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水稲品種改良の現状と今後の方向 農研機構・作物研究所・ 稲育種研究室 1 2 3 4 M 495 bp 612 bp 770 bp 1057 bp Stva Stvb pi21 Pit Piz, Piz-t Bph10 Bph16 bph11(t)

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水稲品種改良の現状と今後の方向

農研機構・作物研究所・ 稲育種研究室安 東 郁 男

1 2 3 4 M

495 bp

612 bp

770 bp

1057 bp

Stva

Stvbpi21

Pit

Piz, Piz-t

Bph10Bph16

bph11(t)

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•コメ需要の停滞

[一人当たり消費量 =59.7kg (2003) ピーク時=118kg (1964)]

•生産農家の高齢化・減少

•生産コストが高い

•多様性の喪失

日本の稲作の問題点日本の稲作の問題点

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 表1.作付け上位の水稲品種(2002年)

品種名 作付面積 割合 育成年 交配組合せ(1000ha) (%)

1 コシヒカリ 546.3 36.7 1956 農林22号/農林1号

2 ひとめぼれ 147.6 9.9 1991 コシヒカリ/初星

3 ヒノヒカリ 145.9 9.8 1989 黄金晴/コシヒカリ

4 あきたこまち 122.9 8.3 1984 コシヒカリ/奥羽292号

(64.7%)5 きらら397 71.3 4.8 1988 しまひかり/キタアケ

(上位5位品種合計) 69.4

6 キヌヒカリ 54.9 3.7 1988収2800/北陸100号//北陸96号

7 はえぬき 43.6 2.9 1991 庄内29/あきたこまち

8 ほしのゆめ 27.3 1.8 1996あきたこまち/道北48号//きらら397

9 つがるロマン 18.5 1.2 1995 ふ系141号/あきたこまち

10 ササニシキ 18.1 1.2 1963 奥羽224号/ササシグレ

(上位10位品種合計) 80.3

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米政策改革大綱生産者主体の生産調整

消費者・実需者のニーズの多様化

品種・技術について生産者の選択肢を拡大する必要

生産(環境)の安定のために多様な品種、作付体系、栽培技術が必要

多様な品種、栽培技術の開発

売れる米への作付け集中

地域の特色ある農業の展開

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国の稲育種組織国の稲育種組織

北海道農研

東北農研

作物研究所

中央農研(北陸)

近畿中国四国農研

九州沖縄農研

●●

北海道立上川農試

青森県農林総合研究センター(藤坂)

宮城県古川農試

●茨城県農総センター

鹿児島県農試宮崎県総農試

愛知県農総試(山間)

福井県農試● 農業生物資源研究所

国際農研センター(沖縄)

● (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 ● 指定試験地(道県) ● 育種支援機関

独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構には全国に6カ所の育成地があり、主に新規形質の導入や中間母本・先導的品種の開発を地域毎に行っています。また指定試験地では立地条件を生かした実用品種の開発を主な役割としており、水稲7、陸稲1試験地(茨城)が指定されています。この他に(独)農業生物資源研究所に放射線育種場とジーンバンクがあり、(独)国際農林業研究センター沖縄支所は世代促進で育種事業をバックアップしています。

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直播栽培向け品種の開発

稲作の規模拡大、省力化・低コスト化のため直播栽培技術の確立を国を上げて推進中

種々の播種機、直播向けの除草剤が開発されたが、直播向けの品種が少ない。

代表的直播向け品種:

どんとこい、いただき、ミレニシキ、はなえまき

課題:さらに低温苗立ち性や倒伏性に優れ、直播で多収・良質・良食味の品種の開発が急務。

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低温初期伸長性中間母本系統低温初期伸長性中間母本系統北海PL8北海PL8

15℃で40日育苗後の苗

ゆきまる きたいぶき 北海PL8 Arroz da Terra

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押し倒し抵抗値の測定

インド型あるいは熱帯ジャポニカの新草型(NPT)

系統に由来する耐倒伏性を導入中。

「タカナリ」よりも2倍程度押し倒し抵抗値が大きく乾物生産性の高い「関東飼225号」を育成。

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いもち病

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年次 品 種 作付け面積 葉いもち 穂いもち

トヨニシキ 149千ha 3 3

ササニシキ 117 6 7

1975 キヨニシキ 106 4 5

レイメイ 65 3 3

ササミノリ 30 3 4

フジミノリ 26 3 3

加重平均 3.9 4.4

ひとめぼれ 117 6 5

あきたこまち 102 5 6

ササニシキ 74 6 7

1995 むつほまれ 47 4 4

コシヒカリ 37 7 7

はえぬき 31 5 5

加重平均 5.5 5.7

東北地域の主要品種のいもち病抵抗性 (東 1996)

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いもち病抵抗性品種

①圃場抵抗性の付与が育種の基本。

例:こころまち、おきにいり、まなむすめ、じょうでき、いなひかり、ちゅらひかり

②真性抵抗性を利用したマルチライン品種

例:ササニシキBL, コシヒカリ新潟BL1-4号、コシヒカリ富山BL1-4号、 あいちのかおりSBL、コシヒカリ愛知SBL③縞葉枯病抵抗性と連鎖する穂いもち抵抗性

の利用

例:朝の光、月の光、祭り晴、こいごころ など

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いもち病・縞葉枯病に強く良食味の有望系統「関東209号」

60

70

80

90

100

60 70 80 90 100

対照品種

関東

209

サタケ

トーヨー

ニレコ(味度)

ニレコ(HON値)

ケット

○関東209号は、いもち病と縞葉枯病に抵抗性であり、かつ食味の優れる系統です。稲麦二毛作用として来年の品種登録を目指しています。

図 食味計による食味測定結果

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病虫害抵抗性品種(続)

<紋枯病>

①実用的抵抗性品種無し。

②遺伝資源としてはTe –tep由来のWSS系統

の報告(和佐野ら1985)などわずか。

<白葉枯病>

①発生が減少。

②圃場抵抗性の利用(あそみのり、みやこ95等)

<縞葉枯病>

①Modan 由来の抵抗性品種が多数育成。抵抗性の崩壊も無し。

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病虫害抵抗性品種(続)

主な害虫はトビイロウンカ、ツマグロヨコバイ、カメムシ類、ニカメイガ

<トビイロウンカ>

外国稲や野生稲由来の抵抗性遺伝子があり、導入中。実用品種無し。

<ツマグロヨコバイ>

萎縮病を媒介。例:大地の風

病虫害抵抗性品種(続)

<カメムシ類>

①高温年の多発に伴い問題化

②北海道では割籾発生率とカメムシによる斑点米発生に相関がある。

③その他抵抗性遺伝資源の報告少ない。

<ニカメイガ>

①発生減少。

②質的な抵抗性品種無し。

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耐冷性品種・高温耐性品種

• 耐冷性品種冷害を被ると収量が下がるだけでなく、

米の品質・食味も劣化

北海道では、ほしのゆめが強、初雫が極強

東北では、ひとめぼれ、はえぬきなどは極強

コシヒカリも極強

課題:平成5年クラスの冷害に耐えうる品種の育成

・高温登熟性品種高温で登熟すると、背白、基白が発生し、米の品質が悪くなる。

日本品種では、 ふさおとめ、ハナエチゼン、てんたかく などは強、初星 は弱。インド型品種に強いものがある。

課題:収量性、穂発芽耐性、耐虫性等も考慮した高温耐性良食味品種の育成

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冷害による障害不稔

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耐冷性検定(冷水掛け流し・北農研)

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 表4.全国の水稲の平年反収

 年次 平年反収(kg/10a)

1965 4031970 4311975 4501980 4711985 4811990 4941995 5012000 518

農林水産先端技術産業振興センター(2001)

「これまでの技術開発施策に対する評価調査研究」

1975年~1998年の

反収向上=11.7%(62kg/10a)

この間の滋賀県における「日本晴」の反収向上=8.9%

以上の差=2.8%=品種による効果

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超多収品種

• 多収による米の低価格化

現状:原料用として、一般品種より20-30%

多収のタカナリ、ハバタキなどがある。

実際の栽培はほとんど無い。

民間育成の多収良食味ハイブリッド品種みつひかり2003,2005 がある。

課題:タカナリ、ハバタキ並で業務用等に利用できるレベルの食味・品質を有する品種。タカナリ、ハバタキを明らかに上回る多収性を持つ品種。

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超多収品種

課題:タカナリ、ハバタキを明らかに上回り、安定して1t/10a以上の多収品種。

表ー1 超多収品種の収量性

品種名 栽培場所 年次最多収事例の

年次平均(kg/10a)昭和56年平年収量(kg/10a)

同上50%増

ふくひびき 東北農試 平成3-6 833 563 845

ハバタキ 北陸農試 昭和60-63 803 503 755

タカナリ 農研センター 平成2-6 852 446 669

アケノホシ 中国農試 昭和57-63 744 465 698

椛木伸幸.1999.需要拡大のための新形質水田作物の開発. 農林水産技術会議事務局 から作表

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新形質米・多用途利用新形質米・多用途利用

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ー米商品の多様化ー

新形質米品種の開発• 低アミロース米 ミルキークイーン、スノーパール

彩、はなぶさ、柔小町、ミルキープリンセス

朝つゆ、おぼろづき

• 高アミロース米 ホシユタカ、ホシニシキ

• タンパク改変米

低グルテリン エルジーシー1、LGCソフト、春陽、エルジーシー活、エルジーシー潤

低グロブリン フラワーホープ

• 有色素米 朝紫、おくのむらさき

ベニロマン、紅衣

• 巨大胚米 はいみのり、めばえもち

• 香り米 サリークイーン、プリンセスサリー、キタカオリ

• 大粒米、小粒米 オオチカラ、関東170号

課題:機能性を中心とした形質向上や新たなジャンルの形質の開拓が必要。

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最近育成された主な低アミロース米品種

はなぶさ (平成10年) 北海道農研セ

彩 (平成3年) 北海道立上川農試

あやひめ(平成13年) 北海道立上川農試

ソフト158 (平成7年) 中央農研

朝つゆ (平成13年)中央農研

まどか180 (平成12年) 青森藤坂支場

たきたて(平成13年)宮城県古川農試

スノーパール(平成10年)東北農研セ

シルキーパール(平成13年)東北農研

さわぴかり (平成11年) 群馬県農試

ねばりごし (平成10年) 長野県農事試

ミルキークイーン(平成7年) 作物研

ミルキープリンセス(平成15年) 作物研

ねばり勝ち(平成6年)キリンビール

いわた15号(平成13年)日本たばこ

LGCソフト(平成14年) 近中四農研セ

柔小町(平成11年) 九州農研セ

ゆきのはな(平成16年)青森県藤坂支場

シルキーパール(平成13年)東北農研セ

みやゆたか(平成16年)宮崎総農試

おぼろづき(平成15年)北海道農研セ

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アミロース 含量の品種比較

0

5

10

15

20

25

彩お

アミ

ロー

ス含

量(

%)

低アミロース米品種 一般品種

0.0

2.0

4.0

6.0

8.0

10.0

12.0

14.0

16.0

18.0

20.0

彩ミ

アミロ

ース

含量

(%)

最高値

平均値

最低値

北海道品種 府県品種

低アミロース米品種のアミロース含有率比較

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コシヒカリより粘りがあっておいしいお米を~低アミロース品種「ミルキークイーン」

○粘りの少ないでんぷんである“アミロース” の含量をコシヒカリの3/5程度に下げた品種の、 “ミルキークイーン”を開発しました。

○ミルキークイーンは、コシヒカリより粘りが強く、冷めても硬くなりません。

0

5

10

15

20

1 2 3

アミロース含量(%)

ミルキークイーン

日本晴コシヒカリ

ミルキークイーン コシヒカリ

低アミロース米の玄米は白く濁るのが特長です。

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○ミルキープリンセスは粘りが強くおいしさに定評のある「ミルキークイーン」の兄弟系統を親に持つ新しいイネ品種です。

○ミルキークイーン同様の低アミロース品種で、ご飯のつや、粘りは同じぐらい優れています。

○ミルキークイーンに比べ、草丈が短く倒れにくく、多肥栽培にも適します。縞葉枯病にも強くなっています。また、耐冷性が比較的強く、ミルキークイーンよりやや早生なので、寒冷地でも栽培可能です。

○平成15年度中に命名登録されました。(旧系統名:関東194号)

おいしい、倒れない、病気に強い。

低アミロース米の新品種「ミルキープリンセス」

かけ合わせ

初星(倒れにくく病気に強い性質を導入する)

× 関東163号

青い空

突然変異処理 × ミルキープリンセス

(関東194号)

コシヒカリ 鴻272ミルキークイーン

アミロースの低減

(粘りを強くする)

普通の品種 低アミロース系統   縞葉枯病に強い系統

ミルキープリンセス ミルキークイーン(倒伏)

ミルキープリンセスは倒伏に強く、草姿も良好です。

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[特徴]

アミロース含量が25%以上。

炊飯米の粘りが少なく、ポロポロの米飯となる。

カレー用、ピラフ用には一般粳米よりも優れている。

さばけのよいライスヌードルができる。

高アミロース米

ホシユタカ[育成品種]

ホシユタカ、夢十色、

ホシニシキ

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[特徴]

易消化性タンパク質(グルテリン)の割合が少ない。

低タンパク化が必要な食事用の素材米として利用される。

低グルテリン米

[育成品種]

エルジーシー1(LGC-1)、春陽、LGCソフト

グルテリンα

グルテリンβ

グロブリン

プロラミン

37~39kD

26kD

22~23kD

16kD

13kD

一般品種 春陽

新しい米を創る 農研機構作物研究所・農林水産技術会議事務局 より

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低グルテリン米の効果

表1 LGC1摂取前後の腎機能の変化

/血清クレアチニンの傾き1摂取前 摂取後LGC1 LGC1

-3.10 3.62 -1.69 2.95全患者 ± ±

コメを多く

-4.59 4.33 -1.47 3.51*食べるグループ ± ±

コメの摂取機会

-2.05 2.94 -1.82 2.79が少ないグループ ± ±

5%水準で有意* :

図.腎機能障害の進行(農業生物資源研究所 放射線育種場)

新しい米を創る 農研機構作物研究所・農林水産技術会議事務局 より

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低グルテリン+低アミロース米

LGCソフト

[特徴]

低グルテリンと低アミロースの性質を両方とも備えている。

炊飯米の粘りが強く、良食味である。

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低グルテリン+低グロブリン米品種

[特徴]

易消化性タンパク質のうちグルテリンがLGC-1よりも低い上に、新たにグロブリンが欠失している。

易消化性タンパク質が一般米の半分程度まで低下している。

[育成品種]

LGC活、LGC潤

農業生物資源研究所

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図.「はいみのり」のGaba蓄積量

0

5

10

15

20

25

30

35

40

浸漬前 4時間後

はいみのり

日本晴

コシヒカリ

はいみのり

コシヒカリ

図.巨大胚品種「はいみのり」

巨大胚米品種

[特徴]

胚芽の大きさが一般米の3倍から4倍ある。

胚芽に蓄積するγーアミノ酪酸(Gaba)の量が一般米の3倍から4倍。

[育成品種]

はいみのり(粳)、

めばえもち(糯)

新しい米を創る 農研機構作物研究所・農林水産技術会議事務局 より

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発芽玄米の効果

玄米を水に浸漬すると

胚芽内のグルタミン酸が脱炭酸化されγ-アミ

ノ酪酸(Gaba)が蓄積される。

Gabaを蓄積した胚芽を

接種すると血圧調整効果が認められた。

岡田ら(2000)日本食品化学工業会誌47(8)より

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発芽玄米関連商品

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いろいろな色の米,いろいろな色の米,紫黒米紫黒米・・赤米赤米・・緑米緑米

おくのおくのむらさきむらさき 朝紫朝紫 あきたこまちあきたこまち

紫黒米などを利用した様々な商品

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その他の新形質米

大粒米

小粒米

リボシキナーゼ欠出米

糖質米

観賞用品種

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特定保健用食品(特別用途食品)

健康に良い成分によって生活習慣病から身を守ったり、体調を整える働きがあることを科学的に証明し、厚生労働大臣がその表示を許可した食品

これが適用されないと、「・・・病に効果がある。」、「・・・の症状を緩和する。」等の表示は不可(間接表示も不可)

一般食品の栄養表示基準に従って、特定の栄養成分の含有量は表示できる

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水田と畜産の結合-飼料イネ-

転作田での

飼料イネ生産

安定した

国産飼料給与

稲発酵粗飼料

飼料用イネ品種を栽培する体系は転作の切り札として期待されています

堆厩肥の還元

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飼料イネ栽培の進展

0

1000

2000

3000

4000

5000

2000 2001 2002 2003飼料イネ生産の推移

(ha)

500ha

2000ha

3500ha

全国で飼料イネ栽培は5000haに達し、ここ3年間で10倍まで増加しました

5000ha

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飼料用(ホールクロップサイレージ用:WCS)品種

ホシユタカ:全重やや多く長粒

クサユタカ:全重やや多く、大粒

ホシアオバ:全重やや多く、大粒、直播適性

クサホナミ:全重多く、無毛品種、縞葉枯病抵抗性

クサノホシ:全重多く、縞葉枯病抵抗性、直播適性

夢あおば:全重多、早生、縞葉枯病抵抗性、直播適性

ニシアオバ:全重多、晩生で九州向け

奥羽飼387号:早生、直播適性、東北向け

関東飼215号:晩生、茎葉多収型。

牛を中心とする粗飼料用。水田転作作物として期待されている。

○TDN含量の向上や乾物収量の一層の向上が今後の課題。○トリプトファン含量の高い組み換え体を作出。

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米・品種関連制度米・品種関連制度1 奨励品種制度

主要農作物種子法に基づく。稲・麦・大豆の優良な種子生産と普及を促進し、主要農作物の生産性向上と品質改善を図る。

都道府県が、育成された品種が自県に適し普及すべき品種かどうかを決定する。

調査期間は原則3年以上。

2 種苗法

品種の登録、権利保護(20年間)等に関する法律

出願は、販売開始1年以内

3 命名登録制度

国が育成した品種に対し、優良なものについて命名と農林番号登録をする。(例:コシヒカリ:水稲農林100号)

4 JAS法の適用

平成13年4月から米にもJAS法が適用されるようになり、銘柄として指定を受け、検査を受けたもののみ品種名を商品に表示できる。

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クサホナミの乾物収量

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

関東飼

206号

タカナリ

はまさり

ホシ

ユタカ

もみ

わら

クサホナミは”わら”は「はまさり」並、”もみ”は「タカナリ」並の収量があり、両方を合わせた全重はこれらの品種よりも多収です。(kg/a)

(農業研究センター:1999,移植栽培)

稲発酵粗飼料用品種(ホールクロップサイレージ)

クサホナミ

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ゲノム育種の推進

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イネの育種でのDNAマーカーの利用

「DNAマーカーによる効率的な新品種育成システムの開発」

3.高精度DNAマーカー(SSR,SNP)の作出

1.有用遺伝子の遺伝解析,選抜マーカーの開発

2.それらを利用した同質遺伝子系統の育成

公開されている塩基配列情報から比較的容易に望んだ領域にマーカーを設計・利用できる

ハンドリングしにくいRFLPマーカー変わってSSRなどのハンドリングしやすいPCR型マー

カーが登場.

2000を超えるSSRマーカー公開

育種現場において急激にDNAマーカーが利

用しやすい状況になった.

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SNPs(一塩基多型)を利用した米品種鑑定お米の品種のDNAのわずかな違い(一塩基)を検出して品種の判別をする

新しい方法を開発しました。(植物ゲノムセンター・農業技術研究機構特許共同出願中)

1 2 3

1 2 3

お米一粒ずつのDNAを抽出します。

1.DNA抽出

例)コシヒカリかコシヒカリ以外の品種かを判定するには

2.蛍光色素の取り込み

マーカー

C

蛍光色素(C/A)

Tこれらを加えると・・・

非コシヒカリ型

コシヒカリ型

取り込まれた蛍光色素だけが測定器によって検出されます。

AATCACGGAATCAT…

AATCACGGAATCAT…

AATCACGAAATCAT…

米粒1

米粒2

米粒3

T 対応しない色素は結合しない

C

T

C

C

T

3.測定器による色素の検

2.蛍光色素の取り込み

1.DNA抽出

0

50

100

150

200

250

0 50 100 150 200 250

米粒1

米粒2

米粒3

T 米粒2

米粒1

米粒3コシヒカリではない

コシヒカリ(数値:蛍光の強さ)

C

1 A G A A A A A A A

2 A A A C A A A C A

3 T A A A A A A T A

4 C C T T T C T C T5 T G T G G G G G T6 G G G T G G T T G

マーカー 日本晴 きらら397 つがるロマンコシヒカリあきたこまちヒノヒカリ ひとめぼれキヌヒカリ ササニシキ

1

現在、マーカーをいくつか組み合わせることで、78品種を区別することができます。

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DNAマーカーを用いた品種育成事例

• あいちのかおりSBL(縞葉枯病R;Stvb-i,穂いもちR; Pb1)

• コシヒカリ愛知SBL (縞葉枯病R;Stvb-i,穂いもちR; Pb1)

• 東北IL21号(いもち病抵抗性まなむすめ;Pib)

• 関東IL1号(早生コシヒカリ;qDTH6)• 関東IL3号(晩生コシヒカリ;qDTH8)• 関東IL2号(トビイロウンカ抵抗性ヒノヒカリ;bph11(t)• コシヒカリへのsd1導入系統(半矮性遺伝子;sd1)[植物ゲノム

センター]

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ミルキープリンセス

コシヒカリ

スノーパール

NM

3911)

ミルキークイーン

←Wx-mq 遺伝子の一部 (741bp)

←対照 (469bp)

分子量マーカー

1 2 3 4 M

495 bp

612 bp

770 bp

1057 bp 注)M:分子量マーカー

Φx174/HincⅡ、

1:関東194号、2:ミルキークイーン、

3:コシヒカリ、4:あさひの夢

図1.ST10プライマーによる縞葉枯病抵抗性遺伝子Stvb-iの検出

図2.ミルキープリンセスの低アミロース遺伝子Wx-mqの検出

ミルキープリンセス育成におけるDNAマーカーの利用

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トビイロウンカ抵抗性の準同質遺伝子イネ系統

目標遺伝子の領域(他の領域は反復親の領域)

イネ同質遺伝子系統の染色体地図

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

イネ近縁野生種の抵抗性遺伝子 bph11(t) を戻し交雑

とDNAマーカーによる選抜により、西日本の主力水稲品種であるヒノヒカリに導入した「関東IL2号」を育成。

ヒノヒカリ 関東IL2号

(作物研究所、九州沖縄農業研究センター)

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

qDTH-3-1

qDTH-3-3 qDTH-3-2

qDTH-6qDTH-7

qDTH-8

コシヒカリ早生系統「関東IL1号」の育成

関東IL1号 コシヒカリ

コシヒカリに Kasalath の出穂期QTL(qDTH-6)を導入した「関東IL1号」を育成。約10日出穂期が早く極早生化。

(農業生物資源研究所、作物研究所)

コシヒカリ-Kasalath 間の出穂期QTL

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■イネの障害型耐冷性遺伝子(平成16年度DNAマーカープロトピックスより)

熱帯ジャポニカ型品種「Pakhe Dhan」の持つ耐冷性が第6染色体上にマッピングされました。このQ

TLは低温処理時に稔実率を20%向上させる効果があります。他の耐冷性QTLとの集積により耐冷性が極強い品種の育成が期待されます

Chr. 6

障害型の冷害を受け不稔を生じた稲

青森県農林総合研究センター・藤坂稲作研究部

須藤ら(2004)育種学研究6(別1)89

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いただき・空育162号間の食味解析

いただき/空育162号//いただきBC1F4出穂期がいただきと同熟期の個体を選抜アミロース含量測定。QTL解析を行った。

三枝ら(2004)育種学研究6別2 P267

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Increased effect from WSS2

図1. 紋枯病抵抗性及び稈長QTL

A: 第3染色体, B: 第12染色体DS: 紋枯病進展度, CL: 稈長

WSS2にヒノヒカリを交配したBC1F1集団60個体において、計206個のSSR及びSTSマーカーを用い

て解析

紋枯病抵抗性のQTL解析 佐藤ら2003 育種学研究5(別2 )

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DNAマーカー選抜のメリット・留意点

メリット 留意点 解決の方向

1)全染色体について複数の形質を同

時に効率的に選抜できる。1)マーカー検出に労力と費用がかかる。

1)SSRマーカーやCAPSマ-カー等、共優性でPCRにより検出できるマーカーの利用2)ホモ・ヘテロが分かる。

2)多型検出可能な品種の組合せ

が限られる。2)近縁間でも多型を検出で

きるマーカーの開発(SNPsSSR等)

3)全染色体がモニタリングでき、目的

の遺伝子型への誘導、固定が早い

(IL育成等に有利)。 3)特許

4)選抜が環境・バイオアッセイによる

変動に左右されない。

3)どのステージでも、どの部位からでも何度でも繰り返し判定できる。

5)病害虫の培養飼育施設が不要

3)国の特許は簡単に許諾される。

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☆☆

×A

AB

EF

×

AB

DEF

C

抵抗性遺伝子A

マーカーA

マーカーB

抵抗性遺伝子B

☆☆

性A+B

マーカーAマーカーB

病害抵抗

レース1 レース2 レース3

抵抗性品種A A M-A R R R

抵抗性品種B B M-B R R R

集積品種 A+B M-A, M-B R R R

判別菌系品種 抵抗性遺伝子 マーカー

DNAマーカーでないとできないこと・用いるメリット

○ 染色体領域を確認しながらの連鎖の解消・選抜○ 同一病害の抵抗性遺伝子の集積○ 複数病害の抵抗性の通年・同時選抜

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DNAマーカーによる育種年限短縮

年次 世代 育種材料の扱い 特性検定試験 県での試験

遺伝資源の評価

0 母本の選定

1 交配

DNAマーカーのF1 戻し交配

グラフィカルジェノタイプ2 戻し交配B1F1による選抜B2F1 系統選抜

3 系統群選抜 系適B2F2<地方番号付与> 収

4 系統群選抜 量 奨B2F3調 決

5 査 試B2F4験

B2F56

新品種

期待される効果

・戻し交配回数および自殖回数の大幅節減および早

期固定

・特性検定の簡易化、精度の向上

・複数の形質についての 化が可能になる。IL

従来の戻し交雑育種法によるイネ育種

年次 世代 育種材料の扱い 特性検定試験 県での試験 問題点

遺伝資源の評価 ・戻し交配0 母本の選定 と選抜を何

度行わなけ1 交配 ればならな

戻し交配 い。F1B1F12

3 耐病性検定B2F1品質等特性 ・耐病性の

4 検定等と選抜 検定などはB3F1・固定 多大な労力

5 がかかる。B4F1また、検定

6 はその年のB5F1気象条件等

7 に左右されB6F1る。

B7F18

・量的形質

9 系統選抜 系適 などは遺伝B7F2収 支配、遺伝

系統群選抜 量 子型が分か10 B7F3<地方番号付与> 調 ら な い の

査 で、ホモ型11 B7F4奨決 を効率良く

試験 選抜できな12 B7F5い。

13 B7F6

新品種

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DNAマーカー育種にかかる経費

イネのDNAマーカー選抜にかかるコストの試算(井辺1999 育種学最近の進歩41)

最小   最大

DNA抽出 50,000 100,000CAPS PCR試薬 400,000 800,000

制限酵素 200,000 400,000アガロース 100,000 150,000合計 750,000 1,450,000

この他に必要最低限な備品、非常勤職員の賃金等が必要である。

5000固体を2マーカーで選抜する場合のコスト(円)マーカーの種類 実験行程

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●DNAマーカーによる基幹品種を遺伝背景としたIL系統群の育成

・コシヒカリ等基幹品種への戻し交配

・QTL領域の絞り込みによる劣悪形質との連鎖解消

・各QTL間の関係解明と集積

農業形質を精 密マッピング

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

耐病虫性ユニット、耐冷性ユニット

高品質・食味ユニット、収量性ユニット

IL系統群の育成

集積

●DNAマーカーにより複数の形質を集積した系統の育成

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DNAマーカーを用いた今後の稲育種モデル

×

×

新規遺伝子を持つ中間母本

遺伝資源

DNAマーカー

実用品種A

実用品種B

新規遺伝子

新品種 県農試等公立研究機関

民間研究機関

MASの委託

共同選抜

生物研等(シーケンス・遺伝子研究グループ)

マーカー情報

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Golden rice

International Rice Research Institute

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CH2 COOHNH2

H

C

NH

アントラニル酸コリスミン酸 トリプトファンAS

フィードバック制御

フィードバック非感受性 AS

トリプトファンの蓄積

高トリプト高トリプト 日本晴日本晴ファン系統ファン系統

高トリプトファンイネ組換え体の作出

AS:アントラニル酸合成酵素

改変型 AS α subunitOASA1D

改変

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非閉鎖系温室(2002年) 隔離圃場(2003年)

系統トリプトファン量 対日本晴 トリプトファン量 対日本晴

HW1 164.9 2.1(nmol/粒)HW5 148.4 1.9

日本晴 77.8 (1)

表1 組換え体におけるトリプトファン含量

196.69 8.37(nmol/粒)152.57 6.49

23.51 (1)

HW1 1.85 24.9(μmol/g)HW5 1.25 16.9

日本晴 0.074 (1)

4.80 1600(μmol/g)

4.59 1530

0.003 (1)

植物体中の遊離

トリプトファン

玄米中の全

トリプトファン

トリプトファンの形態

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HW1 日本晴 HW5 日本晴

高トリプトファン組換えイネ(2003年、隔離圃場)

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アブラナ科作物のディフェンシン遺伝子組換えイネの白葉枯病抵抗性の検定

左:非組換え体、中:組換え体(非改変遺伝子)右:組換え体(改変遺伝子)

いもち病にも抵抗性

中央農研センター・北陸研究センター

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遺伝子組換えで取り組むべき病害虫抵抗性

抵抗性遺伝子源のない病害虫*紋枯病(低レベルの抵抗性はあり、DNAマーカーで選抜中)*籾枯細菌病*苗の各種病害

【いもち・白葉枯・縞葉枯は抵抗性あり】

*メイチュウ類、コブノメイガ*カメムシ類

【ウンカ・ヨコバイ類は抵抗性あり】

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開発の目的1700万人以上いるスギ花粉症患者の症状緩和やスギ花粉症

予備軍(5~6割)の発症予防・生活の質(QOL)の改善・国家の医療費削減に貢献(約2800億円)・現在の治療法は対症療法、または減感作療法のみ

方法スギ花粉抗原Cry j 1, Cry j 2の一部配列(7個のヒトT細胞抗原決定基(エピトープペプチド)(7Crp)

→ 米に蓄積させ、これを食べること(経口粘膜免疫寛容)でスギ花粉症を緩和したり、発症を予防

スギ花粉症緩和イネの開発目的と方法

農業生物資源研究所

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遺伝子組換え技術を用いたスギ花粉症緩和米の開発

農業生物資源研究所

http://www.nias.affrc.go.jp/gmo/