環境浄化に役立つ微生物 本日の内容 - Nagoya...環境浄化に役立つ微生物...
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環境浄化に役立つ微生物
環境科学調査センター 環境科学室 朝日 教智
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本日の内容
*土壌・地下水汚染
*バイオレメディエーション
*浄化微生物
環境(土壌・地下水)汚染物質を
分解する浄化微生物を探す
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土壌・地下水汚染
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土壌・地下水汚染の特徴
◎ 残留性・蓄積性 浄化対策が不可欠
◎ 顕在化しにくい 接触する機会が少ない
◎ 土壌=土地 私有財の概念が強い
2002年 土壌汚染対策法
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土壌汚染対策法で定められた特定有害物質
VOC(揮発性有機化合物) 重金属等 農薬等
四塩化炭素 カドミウム及びその化合物 シマジン
1,2-ジクロロエタン 六価クロム化合物 チウラム
1,1-ジクロロエチレン シアン化合物 チオベンカルブ
シス-1,2-ジクロロエチレン 水銀及びその化合物 PCB
1 ,3-ジクロロプロペン セレン及びその化合物 有機りん化合物
ジクロロメタン 鉛及びその化合物
テトラクロロエチレン 砒素及びその化合物
1,1 ,1-トリクロロエタン ふっ素及びその化合物
1,1 ,2-トリクロロエタン ほう素及びその化合物
トリクロロエチレン
ベンゼン
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VOC(揮発性有機化合物)
常温で容易に揮発する有機化合物
(例) トルエン,ホルムアルデヒド,
トリクロロエチレンなど
土壌汚染対策法では,11物質が対象
クリーニング溶剤,電子部品や
機械類の洗浄剤などに広く利用
1980年代 全国規模で地下水汚染が判明
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VOC(揮発性有機化合物)
四塩化炭素
1,2-ジクロロエタン
1,1-ジクロロエチレン
シス-1,2-ジクロロエチレン
1,3-ジクロロプロペン
ジクロロメタン
テトラクロロエチレン
1,1 ,1-トリクロロエタン
1,1 ,2-トリクロロエタン
トリクロロエチレン
ベンゼン
土壌汚染対策法で定められた特定有害物質
塩素原子をもつ有機化合物
(塩化○○○,クロロ○○○…)
揮発性有機塩素化合物
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1,1,1-トリクロロエタン 1,1,2-トリクロロエタン 1,2-ジクロロエタン
ベンゼン
塩素原子
炭素原子
水素原子
ジクロロメタン
四塩化炭素
1,3-ジクロロプロペン
シス体
トランス体
トリクロロエチレン シス-1,2-ジクロロエチレンテトラクロロエチレン1,1-ジクロロエチレン
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(例)ジクロロメタン CH2Cl2
水
ジクロロメタン
比重 d=1.33
水より重い
炭素原子
C
塩素原子 Cl
水素原子
H
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土壌・地下水汚染の形態
VOC汚染
油汚染
重金属汚染
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名古屋市の土壌・地下水汚染件数
平成27年度版
名古屋市環境白書
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土壌・地下水汚染に対する措置状況
平成25年9月時点
平成25年度 土壌環境セミナー資料より
(愛知県環境部・名古屋市環境局)
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従来の物理的処理
汚染物質
帯水層
土壌掘削・回収処理地下水揚水・回収処理
浄化費用が高い
エネルギーを多く消費
移動にともなう汚染拡散
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バイオ(生物) レメディエーション(修復)
◎ 本来汚染地に存在する土着の浄化微生物を利用する方法
◎ 外部で培養した浄化微生物を投入する方法
バイオレメディエーションとは
微生物の分解能力を利用して,
汚染物質を浄化する技術
バイオレメディエーション
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栄養分など栄養分など
外部の
浄化微生物
汚染物質
土着の浄化微生物
バイオレメディエーション
汚染物質増殖
活性化
土着の浄化微生物がいない場合は、
外部で培養した浄化微生物を
投入する方法もあります。
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VOC処理技術の比較
土壌掘削 ・ 地下水揚水
土壌ガス吸引など
物理的処理 (従来法) 生物的処理
浄化費用 高
エネルギー 大
高濃度汚染 可
低濃度広範囲汚染 不適
浄化期間 短
回収後処理
バイオレメディエーション
浄化費用 安
エネルギー 小
高濃度汚染 不可
低濃度広範囲汚染 適
浄化期間 長
直接分解
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VOCを分解する浄化微生物
嫌気的環境でVOCを分解し,
バイオレメディエーションに利用できる微生物を探す
掘削した土壌・底質試料
培養を繰り返す
微生物の分離
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さまざまな呼吸
酸素呼吸 酸素 水
硝酸還元
(脱窒) 硝酸イオン 窒素
マンガン還元 4価マンガン 2価マンガン
鉄還元 3価鉄 2価鉄
硫酸還元 硫酸イオン 硫化水素
メタン生成 二酸化炭素 メタン
0
+400
+800
-400
好気性
嫌気性
酸化還元電位 (mV)
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酸素呼吸
有機物
水
生きるために必要なエネルギーを
取り出す過程で酸素を使います
酸素 O2
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硫酸還元・メタン生成
有機物・水素 硫酸イオン
二酸化炭素
硫化水素
メタン
生きるために必要なエネルギーを取り出す過程で
硫酸イオンや二酸化炭素を使います
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メタン生成
硫酸還元
酸素呼吸
硝酸還元
(脱窒)
マンガン還元
鉄還元 0
+400
+800
-400
好気性
嫌気性
脱塩素呼吸
脱塩素呼吸
有機塩素化合物 脱塩素化物
酸化還元電位 (mV)
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脱塩素呼吸する細菌
有機塩素化合物
生きるために必要なエネルギーを取り出す過程で
有機塩素化合物を使います
脱塩素化
脱塩素化物
有機物・水素
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テトラクロロエチレン CCl2CCl2
環境基準値 0.01 mg/L
用途 ドライクリーニング溶剤,フロンガス原料
金属脱脂洗浄剤など
生産量 27300トン(平成16年) (参考) 経済産業省経済産業政策局調査統計部編 化学工業統計年報(平成16年)
炭素原子 C 塩素原子 Cl
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有害 無害
クロロエチレン類の脱塩素化反応
嫌気性細菌
デハロコッコイデス属 のみ
・ デハロバクター属
・ デスルフィトバクテリウム属
・ クロストリジウム属 など
さまざまな嫌気性細菌
(脱塩素化) (完全脱塩素化)
トリクロロエチレン (主に)
シス-1,2-ジクロロエチレンテトラクロロエチレン エチレン塩化ビニルモノマー
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テトラクロロエチレン分解菌
デスルフィトバクテリウム属細菌 B31e3株
テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンを
シスー1,2-ジクロロエチレンに脱塩素化
蛍光顕微鏡写真
市内事業場の 土壌中から分離
名古屋大学エコトピア科学研究
所 (現 未来材料・システム研究所) との共同研究による
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B-3混合培養系によるテトラクロロエチレンの分解
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0 10 20 30 40 50 60
クロ
ロエ
チレ
ン類
(mm
ol
/L)
経過時間(時間)
テトラクロロエチレン
トリクロロエチレン
シス-1,2-
ジクロロエチレン
160 mg/L
26
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0 10 20 30 40 50 60
クロ
ロエ
チレ
ン類
(mm
ol
/L)
経過時間(時間)
テトラクロロエチレン
トリクロロエチレン
シス-1,2-
ジクロロエチレン
160 mg/L
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1,2-ジクロロエタン CH2ClCH2Cl
環境基準値 0.004 mg/L
用途 樹脂原料,溶剤,フィルム洗浄剤など
生産量 約270万トン(平成26年) (参考) 経済産業省生産動態統計年表 化学工業統計編(平成26年) http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/seidou/result/ichiran/08_seidou.html
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1,2-ジクロロエタン分解菌(特許)
ジオバクター属細菌 AY株 (特許第5764880号)
約100mg/Lの1,2-ジクロロエタンを
エチレンに完全脱塩素化
市内河川 底質中から分離
同じくエコトピア
科学研究所との共同研究による
位相差光学顕微鏡写真 電子顕微鏡写真
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ジオバクター属細菌
ジオバクター属 (Geobacter属)
鉄還元細菌の一種。
各地の河川底質や土壌中で
生息する嫌気性細菌。
別名“発電細菌”として注目されている。
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AY株の脱塩素化の利点
一度に2つの塩素原子を除去して 無害なエチレンに直接変換する
1,2-ジクロロエタン(有害) エチレン(無害)
(完全脱塩素化)
分解の途中で有害な物質が できない
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AY株による1,2-ジクロロエタンの分解
etエチレン
1,2-ジクロロエタン
細胞数
経過時間 (日)
0
200
400
1000
800
1200
600
1,2
-ジ
クロ
ロエ
タン
,エ
チレ
ン (μ
mol /L)
0
104
106
102
107
105
108
AY
株の
細胞
数
(細胞
数/m
L)約100 mg/L
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
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AY株の浄化微生物としての利点
ジオバクター属細菌 AY株
◎ 高濃度の1,2-ジクロロエタンを分解
◎ 分解の途中で有害な物質をつくらない
◎ 病原性微生物に属していない
浄化能力をモデル実験で検証中 現場での実用化を目指しています
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