第5節 空き店舗の現状と対策 - Saitama Prefecture平成28年度商店街経営実態調査...

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平成 28 年度商店街経営実態調査 53 第5節 空き店舗の現状と対策 1. 空き店舗とは何か 商店街の現状を象徴する現象として、空き店舗問題があります。「シャッター通り」という言葉が 聞かれるようになって久しいですが、空き店舗の存在は、商店街衰退の結果としての「現象」であ ると同時に、それ自体が商店街にとって悪い影響を及ぼしている「問題」でもあります。その問題 には、商店街の一連の街区形成が難しくなること(回遊性の低下)、地域のにぎわいが分散し、商店 街らしさや一体感が見えにくくなること、顧客や来街者に「寂れた商店街」というイメージを与え てしまうこと等があります。 商店街は地域の買い物拠点であるだけでなく、賑わいやまちづくりにおいても大切な位置を占め ており、空き店舗を減らす対策を取っていく必要があります。 ここで、空き店舗とは何かを考えておきます。空き店舗とは、非商店や本格的な駐車場、空き地 以外で内外装を施す程度で店舗として利用でき、貸主が貸す意思があるものの貸していない店舗を 指しています。現在、商店街、商店会と称していても、商店のみで街並みや街区が形成された商店 街は減少しています。近年、もともと商店が並び商店街らしい街並みがあった中にも、転用されて、 マンションや一般住宅、駐車場が増えてきています。商店街の各店舗は所有主の私的財産であり、 商店に使わなければならないわけではないからです。商店街は自然発生的につくられたものであり、 何らかの計画性があってその店舗ができたわけではありません。見た目は空き店舗のように見えて も、こういった理由で空き店舗とは見なされない建物も多数存在しています。 こういった状況を踏まえて、空き店舗対策を考えていく必要があります。 2. 商店街と空き店舗の状況 (1) 商店街の店舗数の変遷 まず、商店街の店舗数がどのように変化しているのかを確認してみましょう。 図表 2-5-1 は、店舗数の変遷です。以前に比べると、店舗数が大きく減少した商店街は減ってき ました。むしろ増加に転じた商店街も増えており、商店数は下げ止まったといえるでしょう。

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平成 28 年度商店街経営実態調査

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第5節 空き店舗の現状と対策

1. 空き店舗とは何か

商店街の現状を象徴する現象として、空き店舗問題があります。「シャッター通り」という言葉が

聞かれるようになって久しいですが、空き店舗の存在は、商店街衰退の結果としての「現象」であ

ると同時に、それ自体が商店街にとって悪い影響を及ぼしている「問題」でもあります。その問題

には、商店街の一連の街区形成が難しくなること(回遊性の低下)、地域のにぎわいが分散し、商店

街らしさや一体感が見えにくくなること、顧客や来街者に「寂れた商店街」というイメージを与え

てしまうこと等があります。

商店街は地域の買い物拠点であるだけでなく、賑わいやまちづくりにおいても大切な位置を占め

ており、空き店舗を減らす対策を取っていく必要があります。

ここで、空き店舗とは何かを考えておきます。空き店舗とは、非商店や本格的な駐車場、空き地

以外で内外装を施す程度で店舗として利用でき、貸主が貸す意思があるものの貸していない店舗を

指しています。現在、商店街、商店会と称していても、商店のみで街並みや街区が形成された商店

街は減少しています。近年、もともと商店が並び商店街らしい街並みがあった中にも、転用されて、

マンションや一般住宅、駐車場が増えてきています。商店街の各店舗は所有主の私的財産であり、

商店に使わなければならないわけではないからです。商店街は自然発生的につくられたものであり、

何らかの計画性があってその店舗ができたわけではありません。見た目は空き店舗のように見えて

も、こういった理由で空き店舗とは見なされない建物も多数存在しています。

こういった状況を踏まえて、空き店舗対策を考えていく必要があります。

2. 商店街と空き店舗の状況

(1) 商店街の店舗数の変遷

まず、商店街の店舗数がどのように変化しているのかを確認してみましょう。

図表 2-5-1は、店舗数の変遷です。以前に比べると、店舗数が大きく減少した商店街は減ってき

ました。むしろ増加に転じた商店街も増えており、商店数は下げ止まったといえるでしょう。

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図表 2-5-1 商店街の店舗数増減 (単位:%)

図表 2-5-2と図表 2-5-3は、増減があった店舗はどのような業種・業態であったかを表わしたも

のです。商店街にはそれぞれ、多くの業種・業態も増減がありますが、いわゆる最寄品と呼ばれる、

日常の食品販売店や身の回りの雑貨店の減少が顕著であり、商店街において普段使いの一般店舗が

減少し、コンビニエンスストア等に移り変わっていることがわかります。

図表 2-5-2 商店街の店舗数が増加した業種 (単位:%)

3.7

0.4

0.4

4.2

0.7

0.8

5.8

2.4

2.0

37.0

26.1

30.7

6.8

20.6

17.2

12.9

18.8

19.8

11.3

21.9

24.3

18.3

9.1

4.8

H28

H23

H18

15%以上の

増加

10%以上の

増加

5%以上の

増加

ほとんど

変わらない

5%以上の

減少

10%以上の

減少

15%以上の

減少

無回答

n=H18:505,H23:452,H28:573

11.5

3.7

0.3

0.5

0.9

0.9

0.9

1.0

1.0

1.4

1.6

1.7

2.6

3.5

4.9

5.1

5.4

7.0

7.7

16.9

増加したものはない

その他

最寄り品総合店

家庭用品・日用品店

買回り品総合店

ディスカウント店

金融機関・公共施設

衣料品・身の回り店

文化品・耐久消費財店

遊技場

生鮮食品・日配食品店

加工食品・菓子店

育児支援施設

パン・弁当・惣菜・生菓子店等製造小売

高齢者等福祉施設

ドラッグストア

コンビニエンスストア

医療施設

サービス店

飲食店

n=573

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図表 2-5-3 商店街の店舗数が減少した業種 (単位:%)

また、過去 2回の調査を比較すると、図表 2-5-1で見られるように店舗数の変動が小さい商店街

が増えています。増加した商店が少ない一方で、減少した商店が少ないともいえるでしょう。増え

た店舗も減った店舗も無いという商店街が 1割程度あります。そういった商店街もあるものの、店

舗数は、単純に減少の一途をたどっているのではなく、新陳代謝を繰り返しながら、静かに店舗が

減少していると思われます。

(2) 空き店舗の状況と原因

図表 2-5-4商店街における空き店舗がどの程度あるかを表しています。アンケート調査における

空き店舗の平均店舗数は、3.7店舗になっています。また、全体の空き店舗率は 8.7%となっていま

す。借り手がいない店舗がこれだけあることになります。

また、最も多いのは 0店であり、増加傾向にあります。このことは 2つの意味でとらえる必要が

あります。実際に店舗が埋まっている商店街が増えている場合、貸さない意思を明確にしたり店舗

以外の形にしてしまった場合です。

回答されていない商店街も増加していますが、訪問調査では所有者が代わって連絡がとれていな

い、世代が代わって貸す意思がわからないなどの理由が明らかになっています。

図表 2-5-5では、空き店舗となった原因を明らかにしています。以前から、経営不振のための廃

業と後継者がいないための廃業が多かったのですが、過去 2回の調査に比べても増加傾向です。下

位にあるように、移転する元気がある商店はよいのですが、現実には仕方なく廃業した結果、空き

店舗になっている可能性が高い状況にあります。また、大型店の進出や撤退の影響は廃業の理由と

してはあまり大きくないことがわかります。

7.7

2.6

0.5

0.9

1.0

1.6

3.0

3.0

3.3

3.8

3.8

6.8

7.5

8.4

8.7

9.8

10.1

16.8

18.3

21.5

減少したものはない

その他

高齢者等福祉施設

金融機関・公共施設

育児支援施設

ディスカウント店

遊技場

医療施設

コンビニエンスストア

最寄り品総合店

ドラッグストア

家庭用品・日用品店

文化品・耐久消費財店

買回り品総合店

加工食品・菓子店

サービス店

パン・弁当・惣菜・生菓子店等製造小売

衣料品・身の回り店

飲食店

生鮮食品・日配食品店

n=573

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図表 2-5-4 空き店舗数 (単位:%)

図表 2-5-5 空き店舗となった原因 (単位:%)

図表 2-5-6は、空き店舗になってから現在に至るまで借り手がつかない理由を示しています。そ

こでわかることは、最も高い割合を示している「商店街に魅力がない」ということだけでなく、様々

な複合的な理由によって空き店舗のままであるという様子です。主な理由として、地域の商圏人口

の減少や、大型店の出店や購買力の低下といった商店街ではいかんともしがたい環境変化がありま

す。また、各商店のオーナーにとっても貸す気がなく空き店舗になっている場合も多くなっていま

す。「賃料の折り合いがつかない」という原因も増加傾向にありますが、これは借り手のスモールビ

ジネス化の影響だけでなく、「貸さなくても差し支えない」という貸し手の意思があることも考えら

れます。

また本来、空き店舗の定義から考えると自発的に空き店舗にしている場合は空き店舗とは言えま

せんが、シャッターが閉まっていればお客様は空き店舗と感じてしまいます。こうした空き店舗の

20.8

19.9

16.6

8.6

9.5

9.9

9.8

12.2

10.3

8.4

8.8

10.9

4.9

4.6

5.7

6.5

8.8

9.1

5.1

10.4

11.7

7.2

7.3

9.9

28.7

18.5

15.9

H28

H23

H18

0店 1店 2店 3店 4店 5店 6~9店 10店舗以上 無回答

n=H18:505,H23:452,H28:573

55.9

53.5

10.8

10.1

5.6

4.5

1.0

0.3

6.6

後継者がいないため廃業

経営不振のため廃業

よりよい立地・店舗条件を求めて移転

経営不振のため移転

大型店の進出、撤退の影響を受けて廃業

他に安定した収入が得られるため廃業

経営拡大のため移転

大型店の進出、撤退の影響を受けて移転

その他

H18 H23 H28 n=H18:341,H23:279,H28:288

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定義には入らない外形的空き店舗が一定程度存在することが推察できます。このことは訪問調査で

も数多く聞かれました。

図表 2-5-6 空き店舗が続いている原因(複数回答) (単位:%)

では、商店街としてどのような対策をしているのでしょう。図表 2-5-7をみると、70%以上の商

店街が特に何もしていないことがわかります。訪問調査から、「過去にはさまざまなことをやったが

うまくいかなかった」、「それぞれの商店は私有地でありどうにもできない」、といった声も聞かれま

した。

図表 2-5-7 空き店舗への対策 (単位:%)

30.2

23.3

23.3

33.3

25.7

18.4

8.0

4.5

33.0

20.5

9.7

3.5

3.5

顧客の購買力が低下したため

近所に大型店が進出したため

商圏人口の減少

商店街に魅力がないため

家賃(売値)の折り合いがつかないため

店舗条件(広さ、設備、改装等)の問題のため

業種に制限をつけているため

空き店舗情報の提供、入手機会が少ないため

貸さなくても(売らなくても)差し支えないため

店舗が住宅との兼用であるため

土地・建物の権利関係の問題で貸しにくいため

将来使用する目的があるため

その他

貸したい(売り

たい)が借り手

(買い手)がい

ない

自発的に空き店

舗にしている

地域商業環境の

低迷

n=288

6.6

4.2

2.1

2.1

1.7

0.7

0.3

4.2

76.0

業種を問わず、出店者を募集、誘致

不足業種について、出店者を募集、誘致

チャレンジショップ・レンタルボックスとして利用

商店街が店舗として利用、運営している

コミュニティ施設として利用

共同店舗として利用

駐車場として利用

その他

特に何もしていない

n=288

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少数であるものの、出店者を募集、誘致を商店街が主体的に行っている場合もありました。話を

聞くと、地域の有力商店への出店声がけや不動産店への依頼といった形で募集していました。

また、商店街自身が空き店舗を店舗として活用した商店街では、計画的な誘致と誘致のルール作

りを行い、商店街の事務局が常に誘致可能性のある商業者、イベント実施者、外部諸団体を呼び込

むことで成功に至っています。

一方で、商店街自身が空き店舗を活用して何らかの商店を行う取組は、資金繰りや、担当者が曖

昧になるなど、店舗の運営を継続することが難しくなってしまうことが少なくありません。

図表 2-5-8を見ると、空き店舗を単に新規店舗として利用するだけでなく、ギャラリーや高齢者

支援施設、子育て支援施設、イベントや観光案内施設として使う例も増えてきました。

空き店舗を店舗という直接収益を高める場にできなくても、集客装置として活用し、商店街を回

遊するための支援施設と捉えることも必要かもしれません。

図表 2-5-8 空き店舗に今後どうなってもらいたいか(複数回答) (単位:%)

図表 2-5-7のように、現状では空き店舗対策をしていない商店街が 7割以上を占める一方で、の

図表 2-5-9のように、今後対策をするつもりがない商店街は 47%程度にとどまっています。3割近

い商店街が、空き店舗対策のために何ができるのか悩んでおり、どうにかしたいと考えていると思

われます。

さらに、空き店舗解消のための方策として最も多い回答が「空き店舗情報を発信し、PRする」と

なっていますが、空き店舗が続いている原因(図表 2-5-6)として「空き店舗情報の提供、入手機会

が少ないため」とする回答は下位に止まっており、対策の効果は限定的と考えられます。

71.9

22.6

18.1

14.9

7.6

4.9

2.4

2.8

新規店舗

ギャラリー、休憩施設などの憩いの場

創業支援施設(チャレンジショップなど)

高齢者支援施設、子育て支援施設

イベント会場

駐車場・駐輪場

観光案内施設

その他

n=288

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図表 2-5-9 空き店舗解消のために商店街ができる方策 (単位:%)

では、具体的にどんな策が考えられるのでしょうか。

3. 商店街が検討・実行する上でのポイント

(1) 空き店舗の発生を減らす

そもそも、空き店舗が発生するのは「後継者がいない」「経営不振」といったことが原因として多

く挙げられており、これらを解消することにより空き店舗の発生を抑える効果が見込まれます。実

際、後継者のいない店舗の少ない商店街では、空き店舗率は低いことがわかります。

図表 2-5-10 後継者のいない店舗の割合と空き店舗率の関係 (単位:%)

19.8

13.5

10.1

4.5

3.5

2.4

47.2

空き店舗情報を発信し、PRする

家主に対して賃貸の要請を行う

商店街組織で入居店舗を誘致する

商店街組織で賃料の調整を図る

民間企業等が空き店舗も含め、

商店街全体を管理・運営する

商店街組織で店舗を改装する

商店街組織で空き店舗解消に向けた

取組をするつもりはない

n=288

66.7

35.0

36.0

29.5

25.0

0.0

17.5

14.0

13.1

14.4

6.7

20.0

26.0

26.2

21.2

0.0

10.0

6.0

11.5

10.6

0.0

2.5

6.0

4.9

6.7

6.7

0.0

0.0

0.0

3.8

19.9

15.0

12.0

14.8

18.3

後継者いない割合10%未満(n=15)

10~30%未満(n=40)

30~50%未満(n=50)

50%~70%未満(n=61)

70%以上(n=104)

空き店舗率5%未満 5~10%未満 10~20%未満 20~30%未満 30~40%未満 40%以上 無回答

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実際に「後継者がいない」「経営不振」といった問題を解決するために何をすればよいのかという

点については、第 4節「後継者をどのように作っていくか」第 7節「商店街の活動をどのように集

客に導くか」の節で記載します。

(2) 空き店舗への出店を促進する

空き店舗を解消するための一つの方法として、空き店舗への出店を促進する取組を行うことが考

えられます。空き店舗への出店がない(空き店舗の状態が続いている)原因としては、「商店街に魅

力がないため」「貸さなくても(売らなくても)差し支えないため」が上位となっており、「(商店主

にとって)商店街の魅力を上げるための取組」「家主に対して賃貸の要請を行う」といった取組が有

効と考えられます。

「(商店主にとって)商店街の魅力を上げるための取組」としては、例えば各個店の顧客を増やす

ことを主目的とする商店街活動(共同売出し時の店舗紹介やイベント時の店舗紹介など)が挙げら

れます。アンケート結果を見ると、各個店の顧客を増やすことを主目的とする商店街活動を行って

いる商店街の方が空き店舗率の低い傾向があることがわかります。

また、家主に貸す意思がなく、外形的空き店舗になっている場合は、賃貸を要請したとしても効

果が薄いことが考えられます。

そのような場合は、サブリースにより一括で借り上げたり、リノベーションを施すなどにより商

店としての魅力を高めた上で借主に貸し出すといった対策もあります。

図表 2-5-11 各個店の顧客を増やすことを主目的とする商店街活動の有無と空き店舗率の関係 (単位:%)

(3) ギャラリーや休憩施設、チャレンジショップなどとして活用する

「商店街に魅力がない」ことが原因で借り手がつかない場合、空き店舗をギャラリーや休憩施設

などとして活用し、商店街の集客力を高めることで商店街の魅力を高めることが考えられます。ま

た、チャレンジショップとしてこれから創業しようとする人に貸すことにより、新規創業を促進し

魅力ある店舗を増やすことにつながると考えられます。そのためには、ただ店舗を貸すだけではな

く、ソフト面も含めた包括的な創業支援策を同時に行うと効果的です。

これらの取組により、商店街としての魅力向上、ひいては廃業による空き店舗発生の抑制につな

がり、好循環が期待できます。

34.3

24.1

15.9

7.0

17.6

11.9

6.9

7.0

2.4

3.4

1.2

3.4

21.7

43.2

取組をおこなっている(n=245)

取組をおこなっていない(n=328)

5%未満 5~10%未満 10~20%未満 20~30%未満 30~40%未満 40%以上 無回答

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(4) 地域全体の課題として捉える

空き店舗の増加は、地域経済を縮小させ、働く場を無くし、エリアとしての価値を下げる結果と

なります。エリア価値が下がれば不動産の価値も下がり、住民の資産形成にも重大な影響を及ぼし

ます。

つまり、空き店舗は単に商店街の問題でなく、地域の将来の問題である、と捉えることが必要と

なります。商業者だけでなく、不動産オーナー、近隣住民、行政などその地域に関わりを持つ人が

集まって、自分たちのまちをどのようにしていきたいのか、というビジョンを作り、それに見合っ

た業種の起業者や活動団体を呼び込むのです。

近年、こうした新しい手法で空き店舗を解消する地域が出てきました。空き店舗は個人の財産で

あり、まちの財産でもあります。自らのまちを消滅させないため、地域全体で取り組んでいくこと

が必要です。