社会の意見のダイナミクスを物理モデルとして考えてみる

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社会の意見のダイナミクスを 物理モデルとして考えてみる @takeshi0406

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社会の意見のダイナミクスを 物理モデルとして考えてみる

@takeshi0406

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自己紹介

@takeshi0406

世論形成のダイナミクスを統計物理っぽく研究しています

趣味:音楽とTwitter

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いわゆる「社会シミュレーション」や「マルチエージェントシミュレーショ

ン」の話です

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Introduction

1. 社会シミュレーションの目指すもの

2. 意見モデル(Opinion model)について

• 人って「同調」する生き物だよね

• 「同調」する一番簡単なモデル→Ising model

3. Ising modelで説明できる現象

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1.そもそも社会シミュレーション って何を目指してるの?

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シミュレーションの目的は二つ

1. 理解

「なぜ利他的な行動は競争環境下でも生き残るのか」「なぜバブルは発生するのか」「なぜ人種や宗教による棲み分けは発生するのか」

2. 予測

「テーマパークの混雑状況を知らせることで、混雑がどの程度減少するのか」「電気自動車の充電設備をどこに配置したらいいのか」

参考:鳥海不二夫, 山本仁志, (2014), マルチエージェントシミュレーションの基本設計, ”情報処理”, Vol.55, 530-538

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シミュレーションの目的は二つ

1. 理解

「なぜ利他的な行動は競争環境下でも生き残るのか」「なぜバブルは発生するのか」「なぜ人種や宗教による棲み分けは発生するのか」

2. 予測

「テーマパークの混雑状況を知らせることで、混雑がどの程度減少するのか」「電気自動車の充電設備をどこに配置したらいいのか」

参考:鳥海不二夫, 山本仁志, (2014), マルチエージェントシミュレーションの基本設計, ”情報処理”, Vol.55, 530-538

「普遍的な性質を説明する」 →物理学はこっちを目指す

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目的によって「良い」モデルが違う!

1. 理解

「なぜ利他的な行動は競争環境下でも生き残るのか」「なぜバブルは発生するのか」「なぜ人種や宗教による棲み分けは発生するのか」

2. 予測

「テーマパークの混雑状況を知らせることで、混雑がどの程度減少するのか」「電気自動車の充電設備をどこに配置したらいいのか」

参考:鳥海不二夫, 山本仁志, (2014), マルチエージェントシミュレーションの基本設計, ”情報処理”, Vol.55, 530-538

国や場所に関わらず似た現象が発生 →共通する「本質」的な要素でモデリング(抽象的)

(例えば)混雑状況を予測したい →アトラクションの配置などを再現する(具体的)

「普遍的な性質を説明する」 →物理学はこっちを目指す

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具体的に どんなことをしているか

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1.人(エージェント)を配置

2.相互作用のルールを設定

3.社会科学の複雑な性質を説明する

参考:“Opinion formation on social media: An empirical approach” http://scitation.aip.org/content/aip/journal/chaos/24/1/10.1063/1.4866011

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1.人(エージェント)を配置

2.相互作用のルールを設定

3.社会科学の複雑な性質を説明する

参考:“Opinion formation on social media: An empirical approach” http://scitation.aip.org/content/aip/journal/chaos/24/1/10.1063/1.4866011

人・相互作用のルールを変更

globalな性質がどう変わるか

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2.意見モデル(Opinion model)について

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意見モデル(Opinion model)における 相互作用の最重要ルール 「他人に同調する」

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人の意見の「同調」する性質• 社会的影響(social influence)

ex.高校生のコミュニティの間で、薬物使用が「感染」する

• ネットワーク効果(network effect)

ex.通信機器は、普及すればするほど便利になる

• 人の移動

自分と似た人の多い地域に移動する(Schelling,1971)

などなど参考:David Easley, Jon Kleinberg著, 浅野孝夫, 浅野泰仁訳 (2013)『ネットワーク・大衆・マーケット ―現代社会の複雑な連結性についての推論―』

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たくさんのものが「同調」する 性質をもつ物理モデル =Ising model

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Ising model

• 磁性体の性質を単純化したモデル

• 各格子点は+1か-1のスピンをもつ

• (強磁性体の場合)周囲の格子点と同じ状態をとる”確率が高い”

• ほとんどの分子が同じ向きに揃った場合、その磁性体は磁力をもつ

• 「相転移」

格子点=原子

+1

-1 -1

-1

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Ising model

• 磁性体の性質を単純化したモデル

• 各格子点は+1か-1のスピンをもつ

• (強磁性体の場合)周囲の格子点と同じ状態をとる”確率が高い”

• ほとんどの分子が同じ向きに揃った場合、その磁性体は磁力をもつ

• 「相転移」

格子点=原子

たとえば「賛成」「反対」

人間

社会的な合意のとれた状態

をOpinion modelとして見た場合社会の合意形成プロセス

+1

-1 -1

-1

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3.Ising modelのもつ性質で 説明できる現象の例

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ドイツの経済誌の調査

ビジネスマネージャーに「今後の経済予想」を毎年アンケート(positive, negative or neutral)

→ 集計すると、強く 悲観的 or 楽観的に振れる性質

参考:“Social application of two-dimensional Ising models” http://arxiv.org/abs/0706.3983

例)意見の同期と反転

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Ising model(positive or negative)

好況・不況の波を外部磁場として与えてシミュレーション(適当なサイン関数で)

参考:“Social application of two-dimensional Ising models” http://arxiv.org/abs/0706.3983

例)意見の同期と反転

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例)意見の同期と反転

ちょっとした磁場の変化で 全体の状態が反転してしまう

参考:“Social application of two-dimensional Ising models” http://arxiv.org/abs/0706.3983

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例)意見の同期と反転ちょっとしたきっかけで

「流行」が発生 →「バブル」を説明?

参考:“Social application of two-dimensional Ising models” http://arxiv.org/abs/0706.3983

ちょっとした外部磁場で 全体の状態が反転してしまう

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とはいえ、Ising modelって 単純すぎるよね

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他に考えるべき(かもしれない)社会のいろいろな要素

• 複雑ネットワーク構造

• 例えばコミュニティ間で普及がストップ

• エージェントがOpinionとActionの二つの変数

• 意見の状態数を増やす or 連続値にする

• Ising modelでは意見の「過激さ」が表現できない

• 人の個性(変数のばらつき)を入れる

• (多分)スピングラスモデル参考:“Continuous Opinions and Discrete Actions in Opinion Dynamics Problems” http://arxiv.org/abs/0711.1199 など

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