第5編 桃(山梨県) -...

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第5編 桃(山梨県)

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  • 第5編 桃(山梨県)

  • 目 次

    調査の趣旨・概要........................................ 5-1

    Ⅰ.調査方法............................................ 5-3

    1.調査対象品目等.................................... 5-3

    2.調査協力企業、生産者、関連団体等.................. 5-3

    3.調査方法.......................................... 5-3

    Ⅱ.調査結果............................................ 5-4

    1.基本概要.......................................... 5-4

    2.輸出数量等の確定までの流れ........................ 5-5

    3.輸出までの流れ.................................... 5-6

    4.輸出までの物流関連コスト項目...................... 5-12

    5.輸出の目的、輸出によるメリット.................... 5-14

    6.課題と対策に向けた方向性........................... 5-15

    7.まとめ............................................ 5-22

  • 調査の趣旨・概要

    近年、世界的な日本食ブームの広がりやアジア諸国等における経済発展に伴う富裕層の

    増加等により、高品質な我が国の農林水産物・食品(以下「農林水産物等」という。)の輸

    出拡大のチャンスが増大している。このような中、産地が輸出に取り組むに当たり、価格・

    品質面での競争力の向上等を図るためには、輸出物流コストの削減方策を明らかにするこ

    とが必要となっている。

    このため、輸出物流コストを調査し、産地等の関係者に広く知らせるとともに、調査結

    果に対応した関係者の取組を促すことを目的として、「平成19年度農林水産物貿易円滑

    化推進委託事業(海外貿易情報収集等基礎調査)」において「輸出物流コスト削減等に関す

    る調査」が実施された。

    本報告書では、実際に輸出に取り組んでいる各産地の協力のもと、ヒアリングによる物

    流の実態調査と、その結果から導き出される課題解決のための仮説・提案について、ケー

    ススタディー形式で紹介している。

    品目特性、輸出先、産地から空港・港湾施設までの動線等の違いにより、物流の課題は

    千差万別と言える。このため、必ずしも本報告書が全ての農林水産物等の輸出物流の改善

    に直接寄与するものではないが、関係者(生産者、関連団体、物流関連企業等)が、本報

    告書で提示されたケーススタディーを改善のための有益なヒントとして活用し、各自が抱

    える物流課題の解決を図り、一層円滑な農林水産物等の輸出環境の構築を実現することを

    期待する。

    なお、本報告書におけるコストについては、輸出プロセスに係る直接的な支払コストに

    重点を当てて調査・提案を行っており、数値化が難しい自家コスト(生産者の輸出準備に

    要する労働時間や圃場から単協への個別配送など)は調査・提案の対象から割愛している。

    したがって、本報告書で示す直接的な支払コストとは、以下の項目を指している。

    産地から物流拠点(空港、港湾等)までのトラックによる輸送費

    ・ 混載便とチャーター便に大別される。

    ・ 混載便の場合は、通常キログラム当たりの重量制となり、輸送距離によりキログラ

    ム当たり単価が異なる。

    物流拠点(及び周辺)における船積み関連費用

    ・ コンテナのバンニング料、一時保管料、取扱手数料、書類発行手数料など。

    ・ 出荷1件毎に課金される料金と、重量や容積、コンテナ単位で課金されるものに大

    別される。

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  • 航空便、船便の運賃

    ・ 航空便の場合はキログラム単位、船便の場合はコンテナ単位での課金が基本となる。

    ・ 船便の場合、特段の温度管理等を要しない通常貨物であれば、混載を想定した立米

    単位の課金方法もある。

    通関や検査など法令上必要な業務に付随する費用

    ・ 通関手数料や検疫審査代行手数料など、出荷件数当たり、または書式枚数当たりの

    単価設定となる場合が多い。

    梱包やその他資材関係に必要な費用

    ・ 段ボール代、保冷剤など。

    本報告書を作成するに当たり、可能な限り正確を期すよう努めたが、執筆後の輸送運賃

    や資材等の価格の変動、輸出ロットの増減による単価の変化等により、記述内容と実態と

    の間に異なる部分が発生する可能性がある。ついては、農林水産物等を実際に輸出する際

    には、事前に専門の輸送業者等に照会するなど、それぞれの品目特性や産地、輸出先に即

    した情報を入手する必要がある。

    5-2

  • Ⅰ.調査方法

    山梨県における桃輸出に関する物流調査については、以下の方法により実施。

    1.調査対象品目等

    品目 輸出先

    桃 台湾

    2.調査協力企業、生産者、関連団体等 (敬称略)

    全国農業協同組合連合会山梨県本部

    日本園芸農業協同組合連合会

    3.調査方法

    平成20年2月に現地で関係者からヒアリングを実施した上で、電話等により

    追加の情報収集を実施

    インターネットを通じた情報や関連業者の見積り等を収集

    5-3

  • Ⅱ.調査結果

    1.基本概要

    台湾においても、桃の栽培は行われているが、品質が異なるため、贈答向け等では海外

    から輸入した桃が利用されることが多く、中でも日本産の桃(白桃)の人気が高い。こうし

    た中、全国農業協同組合連合会山梨県本部(以下「JA全農やまなし」という。)傘下の農業

    協同組合(以下「単協」という。)では、ハウス栽培と露地栽培の桃について、5月から8

    月までの4ヶ月間に台湾向けの輸出を実現し、販路を拡大しつつある。桃は日持ちしにく

    い果物のひとつであり、また、輸送中の荷痛みの危険性を極力防ぐため、輸出に際しては、

    市場経由にてほぼ空輸で台湾に輸出している。なお、国内向けの出荷は 4 月下旬から 9 月中旬にかけて、市場経由で全国に向けて出荷されている。

    桃の輸出基本概要は図表-1のとおりである。平成18年度の桃の輸出実績は、国内生

    産量133,900トンの内、全国で367トン(約0.3%)が台湾向けに輸出され、

    山梨産がその内の56.9%(209トン)を占めている。図表-1の数値は、その内J

    A全農やまなしが関わり、把握している輸出量(山梨県内の68.9%(144トン))を

    表している。輸出は、平成10年~12年の3年間、日本園芸農業協同組合連合会(以下

    「日園連」という。)と共同で、香港・シンガポール向けに試験輸出を行ったことに始まる

    が、台湾向け輸出については18年に開始され、初年度は5月19日から8月16日の期

    間で行われた。

    (図表-1: 輸出の概要)

    年間輸出量

    年間輸出ケース数

    (品種名)ケース容量

    144,087kg 3~5回/週 93,140千円 有

    ハウス(日川、白鳳)

    8,172kg 8,172ケース 1kg 5回/週

    56ケース

    (56kg)

    2,250円

    (2,250円/kg)18,387千円

    ・フルーツ山梨・ふえふき

    5.6%

    露地(日川、山

    梨、白鳳、嶺鳳、一葉、浅間、川中島、一宮、ゆうぞら、加納岩)

    135,915kg 27,183ケース 5kg 3~5回/週240ケース

    (1,200kg)

    2,750円

    (550円/kg)74,753千円

    ・フルーツ山梨・ふえふき

    1.3%

    注) JA全農やまなしが把握している18年度実績

    空港で実施

    植物防疫検査

    1ケース当たり販売価格

    (市場出荷価格)

    (kg当たり)

    年間輸出金額

    (@\113.5/$)出荷JA

    輸出先輸出頻度

    (5月~8月)

    山梨県内生産量に占める

    輸出量の割合

    1回当たり平均輸出量

    台湾

    5-4

  • 2.輸出数量等の確定までの流れ

    桃の輸出は、JA全農やまなし自身が輸出者となって行ってはおらず、輸出貿易会社

    が市場に出荷された荷を仕入れて行っている。したがって、JA全農やまなしが台湾側

    と価格・数量の折衝を行ったりすることはない。

    輸出取引が確定するまでの流れとしては、まず輸出貿易会社から仲卸業者、次に卸売

    市場を介して輸出用桃の出荷オーダー(注文)が産地側(単協)に入り、それに応えて

    輸出用の荷が卸売市場向けに出荷される。その後、卸売市場で仲卸業者が買い付け、輸

    出貿易会社の手に渡る。このように、発注元が輸出貿易会社であるだけで、それ以外は

    国内向けの市場出荷と同様の物流経路を経て出荷されている。

    桃に関しては、輸出用の桃を専門に栽培している農家は存在しない。輸出用の桃は、

    単協の選果梱包施設にて、国内市場用に梱包まで終了している荷の中から、単協の専属

    作業員が出荷オーダー数量分をピックアップして開封し、果こう部分の軸の除去、触感・

    目視検査、エアーの吹き付け、ハケ処理等を行った後、再度新しい梱包資材にて梱包し

    直し、テープで密封する。なお、輸出貿易会社ごとに輸出用のパッケージの有無や梱包

    形態が異なり、輸出用梱包段階で複数種の異なった梱包仕様が発生することから、それ

    らの複数梱包仕様に対応するため、単協ごとに担当する輸出貿易会社を決めている。た

    とえばJAフルーツやまなしは、その管内にある 7 箇所の選果梱包施設ごとに担当輸出

    貿易会社を振り分けている。

    5-5

  • 3.輸出までの流れ (1)物流経路

    山梨県内の生産者による出荷から空港での航空機搭載までの流れと国内向け出荷の流れ

    は図表-2、図表-3のとおりである。

    (図表-2: 輸出における物流経路)

    輸出貿易会社 (輸出者)

    生産者

    生産者

    生産者

    卸売市場

    (東京)(愛知)(大阪)

    成田国際空港

    中部国際空港

    関西新国際空

    仲卸業者

    出荷オーダー

    生産者

    生産者

    生産者

    単協JAフルーツ

    やまなし

    登録された園地

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    JA全農やまなし

    コンテナへの積み込み、またはパレットへの積み付け

    コンテナへの積み込み、またはパレットへの積み付け

    航空会社・税関輸出物流業者

    輸出用を選果

    輸出用を選果

    単協JAふえふき

    輸出用を選果

    輸出用を選果

    常温トラック 常温トラック 常温トラック

    出荷オーダー

    輸出取扱単協

    輸出通関及び植物防疫にかかる輸出検査

    輸出通関及び植物防疫にかかる輸出検査

    出荷オーダー

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  • (図表-3: 国内向け出荷における物流経路)

    卸売市場

    単協JAフルーツやまなし

    単協JAふえふき

    単協その他

    園地

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    生産者

    JA全農やまなし

    国内取扱単協

    (2)業務内容 各々の業務主体・工程毎で行われている業務内容については、全体の流れを記したフロ

    ー(図表-4)と、モノの流れに主眼を置いたタイムチャート(図表-5)に整理した。 なお、業務工程毎の時間工数については、 ・ 国内用と輸出用を区別して行われる部分が出荷工程の一部のみ(エアーの吹き付け、

    ハケ処理を行い、新しい資材で梱包し直す部分のみ)であり、その他の工程は卸売

    市場到着まで国内用と区別されていない

    ・ 卸売市場への搬入以降の流れについて情報が得られなかった

    ため、作成していない。

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  • (図表-4: 台湾向け 桃輸出フロー)

    単協 卸売市場 輸出物流業者

    JAフルーツやまなし・JAふえふき 青果卸売業者・仲卸業者 通関・航空機搭載手配業務

    輸出貿易会社(輸出者)

    生産者(JA山梨管轄内)

    オーダー確定

    出荷スケジュール

    設定

    出荷計画 スケジュール確認

    出荷オーダー

    収穫

    プラスチックコンテナに収納

    保管

    出荷

    出荷予定

    受入・冷蔵保管

    輸出用再梱包

    受入準備

    植物検疫手配(前日)

    植物検疫関連書類作成 航空便予約手配

    搬入予定

    搬入予定

    出荷

    市場での売買

    植物検疫

    通関手配

    合格証明書

    積み込み準備

    通関準備

    合格証明書

    通関書類

    空港搬入

    通関

    コンテナへ積み込みパレットへ積み付け

    →航空機搭載

    卸売市場での買付け

    出荷通知書

    モノの流れ 指示・情報の流れ

    輸出用開梱

    国内用選果

    国内梱包

    図表-5のタイムチャートを参照

    出荷オーダー

    エアー噴きつけハケ処理

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  • (図表-5: モノの流れに主眼を置いたタイムチャート)

    午後午後午後午後 午前

    4日目

    午前

    2日目 3日目

    航空会社

    上屋搬入

    選果・梱包

    検疫

    積み込み

    通関

    保管

    輸送

    相対

    輸送

    保管

    受入卸売業者

    仲卸業者

    輸出貿易

    会社

    午前午前

    受入

    輸出

    物流業者

    受入

    JAフルーツ

    やまなし

    JAふえふき

    1日目

    主な工程業務主体

    【産地登録 :選果梱包施設の責任者】

    台湾に輸出を行うためには、まず、選果梱包施設(単協)の責任者が生産園地の情報を

    取りまとめて山梨県に対して行う産地登録(生産者名、生産園地、選果梱包施設等)と、

    当該登録に基づいて実施される台湾植物検疫当局検査官(以下「台湾側検査官」という。)

    による登録生産園地および登録選果梱包施設の現地確認が事前に必要となる。18年に産

    地登録した共同選果場は13ヶ所である。なお、産地登録自体は毎年必要となるが、台湾

    側検査官による現地確認は毎年行われる訳ではなく、新規に登録する生産園地が中心で、

    継続して登録をする生産園地については、実際に出荷時(輸出時)にモモシンクイガ(果

    実内部を食べる害虫)の摘発を受けた生産園地にのみ実施される。

    【収穫・生産 :生産者】

    ハウスものの輸出期間は5月~6月で、国内出荷開始時期(4月下旬から開始)より若干

    短い。また、露地ものの輸出期間は7月~8月で、国内出荷終了時期(9月中旬まで)より

    若干短い。全体として、国内用収穫時期は4月下旬から9月中旬であるのに対し、輸出用

    はその内の5月から8月の4ヶ月間であり、ほぼ同時期である。

    収穫後は、腐敗果・生傷果・規格外のものを除いて、コンテナ(縦60cm×横80cm×

    深さ15cm 程度の平たいプラスチックケース)に収納し、農協の集出荷場に集められる(当

    日出荷分の荷が集まるまでは常温保管)。集出荷場へは各農家が自家用車(軽トラック・常

    5-9

  • 温)に手積みして輸送している。

    【集荷・選果 :単協】

    出荷予定日の前日に農家から単協に届いた桃は、光センサー選果では選果直前まで冷蔵

    すると上手く選果できないため、選果開始2時間前まで15℃で冷蔵保管され、それ以降

    は常温で保管される。

    目視による腐敗果・生傷果・規格外の検査を行った後、光センサー選果システムを用い

    て、等階級と着色具合を選別し、国内市場用の段ボールに梱包する。大玉の桃に関しては

    手作業で 1 個ずつウレタン製のネット(キャップとも呼ぶ)を掛けて梱包する。段ボール

    の上下部にはウレタン製の緩衝材を敷き、その後、段ボールに入数や等階級をスタンプで

    印字する。

    【輸出用梱包 :単協】

    輸出用桃の規格については、台湾で需要が多い大玉(13~15玉)に限ること以外は

    特に定めは無いため、山梨県で設定している国内市場用の規格を使用し、等階級分け・ケ

    ース当たりの入数を決めている。既に国内市場用梱包を済ませた荷の中から、輸出用に出

    荷する数量分の荷を抽出し、開梱する。再度中身をすべて取出し、果こう部分の軸の除去、

    触感・目視検査、エアーの吹き付け、ハケ処理を行い、新しい資材で梱包し直す。開梱と

    いう二重作業が発生する理由は、一旦、光センサー選果システムのラインに桃を乗せてし

    まうと、前述のように等階級と着色具合の選別から国内用段ボールに梱包するまで自動で

    行われるためである。梱包資材はJA全農やまなしが供給する通常の国内市場用の段ボー

    ル箱・ネット・ウレタンを用い、最後にテープで密封し(輸送時における虫の侵入防止の

    ため)、「To Taiwan」表示のあるシールを箱に貼る。また、前述のように輸出貿易会社ごと

    に輸出用のパッケージの有無や梱包形態が若干異なるため、梱包段階で複数の輸出用梱包

    仕様が発生する。そのため、各単協内で複数の輸出梱包仕様に対応しなければならず、作

    業手順が煩雑になってしまう状況を回避する手段として、各単協が、担当する輸出貿易会

    社を管内の選果梱包施設ごとに振り分けて対応している。現在、主な取り扱い輸出貿易会

    社は約10社前後である。

    なお、輸出貿易会社ごとに異なる梱包仕様等の理由は、輸出貿易会社のニーズによるも

    のか、あるいは仲卸業者のニーズによるものか、さらには台湾側輸入者のニーズによるも

    のであるのかについては、情報を入手できていない。

    【卸売市場への出荷 :単協】

    梱包終了後の桃をパレットに載せ、各単協が手配した運送業者の車両が到着するまで常温

    で保管する。運送業者のトラック到着後は、国内向けと輸出向けの桃をそれぞれ判別でき

    るようにフォークリフトで同一の車両の荷台に積載する。運送業者については単協ごとに

    業務を委託している業者が異なるが、いずれも10t車あるいは4t車(いずれも常温)

    5-10

  • を使用しており、輸送先は輸出貿易会社が指定した東京・愛知・大阪方面の7卸売市場と

    なっている。(*1)

    *1)輸送先卸売業者名:東京青果・丸市青果・名果・大果大阪青果・東京多摩青果・東京豊島青果・大阪中央青果

    【輸出手配 :輸出貿易会社】 卸売市場に搬入された後、仲卸業者が市場に出荷された荷を相対により買付け、輸出貿

    易業者の手に渡る。次に、各市場近くの(成田、関空、中部国際空港等の)主要空港内保

    税蔵置場に搬入され、植物検疫並びに輸出通関許可を受ける。その後、航空会社が、コン

    テナへの積み込み、または、航空パレットへの積み付けを行い、航空機に搭載された後、

    各空港から台湾に空輸される。(*2)

    *2)具体的な情報が入手できなかったため、一般的な空港での作業をもとに記述した。

    5-11

  • 4.輸出までの物流関連コスト項目

    上述の輸出までの流れに関連して、各々の工程で発生する物流関連コストを整理した。 (図表-6: 桃 想定コスト項目)

    業務主体 主な工程 主な物流関連コスト コスト負担者

    収穫

    梱包

    保管

    出荷(単協へ搬入)

    受入

    選果

    梱包

    保管

    台湾側の現地確認

    出荷(卸売市場へ搬入)

    受入

    植物防疫検査

    保管

    空港上屋搬入

    航空機搭載準備

    通関

    航空機搭載 

    生産者

    JAフルーツやまなしJAふえふき

    輸出貿易会社輸出物流業者

    生産者

    JAフルーツやまなしJAふえふき

    ・作業費費用(人件費)・梱包資材費・トラック費用                         他

    ・作業費用(人件費)・選果用設備費用・保管費用・梱包資材費用・再梱包資材費用・トラック費用(卸売市場へ搬入)・台湾側検査官費用(現地確認経費)                         他

    ・植物防疫検査費用・施設使用料・保管費用・通関費用・航空機搭載関連費用                        他

    (1)輸出用に供される桃の市場での取引価格

    山梨県産の桃の場合、市場出荷されたものが仲卸業者経由で輸出貿易会社の手に渡って

    輸出されており、輸出貿易会社が仲卸業者より買い取る輸出用桃の価格は国内市場出荷価

    格の高値を基準として決定されている。

    ・ハウスもの:市場出荷価格2,250円/kg(2,250円/ケース)

    ・露地もの :市場出荷価格 550円/kg(2,750円/ケース)(*3)

    *3)価格は、品種・等階級の単純な平均値(相加平均)に基づいた参考価格であり、個別の価格ではない。

    なお、出荷されている桃の容量は、ハウスものが1kg/ケース、露地ものが5kg/ケースである。

    産地側で輸出用のパッケージまでを施した場合の輸出用の桃の販売価格(輸出貿易会社

    の買取価格)は、市場出荷の高値にその分のコスト(再梱包資材費や選果費:後述)を加

    5-12

  • えた価格となる。

    なお、輸出価格については、輸出貿易会社へのヒアリングを行うことができなかったため、

    FOB価格か否かを含め詳細は不明である。

    (2)卸売市場までの主なコスト

    ①梱包費・選果費関連

    産地側で輸出用のパッケージまでを施した場合のコストは、たとえば露地もの(5

    kg/ケース)の場合、国内市場向けに梱包したもの(資材費+選果費+他=400円

    /ケース/5kg)を再度輸出用に梱包し直すため、ケース当たり約200~500円

    前後更に高くなる。

    ②産地登録料・検査費関連

    台湾への輸出に当たっては、産地登録料と台湾側検査官の招聘経費(往復飛行機代、

    滞在費、人件費等)が産地負担となっており、各都道府県の支払金額を登録産地数で

    除した金額が、全国果実輸出振興対策協議会(以下「全輸協」という。)環境整備部会

    から各経済連に請求される。(*4)

    *4)山梨県の場合は山梨県農畜産物販売強化対策協議会宛に請求される。

    19年度の例では、台湾側検査官を1名、6月24日~7月4日(11日間)にわ

    たり招聘し、山梨県・長野県・和歌山県の、もも・すももの登録選果梱包施設(65

    施設)を対象とした現地確認が行われた。

    これに要した経費の総額は584,257円であった。その内276,000円は

    国から支出されたため、3県(65施設)の負担金は308,257円となり、山梨

    県は65施設の内18施設分の経費として85,356円を負担した。加えて、全輸

    協における「招聘に係る事務費」として、もも・すももの65施設、並びに、りんご・

    なしの185施設、合計250施設に対する19年度の検査に対し、330,000

    円が発生したため、山梨県内の18施設分として23,760円を負担した。したが

    って、19年度の山梨県内における、もも・すももの産地登録料および現地確認経費

    関連の負担額合計は109,116円であった。

    ③輸送費関連

    単協から卸売市場までの輸送費は、車輌建てとケース建ての両方があり、荷が多い

    時は車輌建て、荷が少ない時はケース建てというように時期によって使い分けており、

    おおむね東京への輸送で20円/kg、愛知向けで22~24円/kg、大阪向けで28

    円/kg である。

    5-13

  • 5.輸出の目的、輸出によるメリット

    第一に、山梨県としては、台湾向け桃の輸出を促進することで販路の多角化を実現し、

    農家の所得安定に貢献するという狙いがある。また、農家が輸出向けの桃を栽培・出荷し

    ていることを意識することで、生産意欲の向上に繋がることが期待される。

    第二に、一般的に輸出用に供される桃の栽培に関しては、輸出に必要な、台湾側検査官

    による事前の生産園地の現地確認がある以外は、国内向けと同様であり、特別な負荷は無

    いという点が掲げられる。

    第三に、輸出を行うことによる価格・数量面での国内市場調整機能が期待できる。18

    年の例では、山梨県内総出荷量が49,000tである中(図表-7参照)、台湾向け輸出

    は144tであるため、全体としてあまり効果がないように思われるが、ハウス栽培もの

    については収穫時期が5月~6月であり、市場にはまだ桃が多く出回っていない比較的早

    い時期の輸出であることから、当該時期については若干の市場価格調整機能が期待できる。

    18年度は、ハウス栽培の桃の輸出が、特に13~15玉の大玉の桃が輸出に回されたこ

    とで、その時期の国内相場を相対的に押し上げる結果となった。

    (図表-7: 桃の結果樹面積、収穫量及び出荷量 【全国、平成18年度】)

    区 分 結果樹面積 収穫量 シェア 出荷量ha t % t

    全  国 10,300 146,300 100 133,900

    うち  山梨 3,280 51,600 35 49,000

    福島 1,530 29,800 20 27,600

    長野 1,150 18,100 12 16,500

    和歌山 780 11,000 8 10,100

    山形 553 8,830 6 8,010

    岡山 680 6,860 5 6,030

    5-14

  • 6.課題と対策に向けた方向性 これまでの調査内容を踏まえ、輸出促進に向けた四つの課題と、その対策に向けた方向性

    を整理した。

    (1)JA自らの輸出による物流コストの削減(国内輸送費の低減)

    生産の主体者(JA)が直接輸入業者と取引することは、物流コスト削減の観点から言

    えば有効な手段として考えられるが、現状では、代金回収等のリスクが大きいことや、貿

    易業務に精通した人材が不足していることもあり、国内卸売市場への出荷・売買による間

    接的な輸出という方法を取っている。また、JAが直接、輸出貿易会社と取引する手段も

    あるが、それにも価格・数量・納期等の折衝のための新たな人材と時間を必要とする。

    これらの解決策の一つとしては、それら複雑な貿易業務を代行することができる、日園

    連等の組織を商流に据えることが考えられる。

    その場合、現在のように、東京・愛知・大阪向けと、複数の輸出貿易会社ごとに指定さ

    れている卸売市場への運送にも縛られることなく、最も物流コストの低い輸送ルートを自

    ら選ぶことが可能となる。

    一例として、露地ものの桃1回当たりの平均輸出量である、240ケース(1,200

    kg)を、現在の物流ルートを経て台湾に航空輸出される場合のコストの試算を、図表-

    9に整理した。なお、産地と輸送先卸売業者との位置関係については、図表-8に整理し

    た。

    5-15

  • (図表-8: 産地と輸送先卸売業者との位置関係)

    山梨市山梨市

    丸一青果丸一青果

    大阪中央青果大阪中央青果

    大果大阪青果大果大阪青果

    笛吹市笛吹市

    名果名果

    東京青果東京青果

    東京豊島青果東京豊島青果

    東京多摩青果東京多摩青果

    卸売市場への出荷卸売市場への出荷

    445km

    265km

    132km

    (図表-9:  露地もの240ケース【1,200kg】を出荷した場合の輸送コスト比較)

    卸売市場先国内輸送費

    (山梨県から各卸売市場まで)(※1)(※2)航空運賃

    (各空港から台北まで)(※3)合計金額

    東京方面 1,200kg×20円/kg=24,000円 1,200kg×700円/kg=840,000円 864,000円

    愛知方面 1,200kg×23円/kg=27,600円 1,200kg×660円/kg=792,000円 819,600円

    大阪方面 1,200kg×28円/kg=33,600円 1,200kg×620円/kg=744,000円 777,600円

    (※1) 国内輸送費は前項4.(2)③輸送関連費で示したキロ当たりのコストを適用した。

    (※2) 愛知向け国内輸送料金は22円~24円/kgであり、その中間値である23円/kgを適用した。

    (※3) 台湾(台北)向けの航空運賃については2008年2月の日本発OFCカーゴタリフ(一般貨物賃率)を適用した。 このシミュレーションによると、同じ1,200kgの桃を輸出する国内輸送料金は、東

    京方面が最も安く、大阪方面が最も高くなる。一方、航空運賃の一般貨物賃率の比較にお

    いては関西新国際空港(以下「関空」という。)発が最も安く成田発が最も高い。航空運賃

    について更なる調査を行った結果、実勢の適用運賃は図表-9の一般貨物賃率から、おお

    むね20~60%程度の割引率をもって運用されており、実際には成田・名古屋・関空の

    料金はいずれもほぼ横並びの状況とのことである。なお、適用される航空運賃はその時の

    出荷物量と使用航空会社によっても左右されるため、同一空港から出荷した貨物であって

    も、物量と使用航空会社の違いにより料金は同一ではないこともあり、関空発の航空運賃

    については、わずかながら安いのではないかという声が一部あるのみであった。また、航

    空運賃と共に適用される燃油サーチャージ(*5)については、使用航空会社によって異な

    り、20年2月末の時点で63~87円/kg が適用されている。これらの様々な不確定要

    5-16

  • 素を勘案すると、どの空港を発地として選択するかは、実際の輸出に合わせて個別に判断

    していかざるを得ないと考える。 *5)燃油サーチャージ(ねんゆサーチャージ、Fuel Surcharge,)とは、航空路や海路で、運賃とは別建てに徴収され

    る料金のこと。航空機や船舶の燃料となる石油価格の高騰により、企業努力では運賃の範囲内でまかないきれな

    い際に、各航空会社や海運会社が設定している。

    したがって、現時点では国内輸送費の安いルートで輸出するという判断が最も妥当であり、

    その観点からは東京方面ルートの輸出が、国内輸送費の面で大阪方面よりも1回当たり9,

    600円(国内輸送費で見た場合28.6%削減)の物流コスト削減になる。 このように、JA自らの輸出が実現した場合、現在のように、東京・愛知・大阪向けと、

    複数の輸出貿易会社ごとに指定されている卸売市場への運送にも縛られることなく、最も

    物流コストの低い輸送ルートを自ら選ぶことが可能となる。なお、当然のことながら、定

    期的に各空港発の実勢航空運賃を含めたコスト比較を行い、その時期の最適物流ルートを

    選択していくことがトータル物流コストの削減につながることに留意する必要がある。

    (2)JA自らの輸出による物流コストの削減(航空輸出関連コストの低減)

    輸出促進のための各種施策が実った暁には、桃の輸出量も現在の物量を大きく超えて、

    大量輸出の時代が到来するであろう。将来、桃の輸出が増大した場合に考えられるコスト

    削減メリットを以下のとおり整理した。

    前(1)で検討したように、日園連等の輸出貿易代行業者を商流に加えて、JA自ら輸

    出をコントロールすることができれば、国内最適輸送ルートの選択によるコスト削減が可

    能となるが、それだけにとどまらず、更なるコスト削減のメリットを享受できる可能性が

    ある。それは現在、輸出貿易業者ごとに各地の空港から輸出されている貨物を、すべて成

    田空港一箇所にまとめて出荷した場合のコスト削減の可能性である。

    例として、露地ものの桃240ケース(1,200kg)を一単位として、異なる貿易

    業者により1~4件出荷された場合と、それらが 1 件としてまとめられ、日園連を輸出者

    として、台湾向け同一輸入者に出荷された場合の航空運賃関連コストを図表-10にて比

    較した。なお、コスト比較の範囲を「桃が成田空港保税蔵置場に搬入され、輸出通関され

    た後、航空輸送を経て台北空港に着くまでのコスト」とした。(国内輸送費は含まない。)

    (図表-10: 件数・重量別、成田空港発航空輸出関連コスト比較表)   (単位:円)1,200kg 2,400kg 3,600kg 4,800kg

    1件の場合 716,350 1,376,350 2,036,350 2,696,3502件の場合 - 1,432,700 - -3件の場合 - - 2,149,050 -4件の場合 - - - 2,864,500

    コスト削減効果 0 -56,350 -112,700 -168,150注) 計算の便宜上、成田-台北の航空運賃については、図表-9の一般貨物賃率を使用せず、実勢想定運賃として

        400円/kgの運賃レートを適用した。 また、燃油サーチャージ゙を80円/kgとした。

        なお、図表-9においては「国内輸送費」+「航空運賃(一般貨物賃率)」でコスト比較の検証を行ったが、図表-10に

        おいては「航空運賃(実勢想定運賃)」+「燃油サーチャージ」+「その他輸出関連諸チャージ」で検証を行った。

    5-17

  • 航空輸出に関連するコスト項目には、大きく分けて 1kg当たりに掛かるものと、1件(あ

    るいは1枚)当たりに掛かるものがある。すなわち、複数の件数に分かれて輸出されてい

    るものを一つにまとめた場合、1kgを課金単位としているコストの部分は変わらないが、

    件数や各種書類の作成枚数を課金単位としているものは、重複している項目が多く、まと

    めた分だけコストが下がることになる。図表-10においては、4,800kgの桃を 1

    件として輸出した場合と、4件(1 件当たり1,200kg)に分けて輸出した場合では、

    1件としてまとめて輸出した場合の方が168,150円安くなる(5.9%削減)という

    結果となった。

    なお、コストの試算に当たって、物流業者X社の標準輸出料金および項目・単位を参考

    とした(図表-11参照)。コスト項目とそれぞれの課金単位は、一般的には物流業者によ

    って若干の違いはあるが、ほぼ同様の課金項目を適用しているとみてよい。

    (図表-11: 航空輸出関連コスト項目と課金単位)コスト項目 備考 課金単位

    AWB 作成料 航空運送状 /件

    温度記録計 作業料込み 代金+作業料 /個

    海上保険 保険料率 /インボイス価格

    検疫申請・取得作業にかかわる作業費 作業費 実費

    検疫申請書作成料 申請書 /件

    セキュリティチャージ1 SMS /件

    セキュリティチャージ2 SC /件

    ターミナル料1 基本料金 /件

    ターミナル料2 キロ単位 /kg

    燃油サーチャージ キロ単位 /kg

    ブルーアイス補充 10kg 10キロ単位 /10kg

    航空運賃 キロ単位 /kg

    梱包料金 カートン単位 /carton

    取扱料1 取扱件数単位 /件

    取扱料2 税表番号単位 /HS CODE

    書類作成 インボイス /枚

    書類作成 パッキングリスト/枚

    通関費用 輸出申告書 /枚

    保税転送料1 基本料金 /件

    保税転送料2 キロ単位 /kg

    なお、この項で考察したコスト削減が実現される前提として、輸出者を単一にするだけ

    でなく、台湾で受け入れをする輸入者も単一でなければ、複数の輸出貨物を一つの出荷と

    してまとめることはできない。なぜなら、輸出通関申告の単位、並びに航空運送状発行の

    単位は「1輸出者-1輸入者」であり、複数の輸入者宛の貨物をまとめて一件として輸出

    申告すること、あるいは複数の輸入者を航空運送状に記載することができないためである。

    したがって、本項のコスト削減を実現させる上では、まず商流を現在の複数輸出貿易会社

    方式から、単一の輸出者(日園連等)に変更すると同時に、台湾側で、たとえば複数の輸

    入者の代表(取りまとめ役)としての単一の輸入者を擁立するといった環境整備が必要と

    5-18

  • なる。

    (3)保冷輸送の利用による鮮度維持期間の向上(山梨県独自のブランド・保冷基準)

    低温での管理により、桃の荷傷みを防ぐ、あるいは軽減することが可能であるが、現在

    は、発注元である輸出貿易会社からの要望が特に無いため、そのような保冷輸送は実施し

    ていない。

    一方、「青果物の低温輸送の推奨温度-国際冷凍協会1974年勧告」(野菜の鮮度保持

    マニュアル:発行元/流通システム研究センター)によると、桃の輸送の場合、1~2日

    の輸送では0~7℃、2~3日の輸送では0~3℃に維持されることを推奨している。こ

    の温度帯を維持することで桃の代謝性が抑制され、品質保持期間が延びることで高品質な

    桃を卸売市場に輸送できることになる。さらに温度と鮮度維持期間の関係をみると、慣行

    収穫果実で5℃では8日間、10℃では6日間、20℃では2~3日の鮮度維持が可能と

    されている。

    山梨県産の輸出用桃の品質(ブランド)の向上という観点からこれを捉え、単協から卸

    売市場間の保冷輸送(たとえば5℃)を実現することができれば、鮮度維持期間が延長さ

    れ、品質面における市場価値・輸出競争力の増大に寄与することが期待される。(*6)

    *6)反面、保冷輸送の導入によるコスト増で、販売価格が割高になることは否めない。

    ちなみに、青果物のブランドとして、福岡県産の果実・野菜に適用されている「まる福

    マーク」や、みかんにおける各都道府県共通の「サンブランド」という輸出ブランドを設

    定し一定の品質基準を設けることによって、輸出拡大を実現している事例もある。

    また、国内輸送のみならず国際輸送期間中の温度帯についても常に5℃に保つことがで

    きれば(たとえば海上冷蔵コンテナを利用すれば)、現在、航空輸送のみに頼っているもの

    を海上輸送に変更しても、前述のとおり8日間の鮮度維持期間があるため、鮮度を落とす

    ことなくコスト低減を実現することも視野に入れることができる。その点を以下のとおり

    整理した。

    参考として、物流業者Y社の見積もりによる、東京港発台湾向け40ft 冷蔵コンテナの

    海上輸送コストを図表-12に整理した。

    (図表-12: 40ft冷蔵コンテナ海上輸出関連コスト表 【東京港→台湾】)

    金額 費用項目名

    海上運賃関連諸料金合計 209,567 円 運賃・YAS・FAF・ECHC・B/L Fee

    コンテナへ積み込む際の諸料金 75,000 円 コンテナバンニング(※1)・ショアリング(※2)

    輸出通関関連 5,900 円 輸出通関料

    その他諸料金 30,000 円 書類作成料・ドレージ料金 (※3)

    合計金額 320,467 円

    注) USドルの換算レートは、三菱東京UFJ銀行2月18日付けのTTS(銀行が顧客に対して円を外貨に

        交換する時に用いられる為替レート)を適用した。

    ※1)「バンニング」とは、海上コンテナへ積み込むことを指す。

    ※2)「 ショアリング」とは、木材や角材などでコンテナの中の貨物を固定することを指す。

    ※3)「 ドレージ」とは海上コンテナを陸上輸送(横持ち)することである。

    5-19

  • 40ft冷蔵コンテナには最大30トンの桃を積み込むことが可能で、その輸送コスト

    は約32万円となる。一方、航空貨物として輸送した場合、図表-10に準じたコスト計

    算の結果480kgでほぼ32万円になる。(*7) 同じ32万円をかけても、海上輸送で

    は30トン相当の桃を輸送できるのに対し、航空輸送ではわずか480kgしか輸送でき

    ない。この試算から明らかなように、冷蔵コンテナ海上輸送による潜在的コスト削減のメ

    リットは大きい。

    *7)480kg の貨物で、「航空運賃(実勢想定運賃)」+「燃油サーチャージ」+「その他輸出関連諸チャージ」

    のコストはそれぞれ 192,000 円+38,400 円+89,950 円であり、合計は 320,350 円となる。

    一方、東京発台湾(基隆)向けの運行スケジュールを見ると、出港から入港までおよそ

    5~7日掛かる。現地での積み下ろし・輸入通関・搬出などの期間でさらに2日は少なく

    とも掛かる。この期間と、輸送中5℃に保った場合に延長される8日間の鮮度維持期間と

    を比較した場合、やはり現状では海上輸送による鮮度劣化のリスクは拭い去れない。鮮度

    劣化を起こすことなく、しかも海上冷蔵コンテナで輸送できるようになるには、船足の速

    いサービス、または、保冷の技術のさらなる向上が必要となってくる。 なお、名古屋港発台湾向けのフェリーサービスの運行スケジュールによると3日間(土

    曜日出港、月曜日夜に入港)と比較的速いサービスも存在することから、様々な輸送ルー

    トのコストシミュレーションと輸送試験を行い、物流コスト削減と鮮度維持の双方を実現

    できる方策を、今後とも模索していくことが必要である。

    (4)輸出用再梱包作業工程の見直し(作業リードタイムの短縮と作業効率の向上)

    輸出用桃の再梱包作業については、作業のための時間や労力の観点から、下記の課題が

    存在している。

    ・ 現在の作業手順では、一旦、国内市場用に梱包した後で、輸出用に回す数量分を抽

    出し、再度開梱、各種検査作業を行った後、再梱包し出荷している。具体的には、

    台湾の輸入基準をクリアするために、国内市場用の選果工程に加えて、果こう部分

    の軸の除去、エアー吹き付けやハケによる処理を行った後、輸出貿易業者ごとに異

    なる梱包仕様による再梱包作業を行っている。その上、関西方面からの注文につい

    ては、輸出検疫やフライト時刻の制約上、午前中に出荷を済ませる必要があること

    から、1日当たりの出荷量が100~200箱に限られており、急な輸出用の出荷オ

    ーダーへの対応も難しい現状である。

    ・ 各単協における集出荷場の面積や人的資源が限られているため、選果・梱包レーン

    が輸出用の再梱包作業まで対応しておらず、すべての単協で輸出用の荷を出荷でき

    る訳ではない。

    5-20

  • ・ 産地側で輸出用のパッケージまでを施した場合のコストは、たとえば露地もの(5

    kg/ケース)の場合、国内市場向けに梱包したもの(資材費+選果費+他=400

    円/ケース/5kg)を再度輸出用に梱包し直すため、ケース当たり約200~50

    0円前後、国内市場向けより高い。

    ・ 国内向け用の選果に加えて輸出用の選果が再度同じ桃に対して行われるため、荷が

    痛む度合いが増加する。

    これらの課題を克服するための解決策を以下のとおり整理した。

    ・ 台湾輸への輸出用のために、わざわざ国内用に梱包したものを再梱包するという煩

    雑な手順を踏むのではなく、輸出用として選果から梱包までが可能な物流工程の見

    直しを検討することが必要ではないかと考える。山形から台湾に輸出されるリンゴ

    の場合、輸出物量が258トン(18年度実績)と多いこともあるが、作業の効率

    化のために国内用と輸出用の選果作業を1日単位で振り分けている例もある。

    ・ モモシンクイガの混入チェックの工程において、現在は補助作業員がすべて手作業

    で果こう部分の軸の除去、触感・目視検査、エアーの吹き付け、ハケ処理を行っている

    が、新たな技術の導入を検討することも肝要である。エアー吹き付け作業については、

    既に山形のリンゴ輸出において最新の機材を導入し、自動化している単協も存在する。

    また、現在1ケース/5kg当たりに掛かっている輸出用手作業費・梱包材費(200

    ~500円/ケース)も作業の自動化や梱包資材種類の統一などにより低減することが

    可能になると思われる。

    このように、他県の事例を比較研究し、作業の自動化に向けた検証を継続する等によ

    り、現在 1日当たり100~200箱に限定されている出荷処理量のさらなる拡大を目

    指すことが、輸出を促進するためのインフラを整備する上で重要であると考える。

    5-21

  • 5-22

    7.まとめ

    これまで様々な観点から物流コストの削減、鮮度維持期間の延長方策、リードタイムの

    削減、山梨ブランド創出による販売の拡大などを提案したが、その中でも、物流コスト削

    減において課題となっているのが、モモシンクイガ流入に対する台湾側の検疫である。

    台湾では、害虫のモモシンクイガの流入を防ぐため、18年2月、輸入果実の検疫を強

    化した。現在は、前述のとおり、台湾向け桃の輸出においては、植物防疫官の輸出検疫の

    他に、事前の産地登録と台湾側検査官による現地確認(生産園地、選果方法の確認など)

    が必要である。

    19年度には、チョウの幼虫などの混入が見つかり輸出が差し止められた山梨県産の桃

    は、7月に中部国際空港(愛知)でJAフルーツ山梨の出荷分を含め、合計約10トンあ

    った。山梨県によると、いずれも植物防疫官による抜き取り検査(桃100個)により、

    一個から混入が発見されたとのことである。(*8)

    *8)山梨日日新聞社 2007年8月25日掲載

    台湾植物検疫当局による輸入検査でモモシンクイガが見つかった場合、1回目で県内全

    域、2回目で日本全国の輸出が停止されるため、問題は山梨県のみに止まらず、他県産の

    桃、さらには、桃のみならず、日本産りんごの輸出停止にも繋がってしまう可能性がある。

    このように厳しい検査基準が存在する状況の下、台湾向け桃の輸出を継続するためには、

    選果時に細心の注意を払い、害虫の付着・侵入を細かくチェックし、段ボールを密封して

    出荷する必要があることから、19年度、山梨県は、JAに対し、選果作業の向上を目指

    し、エアコンプレッサーや照明器具等の購入費や選果要員雇用に対する補助を初めて実施

    した。

    このように、海外(特に台湾)の検疫基準の対応については、農家や単協という単位で

    対応を考えるだけでなく、既に国や県等が実施している輸出促進のための各種支援策を活

    用するとともに、作業工程の効率化のための検証を継続して実施していく必要があると考

    える。

    以上