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5 社会・環境報告書 2007 事業と責任 強い製品には大きな責任があります 産業車両事業 繊維機械事業 コンプレッサ事業 自動車事業 エンジン事業 エレクトロニクス事業 AL事業 豊田自動織機グループの特徴は、 市場の異なるさまざまな事業を展開していること、 そして、各市場で高いシェアを確保している 製品を数多くもっていることです。 この章では、主要な7事業を紹介しながら、各事業が どのような「強い製品」をもち、どのような 「責任」を果たそうとしているのかを報告します。 (アドバンスト・ロジスティクス) 23% 42% フォークリフト エアジェット織機 カーエアコン用 コンプレッサー 世界市場での販売台数シェアトップ製品 44% 注)フォークリフト、エアジェット織機は2006年(1月~12月)、コンプレッサー2006年度(2006年4月~2007年3月)。いずれも自社調べ。 当社グループの グラフ1

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5 社会・環境報告書 2007

事業と責任強い製品には大きな責任があります

産業車両事業

繊維機械事業

コンプレッサ事業

自動車事業

エンジン事業

エレクトロニクス事業

AL事業

豊田自動織機グループの特徴は、市場の異なるさまざまな事業を展開していること、そして、各市場で高いシェアを確保している製品を数多くもっていることです。この章では、主要な7事業を紹介しながら、各事業がどのような「強い製品」をもち、どのような「責任」を果たそうとしているのかを報告します。

(アドバンスト・ロジスティクス)

23%

42%

フォークリフト エアジェット織機

カーエアコン用コンプレッサー

世界市場での販売台数シェアトップ製品

44%

注)フォークリフト、エアジェット織機は2006年(1月~12月)、コンプレッサーは  2006年度(2006年4月~2007年3月)。いずれも自社調べ。

当社グループの

グラフ1

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6社会・環境報告書 2007

当事業では、フォークリフト、トーイングトラクター、ショベルローダーなど各種産業車両の開発・生産・販売を行っています。また、自動倉庫、無人搬送車といった「搬送」「保管」「仕分け」にかかわる物流システムにも力を注ぎ、お客様に最適な物流ソリューションを提供しています。フォークリフトは、積載量が0.5トンの小型から40トンを超える超大型までをラインアップし、エンジン車(ガソリン、ディーゼル、LPG、CNG)、バッテリー車とも充実しています。2006年販売シェアは、国内トップの43%、世界市場でもトップの

創業以来、連綿と営んできた繊維機械事業では、糸を紡ぐ「紡機」と布を織る「織機」を世界中のお客様に提供しています。繊維機械は、時代とともに進化を遂げており、現在では制御・通信・メカトロニクスなど高度技術の結晶となっています。

カーエアコン用コンプレッサーメーカーとして、当社は常に世界に先駆けた製品を提供してきました。なかでも、冷却能力を自動制御する「可変容量型コンプレッサー」や、過酷な使用環境での信頼性向上と軽量化、高性能化を同時に実現した「固定容量型コンプレッサー」は世界トップの

当事業では、トヨタ自動車(株)からの生産委託を受け、自動車を製造しています。コンパクト・ミディアムサイズ専門のカーメーカーとして実績を重ね、現在、「ヴィッツ(欧州名:ヤリス)」および、欧米向けの「RAV4」の2車種を生産しています。

当事業では、自動車用と産業用のディーゼルエンジンおよびガソリンエンジン(1.5ℓ~5.2ℓクラス)を生産しています。自動車用エンジンはトヨタ自動車(株)からの生産委託を受け、すべてトヨタ車に搭載されています。また、産業用エンジンはフォークリフトなどの産業車両や

当事業では、自動車用パワーエレクトロニクス機器をはじめ、液晶ディスプレイや半導体パッケージ基板などを生産しています。自動車向けでは、ハイブリッド車用のコンパクトで高効率かつ低コストのDC-DCコンバーターや車内で家庭用電気製品を使用可能にするACインバーターなど

当事業では、お客様の物流システムの構築や物流センターの運営・管理などを一括して請け負う物流ソリューション事業を2002年から展開しています。産業車両・物流システムの開発・生産・販売を通して得た経験とトヨタグループの一員として生産現場で培った「カイゼン」ノウハウを活か

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コンプレッサ事業

繊維機械事業

産業車両事業

自動車事業

エンジン事業

エレクトロニクス事業

AL事業

23%(自社調べ)を占めています。2000年には、スウェーデンの物流機器メーカーBTイン

ダストリーズ(株)を100%子会社化しました。また、2001年にトヨタ自動車(株)からL&F(ロジスティクス&フォークリフト)事業の販売部門を譲り受け、社内カンパニー「トヨタL&Fカンパニー」として製販一体となった活動を展開。現在は、トヨタL&FカンパニーとBTインダストリーズを包括するTMHG(トヨタ マテリアル ハンドリンググループ)を構築しグループ力の最大化に取り組んでいます。

主力製品であるエアジェット織機は世界No.1のシェアをもっており、紡機についても業界のリーディングカンパニーとして世界中で高い評価を得ています。

シェアを占めています。最近では、ハイブリッド車用の「電動コンプレッサー」も開

発。さらに現在、フロンを使用しない「CO2冷媒コンプレッサー」など次世代のカーエアコン用コンプレッサーの開発を進めています。

生産現場では、トヨタ生産方式による改善・改革を愚直に追求することによって、トヨタグループでもトップクラスの品質レベルと短期間での生産立ち上げ能力を確保し、トヨタ自動車(株)から高く評価されています。

ガスヒートポンプなど各種産業機器に搭載されています。自動車用ディーゼルエンジンでは、トヨタ自動車(株)との共同開発により、高出力・低騒音・低振動・軽量化を実現。排出ガスのクリーン化など環境負荷の低減に向け、積極的に技術開発を進めています。

の電子部品・機器の開発・生産を強化しています。1997年には、液晶表示装置製造のため、ソニー(株)と

の合弁によりエスティ・エルシーディ(株)を設立。また1998年には半導体パッケージ基板製造のため、イビデン(株)との合弁により、(株)ティーアイビーシーを設立しました。

し、さまざまな業界で物流の合理化に取り組んでいます。物流センターの企画・建設・運営からサプライチェーン全体の最適化までを視野に入れたトータルな提案で、日本の物流改革を進めていきます。

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7 社会・環境報告書 2007

フォークリフトのリーディングカンパニーとしての責任を果たす

産業車両事業「安全」と「環境」と「使いやすさ」をキーワードに、お客様第一を徹底

環境的側面での責任フォークリフト● 走行時の省エネルギー化による地球温暖化の防止● 排気ガスによる大気汚染の防止● 作動油、使用済みバッテリーの廃棄における適正処理● 各地域の安全、環境基準に準拠した製品の開発、供給

自動倉庫・無人搬送車● 設備稼動時の電力消費にともなう地球温暖化の防止● 動作時の騒音の低減● 作動油、使用済みバッテリーの廃棄における適正処理

社会的側面での責任フォークリフト・自動倉庫・無人搬送車● 製品の信頼性と耐久性の維持・向上● 排気ガス、騒音などが使用者の健康に及ぼす悪影響の防止● 製品を効率的に、安全に、使用し続けていただくためのサービス

フォークリフトの世界市場での販売シェア

ユニット式自動倉庫ラックソーターP

当社グループ43%

当社グループ23%

当社グループ18%

当社グループ31%

商品を売るだけではなく、「使用されるお客様のメリット」を追求

2006年(1月~12月)

90千台日本

329千台欧州

204千台北米

824千台世界

エンジン式フォークリフトジェネオ(1-3.5t)

国内外の販売店を支援しています

フォークリフトのリーディングカンパニーである当社の役

割は、お客様ニーズを先取りした商品の研究開発、品質第一

のモノづくり、お客様にご満足いただける販売・サービスの提

供、そして業界の模範となる企業行動を通じて、率先して社

会に貢献することだと考えています。

2005年度からは、トヨタL&Fカンパニーと子会社のBT

インダストリーズ(株)を包括するTMHG(トヨタ マテリアル

ハンドリンググループ)としての活動を開始しました。新製品

の共同開発、生産準備などを通じて相互理解を深め、「お客

様第一」を基本に、信頼される事業活動に取り組んでいます。

お客様がフォークリフトに期待していることは「信頼性」と

「耐久性」です。お客様の生産・物流を支えるためには、故障せ

ずにしっかり動くことが求められるからです。2006年9月に

日本国内で発売した「新型ジェネオ」は、信頼性・耐久性に重点

をおき、安全・環境・使いやすさをキーワードに開発しました。

また、販売・サービスでは国内外のネットワークを整備し、

現地現物でお客様のメリットを追求しています。フォークリフ

トの販売・サービスは、自動車のようにお客様に販売店へ来て

いただくのではなく、お客様の工場や倉庫などへスタッフが

お伺いし、ニーズ、作業条件・環境などを現場で確認しなが

ら、効率向上と安全や環境への配慮をふまえて提案します。

その現場に最適な商品の提案のみならず、定期点検および

作業状況に応じた点検・整備の推奨、安全講習会の開催など

により、お客様をサポートしています(TOPICS参照)。

また物流の効率化・品質向上といったご要望に応えるた

め、各種の物流機器や物流管理システムも開発しています。

さらにTPS(トヨタ生産方式)の考え方による改善も提案しま

す。整理整頓され効率のよい安全な現場づくりをお手伝いす

ることが、効率化とコストダウンの両立、故障や作業効率低下

による損失の未然防止、労働災害の防止など、お客様にとっ

てのメリットにつながるからです。

よりよい販売・サービスを提供するため、国内外の販売店

を支援しています。

よりよい提案ができるよう、販売促進資料や提案資料を提

グラフ1

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8社会・環境報告書 2007

トヨタL&Fカスタマーズセンター(千葉県市川市)

フォークリフトオペレーター向けの運転講習をスタート

コンプレッサ事業

繊維機械事業

産業車両事業

自動車事業

エンジン事業

エレクトロニクス事業

AL事業

地球環境と作業環境に配慮して

ハイブリッドフォークリフト(コンセプトモデル)

TOPICS

供することはもとより、販売店スタッフの技能を向上するた

めの教育・研修の実施、スタッフの意欲を高め適正な評価に

つながる資格制度の導入などを通じて、販売・サービスの質

の向上に取り組んでいます。

フォークリフトにおける環境への配慮は、お客様のコストや

作業環境に直結します。エンジン車では、燃費改善、排気ガス

のNOxなどの低減、黒鉛除去、低公害車(LPG車・CNG車)

の開発、低騒音化などの対策を実施。バッテリー車では、エネ

ルギー効率向上による稼動時間の延長、ACモーター採用に

よるエンジン車同等の性能の確保などにより、バッテリー車

の普及に努めてきました。作業環境に関するお客様の意識の

高まりにつれ、各国で屋内でのバッテリー車の導入が進んで

います。しかし、バッテリー車には、イニシャルコスト(初期投

資)がエンジン車よりも高い、バッテリーの充電に時間がかか

るなどの課題があります。現在は、より環境負荷の少ない製

品の開発と低公害車(LPG車・CNG車)の導入促進に努める

とともに、今後のバッテリー車普及に向けて、原価低減、性能

向上、充電時間短縮などの研究開発に取り組んでいます。

また、エンジンフォークリフトの燃費を大幅に向上させる技

術として、ハイブリッド技術へ大きな期待が寄せられているな

か、トヨタグループのハイブリッド技術や部品を活用し、信頼

性、耐久性、コストに優れた高効率なフォークリフト用ハイブ

リッドシステムを開発、2006年9月の国際物流総合展でコン

セプトモデルを発表しました。従来型エンジン車と同等の性能

を確保しつつ、燃費を大幅に向上させ、高い環境性能と経済

性を両立しています。現在、実用化に向けた技術開発に取り組

んでいます。2005年にプロトタイプを発表し注目を集めた

燃料電池フォークリフトの開発も、トヨタグループの技術ノウ

ハウを結集し、実用化に向けた技術開発に取り組んでいます。

リサイクル・廃棄についても、販売店と一体となって進めて

います。フォークリフトはほとんどが鉄のため、リサイクル率

も高く、再生利用しやすい商品ですが、荷役装置の油圧機能

に使われている作動油や、バッテリー車の使用済みバッテ

リーの廃棄については、専門の処理業者での適正処理が必要

となります。

 メンテナンス時や下取りなどで販売店が取り扱うものは適

正処理を徹底していますが、今後

バッテリー車の比率があがって

いくなかで、使用済みバッテリー

の廃棄処理への対応が課題で

あると考えています。

当社はフォークリフトのリーディングカンパニーとして「安全」を追求し続けてきました。作業中の安全と作業効率の向上に貢献する独自のシステム「SAS※1」を開発し、これを搭載したフォークリフト・ジェネオシリーズは、世界トップレベルの高い安全性を実現しています。一方で、作業現場で起こる事故には人為的ミスに起因するものが多く、ハード面の対応だけでなく、オペレーターの安全意識の維持・向上が不可欠であると考えています。そこで、産業車両事業の総合展示施設である「トヨタL&Fカスタマーズセンター※2」(千葉県市川市)を増築し、安全運転の再教育を目的とする「安全運転講習」コースを開講することにしました。「安全運転講習」では、資格取得者を対象に、過去の災害事例からどういった操作が危険であるかを学び、危険予知トレーニングを通じて、安全運転の再徹底を行っていただきます。資格取得者への再教育は、災害撲滅への積極的な取り組みであり、フォー

※1 System of Active Safety: ハンドル角、揚高などさまざまな情報を検知し、制御することで、旋回時や荷役時などに優れた安定性を発揮するトヨタL&Fの独自システム

※2 トヨタL&Fカスターマーズセンター所 在 地 : 千葉県市川市営業開始 : 2001年4月 (新館は2007年4月竣工)敷地面積 : 5,282m2

本館 (4階建て)延べ床面積 : 6,273m2

新館 (3階建て)延べ床面積 : 2,149m2

~安全運転技能を広め、安全作業・ゼロ災害に貢献する~

クリフトメーカーとしての長年の経験を活かした、トヨタL&Fならではのプログラムを開発していく考えです。2007年内に講座をスタートする計画で、年間1,400人の受講を見込んでいます。

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近年、世界の主要繊維生産国となっているのは中国、インド、

パキスタン、トルコ。とりわけ中国は、合成繊維・綿糸・絹糸の

生産量、衣料輸出量などにおいて世界最大の繊維大国です。

また中国政府は、「2006年から5年間でシャットルレス織

機の比率を28%から40%に引き上げる」「コーマー糸の

繊維機械事業市場の要請とお客様のご要望を徹底的に先取りして

環境的側面での責任● 使用時の電気消費にともなう地球温暖化の防止● 使用時の振動・騒音の低減

社会的側面での責任● 製品の信頼性と耐久性の維持・向上● 製品を効率的に、安全に、使用し続けていただくためのサービス

製品開発からアフターサービスまで、求められることはすべて実現していきます

RX240シリーズ高速リング精紡機

JAT710エアジェット織機

エアジェット織機の需要推移

(年)

25

20

15

10

5

02005 2006

(千台)

10

19

12

2004

23

16 15

中国世界

当社のエアジェット織機販売台数推移

(年)

10

8

6

4

2

02005 2006

(千台)

2004

8

5

7

5

8

10

全販売台数 中国

2006年10月、北京で開催された第10回中国国際繊維機械展覧会(CITME2006)に、エアジェット織機JAT710、コンパクト精紡機RX240 NEW-ESTなどを展示しました。

中国国際繊維機械展覧会に出展TOPICS

比率を25%から30%に引き上げる」などの方針を打ち

出し、量の面での「繊維大国」から、先進市場でも評価され

る質をともなった「繊維強国」への転換政策を推進してい

ます。中国は、名実ともに「世界No.1の繊維生産国」となる

ことをめざしているのです。

この中国の繊維産業を支えているのが、世界No.1のシェ

アを占める当社のエアジェット織機。これは空気を噴射して

ヨコ糸を飛ばす織機で、この工程を手作業に頼っていた頃

に比べて織布工程の生産性を飛躍的に高めました。また、

コーデュロイや羽毛布団のシェルなど高級生地も織れま

す。エアジェット織機は、技術水準の向上著しい中国にあっ

ても、その開発と生産はまだまだ難しい機械です。

2003年2月に発売したエアジェット織機JAT710は、4

年間を経た今も中国で大好評を博しています。JAT710で

は、お客様の製造工程管理を容易にするモニタリングシス

テムを装備する一方、最高1,250回転/分の高速回転を

可能としながら、空気消費量を従来機に比べて約20%削減

して省エネルギー化を実現しています。また、従来機に比べ

て振動を約30%抑制するなど労働環境の改善にも寄与し

ています。

当社の展示ブース

9 社会・環境報告書 2007

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コンプレッサ事業快適性と環境のために、極限の軽量化を追求

環境的側面での責任● 使用時の燃料消費にともなう地球温暖化の防止(省動力)● 使用時の代替フロンの漏れ防止による地球温暖化の防止● 代替フロンに代わる自然冷媒の研究と、各国(各地域)  冷媒使用規制への対応

社会的側面での責任● 製品の信頼性と耐久性の維持・向上● 製品の「小型軽量化」「低騒音・低振動化」による  運転の快適性・燃費の向上

ドライバーにとってカーエアコンは壊れなくて当たり前。エ

アコンの調子が悪いと車の評判まで下げてしまうおそれもあ

ります。カーエアコン用コンプレッサーの専門製造者として当

事業が追求し続けていることは、できる限り長期間にわたって

カーエアコン用コンプレッサーを革新

2006年度は、大型ハイブリッド車向けインバーター一体型電動コンプレッサー「ES34」を開発し、2007年よりレクサスLSハイブリッドに搭載されています。ES34は、レクサスブランドの最上級グレードにふさわしい静粛性を満足するとともに、ベルト駆動コンプレッサーと同等の搭載性を確保しています。独自設計のモータ、インバーターの小型化により、冷房能力当たりの重量は、従来品(ES27)と比較して約14%の軽量化となっています。

電動コンプレッサー「ES34」を開発

従来品 ES34

コンプレッサー販売台数推移

(年度)

2,500

1,500

2,000

1,000

500

02005 2006

(万台)

2004

1,821 1,911 2,045

新電動コンプレッサーES34と従来品の冷房能力当たりの重量比較

14%軽量化

固定容量型コンプレッサー(ロータリー式)10SR

6SEU14コンプレッサー(斜板式クラッチレス外部可変容量)

ES34電動コンプレッサー(密閉型スクロール式)

TOPICS

機能を高く維持し続けることです。そのうえで、できるだけ

省動力・小型で軽量にすること、低騒音・低振動であることを

追求しています。車内の快適性を保つために欠かせない部

品だとはいえ、エンジン動力を使い、自動車のフロント部に

置かれるため、省動力、小型軽量、低騒音・低振動であればあ

るほどよいのです。

環境的側面の影響を考えると、カーエアコン用コンプレッ

サーのライフサイクルにおけるCO2排出量のほとんどはエ

アコン使用時の燃料消費によるものであり、省動力、効率化

に努めてこれを削減することが必要です。

また、製造段階でのCO2排出量は使用時に比べて少ない

ものの、その大部分は、材料の製造-とくにアルミダイカ

スト製造時が占めるため、製品そのものを小型・軽量化する

ことが製造段階のCO2排出量削減にもつながります。

このように社会的側面からも環境的側面からも、製品の

「小型・軽量化」はコンプレッサーメーカーとしての最大の責

任といえます。

そのために、CAE(Computer Aided Engineering)を

活用することで、基本諸元、各部寸法を最適化しています。

具体的には「流れ解析」を使ってダイカスト形状を最適化、

「形状最適化ソフト」によって余肉の削減を行っています。ま

た、ダイカスト工法を開発して加工しろを削減したり、あるい

は「加工レス」部分を増やすなどによって小型・軽量化を追

求してきました。

そのほかにも、現在冷媒として使用している代替フロン

(温室効果物質)を漏らさないこと。また、これに代わる自

然冷媒や新冷媒の研究などさまざまな研究開発を進めて

います。

コンプレッサ事業

繊維機械事業

産業車両事業

自動車事業

エンジン事業

エレクトロニクス事業

AL事業

10社会・環境報告書 2007

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自動車事業「自動車メーカー」としてさらに高いレベルでのモノづくりへ

環境的側面での責任● 生産における環境負荷削減● 使用規制物質の撤廃

社会的側面での責任● 生産における安全の徹底とQCD(品質・コスト・納期)の追求

常にチャレンジして向上し続ける体質をめざして

ヴィッツRS

RAV4

自動車生産台数

(年度)

400

200

300

100

02005 2006

(千台)

2004

228

297350

生産準備効率化目標・実績(工数)

2003/11 2005/1 2006/1

ピーク負荷の標準化

全体負荷 半減 成行

計画実績

(年月)

 トヨタ自動車(株)からの生産委託を受け、コンパクト・ミ

ディアムサイズ専門のカーメーカーとして実績を積んでい

る当事業の責任は、お客様に喜ばれる「品質」「コスト」「納

期」を実現することです。事業部が一丸となって改善・改革に

取り組み、常に最先端のモノづくりに挑んでいます。

 当事業では1999年から人気車「ヴィッツ(欧州名:ヤリ

ス)」、2001年から「RAV4」の生産を引き受けて以来、高

いレベルでの生産が続いていますが、工程内における重要

品質問題の発生はゼロ。世界各国のトヨタグループ自動車

メーカーと競い合い、品質、コスト、納期においてトップレベ

ルを確保し続けています。2006年には「トヨタ品質管理優

秀賞」を受賞しました。

 さらに安全面では、増加している応援者を含め従業員の

「安全」を最優先に考え、より一層の安全管理徹底に取り

組んでいます。

 当事業は短期間での生産立ち上げ能力も評価されてい

ます。新型「ヴィッツ」(2005年2月発売)、新型「RAV4」

(2005年12月北米発売、2006年1月欧州発売)の連続

したフルモデルチェンジでは、これまでの常識にとらわれな

い改革を行い、画期的な成果をあげました。

 従来、工程や設備の仕様を決めるプロセスでは、図面上で

のさまざまな事前検討を経た後に、実際に生産ラインを作っ

て確認し、問題点を改善してきました。前述2車種のモデル

チェンジにあたっては、それぞれ企画・構想段階から、3D

データ(3次元画像)による生産ラインのシミュレーションを

行うことで、仕様検討業務の前出しと効率化を図りました。

 さらには、3Dデータを使ったバーチャル訓練やビジュア

ルマニュアル(動く手順書)の活用により、作業訓練期間の

短縮と精度向上も実現しました。

 また、生産技術、品質保証、製造など関係部門間の壁を取

り除いたプロジェクト活動により、即断即決できる体制をつ

くりました。

 これらの改革によって、生産準備における全体負荷の半

減と、ピーク負荷の平準化を達成しました。

 その後、トヨタ自動車(株)の要請により、フランスで現地

生産されている「ヤリス」の生産準備にも、当事業の製造部

門のメンバーが参画し、この経験を活かしました。

トップによる現場点検

11 社会・環境報告書 2007

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エンジン事業「信頼」に応え「環境保全」を追求する

環境的側面での責任● 使用時の省エネルギーによる地球温暖化防止● 各国各地の環境規制への対応● 排出ガスによる大気汚染の防止● メンテナンスピッチの延長による廃棄物削減、業界環境自主規制への対応

社会的側面での責任● 製品の信頼性と耐久性の維持・向上● 燃費の向上● 各国各地の規制への対応

クリーンディーゼルエンジンで、環境負荷をより小さく、より高品質に

人と地球にやさしい素形材工場をよりグローバルに

2AD型ディーゼルエンジン(排気量2.2ℓ、RAV4、アベンシス搭載)

エンジン新実験棟

1VD-FTV型ディーゼルエンジン(排気量4.5ℓ、ランドクルーザー搭載)

ガソリン・ディーゼルエンジン生産台数推移

(年度)

500

300

400

100

200

02005 2006

(千台)

138151

211181

2004

140

349

489

319362

ディーゼルガソリン

コモンレール式のディーゼルエンジン1VD-FTV型を開発し、2006年12月より生産を開始しました。燃費向上によるCO2排出量の削減に向け、エンジン本体の徹底的な軽量化に取り組んだ結果、軽量・高強度なバーミキュラ黒鉛鋳鉄(FCV)製シリンダーブロックの量産化に日本で初めて成功しました。

新開発ディーゼルエンジン(V型8気筒)の生産開始

TOPICS

 当社は、トヨタグループのディーゼルエンジンメーカーと

して、技術力を高め、海外展開を含めて開発・生産でトヨタ自

動車に貢献することを最大の使命としています。

 ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて燃費がよく

CO2は少ない一方で、NOx(窒素酸化物)は多く、黒煙も排出さ

れます。このNOxと黒煙は、主に排ガスに対する後処理で対策し

ているため、エンジン本体では燃費をさらによくしてCO2を減ら

すことが最大の課題です。当社は、トヨタ自動車(株)との共同開

発によってディーゼルエンジンの燃費を向上する数々の新技術

を採用し、環境負荷を低減してきました。2005年にEUで導入

された環境規制「EURO4」では黒煙排出量を従来車の10分の

1に削減することが義務づけられましたが、この規制値も2005

年3月に生産を開始した「AD型ディーゼルエンジン」でクリアし

ました。2009年以降、さらに厳しい規制「EURO5」が導入され

る予定ですが、これもクリアすべく対応を進めています。ディー

ゼルの開発体制を強化するため、

2006年10月、実験棟を新設・拡

充しました。次世代クリーンディー

ゼルエンジンの開発をこれまで以

上に強力に進めていきます。

 当事業部の国内3工場(碧南、東知多、共和)は、新たに開発

した製造技術を他に先駆けて採用し充分に熟成させた後に海

外生産拠点へ移植する役割も担っています。エンジンに欠か

せない鋳造素形材の製造技術を例に取れば、東知多工場がそ

の役割を担っています。生産技術では「高出力ディーゼルエン

ジン用シリンダーブロックに適用するCV鋳鉄生産技術の開

発」で2006年日本鋳造工学会の技術賞を受賞しました。こ

の技術は1VD型エンジンに反映しています。(TOPICS参照)

 環境面では、作業ゾーンと設備を区分して安全を確保し、環境

機器・省エネ設備の導入と監視システムによって廃棄物ゼロ化、

CO2排出量の削減を実施してきました。その結果、AD型エンジン

用のダイカストシリンダーブロックの生産で、世界トップレベルの

省エネルギー、高生産性を実現。環境重視の精神もまた、中国、

ポーランドなどの工場に移植され、世界各地で活かされています。

コンプレッサ事業

繊維機械事業

産業車両事業

自動車事業

エンジン事業

エレクトロニクス事業

AL事業

12社会・環境報告書 2007

Page 9: 当社グループの 事業と責任 - toyota-shokki.co.jp...2007/04/10  · サー」など次世代のカーエアコン用コンプレッサーの開発を 進めています。生産現場では、トヨタ生産方式による改善

エレクトロニクス事業ハイブリッド車の普及を通じて環境負荷低減に貢献

環境的側面での責任● 環境対応車ハイブリッドの主要コンポーネントの製造● 小型・軽量・高効率化を進めることにより製品使用時の  省エネルギー・省動力化を図って地球温暖化を防止

社会的側面での責任● 製品の信頼性・安全性の維持・向上● 小型・軽量・高効率・低コスト化● 災害時の非常電源としての信頼性確保

自動車用電源機器・システムのトップサプライヤーをめざして

400W ACインバーター(タコマ搭載)

パソコンMPU用パッケージ基板(FCタイプ)

パソコン向けワンセグ受信モジュール

低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイ 情報通信分野のエレクトロニクス

国際電気自動車シンポジウムEVS22に出展

TOPICS

EPS用DC-DCコンバーター(レクサスLSハイブリッド搭載)

 高い環境性能で世界から注目を集めるハイブリッド車の

市場はますます拡大することが予想されます。当事業では、

数あるハイブリッド車部品の中でも極めて重要度の高い

「DC‐DCコンバーター」を生産しています。この製品は、ハ

イブリッド車のメインバッテリーの高電圧を低電圧に変換し

ます。メインバッテリーから、ライト、ワイパー、ホーンなどを

動かす補機バッテリーを充電したり、電動パワーステアリン

グを作動させます。一層の小型・軽量・高効率・低コスト化を

ねらって改良を進め、燃費向上やコストダウンを図ることで、

ハイブリッド車の普及を後押しし、環境負荷の低減に貢献す

る製品です。また、その性能や機能などが車の燃費・コスト・

安全性に直接かかわってくるだけに万が一にも品質不良は

2006年10月23日から28日の6日間、パシフィコ横浜でEVS22が開催されました。これは、電気自動車・ハイブリッド車・燃料電池車など、電動車両関連分野における世界最大の国際シンポジウムで、世界各国から連日多くの来場者が訪れました。当社は、DC-DCコンバーターやACインバーターなどを出展しました。

許されません。2004年からは、さらなる「市場品質向上活

動」に取り組み、2005年にはトヨタの最高級車「レクサス

(ハイブリッド)」の電動パワーステアリング用コンバーター

の生産を開始しました。

 当事業ではこのコンバーター以外にも、直流を交流に変

換する「ACインバーター」も製造しています。これら自動車

用電源機器および電源システムのトップサプライヤーをめ

ざすとともに、今後の需要拡大に応えていくため、当社では

設計・生産準備・初期管理を強化して、高品質の製品を安定

的に供給しつつ、生産効率の向上にも取り組んでいきます。

 自動車メーカーだけではなく、パソコン、モバイル機器

メーカーをお客様とするエレクトロニクスビジネスも展開し

ています。ソニー(株)との合弁で設立したエスティ・エルシー

ディ(株)では、最先端の液晶ディスプレイ(LCD)である「低

温ポリシリコンTFT-LCD」を生産し、ビデオカメラ、デジタル

カメラ、携帯情報端末、携帯電話など世界中のモバイル製品

に採用されています。イビデン(株)との合弁で設立した(株)

ティーアイビーシーでは、先進の「半導体パッケージ基板」を

生産し、パソコン、携帯電話、ICカードなどに使われています。

 また、暗号化技術や映像化技術を盛り込んだ地上波デジ

タルTV用チューナーを開発し、パソコン、ポータブル機器、

一部自動車向けのマルチメディア化を支援しています。

当社の展示ブース

13 社会・環境報告書 2007

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AL事業徹底したカイゼンで物流ソリューションを提供

環境的側面での責任● 物流合理化による環境負荷の削減

社会的側面での責任● サービスの徹底による顧客の成果追求● コンプライアンスの徹底

物流を付加価値の高いビジネスに変える

 当社が物流ソリューション事業に参入したのが2002年。

それは、多くのお客様からの「生産現場で培ったトヨタのカイ

ゼンを活かした物流はできないのか」という声がきっかけでし

た。改善を武器にビジネスをスタートさせましたが、物流セン

ター内のみの改善では効果が限られ、お客様の満足も大きく

はありません。そこで、物流センターの上下流を見たサプラ

イチェ-ン全体を改善対象とすること、つまり、上流である生

産現場から、下流である店舗までをスルーで見て改善する

「店舗を起点とした物流の全体最適化」を追求することにしま

した。これは、市場の要求に応じて「必要な商品を・必要な時

に・必要なだけ供給できる」いわば“マーケット・イン”の物流で

す。物流のサプライチェーンを通しての改善をすることによ

り、より大きく、より多くの工程で効果をあげることができ、よ

り多くのお客様が満足を得ることができます。

 当事業が請け負うのは、物流センターの構築や運営だけで

はありません。店頭やバックヤードなどでの店内物流に問題

を抱える小売業では、店内作業にTPSの考え方を導入するな

ど、物流センターだけにとどまらない総合的な視点からの改

善を進めることが大切です。今後は業界ごとの物流共同化や

製造業の生産改善なども積極的に受託し、最終的には、生産

現場から売場のレジを通過し、最終顧客までの商品の流れを

一貫してとらえて「全体最適の物流」を追求します。

 事業立ち上げから5年、お客様も食品、日用雑貨、医薬品、

ホームセンター、通販など多業界に広がっています。物流や物

流部門は「経費がかかるだけのコストセンター」と見なされて

きました。そのような物流に対する産業界の見方を変えるに

は、高い価値を生みだす「プロフィットセンター」とするための

改善と、その前提となるコンプライアンスの徹底が求められま

す。今後「物流の全体最適化」を進めていけば、無理な積載や

労働が減らせるはずですが、業界全体がコンプライアンスに対

する意識をこれまで以上に高めていくことも必要になります。

 こうした考えから、当社は2005年3月、当事業部内にコンプ

ライアンス専任部署を設置。さまざまな業界・テーマにかかわ

る当事業が、守るべき膨大な量の法令を業界・テーマごとに整

理し、その遵守状況の自主点検リストを作成し、活用していま

す。こうして当社が率先垂範してコンプライアンスに努め、協力

会社となる物流各社にも法令遵守の徹底を要請していきます。

 物流の全体最適をめざし、付加価値の高いビジネスに変

える─それは、当社グループの「物流事業」が果たすべき

社会的責任でもあります。

物流部門売上高

(年度)

1,000

400

800

200

02005 2006

(億円)

2004

333

651

894

600

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産業車両事業

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エンジン事業

エレクトロニクス事業

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