャパンリサイクル㈱千葉リサイクルセンターで行なわれているサーモセレクト方式ガス化溶融炉方式(サーモガス化)を、サーモ発電、焼却、焼却発電、埋立の各手法と投入エネルギー、CO2排出量で比較した。サーモセレクト方式の優位性が確認された。

CFRP製造廃棄の環境調和性分析

永井英幹,高橋淳,けん持潔,松井醇一

産業技術総合研東大信州大ベンチャーラボ

日本機械学会年次大会講演論文集VOL. 2002 NO.

2002 CFRPのLCI分析

CFRPの製造と廃棄・リサイクル

○ ○ ○ エネルギー、CO2、SOx、NOx

CFRPのインベントリ分析を,製造プロセスと廃棄リサイクルプロセスに関して行った。製造プロセスにおいては,炭素繊維製造と成形工程の影響が大きいことを示した。リサイクルについては,マテリアル,ケミカル,サーマルの各リサイクルの効果を示し,特に高炉投入による再利用の有用性を示した。

水処理技術のLCA 環境調和型水処理技術ガイドライン調査について

造水促進セ 造水技術VOL. 28 NO. 2; P. 9-17; (2002)

2002 水処理技術のプロセスユニット別LCI分析

水処理の10ユニットプロセス(凝集沈殿ろ過、浮上分離、乾燥等)

○ ○ CO2 ユーザーが水処理システムを選択する場合に環境負荷の最小化をはかる観点からガイドライン作成を目指して調査を行った。特に環境負荷に影響するユニットプロセス,設備における特記事項を整理した。設備製造・建設のインベントリについては,逆浸透膜,生物膜,膜分離活性スラッジ法などで大きいことが判った。

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9 廃棄物ガス化溶融設備(ガス化改質方式)による産業廃棄物処理のLCI解析

村上みさを, 行本正雄, 清水益人, 山田純夫

川崎製鉄 廃棄物学会研究発表会講演論文集VOL. 13th NO. Pt.1; P.107-109; (2002)

2002 ガス化溶融炉による産業廃棄物のLCI解析

サーモガス化、サーモ発電、焼却、焼却発電、埋立

○ ○ CO2,エネルギー ジャパンリサイクル㈱千葉リサイクルセンターで行なわれているサーモセレクト方式ガス化溶融炉方式(サーモガス化)を、サーモ発電、焼却、焼却発電、埋立の各手法と投入エネルギー、CO2排出量で比較した。サーモセレクト方式の優位性が確認された。

10 廃棄物産業連関分析の動学的拡張

横山一代 早稲田大 大学院経済学研究科

エコデザインジャパンシンポジウム論文集VOL.2002; PAGE. 292-295; (2002)

2002 建築物に関する廃棄物産業連関表の動学的拡張

長寿命化および廃棄物分別に関する6シナリオ

○ ○ CO2、埋立重量、埋立容積、雇用

建築物のように数年の寿命を持つ耐久財は、生産された期で資本ストックとして固定され、寿命を終えた後に廃棄物になる。廃棄物産業連関表(WIO)の動学的拡張を試み、建築物について長寿命化と廃棄の際の分別の効果についての試算を行った。

11 畜産系堆肥化施設のLCAによる評価について

泉沢啓, 佐藤好克,斎藤善則, 高橋正弘

宮城県保健環境セ 宮城県保健環境センター年報NO. 20; P.98-102;(2002)

2002 畜産系堆肥化施設のLCA

収集,堆肥化製造,流通・販売,排ガス処理

○ ○ エネルギー、水、軽油、CO2,SOx,NOx,T-N

環境配慮型として稼動を開始した堆肥化施設のインベントリー分析を行った。収集,堆肥化製造,流通・販売,排ガス処理の各工程について評価項目の設定と評価を行った。インベントリー分析の結果からエネルギー消費量や温室効果ガス発生量が把握できた。堆肥化コストが割高であり,製品の販路確保が重要な課題であることも分かった。

12 東京都におけるPETボトルのリサイクルに関するLCI分析

前川洋輝, 稲員とよの, 小泉明

東京都大 大学院 土木学会第57回年次学術講演会講演概要集P.245-246(2002)

2002 PETボトルリサイクルのLCI分析

PETボトルリサイクル(再生フレーク化、焼却、再利用)

○ ○ エネルギー、費用、NOx、SOx、CO2

東京都におけるPETボトルの資源採取から処理、処分までのLCI分析を、再生フレーク化、焼却(発電有無)、再利用に関して6つのシナリオを設定して検討した。再利用(5回)がエネルギー、排気ガス排出量が最も少なかった。

13 バイオマスガス化発電装置のLCA

安達陽介,根本泰行, 塩ノ谷幸造,

牛山泉

足利工大 大学院足利工大 総研セ

足利工大

日本太陽エネルギー学会・日本風力エネルギー協会合同研究発表会講演論文集VOL. 2002; P.457-460;(2002)

2002 バイオマスガス化発電装置のLCA

バイマス発電、ガソリン発電(原料調達、製造、使用、廃棄)

○ ○ ○ エネルギー、CO2, バイオマスガス化発電装置について,製材工場もしくは街路樹・果樹などから発生する廃棄物の燃料利用という,バイオマスに最も有利なケースを選んで評価を行った。インベントリ分析の結果,このガス化発電装置で発電を行った場合,ガソリン燃料で発電を行った場合と比べて,ライフサイクルにおける総消費エネルギーで65万kWh/台 ,総CO2排出量で735t/台削減できることが分かった。

14 小売店より排出された生ごみのコンポスト化処理システムのインベントリー分析

中沢克仁,片山恵一,坂村博康, 安井至

科学技術振興事業団東海大東大

日本エネルギー学会誌VOL. 81 NO. 11; P.1006-1011; (2002)

2002 小売店から排出された生ゴミのコンポスト化処理システムのLCI分析

コンポスト化処理、焼却処理(コープとうきょう3店舗)

○ ○ 電力、エネルギー消費、固形廃棄物

コープとうきょう3店舗において、生ごみのコンポスト調査を行い,LCA手法を用いて「コンポスト化処理システム」を定量的に評価し、従来から行われている「焼却処理システム」との比較を行った。その結果、生ゴミのコンポスト化処理システムの環境負荷を低減するには、コンポスト化処理におけるエネルギー消費の削減とコンポストを農地等で行なうことが重要であることが判明した。

15 家庭消費支出を用いた長野市のゴミ排出量とCO2排出量解析に関する研究

藤川雄輝,内木昭太, 小山健

信州大 大学院信州大

建設マネジメント問題に関する研究発表・討論会講演集VOL. 20th; P.163-166;(2002)

2002 ゴミ排出量とCO2排出量の解析

長野市のゴミ排出(平成5年から平成12年)

○ ○ ○ CO2 ゴミや温室効果ガス発生問題の共通要因として,一般家庭の消費支出に着目した。長野市を対象として,可能性回帰分析によってゴミ排出量予測モデルを導出し,LCI手法により一般家庭の消費から廃棄というライフサイクルにおける CO2排出量の算出などを行った。

16 産業廃棄物系プラスチックにおけるBTX回収システムのインベントリー分析

中沢克仁,片山恵一,伊東あき,坂村博康, 安井至

科学技術振興事業団東海大石川島播磨重工業東大 生産技研

日本エネルギー学会誌VOL. 82 NO. 4; P.208-213; (2003)

2003 廃プラスチックスのBTX回収システムのLCI

Ga-Si触媒による廃プラスチックスからのBTX回収プロセス

○ ○ エネルギー、CO2、SOx、NOx、固形廃棄物

Ga-Si触媒を使用した廃プラスチックのBTX回収システムについて,LCI分析をした。又,原油からBTXを製造するシステムと比較した。本廃プラスチックからのBTX回収システムは,1)高い率(53.4%)が得られる事 ,2)本来埋立処理されるべき廃プラスチックを減量させる事,3)二酸化炭素排出量を大幅に削減できる事,が判明した。

17 8-12. ライフサイクルインベントリー分析による広域RDF発電の有効性評価

小松渚, 磐田朋子,島田荘平

東京大学大学院 日本エネルギー学会大会講演要旨集 VOL. 12th; PAGE. 380-381; (2003)

2003 RDF発電事業のLCA

茨城県鹿嶋市、神栖町、波崎町のRDF発電(建設、ごみ収集、RDF製造、、同輸送、発電、灰搬出、埋め立て、解体)

○ ○ 投入エネルギー、CO2,NOx、SOx

広域処理と高効率のエネルギー回収を目指したRDF(固形化燃料)発電のLCAを行い、RDF製造設備や発電施設の建設に投入されるエネルギーが大きいことが判明した。広域処理を検討する際に大規模な施設を建設することが環境負荷物質の削減に効果がある。

18 様々なリサイクル技術完全循環型PET to PETケミカルリサイクルの技術

斎藤和夫 アイエス JETIVOL. 51 NO. 14; PAGE.182-184; (2003)

2003 PET to PETケミカルリサイクルのLCI

PET to PETケミカルリサイクルとバージン原料からの比較

○ ○ エネルギー消費量 世界及び日本のペットボトルリサイクルの状況と現状の課題について概説し,(株)アイエスが開発したPETケミカルリサイクル技術(アイエス法)について紹介した。アイエス法のLCIについて試算の結果,バージン原料から出発する場合と比較して,約45%のエネルギーにて循環リサイクルが可能である。

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19 モデル都市におけるリサイクルを考慮した一般廃棄物処理・処分システムの環境負荷削減の評価

岩淵善美, 東野達,笠原三紀夫

京都大学 大学院エネルギー科学研究科

空気調和・衛生工学会論文集 NO. 91; PAGE. 97-107;(2003)

2003 モデル都市での一般廃棄物処理・処分システムの環境負荷削減の評価

ごみリサイクルシナリオ4種(ガラス瓶、スチール缶、アルミ缶、ペットボトル、紙類)

○ ○ ○ CO2、NOx、SOx、エネルギー消費量

多様な施設の混在するモデル都市を対象として,都市内の一般廃棄物の流れを把握し,資源物のリサイクルの可能性を定量的に明らかにすることを目的とした。複数のシナリオを作成し,一般廃棄物の収集から焼却,埋立および資源物のリサイクル過程のLC I分析を行った。一般廃棄物処理・処分をするうえで資源物をリサイクルすることにより環境負荷が削減されることが明らかになった。

20 LCA解析と物性測定を組み合わせたR-PETアロイの材料評価手法

後藤喜一, 久松徳郎, 中野哲今本博文, 栗山卓

山形工業技術センター山形大学 工学部

成形加工シンポジア VOL. 2003; PAGE. 391-392; (2003)

2003 各種PET樹脂のLCA

PET,リサイクルPET,リサイクルPETアロイ

○ ○ ○ CH4,CO2,N2O,石炭、LNG、原油

統合化 資源の消費、地球温暖化、物性評価

(不明) 使用済ペットボトルの処理方法による環境への影響を評価するために、バージンペレット(PET)、リサイクルリペレット(R-PET)及びR-PETのアロイの3種についてLCA解析をおこなった。リサイクル品の方が環境に与える負荷が小さく、物性評価を加えるとR-PETアロイが最も良い利用法となった。

21 3 生ごみ処理物を利用した高品質融合コンポスト製造システムの開発 (1) 地域における有機性廃棄物最適活用システムの構築ア 堆肥に関するインベントリーデータの構築

北畠晶子 神奈川県農業総合試験所

神奈川県農業総合研究所試験研究成績書(野菜) 平成14年度 JPAGE. 7-9; (2003)

2003 堆肥のLCI 三浦半島において使用される堆肥(堆肥化、輸送、熟成)

○ ○ CO2,N2O,CH4,NOx、SOx

農水省委託研究「生ごみ処理物を利用した高品質融合コンポスト製造システムの開発」の一環として,地域で発生する有機性廃棄物の環境保全的活用について評価する目的で,LCAを用いるために必要となるデータを構築した。

22 4 生ごみ処理物を利用した高品質融合コンポスト製造システムの開発 (1) 地域における有機性廃棄物最適活用システムの構築ア 堆肥に関するインベントリーデータの構築

北畠晶子 神奈川県農業総合試験所

神奈川県農業総合研究所試験研究成績書(経営情報) 平成14年度PAGE. 10-12; (2003)

2003 堆肥のLCI 三浦半島において使用される堆肥(堆肥化、輸送、熟成)

○ ○ CO2,N2O,CH4,NOx、SOx

農水省委託研究「生ごみ処理物を利用した高品質融合コンポスト製造システムの開発」の一環として,地域で発生する有機性廃棄物の環境保全的活用について評価する目的で,LCAを用いるために必要となるデータを構築した。

23 下水道システムのLCA評価に関する研究

中島智史

中島英一郎

滋賀県 東北部流域下水道事務所国土交通省 国土技術政策総合研究所

下水道研究発表会講演集 VOL. 40th; PAGE. 283-285; (2003)

2003 下水道システムのLCAモデルの検討

湖西(循環式硝化脱窒法、嫌気無酸素好気法)、伊師(標準活性汚泥法)、友部(オキシデーションデイッチ法)

○ ○ CO2,エネルギー消費量

下水道システムの計画設計段階におけるLCA評価手法の整備を目指して、異なる三つの処理システムのケーススタデイを行った。三つとも運転時の負荷(電気)がほとんどを占めている。この電力消費量を積み上げモデルにて計算すると実績使用量とよい一致を見た。

24 下水道におけるLCA手法の適用に関する調査研究

二階堂悦生, 佐野広一, 一松雄太

下水道新技術推進機構

下水道研究発表会講演集 VOL. 40th; PAGE. 280-282; (2003)

2003 下水道のLCI コンポスト化施設(立型パドル式:O市浄化センター、横型スクープ式:K市下水処理場)

○ ○ CO2 下水道のLCAの適用に向けてインベントリ分析をコンポストを対象としておこなった。O市とK市の2施設を対象とし、施設の建設、運転管理、廃棄にわたるCO2排出量を算定した。

25 PETボトルのリサイクルにおけるLC-CO2(素材のリサイクルにおける環境影響評価手法の開発)

池谷圭二, 吉羽勇人, 及川喜代文八木田浩史, 稲葉敦

東急建設

産業技術総合研究所

日本建築学会学術講演梗概集A-1 材料施工 VOL. 2003; PAGE.1109-1110; (2003)

2003 PETボトルのリサイクルにおけるLCCO2評価

マテリアルリサイクル(MR)、ケミカルリサイクル(CR)、サーマルリサイクル(TR:発電、スーパーゴミ発電、ガス化溶融処理)

○ ○ CO2 PETボトルの各種リサイクルにおけるライフサイクルCO2を評価した。結果はMRにおける再生製品の控除、TRにおける発電効率による電力量、蒸気量の影響を受ける。現状の技術水準ではMR>CR>TRの順にリサイクル効果が大きいと評価される。

26 廃プラスチック処理・処分システムのエコ効率分析

プラスチック処理促進協

廃プラスチック処理・処分システムのエコ効率分析 平成15年P.79P; (2003)

2003 廃プラスチックスの処理・処分システムのエコ効率分析

廃プラスチックスのマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル

○ ○ 資源消費、エネルギー消費、CO2,SOx、NOx、固形廃棄物

廃プラスチックの再資源化策を検討する場合に,技術的な側面に加えて環境・経済効率(エコ効率)の分析手法について検討した。対象とするのはマテリアルリサイクル,ケミカルリサイクル,サーマルリサイクルの3つである。

27 廃棄物マネージメントを支援する建築・都市システムの構築 第3報-一般廃棄物処理にかかわる環境負荷原単位の検討

間宮尚, 木原勇信,鎌田元康,

井上隆, 小林謙介,長谷川善明

鹿島建設東大 大学院工学系研究科東京理大 理工

空気調和・衛生工学会論文集NO. 88; P. 53-62;(2003)

2003 廃棄物処理のLCI

収集・運搬、焼却処理、最終処分場(建設時)

○ ○ CO2 廃棄物処理全体として分別と処理の効果を評価するにはフロー制御された廃棄物の処理工程から発生する環境負荷を把握することが必要となる。一般廃棄物処理の主要工程である収集,焼却,処分(建設時)について複数の地域,施設のLCIデータ(環境負荷)を原単位化した上で比較することにより,各工程の特徴を明かにした。

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28 一般廃棄物の広域化処理に関する環境負荷評価

岩淵善美, 東野達,笠原三紀夫,仁井本貴庸

京大 大学院エネルギー科学研究科住友信託銀行

空気調和・衛生工学会論文集NO. 88; P. 13-23;(2003)

2003 一般廃棄物の広域化処理の環境負荷評価

基本地域、広域地域(ごみの収集、中間処理、最終処分)

○ ○ エネルギー、CO2,NOx、SOx

一般廃棄物処理・処分の広域化による環境負荷量を定量的に把握するために,自治体が個別に行った場合と,広域化し全地域を一つとして行った場合のシナリオについて,ごみの排出から収集運搬,中間処理,最終処分までを比較の対象範囲とし、インベントリ分析を行った。広域化処理はごみ発電を行なうと一般廃棄物処理・処分のエネルギー・環境負荷量が削減される。

29 地球温暖化と用廃水 し尿・浄化槽汚泥等の処理に伴うエネルギー消費・温室効果ガス発生に関する分析

松井康弘, 山田正人

環境研 用水と廃水VOL. 45 NO. 4; P.328-335; (2003)

2003 し尿処理施設のLCI評価

6手法、19施設のし尿処理施設(建設、運転、機材の更新、解体・廃棄)

○ ○ ○ エネルギー、CO2,CH4,N2O

特性化 温暖化影響 し尿・浄化槽汚泥の収集・運搬から最終処分に至る処理システム全体を対象として ,エネルギー消費および温室効果ガス発生(CO2,CH4,N2O)のLCI分析を実施し,負荷構成を検討した。従来型し尿処理シナリオのエネルギー消費量、CO2発生量が、汚泥再生シナリオよりも多いことが判明した。

30 統計資料を用いた生活排水処理に伴うLCI分析

中野勝行, 南亘,KIM H

豊橋技術科学大学 化学工学論文集 VOL. 29 NO. 5; PAGE.640-645; (2003)

2003 生活廃水のLCI分析

管梁の建設・運用、ポンプ場、終末処理場、埋立処理

○ ○ ○ エネルギー、CO2、CH4,N2O

特性化 エネルギー消費、地球温暖化

分流式のみの公共下水道事業の環境インパクトの原因について,LCIを構築した。システム境界は管梁の建設・運用、終末処理場の建設・運用、必要な資材の製造、汚泥処理を含めた。調査対象とする環境インパクトカテゴリとしてエネルギー消費と地球温暖化への影響を選択した。

31 ゼロエミッション型のシステム境界に基づく自動車廃棄システムの評価

佐野昌紀, 我山武史, 井野博満中島謙一

原田幸明

法政大学 工学部 筑波大 大学院工学研究科物質・材料研究機構

日本金属学会誌VOL. 67 NO. 9; PAGE.464-467; (2003)

2003 ゼロエミッション型のシステム境界に基づく自動車廃棄システムの評価

自動車燃料タンク用鋼板(Pb-Snめっき鋼板、Zn-Sn-Niめっき鋼板)

○ ○ エネルギー消費量、CO2,SOx、NOx

自動車を例として,LCIのシミュレーションモデルを作成し,従来型のLCIと比較した。これを用いPb-Snめっき鋼板をZn-Sn-Niめっき鋼板に代替した際の環境負荷の低減効果を予測した。従来型の廃棄物処理システムと比較して,本処理システムでは環境負荷が著しく大きく算出された。

32 下水道システムのLCA評価に関する研究

中島英一郎, 山下洋正, 中島智史

国土技術政策総合研究所 下水処理研究室

国土技術政策総合研究所資料 NO. 138; PAGE. 93-98 (2003/12)

2003 下水道システムのLCA

高度処理法(滋賀県:湖西)、標準活性汚泥法(茨城県:伊師)、OD法(茨城県:友部)

○ ○ CO2、電力消費量 正規化 エネルギー資源、水資源、地球温暖化、富栄養化、酸性化、大気圏への排出、水圏への排出、土壌圏への排出

下水道システムにおけるLCAのケーススタディを,異なる処理方式の環境影響の比較検討を行い,また経年変化を考慮したモデルの適用性について検討した。その結果,環境負荷量は,OD法,高度処理法,標準活性汚泥法の順で,運転による電力使用量に伴うものが大部分であった。異なる環境要素の総合的評価での高度処理施設は,富栄養化原因物質の除去を標準法より効率的に行っているといえる。

33 工業製品の環境評価ソフト「LCA-NETS」の検証

定道有頂,加藤征三, 丸山直樹, 西村顕,木村幸雄

三重大 大学院三重大 工

富士電機

日本機械学会環境工学総合シンポジウム講演論文集VOL. 13th; PAGE. 374-377; (2003)

2003 LCA評価ソフト「LCA-NETS」の検証

家電製品(エアコン、洗濯機、冷蔵庫)、PETボトルリサイクル

○ ○ ○ CO2,NOx、SOxなど

統合化 化石燃料消費、天然資源消費、地球温暖化、オゾン層破壊、水汚染、大気汚染、酸性雨、廃棄物処理

LCA-NETS 工業製品の材料調達から廃棄までのあらゆる環境負荷を統合化し,定量的に評価する LCA手法としてLCA-NETSを構築し,この手法を用いたソフトを作成した。製品の評価の例として家電製品とPETボトルリサイクルの例をあげた。

34 生ごみ処理物を利用した高品質融合コンポスト製造システムの開発(1)地域における有機性廃棄物最適活用システムの構築 ア 有機性廃棄物の堆肥化と農耕地への利用についてのLCA評価

北畠晶子, 竹本稔 神奈川県農業総合研究所

神奈川県農業総合研究所試験研究成績書(経営情報) 平成15年度PAGE. 16-18; (2004)

2004 有機資源物質の処理・活用フロー図作成、インベントリデータ収集

三浦地域(牛ふん堆肥、生ごみ、収穫残さ、生ごみ堆肥等)

○ ○ (エネルギー、原料、固形廃棄物、環境負荷物質:CO2、CH4、等)

地域で発生する有機性廃棄物の活用を,最も環境保全的に行う評価システムの構築の検討を行った。平成15年度は,モデル地域における現状の有機質資源の処理・活用とコンポストシステム導入時の有機質資源の処理・活用時のインベントリ・データの収集を検討した。

35 ある高度下水処理プロセスのライフサイクルインベントリー分析(LCIA)

室山勝彦, 林順一,糸井健太郎,

阪元勇輝

関西大学 工学部

関西大学 大学院工学研究科近畿環境管理

ライフサイクルエンジニアリング研究報告書3平成15年度PAGE. 62-75; (2004)

2004 高度下水処理プロセスのLCI

滋賀県・湖南中部浄化センター(メタン発酵処理導入有無)

○ ○ CO2,NOx、SOx

滋賀県草津市の湖南中部浄化センターのプロセスデータに基づき,各プロセスユニットごとのLCI分析を行い,ユニットごとのCO2,NOx,SOxの排出量および寄与率を算出し,環境影響を評価した。

36 水処理装置のライフサイクルインベントリ

小池壮一郎, 長沢末男尾上俊雄, 綾田研三

造水促進センター

神鋼リサーチ

日本水環境学会年会講演集VOL. 38th; PAGE. 511;(2004)

2004 水処理装置のLCI

水処理に用いられる部品・機器、ユニットプロセス

○ ○ CO2 水処理装置の各ユニットプロセスのCO2排出量を産業連関表によるデータベースをもとに算出した。膜モジュールや大きなコンクリート槽からなる凝縮沈殿ろ過、膜ろ過、生物膜で多く、運用時はポンプやブロア用電力、逆浸透膜、活性汚泥プロセスで多い。

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37 リサイクル行動に対する行政施策の効果に関する検討

松井康弘, 田中勝,

大迫政浩

岡山大学 大学院自然科学研究科環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター

土木計画学研究・講演集(CD-ROM) VOL. 29; PAGE. X(141);(2004)

2004 市民参加による環境負荷の削減効果のLCI評価

ごみ分別方法:可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみ(古紙、アルミ缶、スチール缶、ペットボトル)

○ ○ ○ エネルギー消費 都市における分別行動予測モデルを構築し、LCI分析によって環境負荷の削減効果を定量的に評価した。エネルギー消費量が最も大きかったのは厨芥類だった。「情報認知の最大化」が効果として,また「ビン・缶」のエネルギー削減効果が最も大きかった。

38 紙のリサイクルに係る環境負荷データの収集およびライフサイクルアセスメントに係る調査報告書 平成15年度

古紙再生促進センター

古紙再生促進センター

紙のリサイクルに係る環境負荷データの収集およびライフサイクルアセスメントに係る調査報告書 平成15年度 古紙利用率向上促進対策事業PAGE. 78P; (2004)

2004 古紙利用のLCA

古紙回収(ヤード内、古紙回収車両、納入輸送)

○ ○ ガソリン、軽油、電力、水道、廃棄物

古紙利用率促進対策事業として,1)紙の回収・利用状況に関するデータの整理,2)紙のLCAに関わる既存データ(製紙業界関連・公開データベース)の活用,3)回収段階におけるデータの収集・分析を行った。

39 廃ペットボトルの再生化技術-アイエス法ケミカルリサイクルのLCI分析について-

杉本毅 アイエス 日本エネルギー学会誌VOL. 83 NO. 4; PAGE.267-271; (2004)

2004 廃PETボトルのケミカルリサイクルのLCI分析

バージン材との比較、ケミカルリサイクル・マテリアルリサイクル・サーマルリサイクルの比較

○ ○ エネルギー消費量、CO2,NOx,SOx、

アイエス法のPETボトルのケミカルリサイクル手法に関しLCI分析を行った。ケミカルリサイクルでは,リサイクル製造した樹脂と天然資源採掘を経由したバージン樹脂製造との間のエネルギー収支は同等値であり,又マテリアル及びサーマルリサイクルとの比較においても不利となる要因がない。

40 第41回全日本包装技術研究大会優秀発表スチール缶リサイクルの実態と考え方

森正晃 新日本製鐵 名古屋製鉄所

包装技術 VOL. 42 NO. 3; PAGE.244-247; (2004)

2004 スチール缶のLCI

ツーピースラミネート陽圧缶(350ml)

○ ○ エネルギー消費量、CO2

スチール缶のリサイクルの実態と特徴をを把握するためLCAを行った。コーヒーやお茶等の飲料用のPET樹脂ラミネートスチール缶を対象に,ライフサイクルコストやエネルギー消費量やCO2発生量等が把握できた。

41 マーケット創出の決着力を持つパッケージングを求めて容器・包装の環境設計への評価 容器包装に関するLCA研究と容器包装リサイクルの検証〈その3〉 環境省の"容器包装ライフサイクル・アセスメントに係る調査事業"

元川浩司 政策科学研究所 PackpiaVOL. 48 NO. 1; PAGE.52-61; (2004)

2004 容器包装のLCI解析

ビールびん、牛乳びん、PETボトル、紙パック

○ ○ エネルギー消費量、廃棄物、CO2,NOx、SOx

容器包装に関するLCAを行った。内容は、1)各容器のLCIデータ,2)回収率向上による影響についての分析,3)紙パックのリサイクルはエネルギー消費量に注意が必要,4)回収率の向上は環境保全に有効,5)他のLCI研究である。

42 プラスチックのリサイクル技術プラスチックフィードストックリサイクルのLCA

伊部英紀 東芝 ペトロテック VOL. 27NO. 1; PAGE. 17-21;(2004)

2004 廃プラスチックのフィードストックリサイクルのLCA

廃プラ焼却、廃プラ発電、廃プラ油化(三つのシナリオ)

○ ○ ○ ○ CO2 特性化 地球温暖化、化石燃料資源の枯渇

プラスチック油化プラントの運用実績に基づき,環境負荷の低減効果,フィ-ドストックリサイクルを実現した場合の効果などについて,LCAの試算・解析結果について解説した。これらの検討結果から,使用済みプラスチックを油化により各種の生成油として回収する事により,環境負荷が低減できる可能性を示した。

43 プラスチック製容器包装の処理に関するエコ効率分析

中尾正博伊藤洋之小曾根綾子磯畑重蔵

青木良輔林廣和、山下将国

荷福正隆、豊島元敬

日本ポリエチレン三井化学東ソー日本プラスチック工業連盟産業環境管理協会産業情報研究センタープラスチック処理促進協

プラスチック製容器包装の処理に関するエコ効率分析 平成17年PAGE. 169P; (2005)

2005 廃プラスチックのエコ効率分析

マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル、ごみ発電

○ ○ ○ ○ エネルギー消費、CO2、SOx、NOx、埋立処分量

統合化 資源消費、エネルギー消費、地球温暖化、酸性化、土壌への排出物

エコ効率分析 本調査は、次の二つのテーマについて分析したものである。1)容器包装リサイクル法の分別収集廃プラスチックを対象とするマテリアルリサイクル(MR)・ケミカルリサイクル(CR)と、廃プラスチックの焼却による発電を対象とするサーマルリサイクル(TR;エネルギー回収)の各事例のエコ効率分析、2)ごみ発電システムのエコ効率分析。影響評価・経済的負担の計算前提と手順、および今後の課題,についても言及した。

44 水銀と環境 水銀の物質フローと蛍光管リサイクルのあり方

浅利美鈴, 福井和樹, 酒井伸一,高月紘

京大 環境保全センター石川県大

廃棄物学会誌 VOL. 16NO. 4; PAGE. 223-235;(2005)

2005 日本における水銀の物質フロー解析

水銀のマテリアルフロー

○ ○ 水銀を含む蛍光管を取り上げ、日本における水銀の物質フロー解析により、有害物質を含む家庭製品の循環システム構築の方向性を検討した。また、蛍光管の循環・廃棄フロー推定より、現在は水銀フロー量として、最終的には焼却と埋立への負荷が大きく、リサイクル量は小さいと考えられた。

45 家庭系廃プラスチックの処理の現状 廃プラスチックの焼却処理

安田憲二 岡山大 大学院自然科学研究科

都市清掃 VOL. 58 NO.263; PAGE. 12-16;(2005)

2005 廃プラスチック処理処分方法のエコ効率の視点からの比較

マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクル、埋立

○ ○ ○ (CO2、SOx、NOx)

統合化 地球温暖化、酸性化、資源消費、エネルギー消費、大気への排出物、土壌への排出物

エコ効率 廃プラスチックの処理処分法として好ましい方法について考察評価を試み、エコ効率の分析報告(プラスチック処理促進協会調査)を紹介した。ライフサイクルインベントリ分析を行った結果、エコ効率の視点からサーマルリサイクルを最も望ましい手法と位置づけている。ただし、課題として発電効率の向上が指摘され、CO2の削減が求められる。

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46 高炉水砕スラグの再利用に関する環境の信頼性に関する予測

Kun-Mo LEEPil-Ju PARK

Ajou UniversityNational Institute OfAdvanced IndustrialScience AndTechnology

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.69-70Oral Session S1-4-3

2004 環境上好ましい高炉水砕スラグ再利用法の選定

①ポルトランドセメント、②スラグセメント、③スラグ粉末、④珪酸肥料の原料へのリサイクル

○ ○ ○ CO2 特性化 地球温暖化 高炉水砕スラグ(GBFS)を再利用するに当り、環境への好影響を定量化した。定量化にはシステム拡張法を適用し、GBFSを、①ポルトランドセメント、②スラグセメント、③スラグ粉末、④珪酸肥料の原料へリサイクルする4ケースを検討した。評価結果は、②、①の減量へリサイクルが最も環境へ好影響を与えるという結果となった。

47 建物解体廃棄物処理のLCl分析とシステム境界

小林謙介、目澤理恵、井上隆間宮尚

東京理科大学

鹿島建設(株)

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.79-82Oral Session S1-4-6

2004 建築解体廃棄物の処理法によるCO2排出量の把握

コンクリート塊、木くず、混合廃棄物の埋立、焼却、リサイクル

○ ○ CO2 建築解体廃棄物は構成素材や廃棄物処理法が多様なため、CO2排出量を推定するのが難しい。そこで、コンクリート塊、木くず、混合廃棄物について、埋立や焼却、リサイクルなど4つのシナリオを設定してCO2排出原単位を求めた。その結果、埋立や焼却より、リサイクルを行うシナリオの方がCO2発生は大幅に少ない。

48 食品廃棄物循環の促進対策と処理方法の動向

河瀬玲奈、松岡譲増井利彦

京都大学

(独)国立環境研究所

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.83-86Oral Session S1-4-7

2004 食品廃棄物に対する環境上の制約の経済影響

産業系および事業系食品廃棄物

○ ○ CO2 産業系および事業系食品廃棄物のリサイクルが日本の経済に与える影響を分析した。環境上の制約として、①2010年までにCO2発生の6%削減、②固形廃棄物を1996年比半減、を設定すると、何の制約もない場合と比べて2010年時点でGDPが15%以上低下する。

49 戦略的廃棄物マネジメントのためのWLCA(廃棄物LCA)

田中勝、松井康弘、西村文香

岡山大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.171-174Oral Session S1-8-1

2004 廃棄物マネジメントのための計画ツールの開発

津山市の廃棄物処理シナリオ

○ 費用、エネルギー消費、CO2、埋立量

循環型社会への転換を図るには費用、エネルギー・資源、環境負荷のトレードオフを踏まえて、特に廃棄物マネジメントの最適化が必要である。著者らはWLCCとWLCAに基づいた戦略的廃棄物マネジメントのための計画ツールを開発中であるが、本稿では、岡山県津山市の廃棄物処理シナリオに適用した結果を示す。

50 使用済み自動車リサイクル対策の廃棄物産業連関ライフサイクルアセスメント

布施正暁近藤康之、中村愼一郎

中央大学早稲田大学

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.179-180Oral Session S1-8-3

2004 使用済自動車のリサイクル戦略の評価

3種のリサイクルシナリオ

○ ○ ○ CO2 日本における使用済自動車(ELV)のリサイクル戦略を評価するため、廃棄物産業連関(WIO)LCA手法を用いて中古部品と廃棄物に関するマテリアルフローを検討した。さらに、乗用車を想定して、従来のリサイクル、使用部品の再利用、全部利用を目的とした徹底解体という3つのシナリオについてLCAを実施した。

51 ライフサイクル環境影響評価手法を利用した廃プラスチック処理技術の費用便益分析

本下晶晴、伊坪徳宏、八木田浩史、稲葉敦

(独)産業技術総合研究所

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.181-184Oral Session S1-8-4

2004 廃プラスチック処理技術の有効性評価と代替技術による環境影響削減の可能性

焼却、埋立、エネルギー回収、マテリアルリサイクル、高炉原料化、他

○ ○ ○ ○ CO2、コスト 統合化 外的コスト LIME 主要な廃プラスチックの処理技術について、LIMEを利用して環境影響評価と費用便益分析を行った。燃焼過程を含む処理技術では社会コスト増加が顕著であった。マテリアルおよびケミカルリサイクルは社会コストを抑制でき、さらに費用便益効果も高かった。処理技術の代替により社会コスト、処理費用の削減が可能と思われた。

52 開発初期段階へのLCA適用による廃水処理プロセスの実用化方策検討の提案

神子島かおり、杁山圭子荒川清美ゲディガヨハネス

ピーイーアジア(株)

(株)荏原製作所ピーイーヨーロッパ

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.185-188Oral Session S1-8-5

2004 廃水処理技術の環境影響評価と環境負荷低減の検討

汚泥減容化とリン回収を組み合わせた廃水処理技術

○ ○ CO2、NOx、SOx、一次エネルギー

演者らは、「汚泥減容化とリン回収を組み合わせた廃水処理プロセス」を開発中である。この技術の開発初期段階でLCAを適用した結果、新技術はCO2排出が多くなったが、リン回収工程の処理薬剤を変更することにより環境負荷を低減できることが明らかとなった。

53 経済システムに蓄積された大量の物質ストックはどこへ行くのか?建設鉱物のマテリアルフロー分析

橋本征二、森口祐一谷川寛樹

(独)国立環境研究所

和歌山大学

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.193-196Oral Session S2-1-2

2004 建設鉱物のマテリアルフロー分析

日本の建設鉱物

○ 全ての国で、アスファルト、セメント、砂利、砕石、といった建設鉱物の物質蓄積が継続的に増加している。本稿では日本における建設鉱物のフローを過去から将来にわたって推計し、検討した。その結果、1)建設鉱物廃棄量は投入量より低く、隠れたフローや散逸的フローがある、2)「廃棄物と認識される」量は今後も増加する、ことが推定された。

54 廃棄物産業連関分析を用いた混合LCCと家電への応用

中村愼一郎、近藤康之

早稲田大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.211-212Oral Session S2-2-3

2004 使用済み家電への混合LCCの適用

テレビ、冷蔵庫、他家電製品

○ ○ ○ コスト 廃棄物産業連関分析(WIO)に基づく混合LCAを用いた新しいLCC手法で、使用済み家電の処理戦略を検討した。埋立、高度リサイクル、およびエコデザイン(DfD)を組み合わせたリサイクルを想定し、使用後の処理コストを内部化することによる影響を評価した。内部化により製品コストは増加するが、エコデザインの実施で削減が可能である。

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55 一般廃棄物処理における2つの埋め立て技術のライフサイクル比較評価

Jean - FrancoisMENARDRejean SAMSONLouiseDESCHENESPascal LESAGE

CIRAIG 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.305-306Oral Session S2-6-3

2004 一般廃棄物埋立技術のライフサイクル影響評価

工学的埋立、バイオリアクター利用埋立

○ ○ (CO2) 特性化 地球温暖化、資源消費量

一般廃棄物(MSW)処理における2つの廃棄物埋立技術(工学的埋立とバイオリアクター利用埋立)を比較した。LCI評価の結果、工学的埋立はバイオリアクター利用に比べ資源消費量が26%多く、環境負荷も91%多い。バイオリアクター利用の場合、発生ガスは電力あるいは熱に変換可能である。

56 品質を考慮したリサイクルペットボトルの輸送に関わる包括的なモデルの構築

藤井義久、フーヨンズ、福島康裕、平尾雅彦

東京大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.323-326Oral Session S3-1-3

2004 回収ペットボトルの配送モデルの構築

関東地方 ○ ○ CO2、コスト 回収ペットボトルを再生工場へ配送するシステムの再構築を行うことで環境負荷の低減と、システム全体のコスト削減が期待される。本研究では、LCA情報や回収ボトルの品質データを用いて、関東地方を想定して回収ボトルの最適配送モデルを構築した。モデルにはLCAとLCCの概念が利用されている。

57 GPLSを使用したマテリアルフローに基づく循環系のコスト対効果評価

青山敦、鍵山喬、仲勇治

東京工業大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.327-328Oral Session S3-1-4

2004 GPLSを用いる循環系の費用対効果の検証

ペットボトルのリサイクル(MR,CR,カスケードR、リサイクル無し)

○ ○ CO2、コスト 現行のLCA手法やLCAツールの機能は、社会経済的側面からの循環系の実現可能性の評価機能を持っていない。本研究ではGreen Production and LogisticsSimulator(GPLS)を用いて循環系の費用対効果の評価を行う方法を示した。事例として、ボトル用PET樹脂のライフサイクルを検証したが、ケミカルリサイクルは他の手法に比べCO2発生およびコストが大きくなった。

58 プラスチック製品の回収に関する静脈物流ネットワークの実施:兵庫県のエコタウンのケーススタディ

Helmut YABARTohm MORIOKA

大阪大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.345-348Oral Session S3-3-2

2004 プラスチック廃棄物回収システムの評価

兵庫県 ○ ○ ○ (コスト) 正規化 資源、エネルギー消費、地球温暖化、廃棄物

エコタウンを推進している兵庫県におけるプラスチック廃棄物の静脈物流ネットワークの実現可能性および適切な回収技術の組み合わせを分析した。LCAおよびLCCによって最新かつ代替可能なプラスチック回収システムを評価した。その結果、適切なプラスチック廃棄物回収技術と静脈物流を組み合わせることで、環境的にも経済的にも便益性が高いことが明らかになった。

59 日本における家計の消費活動とそれに伴う環境負荷の発生に関するモデルの構築

金森有子、松岡譲 京都大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.399-402Oral Session S3-5-4

2004 ライフスタイルが環境に及ぼす影響を評価するモデル

2030年までの家計消費支出と環境負荷発生量

○ ○ ○ 家庭廃棄物、大気汚染物質、水質汚濁物質、建築廃棄物、CO2

ライフスタイルの変化が環境に及ぼす影響を定量的に評価するモデルを開発した。このモデルは、財・サービス選好モデルと、物質・エネルギー収支モデルからなる。本研究では、2030年までの家計消費支出と、それに伴う環境負荷発生量を推計した。

60 不純物を含有したプラスチックを対象とするリサイクルコンセプト-ライフサイクルアセスメントのケーススタディ

Maiya SHIBASAKIMarc-AndreeWOLFThilo KUPFERPeter EYERER

University ofStuttgart

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.473-476Poster Session 18

2004 超臨界二酸化炭素を利用するプラスチックリサイクルのLCA

使用済み自動車用ガソリンタンク

○ ○ 正規化 光化学オキシダント、地球温暖化、酸性化、富栄養化、一次エネルギー消費

超臨界二酸化炭素による抽出技術を利用して、有機物質や溶剤のような不純物を含有するポリマーに対するリサイクルコンセプトを開発した。使用済みの自動車用ガソリンタンクを一例としてこのコンセプトに基づくライフサイクル分析を行い、焼却によるエネルギー回収方法と比較した。

61 イタリアの地域水管理システムヘのライフサイクルアセスメントの適用:予備結果

Lorella MERCURIAndrea RAGGI

University G.dAnnunzio

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.477-480Poster Session 19

2004 イタリアの廃棄物管理システムにLCAを適用し、代替的シナリオを特定

イタリアのPescara地区

○ ○ ○ CO2、SO2、PO4 特性化 地球温暖化、酸性化、富栄養化

イタリアの廃棄物管理システムについて、ライフサイクルアセスメント方法を適用して現行シナリオを分析して代替的な管理方法を特定するとともに、現行シナリオを今後のシナリオと比較し最適な方策を特定する。

62 都市固形廃棄物の処理プロセスを対象とする時間および場所依存ライフサイクルアセスメントのシミュレーションモデル化

Song LIMJaesoo JUNGTak HUR

Ecoeye Co.

Konkuk University

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.483-486Poster Session 21

2004 都市固形廃棄物の処理プロセスの比較

韓国における焼却および埋立てプロセス

○ ○ ○ CH4、CO2、SOx、NOx、焼却灰、フライアッシュ

統合化 鉱物資源消費、地球温暖化、オゾン層破壊、光化学オキシダント、酸性化、富栄養化、人間毒性、生態毒性

eco-indicator 都市の固形廃棄物の焼却および埋立てプロセスに関するLCA研究を実施した。潜在的環境影響は地球温暖化ガスの放出に著しく左右されるが、一方でエネルギーを回収することでその影響を軽減できる。

63 省エネルギー対策による下水道システムのコスト・環境負荷削減効果

西村彰人、天野耕二

立命館大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.487-488Poster Session 22

2004 LCA手法による下水道システムのコスト・環境負荷削減効果の評価

琵琶湖流域の上下水道システム

○ ○ CO2、CH4、N2O、コスト

LCA的手法を用いて、琵琶湖流域を中心とする上下水道システム(水利、水処理)に伴う年間二酸化炭素排出量の推定を行った。さらに、上下水道システムに新エネルギー(太陽光発電、風力発電)、未利用エネルギーを導入することによるコスト・環境負荷削減効果の比較・評価を行った。

64 需給バランスを考慮した畜産系廃棄物処理モデルの構築

磐田朋子玄地裕、稲葉敦島田荘平

東京大学(独)産業技術総合研究所東京大学

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.521-522Poster Session 33

2004 家畜糞尿の処理プロセス決定モデルの構築

岩手県乳牛等5種の家畜の糞尿メタン発酵、堆肥化

○ ○ CO2 糞尿発生量と、処理により生産される電力と肥料の需要量に応じて、多種の家畜糞尿を処理するためのプロセス決定モデルを構築した。その結果、メタン発酵技術がCO2排出量削減に大きく貢献していた。

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65 廃プラスチックのBTX回収システムにおけるインベントリー分析

中澤克仁

伊東正皓、藤吉裕信片山恵一安井至

(独)科学技術振興機構石川島播磨重工業㈱東海大学東京大学

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.549-550Poster Session 41

2004 廃プラスチックからBTXを回収する方法の評価

廃プラスチックからBTX回収他2ケース

○ ○ エネルギー消費、CO2、SOx、NOx

Ga-Si触媒を使用した廃プラスチックの接触分解油化処理から生成するBTX回収システムのインベントリー分析を行い、エネルギー消費等について調査した。また、原油からBTXを製造するシステム等とも比較を行った。

66 プラスチック廃棄物の再利用に関する環境効率

Tak HURHye-Jin LEEYong-Ki CHOIYou- Na CHOI

Konkuk UniversitySamsung ElectronicsKonkuk University

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.591-594Poster Session 54

2004 韓国におけるプラスチック廃棄物の再利用方法の比較

マテリアルリサイクル、化学リサイクル、サーマルリサイクル

○ ○ ○ ○ CO2、SO4、PO4、Pb、PAH,SPM,C2H4、コスト

特性化 地球温暖化、酸性化、富栄養化、重金属、発癌性、冬・夏スモッグ他

プラスチック廃棄物の再利用に関する意思決定には多様な要因が含まれる。これらの要因を同じ指標で統合するため、環境効率指標を検討した。その結果、マテリアルリサイクルが環境に優しいだけでなく、経済的にも採算がとれることが分かった。

67 地方自治体のインフラ整備のLCI一千葉市「生ゴミ回収システム」の事例

楊翠券芬、志水章夫匂坂正幸、稲葉敦

(独)産業技術総合研究所

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.677-680Poster Session 84

2004 地方自治体の生ごみ分別回収システムの構築

千葉市の生ごみ分別回収システム

○ ○ コスト、エネルギー消費、CO2

千葉市を対象として一般系・事業系生ごみの分別回収システムの可能性について検討した。また生ごみの回収段階におけるコスト、エネルギー消費量および環境負荷排出量に感度分析を行い、各段階のコスト、エネルギー消費量およびCO2排出量を推計した。

68 廃棄タイヤの回収システムおよびその環境パフォーマンス

Mario LEONKiyotaka TSUNEMI

Tohru MORIOKA

大阪大学Nati㎝al Institute ofAdvanced IndustrialScience andTechnology大阪大学

第6回エコバランス国際会議 議事録 p.681-684Poster Session 85

2004 廃タイヤ回収技術の環境パフォーマンス評価

材料回収、熱回収、ガス化

○ ○ ○ CO2 廃タイヤから素材および熱を回収する技術に対する環境パフォーマンス評価を実施した。環境パフォーマンスは、材料回収および熱回収の各方法に関して、ガス化プロセスを導入する方法と比較した。その結果,ガス化プロセスの利用が最良の環境パフォーマンスを示した。

69 ライフサイクルシミュレーションとマテリアルフローコスト会計の利用による都市LCAの動的拡張と循環構造分析

松本亨、左健柴田学

北九州市立大学 第6回エコバランス国際会議 議事録 p.689-692Poster Session 87

2004 都市インフラと資源循環の構造分析

北九州市における排水および廃棄物処理システムと再資源化システム5ケース

○ ○ ○ ○ エネルギー消費CO2

排水および廃棄物処理システムと再資源化システムを対象にLCAを実施した。その結果を元に、その動的な拡張として、2050年までのライフサイクルシュミレーションを実施した。

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Appendix 2 使用済自動車ケーススタディ A2.1 目的と調査範囲の設定

• 目的:平成 16年度に実施した使用済自動車(ELV)のケーススタディ 1)では、ELV処理に要する静脈系プロセスの温室効果ガス排出量をプロセス別に算定した。その結果、温

室効果ガス排出量の大きいプロセスとしてロータリーキルン炉における ASR燃焼に伴う CO2排出量が大きいなど、プロセス間の排出量の大小を明らかにした。しかし、実際に各プロセスで排出される温室効果ガス排出量を削減するには、その因果関係も含め

た対策が要求される。また、冷媒フロンのように大気放出をすると大きな温室効果が見

込まれるものを、回収している効果が見え難いといった課題も挙げられた。そこで、本

ケーススタディでは各プロセスにおける環境負荷低減対策の効果を定量化し、結果を分

かりやすく表示するための検討を行う。 • 機能単位:ELV1台を従来の廃棄物処理法に則って処理すること • システム境界:自動車の製造、使用段階は調査範囲に含めず、自動車の寿命が終わり ELVとなった段階からをシステム境界に含めた(図 a2.1)。ELVを適正処理する段階をサブシステム境界①とし、回収される素材類と同等と考えられる素材の製造システムをサブ

システム境界②とした。そしてサブシステム境界①で発生する環境負荷を正の値、サブ

システム境界②で発生する環境負荷を負の値で評価した。そして両サブシステムの和が

システム境界全体での環境負荷となる。つまり、再生材を市場に供給することによって

同等の素材製造が削減されると考えた。 • 対象 ELV:国内の平均的なモデルを平成 15年度調査 2)より設定した。モデル ELVは 1996年~97年製造車相当、1500ccクラスの乗用車である。

図 a2.1 システム境界 A2.2 処理シナリオの設定

インベントリデータは平成 16年度調査結果 1)を優先的に用いた。同じプロセスについて

複数データがある場合は、推計値や計算値よりもヒアリング値を優先して利用し、またヒア

リング値が複数ある場合はその平均値を用いた。粗鋼製造、アルミニウム一次地金製造、電

力等のバックグラウンドデータは JEMAI-LCA ver.1の標準データセット 3)を利用した。た

だし素材重量の大部分を占める鉄の再資源化については後述するインベントリを構築し、算

定に用いた。これらは全て日本平均値を用いたため、地理的有効範囲は日本国内である。対

象とした環境影響項目は地球温暖化への影響とし、CO2、フロンの大気放出量を評価した。

特性化係数は IPCC-100年指数 4)を用いた。 ELVの処理シナリオを次のとおり設定した。また処理フローを図 a2.2に示した。 a)破砕・ASR埋立型(Type a):ELVから部品類を取り外した後は、破砕し、金属スクラップのみ回収する。ASRは全量埋立処理する。フロン回収法施行(2002年 10月)以前における適法処理とし、フロン回収率は 0%とした。自動車リサイクル法には未対応である。 b)破砕・ASR熱利用型(Type b):破砕後までは破砕・ASR埋立型と同様であるが、ASRをロータリーキルン式熱分解ガス化溶融炉で再資源化する。自動車リサイクル法に対応し、フ

解体 素材製造自動車製造 ELV

適正処理

再生材

Sub-system boundary ① Sub-system boundary ②

再生処理

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ロン回収を実施する。解体業者へのヒアリングや回収機の性能から回収率は 90%5)とした。 c)全部再資源化・電炉型(Type c):解体をより精緻に実施し、銅成分を 0.3%以下にする。自動車リサイクル法第31条における「全部再資源化」に該当する。解体後の廃車ガラは三軸

圧縮のプレス機で3辺の合計が 1800mm程度になるようサイコロ状にプレス(以下、サイコロプレス)され、電炉にて利用される。フロン回収率は 90%とした。 d)全部再資源化・転炉型(Type d):サイコロプレスを転炉にて利用する。その他は c)全部再資源化・電炉型と同様とした。

図 a2.2 処理フローおよびシステム境界

リサイクル部品

ELV輸送ELV 解体

サイコロプレス

主部品

燃料タンク、ディスクホイール、マフラー、エキゾーストパイプマニホールド

鉛バッテリー

触媒

タイヤ

鉛、プラスチックペレット製造

Pt 製造

粗鋼製造、石炭燃焼

粗鋼製造

鉛精錬、廃液処理、樹脂リペレット

破砕、ゴム:燃焼、鉄:電炉

鉄:電炉、アルミ・銅:二次地金製造

電炉

電炉

電気銅、PVC製造

粗鋼、アルミ一次地金、電気銅製造

粗鋼製造

主部品製造リサイクル工程

ハーネスナゲット化

ガラス製造カレット化ガラス

PP製造バンパー

リペレット

転炉

Fe, Cu, Al scrap

Fly ash

Type

b 埋立

埋立

Fe, Cu, Al scrap

粗鋼、アルミ一次地金、電気銅製造

鉄:電炉、アルミ・銅:二次地金製造

鉄:電炉、アルミ・銅:二次地金製造

破砕破砕

粗鋼、アルミ一次地金、電気銅製造

溶融スラグ

液類

建築・土木資材

分解

焼却

全部再資源化型(Type c and d)

破砕型(Type a and b)

高度解体・プレス

Sub-system boundary ① Sub-system boundary ②

フロン

ロータリーキルンロータリーキルン

精錬

Type

a

body

ASR

Type c

Type d

Type

c a

nd d

Type

a a

nd b

*”Type a”は分解せず

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A2-3 インベントリ分析

インベントリ分析時に用いた条件等を下記にまとめた。 • ELV輸送:1台積みユニックにて、平均時速 32.5km/h、片道 50km、往路空車の条件で輸送するとした。

• ASR 輸送:10t 積トラックにて、平均時速 32.5km/h、片道 100km、往路空車、復路積載率 85%の条件で輸送するとした。

• 主部品再利用率:主部品の 10wt%がリサイクル部品として再利用されるとした。リサイクル部品は点検、清掃、美化のみを行うリユース部品と、分解、消耗品の交換、品質確

認を行うリビルト部品がある。ELV から抜き取った部品をリサイクル部品として流通・販売するまでのインベントリは入手できなかったが、影響が少ないと推測し、システム

境界外とした。しかしリサイクル部品利用によって新品の部品製造が節約されると考え

られる。新品の部品製造のインベントリは十分に整備されていないが、素材構成は明確

であるため、素材加工、部品組立の環境負荷は文献 6)より各素材の環境負荷と同等と仮定

して評価した。ここで、主部品とはエンジン、トランスミッション、ドライブシャフト、

ブレーキ、サスペンションを指す。 • 冷媒フロン:冷媒種類構成比は資料 7)を参考とし、CFC-12 が 74%、残りが HFC-134aとして評価した。回収したフロンはロータリーキルン炉で分解するとして評価した。ロ

ータリーキルン炉におけるフロン分解のインベントリは文献 8)より計算した。 • 鉛バッテリー処理:廃硫酸は中和、汚泥埋立する。PP樹脂製外枠は破砕後、リペレットし、マテリアルリサイクルする。鉛は溶解し、3号故鉛インゴットに加工するまでを評

価した。 • タイヤ:石炭ボイラーで利用するとして評価した。鉄分除去後は 33.9MJ/kg,

3.2kg-CO2/kg9)として算定した。 • 液類:残留燃料やエンジンオイル等は有効利用分も含め、最終的に燃焼させる。各液類は軽油燃焼相当の大気排出物があるとして算定した。

• 銅、アルミニウム:銅、アルミニウム再生地金製造プロセスのインベントリ 1)を用いた。 • 埋立:ASRを埋立処理している管理型処分場へヒアリングした結果 1)を用いた。 • ロータリーキルン式熱分解ガス化溶融炉:ASR可燃分の元素組成を、炭素 79%、水素12%、酸素 4%、塩素 3%、窒素 1%とし、ASR可燃分の発熱量は 40.2MJ/kgとした。発電端基準の発電効率は 10%とし、他のユーティリティ使用量は文献 1)の数値を用いた。付随し

て回収される蒸気はシステム境界外として評価対象にしなかった。 • 鉄:鉄スクラップサイコロプレスの電炉、転炉における再資源化のプロセスデータはそれぞれ図 a2.3、図 a2.4を用いた 10)。

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A2.4 特性化結果

各処理技術の地球温暖化への特性化結果を図 a2.5~図 a2.8に示す。a) 破砕・ASR埋立型ではフロンを回収しないため、大きな影響が発生している。しかし自動車リサイクル法に

対応した他のシナリオにおいても、フロンの 10%が未回収だとしたことにより、依然として大きな影響を示している。また埋立処理されていた ASRを焼却するため、樹脂中の炭素分が CO2となり、多くの温室効果を与えていることがわかる。一方、削減効果ではいずれ

のシナリオにおいても主部品回収による効果と、転炉、電炉の違いはあるが、廃車ガラ(ボ

ディ等)の再資源化による効果が大きい。 全部再資源化シナリオ間の数値の違いは、電炉では追加エネルギーが必要としたが、転炉

であれば前工程からの溶銑の余熱である程度は賄えると設定したためである。また、b)破砕・ASR熱利用型は全部再資源化シナリオ(c, d)に対して、バンパー、ハーネス、ガラスを回収していないため削減効果が少なく見積もられていることに注意しなければならない。 そのため、自動車リサイクル法に対応したシナリオ(b, c, d)間では大きな効果の差はないと言えるが、従来型の a)破砕・ASR埋立型と比較すると約 3000kg-CO2 equiv.の削減効果が見込めることがわかった。この効果は主にフロンの回収・破壊によるものである。また

本評価では対象としていないが、ASR埋立量の削減効果がある。

普通鉄スクラップ 1.000 kg 溶鋼(粗鋼) 0.952 kg

銑鉄 0.048 kg スラグ 0.095 kg

石灰 0.029 kg 排ガス 0.143 m3

酸素 0.024 m3 ダスト 0.015 kg

電極 0.001 kg

電力 0.386 kWh

サイコロプレス 1.000 kg 溶鋼(粗鋼) 0.72 kg

銑鉄 0.036 kg スラグ 0.07 kg

石灰 0.036 kg 排ガス 0.11 m3

酸素 0.123 m3 ダスト 0.01 kg

電極 0.001 kg

電力 0.322 kWh

電炉プロセス

電炉プロセス

図 a2.3 電炉のプロセスデータ

図 a2.4 転炉のプロセスデータ

普通スクラップ 1.00 kg 溶鋼 0.92 kg

鉄鉱石 0.03 kg スラグ 0.06 kg

追加熱量 1.19 MJ ダスト 0.01 kg

サイコロプレス 1.00 kg 溶鋼 0.75 kg

鉄鉱石 0.03 kg スラグ 0.10 kg

石灰・ドロマイト 0.05 kg 排ガス 0.27 m3

酸素 0.13 m3 ダスト 0.01 kg

転炉プロセ

転炉プ

ロセス

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図 a2.5 インベントリ結果:a)破砕・ASR埋立型

図 a2.6 インベントリ結果:b)破砕・ASR熱利用型

-1,400 -1,200 -1,000 -800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800 1,000

ELV輸送

解体

破砕

ASR輸送

埋立

主部品

燃料タンク等

鉛蓄電池

タイヤ

液類

フロン

触媒

破砕後回収スクラップ

温室効果ガス排出量[kg-CO2 equiv./台]

Sub-system boundary ①

Sub-system boundary ②

3800 4000

新規製造削減効果- 2,570kg-CO2 equiv.

システム境界全体+ 1,774kg-CO2 equiv.

処理・再資源化+ 4,344kg-CO2 equiv.

合計値

-1,500 -1,000 -500 0 500 1,000

ELV輸送

解体

破砕

ASR輸送

埋立

ロータリーキルン

主部品

燃料タンク等

鉛蓄電池

タイヤ

液類

フロン

触媒

キルン炉回収スクラップ

破砕後回収スクラップ

温室効果ガス排出量[kg-CO2 equiv./台]

Sub-system boundary ①

Sub-system boundary ②

新規製造削減効果- 2,676kg-CO2 equiv.

システム境界全体- 1,382kg-CO2 equiv.

処理・再資源化+ 1,294kg-CO2 equiv.

合計値

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図 a2.7 インベントリ結果:c)全部再資源化・電炉型

図 a2.8 インベントリ結果:d)全部再資源化・転炉型

-1,500 -1,000 -500 0 500 1,000

ELV輸送

解体

プレス品輸送

電炉

主部品

燃料タンク等

鉛蓄電池

タイヤ

液類

フロン

触媒

バンパー

ハーネス

ガラス

温室効果ガス排出量[kg-CO2 equiv./台]

Sub-system boundary ①

Sub-system boundary ②

新規製造削減効果- 2,503kg-CO2 equiv.

システム境界全体-1,379kg-CO2 equiv.

処理・再資源化+ 1,124kg-CO2 equiv.

合計値

-1,500 -1,000 -500 0 500 1,000

ELV輸送

解体

プレス品輸送

転炉

主部品

燃料タンク等

鉛蓄電池

タイヤ

液類

フロン

触媒

バンパー

ハーネス

ガラス

温室効果ガス排出量[kg-CO2 equiv./台]

Sub-system boundary ①

Sub-system boundary ②

新規製造削減効果- 2,558kg-CO2 equiv.

システム境界全体- 1,551kg-CO2 equiv.

処理・再資源化+ 1,007kg-CO2 equiv.

合計値

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0% 20% 40% 60% 80% 100%

その他

鉛地金製造

電炉(回収スクラップ処理)

主部品製造

アルミニウム地金製造

粗鋼製造

A2.5 解釈

5.1 不確実性分析

本評価において設定した ELVの重量、素材構成、処理手法等のシナリオにおいて、バックグラウンドデータの不確実性をモンテカルロシミュレーションを用いて分析した。モンテ

カルロシミュレーションとは「確率論的なインプット変数に対して、アウトプット変数の分

布を推定することを目的としたサンプリング実験 11)」である。破砕・ASR 熱利用型(b)を対象とし、バックグラウンドデータについて検討した。各プロセスの確率分布は三角分布と仮

定し、最小値、最大値を±10%変化させた場合の分析を実施した。ただし主部品製造は±20%変化させた。その結果、サブシステム境界①と②の合計値の 95%信頼区間は-1,538 から-1,225kg-CO2 equiv.となった。不確実性の影響割合の大きい順に5つのプロセスを抜粋し、図 a2.9に示した。粗鋼製造プロセスの影響が 85%、アルミ製造プロセスの影響が 10%を占める。

図 a2.9 不確実性分析結果

5.2 感度分析

各プロセスの環境影響の大小、及び環境影響削減効果を評価したが、その結果のみでは改

善プロセスの特定は困難である。例えば主部品の再利用率向上によって、部品として回収さ

れる量は増加するが、同時に素材としての回収量が減る。それらトレードオフの関係を含め

てその活動の効果を把握する必要がある。またシナリオとして任意に設定した数値の影響を

確認する必要もある。そこで表 a2.1に示す変更可能な要素について、環境影響を最大とする値(Max.)、最小とする値(Min.)を仮定し、これまで用いてきた基準とした値(Std.)でその環境影響を比較した。ELV輸送距離は 5社へのヒアリング結果 1)から最大 200kmとし、最小は理論的な最小値である 0kmとした。ASR輸送距離は、解体処理に比べ拠点数がより少ないと考え、最大 400km としたが、最小値は 0km とした。主部品再利用率とフロン回収率は、環境影響が最大となる 0%、逆に最小となる 100%を条件として設定した。ロータリーキルン式熱分解ガス化溶融炉における発電効率は先述の 10%を基準とし、最小値を 40%、最大値を 0%とした。電炉及び転炉で発生する CO ガス燃焼に伴う熱量を

436kJ/mol-CO20)とし、それらが理想的に有効利用された場合、電炉では系統電力、転炉で

は石炭燃焼が同じ熱量分削減されるとして計算した。つまり、現状では CO ガス利用率は0%であるが、理想状態では 100%とした。ただし、電炉、転炉における排ガス処理工程変化、主部品再利用時のリビルト工程等の環境負荷が含まれていないため、過剰に効果が評価

されていることに注意しなければならない。

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-2,000 -1,000 0 1,000 2,000 3,000 4,000

転炉ガス有効利用

電炉:COガス有効利用

ロータリーキルン発電効率

ASR輸送距離

フロン分解率

主部品再利用率

ELV輸送距離

温室効果ガス排出量 [kg-CO2 equiv.]

d)全部再資源化・転炉型

c)全部再資源化・電炉型

b)破砕・ASR熱利用型

表 a2.1 感度分析設定条件 Process Max. Std. Min.

ELV 輸送距離 200km 50km 0km 主部品再利用率 0% 10% 100% フロン回収率 0% 90% 100% ASR 輸送距離 400km 100km 0km ロータリーキルン発電効率 0% 10% 40% 電炉:CO ガス有効利用率 0% 0% 100% 転炉:転炉ガス有効利用率 0% 0% 100%

結果を図 a2.10 に示す。フロン回収率が悪化すると大きく環境影響が増加することがわかった。回収機の性能によっては特に冬季に回収率が 50%程度まで低下するため、回収率を高く維持させることが重要である。また放出している残り 10%の回収による改善ポテンシャルが約 390kg-CO2 equiv.と大きい。また主部品再利用による改善ポテンシャルも約1250kg-CO2 equiv.と大きい。ガス化溶融炉、電炉、転炉とも ASR の熱エネルギーを有効活用することによる削減効果は 250~300kg-CO2 equiv.であった。一方、ELV 輸送距離やASR輸送距離の増減は比較的影響が小さい。 このように、ELV 輸送距離の低減やフロン回収率の向上など、複数の環境改善の取組みの効果を最大値、最小値として示すことにより、その取組みの優先順位等を考える際の有用

な情報を提供できると考える。

図 a2.10 感度分析結果

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A2.6 結論

・ フロン回収率、主部品再利用率が環境影響低減プロセスとして重要であることを抽出し

た。車体または ASR 輸送は他のプロセスと比較してその影響割合は低いことが分かった。

・ 自動車リサイクル法に対応した各技術間では大きな効果の差はないが、従来型の破砕・

ASR埋立型と比較すると約 3000kg-CO2 equiv.相当の削減効果が見込める。 ・ バックグラウンドデータの不確実性分析の結果、粗鋼製造およびアルミニウム製造工程

の影響が大きいことがわかった。 ・ 感度分析として変更可能な要素の最大値、最小値を設定し、環境影響の変化を表すこと

で、評価結果をより実用的に示すことができた。 参考文献

1) 産業環境管理協会「平成 16年度 NEDO委託 製品等ライフサイクル二酸化炭素排出評価実証等技術開発製品等 LCA及び静脈系に係る LCAの研究開発成果報告書」(2005)

2) 産業環境管理協会「平成 15年度 NEDO委託 製品等ライフサイクル二酸化炭素排出評価実証等技術開発製品等 LCA及び静脈系に係わる LCAの研究開発成果報告書」(2004)

3) Kobayashi M., Inaba A., Matsuno Y.,: Proc. 4th. Int. Conf. Ecobalance, Tsukuba,(2000), pp. 703-706

4) LCA 日 本 フ ォ ー ラ ム :“ JLCA-DB, 2005 年 第 2 版 ” 入 手 先

<http://www.jemai.or.jp/lcaforum/>,(参照 2005-9-20) 5) 経済産業省、環境省:“フロン回収破壊法第一種特定製品の回収に関する運用の手引き(第 2版)”,(2002),pp.17

6) Motegi S.,; Proc. 5th. Int. Conf. EcoBalance, Tsukuba, (2002), pp.127-130 7) 環境省:“平成 14年度のフロン回収破壊法に基づくカーエアコンからのフロン類の回収量等の報告の集計結果について(参考5)初期充填量に対する推計回収率・破壊率につ

い て ”, 環 境 省 報 道 発 表 資 料 ,( オ ン ラ イ ン ), 入 手 先 < http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=5112&hou_id=4542> , ( 参 照

2005-9-24) 8) Urano K., Kato M.,; Fundamentals and Evaluation of Destruction Technologies of

Fluorocarbons, Journal of Resource and Environment, Vol.38, No.2(2002), pp.165-186. 浦野紘平、加藤みか「フロン類の破壊処理技術の全体像」資源環境対策,Vol.38, No.2(2002), pp.165-186

9) Nakamura S.,Inada S., Abe H., Suzuki M., Matsutani M.,; Proc. 3rd. Int. Conf. EcoBalance, Tsukuba, (1998), pp.391-394

10) 中野勝行、成田暢彦、青木良輔、八木田浩史、第 14回日本エネルギー学会大会予稿集、大阪(2005)、pp.356-357

11) James R. Evans, David L. Olson/ 服部正太監訳:“リスク分析・シミュレーション入門”構造計画研究所発行、東京(1999)、P.9

12) 日本金属学会編,“金属精錬工学”,丸善,東京 (1999),p.177

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Appendix 3 使用済 PET ボトル(閉ループリサイクル)ケーススタディ A3.1 目的と調査範囲の設定

• 目的:閉ループリサイクルの事例を示すために、PET ボトルのボトル to ボトル技術によるリサイクル効果を試算する。

• 機能単位:PET ボトル 1kg の市場への提供 • 評価項目:CO2 • システム境界:PETボトルを製造し、適正処理、リサイクルするまでを含む。ただしボトル成型後の輸送、飲料充填、使用の各段階は対象外とした(図 a3.1)。

• 前提条件:調査対象は PET ボトル本体のみとし、キャップ、ラベルは対象外とした。 • 時間的有効範囲:2000 年前後のデータを利用 • 地理的有効範囲:日本 • 技術的有効範囲:化学分解法による PET ボトルのケミカルリサイクル技術 • 代表性:国内唯一のプラントのデータであるため代表性は高い。 • 完全性:廃棄物として PET ボトルを処理する際の輸送プロセスを除外した。

図 a3.1 システム境界

A3.2 インベントリ 分析

<単位プロセスデータ>

• PET 樹脂製造:炭酸用 500ml-PET ボトル原料樹脂製造のデータを利用 1)

• PET 樹脂輸送:炭酸用 500ml-PET ボトル原料樹脂を成型工場までの輸送データを利用 2)

• PET ボトル成型:PET ボトル成型データを利用 3)

• PET ボトル焼却:PET 樹脂中の炭素分が全量CO2になると仮定して計算。 • PET ボトル回収:3tパッカー車、燃費 3.5km/ℓ、積載率 10%、平均走行距離 100km と仮定 4)。

• 回収率α:平成 17 年度実績より 61%とする。 • ベール化:0.05kWh/kg-PET とした。収率は 100%とした。 • 化学分解法再生ボトル用 PET 樹脂製造:マテリアルバランスより収率 93%と推計 5)

• 再生 PET 樹脂輸送:PET 樹脂輸送と同じとする。 • バックグラウンドデータ:電力、燃料燃焼等のその他のバックグラウンドデータは JEMAI-LCA Pro 2.0.2 標準データセット)を用いた。

資源採取 精製PET樹脂

製造 輸送 ボトル成型

洗浄 回収

(充填)

ベール化フレーク化

(使用)

解重合

焼却

β:収率

α:回収率

再生PET樹脂

輸送焼却

(輸送)

輸送

重合

システム境界

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<マテリアルフロー及びインベントリ分析>

・リサイクルを実施する場合

図 a3.2の原単位は基準フローに対して相対値で表した CO2排出量である。雲形吹き出し

中の数値は、原単位と基準フローの積で計算された CO2排出量である。計算上は、使用済

み PETボトルからの回収率が α 、解重合プロセスからの再生 PET樹脂の収率が β、PETボトル利用量(機能単位)を 1 kg とすると、新規に製造しなければならない PET樹脂量は (1 – αβ) kg となる。これは、図 a3.3 のマテリアルフローを見るとわかりやすい。例えば、1kgの PETボトルを定常的に利用するには、未回収部分と再生工程におけるロスと同量を新規樹脂で補充する必要がある。これが、0.43kgである。

図 a3.2 使用済 PET ボトル閉ループリサイクル

図 a3.2 の例では、回収率 α = 61%、 解重合プロセスから再生 PET 樹脂の収率 β = 93% とすると、PETボトル 1.00 kgに相当する機能を提供させるには 0.43kgの新規 PET樹脂の補充が必要だといえる。このとき、システム全体の CO2 排出量は 4,026 g-CO2 となる。

図 a3.3 PETボトル 1kg利用時のマテリアルフロー

回収:0.61kg 未回収・焼却:0.39kg

再生PET:0.57kg

PET利用:1.00kg

ロス・焼却:0.04kg

再生PET:0.57kg 新規PET製造:0.43kg

PETボトル

利用

使用済PETボトル回収

再生PET製

造(解重合)

PETボトル

成型

資源採取 精製PET樹脂

製造輸送 ボトル成型 (充填) (使用)

焼却

β:収率

α:回収率

再生PET樹脂

695g-CO2 906g-CO2

894g-CO2

1,325kg-CO2

61%

93%

焼却

94g-CO2

総使用重量:1.00kg-PET相当

(輸送)

輸送

112g-CO2

基準フロー:α=0.61kg原単位:2,174kg-CO2/kg-PET相当

基準フロー: (1-αβ)= 0.43kg-PET

原単位:1,612g-CO2/kg-PET基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET基準フロー:(1-α)=0.39kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:α(1-β)=0.04kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:αβ=0.57kg-PET

原単位:196g-CO2/kg-PET

洗浄 回収ベール化フレーク化解重合 輸送重合

解重合プロセス

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・リサイクルを実施しない場合 図 a3.4 は、リサイクルがない場合のシステムを示す。この場合、使用済 PET ボトルはすべて焼却される。PETボトル 1.00 kg に相当する機能を提供するためには、PET樹脂新材 1.00 kg を供給する。このとき、システム全体の CO2 排出量は 4,810 g-CO2 となる。 これより、PET ボトル 1.00 kg に相当する機能を提供する場合、リサイクルの効果は CO2 排出量にして 784 g-CO2 である。図 a3.5に比較結果をグラフにまとめた。

図 a3.4 リサイクルがない場合の製品システム

図 a3.5 PETボトルの閉ループリサイクルの評価結果

0

1

2

3

4

5

6

閉ループ 未リサイクル

CO2排

出量

[kg-

CO2]

再生品輸送

ロス焼却

解重合

未回収焼却

ボトル成型

樹脂製造

784g

資源採取 精製PET樹脂

製造輸送 ボトル成型 (充填) (使用)

焼却1,612kg-CO2 906g-CO2

2,292g-CO2

総使用重量:1.00kg-PET相当

(輸送)

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET基準フロー:1.00kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:1,612g-CO2/kg-PET

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A3.3 解釈

最終的な結論を導き出す前に、感度分析を実施する。本事例では① 限界分析、②確率分析、③What-if分析を実施した。 計算に用いた各工程の CO2排出原単位、回収率、解重合プロセスの収率を変数とし、そ

れらの感度分析を実施した。まず限界分析として各変数を一定割合(ここでは 10%)変化させることによる全体への影響率を算定した。次にモンテカルロ法を用いて確率分析を実施

した。しかしモンテカルロ法による分析に必要な確率密度分布の情報が不足しているため、

ここでは±10%の一様分布と仮定して実施した。その結果(図 a3.6)、解重合プロセスの収率が最も感度が高く、次に解重合工程の原単位となった。一方、ベール化工程の感度は低か

った。またモンテカルロ法においても簡易的な確率密度分布を与えたため、各要素を一定割

合変化させる限界分析とほぼ同様の分析結果となった。

図 3.2.6 感度分析結果(限界分析・確率分析)

次に、What-if 分析を実施した。最も重要な変数である収率変化の影響を把握するため、40%から 100%まで変化させた場合について計算した(図 a3.7)。その結果、仮に収率が 40%になるとシステム全体での CO2排出量は 5.2kg になる。これは当初計算した 4.0kg より 3割も多いだけでなく、リサイクルしないケース(4.8kg)よりも多い。一方、基準とした収率(93%)を最大(100%)にすると、0.1kg の削減効果があると計算される。そのため収率は十分な精度をもってデータ収集することが重要である。また、仮に十分な精度があるな

らば、収率向上による CO2削減ポテンシャルは 0.1kgであるといえよう。

0% 10% 20% 30% 40% 50%

ベール化工程

輸送(原料→成型)

燃焼(工程ロス)

再生PET輸送工程

PETボトル回収工程

PET製造工程

PETボトル回収率

燃焼(未回収品)

PETボトル成型工程

解重合工程

解重合収率

寄与率

限界分析

確率分析

0

1

2

3

4

5

6

40% 60% 80% 100%

解重合プロセス収率

CO

2排

出量

[kg-

CO

2]

再生品輸送

ロス焼却

解重合

未回収焼却

樹脂製造

ボトル成型

ボトル成型

樹脂製造

未回収焼却

解重合

ロス焼却

本シナリオで用いた収率

図 a3.7 解重合プロセス収率の感度分析

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また、回収率を変数として同様に What-if 分析を実施した(図 a3.8)。回収率は 61%を基準にして

分析したが、回収率が100%になるとCO2排出量は3.5kgになり、リサイクルしないケースと比較し削

減量は 1.3kg となる。

図 a3.8 回収率の感度分析

A3.4 結論

ボトル toボトル技術を用いてリサイクルすることで、現状の回収率(61%)では、PETボトル 1kgにつ

き 0.8kg の CO2排出量削減効果が見込まれる。さらに回収率を 100%にすると、1.3kg の削減効果

が期待できる。また解重合工程の収率は結果に大きく影響を及ぼすため、データ精度の確認が必

要である。もし十分なデータ精度が確保されているなら、収率を向上させることでさらに 0.1kg の削

減余地がある。

1) PET ボトル協議会:PET ボトルの LCI データ調査報告書(2000), P.12 2) PET ボトル協議会:PET ボトルのインベントリ分析報告書(2004), P.12 3) PET ボトル協議会:PET ボトルの LCI データ調査報告書(2000), P.59 4) プラスチック処理促進協会:廃プラスチック処理・処分システムのエコ効率分析, (2003), P.24 5) PETボトル協議会:PET ボトルのインベントリ分析報告書(2004), P.10 6) 産業環境管理協会:LCA支援ソフトウェア JEMAI-LCA Pro 2.0.2 (2005)

0

1

2

3

4

5

6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

回収率

CO

2排

出量

[kg-

CO

2]

再生品輸送

ロス焼却解重合

未回収焼却樹脂製造

ボトル成型

ボトル成型

樹脂製造

未回収焼却解重合

本シナリオで用いた回収率

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Appendix 4 使用済 PET ボトル(開ループリサイクル)ケーススタディ

A4.1 目的と調査範囲の設定

• 目的:開ループリサイクルの事例を示すために、PET ボトルを他の素材に材料リサイクルする効果を試算する。

• 機能単位:PETボトル 1kgによる飲料保持機能及び 0.54kgの衣服を市場へ提供すること • 評価項目:CO2 • システム境界:PETボトルを製造し、適正処理、リサイクルするまでを含む。ただしボトル成型後の輸送、飲料充填、使用の各段階は対象外とした(図 a4.1)。

• 前提条件:調査対象は PET ボトル本体のみとし、キャップ、ラベルは対象外とした。

図 a4.1 システム境界

A4.2 インベントリ分析

<単位プロセスデータ>

• PET 樹脂製造:炭酸用 500ml-PET ボトル原料樹脂製造のデータを利用 1)

• PET 樹脂輸送:炭酸用 500ml-PET ボトル原料樹脂を成型工場までの輸送データを利用 2)

• PET ボトル成型:PET ボトル成型データを利用 3)

• PET ボトル焼却:PET 樹脂中の炭素分が全量CO2 になると仮定して計算。 • PET ボトル回収:3tパッカー車、燃費 3.5km/ℓ、積載率 10%、平均走行距離 100km と仮定 4)。

• 回収率α:平成 17 年度実績より 61%とする。 • フレーク化:国内の主要なフレーク化プロセスの平均値を利用した。収率は 80%とした。5) • ペレット化:PET 樹脂 1kg につき 0.2kWh の電力消費として計算。歩留まりはは 100%とした。 • ポリエステル繊維製造:一般的なポリエステル繊維製造のデータを利用 6)

• 製織・染色・縫製:ブラウス製造のデータを利用 6)

• 流通:4 トントラックに満載し、片道 300km、復路空車で輸送するとした。 • バックグラウンドデータ:電力、燃料燃焼等のその他のバックグラウンドデータは JEMAI-LCA Pro 2.0.2 標準データセット)を用いた。

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

PET樹脂製造

PET樹脂製造

(使用)

システム境界

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<マテリアルフロー及びインベントリ分析>

・リサイクルを実施する場合

図 a4.2の原単位は基準フローに対して相対値で表した CO2排出量である。雲形吹き出

し中の数値は、原単位と基準フローの積で計算された CO2排出量である。使用済 PETボトルからペレットを再生し、これを衣服製造の原料にリサイクルするシステムを示す。

図 a4.2 PET ボトル再生ペレットより衣服を製造するシステム ・リサイクルを実施しない場合 図 a4.3 はリサイクルなしで PET ボトルによる飲料サービスと衣服の製造を行うシステムを示す。

図 a4.3 PET ボトルと衣服を石油原料のみから製造するシステム

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET

906g-CO21,416g-CO2

基準フロー:0.61kg-PET原単位:312g-CO2/kg-PET

191g-CO21,173g-CO2

基準フロー:0.51kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

131g-CO2

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:267g-CO2/kg-PET

基準フロー:0.491kg-PET

原単位:84g-CO2/kg-PET

41g-CO2

453g-CO2

基準フロー:0.32kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,840g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

合計:15,283g-CO2

資源採掘 石油精製

焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

(流通・使用)

焼却

収率93.7% 収率66.7%

PET樹脂製造

PET樹脂製造

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:906g-CO2/kg-PET

2,292g-CO2

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:2,292g-CO2/kg-PET

1,144g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

2,182g-CO2

基準フロー:0.76kg-PET

原単位:2,881g-CO2/kg-PET

6,840g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:12,763g-CO2/kg-PET

99g-CO2

基準フロー:0.54kg-PET

原単位:185g-CO2/kg-PET

1,852g-CO2

基準フロー:0.81kg-PET

原単位:2,291g-CO2/kg-PET

1,416g-CO2

基準フロー:1.00kg-PET

原単位:1,416g-CO2/kg-PET

906g-CO2

合計:16,731g-CO2

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- 107 -

リサイクルプロセスの有無の効果を見ると、図 a4.2全体では 15,283g-CO2、図 a4.3全体では 16,731g-CO2となり、その差は 1,447g-CO2と計算される。 <変化のあるプロセスのみ評価>

図 a4.2および図 a4.3をよくみると、同じ数値になっているプロセスがいくつかある。そこで、リサイクルの有無によって変化のあるプロセスのみを評価対象にし、計算を実施して

みる。図 a4.4にリサイクルをした場合、図 a4.5にしない場合を示した。 図 a4.4 PETボトル再生ペレットより衣服を製造するシステム(変化プロセスのみ抜粋)

図 a4.5 PETボトルと衣服を石油原料のみから製造するシステム(変化プロセスのみ抜粋)

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

1,173g-CO2

41g-CO2

453g-CO2

131g-CO2

191g-CO2

資源採掘 石油精製

焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

2,292g-CO2

1,144g-CO2

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- 108 -

すると、リサイクルする場合は 3,436g-CO2、しない場合は 1,989g-CO2となり、その差

は 1,447g-CO2と計算された。 <拡大プロセスの変化分のみ評価>

リサイクルの有無によって変化するプロセスのみを評価対象にするという基本的な考え

方は前述の事例と同様である。しかし、再生樹脂を提供された側のプロセスに対しては、そ

の変化分のみを評価する。またその変化分は推定を含んでいるものとし、フォアグラウンド

データとして収集できた再生材を提供した側とバックグラウンドデータのみを利用した再

生材を利用した側のデータを区別して示した。図 a4.6にリサイクルした場合、図 a4.7にしない場合を示した。 図 a4.6 PET ボトル再生ペレットより衣服を製造するシステム(プロセス変化分のみ評価) 図 a4.7 PETボトルと衣服を石油原料から製造するシステム(プロセス変化分のみ評価)

資源採掘 石油精製

フレーク化 焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

ペレット化

回収

回収率61%

収率80%

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

1,173g-CO2

131g-CO2

41g-CO2

-691g-CO2

システム境界①

システム境界②

191g-CO2

資源採掘 石油精製

焼却ボトル成型資源採掘 石油精製

ポリエステル繊維製造

製織・染色・縫製

流通・使用

(流通・使用)

焼却

PET樹脂製造

PET樹脂製造

2,292g-CO2

0g-CO2

システム境界②

システム境界①

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0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排

出量

[g] ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

1,447g

その結果、リサイクルする場合は 844g-CO2、しない場合は 2,292g-CO2となり、その差

は 1,447g-CO2と計算された。 A4.3 結果

このように、3つの計算手法を示したが、リサイクルの効果はいずれも 1,447g-CO2と計

算された。しかし、図 a4.8~a4.10に示すように結果をグラフで表示すると見た目の印象が異なる。図 a4.8ではシステム全体に対するリサイクルの効果を把握するのに適していると言えるが、逆にリサイクルの効果が見えにくくなる。それに対し図 a4.9, a4.10は変化分がより明確になり、どのプロセスが改善に寄与したのかがよくわかる。また図 a4.9は上流側、下流側に関係なくその効果を把握するため、リサイクル技術の効果を表示するのに適してい

ると言える。一方、図 a4.10 は上流側の視点から評価しているため、場合によっては不確実性の伴う下流側の影響(再生材提供の効果)を明確に区別して表示するという点で優れて

いる。また、これらの図から明らかなように、リサイクルの効果を改善率(割合)で表示す

ることは誤解を生む可能性が高いため、推奨しない。

図 a4.8 システム全体の評価結果

図 a4.9 変化プロセスのみの評価結果

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排

出量

[g]

焼却(ブラウス)

流通

製織・染色・縫製

繊維製造

ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

ボトル成型

ボトル用素材製造

1,447g

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-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

リサイクル無し リサイクル有り

CO

2排

出量

[g] ブラウス用樹脂製造

ペレット化

焼却(ボトル由来)

フレーク化

回収

1,447g

図 a4.10 拡大プロセスの変化のみの評価結果

1) PET ボトル協議会:PET ボトルの LCI データ調査報告書(2000), P.12 2) PET ボトル協議会:PET ボトルのインベントリ分析報告書(2004), P.12 3) PET ボトル協議会:PET ボトルの LCI データ調査報告書(2000), P.59 4) プラスチック処理促進協会:廃プラスチック処理・処分システムのエコ効率分析, (2003), P.24 5) PETボトル協議会:PET ボトルのインベントリ分析報告書(2004), P.83 6) 経済産業省:繊維製品(衣料品)のLCA調査報告書 資料編 資料 7, 13(2004) 7) 産業環境管理協会:LCA支援ソフトウェア JEMAI-LCA Pro 2.0.2 (2005)

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Appnedix 5 使用済家電ケーススタディ

A5.1 目的と調査範囲の設定

• 目的:社会システムを対象とした静脈系 LCAの一事例として、地球温暖化防止の観点からエアコンリサイクルの効果を日本全体で評価する。

• システム境界:エアコンの製造、使用段階は対象とせず、使用済品となって排出された段階から、解体、再生材の製造、適正処理をサブシステム境界①として評価対象にした。た

だし、素材回収によって他の製品システムにおいて環境負荷が削減されると考え、同等の

素材製造にかかるプロセスをサブシステム境界②として設定し、環境負荷を負の数値で評

価した。そのため両サブシステムの和がシステム境界全体での結果となる。(図 a5.1)。 • 機能単位:国内で1年間に排出される各使用済製品を処理すること。 • 調査項目:温室効果ガス(CO2, CH4, N2O, フロン類等) • 時間的有効範囲:1990年から 2010年 • 技術的有効範囲:国内における 7つの処理ルート(詳細は後述) • 地理的有効範囲:日本

図 a5.1 システム境界 A5.2 実施手順

[年別家電排出量の算定] 日本国内で 1990年から 2010年までに使用済エアコンとして排出される各年における処理台数は統計値 1)として整備されているが、国内における排出台数は不明である。そのため

排出台数は田崎 2)らの方法を用いて算出した。このとき、最新の 2004年末までの製品出荷量を統計値 3)4)で更新した。

[年別素材構成比・重量の設定]

エアコンの重量、素材構成は変化している。本事例では各期間の素材構成および重量を

文献 5)6)より図 a5.2のとおり設定した。各パーツに含まれる重金属量は文献 7)より設定した。

エアコン冷媒は 2003 年までに R410a に完全移行し、その後も変化がないものとした�9)。

エアコンの冷媒フロンは 650g/台残存していると仮定した。

解体 素材製造製造

廃棄物処理

再生材

サブシステム境界 ① サブシステム境界 ②

素材再生使用

0

10

20

30

40

50

60

1983 1993 2003

エアコン

家電

重量

[kg]

その他

ガラス

プラスチック

アルミニウム

図 a5.2 素材別重量

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[処理技術の設定]

本事例では次に挙げる7つの処理技術、手法の型を設定した。 ライン解体型:最新設備にて処理を行う 10)。冷媒フロンは 90%11)の回収率と設定した。 新シュレッダー型:主な部品のみ解体し、素材回収を行う 10)。フロン回収率はライン解体

型と同じと設定した。 手解体型:多くの部品を手解体する 10)。フロン回収率はライン解体型と同じと設定した。 旧シュレッダー型:新シュレッダー型と同様であるが、フロン回収、樹脂再資源化を行わな

い。 埋立型:直接埋立を行う。フロン回収率は 0%。 不法投棄型:発見後は適正処理される 12)とし、同法施行前は旧シュレッダー型、施行後は

新シュレッダー処理と同様とした。ただし冷媒フロン回収率は 0%とした。 輸出型:海外へ有価物として輸出を行うとし、システム境界外とした。

[技術構成比の設定]

同法施行以前から、輸出、不法投棄が存在していた。そこで家電別の輸出量は貿易統計

から推計した文献値 13)を用いたが、推計されていない 1994年以前は 1995年の輸出率、また 2001年以降は 2000年の輸出率を用いた。また商業的な輸出以外に手土産扱等で海外に持ち出される中古家電が 10%存在すると仮定した。不法投棄量は、同法施行前は 2000年度、2001年から 2003年までは各年、2004年以降は 2003年の調査値 14)を用いた。ただし同調

査では年度によってアンケート回収自治体数が異なるため、人口比例で国内全体での不法投

棄数を推算した。同法施行前のその他の技術構成比については、文献 15)より資源回収して

いる自治体分を旧シュレッダー型、残りを埋立型として扱った。ただし 1993年より冷媒フロン回収事業が開始�されているため、回収実績量 16)と整合がとれるように旧シュレッダー

型を新シュレッダー型に割り付けた。一方、同法施行後は同法内で処理された量については

各技術のシェアを文献 17)より設定し、2004 年以降も同様のシェアだとした。2004 年度以降は断熱材フロンの回収が義務付けられたため、同法処理ルートでは全量回収されるものと

した。図 a5.3に例として使用済冷蔵庫の処理技術構成比を示す。 また、本事例では上述の技術構成をシナリオ1とし、仮に 2000年以降も 1999年の技術構成で処理を継続した場合の環境影響をシナリオ2として試算した。

図 a5.3 使用済エアコン処理技術構成比

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1990

1995

2000

2005

2010

処理

技術

構成

比[%]

輸出型

不法投棄型

埋立型

旧シュレッダー型

手解体型

新シュレッダー型

ライン解体型

輸出型

旧シュレッダー型

埋立型

ライン解体型

新シュレッダー型

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-1,000

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

199

0

199

5

200

0

200

5

201

0

地球

温暖

化へ

の影

響[kt-CO

2 equiv./year]

中間処理R-410AR-22アルミニウム銅PSPP鉄シナリオ2シナリオ1

[インベントリ分析及びインパクト評価]

バックグラウンドデータとして JLCA-LCA データベース 18)を用いた。また不足部分は

JEMAI-LCA ver.1標準データセット 19)を用いた。ただし、家電処理プラントのインベント

リはヒアリング結果 17)を用いた。鉄スクラップの電炉における再資源化 20)、埋立、樹脂の

ペレット化、銅、アルミスクラップの再資源化 21)はそれぞれインベントリを設定した。地

球温暖化への影響は IPCC-100 年指数を用いた。再資源化された鉄は粗鋼、樹脂はバージン樹脂、銅は電気銅、アルミは一次アルミと代替できると仮定した。フロンは液中燃焼法22)で破壊すると仮定した。

A5.3 結果と考察

地球温暖化の特性化結果を図 a5.4に示す。図中において、折れ線グラフは各シナリオの合計値、棒グラフはシナリオ1における各要素の構成を示している。エアコンは累積で

18,759kt-CO2 equiv.、期間平均で 1,876kt-CO2 equiv. /年の削減と算定された。主に冷媒回収効果が大きく寄与したが、依然として放出される一部のフロン類が大きく影響しているこ

とがわかった。

図 a5.4 地球温暖化への影響:特性化結果 A5.4 結論

社会システムを対象とした静脈系 LCAの事例を示した。本事例の結果、エアコンにおいては冷媒フロン類の影響が支配的であるため、フロン回収により大幅に地球温暖化への影響

は軽減されたことが示された。しかし依然としてフロン類を回収しない処理ルートが一部あ

るため、それによる影響が無視できないことがわかった。 (参考文献) 1) 経済産業省、環境省:家電メーカー各社による家電リサイクル実績の公表について, (2005)

法施行シナリオ

従来シナリオ

R-22(冷媒用フロン)

R-410a (冷媒用代替フロ

資源類回収効果

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2) 田崎智宏、小口正弘、亀屋隆志、浦野紘平:使用済み耐久消費財の発生台数の予測方法,廃棄物学会論文誌,Vol.12, No.2, pp.49-58(2001)

3) 日本電機工業会:家庭用電気機器 出荷・在庫,www.jema-net.or.jp, (2005年 6月) 4) 電子情報技術産業協会:民生用電子機器国内出荷統計,www.jeita.or.jp,(2005年 6月) 5) 金属系材料研究開発センター、資源開発センター:平成 5年度非鉄金属系素材リサイクル促進技術研究成果報告書,p.205-215 (1994)

6) 日本電機工業会:家電製品環境情報,www.jema-net.or.jp, (2005年 6月) 7) T. Matsuto, et. al.,: Material and heavy metal balance in a recycling facility for home

electrical appliances, Waste Management, 24, PP. 425–436 (2004) 8) 環境省:国家CFC管理戦略,p.9-17(2001) 9) 環境省:冷媒フロンの廃棄等の見通しについて<参考1>推計方法,(2000) 10) 中野勝行、本田大作、八木田浩史:LCA を用いた家電リサイクルに伴う環境影響改善効果の分析,第 15回廃棄物学会研究発表会予稿集, p.227-229(2004)

11) 経済産業省、環境省:フロン回収破壊法第一種特定製品の回収に関する運用の手引き(第2版),(2002)

12) 環境省:市区町村における家電リサイクル法への取組み状況について,2004 年 8 月 6日発表資料

13) 経済産業省:循環経済に関わる内外制度及び経済への影響に関する調査、中古車・中古家電の輸出状況調査及び海外状況調査(2001)

14) 環境省:廃家電製品の不法投棄の状況について,2004年 8月 6日発表資料 15) 環境省:家電リサイクル法 Q&A,www.env.go.jp/recycle/kaden/start/qa/(2005年 6月) 16) 環境省:平成 12年度冷媒 CFC回収等に関する調査結果,2000年 9月 13日発表資料 17) 産業環境管理協会:平成 15 年度製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発成果報告書(2004)

18) LCA日本フォーラム:LCAデータベース 2005年第 2版,(2005) 19) Kobayashi M., Inaba A., Matsuno Y.,: Proc. 4th. Int. Conf. Ecobalance,

Tsukuba,(2000), pp. 703-706 20) 中野勝行、成田暢彦、青木良輔、八木田浩史:使用済自動車から回収した鉄スクラップ再資源化のインベントリ分析,第 14 回日本エネルギー学会研究発表会予稿集pp.356-357 (2005)

21) 産業環境管理協会:平成 16年度 製品等ライフサイクル環境影響評価技術開発成果報告書,(2005)

22) 産業環境管理協会:HFC-23破壊技術の開発,(2002)