軽やかな建築¸Š村.梗概.pdf2-2.現代建築における軽やかさ...

2
重心位置のずれ 非対称な長さ × 大きさ × 方向性の釣り合いの重なり 中心軸 重心 >> >> 助長 反発 A B A B C 要素全体の運動 A 各要素の運動 安定になる瞬間 不安定 安定 不安定になる瞬間 空間認識が揺らいでいく 全体では安定 部分的に見れば不安定 全体 部分 ( 形態を維持出来るの許容域 ) 1 >> >> >> 2 3 4 平面の繋がり 断面の繋がり 少ない接地面は、想像する 重さにずれを作り出してい るが、壁面の変動に対比関 係がない。 45° 一部の壁面がわずかに歪み、 空間の差異を認識できるが、 視覚的に想像する重さにズレ は生まれない。 A B A_ 少ない接地面 B_ 垂直水平からの歪み A+B 二つの要素が組合わさる事 で生まれた屋根や壁面の隙 間が人の意識を引き込む媒 体となっている。 ル・コルビジェ / ロンシャンの礼拝堂 4カ所 3カ所 2カ所 1カ所 最小限の接地面 曲線美を活かす 歪み 垂直水平方向を認識 出来る僅かな歪み 線同士が接するか接しないかで 構成される 直線と歪んだ部分が 作る対比 接触面が少ない 毛先 エアリーヘアー フランク・O・ゲーリー_スケッチ ポワント 桝谷本店 / 平田晃久 アルバロ・シザ / サンタマリア教会 B→C 1 1 2 3 他方向に空間が繋がる 少ない接地面 A C B バランス/垂直や水平 断片的な空間認識による、 空間のつながり アンバランス/歪み 対比 原型 垂直水平 不安定になる瞬間 安定になる瞬間 より意識を引く より軽さや動きを作り出す 1 1 3 2 1 2 3 1 2 4 原型が消失した アンバランスな 状態 バランスは取れ ているが動きは ない状態 よりずれた方向 へ意識を引く A→B 1 1 原型の形を想起させる ズレを体験出来る空間 1 2 3 4 1. 研究の背景と目的 1-1. 生け花で感じた軽やかな空間性への興味 生け花の重力を感じさせない、軽そうで動いているよう に見える空間性に魅力を感じた。複数の非対称な釣り合い の同時存在に、軽やかな空間性の仕組みがあるのではない (Fig.1) 1-2. 建築におけるアンバランスバランスと空間の揺らぎ アンバランスバランスは、安定や不安定になる瞬間の状 態を示し、部分的には崩れていながらも全体として釣り合 いを保つことで、静止したものに動きを与えていくことが 出来る(Fig.2) 建築空間における安定を、垂直水平で構成された空間と した時、安定した空間を想起させるズレの連続が空間認識 に揺らぎを作り出していると捉え、建築に軽やかさを付加 していく(Fig.3) 1-3. 目的_軽やかな建築空間の設計  本修士設計は、アンバランスバランスが作り出す空間認 識の揺らぎに着目し、不透明で安定しているにもかかわら ず、動きや軽さを感じさせる「軽やかな建築」の設計を目 的とするものである。 アンバランスバランスによる空間の揺らぎを用いた祝祭塔 指導教員 吉松 秀樹 教授 0BCBM011 上村 拓  軽やかな建築 2. 軽やかさと建築 2-1. 軽やかさの要素 芸術やファッション、スポーツなどにみられるアンバラ ンスバランスな状態は「少ない接地面」と「輪郭線の歪み」 によって、実際の重さと視覚的に想像する重さとの間にズ レを作り出している(Fig.4) 2-2. 現代建築における軽やかさ 軽やかに見える建築を分析すると、壁面の部分的な操作 によって空間の輪郭が綻び、認識的な空間の繋がりを作り 出している(Fig.5) 3. 軽やかな空間の作成 建築の分析から、壁面の角を操作すると「意識を向かせ る方向や視覚的な軽さ」を多様に変化させていくことが出 来る (Fig.6) Airy architecture Urban ceremony tower using fluctuation of space by unbalanced balance KAMIMURA Taku Fig.6 軽やかな空間の作成 Fig.1 生け花に見られる軽やかな空間性 Fig3. アンバランスバランスによる空間の揺らぎ Fig2. アンバランスバランスの概念 Fig5. 現代建築における軽やかさ Fig4. 軽やかさの要素の抽出

Transcript of 軽やかな建築¸Š村.梗概.pdf2-2.現代建築における軽やかさ...

Page 1: 軽やかな建築¸Š村.梗概.pdf2-2.現代建築における軽やかさ 軽やかに見える建築を分析すると、壁面の部分的な操作 によって空間の輪郭が綻び、認識的な空間の繋がりを作り

ceremony

public

>>

空間の余韻や気配を感じながら徐々に非日常空間へ誘っていく。

移動の合理性から平面に展開されてきた祝祭場。

祝祭場から祝祭塔へ

意識上で境界が開閉していく空間構成

情報/案内ゾーン

文化/展示ゾーン 搬出入/収蔵スペース

交流ゾーン

エントランスに向かう前に内部の様子が見える隙間 祝祭のアクティビティが都市ににじみでる

歩行者天国時

街路を引き込む壁面の揺らぎ

5丁目 6丁目至 東銀座

足元に設けたパブリックスペースに引きこまれていく

軽やかな祝祭塔

祝祭行事の核となる

site

静的small

large

動的

site780㎡

認識情は不透明で重い都市空間

対比

認識上は透明な軽やかな建築

至 日本橋至 新橋

中央通り

晴海通り

余韻や気配を感じさせながら上層階へと誘っていく

搬出入

EV EV

EV EV

EV EV

EV EV

EV EV

式場・着付け

レストラン

ラウンジ

小宴

中宴

大宴

ホール

1日3組の挙式が可能(大中小の披露宴にて)

パブリック

フロント

厨房・控え室

9F

8F

7F

6F

5F

4F

3F

2F

1F

B1F

B2F機械/設備室・・・・・・・

式場

エントランス受付

ラウンジ

披露宴場

site

JR 有楽町 

中央通り

高級ブティックゾーン重 心

祝祭都市へ

若者向けのファッション街

N

海晴

り通

1900~1950 年1951~2000 年2001~2011 年2012~20XX年

master plan

重心位置のずれ 非対称な長さ×大きさ ×方向性の釣り合いの重なり

中心軸

重心

>> >>

助長反発

A

B

A

B

C要素全体の運動

A各要素の運動

安定になる瞬間

不安定安定

不安定になる瞬間

空間認識が揺らいでいく

全体では安定

部分的に見れば不安定

全体

部分 ( 形態を維持出来るの許容域 )

1

>>

>>

>>

2

3 4

平面の繋がり

断面の繋がり

少ない接地面は、想像する重さにずれを作り出しているが、壁面の変動に対比関係がない。

45°

一部の壁面がわずかに歪み、空間の差異を認識できるが、視覚的に想像する重さにズレは生まれない。

A

B

A_ 少ない接地面 B_ 垂直水平からの歪み A+B

二つの要素が組合わさる事で生まれた屋根や壁面の隙間が人の意識を引き込む媒体となっている。

ル・コルビジェ /ロンシャンの礼拝堂

4カ所3カ所2カ所1カ所

最小限の接地面

曲線美を活かす歪み

垂直水平方向を認識出来る僅かな歪み

線同士が接するか接しないかで構成される

直線と歪んだ部分が作る対比

接触面が少ない毛先

エアリーヘアーフランク・O・ゲーリー_スケッチポワント

桝谷本店 /平田晃久 アルバロ・シザ /サンタマリア教会

B→C

1

1

23

他方向に空間が繋がる

少ない接地面A

C

B

バランス/垂直や水平

断片的な空間認識による、空間のつながり

アンバランス/歪み対比

原型

垂直水平

不安定になる瞬間安定になる瞬間より意識を引く

より軽さや動きを作り出す

1 1 3

2

1

2

3 1

24

原型が消失したアンバランスな状態

バランスは取れているが動きはない状態

よりずれた方向へ意識を引く

A→B

11

原型の形を想起させるズレを体験出来る空間

建築を巡る中で

連続させていく

1

2

3

4

1. 研究の背景と目的1-1. 生け花で感じた軽やかな空間性への興味 生け花の重力を感じさせない、軽そうで動いているように見える空間性に魅力を感じた。複数の非対称な釣り合いの同時存在に、軽やかな空間性の仕組みがあるのではないか(Fig.1)。

1-2. 建築におけるアンバランスバランスと空間の揺らぎ アンバランスバランスは、安定や不安定になる瞬間の状態を示し、部分的には崩れていながらも全体として釣り合いを保つことで、静止したものに動きを与えていくことが出来る(Fig.2)。

 建築空間における安定を、垂直水平で構成された空間とした時、安定した空間を想起させるズレの連続が空間認識に揺らぎを作り出していると捉え、建築に軽やかさを付加していく(Fig.3)。

1-3. 目的_軽やかな建築空間の設計  本修士設計は、アンバランスバランスが作り出す空間認識の揺らぎに着目し、不透明で安定しているにもかかわらず、動きや軽さを感じさせる「軽やかな建築」の設計を目的とするものである。

アンバランスバランスによる空間の揺らぎを用いた祝祭塔指導教員 吉松 秀樹 教授                                  0BCBM011 上村 拓 

軽やかな建築

2. 軽やかさと建築2-1. 軽やかさの要素  芸術やファッション、スポーツなどにみられるアンバランスバランスな状態は「少ない接地面」と「輪郭線の歪み」によって、実際の重さと視覚的に想像する重さとの間にズレを作り出している(Fig.4)。

 

2-2. 現代建築における軽やかさ 軽やかに見える建築を分析すると、壁面の部分的な操作によって空間の輪郭が綻び、認識的な空間の繋がりを作り出している(Fig.5)。

3. 軽やかな空間の作成 建築の分析から、壁面の角を操作すると「意識を向かせる方向や視覚的な軽さ」を多様に変化させていくことが出来る(Fig.6)。

Airy architectureUrban ceremony tower using fluctuation of space by unbalanced balance

KAMIMURA TakuFig.6 軽やかな空間の作成

Fig.1 生け花に見られる軽やかな空間性

Fig3. アンバランスバランスによる空間の揺らぎ

Fig2. アンバランスバランスの概念 Fig5. 現代建築における軽やかさ

Fig4. 軽やかさの要素の抽出

Page 2: 軽やかな建築¸Š村.梗概.pdf2-2.現代建築における軽やかさ 軽やかに見える建築を分析すると、壁面の部分的な操作 によって空間の輪郭が綻び、認識的な空間の繋がりを作り

ceremony

public

>>

空間の余韻や気配を感じながら徐々に非日常空間へ誘っていく。

移動の合理性から平面に展開されてきた祝祭場。

祝祭場から祝祭塔へ

意識上で境界が開閉していく空間構成

情報/案内ゾーン

文化/展示ゾーン 搬出入/収蔵スペース

交流ゾーン

エントランスに向かう前に内部の様子が見える隙間 祝祭のアクティビティが都市ににじみでる

歩行者天国時

街路を引き込む壁面の揺らぎ

5丁目 6丁目至 東銀座

足元に設けたパブリックスペースに引きこまれていく

軽やかな祝祭塔

祝祭行事の核となる

site

静的small

large

動的

site780㎡

認識情は不透明で重い都市空間

対比

認識上は透明な軽やかな建築

至 日本橋至 新橋

中央通り

晴海通り

余韻や気配を感じさせながら上層階へと誘っていく

搬出入

EV EV

EV EV

EV EV

EV EV

EV EV

式場・着付け

レストラン

ラウンジ

小宴

中宴

大宴

ホール

1日3組の挙式が可能(大中小の披露宴にて)

パブリック

フロント

厨房・控え室

9F

8F

7F

6F

5F

4F

3F

2F

1F

B1F

B2F機械/設備室・・・・・・・

式場

エントランス受付

ラウンジ

披露宴場

site

JR 有楽町 

中央通り

高級ブティックゾーン重 心

祝祭都市へ

若者向けのファッション街

N

海晴

り通

1900~1950 年1951~2000 年2001~2011 年2012~20XX年

master plan

大宴会場

ラウンジ

中宴会場小宴会場

中ラウンジ

エントランス

多目的スペース

機械室

ホール

ホワイエ

光や空気や都市との繋がり視線や意識上での繋がり行き来が可能な機能的な繋がり

通りを歩いていながらも、高層部の内部の様子を把握

接地面を少なくし、心理的にも軽そうな外観

断面的にも他の空間の余韻や、気配を感じ取ることが出来る

少ない接地面

軽やかな祝祭堂

不安定になる瞬間周囲に余韻や気配を感じさせる

安定になる瞬間人の行動を促す軽やかな祝祭堂ラウンジ

街路を引き込んだエントランス

軽やかな外観

不安定になる瞬間の壁面操作を用いた軽そうに見える外観

安定になる瞬間とし都市から人を引き込む

不安定になる瞬間とし周囲に余韻を与えていく

4. 建築への応用4-1. 銀座 × 祝祭行事の核としての祝祭塔 軽やかな空間は、前後の空間に余韻や気配を作り出すことが出来るため、非日常空間へと気持ちの切り替えが必要となる都市型祝祭場(祝祭塔)を提案する。 高密度地区である銀座は、透明なファサードであっても高層部の内部が把握できないため、重く窮屈な都市体験となっている。限られた敷地に軽やかな空間を立体的に展開させることで、周辺の建築との対比関係を作り出し、都市的にも軽やかな建築としていく (Fig.7)。

4-2. 設計プロセス 敷地は中央通りに面した角地にあり、中央通り側にはスケールが大きく、人の動きが激しい挙式や披露宴場を、背割りの部分には裏方や控え室などの諸室を配置する構成とする。街路を引き込むようにして外壁を歪ませたエントランスを入ると、空間の輪郭が綻んでいる場所から上下階の様子を伺うことが出来る。意識を向かせる度合いや方向性を操作していくとによって外部から建築内の高層部まで、連続した空間体験を与える (Fig.8)。

 

4-3. 軽やかな建築 壁面の角を操作し空間に方向性を与えることで、エントランスや空間同士が動線となって繋がる場所では、次の空間へ誘引していく。その過程で、壁面に安定から不安定となる瞬間を認識させ、実際の建築の重さを感じさせない空間体験を可能とした。(Fig.9)。

5. 結び 本設計方法によって、物理的に透明にすることなく、空間認識に触れ幅を与え、軽やかな建築を作成することが出来た (Fig10)。

2011 年度修士設計梗概集 東海大学工学研究科建築学専攻

*1) 禅と禅芸術としての庭 桝野俊明 毎日新聞社

*2) 八つの日本の美意識 黒川雅之 講談社

*3) 建築家の講義 サンチャゴ・カラトラバ 丸善株式会社

*4) 空間 建築 身体 / 矢萩喜従郎 / 株式会社エクスナレッジ /2004*

*5) 造形論・人間の視覚 ボリス・ヘルベルト・クライアント 京都書院

*6) 生け花の美学 吉村貞司 泰流社

*7) 尾上優奇/土居義岳 著 / サンティアゴ・カラトラバの「人体」から建築への変換について -

レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿と比較しながら - 日本建築学会九州支部研究報告第 49 号 2010

年 3 月

*8) 多視点同時空間把握モデルを用いた建築設計手法 ( 坂田 顕陽 修士設計 2008 年 3 月)

 

[ 注釈 / 参考文献 ]( 注 .1) 不均斉:形が崩れている。すなわち、均斉が取れておらず歪んでいるということ。

Fig7. 銀座と軽やかな祝祭塔

Fig8. 都市と繋がる配置計画と導入空間

Fig9. 垂直方向へ展開されていく、祝祭のアクティビティ

Fig10. 軽やかな建築