関西物流特集2020 - Daily-Cargo...20%台で推移している。...

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第2部 関西物流特集2020(1) 2020年10月28日(水曜日) (写真提供=関西エアポート) (写真提供=神戸市) (写真提供=大阪港湾局) 東京都千代田区岩本町2-1-15 吉安神田ビル3階 TEL.03-5835-4161( 代表) (Daily Cargo HP)www.daily-cargo.com/ 発行所 株式会社海事プレス社 関西物流特集 関西物流特集 2020 2020

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Page 1: 関西物流特集2020 - Daily-Cargo...20%台で推移している。 大阪港は、輸出では19年10月 から減少を示した。20年2月で 4.3%増と増加するものの、再

第2部 関西物流特集2020 (1)2020年10月28日(水曜日)

(写真提供=関西エアポート)

(写真提供=神戸市) (写真提供=大阪港湾局)

東京都千代田区岩本町2-1-15 吉安神田ビル3階TEL.03-5835-4161(代表)(Daily Cargo HP)www.daily-cargo.com/

発行所 株式会社海事プレス社

関西物流特集関西物流特集20202020

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(2) 第2部 関西物流特集2020 2020年10月28日(水曜日)

コロナの影響色濃く

 大阪税関、神戸税関の貿易統計によると、神戸港は輸出が20 19年10月分から前年同月比割れが続いている。20年2月から4月までの減少率は10%台だが、5、6月は20%台と落ち込んだ。輸入は2月が20.9%減となるも、その後持ち直して減少率は10~

 新型コロナウイルス感染拡大は関西の物流にも大きな影響を及ぼした。神戸港、大阪港、関西国際空港と国際物流の各拠点は、取扱量確保や感染防止対策に取り組んだ。また、インバウンド需要が蒸発したことが大きく、関西経済は苦境に直面している。

コロナ禍、関西経済・物流に影響

関西国際空港

神戸空港

堺泉北港

阪南港

大阪港(阪神港)

神戸港(阪神港)

舞洲ポートアイランド

六甲アイランド

夢洲

咲洲

伊丹空港

新名神高速道路

中国自動車道

阪神高速道路

阪神高速道路

関西の海港、空港、高速道路

りんくうタウン地区

た。今年はコロナの3密を避けるためにキャンプに出たり、家でキャンプする「家キャン」をする人もいるため、輸入の勢いがそのまま続いているという。 一方、減少したのは、エクスカベーターなど建設用・鉱山用機械の輸出が30.8%減の2157億円となった。エクスカベーターは露天掘り用の鉱山機械。コロナ禍による米国の景気悪化で輸出に影響が出た。なおコロナ禍で輸入が減少した品目として、EUからのワインなどアルコール飲料が7月には20億円と半減した。レストランなどで提供する高額ワインが、営業自粛や店舗閉鎖で需要が減少した。

関西経済、持ち直しの動き

 今後の経済予測について、大阪に本部を置くシンクタンクのアジア太平洋研究所(PIR)は8月下旬、「関西経済の現況と予測」を明らかにした。 それによると、現況については「景気は悪化が続くも下げ止まりの兆し」としている。企業では、生産が急速に低下し、当面低水準が続くとし、在庫調整では出荷が大きく減少しているため、在庫調整局面が長期化するおそれも指摘した。

貿易額の推移(大阪港、神戸港、関西空港)

大阪税関、神戸税関の統計資料から作成

大阪港 神戸港 関西空港

近畿圏貿易動向

単位:億円

単位:億円

輸出

9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月2020年2019年

6,000

5,000

4,000

3,000

2,000

1,000

0

9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月2020年2019年

輸入

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

20%台で推移している。 大阪港は、輸出では19年10月から減少を示した。20年2月で4.3%増と増加するものの、再び減少が続いて8月で0.1%増と微増となった。輸入では、2月が33.6%減の2238億円となったのが、減少率でもっとも大きかった。7、8月は減少率が10%台となった。

 関西空港は、輸出では20年2月が7.2%増となった以外は、10%台の減少率だ。輸入は、4月が5.6%増、6月は6.2%増となった。 貨物の動向では、コロナ関係によるものが目立っている。大阪税関によると、近畿2府4県の20年1~6月期(上期)輸入額で、マスクを含む織物用糸・繊維製品は前年同期比47.7%増の2376億円と過去最高となった。仕出し国別では7割を中国が占めた。消毒剤は輸出入が春に急増した。4月の輸入額は11.1倍の15億8400万円と過去最高で、輸出も6.5倍の6億3900万円と増加した。 コロナ禍で変化した生活スタイルに合わせた動向も見られた。上期の輸入額で、タブレット機器を含む事務用機器は30.9%増の1813億円と大きく増加。仕出し国別では中国が7割だった。輸出では、ゲームソフトを含む遊戯用具の輸出も54.6%増の10 65億円となった。米国、ドイツ向けが多く、学校の休校措置や巣ごもり需要などの影響も考えられるという。また、キャンプが近年人気のため、テントの輸入額が19年は32.5%増の26億円と過去最高を更新。20年1~7月でみると、微減の17億円だっ

 関西の域内総生産の実質成長率(GRP)について、20年度は5.2%減になると発表した。前回5月発表では5.1%減だったため、さらに0.1%下方修正したことになる。21年度のGRPは3.3%増と予測し、前回発表から0.7%増となった。だが「以前の水準に戻るのは22年度以降となる」と時間がかかることも付け加えている。 日本銀行大阪支店は9月11日、「関西金融経済動向」を発表。

それには関西経済について「新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状態にあるが、足元では持ち直しの動きが見られる」との判断を示した。中国に続き、米欧でも経済活動が再開し、IT関連や自動車関連で持ち直しの動きが見られるとした。個人消費も巣ごもり消費やテレワークなど在宅需要を取り込んだ家電、自動車など持ち直しの方向にあるとしている。

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第2部 関西物流特集2020 (₃)2020年10月28日(水曜日)

大阪港湾局の資料から作成神戸市港湾局の資料から作成

大阪港総取扱貨物量(万㌧)

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000

1,155 2,446 2,361 3,336

970 2,312 2,057 2,756

1,005 2,510 2,177 2,837

930 2,788 2,219 2,873

871 2,750 2,231 2,789

898 2,750 2,229 2,821

925 2,743 2,217 2,762

969 2,496 2,004 2,527

936 2,475 2,122 2,687

958 2,525 2,183 2,798

963 2,633 2,116 2,668

神戸港総取扱貨物量(万㌧)

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2,373 2,625 2,6611,859

1,933 2,386 2,0041,380

2,240 2,539 2,2701,504

2,220 2,710 2,2201,552

2,224 2,679 2,2271,591

2,162 2,732 2,2941,647

2,261 2,769 2,4451,764

2,330 2,789 2,6981,884

2,331 2,842 2,7591,900

2,407 2,865 2,7521,962

2,371 2,845 1,804 2,528

(万TEU)

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

0 50 100 150 200 250 300

204 52

177 47

201 54

210 53

207 50

205 50

205 57

212 59

222 71

214 66

222 72

外貿

内貿

コンテナ取扱個数

外貿

内貿

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

(万TEU)

0 50 100 150 200 250 300

195 29

184 26

198 30

217 27

212 29

219 29

217 26

197197 2525

195195 2626

205205 2727

210210 3131

コンテナ取扱個数

輸出 移出 移入輸入

901 2,665 2,208 2,775

213 32

2,293 2,858 1,788 2,461

219219 6868

コロナ禍の阪神港

 新型コロナの影響で阪神港はコンテナ取扱量で苦戦を強いられている。神戸港の201₉年コンテナ取扱量(外内貿の合計)は前年比2.5%減の287万TEUと、6年ぶりにマイナスに転じた。20年は新型コロナの影響で、月次ベースでみて4月のみ前年比プラスとなったが、他は10%前後のマイナスの傾向が多い。特に輸出が10%台のマイナスが続いている。また大阪港の1₉年コンテナ取扱量は、微増の245万TEUだった。20年はコロナ禍で、2月の輸入が33%減

と落ち込んだが、その後、回復を見せて、4〜6月はプラスが続いたのが特長だ。 コロナ禍はさまざまな事業者に及んだため、神戸市港湾局は4月、港湾関連事業者に対する側面的支援として、同局と賃貸契約を結んでいる事業者の賃料、港湾施設料などの納付期限を猶予することを明らかにした。9月までの期間だったため、コロナ禍の長期化を受けて、10月から21年3月末まで猶予期間を延長したところだ。また、大阪市港湾局も4月、港湾施設使用料、入港料などについて納入期限の猶予を決め、さらに伸ばし

たところだ。 コロナ禍の中でも進められているのが港湾物流の渋滞対策だ。国土交通省近畿地方整備局と阪神国際港湾会社は「阪神港におけるCONPAS(コンパス)導入に向けた検討会」を立ち上げて、導入について話し合っている。コンパスは、ゲート処理などの効率化、セキュリティー向上を図るための新港湾情報システム(コンテナ・ファスト・パス)の略。横浜港で試験運用を重ね、阪神港でも導入を検討。今年度中の試験運用を目指していたが、コロナ禍で後ろ倒しを余儀なくされている。

阪神港、港勢維持に努める 新型コロナウイルス感染拡大が世界経済に及ぼす影響から、神戸港、大阪港の港勢は厳しい状態が続いている。港湾関係の事業者も感染対策などを取りながら事業を継続し、港勢維持に努めている。

港湾・海運編港湾・海運編港湾・海運編

₂₀₂₀年外貿コンテナ取扱量の月次推移(速報値、空コンテナ含む) (単位:TEU、%は対前年同月比)

総 数 輸 出 輸 入

1月 162,304 91.0% 79,947 90.7% 82,357 91.3%

2月 158,010 92.1% 92,105 92.1% 65,905 92.1%

3月 186,530 93.9% 97,119 89.9% 89,411 98.7%

4月 195,208 105.0% 102,654 102.9% 92,554 107.4%

5月 158,673 86.7% 82,475 87.2% 76,198 86.1%

6月 170,318 91.1% 89,265 84.6% 81,053 99.5%

7月 170,360 88.8% 88,295 87.2% 82,065 90.7%

神戸港

総 数 輸 出 輸 入1月 168,423 91.8% 68,111 88.6% 100,311 94.2%

2月 109,122 75.3% 57,399 84.0% 51,723 67.6%

3月 178,282 98.0% 75,490 93.0% 102,793 102.1%

4月 193,190 107.5% 88,967 108.2% 104,223 107.0%

5月 174,441 100.8% 83,620 109.2% 90,821 94.2%

6月 182,656 105.8% 87,965 104.0% 94,691 107.5%

7月 179,175 92.2% 81,348 96.5% 97,827 89.0%

大阪港

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(4) 第2部 関西物流特集2020 2020年10月28日(水曜日)

神戸港経由の トライアル実施

 神戸市港湾局が阪神国際港湾会社とともに積極的に取り組んでいるのが、神戸港を活用した物流改善のトライアル事業だ。同事業は、日本港運協会の久保昌三会長の提言により設置された「アジア広域集貨プロジェクトチーム(チーム長=須藤明彦・神戸海運貨物取扱業組合理事長<大森廻漕店代表取締役社長>)からの提案により実現したもので、東南アジア−北米間のコンテナ貨物を神戸港でトランシップすることなどに取り組んでいる。事業者の募集対象は、①西日本−東南アジアなどの物流について神戸港経由での輸送の改善や神戸港経由への転換を伴う改善を実施するもの②神戸港でのトランシップを伴うもの③神戸港の高付加価値化(神戸港の物流拠点の機能の拡大、IoT<モノのインターネット>による効率化など)に寄与するもの——としている。 2020年度は「神戸港を拠点としたシャインマスカット輸送トライアル」を行った。実施者は、日本農業(本社=東京)。同社は山梨産のシャインマスカットを輸出する際、これまで成田空港から航空輸送で行っていた。しかし、販路拡大や取扱量も増加して輸送コスト増が避けられなくなっていた。また、産地直輸出のため、1日で対応できる出荷量に限りがある中で、現地需要、鮮度保持、輸送コストに

対応した新たな輸送方法の確立が急務となっていた。 そのため、神戸港を利用するトライアル事業を申し込んだ。具体的には、山梨産のシャインマスカット520箱を台湾に輸出するもの。山梨で集荷してから陸送して大阪港舞洲の東洋埠頭青果センターに搬入した。独自開発した梱包材を採用して輸送品質を保持。青果センターでリーファーコンテナにバン詰め。通関後、神戸港からコンテナ船で出港した。本船スケジュールの遅れにより、予定していた最短スケジュールでの輸送はかなわなかったが、本船スケジュールが安定すれば神戸港のリードタイムに優位性がある。リードタイムを意識しつつ、限られた時期に多くの輸出需要に応える解決策として、神戸港を利用する選択肢が増えた。 このほか、物流改善トライアル事業では、神戸CFSや神戸港を起点としたレール&シーのトライアルも行った。従来、関東のCFS倉庫から3軸シャーシのトラックで東京港に輸送し、

上海港に運んだ。しかし、関東方面のCFSスペースがひっ迫し、3軸シャーシも不足。そのため、神戸CFSや神戸港を活用することになった。JR貨物を活用して東京貨物ターミナル駅から神戸貨物ターミナル駅を利用、神戸CFSでコンテナを詰めて通関。3軸シャーシで神戸港に運び、上海港に輸送した。

大阪港湾局が誕生

 大阪市と大阪府の港湾局が10月1日付で統合して「大阪港湾局」が誕生した。それまで、大阪港は大阪市が、堺泉北港や阪南港など8港は大阪府がそれぞれ管理していた。府市港湾局が統合することで、一元管理することになった。 18年の港湾取扱貨物量(トン数ベース)は、大阪港が8428万トンで全国9位、堺泉北港は7212万トンと11位。だが、大阪港や堺泉北港など9港で1億6028万トンとなり、名古屋港に次いで全国2位となり、今後はスケールメリットをアピールしていきたい考え。大阪港湾局と

しての活動としては、防災体制の整備やポートセールスを実施。次に物流の強化を図っていくとしている。 大阪港湾局の発足に際し、「大阪“みなと”ビジョン」(素案)をまとめた。大阪港と府営港湾の強みを生かし、弱みを補完して、全体で機能分担や最適配置を図り、ヒト・モノ・コトがより一層交流する拠点として発展させ、安全・安心で良好な港湾環境のもと、背後圏にまでにぎわいを図り、関西経済の発展の一翼を担うことを目指す——としている。具体的な取り組みは5項目。 ①「モノの交流を増やす<港湾物流>」では、国際コンテナ戦略港湾政策の集貨、創貨、競争力強化を挙げた。2020年代後半の外貿コンテナ取扱量の目標は4050万トン(277万TEU)で、内訳は、大阪港4000万トン(271万TEU)、堺泉北港50万トン

(6万TEU)。物流拠点の機能強化として、大阪港の港湾施設の機能強化、堺泉北港の内航ROROなど機能強化、コンテナ

ターミナルの効率化・生産性向上、戦略的ポートセールスの展開、中古車輸出拠点の機能強化、大阪湾のエネルギー拠点としての機能維持・強化——を示した。 ②「ヒトの交流によりにぎわう<クルーズ・まちづくり>」では、オール大阪でのクルーズ客船誘致、海上交通による交流機能の充実、みなと・海岸のにぎわい創出——を挙げた。 ③「安全で安心な大阪“みなと”<防災>」では、総合的な防災対策と計画的な維持管理の

推進に取り組む。 ④「クリーンでグリーンな大阪“みなと”<環境>」では、海洋環境保護、大阪湾の再生を示した。 ⑤「一元化によるコトの効率化<システム>」では、利用者サービスの向上、物流機能の強化、防災機能の強化に取り組む。 また、大阪では2025年に開催される国際博覧会(万博)に向けた準備も進んでいる。コンテナ貨物を夢洲から咲洲にシフトさせるなど、渋滞対策も検討している。

仕入れ先

(農家直送)

各仕向け地

【トライアル】海貨倉庫搬入

リーファーコンテナにバン詰め、通関

リーファーコンテナで輸出

神戸港

強度の高い梱包材利用(全仕向け地)

鮮度保持剤の利用(香港向けのみ)

荷崩れがないか鮮度や品質の確認

コンテナ内の温度湿度モニタリング(データロガー)

神戸港を活用した物流改善のトライアル事業「神戸港を拠点としたシャインマスカット輸送」

リーファーコンテナにバン詰めされたシャインマスカット

「大阪港湾局」に看板もかけ替え

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第2部 関西物流特集2020 (5)2020年10月28日(水曜日)

阪神国際港湾会社

新中期計画、西日本のゲートウェイ目指す

 阪神国際港湾会社は、2020年

度から24年度までの5カ年の新

中期経営計画「HPC2024」を

策定して事業を進めている。国

の国際コンテナ戦略港湾政策に

基づき、集貨、創貨、競争力強

化を推進し、港湾間競争の激化

や災害をはじめとしたリスクの

高まりなど外部環境が大きく変

化する中、利用者に選ばれ続け

る港として発展していくため、

「Connect to the World〜西

日本のゲートウェイ〜」をス

ローガンに物流機能を高め、阪

神港のさらなる成長を目指すと

している。

 これまでの取り組みについて

同社は、阪神港の港勢や集貨施

策の状況で、インセンティブを

活用した新規航路誘致などに努

め、コンテナ船の大型化対応を

進めてきた中、阪神港の取扱貨

物量は増加したとした。アジア

広域集貨プロジェクトチームに

積極的に参加するとともに物流

改善トライアル事業を実施して

新規ルートを開拓。瀬戸内、九

州方面の充実した国際フィー

ダーネットワークの構築により

輸送ルートを強化した。

 このほか、船舶の大型化に対

応するため、利用者ニーズをく

んだ高規格ガントリークレーン

を順次整備。フェリーの大型化

に対応した施設整備や、フェ

リー活性化に向けた利用促進策

を実施した。海外インフラ展開

法の施行を受け、カンボジア・

シアヌークビル港湾港公社への

出資を実施するなど海外事業を

展開したことを挙げた。

 今後の基本戦略は3点を柱と

した(表参照)。

 ①集貨および創貨施策のさら

なる強化(Cargo Volume)

 ②生産性・資本効率を伸ばす

ターミナルシステムの構築(Co

st、Convenience)

 ③機動的かつ安定的な経営の

実現

 計画目標では、コンテナ取扱

貨物量は国内シェアを22%以上

の維持・拡大(2018年実績22.8

%、以下同)、阪神港で550万T

EU以上(535万TEU)とした。

国際基幹航路は週9万TEU以

上(8万1000TEU)、国際フィー

ダーは週7000TEU以上(6800

TEU)。自己資本比率は10%

以上確保(13.3%)としている。

施設整備計画は、神戸港コンテ

ナターミナル(ポートアイラン

ド2期)機能強化、大阪港夢洲C

T延伸・拡張、CONPASなど

テクノロジーの進化に対応した

効率化施策を順次導入――を示

した。

 なお、中期計画はこれまで3

カ年だったが、今回は5カ年で

策定した。

阪神国際港湾会社・中期経営計画「HPC2024」 (2020~24年度)

3 機動的かつ安定的な経営の実現

経営基盤の強化● 投資・修繕の優先順位明確化、環境負荷低減に資す

る技術など導入● 一定水準以上に自己資本比率を維持し、安定的な財

務体質を確保● 民の視点による、多角的な港湾運営システムの調査

検討● 周辺環境の変化に即して、中期経営計画を適宜見直し

人材育成と組織づくり、コンプライアンス● 人材育成方針の策定・実践による将来の会社を担う

人材の育成、風通しのよい職場環境づくり● コンプライアンスの徹底、ガバナンスの強化

経験や技術を生かした海外事業展開● 人的、技術的交流などを通じたシアヌークビル港の

運営へのさらなる協力

1 集貨および創貨施策のさらなる強化(Cargo Volume)

国際基幹航路の維持・拡大● 中南米・アフリカ航路を含む国際基幹航路や東南ア

ジア航路など、多方面・多頻度の直行サービスの維持・拡大

● ターゲットを絞った戦略的な集貨施策の実施● 新たな輸送ルート開拓を目指した物流改善トライア

ルの促進  ● 国や港湾管理者などと一体となった戦略的なポート

セールスの実施

西日本諸港との港湾間ネットワーク強化(国際フィーダー網の強化)● 瀬戸内・九州方面の太宗荷主の動向を的確にとらえ

た集貨戦略の実施● 物流効率化、環境負荷低減に資するコンテナラウン

ドユースの推進

新たなコンテナ貨物の創出● 海外での日本食文化の普及など、農水産物・食品の

輸出需要の高まりを背景に、商品特性に応じた輸送モードの選択肢を広げ、輸出促進につながる取り組みを実施

● さまざまな貨物のコンテナ化の動きが進む中で、コンテナ輸送にかかる新たな技術を活用した阪神港のコンテナ取扱貨物量の増加を図る事業者への支援

2 生産性・資本効率を伸ばすターミナルシステムの構築(Cost、Convenience)

コンテナターミナルの機能強化● ユーザーニーズを的確にとらえた、大型船に対応で

きる計画的な施設整備・更新● メガキャリアの動向に的確に対応するとともに、さ

らなる効率化を追求したコンテナターミナル全体の機能強化

● 新港湾情報システム(CONPAS)の導入など、テクノロジーの進化に対応した効率化

● ガントリークレーンの突発的な故障を未然に防止するため、予防保全システムを構築

● 国が推進する港湾物流情報のプラットホーム化(サイバーポート)への参画

災害をはじめとしたあらゆるリスクに強いターミナル運営● 国や港湾管理者などと一体となった高潮対策緊急事

業の早期完成● 南海トラフ地震をはじめ高潮や台風被害も想定した

BCPの策定、災害などあらゆるリスクへの柔軟な運営による物流機能の維持

物流効率化につながるフェリー・ライナー機能の強化・維持● 大型化が進むフェリーに対応できる計画的な設備

更新● 利用状況を踏まえたライナー埠頭施設の維持管理

基本戦略3点

日中国際フェリー

上海−阪神間、2隻で週2便サービス

 日中国際フェリーは、上海−

阪神間で国際定期フェリー2隻

を運航し、週2便の高速輸送

サービスを提供している。

 「新鑑真」(1万4543総トン)の

スケジュールは、上海・土曜発

/阪神・月曜着、阪神・火曜発

/上海・木曜着。「蘇州号」(1

万4410総トン)は、上海・火曜

発/大阪・木曜着、大阪・金曜

発/上海・日曜着で運航されて

いる。なお、12月からは「蘇州

號」も、「新鑑真」と同じように神

戸港と大阪港に交互に寄港す

る。「蘇州號」は、上海フェリー

が9月末に運航停止した後、日

中国際フェリーがサービスを引

き継いだ。

 フェリーの高速性と定時性を

生かし、HDS(ホット・デリ

バリー・サービス)による安定

した輸送が強みだ。特に中国か

ら日本市場向けのアパレル製品

の輸送で力を発揮している。

 今年は新型コロナウイルス感

染拡大の影響を受け、2月に日

本政府が新型コロナ対策として

中国との旅客輸送停止を決めた

ことで、それ以降は貨物輸送の

みで継続中。3〜4月は日本向

けにマスクなどを大量に輸送し

た。5月以降は、例年並みに回

復したという。

 主要貨物のアパレル産業は近

年、労働コストの低減化を図る

ため、中国からベトナムなど東

南アジアへと生産拠点を移す動

きが出ていた。だが、コロナ禍

で旅客機の減便による航空貨物

輸送の供給力減少、コンテナ船

の運賃上昇、定時性が不十分な

点などがあり、「荷主が、やは

り定時性が高いフェリーで、縫

製など製造技術も高い中国から

輸送するのが安心と思っている

ようだ」(村上光一社長)。今後

もフェリー2隻で週2便、上海

−阪神間で安定したスケジュー

ルで高速輸送サービスを提供し

ていきたい考え。

 なお、日中国際フェリーは「新

鑑真」「蘇州號」を利用しての

物流支援を目的にシー&レー

ル・サービスを強化し、キャン

ペーンを実施している。対象は、

上海から日本向けに海上輸送

し、JR貨物で関東・中部地区

に鉄道輸送するコンテナ。20フ

ィートコンテナ(実入り)1本

に対して一定の協力金を拠出す

る。フルコンテナの状態で引き

渡して輸送。関西地区でデバン

後に小口貨物として輸送するこ

とは不可としている。また、日

中国際フェリーの高速輸送サー

ビスHDSやSHDSを利用す

ることが条件。東航輸出ブッキ

ングの際、コンテナ番号や通関

書類番号をファクスまたはメー

ルで通知する。

 空コンテナを関西まで返バン

する必要がなく、東京港・横浜

港・名古屋港での返バンが可能

であることを利点としている。

JR輸送目的地での返バン指定

コンテナヤードは、東京港はY

1(上組)、横浜港は本牧BC

−2、名古屋港は鍋田埠頭。

 同サービスは当初、今年開催

予定だった東京五輪・パラリン

ピックでの物流を支援するため

だったが、コロナ禍での活用を

提供。8月末までとしていたが、

当面続ける方針だ。

「新鑑真」

「蘇州號」

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(₆) 第2部 関西物流特集2020 2020年10月28日(水曜日)

エアーポートカーゴサービス

「お客さまにとって最良の品質を」

 エアーポートカーゴサービス(ACS)関空事業部は関空および対岸のりんくうタウンを所管し、陣容は約500人。4グループ体制をとっており、各グループにマネージャーを1人ずつ配置し、顧客とのコミュニケーション、現場対応力のさらなる向上を図っている。 航空会社での輸出入貨物ハンドリング業務、輸出入共同上屋でのハンドリング業務、フォワーダー上屋での輸出貨物手倉業務、フォワーダー向け人材派遣、動植物検疫業務を手掛けている。新型コロナ禍の影響で貨物ハンドリング事業の落ち込みはあるが、関空では約1~2割の落ち込みにとどまっている。 新型コロナ禍の影響は大きいが、品質向上と人財育成は欠かせないと考え、例年実施している集合研修を、今年は小集団でウェブなどを活用するなど、感染拡大防止に最大限留意しながら実施した。昨年度に新設した教育担当職である「ライジング・

ディレクター」を中心に、今年からより幅広い階層への教育を実施する予定だ。こうした教育機会を通じて高度な品質を全国に水平展開しながら、常に品質向上に努めている。 今年も6~7月に全社で「品質向上運動」を実施した。品質への意識をより高める期間と位置付けており、具体的には今年も西日本全体で「指差呼称」を重点ポイントに置き、オペレーションごとに、より注意を払う意識付けを進めた。「指差呼称」については社員一人ひとりが日々安全品質意識を高めながらオペレーションにあたることを目的に年間を通して推進することで、お客さまにとって最良の品質を社員全員で提供していく。 人材採用について、現状では例年並みとはいかないと見ているが、業界の動きを見極めつつ、全社で規模感を定めて新卒採用を進める。 池田眞澄取締役執行役員西日本担当関空事業部長は「航空業

界では2019年なみの市場規模に戻るのに3~4年は必要ではないかとの見方が主流だが、航空貨物についてはもっと早く回復期が訪れる可能性もあると考えている」と指摘。「回復期を待つのではなく、必ず訪れる出口に向けて持続と継続をキーワードに、最悪に備えつつ良いシナリオをイメージするとともに、事業継続を最大の使命と認識し、品質向上施策を含めて、今できる事、今しかできない事、今やらないといけない事を、地に足をつけてしっかりと進めていく」と強調する。 さらに「関西空港においてはリーマン時のような不安感はない。関西空港取扱量流動図などの数字を見ても予断は許さない厳しい戦いではあると認識しているが、決して先が見えない戦いではないと考えている」と話す。

CKTS

医薬品取扱機能拡充を検討

 CKTSは関西エアポートの100%子会社。昨年4月の事業再編で関西エアカーゴセンターの事業を承継した。現在の事業は旅客ハンドリング、貨物ハンドリング、ランプハンドリング、航空機メンテナンスサポート、車両整備。羽田空港における旅客ハンドリング、ランプハンドリング事業も手掛けている。陣容は新型コロナ前で約1200人。 関西空港では輸出・輸入上屋、医薬品専用共同定温庫Kix-Me dicaを運営している。ドライ貨物、生鮮貨物、医薬品などを取り扱っている。グランドハンドリング事業は外資系航空会社27社から受託。通常時(新型コロナウイルス禍以前)の売上高比率は旅客関連事業7割、貨物関連事業3割という水準だ。 昨年6月には国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品

質認証「CEIVファーマ」を取得した。関西空港における医薬品関連貨物取り扱い事業者が連携して立ち上げた「KIX Ph armaコミュニティ」の一員でもある。Kix-Medicaの概要は、床面積750平方メートル、管理温度帯は①プラス20度(床面積約650平方メートル)②プラス5度(約100平方メートル)。最大取扱容量は月間約1200トン。 加藤篤志社長は「関西空港における医薬品取り扱い需要は高い。Kix-Medi caは現在、ほぼ満床となっている」と説明する。さらに「新型コロナ用ワクチンが開発されれば、日本でもワクチン輸送に関わる

需要が発生するのは間違いないだろう」と指摘。関係事業者と連携して関西空港内外で新たな施設確保について検討中で、ワクチン需要に対応する重要性に言及する。 グラハン事業の拡大も課題の一つ。関空を利用する航空会社のグラハン事業の約2割を受託しているが、これを約3割に引き上げることが目標。加藤社長は

「関西空港もインバウンドを取り込んで成長してきた。CKTSとしても新型コロナ後を見据えて、グラハン事業の拡大に積極的に取り組んでいきたい」と話す。

 新型コロナウイルス禍により、日本各地の空港は国際旅客便の運休・減便の影響を受けた。関西国際空港も同様に国際旅客便の発着が減少したが、貨物輸送スペース確保を目的に、航空会社が国際貨物便を相次ぎ運航。関西空港を経由する仮陸揚げ貨物量も伸びた。医薬品専用共同定温庫「Kix-Medica」を擁する関西空港としては、医薬品取扱需要の高まりへの対応も重要な取り組み課題となりそうだ。新型コロナ禍以降の貨物需要の高まりも期待される。関西国際空港で事業展開する物流関連企業の動向をリポートする。

CKTSが運営する「Kix-Medica」

左から、入江佳津夫カーゴオペレーション部長、長谷川守正取締役、加藤篤志社長、武田香奈子関西空港オペレーションセンター長

池田眞澄取締役

関西空港、貨物需要増加に対応航空編航空編航空編

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第2部 関西物流特集2020 (7)2020年10月28日(水曜日)

平野ロジスティクス

医薬品専用車両・社内教育さらに充実

 平野ロジスティクス関西支店は高まる医薬品取扱需要に対応するべく、専用車両の導入、社内教育に注力するなど品質向上に務めている。大型車(10トン車)や4トン車を含めて専用車両も充実させており、関西エアポート、同空港の医薬品専用共同定温庫「Kix-Medica」、同定温庫を運用しているCKTSのロゴを施した「Medica号」も運行している。作業時間を短縮するため、製薬会社の強い希望で採用したエアジョルダー搭載の専用車両も強みだ。同車両にはサーキュレーターを装着しており、庫内温度がより安定する構造となっている。 フォワーダーをはじめとする物流会社、製薬会社の事業案件も多い。田中基康・西日本担当営業部長兼関西支店長は「医薬品関連輸送の引き合いは増加傾

向にある。例えば、国際航空運送協会(IATA)CEIVファーマ認証取得企業の輸送を受託するに際しての品質協定書の締結案件も増えている。製薬会社との直接取引を通じて医薬品を取り扱うためのノウハウを蓄積し、品質を高めてきた。今後はCEIVファーマ認証の取得を目指し、さらに品質向上、社内体制の整備に務めたい」と話す。 西端純一支店長代理は「医薬品取り扱いに関しては、求められる品質が年々高まっている。常に先取りして社内手順・基準を更新することが重要と考えている。ハードおよびソフトともに一層の品質向上を図っていく」と強調する。今後の医薬品取扱需要の高まり、さらには新型コロナウイルス用ワクチン需要といった動向を注視しながら体制を充実させる方針だ。 

平野ロジスティクスは関西国際空港第2国際貨物代理店ビルで保税倉庫を運営。保税蔵置場面積は746平方メートル(うち屋外268平方メートル)。昨年7月に保税蔵置許可を取得。フォワーダーの輸入貨物の取り扱いを開始。今年10月に輸出貨物取り扱いを本格的に開始した。 輸入貨物の取り扱いに関しては、航空会社からの貨物引き取りやダメージチェック、ブレークダウン、検品、配送に至るまで、通関以外の各種業務を手掛けている。輸出貨物に関しては、同倉庫に搬入後にフォワーダーによる通関が行われて航空会社への引き渡し、あるいは他空港への搬入などの業務を実施する。輸出貨物の取り扱いに伴ってトーイングトラクタ、パレットドーリーを保有し、ビルドアップもメニューに加わった。 平野ロジスティクスは関西空港周辺の物流拠点との集荷・配送、関西空港と他空港を結ぶ長距離の保税転送などを提供して

りんくう国際物流センター

アクセス利便性に強み

 空港施設(本社=東京都大田区)が運営する「りんくう国際物流センター」は、関西国際空港の対岸、りんくうタウンに立地している。物流棟が4階建て、事務所棟が6階建て。延べ床面積は5万2815平方メートル。物流棟の倉庫スペースは満床の状態が続いている。事務所の入居率は9割台の水準という。 りんくう国際物流センターの立地は阪神高速湾岸線泉佐野南出口から約500メートル。関西空港をはじめ各地へのアクセスに優れていることが特色だ。通勤に関しても「りんくうタウン駅」から徒歩数分という立地で、利便性が高い。関西空港にも近く、アクセス利便性の高さから、営

業拠点として活用される事例も多い。昨今、物流事業者の通関部門、外資系航空会社の日本事務所が入居する事例もあるという。 セキュリティーにも重点を置き、入居者のTAPA、AEOなどの認証に準拠した施設・機能を提供している。共用サービスとして爆発物検査装置を配備している。医薬品などの貨物に対応できる体制も整えている。 花畑雄士りんくう国際物流セ

ンター長代理は「関西空港と一体となって西日本地域の航空貨物業界を支えることが重要な役割と考えている」と言及。「引き続き倉庫および事務所入居の引き合いは多い。現時点で新築あるいは増築計画はないが、必要に応じて、そうした検討を行っていきたい」と話す。

おり、倉庫業務と一体化したサービスを窓口一つで提供でき

ることが強みだ。平野ロジスティクスのオリジナルトレーラー

である「+1」「+1α」といった車両も常時、配備している。

関西国際空港内の保税倉庫を活用しサービスを拡充

専用車両も導入し医薬品輸送を強化

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(8) 第2部 関西物流特集2020 2020年10月28日(水曜日)

富士運輸

背高貨物対応の大型トラック導入

 富士運輸は、背高貨物の搭載を可能とする新型車「Q7対応航空バン車両」を20台導入する。その初号車が納入された。従来は平ボディ車両による対応となっていた背高貨物を箱車で輸送できることが強みで、セキュリティーも万全となった。東京-

(成田空港、羽田空港)-名古屋(中部空港)-大阪(関西空港)間の保税転送(OLT)や、空港と周辺拠点間のシャトル便輸送などに投入する。 大型車(10トン車)に改造を加えた同社オリジナル車で、B 777F型機など大型フレーターのアッパーデッキ搭載ULD

(Q7タイプ)を直接搭載できる。航空貨物とともに、サイズの大きい特殊貨物にも対応できるトラックだ。 「Q7対応航空バン車両」や

航空ウイング車が航空貨物への対応に強みを発揮。さらに大型高規格空調車、大型冷凍車、航空ウイング車など豊富な車種・車両台数を生かして、顧客層拡大にも力を入れる方針だ。 大型空調車は現在100台。高額医薬品輸送にも投入しており、高まる需要に合わせて増車を計画しているという。富士運輸の神野貴士支店長は「医薬品を含む多種多様な貨物の輸送に幅広く対応する」と強調する。 関西地域発着の荷動きについて神野支店長は「OLTは関西-中部-成田間をメーンに輸送量はバランスがとれた状態が続いている」と説明する。昨今、空港間OLT需要も回復傾向にあるという。 富士運輸は今年に入って出雲や兵庫、福島、長野、米子、富

山に拠点を開設。千葉県や福岡県に冷凍輸送に特化したコールド支店を設立した。トレーラー専門の運行会社トレーラージャパン(大阪市住之江区)も開業した。 フジホールディングスは6月には東和運送(大阪市)、9月には関汽運輸(大阪市)をグループ化した。東和運送は関西を拠点に九州や関東を含む地域で航空貨物の長距離輸送にも強みを発揮していることも特色だ。 グループ全体で車両2000台体制を確保。顧客の需要に応じて、柔軟なサービスを日本全国で幅広く提供する体制を整備している。

フジエアカーゴ

空調車完備し医薬品輸送強化

 フジエアカーゴ(本社=大阪府泉南市、井上博登社長)は断熱効果の高い空調車を完備し、医薬品などの定温輸送サービスを強化している。関西圏を中心に輸入貨物を中心に需要が高まりを見せており、ハード・ソフト両面の品質向上に取り組み、需要に対応している。一方、空港―周辺拠点間のラウンド輸送の需要も伸びている。空港内の諸作業と配送を一体化したサービスを提供できる強みを生かして、顧客層拡大につなげていく方針だ。 フジエアカーゴは業務部、直轄営業部、保税業務部の3部体制となっており、各部の拠点を成田、関西、中部空港、福岡空港に配置し、主要国際空港における国際貨物に対応できる体制を整えている。 通関関連業務やトラックによる集荷配送事業は直轄営業部のもとにある各支店・営業所が対応。貨物の内容点検業務などは保税業務部の空港業務課が担当している。車両は航空コンテナ対応を重視した大型ハイドローダー車、医薬品輸送など高度な温度管理が求められる輸送に対応した空調車を配備して い る。G P S 管

理、自動ブレーキ装置の装着など、安全・保安体制にも特に注力している。 現在の主力事業は保税転送

(OLT)貨物のハンドリング、空調車や96ローラー車などによるトラックチャーター輸送(空港と周辺拠点間の短中距離輸送)、車両手配、貨物のダメージチェック・内容点検、貨物搬出入時の立ち合い、通関など。きめ細やかなサービスと運送を提供している。空港における各種作業、空港と周辺拠点間の集配業務をフジエアカーゴの高品質サービスで一括対応できることが強みだ。 昨今は関西圏を中心に、医薬品貨物の取り扱いも急激に伸びているという。ハイドローダー装備の空調車は88インチ・サイズのコンテナも搭載でき、断熱材を十分に活用して密閉効率を向上させ、安定した温度管理輸送を可能としている。関西空港

支店の田中修一支店長は「輸入貨物を中心に医薬品の取り扱いが増えている。今後も医薬品取り扱いの需要は高まることが見込まれるため、りんくうタウンにりんくう営業所を開設し、増車の体制を整えた」と抱負を語る。 空港現場作業、集配ともに小回りが利く強みを生かして、顧客層の拡大にも努めていくという。空港と周辺拠点間のラウンド輸送の需要も高まっており、ソフトおよびハード両面から高品質サービスを提供していく。グループの富士運輸の幹線輸送と連携できることも強み。ラウンド輸送などの短中距離輸送に加えて、空港間あるいは都市間といった長距離輸送サービスを提供していく。

「Q7対応航空バン車両」を新たに導入 充実した車両体制で高品質サービスを提供している

神野貴士支店長 田中修一支店長

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第2部 関西物流特集2020 (₉)2020年10月28日(水曜日)

近畿通関

コロナ禍でSC維持に貢献

 大阪港を拠点に国際物流一貫

輸送サービスを行っている近畿

通関は、新型コロナウイルス感

染症が社会に大きな影響を及ぼ

す中で、物流事業を継続してサ

プライチェーン(SC)維持に

努めている。

 近畿通関は、大阪港咲洲中埠

頭Q4で大阪市港湾局からの賃

貸で物流センターの業務を行っ

ている。夢洲では「夢洲物流セ

ンター」を2002年から運用して

いる。輸出入のコンテナオペ

レーション業務、一時保管、検

品、配送業務と顧客のニーズに

対応している。新型コロナ感染

症防止対策では、事務部門など

で時差出勤など安全性を考えて

対応している。

 コロナ禍での物流の動向につ

いて、米澤隆弘社長は「非常に

厳しい」と見ている。新型コロ

ナが世界的に広まりだしたころ

の2月には、中国では工場もス

トップするなど生産、物流で支

障が見られたが、「思いのほか

中国の回復が早かった」ために

物流事業の再開もすぐだった。

春に多かったのはマスクの輸送

で、今まで取り扱っていない中

国企業からの依頼もあったほど、

新規参入が多かったという。

 6月ごろから再び国際貨物輸

送は低調傾向がみられ、大阪港

での輸出は大きく減少。特に米

中摩擦の余波を受けて、輸出企

業に影響が表面化してきたとい

う。大阪港は輸入港の性格もあ

って、消費財などの輸入が多い

のが特長だ。4~5月に行われ

た緊急事態宣言が解除された

後、新型コロナ感染者数が再び

増え始めると、再び自粛生活を

行う人々も増加した。その影響

が物流にも表れ、「家庭内で使

われるものの輸入品が増えた」。

一方、人々が外出を控えたこと

で、居酒屋やレストランといっ

た外食産業の店舗で使用される

食品などの輸入が減少した。衣

類・繊維関係も夏に秋冬ものが

輸入されるが、今年は例年と比

べても多くはないという。

 近畿通関は創業時から沖縄と

の取り引きが多いのが特長だ。

沖縄はこれまでインバウンドが

多く訪れ、ホテルの建設計画も

次々とあった。コロナ禍であっ

ても工事を続けているところも

あり、そのため沖縄本島や宮古

島などへ建築用資材を輸送して

きた。だが、沖縄は観光が大き

な産業であり、コロナ禍で取扱

量は今後、厳しさが続くと見て

いる。

 航空貨物に関しては、近畿通

関は大阪国際(伊丹)空港時代

から行ってきている。関西国際

空港では1994年の開港のときか

ら公共上屋を開設した。自社で

上屋を持っていない外資系中小

手や国内企業など、主に中小フ

ォワーダー向けに運営してきた。

しかし、コロナ禍が続く中で取

扱量も減少していった。「中小

フォワーダーも厳しくなってい

る。運営をどうするか今後、判

断を考えたい」と検討している。

 旅客向け業務として、関空で

国際旅客通関サービスセンター

の業務を続けてきた。伊丹空港

時代から続けて、「今まで事故

もまったくなく行ってきた」と、

高い安全性で貨物を取り扱って

きた。だがコロナ禍で旅客機が

激減して同事業の売上も減少。

今後の見通しを考え、「体力が

あるうちに縮小したい」として、

事業継続は難しいと判断して

取りやめることになった。9月

には関西国際空港支店を「りん

くう国際物流センター」に移転

した。

 新型コロナウイルスの影響が

しばらく続くと見込まれている

が、大阪港夢洲では「2025年大

阪・関西万博」が開催されるた

め、工事もすでに始まっている。

今後は万博関連の物流の活性化

にも期待をかけているところだ。

米澤隆弘社長

 「逆張りですわ」―。関西国際空港の航空貨物関係者は力強く語る。 新型コロナウイルス感染禍で、世界的に航空旅客便の大幅な減便・運休が続き、航空貨物運賃は高止まりしており、航空から海運など他モードへのシフトもある。物流を止めないため、感染防止を徹底して取り組む中、サプライチェーンの変化も踏まえた施策も問われている。 「貨物量は確実に回復する。コロナ禍であえて、

人員と倉庫スペースを増やした。貨物量が少ない中だからこそ研修もしっかり行うことができる。リーマン・ショック時の経験も生かし、物量回復時に備える」と続ける。2008年9月のリーマン・ショックでは世界的に航空貨物需要が消失した。未曽有の危機に直面したフォワーダーは拠点統廃合や人員異動でしのいだ。ただ、その後、貨物量回復時に対応で追われた。それだけに、“逆張り”は関西以外の地域でも聞かれる。

空港内外、条件厳しく 関空の国際旅客便数の早期回復が見込まれない中、オペレーション体制の再構築は大きな課題だ。フォワーダーは1994年の関空開港以降、関西のオペレーション拠点として、関空国際貨物地区、関空対岸のりんくうタウン(大阪府泉佐野市)、大阪南港航空貨物ターミナル地区(大阪市住之江区)、神戸航空貨物ターミナル(神戸市、K-ACT)施設を中心に体制を構築してきた。 現在は関空国際貨物地区とりんくうタウン地

区が中心だが、その前提には、「関空で国際航空貨物を取り扱う」ことがある。そこが現在、揺らいでいる。すでに、りんくうタウン地区の倉庫に空きスペースはなく、物流事業者用の土地もない。新型コロナ以前から関空対岸では、物流事業者用に適した土地が少なく、悩みの種でもあった。限られた土地の中、新型コロナ前に旺盛だったインバウンド対応のホテルが建設途中で中断しているケースもある。新型コロナ化での体制変更は容易ではない。

越境ECは増勢、DHL空港外に 新型コロナ禍では世界的な巣ごもり需要もあり、eコマース(EC)関連が増勢だ。関空はもともと中国便が多く、輸入中心に越境ECが多く取り扱われてきた。関空国際貨物地区に自社上屋を構えるスコア・ジャパンによると、B to Cの顧客は海上シフトが顕著という。 エクスプレス関連を含め、関西地域で大きな関心を集めているのはDHLジャパンが11月に開設予定の「大阪ディストリビューションセンター」(大阪府堺市・三井不動産ロジスティクスパーク堺3階、ODC)だ。倉庫面積は約2

万2500平方メートル、総投資額は99億円。いずれも同社として最大。同地区で賃借してきた国際貨物上屋C棟は関西エアポートに返却する。施設規模がほぼ倍増するODCには最新のエックス線検査装置を導入するほか、仕分け業務へのロボットアーム導入構想もある。大阪市内向けのサービス強化に加え、付加価値サービスの提供も検討されているもようだ。 新型コロナ禍での取り組みは、物量回復時への備えか、体制再構築か、新たな付加価値提供か。関西地域で新たな競争環境が生み出されつつある。

投資・再構築・付加価値をロジスティクス編ロジスティクス編ロジスティクス編

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(10) 第2部 関西物流特集2020 2020年10月28日(水曜日)

近鉄エクスプレス

オンライン営業で顧客物流支援

 近鉄エクスプレスは新型コロナウイルスの感染拡大が続く状況においてWEBを活用し、グループ内の連携を図るとともに顧客への営業提案を行い、物量の維持・拡大と顧客サポートを実施している。オンラインでの営業を積極的に実施し、加えてスペースの確保に尽力した結果、関西地区発の航空輸出の取り扱いでは業界全体が大幅な落ち込みとなる中、比較的落ち込みは小幅にとどまり、今年5~7月実績ではTC3向けはプラスで推移しているという。 荷主企業がテレワークを推進し、また営業訪問の受け入れを控える動きがあるなど、感染拡

大で顧客とのコミュニケーションは一変した。「キープディスタンスを維持しながらも顧客との距離は縮める」ことを大事にし、顧客訪問の機会 が 制 限 さ れ る中、WEB面談を積極的に活用。また、WEBを利用した勉強会なども積極的に行って情報提供や提案に努め、顧客からの評価を得ているという。航空便の運航状況やマーケット

状況の説明を中心に常に最新情報の発信に心がけている。 そうした取り組みから大阪仕立ての航空輸出重量(今年4~7月平均)は前年同期比7%減と小幅なマイナスにとどまった。スペースが大きく縮小したTC1、2向けは半減程度落ち込むも、中国向けや半導体製造装置の好調なTC3向けが増加したことが要因だ。輸入においても顧客の納期を最優先にサービスとリードタイムの提案に努め、また発地側のスタッフと緊密に連絡を取りあらゆるルートで運ぶ手配を検討するなど、物量の落ち込みの影響を最小限に留めるよう努めている。

 顧客とのコミュニケーション強化と併せて、スペース確保や輸送の品質強化も実施。関空発着のフライトが限定されたこともあって、首都圏空港への横持ちが急増しており、輸出では3月と比較し、4月の件数は約2倍。6月は4倍にまで膨れたという。同社の取り扱いでは衝撃に敏感な貨物も多く、トラック業者とダメージ防止策の検討を実施するなどダメージリスクへの対応を行っている。今後もスペース不足や運賃上昇が懸念される中、「顧客の出荷動向を前広に確認しながら、グループで連携して限られたスペースを有効に活用できるように取り組んでいく」とする。 業務面では荷役現場、事務所スペースでの感染防止策の徹底に加えて、パーティションでマスクを外せる環境を整備して熱中症にも考慮した対策を採り、従業員の安全を確保してオペレーションの安定継続に努めている。 テレワークや変型労働時間の活用も推進している。ノートPCの追加導入など環境整備を実施し「営業チームは基本テレワークとし、カスタマーサービスは交代でテレワークができる体制を敷いた」(輸入営業部)、

「(テレワークが難しいとされる)通関/混載チームでも、業務プロセスを見直し、分業体制を強化し、一部業務をテレワーク化した」(輸出営業部)などの取り組みを実施している。

商船三井ロジスティクス荷主のSC再構築見据え提案強化

 商船三井ロジスティクスの関西支店(大阪市中央区)は、新型コロナウイルス感染拡大による荷主のサプライチェーン(SC)再構築を見据えた提案で取り扱い拡大を目指す。顧客との連携を密に取り、同社のネットワークを強みに最適な提案を準備する。また、品目では半導体関連の営業にも力を入れる。今年4月には京都出張所(京都市下京区)を増員し、京都府や滋賀県などの半導体関連の荷主への営業体制を強化した。 同支店は京都出張所、関西空港カーゴセンター(関西国際空港第一国際貨物代理店ビル)を含む、関西以西(九州を除く)地域を管轄している。陣容は72人。6月には、それまで山口県を除く中国・四国地方の営業を担当していた神戸営業所を支店内に集約した。これは、今年度から全社で中国地方を強化していく動きに伴う体制変更だ。 同支店は4月以降、新型コロ

ナの影響による顧客のSC再構築を見据えた提案で営業を強化している。現在も顧客からは、SCの見直しに関する相談が増えている。そこで、同社のネットワークを強みに案件獲得を狙う。関西支店の平野資富支店長は「今後、当社が強みを持つ地域に顧客が生産拠点を移すといった可能性もある。今の状況を悲観的にとらえずに、チャンスにつなげたい」と話す。そのためにも、顧客とコミュニケーションを密に取って情報を収集し、積極的に最適な提案ができるよう準備している。 今後の荷動きについて、平野支店長は「半導体関連の荷動きが復調の兆しだ。積極的に営業を進めたい」と話す。営業を強化するエリアは、京都府や滋賀県、北陸地方だ。4月には同エリアを担当する京都出張所の人員を1人増やし、3人が常駐する体制とした。同出張所はこれまで液晶製造装置などの輸送な

どで実績がある。実績を足掛かりに新規案件獲得を目指す。その他、顧客から照会が増えている自動車関連、関西支店で取り扱いが多く、生産が伸びている化学品関連、農機関連も年末にかけて荷動きが活発になると見て、三国間輸送も合わせて、取り扱い拡大を狙う。 4~7月の同支店の業績は、全月で売上高前年同期比プラスを維持した。4、5月の売上高は前年度並み。輸出の不振を三国間輸送、倉庫関係のロジが補った。さらに、6月は8%増、7月は10%増だった。4、5月の積極的な営業活動が奏功し、6月以降は新規顧客や既存顧客の新規レーン獲得などに成功した。新型コロナ感染拡大防止のため、営業活動に制限が出る中、同支店はウェブ会議システムなど活用して感染対策と営業活動を両立した。平野支店長は「在宅勤務を実施した企業が多いためか、顧客からは『他社とは連絡が取りづらかった』という話も聞いた。その中で、当支店は細やかなサポートを実施できた点が顧客から評価を受けた」と話す。 取扱量では、4、5月の航空輸出は落ち込んだものの、航空輸入や海上輸出は堅調だった。航空輸入では、マスクやパソコン、プリンターなどが好調だった。海上輸出では電子部品関連、5G(第5世代通信技術)関連の化学品、ゲーム機関連がけん引した。6、7月からは航空輸出の取扱量も増加した。

3密の回避など従業員の安全確保の上、オペレーションの安定継続を図っている

今年5月には関空ロジスティクスセンターのスタッフで『Stay home』を呼び掛けた

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第2部 関西物流特集2020 (11)2020年10月28日(水曜日)

日新

コロナ状況見据え食品、医薬品強化

 日新は関西で、新型コロナウイルス感染状況も注視しながら食品や医薬品などの取り扱いを強化する。食品は、第6次中期経営計画(2017年4月~22年3月)で自動車関連、化学品・危険品とともに事業の柱に掲げる。輸出先で最大の香港では、感染縮小に伴い、飲食店の営業が段階的に拡大。品質の高い日本の果物や肉などの需要増加を見込み、取り組む。一方、輸入では「海上での中国発冷凍食品の取り扱いが増えている。今後は欧州からの食品輸入も回復すると見ている」(南祥一執行役員関西支社長補佐)とする。関西で取り扱いの多い医薬品関連は、「航空での荷動きが良い。新型コロナを受けて製薬会社などの開発競争が進む中で、さらに取り扱いを伸ばす」(清水俊孝大阪航空部長)と話す。 新型コロナ感染防止では今年2月、関西に「現地対策本部」を構え、各担当エリアでの対策

を講じた。同本部は関西の管理部門や各営業所の支店長などで構成。関西の感染状況や規制を踏まえ、本社と相談の上、社内規則や対応を決める。サテライトオフィスの活用や在宅勤務開始に向けたノートパソコンの支給などを進めた。現在も、関西では一部業務で在宅勤務や時差出勤を継続している。また、事務所内では衝立の設置による感染症対策も行っている。 事業面について、鳥尾省治取締役常務執行役員関西支社長は

「コロナ禍でも変わらず、中計で掲げた3つの事業(自動車関連、化学品・危険品、食品)の柱を強化していく」とし、関西では特に化学品・危険品と食品の取り扱いが多いとする。化学品・危険品は、中国やタイなどで生産活動が本格的に再開すれば、自動車関連の化学原料や5G(第5世代通信技術)関連の化学品などの需要が増えると見込む。

 関西での20年4~7月の取り扱い実績は、航空輸出は特需的輸送があり重量で前年同期比6%減にとどまったが、取扱件数は国内での生産活動停止が響き前年同期比20%減。また、関西国際空港発着便の減便などで、同空港から成田空港への貨物の転送も増加。航空輸出取扱量の約40%を占めた。7月以降は物量が回復し始め、PCR検査で利用する薬品関連や器具の輸出などが増えた。航空輸入は、アパレルや自動車部品関連の取り扱いが減少した。一方、新型コロナ感染拡大以降、マスクや医療用グローブなどの輸入が増えた。 海上輸出はFCL(フルコンテナ)が重量で2%減。北米向けの設備機械関連や、中国向け液晶、電池関連は好調。ベトナム・タイ・欧州向け自動車関連や化学品関連が低調だった。LCL(海上輸出混載)は18%減。北米向けの自動車部品、鋼材、化学品が大きく減少した。中国向けのアパレル関連部材、ベトナム・タイ向けの自動車関連部材も低調だった。海上輸入は、物量、件数ともに1%増。中国からなどの調理家電の輸入が増えた。一方、北米からの雑貨や食品、ベトナム・タイからの自動車部品、化学品、雑貨は減少した。鳥尾取締役は「関西は関東より自動車関連の取り扱いが少なく、この部分では影響が小さかった。一方、中国発着の取り扱いは多く、中国の経済活動再開が早い分、その恩恵を受けた」と話す。

丸一海運

IT化推進、危険物混載強化

 丸一海運は、新型コロナウイルス感染症が社会に影響を及ぼす中、「物流は世の中でなくてはならない必要不可欠な事業で、その使命を果たすことが重要」

(清水智志取締役営業本部長)との思いで、いかなる状況にあってもサプライチェーンを維持していけるよう社内の仕組み、体質を強化することを最重要課題として取り組んでいる。 新型コロナによる業績への影響も決して無視できるものではないが、むしろ「仕事の仕組みを変えるチャンス」との認識。これを機に社内のIT(情報技術)化を加速。物流業界のデジタルトランスフォーメーション

(DX)に積極的に貢献していく。 同社は2018年に大型台風21号が関西を強襲した際、大阪港化学品センターが被災するなど損害を受けたことを機に、社内BCP(事業継続計画)を全面的に見直した。社内業務システムのクラウド化も進め、19年4月に整備完了。今回のコロナ禍で奏功することになった。 緊急事態宣言を受けテレワーク(在宅勤務)を全社的に推進した際にも、クラウド化により社員が自宅から会社のサーバーとの間で必要なデータをスムーズにやり取りすることができ、業務に大きな影響を与えずに対応することができた。また出勤者に対しても、大阪本社に隣接

する第2ビルを活用し、社員間で接触する機会を減らせるようにするなど、より安全な環境を整えている。さらにペーパーレス化も合わせて推進している。 このような業務インフラの整備に加え、顧客との直接面談が難しい場合でも電話やメール、ウェブ会議で十分な顧客対応ができるよう、社員のスキル向上とマインド変革に取り組んでいる。客先を訪問しフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションがとれなくても、ITツールを使いこなすことで、相手の希望を十分にくみ取り顧客ニーズに応えていけるような「リモート営業力」を強化する取組みを進めている。 顧客への情報発信も重視している。これまでも顧客にはドレージ情報など定期的にメールで関連情報を伝えているが、さらに顧客に役立つ情報を上乗せして発信力を強化。情報発信力を高めることで競争力を強化する。オンラインセミナーも企画中だ。 同社は、1997年に開設した台湾航路を皮切りに、日本で初めてとなる危険物混載サービス

(MACCS)を行っている。現在、阪神から26港、京浜から14港と海外へ幅広く展開している。阪神、京浜、水島(岡山県)地区に使い勝手のよい危険物倉庫を持ち、高い安全意識をもって取り組む熟練度の高い倉庫ス

タッフが対応している。営業部隊は、危険物取扱のために必要な法規や化学品知識に精通し、顧客の事業内容、取扱商品やその用途に詳しく、最適な物流を提案。危険物を安全に取り扱うノウハウを持って顧客をサポートできる万全の体制を整えていることが強みだ。 危険物混載サービスでは、大連向けを8月から再開したのがトピックス。中国向けでは、20 15年に起きた天津での爆発事故の影響が大きく、17年1月以降、現地CFSで受け入れが不可となっていたため、大連向け危険物混載サービスを停止していた。再開後さっそく予約が入ってきており、「より多くのお客さまにサービスを広めていきたい」。そのためにも情報発信力を高めていく方針。 また、新しくバングラデシュ航路を開設する準備も進めている。9月の開始予定が現地洪水被害のために遅れているが、早急に立ち上げるべく取り組んでいる。海外ではタイ・バンコクに拠点を置いているが、「もう1拠点、アジアに置くことを検討している」として、アジア重視の戦略を展開していく構えだ。

事務所内は衝立の設置で感染症対策を行っている

清水智志取締役営業本部長

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阪急阪神エクスプレス

関空価値向上を、コロナ禍体制探る

 阪急阪神エクスプレスは、関西国際空港の価値向上に積極的に取り組んでいる。2017年8月には関西エアポートが主導する

「KIX Pharma コミュニティ」に参画し、関空港発着の医薬品輸送の高品質なサプライチェーン(SC)構築を進めている。関空では19年6月1日付で国際航空運送協会(IATA)の医薬品輸送品質認証「CEIVファーマ」を取得。海外法人とも連携し、GDP(医薬品輸送の適正流通基準)に準拠した、医薬品の一貫輸送サービス提供を目指す。 関空ではまた、関西エアポートが主導して事業者5社と19年10月に結成した「KIX Cargo Community」にも参画した。同コミュニティは、貨物オペレーションの改善、デジタル化導入など、関空の将来の貨物オペレーションの検討・実施を目的とする。阪急阪神エクスプレスとしては、メーカー工場のように関空国際貨物地区で見学者を積極的に受け入れる体制を整

えることも想定。顧客ニーズを積極的にくみ取り、具現化し、他空港との差別化にもつなげる。 新型コロナウイルス感染防止では関西地域で今年7月以降も、営業・カスタマーサービス

(CS)部門の160人を対象にテレワークを実施。サテライトオフィスも設置し、在宅勤務困難者の就業場所を確保するとともに外勤営業担当者の移動時間を削減。事務作業を効率化している。南港地区(大阪市)のロジスティクス営業部門では、モバイルPCを貸与し、倉庫作業以外の業務をテレワークで遠隔管理できるか、実証実験を行う。通関部門では、税関の暫定措置として通関在宅勤務の要件が緩和されたことから可能な限り在宅対応を進めている。ターミナル部門では、現場の貨物取扱量が減少する中、スタッフのシフト化を加速。感染者発生時でも、貨物を止めない体制を整備していく。 感染防止について現場からは、「社内で一体感があり迅速

に進めることが出来た」(営業部門)、「全国の通関営業所が連携したBCP(事業継続計画)を策定し、リスクを最小限に抑え、西日本地区では社内感染者ゼロにつなげることが出来た」

(通関部門)、「旅客関係、貨物関係と多方面からの人の出入りがある関空島内という立地から、特に3密を避ける行動で一体感があった」(ターミナル部門)との声がある。 今年度の関西地域での貨物取扱実績は輸出重量、輸入件数とも前年同期比2桁減で推移している。旅客便の大幅な減便・運休に伴い、一部路線では成田や羽田発のスペース確保が出来なくなり、関空に大幅にシフト。輸出の転送貨物量が激増した一方、成田・羽田向けの転送貨物量は減少傾向にある。輸入では、成田からの横持ちでは納期に間に合わず、成田で輸入通関を行い、関西地区の顧客へ配送するケースが増えた。 今後の課題は、営業部門では対面営業が難しい中で、ウェブを利用した新たな営業体制の構築が必要という。通関部門では、ペーパーレス化促進のためにデジタルトランスフォーメーション(DX)化は必須とし、AI(人工知能)による光学文字認識(OCR)の「AI-OCR」やRPAの導入を推進する。人材も航空、海上の双方への対応に向け、適切に配分する。営業、現場とも相互に協力しながら、ウィズコロナの新たな体制を構築していく。

郵船ロジスティクス

初の多機能倉庫でSCSサービス

 郵船ロジスティクスは、従来の事業領域の枠にとどまらないソリューションの構築に挑む。関西地区で4月に新設した「大阪ベイロジスティクスソリューションセンター」(兵庫県尼崎市、倉庫面積約7000平方メートル)は内貨と保税の両機能を有し、海上・航空双方の輸出入貨物を集約してバンニングやデバンニング、梱包を行い、仕分け、店舗などへの直接配送も担う。国際・国内物流を統合した、陸・海・空を包括する初の多機能倉庫とする。同センターを基点に、顧客ごとにオーダーメイドのサプライチェーン・ソリューション(SCS)サービスを確立し、関西のリテール荷主などに拡販する。 大阪ベイセンターは大阪、神戸の両港の中間に位置し、沿岸部から距離があり浸水被害が想定されない尼崎市内に立地している。「海上コンテナのインランドコンテナデポ(ICD)+航空貨物倉庫+クロスドックやディストリビューションセンターの機能を含む内貨の配送センター」を一体化した機能を持つ。10月1日付で保税認証を取得し、年内に保税業務を開始する計画だ。 航空フォワーディングが主軸の旧・郵船航空サービスと、海上フォワーディング主体の旧NYKロジスティックスジャパン

が統合した経緯から、同社では主に海上、航空また輸配送を担うコントラクト・ロジスティクスと事業ごとに、それぞれの機能を持つ倉庫を構えていた。大阪ベイセンターは同社西日本営業本部が管轄し、「事業間をまたいだ初の試みとして、尼崎を基点に総合的なサービスを提供する」(北浦剛執行役員西日本営業本部長、以下同)。昨年ローンチしたSCマネジメントシステ ム、「Yusen Vantage Performance」も活用しながら、アパレル貨物を中心にSC全体を支援するサービスを提供していく。 今春以降、関空着でベトナムやフィリピンなどアジア発の航空チャーターによる輸入貨物も扱ってきた。同社は関空対岸のりんくう地区に、「関西りんくうロジスティクスセンター」(大阪府泉佐野市、倉庫面積約6000平方メートル)を持つ。関空の台風被害を受けたことも後押しとなり、昨年10月に同地区に移転。これまで成田、羽田の両空港からのOLT貨物は関空の協力会社上屋に直行していたが、

「関空は航空便の復便(再開)に時間がかかり、輸入貨物は今後、成田・羽田が中心になって横持ちが増える」と見て、岸和田税関の許可を取得し、輸入OLT貨物の同センター止めも可能とした。

 同本部の今年上期(1~6月)の取扱量は航空輸出入、海上輸出がともに2割減、海上輸入はほぼ前年並みだった。 10月には愛媛出張所を設置、四国地区で営業を強化する。北浦執行役員は「コロナ禍で出張が難しい中、地元に密着した拠点で顧客との信頼関係を構築していく」と説明する。広島、山口の両県の瀬戸内海側や九州地区でも営業も積極化する考え。 同本部では6月までに、全拠点に次亜塩素酸空間除菌脱臭機を導入した。マスクの着用、社内での分散体制、従業員同士の距離の確保から、オフィス出入り口の専用化、ドアノブをひじで開けられる設備をつけるなど、感染防止対策を徹底している。 北浦執行役員は「今後も安心して働ける環境を整備していく。営業スタイルの多様性や新しい価値観を受け入れながら、大阪ベイセンターでオーダーメイドのSCSサービスを展開し、顧客に貢献して、『楽しく、わくわくできる』仕事をしていきたい」と話している。

関空国際貨物地区の自社上屋での作業の様子

北浦剛執行役員