A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to...

17
Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017 29 Abstract The global financial crisis triggered by the bankruptcy of a major U.S. investment bank, Lehman Brothers, on September 15, 2008, forced thousands of companies large and small into a corner to reduce their costs and production and seek ways to keep their businesses going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs) in Japan implemented during the crisis. This study was mainly conducted through inter views. The findings indicate that the SMEs succeeded in going overseas entered countries which had fewer business competitors. In addition, they looked for new customers who were willing to buy in quantity for increasing the SMEsÊŒ sales. On the other hand, the SMEs that chose to remain in Japan switched their production strategy from selling cheap consumer goods to selling high-value added business products to increase their profits. Whether expanding business overseas or staying in Japan, the SMEs worked hard to find the best strategy so that they were able to sur vive the global financial crisis. 1. 問題の背景ず調査方法 2008幎9月15日月にリヌマン・ブラザヌズは連邊倒産法第11章の適甚を連邊裁刀所に申 請した。同瀟が発行しおいた瀟債や投信を保有しおいた䌁業ぞの圱響、取匕先ぞの連鎖など の恐れ、たたそれに察する議䌚政府の察応の遅れからアメリカ経枈ぞの䞍安が広がり、䞖界 的な金融危機ぞず連鎖したリヌマンショック。日本でもこれを境に䞖界的な経枈の冷え蟌 研究ノヌト 2017幎3月22日 受理 䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か A Study on Sur vival Strategies of Small and Medium Enterprises Should the SMEs expand their business overseas or remain in Japan? 䞉村 孝雄 Takao Mimura

Transcript of A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to...

Page 1: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

29

AbstractThe global financial crisis triggered by the bankruptcy of a major U.S. investment bank, Lehman Brothers, on September 15, 2008, forced thousands of companies large and small into a corner to reduce their costs and production and seek ways to keep their businesses going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs) in Japan implemented during the crisis. This study was mainly conducted through interviews.  The findings indicate that the SMEs succeeded in going overseas entered countries which had fewer business competitors. In addition, they looked for new customers who were willing to buy in quantity for increasing the SMEsʌ sales. On the other hand, the SMEs that chose to remain in Japan switched their production strategy from selling cheap consumer goods to selling high-value added business products to increase their profits. Whether expanding business overseas or staying in Japan, the SMEs worked hard to find the best strategy so that they were able to survive the global financial crisis.

1. 問題の背景ず調査方法2008幎9月15日月にリヌマン・ブラザヌズは連邊倒産法第11章の適甚を連邊裁刀所に申請した。同瀟が発行しおいた瀟債や投信を保有しおいた䌁業ぞの圱響、取匕先ぞの連鎖などの恐れ、たたそれに察する議䌚政府の察応の遅れからアメリカ経枈ぞの䞍安が広がり、䞖界的な金融危機ぞず連鎖したリヌマンショック。日本でもこれを境に䞖界的な経枈の冷え蟌

研究ノヌト

2017幎3月22日 受理

䞭小䌁業の生き残り戊略海倖進出か囜内残留か

A Study on Survival Strategies of Small and Medium Enterprises Should the SMEs expand their business overseas or remain in Japan?

䞉村 孝雄Takao Mimura

Page 2: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

30

みから消費の萜ち蟌み、金融䞍安で各皮通貚から急速なドル安が進み図衚参照、米囜垂堎ぞの䟝存が匷い茞出産業から倧きなダメヌゞが広がり、結果的に日本経枈の倧幅な景気埌退ぞも繋がっおいった。リヌマンショックずいう金融危機が円の䟡倀を匷くしたのは、日本経枈が奜調だったからではなく、逆にリヌマンショック埌の日本の生産氎準は急萜しおいる。アメリカ発の金融ショックでありながら先進囜䞭最倧のむンパクトを日本が受けおしたった䌊䞹〔2013〕。円高は2010幎になっおも続き、日本の倧手䌁業は劎働賃金の安い東南アゞア諞囜ぞ補造工

堎移転を加速させた補造コストの削枛ず同時に、海倖生産比率の拡倧や急激な生産調敎枛産を実斜した。しかし、日本経枈に远い打ちをかけるように2011幎3月11日に東日本倧震灜が発生し、日本囜内のサプラむチェヌンが倧混乱ずなり、特に倚くの半導䜓を䜿甚しおいる自動車や電気補品は生産も出来なくなっおしたった。囜内工堎で生産し、囜内の発泚元に玍品しおいた䞭小䌁業にずっおも、発泚元からの受泚数量の急激な枛少や曎なるコストダりンの芁求に察し、売䞊高の維持や利益確保に関し厳しい時代を迎えるこずになった䞭小䌁業庁〔2010〕。しかし、リヌマンショックから8幎が経過し、景気埌退時期を乗り越えお珟圚でも奜調な業瞟を維持する䞭小䌁業は存圚しおいる。䞭沢〔2014〕も䞭小䌁業研究の䞭で、䞭小䌁業でも倧䌁業でも継続し利益をあげおいる䌚瀟は「なすべきこず」が瀟員に共有化されおいる。たた逆に連続しお倧きな赀字をだしおいる䌁業は「コア」がなく、「䜕屋さん」なのか刀然ずしおいない。そしお「䜕をしたいのか」もわからず、克服すべき課題や向かっお行くべき方向が䞍明瞭であるず蚀及しおいる。奜調な䞭小䌁業がリヌマンショック埌にどのような具䜓的な斜策や経営戊略を執っお難局を乗り越えお来たのかを、盎接経営者に聞き取り調査を実斜し「䞭小䌁業における成功の秘蚣を芋出す」こずを目的ずする。

調査方法は「テクニカルショりペコハマ工業技術芋本垂」に出展ブヌスを構えおいた䞭小䌁業においお、特に䌚堎で「技術セミナヌを実斜した䌁業」および「海倖工堎で生産した商品を展瀺」しおいた䌁業を「成功しおいる䞭小䌁業であるず仮定」し、䌚堎にお説明員に䌁業抂芁や商品の特城コア技術を䌺った。その埌、䌁業のホヌムペヌゞにお「経営理念や業務内容の倉化」を確認し、盎接䌁業を蚪問し経営者の方から詳しい内容の聞き取り調査を実斜した。

Page 3: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

31

図衚 1 2000幎以降の為替の動向

2. 聎き取り調査今回、以䞋の䞭小䌁業6瀟の聎き取り調査を行った。

図衚 2 聎き取り調査察象䌁業

䌁業 業皮・業態 本瀟所圚地 埓業員数名 創業幎幎

A プラスチック塗装、金型蚭蚈 神奈川県川厎垂 15 1984

B 䞀般暹脂の二次加工党般 神奈川県川厎垂 20 1971

C メカトロニクス専門商瀟 神奈川県暪浜垂 34 1962

D 特殊ヒヌタヌ補造 神奈川県暪浜垂 12 1987

E プラスチックず粟密プレス郚品 長野県塩尻垂 79 1980

F 特殊プリンタヌ開発補造販売 長野県塩尻垂 24 1993

人員は2016幎12月珟圚

Page 4: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

32

聎き取り調査の実斜は、2016幎6月、8月であり、各瀟ずも玄1時間皋床実斜しおいる。尚、聎き取り調査の質問項目は以䞋のずおりである。①2008幎のリヌマンショック以降、受泚数量や売䞊金額に倉動があったか②発泚元からのビゞネス条件に倉化はあったのか③海倖進出を決断したのかあるいは、囜内のみでのビゞネスを継続したのか

④海倖進出工堎や販売拠点を決断した経緯は䜕か⑀海倖進出察象囜を決めた経緯は䜕か⑥海倖進出たでに費やした期間や費甚はどれくらいか⑊海倖進出をしおから珟圚たでの経営状況は改善したのか⑧今埌5幎の経営的戊略はどうするのか⑚海倖進出をしなかった理由は䜕か⑩リヌマンショック以降ず珟状ずを比范した堎合、䌚瀟の有り様に倉化はあるか

以䞊の質問項目に察する回答の芁玄は以䞋の通りであるが、経営者の匷い信念を感じさせられた回答は、「厚い蚘述」ずしお生の発蚀も蚘茉した。

【A瀟】プラスチック郚品ぞの塗装メヌカヌ家族経営の䌚瀟であり、珟䌚長父芪が立ち䞊げた䌁業である。川厎工堎建物面積200㎡

ず暪浜工堎建物面積700㎡においお発泚元からの䟝頌を受けお、プラスチックの金型蚭蚈補造やプラスチック郚品成型埌の塗装を請け負っおきた。発泚元は倧手䌁業のみならず、倧手䌁業の1次䞋請けからの仕事も受けおいた。金型蚭蚈ず補造は囜内で実斜しおいたが、発泚元の量産工堎は韓囜や䞭囜に存圚しおいる関係䞊、囜内で完成した金型を船䟿で送っおいた。このような事業圢態であったこずから、海倖ずの関係が党く無かった蚳ではなく、発泚元の海倖工堎での金型の修正加工なども手掛けおいた。しかし、リヌマンショックを契機に発泚元からの受泚が激枛し、売䞊金額がピヌク時の

40になっおしたった時に、先代瀟長珟䌚長は廃業しお「蕎麊屋」の経営に転換するこずを珟瀟長息子に打ち明けた。その時点で珟瀟長は、「蕎麊屋」に事業転換するリスクよりも珟有の金型蚭蚈やプラスチック塗装のノりハりを掻かしたいず考え、2010幎に経営暩を匕き継いだ。そしお、珟状のビゞネスの将来性を把握するために玍品先工堎䞭囜の倧連などに足を運び、情報収集に時間を費やした。その時に感じたこずが、A瀟のその埌の方向性を倧きく倉えるこずになった。A瀟の瀟長は次のように話しおくれた。

囜内の補造メヌカヌからプラスチック郚品の金型補造を受泚したした。圓瀟で金型を

Page 5: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

33

蚭蚈・補造し、発泚元の補造工堎がある䞭囜に金型を船で送り、金型蚭眮のために私が珟地工堎に行った時のこずです。そこで目にしたのは、圓瀟以倖の日本メヌカヌから来た金型や新芏郚品の日本䌁業の金型芋積曞が倚数あったのです。それらの物は日本の発泚元から圓瀟に察し「合い芋積もり」の䟝頌すら無かった案件でした。圓瀟でもそれらの仕事を受泚出来たかもしれないのに、自分が日本に居お発泚元の発泚先情報などを持っおいなかった事がショックでした。䞭囜珟地に居たら情報が入っおきおいたのかもしれたせんし、日本でネットワヌクのない䞭小䌁業は䞍利であるず痛感したした。海倖に拠点があれば情報も入りビゞネスも安定するず思いたしたが、私には海倖拠点を出すお金がありたせんでした。【海倖進出決断のポむント】①䞭囜補造珟堎では、日本郚品メヌカヌの各瀟芋積もり情報が倚数流倱しおいた。②日本に居おも䞭小䌁業にはネットワヌクが無く、発泚元の情報が入らない。③海倖に拠点があれば日本以䞊に発泚元の情報が入るず感じた。

その埌、瀟長は囜策ずしお工堎特区を蚭けお海倖䌁業を誘臎するベトナムにも出向き、仮に A瀟が工堎進出した際に「珟地で仕事があるのか」たた「日本䌁業の補品を珟地䌁業が買っおくれるのか」に぀いお調査した。その結果、ハノむ垂では軒䞊み投資金額が高くなるが、ホヌチミン垂では自瀟ず同業皮のロヌカル䌁業が倚いものの、技術力は䜎いこずから勝算はあるずいう感觊を埗た。曎に詳现な情報を埗るために、ホヌチミン垂に事務所を借りようずしたが家賃が高かったため、JETROホヌチミン事務所のむンキュベヌションオフィスを借りお賃借料3䞇円月、3カ月の玄束で䌚長に赎任しおもらい、調査を継続した。その結果、A瀟はホヌチミン垂の工堎特区にレンタル工堎建物面積500㎡を借りお、日

本工堎の䜙剰機械を運び蟌み2010幎床䞭に操業を開始した。そしお珟圚では4000㎡たで拡匵し、珟地䌁業からの発泚を受けながら ITコンシュヌマヌ機噚の郚品塗装を月産800䞇個生産し、珟地䌁業に玍品するたでになっおいる。リヌマンショック以前の利益にたでは戻っおいないが、売䞊金額は戻しおいる。工堎進出時を振り返っお、A瀟瀟長は次のようにも話しおくれた。

正盎蚀っお、安定した受泚芋蟌みがあっおベトナムに進出した蚳ではありたせん。圓時は円高だったので、海倖では䜕を芋おも安く感じたした。実際にむンフラ投資も楜だった。ただし、郚品加工メヌカヌが1瀟のみで海倖進出しおも仕事を受泚する事は難しく、完成品たで䞀貫生産できる䌚瀟同士が進出しなければ無理です。しかも、月産500個レベルなら、日本での生産ずコストは倉わらないので海倖生産の意味はない。曎に、海倖のビゞネスでは最高暩限者が、珟地に居おその堎でゞャッゞ出来ないず駄目です。

Page 6: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

34

【海倖進出決断のポむント】①円高により海倖むンフラ投資金額が安く、囜内に投資するよりメリットを感じた。② 完成品たで䞀貫生産できる郚品メヌカヌの仲間を日本で持っおおり、そのメヌカヌも海倖進出すればビゞネス成功のチャンスがあるず感じた。

③瀟長自身が海倖で指揮を取る芚悟があった。

瀟長は、幎の半分はベトナムに出匵しおいる。たた3カ月の玄束で赎任した䌚長も、6幎が経過したが珟圚でもホヌチミン圚䜏である。瀟長は今埌の経営展開ずしお、以䞋の3点を掲げおいる。① 日本囜内での補造は、自瀟のコア技術が掻かせる分野に特化しお「B to B」の分野のもの䜜りをする。珟状のような「B to C」の分野では景気動向によっお受泚がいきなりれロになる危険性がある。芁するに PO1発泚曞に基づいお量産が動いおいる蚳ではなく、FC2予枬倀ベヌスで量産しなくおは発泚元の玍期芁望に応えられない䞭小䌁業の実情がある。自瀟から䜕かを発信もの䜜りし続けるず人は集たるし、同じ補品を䜜るにしおも、日本人のヒラメキや発想力は海倖より高い。

② ベトナム工堎の顧客もホヌチミン集䞭から呚蟺地域に拡倧しおいる。そのため、珟圚の工堎特区からより玍品先に近い堎所での工堎展開も必芁ず感じおいる。情報収集のアンテナを匵っお、䞀貫生産を行っおいる他の日本䌁業ずも共有化したい。

③ ブラゞルに新たに進出したい。理由はネットワヌクむンフラが敎っおいる珟圚、日本ずの時差の関係で24時間働くこずが出来る日本で蚭蚈したものが、翌日には詊隓補造がブラゞルで完成しおいるずいう意味。

A瀟にずっおのタヌニングポむントが近いこずが、聎き取り調査から感じ取れた。

【B瀟】䞀般暹脂の二次加工党般印刷業家族経営の䌚瀟であり、珟䌚長父芪が立ち䞊げた䌁業である。東北地域や近隣の倚く

のプラスチック成圢業者から発泚を受けお、川厎工堎740㎡においおナビゲヌション、スマヌトフォン、オヌディオ商品などぞの印刷文字やロゎマヌクなどをしおいた。しかし、リヌマンショックを境に取匕先からの受泚量激枛や廃業する取匕先など環境が倉わり、受泚数量がそれたでの4割枛になっおしたった。埅っおいおも仕事が来ない時期が続いたため、2009幎から2010幎にかけお付加䟡倀のある印刷を自瀟内郚で独自開発するこずに傟泚し、その商品を玄半幎間かけお珟瀟長圓時専務が倧手䌁業ぞ売り蟌みに行った。しかし、䞭小䌁業の人間が倧䌁業の門戞をたたいおも簡単には䌚っおもらえなかった。2010幎に川厎垂産

Page 7: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

35

業振興財団䞻催の「起業家オヌディション」に応募したずころ、タむミング良く「優秀賞」を受賞した。これを契機に川厎垂商工䌚議所のサポヌトも受けられ、倧䌁業ずのコネクションを䜜るこずが出来た。しかし、圓時の倧䌁業からは「工堎は日本囜内だけですか囜内のみでの取匕か」ず倚く聞かれた。䜆し、B瀟は日本経枈新聞や他の経枈雑誌などで「倧手䌁業の駆け蟌み寺」ず評䟡されるほど技術力には定評があり、囜内生産での品質確保には自信を持っおいた。たた、䞭小䌁業ずしお小回りが利き、量産ぞの近道倧手䌁業は12幎かけお量産開始であるこずに察しおの自信もあった。䌚瀟が有名になったお陰で経営的な危機感は感じず、海倖進出などは党く考えおいなかった。ただ䞀方で、囜内受泚だけでは生産ロット数量に限界があるこずも瀟長は懞念しおいた。前述の A瀟がベトナムに工堎進出は果たしおからほが1幎埌の2011幎、A瀟の瀟長から「工

堎を建おたから芋に来ないか」ずの誘いがあり、珟䌚長からの勧めもあっお工堎芋孊に出かけお行った。A瀟の瀟長ずは同じ二代目埌継者ずいうこずで「二代目の䌚」を䜜っお情報亀換はしおいたものの、海倖進出目的でベトナムに出掛けた蚳ではなかった。しかし、実際に珟地に行っおみるず「掻気がある」「飯がうたい」ずいう情緒的な感動以倖にも、「A瀟の埌工皋での専門の印刷䌚瀟がなくA瀟が苊劎しおいるので、B瀟が進出すれば仕事がもらえる」ず刀断し、2012幎3月には A瀟ず同じ工堎特区に工堎を蚭眮した。  そしお海倖工堎が立ち䞊がったら囜内工堎も譲るずいう先代の玄束通り、同幎10月には瀟長に就任した。B瀟の瀟長は、圓時を振り返っお以䞋のように話しおくれた。

ベトナムの A瀟の珟堎を芋おいたら、自瀟も出したいなず思いたした。囜内だけのビゞネスでは、35幎埌の売䞊蚈画が立おづらくなっおきた時期でしたから。たた匟珟専務の嫁がベトナム人で身近にベトナムを感じおいたし、珟地に嫁の芪戚も倚く、サポヌトが期埅できたこずもありたした。実は、私の劻の囜籍はブラゞルです。先代が積極的に倖囜人日系ブラゞル人、ペルヌ人、フィリピン人を採甚しおきたこずから、囜際色豊かな䞭で育ちたしたので、海倖進出に察する違和感はありたせんでした。工堎の蚭備は A瀟が持っおいたのを借りられるし初期投資金額が少ない、A瀟の海倖経隓も自瀟に掻かせるず思い、1週間でベトナム進出ぞのラむセンスを取埗し、玄1カ月で工堎を立ち䞊げるこずが出来たした。【海倖進出決断のポむント】①囜内ビゞネスのみでは、35幎先の売䞊芋蟌みが立たなかった。② 先に海倖進出を果たした A瀟の先行事䟋を応甚でき、䞔぀珟地に䜏む芪族にサポヌトしお貰えるず思った。

Page 8: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

36

珟圚のベトナムビゞネスにおいお、新芏需芁は増えおいないが売り䞊げは安定しおいる。囜内ずベトナムでの売り䞊げ比率は8割が囜内ではあるが、将来的には逆転する可胜性が芋えおきた。その背景には、䞭囜で郚品補造しおきた自動車䌚瀟の仕事が、ベトナムに流れおきおいるこずにある。たた自動車業界は印刷の芁求品質が高く、ロヌカルの同業者が察応出来ない付加䟡倀の高い特殊印刷技術を B瀟が持っおいるからである。䜆し、印刷加工賃は安いため、ロゞスティックコストを抑えるこずや新芏取匕先増加目的で、ホヌチミン垂の南にある珟圚の工堎を発泚元䌁業や倖資䌁業が倚数存圚する北郚に移転させようずしおいる。曎に、B瀟のブラゞル進出の将来展望に関しお、瀟長は以䞋のように話しおくれた。

初めおの海倖工堎であるベトナムが成功したずしおの話ですが、ベトナムず同じように、ブラゞルも芪日囜なので進出はしやすいず思いたす。メキシコの自動車工堎向けに、ブラゞルから郚品を䟛絊しおいきたいず考えおいたす。日本人が行っおベトナムで日本品質の郚品が䟛絊できるのであれば、ブラゞルでも同様のこずが実珟できるのではないでしょうか。

B瀟の瀟長は、川厎垂産業振興財団が実斜しおいる海倖進出セミナヌや幎4回の勉匷䌚にも必ず出垭し、着実に情報収集をしおブラゞル進出の準備を進めおいる。

【C瀟】メカトロニクス機噚の専門商瀟創業は1962幎ず叀く、コンベア蚭蚈補造䌚瀟ずしお蚭立された。1970幎代には補造メヌカ

ヌから珟圚の油空圧機噚、䌝導芁品、制埡機噚および茞送機噚の専門商瀟に業皮を倉えた。瀟長は2代目であるが、今回聎き取り調査に察応しおくれたのは支店長である。支店は暪浜、厚朚、立川、䞉島の4拠点を有しおおり、今回の聎き取り察象者は、C瀟の海倖展開海倖支店を怜蚎した䞭心人物である。リヌマンショック以前の2000幎代前半ず比范しお、同瀟の珟圚の取匕圢態はかなり異なっお来おいる。円高図衚1参照によっお、囜内補造メヌカヌが補造拠点を海倖に移転しおしたったこずず、海倖のロヌカル䌚瀟に仕事自䜓を奪われおしたったこずである。そのため、埓来は囜内間で取匕しおいた䌁業からも、海倖に出お行った限りは「海倖䌁業ずしお扱っお欲しい」ず芁求された。即ち、為替レヌトを考慮した商売をしなくおはならなくなったのだが、C瀟は珟圚でも「円建お」の取匕を基本ずしおいる。たた、無借金経営をしおいる関係で、リヌマンショック埌も C瀟にずっお倧きな圱響は無かった。このような背景から、珟圚でも海倖拠点は持たずに囜内4拠点で営業掻動を維持しおいる。䜆し、海倖支店開拓を怜蚎する過皋においお、海倖芖察に行った時のこずを以䞋のように話しおくれた。

Page 9: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

37

シンガポヌルに行きたしたが、珟地商瀟ず日本の商瀟では質が違ったので、自瀟が進出しおも勝おるず思いたした。しかし、ロヌカル賃金やオフィスの賃貞料が非垞に高かったので、トヌタルでペむできないず刀断したした。たた、東南アゞア諞囜の様々な堎所で「日本補のコア郚品の入手に困っおいないか」ず尋ねたずころ、どこの䌁業装眮メヌカヌも困っおいなかったのです。すでに珟地に商瀟があり、必芁な物は日本から入っおきおいたんです。たた昚今では、日本補品じゃなくおはいけないずいう意識が薄らいできおいたす。「台湟補なら安心だね」ずいう具合です。海倖の補造メヌカヌさんも EMS3受蚗生産で商品を蚭蚈補造したり、コンテナ船で物を送るだけなので、䜕も珟地に支店が無くおも良いず思いたした。やはりむンタヌネット瀟䌚になっお、ビゞネス䞊の物理的距離感は無くなっおいるず感じおいたす。【囜内残留決断のポむント】① シンガポヌルでは人件費ずオフィス賃貞料が異垞に高隰しおいたので、進出しおも単独で黒字化が難しいず刀断した。

② 同業者が既に進出しおおり、たた日本補郚品でなくおもお客様は既に台湟補の郚品でも受け入れられおいたので、日本補郚品調達の䟡倀が薄れおきた。

C瀟の今埌のビゞネス拡倧の方向性に関しおは、埓来の郚品だけを扱う商瀟では売り䞊げが「ゞリ貧」になる可胜性があり、新たに「ナニット化」した商品を商材ずしお取り扱う方針を持っおいる。そのようなケヌスが増えれば海倖支店を蚭け、珟地の数瀟から送られおきた小ロットの郚品を海倖支店で集玄し、䞀括しお囜内に送るずいうロゞスティックの圹割を持たせるこずは可胜である。では、なぜ海倖でナニット化しないのかずいう質問に察しお、支店長は以䞋のように話しおくれた。

ナニット化しお付加䟡倀を付けるには、ハヌド面だけでは䞍十分です。たずえば倚関節ロボットなどをナニット化する堎合、制埡゜フトりェアを組み蟌みでお客様に提案しないずロボットの粟床や動きがわかりたせん。それが付加䟡倀ずなるのです。自瀟は単なる資材郚ぞ補品を玍入する商瀟機胜だけではなく、蚭蚈開発郚門ぞの「提案型ビゞネス」を展開しおいる䌚瀟です。それゆえ、゜フトりェアを含めるず日本でしかできないず思っおいたす。タむにもむンドネシアにも行っおきたしたが、ロヌカル䌁業は育っおいたせんでした。倧量生産品ぞの察応力はあるが、小ロットに察応した品質の良い工堎はただありたせんでした。䞭囜は考えおいないし、韓囜も良くない、台湟なら将来的には良いかもしれたせん。

Page 10: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

38

【日本残留決断のポむント】① 囜内なら郚品単䜓販売では無く、ナニット郚品化しお付加䟡倀を䞊げられる販売単䟡増ず刀断した。

② ゜フトりェア開発を含めるず、東南アゞア諞囜の人材ではただ察応できないこずが分かった。

創業50幎を過ぎ、60呚幎に向けお C瀟の商材のキヌワヌドは、「Made in Japan」「Product

by Japan」「Produce by Japan」ではないかず、支店長は語っおくれた。

【D瀟】特殊ヒヌタヌ補造創業以来囜内においお継続しお発泚元からの䟝頌を受けお、郚品およびナニットを補造し

おいる䌚瀟である。工堎は東京ず名叀屋の2カ所にあり、小型特殊ヒヌタヌの蚭蚈補造を行っおいる。小型特殊ヒヌタヌは産業甚の為、発泚元からの芁求はコストよりも信頌性・安党性が優先されるニッチ商品である。玍入実瞟のある䌚瀟も囜内3,500瀟以䞊にのがり、「オリゞナルのヒヌタヌを䞀぀から補䜜いたしたす」がモットヌである。具䜓的甚途ずしおは、衛星攟送甚アンテナに内蔵されるヒヌタヌやLEDラむトを䜿甚した亀通信号機甚のヒヌタヌである。LEDラむトは発熱しないために、寒冷地の信号機の霜や雪が融けなくなり、発光の技術革新が思わぬ新芏需芁を創出した事䟋ずなっおいる。この垂堎の参入障壁は䜎いのだが、発泚元からのロット数量が少なく倧手には手が出しに

くい商品分野であり、需芁は安定的に芋蟌たれるのでビゞネスは維持できおいる。そのため、リヌマンショック前埌での売䞊金額の差異は少ない。瀟長も自瀟のビゞネスを拡倧させるずいう事業方針を持たず、地域ず䞀䜓になり地域貢献

掻動に積極的に取り組んでいる。䟋えば、地元倧孊の孊生むンタヌンシップ受け入れや圹堎職員の新人教育の珟堎自習先ずしおの受け入れをしおおり、地域䞀䜓型の䌁業を目指しおいる。このため、今のずころ海倖進出の必芁性を感じおいない。

【E瀟】プラスチックず粟密プレスの郚品補造兄の経営する東京の䌚瀟の出先工堎であったが、珟瀟長匟が1980幎に独立しお長野県で創業した。創業圓初は地元倧手䌁業からの発泚があり、郚品補造工堎ずしお売り䞊げの倧半を占めおいたし、発泚元からの技術的支揎も受けおいた。補品の䞻軞は金属プレス郚品ずプラスチック郚品金型蚭蚈補造も含むである。特に金属プレス加工技術に関しおは技術力が高く、1980幎代から順送金型4技術で成功しおいた。しかし、1985幎9月のプラザ合意埌の円高が進むに぀れお、発泚元は工堎を次々にアゞア諞囜に移転させおしたった。発泚元が

Page 11: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

39

1986幎に銙枯工堎を立ち䞊げた際に、銙枯にプレス工堎を出すように䟝頌を受けた。瀟長は銙枯の珟堎調査に幎4回蚪問しおいる。蚪問の目的は発泚元工堎の珟堎の実力を確認するず共に、他方では「日本では䜕をやれば生き残れるのか比范をする」のが目的であった。結局、銙枯には自瀟工堎を出さなかったが、再び1990幎に発泚元からむンドネシア、深圳䞭囜ぞの工堎進出を䟝頌された。その郜床、瀟長自らが珟地調査を実斜し、結局工堎進出はしなかった。圓時を振り返り以䞋の話をしおくれた。

発泚元からは5回5カ所も海倖進出の䟝頌がありたした。発泚のコミットメントはするからずいう「赀い絚毯」の話でした。でも3幎先から5幎先には自立しお欲しいずいうのも条件でした。私は珟地の仲介圹ブロヌカヌずも話をしおきたしたが、圌らが私を説埗する話ずしおは「工堎進出をしお23幎でパッず儲けお、儲からなくなったらパッず蟞めたしょう」ずいうものでした。これは自分の経営スタンスず異なるものですし、進出するなら自分が行かなきゃならないず思っおいたしたので、日本の工堎はどうなるのかず困っおしたいたした。その結果、海倖進出する自瀟のメリットはないず思い、日本での技術向䞊に努めようず決めたした。【囜内残留決断のポむント】① 海倖進出の仲介圹ず自身の経営者ずしおの䌚瀟経営スタンスが異なった。② 経営者ずしお、囜内工堎ず海倖工堎の䞡方を均等に党力でマネゞメントするこずが出来ないず刀断した。

圓時、発泚元からの䟝頌により海倖に進出した郚品メヌカヌはあった。しかし、海倖に出おいっお安い劎働力で郚品を補造しおも、最終的には発泚元からのコストダりン芁求は囜内にいた時ず同じように匷い。日系䌁業が発泚元だけに郚品を玍めるだけのビゞネス圢態では意味がない。即ち、日本で䜜れる郚品をそのたた海倖で補造しおも意味がないので、珟地の他瀟の仕事を増やさない限り意味はないず刀断した。前述のように瀟長は自らの足で珟地調査を実斜した結果、海倖進出を断念しお囜内でのビ

ゞネスに傟泚する経営刀断をした。その背景には以䞋の理由があげられる。① アゞア圏の劎働賃金は安いが、発泚元からのコストダりン芁求は囜内ず同様で海倖進出しおも収益は同じであり、海倖進出しおたでその芁求に応じるリスクは高い。即ち、劎働者のスキルや材料自䜓の品質の問題を含め、囜内補造ず同等の高品質な郚品を䟛絊するにはリスクが高い。

② 進出から3幎以降に自立経営をするには、誘臎を斡旋した発泚元に䟝存しないビゞネス営業をしなくおはならないが、珟地では䌚瀟察䌚瀟の信頌関係の構築に時間がかかり、新

Page 12: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

40

芏ビゞネス獲埗は難しいず刀断した。③ 新芏ビゞネスが獲埗できたずしおも、最終的には珟地ロヌカルの郚品補造メヌカヌずの競合になり、ロヌカルの人的ネットワヌクや華僑の資本力ずは差が倧きすぎお勝負できないず刀断した。

④ 自瀟の生産技術ノりハりが、珟地のロヌカル䌚瀟に流出するこずを恐れた。

以䞊の理由から海倖ぞの進出をあきらめたが、その代わり「日本で生き抜くには䜕をやれば良いか」を考え、囜内倧手䌁業耇数からの郚品を補造しおいる。その郚品もコモディティヌ商品矀の郚品ではなく、付加䟡倀が高く䟡栌も急激には䞋がらない自瀟固有技術が掻かせる業皮に特化しおビゞネスを継続し、業瞟拡倧をしおいる。

【F瀟】特殊プリンタヌの開発・補造・販売倧手プリンタヌメヌカヌの代理店ずなり、仕入れたプリンタヌを独自に再蚭蚈、改造しお仕入れ元メヌカヌが手を出さないニッチ垂堎向けに商品開発ず販売を行っおいる。創業はバブル経枈厩壊埌であり、故先代瀟長が CD DVDぞの盎接印刷機噚を開発しヒットしたこずから䌚瀟が倧きくなった。仕入れ元メヌカヌのむンクゞェット方匏のプリンタヌは、基本的には玙媒䜓ぞの印刷甚むンクを玔正品ずしお販売しおいるが、F瀟の堎合はむンクそのものを別䌚瀟から調達し、玙媒䜓以倖の物に印刷する垂堎をタヌゲットずしおいた。先代瀟長の時代には、本瀟工堎長野県塩尻垂ず東京営業所、関西営業所、海倖では北米ず欧州に販売拠点を蚭けグロヌバルにビゞネス展開しおいた。珟瀟長である息子は北米に赎任しおいたが、圓時北米での需芁はなかったずいう。

F瀟の商品開発は、先代瀟長のアむデアを具珟化するこずによっお成り立ち、既存の印刷物はむンクゞェット技術ず特殊むンクにより「䜕にでも印刷できる」を目暙に売り䞊げを拡倧しおきた。2008幎5月には「元気なモノ䜜り䞭小䌁業300瀟2008幎版」に遞ばれ泚目を集めた。開発した機皮数は70皮類を超え、党䞖界でおよそ5,000台以䞊のプリンタヌを販売しおきた。しかし、同幎9月にはリヌマンショックが蚪れお、販売先からの資金回収が難しくなり、プリンタヌの仕入れ元ぞの支払いも厳しい状況が続いた。2012幎に先代瀟長が病気で他界し、息子である珟瀟長が䌚瀟を匕き継いだのを契機に珟瀟長は経営方針を転換し、グロヌバルに䜕でもお客様の芁求に応える商品開発から、囜内垂堎に特化した固有商品で経営をする刀断をし、北米ず欧州からは撀退しおいる。その理由は以䞋のずおりである。① 海倖でのビゞネス経隓が少なく、人材も䞍足しおおり安定的な売り䞊げが芋蟌めない。② 商品販売の為、アフタヌサヌビスなどは珟地の他䌚瀟に業務委蚗しおおり、採算が管理できない。即ち、業務委蚗された別䌚瀟が顧客満足床を向䞊させ、䞔぀自瀟の効率を䞊

Page 13: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

41

げるには、「䞍具合の原因究明をしお修理をするよりも、郚品ナニット亀換や完成品亀換をした方が手間もかからない」為、F瀟にずっおは業務委蚗䌚瀟からの請求金額を怜蚌するこずができず、持ち出しが増えおしたった。たた、䞍具合の根本原因が分からずじたいで自瀟商品の䞍良率が収束しなかった。

③ 商品販売先の䌁業調査が海倖の為、䞍十分であり契玄通りに事が進たなかった。④ 特殊印刷機の垂堎芏暡は小さく、グロヌバルに展開するには商品の売䞊金額に比范しお固定費特に人件費がかかり過ぎた。

先代の瀟長の時代には、垂堎ニヌズが少しでもあればすぐに開発し、垂堎投入しおきた。しかし珟圚ではそういったニッチ垂堎でも、日本からの技術䟛䞎を受けた䞭囜メヌカヌが盎ぐに参入し、1990幎代のように品質や安党性、皌働安定性などの項目での差別化が困難ずなり垂堎は混乱しおいる。先代瀟長の埌を匕き継ぎ、経営方針を倉えた時のこずを以䞋のように話しおくれた。

先代は生粋の技術屋であり、お客様の芁望や自分のアむデアがあるずすぐに研究開発し商品化するタむプでした。たた蚭蚈䞭心の瀟員も぀いおきおくれたので技術者ずしおは面癜かったず思いたす。しかし、埓業員の生掻を安定させるずいう意味では、「瀟員の心埗」ずしお今もあるように「1出来ないず思うな。1出来るず思え。1出来たせんず蚀うな。1出来たすず蚀え。」で商品を片っ端から開発しおいたら、䌚瀟が継続出来ないず思いたした。そこで遞択ず集䞭をしお「フヌドプリンタヌ食品自䜓に印刷するプリンタヌ、食品むンクを䜿甚」ず「情報蚘憶媒䜓コピヌ機」に特化しお行こうず決めたした。私の方針に反察する埓業員は去っお行っおしたいたしたが、䌁業の身の䞈に合った経営をしたかったのです。ただし、今でも先代の残した「出来たせんず蚀うな、出来たすず蚀え」ずいう蚀葉を倧切にしおいたす。【囜内残留決定のポむント】① 䌚瀟の実力人材、資金力を考えるず、海倖も含めた党おのお客様の芁望に応えおいたら、自瀟が察応できる限界を超えおいた海倖進出を断念した理由。

② 安定した売䞊ず利益を確保する為に、瀟長自らがマネゞメント出来る範囲での囜内新芏垂堎開拓ずビゞネスに集䞭させた方が経営が安定するず刀断した。

F瀟の売䞊金額はリヌマンショック前ず同じくらいたでに回埩し、利益金額はそれ以䞊倧幅に増益ずなっおいる。珟圚、囜内食品垂堎向けの特殊プリンタヌ販売を事業の柱ずし安定的な収益を確保しおいるが、食品垂堎以倖の事業成長の堎を暡玢しおいる。

Page 14: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

42

3. 聎き取り調査からの知芋A瀟は囜内の川厎工堎、暪浜工堎の2拠点を維持し぀぀、ホヌチミン垂ベトナムに1工堎を進出させた図衚3参照。囜内工堎では自瀟のコア技術を掻かせる分野に特化させ、ベトナム工堎では単䟡は安いが数量が皌げる民生品郚品補造にビゞネスを傟泚しおいる。ベトナム工堎での発泚元は日本では無くベトナムにある。ベトナム生産が増えたこずにより、䌚瀟党䜓の売䞊高はリヌマンショック前のレベルたで回埩しおきた利益的にはただ到達しおいない。今埌、ベトナム工堎の堎所を発泚元に近いずころに移転するず共に、新たにブラゞルに工堎進出したいず考えおいる。

B瀟は囜内の川厎工堎を維持し぀぀、ホヌチミン垂ベトナムに1工堎を進出させた図衚3参照。党瀟売䞊におけるベトナムでの売䞊比率は2割皋床であるが安定しおいる。今埌は民生品需芁だけではなく、品質が重芁芖される車関連郚品の発泚先が、䞭囜からベトナムに流れおきおいるので、売䞊比率はベトナムが日本ず逆転する可胜性が十分にあるず考えおいる。たた自瀟の特殊印刷のコア技術を持っおいるこずが匷みであり、今埌ブラゞルに工堎進出させお車関連郚品を補造するこずを怜蚎しおいる。

C瀟は海倖営業拠点を怜蚎はしたが、既に C瀟ず同じような機胜を持぀他瀟が進出しおおりメリットがないず刀断し、日本ビゞネスを拡倧させるために暪浜支店、厚朚支店、立川営業所の他に、䞉島営業所を増蚭させた図衚3参照。今埌は自瀟の付加䟡倀を増やすようなナニット化した商材に移行させおいき、売䞊金額ず利益を拡倧させようずしおいる。

D瀟は小ロットの特殊郚品補造に特化しおおり、暪浜工堎ず名叀屋工堎での操業を維持しおいる。ニッチ狙いの商品補造に特化しおおり、地域䞀䜓型の䌁業を目指しおいる。

E瀟は囜内発泚元が銙枯、䞭囜、むンドネシア、フィリピンに工堎を囜内から移転させた郜床、海倖工堎進出の匷い芁望を囜内発泚元から出されおいた。しかし、海倖に工堎進出するこずなく自瀟のコア技術を掻かした付加䟡倀の高い郚品に囜内補造をシフトさせ、囜内のビゞネスに特化させた図衚3参照。

F瀟は独自でグロヌバルに販売展開をしおきたが欧州ず米囜の販売拠点を閉鎖し、囜内営業の東京支店ず関西支店は残した図衚3参照。事業領域を囜内の特殊垂堎に絞り、売䞊げも70増加させた。囜内の新たな新芏事業領域を暡玢䞭である。

Page 15: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

43

図衚 3 リヌマンショック埌の拠点倉化

䌁業 海倖進出の有無 営業・補造拠点の倉化

A 有 囜内2工堎維持。ベトナムに1工堎進出。

B 有 囜内1工堎維持。ベトナムに1工堎進出。

C 無 海倖進出の怜蚎は実斜。囜内営業拠点を1か所増蚭。

D 無 海倖進出の怜蚎は実斜せず。囜内2工堎維持。

E 無 海倖進出の怜蚎は実斜。囜内1工堎維持。

F 無 海倖2販売拠点を閉鎖。囜内1工堎、2営業支店維持。

2016幎12月珟圚

以䞊のように今回の聞き取り調査䌁業は、1新たに海倖工堎進出を実斜しお売り䞊げを回埩させた䌁業A瀟、B瀟ず、2海倖進出の怜蚎は実斜したが結果ずしお囜内に泚力しお売り䞊げを回埩させた䌁業C瀟、E瀟、F瀟、その他D瀟に局別できる。以䞋に1ず2䌁業矀の特城をたずめる。

1海倖進出をしお成功した䞭小䌁業の特城1進出時点は珟地にツテがあり、情報の入手や珟地芖察が容易にできた。2進出囜からの誘臎掻動があったので初期投資金額が䜎く抑えられた。3進出囜にはロヌカル䌁業で、日本品質を確保できる同業皮䌁業が居ない。4発泚元は日本では無く、珟地䌁業からの発泚で珟地玍品ずしおいる為替倉動の圱響を受けない。

5民生品の郚品を安定的数量で受泚し、倧量生産をしおいる。6䞀貫生産をしお完成品ずしお発泚元に玍品するために付加䟡倀を付ける、耇数瀟前工皋埌工皋で同じ堎所に進出し協働しおいる。

7経営者が頻繁に珟堎で指揮を執っおいる幎間のおよそ半分は珟地で仕事。8囜内工堎の埓業員に倖囜人を倚く採甚しおいる。

2囜内に留たっお成功した䞭小䌁業の特城1囜内補造品を民生品䞭心から業務甚䞭心に倉曎した利益率の向䞊。2発泚元の囜内䌁業を増やし、発泚元の技術力を自瀟に定着させ、曎に自瀟技術力を磚き䞊げおいった技術䞻導型の䌚瀟。

Page 16: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

䞭小䌁業の生き残り戊略 海倖進出か囜内残留か

44

3自瀟の固有技術が掻かせる分野に遞択ず集䞭をし、経営資源を投入しおいる。4埓業員の倚くが日本人であり、䞔぀地域密着型の経営をしおいる。5為替倉動の圱響を受けない囜内取匕圢態をしおいる。

たた12の䌁業矀の経営者の特城ずしおは、経営者が䞉珟䞻矩5に培しお行動しおいるこずであった。それは、経営者が自ら海倖珟地のむンフラや文化を䜓隓し、発泚元の工堎珟堎を芋お管理状況を把握し、自瀟が受泚した郚品だけでなく、最終完成品の䜿われ方たで珟物で確認し、自瀟郚品の品質改善に努めおいる。たた、懞案事項が発生すれば経営者がその堎で確認および方針決定ができる䌁業䜓質になっおいるこずである。

なお今埌の課題ずしおは、「先行研究」をより倚く調査するず共に、聞き取り調査䌁業数を増やさなければならないず考える。特に①海倖進出をしたが、埌に海倖撀退した䌁業 ②海倖進出したが業瞟䞍振の䌁業 ③囜内残留をしたが業瞟䞍振の䌁業 を今回の聞き取り調査䌁業の内容ず察比させるこずにより、より確床の高い「䞭小䌁業の生き残り戊略」の分析が可胜になるず考えられる。

〔泚蚘〕1 Purchase Order の略。2 Forecast の略。3 Electronics Manufacturing Serviceの略。4 ひず぀のプレス金型の䞭に耇数の工皋を等間隔で配眮し、コむル材が繋がったたたの状

態で各工皋の加工を連続で行えるように蚭蚈されたプレス金型のこず。5 珟堎、珟物、珟実ずいう「3぀の珟」を重芖する考え方。

〔参考文献〕䌊䞹敬之日本䌁業は䜕で食っおいるのか、日本経枈新聞出版瀟、2013,pp.13-23䞭沢孝倫䞭小䌁業の底力、筑摩曞房、2014,pp.23-24䞭小䌁業庁線䞭小䌁業癜曞2010幎版、日経印刷、2010,pp34-57

〔聞き取り調査日〕A瀟代衚取締圹瀟長 2016幎6月3日B瀟代衚取締圹瀟長 2016幎6月3日C瀟支店長 2016幎6月23日

Page 17: A Study on Survival Strategies of Small and Medium ......going. The purpose of this study is to analyze what successful measures and strategies small and medium enterprises (SMEs)

Sanno University Bulletin Vol. 38 No. 1 September 2017

45

D瀟代衚取締圹瀟長 2016幎8月5日E瀟代衚取締圹瀟長 2016幎8月23日F瀟代衚取締圹瀟長 2016幎8月30日