新製品紹介 - Toyoda Gosei · 2019-09-30 · 新製品紹介...
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新製品紹介
ポップアップフードアクチュエータ
Pop-Up Hood Actuator
切 手 肇 * 1 , 角 野 哲 也 * 2
*1 Hajime Kitte SS第1技術部 SS開発企画室*2 Tetsuya Kadono SS第1技術部 SS実験室
1.はじめに
近年国内の自動車事故の死亡者数は法規制や
安全装備などにより減少傾向であるものの,そ
の内訳では乗員の死亡者が減る一方で歩行者は
ほぼ同じ傾向となっている1)(図-1).
現在では,交通死亡事故死亡者数の中で歩行
者事故の占める割合が最も多くなっており,自
動車における歩行者保護性能の向上が重要とな
っている.歩行者事故における死亡原因の約半
分は歩行者の頭部損傷が原因であり 1)(図-
2),さらにその中の約半分はフード下のエン
ジンなどの剛性の高い部位との衝突となってい
る.
今回,その衝突を緩和するため,瞬時にフー
ドを持ち上げ頭部と剛性の高い部位との隙間を
広げるためのポップアップフードアクチュエー
タを開発した.その概要を紹介する.
*「全損」とは、損傷が多数あり
損傷部位別 ・状態別死者数(構成比率 ) 平成2 3年中
63.1
55
14 .2
15 .8
5 .4
3 .9
0% 20% 4 0% 60 % 80% 1 00%
自転車乗車中
歩行中
全損
頭部
顔部
頸部
胸部
腹部
背部
腰部
腕部
脚部
その他
(N=1686)
(N=628)
頭部
損傷部位別・状態別死者数(構成比率) 平成23年中
0% 20% 40% 60% 80% 100%
2.製品の概要
ポップアップフードアクチュエータはエンジ
ンルーム内のフードヒンジ近傍,車両左右に設
置されており,作動は歩行者の衝突を検知する
車両側センサからの信号により行われフード後
端を持ち上げ,保持することでフード下の隙間
を拡大させる(図-3).
フード
図-1.国内交通事故死亡者数1)
図-2.歩行者死亡者損傷部位内訳1)
図-3 歩行者保護概要
ポップアップフードアクチュエータ
車両進行方向
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ポップアップフードアクチュエータ
3.製品の特徴
製品構成は主にピストン,シリンダ,ピスト
ンを作動させるためのガスジェネレータ,ハー
ネスからなっている.ピストンには持ち上げた
フードを保持するためのロック機構が組み込ま
れ,シリンダには車体と固定するためのブラケ
ットが一体となっている.また,車室外で搭載
されるためアクチュエータ内部に水がはいらな
いようシリンダ本体,ハーネスコネクタ部は防
水仕様となっている(図-4).
作動状況を図-5に示す.センサからの信号
を受けたガスジェネレータはガスを発生させ,
そのガス圧でピストンが上昇し,フードを持ち
上げる.ピストン上昇後,フードとピストンが
下降しないようロック機構により固定する.
歩行者がフードに衝突した際には,ピストン
はフードを保持しつづけるが,歩行者頭部がフ
ードを保持しているピストンの位置に衝突した
場合には,ピストンが曲がることで歩行者との
衝突を緩和するよう配慮されている(図-6).
4.効果
実車でのフード作動試験において,ポップア
ップアクチュエータのフードの持ち上げは,歩
行者がフードに衝突するタイミングより十分前
に完了することを確認できた.また,歩行者の
頭部保護性能を評価するインパクト試験におい
て,頭部への衝撃が緩和されることが確認でき
た.
5.おわりに
本製品は12年よりマツダ株式会社「ロードス
ター」,トヨタ自動車株式会社「クラウン」,
「レクサス IS」に採用され,量産化できた.
今後,順次他車種へ展開される予定である.
本開発・量産化に際し,ご指導,ご協力いた
だきましたマツダ株式会社,トヨタ自動車株式
会社及び関係会社の方々に深く謝意を表します.
参考文献
1)警視庁交通局 交通事故統計 2011年
図-4 製品構成
シリンダ本体
ガスジェネレータ
ハーネスコネクタ
ピストン
ブラケット
②ピストンをロック
①ガス圧でピストン
を押し上げる
図-5 アクチュエータ作動状況
ピストンが曲がる
フードが下がり
衝撃緩和
歩行者頭部
図-6 ピストン曲げによる衝撃吸収
フード
衝突
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