講義：財政学 第11回

2011年5月25日

吉弘 憲介

1 本日の授業構成

1. 予算原則の形骸化

2. 予算の計画化、成果と挫折

3. 財政赤字との戦い‐米国を事例に‐

予 算

国 民

議 会 （司 法）

内閣 （行政府）

予算編成

官僚組織 （霞が関）

・権限を付託

・国民に代わり、予算を編成もしくはチェック

・議院内閣制では、議会から行政府が組織され、予算を編成

・予算に対する行政府の権限の拡大（議会機能の限界が露呈）

組閣

・実質の予算編成における官僚組織の権限の拡大

財政民主主義の形骸化

3 予算制度改革はなぜ必要となるか

経済安定化や所得再分配など行政府の仕事の肥大化と権限の強化が生じる

財政民主主義の形骸化

議会権限よりも、「財政の結果責任」へ国民の焦点は移る

4 予算の計画化と行政責任

多様な利害の調整のための「計画化」

行政府の機能強大化に伴う「行政責任の明確化」

効果測定を目的とした「政府機能の数値的評価」

5 PPBS（Planning-Programming-Budgeting System）の試み

プランニング

プロジェクト

バジェット（1）

バジェット（3）

バジェット（2）

3）計画に基づいて費用対効果を念頭

においた、目的達成のための「予算編成（Budgeting）」が実施される

1）ある

政策目標を数値で定義する（例えば、保育園の整備率など）

2）プランニングで立てた目標を達成するための「計画（Programming）」を作る

6 PPBSの帰結

1961年から順次、アメリカで導入されたPPBS

しかし、1971年には撤回されてしまう

目標の数値化や効果測定が実際には困難

7 財政赤字との戦い

70年代のオイルショック以後、先進

諸国では財政赤字の解消が政策課題に

1990年代初頭にかけて、アメリカ、欧州で財政再建策が組まれる

8 アメリカにおける財政赤字問題

アメリカでは1980年初頭に

レーガン政権下でサプライサイド経済学に基づいた経済政策が実施された

具体的には、累進所得税の限界税率の引き下げや、投資促進税制を通じた減税政策

結果、アメリカでは急速に財政状況が悪化 -400

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89年

連邦総収入 連邦総支出 連邦財政収支

9 1990年代の財政再建

OBRA90とOBRA93の実施

予算上限を決めるCap制

義務的経費へのPAYGO原則の適用

何よりも所得税の大幅な増税

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20

00年

連邦総収入 連邦総支出

連邦財政収支

10 再び増大する赤字

ブッシュ（子）政権の減税政策により再び赤字が増加

2007年以後は財政

支出の増加と歳入減のダブルパンチで赤字が増加

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07年

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09年

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10年

連邦総収入 連邦総支出 連邦財政収支

参考資料

テキスト：p.39-46.

神野直彦『財政学』p.135-142.

統計：U.S Bureau of Economic Analysis (http://www.bea.gov/index.htm)