宇宙物理入門 講義資料 - 京都大学宇宙物理入門 講義資料 鶴 剛 ([email protected]) 1 第7章:トムソン散乱とエディントン光度 Ver.
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集中講義:強磁場物理学第1~3回 磁性の基礎(本講義に必要な磁性の基礎)
第4回 強磁場の発生方法(定常磁場、パルス磁場)
第5回 強磁場下の物性測定方法
第6回 量子スピン系の基礎
第7回 一次元反強磁性体(ハルデン予想に関連して)
第8回 一次元結合交替反強磁性体(磁化プラトーの観測)
第9回 その他の一次元磁性体(スピン1/2 XXZ反強磁性体、量子フェリ磁性体)
第10回 フラストレート磁性体の基礎
第11回(セミナーを兼ねる) スピン-軌道液体候補物質の多周波ESR
第12回 最近接J1―次近接J2交換相互作用を持つ一次元磁性体
(スピンネマテック相に関係して)
第13回 幾何学的フラストレーション(二次元反強磁性体)
三角格子反強磁性体、カゴメ格子反強磁性体、シャストリ-サザーランド反
強磁性体の強磁場磁性
第14回 幾何学的フラストレーション(三次元反強磁性体)
スピネル反強磁性体(パイロクロア格子)の強磁場磁性
第1-3回.磁性の基礎
本講義に必要な磁性の基礎
磁性体と相転移
磁気構造による分類
反強磁性はネールによって予言された螺旋磁性は吉森によってMnO2で予言
量子相転移
T=0 Kでの秩序パラメータの変化により現れる相転移を量子相転移というが、この量子相転移の近傍では競合秩序間に量子ゆらぎによりエキゾチックな相が出現
反強磁性
絶縁体常磁性
金属
温度
磁場圧力電場不純物
量子ゆらぎによる臨界相
高温超伝導, 巨大磁気抵抗、重い電子系など
新しい量子臨界相の発見と電子状態の理解
量子相転移
磁場誘起量子相転移外部パラメータ
応答磁場電場圧力
不純物
磁気的性質
電気的性質
光学的性質
機械的性質
熱的性質
普遍的な原理・原則の発見
磁性研究の歴史年表
18世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパで完成された電磁気学を規範として、磁性物質の研究が始められ今日に至っている。20世紀に入って発見された量子力学の展開において、磁気物性の起源は電子スピンによることが明らかになり、以後、その理論実験ともに飛躍的に発展をもたらした。日本の科学研究は明治時代に磁性学(磁歪の研究)に始まり、本多光太郎のKS鋼やその弟子である茅誠司の金属強磁性体の研究に継がれた。日本人の名前の付いた効果があるなど顕著な寄与がある。
理論研究では阪大の永宮グループによる寄与が大きい。
自由空間中の原子、イオンの電子状態
中心対称なポテンシャル V (r ) : 原子核からのポテンシャル他の電子のつくるポテンシャル
ze
2
r V (r)
Schrödinger方程式 [
2
2m V(r)] (r ) E (r)
2
x2
2
y2
2
z2
が中心対称で方向には依存しないから球座標を使って V (r )
(r ) Rnl (r)Ylm( ,)
)()()]()([ nlnl rERrRrVmr
ll
dr
d
rdr
d
m
2
2
2
22
2
12
2
)(
Ylm( ,) : 球面調和関数
電子状態はn, l, mの三つの量子数で指定され、これに電子のスピン状態に対応する量子数msを加えて4つ。
水素原子の電子状態
水素原子(プロトン1つ、電子1つ)の場合は厳密に解ける。
V (r) 0,V(r)
e2
r (r , ,) R(r )()()
d2
d2ml
2 0
1
sin
d
d(sin
d
d) [ l(l 1)
ml
2
sin2] 0
1
r 2
d
dr(r
2 dR
dr) [
2m2
(e
2
rE)
l ( l 1)
r 2]R 0
Legendreの陪関数
Laguerreの陪関数
En
me4
2 2(
1
n2)
ml l , l 1 nn:主量子数、l:軌道量子数、ml:軌道磁気量子数
L l( l 1) L=0,1,2,…..(n-1)
磁気モーメントとは?
磁気モーメントの概念
r
v i
m
m=iAn
n
A=pr2, i=ev/2pr
m=iA=(pr2)(ev/2pr)
=e/2m(rmv)
=eL/2m=eh/4pm*M
M=sqrt{l(l+1)}, l(エル): 軌道量子数
L: 電子の軌道角運動量 L=Mh/2p
mB=eh/4pm: ボーア磁子
磁気モーメントの単位素量: 0.2741x10-24 J/T
h0でmB0 磁性は消える。本質的に量子力学的なもの
磁気モーメントの担い手
電子スピン
軌道磁気モーメント
原子核スピン
中性子スピン
mS gmBS
mn 1.9131mNS N
mI gNmN I mL mBL
mN:核ボーア磁子
mN
1
1840mB
中性子は電荷は中性であるがクオーク3つから構成されている複合粒子であるため磁気モーメントを持つ
水素原子の規格化波動関数
d軌道波動関数
dg軌道
d軌道
鉄族遷移金属元素(Fe, Co, Ni...)には一般に3d軌道に電子が最大2個入る。
他の原子あるいはイオンと相互作用のない自由原子、イオンではこれらの軌道はすべて同じエネルギー状態にある。
eg
t2g
自由原子(イオン)の磁気モーメント
不完全殻 dあるいはf shellを持つ原子、イオンはshellが不完全なままであることが多い。
理由
(1) dあるいはf shellの波動関数は同じ程度のエネルギーのs,p shell
に比較して比較的に原子核に近い領域に分布。電子同士の反発が強い。(クーロン斥力)
(2) 空間的な拡がりの角度依存性が複雑=>分子を作りにくい。
a0はボーア半径 (0.53Å)
3d遷移金属(鉄族)元素
元素の電子配置
3d電子の場合、3dの不完全殻(2l+1)にスピンの二つの状態を含めて10個の中に電子をつめていく事になる。
主な遷移金属及びイオンの電子配置
同じ元素でもイオンになった際に価数によって電子の数が異なるため磁性が異なる。
LS多重項
i
isS
不完全殻に電子を分配するやり方
例 l=2 3d軌道に電子2個
2(2×2+1)C2=45
5つのd軌道にそれぞれ電子を最大2個までつめられる
原子核による中心力場だけを考えるとこの45通りはすべて同じエネルギー
電子間のクーロン相互作用を考慮すれば各電子の軌道角運動量liは保存されない。
が保存される。
Lzの固有値 ML=-L, -L+1, ........., L-1, L (2L+1)個
i
ilL
が保存される。
Szの固有値 MS=-S, -S+1, ........., S-1, S (2S+1)個
電子状態 L, ML, S, Ms の四つの量子数で分類可 (2L+1)(2S+1) LS多重項
ラッセルーソーンダーズ結合
LS多重項の記述の仕方とエネルギーLS多重項状態の記述の仕方 L=0, 1, 2, 3, 4, 5, ......
S P D F G H2S+1L
フント(Hund)の規則
L l i
i
,S s ii
LS多重項のうち最低エネルギー項は以下のフント(Hund)の規則で決まる。(経験則)
(1)Sが最大の状態(2)最大のSを与える条件の下で最大のL
L:合成軌道角運動量、S: 合成スピン角運動量
パウリの排他律と電子のクーロン相互作用による
(2L+1)(2S+1) 10 21 28 25 6 25 28 21 10 1
スピン軌道相互作用
ビオ・サバール (Biot-Savart)の法則により電荷Zeの周回運動が電子位置に磁場を作る。
この磁場による相互作用をスピン軌道相互作用といい、 で表す。 L S
スピン軌道相互作用があるとLとSは保存されずに合成角運動量Jが保存される。
J L S J LS,L S1,LS2,..., LS
Jで指定される準位: J多重項
ランデ(Landé)のg因子
系の磁気モーメント m=-mB(L+2S)
ge=2としている
これは直ちに全合成角運動量ベクトルJで表されない。
L+2S=gJJ
)(
)()()(
12
1111
JJ
LLSSJJgJ
ランデのg因子L
S
J
m
ゼーマン相互作用
磁気モーメントへの外部磁場による相互作用をゼーマン相互作用という。
Jが良い量子数でgJを持ったJ多重項は磁場によって2J+1の状態に分かれる。
J=3の場合図のように7つの状態に分かれる
エネルギー
磁場
m=-3
Em=-gJmBmH
m=-2
m=-1
m= 1
m= 2
m= 3
m= 0
m: 磁気量子数
Brillouin関数と磁化
𝐵𝐽 𝑥 =2𝐽 + 1
2𝐽coth
2𝐽 + 1
2𝐽𝑥 −
1
2𝐽coth
𝑥
2𝐽𝑥 =
𝑔𝐽𝐽𝜇𝐵𝐻
𝑘𝐵𝑇
𝑀 𝑥 = 𝑁𝑔𝐽𝜇𝐵𝐽𝐵𝐽(𝑥)磁化
𝑖 𝑥 → 0 (𝑇 → ∞,𝐻 → 0)の時
𝐵𝐽 𝑥 ≅𝐽 + 1
3𝐽𝑥
𝑖𝑖 𝑥 → ∞ (𝑇 → 0, 𝐻 → ∞)の時
𝑀 𝐻, 𝑇 =𝑁𝑔𝐽
2𝜇𝐵2𝐽(𝐽 + 1)𝐻
3𝑘𝐵𝑇
𝜒 =𝑀
𝐻=𝑁𝑔𝐽
2𝜇𝐵2𝐽(𝐽 + 1)
3𝑘𝐵𝑇=𝐶
𝑇
キュリー則
𝐵𝐽 𝑥 ≅1
𝑀 𝐻, 𝑇 = 𝑁𝑔𝐽𝜇𝐵𝐽
飽和磁化
磁性イオンモル数当たりの磁化はgJJ (mB/mol-ion)
常磁性帯磁率の研究磁化率c
温度(゜C)
c1/T
1908 ヘリウムの液化に成功1911 Hgによる超伝導の発見1914 固体酸素の磁化率の変化
P. Curie (1895).Onnes and Perrier (1914).
磁化率c
温度(K)
24
固有の磁気モーメントによる常磁性
Brillouin関数と実験値との比較
I. クロムカリ明礬の実験値とJ=3/2の場合の3B3/2の比較
Cr3+はJ=3/2に相当する磁気モーメントを有する。
II. 鉄アンモニウム明礬Fe3+(J=5/2)
の実験値と J=5/2の場合の5B5/2
III. 硫化ガドリニウム(8水化物)のGd3+(J=7/2)の実験値と7B7/2
結晶場と電子状態
実際の化合物中では自由原子(イオン)の電子状態が周りのイオンからの静電場(結晶電場)を受け分裂する。
陽イオン(磁気イオン)中の電子が陰イオンから受ける静電ポテンシャル
: V(r )
E
dg
d
立方対称
正方対称
d軌道波動関数
dg(g)軌道
d(T2g)軌道
鉄族遷移金属元素(Fe, Co, Ni...)には一般に3d軌道に電子が最大2個入る。
他の原子あるいはイオンと相互作用のない自由原子、イオンではこれらの軌道はすべて同じエネルギー状態にある。
結晶場の原因1.周囲の陰イオンが作る静電ポテンシャル2.陰イオンのp状態との混成(d-p 混成)
大きさを正確に計算するのは困難結晶場の固有状態は対称性によって決まる。(群論)
例:正八面体の結晶場(Oh:4C3, 3C4, 6C2 など)
3d波動関数(線形変換)
( )
( )
( )p
p
p
2exp2
1sin
4
15
exp2
1cossin
2
15
2
11cos3
4
10
22,2
1,2
20,2
iY
iY
Y
( )
( )
( )
( ) ( )
( )
2
22
0,25
2
22
2,22,24
22,22,23
21,21,22
21,21,21
3
4
15
4
15
2
1
2
15
2
1
2
15
2
1
2
15
2
1
r
rzY
r
yxYY
r
xyYY
i
r
yzYY
i
r
xzYY
p
p
p
p
p
)( 2gtd
)( gedg
3d波動関数と結晶場
立方対称場 (3d)1の場合
3d軌道に一つ電子を入れた状態を考えよう。
自由原子(イオン)では同じエネルギーにあった5つの軌道は周りの陰イオンからのクーロン反発によって陰イオン方向に延びた軌道の方がエネルギーが高くなる。
一つホールを入れた場合は(3d)9は(3d)1 の逆になる。
立方対称場中の(3d)nの電子占有と多重項
軌道角運動量の消失
鉄族遷移金属イオンのボーア磁子
希土類イオンとは異なり、化合物中では多くの場合軌道角運動量消失のため、ボーア磁子はS
のみに近い値になる。
スピンハミルトニアン結晶電場があまり強くない場合の鉄族遷移金属元素を考える。フント則が成立しておりL, Sがわかっている。
スピンはスピン軌道相互作用を通して結晶電場の影響を受ける。
スピン軌道相互作用は基底状態と励起状態間のエネルギー差をEとすると/Eの程度で励起状態の波動関数を混合させる。
基底軌道状態に縮退がない場合(軌道角運動量の消失)
H L S mB(L 2S ) H
このハミルトニアンを摂動項として計算し軌道の寄与をパラメーターの中に押し込めたものがスピンハミルトニアン
H sp mBS gH D{Sz
2
1
3S(S1)} E(Sx
2 Sy
2)
D, E: シングルイオン異方性
g 2(1)
(S 1)
スピン軌道 ゼーマン
具体例 I
Cu2+: (3d)9 ホール一個
Z軸方向に延びている正方対称場
// zz
4
E2 E0
, xx yy 1
E3 E0
)1(2,)1(2 //// gg
<0 (~800 cm-1)
2// gg
3d遷移金属元素におけるg値の異方性はスピン軌道相互作用を介した結晶場の異方性を見ていることになる。
具体例 II
Cu2+: (3d)9 ホール一個
Z軸方向に縮んでいる正方対称場
02
30
EEyyxxzz
,//
)1(2,2// gg
<0 (~800 cm-1)
2// gg
伸びている場合と明らかにg値に違いが出ており、どちらのどの方向かということもある程度わかる。
Jahn-Teller効果
基底状態が縮退しているとき例:Cu2+(3d)9
cubic
原子変位:dz
Cu2+ Ni2+
tetragonal
tetragonalにひずむと:
電子のエネルギー利得:-a dz
格子のエネルギー増加:b(dz)2
dz=b/2aでエネルギー最小(歪むことで必ずエネルギーの得がある。)(3d)8 (Ni2+)の場合は起こらない。
結晶中ではJahn-Teller歪みが周期的に生じる。(協力的Jahn-Teller効果)
一様な歪み(q=0):La2CuO4
交替的な歪み(q=(p,p)):KCuF3, LaMnO3
基底状態に縮退があるとき
HSlSl )( 2m B
SlJ
)(
)()()(
12
2112
JJ
SSJJgJ
軌道三重項
Co2+: 3d7
基底多重項 4F9/2
L=3, S=3/2
(2L+1)(2S+1)=7×4=28
基底軌道状態:三重項
基底三重項:2l+1=3, l=1とみなすと
L=l, =-3/2
H
sl gg 2,~
クラマース二重項(Kramers doublet)
奇数個の電子を持つ場合、最低でも二重の縮退が磁場をかけない限り残る。
磁場
エネルギー
磁場
エネルギー
S=1/2の場合 S=1の場合
時間反転の対称性
整数スピン(偶数個の電子を持つ)の場合、縮退のない準位が存在できる。
クラマースイオン 非クラマースイオン
磁気モーメントの歳差運動
磁場
磁気モーメント
角運動量(スピン)を有する磁気モーメントに磁場をかけると独楽のすりこぎ(歳差)運動を行う。
磁場 )( 00 00 HH ,,
磁気モーメント m
dm
dt gmH 0
dm x
dt gm yH0 ,
dm y
dt gmxH0,
dm z
dt 0
d2m x
dt g
2H0
2m x
my についても同様な単振動の式になる。
mx mx
0exp(i0t)
0
2 g
2H0
2,0 g H0
この回転運動をLarmor回転という。
電子スピン共鳴(ESR)測定で得られるパラメーター
• g-因子(値)
ラジカルでは自由電子のg値に近いものが得られるが、遷移金属元素では大きく異なり、磁性イオンの周りの対称性などを反映する。
• 微細構造定数 D, E
スピン1以上の場合に通常現れる。スピン1/2対の場合も同様にして考える場合がある。
• 超微細構造定数(テンソル)A
常磁性核種の核スピンと電子スピンの相互作用によって現れる。
• 交換相互作用定数 J
近接した磁性イオン間で波動関数が重なるような場合考慮する。
磁性イオンが短い間隔で配列した通常の磁性体ではこの相互作用が重要な役割を果たし、多数の磁性イオンが関与した物性を示す。
ゼーマン効果と磁気共鳴
一電子の系 ゼーマン分裂(効果)
磁場をかけると右図のように二つの準位に分かれる。
この準位間の選択的遷移が磁気共鳴である。
ハミルトニアンは
H mH 0 gmBS H 0 gmBSzH0
H E
(m
1
2)
1
2gmBH0
H E
(m
1
2)
1
2gmBH0
E gmBH0
入射電磁波の周波数をnとすると
hn gmBH0 で共鳴吸収が起こる。
Sz 1 磁気双極子遷移
S
0
3d遷移金属イオンとESR
ESRによって遷移金属イオンのg値や磁気異方性の情報を得ることができる。
正方対称場のCr3+ (3d)3のESR
S=3/2で基底状態は軌道縮退がないのでシンプルなスピンハミルトニアンが使える。
磁場をz軸にかけた際でE=0の場合
H sp gmBSzH D{Sz
2
1
3S(S1)}
(D<0)
ESRシグナルは図のように観測され、ハミルトニアンを解析しm=±1となる遷移と比較することでg値や異方性定数Dを見積もることができる。
共鳴吸収
水素分子モデルと交換相互作用
静電気力(クーロン力)とPauliの排他原理の組み合わせ
原子軌道法ー実際の物質ー分子軌道法
スピンが平行なら両者は分かれて別々の軌道を形成し、反平行なら電子軌道は重なり合い一つの軌道のように振舞う。
水素分子の電子配置(a, bは原子核、1, 2は電子)
ハイトラーロンドン近似
12
2
1211
222
21
2 1111
2 r
e
rrrrZe
mH
baba
)()(
)()()()(
)()()()(
2222
1111
2
1
ss
ss
bbaa
bbaa
cc
cc
rr
rr
02
11
2
1 )(,)( cc
前頁の図のようにしてそれぞれ原子軌道を元に考える。(原子軌道法)
2個の電子についての波動関数は
12
10
2
1 )(,)( cc
23
13
2121
23
13
2121
23
13
21
rrrrrr
rrrrrr
rr
ddH
ddH
ddH
abba
baba
ss
)()()()(
)()()()(
**
**
,
*
Kab: クーロン積分
Jab: 交換積分
交換相互作用
)()( 12
121
ss
)()( 02
121 ss
ハミルトニアンの行列要素をスピンの状態,,,ごとに表し対角化してエネルギー準位を求めると
固有状態はスピンの状態で分けられる。
Kab-Jab Kab+Jabトリプレット シングレット
abba J)( ss 412
1
Jab>0: 強磁性 Jab<0: 反強磁性
分子軌道法
二つの核からポテンシャルを一括して分子軌道を作り、それに電子を占有させる方法
原子軌道法で除外したfa(r1) fa(r2)やfb(r1) fb(r2)を入れる。
常に結合軌道状態(正負のスピンで占有)と反結合軌道状態が作られる。
結合状態を占有した上、余分のp電子は空間的に反対称波動関数から作られている反結合状態へ平行スピンをもって占有される。
超交換相互作用
中間の非磁性原子を媒介としての磁性原子間の交換相互作用
陰イオンから磁性イオンへの電子移動
-2Jeff S1·S2 1, 2は磁性イオンのスピン
超交換相互作用のJの符合
Goodenough-Kanamori理論
交換相互作用の大きさと符号
2個の磁性イオンとその間の陰イオンが一直線
同種磁性イオン間 J < 0 反強磁性
一方のd電子が5個以上他方のd電子が5個未満
J > 0 強磁性
2個の磁性イオンとその間の陰イオンが直交
上の傾向が逆 (d5を除く)
磁性イオン間の距離が近いとき、あるいは陰イオンが小さいとき
同種でも J < 0
キュリーワイス則
: 常磁性キュリーワイス定数
磁性イオン間に相互作用がある場合
最近接スピンSi, Sj間に交換相互作用JSi·Sjがあると
反対称相互作用と弱強磁性
ジャロシンスキー(Dzialoshinsky) 結晶の対称性 Jmn=-Jnm
守谷(Moriya) 微視的機構を明らか
Dzialoshinsky-Moria 相互作用
][ 21 SSD HS1, S2を古典ベクトルとすると
EDM=DS1S2sin
Eex=J12S1S2cos
E=J12S1S2cos+DS1S2sin
=0, pは極小点にならない。
S1
S2
J12>0 AF
J12<0 F
S1 S2
1,2を結ぶ中点に対して反転対称 S1とS2を入れ替えても不変
S1×S2=-S2×S1よりD=0
磁性及び磁気転移を決定する因子
1.相互作用の型2.次元数3.スピン量子数4.配位数または結晶構造
相互作用の型は軌道角運動量が残る系では最低のエネルギー状態を表すベクトル空間で考えた際に異方的なハミルトニアンとして記述できる場合もあり、また、異方性が大きくて最低エネルギー状態を考えると擬似的に扱える場合がある。
-2Jeff S1·S2J S1·S2交換相互作用の導出では
このようになるが、今後記述を簡単にするため右のように記載する。
相互作用の型
型の時
型の時
型の時
Ising
XY
Heisenberg
)(
0
0
ij
ij
ijij
yj
yi
xj
xiij
zj
zi
JIij
J
J
JJ
SSSSJSSJH
//
//
,
//
交換相互作用する最近接スピンのスピンハミルトニアンは
Heisenberg XY Ising
異方性に関係する
次元数
現実の系は3次元であるが、磁気的相互作用が極端に一方向、あるいは平面に強いとき(擬)一次元、二次元磁性体(総称して低次元磁性体)と呼ぶ。
次元数及び相互作用の型と長距離秩序
次元数及び相互作用の型により有限温度で長距離秩序をするかどうかを示す。
二次元イジングモデルでは厳密解により長距離秩序をすることが明らかになっている。一次元イジングモデルはT=0 Kでオーダーする
Mermin-Wagnerの定理:連続対称性を持つ一次元、二次元の系では対称性が自発的に破れた秩序状態は有限温度では存在できない。
二次元イジングモデルの厳密解
L. Onsager (1941)
正方格子
協力現象における相転移の存在の唯一の数学的な証明
三次元イジングモデルを解く試み(イジング病)
配位数zと様々な結晶格子
単純格子では単位胞全体で1個の格子点を持つ。複合格子(単純格子でない格子)では2個以上もつ。
Tc: 強磁性転移温度
反強磁性相互作用の場合、このように単純には決まらない。磁気フラストレーション